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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162210
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ガスバリアフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231031BHJP
   C08J 7/048 20200101ALI20231031BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231031BHJP
   B65D 65/40 20060101ALN20231031BHJP
【FI】
B32B27/00 B
C08J7/048 CES
B32B27/20 Z
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127057
(22)【出願日】2023-08-03
(62)【分割の表示】P 2019029361の分割
【原出願日】2019-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】星 沙耶佳
(72)【発明者】
【氏名】神永 純一
(72)【発明者】
【氏名】尾村 悠希
(57)【要約】
【課題】ガスバリア性に優れ、かつ、ブロッキングが起こらず、アンチブロッキング剤に起因するガスバリア層の欠陥が低減されたガスバリアフィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルム11と、ガスバリア層12とを備えるガスバリアフィルム30において、基材フィルム11は表面にアンチブロッキング剤を有する。3D測定レーザー顕微鏡を用いた基材フィルム11の表面測定において、頂点が平面部よりも0.2μm以上高い突起が58個/mm以上74個/mm以下であり、かつ最深部が平面部よりも0.2μm以上深い凹みが19個/mm以上59個/mm以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、ガスバリア層とを備えるガスバリアフィルムであって、
前記基材フィルムは表面にアンチブロッキング剤を有し、
3D測定レーザー顕微鏡を用いた前記基材フィルムの表面測定において、頂点が平面部よりも0.2μm以上高い突起が58個/mm以上74個/mm以下であり、かつ最深部が平面部よりも0.2μm以上深い凹みが19個/mm以上59個/mm以下である、
ガスバリアフィルム。
【請求項2】
前記アンチブロッキング剤が、シリカ、タルク、珪藻土、アクリルポリマーのいずれかである、
請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムがポリオレフィン系樹脂を含む、
請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
前記ガスバリア層が水溶性高分子を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材に用いるフィルムに関し、特にアンチブロッキング性及びガスバリア性を有するガスバリアフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品などの包装に用いられる包装材料には、内容物の変質や腐敗などを抑制し、それらの機能や性質を保持するために、水蒸気、酸素、その他の内容物を変質させる気体の進入を遮断する性質(ガスバリア性)が必要である。
【0003】
従来、これら包装材料には、フィルムや紙などの基材上に、スパッタリング法や蒸着法、ウェットコーティング法や印刷法などの製膜技術によりガスバリア層が設けられ、ガスバリアフィルムとして使われている。
【0004】
ガスバリアフィルムの製造工程において、材料である基材の滑り性が低いと、バリア層塗工時のハンドリング性が十分でないために製膜ライン中のフィルムにブロッキングが生じる原因となる。ブロッキングが発生した包装材は破棄しなければならないため、材料のロスの増加に伴う材料コスト増や、収率が低下するといった問題がある。
【0005】
包装材の滑り性を向上するには、包装材の表面自由エネルギーを変更する必要がある。包装材の表面自由エネルギーを変更する方法としては、例えば、包装材表面に凹凸形状を付与し接触面積を少なくする方法がある。また、他の方法として、表面自由エネルギーを低くできるスリップ剤を添加する方法、物質が変形する際のエネルギー損失を少なくするためや接触時の表面積を増加させないために剛性の高い材料を使用する方法が挙げられる。
【0006】
表面凹凸を利用して滑り性を付与するためにアンチブロッキング剤をフィルム表層に添加する構成は、例えば特許文献1、2のように、表面粗さと表面突起の数を規定することでブロッキングを防止できるとした文献が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-9983号公報
【特許文献2】特開2001-48994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら特許文献1、2による方法では、バリア層の厚みが薄い構成では均一な塗膜を形成できず、バリア性が不十分になってしまい、ブロッキング性とバリア性の十分な両立は確立されていない。
