(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016222
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】免震装置の設置工法、及び、免震装置の設置構造
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20230126BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20230126BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
E04G23/02 D
E04H9/02 331A
E04H9/02 331D
E04H9/02 331E
F16F15/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120398
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波多野 貴壽
(72)【発明者】
【氏名】坂井 利光
【テーマコード(参考)】
2E139
2E176
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC19
2E139CA02
2E139CA11
2E139CA21
2E139CC15
2E176AA00
2E176BB28
2E176BB36
3J048AA01
3J048BA08
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】免震装置の設置工事の施工を容易にしつつ、施工中に建物に作用する水平外力に対する耐力を高めて安全に施工すること。
【解決手段】上部構造は上部水平部と、上部水平部から下方に突出し、かつ、第1方向に間隔を空けて配された第1上部突出部及び第2上部突出部とを含む上部連接部を有し、下部構造は下部水平部と、下部水平部から上方に突出し、かつ、第1方向に間隔を空けて配された第1下部突出部及び第2下部突出部とを含む下部連接部を有し、免震装置の設置工法は、第1上部突出部と第2上部突出部との間であり、かつ、第1下部突出部と第2下部突出部との間に、第1方向の水平外力に対抗する水平対抗部材を第1方向に沿って配置する水平対抗部材設置工程と、水平対抗部材設置工程より後において、水平対抗部材と上部連接部との間及び水平対抗部材と下部連接部との間を繋ぐ連接工程と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造と下部構造の間に免震装置を設ける免震装置の設置工法であって、
前記上部構造は、上部水平部と、前記上部水平部から下方に突出し、かつ、第1方向に間隔を空けて配された第1上部突出部、及び、第2上部突出部とを含む上部連接部を有し、
前記下部構造は、下部水平部と、前記下部水平部から上方に突出し、かつ、前記第1方向に間隔を空けて配された第1下部突出部、及び、第2下部突出部とを含む下部連接部を有し、
前記免震装置の設置工法は、
前記第1上部突出部と前記第2上部突出部との間であり、かつ、前記第1下部突出部と前記第2下部突出部との間に、前記第1方向の水平外力に対抗する水平対抗部材を前記第1方向に沿って設置する水平対抗部材設置工程と、
前記水平対抗部材設置工程より後において、前記水平対抗部材と前記上部連接部との間、及び、前記水平対抗部材と前記下部連接部との間を繋ぐ連接工程と、
を有することを特徴とする免震装置の設置工法。
【請求項2】
上部構造と下部構造の間に免震装置を設ける免震装置の設置工法であって、
前記上部構造は、上部水平部と、前記上部水平部から下方に突出し、かつ、第1方向に間隔を空けて配された第1上部突出部、及び、第2上部突出部とを含む上部連接部を有し、
前記下部構造は、下部水平部と、前記下部水平部から上方に突出し、かつ、前記第1方向に間隔を空けて配された第1下部突出部、及び、第2下部突出部とを含む下部連接部を有し、
前記免震装置は、前記第1上部突出部の下に突出する第1上部基礎と、前記第1下部突出部の上に突出する第1下部基礎との間、及び、前記第2上部突出部の下に突出する第2上部基礎と、前記第2下部突出部の上に突出する第2下部基礎との間、にそれぞれ設置され、
前記免震装置の設置工法は、
前記第1上部基礎と前記第2上部基礎との間であり、かつ、前記第1下部基礎と前記第2下部基礎との間に、前記第1方向の水平外力に対抗する水平対抗部材を前記第1方向に沿って配置する水平対抗部材設置工程と、
前記水平対抗部材設置工程より後において、前記水平対抗部材と前記上部連接部との間、及び、前記水平対抗部材と前記下部連接部との間を繋ぐ連接工程と、
を有することを特徴とする免震装置の設置工法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の免震装置の設置工法であって、
前記連接工程において、前記水平対抗部材と前記上部連接部との間、及び/または、前記水平対抗部材と前記下部連接部との間に充填材を充填することを特徴とする免震装置の設置工法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の免震装置の設置工法であって、
前記連接工程において、前記水平対抗部材と前記上部連接部との間、及び/または、前記水平対抗部材と前記下部連接部との間に連接部材を設置することを特徴とする免震装置の設置工法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の免震装置の設置工法であって、
前記水平対抗部材を、連接部材により前記下部連接部の上にて支持し前記上部連接部に当接させることを特徴とする免震装置の設置工法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の免震装置の設置工法であって、
前記水平対抗部材設置工程において、前記水平対抗部材を前記上部連接部に接続することを特徴とする免震装置の設置工法。
【請求項7】
請求項4から6の何れか1項に記載の免震装置の設置工法であって、
前記連接工程において、前記水平対抗部材と前記上部連接部との間、及び/または、前記水平対抗部材と前記下部連接部との間に充填材を充填することを特徴とする免震装置の設置工法。
【請求項8】
請求項1から6の何れか1項に記載の免震装置の設置工法であって、
前記第1上部突出部、及び、前記第2上部突出部は、それぞれ、柱の上部と、当該柱の上部の外側にコンクリートが打設された柱上部補強部とを有し、
前記第1下部突出部、及び、前記第2下部突出部は、それぞれ、柱の下部と、当該柱の下部の外側にコンクリートが打設された柱下部補強部とを有し、
前記水平対抗部材設置工程より後に、前記第1上部突出部と前記第1下部突出部の間に第1の免震装置を設置し、前記第2上部突出部と前記第2下部突出部の間に第2の免震装置を設置する免震装置設置工程を有し、
前記免震装置設置工程より前に、前記第1上部突出部と前記第1下部突出部の間、及び、前記第2上部突出部と前記第2下部突出部の間に、それぞれ、前記上部構造の荷重を仮受けする仮受け支持部材を設置する仮受け支持部材設置工程を有し、
前記水平対抗部材設置工程、及び、前記仮受け支持部材設置工程より前に、前記柱上部補強部、及び、前記柱下部補強部を形成する補強部形成工程を有し、
前記免震装置設置工程より後に、前記仮受け支持部材を撤去する仮受け支持部材撤去工程を有し
前記免震装置設置工程より後であって、前記仮受け支持部材撤去工程より前に、前記水平対抗部材の上または下に空隙を形成して、前記水平対抗部材と前記上部連接部または前記下部連接部とを離間する空隙形成工程を有することを特徴とする免震装置の設置工法。
【請求項9】
請求項8に記載の免震装置の設置工法であって、
前記空隙の鉛直方向における幅は、前記仮受け支持部材を撤去したときに前記上部構造が前記免震装置に支持されて沈み込むときの沈み込み量より広いことを特徴とする免震装置の設置工法。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1項に記載の免震装置の設置工法であって、
前記水平対抗部材は、上部対抗部材と、下部対抗部材とを有し、
前記水平対抗部材設置工程において、
前記上部対抗部材を前記第1方向に沿って設置し、かつ、前記下部対抗部材を前記第1方向に沿って設置し、前記上部対抗部材と前記下部対抗部材を、鉛直方向に沿って配置されるボルトにより接続することを特徴とする免震装置の設置工法。
【請求項11】
上部構造と下部構造の間に免震装置を有する免震装置の設置構造であって、
上部水平部と、前記上部水平部から下方に突出し、かつ、第1方向に間隔を空けて配された第1上部突出部、及び、第2上部突出部とを含む上部連接部を有する前記上部構造と、
下部水平部と、前記下部水平部から上方に突出し、かつ、前記第1方向に間隔を空けて配された第1下部突出部、及び、第2下部突出部とを含む下部連接部を有する前記下部構造と、
前記第1上部突出部と前記第2上部突出部との間であり、かつ、前記第1下部突出部と前記第2下部突出部との間に、前記第1方向に沿って設置され、前記第1方向の水平外力に対抗する水平対抗部材と、
前記水平対抗部材と前記上部連接部との間、及び、前記水平対抗部材と前記下部連接部との間を繋ぐ連接部材と、
を有することを特徴とする免震装置の設置構造。
【請求項12】
上部構造と下部構造の間に免震装置を有する免震装置の設置構造であって、
上部水平部と、前記上部水平部から下方に突出し、かつ、第1方向に間隔を空けて配された第1上部突出部、及び、第2上部突出部とを含む上部連接部を有する前記上部構造と、
下部水平部と、前記下部水平部から上方に突出し、かつ、前記第1方向に間隔を空けて配された第1下部突出部、及び、第2下部突出部とを含む下部連接部を有する前記下部構造と、
