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特開2023-162125地盤性状推定方法、及び地盤性状推定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162125
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】地盤性状推定方法、及び地盤性状推定システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/02 20060101AFI20231031BHJP
   E21B 49/02 20060101ALI20231031BHJP
   E21B 25/00 20060101ALI20231031BHJP
   G01V 1/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
E02D1/02
E21B49/02
E21B25/00
G01V1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049334
(22)【出願日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2022072237
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000121844
【氏名又は名称】応用地質株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】窪塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡之
(72)【発明者】
【氏名】高柳 剛
(72)【発明者】
【氏名】藤原 将真
(72)【発明者】
【氏名】山内 政也
【テーマコード(参考)】
2D043
2G105
【Fターム(参考)】
2D043AA01
2D043AB02
2D043AB04
2D043AC01
2D043BA05
2D043BA07
2D043BC01
2G105AA02
2G105BB02
2G105DD02
2G105EE02
2G105GG03
2G105LL05
(57)【要約】
【課題】簡易且つ低コストで岩の劣化の状態と亀裂の状態をそれぞれ把握することができる地盤性状推定方法、及び地盤性状推定システムを提案する。
【解決手段】地盤性状推定方法は、地盤サンプルにおける基準掘削体積比エネルギー及び基準弾性波速度を把握する工程と、掘削工具2によって推定対象の地盤Gに掘削孔Hを設ける工程と、掘削工具2が掘削孔Hを設ける際に要した掘削エネルギーと掘削孔Hを設ける際の掘削体積から掘削体積比エネルギーを導く工程と、掘削孔Hを使って地盤を伝播する弾性波速度を導く工程と、掘削体積比エネルギー及び弾性波速度と一致又は近似する基準掘削体積比エネルギー及び基準弾性波速度を抽出し、抽出した基準掘削体積比エネルギー及び基準弾性波速度になる地盤サンプルの強度及び亀裂状態に基づいて地盤Gの強度及び亀裂状態を推定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤性状推定方法であって、
強度及び亀裂状態が把握された複数の地盤サンプルを準備し、当該地盤サンプルにおける基準掘削体積比エネルギー及び基準弾性波速度を把握する工程と、
掘削工具によって推定対象の地盤に掘削孔を設ける工程と、
前記掘削工具が前記掘削孔を設ける際に要した掘削エネルギーと当該掘削孔を設ける際の掘削体積から掘削体積比エネルギーを導く工程と、
前記掘削孔を使って前記地盤を伝播する弾性波速度を導く工程と、
前記掘削体積比エネルギー及び前記弾性波速度と一致又は近似する前記基準掘削体積比エネルギー及び前記基準弾性波速度を抽出し、抽出した当該基準掘削体積比エネルギー及び当該基準弾性波速度になる前記地盤サンプルの前記強度及び前記亀裂状態に基づいて前記地盤の強度及び亀裂状態を推定する、ことを特徴とする地盤性状推定方法。
【請求項2】
前記掘削工具は、所定の外径になるドリルと、当該ドリルを回転させる工具本体とを含んで構成され、
前記掘削エネルギーは、前記掘削孔を設ける際の前記工具本体の消費電力及び掘削時間によって導かれ、
前記掘削体積は、前記ドリルの外径と前記ドリルの掘削深度から導かれる、請求項1に記載の地盤性状推定方法。
【請求項3】
前記消費電力は、前記ドリルが前記地盤に所定圧力に保たれた状態で押し付けられる状態で測定される、請求項2に記載の地盤性状推定方法。
【請求項4】
