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特開2023-162134電源システムのためのシフト検出システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162134
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】電源システムのためのシフト検出システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20231031BHJP
   B60L 50/10 20190101ALI20231031BHJP
   B60L 50/70 20190101ALI20231031BHJP
【FI】
B60L3/00 N
B60L50/10
B60L50/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023068007
(22)【出願日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】18/297,834
(32)【優先日】2023-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/363,594
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519447732
【氏名又は名称】トランスポーテーション アイピー ホールディングス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペダー,ジェイコブ ケネス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】監視されている電源システムの固有のシステム間のばらつきが生じても、インシデントを正確に予測し得る、電源システムのシフト検出システム及び方法を提供する。
【解決手段】シフト検出システム及び方法は、電源システムの少なくとも第1及び第2の動作パラメータを経時的に監視し、適応モデルを生成する。適応モデルは、第1及び第2の動作パラメータの値によって定義されるデータ点を含み、データ点は、第1の動作パラメータの指定された範囲に従ってビンにグループ化され、ノードは、ビン内のデータ点に基づいて個々のビンについて計算される。出力関数は、ノードに基づいて決定され、シフトインシデントは、出力関数と第2の動作パラメータの最近の値との間のオフセットに少なくとも部分的に基づいて検出される。電源システムを制御するために、及び/またはオペレータに通知するために、シフトインシデントに応答して制御信号を生成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフト検出システムであって、
1つまたは複数のプロセッサを備えるコントローラであって、
電源システムの第1の動作パラメータの値および電源システムの第2の動作パラメータの値を取得することであって、第1および第2の動作パラメータが、前記電源システムが動作するときに経時的に監視される、取得することと、
監視される前記第1および第2の動作パラメータの前記値に基づいて適応モデルを生成することであって、前記適応モデルが、複数のデータ点を含み、前記データ点の各々が、前記第1の動作パラメータのそれぞれの値および前記第2の動作パラメータのそれぞれの値によって定義され、前記コントローラが、前記第1の動作パラメータの指定された範囲にしたがって前記データ点をビンにグループ化し、個々のビン内の前記データ点に基づいて前記個々のビンに関連付けられたノードを計算するように構成され、前記コントローラが、前記第1および第2の動作パラメータの間の関係を表す前記ノードに基づいて出力関数を決定するように構成される、生成することと、
前記適応モデルの前記出力関数と監視される前記第2の動作パラメータの値との間のオフセットに少なくとも部分的に基づいて、シフトインシデントを検出することと、
前記シフトインシデントを検出したことに応答して、(i)前記電源システムに損傷の危険性があることをオペレータに通知すること、(ii)前記電源システムのメンテナンスを開始すること、(iii)前記電源システムに動作制約を適用すること、または(iv)前記電源システムをシャットダウンすること、のうちの1つまたは複数のための制御信号を生成することと、
を行うように構成されたコントローラ
を備える、シフト検出システム。
【請求項2】
前記コントローラが、前記オフセットを変化検出アルゴリズムに入力して、前記出力関数を囲む指定されたマージン外の前記データ点の平均シフトを検出することによって、前記シフトインシデントを検出するように構成されている、請求項1に記載のシフト検出システム。
【請求項3】
前記変化検出アルゴリズムが、前記指定されたマージン外の前記データ点を積分し、前記コントローラが、閾値を超える前記変化検出アルゴリズムの出力信号に応答して、前記シフトインシデントを検出するように構成されている、請求項2に記載のシフト検出システム。
【請求項4】
前記変化検出アルゴリズムが、累積和制御(CUSUM)アルゴリズムである、請求項3に記載のシフト検出システム。
【請求項5】
前記コントローラが、前記適応モデルの前記出力関数に対する少なくとも1つの標準偏差分の前記第2の動作パラメータの前記値の平均シフトを検出することによって、前記シフトインシデントを検出するように構成されている、請求項1に記載のシフト検出システム。
【請求項6】
前記コントローラが、前記ノードを接続する線形補間を実行することによって前記適応モデルの前記出力関数を決定するように構成されている、請求項1に記載のシフト検出システム。
【請求項7】
前記ノードの各々が、前記関連付けられたビン内の前記データ点の中心に位置し、前記コントローラが、前記関連付けられたビン内の前記データ点の前記第1の動作パラメータの前記値の第1の平均を計算し、前記関連付けられたビン内の前記データ点の前記第2の動作パラメータの前記値の第2の平均を計算し、前記第1の平均および前記第2の平均を前記ノードの座標として分類することによって、前記ノードの各々を決定するように構成されている、請求項1に記載のシフト検出システム。
【請求項8】
前記第1の平均および前記第2の平均が重み付け平均であり、前記コントローラが、より最近の前記データ点により大きい重みを適用し、より最近でない前記データ点により小さい重みを適用する忘却係数を組み込むことによって前記第1の平均および前記第2の平均を計算するように構成されている、請求項7に記載のシフト検出システム。
【請求項9】
前記コントローラが、前記個々のビン内に少なくとも閾値数の前記データ点が存在するまで、前記個々のビンの各々におけるそれぞれのノードの計算を延期するように構成されている、請求項1に記載のシフト検出システム。
【請求項10】
前記コントローラが、前記シフトインシデントが発生した時刻を決定し、前記シフトインシデントの前記時刻を含む前記シフトインシデントの記録を記録する第2の制御信号を生成するように構成されている、請求項1に記載のシフト検出システム。
【請求項11】
前記電源システムが、前記電源システムが石油由来ディーゼル燃料を使用するディーゼルモードと、前記電源システムが別のタイプの燃料を使用する代替燃料モードの双方で動作可能であり、前記コントローラが、前記電源システムの動作を前記ディーゼルモードのみに制限することによって前記電源システムに前記動作制約を適用するための前記制御信号を生成するように構成されている、請求項1に記載のシフト検出システム。
【請求項12】
前記第1の動作パラメータが、前記電源システムから排出される排気ガスの流量であり、前記第2の動作パラメータが、前記電源システムのクランクケース内の圧力である、請求項1に記載のシフト検出システム。
【請求項13】
前記コントローラに動作可能に接続された1つまたは複数のセンサをさらに備え、前記1つまたは複数のセンサが、前記第1および第2の動作パラメータを監視するために前記コントローラによって使用されるセンサ測定値を生成するように構成されている、請求項1に記載のシフト検出システム。
【請求項14】
前記電源システムが、車両の推進力を供給するエンジンまたは燃料電池である、請求項1に記載のシフト検出システム。
【請求項15】
前記コントローラが前記車両に搭載される、請求項14に記載のシフト検出システム。
【請求項16】
方法であって、
電源システムが動作するときに経時的に前記電源システムの第1の動作パラメータおよび第2の動作パラメータを監視することと、
監視される第1および第2の動作パラメータの値に基づいて適応モデルを生成することであって、前記適応モデルが、前記第1の動作パラメータのそれぞれの値および前記第2の動作パラメータのそれぞれの値によって各々が定義される複数のデータ点を含み、前記適応モデルを生成することが、前記第1の動作パラメータの指定された範囲にしたがって前記データ点をビンにグループ化することと、個々のビン内の前記データ点に基づいて前記個々のビンに関連付けられたノードを計算することと、を含み、前記適応モデルを生成することが、前記第1および第2の動作パラメータの間の関係を表す前記ノードに基づいて出力関数を決定することを含む、生成することと、
前記適応モデルの前記出力関数と監視されている前記第2の動作パラメータの値との間のオフセットに少なくとも部分的に基づいて、シフトインシデントを検出することと、
前記シフトインシデントを検出したことに応答して、(i)前記電源システムに損傷の危険性があることをオペレータに通知すること、(ii)前記電源システムのメンテナンスを開始すること、(iii)前記電源システムに動作制約を適用すること、または(iv)前記電源システムをシャットダウンすること、のうちの1つまたは複数のための制御信号を生成することと、を含む、方法。
【請求項17】
前記シフトインシデントを検出することが、前記オフセットを累積和制御(CUSUM)アルゴリズムに入力して、前記出力関数を囲む指定されたマージン外の前記データ点の平均シフトを検出することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記適応モデルの前記出力関数を決定することが、前記ノードを接続する線形補間を実行することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ノードの各々が、前記関連付けられたビン内の前記データ点の中心に位置し、前記ノードを計算することが、前記関連付けられたビン内の前記データ点の前記第1の動作パラメータの前記値の第1の平均および前記関連付けられたビン内の前記データ点の前記第2の動作パラメータの前記値の第2の平均を計算することを含み、前記ノードが、前記第1の平均および前記第2の平均の双方によって定義される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
車両であって、
前記車両の移動を推進するための動力を生成するように構成されたエンジンと、
前記エンジンに対応するセンサ測定値を生成するように構成された1つまたは複数のセンサと、
1つまたは複数のプロセッサを備え、前記1つまたは複数のセンサに動作可能に接続されたコントローラとを備え、前記コントローラは、
前記1つまたは複数のセンサによって生成された前記センサ測定値に基づいて、前記電源システムが動作するときに経時的に前記電源システムの第1の動作パラメータおよび第2の動作パラメータを監視することと、
監視される前記第1および第2の動作パラメータの値に基づいて適応モデルを生成することであって、前記適応モデルが複数のデータ点を含み、前記データ点の各々が前記第1の動作パラメータのそれぞれの値および前記第2の動作パラメータのそれぞれの値によって定義され、前記コントローラが、前記第1の動作パラメータの指定された範囲にしたがって前記データ点をビンにグループ化し、個々のビン内の前記データ点に基づいて前記個々のビンに関連付けられたノードを計算するように構成され、前記コントローラが、前記第1および第2の動作パラメータの間の関係を表す前記ノードに基づいて出力関数を決定するように構成される、生成することと、
前記適応モデルの前記出力関数と監視されている前記第2の動作パラメータの最近の値との間のオフセットに少なくとも部分的に基づいて、シフトインシデントを検出することと、
前記シフトインシデントを検出したことに応答して、(i)前記電源システムに損傷の危険性があることをオペレータに通知すること、(ii)前記電源システムのメンテナンスを開始すること、(iii)前記電源システムに動作制約を適用すること、または(iv)前記電源システムをシャットダウンすること、のうちの1つまたは複数のための制御信号を生成することと、を行うように構成される、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年4月26日に出願された米国仮特許出願第63/363,594号の優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載の主題は、エンジンなどの動力を供給するシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
エンジン、燃料電池、ジェットタービン、電池パックなどの電源システムの動作を監視して、未処理の場合に損傷を示すかまたは損傷につながる可能性がある予期しないインシデントおよび挙動を検出することが望ましい。既存の監視システムは、パラメータのセンサ測定値を、予想される電源システム性能の事前較正モデルと比較する。そのようなモデルは、外部情報に基づいて決定される入力パラメータ間の予め符号化された関係を記述する。外部情報は、多数の電源システムの性能から収集された履歴データ、実験データなどを含み得る。監視システムは、監視されている電源システムのパラメータが事前較正モデル内の閾値を超えた場合に、インシデントを記録し得る。
【0004】
しかしながら、事前較正モデルは、固有のシステム間のばらつきのために、いくつかのタイプの電源システムの動作性能を正確に予測しない場合がある。例えば、異なる燃料燃焼エンジンのパラメータには、たとえ同様の部品によって構成されていたとしても、可変動作状態、製造上の相違、摩耗、構成要素のばらつきなどの要因の組み合わせに起因して、著しい変動があり得る。その結果、1つの電源システムにおける2つのパラメータ間の関係は、同じタイプの別の電源システムにおける同じ2つのパラメータ間の関係に対して変化し得る。さらにまた、単一の電源システムの動作挙動はまた、電源システムの寿命の間に経時的に変化し得る。電源システムの挙動はシステム間および経時的に変化するため、特定の電源システムの動作パラメータを静的モデルと比較することは、あるクラスの電源システムの普遍的な挙動を定義しようとするが、損傷を回避または制限するために特定の電源システムの予期しない挙動を確実に、正確に、および/または迅速に検出することはできない。現在利用可能なシステムおよび方法とは異なるシステムおよび方法を有することが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0005】
1つの例または態様によれば、1つまたは複数のプロセッサを備えるコントローラを含むシフト検出システムが提供される。コントローラは、電源システムの第1の動作パラメータの値および電源システムの第2の動作パラメータの値を取得するように構成され得る。第1および第2の動作パラメータは、電源システムが動作するときに経時的に監視され得る。コントローラは、監視される第1および第2の動作パラメータの値に基づいて適応モデルを生成するように構成され得る。適応モデルは、複数のデータ点を含み得て、データ点の各々は、第1の動作パラメータのそれぞれの値および第2の動作パラメータのそれぞれの値によって定義される。コントローラは、第1の動作パラメータの指定された範囲にしたがってデータ点をビンにグループ化し、個々のビン内のデータ点に基づいて個々のビンに関連付けられたノードを計算するように構成され得る。コントローラは、第1の動作パラメータと第2の動作パラメータとの間の関係を表すノードに基づいて出力関数を決定するように構成され得る。コントローラは、適応モデルの出力関数と監視される第2の動作パラメータの値との間のオフセットに少なくとも部分的に基づいてシフトインシデントを検出し得る。シフトインシデントの検出に応答して、コントローラは、(i)電源システムが損傷の危険性があることをオペレータに通知すること、(ii)電源システムのメンテナンスを開始すること、(iii)電源システムに動作制約を適用すること、または(iv)電源システムをシャットダウンすることのうちの1つまたは複数のための制御信号を生成し得る。
【0006】
1つの例または態様によれば、(例えば、電源システム内のシフトを検出するための)方法が提供される。本方法は、電源システムが動作するときに、電源システムの第1の動作パラメータおよび第2の動作パラメータを経時的に監視することを含み得る。本方法は、監視される第1および第2の動作パラメータの値に基づいて適応モデルを生成することを含み得る。適応モデルは、複数のデータ点を含み得て、データ点の各々は、第1の動作パラメータのそれぞれの値および第2の動作パラメータのそれぞれの値によって定義される。適応モデルを生成することは、第1の動作パラメータの指定された範囲にしたがってデータ点をビンにグループ化することと、個々のビン内のデータ点に基づいて個々のビンに関連付けられたノードを計算することとを含み得る。適応モデルを生成することは、第1の動作パラメータと第2の動作パラメータとの間の関係を表すノードに基づいて出力関数を決定することを含み得る。本方法は、適応モデルの出力関数と監視される第2の動作パラメータの値との間のオフセットに少なくとも部分的に基づいてシフトインシデントを検出することを含み得る。シフトインシデントを検出することに応答して、本方法は、(i)電源システムが損傷の危険性があることをオペレータに通知すること、(ii)電源システムのメンテナンスを開始すること、(iii)電源システムに動作制約を適用すること、または(iv)電源システムをシャットダウンすることのうちの1つまたは複数のための制御信号を生成することを含み得る。
【0007】
1つの例または態様によれば、エンジン、1つまたは複数のセンサ、およびコントローラを含み得る車両が提供される。エンジンは、車両の移動を推進するための動力を生成するように構成され得る。1つまたは複数のセンサは、エンジンに対応するセンサ測定値を生成するように構成され得る。コントローラは、1つまたは複数のプロセッサを含み得て、1つまたは複数のセンサに動作可能に接続され得る。コントローラは、1つまたは複数のセンサによって生成されたセンサ測定値に基づいて、電源システムが動作するときに経時的に電源システムの第1の動作パラメータおよび第2の動作パラメータを監視するように構成され得る。コントローラは、監視される第1および第2の動作パラメータの値に基づいて適応モデルを生成し得る。適応モデルは、複数のデータ点を含み得て、データ点の各々は、第1の動作パラメータのそれぞれの値および第2の動作パラメータのそれぞれの値によって定義される。コントローラは、第1の動作パラメータの指定された範囲にしたがってデータ点をビンにグループ化し、個々のビン内のデータ点に基づいて個々のビンに関連付けられたノードを計算するように構成され得る。コントローラは、第1の動作パラメータと第2の動作パラメータとの間の関係を表すノードに基づいて出力関数を決定するように構成され得る。コントローラは、適応モデルの出力関数と監視される第2の動作パラメータの最近の値との間のオフセットに少なくとも部分的に基づいてシフトインシデントを検出し得る。シフトインシデントの検出に応答して、コントローラは、(i)電源システムが損傷の危険性があることをオペレータに通知すること、(ii)電源システムのメンテナンスを開始すること、(iii)電源システムに動作制約を適用すること、または(iv)電源システムをシャットダウンすることのうちの1つまたは複数のための制御信号を生成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本主題は、添付の図面を参照して、非限定的な実施形態の以下の説明を読むことによって理解され得る:
【0009】
図1】実施形態にかかる車両に搭載されたシフト検出システムの概略ブロック図である。
図2】実施形態にかかる、監視されたクランクケース圧力および排気流に基づいてデータ点をプロットしたグラフである。
図3】実施形態にかかる適応モデルを示すグラフである。