前記第1上部突出部の下に突出する第1上部基礎と、前記第1下部突出部の上に突出する第1下部基礎との間、及び、前記第2上部突出部の下に突出する第2上部基礎と、前記第2下部突出部の上に突出する第2下部基礎との間、にそれぞれ設置される前記免震装置と、
前記第1上部基礎と前記第2上部基礎との間であり、かつ、前記第1下部基礎と前記第2下部基礎との間に、前記第1方向に沿って設置され、前記第1方向の水平外力に対抗する水平対抗部材と、
前記水平対抗部材と前記上部連接部との間、及び、前記水平対抗部材と前記下部連接部との間を繋ぐ連接部材と、
を有することを特徴とする免震装置の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置の設置工法、及び、免震装置の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
既存建物の柱を切断するとともに、その切断箇所に免震装置を設置して免震化する工法が実施されている。特許文献1では、免震化工事中に建物に作用する地震(水平外力)に対する耐力を高めるため、柱の切断前に、柱間の開口部に仮設ブレースとしてX型ブレースやK型ブレースを設置している。そうすることで施工安全性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように柱間の開口部に斜めに対抗部材を設置する場合、建物に水平外力が作用した際に、対抗部材に曲げや座屈が生じるおそれがある。そのため、水平外力に対する耐力が十分でなかったり、不要に多くの対抗部材を設置したりしなければならないといった問題がある。また、斜めに対抗部材を設置する場合、既存建物の柱や梁や床等に多くのアンカーを打設してガセットプレートを取り付け、ガセットプレート間に斜めに対抗部材を配置する等、比較的に施工が煩雑となる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、免震装置の設置工事の施工を容易にしつつ、施工中に建物に作用する水平外力に対する耐力を高めて安全に施工することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するため、本発明の免震装置の設置工法は、上部構造と下部構造の間に免震装置を設ける免震装置の設置工法であって、
前記上部構造は、上部水平部と、前記上部水平部から下方に突出し、かつ、第1方向に間隔を空けて配された第1上部突出部、及び、第2上部突出部とを含む上部連接部を有し、
前記下部構造は、下部水平部と、前記下部水平部から上方に突出し、かつ、前記第1方向に間隔を空けて配された第1下部突出部、及び、第2下部突出部とを含む下部連接部を有し、
前記免震装置の設置工法は、
前記第1上部突出部と前記第2上部突出部との間であり、かつ、前記第1下部突出部と前記第2下部突出部との間に、前記第1方向の水平外力に対抗する水平対抗部材を前記第1方向に沿って配置する水平対抗部材設置工程と、
前記水平対抗部材設置工程より後において、前記水平対抗部材と前記上部連接部との間、及び、前記水平対抗部材と前記下部連接部との間を繋ぐ連接工程と、
を有することを特徴とする。
【0007】
このような免震装置の設置工法によれば、上部構造に作用した水平外力を、水平対抗部材を介して下部構造に伝達でき、下部構造に対する上部構造の位置ずれを抑制でき安全に施工できる。また、水平対抗部材を第1方向に沿って容易に設置できる。また、水平対抗部材に曲げや座屈が生じ難く、水平外力に対する建物の耐力を高めることができ、安全に施工できる。なお、免震装置の設置工法が適用される工事には、既存の柱を切断して免震装置を設置する工事、及び、既に設置されている免震装置を取り外して新たな免震装置を設置する工事が含まれる。
【0008】
また、水平対抗部材と上部連接部との間及び水平対抗部材と下部連接部との間を繋ぐので、上部構造に作用した水平外力により生じる、下部構造を反力点とするモーメントによる水平対抗部材の回転を抑えることができる。このため、上部構造と下部構造の間により安全に免震装置を設けることができる。
【0009】
また、上部構造と下部構造の間に免震装置を設ける免震装置の設置工法であって、
前記上部構造は、上部水平部と、前記上部水平部から下方に突出し、かつ、第1方向に間隔を空けて配された第1上部突出部、及び、第2上部突出部とを含む上部連接部を有し、
前記下部構造は、下部水平部と、前記下部水平部から上方に突出し、かつ、前記第1方向に間隔を空けて配された第1下部突出部、及び、第2下部突出部とを含む下部連接部を有し、
前記免震装置は、前記第1上部突出部の下に突出する第1上部基礎と、前記第1下部突出部の上に突出する第1下部基礎との間、及び、前記第2上部突出部の下に突出する第2上部基礎と、前記第2下部突出部の上に突出する第2下部基礎との間、にそれぞれ設置され、
前記免震装置の設置工法は、
前記第1上部基礎と前記第2上部基礎との間であり、かつ、前記第1下部基礎と前記第2下部基礎との間に、前記第1方向の水平外力に対抗する水平対抗部材を前記第1方向に沿って配置する水平対抗部材設置工程と、
前記水平対抗部材設置工程より後において、前記水平対抗部材と前記上部連接部との間、及び、前記水平対抗部材と前記下部連接部との間を繋ぐ連接工程と、
を有することを特徴とする。
【0010】
このような免震装置の設置工法によれば、上部構造に作用した水平外力を、水平対抗部材を介して下部構造に伝達でき、下部構造に対する上部構造の位置ずれを抑制でき安全に施工できる。また、水平対抗部材を第1方向に沿って容易に設置できる。また、水平対抗部材に曲げや座屈が生じ難く、水平外力に対する建物の耐力を高めることができ、安全に施工できる。
【0011】
また、水平対抗部材と上部連接部との間及び水平対抗部材と下部連接部との間を繋ぐので、上部構造に作用した水平外力により生じる、下部構造を反力点とするモーメントによる水平対抗部材の回転を抑えることができる。このため、上部構造と下部構造の間により安全に免震装置を設けることができる。
【0012】
かかる免震装置の設置工法であって、
前記連接工程において、前記水平対抗部材と前記上部連接部との間、及び/または、前記水平対抗部材と前記下部連接部との間に充填材を充填することを特徴とする。
【0013】
このような免震装置の設置工法によれば、水平対抗部材と上部連接部との間、及び/または、水平対抗部材と下部連接部との間は、充填された充填材により確実に繋げられる。このため、上部構造に作用した水平外力により生じる、下部構造を反力点とするモーメントによる水平対抗部材の回転を抑えることができる。
【0014】
かかる免震装置の設置工法であって、
前記連接工程において、前記水平対抗部材と前記上部連接部との間、及び/または、前記水平対抗部材と前記下部連接部との間に連接部材を設置することを特徴とする。
【0015】
このような免震装置の設置工法によれば、水平対抗部材と上部連接部との間、及び/または、水平対抗部材と下部連接部との間は、連接部材によりに繋げられる。このため、上部構造に作用した水平外力により生じる、下部構造を反力点とするモーメントによる水平対抗部材の回転を抑えることができる。
【0016】
かかる免震装置の設置工法であって、
前記水平対抗部材を、連接部材により前記下部連接部の上にて支持し前記上部連接部に当接させることを特徴とする。
【0017】
このような免震装置の設置工法によれば、連接部材により下部連接部の上にて支持された水平対抗部材は、上部連接部に当接するので、水平対抗部材は上部連接部に当接し、水平対抗部材と下部連接部との間は連接部材に支持されて繋がる。このため、上部構造に作用した水平外力により生じる、下部構造を反力点とするモーメントによる水平対抗部材の回転を抑えることができる。
【0018】
かかる免震装置の設置工法であって、
前記水平対抗部材設置工程において、前記水平対抗部材を前記上部連接部に接続することを特徴とする。
【0019】
このような免震装置の設置工法によれば、水平対抗部材を上部連接部に接続するので、水平対抗部材は上部連接部に吊り下げられる。このため、水平対抗部材を上部連接部に吊り下げることにより水平対抗部材と上部連接部とを繋ぐことができる。
【0020】
かかる免震装置の設置工法であって、
前記連接工程において、前記水平対抗部材と前記上部連接部との間、及び/または、前記水平対抗部材と前記下部連接部との間に充填材を充填することを特徴とする。
【0021】
このような免震装置の設置工法によれば、水平対抗部材と上部連接部との間、及び/または、水平対抗部材と下部連接部との間を、充填された充填材により確実に繋ぐことができる。
【0022】
かかる免震装置の設置工法であって、
前記第1上部突出部、及び、前記第2上部突出部は、それぞれ、柱の上部と、当該柱の上部の外側にコンクリートが打設された柱上部補強部とを有し、
前記第1下部突出部、及び、前記第2下部突出部は、それぞれ、柱の下部と、当該柱の下部の外側にコンクリートが打設された柱下部補強部とを有し、
前記水平対抗部材設置工程より後に、前記第1上部突出部と前記第1下部突出部の間に第1の免震装置を設置し、前記第2上部突出部と前記第2下部突出部の間に第2の免震装置を設置する免震装置設置工程を有し、
前記免震装置設置工程より前に、前記第1上部突出部と前記第1下部突出部の間、及び、前記第2上部突出部と前記第2下部突出部の間に、それぞれ、前記上部構造の荷重を仮受けする仮受け支持部材を設置する仮受け支持部材設置工程を有し、
前記水平対抗部材設置工程、及び、前記仮受け支持部材設置工程より前に、前記柱上部補強部、及び、前記柱下部補強部を形成する補強部形成工程を有し、
前記免震装置設置工程より後に、前記仮受け支持部材を撤去する仮受け支持部材撤去工程を有し
前記免震装置設置工程より後であって、前記仮受け支持部材撤去工程より前に、前記水平対抗部材の上または下に空隙を形成して、前記水平対抗部材と前記上部連接部または前記下部連接部とを離間する空隙形成工程を有することを特徴とする。
【0023】
