(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162138
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】海苔網の酸処理船
(51)【国際特許分類】
A01G 33/02 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
A01G33/02 101J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069427
(22)【出願日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2022072464
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000208787
【氏名又は名称】第一製網株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黒田 哲太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【テーマコード(参考)】
2B026
【Fターム(参考)】
2B026HA01
(57)【要約】
【課題】 効率的に酸処理を施すことができる海苔網の酸処理船(潜り船)を提供する。
【解決手段】 海苔網を船首側から船上に導き船尾から海上に戻す海苔網用ガイド20と、該海苔網用ガイド20に沿って移動する海苔網を酸処理液31に接触させる酸処理槽35と、該酸処理槽35と酸処理液31を前記酸処理槽35の船尾側に供給する経路と海苔網に接触した後の酸処理液31を前記酸処理槽35の船首側から回収する経路と前記両経路が各々連結された酸処理液貯留槽39から成る循環部60と、該酸処理貯留槽39内の酸処理液31のpH値を検出しその検出値に基づいて前記酸処理液貯留槽39内に酸処理液31の酸原液Zを供給する酸原液供給装置40を作動させて酸処理液を一定のpH値に制御する制御部50とを備えた海苔養殖酸処理船であって、前記酸処理槽35を酸処理液31が船首前方へ流れるような傾斜角度2度(以上)~15度(以下)の前下がりに傾斜させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、海苔網を船首側から船上に導き船尾から海上に戻す海苔網用ガイドと、該海苔網用ガイドに沿って移動する海苔網を酸処理液に接触させる酸処理槽と、該酸処理槽と酸処理液を前記酸処理槽の船尾側に供給する経路と海苔網に接触した後の酸処理液を前記酸処理槽の船首側から回収する経路と前記両経路が各々連結された酸処理液貯留槽から成る循環部と、該酸処理貯留槽内の酸処理液のpH値を検出しその検出値に基づいて前記酸処理液貯留槽内に酸処理液の酸原液を供給する酸原液供給装置を作動させて酸処理液を一定のpH値に制御する制御部とを備えた海苔養殖酸処理船であって、前記酸処理槽を酸処理液が船首前方へ流れるような傾斜角度2度(以上)~15度(以下)の前下がりに傾斜させて設けたことを特徴とする海苔養殖酸処理船。
【請求項2】
前記酸処理槽内には、酸処理液を船首前方向とは異なる方向で加圧供給させる吐出管を設けたことを特徴とする請求項1記載の海苔養殖酸処理船。
【請求項3】
前記吐出管は、V字、U字又は多角形状の曲管であり内側面には複数の吐出孔が所定間隔で形成されており、曲管の尖部が船首前方向へ正体する様にして設置されていることを特徴とする請求項2記載の海苔養殖酸処理船。
【請求項4】
前記酸処理槽内には、船首前方への酸処理液の流れを適度に滞留させオーバフローが生じるような酸処理槽底面からの高さ18~50mmの凸部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の海苔養殖酸処理船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖海苔網を船首側から船上に導いて養殖中に海苔網に付着する珪藻類や赤腐れ菌などの菌類を酸処理剤(液)で海苔網の下に潜り込むようにして酸処理する養殖海苔網の酸処理船(所謂、潜り船)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、海苔養殖場において海面部分に展張されている海苔網に付着する珪藻類や赤腐れ菌などの菌類を乳酸、クエン酸及びリンゴ酸などの有機酸等の組み合わせからなる配合組成の酸処理剤によって効果的に酸処理を施す海苔網の酸処理船は数多くの型式、構造のものが知られている。
【0003】
このような海苔網の酸処理船としては、海苔網を船上に導くための海苔網用ガイドを船体上部に設け、海苔網の下に潜り込むようにして海苔網の酸処理とを行うようになっている(例えば、特許文献1参照)。前記海苔網用ガイドは、船体の前端部から前後方向の中央部へ後上がりに傾斜させて延びるとともに、前記中央部から船体の後端部まで略水平に延びており、後端部を後下がりに傾斜させて海上に海苔網を戻す構造を採っている。前後方向の中央部から後端部にわたる部位に酸処理を行うための酸処理槽を設けている。
