(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162105
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】防熱メカニズムを有するバッテリデバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6568 20140101AFI20231031BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20231031BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20231031BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20231031BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20231031BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/613
H01M10/643
H01M10/6556
H01M10/625
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003238
(22)【出願日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】111115896
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】509343390
【氏名又は名称】新盛力科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】張古博
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC01
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】本発明は、複数のセル及び少なくとも1つの放熱容器含む防熱メカニズムを有するバッテリデバイスを提供する。
【解決手段】放熱容器は、フレーム及び2枚のフィルムを含む。また、フレームは少なくとも1つの穿孔部を含む。フィルムは、フレームに接続されてフレームの穿孔部を覆うことで、穿孔部を密閉空間とする。密閉空間内には液体が配置される。液体は水又は水溶液である。セルの底部は放熱容器のフィルムと隣接しており、セルの温度が過剰に高くなったときに放熱容器のフィルムが破れる。液体は、放熱容器から噴出してセルに接触することでセルの温度を低下させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防熱メカニズムを有するバッテリデバイスにおいて、
2つの底面及び1つの側面を含み、前記側面が2つの底面の間に位置する複数のセルと、
前記複数のセルと隣接する少なくとも1つの放熱容器、を含み、前記放熱容器は、
少なくとも1つの穿孔部又は凹陥部を含むフレーム、
前記フレームに接続されて前記穿孔部又は前記凹陥部を覆い、前記フレームとの間に密閉空間を形成するものであって、前記複数のセルの少なくとも1つの前記底面と隣接する少なくとも1枚のフィルム、及び
前記放熱容器の前記密閉空間内に配置されるものであって、水又は水溶液である液体、を含むバッテリデバイス。
【請求項2】
前記フレームは、第1の面、第2の面及び側面を含み、前記側面は前記第1の面と前記第2の面を接続し、前記フィルムは2枚であり、それぞれ前記第1の面及び前記第2の面に接続される請求項1に記載の防熱メカニズムを有するバッテリデバイス。
【請求項3】
前記フレームに接続されて、前記フレームと前記フィルムの間の前記密閉空間を複数の収容空間に分割する少なくとも1つの接続ホルダを含む請求項1に記載の防熱メカニズムを有するバッテリデバイス。
【請求項4】
前記接続ホルダには凹部又は接続孔が設置され、前記凹部又は前記接続孔によって、前記接続ホルダの両側に位置する前記収容空間を接続する請求項3に記載の防熱メカニズムを有するバッテリデバイス。
【請求項5】
隣接する前記セルの前記側面の間に位置する少なくとも1つの熱伝導ユニットを含み、前記熱伝導ユニットは前記接続ホルダに面しており、前記セルは前記収容空間に面している請求項4に記載の防熱メカニズムを有するバッテリデバイス。
【請求項6】
前記複数のセルを直列又は並列に接続するとともに、前記セルの前記底面と前記放熱容器の前記フィルムの間に位置する複数の導電シートを含む請求項1に記載の防熱メカニズムを有するバッテリデバイス。
【請求項7】
前記フィルムは、少なくとも1つの金属層及び少なくとも1つのプラスチック層を含む請求項1に記載の防熱メカニズムを有するバッテリデバイス。