このような免震装置の設置工法によれば、第1上部突出部と第1下部突出部の間および第2上部突出部と第2下部突出部の間に免震装置を設置した後に、仮受け支持部材を撤去する際に、水平対抗部材の上または下に空隙が形成されて、水平対抗部材と上部連接部または下部連接部とが離間されているので、上部構造を降下させて免震装置にて上部構造を支持させる際に、水平対抗部材が上部構造の降下の妨げになることを防止することができる。
【0024】
かかる免震装置の設置工法であって、
前記空隙の鉛直方向における幅は、前記仮受け支持部材を撤去したときに前記上部構造が前記免震装置に支持されて沈み込むときの沈み込み量より広いことを特徴とする。
【0025】
このような免震装置の設置工法によれば、上部構造を支持している仮受け支持部材を撤去して免震装置に支持させると、上部構造は元の位置より低く沈み込む。このとき上部構造の沈み込み量よりも、免震装置に支持させる前に、水平対抗部材の上または下に形成されている空隙の鉛直方向の幅の方が広いので、上部構造を免震装置に、より確実に支持させることができる。
【0026】
かかる免震装置の設置工法であって、
前記水平対抗部材は、上部対抗部材と、下部対抗部材とを有し、
前記水平対抗部材設置工程において、
前記上部対抗部材を前記第1方向に沿って設置し、かつ、前記下部対抗部材を前記第1方向に沿って設置し、前記上部対抗部材と前記下部対抗部材を、鉛直方向に沿って配置されるボルトにより接続することを特徴とする。
【0027】
このような免震装置の設置工法によれば、水平対抗部材は、上部対抗部材と下部対抗部材とがボルトにより接続された構成なので、上部連接部と下部連接部の鉛直方向の間隔が大きい場合にも水平対抗部材を設置できる。また、上部構造に作用した水平外力により下部構造を反力点とするモーメントが生じたとしても、上部対抗部材は上方に引き上げられないので、上部対抗部材と下部対抗部材とを接続するボルトに引張力が作用することを防止できる。このため、上部構造と下部構造の間により安全に免震装置を設けることができる。
【0028】
また、上部構造と下部構造の間に免震装置を有する免震装置の設置構造であって、
上部水平部と、前記上部水平部から下方に突出し、かつ、第1方向に間隔を空けて配された第1上部突出部、及び、第2上部突出部とを含む上部連接部を有する前記上部構造と、
下部水平部と、前記下部水平部から上方に突出し、かつ、前記第1方向に間隔を空けて配された第1下部突出部、及び、第2下部突出部とを含む下部連接部を有する前記下部構造と、
前記第1上部突出部と前記第2上部突出部との間であり、かつ、前記第1下部突出部と前記第2下部突出部との間に、前記第1方向に沿って設置され、前記第1方向の水平外力に対抗する水平対抗部材と、
前記水平対抗部材と前記上部連接部との間、及び、前記水平対抗部材と前記下部連接部との間を繋ぐ連接部材と、
を有することを特徴とする免震装置の設置構造である。
【0029】
このような免震装置の設置構造によれば、上部構造に作用した水平外力を、水平対抗部材を介して下部構造に伝達でき、下部構造に対する上部構造の位置ずれを抑制でき安全に施工できる。また、水平対抗部材を第1方向に沿って容易に設置できる。また、水平対抗部材に曲げや座屈が生じ難く、水平外力に対する建物の耐力を高めることができ、安全に施工できる。
【0030】
また、水平対抗部材は、上部連接部に当接しており、かつ、水平対抗部材と上部連接部との間及び水平対抗部材と下部連接部との間を繋いでいるので、上部構造に作用した水平外力により生じる、下部構造を反力点とするモーメントによる水平対抗部材の回転を抑えることができる。このため、上部構造と下部構造の間により安全に免震装置を設けることができる。なお、このような免震装置の設置構造は、免震装置の設置工法における途中過程の構造を含む。
【0031】
また、上部構造と下部構造の間に免震装置を有する免震装置の設置構造であって、
上部水平部と、前記上部水平部から下方に突出し、かつ、第1方向に間隔を空けて配された第1上部突出部、及び、第2上部突出部とを含む上部連接部を有する前記上部構造と、
下部水平部と、前記下部水平部から上方に突出し、かつ、前記第1方向に間隔を空けて配された第1下部突出部、及び、第2下部突出部とを含む下部連接部を有する前記下部構造と、
前記第1上部突出部の下に突出する第1上部基礎と、前記第1下部突出部の上に突出する第1下部基礎との間、及び、前記第2上部突出部の下に突出する第2上部基礎と、前記第2下部突出部の上に突出する第2下部基礎との間、にそれぞれ設置される前記免震装置と、
前記第1上部基礎と前記第2上部基礎との間であり、かつ、前記第1下部基礎と前記第2下部基礎との間に、前記第1方向に沿って設置され、前記第1方向の水平外力に対抗する水平対抗部材と、
前記水平対抗部材と前記上部連接部との間、及び、前記水平対抗部材と前記下部連接部との間を繋ぐ連接部材と、
を有することを特徴とする免震装置の設置構造である。
【0032】
このような免震装置の設置構造によれば、上部構造に作用した水平外力を、水平対抗部材を介して下部構造に伝達でき、下部構造に対する上部構造の位置ずれを抑制でき安全に施工できる。また、水平対抗部材を第1方向に沿って容易に設置できる。また、水平対抗部材に曲げや座屈が生じ難く、水平外力に対する建物の耐力を高めることができ、安全に施工できる。
【0033】
また、水平対抗部材は、上部連接部に当接しており、かつ、水平対抗部材と上部連接部との間及び水平対抗部材と下部連接部との間を繋いでいるので、上部構造に作用した水平外力により生じる、下部構造を反力点とするモーメントによる水平対抗部材の回転を抑えることができる。このため、上部構造と下部構造の間により安全に免震装置を設けることができる。なお、このような免震装置の設置構造は、免震装置の設置工法における途中過程の構造を含む。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、免震装置の設置工事の施工を容易にしつつ、施工中に建物に作用する水平外力に対する耐力を高めて安全に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】第1実施形態の免震装置の設置工法の手順を示すフロー図である。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、仮受け支持部材設置工程、及び、水平対抗部材設置工程の説明図である。
【
図12】
図12A及び
図12Bは、第2実施形態の仮受け支持部材設置工程、及び、水平対抗部材設置工程の説明図である。
【
図14】第3実施形態の免震装置の設置工法の手順を示すフロー図である。
【
図16】第3実施形態における水平対抗部材設置工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
===第1実施形態===
<<S01:補強部形成工程>>
図1は第1実施形態の免震装置の設置工法の手順を示すフロー図である。
図2は補強部形成工程の説明図であり、
図3は補強された既存建物1の正面図である。以下の実施形態においては、既存の柱を切断し、切断した部位に免震装置を設置して免震化する免震化工事に適用される免震装置の設置工法を例に挙げて説明する。
【0037】
第1実施形態の免震装置の設置工法では、既存建物1を上部構造10と下部構造20に分離して、その間に免震装置30(例えば、積層ゴムタイプ、転がり支承タイプ、滑り支承タイプ等)を設置する。具体的には、既存建物1の中間階の柱2の一部を切断し(ここでは地上1階の床面FL1から地上2階の床面FL2に向かって鉛直方向に延びる柱2の一部を切断し)、その切断箇所に免震装置30を設置する。第1実施形態では、後述の
図9に示すように、X方向(水平方向、第1方向)に間隔を空けて配置された2本の柱2A,2Bを免震装置30の設置対象の柱とする。
【0038】
まず、既存建物1を上下に分離して免震装置30を設置するために、既存建物1の耐力や剛性を補う目的で、補強部40を形成して既存建物1の補強を行う。例えば、コンクリートを打設して、免震装置30の設置階の床面を高くしたり、柱2を太くしたり、梁3を厚くしたりする。
図2では右下の斜線が施された部分を補強部40とする。ただし、既存建物1を補強する必要が無い場合には補強部形成工程は不要である。
【0039】
第1実施形態では、少なくとも、施工対象の柱2A,2Bの上部の外側にコンクリートが打設されて補強された柱上部補強部41と、施工対象の柱2A,2Bの下部の外側にコンクリートが打設されて補強された柱下部補強部42を形成する。
【0040】
また、既存建物1のうち免震装置30の設置位置より上方の部位を上部構造10とし、免震装置30の設置位置より下方の部位を下部構造20とする。上部構造10は、上部水平部11(梁3の補強部40の下面より上側の部位)と、上部水平部11から下方に突出し、かつ、X方向に間隔を空けて配された第1上部突出部12及び第2上部突出部13と、を含む上部連接部を有する。第1上部突出部12及び第2上部突出部13は、それぞれ柱2の上部と、当該柱2の上部の外側にコンクリートが打設された柱上部補強部41(の一部)とを有する。
【0041】
下部構造20は、下部水平部21(補強された床面FL1より下方の部位)と、下部水平部21から上方に突出し、かつ、X方向に間隔を空けて配された第1下部突出部22及び第2下部突出部23と、を含む下部連接部を有する。第1下部突出部22及び第2下部突出部23は、それぞれ柱2の下部と、当該柱2の下部の外側にコンクリートが打設された柱下部補強部42とを有する。
【0042】
なお、柱上部補強部41と柱下部補強部42の形成時に、免震装置30を設置する際の継手43を、柱上部補強部41と柱下部補強部42に予め埋設しておいてもよい。また、柱上部補強部41及び柱2A,2Bの上部等にPC鋼棒44を挿通し、PC鋼棒44の両端をナットで締結してプレストレスを付与してもよい。そうして、柱上部補強部41の引張耐力を高めてもよい。
