IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

特開2023-162239創傷容積の推定を伴う創傷療法システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162239
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】創傷容積の推定を伴う創傷療法システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
A61M27/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023129910
(22)【出願日】2023-08-09
(62)【分割の表示】P 2020548904の分割
【原出願日】2019-03-25
(31)【優先権主張番号】62/650,132
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/799,241
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,ブレット,エル.
(72)【発明者】
【氏名】イングラム,シャノン,シー.
(72)【発明者】
【氏名】ライス,ジャスティン,アール.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】創傷の容積を推定するように構成された創傷療法システムを提供する。
【解決手段】創傷療法システムは、創傷に陰圧を印加するように構成された陰圧回路と、陰圧回路に流体的に結合されたポンプであって、陰圧回路内の陰圧を制御するように動作可能なポンプと、陰圧回路内の又は創傷における陰圧を測定するように構成された圧力センサと、ポンプと圧力センサとに通信可能に結合された制御装置とを含む。制御装置は、陰圧回路に圧力刺激を印加することを含む圧力試験手順を実行し、圧力センサによって記録された圧力測定値を使用して圧力刺激に対する陰圧回路の動的圧力応答を観測し、且つ動的圧力応答に基づいて創傷の創傷容積を推定するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷療法システムにおいて、
創傷に陰圧を印加するように構成された陰圧回路と、
前記陰圧回路に流体的に結合されたポンプであって、前記陰圧回路内の前記陰圧を制御するように動作可能な前記ポンプと、
前記陰圧回路内の又は前記創傷における前記陰圧を測定するように構成された圧力センサと、
前記ポンプと前記圧力センサとに通信可能に結合された制御装置であって、
前記陰圧回路に圧力刺激を印加することを含む圧力試験手順を実行し、
前記圧力センサによって記録された圧力測定値を使用して前記圧力刺激に対する前記陰圧回路の動的圧力応答を観測し、且つ
前記動的圧力応答に基づいて前記創傷の創傷容積を推定する
ように構成された前記制御装置と
を備えることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項2】
請求項1に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路が、前記創傷を取り囲む皮膚に封着可能な創傷ドレッシングを備えることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項3】
請求項1に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路が、前記創傷への送達のための滴下流体を収容する滴下流体キャニスタ又は前記創傷から除去された流体を収容する除去流体キャニスタのうちの少なくとも1つを備えることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項4】
請求項1に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路が、前記ポンプを前記創傷に流体的に接続する管を備えることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項5】
請求項1に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路が、
前記創傷を取り囲む皮膚に封着可能な創傷ドレッシングと、
前記創傷への送達のための滴下流体を収容する滴下流体キャニスタ又は前記創傷から除去された流体を収容する除去流体キャニスタのうちの少なくとも1つと、
前記滴下流体キャニスタ又は前記除去流体キャニスタを前記創傷ドレッシングに流体的に接続する管と
を備えることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項6】
請求項1に記載の創傷療法システムにおいて、前記制御装置が、前記陰圧回路内に前記陰圧を確立するように前記ポンプを動作させるように構成されることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項7】
請求項1に記載の創傷療法システムにおいて、前記試験手順が、
前記陰圧回路内に前記陰圧を確立するように前記ポンプを動作させることと、
前記陰圧回路内に前記陰圧が確立された後に前記圧力刺激を印加することと
を含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項8】
請求項1に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路に結合された弁であって、前記陰圧回路を制御可能に通気するように動作可能な前記弁をさらに備えることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項9】
請求項8に記載の創傷療法システムにおいて、前記圧力刺激を印加することが、
所定時間にわたって前記陰圧回路内への空気流を可能にするように前記弁を開放することと、
前記所定時間の経過後に前記弁を閉鎖することと
を含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項10】
請求項9に記載の創傷療法システムにおいて、前記圧力刺激を印加することが、
前記弁を閉鎖した後に別の所定時間にわたって待機することと、
前記陰圧が閾圧力値に達するまで前記開放ステップ、前記閉鎖ステップ、及び前記待機ステップを繰り返すことと
をさらに含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項11】
請求項9に記載の創傷療法システムにおいて、前記圧力刺激を印加することが、前記陰圧回路への空気漏出を軽減するために前記弁が閉鎖されている間に前記ポンプを動作させることをさらに含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項12】
請求項9に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路の前記動的圧力応答は、前記弁が開放される前の前記陰圧の測定値と前記弁が開放している間の前記陰圧の測定値との差として定義されるパージ深さパラメータによって特徴付けられることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項13】
請求項9に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路の前記動的圧力応答は、前記弁が閉鎖された後の前記陰圧の測定値と前記弁が開放している間の前記陰圧の測定値との差として定義されるリバウンドパラメータによって特徴付けられることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項14】
請求項9に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路の前記動的圧力応答は、前記弁が開放される前の前記陰圧の測定値と前記弁が閉鎖された後の前記陰圧の測定値との差として定義されるデルタパラメータによって特徴付けられることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項15】
請求項9に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路の前記動的圧力応答は、前記弁が閉鎖されている間に前記陰圧が変化する速度として定義される漏出速度パラメータによって特徴付けられることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項16】
請求項1に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路に沿って位置するオリフィスであって、前記陰圧回路に空気が既知の速度で漏出することを可能にするように構成された前記オリフィスをさらに備えることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項17】
請求項16に記載の創傷療法システムにおいて、前記圧力刺激を印加することが、
前記陰圧回路内に所定の陰圧を達成するように前記ポンプを動作させることと、
前記陰圧回路内で前記所定の陰圧に達したときに前記ポンプを作動停止することと
を含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項18】
請求項1に記載の創傷療法システムにおいて、前記動的圧力応答に基づいて前記創傷容積を推定することが、
前記動的圧力応答を特徴付ける1つ又は複数のパラメータについての値を決定することと、
前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との関係を定義するモデルへの入力として前記1つ又は複数のパラメータの前記値を適用することと
を含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項19】
請求項18に記載の創傷療法システムにおいて、前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との前記関係を定義する前記モデルが多項式近似モデルであることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項20】
請求項18に記載の創傷療法システムにおいて、前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との前記関係を定義する前記モデルがニューラルネットワークであることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項21】
請求項18に記載の創傷療法システムにおいて、前記制御装置が、
既知の容積を有する訓練回路に前記圧力刺激を印加することを含む訓練手順を実行し、
前記圧力センサによって記録された圧力測定値を使用して前記圧力刺激に対する前記訓練回路の動的圧力応答を観測し、且つ
前記既知の容積を前記訓練回路の前記動的圧力応答と関連付けること
によって、前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との前記関係を定義する前記モデルを生成するように構成される
ことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項22】
請求項21に記載の創傷療法システムにおいて、前記モデルを生成することが、
複数の既知の容積に対して前記訓練手順を繰り返すことと、
前記複数の既知の容積の各々について前記訓練回路の前記動的圧力応答を観測することと、
前記複数の既知の容積と前記訓練回路の前記動的圧力応答との相関関係を生成することと
をさらに含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項23】
請求項1に記載の創傷療法システムにおいて、前記制御装置が、
