(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162086
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】タッチセンサ及びタッチセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20231031BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
G06F3/041 430
G06F3/041 450
G06F3/044 122
G06F3/041 660
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102779
(22)【出願日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】202210449029.2
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519308156
【氏名又は名称】ティーピーケイ アドバンスド ソリューションズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TPK ADVANCED SOLUTIONS INC
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】リウ シャオジエ
(72)【発明者】
【氏名】リン チアジュイ
(72)【発明者】
【氏名】ユー チェンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジアン
(72)【発明者】
【氏名】シュウ シーチャン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ジュンフア
(72)【発明者】
【氏名】バイ メイフェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ソンシン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ロンユン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ボー
(57)【要約】
【課題】柔軟性の要件及び狭いベゼルの設計の要件を満たすことが可能なタッチセンサ及びタッチセンサの製造方法を提供すること。
【解決手段】可視領域及び周辺領域を有するタッチセンサは、基板、金属ナノワイヤ層、及び銀層を含む。金属ナノワイヤ層は、基板の主要面に配置され、電極部と、第1の配線及び第2の配線を画定する。第1の配線は、電極部に接続されたリードアウト部と、リードアウト部に接続されたリード部とを含む。第2の配線は、可視領域から相対的に離れた第1の配線の1つの側に配置され、かつ、主要面の縁部に隣接する。銀層は、第1の配線及び第2の配線に積層されており、可視領域に対向する第1の側面と、可視領域に対して反対側に位置する第2の側面とを有する。第1の側面の縁部の粗さは、第2の側面の縁部の粗さよりも大きい。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視領域と、前記可視領域の少なくとも1つの側に隣接する周辺領域とを有するタッチセンサであって、
基板と、
前記基板の主要面に配置された金属ナノワイヤ層であって、前記金属ナノワイヤ層は、前記可視領域に対応する電極部を画定し、かつ、前記周辺領域に対応する第1の配線及び第2の配線を画定し、前記第2の配線は、前記第1の配線から離れて配置され、前記第1の配線は、リードアウト部と、リード部とを含み、前記リードアウト部は、前記電極部に隣接して接続され、前記リード部は、前記リードアウト部に接続され、前記第2の配線は、前記可視領域から相対的に離れた前記第1の配線の1つの側に配置され、かつ、前記主要面の縁部に隣接する、金属ナノワイヤ層と、
前記第1の配線及び前記第2の配線に積層されて接触する銀層であって、前記銀層は、前記可視領域に対向する、前記リードアウト部上の第1の側面と、前記第2の配線の前記可視領域に対して反対側に位置する第2の側面とを有し、前記銀層の前記第1の側面の縁部の粗さが、前記銀層の前記第2の側面の縁部の粗さよりも大きい、銀層と
を備えたタッチセンサ。
【請求項2】
前記金属ナノワイヤ層は、前記周辺領域に対応する、間隔を空けて配置された複数の前記第1の配線を画定し、
前記銀層は、前記第1の配線の上面に配置されて前記上面に接触し、前記タッチセンサの複数の周辺配線を形成する、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項3】
前記銀層は、前記可視領域に対して反対側に位置する、前記リードアウト部上の第3の側面と、前記第1の側面及び前記第3の側面を接続する2つの第4の側面とを有しており、
前記リードアウト部、前記銀層の前記第3の側面、及び前記銀層の前記2つの第4の側面は、整列した側壁を有する、請求項1又は2に記載のタッチセンサ。
【請求項4】
前記リード部と、前記リード部に積層されて接触する前記銀層は、整列した側壁を有する、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項5】
前記銀層は、前記第2の配線の前記可視領域に対向する第5の側面を有しており、
前記第2の配線及び前記銀層の前記第5の側面は、整列した側壁を有する、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項6】
前記銀層の前記第1の側面の前記縁部の粗さの幅は、10μm以上かつ50μm以下の範囲内であり、
前記銀層の前記第2の側面の前記縁部の粗さの幅は、0.01μm以上かつ5μm以下の範囲内である、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項7】
前記周辺配線の線幅が、6μm以上かつ10μm以下の範囲内であり、
前記周辺配線の隣接する2つの周辺配線の線間隔が、6μm以上かつ10μm以下の範囲内である、請求項2に記載のタッチセンサ。
【請求項8】
可視領域と、前記可視領域の少なくとも1つの側に隣接する周辺領域とを有するタッチセンサの製造方法であって、
前記可視領域及び前記周辺領域に対応する金属ナノワイヤ材料層を基板の主要面に形成し、
スクリーン印刷処理を実施して、前記周辺領域に対応する銀材料層を前記金属ナノワイヤ材料層に形成し、
前記金属ナノワイヤ材料層及び前記銀材料層を覆うフォトレジスト層を形成し、
露光処理及び現像処理を実施して、前記フォトレジスト層にパターンを形成し、前記パターンの形成されたフォトレジスト層は、前記可視領域に対応する電極部を画定し、かつ、前記周辺領域に対応する第1の配線パターン及び第2の配線パターンを画定し、前記第2の配線パターンは、前記第1の配線パターンから離れて配置され、前記第1の配線パターンは、リードアウト部のパターンと、リード部のパターンとを含み、前記リードアウト部のパターンは、前記電極部のパターンに隣接して接続され、前記リード部のパターンは、前記リードアウト部のパターンに接続され、前記第2の配線パターンは、前記可視領域から相対的に離れた前記第1の配線パターンの1つの側に配置され、かつ、前記主要面の縁部に隣接し、前記パターンの形成された前記フォトレジスト層の前記電極部のパターン及び前記リードアウト部のパターンは、連続した被覆層であり、