また、ガスバリア層の塗布時に、フィルムに含有するアンチブロッキング剤に起因する塗布欠陥が生じることがあった。これは、フィルム表面のアンチブロッキング剤の粒子がガスバリア層を塗布した際に脱落し、その箇所が欠陥になると考えられる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ガスバリア性に優れ、かつ、ブロッキングが起こらず、アンチブロッキング剤に起因するガスバリア層の欠陥が低減されたガスバリアフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材フィルムと、ガスバリア層とを備えるガスバリアフィルムである。
基材フィルムは、表面にアンチブロッキング剤を有する。
3D測定レーザー顕微鏡を用いた基材フィルム11の表面測定において、頂点が平面部よりも0.2μm以上高い突起が58個/mm以上74個/mm以下であり、かつ最深部が平面部よりも0.2μm以上深い凹みが19個/mm以上59個/mm以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ガスバリア性に優れ、かつ、ブロッキングが起こらず、アンチブロッキング剤に起因するガスバリア層の欠陥が低減されたガスバリアフィルムを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る基材フィルムの搬送装置の構成を示した概略図である。
図2】本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの製造方法において用いる印刷装置の構成を示した概略図である。
図3】本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの構成を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る基材フィルムの搬送装置10の基本的構成を示す概略図である。
【0015】
(搬送装置)
図1に示すように、搬送装置10は、ロール・ツー・ロール方式によってウェブ状の基材フィルム1をガイドロール3を介して巻出ロール2aから巻取ロール2cまで搬送する構成を有している。ガイドロール3は、基材フィルム1が所定の経路で搬送されるようにガイドし、ズレや曲がりのないよう支持する。また、この搬送装置10は、搬送速度を制御する機構(図示せず)を備えている。
このときガイドロール3は、巻出ロール2aと巻取ロール2cとの間に20本以上設置されていることが好ましく、基材フィルムの搬送速度が200m/min以上であることがより好ましい。
【0016】
このような装置態様とすることで、基材フィルムの特に表面に存在していたアンチブロッキング剤を意図的に脱離させることが可能となる。これにより、後の工程において基材フィルムにガスバリア層を形成する際にアンチブロッキング剤を起因とする塗膜欠陥を抑制することが可能となる。これについては後に詳しく説明する。
【0017】
(印刷装置)
図2に示すように、印刷装置20は、ロール・ツー・ロール方式によってウェブ状の基材フィルムを搬送し、ガスバリア層を形成するためのコーティング剤を連続して塗工する印刷部を備えた構成を有している。また、巻出部および巻取部については、前述の搬送装置10と同様な構成を有している。
【0018】
具体的には、巻出部の巻出ロール2aから基材フィルム1を巻き出して印刷部に搬送し、印刷部の印刷ロール2bによって基材フィルム1上にコーティング剤4を塗布してガスバリア層を形成し、さらに加熱機構を有するオーブン5を通過する間に加熱乾燥させた後、巻取部の巻取ロール2cに積層されたフィルムが巻き取られる、という構成を有している。
また、基材フィルム1を搬送する途中の経路には、フィルムに接触して回転する複数のガイドロール3が設けられている。ガイドロール3は、基材フィルム1の巻出しから巻取りまでの全工程にわたりフィルムの搬送経路に沿って設けられ、印刷部より上流(巻出部側)の工程においては20本以上のガイドロール3が設置されている。
【0019】
図3は、ガスバリアフィルムの一実施形態として層構成を示している。ガスバリアフィルム30は、基材フィルム11の一方の面上に、例えば前述の印刷装置を用いて、ガスバリア層12を積層してなる。以下、各層の材料等について詳述する。
【0020】
(基材フィルム)
基材フィルム11はプラスチック材料からなり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体などのポリC2~10などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などの脂肪族系ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミドなどの芳香族ポリアミドなどのポリアミド系樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体などのビニル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系単量体の単独または共重合体などのアクリル系樹脂、セロファンなどからなるフィルムが挙げられる。これらの樹脂は、1種または2種以上が組み合わせられて用いられる。
【0021】
これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂フィルム(特に、ポリプロピレンフィルムなど)、ポリエステル系樹脂フィルム(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム)、ポリアミド系樹脂フィルム(特に、ナイロンフィルム)などが好適に用いられる。
【0022】
基材フィルム11は、シリカ、タルク、珪藻土、アクリルポリマーなどのアンチブロッキング剤を少なくとも表面に添加している。アンチブロッキング剤の種類やその粒径を選択することにより、基材フィルムの表面に微小な凹凸を発現させて、ブロッキングを防止し、加工適性を上げることができる。
さらに、基材フィルム11は、フィラー、界面活性剤、金属酸化物等の静電気防止剤など、目的に応じて添加剤を添加してもよい。
【0023】
基材フィルム11は、単一の樹脂で構成された単層フィルムや複数の樹脂を用いた単層または多層フィルムが用いられる。また、上記の樹脂を他の基材(金属、木材、紙、セラミックスなど)に積層した積層基材を用いてもよい。
【0024】
また、基材フィルム11は未延伸フィルムであってもよく、一軸または二軸延伸配向フィルムであってもよく、表面処理(コロナ放電処理など)やアンカーコートまたはアンダーコート処理したフィルムであってもよい。さらに、基材フィルムは、複数の樹脂や金属などを積層した積層フィルムであってもよい。
【0025】
また、基材フィルム11は、コーティングする面(皮膜(ガスバリア層など)を形成する面)に、コロナ処理、低温プラズマ処理などを施すことにより、コーティング剤に対する良好な濡れ性と、皮膜に対する接着強度とを向上したものであってもよい。
【0026】
基材フィルム11の厚さは、特に限定されるものではなく、包装材料としての適性や他の皮膜の積層適性を考慮しつつ、価格や用途に応じて適宜選択されるが、実用的には3μm~200μmであり、好ましくは5μm~120μmであり、より好ましくは10μm~100μmである。
【0027】
(フィルムの製造方法)
図2に示すような構成の装置を用いて基材フィルムにガスバリア層が塗布されることでガスバリアフィルムが形成されるが、このとき基材フィルム表面にアンチブロッキング剤が添加されていることで、塗布されたガスバリア層に、アンチブロッキング剤の粒子に起因する欠陥が生じることがあった。
【0028】
そこで、本発明のガスバリアフィルムの製造方法においては、基材フィルムを搬送速度200m/min以上で搬送することとした。そしてこの際、基材フィルムは、ガスバリア層を塗布する印刷部より上流で、少なくとも20本以上のガイドロールに接触する。即ち、巻出部から印刷部までの間に20本以上のガイドロールが設けられていることが好ましい。
【0029】
こうすることで、基材フィルムが各ガイドロールに接触する都度、その接触時の摩擦や衝撃によって、基材フィルム表面に含まれるアンチブロッキング剤の粒子による突起物がフィルム表面から徐々に脱落していくので、ガスバリア層の塗布直前の段階では塗布欠陥を生じるおそれのあるアンチブロッキング剤の突起物が減少する。
こうして突起物が減少した基材フィルムに、印刷部においてガスバリア層を塗工することにより、均一なバリア層を形成でき、良好なガスバリア性が得られる。
【0030】
基材フィルムを搬送する装置は、ガイドロールを20本以上、及び搬送速度200m/min以上で搬送可能な搬送機構を備え、基材フィルムを巻き取れる装置であれば良く、その用途と装置の数や構成要素、印刷方式などは特に限定されない。代表的な印刷装置としては、ロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、ダイコーター、スクリーン印刷機、スプレーコーターなどが挙げられる。
【0031】
ガスバリア層は、基材の片面(一方の面)あるいは両面上に、コーティング剤を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥(水性媒体を除去)することにより形成できる。
コーティング剤の塗布方法としては、湿式コーティング方法を用いることが好ましい。公知の湿式コーティング方法としては、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ダイコート、スクリーン印刷、スプレーコート等が挙げられる。
【0032】
コーティング剤からなる塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。前記塗膜の乾燥温度は、例えば、50~200℃が好ましい。乾燥時間は、塗膜の厚さ、乾燥温度等によっても異なるが、例えば、1秒~5分間が好ましい。
【0033】
(ガスバリア層)
ガスバリア層は、特定のコーティング剤から形成された層である。前記コーティング剤は、以下に述べる水溶性高分子(A)と、無機層状鉱物(B)とを主成分とするものが好ましい。
【0034】
水溶性高分子(A)としては、後述する無機層状鉱物(B)の単位結晶層間に侵入し、配位(インターカレーション)することが可能な化合物であれば特に限定されない。
「水溶性高分子」とは、水に溶解可能な高分子を指す。ここでいう溶解とは、溶質である高分子が溶媒である水に分子鎖レベルで分散して均一系をなしている状態を指す。
より詳しくは、高分子鎖の分子鎖間の分子間力に比べ、水分子との分子間力が強くなり高分子鎖の絡み合いが解かれ、水に均一に分散している状態を指す。
【0035】