【0004】
しかしながら、国内有数の海苔養殖産地である有明海は、閉鎖性海域であるために漁場面積が狭く、また、特徴的な遠浅地形にマッチした支柱式養殖が主流であるため、コンパクトな小型の海苔養殖活性処理船の開発が望まれているが、この特許文献1に開示されるような従来の潜り船は、活性化処理槽の設置構造により必然的に大型のものとなり、小型化が困難という問題があった。
【0005】
小型化に適した海苔養殖酸処理船(潜り船)の従来例としては、海苔網用ガイドの後上がりに傾斜する部分に酸処理槽を海苔網用ガイドに沿って後上がりに傾斜させて設けたものであり、酸処理槽の全長を短縮することができ、しかも、酸処理槽を水平に設ける構造に較べて、傾斜している分だけ設置スペースの前後方向の長さを短縮することができるというものである(例えば、特許文献2参照)。そして、この特許文献2には、酸処理槽の上を移動する海苔網に逆らうように酸処理液が流れるから、酸処理液が海苔網に浸透し易くなり、酸処理が適切に行われるようになるとの記載がある。
【0006】
しかしながら、前記特許文献2の海苔網の酸処理船では、酸処理液の後方から前方への流れが自動濃度調整の酸処理機構(例えば、特許文献3の
図4に記載されるような従来技術)と上手くマッチ出来ておらず、十分な酸処理効果を得るには至っていない。また、海苔網との接触効率面でも不十分であり、課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-187038号公報(特許請求の範囲、
図1等)
【特許文献2】特開2002-000038号公報(特許請求の範囲、
図1等)
【特許文献3】特開平7-147859号公報(段落0023、0024、
図4等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したような構成の従来の海苔養殖酸処理船(潜り船)は、自動濃度調整機構で濃度制御しているにもかかわらず、安定した適正濃度での酸処理が実現できておらず、また、海苔網との接触が不十分で酸処理剤の性能を十分に発揮させるには至っていない。
【0009】
海苔養殖に用いられる酸処理液は、アミノ酸や乳酸、クエン酸などの有機酸等の食品及び食品添加物成分で構成された酸処理剤が市販されており、この市販の酸処理剤を原液(以降、単に「酸原液」と記載)として海水等によって希釈されたものである。この酸処理液は、除菌や養分付与により海苔の生長を促す酸処理効果を期待するものであり、この効果を発現させるためには適正濃度範囲(市販剤の種類毎に推奨される濃度閾値)の酸処理液に海苔網が十分な条件(接触の量、強度、時間等)で接触する必要があるが、従来の海苔養殖酸処理船(潜り船)による処理ではこの条件を満たしていないのが現状である。
【0010】
活性剤の性能を十分に発揮させるためには、(1)適正濃度の安定キープを図るための酸処理液の効率的な循環と(2)海苔網の酸処理液との十分な接触を再現できる海苔養殖酸処理船の開発が急務である。
【0011】
本発明は、前記従来の課題等について、これを解消しようとするものであり、養殖中に海苔網に付着する珪藻類や赤腐れ菌などの菌類を酸処理剤(液)で酸処理する自動濃度調整機構で濃度制御する海苔網の酸処理船(潜り船)において、安定した適正濃度での酸処理液で海苔網が酸処理でき、また、海苔網との接触が十分になされるので、酸処理剤の性能を十分に発揮させる海苔網の酸処理船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記従来の課題等について鋭意検討した結果、少なくとも、海苔網を船首側から船上に導き船尾から海上に戻す海苔網用ガイドと、該海苔網用ガイドに沿って移動する海苔網を酸処理液に接触させる酸処理槽と、該酸処理槽と酸処理液を前記酸処理槽の船尾側に供給する経路と海苔網に接触した後の酸処理液を前記酸処理槽の船首側から回収する経路と前記両経路が各々連結された酸処理液貯留槽から成る循環部と、該酸処理貯留槽内の酸処理液のpH値を検出しその検出値に基づいて前記酸処理液貯留槽内に酸処理液の酸原液を供給する酸原液供給装置を作動させて酸処理液を一定のpH値に制御する制御部とを備えた海苔養殖酸処理船において、酸処理槽の傾斜角度を2度(以上)~15度(以下)として、酸処理液の後方(船尾)から前方(船首)への流れが自動濃度調整機能とマッチして海苔養殖酸処理船(全体)における酸処理液の循環がスムーズとなり、均一且つ効果的な処理が達成されることを解明した。また、活性処理液の後方(船尾)から前方(船首)への流れとは異なる流れを適正に組み込むことや流れの滞留箇所からのオーバーフローを適正に生じさせることで海苔網との効率的な接触が達成できることに予想外に気が付き、本発明の完成に至ったものである。