1回目のエッチング処理を実施し、前記第1の配線パターン及び前記第2の配線パターンを用いて、前記銀材料層にパターンを形成し、
2回目のエッチング処理を実施し、前記第1の配線パターン及び前記第2の配線パターンを用いて、前記金属ナノワイヤ材料層にパターンを形成し、
前記フォトレジスト層を除去する、
タッチセンサの製造方法。
【請求項9】
前記1回目のエッチング処理の後、前記2回目のエッチング処理の前に、プラズマ処理を実施し、前記第1の配線パターン及び前記第2の配線パターンを用いて、前記パターンの形成された前記銀材料層が処理される、請求項8に記載のタッチセンサの製造方法。
【請求項10】
前記1回目のエッチング処理の後、前記プラズマ処理の前に、化学洗浄処理を実施し、前記第1の配線パターン及び前記第2の配線パターンを用いて、前記パターンの形成された前記銀材料層を前処理する、請求項9に記載のタッチセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タッチセンサ及びタッチセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン、衛星ナビゲーションシステム、デジタルAVプレーヤ等の携帯型の電子機器において、タッチセンサが広く利用されており、ユーザと電子機器の間の情報通信チャネルとしての役割を果たしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ベゼルの狭い電子機器の需要が徐々に増加しているため、本技術分野では、ユーザのニーズを満たすために、電子機器の曲げ易さを改善し、また、電子機器のベゼルのサイズを縮小化することに取り組んでいる。一般に、タッチセンサは、可視領域に配置された接触電極と、その周辺領域に配置された周辺回路とを含み、タッチパネルの曲げ要件に基づき、現在、周辺回路の材料として、銀ペーストが、好んで利用されている。銀ペースト材料に関し、スクリーン印刷処理を行って銀ペースト材料から銀層を形成するのが一般的であり、また、銀層にパターンを形成することにより、パターンを有する周辺回路を形成するのが一般的である。また、周辺領域に設計された周辺回路は、タッチパネルをベゼルの狭い製品に応用するのに影響を与える。したがって、周辺回路の材料としての銀ペーストの使用に基づき、柔軟性の要件及び狭いベゼルの設計の要件を満たすことが可能なタッチセンサを如何に提供するかについては、目下研究する価値がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示のいくつかの実施形態によれば、可視領域と、可視領域の少なくとも1つの側に隣接する周辺領域とを有するタッチセンサが、基板と、金属ナノワイヤ層と、銀層とを含む。金属ナノワイヤ層は、基板の主要面に配置されており、可視領域に対応する電極部を画定し、また、周辺領域に対応する第1の配線及び第2の配線を画定する。第2の配線は、第1の配線と間隔を空けて配置される。第1の配線は、リードアウト部と、リード部とを含む。リードアウト部は、電極部に隣接して接続される。リード部は、リードアウト部に接続され、第2の配線は、可視領域から相対的に離れた第1の配線の1つの側に配置され、主要面の縁部に隣接する。銀層は、第1の配線及び第2の配線に重ねられ、第1の配線及び第2の配線に接触する。銀層は、可視領域に対向する、リードアウト部上の第1の側面と、可視領域に対して反対側に位置する第2の配線の第2の側面とを有する。ここで、銀層の第1の側面の縁部の粗さは、銀層の第2の側面の縁部の粗さよりも大きい。
【0005】
本開示のいくつかの実施形態では、銀層の第1の側面の縁部の粗さの幅は、10μm以上かつ50μm以下の範囲内とし得る。銀層の第2の側面の縁部の粗さの幅は、0.01μm以上かつ5μm以下の範囲内とし得る。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態では、金属ナノワイヤ層は、周辺領域に対応する、間隔を空けて配置された複数の第1の配線を画定し得る。銀層は、第1の配線の上面に配置され、第1の配線の上面と接触し、タッチセンサの複数の周辺配線を形成し得る。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態では、周辺配線の線幅は、6μm以上かつ10μm以下の範囲内とし得る。周辺配線の隣接する任意の2つの周辺配線の線間隔は、6μm以上かつ10μm以下の範囲内とし得る。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態では、銀層は、可視領域に対して反対側に位置する、リードアウト部上の第3の側面と、第1の側面と第3の側面とを接続する2つの第4の側面とを有し得る。リードアウト部、銀層の第3の側面、及び銀層の2つの第4の側面は、整列した側壁を有し得る。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態では、リード部、及びリード部に積層されて接触する銀層は、整列した側壁を有し得る。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態では、銀層は、可視領域に対向する第2の配線の第5の側面を有し得る。第2の配線及び銀層の第5の側面は、整列した側壁を有し得る。
【0011】
本開示のいくつかの他の実施形態によれば、可視領域と、可視領域の少なくとも1つの側に隣接する周辺領域とを有するタッチセンサの製造方法は、
金属ナノワイヤ材料層を基板の主要面に形成する工程であって、金属ナノワイヤ材料層は、可視領域及び周辺領域に対応する、工程と、
スクリーン印刷処理を実施して、銀材料層を金属ナノワイヤ材料層に形成する工程であって、銀材料層は周辺領域に対応する、工程と、
フォトレジスト層を形成して、金属ナノワイヤ材料層及び銀材料層を覆う工程と、
露光処理及び現像処理を実施して、フォトレジスト層にパターンを形成する工程であって、パターンの形成されたフォトレジスト層は、可視領域に対応する電極部のパターンを画定し、周辺領域に対応する第1の配線パターン及び第2の配線パターンを画定し、第2の配線パターンは、第1の配線パターンから離れており、第1の配線パターンは、リードアウト部のパターンと、リード部のパターンとを含み、リードアウト部のパターンは、電極部のパターンに隣接して接続され、リード部のパターンは、リードアウト部のパターンに接続され、第2の配線パターンは、可視領域から相対的に離れた第1の配線パターンの1つの側に配置され、かつ、主要面の縁部に隣接し、パターンの形成されたフォトレジスト層の電極部のパターン及びリードアウト部のパターンは、連続した被覆層である、工程と、
1回目のエッチング処理を実施し、第1の配線パターン及び第2の配線パターンを用いて、銀材料層にパターンを形成する工程と、