前記圧力試験手順を実行し、前記動的圧力応答を観測し、且つ創傷治療中に前記創傷容積を複数回推定し、並びに
創傷治療中の前記創傷容積の変化に基づいて治癒の進行を決定する
ように構成されることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項24】
請求項1に記載の創傷療法システムにおいて、前記制御装置が、
前記推定した創傷容積に基づいて前記創傷に送達すべき滴下流体の体積を決定し、且つ
前記体積の滴下流体を前記創傷に送達するように前記ポンプを動作させる
ように構成されることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項25】
請求項24に記載の創傷療法システムにおいて、前記制御装置が、前記推定した創傷容積に流体滴下係数を乗じることによって前記創傷に送達すべき滴下流体の前記体積を決定するように構成されることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項26】
請求項25に記載の創傷療法システムにおいて、前記流体滴下係数は、全創傷容積未満の創傷容積が前記滴下流体で満たされるように1未満であることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項27】
請求項25に記載の創傷療法システムにおいて、前記流体滴下係数が約0.2~約0.8であることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項28】
創傷の創傷容積を推定するための方法において、
陰圧回路を使用して創傷に陰圧を印加することと、
前記陰圧回路内の前記陰圧を制御するように、前記陰圧回路に流体的に結合されたポンプを動作させることと、
前記陰圧回路内の又は前記創傷における前記陰圧を測定することと、
前記陰圧回路に圧力刺激を印加することを含む圧力試験手順を実行することと、
前記陰圧の測定値を使用して前記圧力刺激に対する前記陰圧回路の動的圧力応答を観測することと、
前記動的圧力応答に基づいて前記創傷容積を推定することと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、前記陰圧回路が、前記創傷を取り囲む皮膚に封着可能な創傷ドレッシングを備えることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法において、前記陰圧回路が、前記創傷への送達のための滴下流体を収容する滴下流体キャニスタ又は前記創傷から除去された流体を収容する除去流体キャニスタのうちの少なくとも1つを備えることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法において、前記陰圧回路が、前記ポンプを前記創傷に流体的に接続する管を備えることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項28に記載の方法において、前記陰圧回路が、
前記創傷を取り囲む皮膚に封着可能な創傷ドレッシングと、
前記創傷への送達のための滴下流体を収容する滴下流体キャニスタ又は前記創傷から除去された流体を収容する除去流体キャニスタのうちの少なくとも1つと、
前記滴下流体キャニスタ又は前記除去流体キャニスタを前記創傷ドレッシングに流体的に接続する管と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項28に記載の方法において、前記陰圧回路内に前記陰圧を確立するように前記ポンプを動作させることをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項28に記載の方法において、前記試験手順が、
前記陰圧回路内に前記陰圧を確立するように前記ポンプを動作させることと、
前記陰圧回路内に前記陰圧が確立された後に前記圧力刺激を印加することと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項28に記載の方法において、前記陰圧回路を制御可能に通気するように、前記陰圧回路に結合された弁を動作させることをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法において、前記圧力刺激を印加することが、
所定時間にわたって前記陰圧回路内への空気流を可能にするように前記弁を開放することと、
前記所定時間の経過後に前記弁を閉鎖することと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法において、前記圧力刺激を印加することが、
前記弁を閉鎖した後に別の所定時間にわたって待機することと、
前記陰圧が閾圧力値に達するまで前記開放ステップ、前記閉鎖ステップ、及び前記待機ステップを繰り返すことと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項36に記載の方法において、前記圧力刺激を印加することが、前記陰圧回路への空気漏出を軽減するために前記弁が閉鎖されている間に前記ポンプを動作させることをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項36に記載の方法において、前記陰圧回路の前記動的圧力応答は、前記弁が開放される前の前記陰圧の測定値と前記弁が開放している間の前記陰圧の測定値との差として定義されるパージ深さパラメータによって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項36に記載の方法において、前記陰圧回路の前記動的圧力応答は、前記弁が閉鎖された後の前記陰圧の測定値と前記弁が開放している間の前記陰圧の測定値との差として定義されるリバウンドパラメータによって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項36に記載の方法において、前記陰圧回路の前記動的圧力応答は、前記弁が開放される前の前記陰圧の測定値と前記弁が閉鎖された後の前記陰圧の測定値との差として定義されるデルタパラメータによって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項36に記載の方法において、前記陰圧回路の前記動的圧力応答は、前記弁が閉鎖されている間に前記陰圧が変化する速度として定義される漏出速度パラメータによって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項28に記載の方法において、前記陰圧回路に沿って位置するオリフィスを介して前記陰圧回路に空気が既知の速度で漏出することを可能にすることをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法において、前記圧力刺激を印加することが、
前記陰圧回路内に所定の陰圧を達成するように前記ポンプを動作させることと、
前記陰圧回路内で前記所定の陰圧に達したときに前記ポンプを作動停止することと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項28に記載の方法において、前記動的圧力応答に基づいて前記創傷容積を推定することが、
前記動的圧力応答を特徴付ける1つ又は複数のパラメータについての値を決定することと、
前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との関係を定義するモデルへの入力として前記1つ又は複数のパラメータの前記値を適用することと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法において、前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との前記関係を定義する前記モデルが多項式近似モデルであることを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項45に記載の方法において、前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との前記関係を定義する前記モデルがニューラルネットワークであることを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項45に記載の方法において、
既知の容積を有する訓練回路に前記圧力刺激を印加することを含む訓練手順を実行し、
圧力センサによって記録された圧力測定値を使用して前記圧力刺激に対する前記訓練回路の動的圧力応答を観測し、且つ
前記既知の容積を前記訓練回路の前記動的圧力応答と関連付けること
によって、前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との前記関係を定義する前記モデルを生成することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法において、前記モデルを生成することが、
複数の既知の容積に対して前記訓練手順を繰り返すことと、
前記複数の既知の容積の各々について前記訓練回路の前記動的圧力応答を観測することと、
前記複数の既知の容積と前記訓練回路の前記動的圧力応答との相関関係を生成することと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項28に記載の方法において、
前記圧力試験手順を実行し、前記動的圧力応答を観測し、且つ創傷治療中に前記創傷容積を複数回推定することと、
創傷治療中の前記創傷容積の変化に基づいて治癒の進行を決定することと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項28に記載の方法において、
前記推定した創傷容積に基づいて前記創傷に送達すべき滴下流体の体積を決定することと、
前記体積の滴下流体を前記創傷に送達するように前記ポンプを動作させることと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項51に記載の方法において、前記創傷に送達すべき滴下流体の前記体積を決定することが、前記推定した創傷容積に流体滴下係数を乗じることを含むことを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項52に記載の方法において、前記流体滴下係数は、全創傷容積未満の創傷容積が前記滴下流体で満たされるように1未満であることを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項52に記載の方法において、前記流体滴下係数が約0.2~約0.8であることを特徴とする方法。
【請求項55】
創傷療法システムにおいて、
創傷に陰圧を印加するように構成された陰圧回路と、
前記創傷への送達のための滴下流体を収容するキャニスタと、
前記滴下流体を前記創傷に送達するように動作可能なポンプと、
前記陰圧回路内の又は前記創傷における前記陰圧を測定するように構成された圧力センサと、
前記ポンプと前記圧力センサとに通信可能に結合された制御装置であって、
前記創傷の創傷容積を推定するために圧力試験手順を実行し、
前記推定した創傷容積に基づいて前記創傷に送達すべき滴下流体の体積を決定し、且つ
前記体積の滴下流体を前記創傷に送達するように前記ポンプを動作させる
ように構成された前記制御装置と
を備えることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項56】
請求項55に記載の創傷療法システムにおいて、前記制御装置が、前記推定した創傷容積に流体滴下係数を乗じることによって前記創傷に送達すべき滴下流体の前記体積を決定するように構成されることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項57】
請求項56に記載の創傷療法システムにおいて、前記流体滴下係数は、全創傷容積未満の創傷容積が前記滴下流体で満たされるように1未満であることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項58】