地盤性状推定システムであって、
推定対象の地盤に掘削孔を設ける掘削工具と、
前記掘削孔を使って前記地盤を伝播する弾性波速度を測定する弾性波速度測定器と、
情報処理装置と、を備え、
前記情報処理装置は、
複数の地盤サンプルにおける強度及び亀裂状態を記憶するとともに、当該地盤サンプルにおける基準掘削体積比エネルギー及び基準弾性波速度を記憶し、
前記掘削工具が前記掘削孔を設ける際に要した掘削エネルギーと当該掘削孔を設ける際の掘削体積から掘削体積比エネルギーを算出し、
記憶した前記基準掘削体積比エネルギー及び前記基準弾性波速度のうち、前記掘削体積比エネルギー及び前記弾性波速度と一致又は近似する前記基準掘削体積比エネルギー及び前記基準弾性波速度を抽出し、抽出した当該基準掘削体積比エネルギー及び当該基準弾性波速度になる前記地盤サンプルの前記強度及び前記亀裂状態に基づいて前記地盤の強度及び亀裂状態を推定するよう構成された、地盤性状推定システム。
【請求項5】
前記掘削工具は、所定の外径になるドリルと、当該ドリルを回転させる工具本体とを含んで構成され、
前記掘削孔を設ける際の前記工具本体の消費電力を測定する電力計と、
前記掘削孔を設ける際の前記ドリルの掘削深度を測定する変位計と、を備え、
前記情報処理装置は、
前記電力計で得られた前記工具本体の消費電力及び前記掘削孔を設ける際の掘削時間によって前記掘削エネルギーを算出し、
前記ドリルの外径と前記変位計で得られた前記ドリルの掘削深度によって前記掘削体積を算出するよう構成された、請求項4に記載の地盤性状推定システム。
【請求項6】
前記ドリルが前記地盤に押し付けられる際の圧力を測定する圧力計を備える、請求項5に記載の地盤性状推定システム。
【請求項7】
地盤性状推定方法であって、
強度及び亀裂状態が把握された複数の地盤サンプルを準備し、所定の外径になるドリルを備える掘削工具によって当該地盤サンプルに掘削孔を設ける際の基準掘削速度を把握し、且つ当該地盤サンプルにおける基準弾性波速度を把握する工程と、
前記ドリルを備える前記掘削工具によって推定対象の地盤に掘削孔を設ける工程と、
前記掘削工具が前記地盤に前記掘削孔を設ける際の掘削速度を把握する工程と、
前記掘削孔を使って前記地盤を伝播する弾性波速度を導く工程と、
前記掘削速度及び前記弾性波速度と一致又は近似する前記基準掘削速度及び前記基準弾性波速度を抽出し、抽出した当該基準掘削速度及び当該基準弾性波速度になる前記地盤サンプルの前記強度及び前記亀裂状態に基づいて前記地盤の強度及び亀裂状態を推定する、ことを特徴とする地盤性状推定方法。
【請求項8】
地盤性状推定システムであって、
所定の外形になるドリルを備え、推定対象の地盤に掘削孔を設ける掘削工具と、
前記掘削工具が前記地盤に前記掘削孔を設ける際の掘削速度を計測する速度計測装置と、
前記掘削孔を使って前記地盤を伝播する弾性波速度を測定する弾性波速度測定器と、
情報処理装置と、を備え、
前記情報処理装置は、
複数の地盤サンプルにおける強度及び亀裂状態を記憶するとともに、前記ドリルを備える前記掘削工具によって当該地盤サンプルに掘削孔を設ける際の基準掘削速度を記憶し、且つ当該地盤サンプルにおける基準弾性波速度を記憶し、
記憶した前記基準掘削速度及び前記基準弾性波速度のうち、前記掘削速度及び前記弾性波速度と一致又は近似する前記基準掘削速度及び前記基準弾性波速度を抽出し、抽出した当該基準掘削速度及び当該基準弾性波速度になる前記地盤サンプルの前記強度及び前記亀裂状態に基づいて前記地盤の強度及び亀裂状態を推定するよう構成された、地盤性状推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤(岩盤も含む)の性状を推定するための地盤性状推定方法、及びこの方法を実行可能な地盤性状推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道や道路等の交通インフラに係わる土木構造物は、適切な維持管理を行う必要がある。このような土木構造物に含まれる交通インフラの沿線における法面は、降雨や地震等の外的作用の他、法面の地盤自体の劣化(風化)等によって自律性が低下すると、法面で崩落が生じ、崩土が線路や道路に流入して交通の安全が妨げられることになる。このため、法面の崩壊(特に地盤の劣化に係わる崩壊)を事前に予知することが必要であり、そのためには、現地法面の劣化の程度を予め把握しておくことが重要である。また、交通インフラの沿線の法面は多数存在するため、維持管理業務において効率的に防災投資の意思決定を行う観点からも、低コストに管理対象の法面の劣化程度を把握することは重要である。
【0003】