【請求項8】
防熱メカニズムを有するバッテリデバイスにおいて、
2つの底面及び1つの側面を含み、前記側面が2つの底面の間に位置する複数のセルと、
前記複数のセルと隣接する少なくとも1つの放熱容器、を含み、前記放熱容器は、
少なくとも1つの穿孔部を含むフレーム、
前記フレームに接続されて前記穿孔部を覆い、前記フレームとの間に密閉空間を形成するものであって、前記複数のセルの前記側面に接触する2枚のフィルム、及び
前記放熱容器の前記密閉空間内に配置されるものであって、水又は水溶液である液体、を含むバッテリデバイス。
【請求項9】
前記フレームは、第1の面、第2の面及び側面を含み、前記側面は前記第1の面と前記第2の面を接続し、前記2枚のフィルムはそれぞれ前記第1の面及び前記第2の面に接続される請求項8に記載の防熱メカニズムを有するバッテリデバイス。
【請求項10】
前記フレームの前記第1の面及び前記第2の面に設置される複数の突出部を含み、隣接する前記突出部の間に凹陥部が存在し、一方の前記フィルムは、前記第1の面及び前記第1の面に位置する前記突出部に接続され、他方の前記フィルムは、前記第2の面及び前記第2の面に位置する前記突出部に接続される請求項9に記載の防熱メカニズムを有するバッテリデバイス。
【請求項11】
前記セルは前記放熱容器の凹陥部内に位置し、前記放熱容器の前記突出部は、隣接する前記セルの間に位置する請求項10に記載の防熱メカニズムを有するバッテリデバイス。
【請求項12】
前記フィルムは、少なくとも1つの金属層及び少なくとも1つのプラスチック層を含む請求項8に記載の防熱メカニズムを有するバッテリデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱暴走中のセルの温度を急速に低下可能とし、且つ、熱暴走中のセルがほかのセルに熱暴走を発生させるとの事態を効果的に回避可能な防熱メカニズムを有するバッテリデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
充電式バッテリ(Rechargeable battery)とは、一般的に、ニッケル・水素電池、ニッケル・カドミウム電池、リチウムイオン電池等を主に含む再充電して繰り返し使用可能なバッテリの総称であり、電子製品、家電製品及び移動手段に数多く応用されている。
【0003】
また、工業の発展及び環境保護意識の高まりに伴い、大気汚染や地球温暖化の問題が次第に重視されるようになっている。そのため、現在、世界各国では、移動手段による都市部の大気汚染を減少させるべく、関連の法規を徐々に整備することで、電気自動車産業の普及び研究開発を進め、一定期間後はガソリン車の販売を禁止することを検討している。
【0004】
充電式バッテリは、電気自動車産業を発展させる上での重要な技術の一つであり、如何にして充電式バッテリの充電量を増加させ、充電式バッテリの充電時間を短縮し、且つ、充電式バッテリの安全性を向上させるかが、いずれも電気自動車産業を普及及び発展させるための要点となっている。リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、出力電力が大きく、メモリー効果がなく、低自己放電であり、動作温度範囲が広く、且つ充放電速度が速い等の利点を有するため、電気自動車に主に使用される充電式バッテリとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的には、複数のセル(Cell)を接続してバッテリ群を形成し、各セルの直列及び/又は並列を調整することで、バッテリ群から製品が必要とする電圧を出力可能とする。しかし、バッテリ群の1つのセルが故障して短絡した場合には、ほかの正常なセルが短絡したセルを大電流で充電することで、短絡したセルの温度が異常に上昇してしまう。そして、温度がセル内部のセパレータの耐熱温度を上回ると、セパレータが溶解してセルの正極及び負極材料を短絡させる結果、セルの溶融又は爆発が誘発される。
【0006】
故障したセルから発生した高温又は噴出した電解液は、ほかのセル又は導電シートに伝達されて、導電シート及び接続されるセルの温度を異常に上昇させるとともに、ほかの正常なセルを破損させる恐れがある。また、その結果、バッテリ群に熱暴走が発生してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した従来技術が直面する課題を解決するために、本発明は、複数のセル及び少なくとも1つの放熱容器を主に含む防熱メカニズムを有するバッテリデバイスを提供する。放熱容器は、フレーム及び少なくとも1枚のフィルムを含む。また、フレームは、穿孔部又は凹陥部を含む。フィルムは、フレームに接続されて穿孔部又は凹陥部を覆うことで、フレームとフィルムの間に密閉空間を形成する。