請求項56に記載の創傷療法システムにおいて、前記流体滴下係数が約0.2~約0.8であることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項59】
請求項55に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路が、前記創傷を取り囲む皮膚に封着可能な創傷ドレッシングを備えることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項60】
請求項59に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路が、前記キャニスタを前記創傷ドレッシングに流体的に接続する管を備えることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項61】
請求項55に記載の創傷療法システムにおいて、前記制御装置が、前記陰圧回路内に前記陰圧を確立するように前記ポンプを動作させるように構成されることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項62】
請求項55に記載の創傷療法システムにおいて、前記圧力試験手順が、
前記陰圧回路内に前記陰圧を確立するように前記ポンプを動作させることと、
前記陰圧回路内に前記陰圧が確立された後に前記陰圧回路に圧力刺激を印加することと
を含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項63】
請求項55に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路に沿って位置するオリフィスであって、前記陰圧回路に空気が既知の速度で漏出することを可能にするように構成された前記オリフィスをさらに備えることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項64】
請求項63に記載の創傷療法システムにおいて、前記圧力試験手順が、
前記陰圧回路内に所定の陰圧を達成するように前記ポンプを動作させることと、
前記陰圧回路内で前記所定の陰圧に達したときに、前記ポンプを作動停止し、前記陰圧回路の動的圧力応答を観測することと
を含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項65】
請求項55に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路に結合された弁であって、前記陰圧回路を制御可能に通気するように動作可能な前記弁をさらに備えることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項66】
請求項65に記載の創傷療法システムにおいて、前記圧力試験手順が、
所定時間にわたって前記陰圧回路内への空気流を可能にするように前記弁を開放することと、
前記所定時間の経過後に前記弁を閉鎖することと
を含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項67】
請求項66に記載の創傷療法システムにおいて、前記圧力試験手順が、
前記弁を閉鎖した後に別の所定時間にわたって待機することと、
前記陰圧が閾圧力値に達するまで前記開放ステップ、前記閉鎖ステップ、及び前記待機ステップを繰り返すことと
を含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項68】
請求項66に記載の創傷療法システムにおいて、前記圧力試験手順が、前記陰圧回路への空気漏出を軽減するために前記弁が閉鎖されている間に前記ポンプを動作させることを含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項69】
請求項66に記載の創傷療法システムにおいて、前記圧力試験手順が、
前記陰圧回路に圧力刺激を印加することと、
前記圧力センサによって記録された圧力測定値を使用して前記圧力刺激に対する前記陰圧回路の動的圧力応答を観測することと、
前記動的圧力応答に基づいて前記創傷の前記創傷容積を推定することと
を含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項70】
請求項69に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路の前記動的圧力応答は、前記弁が開放される前の前記陰圧の測定値と前記弁が開放している間の前記陰圧の測定値との差として定義されるパージ深さパラメータによって特徴付けられることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項71】
請求項69に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路の前記動的圧力応答は、前記弁が閉鎖された後の前記陰圧の測定値と前記弁が開放している間の前記陰圧の測定値との差として定義されるリバウンドパラメータによって特徴付けられることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項72】
請求項69に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路の前記動的圧力応答は、前記弁が開放される前の前記陰圧の測定値と前記弁が閉鎖された後の前記陰圧の測定値との差として定義されるデルタパラメータによって特徴付けられることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項73】
請求項69に記載の創傷療法システムにおいて、前記陰圧回路の前記動的圧力応答は、前記弁が閉鎖されている間に前記陰圧が変化する速度として定義される漏出速度パラメータによって特徴付けられることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項74】
請求項69に記載の創傷療法システムにおいて、前記動的圧力応答に基づいて前記創傷容積を推定することが、
前記動的圧力応答を特徴付ける1つ又は複数のパラメータについての値を決定することと、
前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との関係を定義するモデルへの入力として前記1つ又は複数のパラメータの前記値を適用することと
を含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項75】
請求項74に記載の創傷療法システムにおいて、前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との前記関係を定義する前記モデルが多項式近似モデルであることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項76】
請求項74に記載の創傷療法システムにおいて、前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との前記関係を定義する前記モデルがニューラルネットワークであることを特徴とする創傷療法システム。
【請求項77】
請求項74に記載の創傷療法システムにおいて、前記制御装置が、
既知の容積を有する訓練回路に前記圧力刺激を印加することを含む訓練手順を実行し、
前記圧力センサによって記録された圧力測定値を使用して前記圧力刺激に対する前記訓練回路の動的圧力応答を観測し、且つ
前記既知の容積を前記訓練回路の前記動的圧力応答と関連付けること
によって、前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との前記関係を定義する前記モデルを生成するように構成される
ことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項78】
請求項77に記載の創傷療法システムにおいて、前記モデルを生成することが、
複数の既知の容積に対して前記訓練手順を繰り返すことと、
前記複数の既知の容積の各々について前記訓練回路の前記動的圧力応答を観測することと、
前記複数の既知の容積と前記訓練回路の前記動的圧力応答との相関関係を生成することと
をさらに含むことを特徴とする創傷療法システム。
【請求項79】
請求項55に記載の創傷療法システムにおいて、前記制御装置が、
創傷治療中に前記創傷容積を複数回推定するために前記圧力試験手順を実行し、且つ
創傷治療中の前記創傷容積の変化に基づいて治癒の進行を決定する
ように構成されることを特徴とする創傷療法システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月29日に出願された米国仮特許出願第62/650,132号明細書、及び2019年1月31日に出願された米国仮特許出願第62/799,241号明細書に対する優先権の利益を主張するものであり、これらの特許文献の完全な開示の全体が各々、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、創傷療法システムに関し、より詳細には、創傷の容積を推定するように構成された創傷療法システムに関する。
【背景技術】
【0003】
陰圧創傷療法(NPWT)は、創傷治癒を促進するために創傷部位に陰圧を印加することを伴う創傷療法の一種である。いくつかの創傷治療システムは、必要な陰圧及び流れを生成するために、空気圧ポンプを使用して創傷に陰圧を印加する。NPWTでの創傷治癒の最近の進歩は、NPWTとの組み合わせで作用するように創傷に局所流体を適用することを含む。しかしながら、創傷に送達すべき滴下流体の適切な体積を決定することは困難である可能性がある。加えて、治癒の進行を経時的に正確に監視及び追跡することも困難である可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一実施態様は、創傷に陰圧を印加するように構成された陰圧回路と、陰圧回路に流体的に結合されたポンプであって、陰圧回路内の陰圧を制御するように動作可能なポンプと、陰圧回路内の又は創傷における陰圧を測定するように構成された圧力センサと、ポンプと圧力センサとに通信可能に結合された制御装置とを含む創傷療法システムである。制御装置は、陰圧回路に圧力刺激を印加することを含む圧力試験手順を実行し、圧力センサによって記録された圧力測定値を使用して圧力刺激に対する陰圧回路の動的圧力応答を観測し、且つ動的圧力応答に基づいて創傷の創傷容積を推定するように構成される。
【0005】
いくつかの実施形態では、陰圧回路は、創傷を取り囲む皮膚に封着可能な創傷ドレッシングを含む。いくつかの実施形態では、陰圧回路は、創傷への送達のための滴下流体を収容する滴下流体キャニスタ又は創傷から除去された流体を収容する除去流体キャニスタのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、陰圧回路は、ポンプを創傷に流体的に接続する管を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、陰圧回路は、創傷を取り囲む皮膚に封着可能な創傷ドレッシングと、創傷への送達のための滴下流体を収容する滴下流体キャニスタ又は創傷から除去された流体を収容する除去流体キャニスタのうちの少なくとも1つと、滴下流体キャニスタ又は除去流体キャニスタを創傷ドレッシングに流体的に接続する管とを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、制御装置は、陰圧回路内に陰圧を確立するようにポンプを動作させるように構成される。いくつかの実施形態では、試験手順は、陰圧回路内に陰圧を確立するようにポンプを動作させることと、陰圧回路内に陰圧が確立された後に圧力刺激を印加することとを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、システムは、陰圧回路に結合された弁であって、陰圧回路を制御可能に通気するように動作可能な弁を含む。いくつかの実施形態では、圧力刺激を印加することは、所定時間にわたって陰圧回路内への空気流を可能にするように弁を開放することと、所定時間の経過後に弁を閉鎖することとを含む。いくつかの実施形態では、圧力刺激を印加することは、弁を閉鎖した後に別の所定時間にわたって待機することと、陰圧が閾圧力値に達するまで開放ステップ、閉鎖ステップ、及び待機ステップを繰り返すこととをさらに含む。いくつかの実施形態では、圧力刺激を印加することは、陰圧回路への空気漏出を軽減するために弁が閉鎖されている間にポンプを動作させることをさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、陰圧回路の動的圧力応答は、弁が開放される前の陰圧の測定値と弁が開放している間の陰圧の測定値との差として定義されるパージ深さパラメータによって特徴付けられる。