図4】経時的なオフセットをプロットする第1のグラフと、同じ期間にわたる変化検出アルゴリズムの出力信号をプロットする第2のグラフとを示している。
図5】実施形態にかかる電源システムのシフトインシデントを検出するための方法のフローチャートである。
図6】本開示の実施形態にかかる逸脱検出システムの概略図である。
図7】実施形態にかかる逸脱検出システムを組み込む車両システムの概略図である。
図8】実施形態にかかる逸脱検出システムの制御ユニットの動作を示すブロックフロー図である。
図9】実施形態にかかるエネルギー供給回路に関連付けられた温度センサによって生成されたセンサ測定値をプロットしたグラフである。
図10】実施形態にかかるエネルギー供給システムにおいて逸脱状態を検出し、それに応答するための方法のフローチャートである。
図11】実施形態にかかる、電源回路とともに使用するための逸脱検出システムのブロック図である。
図12】実施形態にかかる逸脱状態を検出し、それに応答するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載の主題の実施形態は、電源システムの動作挙動のシフトを検出するためのシフト検出システムおよび方法に関する。動作挙動は、電源システムの動作パラメータ間の関係を含むことができる。例えば、シフト検出システムは、電源システムの少なくとも2つの離散パラメータを経時的に監視し、監視された動作パラメータの値が電源システムの異なる制御設定に対してどのように変化するかを追跡し得る。
【0011】
シフト検出システムは、監視されたパラメータに基づいて適応モデルを生成する。監視されたパラメータを介して、適応モデルは、電源システムの動作挙動を学習し、その挙動を特徴付ける出力関数を生成する。出力関数は、近い将来における電源システムの挙動(例えば、1つまたは複数のパラメータ)を予測するために使用される。典型的なシフト検出システムとは異なり、適応モデルは、監視されている特定の電源システムの実際の動作挙動に基づいている。適応モデルは、動作パラメータ間の予め符号化された関係を有する予め較正されたモデルではないため、モデルが監視される特定の電源システムを正確に特徴付けないという懸念はない。
【0012】
適応モデルは、監視された動作パラメータの更新された最近の値に基づいて経時的に更新する(例えば、適応する)。経時的に適応することによって、適応モデルは、起こり得る損傷について警告することなく、通常の摩耗などに基づいて電源システムのパラメータの自然なシフトをキャプチャする。監視パラメータの値は、実際の監視パラメータと予測挙動との間の残差オフセットまたは誤差を決定するために、適応モデルにおいて特徴付けられた予測挙動と比較される。残差オフセットは、電源システムへの損傷を示し得る、電源システムの挙動の平均シフトを検出するために使用される。
【0013】
シフト検出システムはまた、シフトインシデントを検出するように設計された変化検出アルゴリズムを含む。シフトインシデントは、少なくとも部分的に、適応テーブルに基づいてもよい。シフトインシデントは、電源システムの動作挙動の予期しない大きなシフトを表し得る。「有意」という用語がここで使用されるとき、それは、決定された閾値またはマージン限界よりも大きいシフトを意味する。変化検出アルゴリズムは、適応モデル内のサンプルデータ点の残差オフセットを入力として受信し得る。残差オフセットを監視することに基づいて、変化検出アルゴリズムは、データ点の平均または平均が適応テーブル内の予測される挙動のマージン外にあるように、十分な範囲のデータ点がマージン限界を超えるときにシフトインシデントを検出し得る。例えば、平均シフトは、監視された動作パラメータの値が、持続的な時間量および/または平均がマージン外になるのに十分な大きさだけマージン限界を超えるときに発生し得る。変化検出アルゴリズムは、適応テーブルのマージンを超え、ノイズなどに起因する可能性がある外れ値データ点からの平均シフトを区別し得る。例えば、変化検出アルゴリズムは、動作パラメータ間の関係の基本的なシフトを示すのに十分な外れデータが存在するまで、少数の外れ値データ点に基づいてシフトインシデントを検出しない場合がある。別の言い方をすれば、変化検出アルゴリズムは、経時的な動作挙動の正常なゆっくりとした変化、ならびにノイズを示す外れ値データ点を、電源システムの動作挙動の異常な予期しない根本的な変化と区別し得る。
【0014】
シフト検出システムおよび方法は、初期損傷から生じ得るより広範な二次損傷の前に、初期損傷の早期警告を提供し得る。早期警告は、二次的な損傷を回避するための是正措置を可能にするか、または自動的にトリガし得る。例えば、シフト検出システムは、エンジンの早期損傷または劣化を検出し得て、これは、エンジンが完全に故障する前に是正措置をとることを可能にする。早期のエンジンの損傷または劣化は、ライナスカッフィング、ボルト継手の緩み、シールの破損、ベルトの滑りなどを含み得る。
【0015】
1つまたは複数の実施形態が鉄道車両システムに関連して説明されているが、全ての実施形態が鉄道車両システムに限定されるわけではない。特に明記しない限り、本明細書に記載の主題は、自動車、トラック(トレーラありまたはなし)、バス、船舶、航空機、採掘車両、農業車両、または他のオフハイウェイ車両などの他のタイプの車両システムに及ぶ。本明細書に記載の車両システム(レールまたは軌道上を走行しない鉄道車両システムまたは他の車両システム)は、単一の車両または複数の車両から形成され得る。複数車両システムに関して、車両は、(例えば、カプラによって)互いに機械的に結合されてもよく、または論理的に結合されてもよいが、機械的に結合されなくてもよい。例えば、別個の車両が互いに通信して車両の動きを互いに調整し、それによって(例えば、コンボイとして)車両が一緒に移動する場合、車両は論理的に結合されるが機械的に結合されない場合がある。他の実施形態では、シフト検出システムおよび方法は、車両に搭載されているのではなく静止している電源システムを監視してもよい。例えば、製造設備は、機器に動力を供給するためのエンジン、燃料電池などの電源システムを含み得る。別の例では、電源システムは、経路に近接した線路沿いの場所にあってもよく、パンタグラフ、懸垂線、第三軌条などを介して経路上の車両に電力を伝送して、車両に電力を供給してもよい。
【0016】
図1は、実施形態にかかる車両101に搭載されたシフト検出システム100の概略ブロック図である。シフト検出システムは、コントローラ102と、1つまたは複数のセンサ104と、電源システム106と、通信装置112とを含み得る。他の実施形態では、シフト検出システムは、図1に示す構成要素以外の追加の構成要素を含んでもよく、および/または図1に示す構成要素のうちの1つまたは複数を欠いてもよい。例えば、通信装置は、任意であってもよい。
【0017】
コントローラは、センサ、電源システム、および通信装置に動作可能に接続され得る。コントローラは、各構成要素と信号を介して通信することができる。例えば、コントローラは、制御信号を表す電気信号を生成し得て、制御信号は、有線または無線通信経路を介して意図された受信構成要素に伝達される。コントローラは、シフト検出方法を実行するようにシフト検出システムの構成要素を制御するための制御信号を生成し得る。シフト検出方法は、電源システムの動作挙動の実質的な(すなわち、基本的または重要である)変化を検出するために実行される。一実施形態では、実質的な変化は、2つ以上の監視パラメータ間の監視された関係の平均シフトであり得る。別の実施形態では、実質的な変化は、ローリング平均などを参照して決定されてもよい。
【0018】
コントローラは、1つまたは複数のプロセッサ114(例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、集積回路、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイなど)を含むおよび/またはそれに接続されたハードウェア回路を表す。コントローラは、有形の非一時的コンピュータ可読記憶媒体(例えば、メモリ)116を含んでもよく、および/またはそれと接続されてもよい。メモリは、本明細書に記載のコントローラの動作を実行するために1つまたは複数のプロセッサによって実行されるプログラム命令(例えば、ソフトウェア)を記憶し得る。例えば、コントローラは、プログラムされた命令にしたがって、センサによって生成されたセンサデータなどの刺激に応答し得る。メモリのプログラムされた命令は、適応モデルアルゴリズム118および変化検出アルゴリズム120を含み得る。1つまたは複数のプロセッサは、適応モデルアルゴリズムを使用して、電源システムの少なくとも2つの動作パラメータ間の関係を特徴付ける適応モデルを生成し得る。適応モデルは、センサデータに基づいてもよい。1つまたは複数のプロセッサは、変化検出アルゴリズムを使用して、監視される動作パラメータのうちの1つの値と適応モデルの出力関数との間の誤差またはオフセットを監視し得る。変化検出アルゴリズムは、オフセットが適応モデル内の少なくとも2つの動作パラメータ間の関係の有意で比較的突然の変化を示すときに発生するシフトインシデントを検出するために使用される。メモリは、追加的または代替的に、シフト検出システムによって記録されたシフトインシデントの記録などの異なる情報を記憶してもよい。
【0019】
電源システムは、内燃機関であってもよい。エンジンは、クランクケース内のクランクシャフトに共通に接続されたいくつかのシリンダを含む。エンジンは、石油由来ディーゼル燃料、バイオディーゼル、石油由来ガソリン、天然ガス、水素などに基づいて動作し得る。実施形態では、エンジンは、経路に沿った車両の動きに動力を供給するために使用される原動機である。例えば、エンジンは、車両を推進するための牽引力を生成する推進システムの構成要素であってもよい。エンジンは、機械的動力を電力に変換する発電機の運動を駆動し得る。電力は、異なる対の駆動輪に接続され、駆動輪を回転させるためのトルクを及ぼす1つまたは複数のトラクションモータに分配される。実施形態では、電源システムは、複数の異なる燃料源に基づいて動作可能である。例えば、ディーゼルモードでは、エンジンは、石油由来のディーゼル燃料を受け取って燃焼させ、ピストンを移動させ、クランクシャフトを回転させ得る。第2の代替燃料モードでは、同じエンジンが、石油由来のディーゼル以外の別のタイプの燃料を受け取って燃焼させ得る。実施形態では、代替タイプの燃料は天然ガスである。このタイプのエンジンは、デュアル燃料エンジンと呼ばれる。コントローラは、走行中にエンジンのモードを選択的に切り替えて、燃料効率を高め、排出物を削減するなどし得る。他の実施形態では、電源システムは、内燃機関以外であってもよい。例えば、電源システムは、燃料電池、電池パックなどであってもよい。
【0020】
センサは、電源システムの動作パラメータまたは特性を監視し得る。動作パラメータは、圧力、流量、温度、振動、電力消費(例えば、電圧、電流など)、音などを含み得る。センサは、電源システムが動作している間、経時的に動作パラメータを監視する。例えば、複数のセンサは、電源システムの異なる対応するパラメータを監視するために共通の期間中に動作し得る。センサは、動作パラメータを測定するために、電源システムに、または電源システムに近接して取り付けられてもよい。センサは、エンジンのクランクケース内の圧力を監視する圧力センサを含み得る。圧力センサは、クランクケース内の圧力によってダイヤフラムに加えられる力に基づいて移動するダイヤフラム(例えば、膜)を含み得る。ダイヤフラムの変位は、圧力センサのセンサ測定値を表す電圧などの電気的特性に変換される。コントローラは、電圧を受信し、電圧を指定された単位の圧力値に変換し得る。存在し得る追加のタイプのセンサの例は、温度センサ、圧電加速度計(例えば、振動センサ)、流量センサ、電圧および/または電流センサなどを含む。実施形態では、センサは、電源システムの動作パラメータを示すセンサ測定値(例えば、センサデータ)を生成する。コントローラは、センサによって生成されたセンサ測定値を受信し、センサ測定値の少なくとも一部を使用して適応テーブルを生成し得る。
【0021】
通信装置は、電気信号を無線で通信することができるハードウェア回路を表す。例えば、通信装置は、送受信回路、1つまたは複数のアンテナなどを表すことができる。送受信回路は、送受信機または別個の送信機および受信機を含み得る。電気信号は、集合体においてメッセージを表すデータパケットを形成することができる。一例では、通信装置は、電気信号を無線周波数(RF)信号として無線通信し得る。別の例では、通信装置は、ネットワーク(例えば、インターネット)に接続されたモデム、ルータなどであってもよい。通信装置は、シフト検出システムのコントローラによって生成されたメッセージを通信し得る。通信装置は、車両の機外からメッセージを受信し、受信したメッセージを分析のためにコントローラに転送し得る。
【0022】
図示の実施形態では、シフト検出システムは、車両に搭載されている。例えば、コントローラは、車両によって実装される牽引およびブレーキ設定を生成することによって車両の動きを制御する車両電子制御ユニット(ECU)の構成要素であってもよい。任意に、シフト検出システムのコントローラは、車両ECUから分離され、有線および/または無線経路を介してECUに通信可能に接続されてもよい。別の実施形態では、コントローラは、車両の機外に配置される。コントローラは、配車施設、コンピュータシステム(例えば、サーバ)を収容するデータセンタなどにおいて車両から離れて配置されてもよい。コントローラが電源システムから離れている場合、電源システムの1つまたは複数の動作パラメータを監視するセンサデータがコントローラに遠隔送信され得る。例えば、通信装置は、電源システムの監視された動作パラメータを示すセンサデータを含むメッセージ、または複数のメッセージのストリームを受信し得る。
【0023】
シフト検出システムのコントローラは、適応モデルを生成することによって電源システムの動作を監視し得る。適応モデルを生成するために、コントローラは、経時的に電源システムの少なくとも2つの動作パラメータの値を取得し得る。少なくとも2つの動作パラメータの値は、センサによって生成されたセンサデータに基づき得る。例えば、動作パラメータの1つまたは複数は、センサによって直接測定されてもよい。1つまたは複数の他の動作パラメータは、直接測定される他の動作パラメータに基づいて間接的に導出されてもよい。例えば、導出された動作パラメータは、1つまたは複数の直接測定されたパラメータの値をモデル化された関数に入力することによって計算され得る。一実施形態では、コントローラは、第1の動作パラメータおよび第2の動作パラメータのみに基づいて適応モデルを生成し得るが、他の実施形態は、適応モデルを生成するために3つ以上の動作パラメータを使用し得る。コントローラは、メモリに予め記憶された値にアクセスすることなどによって、通信装置によって受信されたメッセージを介して第1および第2の動作パラメータの値を取得し得る。
【0024】
様々な動作パラメータが適応モデルの基礎として選択され得る。適応モデルを生成するために使用される特定の動作パラメータは、電源システムが動作するときの動作パラメータの挙動間の相関に基づいて選択され得る。例えば、第1の動作パラメータおよび第2の動作パラメータは、一般に、電源システムの動作の変化に応答してともに変動し得る。例えば、第1のパラメータの変化は、第2のパラメータの変化を伴ってもよい。パラメータの変化は、通常の動作状態の間、一般に反復可能且つ一貫していてもよい。適応モデルは、第1のパラメータと第2のパラメータとの間の関係を学習し、特徴付けるために生成される。本明細書で説明するように、コントローラは、動作パラメータ間の学習された関係が大きく変化したときにシフトインシデントを検出する。
【0025】
実施形態では、電源システムはエンジンであり、適応モデルを生成するために使用される第1の動作パラメータは、エンジンから放出される排気ガス(本明細書では排気流と呼ばれる)の流量であり、適応モデルを生成するために使用される第2の動作パラメータは、エンジンのクランクケース内の圧力(クランクケース圧力と呼ばれる)である。定常状態でのエンジン動作中、排気流の変化は、一般にクランクケース圧力の変化を伴う。実施形態では、クランクケース圧力は、圧力センサを介して直接測定され、排気流は、エンジン速度、マニホールド圧力、温度などの他のパラメータから導出される。例えば、排気流は、エンジンに供給された新鮮な空気および燃焼した燃料を決定することによって質量の保存に基づいて推定され得て、これらは組み合わされて排気を形成する。あるいは、排気流は、1つまたは複数のセンサを介して直接測定されてもよい。排気流は、より高いノッチ設定によって排気の流量が増加するように、エンジンの牽引設定(例えば、ノッチ設定)に比例し得る。
【0026】
他の実施形態では、適応モデルを生成するために異なる動作パラメータが使用されてもよい。例えば、電源システムが燃料電池である場合、第1の動作パラメータは、燃料流量であってもよく、第2の動作パラメータは、燃料電池の燃料フィルタにわたる圧力降下であってもよい。別の燃料電池の例では、第1の動作パラメータは、エネルギー効率であってもよく、第2のパラメータは、電力であってもよい。電源システムが電池パックである例では、第1の動作パラメータは、電流であってもよく、第2のパラメータは、電池パックの充電および/または放電中に経験する電力損失であってもよい。
【0027】
コントローラは、電源システムが動作するときに共通の期間中に監視された第1および第2の動作パラメータの値に基づいて適応モデルを生成する。以下の説明は、クランクケース圧力および排気流に基づく適応モデルを参照するが、適応モデルは、他の実施形態では異なる動作パラメータに基づくことができる。コントローラは、クランクケース圧力および排気流の値を時間に基づいてデータ点に配置する。例えば、各データ点は、それぞれの排気流量値およびそれぞれのクランクケース圧力値によって定義され、これらはほぼ同じ瞬間(例えば、互いに1秒以内、0.5秒以内、0.1秒以内など)に対応する。グラフ上にプロットされた場合、排気流量値は、第1の座標(例えば、X軸に沿って)を表し、クランクケース圧力値は、第2の座標(例えば、Y軸に沿って)を表す。電源システムが監視されている期間中、数百または数千のデータ点が収集され、適応モデルを生成するために使用され得る。コントローラは、経時的に受信された新たな更新されたデータ点に基づいて適応モデルを連続的に更新し得る。例えば、コントローラは、電源システムが監視されている期間中に適応モデルを最初に生成し得て、動作パラメータの追加の値が取得される(および新たなデータ点が生成される)ときに適応モジュールを経時的に更新し得る。
【0028】
図2は、実施形態にかかる、監視されたクランクケース圧力および排気流に基づいてデータ点202をプロットしたグラフ200である。グラフ内のデータは、適応モデルを生成するためにコントローラによって使用され得る。横軸(X軸)は排気流を表し、縦軸(Y軸)はクランクケース圧(CCP)を表す。データ点は、異なる座標(例えば、(x,y)、(x,y)、(x,y))を有する。例えば、座標(x,y)を有するデータ点は、監視期間中の第1の時間における排気流の値(x)およびクランクケース圧力の値(y)を表す。データ点(x,y)は、監視期間中の第2の時間における排気流の値(x)およびクランクケース圧力の値(y)を表す。サンプルデータ点は、10分の1秒ごと、0.2秒ごと、0.5秒ごとなど、周期的に生成され得る。
【0029】
コントローラは、第1の動作パラメータの指定された範囲にしたがってデータ点をビン204にグループ化し得る。一例では、ビンは、排気流の範囲によって定義される。ビンは、固定された重複しない範囲を有する。例えば、第1のビン204Aは、1から1000グラム/秒(g/秒)の範囲を表し得て、第2のビン204Bは、1001から1500g/秒の範囲を表し得て、第3のビン204Cは、1501から2000g/秒であり得て、第4のビン204Dは、2001から2500g/秒であり得る。範囲は、エンジンの牽引設定に基づいて選択され得る。例えば、第1のビンの範囲は、エンジンが第1のノッチ設定において動作するときの排気流量値を含むように選択されてもよく、第2のビンの範囲は、エンジンが第2のノッチ設定において動作するときの排気流量値を含むように選択されてもよい、などである。ビンの範囲は、均一であってもよく、あるいは、1つのビンが別のビンよりも大きいまたは狭い範囲を有するように、サイズが変化してもよい。
【0030】