【0008】
セルの底部又は正極は放熱容器のフィルムに面している。例えば、セルの温度が摂氏160度~200度を超えるというように、セルの温度が過剰に高くなるか、熱暴走が発生した場合には、放熱容器のフィルムが破れる。密閉空間内には液体が配置されている。例えば、液体は水又は水溶液とすればよい。液体は、破れたフィルムから流出し、温度が過剰に高くなるか熱暴走したセルに散布される。これにより、セルの温度が低下するとともに、ほかの正常なセルに熱暴走が発生するとの連鎖反応が防止される。
【0009】
本発明において、放熱容器の密閉空間内に配置される液体の主成分は水である。水はかなり高い熱安定性及び比熱を有しているため、放熱容器から噴出する水又は水溶液によって、熱暴走中のセルの温度を効果的に低下させられる。また、水の気化熱は40.8kJ/molであり、2266kJ/kgに相当する。これは、水が0℃から100℃まで加熱される際に必要なエネルギーのおよそ5.4倍である。そのため、水は、熱暴走中のセルによって沸点まで加熱され、液状から気体状に蒸発する際に、熱暴走中のセルが発生させる熱をより大量に吸収して、熱暴走中のセルの温度を大幅に低下させることが可能である。
【0010】
また、放熱容器のフィルムが破れる際には、一部の水が容器から噴出し、一部の水が放熱容器内に残留する。放熱容器から噴出した液体又は気化した水は、熱暴走中のセルの温度を直接的且つ急速に低下させる。一方、放熱容器内に残留した水は、熱暴走中のセルの温度を吸収し続ける。そして、放熱容器内に残留した水の温度が沸点を超えると、気化されて水蒸気となり、熱暴走中のセルから大量の熱を吸収する。これにより、放熱容器内に残留した水がほぼなくなるまで、熱暴走中のセルの温度を低下させ続ける。
【0011】
本発明の目的は、検出器や複雑な制御回路を別途設置することなくセルの温度を測定し、セルに熱暴走が発生したか否かを判断する防熱メカニズムを有するバッテリデバイスを提供することである。具体的に、本発明は、接着剤又は溶接(例えば、ろう付け(welding)又ははんだ付け(soldering))によってフィルムをフレームに設置することで、フィルムとフレームの間に密閉空間を形成するとともに、密閉空間内に水を配置可能である。従って、本発明は、低価格で安全且つ安定的な防熱メカニズムを有するバッテリデバイスを提供可能であり、バッテリ装置の設置コストを減少させるとともに、バッテリ装置の熱暴走を防止するとの目的を達成可能である。
【0012】
また、複数の導電シートが、複数のセルを直列又は並列に接続してバッテリモジュールを形成可能である。例えば、充電及び放電といった使用過程において、バッテリモジュールの両側の温度には差が生じる。このとき、一方の側が高温側(hot side)となり、もう一方の側が低温側(cool side)となる。高温側及び低温側のバッテリモジュールは、熱伝導方式で熱を放熱容器に伝達し、放熱容器の両側に温度差を発生させる。すると、温度差によって、放熱容器の密閉空間内の液体に対流が発生し、バッテリモジュールの高温側及び低温側の温度を平衡化するために使用可能となる。
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、防熱メカニズムを有するバッテリデバイスを提供する。当該バッテリデバイスは、2つの底面及び1つの側面を含み、側面が2つの底面の間に位置する複数のセルと、複数のセルと隣接する少なくとも1つの放熱容器、を含む。当該放熱容器は、少なくとも1つの穿孔部又は凹陥部を含むフレーム、フレームに接続されて穿孔部又は凹陥部を覆い、フレームとの間に密閉空間を形成するものであって、複数のセルの少なくとも1つの底面と隣接する少なくとも1枚のフィルム、及び、放熱容器の密閉空間内に配置されるものであって、水又は水溶液である液体、を含む。
【0014】
本発明は、別の防熱メカニズムを有するバッテリデバイスを提供する。当該バッテリデバイスは、2つの底面及び1つの側面を含み、側面が2つの底面の間に位置する複数のセルと、複数のセルと隣接する少なくとも1つの放熱容器、を含む。当該放熱容器は、少なくとも1つの穿孔部を含むフレーム、フレームに接続されて穿孔部を覆い、フレームとの間に密閉空間を形成するものであって、複数のセルの側面に接触する2枚のフィルム、及び、放熱容器の密閉空間内に配置されるものであって、水又は水溶液である液体、を含む。
【0015】
上記の防熱メカニズムを有するバッテリデバイスにおいて、フレームは、第1の面、第2の面及び側面を含み、側面は第1の面と第2の面を接続する。フィルムは2枚であり、それぞれ第1の面及び第2の面に接続される。
【0016】