【0010】
いくつかの実施形態では、陰圧回路の動的圧力応答は、弁が閉鎖された後の陰圧の測定値と弁が開放している間の陰圧の測定値との差として定義されるリバウンドパラメータによって特徴付けられる。
【0011】
いくつかの実施形態では、陰圧回路の動的圧力応答は、弁が開放される前の陰圧の測定値と弁が閉鎖された後の陰圧の測定値との差として定義されるデルタパラメータによって特徴付けられる。
【0012】
いくつかの実施形態では、陰圧回路の動的圧力応答は、弁が閉鎖されている間に陰圧が変化する速度として定義される漏出速度パラメータによって特徴付けられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、創傷療法システムは、陰圧回路に沿って位置するオリフィスであって、陰圧回路に空気が既知の速度で漏出することを可能にするように構成されたオリフィスを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、圧力刺激を印加することは、陰圧回路内に所定の陰圧を達成するようにポンプを動作させることと、陰圧回路内で所定の陰圧に達したときにポンプを作動停止することとを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、動的圧力応答に基づいて創傷容積を推定することは、動的圧力応答を特徴付ける1つ又は複数のパラメータについての値を決定することと、1つ又は複数のパラメータと創傷容積との関係を定義するモデルへの入力として1つ又は複数のパラメータの値を適用することとを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のパラメータと創傷容積との関係を定義するモデルは、多項式近似モデルである。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のパラメータと創傷容積との関係を定義するモデルは、ニューラルネットワークである。
【0017】
いくつかの実施形態では、制御装置は、既知の容積を有する訓練回路に圧力刺激を印加することを含む訓練手順を実行し、圧力センサによって記録された圧力測定値を使用して圧力刺激に対する訓練回路の動的圧力応答の観測し、且つ既知の容積を訓練回路の動的圧力応答と関連付けることによって、1つ又は複数のパラメータと創傷容積との関係を定義するモデルを生成するように構成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、モデルを生成することは、複数の既知の容積に対して訓練手順を繰り返すことと、複数の既知の容積の各々について訓練回路の動的圧力応答を観測することと、複数の既知の容積と訓練回路の動的圧力応答との相関関係を生成することとをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、制御装置は、圧力試験手順を実行し、動的圧力応答を観測し、且つ創傷治療中に創傷容積を複数回推定するように構成される。制御装置は、創傷治療中の創傷容積の変化に基づいて治癒の進行を決定するように構成することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、制御装置は、推定した創傷容積に基づいて創傷に送達すべき滴下流体の体積を決定するように構成される。制御装置は、その体積の滴下流体を創傷に送達するようにポンプを動作させるように構成することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、制御装置は、推定した創傷容積に流体滴下係数を乗じることによって創傷に送達すべき滴下流体の体積を決定するように構成される。いくつかの実施形態では、流体滴下係数は、全創傷容積未満の創傷容積が滴下流体で満たされるように1未満である。いくつかの実施形態では、流体滴下係数は、約0.2~約0.8である。
【0022】
本開示の別の実施態様は、創傷の創傷容積を推定するための方法である。方法は、陰圧回路を使用して創傷に陰圧を印加することと、陰圧回路内の陰圧を制御するように、陰圧回路に流体的に結合されたポンプを動作させることと、陰圧回路内の又は創傷における陰圧を測定することと、陰圧回路に圧力刺激を印加することを含む圧力試験手順を実行することと、陰圧の測定値を使用して圧力刺激に対する陰圧回路の動的圧力応答を観測することと、動的圧力応答に基づいて創傷容積を推定することとを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、陰圧回路は、創傷を取り囲む皮膚に封着可能な創傷ドレッシングを含む。いくつかの実施形態では、陰圧回路は、創傷への送達のための滴下流体を収容する滴下流体キャニスタ又は創傷から除去された流体を収容する除去流体キャニスタのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、陰圧回路は、ポンプを創傷に流体的に接続する管を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、陰圧回路は、創傷を取り囲む皮膚に封着可能な創傷ドレッシングと、創傷への送達のための滴下流体を収容する滴下流体キャニスタ又は創傷から除去された流体を収容する除去流体キャニスタのうちの少なくとも1つと、滴下流体キャニスタ又は除去流体キャニスタを創傷ドレッシングに流体的に接続する管とを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、方法は、陰圧回路内に陰圧を確立するようにポンプを動作させることを含む。いくつかの実施形態では、試験手順は、陰圧回路内に陰圧を確立するようにポンプを動作させることと、陰圧回路内に陰圧が確立された後に圧力刺激を印加することとを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、方法は、陰圧回路を制御可能に通気するように、陰圧回路に結合された弁を動作させることを含む。いくつかの実施形態では、圧力刺激を印加することは、所定時間にわたって陰圧回路内への空気流を可能にするように弁を開放することと、所定時間の経過後に弁を閉鎖することとを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、圧力刺激を印加することは、弁を閉鎖した後に別の所定時間にわたって待機することと、陰圧が閾圧力値に達するまで開放ステップ、閉鎖ステップ、及び待機ステップを繰り返すこととをさらに含む。いくつかの実施形態では、圧力刺激を印加することは、陰圧回路への空気漏出を軽減するために弁が閉鎖されている間にポンプを動作させることをさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、陰圧回路の動的圧力応答は、弁が開放される前の陰圧の測定値と弁が開放している間の陰圧の測定値との差として定義されるパージ深さパラメータによって特徴付けられる。
【0029】
いくつかの実施形態では、陰圧回路の動的圧力応答は、弁が閉鎖された後の陰圧の測定値と弁が開放している間の陰圧の測定値との差として定義されるリバウンドパラメータによって特徴付けられる。
【0030】
いくつかの実施形態では、陰圧回路の動的圧力応答は、弁が開放される前の陰圧の測定値と弁が閉鎖された後の陰圧の測定値との差として定義されるデルタパラメータによって特徴付けられる。
【0031】
いくつかの実施形態では、陰圧回路の動的圧力応答は、弁が閉鎖されている間に陰圧が変化する速度として定義される漏出速度パラメータによって特徴付けられる。
【0032】
いくつかの実施形態では、方法は、陰圧回路に沿って位置するオリフィスを介して陰圧回路に空気が既知の速度で漏出することを可能にすることを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、圧力刺激を印加することは、陰圧回路内に所定の陰圧を達成するようにポンプを動作させることと、陰圧回路内で所定の陰圧に達したときにポンプを作動停止することとを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、動的圧力応答に基づいて創傷容積を推定することは、動的圧力応答を特徴付ける1つ又は複数のパラメータについての値を決定することと、1つ又は複数のパラメータと創傷容積との関係を定義するモデルへの入力として1つ又は複数のパラメータの値を適用することとを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のパラメータと創傷容積との関係を定義するモデルは、多項式近似モデルである。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のパラメータと創傷容積との関係を定義するモデルは、ニューラルネットワークである。
【0036】
いくつかの実施形態では、方法は、既知の容積を有する訓練回路に圧力刺激を印加することを含む訓練手順を実行し、圧力センサによって記録された圧力測定値を使用して圧力刺激に対する訓練回路の動的圧力応答を観測し、且つ既知の容積を訓練回路の動的圧力応答と関連付けることによって、1つ又は複数のパラメータと創傷容積との関係を定義するモデルを生成することを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、モデルを生成することは、複数の既知の容積に対して訓練手順を繰り返すことと、複数の既知の容積の各々について訓練回路の動的圧力応答を観測することと、複数の既知の容積と訓練回路の動的圧力応答との相関関係を生成することとをさらに含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、方法は、圧力試験手順を実行し、動的圧力応答を観測し、且つ創傷治療中に創傷容積を複数回推定することを含む。方法は、創傷治療中の創傷容積の変化に基づいて治癒の進行を決定することを含み得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、方法は、推定した創傷容積に基づいて創傷に送達すべき滴下流体の体積を決定することと、その体積の滴下流体を創傷に送達するようにポンプを動作させることとを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、創傷に送達すべき滴下流体の体積を決定することは、推定した創傷容積に流体滴下係数を乗じることを含む。いくつかの実施形態では、流体滴下係数は、全創傷容積未満の創傷容積が滴下流体で満たされるように1未満である。いくつかの実施形態では、流体滴下係数は、約0.2~約0.8である。
【0041】