コントローラは、個々のビン内のデータ点に基づいて、個々のビンに関連付けられたノード206を計算し得る。例えば、第1のノード206Aは、第1のビン内のデータ点のみに基づいて計算されてもよい(例えば、他のビン内のデータ点を考慮せずに)。第2のノード206Bは、第2のビン内のデータ点のみに基づいて計算され得る。第3および第4のノード206C、206Dは、それぞれ、第3および第4のビンについて同様に計算され得る。各ノードは、関連付けられたビン内のデータ点の中心に配置される。コントローラは、関連付けられたビン内のデータ点の第1の動作パラメータの値の第1の平均を計算することによってノードの各々を決定し得る。コントローラは、関連付けられたビン内のデータ点の第2の動作パラメータの値の第2の平均を計算する。図示の例では、第1の平均は、それぞれのビン内のデータ点の排気流量値の平均であり、第2の平均は、それぞれのビン内のデータ点のクランクケース圧力値の平均である。コントローラは、第1の平均および第2の平均をノードの座標として分類し得る。例えば、第1のビン内のノードのX座標は、第1のビン内の排気流量値の平均であり、ノードのY座標は、第1のビン内のクランクケース圧力値の平均である。
【0031】
実施形態では、第1の平均および第2の平均は、重み付け平均である。コントローラは、忘却係数を第1の平均および第2の平均の計算に組み込むことによって、第1の平均および第2の平均を重み付けし得る。忘却係数は、より最近のデータ点(例えば、より新たな)にはより大きな重みを適用し、より最近でないデータ点(例えば、より古い)にはより小さな重みを適用し得る。忘却係数は、0よりも大きく且つ1よりも小さくてもよい。忘却係数は、過去を忘却するために指数関数的に重み付けされてもよい。結果として、より新たなデータ点は、より古いデータ点よりも強く重み付けされるため、より新たなデータ点は、より古いデータ点よりもノードの位置に大きな影響を及ぼす。更新されたデータ点が受信されると、コントローラは、更新されたデータに基づいてノードの位置を更新し得る。ノードは、古いデータサンプルを指数関数的に忘却して、有界ビン内のデータサンプルの移動平均を表し得る。代替的な実施形態では、コントローラは、ノードの位置がビン内の各データ点によって等しく影響されるように、忘却係数をノード計算に組み込まなくてもよい。
【0032】
実施形態では、コントローラは、所与のビン内に少なくとも閾値数のデータ点が存在するまで、そのビン内のノードの計算を延期し得る。この制約は、データが適応テーブルの生成に考慮される前に十分な量のデータが収集されることを保証する。データ点の閾値数は、20、50、100などであってもよい。ビン内に十分な数のデータサンプルがある場合、ノードを計算するために排気流量値およびクランクケース圧力値を平均することは、離散ローパスフィルタとして建設的に作用し得る。
【0033】
3つの動作パラメータが適応モデルを生成するために使用される実施形態では、ビンは、2次元の範囲によって定義されてもよい。例えば、ビンは、長方形または正方形の形状を有してもよい。データ点は、3つの動作パラメータに対応するx、y、およびz座標を有してもよい。ノードは、それぞれのビン内の3つの座標の各々の平均をとることによって中心または重心として計算されてもよい。
【0034】
図2には4つのビンが示されているが、コントローラは、5つのビン、10個のビンなどの任意の数のビンにデータ点をグループ化してもよい。コントローラは、データ点制約が満たされると、各ビンについてのノードを計算し得る。
【0035】
ノードを計算した後、コントローラは、ノードに基づいて出力関数を決定し得る。出力関数は、第1および第2の動作パラメータの間の関係を表し、図示の例では、排気流およびクランクケース圧力である。例えば、出力関数は、関係を数学的関数に特徴付け得る。実施形態では、コントローラは、ノードを接続する線形補間(例えば、線形フィット)を実行することによって適応モデルの出力関数を決定し得る。
【0036】
図3は、実施形態にかかる適応モデル302を示すグラフ300である。クラスタ304は、多数の個々のデータ点またはサンプルを表す。グラフは、10個のノード306を示す。ノードは、図2に示すノードと同じ方法で計算され得る。グラフは、ノードを接続するプロット線308を示す。プロット線は、適応モデルの出力関数を表す。出力関数は、ノードを接続する線形の一次補間(または適合)であってもよい。出力関数は、図3にグラフ化されているが、適応関数は、ルックアップテーブルなどに組み込まれてもよい。グラフ内の第1のノードは、原点(0,0)にあってもよい。グラフ内の最後の(例えば、最大排気流)ノードは、出力関数および最後のビン内のノードに基づいて外挿される高終点であってもよい。最初のノードと最後のノードとの間のノードは、有効ビンのノードを表す。有効ビンは、少なくとも閾値数のデータ点を有するなど、適用可能な制約を満たすビンである。図3に示すように、出力関数は、最初のノードから最後のノードまで線形ではない。さらにまた、出力関数は、ノードが更新されたデータに基づいて移動するにつれて経時的に変化する(例えば、適応する)。出力関数は、監視されたパラメータに基づく電源システム(例えば、エンジン)の予想される挙動を表す。
【0037】
コントローラは、適応モデルの出力関数を囲むようにマージン310を適用し得る。マージンは、出力関数の上方で上限または境界312までおよび出力関数の下方で下限または境界314まで延在する。上下の境界を含めたマージンのサイズが指定(例えば、事前較正)されてもよい。例えば、上下の境界は、コントローラのメモリに記憶されてもよい。図示の例では、出力関数の下方のマージンは、出力関数に関するマージンよりも大きい。コントローラは、メモリに記憶された変化検出アルゴリズムにしたがってシフトインシデントを検出するためにマージンを使用する。
【0038】
コントローラは、変化検出アルゴリズムを実装して、適応モデルの出力関数を囲む較正されたマージンの上および/または下のデータの平均シフトを検出する。実施形態では、コントローラは、適応モデルの出力関数と第2の動作パラメータの最近の値との間のオフセット(例えば、残差オフセットまたは誤差)を決定する。図示の例では、第2の動作パラメータは、クランクケース圧力である。図3に示すように、ほとんどのデータ点は、マージン内にクラスタ化されているため、出力関数とこれらのデータ点との間のオフセットは比較的低い。1つのクラスタ304Aは、マージン外の上側境界の上方に位置するため、これらの点ではオフセットが大きくなる。コントローラは、オフセットを変化検出アルゴリズムに入力することによってシフトインシデントを検出し得る。変化検出アルゴリズムは、指定されたマージン外にあるデータ点の平均シフトを検出し得る。例えば、変化検出アルゴリズムは、指定されたマージン外のデータ点を積分し得る。
【0039】
図4は、経時的な残差オフセット401をプロットする第1のグラフ400と、同じ期間にわたる変化検出アルゴリズムの出力信号403をプロットする第2のグラフ402とを示している。第1のグラフの残差オフセットは、クランクケース圧力の実際の測定値と、適応モデルの出力関数において特徴付けられるクランクケース圧力の予想値との間の差または誤差を表す。残差オフセット(本明細書ではオフセットと呼ぶ)は、変化検出アルゴリズムに入力され得る。実施形態では、変化検出アルゴリズムは、累積和制御(CUSUM)アルゴリズムである。CUSUMアルゴリズムは、オフセットの累積和に基づいてシフトを検出し得る。CUSUMアルゴリズムは、マージンの上限または境界を超えるデータ内のクランクケース圧力の値を積分し得る。上限を超える値は、オフセットから許容誤差を減算することによって決定され得て、許容誤差は、適応モデルの出力関数から上限までの距離を表す。CUSUMアルゴリズムは、クランクケース圧力値が上限を超える量を積分して、平均シフトが発生したかどうかを決定し得る。平均シフトが発生すると、CUSUMアルゴリズムの出力信号は急激に増加する。図4では、出力信号の増加は約2.58秒で起こる。別のCUSUMアルゴリズムが適用されて、マージンの下限または境界を下回るデータ内のクランクケース圧力の値を積分してもよい。
【0040】
CUSUMアルゴリズムは、適応モデルの出力関数に対する少なくとも1つの標準偏差分のクランクケース圧力の値の平均シフトを検出し得る。任意に、CUSUMアルゴリズムは、少なくとも1.5標準偏差の平均シフトを検出するように設計されてもよい。積分することにより、CUSUMアルゴリズムは、データの平均の有意なシフトのみが出力信号を実行させるため、ノイズおよびランダムな外れ値データ点を首尾よく無視し得る。実施形態では、コントローラは、変化検出アルゴリズム(例えば、CUSUMアルゴリズム)の出力信号が閾値404を超えたときにシフトインシデントを検出する。図4では、出力信号は、約2.59秒で閾値を超える。実施形態では、適応モデルは、閉ループであり、残差オフセットは、経時的に常に0に近付く。したがって、変化検出アルゴリズムの出力信号は、図4に示すように0に戻り得る。コントローラは、閾値を超える迅速なシフトを探す。任意に、コントローラは、複数の閾値を有してもよく、コントローラは、閾値が変化検出アルゴリズムの出力信号によって超えられることに基づいて異なる応答措置をとってもよい。CUSUMが記載されているが、適応モデルに対するデータの平均シフトを検出するために、様々な他のタイプの変化検出アルゴリズムが使用されてもよい。
【0041】
シフトインシデントは、エンジンが損傷している可能性があるという指示である。本明細書に開示されたシフト検出システムの利点の1つは、シフトインシデントがその発生から数秒で検出され得ることであり、これは、二次的な損傷のリスクを低減するための迅速な応答を可能にする。シフトインシデントの検出に応答して、コントローラは、1つまたは複数の措置をとり得る。
【0042】
例えば、コントローラは、電源システムが損傷している可能性があり、さらなる損傷のリスクがあることをオペレータに通知するための制御信号を生成し得る。例えば、コントローラは、通信装置によってオペレータのパーソナルコンピュータ装置(例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ワークステーション、ウェアラブル装置など)に送信されるメッセージを生成し得る。メッセージは、シフトインシデントについてオペレータに警告するために、テキスト、音声、光、および/または振動を提供し得る。
【0043】
別の例では、コントローラは、エンジンまたは他の電源システムのメンテナンスを開始するための制御信号を生成してもよい。コントローラは、メンテナンスを自動的にスケジュールしてもよい。コントローラは、エンジンまたは他の電源システムをシャットダウンするための制御信号を生成してもよく、これは、さらなる損傷を防止するための最良の機会を提供する。任意に、エンジンを自動的に停止する代わりに、コントローラは、エンジンに動作制約を適用してもよい。動作制約は、エンジンの出力を制限し、エンジンが動作することができる時間量を制限し、エンジンの動作モードを制限することができるなどである。動作モードを制限することは、エンジンを代替燃料モードで動作させるのではなく、動作をディーゼルモードに制限することを含み得る。エンジンを検査するためにメンテナンスが実行されると、動作制約が解除され得る。電池パックである電源システムの場合、動作制約は、電池パックによって供給される電流または電圧を制限することなどを含み得る。
【0044】
任意に、シフトインシデントの程度または大きさに応じて異なる措置が行われてもよい。例えば、第1のより低い閾値が変化検出アルゴリズムの出力信号によって超えられた場合、第1の措置が行われる。第2のより高い閾値を超えた場合、異なる第2の措置が行われ、これは、第1の措置よりも緊急であるか、または深刻であり得る。例えば、第1の措置は、インシデントを記録し、オペレータに通知することであってもよい。任意に、第1の措置は、動作制約を適用することを含んでもよい。第2の措置は、電源システムのシャットダウン、メンテナンスのスケジューリング、より制限的な動作制約の適用などを含んでもよい。
【0045】
コントローラは、検出された全てのシフトインシデントの記録を記録し得る。例えば、コントローラは、出力信号が閾値を超えたときのデータに関連付けられたタイムスタンプに基づいて、シフトインシデントが発生した時間を決定し得る。次いで、コントローラは、発生時刻を含むシフトインシデントの記録を記録するための制御信号を生成し得る。記録は、少なくとも一時的にコントローラのメモリに記憶されてもよい。記録は、通信装置によって遠隔通信されてもよい。
【0046】
さらに別の例では、コントローラは、特定のデータレコーダを開始するための制御信号を生成してもよい。データレコーダは、エンジン制御ユニットの動作を監視し得る。例えば、シフトインシデントを検出すると、コントローラは、動作データを生成および/または記憶する第1のデータレコーダを起動し得る。制御信号に応答して生成および/または記憶される動作データは、シフトインシデントの原因および/または改善に関するより多くの洞察を提供するために分析されてもよい。例えば、動作データは、機械学習アルゴリズム、基本的な論理規則を有するアルゴリズムなどに入力されてもよい。分析の1つの潜在的な出力は、シフトインシデントを無視することであり、別の潜在的な出力は、シフトインシデントの重大度レベルを上げることである。制御信号に応答して生成および/または記憶される動作データは、改善された診断などの開発をサポートするために使用され得る。
【0047】
シフト検出システムが車両に設置されると、コントローラは、シフトインシデントの検出に基づいて車両の動きを制御し得る。例えば、コントローラは、車両を整備施設に運転してもよく、ブレーキをかけて車両を停止させてもよい。
【0048】
図5は、実施形態にかかる電源システムのシフトインシデントを検出するための方法のフローチャート500である。本方法は、図1に示すシフト検出システムのコントローラによって全体的にまたは少なくとも部分的に実行され得る。本方法は、任意に、図5に示されているよりも多くのステップ、図5に示されているよりも少ないステップ、および/または図5に示されているよりも異なるステップを含んでもよい。さらにまた、図5に示されるステップの順序は、明示的に述べられていない限り、およびそのような並べ替えられた順序が実際に実現可能な限り、並べ替えられてもよい。
【0049】
ステップ502において、電源システムの第1の動作パラメータおよび第2の動作パラメータが、電源システムが動作するにつれて経時的に監視される。任意に、第1および第2の動作パラメータは、電源システムの定常状態の間に監視される。
【0050】
ステップ504において、監視される第1および第2の動作パラメータの値に基づいて適応モデルが生成される。適応モデルは、複数のデータ点を含み、データ点の各々は、第1の動作パラメータのそれぞれの値および第2の動作パラメータのそれぞれの値によって定義される。適応モデルを生成することは、第1の動作パラメータの指定された範囲にしたがってデータ点をビンにグループ化することと、個々のビン内のデータ点に基づいて個々のビンに関連付けられたノードを計算することとを含み得る。適応モデルを生成することは、第1の動作パラメータと第2の動作パラメータとの間の関係を表すノードに基づいて出力関数を決定することを含み得る。任意に、適応モデルの出力関数を決定することは、ノードを接続する線形補間を実行することを含んでもよい。適応モデルを生成するために使用される第1および第2の動作パラメータの値は、電源システムの定常状態の間に監視され得る。任意に、ビンを定義する第1の動作パラメータの指定された範囲は、電源システムの牽引設定に基づいて選択されてもよい。
【0051】
実施形態では、各ノードは、関連付けられたビン内のデータ点の中心に配置される。各ビンのノードは、関連付けられたビン内のデータ点の第1の動作パラメータの値の第1の平均および関連付けられたビン内のデータ点の第2の動作パラメータの値の第2の平均を計算することによって決定される。ノードは、第1の平均および第2の平均の双方によって定義される。第1の平均および第2の平均は、重み付け平均であってもよい。第1の平均および第2の平均を計算することは、より最近のデータ点にはより大きい重みを適用し、より最近でないデータ点にはより小さい重みを適用する忘却係数を組み込むことを含み得る。
【0052】
ステップ506において、シフトインシデントが、適応モデルの出力関数と監視される第2の動作パラメータの値との間のオフセットに基づいて検出される。任意に、シフトインシデントを検出することは、オフセットを変化検出アルゴリズムに入力して、出力関数を囲む指定されたマージン外のデータ点の平均シフトを検出することを含む。変化検出アルゴリズムは、指定されたマージン外のデータ点を積分し得る。シフトインシデントは、変化検出アルゴリズムの出力信号が閾値を超えたことに応答して検出され得る。任意に、変化検出アルゴリズムは、累積和制御(CUSUM)アルゴリズムである。
【0053】
ステップ508において、シフトインシデントの検出に応答して、(i)電源システムが損傷の危険性があることをオペレータに通知すること、(ii)電源システムのメンテナンスを開始すること、(iii)電源システムに動作制約を適用すること、および/または(iv)電源システムをシャットダウンすることを行うように制御信号が生成される。任意に、本方法は、シフトインシデントが発生した時刻を決定することと、シフトインシデントの時刻を含むシフトインシデントのレコードを記録する第2の制御信号を生成することと、を含んでもよい。任意に、電源システムは、電源システムが石油由来ディーゼル燃料を使用するディーゼルモードと、電源システムが別のタイプの燃料を使用する代替燃料モードとの双方で動作可能である。制御信号は、電源システムをディーゼルモードに制限することによって電源システムに動作制約を適用するように生成され得る。
【0054】
本明細書に開示される主題の1つの例または態様によれば、1つまたは複数のプロセッサを備えるコントローラを含むシフト検出システムが提供される。コントローラは、電源システムの第1の動作パラメータの値および電源システムの第2の動作パラメータの値を取得するように構成され得る。第1および第2の動作パラメータは、電源システムが動作するときに経時的に監視され得る。コントローラは、監視される第1および第2の動作パラメータの値に基づいて適応モデルを生成するように構成され得る。適応モデルは、複数のデータ点を含み得て、データ点の各々は、第1の動作パラメータのそれぞれの値および第2の動作パラメータのそれぞれの値によって定義される。コントローラは、第1の動作パラメータの指定された範囲にしたがってデータ点をビンにグループ化し、個々のビン内のデータ点に基づいて個々のビンに関連付けられたノードを計算するように構成され得る。コントローラは、第1の動作パラメータと第2の動作パラメータとの間の関係を表すノードに基づいて出力関数を決定するように構成され得る。コントローラは、適応モデルの出力関数と監視される第2の動作パラメータの値との間のオフセットに少なくとも部分的に基づいてシフトインシデントを検出し得る。シフトインシデントの検出に応答して、コントローラは、(i)電源システムが損傷の危険性があることをオペレータに通知すること、(ii)電源システムのメンテナンスを開始すること、(iii)電源システムに動作制約を適用すること、または(iv)電源システムをシャットダウンすることのうちの1つまたは複数のための制御信号を生成し得る。
【0055】
任意に、コントローラは、オフセットを変化検出アルゴリズムに入力して、出力関数を囲む指定されたマージン外のデータ点の平均シフトを検出することによってシフトインシデントを検出するように構成されてもよい。変化検出アルゴリズムは、指定されたマージン外のデータ点を積分することができ、コントローラは、変化検出アルゴリズムの出力信号が閾値を超えたことに応答して、シフトインシデントを検出するように構成され得る。変化検出アルゴリズムは、累積和制御(CUSUM)アルゴリズムであってもよい。
【0056】
任意に、コントローラは、適応モデルの出力関数に対する少なくとも1つの標準偏差分の第2の動作パラメータの値の平均シフトを検出することによって、シフトインシデントを検出するように構成されてもよい。任意に、コントローラは、ノードを接続する線形補間を実行することによって適応モデルの出力関数を決定するように構成されてもよい。
【0057】