【0043】
<<S02:仮受け支持部材設置工程、水平対抗部材設置工程、及び、連接工程>>
図3A及び
図3Bは、仮受け支持部材設置工程、及び、水平対抗部材設置工程の説明図である。
図3Aは既存建物1の正面図であり、
図3Bは上方から見た既存建物1の概略平面図である。
図4A~
図4Cは水平対抗部材群60の説明図である。
図4Aは水平対抗部材群60の正面図であり、
図4BはX方向一方側から見た水平対抗部材群60の側面図であり、
図4Cは上方から見た水平対抗部材群60の平面図である。
図5は連接工程の説明図である。
【0044】
次に、施工対象の柱2A,2Bの周囲に仮受け支持部材50を設置する仮受け支持部材設置工程を実施する。つまり、第1上部突出部12(柱上部補強部41A)と第1下部突出部22(柱下部補強部42A)の間、及び、第2上部突出部13(柱上部補強部41B)と第2下部突出部23(柱下部補強部42B)の間に、それぞれ仮受け支持部材50を設置する。仮受け支持部材50は柱2の切断後に上部構造10の荷重を仮受けするためのものであり、鉛直方向に伸縮可能な部材(例えば油圧ジャッキ等)である。
【0045】
仮受け支持部材50を柱下部補強部42A,42Bの上に設置した後、柱上部補強部41A,41Bまで仮受け支持部材50を鉛直方向の上方に伸長させる。このとき、各仮受け支持部材50は、柱上部補強部41A,41B及び柱下部補強部42A,42Bの外周の縁部よりも外側に突出しないように設置する。そうして、柱上部補強部41A,41Bの下面、及び、柱下部補強部42A,42Bの上面に、仮受け支持部材50を当接させる。そうすることで、柱2の切断後において、上部構造10の荷重は仮受け支持部材50に支持されつつ下部構造20に伝達される。なお、
図3Bでは1本の柱2に対して設置する仮受け支持部材50の数を4つとしているが、これに限定されない。
【0046】
次に、施工対象の柱2A,2Bの間の空間に水平対抗部材群60を設置する水平対抗部材設置工程を実施する。水平対抗部材群60は既存建物1に作用するX方向の水平外力に対抗するための部材である。第1実施形態の水平対抗部材群60は、水平対抗部材である上部対抗部材61及び下部対抗部材62と、接続部材63と、を有する。ここでは上部対抗部材61及び下部対抗部材62としてそれぞれ山留材611,621及びピース材612,622を使用し、接続部材63として山留材を使用する。
【0047】
山留材(例えば山留材611)は、H鋼の両端がエンドプレートで塞がれた形状の鋼材であり、一対のフランジ(611A)と、ウェブ(611B)と、一対のエンドプレート(611C)と、ウェブに固定された平面略三角形状の補助プレート(611D)と、ボルト等の締結具を挿通するための貫通孔(611E)を有するものを例示できる。ピース材は、山留材の長さを短くした部材であり、山留材と同様に、一対のフランジとウェブと一対のエンドプレートと補助プレートと貫通孔を有するものを例示できる。本実施形態の上部対抗部材61及び下部対抗部材62は、山留材611,621とピース材612,622が、互いのエンドプレートが当接した状態にてボルト等で接合された部材である。
【0048】
そして、
図3Aに示すように、連接部材64を下部水平部21の上に設置し、その上に下部対抗部材62、3本の接続部材63、上部対抗部材61を順次積み上げるとともに、互いにボルト66とナット67と座金プレート68を用いて接合し、水平対抗部材群60を連接部材64上に形成する。このとき、連接部材64は、水平対抗部材群60の最も下に位置する下部対抗部材62のX方向における両端部近傍の下にそれぞれ設置する。
【0049】
第1実施形態では連接部材64として、鉛直方向に伸縮可能な部材(例えばキリンジャッキ等)を用いる。この連接部材64は、上部構造10の荷重を仮受けする仮受け支持部材50をなす油圧ジャッキ等と異なり、手作業により鉛直方向に伸縮可能な装置である。尚、連接部材64は、必ずしも伸縮可能な部材でなくとも構わない。
【0050】
そして、下部水平部21の上に設置された連接部材64に水平対抗部材群60が支持された状態から連接部材64を伸長して、水平対抗部材群60を引き上げ、上部対抗部材61を上部水平部11に当接させる。
【0051】
詳しくは、下部水平部21の上に設置された連接部材64の上に配置し、下部対抗部材62のX方向一方側の端面62a(山留材621のエンドプレート)を第1下部突出部22(柱下部補強部42A)の側面22aに当接させ、下部対抗部材62のX方向他方側の端面62b(ピース材622のエンドプレート)を第2下部突出部23(柱下部補強部42B)の側面に当接させる。
【0052】
次に、3本の接続部材63を下部対抗部材62の上に、順次積み上げつつ、ボルト66とナット67と座金プレート68にて接合する。各接続部材63(山留材)もその長手方向がX方向に沿うように水平に又は略水平に設置する。具体的には、鉛直方向に隣り合う山留材(上部対抗部材61と1番上の接続部材63、上から2番目と3番目の接続部材63、上から3番目の接続部材63と下部対抗部材62)を、互いのフランジ面が当接した状態にて、ボルト66とナット67と座金プレート68にて接合する。
【0053】
次に、上部対抗部材61を積み上げられた接続部材63の上に配置し、上部対抗部材61のX方向一方側の端面61a(山留材611のエンドプレート611C)を第1上部突出部12(柱上部補強部41A)の側面12aに当接させ、上部対抗部材61のX方向他方側の端面61b(ピース材612のエンドプレート)を第2上部突出部13(柱上部補強部41B)の側面13aに当接させる。このとき、上部対抗部材61と、上部水平部11の下面とは鉛直方向に間隔が空いている。
【0054】
すなわち、第1上部突出部12と第2上部突出部13との間であり、かつ、第1下部突出部22と第2下部突出部23との間に、水平対抗部材(上部対抗部材61及び下部対抗部材62)をX方向に沿って水平に又は略水平に設置する。第1実施形態では、第1上部突出部12と第2上部突出部13との間(柱上部補強部41A,41Bの間)に上部対抗部材61をその長手方向がX方向に沿うように設置する。また、第1下部突出部22と第2下部突出部23との間(柱下部補強部42A,42Bの間)に下部対抗部材62をその長手方向がX方向に沿うように設置する。
【0055】
次に、下部水平部21の上面を反力面として水平対抗部材群60を上方に引き上げて、上部対抗部材61を上部水平部11に当接する連接工程を実施する。連接工程では、水平対抗部材群60をレバーブロック(登録商標)やチェーンブロックなどで引き上げながら連接部材64を追従させて伸長させる。そうして、水平対抗部材群60を上方に引き上げ、上部対抗部材61の上面を上部水平部11の下面に当接(連接)させる。
【0056】
このため、上部対抗部材61のX方向一方側の端面61aを第1上部突出部12の側面12aに当接させ、上部対抗部材61のX方向他方側の端面61bを第2上部突出部13の側面13aに当接させた状態で、上部対抗部材61の上側のフランジ611Aと、上部水平部11の下面との間に鉛直方向に間隔が空けられていたとしても、連接部材64により水平対抗部材群60が押し上げられることにより、上部対抗部材61の上面が上部水平部11の下面に確実に当接(連接)される。
【0057】
本実施形態では上部対抗部材61のX方向他方側の端面61bと第2上部突出部13の側面13aとの間に充填材65(例えばグラウト材等)を充填する。このとき、充填材65は、例えばビニル袋等に充填して端面61bと第2上部突出部13の側面13aとの間に介在させる。この場合、上部対抗部材61のX方向他方側の端面61bはビニル袋等に充填された充填材65を介して第2上部突出部13の側面13aに当接する。同様に、本実施形態では下部対抗部材62のX方向他方側の端面62bと第2下部突出部23の側面23aとの間に充填材65を充填する。このとき、充填材65は、例えばビニル袋等に充填して端面62bと第2下部突出部23の側面23aとの間に介在させる。この場合、下部対抗部材62のX方向他方側の端面62bはビニル袋等に充填された充填材65を介して第2下部突出部23の側面23aに当接する。
【0058】
なお、充填材65は、上部対抗部材61及び下部対抗部材62のX方向におけるいずれの側に充填しても構わず、また、X方向における両側に充填しても構わない。また、充填材65を充填するなどして、上部対抗部材61の端面61a,61bと第1上部突出部12の側面12a及び/または第2上部突出部13の側面13aとを繋ぐ工程、及び、下部対抗部材62の端面62a,62bと第2下部突出部22の側面22a及び/または第2下部突出部23の側面23aとを繋ぐ工程は、上部対抗部材61を上部水平部11に当接(連接)する前に行っても、上部対抗部材61を上部水平部11に当接(連接)した後に行っても構わない。
【0059】
なお、水平対抗部材群60は、予め下部対抗部材62、3本の接続部材63、上部対抗部材61を接合して形成しておいてもよい。この場合には、水平対抗部材群60は、その構成部材61~63の何れを先に設置してもよいし、構成部材61~63を先に接合してから設置してもよい。また、仮受け支持部材設置工程、水平対抗部材設置工程、及び、連接工程は、連接工程が水平対抗部材設置工程の後に行われれば、そのほかは何れを先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0060】
<S03:柱の切断工程>
図6は、柱2の切断工程の説明図であり、既存建物1の正面図である。次に、施工対象の柱2A,2Bの一部を切断して除去し、免震装置30の設置空間を形成する。そして、柱2A,2Bが支持していた上部構造10の荷重の一部を仮受け支持部材50に移行する。第1実施形態では、柱上部補強部41A,41Bと柱下部補強部42A,42Bの間の柱2A,2Bの部位を切断する。
【0061】
<S04:免震装置設置工程>