このような法面には、各種の法面工によって、法面表層部を防護するコンクリート製の構造物が付設されていることがある。このような構造物は、法面の劣化の進行速度を遅くする防護効果があるものの、劣化を完全に抑止する事は困難であり、また構造物の老朽化に伴って、その防護効果は低減する。また法面工には上記の防護効果が期待できるものの、構造物により法面が覆われてしまうため、維持管理業務において背面地盤を目視等で確認する、或いは調査機器を地盤に設置する等が行えず、背面地盤を対象とする調査作業が困難になる。このため、特に法面工が施された背面地盤調査に好適な手法が求められている。
【0004】
法面における地盤の安定性は、風化作用による劣化等によって低下するものの、その劣化形態は現地の地質や岩石の種類により大きく異なる。例えば固結の弱い泥岩などの軟岩では、乾湿の繰り返しなどの風化作用を受けて地表から土砂化が進行する劣化形態をとる場合があり、一方で固結の強い砂岩などの硬岩では、風化作用を受けて地盤に多数の亀裂が進展する劣化形態をとる場合がある。また火成岩である花崗岩はマサ化の進行により土砂化する事が知られている。このような現地の地質や岩石の種類に左右される劣化性状の違いは、法面工背面地盤の劣化度の評価を困難にする。また劣化性状が異なれば、必要となる対策も異なる。例えば、亀裂による劣化の場合には棒状補強材の挿入などにより岩石を引き留める対策が求められ、土砂化による劣化の場合には地表面を剛な格子枠工などで覆うことで補強するなどの対応が求められる。このように、劣化性状を推定する事は法面の維持管理の観点から重要である。
【0005】
軟岩等の法面における土砂化についての調査は、例えば法面工による構造物を局所的に削孔し、削孔部を通じて露出した地盤に簡易なサウンディング試験(一例として、簡易動的コーン貫入試験方法(地盤工学会基準 JGS1433に基づく))を実施することにより、比較的低コストで土砂化の領域や程度を把握することが可能である。しかし、例えば硬岩の法面においては、風化により多数の亀裂が進展して礫状となり、自立性を失って不安定化した場合においても、礫自体の強度が高いため、試験を実施するためのロッドを法面に貫入させることは困難である。このような法面では、簡易なサウンディング試験では土砂化を検知していないにも関わらず、実際には法面は不安定化している場合がある。このような簡易なサウンディング試験では地盤の性状を把握することができず、様々な岩石の法面を対象とした調査方法とはならない。
【0006】
亀裂が多い岩を含んだ地盤の全体的な強度を把握することが可能な他の方法としては、法面工を仮撤去して、現地からある程度の大きさ(例えば数十センチメートル以上の立方体等)の試料を採取し、この試料を使って剪断試験や圧縮試験を行うことが挙げられる。しかしこの方法を実施するには、試験に伴って仮撤去した法面工の修復が必要になる等の要因でコストが高くなるため、定期的な維持管理を目的とする際に利用することは難しい。
【0007】
なお、岩が劣化すると、岩自体の固結力の低下が生じ、さらに体積変化が生じた場合には密度の低下が生じるため、弾性波速度が低下することが予想される。また、岩に亀裂が入っていると、亀裂を通過する際に弾性波速度が低下することが予想される。このため、弾性波速度を測定する各種探査方法(屈折法、反射法等、例えば特許文献1参照)を利用すれば、地盤の劣化度を推定できる可能性がある。しかし、弾性波速度の情報には、上記のように岩が劣化に由来する場合と岩の亀裂に由来する場合の両方の要因が含まれるため、弾性波速度の情報のみで、弾性波速度の低さが岩の劣化によるものか、岩の亀裂によるものかなどの劣化性状を定量的な指標に基づいて判断することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003-014863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、地盤性状を推定するにあたっては、岩の劣化性状(亀裂を含まない岩自体の強度)と亀裂の状態をそれぞれ把握できることが重要であるところ、簡易且つ低コストで実施することができる方法、及びシステムは未だ提案がなされていない状況にある。
【0010】