2回目のエッチング処理を実施し、第1の配線パターン及び第2の配線パターンを用いて、金属ナノワイヤ材料層にパターンを形成する工程と、
フォトレジスト層を除去する工程とを含む。
【0012】
本開示のいくつかの実施形態では、タッチセンサの製造方法は、1回目のエッチング処理の後、2回目のエッチング処理の前に、プラズマ処理を実施する工程をさらに含み得る。これにより、パターンの形成された銀材料層は、第1の配線パターン及び第2の配線パターンを用いて処理される。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態では、タッチセンサの製造方法は、1回目のエッチング処理の後、プラズマ処理の前に、化学洗浄処理を実施する工程をさらに含み得る。これにより、パターンの形成された銀材料層は、第1の配線パターン及び第2の配線パターンを用いて前処理される。
【発明の効果】
【0014】
上述した本開示の実施形態によれば、本開示のタッチセンサは、電極部、第1の配線及び第2の配線を含む金属ナノワイヤ層と、第1の配線及び第2の配線に積層されて接触する銀層とを含むように設計される。第2の配線に配置され、かつ、可視領域に対して反対側に位置する銀層の側面の縁部の粗さの大きさ(例えば、幅)は、第1の配線に配置され、かつ可視領域に対向する銀層の側面の縁部の粗さの大きさよりも小さいため、タッチセンサの最も外側の周辺配線(例えば、接地線)の縁部を、より滑らかなにすることができ(換言すると、縁部の粗さは無視でき)、タッチセンサの狭いベゼルの要件を満たすのに有利である。また、電極部及び第1の配線を一体的に形成して、接触電極と周辺配線との電気的接続を直接形成することにより、タッチセンサのための追加の重複構造を設計する必要がない。これにより、周辺領域に対応する重複構造が占める領域を省略でき、重複を考慮する必要がないため、タッチセンサのベゼルを狭くするのに有利である。さらに、本開示のタッチセンサの積層構造の設計に基づく、タッチセンサの製造時において、パターンの形成されたフォトレジスト層は、その電極部のパターンと、そのリードアウト部のパターンとの間に連続して延在するように設計され、1回の露光処理及び現像処理により、接触電極及び周辺配線を一度に形成することができ(換言すると、単一のフォトレジスト層のみが使用される)、これにより、製造の工程及びコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示は、以下の添付図面を参照して実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより、より完全に理解することができる。
【
図1A】本開示のいくつかの実施形態に係るタッチセンサを示す概略的かつ部分的な上面図である。
【
図1B】線A-A’に沿った
図1Aのタッチセンサを示す概略的な断面図である。
【
図1C】
図1Aにおけるタッチセンサの領域Rを示す概略的かつ部分的な拡大図である。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態に係る縁部の粗さの幅の測定方法を示す概略図である。
【
図3】本開示のいくつかの実施形態に係るタッチセンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4A】異なる工程における
図1Bのタッチセンサの製造方法を示す概略的な断面図である。
【
図4B】異なる工程における
図1Bのタッチセンサの製造方法を示す概略的な断面図である。
【
図4C】異なる工程における
図1Bのタッチセンサの製造方法を示す概略的な断面図である。
【
図4D】異なる工程における
図1Bのタッチセンサの製造方法を示す概略的な断面図である。
【
図4E】異なる工程における
図1Bのタッチセンサの製造方法を示す概略的な断面図である。
【
図4F】異なる工程における
図1Bのタッチセンサの製造方法を示す概略的な断面図である。
【
図4G】異なる工程における
図1Bのタッチセンサの製造方法を示す概略的な断面図である。
【
図4H】異なる工程における
図1Bのタッチセンサの製造方法を示す概略的な断面図である。
【
図4I】異なる工程における
図1Bのタッチセンサの製造方法を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について詳細に参照し、その例を添付図面に示す。しかしながら、これらの詳細は、本開示を限定するものではないことを理解すべきである。さらに、読者の便宜ため、図中の各構成部品の大きさは、実際の大きさで図示していない。「下側」又は「底部」及び「上側」又は「上部」等の相対的な用語は、図に示すように、或る構成部品と別の構成部品との間の関係を説明するために本明細書で使用され得ることを理解すべきである。相対的な用語は、図に示す装置の向きと異なる向きを含むことを理解すべきである。
【0017】
図1A及び
図1Bを参照する。
図1Aは、本開示のいくつかの実施形態に係るタッチセンサ100を示す概略的かつ部分的な上面図である。
図1Bは、
図1Aの断面線A-A’に沿ったタッチセンサを示す概略的な断面図である。タッチセンサ100は、基板110と、金属ナノワイヤ層120と、銀層130とを含む。いくつかの実施形態では、タッチセンサ100は、可視領域VAと、周辺領域PAとを有する。周辺領域PAは、可視領域VAの複数の側方に位置する。例えば、周辺領域PAは、タッチセンサ100を上面から見たときに、可視領域VAの左側及び下側に位置するL字型の領域とし得る。他の例として、周辺領域PAは、可視領域VAの周囲に位置するフレーム型の領域、換言すると、タッチセンサ100を上面から見たときに、可視領域VAの右側、左側、上側及び下側に位置する領域とし得る。基板110は、金属ナノワイヤ層120及び銀層130を支持するように構成された主要面111を有する。基板110は、例えば、剛性の透明基板又は可撓性の透明基板とし得る。いくつかの実施形態では、基板110の材料は、透明材料、例えば、ガラス、アクリル、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、無色ポリイミド、又はこれらの組合せなどを含み得るが、これらに限定されない。
【0018】
金属ナノワイヤ層120は、基板110の主要面111に配置されており、可視領域VA及び周辺領域PAに対応する。いくつかの実施形態では、金属ナノワイヤ層120は、基質と、基質内に含まれる複数の金属ナノワイヤ(図示せず)とを含み得る。基質は、ポリ(メタクリル酸メチル)等のアクリル材料を含み得る。金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ、銅ナノワイヤ、ニッケルナノワイヤ、又はこれらの組み合わせを含み得る。金属ナノワイヤ層120は、可視領域VAに対応する電極部Eを画定する。電極部Eは、タッチ機能を実現するように構成される。換言すると、電極部Eは、タッチセンサ100の接触電極ETを、少なくとも構成され得る。いくつかの実施形態では、電極部Eは、基板110に形成された片面単層構造、両面単層構造、又は片面二層構造とし得る。