図7は、免震装置30の設置工程の説明図であり、既存建物1の正面図である。免震装置設置工程において、まず、柱下部補強部42A,42Bの上にそれぞれ下部基礎31を形成する。例えば、下部基礎31の形状に合わせて鉄筋及び型枠(不図示)を組み、コンクリートを打設して下部基礎31を形成する。この時に免震装置30を設置するためのベースプレートを配置した状態でコンクリートを打設するとよい。また、柱下部補強部42A,42Bの形成時に埋設した継手43に下部基礎31に埋設される鉄筋等を接続するとよい。なお、
図7において、X方向一方側の下部基礎を第1下部突出部22が有する第1下部基礎31Aとし、X方向他方側の下部基礎を第2下部突出部23が有する第2下部基礎31Bとする。
【0062】
次に、第1下部基礎31Aの上に免震装置30(第1の免震装置30A)を設置し、第2下部基礎31Bの上に免震装置30(第2の免震装置30B)を設置する。例えば、下部基礎31と一体となったベースプレートにボルト等で免震装置30の下部を固定する。その後、第1の免震装置30Aと柱上部補強部41Aの間、及び、第2の免震装置30Bと柱上部補強部41Bの間に、それぞれ上部基礎32を形成する。下部基礎31と同様に、上部基礎32の形状に合わせて鉄筋及び型枠(不図示)を組み、ベースプレートを配置した状態でコンクリートを打設して、上部基礎32を形成するとよい。そして、上部基礎32と一体となったベースプレートにボルト等で免震装置30の上部を固定する。なお、
図7において、X方向一方側の上部基礎を第1上部突出部12が有する第1上部基礎32Aとし、X方向他方側の上部基礎を第2上部突出部13が有する第2上部基礎32Bとする。
【0063】
これにより免震装置30の設置が完了し、免震装置30は、上部基礎32を介して柱2の上部に固定され、下部基礎31を介して柱2の下部に固定され、柱2の動きに追従可能となる。また、免震装置30は、上部構造10の荷重を支持しつつ下部構造20に伝達可能となる。
【0064】
<S05:空隙形成工程>
図8は、空隙形成工程の説明図であり、既存建物1の正面図である。空隙形成工程において、水平対抗部材群60を下方に移動して、上部対抗部材61の上面と上部水平部11の下面との間に空隙Sを形成する。より具体的には、水平対抗部材群60の下に配置している連接部材64を下方に収縮させ、水平対抗部材群60を降下させて、上部対抗部材61の上面と上部水平部11の下面との間に空隙Sを形成する。
【0065】
このとき、水平対抗部材群60を降下させた後に、上部対抗部材61の上面と上部水平部11の下面との間に形成される空隙Sの鉛直方向の幅Wは、上部構造10の荷重が仮受け支持部材50に支持された状態から、仮受け支持部材50を撤去して上部構造10の荷重が免震装置30により支持されたときに、上部構造10が沈み込むときの沈み込み量Lより広く形成されている。ここで、上部構造10の沈み込み量Lは、例えば、上部構造10が仮受け支持部材50に支持されたときの上部水平部11と下部水平部21との間隔L1と、上部構造10が免震装置30に支持されたときの上部水平部11と下部水平部21との間隔L2との差で示される。
【0066】
上部構造10の荷重が仮受け支持部材50に支持された状態から、仮受け支持部材50を撤去して上部構造10の荷重が免震装置30により支持されたときに、上部構造10の沈み込み量Lは、免震装置30のタイプにより相違する。例えば、免震装置30が積層ゴムタイプの場合の沈み込み量は約2mm~5mmであり、転がり支承タイプや滑り支承タイプの場合の沈み込み量は約1mm~2mmである。このため、空隙形成工程において形成する空隙Sの鉛直方向の幅Wは、例えば、想定される沈み込み量+5mmに設定する。
【0067】
また、上部対抗部材61の上面と上部水平部11の下面との間に空隙Sを形成した後であっても、少なくとも、上部対抗部材61のX方向一方側の端面61aの一部と、第1上部突出部12の側面12aとが水平方向にて対向し、上部対抗部材61のX方向他方側の端面61bの一部と第2上部突出部13の側面13aとが水平方向にて対向する位置に上部対抗部材61が配置されるように空隙Sを形成する。
【0068】
例えば、空隙Sを形成した後に、水平対抗部材群60が第1上部突出部12、及び、第2上部突出部13と対向する水平対抗部材群60の鉛直方向における幅を、空隙Sを形成する前に、水平対抗部材群60が第1上部突出部12、及び、第2上部突出部13と対向していた水平対抗部材群60の鉛直方向における幅、すなわち本実施形態では、上部水平部11との間に空隙Sが設けられた水平対抗部材61の両端面61a、61bにおける、第1上部突出部12の側面12a、及び、第2上部突出部13の側面13aと対向している部位の面積は、当該水平対抗部材61により第1上部突出部12、及び、第2上部突出部13に伝達される水平外力に、第1上部突出部12、及び、第2上部突出部13が耐えうる支圧強度が得られる面積であれば構わない。
【0069】
<S06:撤去工程>
図9は、撤去工程後の既存建物1の正面図である。撤去工程S06は、仮受け部材撤去工程と、水平対抗部材撤去工程とを有する。免震装置30を設置して、免震装置30が適切に機能することを確認した後、仮受け支持部材50を収縮させて撤去する(仮受け部材撤去工程)。そうして、上部構造10の荷重を仮受け支持部材50から免震装置30に移行する。上部構造10の荷重を仮受け支持部材50から免震装置30に移行した後であっても、上部対抗部材61の上面と上部水平部11の下面との間には空隙Sが確保されている。
【0070】
そして、全ての柱2において仮受け支持部材50を撤去した後に、水平対抗部材群60を撤去する(水平対抗部材撤去工程)。そうすることで、仮受け支持部材50を撤去する間も、建物に作用する水平外力に対する耐力を高めて安全に施工することができる。
【0071】
<<免震装置の設置工法の有効性について>>
以上のように、第1実施形態の免震装置の設置工法(
図3A)では、第1上部突出部12と第2上部突出部13との間であり、かつ、第1下部突出部22と第2下部突出部23との間に、X方向の水平外力に対抗する水平対抗部材61,62をX方向に沿って設置する。そのため、免震装置の設置工法の施工中に
図7に示す免震装置の設置構造が形成され、安全に施工できる。
【0072】
詳しくは、第1上部突出部12と第2上部突出部13との間に、上部対抗部材61をX方向に沿って設置し、かつ、第1下部突出部22と第2下部突出部23との間に、下部対抗部材62をX方向に沿って設置し、上部対抗部材61と下部対抗部材62を接続する。そのため、柱や壁を切断している施工中に地震や暴風が発生しても、水平対抗部材61,62によって、下部構造20に対する上部構造10のX方向の位置ずれを抑制でき、安全に施工できる。
【0073】
具体的に説明すると、上部構造10に対してX方向の他方側に向かう水平外力が作用すると、その水平外力は、上部対抗部材61のX方向一方側の端面が当接する第1上部突出部12に対抗されつつ、上部対抗部材61に接続された下部対抗部材62に伝達される。伝達された水平外力は、下部対抗部材62のX方向他方側の端面が当接する第2下部突出部23に対抗される。そのため、上部構造10のX方向他方側への動きが規制され、下部構造20に対する上部構造10のX方向の位置ずれを抑制できる。
【0074】
逆方向も同様に、上部構造10に対してX方向の一方側に向かう水平外力が作用すると、その水平外力は、上部対抗部材61のX方向他方側の端面が当接する第2上部突出部13に対抗されつつ、上部対抗部材61に接続された下部対抗部材62に伝達される。伝達された水平外力は、下部対抗部材62のX方向一方側の端面が当接する第1下部突出部22に対抗される。そのため、上部構造10のX方向一方側への動きが規制され、下部構造20に対する上部構造10のX方向の位置ずれを抑制できる。
【0075】
また、本実施形態の上部対抗部材61及び下部対抗部材62は、X方向に沿って水平に又は略水平に設置され、それぞれの長軸方向に沿った力を受ける。そのため、本実施形態とは異なりX方向に対して斜めに対抗部材を設置する場合に比べて、水平外力に対する建物1の耐力が高まり、また、上部対抗部材61及び下部対抗部材62に曲げや座屈が生じ難くなる。そのため、不要に多くの対抗部材を設置する必要がなくなり、施工が容易となる。
【0076】
さらに、水平対抗部材群60は、上部水平部11に当接しており、かつ、上部対抗部材61と上部水平部11との間及び下部対抗部材62と下部水平部21との間を繋ぐので、上部構造10に作用した水平外力により生じる、下部構造20を反力点とするモーメントによる水平対抗部材群60の回転を抑えることができる。
【0077】
具体的に説明すると、第1上部突出部12と第2上部突出部13との間に設置した上部対抗部材61と、第1下部突出部22と第2下部突出部23との間に設置した下部対抗部材62との間は、3本の接続部材63を介して接続されている。すなわち、上部対抗部材61と下部対抗部材62とは鉛直方向において離れた位置に配置されている。
【0078】
そして、上部構造10に対してX方向の他方側に向かう水平外力が作用すると、その水平外力は、上部対抗部材61のX方向一方側の端面が当接する第1上部突出部12に対抗されつつ、上部対抗部材61に接続された下部対抗部材62に伝達される。伝達された水平外力は、下部対抗部材62のX方向他方側の端面が当接する第2下部突出部23に対抗される。このとき、上部対抗部材61と下部対抗部材62とは鉛直方向において離れて配置されているので、下部対抗部材62のX方向他方側の端面が当接する第2下部突出部23を反力点として時計回りのモーメントが生じる。
【0079】
逆方向も同様に、上部構造10に対してX方向の一方側に向かう水平外力が作用すると、その水平外力は、上部対抗部材61のX方向他方側の端面が当接する第1上部突出部12に対抗されつつ、上部対抗部材61に接続された下部対抗部材62に伝達される。伝達された水平外力は、下部対抗部材62のX方向一方側の端面が当接する第2下部突出部23に対抗される。このとき、上部対抗部材61と下部対抗部材62とは鉛直方向において離れて配置されているので、下部対抗部材62のX方向一方側の端面が当接する第2下部突出部23を反力点として反時計回りのモーメントが生じる。