このような点に鑑み、本発明では、簡易且つ低コストで岩の劣化性状と亀裂の状態をそれぞれ把握することができる地盤性状推定方法、及びこの方法を実行可能な地盤性状推定システムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、地盤性状推定方法であって、強度及び亀裂状態が把握された複数の地盤サンプルを準備し、当該地盤サンプルにおける基準掘削体積比エネルギー及び基準弾性波速度を把握する工程と、掘削工具によって推定対象の地盤に掘削孔を設ける工程と、前記掘削工具が前記掘削孔を設ける際に要した掘削エネルギーと当該掘削孔を設ける際の掘削体積から掘削体積比エネルギーを導く工程と、前記掘削孔を使って前記地盤を伝播する弾性波速度を導く工程と、前記掘削体積比エネルギー及び前記弾性波速度と一致又は近似する前記基準掘削体積比エネルギー及び前記基準弾性波速度を抽出し、抽出した当該基準掘削体積比エネルギー及び当該基準弾性波速度になる前記地盤サンプルの前記強度及び前記亀裂状態に基づいて前記地盤の強度及び亀裂状態を推定する、ことを特徴とする。
【0012】
このような地盤性状推定方法において、前記掘削工具は、所定の外径になるドリルと、当該ドリルを回転させる工具本体とを含んで構成され、前記掘削エネルギーは、前記掘削孔を設ける際の前記工具本体の消費電力及び掘削時間によって導かれ、前記掘削体積は、前記ドリルの外径と前記ドリルの掘削深度から導かれることが好ましい。
【0013】
そして前記消費電力は、前記ドリルが前記地盤に所定圧力に保たれた状態で押し付けられる状態で測定されることが好ましい。
【0014】
また本発明の地盤性状推定システムは、推定対象の地盤に掘削孔を設ける掘削工具と、前記掘削孔を使って前記地盤を伝播する弾性波速度を測定する弾性波速度測定器と、情報処理装置と、を備え、前記情報処理装置は、複数の地盤サンプルにおける強度及び亀裂状態を記憶するとともに、当該地盤サンプルにおける基準掘削体積比エネルギー及び基準弾性波速度を記憶し、前記掘削工具が前記掘削孔を設ける際に要した掘削エネルギーと当該掘削孔を設ける際の掘削体積から掘削体積比エネルギーを算出し、記憶した前記基準掘削体積比エネルギー及び前記基準弾性波速度のうち、前記掘削体積比エネルギー及び前記弾性波速度と一致又は近似する前記基準掘削体積比エネルギー及び前記基準弾性波速度を抽出し、抽出した当該基準掘削体積比エネルギー及び当該基準弾性波速度になる前記地盤サンプルの前記強度及び前記亀裂状態に基づいて前記地盤の強度及び亀裂状態を推定するよう構成されるものでもある。
【0015】
そして前記掘削工具は、所定の外径になるドリルと、当該ドリルを回転させる工具本体とを含んで構成され、前記掘削孔を設ける際の前記工具本体の消費電力を測定する電力計と、前記掘削孔を設ける際の前記ドリルの掘削深度を測定する変位計と、を備え、前記情報処理装置は、前記電力計で得られた前記工具本体の消費電力及び前記掘削孔を設ける際の掘削時間によって前記掘削エネルギーを算出し、前記ドリルの外径と前記変位計で得られた前記ドリルの掘削深度によって前記掘削体積を算出するよう構成されることが好ましい。
【0016】
また地盤性状推定システムは、前記ドリルが前記地盤に押し付けられる際の圧力を測定する圧力計を備えることが好ましい。
【0017】
また本発明は、地盤性状推定方法であって、強度及び亀裂状態が把握された複数の地盤サンプルを準備し、所定の外径になるドリルを備える掘削工具によって当該地盤サンプルに掘削孔を設ける際の基準掘削速度を把握し、且つ当該地盤サンプルにおける基準弾性波速度を把握する工程と、前記ドリルを備える前記掘削工具によって推定対象の地盤に掘削孔を設ける工程と、前記掘削工具が前記地盤に前記掘削孔を設ける際の掘削速度を把握する工程と、前記掘削孔を使って前記地盤を伝播する弾性波速度を導く工程と、前記掘削速度及び前記弾性波速度と一致又は近似する前記基準掘削速度及び前記基準弾性波速度を抽出し、抽出した当該基準掘削速度及び当該基準弾性波速度になる前記地盤サンプルの前記強度及び前記亀裂状態に基づいて前記地盤の強度及び亀裂状態を推定する、ことを特徴とする地盤性状推定方法でもよい。
【0018】
また本発明は、地盤性状推定システムであって、所定の外形になるドリルを備え、推定対象の地盤に掘削孔を設ける掘削工具と、前記掘削工具が前記地盤に前記掘削孔を設ける際の掘削速度を計測する速度計測装置と、前記掘削孔を使って前記地盤を伝播する弾性波速度を測定する弾性波速度測定器と、情報処理装置と、を備え、前記情報処理装置は、複数の地盤サンプルにおける強度及び亀裂状態を記憶するとともに、前記ドリルを備える前記掘削工具によって当該地盤サンプルに掘削孔を設ける際の基準掘削速度を記憶し、且つ当該地盤サンプルにおける基準弾性波速度を記憶し、記憶した前記基準掘削速度及び前記基準弾性波速度のうち、前記掘削速度及び前記弾性波速度と一致又は近似する前記基準掘削速度及び前記基準弾性波速度を抽出し、抽出した当該基準掘削速度及び当該基準弾性波速度になる前記地盤サンプルの前記強度及び前記亀裂状態に基づいて前記地盤の強度及び亀裂状態を推定するよう構成された、地盤性状推定システムでもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、掘削体積比エネルギーと弾性波速度との関係から、地盤の強度及び亀裂状態をそれぞれ推定することができる。