図1Aに示す実施形態では、電極部Eは、基板110の片面に形成された単層電極構造の一例であり、複数の電極部Eが、交差しないように配置される。例えば、電極部Eは、第1の方向D1に延在し、かつ、第2の方向D2に間隔を空けて配置された帯状の電極とし得る。ここで、第1の方向D1は、第2の方向D2と直交する。また、各電極部Eは、並列に配置されて接続された複数の電極線Lを有し得る。例えば、
図1Aに示す実施形態では、各電極部Eは、並列に配置されて接続された3本の電極線Lを含む。
【0019】
金属ナノワイヤ層120は、周辺領域PAに対応する配線Tを画定する。配線Tは、間隔を置いて配置された第1の配線T1及び第2の配線T2を含む。第2の配線T2は、可視領域VAから相対的に離れた第1の配線T1の1つの側に配置され、また、基板110の主要面111の縁部112に隣接し、これと平行する。第1の配線T1は、リードアウト部T11と、リード部T12とを含む。リードアウト部T11は、電極部Eに隣接して接続される。リード部T12は、リードアウト部T11に接続される。換言すると、電極部E、リードアウト部T11及びリード部T12は、可視領域VAから周辺領域PAに向かって連続して延在し、可視領域VA及び周辺領域PAに跨る信号伝送路を形成する。いくつかの実施形態では、リードアウト部T11は、電極部Eの複数の並列した電極線Lを接続するように構成された構成部品とすることができ、リードアウト部T11が占める領域により、銀層130が金属ナノワイヤ層120と安定して電気的に接続するための領域が提供される。本実施形態では、可視領域VAと同じ側に配置された第1の配線T1及び第2の配線T2に関し、第2の配線T2は、可視領域VAと周辺領域PAの境界Bに平行であり、また、境界Bの延在方向(例えば、第2の方向D2)に延在する第1の配線T1のリード部T12と間隔を空けて平行に配置される。
【0020】
銀層130は、基板110の主要面111に配置され、第1の配線T1及び第2の配線T2に積層されて接触する。具体的には、本実施形態では、本開示の第1の配線T1は、タッチ信号を、例えば、外部の電子部品に伝送するために、タッチセンサ100の信号線STを形成するように構成され得る。このため、第1の配線T1の数は、通常、電極部Eの数に対応するように、複数個に設計される。一方、第2の配線T2は、例えば、タッチセンサ100の接地線GTを形成して、静電波又は電磁波の干渉を防ぐように構成され得る。また、いくつかの実施形態では、周辺領域PAは、可視領域VAの周囲に配置されたフレーム型の領域であり、第2の配線T2は、基板110の主要面111の4つの辺に沿って配置され、可視領域VAの全体及び第1の配線T1を囲む。他の実施形態では、接地線GTの設計を必要としない場合、第2の配線T2は、全ての信号線STのうち、可視領域VAから最も遠い信号線STを形成するように構成され得る。したがって、第2の配線T2が提供する機能に関わらず、本開示の銀層130は、第1の配線T1及び第2の配線T2の上面TSに積層されて接触し、タッチセンサ100の複数の周辺配線PTを形成する。換言すると、本開示の周辺配線PTは、二層構造を有しており、金属ナノワイヤ層120が、相対的に基板110の近く配置され、また、銀層130が、基板110の反対側に位置する金属ナノワイヤ層120の面に重ねられる。
【0021】
また、本実施形態に係る銀層130は、第1の配線T1のリードアウト部T11に、少なくとも部分的に重なり、また、第1の配線T1及び第2の配線T2のリード部T12に、完全に重なってもよい。換言すると、基板110のリードアウト部T11に積層されて接触する銀層130の垂直方向の突出部が、基板110のリードアウト部T11の垂直方向の突出部に、少なくとも部分的に重なってもよい。また、基板110のリード部T12及び第2の配線T2に積層されて接触する銀層130の垂直方向の突出部が、基板110のリード部T12及び第2の配線T2の垂直方向の突出部に完全に重なってもよい。このような金属ナノワイヤ層120及び銀層130の構成に基づき、金属ナノワイヤ層120に属する電極部E及び第1の配線T1を一体的に形成することにより、接触電極ETと周辺配線PTの電気的接続を直接的に形成できる。このため、接触電極ETと周辺配線PTの電気的接続を実現するための追加の重複構造を設計する必要がなく、その結果、周辺領域PAに対応する重複構造が占める領域を省略でき、重複を考慮する必要がないため、タッチセンサ100の狭いベゼルの要件を満たすため有利である。
【0022】
補足として、複数の周辺配線PTが互いに絶縁され、また、間隔を空けて配置されるため、本開示の銀層130は、第1の配線T1及び第2の配線T2の上面TSにのみ配置されて、第1の配線T1及び第2の配線T2と重なる。これにより、銀層130と、第1の配線T1/第2の配線T2が、整列した側壁134を有する。換言すると、銀層130が第1の配線T1及び第2の配線T2に重ねられた場合、銀層130は、第1の配線T1及び第2の配線T2の側壁を覆うことがないため、周辺配線PTの線幅が大きくなるのを防ぐことができる。別の視点(例えば、上方から又は側方)から見ると、銀層130と第1の配線T1/第2の配線T2は、実質的に同じパターンを有する。
【0023】
図1Cは、
図1Aのタッチセンサ100の領域Rを示す概略的かつ部分的な拡大図である。
図1B及び
図1Cを参照する。銀層130は、第1の配線T1及び第2の配線T2に積層されて接触する。銀層130は、第1の側面131と、第2の側面133とを有する。第1の側面131は、可視領域VAに対向しており、第1の配線T1のリードアウト部T11上に配置される。第2の側面133は、可視領域VAに対して反対側に位置しており、第2の配線T2上に配置される。タッチセンサ100を製造するために実施される本開示の1回のマスクエッチング処理により(詳細については、以降の段落を参照されたい)、銀層130に特定の形状を形成することができる。具体的は、銀層130の第1の側面131は、連続して延在する縁部の粗さSE1を有する。また、銀層130の第2の側面133も、連続して延在する縁部の粗さSE2を有する。銀層130の第1の側面131の縁部の粗さSE1の大きさ(例えば、幅W
SE1)は、銀層130の第2の側面133の縁部の粗さSE2の大きさ(例えば、幅W
SE2)よりも大きい。さらに、本開示で使用する用語「縁部の粗さ」は、縁部が不均一で凹凸を有することを意味する用語「鋸歯状の縁部」とし得ることに留意すべきである。換言すると、縁部の粗さは、任意の数の凹部及び凸部を含み得る。各凹部及び各凸部の輪郭形状は、本開示を限定するものではなく、規則的又は不規則なものである。用語「縁部の粗さ」は、用語「鋸歯状の縁部」とし得るが、縁部の粗さは、必ずしも鋸歯の鋭い形状を意味するものではない。なお、タッチセンサ100を1つの側から見た場合(換言すると、
図1Bの視点から見た場合)、縁部の粗さSE1,SE2の具体的な位置は、銀層130の上面132と外側壁136との折り返し点Cに位置することに留意すべきである。
【0024】
銀層130の第2の側面133における縁部の粗さSE2の幅W
SE2を測定する方法についてさらに補足する。