【0080】
このように、上部構造10に水平外力が作用してモーメントが生じるときに、例えば、上部対抗部材61の上面と上部水平部11の下面との間、及び、下部対抗部材62の下面と下部水平部21の上面との間、の少なくとも一方に間隔が空いている場合には、モーメントにより上部対抗部材61の一方側または他方側の端部側が上方に引き上げられ、上部対抗部材61、下部対抗部材62及び3本の接続部材63を接続するボルト66に張力が作用する。このため、上部対抗部材61の上面と上部水平部11の下面との間、及び、下部対抗部材62の下面と下部水平部21の上面との間に間隔が空いている場合には、モーメントが作用したときにボルト66に作用する引張力を考慮しなければならず、水平拘束の所望の耐力を備えるために、より多くのボルト66を用いて、上部対抗部材61、下部対抗部材62及び3本の接続部材63を接続しなければならない。
【0081】
これに対して、本実施形態では、連接部材64により水平対抗部材群60を上部水平部11及び下部水平部21といずれも繋ぐので、上部構造10に対してX方向の他方側に向かう水平外力が作用して、第2下部突出部23を反力点としてモーメントが発生したとしても、上部対抗部材61は上部構造10により回転が規制されている。このため、上部対抗部材61の一方側の端部側は上方または下方に引っ張られないので、上部対抗部材61、下部対抗部材62及び3本の接続部材63を接続するボルト66に張力が作用することを防止でき、ボルト66の引張耐力に関係なく、水平拘束の耐力を高めることができる。このため、上部対抗部材61の上面と上部水平部11の下面との間、及び、下部対抗部材62の下面と下部水平部21の上面との間のいずれか一方に間隔が空いている場合よりボルト66の数を低減できるので、施工が容易であり、また、コストを抑えることができる。
【0082】
また、水平対抗部材設置工程より後に、連接工程において、X方向に沿って配置された水平対抗部材群60の上部対抗部材61を上部水平部11に当接させるので、第1上部突出部12と第2上部突出部13との間に設置した上部対抗部材61を上部水平部11に確実に当接させることができ、かつ、下方へのずれを防止することができる。
【0083】
また、免震装置設置工程より後であって、仮受け支持部材撤去工程より前に、上部対抗部材61の上に空隙Sを形成して、上部対抗部材61と上部水平部11とを離間するので、仮受け支持部材50を撤去して上部構造10を降下させ、免震装置30にて上部構造10を支持させる際に、水平対抗部材群60が上部構造10の降下の妨げになることを防止することができる。
【0084】
また、上部構造10を支持している仮受け支持部材50を撤去して免震装置30に支持させると、上部構造10は仮受け支持部材50に支持されていた元の位置より低く沈み込む。このとき、上部対抗部材61の上に形成する空隙Sの鉛直方向における幅Wを、仮受け支持部材50を撤去したときに上部構造10が免震装置30に支持されて沈み込む沈み込み量L(L1-L2)より広くしたので、仮受け支持部材50を撤去したときに、確実に上部構造10の荷重を免震装置30により支持させることができる。
【0085】
また、上部対抗部材61と上部水平部11との間に空隙Sを設けられた後に、上部対抗部材61の少なくとも一部を、水平方向において第1上部突出部12、及び、第2上部突出部13と対向させることにより、空隙Sを設けた後に上部構造10に水平外力が作用した場合であっても、当該水平外力を、水平対抗部材群60を介して下部構造20に伝達でき、下部構造20に対する上部構造10の位置ずれを抑制でき安全に施工することができる。
【0086】
さらに、上部対抗部材61と上部水平部11との間に空隙Sを設けられた後に、上部対抗部材61の、第1上部突出部12、及び、第2上部突出部13と対向している部位の面積を、上部対抗部材61により第1上部突出部12、及び、第2上部突出部13に伝達された水平外力に、第1上部突出部12、及び、第2上部突出部13が耐えうる支圧強度が得られる面積としたので、空隙Sが設けられた後に上部構造10に水平外力が作用した場合であっても、当該水平外力により第1上部突出部12、及び、第2上部突出部13は損傷しない。このため、水平対抗部材群60を介して下部構造20に、水平外力をより確実に伝達でき、下部構造20に対する上部構造10の位置ずれを抑制でき安全に施工することができる。
【0087】
また、水平対抗部材群60を、上部対抗部材61、下部対抗部材62、及び、上部対抗部材61と下部対抗部材62とを接続する複数の接続部材63を、それぞれ鉛直方向に沿って配置されるボルト66により接続したので、第1上部突出部12と第1下部突出部22の鉛直方向の間隔がさらに大きい場合にも、水平対抗部材61,62と接続部材63によって、上部構造10に作用した水平外力を下部構造20に伝達でき、上部構造10の位置ずれを抑制できる。
【0088】
また、上部構造10に作用した水平外力により下部構造20を反力点とするモーメントが生じたとしても、上部対抗部材61が上部水平部11に、下部対抗部材62が下部水平部21にそれぞれ当接しているので、水平対抗部材群60の各部材は上下方向に引っ張られない。このため、上部対抗部材61、下部対抗部材62、及び接続部材63をそれぞれ接続するボルト66に引張力が作用することを防止できる。このため、上部構造10と下部構造20の間により安全に免震装置30を設けることができる。
【0089】
また、本実施形態とは異なりX方向に対して斜めに対抗部材を設置する場合、既存建物の柱や梁や床等に多くのアンカーを打設してガセットプレートを取り付けて、ガセットプレート間に斜めに対抗部材を設置しなければならず、施工が煩雑となる。これに対して、本実施形態の上部対抗部材61はそのX方向の両端面を第1,第2上部突出部12,13の側面に当接させ、下部対抗部材62もそのX方向の両端面を第1,第2下部突出部22,23の側面に当接させ、上部対抗部材61の上面を上部水平部11に当接させて、下部水平部21に配置した連接部材64により水平対抗部材群60を支持するだけであるため、施工が容易となる。
【0090】
つまり、本実施形態の免震装置の設置工法によれば、免震装置の設置工事の施工を容易にしつつ、施工中に建物に作用する水平外力に対する耐力を高めて安全に施工することができる。
【0091】
なお、水平対抗部材61,62は、山留材611,621に限定されず、例えばX方向(第1方向)に長尺な部材であり、第1上部突出部12等の側面に当接可能な面をX方向の両端に備える部材(例えば鋼材やプレキャストコンクリート部材)であればよい。また、本実施形態のように水平対抗部材61,62を設置する間隔に応じて、汎用の山留材611,621にピース材612,622を接合したものを使用してもよいし、汎用の山留材611,621を単独で使用してもよい。汎用の山留材611,621を使用することで施工コストを削減できる。
【0092】
また、第1,第2上部突出部12,13の側面に当接する上部対抗部材61は1本に限らず複数本を接続したものであってもよい。同様に、第1,第2下部突出部22,23の側面に当接する下部対抗部材62は1本に限らず複数本を接続したものであってもよい。このとき、上部対抗部材61同士や、下部対抗部材62同士を、X方向(第1方向)に沿って設置される接続部材を介して接続してもよい。また、
図4Cでは水平対抗部材(61,62)が1列のみ配置されているが、水平対抗部材(61,62)をY方向に並べて複数列配置してもよい。
【0093】
図10は既存建物1の概略平面図である。ここまでX方向に沿って水平対抗部材61,62を設置する場合を例に挙げて説明したが、本実施形態の水平対抗部材61,62はX方向と交差する水平方向に沿って設置することもできる。例えば
図10に示すようにX方向に直交するY方向(このときの第1方向)に間隔を空けて配置された2本の柱2A,2Cの間に水平対抗部材群60を設置できる。そうすることで、柱や壁が切断された施工中において、下部構造20に対する上部構造10のY方向の位置ずれを抑制できる。
図10ではX方向の水平外力に対抗する水平対抗部材群60を60Xと付し、Y方向の水平外力に対抗する水平対抗部材群60を60Yと付している。
図10に示すように、X方向及びY方向に沿ってそれぞれ水平対抗部材群60を設置することで、上部構造10のX方向及びY方向の位置ずれを抑制できる。
【0094】
なお、全ての施工対象の柱2(切断する柱2)と、その隣の柱2の間の空間に水平対抗部材群60を設置するに限らない。安全に施工できる範囲において、
図10に示すように一部の柱2の周囲には水平対抗部材群60を設置しなくてもよい。一般に、X方向に対する対抗部材(例えば水平対抗部材群60X)とY方向に対する対抗部材(例えば水平対抗部材群60Y)の耐力が同程度である場合、X方向とY方向にそれぞれ同数の対抗部材を設置するとよい。また、切断前の耐力壁(不図示)や外壁によって、或いは切断後の壁を鋼板やPC鋼材、ボルト等で緊結することによっても、水平外力による上部構造10の位置ずれを抑制できる。
【0095】
また、第1実施形態では水平対抗部材として2本の部材(上部対抗部材61及び下部対抗部材62)を設置する。そうすることで、第1上部突出部12と第1下部突出部22の鉛直方向の間隔が比較的に大きい場合にも、水平対抗部材61,62によって、上部構造10に作用した水平外力を下部構造20に伝達でき、上部構造10の位置ずれを抑制できる。
【0096】
また、水平対抗部材61,62と同様に、接続部材63もX方向に沿って水平に又は略水平に設置することで、接続部材63の曲げや座屈の発生を抑制でき、また、上部構造10に作用した水平外力を効率良く伝達できる。また、接続部材63の施工も容易となる。