【0013】
すなわち、次の(1)~(4)に存する。
(1) 少なくとも、海苔網を船首側から船上に導き船尾から海上に戻す海苔網用ガイドと、該海苔網用ガイドに沿って移動する海苔網を酸処理液に接触させる酸処理槽と、該酸処理槽と酸処理液を前記酸処理槽の船尾側に供給する経路と海苔網に接触した後の酸処理液を前記酸処理槽の船首側から回収する経路と前記両経路が各々連結された酸処理液貯留槽から成る循環部と、該酸処理貯留槽内の酸処理液のpH値を検出しその検出値に基づいて前記酸処理液貯留槽内に酸処理液の酸原液を供給する酸原液供給装置を作動させて酸処理液を一定のpH値に制御する制御部とを備えた海苔養殖酸処理船であって、前記酸処理槽を酸処理液が船首前方へ流れるような傾斜角度2度(以上)~15度(以下)の前下がりに傾斜させて設けたことを特徴とする海苔養殖酸処理船。
(2) 前記酸処理槽内には、酸処理液を船首前方向とは異なる方向で加圧供給させる吐出管を設けたことを特徴とする上記(1)記載の海苔養殖酸処理船。
(3) 前記吐出管は、V字、U字又は多角形状の曲管であり内側面には複数の吐出孔が所定間隔で形成されており、曲管の尖部が船首前方向へ正体する様にして設置されていることを特徴とする上記(2)記載の海苔養殖酸処理船。
(4) 前記酸処理槽内には、船首前方への酸処理液の流れを適度に滞留させオーバフローが生じるような酸処理槽底面からの高さ18~50mmの凸部材を設けたことを特徴とする上記(1)記載の海苔養殖酸処理船。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、酸処理槽には、酸処理液が船首前方へ流れるような傾斜角度2度(以上)~15度(以下)の前下がりに傾斜させているので、酸処理液の後方(船尾)から前方(船首)への流れが自動濃度調整機能とマッチして海苔養殖酸処理船(全体)における酸処理液の循環がスムーズとなり、均一且つ効果的な処理が達成される海苔網の酸処理船が提供される。
請求項2の発明によれば、酸処理槽には、酸処理液が船首前方へ流れるような傾斜角度2度(以上)~15度(以下)の前下がりに傾斜させて、且つ、酸処理槽内には、酸処理液を船首前方向とは異なる方向で加圧供給させる吐出管を設けているので、海苔養殖酸処理船(全体)における酸処理液のスムーズな循環による均一な酸処理液が安定に得られ、また、酸処理層内に適度な乱流が生じることになり、海苔網との効率的な接触が達成できる海苔網の酸処理船が提供される。
請求項3の発明によれば、吐出管には、V字、U字又は多角形状の曲管であり内側面には複数の吐出孔が所定間隔で形成されており、曲管の尖部が船首前方向へ正体する様にして設置されているので、酸処理槽内に適度な乱流と流れの滞留箇所からのオーバーフローが生じることになり、海苔網との接触が更に十分に達成できる海苔網の酸処理船が提供される。
請求項4の発明によれば、酸処理槽内には、酸処理液が船首前方へ流れるような傾斜角度2度(以上)~15度(以下)の前下がりに傾斜させて、且つ、酸処理槽底面からの高さ18~50mmの凸部材を設けているので、海苔養殖酸処理船(全体)における酸処理液のスムーズな循環による均一な酸処理液が安定に得られ、また、船首前方への酸処理液の流れを適度に滞留させオーバフローが生じることになり、海苔網との効率的な接触が達成できる海苔網の酸処理船が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態を示す海苔網の酸処理船の図面であり、(a)は概略側面図、(b)は(a)の概略平面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態を示す海苔網の酸処理船の図面であり、(a)は概略側面図、(b)は(a)の概略平面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態を示す海苔網の酸処理船の図面であり、(a)は概略側面図、(b)は(a)の概略平面図である。
【
図4】本発明の第4実施形態を示す海苔網の酸処理船の図面であり、(a)は概略側面図、(b)は(a)の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の各実施形態を詳しく説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示す海苔網の酸処理船の図面であり、(a)は概略側面図、(b)は(a)の概略平面図である。
本第1実施形態の海苔網の酸処理船Aは、