図1C及び
図2を参照する。
図2は、本開示のいくつかの実施形態に係る縁部の粗さの幅を測定する方法を示す概略図である。
図2には、一例として長方形のタッチセンサ100が示されている。
図2のタッチセンサ100の電極部Eは、帯状の電極であり、第1の方向D1に延在し、かつ、第2の方向D2に間隔を空けて配置される。銀層130の第2の側面133における縁部の粗さSE2の幅W
SE2は、接地線GTの銀層130を具体的に測定することによって得ることができる。測定方法は、以下の工程を含み得る。工程S1では、接地線GTの長さL2を、4点O1~O4で長さが等しい5つのセクションに分割する。ここでは、接地線GTは、タッチセンサ100の1つの側に配置されており、第2の方向D2に延在する。工程S2では、点O1を、オリンパスの光学顕微鏡の観測範囲R1(観測範囲R1が対物レンズの10倍、接眼レンズの10倍)の中心点とする。次いで、第2の方向D2に延びる第1の測定線M1が、縁部の粗さSE2の最も凹んだ部分の最も凹んだ点P1に接するように調整する。そして、第2の方向D2に同様に延びる第2の測定線M2が、縁部の粗さSE2の最も出っ張った部分の最も出っ張った点P2に接するように調整する(明確に理解するために、
図1Cを参照されたい)。工程S3では、第1の測定線M1と第2の測定線M2との垂直距離を測定し、観測範囲R1における縁部の粗さSE2の幅を得る。工程S4では、点O2~点O4を、それぞれ同じオリンパスの光学顕微鏡の観測範囲R2~R4(観測範囲R2~R4が対物レンズの10倍、接眼レンズの10倍)の中心点とし、工程S2~S3を繰り返して、観測範囲R2~R4における縁部の粗さSE2の幅をそれぞれ得る。工程S5では、先行する工程で得られた観測範囲R1~R4における縁部の粗さSE2の幅(計4個)の平均値を算出し、その平均値を、銀層130の第2の側面133における縁部の粗さSE2の幅W
SE2とする。工程S1~S5を実施することにより、銀層130の第2の側面133における縁部の粗さSE2の幅W
SE2が得られる。なお、
図1Cでは、観測範囲R1における第1の測定線M1と第2の測定線M2との垂直距離を、直接的に縁部の粗さSE2の幅W
SE2としているが、縁部の粗さSE2の幅W
SE2は、実際には観測範囲R1~R4で得られた縁部の粗さSE2の幅の平均値であることに留意すべきである。
【0025】
銀層130の第1の側面131における縁部の粗さSE1の幅W
SE1を測定する方法についてさらに補足する。
図1C及び
図2を再び参照する。銀層130の第1の側面131における縁部の粗さSE1の幅W
SE1の測定方法は、以下の工程を含み得る。工程S1’では、第2の方向D2に間隔を空けて配置された全ての電極部Eの全長L1を、4点O1’~O4’で長さの等しいセクションに分割する。ここで、全長L1は、第2の方向D2に延在する。工程S2では、点O1’を、オリンパスの光学顕微鏡の観測範囲R1’(観測範囲R1’が対物レンズの10倍、接眼レンズの10倍)の中心点とし、縁部の粗さSE1について上記工程S2を実施する。工程S3’では、上記工程S3を実施する。ここでは、工程S3の詳細は割愛する。工程S4’では、点O2’~O4’を、それぞれ同じオリンパスの光学顕微鏡の観測範囲R2’~R4’(観測範囲R2’~R4’が対物レンズの10倍、接眼レンズの10倍)の中心点とし、縁部の粗さSE1について、上記工程S4を実施する。工程S5’では、先行する工程で得られた観測範囲R1’~R4’における縁部の粗さSE1の幅(計4個)の平均値を算出し、銀層130の第1の側面131における縁部の粗さSE1の幅W
SE1とする。工程S1’~工程S5’を実施することにより、銀層130の第1の側面131における縁部の粗さSE1の幅W
SE1を求めることができる。なお、
図1Cでは、観測範囲R1’における第1の測定線M1と第2の測定線M2との間の垂直距離が、直接的に縁部の粗さSE1の幅W
SE1とされているが、縁部の粗さSE1の幅W
SE1は、実際には観測範囲R1’~R4’において得られた縁部の粗さSE1の幅の平均値であることに留意すべきである。
【0026】
図1B及び
図1Cを参照する。いくつかの実施形態では、銀層130の第1の側面131の縁部の粗さSE1の幅W
SE1を、10μm以上かつ50μm以下の範囲内とし得る。また、銀層130の第2の側面133の縁部の粗さSE2の幅W
SE2を、0.01μm以上かつ5μm以下の範囲内とし得る。本開示では、マスクエッチングを1回実施するため、第1の配線T1のリードアウト部T11に配置される銀層130の第1の側面131がエッチングされないように制御することにより、銀層130の下に位置するリードアウト部T11が同時にエッチングされるのを防ぐことができる。その結果、電極部Eとリード部T12との電気的接続が遮断されるのを防止できる。したがって、銀層130のスクリーン印刷処理によって生じた縁部の粗さSE1は、銀層130の第1の側面131に残る。換言すると、銀層130の第1の側面131以外、第1の配線T1及び第2の配線T2における銀層130の他の側面をエッチングしてトリミングすることができ、銀層130、第1の配線T1及び第2の配線T2が、整列した側壁を有することができる。したがって、銀層130の第2の側面133を含む側面は、縁部の粗さが比較的小さくなる。具体的には、第1の配線T1と、第1の配線T1に配置された銀層130に関し、銀層130は、(第1の側面131と比較して)可視領域VAから相対的に離れた、リードアウト部T11上の第3の側面135と、第1の側面131及び第3の側面135を接続する2つの第4の側面137とを有する。リードアウト部T11、銀層130の第3の側面135、及び銀層130の2つの第4の側面137は、整列した側壁134を有する。また、リード部T12と、リード部T12に積層されて接触する銀層130も、整列した側壁134を有する。第2の配線T2と、第2の配線T2に配置された銀層130に関し、銀層130は、(第2の側面133と比べて)可視領域VAから相対的に離れた、第2の配線T2上の第5の側面139を有する。第2の配線T2及び銀層130の第5の側面139は、整列した側壁134を有する。なお、本開示では、まず、金属ナノワイヤ層120を形成する材料層が、周辺領域PAの全面に対応して形成され、次に、銀層130を形成する材料層が、周辺領域PAの全面に対応して形成され、そして、マスクエッチング処理が1回実施され、上述した材料層にパターンが形成され、周辺配線PTがさらに形成される。したがって、リードアウト部T11、銀層130の第3の側面135、及びリードアウト部T11上の銀層130の第4の側面137は、整列した側壁134を有することができる。そのため、銀層130とリードアウト部T11の重複構造のための重複を考慮する必要がなく、タッチセンサ100の狭いベゼル要件を満たすのに有利である。
【0027】