【0097】
図11A及び
図11Bは水平対抗部材群60の変形例の説明図である。上記に限定されず、第1上部突出部12と第1下部突出部22の鉛直方向の間隔が狭い場合には、水平対抗部材群60の構成を変えてもよい。例えば、
図11Aに示すように、X方向に沿って設置された上部対抗部材61と下部対抗部材62を、接続部材63を介さずに不図示のボルト等で直接接続してもよい。
【0098】
また、
図11Bに示すように、第1上部突出部12と第2上部突出部13との間であり、かつ、第1下部突出部22と第2下部突出部23との間に、1本の水平対抗部材69を設置してもよい。この場合、水平対抗部材69のX方向一方側の端面を、第1上部突出部12(柱上部補強部41A)と第1下部突出部22(柱下部補強部42A)の両側面に当接し、水平対抗部材69のX方向他方側の端面を、第2上部突出部13(柱上部補強部41B)と第2下部突出部23(柱下部補強部42B)の両側面に当接する。
【0099】
また、第1実施形態では、水平対抗部材設置工程(
図4A)において、第2上部突出部13の側面13aとそれに対向する上部対抗部材61の面61bとの間に充填材65を充填する。このように、第1上部突出部12と第2上部突出部13のうちの少なくとも一方の側面と、当該側面に対向する上部対抗部材61(水平対抗部材)の面との間に、ビニル袋等に充填された充填材65を充填することが望ましい。
【0100】
そうすることで、第1,第2上部突出部12,13の側面に傾きや凹凸が生じていたり、上部対抗部材61に曲がりが生じていたりしても、第1,第2上部突出部12,13の側面に上部対抗部材61の端面を隙間なく面で当接させることができる。そのため、第1,第2上部突出部12,13の側面や上部対抗部材61の端面に局所的に力が作用してしまうことを防止できる。よって、水平外力に対する建物1の耐力が高まり、また、上部対抗部材61に曲げや座屈が生じ難くなる。また、第1,第2上部突出部12,13の破損も抑制できる。
【0101】
同様に、第1実施形態では、第2下部突出部23の側面23aとそれに対向する下部対抗部材62の面62bとの間に充填材65を充填する。このように、第1下部突出部22と第2下部突出部23のうちの少なくとも一方の側面と、当該側面に対向する下部対抗部材62(水平対抗部材)の面との間に、ビニル袋等に充填された充填材65を充填することが望ましい。
【0102】
そうすることで、第1,第2下部突出部22,23の側面に下部対抗部材62の端面を隙間なく面で当接させることができる。そのため、第1,第2下部突出部22,23の側面や下部対抗部材62の端面に局所的に力が作用してしまうことを防止できる。よって、水平外力に対する建物1の耐力が高まり、また、下部対抗部材62に曲げや座屈が生じ難くなる。また、第1,第2下部突出部22,23の破損も抑制できる。
【0103】
ただし、上記に限定されず、充填材65を用いずに水平対抗部材61,62を設置してもよい。また、第1実施形態のように水平対抗部材61,62のX方向他方側にのみ充填材65を設けることで施工を容易にできる。一方、水平対抗部材61,62のX方向の両側に充填材65を設ける場合、水平対抗部材61,62の両端面が、第1,第2上部突出部12,13及び第1,第2下部突出部22,23の側面により確実に面で当接する。また、上記実施形態では、第1,第2上部突出部12,13及び第1,第2下部突出部23の間に設置された水平対抗部材60,61,62を鉛直方向に移動するので、充填材65をビニル袋等に充填することにより、水平対抗部材60,61,62をより滑らかに移動することができる。
【0104】
また、第1実施形態では、水平対抗部材設置工程より後に、水平対抗部材61,62を設置した両外側の、第1上部突出部12と第1下部突出部22の間、及び、第2上部突出部13と第2下部突出部23の間に、それぞれ免震装置30を設置する工程を実施する。つまり、免震装置30を設置するために切断される柱2の近傍に水平対抗部材61,62が設置される。そのため、下部構造20に対する上部構造10の位置ずれを水平対抗部材61,2によってより確実に抑制でき、安全に施工できる。
【0105】
また、第1実施形態では、水平対抗部材設置工程、及び、仮受け支持部材設置工程より前に、柱上部補強部41A,41B及び柱下部補強部42A,42Bを形成する補強部形成工程を実施する。よって、水平対抗部材設置工程において、柱上部補強部41A,41Bの側面、及び、柱下部補強部42A,42Bの側面に、水平対抗部材61,62を当接させることができる。ゆえに、上部構造10に作用した水平外力を、柱上部補強部41A,41Bから上部対抗部材61に伝達でき、さらに上部対抗部材61から下部対抗部材62及び柱下部補強部42A,42B(下部構造20)に伝達できる。
【0106】
また、仮受け支持部材設置工程において、柱上部補強部41A,41Bの下面、及び、柱下部補強部42A,42Bの上面に、仮受け支持部材50を当接させることができる。ゆえに、切断する柱2の周囲に仮受け支持部材50を設置でき、また、柱2の切断後に、仮受け支持部材50が上部構造10の荷重を下部構造20に伝達できる。
【0107】
ただし、免震工事にて形成した補強部ではなく、既存建物1が元々備える第1,第2上部突出部12,13の側面や第1,第2下部突出部22,23の側面に水平対抗部材61,62を当接させてもよい。同様に、既存建物1が元々備える上部構造10の下面と、下部構造20の上面に、仮受け支持部材50を当接させてもよい。
【0108】
===第2実施形態===
図12は、第2実施形態の仮受け支持部材設置工程、及び、水平対抗部材設置工程の説明図であり、既存建物1の正面図である。
図13は第2実施形態の水平対抗部材群60の説明図であり、水平対抗部材群60の正面図である
【0109】
第1実施形態の免震装置の設置工法では、水平対抗部材設置工程、及び、連接工程として、上部対抗部材61をそのX方向の両端面を第1,第2上部突出部12,13の側面に当接させ、下部対抗部材62もそのX方向の両端面を第1,第2下部突出部22,23の側面に当接させて、水平対抗部材群60を上方に移動したが、第2実施形態の免震装置の設置工法では、例えば、水平対抗部材設置工程において、水平対抗部材群60を上部水平部11から吊り下げて設置し、吊り下げられた水平対抗部材群60と下部水平部21との間に連接部材64を配置して、連接部材64により水平対抗部材群60を下部水平部21上にて支持し、上部対抗部材61が上部水平部11に当接した状態を維持する。
【0110】
具体的には、第2実施形態の免震装置の設置工法では、例えば、まず、補強部形成工程において、上部水平部11を形成すべく、施工対象の柱2A,2Bの上部の間にコンクリートを打設するときに、X方向に沿って配置される上部対抗部材61の上側のフランジ611Aに設けられている貫通孔の位置に合わせて、ボルト66を螺合可能な雌ねじのアンカー74を備えておく。
【0111】
そして、水平対抗部材設置工程において、上部水平部11に上部対抗部材61の上側のフランジ611Aを当接させると共に、上側のフランジ611A及び座金プレート68に設けられている貫通孔に、ボルト66を挿通させ、上部水平部11に備えられているアンカー74に螺合して、上部対抗部材61を上部水平部11に固定する。尚、上部水平部11には、雌ねじのアンカーを設けることなく、上部水平部11から下方に向けてアンカーボルトを突出させ、上部対抗部材61の上側のフランジ611Aの貫通孔にアンカーボルト挿通させナットを螺合して固定してもよい。また、施工対象の柱2A,2Bの上部の間にコンクリートを打設して上部水平部11を形成した後に、アンカーを設置しても構わない。
【0112】
上部水平部11に吊り下げられた上部対抗部材61の下側のフランジ611Aと1番上の接続部材63の上側のフランジとを対面させて当接させた状態でボルト66とナット67と座金プレート68にて接合する。
【0113】
以下、同様に、上から2番目の接続部材63、1番下の接続部材63、下部対抗部材62の順で、上から順次ボルト66とナット67と座金プレート68にて接合する。これにより、
図12に示すように、上部対抗部材61、3本の接続部材63、下部対抗部材62が、水平対抗部材群60を形成し、上部水平部11から吊り下げられる。
【0114】
次に、連接工程において、水平対抗部材群60と、下部水平部21との間に連接部材64を設置する。第2実施形態の連接工程では、連接部材64を、水平対抗部材群60の下、より具体的には、下部対抗部材62の下に位置する下部水平部21の上に設置した後、下部対抗部材62の下面まで鉛直方向の上方に伸長させて、連接部材64を下部対抗部材62の下面に当接(連接)させる。このとき、上部対抗部材61の上側のフランジ611Aの上面が上部水平部11の下面に確実に当接(連接)される。
【0115】
第2実施形態においては、連接工程が水平対抗部材設置工程の後に行われるが、仮受け支持部材設置工程は、水平対抗部材設置工程及び連接工程の前後のいずれで行われても、また同時に行われても構わない。
【0116】
===第3実施形態===
図14は第3実施形態の免震装置の設置工法の手順を示すフロー図である。
図15Aは柱(2A,2B)の切断工程の説明図であり、
図15Bは免震装置設置工程の説明図である。
図16は第3実施形態の水平対抗部材設置工程の説明図である。
図17Aは他の柱(2D)の切断工程の説明図であり、
図17Bは他の免震装置設置工程の説明図である。
図18A~
図18Dは既存建物1の概略平面図である。
図18A~
図18Dでは、切断された箇所に免震装置30が設置された柱2を白抜きの四角で示し、切断されておらず免震装置30が設置されていない柱2を黒塗りの四角で示す。
【0117】
第3実施形態の免震装置の設置工法では、まず、第1及び第2実施形態(
図2)と同様に補強部形成工程(S11)を実施する。ただし、既存建物1を補強する必要が無い場合には補強部形成工程は不要である。次に、