任意に、ノードの各々は、関連付けられたビン内のデータ点の中心に配置されてもよい。コントローラは、関連付けられたビン内のデータ点の第1の動作パラメータの値の第1の平均を計算し、関連付けられたビン内のデータ点の第2の動作パラメータの値の第2の平均を計算し、第1の平均および第2の平均をノードの座標として分類することによって、ノードのそれぞれを決定するように構成されてもよい。第1の平均および第2の平均は重み付け平均であってもよく、コントローラは、より最近のデータ点にはより大きな重みを適用し、より最近でないデータ点にはより小さな重みを適用する忘却係数を組み込むことによって第1の平均および第2の平均を計算するように構成されてもよい。
【0058】
任意に、コントローラは、個々のビン内に少なくとも閾値数のデータ点が存在するまで、個々のビンのそれぞれにおけるそれぞれのノードの計算を延期するように構成されてもよい。任意に、コントローラは、シフトインシデントが発生した時刻を決定し、シフトインシデントの時刻を含むシフトインシデントの記録を記録する第2の制御信号を生成するように構成されてもよい。
【0059】
任意に、電源システムは、電源システムが石油由来ディーゼル燃料を使用するディーゼルモードと、電源システムが別のタイプの燃料を使用する代替燃料モードとの双方で動作可能である。コントローラは、電源システムの動作をディーゼルモードのみに制限することによって電源システムに動作制約を適用するための制御信号を生成するように構成されてもよい。任意に、第1の動作パラメータは、電源システムから放出される排気ガスの流量であってもよく、第2の動作パラメータは、電源システムのクランクケース内の圧力であってもよい。任意に、シフト検出システムは、コントローラに動作可能に接続された1つまたは複数のセンサを含んでもよい。1つまたは複数のセンサは、第1および第2の動作パラメータを監視するためにコントローラによって使用されるセンサ測定値を生成するように構成されている。任意に、電源システムは、車両の推進力を供給するエンジンまたは燃料電池であってもよい。任意に、コントローラは、車両に搭載されてもよい。
【0060】
本明細書に開示される主題の1つの例または態様によれば、電源システムにおけるシフトを検出するための方法が提供される。本方法は、電源システムが動作するときに、電源システムの第1の動作パラメータおよび第2の動作パラメータを経時的に監視することを含み得る。本方法は、監視される第1および第2の動作パラメータの値に基づいて適応モデルを生成することを含み得る。適応モデルは、複数のデータ点を含み得て、データ点の各々は、第1の動作パラメータのそれぞれの値および第2の動作パラメータのそれぞれの値によって定義される。適応モデルを生成することは、第1の動作パラメータの指定された範囲にしたがってデータ点をビンにグループ化することと、個々のビン内のデータ点に基づいて個々のビンに関連付けられたノードを計算することとを含み得る。適応モデルを生成することは、第1の動作パラメータと第2の動作パラメータとの間の関係を表すノードに基づいて出力関数を決定することを含み得る。本方法は、適応モデルの出力関数と監視される第2の動作パラメータの値との間のオフセットに少なくとも部分的に基づいてシフトインシデントを検出することを含み得る。シフトインシデントを検出することに応答して、本方法は、(i)電源システムが損傷の危険性があることをオペレータに通知すること、(ii)電源システムのメンテナンスを開始すること、(iii)電源システムに動作制約を適用すること、または(iv)電源システムをシャットダウンすることのうちの1つまたは複数のための制御信号を生成することを含み得る。
【0061】
任意に、シフトインシデントを検出することは、オフセットを変化検出アルゴリズムに入力して、出力関数を囲む指定されたマージン外のデータ点の平均シフトを検出することを含んでもよい。変化検出アルゴリズムは、指定されたマージン外のデータ点を積分し得る。シフトインシデントは、変化検出アルゴリズムの出力信号が閾値を超えたことに応答して検出され得る。任意に、変化検出アルゴリズムは、累積和制御(CUSUM)アルゴリズムであってもよい。
【0062】
任意に、適応モデルの出力関数を決定することは、ノードを接続する線形補間を実行することを含んでもよい。任意に、ノードの各々は、関連付けられたビン内のデータ点の中心に位置してもよく、関連付けられたビン内のデータ点の第1の動作パラメータの値の第1の平均および関連付けられたビン内のデータ点の第2の動作パラメータの値の第2の平均を計算することによって決定されてもよい。ノードは、第1の平均および第2の平均の双方によって定義されてもよい。任意に、第1の平均および第2の平均は重み付け平均であってもよく、第1の平均および第2の平均を計算することは、より最近のデータ点により大きな重みを適用し、より最近でないデータ点により小さな重みを適用する忘却係数を組み込むことを含んでもよい。
【0063】
任意に、適応モデルが根拠とする第1および第2の動作パラメータの値は、電源システムの定常状態の間に監視されてもよい。ビンを定義する第1の動作パラメータの指定された範囲は、電源システムの牽引設定に基づいて選択され得る。任意に、本方法は、シフトインシデントが発生した時刻を決定することと、シフトインシデントの時刻を含むシフトインシデントのレコードを記録する第2の制御信号を生成することと、を含んでもよい。任意に、電源システムは、電源システムが石油由来ディーゼル燃料を使用するディーゼルモードと、電源システムが別のタイプの燃料を使用する代替燃料モードとの双方で動作可能であってもよい。制御信号は、電源システムをディーゼルモードに制限することによって電源システムに動作制約を適用するように生成され得る。
【0064】
本明細書に開示される主題の1つの例または態様によれば、エンジン、1つまたは複数のセンサ、およびコントローラを含み得る車両が提供される。エンジンは、車両の移動を推進するための動力を生成するように構成され得る。1つまたは複数のセンサは、エンジンに対応するセンサ測定値を生成するように構成され得る。コントローラは、1つまたは複数のプロセッサを含み得て、1つまたは複数のセンサに動作可能に接続され得る。コントローラは、1つまたは複数のセンサによって生成されたセンサ測定値に基づいて、電源システムが動作するときに経時的に電源システムの第1の動作パラメータおよび第2の動作パラメータを監視するように構成され得る。コントローラは、監視される第1および第2の動作パラメータの値に基づいて適応モデルを生成し得る。適応モデルは、複数のデータ点を含み得て、データ点の各々は、第1の動作パラメータのそれぞれの値および第2の動作パラメータのそれぞれの値によって定義される。コントローラは、第1の動作パラメータの指定された範囲にしたがってデータ点をビンにグループ化し、個々のビン内のデータ点に基づいて個々のビンに関連付けられたノードを計算するように構成され得る。コントローラは、第1の動作パラメータと第2の動作パラメータとの間の関係を表すノードに基づいて出力関数を決定するように構成され得る。コントローラは、適応モデルの出力関数と監視される第2の動作パラメータの最近の値との間のオフセットに少なくとも部分的に基づいてシフトインシデントを検出し得る。シフトインシデントの検出に応答して、コントローラは、(i)電源システムが損傷の危険性があることをオペレータに通知すること、(ii)電源システムのメンテナンスを開始すること、(iii)電源システムに動作制約を適用すること、または(iv)電源システムをシャットダウンすることのうちの1つまたは複数のための制御信号を生成し得る。
【0065】
1つまたは複数の実施形態では、電源回路の動作中の逸脱検出のためのシステムおよび方法が提供される。電源回路は、エネルギー供給システムを含むことができる。エネルギー供給システムは、エネルギー貯蔵システム、充電システム、外部電源(例えば、懸垂線または第三軌条)などを含むことができる。本明細書に記載のいくつかの逸脱検出システムおよび方法は、電源回路、エネルギー貯蔵モジュール、および電源線の予想される挙動をモデル化/観察することに基づき得る。それは、電源回路の監視された挙動と予想される挙動との間の逸脱に基づいて逸脱状態を検出し得る。予想される挙動は、パラメータ値、経時的なパラメータ値(例えば、プロット線)、経時的なパラメータ値の変化(例えば、傾き)、パラメータ値の変動(例えば、範囲)などの形態で決定され得る。予想される挙動を表すために使用されるパラメータは、センサによって直接測定され得る測定されたパラメータおよび/またはセンサ測定値の関数として導出され得る導出(または変換)されたパラメータであり得る。本明細書で使用される場合、予想される挙動を表すパラメータ値およびパラメータ変動は、基準値および基準変動と呼ばれる。
【0066】
同様の動作状態を経験するグループ内のいくつかのアイテムは、同様に機能することが予想され得る。例えば、同じモジュール内の異なる電池セルまたは充電器内の電力線の温度を監視する温度センサは、同様の温度測定値を生成することが予想され得る。決定された電流レベル、電圧などを同様のまたは同じ機器によって使用すると、例えば同様の熱挙動を予想し得る。さらに、同様の周囲状態、充電状態、および電力負荷にさらされる可能性がある異なる回路内の温度センサは、同様の温度測定値を生成すると予想され得る。逆に、共通の車両内の2つのエネルギー回路が動作状態の既知の差を経験する場合、2つのエネルギー貯蔵回路間の予想される(または基準)温度差が予測または決定され得る。したがって、温度センサのうちの少なくとも1つが予想され得るものから逸脱した温度測定値を記録する場合、この不一致は、電池セル、センサ、またはエネルギー供給システムの別の構成要素に関連付けられた誤動作が存在し得ることを示す。これらの例では絶対温度が言及され得るが、温度に基づく導出された関数は、温度の変化率を含む本明細書の実施形態で考慮され得る。さらにまた、本明細書に開示される実施形態は、電圧、電力、電流、圧力、流量など、温度以外の他のパラメータを考慮する。
【0067】
逸脱状態は、事前設定された絶対限界または閾値と交差するパラメータの測定値に基づいて警報状態を検出する既知のエネルギー貯蔵監視システムとは対照的に、予想される(または基準)挙動からの過度の逸脱に基づいて検出され得る。本明細書に開示された逸脱検出システムは、過去の既知のシステムよりも早期の潜在的な故障の検出を提供し得る。例えば、過去の既知のシステムが摂氏40度(℃)の事前設定された温度閾値を有する場合、既知のシステムは、センサが少なくとも40℃であり得る温度測定値を生成するまで潜在的な故障を検出しない。しかしながら、本明細書に記載の逸脱検出システムは、温度が40℃を超える前に潜在的な故障を検出することができる場合がある。例えば、測定された温度値が、温度の基準(例えば、予想される)値または温度の基準変動(または分散)から、決定された許容マージン値を超えて逸脱する場合、逸脱検出システムは、測定された温度値が40℃未満であっても逸脱状態を検出する。早期検出は、逸脱検出システムが、1つまたは複数の電池セル、燃料電池、コンデンサバンクの故障、および/またはセンサ、プラグ/コネクタ、伝送線路、変圧器、ラインコンディショナなどの他の構成要素の故障によって引き起こされる損傷の程度を防止または少なくとも低減することを可能にし得る。
【0068】
エネルギー供給システムにおける潜在的な故障の早期検出を提供することに加えて、本明細書に開示された逸脱検出システムは、損傷および遅延の位置特定、診断、および軽減に有用であり得る追加の情報を提供し得る。例えば、逸脱検出システムは、逸脱状態をトリガした逸脱センサ測定値を生成した1つまたは複数の特定のセンサを識別し得て、潜在的な故障の正確な位置を可能にする。さらにまた、逸脱検出システムは、逸脱状態を検出すると、1つまたは複数の応答または是正措置を自動的に開始し得る。いくつかの応答措置は、電池の故障によって引き起こされる火災、熱暴走などによる二次的な損傷を防止または少なくとも軽減することを意図し得る。それらの応答措置は、エネルギー貯蔵回路との間の電流伝達を遮断すること、能動冷却を開始すること、火災抑制を開始することなどによって1つまたは複数のエネルギー貯蔵回路を分離することを含み得る。逸脱検出システムは、逸脱状態の原因を推定するために、異なる特定の故障状態に関連付けられた予想される挙動に基づいて同じパラメータおよび/または異なるパラメータを表すセンサ測定値を用いて逸脱センサ測定値を分析し得る。例えば、逸脱検出システムは、逸脱状態が、エネルギー貯蔵装置(例えば、電池セル)の誤動作、センサの誤動作、不良溶接、短絡、冷却システムの誤動作、2つのエネルギー貯蔵装置を接続するタブの破損などによって引き起こされ得ると推定し得る。
【0069】
逸脱状態の原因の推定は、逸脱検出システムが故障固有の是正措置をとるか、または少なくとも提案することを可能にする。例えば、原因がセンサの誤動作であると疑われる場合、逸脱検出システムは、修理または交換のためにセンサにフラグを立て、および/またはそのセンサからの将来の測定値を無視または置き換え得る。一方、原因が、火災または熱暴走を経験している(または経験するリスクがある)不良電池セルであると疑われる場合、逸脱検出システムは、電池セルからの二次的損傷の広がりを防止するために、電池セルを分離し、能動的冷却を開始し、および/または同様のことを行い得る。したがって、絶対的な限界または閾値を超えた後に単に一般的な警報を提供する代わりに、本明細書に記載の逸脱検出システムは、異常の早期検出、ならびに異常の位置および推定されたタイプおよび原因などの追加の情報を提供し得て、それらはエネルギー供給システムの保護および動作を強化するために使用されることができる。
【0070】
1つまたは複数の実施形態では、逸脱状態を検出すると、システムは、最悪のシナリオを想定して1つまたは複数の即時措置を自動的にとり得る。例えば、最悪のシナリオは、エネルギー貯蔵回路が発火している、および/または熱暴走を経験していることであり得る。したがって、逸脱状態の原因を推定する前に、システムは、火災抑制を実施すること、エネルギー貯蔵回路を電気的に分離すること、車両の性能を低下させることなどによって、火災および/または熱暴走からの潜在的な損傷を軽減するための即時措置をとり得る。次に、火災または熱暴走がないように、逸脱状態の原因がセンサの誤動作または最悪のシナリオよりも深刻でない可能性がある別の原因であるとその後決定された場合、システムは、最悪のシナリオの想定に基づいた即時措置を停止および/または変更し得る。例えば、火災および/または熱暴走を原因として排除する際の一時的な措置を変更することによって、システムは、エネルギー貯蔵装置の負荷を増加させ、車両の動作を維持することなどをし得る。一方、エネルギー貯蔵回路が故障していると決定された場合、システムは、一時的な措置を維持し得る。原因の推定に基づいて措置を維持および/または変更する逸脱検出システムの能力は、既知のシステムよりも望ましい場合がある。例えば、逸脱を検出する既知のシステムは、追加の動作を可能にする前にオペレータによる検査を必要とするエネルギー供給回路または車両などの動作を自動的にシャットダウンすることがある。そのような自動シャットダウンは、特に逸脱の根本原因が軽微な誤動作である場合、効率を低下させ、指定されたタスクの実行を遅くする不必要な過剰反応であり得る。例えば、根本原因がセンサの誤動作であると決定された場合、長期間にわたって車両を停止すると、車両が過度に遅延し、および/または他の車両の走行を妨げることがある。
【0071】
実施形態によれば、逸脱検出システムは、アルゴリズムにしたがって動作する。アルゴリズムの第1の部分は、全てのセル、セルのグループ、センサ、および/またはセンサのグループが同時に故障しないという仮定の下で、予想される挙動を決定することであり得る。予想される挙動は、動作状態と組み合わされた物理ベースモデルを介して開発され得る。例えば、その電池セルの充電状態および内部インピーダンスなどのエネルギー貯蔵回路の特定の特性が与えられると、エネルギー貯蔵回路の基準電圧が決定されることができる。貯蔵電流の特定の変化(例えば、単位アンペア時当たり)に対して、ある程度の予想される電圧の変化があり得る。予想される挙動をモデル化することに加えて、またはその代わりとして、予想される挙動は、経時的なエネルギー貯蔵回路の履歴および動作を追跡することによって決定されることができる。任意に、予想される挙動は、エネルギー貯蔵装置(例えば、電池セル)のパラメータを同じ回路および/または他の回路内の他のエネルギー貯蔵装置と比較することに基づいて決定されることができる。直列に接続されたセルは全て、単位アンペア時間当たりの所与の変化に対して同じ方向の電圧変化を見ることが予想され得る。第1の非限定的な例では、1つのセルの電圧が低下し、直列接続の他の全てのセルの電圧が上昇した場合、問題が存在すると推定されることができる。別の非限定的な例では、電圧が同じ回路内の他の全てのセルよりもはるかに速く1つのセルについて増加する場合、逸脱検出システムは、逸脱の原因として破損した溶接部を識別してもよい。温度、電力などの電圧以外の他のパラメータは、逸脱検出システムの同じまたは他の例で利用されてもよい。
【0072】
アルゴリズムは、逸脱状態の原因を推定するために複数の異なるパラメータを使用し得る。例えば、エネルギーセルへの電気接続のための切断された溶接部の存在下では、電圧がより速い速度で増加するだけでなく、そのセルの抵抗および温度は、同じ回路内の他のセルまたは同様の電流を搬送する別の回路内のセルよりも大きくなければならない。物理ベースのモデルと比較による予想値とを組み合わせると、本明細書に開示される逸脱検出システムは、センサ故障と不正確なモデルとを区別することができる。現実とモデルとの間のいくらかの誤差は、許容可能であり得る。したがって、逸脱検出システムは、予想誤差も決定された許容マージン値の形態で組み込む。誤差は、センサの不正確さおよび温度勾配などの設計のばらつきに起因することができる。内部抵抗は経時的に変化し得るため、誤差は、電池セルの動作寿命の経過を通して変化することができる。パラメータの予想される挙動および予想される誤差を決定することにより、逸脱検出システムは、問題がいつ発生したかを検出し、問題の根本原因を決定し、適切な措置をとることができる。
【0073】
図6は、本開示の実施形態にかかる逸脱検出システム600の概略図である。逸脱検出システムは、複数のセンサ603と、センサ603に動作可能に接続された制御ユニット604とを含む。センサは、エネルギー供給システム602の様々なパラメータを監視する。センサによって測定されるパラメータは、温度、電圧、電流、充電状態、充電容量、抵抗、圧力、冷却剤流量などを含み得る。適切な冷却剤は、気体または液体などの流体であってもよい。
【0074】
上記の異なるパラメータは、検出システムによる使用のための1つまたは複数の特定のパラメータを監視するために各々が具体的に構成された異なるセンサによって測定され得る。例えば、温度は、サーミスタ、熱電対、測温抵抗体(RTD)などの1つまたは複数の温度センサによって監視され得る。温度パラメータは、1つまたは複数のエネルギー貯蔵装置の温度、または1つまたは複数のエネルギー貯蔵装置の近くの周囲温度を表し得る。電圧は、非接触電圧検出器などの1つまたは複数の電圧センサによって監視され得る。電圧パラメータは、エネルギー貯蔵回路の電圧供給を表し得る。電流は、ホール効果センサ、フラックスゲート変圧器センサなどの1つまたは複数の電流センサによって監視され得る。電流パラメータは、エネルギー貯蔵回路に流入および/またはエネルギー貯蔵回路から流出する電気エネルギーを表し得る。充電状態は、電気エネルギー回路(またはその装置)内に実際に存在する電気エネルギーの量を表し得る。充電容量は、電気エネルギー回路(またはその装置)内に貯蔵されることができる電気エネルギーの量を表し得る。充電状態および/または充電容量は、一体型電池テスターによって、または電圧センサおよび電流センサからのセンサ出力に基づいて測定され得る。例えば、充電状態および/または充電容量は、測定された電流流量および電圧出力に基づいて計算されることができてもよい。抵抗は、電気エネルギー回路(またはその装置)を通る電流の流れに対する抵抗を表し得る。抵抗は、オームの法則を利用することによって、電圧センサおよび電流センサからのセンサ出力に基づいて測定され得る。電流および電圧センサは、抵抗を測定するためにマルチメータに統合されてもよい。圧力は、エネルギー貯蔵回路を囲む周囲圧力を指し得て、圧力トランスデューサ、圧電素子などの圧力センサによって測定され得る。冷却剤流量は、1つまたは複数の電気エネルギー回路を横切って流れ、1つまたは複数の電気エネルギー回路によって生成された熱を吸収および放散するように導かれる、空気、冷媒、液体、気体(空気以外)などの冷却流体の流量を指し得る。冷却剤流量は、移動ベーンメータ、ホットワイヤ質量流量センサ、コールドワイヤ質量流量センサ、膜センサなどの流量センサによって測定され得る。