図1(a)及び(b)に示すように、船本体10に、少なくとも、海苔網(図示せず)を船首側から船上に導き船尾から海上に戻す海苔網用ガイド20と、該海苔網用ガイド20に沿って移動する海苔網を酸処理液31に接触させる酸処理槽35と、該酸処理槽35と酸処理液31を前記酸処理槽35の船尾側に供給する経路と海苔網に接触した後の酸処理液31を前記酸処理槽35の船首側から回収する経路と前記両経路が各々連結された酸処理液貯留槽39から成る循環部60と、該酸処理液貯留槽39内の酸処理液のpH値を検出しその検出値に基づいて前記酸処理液貯留槽39内に酸処理液31の酸原液Zを供給する酸原液供給装置40を作動させて酸処理液31を一定のpH値に制御する制御部50とを備えたものであり、操舵席12に着座の乗員が、操舵ハンドル(図示していない)や推力調整用レバー(図示していない)を操作することにより、船外機11の推進力で海苔網用の前部ガイド20を海苔網の下に潜り込ませるようにして海苔網の下に入り、海苔網の酸処理を行うものである。なお、前記酸処理は、海苔網の除菌や養分付与を目的として行なっており、従来からよく知られているように、海苔網を酸処理液31に接触することによって実施する。
【0017】
船外機11は、船本体10の船尾に取り付けられ、操舵席12に着座の乗員の操作により酸処理船Aの通常の航走時に使用する他に、酸処理を行うとき推力を発生させるために使用する。
【0018】
船本体10に設けた前記海苔網用ガイド20は、金属製パイプなどの部材を使用し、船本体10の前部に前後方向へ自在移動可能な前部ガイド21と、船本体10の上部に固定した上部ガイド22と、船本体10の後部に固定した後部ガイド23によって構成している。
【0019】
前記前部ガイド21は、前方(船首)に向かうにしたがって次第に幅が狭くなるように形成(例えば、平面形状がU字型やV字型に形成)し、後端部を船体側部のガイドロッド(図示していない)に摺動自在に支持させている。
図1の海苔網酸処理船Aは、V字型に形成した前部ガイド21を有する場合の例示である。
この前部ガイド21は、酸処理を実施しないときには、船上に引き上げておき、前記作業を実施するときには、船体10の前方(船首)へ突出させて先端を海中に水没させる。この状態で海苔網に向って進むことにより、海苔網が前部ガイド21の上に引き上げられ、前部ガイド21から上部ガイド22の上に乗り移る。船体10を更に前進させることによって、船全体が海苔網の下に潜り込むようになる。このように海苔網の下方を通過しながら、海苔網の酸処理を行う。
【0020】
前記上部ガイド22は、船本体10の前端部から後端部まで左右方向の両端2本の金属製パイプ等の部材が一直線上に後上がりに傾斜させて形成し、後端部を側面でくの字状に屈曲させて下端を船尾板(図示していない)に固定している。この上部ガイド22に沿って海苔網が船体前部(船首)から後部(船尾)へ移動する。
【0021】
前記後部ガイド23は、金属製パイプ等の部材が船本体10の後端部から後方に向かって船からせり出して形成し、この後部ガイド23の全長は、船の進行に伴って上部ガイド22から移った海苔網が後部ガイド23の後端部まで移動する間に十分な酸処理効果を施す時間だけ空中に浮上させることのできる長さに設定されている。この後部ガイド23を渡り海苔網が養殖海域(水中)へ戻り、海苔網の酸処理が遂行される。
【0022】
酸処理液31は、乳酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸等の酸原液〔市販品があれば市販の酸処理剤(液)、本実施形態では、第一製網社製の「ノリアクト」〕Zが海水等によって希釈されたものであり、所定のpH値、例えば、pH1.7~2.3を有する酸希釈液である。この酸処理液31は、酸処理液貯留槽39内に一定量(500~2,000L)が収容されており、船上に引き上げられる海苔網を接触処理することによって海苔網と海苔網に付着した海苔を酸処理するものである。また、この酸処理液31は、除菌や養分付与により海苔の生長を促す酸処理効果を期待するものであり、この効果を発現させるためには適正濃度範囲(市販剤の種類毎に推奨される濃度閾値、例えば0.9~1%)の酸処理液に海苔網が十分な条件(接触の量、強度、時間等)で接触する必要がある。
【0023】
酸処理液貯留槽39は、船本体10の中ほどに形成された長方形状のタンクであり、所定量(500~2,000L)の酸処理液31を収容するものである。酸処理液貯留槽39には、酸原液供給装置40、制御部50、酸処理液供給ポンプ32、これらを駆動するバッテリー(図示せず)などが配置されている。
【0024】
酸原液供給装置40は、
図1(b)に示すように、酸処理液貯留槽39の適宜位置に配置されるものであり、前記酸処理液貯留槽39内に酸処理液31の酸原液Zを供給するものである。本実施形態では、酸原液供給装置40には、酸処理液31の酸原液Zを収容する酸原液タンク41と、該酸原液タンク41から酸原液ポンプ42を介して酸原液ライン43により連結されている。
【0025】