補足として、本開示の1回のマスクエッチング処理とレーザ処理との相違点について説明する。レーザ処理は、例えば、基板110の主要面111に垂直な方向からレーザ光線を照射するものである。レーザ光線は、第1の方向D1又は第2の方向D2に直線的に走査及びエッチングを行う。したがって、レーザ処理は、銀層130の第2の側面133の縁部の粗さSE2をエッチング及びトリミングできないことがある。例えば、トリミングのためにレーザ光線の位置を、縁部の粗さSE2の最も出っ張った部分に合わせると、エッチングの対象の銀層130は、相対的に凹んだ縁部の粗さSE2の凹部に存在しないため、レーザ光線が基板110に損傷を与える可能性がある。したがって、パターンを形成するためにレーザ処理を行うと、銀層130の第2の側面133の縁部の粗さSE2をトリミングできず、その結果、スクリーン印刷処理によって縁部の粗さSE2(例えば、10μm以上かつ50μm以下)の相対的に大きな幅WSE2が残る。
【0028】
また、本開示の1回のマスクエッチング処理により、周辺領域PAに対応する並列に配置された複数の周辺配線PTの線幅W1を、6μm以上かつ10μm以下の範囲内とし得る。また、隣接する2つの周辺配線PTの線間隔Dを、6μm以上かつ10μm以下の範囲内とし得る。当業者であれば、線幅W1及び線間隔Dは、タッチセンサ100の同じ側にあり、かつ、同じ方向(例えば、第2の方向D2)に並列して延在する周辺配線PTの線幅W1及び線間隔Dとし得ることが理解できる。本開示の二層構造の周辺配線PTの線幅W1及び線間隔Dは、タッチセンサ100の周辺領域PA(例えば、周辺領域PAの幅W)の大きさに一定の影響を与える特定の範囲内とすることができる。周辺領域PAの大きさが、端末製品のベゼルの大きさにさらに影響を与えるため、本開示のタッチセンサ100は、電気的仕様の要件及びベゼルの狭い製品の要件を満たすことができる。また、いくつかの実施形態において、第2の配線T2が接地線GTとして機能するように設計されている場合、接地線GTのシールド効果(帯電防止及び電磁波による妨害の防止)を高めるため、必要に応じて、接地線GTの線幅W1を、信号線STの線幅W1よりも大きくすることができる。しかしながら、このような調整は、本開示のタッチセンサ100の周辺領域PAがベゼルの狭い製品の要件を満たすことを妨げるものではない。
【0029】
いくつかの実施形態では、タッチセンサ100は、基板110の主要面111に配置され、かつ、金属ナノワイヤ層120及び銀層130の全体を覆う保護層140をさらに含み得る。保護層140は、絶縁性樹脂、有機材料又は無機材料を含み得る。例えば、保護層140は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリスチレンスルホン酸、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、セラミック、又はこれらの組み合わせ等の材料を含み得る。
【0030】
説明した構成部品の接続関係及び機能は、以下の説明では繰り返さないことに留意されたい。本開示のいくつかの実施形態に係るタッチセンサ100の製造方法を示すフローチャートを示す
図3を参照する。以下の説明では、
図4A~
図4Iに示す工程は、タッチセンサ100の製造方法を説明するための例である。
図4A~
図4Iは、
図1Bのタッチセンサ100の製造方法を、異なる工程で示す概略的な断面図である。タッチセンサ100の製造方法は、工程S10~S18を含む。また、工程S10~S18は、順次実施してもよい。
【0031】
まず、
図4Aを参照する。工程S10では、金属ナノワイヤ材料層220が、基板110の主要面111に形成される。ここで、金属ナノワイヤ材料層220は、可視領域VA及び周辺領域PAに対応する。具体的には、スクリーン印刷、ノズルコーティング、又はローラーコーティング等の処理を用いて、少なくとも金属ナノワイヤ及び基質を含む分散体(ディスパージョン)又はスラリーを、基板110の主要面111に形成することができる。次いで、分散体又はスラリーを硬化又は乾燥して、基板110の主要面111に配置された金属ナノワイヤ材料層220を形成する。いくつかの実施形態では、ロールツーロール処理を実施し、連続的に供給される基板110の主要面111に分散液又はスラリーをコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、金属ナノワイヤ材料層220が形成される前に、基板110の主要面111に前処理を施すことができる。例えば、表面改良処理を行い、又は、基板110の主要面111に接着剤層や樹脂層を追加で塗布して、基板110と他の層との接着を強化することができる。
【0032】
次に、
図4Bを参照する。工程S11では、スクリーン印刷処理が実施され、銀材料層230が金属ナノワイヤ材料層220に形成される。ここで、銀材料層230は、周辺領域PAに対応する。具体的には、スクリーン印刷処理により、銀ペースト材料が基板110に形成され得る。ここで、銀材料層230は、周辺領域PAに対応し、周辺領域PAに対応する金属ナノワイヤ材料層220を覆う。次いで、銀ペースト材料が硬化又は乾燥され、銀材料層230が形成される。スクリーンは、その全ての面に複数のメッシュ孔を有する。一般的に使用されるスクリーンは、例えば、2つの交角を有するスクリーンであるため、スクリーンのメッシュ孔の配置により、鋸歯状、凹部、凸部を含む非直線的な縁部が、スクリーン印刷処理の施された層全体の縁部に形成される。その結果、形成された銀材料層230は、その縁部に、縁部の粗さが生じ得る(ここで、縁部とは、銀材料層230の上面231と側壁233の間の折り返し点Cを意味する)。
図4Bに示すように、縁部の粗さは、可視領域VAに対向する銀材料層230全体の縁部に形成される。また、縁部の粗さは、可視領域VAに対して反対側に位置し、かつ、基板110の主要面111の縁部に隣接する銀材料層230全体の縁部にも形成される。当業者であれば、スクリーン印刷によって形成される縁部の粗さの大きさ(例えば、幅)に影響を与える要因には、例えば、スクリーンメッシュの数、スクリーンとスキージとの距離、スクリーン印刷のスキージ圧力、スクリーン印刷のスキージ速度、スクリーンと印刷対象の表面との距離、銀ペースト材料のレベル特性(銀ペースト材料のレベル特性は、銀ペースト材料の粘度に影響され得る)等のパラメータが含まれることを理解できるであろう。いくつかの実施形態では、スクリーンメッシュの数は、640個であり、スクリーンとスキージとの距離は3mmであり、スクリーン印刷のスキージ速度は50m/minであり、スクリーンと印刷対象の表面との距離は2.5mmであり、銀ペースト材料の粘度は1000cp以上かつ5000cp以下である。この点に関し、本開示のスクリーン印刷処理によって形成される銀材料層230の縁部の粗さの幅は、10μm以上かつ50μm以下の範囲に調整できる。
【0033】
異なる種類の銀ペースト材料をさらに用いて、本開示の銀材料層230を形成してもよい。具体的には、第1の種類の銀ペースト材料は、溶媒、アクリル材料(例えば、ポリ(メタクリル酸メチル))、及び銀粒子を含み得る。第2の種類の銀ペースト材料は、アルデヒド官能基(例えば、アセトアルデヒドのアルデヒド官能基)と銀アンモニア錯体との反応を含む銀ミラー反応によって銀元素を生成することができる。この反応式は、以下の通りである。
【数1】
【0034】