また掘削体積比エネルギーは、弾性波速度を計測するにあたって地盤に掘削孔を設ける際に測定できるため、改めて掘削体積比エネルギーを測定するための試験を行う必要はない。すなわち本発明によれば、簡易且つ低コストで地盤の性状を推定することができる。また地盤の強度及び亀裂状態は、所定の外径になるドリルを備えた掘削工具を用いて掘削孔を設ける際の掘削速度と弾性波速度との関係からも推定可能であり、この場合も簡易且つ低コストで地盤の性状を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】弾性波速度と強度による地盤性状の分類を示した図である。
図2】本発明に係る地盤性状推定システムの一実施形態を示した模式図である。
図3】弾性波速度測定器の第一加速度計と第二加速度計で計測される振動について示したグラフである。
図4】地盤サンプルにおける基準掘削体積比エネルギーと強度(一軸圧縮強度)との関係を示したグラフである。
図5】地盤サンプルにおける基準掘削体積比エネルギーと基準弾性波速度との関係を示したグラフである。
図6】掘削体積比エネルギーと掘削速度(基準掘削体積比エネルギーと基準掘削速度)との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明に係る地盤性状推定方法、及び地盤性状推定システムの一実施形態について説明する。
【0022】
まず、本発明者による地盤性状に関する考察について説明する。法面の崩壊につながる要因としては、上述したように、地盤を形成する岩の劣化と岩の亀裂が考えられる。ここで、岩の劣化と岩の亀裂の状態を弾性波速度と強度との関係で考えると、大まかには図1のように分類できる。
【0023】
すなわち、岩が劣化すると、岩自体の固結力が低下して、さらに体積変化が生じて密度が低下した場合には弾性波速度が低下することが予想される。また、岩に亀裂が入っていると、亀裂を通過する際に弾性波速度が低下することが予想される。このため、地盤の強度と弾性波速度を計測した場合、強度が高く弾性波速度が速い地盤は、図1に示したように亀裂が少ない健全な硬岩(火成岩や固結力の強い砂岩など)であると考えられる。一方、強度が低く弾性波速度が遅い場合は、土砂化が進行した岩であると考えられる。そして、強度が高く弾性波速度が遅い場合は、亀裂が多い不安定な硬岩(火成岩や固結力の強い砂岩など)であると考えられ、強度が低く弾性波速度が速い場合は、亀裂は少ない軟岩(固結力の弱い泥岩など)であると考えられる。
【0024】
従って、調査対象となる地盤の強度と弾性波速度を知ることができれば、図1のように地盤の性状を特定できると考えられる。ここで本発明者は、強度に関連する指標として掘削体積比エネルギーに着目した。そして本発明に係る地盤性状推定方法及び地盤性状推定システムによれば、掘削体積比エネルギーと弾性波速度を簡易且つ低コストで把握できることを見出した。
【0025】
図2は、本発明に係る地盤性状推定システムの一実施形態である地盤性状推定システム1を示した模式図である。地盤性状の推定対象となる地盤Gは、図示したように法面であって、地盤Gには法面工による構造物Sが施されている。本実施形態の地盤性状推定システム1は、このような地盤Gに対して法面崩落の主要な領域である地表面から1~2m程度の深度での掘削体積比エネルギーと弾性波速度を計測するのに好適である。なお、本発明が適用される対象となる地盤Gは、図示例に限定されるものではない。また地盤Gに応じて地盤性状推定システム1の構成は適宜変更される。
【0026】
本実施形態の地盤性状推定システム1は、ハンマードリル2と、電力計3と、変位計4と、圧力計5と、弾性波速度測定器6と、不図示の情報処理装置(コンピュータ等)を含んで構成されている。なおハンマードリル2は、本明細書等における「掘削工具」に相当する。
【0027】
ハンマードリル2は、外径dとなるドリル2aと、ドリル2aが取り付けられる工具本体2bとを含んで構成されている。工具本体2bは、ドリル2aを回転させ、またドリル2aの軸心に沿う向きにドリル2aを振動させることができる。工具本体2bを作動させることにより、ドリル2aによって構造物Sを削孔し、更に地盤Gに掘削孔Hを設けることができる。本実施形態の掘削孔Hは、内径D、掘削深度Ldであるとする。なお、掘削孔Hの内径Dは、ドリル2aの外径dと略同一である。従って内径Dは、ドリル2aの外径dから算出することができる。