制御部50は、酸処理液貯留槽39内の適宜位置(酸処理液貯留槽39の平均的pHを検出可能な適宜位置)に、酸処理液31のpH値を検出するpH検出器51を有し、pH検出器51で検出した検出値に基づいて前記酸原液供給装置40の酸原液ポンプ42を作動させて、酸処理液貯留槽39内へ酸処理液31の酸原液Zを供給して酸処理液31を一定のpH値に制御するための装置である。制御部50は、pH検出器51の検出値に基づいて、供給する酸原液Zの供給量を自動調節するものである。
【0026】
海苔網が酸処理液31に接触し酸処理が施される酸処理槽35は、繊維強化プラスチック等によって平面形状が長方形の浅い皿状に形成しており、上述したように船尾に向かって後ろ上がりに延びる上部ガイド22に支持させて後上がり(前下がり)に傾斜させている。この酸処理槽35を取付ける位置は、
図1に示すように、上部ガイド22の前後方向の略中央部であって、海苔養殖酸処理船の設計により幾分の前後調整を図るものである。この酸処理槽35の横幅は、上部ガイド22の2本のパイプ様部材どうしの間に形成されるものである。
酸処理槽35の船本体10(水平基準)に対する傾斜角度は、酸処理槽35において酸処理液31が船尾後方から船首前方へ適正(流速、強度、安定性)に流れるよう、2度(以上)~15度(以下)の前下がりに傾斜させる。該傾斜角度が2度未満では、酸処理槽35での酸処理液31の船尾後方から船首前方への流れが弱く(流速)、海苔養殖酸処理船の自動濃度調整機能である前記酸原液供給装置40及び前記制御部50との連動が悪くなり(相対的に酸処理槽35での酸処理液31の流速が不足し)、酸処理液31の濃度が海苔養殖酸処理船(全体)での安定化が困難となり、結果的に適正濃度での海苔網の酸処理が行えない。また、傾斜角度が2度未満では、酸処理槽35での酸処理液31の船尾後方から船首前方への流れが強度的及び量的に弱く(不足し)、海苔網との接触において酸処理液31が海苔網及び海苔網に付着する海苔に十分に浸透せず、酸処理液31の本来の効果(除菌や栄養分付与の性能)が十分に得られない。そして、傾斜角度が15度を超すと、酸処理槽35での酸処理液31の船尾後方から船首前方への流れが大き過ぎて、酸原液供給装置40及び制御部50との連動が悪くなり(相対的に酸処理槽35での酸処理液31の流速が過多となり)、また、海苔網との接触で酸処理液31の一部が酸処理槽35からこぼれ落ちていくため、結果的に酸処理液31の適正条件(濃度、量)での海苔網の酸処理が行えなくなる。
【0027】
前記酸処理槽35の船本体10(水平基準)に対する傾斜角度は、酸処理槽35における酸処理液31の後方(船尾)から前方(船首)への流れが、酸処理貯留槽39における酸処理液31の自動濃度調整機能である前記酸原液供給装置40及び前記制御部50の酸原液Zの供給連動とより良好にマッチする点から、好ましくは、3度(以上)~13度(以下)の前下がりに傾斜させる。そして、酸処理槽35における酸処理液31の海苔網とのより良好な接触(接触時の酸処理液31の量と強度、接触時の酸処理液31の飛散ロス防止)の点から、更に好ましくは、5度(以上)~12度(未満)の前下がりに傾斜させる。
【0028】
前記酸処理槽35の上端部(後端部)には、酸処理液31を酸処理槽35内に供給するための管状部材61(ノズル)を形成し、酸処理槽35の下端部(前端部)には、酸処理液31を船本体10下方の酸処理液貯留槽39へ戻すための酸処理液回収ダクト36(開口)を形成している。この管状部材61の下方、すなわち酸処理槽35の裏側には、前記管状部材61に酸処理液貯留槽39から酸処理液供給ポンプ32を介して酸処理液31を供給するための酸処理液供給ライン33と接続している。また、この酸処理液回収ダクト36は、酸処理液貯留槽39へ酸処理液31を戻すための酸処理液回収ライン37と接続している。
【0029】
前記管状部材61は、酸処理液供給ポンプ32により加圧供給される酸処理液31を、酸処理槽35の上端部(後端部)から船首前方向へ供給する構造を有するものである。好ましくは、細長い吐出スリット又は吐出孔を、酸処理槽35の幅方向の略全域にわたって一列に並ぶように、間隔をおいて複数並設させる。この様な設定であれば、酸処理槽35の幅方向対し均等に、酸処理槽35の後方(船尾)から前方(船首)へ酸処理液31が流れる。
図1の海苔網酸処理船Aは、複数吐出孔を有する場合の例示である。
【0030】
循環部60は、上述した「酸処理液貯留槽39-酸処理液供給ポンプ32-酸処理液供給ライン33-管状部材61-酸処理槽35-酸処理液回収ダクト36-酸処理液回収ライイン37(-酸処理液貯留槽39へ戻る)」で構成される、海苔養殖酸処理船における酸処理液31の循環ラインである。そして、酸処理槽35には、酸処理液31が船尾後方から船首前方へ適正(流速、強度)に流れるような傾斜角度を有し前下がりに傾斜させているので、酸処理槽35における酸処理液31の後方(船尾)から前方(船首)への供給(管状部材61)-回収(酸処理液回収ダクト36)の流れが、酸処理貯留槽39における酸処理液31の自動濃度調整機能である前記酸原液供給装置40及び前記制御部50の酸原液Zの供給連動とマッチして海苔養殖酸処理船(循環部60の一連構成)における酸処理液31の循環がスムーズとなり、酸処理液31の濃度が海苔養殖酸処理船(全体)で所望する一定範囲で安定して保てるものである。なお、