本開示の別の実施態様は、創傷療法システムである。創傷療法システムは、創傷に陰圧を印加するように構成された陰圧回路と、創傷への送達のための滴下流体を収容するキャニスタと、滴下流体を創傷に送達するように動作可能なポンプと、陰圧回路内の又は創傷における陰圧を測定するように構成された圧力センサと、ポンプと圧力センサとに通信可能に結合された制御装置とを含む。制御装置は、創傷の創傷容積を推定するために圧力試験手順を実行し、推定した創傷容積に基づいて創傷に送達すべき滴下流体の体積を決定し、且つその体積の滴下流体を創傷に送達するようにポンプを動作させるように構成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、制御装置は、推定した創傷容積に流体滴下係数を乗じることによって創傷に送達すべき滴下流体の体積を決定するように構成される。いくつかの実施形態では、流体滴下係数は、全創傷容積未満の創傷容積が滴下流体で満たされるように1未満である。いくつかの実施形態では、流体滴下係数は、約0.2~約0.8である。
【0043】
いくつかの実施形態では、陰圧回路は、創傷を取り囲む皮膚に封着可能な創傷ドレッシングを含む。いくつかの実施形態では、陰圧回路は、キャニスタを創傷ドレッシングに流体的に接続する管を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、制御装置は、陰圧回路内に陰圧を確立するようにポンプを動作させるように構成される。いくつかの実施形態では、圧力試験手順は、陰圧回路内に陰圧を確立するようにポンプを動作させることと、陰圧回路内に陰圧が確立された後に陰圧回路に圧力刺激を印加することとを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、創傷療法システムは、陰圧回路に沿って位置するオリフィスであって、陰圧回路内に空気が既知の速度で漏出することを可能にするように構成されたオリフィスを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、圧力試験手順は、陰圧回路内に所定の陰圧を達成するようにポンプを動作させることと、陰圧回路内で所定の陰圧に達したときに、ポンプを作動停止し、陰圧回路の動的圧力応答を観測することとを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、システムは、陰圧回路に結合された弁であって、陰圧回路を制御可能に通気するように動作可能な弁を含む。いくつかの実施形態では、圧力試験手順は、所定時間にわたって陰圧回路内への空気流を可能にするように弁を開放することと、所定時間の経過後に弁を閉鎖することとを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、圧力試験手順は、弁を閉鎖した後に別の所定時間にわたって待機することと、陰圧が閾圧力値に達するまで開放ステップ、閉鎖ステップ、及び待機ステップを繰り返すこととを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、圧力試験手順は、陰圧回路に圧力刺激を印加することと、圧力センサによって記録された圧力測定値を使用して圧力刺激に対する陰圧回路の動的圧力応答を観測することと、動的圧力応答に基づいて創傷の創傷容積を推定することとを含む。いくつかの実施形態では、圧力試験手順は、陰圧回路への空気漏出を軽減するために弁が閉鎖されている間にポンプを動作させることを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、陰圧回路の動的圧力応答は、弁が開放される前の陰圧の測定値と弁が開放している間の陰圧の測定値との差として定義されるパージ深さパラメータによって特徴付けられる。
【0051】
いくつかの実施形態では、陰圧回路の動的圧力応答は、弁が閉鎖された後の陰圧の測定値と弁が開放している間の陰圧の測定値との差として定義されるリバウンドパラメータによって特徴付けられる。
【0052】
いくつかの実施形態では、陰圧回路の動的圧力応答は、弁が開放される前の陰圧の測定値と弁が閉鎖された後の陰圧の測定値との差として定義されるデルタパラメータによって特徴付けられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、陰圧回路の動的圧力応答は、弁が閉鎖されている間に陰圧が変化する速度として定義される漏出速度パラメータによって特徴付けられる。
【0054】
いくつかの実施形態では、動的圧力応答に基づいて創傷容積を推定することは、動的圧力応答を特徴付ける1つ又は複数のパラメータについての値を決定することと、1つ又は複数のパラメータと創傷容積との関係を定義するモデルへの入力として1つ又は複数のパラメータの値を適用することとを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のパラメータと創傷容積との関係を定義するモデルは、多項式近似モデルである。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のパラメータと創傷容積との関係を定義するモデルは、ニューラルネットワークである。
【0056】
いくつかの実施形態では、制御装置は、既知の容積を有する訓練回路に圧力刺激を印加することを含む訓練手順を実行し、圧力センサによって記録された圧力測定値を使用して圧力刺激に対する訓練回路の動的圧力応答を観測し、且つ既知の容積を訓練回路の動的圧力応答と関連付けることによって、1つ又は複数のパラメータと創傷容積との関係を定義するモデルを生成するように構成される。
【0057】
いくつかの実施形態では、モデルを生成することは、複数の既知の容積に対して訓練手順を繰り返すことと、複数の既知の容積の各々について訓練回路の動的圧力応答を観測することと、複数の既知の容積と訓練回路の動的圧力応答との相関関係を生成することとをさらに含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、制御装置は、創傷治療中に創傷容積を複数回推定するために圧力試験手順を実行し、且つ創傷治療中の創傷容積の変化に基づいて治癒の進行を決定するように構成される。
【0059】
当業者であれば、概要が単に例示的なものであり、限定的であるように意図されたものでは決してないことを認識するであろう。特許請求の範囲によってのみ定義される、本明細書で説明する装置及び/又はプロセスの他の態様、本発明の特徴、及び利点は、本明細書に記載され添付の図面と併せて解釈される詳細な説明で明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、例示的な実施形態による、管を介して創傷ドレッシングに結合された療法装置を含む創傷療法システムのブロック図である。
図2図2は、例示的な実施形態による、療法装置が陰圧回路内を真空引きするように動作したときの図1の療法装置をより詳細に図示するブロック図である。
図3A図3Aは、例示的な実施形態による、療法装置が陰圧回路を通気するように動作したときの図1の療法装置をより詳細に図示するブロック図である。
図3B図3Bは、例示的な実施形態による、療法装置がオリフィスを使用して陰圧回路を通気したときの図1の療法装置をより詳細に図示するブロック図である。
図4図4は、例示的な実施形態による、療法装置が滴下流体を創傷ドレッシング及び/又は創傷に送達するように動作したときの図1の療法装置をより詳細に図示するブロック図である。
図5図5は、例示的な実施形態による、図1の療法装置の制御装置をより詳細に図示するブロック図である。
図6A図6Aは、例示的な実施形態による、図1の療法装置によって実施できる受動的圧力試験手順を図示するグラフである。
図6B図6Bは、例示的な実施形態による、図1の療法装置によって実施できる能動的圧力試験手順を図示するグラフである。
図6C図6Cは、例示的な実施形態による、図1の療法装置によって実施できる可変の漏出速度での制御されない圧力試験手順を図示するグラフである。
図6D図6Dは、例示的な実施形態による、図1の療法装置によって実施できる一定の漏出速度での制御されない圧力試験手順を図示するグラフである。
図7A図7Aは、例示的な実施形態による、測定した圧力を創傷容積に関連付けるために図1の療法装置によって生成及び/又は使用できるいくつかの圧力減衰曲線を図示するグラフである。
図7B図7Bは、例示的な実施形態による、図6Aの受動的圧力試験手順を使用して生成された補助なしの圧力減衰曲線と、図6Bの能動的圧力試験手順を使用して生成された補助を伴う圧力減衰曲線とを図示するグラフである。
図8図8は、例示的な実施形態による、動的圧力応答パラメータを創傷容積に関連付ける圧力応答モデルを生成するためのプロセスのフローチャートである。
図9図9は、例示的な実施形態による、陰圧回路に圧力刺激を印加して動的圧力応答を観測することによって創傷容積を推定するためのプロセスのフローチャートである。
図10図10は、例示的な実施形態による、1組の創傷容積推定値に基づいて治癒の進行を経時的に監視するためのプロセスのフローチャートである。
図11図11は、例示的な実施形態による、創傷容積及び滴下流体体積を経時的に図示するグラフである。
図12図12は、例示的な実施形態による、推定した創傷容積に基づいて創傷に送達すべき滴下流体の量を決定するためのプロセスのフローチャートである。
図13図13は、例示的な実施形態による、漏出速度決定段階、創傷容積決定段階、及び流体滴下段階を含む創傷療法プロセスを図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
概説
図を全体的に参照すると、種々の例示的な実施形態による、流体滴下及び除去を伴う創傷療法システム及びその構成要素が示されている。創傷療法システムは、療法装置と創傷ドレッシングとを含み得る。療法装置は、滴下流体キャニスタと、除去流体キャニスタと、弁と、空気圧ポンプと、滴下ポンプと、制御装置とを含み得る。創傷ドレッシングは、創傷を取り囲む患者の皮膚に適用することができる。療法装置は、創傷を陰圧に維持することによって滴下流体を創傷に送達して陰圧創傷療法(NPWT)を提供するように構成することができる。創傷療法装置の構成要素、創傷ドレッシング、及び/又は創傷は、陰圧回路を形成する。
【0062】
制御装置は、空気圧ポンプ、滴下ポンプ、弁、及び/又は療法装置の他の制御可能な構成要素を動作させるように構成することができる。いくつかの実施形態では、制御装置は、陰圧回路に圧力刺激を印加することによって圧力試験手順を実施する。例えば、制御装置は、弁に閉鎖するように指示し、且つ陰圧回路内に陰圧を確立するように空気圧ポンプを動作させてもよい。陰圧が確立された時点で、制御装置は、空気圧ポンプを作動停止してもよい。制御装置は、所定時間にわたって弁を開放させ、次いで、所定時間の経過後に閉鎖させてもよい。いくつかの実施形態では、制御装置は、陰圧回路への空気漏出を軽減するために弁が閉鎖されている間に空気圧ポンプを動作させる。制御装置は、圧力センサによって記録された圧力測定値を使用して圧力刺激に対する陰圧回路の動的圧力応答を観測してもよい。動的圧力応答は、例えば、パージ深さパラメータ、リバウンドパラメータ、デルタパラメータ、及び漏出速度パラメータ(以下により詳細に説明する)を含む種々のパラメータによって特徴付けられてもよい。
【0063】
制御装置は、観測した動的圧力応答に基づいて創傷の容積を推定することができる。例えば、制御装置は、観測したパラメータと陰圧回路の容積及び/又は創傷の容積との関係を定義する圧力モデルへの入力として、観測したパラメータを適用することができる。モデルは、多項式近似モデル、ニューラルネットワークモデル、又は観測したパラメータを陰圧回路の容積及び若しくは創傷の容積に関連付ける他の任意のモデルを含み得る。いくつかの実施形態では、圧力モデルは、療法装置の製造業者によって制御装置に記憶された既存のモデルである。他の実施形態では、制御装置は、訓練手順を実施することによってその場で圧力モデルを生成することができる。
【0064】