【0075】
エネルギー供給システムは、作業を行う際に使用するためのエネルギーを供給する。作業は、補助装置の作動および車両の推進を含み得る。エネルギー供給システムは、複数のエネルギー貯蔵回路606を含み得る。各エネルギー貯蔵回路は、1つまたは複数のエネルギー貯蔵装置608(図6の「ESD」)を含み得る。適切なエネルギー貯蔵装置は、電池セル、コンデンサなどであってもよい。各回路内のエネルギー貯蔵装置は、直列または並列関係などで互いに電気的に接続されてもよい。図示の実施形態では、2つのエネルギー貯蔵回路606A、606Bが示され得て、エネルギー貯蔵回路606A、606Bの各々は、3つのエネルギー貯蔵装置のアセンブリを有する。エネルギー貯蔵回路は、他の実施形態では、ただ1つのエネルギー貯蔵装置、6つのエネルギー貯蔵装置、10個のエネルギー貯蔵装置などの3つよりも多いまたは少ないエネルギー貯蔵装置を含み得る。2つのエネルギー貯蔵回路が示されているが、エネルギー供給システムは、10個のエネルギー貯蔵回路、25個のエネルギー貯蔵回路などの追加のエネルギー貯蔵回路を含んでもよい。異なるエネルギー貯蔵回路は、直列または並列関係などで互いに電気的に接続されて、ストリングを画定し得る。あるいは、エネルギー貯蔵回路は、互いに電気的に分離されてもよい。代替的な実施形態では、エネルギー供給システムは、ただ1つのエネルギー貯蔵回路を有してもよく、単一のエネルギー貯蔵回路は、複数のエネルギー貯蔵装置を含んでもよい。
【0076】
逸脱検出システムは、センサによって生成されたセンサ測定値を分析することによってエネルギー供給システムの動作を監視し得る。例えば、センサは、第1のグループ610および第2のグループ612に配置され得る。第1のグループは、第1のエネルギー貯蔵回路606Aに関連付けられてもよく、第2のグループ612は、第2のエネルギー貯蔵回路606Bに関連付けられてもよい。例えば、第1のグループ内のセンサは、第1のエネルギー貯蔵回路の様々なパラメータを監視する。第1のエネルギー貯蔵回路の様々なパラメータは、各エネルギー貯蔵装置のパラメータを含む。図示の実施形態では、第1のグループのセンサは、温度センサ614、電圧センサ616、および電流センサ618を含む。異なる対の温度センサは、3つのエネルギー貯蔵装置の温度を測定する6つの温度センサが第1のグループに存在し得るように、エネルギー貯蔵装置の各々の温度を測定し得る。第1のグループは、3つの電圧センサを含み、各電圧センサは、3つのエネルギー貯蔵装置のうちの異なる1つ(または並列配置の場合はエネルギー貯蔵装置の集合)の両端の電圧を測定するように構成されている。第1のグループは、第1のエネルギー貯蔵回路を通る電流伝達を測定する単一の電流センサを有する。第2のエネルギー貯蔵回路は、図6の第1のエネルギー貯蔵回路のレプリカであってもよく、センサの第2のグループは、第1のグループのレプリカであってもよい。センサのタイプ、センサの数、および/またはセンサの配置は、アプリケーション固有のパラメータに基づいて選択され得る。例えば、第1のグループおよび/または第2のグループは、抵抗、充電状態、充電容量、圧力、冷却剤流量などを測定するためのセンサを含み得る。適切なセンサは、エネルギー供給システムのエネルギー貯蔵回路の少なくとも1つに関連付けられてもよい。センサの隣接関係、間隔、感度、およびタイプは、本発明のシステムの態様をサポートするためにアプリケーションにおいて利用され得る。
【0077】
制御ユニット604は、エネルギー供給システムの動作を監視し、損傷を制限するための誤動作および/または故障に対処するための効率的で迅速な改善策を提供する目的で、エネルギー供給システムに関連するセンサによって生成されたセンサ測定値を取得および分析することができる。制御ユニットは、プログラムされた命令の1つまたは複数のセット(例えば、ソフトウェア)に基づいて動作を実行するコンピュータプロセッサまたは他の論理ベースの装置などの、1つまたは複数のプロセッサ620および関連する回路を含む。制御ユニットが動作するプログラムされた命令は、メモリ622などの有形の非一時的(例えば、過渡信号ではない)コンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。メモリは、1つまたは複数のコンピュータハードドライブ、フラッシュドライブ、RAM、ROM、EEPROMなどを含み得る。あるいは、制御ユニット604の動作を指示する命令は、プログラマブルゲートアレイ(pga)、複合プログラマブルロジックデバイス(cpld)、および/または他のハードウェアに形成されたハードワイヤードロジックなどによって、制御ユニットのロジックにハードワイヤードで接続されてもよい。実施形態では、制御ユニットは、電気ケーブル624、接触器、光ケーブル、回路トレースなどの導電経路を介してセンサに導電的に接続されてもよく、制御ユニットは、導電経路を介してセンサ測定値を取得する。任意に、センサの少なくともいくつかは、制御ユニットに無線で接続されてもよく、センサ測定値を制御ユニット604に無線で通信してもよい。制御ユニットは、第1のエネルギー貯蔵回路に関連付けられた第1のグループおよび第2のエネルギー貯蔵回路に関連付けられた第2のグループの双方のセンサによって生成されたセンサ測定値を取得する。
【0078】
制御ユニットは、センサによって生成されたセンサ測定値に基づいて、特定のパラメータの基準値および/または基準変動を決定する。特定のパラメータは、温度、電圧、電流、流量、圧力などのエネルギー貯蔵回路に関連付けられた1つまたは複数のセンサによって直接測定され得る測定されたパラメータであってもよい。任意に、特定のパラメータは、センサのいずれによっても直接測定されない導出または変換されたパラメータであってもよく、むしろ1つまたは複数のセンサ測定値の関数として導出されてもよい。導出されたパラメータの第1の非限定的な例は、電流および電圧センサ測定値から導出され得る電力であり得る。導出されたパラメータは、測定されたパラメータ(例えば、温度の平均)または別の導出されたパラメータ(例えば、電力の平均)の平均、中央値、最頻値などの統計的メトリックを含み得る。特定のパラメータの他の非限定的な例は、RMS(二乗平均平方根)電流、RMS電力、高調波電流、充電状態、充電容量、抵抗などを含み得る。本明細書に記載のいくつかの例は、単一の特定のパラメータの基準値および/または基準変動を指すが、制御ユニットは、逸脱状態を検出するための複数の異なる特定のパラメータのそれぞれの基準値および/または変動を決定し得る。
【0079】
本明細書でより詳細に説明するように、基準値および/または基準変動は、第1のエネルギー貯蔵回路を監視する第1のグループ内のセンサのセンサ測定値、第2のエネルギー貯蔵回路を監視する第2のグループ内のセンサのセンサ測定値(およびエネルギー供給システムに関連付けられた任意の追加のセンサ測定値)、エネルギー供給システムの動作パラメータ、貯蔵回路のエネルギー貯蔵装置の固有の特性(例えば、セル化学)、エネルギー貯蔵回路に関する履歴情報(例えば、動作年数、健全状態など)、および/または他のエネルギー貯蔵回路から観察される履歴情報(例えば、傾向)に基づき得る。基準値および/または変動は、経時的に変化し得る。
【0080】
限定されないが、同じ回路内、同じストリング内、異なるストリング内、異なる機関車、物理ベースモデルによって、履歴もしくは実験データによって、またはそれらの組み合わせでパラメータを比較することを含む、特定のパラメータに対して基準値が決定されることができるいくつかの方法があり得る。制御ユニットは、これらの方法の1つまたは複数を使用して、同じパラメータの複数の基準値を決定し得る。これらの基準値の各々は、関連付けられた値、分散および/または信頼区間(例えば、誤差マージン)を有する。例えば、回路内のセルの温度は、センサが同じパッケージ内に封入されているため、ストリング全体内のセルの温度よりも変動が少ないと予想され得る。同じパラメータの基準値およびそれらに関連付けられた分散/信頼区間は、伝達関数を介して単一の基準値および基準分散/信頼区間に組み合わせられることができる。そのような伝達関数の一例は、分散がより小さい基準値により大きな重みが割り当てられ得る加重平均、またはソースに基づくより大きな重みであり得る。例えば、基準値は、ストリング内の他の回路からのデータよりも監視される回路内のデータによって大きく影響され得る。同様に、ストリング内のデータ(特定の回路がある場合)は、その回路を含む他のストリングからのデータよりも高く重み付けされ得る。
【0081】
第1のエネルギー貯蔵回路の動作を監視するために、制御ユニットは、第1のグループ内のセンサからセンサ測定値を受信し、これらのセンサ測定値に基づいて特定のパラメータの監視値および/または監視された変動を決定する。例えば、特定のパラメータの基準値および/または基準変動が制御変数を表す場合、監視値および/または変動は実験変数を表す。基準値および/または変動と同様に、特定のパラメータの監視値および/または変動は、直接的なセンサ測定値または直接的なセンサ測定値に基づく導出された計算であり得る。非限定的な例では、特定のパラメータが温度であり得る場合、制御ユニットは、第1のグループ内の全ての対応する温度センサによって生成された温度測定値として監視値を決定し得る。別の非限定的な例では、特定のパラメータが電力であり得る場合、制御ユニットは、電流測定値に電圧測定値を乗算することによって導出された電力計算として監視値を決定し得る。監視された変動は、監視された値の差を表す。例えば、監視された変動は、異なる電圧および電流測定値に基づき得るエネルギー貯蔵回路に関連する2つの差分電力計算の差に等しくてもよい。
【0082】
監視値および/または変動を決定した後、制御ユニットは、監視値および/または変動を特定のパラメータの基準値および/または変動と比較し得る。例えば、特定のパラメータが温度であり得る場合、制御ユニットは、第1のグループ内の温度センサによって生成された全ての温度測定値を基準値および/または基準変動と比較し得る。監視値および/または変動の少なくとも1つが、基準値および/または基準変動から、決定された(例えば、指定された)許容マージン値または範囲を超えて逸脱する場合、制御ユニットは、逸脱状態を検出する。逸脱状態は、潜在的な故障が検出され得る状況を表す。潜在的な故障という用語は、センサの誤動作、エネルギー貯蔵装置を接続するタブの破損/損傷、溶接不良、冷却システムの誤動作、エネルギー貯蔵装置の誤動作(火災または熱暴走を経験する可能性がある)など、様々な重大度の広範なカテゴリのシナリオを表し得る。逸脱状態を検出すると、制御ユニットは、プログラムされた命令にしたがって、逸脱状態の原因が決定され、逸脱状態が改善され得るまで少なくとも一時的に、オペレータに通知し、および/またはエネルギー貯蔵回路へのおよび/またはエネルギー貯蔵回路からの電流の伝達を遮断することによってエネルギー貯蔵回路を分離するなどの1つまたは複数の応答措置を行い得る。
【0083】
任意に、制御ユニットは、制御ユニットおよびセンサを有する逸脱検出システムの構成要素を表す通信装置626に動作可能に接続されてもよい。制御ユニットは、通信装置によって、車両コントローラ装置、人間のオペレータなどの意図された受信者に通信され得る1つまたは複数の制御信号を生成し得る。通信装置は、トランシーバ(または個別の送信機および受信機構成要素)、アンテナ628、ならびにコマンドメッセージ、返信メッセージ、ステータスメッセージなどの様々なタイプのメッセージの無線双方向通信のための関連回路を含み得る。通信装置は、特定の指定された受信機にメッセージを送信し得て、および/またはメッセージをブロードキャストし得る。任意に、通信装置は、同じ車両内の複数のエネルギー供給システム間または電気的に結合可能な異なる車両間などの有線接続を介してメッセージを通信するための回路を含み得る。
【0084】
図7は、実施形態にかかる逸脱検出システム600を組み込む車両システム700の概略図である。車両システムは、経路704に沿って移動する。図示の実施形態における車両システムは、車両編成を表す。適切な車両編成は、推進力発生車両706(例えば、車両706A~706C)と非推進力発生車両708(例えば、車両708A~708B)の双方が連結器710(任意に電気コネクタを含んでもよい)によって機械的に互いに連結された(例えば、列車)鉄道車両編成を含み得る。この例では、推進力発生車両は、機関車であってもよく、非推進力発生車両は、鉄道車両であってもよい。
【0085】
他の適切な車両は、通信可能にリンクされたオンロード車両のグループを含んでもよい。一実施形態では、車両は、遠隔制御または自律的である。車両システムは、互いに物理的に分離しているが、車両間の通信を可能にしてそれらの動きを調整するために互いに論理的に結合され得るいくつかの車両から形成され得る。さらに、適切な車両システムは、(推進力を発生させるか否かにかかわらず)複数の車両からではなく、推進力を発生させる単一の車両から形成されてもよい。
【0086】
適切な推進力発生車両は、経路に沿って車両システムを推進するための牽引力を生成するそれぞれの推進システム712を含む。各推進システムは、車両の異なる車軸714および/または車輪716と動作可能に結合された1つまたは複数のトラクションモータ713を有し得る。トラクションモータは、トラクションモータによって生成された回転運動を車軸および/または車輪の回転に変換するために、1つまたは複数のギア、ギアセット、または他の機械的装置を介して車軸および/または車輪と接続され得る。停止され得るトラクションモータが対応する車軸および/または車輪の回転を強制しない(例えば、オフにされる)一方で、作動されたままのトラクションモータが対応する車軸および/または車輪の回転を強制する(例えば、オンにされる)ように、異なるトラクションモータを異なる車軸および/または車輪と動作可能に接続され得る。各推進システムは、トラクションモータに電力を供給するエネルギー供給システム702を含み得る。各推進力発生車両のエネルギー供給システムは、図6に示すエネルギー供給システム602と同じまたは同様であってもよい。例えば、推進状態のトラクションモータは、エネルギー供給システムによってトラクションモータに供給される電流によって動力供給されてもよい。回生制動状態では、トラクションモータは、車輪および/または車軸の回転に基づいて生成された電流を、そのエネルギー貯蔵装置(例えば、電池セルなど)を充電するためのエネルギー供給システムに供給し得る。
【0087】
センサおよび制御ユニット(双方とも図6に示す)を含む逸脱検出システムは、推進力発生車両の各々に搭載されて、そのエネルギー供給システムの動作を監視し得る。任意に、3つの推進発生車両の各々に異なる離散逸脱検出システムが配置されてもよい。あるいは、車両システムに搭載された単一の制御ユニット(例えば、マスタ制御ユニット)は、エネルギー供給システムの全てを監視するために、異なる車両に搭載されたセンサからセンサ測定値を取得してもよい。
【0088】
図7は、鉄道車両編成に組み込まれた逸脱検出システムを示しているが、本明細書に記載の実施形態は、オフハイウェイ車両(例えば、公共道路上の走行のために設計または許可されていない可能性がある採掘車両または他の車両)、船舶、自動車などの、他のタイプの車両編成および/または鉄道車両以外の車両に適用され得る。さらにまた、本明細書に記載の逸脱検出システムは、固定式の産業用、非車両用用途であっても、任意の大型フォーマットのエネルギー供給システムを監視するために利用され得る。
【0089】
図8は、実施形態にかかる逸脱検出システムの制御ユニットの動作を示すブロックフロー図である。802において、制御ユニットは、特定のパラメータの基準値および/または基準変動を決定する。基準値および/または変動は、監視されているエネルギー貯蔵回路(またはそのエネルギー貯蔵装置)の予想される挙動を表す。同様の動作状態を経験する同じエネルギー供給システム(またはさらには異なるエネルギー供給システム)内のエネルギー貯蔵回路は、同様に機能し、貯蔵回路に印加される電流に対する負荷または需要などの一般的な刺激に対して同様の応答を有することが予想され得る。同じエネルギー貯蔵回路内の、異なるエネルギー貯蔵回路にわたるエネルギー貯蔵装置は、同じまたは同様の特性を有し得る。これらの特性は、セル化学、電荷容量、タイプ、年数/使用/健全、ロット番号などを含み得る。基準値および/または基準変動は、予想される挙動の数値表現であってもよい。
【0090】
基準値は、単一の数値、経時的な数値(例えば、グラフ上にプロット線としてプロットされることができる)、経時的な数値の変化率(例えば、線の傾き)などとすることができる。経時的な基準値の変化率は、本明細書では基準変化率と呼ばれる。基準値が経時的な温度の変化率(または、傾き)を表す例では、(電源回路内の同じまたは類似の構成要素を監視する)温度センサのセンサ測定値は、共通の期間中に基準変化率値と同じまたは類似の変化率を有すると予想される。
【0091】
基準変動は、2つ以上のデータ点間の計算された差を表し得る。例えば、10度の基準変動は、同じエネルギー貯蔵回路に関連付けられた温度センサのグループが、互いに10度を超えて変動する温度測定値を生成すべきではないことを示し得る。したがって、最低温度測定値は、最高温度測定値に対する基準変動(例えば、10度)内にあるべきである。基準変動は、経時的に変化し得る。基準変動は、システム内の異なる位置、装置内の異なる電圧などの動作状態に依存し得る。例えば、エネルギー貯蔵装置が冷却剤の流れに対して異なる位置を有することが分かっている場合、全ての装置が冷却剤の流れに等しい、またはほぼ等しいアクセスを有し得る場合よりも、温度の基準変動が大きくなり得る。冷却剤流に近接する装置は、冷却剤流から遠い装置よりも低い温度を有すると予想される。別の実施形態では、基準変動は、値の範囲を表してもよい。例えば、基準変動は、下限および上限を表す2つの設定点、線、または平面の間に定義された範囲であってもよい。上限および下限の一方または双方の位置、ならびに上限と下限との間の範囲の大きさは、経時的に変化し得る。
【0092】
基準値および/または変動は、制御ユニットによって受信された、または制御ユニットにアクセス可能な様々な入力データに基づき得る。第1のエネルギー貯蔵回路の特定のパラメータの基準値および/または変動を決定するために使用される入力データは、例えば、ローカルセンサ測定値804、他のエネルギー供給回路からのセンサ測定値806、動作状態808、エネルギー供給回路の固有特性810、(第1のエネルギー貯蔵回路またはエネルギー供給回路の他の構成要素に関するなどの)履歴情報812、および/または他のエネルギー供給回路に関する履歴情報814を含み得る。
【0093】
ローカルセンサ測定値804は、第1のエネルギー貯蔵回路に関連付けられたセンサによって生成された生データを表す。任意に、制御ユニットは、低い信号対雑音比または明らかに誤った読み取り値(例えば、温度が変化している可能性があることが他のセンサから知られている可能性がある間、長期間にわたって変化しないセンサからの温度測定値)などの低品質を有するセンサ測定値の一部を除外または置換してもよい。特定のパラメータが温度であり得る場合、制御ユニットは、図6に示す第1のエネルギー貯蔵回路に関連付けられた6つ全ての温度センサからのセンサ測定値を利用し得る。
【0094】
他のエネルギー貯蔵回路からのセンサ測定値806は、第2のエネルギー貯蔵回路に関連付けられた第2のセンサ群からのセンサ測定値を指し、同じまたは異なるエネルギー供給システム内の他のエネルギー貯蔵回路からのセンサ測定値を指し得る。例えば、温度の基準値および/または変動を決定するために、制御ユニットは、エネルギー供給システム全体の温度センサの全て(または大部分)から温度測定値を取得してコンパイルし得る。
【0095】
動作状態808は、第1のエネルギー貯蔵回路の現在の周囲状態および動作を指す。例えば、動作状態は、第1のエネルギー貯蔵回路を囲む環境における周囲温度、周囲空気流、圧力、湿度などを含み得る。動作状態は、能動的な冷却および/または加熱速度を含み得る。電池状態は、別の動作状態であってもよく、回路の各エネルギー貯蔵装置の充電状態、電流の供給または電流の受け取りなどの回路の現在の電荷移動動作、および/または回路上の現在の負荷または電流要求を指し得る。エネルギー貯蔵回路の負荷は、エネルギー貯蔵回路がトラクションモータまたは補助モータに電流を供給する速度(例えば、アンペア時レート)を表し得る。別の動作状態は、車両状態(例えば、鉄道車両用途の機関車状態)であってもよく、これは、逸脱検出システムが配置され得る車両が制動、動的制動、コースティング、加速、静止、シャットダウン、アイドリング、充電、放電、燃料補給などであってもよいかどうかを指し得る。