図1における太矢印は、海苔養殖酸処理船(全体)における酸処理液31の循環をイメージしたものである。
【0031】
このように構成される本第1実施形態の海苔網の酸処理船Aによる海苔網の酸処理作業について、以下に、説明する。
海苔網の酸処理船Aを養殖している海苔網が設置されている海上まで移動させた後、船
本体10を前進せしめると、前進するにつれて、海苔網用ガイド20に導かれ海苔網(図示していない)が酸処理槽35に前方から侵入し、酸処理槽35内に流れながら収容されている酸処理液31に接触処理され、海苔が酸処理されることとなる。
【0032】
詳しく述べると、船本体10を船外機11の推進力により、海苔網用ガイド20の前部ガイド21を前方へ突出させた状態で海苔網に向って前進せしめると、船本体10が海苔網の下に潜った状態となり、海苔網が上部ガイド22に導かれながら酸処理槽35の船尾後方から船首前方に流れる酸処理液31に接触することで、海苔網及び海苔網に付着の海苔が酸処理される。この酸処理において、酸処理槽35は、船本体10(水平基準)に対する傾斜角度が2度(以上)~15度(以下)の前下がりに傾斜されているので、船尾後方から船首前方へ適正(流速、強度)に流れる酸処理液31に海苔網が接触することが可能となる。また、酸処理槽35の上端部(後端部)に取付けられた管状部材61からは、酸処理液貯留槽39から所望する濃度に調整された酸処理液31が酸処理液供給ポンプ32により加圧供給され、管状部材61の複数吐出孔より酸処理槽35の幅方向の略全域にわたって吐出されるので、海苔網に対し適正濃度の酸処理液31が均等に接触することが可能となる。
【0033】
上述の通り酸処理槽35において海苔網に接触した後の酸処理液31は、処理効果発現による有効成分の消費と海苔網を介して持ち込まれる養殖海域からの海水添加により、適正濃度から低値の状態(pHとしては高値に変動)となって、酸処理槽35の下端部(前端部)に設けられた酸処理液回収ダクト36で回収され、酸処理液回収ライン37を経て酸処理液貯留槽39に戻ってくる。この酸処理後の酸処理液31の回収において、酸処理槽35は、船本体10(水平基準)に対する傾斜角度が2度(以上)~15度(以下)の前下がりに傾斜されているので、酸処理液31の流れが定常的となり、スムーズな酸処理液31の回収が可能となる。
【0034】
上述の通り酸処理液貯留槽39に回収された酸処理後の酸処理液31は、既に酸処理貯留槽39に存在の酸処理液31と混合される。この混合により酸処理液貯留槽39の酸処理液31の濃度は所望する適正値から一旦外れるが、酸処理液貯留槽39内では酸処理液31のpHをpH検出器51により検出し、このpH検出器51が検出した検出値は制御部50に出力され、制御部50はpH検出器51から入力された検出値と予め設定した制御しきい値(所望する適正濃度の酸処理液31に対応するpH値)とに基づいて、酸原液供給装置40の酸原液ポンプ42をフィードバック制御する。酸原液ポンプ42は、制御部50から入力される作動信号に基づいて、該作動信号に応じた所定量の酸原液Zを酸原液タンク41から吸い出して酸原液ライン43により酸処理液貯留槽39に供給する。また、前記制御部50は、pH検出器51の検出値に基づいて、酸原液ポンプ42を制御して酸処理液31に供給する酸原液Zの供給量を自動調節することができるものである。前記の酸処理槽35からの所定傾斜角度により初めて可能となる酸処理液31のスムーズな回収フローに伴って酸処理液貯留槽39中に生成される回流により、酸処理液31が良好な撹拌状態となることで、酸処理での海水等により薄まった酸処理液31(pHとしては高値に変動)中に酸原液Zが溶解し効率的に拡散することとなり、これにより酸処理液31中の高値に変動したpH値を速やかに所望設定のpH値にすることができる。なお、pH値の表示は、制御部50に備えた防水性のpH表示液晶画面等(図示せず)で、操舵席12で乗員が確認することもできる。前述した酸処理槽35からのスムーズで定常的な酸処理液31の回収と、これに伴って酸処理液貯留槽39で安定的に生じる酸処理液31の回流と酸原液Zの効率拡散の結果により得られる速やかなpH調整の作用効果は、酸処理槽35の傾斜角度を2度(以上)~15度(以下)の前下がりに傾斜させることで初めて可能となるものである。
【0035】
上述の通り酸処理液貯留槽39で所望の適正濃度となった酸処理液31は、酸処理液供給ポンプ32により酸処理液供給ラインを介して、管状部材61より酸処理槽35へ加圧供給され、本発明特有の海苔養殖酸処理船(全体)における酸処理液のスムーズな循環が完成されるものである。また、酸処理槽35で酸処理液31と接触した海苔網は、後部ガイド23に導かれ、船本体10外へ移動して養殖海域(水中)に戻ることで海苔網の酸処理が遂行される。
