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  • 特開-電池ケース構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162122
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】電池ケース構造体
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/244 20210101AFI20231031BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20231031BHJP
   H01M 50/224 20210101ALI20231031BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20231031BHJP
【FI】
H01M50/244 Z
H01M50/262 S
H01M50/224
H01M50/204 401H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044807
(22)【出願日】2023-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2022072053
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】五之治 巧
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AS07
5H040AY05
5H040CC13
5H040CC23
(57)【要約】
【課題】電池を電池ケースに組み込む際の作業性に優れる電池ケース構造体の提供を目的とする。
【解決手段】電池の両端部を拘束治具にて拘束しつつ、ケース本体に設けた収容部に組み込む電池ケース構造体であって、前記電池の両端部をそれぞれ保持する端末部材を有し、前記端末部材は係合部を有し、前記ケース本体は前記拘束治具の拘束部が入り込むための端部開口部と前記係合部に係合する被係合部とを有することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の両端部を拘束治具にて拘束しつつ、ケース本体に設けた収容部に組み込む電池ケース構造体であって、
前記電池の両端部をそれぞれ保持する端末部材を有し、前記端末部材は係合部を有し、前記ケース本体は前記拘束治具の拘束部が入り込むための端部開口部と前記係合部に係合する被係合部とを有することを特徴とする電池ケース構造体。
【請求項2】
前記端末部材の係合部は係合凹部であって、前記ケース本体の被係合部は被係合凸部であることを特徴とする請求項1記載の電池ケース構造体。
【請求項3】
前記端末部材は前記電池の両端部側に位置する拘束片部と、前記拘束片部の上部から外側に向けた上片部と前記上片部から下方に向けて折り返した折返片部とで、前記係合凹部を形成したことを特徴とする請求項2記載の電池ケース構造体。
【請求項4】
前記端末部材は、前記拘束片部、上片部及び折返片部とからなる断面略鈎形状又は断面略コ字形状の押出部材であり、
前記ケース本体は鋳造部材からなり、前記鋳造部材に一体的に被係合凸部を形成してあることを特徴とする請求項2記載の電池ケース構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車,ハイブリッド自動車等に電池を搭載するのに用いられる電池ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動源として搭載される電池は、高電圧であることから、複数の電池セルが積層された電池モジュール等の二次電池が採用されている。
この場合に、積層された電池セルの両端部を治具で押圧方向に拘束しながら電池ケース体に組み込まれるとともに、この電池ケース体に拘束保持される。
また、電池ケース体に組み込まれた電池セルは、バスバー等を用いて電気接続される。
【0003】
例えば、特許文献1には、電池の両端部を伝熱加圧ゴム5及びバネ9で、拘束保持させた電池ケースを開示する。
このような電池ケースに電池を組み込むのに複数の電池セルを積層した状態で、その両端部を拘束治具で拘束したまま電池ケースに組み込む際に、この拘束治具の拘束部が電池ケースの端部壁と干渉するのを避ける必要がある。
例えば、特許文献1の図1で説明すると、複数の電池を両側の端部を介して拘束治具で挟み込み、金属筐体1に組み込む際には、拘束治具の拘束部が金属筐体1の端部側の側壁と干渉しないようにスペースを設ける必要がある。