【0028】
本実施形態の工具本体2bは電力により作動する。工具本体2bには電力計3が接続されていて、工具本体2bの消費電力を計測することができる。なお電力計3では、掘削孔Hを掘削する際に計測される工具本体2bの消費電力と、無負荷状態で工具本体2bを作動させる際の消費電力を計測するものとする。掘削孔Hを掘削する際に計測される工具本体2bの消費電力から無負荷状態での消費電力を減じることにより、掘削孔Hを設ける際に要した正味の消費電力Wを算出することができる。また掘削孔Hを掘削する際には、不図示のタイマー等によって掘削孔Hを設けるために工具本体2bを作動させた掘削時間tも計測しておく。
【0029】
そして変位計4は、本実施形態ではワイヤー式変位計であって、変位計本体部を構造物Sの表面に設置し、ワイヤーをハンマードリル2に取り付けた状態で使用される。ハンマードリル2で掘削を行って掘削孔Hの深さが深くなるにつれ、ワイヤーは変位計本体部に引込まれるため、引込まれたワイヤー長の変位量から掘削孔Hの掘削深度を算出することができる。なお変位計4は、ワイヤー式変位計に限られるものではなく、掘削孔Hの掘削深度が間接的又は直接的に把握できるものであればよい。
【0030】
圧力計5は、工具本体2bに取り付けられていて、掘削孔Hを設ける際にドリル2aが地盤Gに押し付けられる際の圧力を計測することができる。本実施形態においては、掘削時において圧力計5で計測される圧力を確認することとし、これにより地盤Gに対してドリル2aを所定の圧力に保った状態で押し付けて掘削する。
【0031】
なお掘削孔Hを設けるにあたり、目標とする掘削深度Ldがある程度深い場合には、途中で工具本体2bを停止して掘削時に生じる土砂等(掘削ズリ)を排出し、電力計3による消費電力の計測にあたって掘削ズリが影響を及ぼさないようにする。
【0032】
そして、このようにして得られた掘削孔Hを設ける際に要した消費電力W、掘削時間t、ドリル2aの外径d、掘削深度Ldから、例えば上記の情報処理装置等を用いて掘削体積比エネルギーSEを算出する。ここで掘削体積比エネルギーSEは、掘削孔Hを設ける際に要した掘削エネルギーを、掘削孔Hを設ける際の掘削体積で除する(割る)ことにより算出される。また掘削エネルギーは、掘削孔Hを設ける際に要した消費電力Wと掘削時間tを乗じることにより算出され、掘削体積は、ドリル2aの断面積と掘削深度Ldとを乗じて算出される。すなわち掘削体積比エネルギーSEは、上記の記号W、t、d、Ldを用いた場合に下記式1により算出される。
【0033】
SE=(W×t)/((d/2)×π×Ld) ・・・式1
【0034】
地盤Gに設けた掘削孔Hは、弾性波速度測定器6によって地盤Gの弾性波速度を導く際に使用される。本実施形態の弾性波速度測定器6は、構造物Sの表面に設置される第一加速度計6aと、掘削孔H内に設置される第二加速度計6bと、第一加速度計6aと第二加速度計6bが接続される測定器本体6cとを含んで構成される。なお本実施形態における第二加速度計6bは、掘削孔H内に深度Laとなる深さで設置されている。
【0035】
このように第一加速度計6aと第二加速度計6bを設置した後は、図2(b)に示すように構造物Sの表面を打撃する。この打撃により、第一加速度計6aと第二加速度計6bでは振動が検知される。ここで構造物Sの表面に設置される第一加速度計6aで検知した振動は、時間と加速度との関係において、例えば図3において実線で示したように変化する。一方、掘削孔H内に設置された第二加速度計6bで検知した振動は、図3において破線で示すように変化する。すなわち第一加速度計6aと第二加速度計6bは、深度La分離れていることから、打撃により生じた振動は、第一加速度計6aで検知される時間に対して第二加速度計6bでは、時間ΔT遅れて検知されることになる。従って地盤Gにおける弾性波速度Vpは、上記の記号La、ΔTを用いた場合に下記式2により算出される。
【0036】
Vp=La/ΔT ・・・式2
【0037】
このように、地盤Gの掘削体積比エネルギーSEを算出する際に使用した掘削孔Hは、地盤Gの弾性波速度Vpを算出する際にも利用できるため、新たな掘削孔Hを設ける必要はなく、簡易且つ低コストで掘削体積比エネルギーSEと弾性波速度Vpを導くことができる。また同一の掘削孔Hを利用しているため、計測時のばらつきが抑えられて掘削体積比エネルギーSEと弾性波速度Vpを高い精度で算出することができる。
【0038】
そして、上記のように地盤性状を推定する対象となる地盤Gの掘削体積比エネルギーSEと弾性波速度Vpを求めるとともに、強度及び亀裂状態が把握された複数の地盤サンプル(サンプル毎に強度と亀裂状態は異なる)を準備し、この地盤サンプルにおける基準掘削体積比エネルギー及び基準弾性波速度を算出する。