【0036】
このように構成される本第1実施形態の海苔網の酸処理船Aによれば、酸処理槽35には、酸処理液31が船首前方へ流れるような傾斜角度2度(以上)~15度(以下)の前下がりに傾斜させているので、酸処理液31の後方(船尾)から前方(船首)への流れが自動濃度調整機能とマッチして海苔養殖酸処理船(全体)における酸処理液31の循環がスムーズとなり、均一且つ効果的な処理が達成される海苔網の酸処理船が得られることになる。
【0037】
図2は、本発明の第2実施形態を示す海苔網の酸処理船の図面であり、(a)は概略側面図、(b)は(a)の概略平面図である。以下の第2実施形態~第4実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成は、図面において同一の図示符号を示し、その説明を省略する。
本発明の第2実施形態を示す海苔網の酸処理船Bは、前記第1実施形態において、管状部材61にサイド吐出管62、62を酸処理槽35の左右両端に後端から前端にわたり長手方向に各々接続したものである。このサイド吐出管62、62には、複数の吐出孔が酸処理槽35に向かって設けられており、後方(船尾)から前方(船首)への酸処理液31の流れに加え異方向となる両サイドから酸処理槽35内側への横方向の酸処理液31の流れが与えられるので、酸処理液31の本流(全体循環の順方向)に適度な乱流が生じ、海苔網との接触が多方向から起こるため酸処理液31が海苔網により浸透し易くなる。なお、
図2の(b)における細矢印は、異方向となる酸処理液31の流れをイメージしたものである。
【0038】
このように構成される本第2実施形態の海苔網の酸処理船Bによれば、酸処理槽35には、酸処理液が船首前方へ流れるような傾斜角度2度(以上)~15度(以下)の前下がりに傾斜させて、且つ、酸処理槽35内には、酸処理液31を船首前方向とは異なる方向で加圧供給させるサイド吐出管62、62を設けているので、海苔養殖酸処理船(全体)における酸処理液31のスムーズな循環による均一な酸処理液が安定に得られ、また、酸処理槽35内に適度な乱流が生じることになり、海苔網との効率的な接触が達成できる海苔網の酸処理船が得られることになる。
【0039】
図3は、本発明の第3実施形態を示す海苔網の酸処理船の図面であり、(a)は概略側面図、(b)は(a)の概略平面図である。
本発明の第3実施形態を示す海苔網の酸処理船Cは、前記第2実施形態において、サイド吐出管62、62にU字状吐出管63、63、63を、尖部を前方に向け酸処理槽35の幅方向にわたるように後端から前端の途中に各々ほぼ均等間隔に接続したものである。このU字状吐出管63、63、63には、複数の吐出孔が内側面斜め上方向に設けられており、酸処理液31の本流(全体循環の順方向)に適度な乱流が生じ、且つ、U字状吐出管63、63、63による流れの滞留箇所からのオーバーフローと斜め上方向の吐出が生じ、海苔網との多方向の接触がより頻度高く起こるため酸処理液31が海苔網により浸透し易くなる。
図3における、U字状吐出管63箇所の網掛けと曲線矢印は、滞留とオーバーフローとなる酸処理液31の流れをイメージしたものである。
なお、
図3の海苔網酸処理船CのU字状吐出管63、63、63は、U字状のものを3本設けたが本発明の海苔網酸処理船ではこれに限定されるものではなく、V字又は多角刑状の曲管を1~5本設置してもよい。また、本発明の該吐出管(幅方向設置)は、適度な滞留とオーバーフローを発生させるために、外径が18~50mmのものが好ましい。外径が18mmより小さいと、滞留とオーバーフローが効果的に発生せず海苔網との接触が向上しないので、好ましくない。外径が50mmより大きいと、本発明の海苔網の酸処理船において必須の作用機構である海苔養殖酸処理船(全体)における酸処理液31のスムーズな循環が妨げられるので、好ましくない。また、外径が20~40mmが効率的な滞留と循環が得られ、更に好ましい。
【0040】
このように構成される本第3実施形態の海苔網の酸処理船Cによれば、酸処理槽35には、酸処理液31が船首前方へ流れるような傾斜角度2度(以上)~15度(以下)の前下がりに傾斜させて、且つ、吐出管63には、V字、U字又は多角形状の曲管であり内側面には複数の吐出孔が所定間隔で形成されており、曲管の尖部が船首前方向へ正体する様にして設置されているので、酸処理槽35内に適度な乱流と流れの滞留箇所からのオーバーフローが生じることになり、海苔網との接触が更に十分に達成できる海苔網の酸処理船が得られることになる。
【0041】
図4は、本発明の第4実施形態を示す海苔網の酸処理船の図面であり、(a)は概略側面図、(b)は(a)の概略平面図である。