いくつかの実施形態では、1回のスクリーン印刷処理によって形成された銀材料層230の厚さHに関し、第1の種類の銀ペースト材料を用いて形成された銀材料層230の厚さHは、約1μm~1.5μmとし得る。また、第2の種類の銀ペースト材料を用いて形成された銀材料層230の厚さHは、500nm~600nmの範囲とし得る。
【0035】
次に、
図4Cを参照する。工程S12では、フォトレジスト層240が基板110の主要面111に形成され、金属ナノワイヤ材料層220及び銀材料層230を完全に覆う。次に、
図4Dを参照する。工程S13では、露光処理及び現像処理が実施され、その結果、フォトレジスト層240にパターンが形成される。金属ナノワイヤ材料層220及び銀材料層230に形成される所望のパターンは、1回の露光処理及び現像処理によって、単一のフォトレジスト層240に一度に形成され、その結果、製造の工程及びコストを低減する。いくつかの実施形態では、フォトレジスト層240は、可視領域VAに対応する電極部のパターンPEを画定し、また、周辺領域PAに対応する第1の配線パターンPT1及び第2の配線パターンPT2を画定する、ここで、第1の配線パターンPT1は、第2の配線パターンPT2から離され、絶縁される。第1の配線パターンPT1は、電極部のパターンPEに隣接して接続されたリードアウト部のパターンPT11と、リードアウト部のパターンPT11に接続されたリード部のパターンPT12とを含む。第2の配線パターンPT2は、可視領域VAから相対的に離れた第1の配線パターンPT1の1つの側に配置され、主要面111の縁部112に隣接する。パターンの形成されたフォトレジスト層240の電極部のパターンPE、第1の配線パターンPT1及び第2の配線パターンPT2は、後続のエッチング処理で金属ナノワイヤ材料層220及び銀材料層230に転写される。そして、フォトレジスト層240が除去されると、電極部E、第1の配線T1及び第2の配線T2を含む金属ナノワイヤ層120と、第1の配線T1及び第2の配線T2に積層されて接触する銀層130が形成される(具体的な構成について、
図1Bを参照されたい)。
【0036】
次いで、
図4Eを参照する。工程S14では、1回目のエッチング処理が実施され、周辺領域PAに対応する銀材料層230に所望のパターンが形成される。具体的には、第1の配線パターンPT1及び第2の配線パターンPT2を用いて、銀材料層230にパターンが形成され、等角のパターンと共に、第1の配線パターンPT1のリード部のパターンPT12のパターンと、第2の配線パターンPT2のパターンが形成される。なお、上述した工程S13(
図4D)では、パターンの形成されたフォトレジスト層240は、その電極部のパターンPEとリードアウト部のパターンPT11とを連続して覆う面を有する。換言すると、パターンの形成されたフォトレジスト層240は、その電極部のパターンPEと、そのリードアウト部のパターンPT11とを連続して延在する。そのため、可視領域VAに対向し、かつ、非エッチング領域に位置する銀材料層230にスクリーン印刷処理によって形成される縁部の粗さは、フォトレジスト層240により覆われるため、1回目のエッチング処理でエッチングやトリミングがされない。そのため、可視領域VAに対向し、かつ、非エッチング領域に位置する銀材料層230の縁部の粗さの幅は、10μm以上かつ50μm以下の範囲に維持されることを理解すべきである。一方、上述した工程S13(
図4D)では、可視領域VAに対して反対側に位置し、非エッチング領域に位置する銀材料層230に形成された縁部の粗さは、フォトレジスト層240によって覆われないため、可視領域VAに対して反対側に位置する銀材料層230の縁部の粗さは、1回目のエッチング処理でエッチング及びトリミングされ得る。そのため、可視領域VAに対して反対側に位置する銀材料層230の縁部の粗さの幅は、0.01μm以上かつ5μm以下の範囲に低減できる。いくつかの実施形態では、銀材料層230をエッチングするためのエッチング液の主成分は、例えば、硝酸及び硝酸鉄を含み得る。これらは、銀材料層230の下層の金属ナノワイヤ材料層220をエッチングすることなく、銀材料層230を選択的にエッチングできる。いくつかの実施形態では、銀材料層230のエッチング深さは、例えば、エッチング時間を調整することによって調整できる。
【0037】
なお、
図4Eに示すように、銀材料層230をエッチングした後、通常、エッチング領域Sに樹脂等の残留物250が残る。この残留物250は、金属ナノワイヤ材料層220のエッチング精度に影響を与え、さらに、要件を満たすために周辺配線PTの線幅W1及び線間隔Dを小さくすることが困難な場合がある。この点に関し、工程S15について
図4Fを参照する。いくつかの実施形態では、化学洗浄処理が実施され、パターンの形成された銀材料層230が、第1の配線パターンPT1及び第2の配線パターンPT2を用いて、前処理される。具体的には、エッチング領域Sの残留物250が、前処理される。いくつかの実施形態では、化学洗浄処理中に、銀材料層230の樹脂を除去可能な化学洗浄剤を用いて、気温が約45°C、シャワーヘッドの圧力が約0.2MPaで、約40秒間、表面処理が行われ、その結果、エッチング領域Sの残留物250が除去される。
【0038】
図4Fに示すように、化学洗浄処理の後、エッチング領域Sの残留物250は、ほぼ除去できる。しかしながら、化学洗浄処理は、化学反応によって残留物250を除去するため、化学平衡に達した後、残留物250を除去できず、エッチング領域Sの残留物250を完全に除去できない場合がある。例えば、工程S11において第1の種類の銀ペースト材料を用いて銀材料層230を形成する場合、厚さ約1.5μmの銀材料層230に対して、工程S14の1回目のエッチング処理(
図4E)を行った後、エッチング領域Sに残存する残留物250の厚さは約300nmとなることがある。また、工程S15の化学洗浄処理(
図4F)を行った後、エッチング領域Sに残存する残留物250の厚さは約50nmとなることがある。
【0039】
さらに、金属ナノワイヤ材料層220のエッチング精度をさらに向上させるために、残留物250を完全に除去する必要がある場合、工程S16についての
図4Gを参照する。いくつかの実施形態では、プラズマ処理工程が実施され、その結果、パターンの形成された銀材料層230が、第1の配線パターンPT1及び第2の配線パターンPT2を用いて、さらに処理される。具体的には、エッチング領域Sの残留物250がさらに処理される。プラズマ処理は非選択的であるため、処理環境に曝された全ての表面は、物理的に除去され、その結果、残留物250を完全に除去できる。いくつかの実施形態では、プラズマ処理は、銀材料層230に対して約4.5分間、実施される。ここで、プラズマ処理は、最小真空度が約20ミリトル、動作真空度が約200ミリトル、出力が約8kW、ヘリウム流量が1000sccm(毎分標準立方センチメートル)、酸素流量が1000sccm、アルゴンプラズマを用いて、約4.5分間、銀材料層230に対して実施される。いくつかの実施形態では、プラズマ処理は、金属ナノワイヤ材料層220の上層の基質をさらに除去して、後続の2回目のエッチング処理を容易することができる。
【0040】