そのため従来は、アーム状の拘束治具で電池の両端部上側を拘束保持し、この電池の両端部の下側から電池ケースに組み込むことになり、作業性が悪い問題があるだけでなく、電池を電池ケースに組み込んだ後に拘束治具を退避させないと、次のバスバー等の溶接作業や締結作用が開始できない問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-170687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電池を電池ケースに組み込む際の作業性に優れる電池ケース構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電池ケース構造体は、電池の両端部を拘束治具にて拘束しつつ、ケース本体に設けた収容部に組み込む電池ケース構造体であって、前記電池の両端部をそれぞれ保持する端末部材を有し、前記端末部材は係合部を有し、前記ケース本体は前記拘束治具の拘束部が入り込むための端部開口部と前記係合部に係合する被係合部とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明は、電池の両端部をそれぞれ端末部材で保持させた状態で、拘束治具で両端部を拘束保持させつつ、そのままこの端末部材をケース本体側に設けた被係合部に係合保持できるように、ケース本体の両端部に拘束治具の拘束部が入り込むための端部開口部を設けた点に特徴がある。
これにより従来は、拘束治具の拘束部で電池の両端部の上部側を保持しつつ、この電池の両端部を下部側から電池ケース内に挿入するための拘束治具のスペースが必要にあったのに対して、本発明はそのようなスペースが不要であり、電池の両端部を端末部材で拘束させたまま、ケース本体の被係合部に係合させることができるので、従来のように電池の両端部を上部側から拘束する必要もなくなり、拘束治具による電池の保持方向の自由度が高くなる。
例えば、電池を横方向から拘束保持させることで、上部から次工程のバスバー取り付け作業も連続的に行うことができる。
【0008】
本発明において、一対の端末部材で電池の両端部を押圧方向に保持させつつ、そのままケース本体に係合保持させることができれば係合構造に制限はないが、例えば端末部材の係合部は係合凹部であって、前記ケース本体の被係合部は被係合凸部であってもよい。
例えば、前記端末部材は前記電池の両端部側に位置する拘束片部と、前記拘束片部の上部から外側に向けた上片部と前記上片部から下方に向けて折り返した折返片部とで、前記係合凹部を形成したものであってよい。
【0009】
本発明において、ケース本体や端末部材に材質上の制限がない。
しかし、例えば端末部材は断面略鈎形状又は断面略コ字形状の押出部材であり、前記ケース本体は鋳造部材からなり、前記鋳造部材に一体的に被係合凸部を形成してあると、次のような効果もある。
ケース本体をダイカスト鋳造等による鋳造部材にて製作すると、三次元形状の自由度が高く、端部開口部や係合凸部を一体的に形成することが可能である。
また、ケース本体の端部を切り欠くように端部開口部を形成し、この端部開口部の両側から上部又は内側に突設するように係合凸部を設けることで、断面略鈎形状又は断面略コ字形状の端末部材を押出加工により押出部材として製作した場合に、電池の両端部を一対の端末部材で拘束保持しつつ、そのまま上方側からケース本体の係合凸部に嵌合係止させることができる。
端末部材をアルミニウム合金等の押出部材にし、ケース本体をアルミニウム合金等の鋳造材とした場合に押出部材の方が放熱性に優れるので、電池の放熱性が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電池ケース構造体にあっては、ケース本体の端部に例えば切り欠き形状の端部開口部を形成したので、電池の両端部を一対の端末部材を介して拘束治具で保持したまま、上方側からケース本体に向けて下降組み込みができるので、組み込み作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る電池ケース構造体の構造例(実施例1)を示す。
図2】電池を拘束治具で保持し、ケース本体に組み込む状態を示す。
図3】ケース本体に電池モジュールを2列に組み込んだ例を示す。
図4】ケース本体の端部及び端末部材の拡大図を示す。
図5】端末部材で電池を保持した端部の断面図を示す。
図6】実施例2の構造例を示す。
図7】拘束治具にて電池をケース本体に組み込む状態を示す。
図8】電池モジュールを2列に組み込んだ例を示す。
図9】端末部材をケース本体の端部に組み込む拡大図を示す。
図10】端末部の拡大図(実施例3)を示す。
図11】端末部の拡大図(実施例4)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電池ケース構造体の構造例を図に基づいて説明するが、本発明は本実施例に限定されない。
【0013】
図1に本発明に係る電池ケース構造体の構造例(実施例1)を示し、図2に拘束治具による組み込み作業、図3に組み込み後の状態を示す。
本実施例では、ケース本体10をアルミニウム合金のダイカスト鋳造による鋳造部材で製作し、端末部材20A,20Bをアルミニウム合金の押出部材にて製作した例になっているが、材質や製作方法に制限はない。
【0014】
本実施例におけるケース本体10は、電池モジュール等の電池1を2列に収容できるように両サイド一対の側壁部12a,12aと、その中間の隔壁12bにて収容部11を2ヶ所に設けた例になっているが、収容部の数に制限はない。