上記の防熱メカニズムを有するバッテリデバイスは、フレームに接続されて、フレームとフィルムの間の密閉空間を複数の収容空間に分割する少なくとも1つの接続ホルダを含む。
【0017】
上記の防熱メカニズムを有するバッテリデバイスにおいて、接続ホルダには凹部又は接続孔が設置され、凹部又は接続孔によって、接続ホルダの両側に位置する収容空間を接続する。
【0018】
上記の防熱メカニズムを有するバッテリデバイスは、隣接するセルの側面の間に位置する少なくとも1つの熱伝導ユニットを含む。熱伝導ユニットは接続ホルダに面しており、セルは収容空間に面している。
【0019】
上記の防熱メカニズムを有するバッテリデバイスは、複数のセルを直列又は並列に接続するとともに、セルの底面と放熱容器のフィルムの間に位置する複数の導電シートを含む。
【0020】
上記の防熱メカニズムを有するバッテリデバイスにおいて、フィルムは、少なくとも1つの金属層及び少なくとも1つのプラスチック層を含む。
【0021】
上記の防熱メカニズムを有するバッテリデバイスは、フレームの第1の面及び第2の面に設置される複数の突出部を含み、隣接する当該突出部の間に凹陥部が存在する。一方のフィルムは、第1の面及び第1の面に位置する突出部に接続され、他方のフィルムは、第2の面及び第2の面に位置する突出部に接続される。
【0022】
上記の防熱メカニズムを有するバッテリデバイスにおいて、セルは放熱容器の凹陥部内に位置し、放熱容器の突出部は隣接するセルの間に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明における防熱メカニズムを有するバッテリデバイスの一実施例の概略分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明における防熱メカニズムを有するバッテリデバイスの一実施例の側面の概略分解図である。
【
図3】
図3は、本発明における防熱メカニズムを有するバッテリデバイスの放熱容器の一実施例の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明における防熱メカニズムを有するバッテリデバイスの放熱容器の一実施例の立体透視図である。
【
図5】
図5は、本発明における防熱メカニズムを有するバッテリデバイスの別の実施例の概略分解斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明における防熱メカニズムを有するバッテリデバイスの放熱容器の一実施例の概略分解斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明における防熱メカニズムを有するバッテリデバイスの放熱容器の別の実施例の概略分解斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明における防熱メカニズムを有するバッテリデバイスの放熱容器の別の実施例の概略分解斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明における防熱メカニズムを有するバッテリデバイスの別の実施例の概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1及び
図2を参照する。これらは、それぞれ、本発明における防熱メカニズムを有するバッテリデバイスの一実施例の概略分解斜視図及び側面の概略分解図である。また、
図3及び
図4は、それぞれ、本発明における防熱メカニズムを有するバッテリデバイスの放熱容器の一実施例の分解斜視図及び立体透視図である。図示するように、防熱メカニズムを有するバッテリデバイス10は、主に、少なくとも1つの放熱容器11及び複数のセル13を含む。放熱容器11はセル13と隣接しており、例えば、セル13の両端に位置する。
【0025】
図3及び
図4に示すように、放熱容器11は、フレーム111及び2枚のフィルム113を含む。また、フレーム111は穿孔部112を含む。2枚のフィルム113は、フレーム111の2つの表面にそれぞれ設置されて、フレーム111の穿孔部112を覆うことで、フレーム111とフィルム113の間に密閉空間114を形成する。
【0026】
密閉空間114内には液体15が配置される。液体15は水又は水溶液とすればよい。本発明の一実施例において、液体15は密閉空間114の一部のみを占有し、そのほかの密閉空間114に液体15は配置されない。液体15は、密閉空間114内で流動可能であり、且つ、重力の作用によって密閉空間114の底部に位置する。よって、液体15を配置する密閉空間114には気体又は水蒸気が存在する場合もある。また、異なる実施例では、密閉空間114内に液体15を充満させてもよい。
【0027】