訓練手順は、既知の容積を有する訓練回路に療法装置が接続されることを除き、圧力試験手順と同じであってもよい。例えば、創傷ドレッシングは、創傷を取り囲む患者の皮膚にではなく、既知の容積を有する試験装置に適用することができる。制御装置は、種々の既知の容積を有する種々の訓練回路に圧力刺激を印加することができ、且つ各訓練回路の動的圧力応答を観測してもよい。既知の容積の各々は、圧力刺激に対して異なる動的圧力応答をもたらし得る。次いで、制御装置は、各訓練回路の既知の容積を対応する動的圧力応答と関連付けることができる。いくつかの実施形態では、制御装置は、訓練回路の動的圧力応答を使用して、動的圧力応答(例えば、パージ深さ、リバウンド、デルタ、漏出速度など)の観測したパラメータと訓練回路の容積との関係を定義する圧力モデルを生成する。次いで、圧力モデルは、先に説明したように、療法装置に記憶して、創傷の容積を推定するために使用することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、制御装置は、圧力試験手順を実行し、動的圧力応答を観測し、且つ創傷治療中に創傷容積を複数回推定するように構成される。次いで、制御装置は、創傷治療中の創傷容積の変化に基づいて治癒の進行を決定することができる。いくつかの実施形態では、制御装置は、推定した創傷容積に基づいて創傷に送達すべき滴下流体の体積を決定するように構成される。送達すべき滴下流体の体積は、創傷の容積の所定の割合(例えば、20%、50%、80%など)であってもよい。次いで、制御装置は、決定した体積の滴下流体を創傷に送達するように滴下ポンプを動作させることができる。創傷療法システムのこれら及び他の特徴について以下に詳細に説明する。
【0066】
創傷療法システム
ここで図1図4を参照すると、例示的な実施形態による、陰圧創傷療法(NPWT)システム100が示されている。NPWTシステム100は、管108及び110を介して創傷ドレッシング112に流体的に接続された療法装置102を含むように示されている。創傷ドレッシング112は、創傷114を取り囲む患者の皮膚116に接着又は封着されてもよい。NPWTシステム100と組み合わせて使用できる創傷ドレッシング112のいくつかの例が、2010年1月26日に付与された米国特許第7,651,484号明細書、2013年3月12日に付与された米国特許第8,394,081号明細書、及び2013年11月22日に出願された米国特許出願第14/087,418号明細書で詳細に説明されている。これらの特許及び特許出願の各々の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
療法装置102は、創傷114における圧力を低下させることによって陰圧創傷療法を提供するように構成することができる。療法装置102は、創傷滲出液、空気、及び他の流体を創傷114から除去することによって、創傷114において(大気圧に対して)真空引きすることができる。創傷滲出液は、患者の循環系から病変又は炎症部位に滲み出る流体を含み得る。例えば、創傷滲出液は、水と、血液、血漿タンパク質、白血球、血小板、及び赤血球などの溶解溶質とを含み得る。創傷114から除去される他の流体は、創傷114に既に送達された滴下流体105を含み得る。滴下流体105は、例えば、洗浄流体、処方流体、薬剤流体、抗生物質流体、又は創傷治療中に創傷114に送達できる他の任意の種類の流体を含むことができる。滴下流体105は、滴下流体キャニスタ104内に保持され、滴下流体管108を介して創傷114に制御可能に分配されてもよい。いくつかの実施形態では、滴下流体キャニスタ104は、キャニスタ106が必要に応じて再び満たされ交換されることを可能にするために、療法装置102から取り外し可能である。
【0068】
創傷114から除去された流体107は、除去流体管110を通過して、除去流体キャニスタ106内に収集される。除去流体キャニスタ106は、創傷滲出液と、創傷114から除去された他の流体107とを収集するように構成された療法装置102の構成要素であってもよい。いくつかの実施形態では、除去流体キャニスタ106は、キャニスタ106が必要に応じて空にされ交換されることを可能にするために、療法装置102から取り外し可能である。キャニスタ106の下部分は、創傷114から除去された創傷滲出液及び他の流体107で満たされてもよく、それに対して、キャニスタ106の上部分は、空気で満たされてもよい。療法装置102は、キャニスタ106から空気を吸い出すことによってキャニスタ106内を真空引きするように構成することができる。キャニスタ106内の減圧は、創傷ドレッシング112及び創傷114がキャニスタ106と同じ圧力に維持されるように、管110を介して創傷ドレッシング112及び創傷114に移すことができる。
【0069】
特に図2図4を参照すると、例示的な実施形態による、療法装置102をより詳細に図示するブロック図が示されている。療法装置102は、空気圧ポンプ120と、滴下ポンプ122と、弁132と、フィルタ128と、制御装置118とを含むように示されている。空気圧ポンプ120は、(例えば、導管136を介して)除去流体キャニスタ106に流体的に結合することができ、且つキャニスタ106から空気を吸い出すことによってキャニスタ106内を真空引きするように構成することができる。いくつかの実施形態では、空気圧ポンプ120は、順方向と逆方向の両方向に動作するように構成される。例えば、空気圧ポンプ120は、キャニスタ106から空気を吸い出してキャニスタ106内の圧力を減少させるように順方向に動作することができる。空気圧ポンプ120は、キャニスタ106に空気を送り込んでキャニスタ106内の圧力を上昇させるように逆方向に動作することができる。空気圧ポンプ120は、以下により詳細に説明する、制御装置118によって制御することができる。
【0070】
同様に、滴下ポンプ122は、管109を介して滴下流体キャニスタ104に流体的に結合し、且つ管108を介して創傷ドレッシング112に流体的に結合することができる。滴下ポンプ122は、図4に示すように、管109及び管108を通して滴下流体105を送り出すことによって滴下流体105を創傷ドレッシング112及び創傷114に送達するように動作させることができる。滴下ポンプ122は、以下により詳細に説明する、制御装置118によって制御することができる。
【0071】
フィルタ128は、キャニスタ106から吸い出された空気がフィルタ128を通過するように、除去流体キャニスタ106と空気圧ポンプ120との間に(例えば、導管136に沿って)位置決めすることができる。フィルタ128は、液体粒子又は固体粒子が導管136に入って空気圧ポンプ120に達するのを防止するように構成することができる。フィルタ128は、例えば、水性液体及び/又は油性液体が玉状になってフィルタ128の表面に付着するように疎水性及び/又は親油性である細菌フィルタを含み得る。空気圧ポンプ120は、フィルタ128前後の圧力降下があまり大きくならないようにフィルタ128を通る十分な空気流を提供するように(例えば、圧力降下が療法装置102から創傷114への陰圧の印加を実質的に妨げないように)構成することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、療法装置102は、図3Aに示すように、陰圧回路を制御可能に通気するように弁132を動作させる。弁132は、導管136を介して空気圧ポンプ120とフィルタ128とに流体的に接続することができる。いくつかの実施形態では、弁132は、導管136と療法装置102の周囲の環境との間の空気流を制御するように構成される。例えば、弁132は、通気孔134及び導管138を介しての導管136内への空気流を可能にするために開放し、且つ通気孔134及び導管138を介しての導管136内への空気流を防止するために閉鎖することができる。弁132は、以下により詳細に説明する、制御装置118によって開閉することができる。弁132が閉鎖されたときに、空気圧ポンプ120は、図2に示すように、フィルタ128を第1の方向に通る空気流を生じさせることによって陰圧回路内を真空引きすることができる。陰圧回路は、陰圧創傷療法を実施するときに陰圧に維持できるシステム100の任意の構成要素(例えば、導管136、除去流体キャニスタ106、管110、創傷ドレッシング112、及び/又は創傷114)を含み得る。例えば、陰圧回路は、導管136、除去流体キャニスタ106、管110、創傷ドレッシング112、及び/又は創傷114を含み得る。弁132が開放しているときに、療法装置102の周囲の環境からの空気流は、通気孔134及び導管138を介して導管136に入り、陰圧回路内の空所を満たし得る。導管136からキャニスタ106及び陰圧回路内の他の容積内への空気流は、図3Aに示すように、フィルタ128を第1の方向とは反対の第2の方向に通過してもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、療法装置102は、図3Bに示すように、オリフィス158を介して陰圧回路を通気する。オリフィス158は、導管136又は陰圧回路の他の任意の構成要素(例えば、除去流体キャニスタ106、管110、管111、創傷ドレッシング112など)における小さな開口部であってもよく、且つ陰圧回路に空気が既知の速度で漏出することを可能にしてもよい。いくつかの実施形態では、療法装置102は、弁132を動作させるのではなく、オリフィス158を介して陰圧回路を通気する。弁132は、オリフィス158が含まれる任意の実施形態では療法装置102から除外することができる。オリフィス158を介して陰圧回路に空気が漏出する速度は、オリフィス158の形状に応じて、実質的に一定であってもよく又は陰圧の関数として変化してもよい。オリフィス158からの漏出速度が可変である実施形態について、制御装置118は、陰圧と漏出速度との記憶された関係を使用して、陰圧の測定値に基づいてオリフィス158からの漏出速度を算出することができる。オリフィス158からの漏出速度が実質的に一定であるか可変であるかにかかわらず、オリフィス158を介しての陰圧回路への空気の漏出は、図5図9を参照して説明したように、創傷114の容積を推定する際に使用される圧力減衰曲線を生成するために使用することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、療法装置102は、様々なセンサを含む。例えば、療法装置102は、キャニスタ106内の圧力及び/又は創傷ドレッシング112又は創傷114における圧力を測定するように構成された圧力センサ130を含むように示されている。いくつかの実施形態では、療法装置102は、管111内の圧力を測定するように構成された圧力センサ113を含む。管111は、創傷ドレッシング112に接続されてもよく、且つ滴下流体105又は創傷滲出液を導くなどの二次機能なしに、創傷ドレッシング112又は創傷114における圧力を測定するためのみに使用されてもよい。種々の実施形態では、管108、110及び111は、療法装置102を創傷ドレッシング112に接続する単一の管内における物理的に別個の管又は別個の管腔であってもよい。よって、管110は、創傷ドレッシング112又は創傷114に陰圧を適用するように機能する陰圧管腔として説明されてもよく、それに対して、管111は、創傷ドレッシング112又は創傷114における圧力を感知するように構成された感知管腔として説明されてもよい。圧力センサ130及び113は、種々の実施形態において、療法装置102内に位置するか、管108、110及び111に沿った任意の位置に位置決めするか、又は創傷ドレッシング112に位置することができる。圧力センサ130及び/又は113によって記録された圧力測定値は、制御装置118に渡すことができる。制御装置118は、制御装置118(図5図12を参照してより詳細に説明する)によって実施される種々の圧力試験動作及び制御動作への入力として圧力測定値を使用する。
【0075】
制御装置118は、空気圧ポンプ120、滴下ポンプ122、弁132、及び/又は療法装置102の他の制御可能な構成要素を動作させるように構成することができる。いくつかの実施形態では、制御装置118は、陰圧回路に圧力刺激を印加することによって圧力試験手順を実施する。例えば、制御装置118は、弁132に閉鎖するように指示し、且つ陰圧回路内に陰圧を確立するように空気圧ポンプ120を動作させてもよい。陰圧が確立された時点で、制御装置118は、空気圧ポンプ120を作動停止してもよい。制御装置118は、所定時間にわたって弁132を開放させ、次いで、所定時間の経過後に閉鎖させてもよい。制御装置118は、圧力センサ130及び/又は113によって記録された圧力測定値を使用して圧力刺激に対する陰圧回路の動的圧力応答を観測してもよい。動的圧力応答は、例えば、パージ深さパラメータ、リバウンドパラメータ、デルタパラメータ、及び漏出速度パラメータ(図5を参照してより詳細に説明する)を含む様々なパラメータによって特徴付けられてもよい。