【0096】
エネルギー供給回路の特性は、固有の物理ベースの特性を指す。適切な特性は、エネルギー貯蔵装置の化学的性質(例えば、セル化学)、エネルギー貯蔵装置のタイプおよび/またはモデル、エネルギー貯蔵装置のモデル化された熱特性などを含み得る。他の適切な特性は、送電線のゲージ、集電体と電流源との間の距離などのエネルギー供給システムの特徴を含んでもよく、モデル化された熱特性は、動作中に生成される熱を指してもよい。
【0097】
エネルギー供給回路に関する履歴情報は、エネルギー供給回路構成要素の動作期間および/またはそれらの健全状態を指し得る。例えば、エネルギー供給回路の抵抗は、動作寿命にわたって徐々に増加すると予想され得る。健全状態は、動作寿命、エネルギー供給回路の容量、現在の充電状態、利用可能な電圧または電流などを考慮し得るエネルギー供給回路の状態を指し得る。例えば、完全に充電されたエネルギー貯蔵装置は、貯蔵エネルギー量が多いために、部分的に枯渇したエネルギー貯蔵装置よりも熱暴走を経験する可能性が高くなり得る。同様に、絶縁がほつれている電源線は、アークまたは短絡の影響をより受けやすい可能性がある。
【0098】
他のエネルギー供給回路に関する履歴情報は、同じエネルギー供給システムにあるか、第1のエネルギー供給回路とは異なるエネルギー供給システムにあるかにかかわらず、エネルギー供給回路の性能に基づく観察および傾向を指し得る。他のエネルギー供給回路は、第1の回路と同じ数および/またはタイプのエネルギー貯蔵装置を含むなど、第1のエネルギー供給回路と同様であってもよい。一例として、情報は、周囲状態およびエネルギー供給回路に加えられる負荷などの特定の刺激に応答して観察される他のエネルギー供給回路の熱加熱速度を含み得る。
【0099】
制御ユニットは、特定のパラメータの基準値および/または変動を決定するために、入力データ804、806、808、810、812、814の一部または全部を利用し得る。例えば、制御ユニットは、動作状態、エネルギー供給回路の固有の特性、およびエネルギー供給回路に関する履歴情報を物理ベースの計算モデルにプラグインし得る。物理ベースの計算モデルは、入力データを変数として利用する複数の計算を含むアルゴリズムに基づいて、特定のパラメータの基準値および/または基準変動を生成するコンピュータプログラムであってもよい。物理ベースモデルは、ローカルセンサ測定値、他のエネルギー供給回路からのセンサ測定値、および/または他のエネルギー供給回路に関する履歴情報などの追加情報を利用してもよい。
【0100】
上述したように、特定のパラメータは、特定のパラメータがセンサによって直接測定されないように、1つまたは複数の測定値に基づいて1つまたは複数の関数および他の既知の関係から導出されてもよい。導出される特定のパラメータの非限定的な例は、電力、RMS電流、高調波スペクトル、バイアス、抵抗、統計的メトリック(例えば、平均、中央値、最頻値、標準偏差など)などを含む。非限定的な例では、特定のパラメータは、統計的メトリックを表してもよく、制御ユニットは、エネルギー供給システムを監視するセンサによって生成された特定のパラメータを表す全てのセンサ測定値をコンパイルしてもよい。したがって、温度について、制御ユニットは、システム内の全てのエネルギー供給回路に関連付けられた温度センサによって生成されたセンサ測定値をコンパイルしてもよい。任意に、制御ユニットは、コンパイルされたセンサ測定値の範囲を、同じエネルギー供給回路または同じエネルギー供給装置に関連付けられた特定のセンサによって生成されたセンサ測定値に狭めてもよい。制御ユニットは、コンパイルされたセンサ測定値に対して統計的計算を実行することによって、基準値および/または変動を決定し得る。例えば、制御ユニットは、温度の基準値を、収集された温度測定値の平均(例えば、平均)、中央値、または他の指定値として計算し得る。さらにまた、制御ユニットは、センサ測定値を低い方から高い方への分布で配置してもよく、分布の指定されたパーセンタイルにおける測定値を基準変動の境界を定義する上限および下限として選択することによって、特定のパラメータの基準変動(または範囲)を決定してもよい。例えば、指定されたパーセンタイルが40%および60%である場合、制御ユニットは、40パーセンタイルを下限として表す分布におけるセンサ測定値を指定し、60パーセンタイルを上限として表す分布におけるセンサ測定値を指定してもよい。制御ユニットは、他の実施形態における他のプロセスによって特定のパラメータの基準値および/または変動を決定してもよい。
【0101】
制御ユニットは、エネルギー供給回路の複数の異なる特定のパラメータの各々について基準値および/または変動を決定し得る。例えば、制御ユニットは、温度の基準値および/または変動、電力の異なる基準値および/または変動、RMS電流の異なる基準値および/または変動などを決定し得る。
【0102】
815において、特定のパラメータの監視値および/または変動が決定され得る。監視値および/または変動は、分析されている特定のエネルギー供給回路に関連付けられたセンサの(804における)ローカルセンサ測定値に基づき得る。上述したように、特定のパラメータは、温度、電流、電圧などの測定されたパラメータ、または電力、平均温度、抵抗、RMS電流などの導出されたパラメータを表し得る。実施形態では、監視値および/または変動は、動作状態、履歴情報、および他のエネルギー供給回路からのセンサ測定値などの外部ソースを参照せずに決定され得る。
【0103】
816において、制御ユニットは、特定のパラメータの監視値および/または変動を特定のパラメータの基準値および/または変動と比較して、逸脱の程度および/または割合を決定する。比較は、電池セルの発火または熱暴走などの構成要素の故障を示す可能性がある外れ値センサの測定値を検出する目的で実行されてもよい。センサによって生成された実際の測定値に基づくエネルギー供給回路の監視された挙動は、予想される挙動と比較され得る。
【0104】
比較は、センサ精度に起因する変動(例えば、予想される誤差)、センサの異なる使用期間に起因する変動、エネルギー供給装置のパッケージング状態および/または位置の不一致に起因する勾配、電池セル間接続の品質の変動などに対応するように設計され得る決定された(例えば、指定された)許容マージン値を組み込み得る。許容マージン値は、基準値の+/-2%、5%、または10%などの固定された事前設定された範囲、または基準値からの標準偏差の事前設定された数(例えば、2度の標準偏差内)であってもよい。温度パラメータの場合、許容マージン値は、基準温度値から+/-2度、4度、6度、または10度など、度単位のパーセンテージまたは数に設定されることができる。基準変化率値の場合、許容マージン値は、基準値の現在の変化率の上下の変化率またはパーセンテージのいずれかの単位で、固定範囲の変化率(例えば、傾き)であってもよい。任意に、許容マージン値は、動的であってもよく、電流、年数などの他の状態の関数であってもよい。例えば、許容マージン値は、エネルギー供給回路を通る電流の量に基づいて変化および調整され得る。低い電流レートが存在する場合、許容マージン値は、電流の影響を受け得る抵抗などの変数のために、より大きい電流レートが存在する場合よりも狭くなり得る。別の例では、許容マージン値は、エネルギー供給装置が寿命の後期段階よりも寿命の初期段階の間に予想されるより近く動作することが予想され得るため、エネルギー供給回路が経年変化するにつれて経時的に増加し得る(例えば、マージンが広がる)。決定された許容マージン値は、本明細書では指定された許容マージンとも呼ばれる。
【0105】
指定された許容マージンは、任意に基準変動に適用されてもよい。例えば、温度測定値間の基準変動が10度であり得る場合、指定された許容マージンは、変動の許容マージンを11度または12度に拡大してもよい。したがって、2つの温度測定値間の測定された分散が10.5度であり得る場合、制御ユニットは、分散が基準分散に違反していないと決定し得る。記載された比較が個々のセンサ値または個々の変換値に関してであっても、(線または平面のような)2次元または3次元ベクトル比較が企図され得ることが理解され得る。
【0106】
818において、制御ユニットは、1つまたは複数の外れ値または逸脱した監視値および/または変動の検出に応答して逸脱状態を検出し得る。逸脱した監視値および/または変動は、基準値からの逸脱および/または指定された許容マージンを超える変動(第1のエネルギー供給回路に関連付けられた1つまたは複数のセンサによって生成されたローカルセンサ測定値804に基づく)を表す。これらの逸脱した監視値および/または変動は、以前に除外および/または置換されたセンサデータを含まないことが認識され得る。
【0107】
逸脱状態が検出され得た後、制御ユニットは、1つまたは複数の応答措置820を開始する。応答措置820は、エネルギー供給回路との間の電流伝達を遮断してエネルギー供給回路を他の回路(例えば、第2の回路)から分離するなど、エネルギー供給回路の動作状態を少なくとも一時的に変更することを含み得る。例えば、エネルギー供給回路が発火している可能性があるか、または熱暴走を経験している1つまたは複数のエネルギー供給装置を有する場合、エネルギー供給回路を分離することは、熱滑走路などの損傷が他のエネルギー供給回路に広がるのを防ぐのに役立ち得る。応答措置は、回路の電流伝達の非ゼロレートを調整すること、回路に加えられる指定された負荷を引き起こすこと、回路を囲む周囲温度を調整すること、回路の周囲の空気流量を調整すること、能動冷却を開始すること、火災抑制を開始すること、修理および/または交換のために回路にフラグを立てること、エネルギー供給システムが設置され得る車両の動作を停止または変更すること、人間のオペレータに通知することなどを含み得る。制御ユニットは、逸脱状態を検出すると、これらの応答措置のうちの1つまたは複数を開始するための制御信号を自動的に生成し得る。
【0108】
制御ユニットは、逸脱状態を検出すると、最悪のシナリオに基づいて1つまたは複数の一時的な措置を自動的に開始し得る。実施形態では、最悪のシナリオは、エネルギー供給装置への熱暴走および/または火災を表し、これは、同じまたは異なる回路内の他の装置に拡散して重大な恒久的な損傷および損害のリスクを引き起こす可能性がある。したがって、実際の原因がそれほど深刻でなくても、制御ユニットは、逸脱状態を検出すると、熱暴走および/または火災に関連付けられた1つまたは複数の一時的な措置を開始し得る。一時的な措置は、能動冷却を増加させること、火災抑制を開始すること、エネルギー供給回路を他の回路から電気的に分離すること、エネルギー供給システムの負荷を低減すること、車両牽引力を弱めること、オペレータに通知することなどを含み得る。
【0109】
実施形態では、制御ユニットは、逸脱した監視値および/または変動が基づき得るセンサをどのセンサが生成したかを決定し得て、これらのセンサにフラグを立て得る。さらにまた、制御ユニットは、これらの特定のセンサによって生成されたセンサ測定値に少なくとも部分的に基づいて、逸脱状態の原因を推定し得る。本明細書で使用される場合、逸脱状態の原因は、構成要素の識別および/または構成要素の状態を含み得る。例えば、制御ユニットは、原因を、不良溶接、エネルギー供給装置の誤動作、センサの誤動作、2つのエネルギー供給装置を接続する破損したタブなどのうちの1つまたは複数として区別し得る。原因を推定した後、制御ユニットは、特定の推定された原因に基づいて応答措置を調整し得る。例えば、推定された原因がセンサの誤動作であり得る場合、制御ユニットは、そのセンサに修理または交換のフラグを立て、オペレータに通知し、センサを交換するなどしてもよい。さらに、センサの誤動作は、最悪のシナリオではない可能性があるため、制御ユニットは、最悪のシナリオに基づいて一時的な是正措置の実行を停止し得る。例えば、制御ユニットは、エネルギー供給システムの負荷を増加させ、車両の性能の向上を可能にし、能動的な冷却を減速または停止し、火災抑制を停止するなどしてもよい。別の例では、推定された原因がエネルギー供給装置の誤動作であり得る場合、火災または熱暴走による二次的損傷の拡大を防止または禁止するために、制御ユニットは、問題のエネルギー供給装置および/または回路の電気的分離の維持、能動的冷却の維持、火災抑制の維持などの最悪のシナリオに基づいて一時的な是正措置の実行を延長し得る。
【0110】
図9は、理解を容易にするために、実施形態にかかるエネルギー供給回路(例えば、図6に示す温度センサ614)に関連付けられた温度センサによって生成されたセンサ測定値をプロットしたグラフ900である。グラフは、摂氏単位の温度を表す垂直軸902と、秒単位の時間を表す水平軸904とを含む。グラフは、エネルギー供給回路に関連付けられた6つの温度センサの各々によって生成された例示的なセンサ測定値を表す6つのプロット線906A~906Fを含む。エネルギー供給回路は、図6に示す第1または第2のエネルギー供給回路606A、606Bのいずれかであってもよい。第1のプロット線906Aは、回路の第1のエネルギー供給装置に関連付けられた温度センサのうちの1つによって生成された温度測定値を表し、第2のプロット線906Bは、第1のエネルギー供給装置に関連付けられた他の温度センサによって生成された温度測定値を表す。第3のプロット線906Cは、第2のエネルギー供給装置に関連付けられた温度センサのうちの1つによって生成された温度測定値を表し、第4のプロット線906Dは、第2のエネルギー供給装置に関連付けられた他の温度センサによって生成された温度測定値を表す。第5および第6のプロット線906E、906Fは、第3のエネルギー供給装置に関連付けられた2つの温度センサによって生成された測定値を表す。
【0111】
グラフ900は、経時的な基準(または予想)温度(例えば、値)を表すプロット線908を含む。基準温度線は、指定された許容マージン910によって上下に境界付けられてもよい。指定された許容マージン910は、基準温度線の上方で上側線912まで延在し、基準温度線の下方で下側線914まで延在する。図示の実施形態では、指定された許容マージンは、基準温度線から+/-3度であってもよい。例えば、基準温度線が約400秒で22℃であり得る場合、上側線は25℃であり得て、下側線は19℃であり得る。指定された許容マージンは、図示のグラフでは静的であってもよいが、上述したように、許容マージンは動的であってもよく、動作状態、年数などに基づいて経時的に変化してもよい。さらにまた、許容マージンは、グラフ内の2次元プロット線によって表されてもよいが、許容マージンは、マージンが複数のパラメータの関数であり得るかのように、平面に沿って3次元で表されてもよい。
【0112】
グラフに示すように、100秒では、6つの温度測定値906A~906Fの全てが、基準温度値の指定された許容マージン内にあり得る。500秒の時点では、何らかの原因により、第3のプロット線906Cは、他のプロット線および基準温度線とは異なるかなり一貫した温度上昇を示す。第3のプロット線906Cは、約900秒で32℃の指定温度で絶対閾値916を横切る。従来の電池監視システムは、第3のプロット線が閾値を超えることに応答して、時間900秒で逸脱を検出し得る。本明細書に開示される逸脱検出システムは、異常の早期検出を提供し得る。例えば、制御ユニットは、第3のプロット線が基準温度線から決定された許容マージン値を超えて逸脱していることに応じて、逸脱状態を検出し得る。図示のグラフでは、これは、第3のプロット線が上側線と交差する600秒またはその付近で発生する。したがって、制御ユニットは、逸脱状態を検出し、逸脱する温度測定値が指定された閾値を超える(900秒で)数分前である600秒またはその付近で応答措置を開始し得る。逸脱検出システムによって提供される事前通知は、措置を講じる前に閾値を超えるまで待つことに対する損傷の広がりを防止または低減し得る。
【0113】
実施形態では、第3のプロット線がグラフに示された許容マージン値と交差する前であっても、逸脱状態は、逸脱検出システムによって検出され得る。例えば、制御ユニットは、基準変化率に対する温度値の変化率を監視し、第3のプロット線の変化率が、500秒から600秒の間に決定された閾値マージン値を超えて基準変化率値と異なると決定し得る。変化率に関して、閾値マージン値は、図9に示す閾値マージン値とは異なっていてもよい。例えば、変化率について決定された閾値マージン値は、経時的な温度などの経時的な監視パラメータの単位であってもよい。任意に、決定された閾値マージン値は、基準変化率値の+/-パーセントであってもよい。図9に示すように、制御ユニットは、第3のプロット線の変化率(例えば、傾き)が、基準温度値の経時的な変化率(例えば、線)から500秒から600秒の指定された閾値マージンを超えて逸脱しており、逸脱状態を示していると決定し得る。
【0114】
グラフ900は、650秒付近において、第1のプロット線906Aの傾きが変化し、基準温度線の傾きから逸脱していることを示している。例えば、第1のプロット線は、基準温度線よりも速い温度上昇を示す。第1のプロット線は、指定された許容マージンを超えて基準温度線から逸脱していないが、制御ユニットは、第1のプロット線と基準温度線との間の傾きの逸脱に基づいて逸脱状態を検出してもよい。追加的または代替的に、制御ユニットは、第1のプロット線と基準変動を超える1つまたは複数の他のプロット線との間の変動に基づいて逸脱状態を検出してもよい。例えば、制御ユニットは、(任意の指定された許容マージンを組み込む)同じエネルギー供給装置に関連付けられた温度センサのセンサ測定値間の3℃の基準変動を決定し得る。第1および第2のプロット線906A、906Bは、同じエネルギー供給装置に関連付けられた2つの温度センサのセンサ測定値を表す。グラフは、800秒から900秒の間のある時点で、第1のプロット線が第2のプロット線から3℃を超えて変動していることを示している。したがって、制御ユニットは、第1のプロット線と第2のプロット線との間の変動が基準変動を超えることに応答して(第1のプロット線が基準温度線の指定された許容マージン内に留まっていても)逸脱状態を検出し得る。
【0115】
グラフは、値、値の変化率(例えば、傾き)、センサ測定値の変動など、経時的なセンサ測定値の様々な特性に基づいて逸脱状態が検出され得ることを示している。逸脱状態は、グラフに示される閾値など、事前設定された閾値を超えるセンサ測定値のいずれかとは無関係に検出され得る。例えば、代替的な実施形態における第3のプロット線が、線が閾値を決して超えないように上側線を超えた後に水平になったとしても、逸脱検出システムは、温度の値、プロット線の傾き、プロット線と他の監視された温度プロット線との間の変動などに基づいて、逸脱状態を検出することができてもよい。逸脱検出システムは、測定値に基づいてノイズの多いセンサおよび/または破損したセンサを検出するように構成されてもよい。例えば、ノイズの多いセンサからの測定値に基づいて生成されたプロット線は、より正確なセンサからの測定値に基づいたプロット線よりも大きく変動し得る。さらに、破損したセンサは、均一で不変の測定値を提供し得て、これはグラフに水平線として示されている。ノイズの多いセンサおよび/または破損したセンサの検出に応答して、制御回路は、これらのセンサを無視および/または置換し得る。
【0116】
グラフは温度センサによる温度測定値をプロットしているが、温度に加えて、またはその代わりに、電流、電圧、充電状態、充電容量、圧力、冷却剤流量、および任意の導出または変換された測定値(例えば、電力、RMS電流、抵抗など)などの他のタイプのパラメータに基づいて逸脱状態が検出されることができることが理解され得る。
【0117】
図10は、実施形態にかかるエネルギー供給システムにおいて逸脱状態を検出してこれに応答するための方法1000のフローチャートである。本方法は、その1つまたは複数のプロセッサを含む、図6に示す制御ユニット604によって全体的または部分的に実行され得る。任意に、本方法は、追加のステップ、より少ないステップ、および/または図示されたフローチャートとは異なるステップを含んでもよい。
【0118】
図6から図9をさらに参照すると、本方法は、ステップ1002において開始し、そこでエネルギー供給回路のパラメータを表すセンサ測定値が取得され得る。センサ測定値は、エネルギー供給回路に関連付けられた第1のセンサ群によって生成されてもよい。エネルギー供給回路は、限定されないが、電池セルなどの1つまたは複数のエネルギー供給装置を含む。センサ測定値は、センサから直接取得されてもよく、メモリ、サーバなどの電子記憶装置からセンサデータにアクセスすることによって取得されてもよい。