【0039】
地盤サンプルは、自然由来のものでもよいし人工的に形成したものでもよい。また地盤サンプルの強度及び亀裂状態は、既往の各種方法(目視を含む)により把握される。
【0040】
そして準備したそれぞれの地盤サンプルに対し、上述したハンマードリル2、電力計3、変位計4、及び圧力計5を用いて掘削孔を設ける作業を実施する。更に、上述した掘削体積比エネルギーSEと同様の手順で、それぞれの地盤サンプルにおける掘削体積比エネルギー(基準掘削体積比エネルギー)を算出する。
【0041】
ここで図4は、地盤サンプルとして準備した硬岩(花崗岩、砂岩)及び軟岩の試験体における強度(一軸圧縮強度)と基準掘削体積比エネルギーとの関係を示している。図4における一軸圧縮強度は、円柱状になる試験体に対して軸方向に圧縮荷重を付加して計測すする。また基準掘削体積比エネルギーは、上述したようにハンマードリルを用いて試験体に掘削孔を設ける際の消費電力、掘削時間、ドリルの外径、掘削深度から算出する。なお各試験体は、亀裂が無い(又は亀裂が少ない)と認められるものを使用している。図4に示したように、基準掘削体積比エネルギーが増加するに従って強度も増加する傾向が認められる。また、基準掘削体積比エネルギーが小さい場合での強度の増加率は、基準掘削体積比エネルギーが大きい場合よりも大きくなる傾向が認められる。
【0042】
更に、地盤サンプルに設けた掘削孔を利用して、上述した弾性波速度Vpと同様の手順で、それぞれの地盤サンプルにおける弾性波速度(基準弾性波速度)を算出する。
【0043】
このようにして各地盤サンプルの基準掘削体積比エネルギーと基準弾性波速度を算出した後は、基準掘削体積比エネルギーと基準弾性波速度とを関連付けたデータベースを作成する。本実施形態では、上述した情報処理装置を用いてデータベースを作成するとともに、図5に示した基準掘削体積比エネルギーと基準弾性波速度との関係を示すグラフも作成し、情報処理装置にこのデータベースとグラフを記憶させておく。また情報処理装置には、各地盤サンプルの強度及び亀裂状態も記憶させておく。
【0044】
なお図5における点P1~点P14は、強度及び亀裂状態が把握された14種類の地盤サンプルにおける基準掘削体積比エネルギーと基準弾性波速度を算出し、その結果を基準掘削体積比エネルギーと基準弾性波速度のグラフにプロットしたものである。なお用いた地盤サンプルにおける岩の種類と亀裂の状態については、図5において異なる記号(□、○、×、■、●)を付して示している。また地盤サンプルの強度は、同一種類の岩で比較した場合、点P1、点P6、点P7、点P10、点P11の地盤サンプルの順で小さくなっていて、同様に点P2、点P5、点P12、点P13の地盤サンプルの順、点P8、点P9、点P14の地盤サンプルの順で小さくなっている。なお点P1と点P3の地盤サンプルの強度、及び点P2と点P4の地盤サンプルの強度は同等である。図5から明らかなように、地盤の強度と亀裂状態が異なると、掘削体積比エネルギーと弾性波速度との関係では異なる位置にプロットされる。すなわち、掘削体積比エネルギーと弾性波速度の両方の尺度で確認することにより、地盤の強度と亀裂状態を分けて判断することができる。
【0045】
また図5に示した点P1と点P3、点P2と点P4の関係から明らかなように、強度は同等であって亀裂が多くなる(亀裂長さが大きくなる)と、掘削体積比エネルギーの変化は少ない一方で弾性波速度は大きく低下することがわかる。また点P1、点P6、点P7、点P10、点P11の関係、P2、点P5、点P12、点P13の関係、及び点P8、点P9、点P14の関係から明らかなように、岩の種類によって程度の差はあるものの、強度が低下すると掘削体積比エネルギーと弾性波速度がともに低下することがわかる。
【0046】
そして各地盤サンプルの基準掘削体積比エネルギーと基準弾性波速度とを関連付けたデータベースのうち、推定対象である地盤Gでの掘削体積比エネルギーSE及び弾性波速度Vpと一致又は近似するものを抽出することにより、抽出した基準掘削体積比エネルギー及び基準弾性波速度になる地盤サンプルの強度及び亀裂状態に基づいて、地盤Gの強度と亀裂状態を推定することができる。本実施形態においては、図5に示したグラフに対して、地盤Gでの掘削体積比エネルギーSEと弾性波速度Vpに基づいて点Qをプロットする。ここで、図5において点Qと一致又は近似するものは点P3である。従って地盤Gでの強度と亀裂状態は、点P3の地盤サンプルと略同等であって、強度は比較的高く亀裂は多い(又は亀裂長さが大きい)と推定される。なお、掘削体積比エネルギーSE及び弾性波速度Vpと一致又は近似する基準掘削体積比エネルギー及び基準弾性波速度を得るには、例えばk近似法を利用すればよい。