図15Aに示すように、施工対象の柱2A,2Bの周囲に仮受け支持部材50を設置する仮受け支持部材設置工程(S12)を行うが、施工対象の柱2A,2Bの間に水平対抗部材の設置は行わない。次に、柱の切断工程(S13)を実施し、
図15Bに示すように柱2A,2Bに対して免震装置設置工程(S14)を行う。詳しくは、柱2Aの切断箇所に、第1下部基礎31Aを形成し、第1下部基礎31Aの上に第1の免震装置30Aを設置した後に、第1上部基礎32Aを形成する。また、柱2Bの切断箇所に、第2下部基礎31Bを形成し、第2下部基礎31Bの上に第2の免震装置30Bを設置した後に、第2上部基礎32Bを形成する。その結果、
図15Bに示すように柱2A,2Bに免震装置30が設置される。
【0118】
その後、免震装置設置工程(S14)より後に、
図16及び
図18Bに示すように免震装置30の設置が完了した柱2A,2Bの間の空間に対して、水平対抗部材設置工程(S15)を行う。具体的には、第3実施形態の水平対抗部材群70は、1本の水平対抗部材71(例えば山留材)と、連接部材としての2個の支持部材72(例えばピース材)を有する。そして、第1の免震装置30Aの上に設置された第1上部基礎32A(第1上部突出部)と、第2の免震装置30Bの上に設置された第2上部基礎32B(第2上部突出部)との間であり、第1の免震装置30Aの下に設置された第1下部基礎31A(第1下部突出部)と、第2の免震装置30Bの下に設置された第2下部基礎31Bとの間に、水平対抗部材71をX方向に沿って設置する。つまり、水平対抗部材71のX方向一方側の端面を、第1上部基礎32Aの側面及び第1下部基礎31Aの側面に当接させ、水平対抗部材71のX方向他方側の端面を、第2上部基礎32Bの側面及び第2下部基礎31Bの側面に当接させて、水平対抗部材71をX方向に沿って水平に又は略水平に設置する。
【0119】
このとき、第1下部突出部22及び第2下部突出部23の上に、支持部材72を載置し、その上に水平対抗部材71を設置する。設置された水平対抗部材71の上面と第1上部突出部12及び第2上部突出部13との間は、連接部材としての充填材75(例えばグラウト材等)を充填して隙間をなくしておく。こうすることにより、水平対抗部材71と、下部連接部をなす第1下部突出部22及び第2下部突出部23とを繋ぎ、かつ、水平対抗部材71と、上部連接部をなす第1上部突出部12及び第2上部突出部13とを繋ぐことになる(連接工程 S15)。
【0120】
この場合にも、上部構造10に作用した水平外力を、上部基礎32から水平対抗部材71に伝達でき、さらに水平対抗部材71から下部基礎31(下部構造20)に伝達できる。よって、下部構造20に対する上部構造10のX方向の位置ずれを抑制できる。また、水平対抗部材71が水平に又は略水平に設置されるため、水平外力に対する建物1の耐力が高まり、また、水平対抗部材71に曲げや座屈が生じ難くなる。
【0121】
また、第3実施形態の免震装置の設置工法では施工階が有する複数の柱2の途中に免震装置30を設置する。つまり、上部構造10及び下部構造20は、第1の免震装置30A及び第2の免震装置30Bを設置した場所とは異なる場所に、上部水平部11から下方に突出する第3上部突出部(例えば
図15Aの第3上部突出部14)と下部水平部21から上方に突出する第3下部突出部(例えば
図15Aの第3下部突出部24)を有する。その第3上部突出部14と第3下部突出部24の間、すなわち柱2A,2Bとは異なる柱2(例えば
図15Aの柱2D)の途中に免震装置30を設置する工程(他の免震装置設置工程S16)を、水平対抗部材設置工程の後に行うとよい。つまり、水平対抗部材設置工程(
図16)より後に、柱2Dの周囲に仮受け支持部材50を設置し、柱の切断工程(突出部形成工程)を実施する。具体的には、下部水平部21から上部水平部11まで延びる柱2Dの一部を切断し(
図17A)、柱2Dの上部である第3上部突出部14と、柱2Dの下部である第3下部突出部24とを形成する。その後に、第3上部突出部14と第3下部突出部24の間に第3の免震装置30Dを設置する(
図17B,
図18C)。この施工中も、柱2A,2Bの間に設置された水平対抗部材71によって、安全に施工できる。
【0122】
このように、免震化工事の初期であり、多くの柱2や壁(耐力壁(不図示)や外壁)が切断されていない状態(例えば
図18A)であれば、施工対象の柱2A,2Bの間の空間に水平対抗部材が設置されていなくても、上部構造10の位置ずれを抑制できる。そして、工事が進み、柱2や壁の切断が進んだ状態(例えば
図18B)では、既に免震装置30が設置された柱2A,2Bの間に水平対抗部材群70を設置するとよい。そうすることで安全に施工できる。そして、
図18Dに示すように、免震装置30が設置された箇所に水平対抗部材群70を設置しながら、最終的に全ての柱2の途中に免震装置30を設置するとよい。なお、免震装置30が設置された全ての柱2の周囲に水平対抗部材群70を設置するに限らず、安全に施工できる範囲において、
図18Dに示すように一部の柱2の周囲には水平対抗部材群70を設置しなくてもよい。
【0123】
また、第3実施形態の水平対抗部材71も、X方向と交差する方向(直交するY方向)に設置可能であり、その場合、上部構造10のY方向の位置ずれを抑制できる。
図18DではX方向の水平外力に対抗する水平対抗部材群70を70Xと付し、Y方向の水平外力に対抗する水平対抗部材群70を70Yと付している。
【0124】
また、第3実施形態では、免震装置30の上部基礎32の側面、及び、下部基礎31の側面に、水平対抗部材71を当接させる。柱上部補強部41A,41Bと柱下部補強部42A,42Bの鉛直方向の間隔に比べて、上部基礎32と下部基礎31の鉛直方向の間隔は狭い。そのため、第3実施形態では、水平対抗部材71の数を少なくしたり(ここでは1本にしたり)、接続部材を不要にしたりすることができる。よって、水平対抗部材設置工程をより容易に行うことができる。
【0125】
また、第3実施形態の水平対抗部材71も下方から支持部材72で支持されていることが望ましい。そうすることで、水平対抗部材71の自重による撓みを抑制できる。その場合、
図16に示すように下部基礎31の上面に支持部材72を設置することが望ましい。そうすることで、施工階の床面FL2から支持部材を設置する場合に比べて、支持部材72の数を少なくすることができる。また、支持部材72によって、水平対抗部材71の設置高さを調整することで、下部基礎31と上部基礎32に対して均等に水平対抗部材71を当接することができる。
【0126】
また、水平対抗部材71は、第1下部突出部22及び第2下部突出部23の上に支持部材72を介して載置され、第1上部突出部12及び第2上部突出部13との間にはグラウト等が充填されていることが望ましい。そうすることで、上部構造10に作用した水平外力により生じる、下部構造20を反力点とするモーメントによる水平対抗部材71の回転を抑えることができる。
【0127】
また、第3実施形態の水平対抗部材71も、上部基礎32の側面と、それに対向する水平対抗部材71の間に、充填材73を充填することが望ましい。同様に、下部基礎31の側面と、それに対向する水平対抗部材71の間に、充填材73を充填することが望ましい。そうすることで、水平対抗部材71は上部基礎32や下部基礎31に面で当接することができ、局所的に力が掛かる箇所が発生してしまうことを防止できる。
【0128】
上記実施形態においては、水平対抗部材をなす水平対抗部材群60の下に上下方向に伸縮可能な連接部材64を備えて、水平対抗部材と上部水平部及び下部水平部とを繋ぐ例について主に説明したが、これに限るものではない。例えば、連接部材として伸縮しない定形の連接部材(例えば、上述したピース材612,622等)や、ビニル袋等に充填されたグラウトなどの充填材を用いても構わない。また、平対抗部材と上部連接部との間、及び、水平対抗部材と下部連接部との間のいずれに連接部材が設けられていてもよく、水平対抗部材と上部連接部との間、及び、水平対抗部材と下部連接部の間にそれぞれ、複数種類の連接部材が設けられていても構わない。すなわち、水平対抗部材と上部連接部との間、及び、水平対抗部材と下部連接部の間が繋がっていれば、上部構造10に作用した水平外力により生じる、下部構造20を反力点とするモーメントによる水平対抗部材71の回転を抑えることができる。
【0129】
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0130】
例えば、第1及び第2実施形態の水平対抗部材61,62の設置と、第3実施形態の水平対抗部材71の設置の両方を行う免震装置の設置工法であってもよく、両方を組み合わせることで施工計画の自由度が高まる。
【符号の説明】
【0131】
1 既存建物、2 柱、
10 上部構造、11 上部水平部(上部連接部)、
12 第1上部突出部(上部連接部)、13 第2上部突出部(上部連接部)、
20 下部構造、21 下部水平部(下部連接部)、
22 第1下部突出部(下部連接部)、23 第2下部突出部(下部連接部)、
30 免震装置、
30A 第1の免震装置、30B 第2の免震装置、
31A 第1下部基礎、31B 第2下部基礎、
32A 第1上部基礎、32B 第2上部基礎、
41 柱上部補強部、42 柱下部補強部、
50 仮受け支持部材、
60 水平対抗部材群、
61 上部対抗部材(水平対抗部材)、62 下部対抗部材(水平対抗部材)、
63 接続部材、64 連接部材、66 ボルト、
70 水平対抗部材群、71 水平対抗部材、
72 支持部材(連接部材)、75 充填材(連接部材)、
S 空隙
W 空隙の鉛直方向の幅、
L(L1-L2) 沈み込み量、
L1 上部構造が仮受け支持部材に支持されたときの上部水平部と下部水平部との間隔、
L2 上部構造が免震装置に支持されたときの上部水平部と下部水平部との間隔、
H 上部対抗部材の高さ、