【0076】
制御装置118は、観測した動的圧力応答に基づいて創傷114の容積を推定することができる。例えば、制御装置118は、観測したパラメータと陰圧回路の容積及び/又は創傷114の容積との関係を定義する圧力モデルへの入力として、観測したパラメータを適用することができる。モデルは、多項式近似モデル、ニューラルネットワークモデル、又は観測したパラメータを陰圧回路の容積及び若しくは創傷114の容積に関連付ける他の任意のモデルを含み得る。いくつかの実施形態では、圧力モデルは、療法装置102の製造業者によって制御装置118に記憶された既存のモデルである。他の実施形態では、制御装置118は、訓練手順を実施することによってその場で圧力モデルを生成することができる。
【0077】
訓練手順は、既知の容積を有する訓練回路に療法装置102が接続されることを除き、圧力試験手順と同じであってもよい。例えば、創傷ドレッシング112は、創傷114を取り囲む患者の皮膚116にではなく、既知の容積を有する試験装置に適用することができる。制御装置118は、種々の既知の容積を有する種々の訓練回路に圧力刺激を印加することができ、且つ各訓練回路の動的圧力応答を観測してもよい。既知の容積の各々は、圧力刺激に対して異なる動的圧力応答をもたらし得る。次いで、制御装置118は、各訓練回路の既知の容積を対応する動的圧力応答と関連付けることができる。いくつかの実施形態では、制御装置118は、訓練回路の動的圧力応答を使用して、動的圧力応答(例えば、パージ深さ、リバウンド、デルタ、漏出速度など)の観測したパラメータと訓練回路の容積との関係を定義する圧力モデルを生成する。次いで、圧力モデルは、先に説明したように、制御装置118に記憶して、創傷114の容積を推定するために使用することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、制御装置118は、圧力試験手順を実行し、動的圧力応答を観測し、且つ創傷治療中に創傷容積を複数回推定するように構成される。次いで、制御装置118は、創傷治療中の創傷容積の変化に基づいて治癒の進行を決定することができる。いくつかの実施形態では、制御装置118は、推定した創傷容積に基づいて創傷114に送達すべき滴下流体105の体積を決定するように構成される。送達すべき滴下流体105の体積は、創傷114の容積の所定の割合(例えば、20%、50%、80%など)であってもよい。次いで、制御装置118は、決定した体積の滴下流体105を創傷114に送達するように滴下ポンプ122を動作させることができる。制御装置118のこれら及び他の特徴について図5図12を参照してより詳細に説明する。
【0079】
いくつかの実施形態では、療法装置102は、ユーザインターフェース126を含む。ユーザインターフェース126は、1つ又は複数のボタン、ダイヤル、スライダ、キー、又はユーザからの入力を受け取るように構成された他の入力装置を含み得る。ユーザインターフェース126はまた、1つ若しくは複数の表示装置(例えば、LED、LCDディスプレイなど)、スピーカ、触覚フィードバック装置、又はユーザに情報を提供するように構成された他の出力装置を含み得る。いくつかの実施形態では、圧力センサ130及び/又は113によって記録された圧力測定値は、ユーザインターフェース126を介してユーザに提示される。ユーザインターフェース126はまた、制御装置118によって生成された警告を表示することもできる。例えば、制御装置118は、キャニスタ106が検出されない場合に「キャニスタなし」という警告を生成することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、療法装置102は、データを送受信するように構成されたデータ通信インターフェース124(例えば、USBポート、無線送受信機など)を含む。通信インターフェース124は、外部システム又は装置とデータ通信を行うための有線又は無線通信インターフェース(例えば、ジャック、アンテナ、送信機、受信機、送受信機、ワイヤ端末など)を含み得る。種々の実施形態では、通信は、直接通信(例えば、ローカル有線又は無線通信)であってもよく、又は通信ネットワーク(例えば、WAN、インターネット、セルラーネットワークなど)を介した通信であってもよい。例えば、通信インターフェース124は、USBポート又はイーサネットに基づく通信リンク若しくはネットワークを介してデータを送受信するためのイーサネットカード及びポートを含むことができる。別の例では、通信インターフェース124は、無線通信ネットワーク又はセルラ若しくは携帯電話通信送受信機を介して通信するためのWi-Fi送受信機を含むことができる。
【0081】
制御装置
ここで図5を参照すると、例示的な実施形態による、制御装置118をより詳細に図示するブロック図が示されている。制御装置118は、プロセッサ142とメモリ144とを含む処理回路140を含むように示されている。プロセッサ142は、汎用若しくは専用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ若しくは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、処理構成要素の群、又は他の好適な処理構成要素であってもよい。プロセッサ142は、メモリ144に記憶された又は他のコンピュータ可読媒体(例えば、CD-ROM、ネットワークストレージ、リモートサーバなど)から受信されたコンピュータコード又は命令を実行するように構成される。
【0082】
メモリ144は、本開示で説明する種々のプロセスを完了及び/又は促進するためのデータ及び/又はコンピュータコードを記憶するための1つ又は複数の装置(例えば、メモリユニット、メモリ装置、記憶装置など)を含み得る。メモリ144は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハードドライブ記憶装置、一時記憶装置、不揮発性メモリ、フラッシュメモリ、光メモリ、又はソフトウェアオブジェクト及び/若しくはコンピュータ命令を記憶するための他の任意の好適なメモリを含み得る。メモリ144は、データベース構成要素、オブジェクトコード構成要素、スクリプト構成要素、又は、種々の活動をサポートするための他の任意の種類の情報構造及び本開示で説明する情報構造を含み得る。メモリ144は、処理回路140を介してプロセッサ142に通信可能に接続されてもよく、且つ本明細書で説明する1つ又は複数のプロセスを(例えば、プロセッサ142によって)実行するためのコンピュータコードを含み得る。プロセッサ142が、メモリ144に記憶された命令を実行したときに、プロセッサ142は、概して、そのような活動を完了するように制御装置118(より詳細には処理回路140)を構成する。
【0083】
制御装置118は、ポンプ制御装置146と弁制御装置150とを含むように示されている。ポンプ制御装置146は、制御信号を生成してポンプ120~122に提供することによってポンプ120~122を動作させるように構成することができる。ポンプ120~122に提供された制御信号は、ポンプ120~122を作動させるか、作動停止させるか、又はポンプ120~122に可変能力若しくは可変速度(例えば、半分の速度で動作する、最高速度で動作するなど)を達成させることができる。同様に、弁制御装置150は、制御信号を生成して弁132に提供することによって弁132を動作させるように構成することができる。弁132に提供される制御信号は、弁132を開放させるか、閉鎖させるか、又は弁132に指定の中間位置(例えば、1/3の開放、1/2の開放など)を達成させることができる。いくつかの実施形態では、ポンプ制御装置146及び弁制御装置150は、本明細書で説明するプロセスを実行するときに、ポンプ120~122及び弁132を動作させるために、制御装置118の他の構成要素(例えば、試験手順制御装置148、創傷容積推定器156など)によって使用される。
【0084】
いくつかの実施形態では、ポンプ制御装置146は、除去流体キャニスタ106が存在するかどうかを検出するように構成されたキャニスタセンサからの入力を使用する。ポンプ制御装置146は、除去流体キャニスタ106が存在するときにのみ能動的空気圧ポンプ120を作動させるように構成することができる。例えば、ポンプ制御装置146は、キャニスタ106が存在するかどうかを確認することができ、且つキャニスタ106が存在するという判定に応答して空気圧ポンプ120を作動させることができる。しかしながら、キャニスタ106が存在しない場合、ポンプ制御装置146は、空気圧ポンプ120が作動するのを防止してもよい。同様に、ポンプ制御装置146は、滴下流体キャニスタ104が存在するときにのみ能動的滴下ポンプ122を作動させるように構成することができる。例えば、ポンプ制御装置146は、キャニスタ104が存在するかどうかを確認することができ、且つキャニスタ104が存在するという判定に応答して能動的滴下ポンプ122を作動させることができる。しかしながら、キャニスタ104が存在しない場合、ポンプ制御装置146は、滴下ポンプ122が作動するのを防止してもよい。
【0085】
制御装置118は、圧力モニタ152を含むように示されている。圧力モニタ152は、圧力センサ130及び/又は113からのフィードバックを使用して除去流体キャニスタ106内の圧力及び/又は創傷ドレッシング112若しくは創傷114内の圧力を監視するように構成することができる。例えば、圧力センサ130及び/又は113は、圧力測定値を圧力モニタ152に提供してもよい。圧力モニタ152は、圧力測定値を使用して、キャニスタ106内の圧力及び/又は創傷ドレッシング112若しくは創傷114内の圧力をリアルタイムで決定することができる。圧力モニタ152は、モデル生成装置154、ポンプ制御装置146、試験手順制御装置148、及び/又は弁制御装置150に圧力値を、そのような構成要素によって実施されるプロセスを制御する入力として使用されるように、提供することができる。
【0086】
ここで図5及び図6A図6Cを参照すると、制御装置118は、試験手順制御装置148を含むように示されている。試験手順制御装置148は、動的圧力応答を引き起こし観測するために圧力試験手順を実行するように構成することができる。療法装置102が、創傷114を覆って患者の皮膚116に適用された創傷ドレッシング112に接続される場合、試験手順制御装置148は、導管136、除去流体キャニスタ106、管110、創傷ドレッシング112、及び/又は創傷114を含む陰圧回路(未知の容積を有し得る)の動的圧力応答を観測することができる。療法装置102が、既知の容積を有する訓練装置に適用された創傷ドレッシング112に接続される場合、試験手順制御装置148は、導管136、除去流体キャニスタ106、管110、創傷ドレッシング112、及び/又は訓練装置を含む訓練回路の動的圧力応答を観測することができる。
【0087】
特に図6Aを参照すると、例示的な実施形態による、試験手順制御装置148によって実施された受動的圧力試験手順を図示するグラフ200が示されている。試験手順制御装置148は、陰圧回路及び/又は訓練回路内に陰圧を確立するように空気圧ポンプ120を動作させるように構成することができる。陰圧は、療法装置102を取り囲む大気圧と陰圧回路及び/又は訓練回路内の圧力との差(すなわち、大気圧が陰圧回路及び/又は訓練回路内の圧力を超える量)として定義されてもよい。例えば、時間tでは、陰圧は、陰圧回路及び/又は訓練回路内の圧力が療法装置102の周囲の大気圧と等しいことを表す、P(例えば、0mmHg)の値を有するように示されている。
【0088】