具体的に、フレーム111は、第1の面1111、第2の面1113及び側面1115を含み得る。側面1115は、第1の面1111と第2の面1113を接続する。2枚のフィルム113は、フレーム111の第1の面1111及び第2の面1113にそれぞれ接続される。例えば、接着剤、ろう付け(welding)又ははんだ付け(soldering)によって、フィルム113を四角形のフレーム111における第1の面1111及び第2の面1113に設置して、直方体の放熱容器11を形成すればよい。また、異なる実施例では、フィルム113をテープとし、フレーム111の第1の面1111、第2の面1113及び側面1115に貼り付けてもよい。
【0028】
本発明の別の実施例では、フレーム111の穿孔部112を凹陥部とし、フィルム113の数を1枚として、フレーム111の凹陥部を覆うことで、凹陥部に密閉空間114を形成してもよい。フレーム111は、例えば、アルミニウムや銅等の高熱伝導率を有する金属材質で製造可能である。また、フレーム111は、フィルム113を介してセル13に接続可能である。このことは、セル13が熱をフレーム111及び液体15に伝達してセル13の温度を低下させるのに都合がよい。
【0029】
図2に示すように、セル13は、2つの底面131及び1つの側面133を含む。側面133は2つの底面131の間に位置する。これにより、セル13の外観は、例えば円柱体のような略柱状体となる。セル13の一方の底面131を正極とし、他方の底面131及び/又は側面133を負極とすればよい。
【0030】
複数の導電シート12が、複数のセル13を直列及び/又は並列に接続してバッテリモジュール130を形成するために用いられる。本発明の一実施例では、放熱容器11の数を2つとし、セル13の2つの底面131にそれぞれ隣接させればよい。また、本発明の別の実施例では、放熱容器11の数を1つとし、セル13の一方の底面131と隣接させてもよい。
【0031】
具体的に、放熱容器11のフィルム113はセル13の少なくとも1つの底面131と隣接する。或いは、セル13の底面131と放熱容器11のフィルム113の間に導電シート12を有する。例えば、セル13の正極及び/又は負極は、放熱容器11のフィルム113に直接接触してもよいし、導電シート12を介して放熱容器11のフィルム113に接触してもよい。セル13に熱暴走(Thermal runaway)が発生した場合には、通常、高温のガスが底面131(例えば、正極)のバルブを通じてセル13から噴出し、放熱容器11のフィルム113と接触する。
【0032】
フィルム113は、高温のガスと接触すると破れる。これにより、放熱容器11の密閉空間114内に位置する液体15は、フィルム113の破れた孔を通じて放熱容器11から噴出又は流出する。放熱容器11から噴出した液体15は、熱暴走中のセル13と接触し、熱暴走中のセル13の温度を低下させる。
【0033】
本発明の一実施例において、密閉空間114内には、例えば、多孔質金属又は多孔質セラミックス等の吸水層を設置し、吸水層により液体15を吸着すればよい。フィルム113が破れた場合、一部の液体15はフィルム113の破れた孔を通じて放熱容器11から噴出又は流出し、熱暴走中のセル13に直接接触するが、一部の液体15は吸水層に吸着される。
【0034】
吸水層により吸着された液体15は、熱暴走中のセル13から熱を吸収し続けて、液状から気体状に変化することで、熱暴走中のセル13から大量の熱を吸収する。水の気化熱は40.8kJ/molであり、2266kJ/kgに相当するため、水が水蒸気に変換される際に、熱暴走中のセル13から大量の熱を吸収可能である。従って、本発明では、放熱容器11内に配置する液体15を水又は水溶液とすることが好ましい。
【0035】
一般的に、熱暴走中のセル13から発生する温度は、摂氏160度~240度の間となるのが通常である。そこで、本発明の一実施例では、フィルム113が摂氏160度~240度の間で破れるように、フィルム113の厚さや材質等の変数を調整すればよい。本発明の一実施例では、フィルム113を金属フィルム又はプラスチックフィルムとすることができる。金属フィルムは、例えば、アルミ箔とポリエチレンの積層というように、少なくとも1つの金属層及び少なくとも1つのプラスチック層の積層を含む。また、熱間圧接方式でフィルム113とフレーム111を接続すればよい。
【0036】
そのほか、バッテリモジュール130が複数のセル13の直列を含む場合には、充電及び放電の過程で、バッテリモジュール130の両側のセル13に温度差が生じる。
図2の場合には、左側に位置するセル13の温度が右側に位置するセル13の温度よりも低くなり、複数回の充放電を経ることで、右側のセル13の劣化速度が左側のセル13よりも早くなる。
【0037】