水溶性高分子(A)の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール及びその誘導体等のポリビニルアルコール樹脂;ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はそのエステル、塩類及びそれらの共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレート及びその共重合体等のビニル系重合体;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;酸化でんぷん、エーテル化でんぷん、デキストリン等のでんぷん類、スルホイソフタル酸等の極性基を含有する共重合ポリエステル;ウレタン系高分子、又は、これらの各種重合体のカルボキシル基等が変性した官能基変性重合体等が挙げられる。
【0036】
水溶性高分子(A)は、皮膜凝集強度を考慮すると、重合度が200以上であることが好ましい。また、コーティング剤に含まれる水溶性高分子(A)は1種でもよく2種以上でもよい。
【0037】
水溶性高分子(A)は、少なくとも、ポリビニルアルコール系重合体及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂を含むことが好ましく、鹸化度が95%以上かつ重合度が300以上のポリビニルアルコール樹脂を含むことがより好ましい。ポリビニルアルコール樹脂の重合度は、300~2400が好ましく、450~2000がより好ましい。
【0038】
ポリビニルアルコール樹脂は、鹸化度や重合度が高い程、吸湿膨潤性が低くなる。ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度が95%未満であったり、ポリビニルアルコール樹脂の重合度が300未満であったりすると、充分なガスバリア性が得られないおそれがある。ポリビニルアルコール樹脂の重合度が2400を超えると、コーティング剤の粘度が上がり、他の成分と均一に混合することが難しく、ガスバリア性や密着強度の低下といった不具合を招くおそれがある。
【0039】
「無機層状鉱物」とは、極薄(例えば、厚さ10~500nm)の単位結晶層が重なって1つの層状粒子を形成している無機化合物を指す。無機層状鉱物(B)は、ガスバリア層のガスバリア性をより高める目的で用いられる。
【0040】
無機層状鉱物(B)としては、水中で膨潤及びへき開の双方又は一方の性質を有する化合物が好ましく、これらの化合物の中でも、水への膨潤性を有する粘土化合物が特に好ましい。より具体的には、無機層状鉱物(B)は、極薄の単位結晶層間に水を配位し、吸収及び膨潤の双方、又は一方の性質を有する粘土化合物が好ましい。かかる粘土化合物は、一般には、Si がO に対して配位して四面体構造を構成する層と、Al 、Mg 、Fe 、Fe 等が、O 及びOHに対して配位して八面体構造を構成する層とが、1対1あるいは2対1で結合し、積み重なって層状構造を形成する化合物である。この粘土化合物は、天然の化合物であっても、合成された化合物であってもよい。
【0041】
無機層状鉱物(B)の代表的なものとしては、フィロケイ酸塩鉱物等の含水ケイ酸塩が挙げられ、例えば、ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等のカオリナイト族粘土鉱物;アンチゴライト、クリソタイル等のアンチゴライト族粘土鉱物;モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト族粘土鉱物;バーミキュライト等のバーミキュライト族粘土鉱物;白雲母、金雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等の雲母又はマイカ族粘土鉱物;等が挙げられる。これらの無機層状鉱物(B)は、1種単独で、又は2種以上が組み合わせられて用いられる。
これらの無機層状鉱物(B)の中でも、モンモリロナイト等のスメクタイト族粘土鉱物、水膨潤性雲母等のマイカ族粘土鉱物が特に好ましい。
【0042】
無機層状鉱物(B)の大きさは、平均粒径が10μm以下で、かつ、厚さが500nm以下であることが好ましい。平均粒径、厚さがそれぞれ上記上限値以下であると、コーティング剤から形成されるガスバリア層の中で無機層状鉱物(B)が均一に整列しやすくなり、ガスバリア性、膜凝集強度が高いものとなる。
本発明のコーティング剤は、必要に応じて、ガスバリア性や包装用材料としての強度を損なわない範囲で、各種の添加剤をさらに含んでもよい。
【0043】
添加剤としては、例えば、ポリイソシアネート、カルボジイミド、エポキシ化合物、オキサゾリドン化合物、アジリジン系化合物などの反応性硬化剤、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、界面活性剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0044】
ガスバリア層に含まれる水溶性高分子(A)の含有量は、ガスバリア層の総質量に対して、25~80質量%が好ましく、30~75質量%がより好ましく、35~70質量%がさらに好ましい。水溶性高分子(A)の含有量が上記下限値以上であると、無機層状鉱物(B)を分散しやすい。水溶性高分子(A)の含有量が上記上限値以下であると、無機層状鉱物(B)の分散を均一にしやすい。
【0045】