ケース本体10は、収容される電池1の両側端部に位置する端部壁に、上部が開倣された切り欠き形状の端部開口部13cを形成してある。
この端部開口部13cは、後述する端末部材20A,20Bが係合するための被係合部13a,13bが形成されている。
本実施例では、端部開口部の両側からその内側に向けて突設した凸部形状からなる被係合凸部としての被係合部13aを、側壁部12aの端部及び被係合部13bを隔壁12bの端部に形成した例になっている。
これらの被係合部13a,13bは、ケース本体のダイカスト鋳造時に一体的に形成される。
なお、この端部壁に端部開口部を形成することなく端部壁を鋳造で形成すると、上方に向けての抜け勾配が必要になる場合もあったが、本発明においてはそのような必要がない。
【0015】
本実施例における端末部材20A,20Bは、電池1の前後方向の両側の端部に対応して一対有する。
図4に端末部の拡大図を示し、電池1側の拘束片部21とその外側に向けて延在した上片部24、上片部24の外側から下方に向けて折り返した折返片部22とで断面略コ字形状の係合部23を形成したアルミニウム合金等の押出部材にて製作した例になっている。
【0016】
これにより、図2に示すように電池1の両側の端部を一対の端末部材20A,20Bを介して拘束治具2a,2bにて押圧拘束保持し、図4に示すように係合部23の内側に凸部形状の被係合部13a,13bが嵌合されるように、上方から矢印に示したように下降させるだけで、電池1をケース本体10に組み込むことができる。
この際に、図2に示すようにケース本体の端部壁は、切り欠き状の端部開口部13cとなっているので、拘束治具2a,2bは電池1を上部側から挟持する必要がなく、電池1の横方向から挟持することも可能になり、電池1の上方は開倣された状態になり、次工程のバスバー溶接作業等も連続的に行うことができる。
【0017】
また、図5に断面図を示すように電池1の端部をゴムシート等の弾性部材30を介在させて押圧保持する際には、押出部材からなる端末部材20A,20Bに押圧片22aを形成することも可能である。
アルミニウム合金の押出部材は、アルミニウム合金からなる鋳造材のケース本体よりも熱伝導性が高く、電池から発生する熱の放熱性も向上する。
【0018】
図6図9に実施例2を示す。
本実施例は端末部材120A,120Bの断面形状を略鈎形状にした例である。
端末部材120A,120Bは、図9に端末部材120Aの拡大図を示すように電池1の端末側に位置する拘束片部121と、この拘束片部121の上端部から外側に向けて延在させた上片部124と、この上片部124の外側端部から下方に向けて折り返した折返片部122とからなり、折返片部122の長さが拘束片部121より短く全体として鈎形状にした。
これにより図7に示すように、拘束治具2a、2bは両側の端末部材120A,120Bの拘束片部121に当接した状態で挟持保持することができ、組付時の拘束荷重とケース本体10への搭載時の搭載荷重とを近づけることができる。
また、ケース本体10から電池1を取り外す際にも、過度に圧縮荷重がこの電池1に加わるのを防止できる。
【0019】
実施例2では、ケース本体110の構造例を図6に示すように、両側の拘束治具2a、2bにて端末部材120A,120Bを介して電池1を挟持保持したまま、このケース本体110に組み込めるように端部開口部113cを形成するとともに、電池1の長手方向両側のサイドの底部を段差状の収容部111に載置することで、電池1の下部に通風孔部113dを形成した例になっている。
これにより図8に示すように通風孔部113dに冷媒を流すことができる。
また、図6図9に示すようにケース本体110は、両側の側壁部112a,112aと中央部側の隔壁112bの端部開口部113cの内側であって、上部に突設した凸部状の被係合部113a,113bを形成し、端末部材120A,120Bの係合凹部が係合するようになっている。
【0020】
図10は端末部材の実施例3を示す。
本実施例は、端末部材120A,120Bの拘束片部121の下端部に電池1側に向けて突設したフランジ部121cを形成するとともに、この拘束片部121と電池1の端面との間に弾性部材30を設けてある。
端末部材120A,120Bは、このフランジ部121cを形成することで、端末部材の剛性が向上する。
実施例ではさらに、拘束片部121は弾性部材30に向けて凸部121aと凹部121bとを設けて、弾性部材30の凹凸部(32,31)に配置することで、弾性部材30との密着性が優れ、端末部材の抜け防止と剛性向上が期待できる。
【0021】
図11に端末部材120A,120Bの実施例4を示す。
本実施例は、拘束片部121の外側に凹凸面部121dを形成することで放熱性を向上させた例である。
【符号の説明】
【0022】
1 電池
2a,2b 拘束治具
10 ケース本体
11 収容部
12a 側壁部
12b 隔壁
13a 被係合部
13c 端部開口部
20A 端末部材
20B 端末部材
23 係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11