本発明の第4実施形態を示す海苔網の酸処理船Dは、前記第1実施形態において、高さが18~50mmの凸部材70、70、70、70を酸処理槽35の幅方向にわたるように後端から前端の途中に各々ほぼ均等間隔に接続したものであり、酸処理槽35における酸処理液31の船尾後方から船首前方への流れに対し適度の滞留とそこからのオーバーフローが生じ、海苔網との接触がより頻度高く起こるため酸処理液31が海苔網により浸透し易くなる。
図4における、凸部材70箇所の網掛けと曲線矢印は、滞留とオーバーフローとなる酸処理液31の流れをイメージしたものである。
本発明の該凸部材70(幅方向設置)は、適度な滞留とオーバーフローを発生させるために、高さが18~50mmのものが好ましい。高さが18mmより低いと、滞留とオーバーフローが効果的に発生せず海苔網との接触が向上しないので、好ましくない。高さが50mmより高いと、本発明の海苔網の酸処理船において必須の作用機構である海苔養殖酸処理船(全体)における酸処理液31のスムーズな循環が妨げられるので、好ましくない。
なお、
図4の海苔網酸処理船Dの凸部材70、70、70、70は、U字状のものを4本設けたが本発明の海苔網酸処理船ではこれに限定されるものではなく、直線、V字又は多角刑状の部材を1~5本設置してもよい。
【0042】
このように構成される本第4実施形態の海苔網の酸処理船Dによれば、酸処理槽35内には、酸処理液31が船首前方へ流れるような傾斜角度2度(以上)~15度(以下)の前下がりに傾斜させて、且つ、酸処理槽35底面からの高さ18~50mmの凸部材70を設けているので、海苔養殖酸処理船(全体)における酸処理液のスムーズな循環による均一な酸処理液が安定に得られ、また、船首前方への酸処理液31の流れを適度に滞留させオーバフローが生じることになり、海苔網との効率的な接触が達成できる海苔網の酸処理船が得られることになる。
【0043】
本発明の海苔網酸処理船は、前記第1実施形態~第4実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、以下の各変形の実施形態を採用することができる。
例えば、酸処理槽35から酸処理液回収ダクト36-酸処理液回収ライン37を介した酸処理液貯留槽39への酸処理液31の回収については、上述説明では特段ポンプの使用を謳わなかったが、酸処理船の規模や循環部60のバランスを勘案して酸処理液回収ポンプ38(
図4に示す)を採用しても良い。
【実施例0044】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例等により
制限されるものではない。
【0045】
〔試験1:実施例1~6及び比較例1、2〕
下記構成の海苔網酸処理船(テスト船)を用いて、下記表1に示す酸処理槽35の船本体10(水平基準)に対する傾斜角度を変動させ、下記試験方法により、処理液の濃度安定性(pHバラつき範囲)、海苔網の処理状況及び網全体の処理後海苔(葉体)状況について試験を行った。
【0046】
(海苔網酸処理船テストの主な構成)
・酸処理船形態:
図3の第3実施形態(U字状吐出管63、63、63の外径40mm[凸部材の高さ]、酸処理貯留槽39の容量:1,000L)
・酸原液Z:第一製網社製「ノリアクト」
・濃度設定:pHを2.1で設定(ノリアクト1%濃度に相当)
・酸処理槽35の傾斜角度:下記表1に示す各角度
【0047】
(試験方法)
前述海苔網処理船テストの構成により養殖中の海苔網(赤腐れ菌に感染)を、潜り船処理(接触浸漬から海域戻りの処理時間:約50秒、海水温:12~13℃)させ、処理中~処理後において各調査を行った。
処理液の濃度安定性は、酸処理液貯留槽39内の酸処理液31に市販ハンディpH計(電極)を浸け、処理中のpH値変動を記録した。海苔網の処理状況は、酸処理槽35の酸処理液31(流れ、海苔網との接触等の状況)を目視観察した。また、網全体の処理後海苔(葉体)状況については、網各箇所より処理後の海苔(葉体)を採取し顕微鏡での拡大観察により海苔葉体の傷み有無(傷み無し:採取海苔の死滅細胞0~5%、傷み有り:採取海苔葉体の死滅細胞5%超過)と赤腐れ菌駆除(駆除:採取海苔の赤腐れ菌死滅100%、未駆除:採取海苔の赤腐れ菌死滅100%未満)の状況を調べた。なお、網全体の評価目安は、採取海苔における発生頻度により4段階で判定した(無し:発生0、僅か:発生5%未満、少ない:発生10%未満、点在:発生10%以上)。
これらの各調査の評価結果を下記表1に示す。
【0048】
【0049】
表1(試験1)の結果から明らかなように、本発明の実施例1~6(処理槽35の傾斜が2度~15度の海苔網酸処理船)は、本発明の範囲外となる比較例1、2に較べ、濃度が安定(pHバラつきが少ない)した処理液によりスムーズに処理が進行することで適正条件での海苔網処理が行え、海苔網全体の海苔状態が良好に保たれる(海苔細胞傷み無く、赤腐れ菌等の病害が駆除される)ことが確認された。