本発明の実施例において、高温のセル13は、フレーム111を介して低温のセル13に熱を伝達可能なだけでなく、フレーム111及び/又はフィルム113を介して密閉空間114内の液体15にも熱を伝達可能である。具体的に、密閉空間114の右側の液体15の温度は左側の液体15の温度よりも高くなる。これにより、密閉空間114内の液体15に対流が発生し、各セル13の温度が平衡化されることで、バッテリモジュール130の使用寿命が延びる。
【0038】
図5に示すように、放熱容器11のフレーム111は少なくとも1つの接続ホルダ1117を含み得る。接続ホルダ1117は、フレーム111の穿孔部112又は凹陥部内に位置して、フレーム111とフィルム113の間の密閉空間114を複数の収容空間118に分割する。また、フィルム113は、フレーム111及び接続ホルダ1117に接続される。
【0039】
本発明の一実施例において、複数のセル13はマトリックス方式で配列される。また、隣接するセル13の側面133の間に熱伝導ユニット17を設置可能である。熱伝導ユニット17は接続ホルダ1117に面しており、セル13は収容空間118に面している。例えば、熱伝導ユニット17は、金属製の円形、四角形又は多角形の柱状体をなし得る。熱伝導ユニット17の一端又は両端は、フィルム113を介してフレーム111の接続ホルダ1117に接続可能である。セル13で発生した熱は、側面133を通じて熱伝導ユニット17に伝達可能であり、且つ、熱伝導ユニット17の一端又は両端を通じてフレーム111の接続ホルダ1117に伝達される。
【0040】
図6に示すように、フレーム111の接続ホルダ1117に少なくとも1つの凹部1119又は接続孔を設置し、凹部1119又は接続孔によって、接続ホルダ1117の両側に位置する収容空間118を接続してもよい。
【0041】
図7に示すように、フレーム111は複数の突出部115を含み、隣接する突出部115の間に凹陥部116を形成してもよい。本発明の一実施例では、フレーム111の第1の面1111及び第2の面1113にそれぞれ突出部115を設置可能である。第1の面1111に設置される突出部115と、第2の面1113に設置される突出部115は互い違いとすればよい。また、
図8に示すように、フレーム111の両側に設置される突出部115は、フレーム111内の穿孔部112を跨ぎ、穿孔部112の両側にロッド状の突出部115を形成してもよい。
【0042】
2枚のフィルム113は、フレーム111の第1の面1111及び第2の面1113にそれぞれ接続されて穿孔部112を覆うことで、2枚のフィルム113とフレーム111の間に密閉空間114を形成する。実際の応用時には、一方のフィルム113が第1の面1111及び第1の面1111に位置する突出部115に接続され、他方のフィルム113が第2の面1113及び第2の面1113に位置する突出部115に接続される。
【0043】
本発明における上記の実施例では、主に、放熱容器11をセル13の底面131に設置して、放熱容器11のフィルム113をセル13の底面131に隣接させる。また、本発明の別の実施例では、
図9に示すように、放熱容器11を2つの隣接するセル13の間に設置してもよい。この場合、放熱容器11のフィルム113は、複数のセル13の側面133と接触可能である。また、放熱容器11の凹陥部116にセル13を配置すればよい。これにより、セル13の側面133が凹陥部116内に位置し、隣接する2つのセル13の間に放熱容器11の突出部115が位置する。こうすることで、セル13の側面133と放熱容器11との接触面積を増加させることができ、セル13から放熱容器11への熱の伝達効率を向上させるのに都合がよい。
【0044】
実際の応用にあたっては、バッテリモジュール130が複数のセル13及び複数の放熱容器11を含み得る。放熱容器11は、隣接するセル13同士の隙間を可能な限り充填し、各セル13の側面133を少なくとも1つの放熱容器11に接触可能とするため、放熱効果が向上する。
【0045】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明の実施範囲を限定するものではない。即ち、本発明の特許請求の範囲に記載する形状、構造、特徴及び精神に基づきなされる等価の変形及び補足は、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0046】
10 防熱メカニズムを有するバッテリデバイス
11 放熱容器
111 フレーム
1111 第1の面
1113 第2の面
1115 側面
1117 接続ホルダ
1119 凹部
112 穿孔部
113 フィルム
114 密閉空間
115 突出部
116 凹陥部
118 収容空間
12 導電シート
13 セル
130 バッテリモジュール
131 底面
133 側面
15 液体
17 熱伝導ユニット