ガスバリア層に含まれる無機層状鉱物(B)の含有量は、ガスバリア層の総質量に対して、3~20質量%が好ましく、5~16質量%がより好ましく、7~12質量%がさらに好ましい。無機層状鉱物(B)の含有量が上記下限値以上であると、ガスバリア層のガスバリア性を向上しやすい。無機層状鉱物(B)の含有量が上記上限値以下であると、ガスバリア層の柔軟性を向上しやすい。
【0046】
ガスバリア層の塗膜厚さは、要求されるガスバリア性に応じて設定されるが、0.2μm~5μmが好ましく、0.3μm~2μmがより好ましい。塗膜厚さが上記下限値以上であると、ガスバリア性は得られやすいが、乾燥負荷や製造コストが増大する。塗膜厚さが上記上限値以下であると、均一な塗膜層を形成することが難しくなり、ガスバリア層表面の突起によるバリア劣化の影響が大きくなりやすい。
【実施例0047】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
<使用材料>
(基材フィルム)
基材1:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:VPH2011、厚さ20μm、A.J.Plast社製)
基材2:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:TITIV、厚さ18μm、Max Speciality Films Limited社製)
(ガスバリア層のコーティング剤)
水溶性高分子(A):鹸化度98~99%、重合度1000のポリビニルアルコール(商品名:ポバールPVA-110、クラレ社製)
無機層状鉱物(B):水膨潤性合成雲母(商品名:NTS-5、トピー工業社製)
【0049】
<評価方法>
(酸素透過度)
【0050】
各例のガスバリアフィルムについて、酸素透過度測定装置(MOCON社製OXTRAN-2/20)を用いて、30℃、相対湿度60%の雰囲気下、酸素透過度(cm/(m・day・MPa))を測定した。
【0051】
(耐ブロッキング性)
各例のガスバリアフィルムを、50×50mmのサイズに切り、6枚を重ねて永久歪試験機(テスター産業製CO-201)を用いて加重200kg、50℃の条件下で48時間保管した。その後、ブロッキングが起きなければ○、フィルム同士が貼り付いてブロッキングしていれば×として、耐ブロッキング性を判定した。
【0052】
(表面の凹凸個数)
各例のガスバリアフィルムについて、3D測定レーザー顕微鏡(OLYMPUS製 LENT OLS4000)を用いて以下の条件で突起の高さと凹みを測定した。突起の頂点と平面部の高さが0.2μm以上のものを突起と判定し、凹みの頂点と平面部の深さが0.2μm以上のものを凹みと判定した。
・レンズ:対物レンズ、倍率50倍(MPLAPONLEXT50)
・測定面積:514μm×1285μm
・フィルタ:表面補正
・モード:プロファイルモードにて、突起の頂点と平面部の高さを測定
【0053】
[実施例1]
水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)を、固形分比率(A):(B)が90:10となるように配合し、80℃にて加熱、混合した後、室温(30℃)まで冷却し、全水溶性媒体溶媒中の10質量%がイソプロパノール、最終的な固形分濃度が9質量%となるように、イオン交換水とイソプロパノールで希釈し、コーティング剤を調製した。
【0054】
基材フィルムとして前記基材1を用い、グラビアコーターを用いて速度300m/minで空通しした基材フィルムのコロナ処理面に、上記グラビアコーターにより、乾燥後の膜厚が0.5μmになるよう調製したコーティング剤を塗布し、90℃のオーブンを10秒間通過させて乾燥してガスバリア層を形成し、実施例1のガスバリアフィルムを得た。このときの印刷前の接触ガイドロール本数は90本であった。
【0055】
[実施例2]
印刷前の接触ガイドロールの本数を30本に変更した以外は、実施例1と同様の方法でガスバリアフィルムを製造した。
【0056】
[実施例3]
基材1を前記基材2に変更した以外は、実施例2と同様の方法でガスバリアフィルムを製造した。
【0057】
[比較例1]
印刷前の接触ガイドロールの本数を10本に変更した以外は、実施例1と同様の方法でガスバリアフィルムを製造した。
【0058】
以上の評価結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に記載の評価結果から、実施例1~3のガスバリアフィルムは、30℃、相対湿度60%の雰囲気下における酸素透過度の値が8~18cm/(m・day・MPa)と、良好なガスバリア性が得られた。
一方、比較例1では、酸素透過度の値が52cm/(m・day・MPa)となり、良好なガスバリア性は得られなかった。
【0061】
また、耐ブロッキング性の評価結果は、いずれの事例も良好であった。
さらに、フィルム表面の凹凸個数の評価について、比較例1に対し実施例1~3は、何れもアンチブロッキング剤の脱離によるものと推定される凹部が多く形成されていることを確認した。この結果、実施例1~3は比較例1に比べて、良好な酸素バリア性を有することを確認した。
【符号の説明】
【0062】
1・・・基材フィルム
2a・・・巻出ロール
2b・・・印刷ロール
2c・・・巻取ロール
3・・・ガイドロール
4・・・コーティング剤
5・・・オーブン
10・・・搬送装置
11・・・基材フィルム
12・・・ガスバリア層
20・・・印刷装置
30・・・ガスバリアフィルム
図1
図2
図3