【0119】
ステップ1004において、パラメータの特定のパラメータの基準値および/または基準変動が決定され得る。例えば、特定のパラメータは、温度、電流、電圧、抵抗、充電状態、容量などであってもよい。基準値および/または変動は、エネルギー供給回路に関連付けられた第1のセンサ群によって生成されたセンサ測定値、少なくとも異なる第2のエネルギー供給回路に関連付けられた第2のセンサ群によって生成されたセンサ測定値、エネルギー供給回路(およびその装置)の固有の特性、エネルギー供給回路の動作状態、および/またはエネルギー供給回路もしくは他のエネルギー供給回路に関する履歴情報に基づいて決定され得る。
【0120】
ステップ1006において、エネルギー供給回路に関連付けられた第1のグループ内のセンサから取得されたセンサ測定値に基づき得る特定のパラメータを表す監視値および/または変動が、特定のパラメータの基準値および/または基準変動と比較され得る。第1のグループ内の関連するセンサの各々のセンサ測定値に基づく監視値および/または変動は、基準値および/または変動と個別に比較され得る。例えば、特定のパラメータが電圧であり得る場合、第1のグループ内の電圧センサの各々の電圧測定値は、基準値および/または変動と比較され得る。特定のパラメータが電力であり得る別の例では、電圧センサおよび電流センサの電圧および電流測定値が使用されて、基準電力値および/または変動とそれぞれ比較され得る電力値および/または変動を導出し得る。
【0121】
ステップ1008において、特定のパラメータを表す監視値および/または変動の全てが、特定のパラメータの基準値および/または変動の指定された許容マージン内にあるかどうかが決定され得る。監視値および/または変動のいずれも基準値および/または変動から指定された許容マージンを超えて逸脱しない場合、答えは「はい」であり得て、本方法は、ステップ1002に戻る。一方、監視値および/または変動のうちの少なくとも一方が基準値および/または変動から許容マージンを超えて逸脱する場合、答えは「いいえ」であり得て、本方法は、ステップ1010に続く。
【0122】
ステップ1010において、監視値および/または変動のうちの1つまたは複数が、監視値および/または基準値から許容マージンを超えて逸脱する変動を逸脱している可能性があるという決定に応答して、逸脱状態が検出され得る。逸脱状態は、エネルギー供給装置、電気バス、センサ、溶接、電池を接続するタブなどの1つまたは複数の構成要素に潜在的な故障または誤動作がある可能性があることを示す。ステップ1012において、逸脱する監視値および/または変動の根拠となり得るセンサ測定値の少なくとも一部を生成した第1のグループの1つまたは複数のセンサが識別され得る。例えば、センサ測定値は、測定のソース(例えば、どのセンサが測定値を生成したか)を示すデータタグを有し得る。第1のセンサは、逸脱した監視値および/または変動に関連付けられたデータタグに基づいて識別され得る。逸脱する監視値および/または変動が異なるセンサによって生成された測定値に基づく場合、複数のセンサが識別され得る。
【0123】
ステップ1014において、逸脱状態の原因が推定され得る。逸脱状態の原因は、第1のセンサおよび他の識別されたセンサによって生成されたセンサ測定値を少なくとも部分的に推定され得る。例えば、逸脱状態の原因は、(i)第1のグループ内の他のセンサによって生成された同じパラメータを表すセンサ測定値、(ii)第1のグループ内の他のセンサによって生成された別のパラメータを表すセンサ測定値、および/または(iii)異なるエネルギー供給回路に関連付けられたセンサの異なるグループによって生成された(同じパラメータおよび/または異なるパラメータを表す)センサ測定値を用いて、第1のセンサによって生成されたセンサ測定値を分析することによって推定され得る。例えば、特定のパラメータが温度である場合、第1のグループの1つまたは複数の温度センサによって生成された外れ値温度測定値は、第1のグループの他の温度センサによって生成された非外れ値温度測定値、第1のグループの電圧センサによって生成された電圧測定値、第1のグループの電流センサによって生成された電流測定値、および/または第2のグループの異なるセンサによって生成された温度、電圧、および電流測定値によって分析され得る。逸脱状態の原因は、本明細書でより詳細に説明するように、分析されるセンサ測定値の観察された傾向および関係に基づいて推定され得る。
【0124】
任意に、逸脱状態の原因は、ステップ1016において一時的な措置をとり、一時的な措置の効果を観察することによって推定されてもよい。一時的な措置は、少なくとも指定された期間にわたって、エネルギー供給回路の少なくとも1つの動作状態を変更することを含み得る。制御ユニットは、動作状態を変更するための制御信号を生成することによって、一時的な措置を開始し得る。制御信号は、通信装置によって意図された受信者に通信され得る。例えば、一時的な措置は、エネルギー供給回路との間の電流伝達を遮断することによってエネルギー供給システム内の他の回路からエネルギー供給回路を電気的に分離することを含み得る。エネルギー供給回路は、回路と隣接する回路との間の導電経路を遮断するために電気スイッチを開くことによって分離されてもよい。回路を分離することは、1つまたは複数のエネルギー供給装置が発火している、および/または熱暴走を経験していることが判明した場合に、損傷の拡大を阻止するのに役立ち得る。エネルギー供給回路が他の回路から切断されると、回路の1つまたは複数のエネルギー供給装置の温度は、周囲温度に向かって移動すると予想され得る。
【0125】
別の一時的な措置は、周囲温度を変更するために、空調などの冷却媒体または熱媒体を開始、停止、および/または調整することであってもよい。エネルギー供給装置に負荷がかかっていない(例えば、現在負荷に電力を供給していない)場合、装置は、経時的に新たな周囲温度に近付くと予想され得る。さらに別の任意の一時的な措置は、ファンまたはポンプのオン、オフ、または動作の変更などによって、回路の周囲の空気流量を調整することであってもよい。エネルギー供給装置が負荷を受けている間、ファンおよび/またはポンプをオフにすると装置の温度が上昇することが予想され、ファンおよび/またはポンプをオンにすると温度が低下することが予想される(周囲温度が装置の温度よりも低い場合)。
【0126】
さらに他の一時的な措置は、エネルギー供給回路に指定された負荷を引き起こすこと、および/またはエネルギー供給回路に出入りする電流伝達の非ゼロレートを調整することを含み得る。一時的な措置は、指定された時間量にわたって行われてもよい。指定された時間量は、5分、30分などであり得る。任意に、指定された時間量は、逸脱状態の原因が推定され得るまで延長されてもよい。例えば、原因が不良センサであると推定され得る場合、不良センサに起因する火災またはエネルギー供給装置の過熱の危険性はほとんどない可能性があるため、能動冷却を提供する一時的な措置は停止され得る。
【0127】
ステップ1018において、(外れ値監視値および/または変動を生成した)識別されたセンサによって生成されたセンサ測定値は、一時的な措置をとった後に監視され得る。これらのセンサのこれらの後続の措置後測定値は、センサ測定値に対する一時的な措置の影響を決定するために、一時的な措置を行う前にセンサによって生成された措置前センサ測定値と比較され得る。例えば、一時的な措置を構成する動作状態の変化が測定値を変化させると予想されたとしても、措置後測定値が措置前測定値と一致する場合、逸脱状態の原因は、センサの誤動作であり得る。したがって、温度センサの温度測定値が、回路を冷却すると予想される回路の能動的冷却および/または分離の存在下で経時的に変化しない場合、制御ユニットは、温度センサが誤動作している可能性があると推定し得る。
【0128】
別の例では、識別されたセンサの措置後測定値は、適切に機能していると仮定され得る他のセンサの測定値と比較され得る。措置後測定値が他のセンサの測定値と一致する場合、識別されたセンサは、適切に機能していると推定され得て、その結果、エネルギー供給装置または関連付けられた構成要素が誤動作、破損、または故障している可能性がある。逸脱状態の原因を推定するための追加のシナリオが以下に説明され得る。
【0129】
ステップ1020において、逸脱状態の原因を推定した後、推定された原因に基づいて応答または是正措置が開始され得る。例えば、センサが不良(例えば、機能不全または非機能)であると制御ユニットによって推定された場合、制御ユニットは、そのセンサに交換フラグを立てるため、後続の監視を実行するときにそのセンサを置き換えるため、センサが誤動作している可能性があることをオペレータに通知するため(例えば、エネルギー供給装置が適切に機能している可能性があること)、能動冷却および/またはエネルギー供給回路の分離などの熱関連損傷を制限するためにとられる一時的な措置を止めるためなどの制御信号を生成し得る。別の例では、制御ユニットが、回路のエネルギー供給装置が誤動作している可能性があると推定した場合、制御ユニットは、熱関連損傷を制限するためにとられる一時的な措置の実行を延長するための制御信号を生成し、その1つまたは複数のエネルギー供給装置の交換のために回路にフラグを立て、オペレータに通知し、エネルギー供給システムを組み込んだ車両の性能を低下させ、火災抑制を開始し、および/または同様のことを行い得る。
【0130】
制御ユニットがセンサ測定値を分析することに基づいて逸脱状態の原因をどのように推定することができるかを示す様々な非限定的な例示的シナリオが以下に提供され得る。以下の例は電池セルを指すが、本明細書に記載の実施形態は電池セルに限定されなくてもよい。
【0131】
第1の温度例では、1つのセル温度センサのみがそのセルの他の温度センサよりも一貫して多く加熱する場合、制御ユニットは、逸脱の原因が不良溶接である可能性があると推定し得る。それに応答して、制御ユニットは、不良溶接の重大度に応じて、不良溶接を無視し、オペレータに通知し、動作を継続し、エネルギー供給システムの性能を低下させ、および/またはエネルギー供給システムをシャットダウンし得る。第2の温度例では、1つのセル温度センサが高範囲外であり、隣接するセンサが正常範囲内にあり得ることを制御ユニットが検出した場合、制御ユニットは、回路に負荷がかからないように回路を分離し得る。1つのセンサによって生成された温度測定値が回路を分離した後に高範囲外のままである場合、そのセンサは、誤動作している可能性がある。それに応答して、制御ユニットは、そのセンサの測定値を無視するか、または後の監視アルゴリズムにおいてそのセンサの代わりとし得る。
【0132】
第3の温度例では、2つ以上の温度センサにおいて予期しない上昇が発生した場合、および/または通気ダクト内の温度が急上昇した場合、制御ユニットは、電池セルの1つまたは複数が加熱している可能性があると推定し得る。重大度に応じて、制御ユニットは、温度上昇を無視し、オペレータに警告し、運転を継続し、エネルギー供給システムを停止し、エネルギー供給システムを停止し、交換のために1つまたは複数のセルにフラグを立て、火災抑制を開始し、充電を中断し、充電の電圧を低下させ、および/または能動冷却を開始し得る。第4の温度例では、温度センサによって生成された温度測定値が、一般的な傾向として、断熱室内の(例えば、冷却/熱媒体に基づく)設定周囲温度から離れて移動している場合、冷却/熱媒体が誤動作している可能性がある。これに応じて、制御ユニットは、冷却/熱媒体が適切に動作していないことをオペレータに通知し、冷却/熱媒体をシャットダウンしてそれ以上使用することを防止し得る。第5の温度例では、平均回路温度およびセルグループ温度が(例えば、履歴から)経時的に一貫した閾値に到達した場合、制御ユニットは、エネルギー供給回路が寿命末期にあると推定し得る。それに応答して、制御ユニットは、回路を交換するようにスケジュールし得て、回路のさらなる使用を防止し得る。
【0133】
第1の電圧例では、電圧センサによって生成された電圧測定値に基づいて、1つのセルまたは電力線の監視された電圧が他のセルまたは電力線よりも速い負荷下で増加または減少する場合、制御ユニットは、セルのタブが破損または損傷している可能性、電力線の絶縁体が摩耗または亀裂している可能性、またはコネクタがしっかりと係合していないと推定し得る。それに応答して、制御ユニットは、破損したセルタブを無視し、エネルギー供給回路を低下させ、使用されている電圧を低減し、セルまたは電力線を分離し、および/またはエネルギー供給回路をシャットダウンし得る。
【0134】
第2の電圧例では、回路の電圧測定値を回路の個々のセルの電圧測定値と比較し、不一致または逸脱を識別することによって、誤動作しているセンサが検出されることができる。それに応答して、誤動作しているセンサによる測定値は、無視されるか、または追加の監視アルゴリズムで置換されてもよい。第3の電圧例では、回路または回路ストリングの電圧測定値をそれらのセルの電圧の合計と比較し、不一致を識別することによって、制御ユニットは、破損した測定カードを検出し得る。それに応答して、回路のうちの1つまたは複数に交換のためのフラグが立てられ得る。
【0135】
第4の電圧例では、所与の回路または複数の回路のストリングのセル電圧の最大値から最小値までの範囲が大きくなり得る場合、不均衡が存在し得る。それに応答して、制御ユニットは、エネルギー供給システムの性能を低下させ、および/またはセル平衡化を実行し得る。第5の電圧例では、回路に負荷がかかっていない間に電圧測定値の傾きを追跡することによって、過度の放電が検出されることができる。エネルギー供給システムをオフにする前に、電圧、温度、および時間が記録され得る。エネルギー供給システムがオンラインに戻ると、同じ回路の電圧、温度、および時間が記録された値と比較されて、過度の放電があるかどうかを決定し得る。過度の放電がある場合、回路に交換のフラグが立てられ得る。第6の電圧例では、隣接するセルまたは回路が、一方が増加し、他方が減少するなど、エネルギー供給システムがオフラインである共通期間中に異なる電圧を有する場合、制御ユニットは、短絡を検出し得る。それに応答して、制御ユニットは、オペレータに通知し、セルまたは回路を機械的に切断し、および/または交換のためにセルまたは回路にフラグを立て得る。
【0136】
第7の電圧例では、故障したヒューズ、接続装置、電流センサ、または他の構成要素が検出され得る。制御ユニットは、電流センサによって生成された電流測定値が比較的高い可能性があり、回路または回路ストリングの監視電圧が突然ゼロに低下した場合に、故障したヒューズを検出し得る。予想されるときに電圧測定値が増減しない場合、故障した接続装置が検出されることができる。予想されるときに電圧測定値が増加および/または減少するが、電流センサがゼロを読み取る場合、誤動作している電流センサが検出されることができる。さらにまた、電流測定値の大きさが比較的高く、電圧測定値が安定している可能性がある場合、誤動作している電流センサが検出されることができる。これらの故障した構成要素のいずれかを検出したことに応答して、制御ユニットは、特定の回路を分離し、メンテナンスのために回路(またはそのいくつかの内部構成要素)にフラグを立て、および/または利用可能であれば動作を継続し得る。第8の電圧例では、増加の直後に減少が続くなど、時間の経過に伴う電圧測定値のこぶ形状に応答して、差し迫った熱暴走が検出されることができる。それに応答して、制御ユニットは、回路を切断し、オペレータに通知し、火災抑制または能動的冷却を作動させ、および/または回路に交換のフラグを立て得る。
【0137】
第9の電圧例では、電圧測定値が、セルが電荷を保持できないこと、および/または放電中の電圧空乏化が速い可能性があることを示す場合、セルは排気され得る。それに応答して、制御ユニットは、オペレータに通知し、回路を切断または分離し、および/または回路に交換のフラグを立て得る。第10の電圧例では、充電中に速い電圧降下が検出され得る場合、制御ユニットは、内部短絡を検出し得る。それに応答して、制御ユニットは、オペレータに通知し、回路を切断または分離し、および/または回路に交換のフラグを立て得る。第11の電圧例では、回路への部分的な接続を有するワイヤシャーシに対する基準電圧測定値間の逸脱に応答して誤配線が検出され得る。それに応答して、配線にメンテナンスのためのフラグが立てられ得て、利用可能であれば動作を継続し得て、および/または回路もしくは回路のストリングが分離され得る。第12の電圧例では、回路ストリングに関連付けられた電圧測定値のシフトに応答して、地絡が検出され得る。回路を通じた電圧測定値の合計は、シフトを検証するために決定されてもよい。それに応答して、制御ユニットは、回路ストリングを分離し、動作を継続し、オペレータに通知し、および/またはメンテナンスをスケジュールし得る。
【0138】
実施形態では、逸脱検出システムによって監視されるエネルギー供給システムは、エネルギー供給システムのエネルギー貯蔵回路に電気的に接続された追加の構成要素(例えば、装置)を含む電源回路の一部を表す。例えば、電源回路は、電力を供給することができる構成要素を指し得る複数の電源を含む。電源は、エネルギー貯蔵回路、トラクションモータ(回生制動モード)、燃料電池、オルタネータ、発電機、電荷転送接点(導電性充電用)、電荷転送コイル(誘導充電用)などを含み得る。オルタネータおよび/または発電機は、ディーゼルエンジンなどの燃焼エンジンに機械的に結合されてもよい。電源回路は、給電システムに配置されてもよい。給電システムは、車両、機外電源システム(例えば、車両充電システム、誘導充電システムなど)、電子装置などであってもよい。逸脱検出システムの制御ユニット(またはコントローラ)は、エネルギー供給回路の状態を監視し、エネルギー供給回路に対する逸脱状態の検出に応答して1つまたは複数の是正措置を開始し得る。是正措置は、電力回路の構成要素のうちの1つまたは複数の動作を変更し得る。
【0139】
図11は、実施形態にかかる、電源回路1102とともに使用するための逸脱検出システム1100のブロック図である。逸脱検出システムは、制御ユニット1104、通信装置1106、および1つまたは複数のエネルギー供給回路1108など、図6の逸脱検出システムと同じ構成要素のいくつかを有し得る。エネルギー供給回路は、電源回路の構成要素である。エネルギー供給回路は、電池セルなどのエネルギー貯蔵装置を含む。任意に、エネルギー貯蔵回路は、コンデンサを含んでもよい。電源回路は、電源間および様々な負荷に電力を伝達するために互いに電気的に接続された複数の電源1110を含む。電源は、導電性バス1112に接続されてもよい。実施形態では、電源は、エネルギー供給回路と、燃焼エンジン1114に機械的に結合された発電機1116と、発電機に電気的に接続されたオルタネータ1118と、トラクションモータ1120と、燃料電池1122と、電荷転送接点1124とを含む。電源回路は、電源のパラメータを監視するためのセンサ1126を含み得る。電源回路は、電源回路を通じた電力の伝送を制御するためのスイッチ装置1128を含み得る。制御ユニットは、電源、センサ、およびスイッチ装置に通信可能に接続されてもよい。制御ユニットは、構成要素に通信される制御信号を生成することによって、これらの構成要素の動作を制御し得る。
【0140】
電源回路は、給電システムに配置されてもよい。電荷転送接点は、外部給電システムの対応する接点に物理的に係合するように設計された導電性要素(例えば、金属ストリップまたはロッド)であってもよい。例えば、電源回路は、車両に搭載されてもよく、電荷転送接点は、外部電源システムの懸垂線、第三軌条、パンタグラフなどと物理的に係合するように設計されてもよい。電荷転送接点は、車両に電力を供給するために電源システムから車両への電力転送を可能にするために、車両を機外電源システムに接続する導電経路を確立し得る。電荷転送接点を介して電源システムから受け取った電力は、エネルギー供給回路を充電するためにエネルギー供給回路に、および/または推進力を供給するためにトラクションモータに供給され得る。
【0141】
代替的な実施形態では、電源回路は、異なる構成要素を有してもよい。例えば、電源回路は、燃料電池などの図示の電源のうちの1つまたは複数を欠いていてもよい。代替的な実施形態では、電源回路は、機外電源システムに配置されてもよく、トラクションモータを欠いてもよい。別の代替的な実施形態では、電源回路は、電子装置用の無線充電装置などの無線充電装置に配置されてもよい。電荷転送接点の代わりに、無線充電装置は、外部装置またはシステムとの誘導電力転送のための電荷転送コイルを含んでもよい。
【0142】