補足として、工程S15の化学洗浄処理及び工程S16のプラズマ処理は、選択的に実施でき、又は、エッチング精度の実際の要件に応じて調整することができる。
【0041】
次に、
図4Hを参照する。工程S17では2回目のエッチング処理が実施され、周辺領域PA及び可視領域VAに対応する金属ナノワイヤ材料層220にパターンが形成される。詳細には、2回目のエッチング処理で使用されるフォトレジストと1回目のエッチング処理で使用されるフォトレジストは、同じフォトレジスト層240であるため、2回目のエッチング処理によって、周辺領域PAに対応する金属ナノワイヤ材料層220に形成されるパターンは、周辺領域PAに対応するパターンの形成された銀材料層230のパターンと同じになる。また、他の予想されるパターン(例えば、電極部のパターンPE)は、2回目のエッチング処理により、可視領域VAに対応する金属ナノワイヤ材料層220に形成される。全体として、フォトレジスト層240の電極部のパターンPE、第1の配線パターンPT1及び第2の配線パターンPT2は、2回目のエッチング処理で金属ナノワイヤ材料層220に転写される。その結果、金属ナノワイヤ材料層220にパターンが形成され、可視領域VAに対応する電極部Eと、周辺領域PAに対応する第1の配線T1と、第1の配線T1から絶縁された、周辺領域PAに対応する第2の配線T2が形成される。ここで、第1の配線T1は、電極部Eに隣接するリードアウト部T11と、リードアウト部T11に接続されたリード部T12とを含む、また、第2の配線T2は、可視領域VAから相対的に離れた第1の配線T1の1つの側に配置され、基板110の主要面111の縁部112に隣接して平行になる(電極部E、第1の配線T1、第2の配線T2の具体的な位置は、
図1Bを参照されたい)。いくつかの実施形態では、金属ナノワイヤ材料層220をエッチングするためのエッチング溶液の主成分は、例えば、塩化第2鉄及び塩酸を含み得る。いくつかの実施形態では、金属ナノワイヤ材料層220のエッチング深さは、例えば、エッチング時間を調整することによって調整できる。
【0042】
図4I及び
図1Cを参照する。工程S18では、フォトレジスト層240が除去される。銀材料層230に関し、詳細には、フォトレジスト層240を除去した後、パターンの形成された銀材料層230によって形成された銀層130を見ることができる。ここで、銀層130は、可視領域VAに対向する第1の側面131と、可視領域VAに対して反対側に位置する第2の側面133とを有する。フォトレジスト層240の配置と、1回目のエッチング処理の設計により、銀層130の第1の側面131及び第2の側面133は、それぞれ縁部の粗さSE1及び縁部の粗さSE2を有する。第1の側面131の縁部の粗さSE1の幅W
SE1は、第2の側面133の縁部の粗さSE2の幅W
SE2よりも大きい。
【0043】
金属ナノワイヤ材料層220に関し、フォトレジスト層240を除去した後、パターンの形成された金属ナノワイヤ材料層220によって形成された金属ナノワイヤ層120を見ることができる。ここで、金属ナノワイヤ層120の電極部Eは、少なくともタッチセンサ100の接触電極ETと、金属ナノワイヤ層120の第1の配線T1及び第2の配線T2を構成し得る。また、第1の配線T1及び第2の配線T2に積層されて接触する銀層130は、少なくともタッチセンサ100の周辺配線PTを構成し得る。
【0044】
上記工程S13~S18を纏めると、2回のエッチング処理(換言すると、1回目のエッチング処理と2回目のエッチング処理)の間において、化学洗浄処理及びプラズマ処理を選択的に実施して、エッチング精度を向上させることができる。この全体の処理は、「現像」、「(銀材料層230の)1回目のエッチング」、「化学洗浄」、「プラズマ処理」、「(金属ナノワイヤ材料層220の)2回目のエッチング」、「ストリッピング」として参照され、これらはさらに、略して「DECEPS処理」として称される。
【0045】
上述した本開示の実施形態では、本開示のタッチセンサは、電極部、第1の配線及び第2の配線を含む金属ナノワイヤ層と、第1の配線及び第2の配線に積層されて接触する銀層とを含むように設計される。第2の配線に配置され、かつ、可視領域に対して反対側に位置する銀層の側面の縁部の粗さの大きさ(例えば、幅)は、第1の配線に配置され、かつ、可視領域に対向する銀層の側面の縁部の粗さの大きさよりも小さいため、タッチセンサの最も外側の周辺配線(例えば、接地線)は、より滑らかな縁部が形成される。換言すると、縁部の粗さを無視できる。これは、タッチセンサの狭いベゼルの要件を満たすのに有利である。また、電極部及び第1の配線を一体的に形成して、接触電極と周辺配線との電気的接続を直接形成することにより、タッチセンサのための追加の重複構造を設計する必要がない。これにより、周辺領域に対応する重複構造が占める領域を省略でき、重複を考慮する必要がないため、タッチセンサの狭いベゼルを実現するのに有利である。さらに、本開示のタッチセンサの積層構造設計に基づき、タッチセンサの製造時において、パターンの形成されたフォトレジスト層は、その電極部のパターンと、そのリードアウト部のパターンを連続して延在するように設計される。その結果、1回の露光処理及び現像処理により、接触電極及び周辺配線を一度に形成できるため(換言すると、単一のフォトレジスト層のみが使用されるため)、製造処理の工程及び費用を低減できる。
【0046】
本開示について、その特定の実施形態を参照して非常に詳細に説明したが、他の実施形態も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲は、本明細書に記載された実施形態の説明に限定すべきではない。
【0047】
当業者であれば、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、本開示の構造に様々な修正及び変更を加え得ることは明らかであろう。この点に関し、本開示は、以下の特許請求の範囲内である限り、本開示の修正例及び変形例を含むものである。
【符号の説明】
【0048】
100 タッチセンサ
110 基板
111 主要面
112 縁部
120 金属ナノワイヤ層
130 銀層
131 第1の側面
132 上面
133 第2の側面
134 側壁
135 第3の側面
136 外側壁
137 第4の側面
139 第5の側面
140 保護層
220 金属ナノワイヤ材料層
230 銀材料層
231 上面
233 側壁
240 フォトレジスト層
250 残留物
A-A’ 断面線
B 境界
C 折り返し点
D 線間隔
D1 第1の方向
D2 第2の方向
E 電極部
ET 接触電極
GT 接地線
H 厚さ
L 電極線
L1 電極部の全長
L2 接地線の長さ
M1 第1の測定線
M2 第2の測定線
PA 周辺領域
PE 電極部のパターン
PT 周辺配線
PT1 第1の配線パターン
PT11 リードアウト部のパターン
PT12 リード部のパターン
PT2 第2の配線パターン
R 領域
R1~R4 観測範囲
R1’~R4’ 観測範囲
S エッチング領域
ST 信号線
T 配線
T1 第1の配線
T11 リードアウト部
T12 リード部
T2 第2の配線
TS 上面
VA 可視領域