【0047】
ところで本願発明者が検討を重ねたところ、所定の外形になるドリルを備える掘削工具によって掘削孔を設ける際の掘削速度と、上述した掘削体積比エネルギーには、強い関連性が存在することが認められた。この点に関し、図6を参照しながら説明する。
【0048】
図6は、図2に示したハンマードリル2に外径dが25mmのドリル2aを取り付けてこのハンマードリル2で地盤Gに掘削孔を設けたときの掘削速度と、この掘削孔を設けたときの掘削体積比エネルギーSEとの関係を示している。また同一外径のドリル2aを取り付けたハンマードリル2によって各種の地盤サンプルに掘削孔を設けたときの基準掘削速度と、この掘削孔を設けたときの基準掘削体積比エネルギーとの関係もあわせて示している。図6では、横軸(X軸)が掘削速度又は基準掘削速度であり、縦軸(Y軸)が掘削体積比エネルギー又は基準掘削体積比エネルギーである。
【0049】
なお、掘削速度や基準掘削速度を計測する速度計測装置としては、種々のものが採用可能であって、例えばハンマードリル2で掘削を行う際に変位計4のワイヤーが引込まれる速度を計測してもよいし、ドリル2aに所定ピッチで目印を付けておき、ハンマードリル2で掘削を行う際にこの目印が掘削孔で隠れていくときの時間を計測し、ピッチの長さをこの時間で除することによって掘削速度を算出してもよい。なお、ドリル2aの目印が掘削孔で隠れていく時間は、ドリル2aの側方から動画を撮影する等によって容易に把握することができる。
【0050】
そして図6において、記号×は、現地の地盤Gが砂岩の場合の関係を示し、記号★は、現地の地盤Gが泥岩の場合の関係を示している。そして記号◎は、亀裂や風化が認められない花崗岩の地盤サンプルでの関係を示し、記号○は、風化を摸擬した花崗岩の地盤サンプルでの関係を示し、記号●は、亀裂を摸擬した花崗岩の地盤サンプルでの関係を示している。また記号▼は、亀裂や風化が認められない砂岩の地盤サンプルでの関係を示し、記号△は、風化を摸擬した砂岩の地盤サンプルでの関係を示し、記号▲は、亀裂を摸擬した砂岩の地盤サンプルでの関係を示している。そして記号◆は、亀裂や風化が認められないセメント系固化体の地盤サンプルでの関係を示し、記号■は、亀裂を摸擬したセメント系固化体の地盤サンプルでの関係を示している。ここでセメント系固化体は、軟岩を模したサンプルであって、細かい砂やベントナイトなど比較的粒子の細かい粉体物質にセメント及び水を配合して形成されている。
【0051】
図6から明らかなように、所定の外形になるドリルを備える掘削工具で地盤G又は地盤サンプルに掘削孔を設けたときの掘削速度又は基準掘削速度と、この掘削孔を設けたときの掘削体積比エネルギー又は基準掘削体積比エネルギーは、予測式y=59.519x-0.863に対して強い関連性(決定係数Rは0.8119)があることが分かる。
【0052】
従って、強度及び亀裂状態が把握された複数の地盤サンプルを準備し、所定の外径になるドリルを備える掘削工具によってこの地盤サンプルに掘削孔を設ける際の基準掘削速度を把握し、且つこの地盤サンプルにおける基準弾性波速度を把握しておき、またこのドリルを備える掘削工具によって推定対象の地盤に掘削孔を設ける際の掘削速度を把握し、且つこの掘削孔を使って地盤を伝播する弾性波速度を導いておき、この掘削速度及び弾性波速度と一致又は近似する基準掘削速度及び基準弾性波速度を抽出すれば、抽出した基準掘削速度及び基準弾性波速度になる地盤サンプルの強度及び亀裂状態に基づいて推定対象の地盤の強度及び亀裂状態を推定することができる。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0054】
例えば地盤サンプルとして、過去に災害が発生した場所や災害が発生していない場所で採取したものを使用してもよい。そしてデータベースでは、地盤サンプルの強度と亀裂状態だけでなく、災害に関する情報も関連付けてもよい。災害に関する情報も関連付けておくことにより、地盤性状の推定をより実態に即した形で行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1:地盤性状推定システム
2:ハンマードリル(掘削工具)
2a:ドリル
2b:工具本体
3:電力計
4:変位計
5:圧力計
6:弾性波速度測定器
G:地盤
H:掘削孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6