センサは、電源回路内の全ての、または少なくとも複数の電源のパラメータを監視するように配置および結合される。例えば、センサは、図6に示すセンサと同様に、エネルギー供給回路のパラメータを監視する電圧センサ、電流センサ、および温度センサを含み得る。センサは、トラクションモータ、エンジン、発電機、オルタネータ、電荷転送接点、バス、燃料電池などのパラメータを監視する追加のセンサを含み得る。逸脱検出システムの制御ユニットは、電源回路に沿った逸脱状態を検出するために、経時的にセンサによって生成されたセンサ測定値を分析し得る。
【0143】
制御ユニットは、スイッチ装置を使用して、電源回路を介した電力伝送を制御し得る。例えば、第1のエネルギー供給回路に関連付けられた逸脱状態の検出に応答して、制御ユニットは、少なくとも一時的に、スイッチ装置の1つまたは複数を作動させて、第1のエネルギー供給回路と他のエネルギー供給回路を含む電源回路の他の構成要素との間の導電経路を遮断することによって、第1のエネルギー供給回路を電源回路の他の構成要素から電気的に分離し得る。スイッチ装置は、コンタクタ、リレー、ソリッドステートスイッチなどを含むかまたは表し得る。損傷が疑われる構成要素を選択的に分離することは、電源回路の他の構成要素への二次的な損傷を低減するのに役立ち得る。
【0144】
制御ユニットは、逸脱状態の検出時に、電力回路の現在の動作モードもしくは状態、逸脱状態の推定原因(例えば、どの構成要素が故障しているか)、および/または損傷の推定重症度および/またはさらなる損傷のリスクに基づいて、応答措置を調整し得る。電力回路が車両に搭載され、車両が経路に沿って現在移動している実施形態では、制御ユニットによって指令される応答措置の1つまたは複数は、車両の移動を修正または制限することを含み得る。例えば、制御ユニットは、車両の動きを減速および/または停止するための制御信号を生成し得る。制御信号は、トラクションモータに、または自動制御のための車両制御装置に、および/またはオペレータへの指示としてユーザ入出力装置に通信され得る。例えば、制御ユニットは、トラクションモータ(および任意にステアリングアセンブリ)を制御して、故障に対処するために車両をメンテナンス施設に駆動し得る。逸脱状態が比較的重大度が低いと推定される場合、制御ユニットは、車両が経路に沿って走行し続けることを可能にしながら、車両の速度、距離、電力出力(例えば、牽引力)などを制限する移動制限を課し得る。
【0145】
実施形態では、制御ユニットは、検出された逸脱状態に基づいて、電源回路の異なる電源間で電源責任(例えば、割り当て)を再割り当てし得る。例えば、電源回路は、電荷転送接点が電源システムの対応する基板外接点に物理的に接続されるように充電モードにあってもよい。電源回路が充電モードにある間に制御ユニットが逸脱状態を検出した場合、制御ユニットは、少なくとも一時的に、ローカル接点と機外接点との間の電力伝送を制限または停止し得る。制御ユニットが、逸脱状態の原因が機外電源システムおよび/または電荷転送接点に関連すると推定されると決定した場合、制御ユニットは、スイッチ装置を制御して、電荷転送接点を電源回路の他の構成要素から電気的に分離し得る。制御ユニットは、燃料電池、回生制動モードのトラクションモータ、および/またはエンジン、発電機、およびオルタネータセットからバスに供給される電力量を増加させることによって、機外から受け取った電力の不足を補い得る。例えば、制御ユニットは、1つまたは複数のスイッチ装置を作動させて、回生制動中にトラクションモータによって生成された電力をエネルギー供給装置に導いてエネルギー供給装置を充電し得る。
【0146】
実施形態では、逸脱検出システムは、電力回路に沿った逸脱を検出するために、エネルギー供給回路に加えて、電力回路の複数の構成要素の動作を監視し得る。逸脱検出システムは、個々の電源のいずれかに固有のパラメータ逸脱を検出し得る。電源回路に沿った逸脱は、第1の電源における第1のパラメータの第1の監視値が第2の電源における第1のパラメータの第2の監視値から予想誤差(例えば、指定された許容マージン)よりも大きく逸脱するシナリオを表し得る。例えば、電源回路内の直列の2つの電源は、等しい電流(例えば、RMS電流)を受け取ることが予想され得る。第1の電源において受け取られた電流が、第1の電源と直列に接続された第2の電源において受け取られた電流から、指定されたマージンを超えて逸脱する場合、制御ユニットは、逸脱状態を検出/識別し得る。例えば、第1の電源は、車両の第1の車軸および/またはホイールセットに結合された第1のトラクションモータであってもよく、第2の電源は、車両の第2の車軸および/またはホイールセットに結合された第2のトラクションモータであってもよい。センサは、トラクションモータによって生成される電流、トラクションモータの電圧、トラクションモータの温度など、回生制動中のトラクションモータの各々の動作パラメータを監視し得る。第1のトラクションモータの監視されるパラメータは、第2のトラクションモータの監視されるパラメータと同様であると予想され得る。制御ユニットは、第1のトラクションモータの第1の監視パラメータが、(i)第2のトラクションモータの第1の監視パラメータおよび/または(ii)パラメータの基準値に対して指定されたマージンを超えて逸脱することに応答して、逸脱状態を検出し得る。パラメータの基準値は、第1および第2のトラクションモータの各々に関連付けられた第1の監視パラメータのセンサ測定値に基づき得る。実施形態では、制御ユニットは、基準値(例えば、基準変化率値)の変化率と指定されたマージンを超えて異なる変化率を有する第1のトラクションモータの第1の監視パラメータに応答して逸脱状態を検出し得る。
【0147】
電源回路の監視パラメータの基準値および/または変動は、予想される挙動を表し、本明細書で説明するように決定され得る。例えば、制御ユニットは、異なるが類似する電源(複数のトラクションモータなど)を監視するセンサによって生成されたセンサ測定値をコンパイルして、所与のパラメータの基準値および/または変動を導出し得る。別の例では、リアルタイムのセンサ測定値、動作状態、履歴データ、および/または電源に関する情報などの様々なデータが、所与のパラメータの基準値および/または経時変化を出力する物理ベースの計算モデルに入力されてもよい。例えば、制御ユニットは、エンジン(例えば、マニホールド圧力、出力、燃料消費、ノイズなど)および/または発電機(例えば、電流および/または電圧)の1つまたは複数の監視されたパラメータに基づいて、オルタネータを通るRMS電流を予測し得る。
【0148】
逸脱状態の検出に応答して、制御ユニットは、逸脱状態に関連付けられた電源を識別し得る。例えば、センサ測定値は、どのセンサが測定値を生成したかを示すデータタグ(例えば、メタデータ)によってタグ付けされ得る。制御ユニットは、許容マージンを超えて逸脱した監視パラメータのセンサ測定値を分析し、データタグに基づいて、どのセンサが故障トリガ測定値を生成したかを決定し得る。第1のセンサが逸脱した測定値を生成したと決定すると、制御ユニットは、データテーブルなどにアクセスすることによって、どの電源がその第1のセンサに関連付けられているかを識別し得る。データテーブルは、電源および各電源を監視する特定のセンサのリストを提供し得る。データテーブルは、メモリ装置に記憶されてもよい。逸脱状態に関連付けられた電源を識別した後、制御ユニットは、電源のタイプに少なくとも部分的に基づく1つまたは複数の応答措置を実行し得る。例えば、逸脱状態がトラクションモータの1つおよび/またはエネルギー供給回路の1つに起因する場合、制御ユニットは、スイッチ装置を作動させて、トラクションモータの全てまたはエネルギー供給回路の全てを分離することなく、その特定のトラクションモータおよび/またはエネルギー供給回路を分離および非活性化し得る。
【0149】
図12は、実施形態にかかる逸脱状態を検出して応答するための方法のフローチャート1200である。本方法は、図6に示す制御ユニットおよび/または図11に示す制御ユニットによって全体的または部分的に実行され得る。任意に、本方法は、追加のステップ、より少ないステップ、および/または図示されたフローチャートとは異なるステップを含んでもよい。ステップ1202において、電源回路の電源の動作パラメータを表すセンサ測定値が取得される。センサ測定値は、電源の動作パラメータを監視するように構成されたセンサによって生成され得る。
【0150】
ステップ1204において、経時的な動作パラメータの第1のパラメータの基準値が決定または取得される。基準値は、センサ測定値に基づく。基準値は、基準変化率値またはセンサ測定値の監視値間の基準変動であってもよい。ステップ1206において、経時的な第1のパラメータの監視値が経時的に基準値と比較される。例えば、基準値は、1つまたは複数の関連付けられた電源による第1のパラメータの予想される挙動を表し得る。監視値の各々は、センサによって測定された第1のパラメータの実際の実験データを表し得る。例えば、監視値の1つは、第1のセンサによって測定された第1の電源の第1のパラメータを表し得て、別の監視値は、第2のセンサによって測定された第2の電源の第1のパラメータを表し得る。
【0151】
ステップ1208において、監視値のうちの第1の監視値の変化率が基準値(例えば、基準変化率値)の変化率と決定された(例えば、指定された)許容マージン値よりも大きく異なることに応答して、逸脱状態が検出される。第1の監視値は、1つまたは複数の電源のうちの第1の電源と関連付けられ得る。例えば、第1のエネルギー供給回路のエネルギー供給装置の温度は、決定された許容マージン値よりも基準値の変化率とは異なる変化率を有し得る。
【0152】
ステップ1210において、逸脱状態の検出に応答して、第1の電源または電力回路のうちの少なくとも一方の動作状態を変化させるための制御信号が生成される。動作状態の変化は、第1の動作モードから第2の動作モードに切り替えることであってもよい。動作状態は、第1の是正措置を開始することによって変更され得る。第1の是正措置は、電源回路と外部給電システムとの間の電力伝送を遮断または制限すること、第1の電源と電源回路の他の構成要素との間の電力伝送を遮断すること、電源回路および/または第1の電源を囲む周囲温度を調整すること、電源回路および/または第1の電源の周りの温度調整率を調整すること、電源回路に指定された負荷を引き起こすこと、能動的冷却を開始すること、または火災抑制を開始することを含み得る。実施形態では、第1の是正措置は、第1の電源を電気的に分離し、第1の電源の取り外しに基づいて電力回路の他の電源の間で電力を再割り当てすることであってもよい。
【0153】
任意に、本方法は、(基準値から逸脱した)第1の監視値が根拠とするセンサ測定値を生成したセンサのうちの第1のセンサを識別することを含んでもよい。第1のセンサは、第1のセンサによって生成されたセンサ測定値内の自己識別データタグに基づいて識別され得る。本方法は、第1のセンサによって生成されたセンサ測定値に少なくとも部分的に基づいて逸脱状態の原因を推定することを含み得る。例えば、逸脱状態の原因は、動作状態を変更する前に第1のセンサによって生成されたセンサ測定値を、動作状態を変更した後に第1のセンサによって生成されたセンサ測定値と比較することによって少なくとも部分的に推定され得る。任意に、逸脱状態の原因を推定した後、本方法は、決定された原因に基づいて第1の是正措置を変更することを含んでもよい。例えば、逸脱状態の原因が故障センサであり、第1の電源自体が適切に機能していると決定された場合、電源回路の他の電源への第1の電源の電気的接続を再確立することによって、是正措置が変更され得る。例えば、第1の電源は、動作を継続することが許可されてもよい。変更された是正措置は、第1の電源から動作制限を除去すること、故障したセンサに交換用のフラグを立てること、オペレータに通知すること、メンテナンスをスケジュールすることなどを含み得る。
【0154】
本明細書に記載の逸脱検出システムおよび方法の1つまたは複数の実施形態の技術的効果は、誤動作および故障した構成要素の早期検出を含み得て、早期是正措置を可能にして、誤動作および故障によって引き起こされる損傷を防止および/または低減する。例えば、エネルギー供給装置における火災および/または熱暴走の早期検出は、他のエネルギー供給装置への火災および熱暴走の拡散を禁止する早期の措置を可能にし、それによって危険を低減し、機能するエネルギー供給装置の寿命を節約および延長し得る。逸脱検出システムおよび方法の別の技術的効果は、検出された異常に対して自動化された原因固有の応答を提供する能力を含み得る。例えば、センサ測定値の分析に基づいて異常の原因を推定することによって、制御ユニットは、推定された原因に特に合わせて調整され得る措置を開始し得て、これにより効率が向上し、検出された全ての逸脱に対して同じ応答措置を提供する既知の監視システムよりもエネルギー供給システムをより良好に支援する。例えば、制御ユニットが、センサの破損などの逸脱の原因が些細なものであり得ると推定した場合、制御ユニットは、エネルギー供給システムが動作を継続することを可能にし、それによって、火災および/または熱暴走の最悪のシナリオに対処するためにエネルギーシステムを自動的に停止するのではなく、有益な作業出力を提供し得る。
【0155】
一実施形態では、本明細書に記載のコントローラまたはシステムは、ローカルデータ収集システムを展開してもよく、導出ベースの学習結果を可能にするために機械学習を使用してもよい。コントローラは、データドリブン予測を行い、データのセットにしたがって適合させることによって、データのセット(様々なセンサによって提供されるデータを含む)から学習し、決定を行い得る。実施形態では、機械学習は、教師あり学習、教師なし学習、および強化学習などの機械学習システムによって複数の機械学習タスクを実行することを含み得る。教師あり学習は、例示的な入力および所望の出力のセットを機械学習システムに提示することを含み得る。教師なし学習は、パターン検出および/または特徴学習などの方法によってその入力を構造化する学習アルゴリズムを含み得る。強化学習は、動的環境において実行し、次いで正しい決定および誤った決定に関するフィードバックを提供する機械学習システムを含み得る。例では、機械学習は、機械学習システムの出力に基づく複数の他のタスクを含み得る。例では、タスクは、分類、回帰、クラスタリング、密度推定、次元削減、異常検出などの機械学習問題であってもよい。例では、機械学習は、複数の数学的および統計的技術を含み得る。例では、多くのタイプの機械学習アルゴリズムは、決定木ベースの学習、相関ルール学習、深層学習、人工ニューラルネットワーク、遺伝的学習アルゴリズム、誘導論理プログラミング、サポートベクターマシン(SVM)、ベイジアンネットワーク、強化学習、表現学習、ルールベースの機械学習、スパース辞書学習、類似性およびメトリック学習、学習分類器システム(LCS)、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、K平均、勾配ブースト、K最近傍(KNN)、アプリオリアルゴリズムなどを含み得る。実施形態では、(例えば、自然選択に基づき得る制約付きおよび非制約付き最適化問題の双方を解くために)特定の機械学習アルゴリズムが使用され得る。一例では、アルゴリズムが使用されて、混合整数プログラミングの問題に対処し得て、いくつかの成分は整数値であることに制限される。アルゴリズムおよび機械学習の技術およびシステムは、計算インテリジェンスシステム、コンピュータビジョン、自然言語処理(NLP)、レコメンダシステム、強化学習、グラフィカルモデルの構築などにおいて使用され得る。一例では、機械学習が使用されて、決定、計算、比較、および行動分析などを行い得る。
【0156】
一実施形態では、コントローラは、1つまたは複数のポリシーを適用し得るポリシーエンジンを含み得る。これらのポリシーは、機器または環境の所与のアイテムの特性に少なくとも部分的に基づいてもよい。制御ポリシーに関して、ニューラルネットワークは、いくつかの環境およびタスク関連パラメータの入力を受信することができる。これらのパラメータは、例えば、操作機器に関する操作入力、様々なセンサからのデータ、位置および/または位置データなどを含み得る。ニューラルネットワークは、これらの入力に基づいて出力を生成するように訓練されることができ、出力は、動作の目標を達成するために機器またはシステムがとるべき措置または一連の措置を表す。一実施形態の動作中、決定は、ニューラルネットワークのパラメータを介して入力を処理して、その措置を所望の措置として指定する値を出力ノードにおいて生成することによって行うことができる。この措置は、車両を動作させる信号に変換し得る。これは、バックプロパゲーション、フィードフォワードプロセス、閉ループフィードバック、または開ループフィードバックによって達成され得る。あるいは、バックプロパゲーションを使用するのではなく、コントローラの機械学習システムは、人工ニューラルネットワークの様々なパラメータを調整するために進化戦略技術を使用してもよい。コントローラは、バックプロパゲーションを使用して常に解決可能であるとは限らない可能性がある関数、例えば非凸関数を有するニューラルネットワークアーキテクチャを使用してもよい。一実施形態では、ニューラルネットワークは、そのノード接続の重みを表すパラメータのセットを有する。このネットワークの多数のコピーが生成され、次いでパラメータに対する異なる調整が行われ、シミュレーションが行われる。様々なモデルからの出力が取得されると、出力は、決定された成功メトリックを使用してそれらの性能について評価され得る。最良のモデルが選択され、車両コントローラは、予測最良結果シナリオを反映するために所望の入力データを達成するためにその計画を実行する。さらに、成功メトリックは、互いに対して重み付けされ得る最適化された結果の組み合わせであり得る。
【0157】
本明細書で使用される場合、単数形で列挙され、単語「a」または「an」の後に続く要素またはステップは、そのような除外が明示的に述べられていない限り、前記要素または動作の複数形を除外しない。さらにまた、本発明の「一実施形態」への言及は、列挙された特徴を組み込む追加の実施形態の存在を除外するものではない。さらに、明示的に反対の記載がない限り、特定の特性を有する要素または複数の要素を「備える(comprising)」、「備える(comprises)」、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、または「有する(has)」実施形態は、その特性を有しない追加のそのような要素を含み得る。添付の特許請求の範囲において、「含む(including)」および「そこにおいて(in which)」という用語は、それぞれ「備える(comprising)」および「ここで(wherein)」という用語の平易な英語の同義語として使用される。さらに、以下の特許請求の範囲において、「第1の」、「第2の」、および「第3の」などの用語は、単にラベルとして使用され、それらの対象に数値的な要件を課すものではない。さらに、以下の特許請求の範囲の限定は、そのような特許請求の範囲の限定が「のための手段(means for)」の後にさらなる構造を欠いた機能の記述が続くフレーズを明示的に使用しない限り、そして使用するまでは、ミーンズプラスファンクション形式で書かれたものではなく、米国特許法第112条(f)に基づいて解釈されることを意図するものではない。
【0158】
上記の説明は例示的なものであり、限定的なものではない。例えば、上述した実施形態(および/またはその態様)は、互いに組み合わせて使用されてもよい。さらに、その範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を主題の教示に適合させるために、多くの変更が行われてもよい。本明細書に記載の材料の寸法およびタイプは、主題のパラメータを定義するが、それらは例示的な実施形態である。他の実施形態は、上記の説明を検討すれば当業者にとって明らかであろう。したがって、主題の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲とともに決定されるべきである。
【0159】
本明細書は、最良の形態を含む主題のいくつかの実施形態を開示するために、および任意の装置またはシステムを作成および使用し、任意の組み込まれた方法を実行することを含む、主題の実施形態を当業者が実施することを可能にするために、例を使用する。主題の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の例を含んでもよい。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】