時間tでは、試験手順制御装置148は、陰圧回路及び/又は訓練回路内の陰圧を低下させるように空気圧ポンプ120の動作を開始する。陰圧は、時間tにおいて大気圧よりも低いPmmHg(例えば、125mmHg)の陰圧値に達するまで低下し続ける。時間tから時間tの間に、試験手順制御装置148は、陰圧回路及び/又は訓練回路から空気を除去するように空気圧ポンプ120を必要に応じて動作させることによって陰圧をPの値に維持する。次いで、試験手順制御装置148は、陰圧回路及び/又は訓練回路内に陰圧が確立された後に陰圧回路及び/又は訓練回路に圧力刺激を印加してもよい。
【0089】
時間tでは、試験手順制御装置148は、空気圧ポンプ120を作動停止する。陰圧回路及び/又は訓練回路内の陰圧の大きさは、時間tで始まり、弁132が閉鎖されている間の陰圧回路及び/又は訓練回路への空気の漏出に起因して減少し得る。弁132が閉鎖されている間に陰圧が減少する速度は、時間tから時間tの間の線202の傾きによって定められる。試験手順制御装置148は、時間tから時間tの間の線202の傾きを決定してもよく、且つこの傾きを漏出速度パラメータの値として記憶してもよい。漏出速度パラメータは、陰圧回路及び/又は訓練回路の動的圧力応答を特徴付けるパラメータの1つであってもよい。
【0090】
時間tでは、試験手順制御装置148は、陰圧回路及び/又は訓練回路に圧力刺激を印加する。圧力刺激を印加することは、陰圧回路及び/又は訓練回路を制御可能に通気するように弁132を動作させることを含み得る。例えば、試験手順制御装置148は、陰圧回路及び/又は訓練回路内への空気流を可能にするために、時間tにおいて弁132を開放させてもよい。試験手順制御装置148は、所定時間にわたって(すなわち、時間tから時間tまで)弁132を開放状態に保ってもよく、且つ所定時間の経過後に(すなわち、時間tにおいて)弁132を閉鎖してもよい。
【0091】
時間tでは、試験手順制御装置148は、圧力刺激に対する陰圧回路及び/又は訓練回路の動的圧力応答を観測してもよい。動的圧力応答は、パージ深さパラメータ、リバウンドパラメータ、及びデルタパラメータを含むいくつかの追加のパラメータによって特徴付けられてもよい。パージ深さパラメータは、弁132が開放される前の陰圧Pの測定値と弁132が開放している間の陰圧Pの測定値との差(すなわち、パージ深さ=P-P)として定義されてもよい。リバウンドパラメータは、弁132が閉鎖された後の陰圧Pの測定値と弁132が開放している間の陰圧Pの測定値との差(すなわち、リバウンド=P-P)として定義されてもよい。デルタパラメータは、弁132が開放される前の陰圧Pの測定値と弁132が閉鎖された後の陰圧Pの測定値との差(すなわち、デルタ=P-P)として定義されてもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、試験手順制御装置148は、弁132が閉鎖されたときに陰圧が閾値Pに達するまで圧力刺激をさらに1回又は複数回印加する。圧力刺激の各印加の間に、試験手順制御装置148は、別の所定時間にわたって(すなわち、時間tから時間tまで及び時間tから時間tまで)待機してもよい。例えば、試験手順制御装置148は、時間tから時間tまでの所定時間にわたって待機してもよく、且つ時間tにおいて圧力刺激を再び印加してもよい。試験手順制御装置148は、陰圧回路及び/又は訓練回路内への空気流を可能にするために、時間tにおいて弁132を開放させてもよい。試験手順制御装置148は、所定時間にわたって(すなわち、時間tから時間tまで)弁132を開放状態に保ってもよく、且つ所定時間の経過後に(すなわち、時間tにおいて)弁132を閉鎖してもよい。時間tでは、試験手順制御装置148は、圧力刺激の2回目の印加に応答して、パージ深さパラメータ(すなわち、パージ深さ=P-P)、リバウンドパラメータ(すなわち、リバウンド=P-P)、及びデルタパラメータ(すなわち、デルタ=P-P)の値を記憶してもよい。このプロセスは、陰圧回路及び/又は訓練回路内の陰圧の値が時間tにおいて閾圧力値Pに達するまで繰り返すことができる。
【0093】
特に図6Bを参照すると、例示的な実施形態による、試験手順制御装置148によって実施された能動的試験手順を図示するグラフ210が示されている。試験手順制御装置148は、陰圧回路及び/又は訓練回路内に陰圧を確立するように空気圧ポンプ120を動作させるように構成することができる。陰圧は、療法装置102を取り囲む大気圧と陰圧回路及び/又は訓練回路内の圧力との差(すなわち、大気圧が陰圧回路及び/又は訓練回路内の圧力を超える量)として定義されてもよい。例えば、時間tでは、陰圧は、陰圧回路及び/又は訓練回路内の圧力が療法装置102の周囲の大気圧と等しいことを表す、P(例えば、0mmHg)の値を有するように示されている。
【0094】
図6Bに図示する能動的試験手順は、図6Aに図示する受動的試験手順と実質的に同様であってもよい。しかしながら、能動的試験手順では、制御装置148は、陰圧回路及び/又は訓練回路への高い空気漏出速度を補償するために、弁132が閉鎖されている間(例えば、時間tからtの間、時間tからtの間、及び時間tからtの間)の空気圧ポンプ120の短時間の制御された作動によって空気圧ポンプ120を動作させるように構成することができる。グラフ210では、線212は、陰圧回路及び/又は訓練回路内の圧力を時間の関数として表す。弁132が閉鎖されている間の陰圧回路及び/又は訓練回路への空気の実際の漏出速度は、線分216の傾きによって表され、それに対して、線214の傾きは、時間tからtの間の平均の又は補助を伴う漏出速度を表す。平均の又は補助を伴う漏出速度が
と等しくなるように、空気圧ポンプ120の短時間の制御された作動によって時間tからtの間に陰圧回路及び/又は訓練回路から空気の一部が除去される(制御された各作動によって陰圧を上昇させる)。同様の陰圧調整は、時間tからtの間に及び時間tからtの間に行うことができる。このようにして、弁132が閉鎖されている間に実際の高い漏出速度を補償するために、陰圧回路及び/又は訓練回路への空気の流入を緩和することができる。
【0095】
特に図6C図6Dを参照すると、例示的な実施形態による、試験手順制御装置148によって実施された制御されない試験手順を図示するグラフ220及び230が示されている。図6A及び図6Bを参照して説明した受動的試験手順及び能動的試験手順とは異なり、制御されない試験手順は、弁132を利用せず、療法装置102が弁132の代わりにオリフィス158を含む実施形態のために実施することができる。グラフ220は、オリフィス158が陰圧回路及び/又は訓練回路に空気を可変の漏出速度で漏出させたときの制御されない試験手順を図示しており、それに対して、グラフ220は、オリフィス158が陰圧回路及び/又は訓練回路に空気を実質的に一定の漏出速度で漏出させたときの制御されない試験手順を図示している。
【0096】
両方の制御されない試験手順では、時間tにおいて、試験手順制御装置148は、陰圧回路及び/又は訓練回路内の圧力を低下させるように空気圧ポンプ120の動作を開始する。陰圧は、時間tにおいて大気圧よりも低いPmmHg(例えば、125mmHg)の陰圧値に達するまで低下し続ける。
【0097】
時間tでは、試験手順制御装置148は、空気圧ポンプ120を作動停止する。陰圧回路及び/又は訓練回路内の陰圧の大きさは、時間tで始まり、オリフィス158を介しての陰圧回路及び/又は訓練回路への空気の漏出に起因して減少し得る。陰圧が減少する速度は、時間tから時間tの間の線222の傾きによって定められる。グラフ220では、tからtの間で時間が経過するにつれてゼロに近づく線222の傾きによって示すように、オリフィス158を介しての陰圧回路及び/又は訓練回路への空気の漏出が、時間t付近でより速やかに、時間t付近でよりゆっくりと生じる。グラフ230では、オリフィス158を介しての陰圧回路及び/又は訓練回路への空気の漏出が、略直線232で示すように、実質的に一定の速度で生じる。いずれのシナリオでも、試験手順制御装置148は、時間tから時間tの間の線222の傾きを1回又は複数回決定してもよく、且つこの傾きを漏出速度パラメータの値として記憶してもよい。代替的に、漏出速度パラメータは、陰圧がPからPまで低下するのに必要とされる時間として定義することができ、且つtからtを減算すること(すなわち、t-t)によって算出することができる。漏出速度パラメータは、陰圧回路及び/又は訓練回路の動的圧力応答を特徴付けるパラメータの1つであってもよい。
【0098】
試験手順制御装置148は、種々の実施形態において、受動的試験手順、能動的試験手順、及び/又は制御されない試験手順を実行するように構成することができる。受動的試験手順は、ほとんどの条件下で好適であり得、且つ試験手順制御装置148によって使用される主要な試験手順又はデフォルトの試験手順であってもよい。しかしながら、能動的試験手順は、漏出速度が高い場合に好適であり得、且つ実際の漏出速度が所定の漏出速度閾値を超えるという判定に応答して、試験手順制御装置148によって使用されてもよい。制御されない試験手順は、弁132がオリフィス158に置き換えられる実施形態に好適であり得る。
【0099】
漏出速度は、様々な方法で決定することができる。いくつかの実施形態では、漏出速度は、陰圧回路内に所定の陰圧を達成するように空気圧ポンプ120を動作させて圧力減衰を経時的に測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、漏出速度は、空気圧ポンプ120の効率又は空気圧ポンプ120によって消費される電力に基づいて決定される。例えば、ポンプ制御装置146は、先に説明したように、陰圧を設定値に維持するために又は所定の漏出速度閾値を超える速度で陰圧が低下するのを防止するために、空気圧ポンプ120の短時間の制御された作動を実施するように構成することができる。空気圧ポンプ120のこれらの短時間の制御された作動の数又は頻度は、漏出速度に依存し、漏出速度を決定するために使用することができる。同様に、これらの短時間の制御された作動を実施するために空気圧ポンプ120によって消費される電力は、漏出速度に依存し、漏出速度を決定するために使用することができる。例えば、制御装置118は、所与の期間内の空気圧ポンプ120の短時間の制御された作動の数を記録し、短時間の制御された作動の頻度若しくは間隔を測定し、空気圧ポンプ120の負荷サイクル(例えば、空気圧ポンプ120が動作している時間の割合)を測定し、又は短時間の制御された作動を実施するために空気圧ポンプ120によって消費された電力量を測定するように構成することができる。これらの測定基準のいずれかは、ポンプ効率を特徴付けてもよく、且つポンプ効率パラメータとして記憶することができる。制御装置118は、記憶された式又は所定の関係を使用して、漏出速度をポンプ効率の関数として算出することができる。
【0100】
再び図5を参照すると、制御装置118は、モデル生成装置154を含むように示されている。モデル生成装置154は、動的圧力応答のパラメータと創傷114の容積との関係を定義するモデルを生成するように構成することができる。モデルを生成するために、モデル生成装置154は、いくつかの異なる既知の容積(例えば、50cc、100cc、200cc、300ccなど)を有するいくつかの異なる訓練回路について上で概説した圧力試験手順を試験手順制御装置148に実行させることができる。既知の容積を有する訓練回路において圧力試験手順が実施される場合、圧力試験手順は、訓練手順と呼ばれることがある。訓練手順の各実施は、既知の容積を有する訓練回路に圧力刺激を印加することと、圧力刺激に対する訓練回路の動的圧力応答を観測することと、既知の容積を訓練回路の動的圧力応答と関連付けることとを含み得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、モデル生成装置154は、既知の容積毎に動的圧力応答(すなわち、漏出速度、パージ深さ、リバウンド、デルタなど)のパラメータの値を記録し、且つそれらの値を既知の容積と関連付ける。パラメータの値及び既知の容積は、モデルを構築するために使用できる1組の訓練データを形成する。パラメータの値は1組のモデル入力訓練データを形成し、それに対して、既知の容積は1組のモデル出力訓練データを形成する。モデル生成装置154は、様々なモデル生成技術のいずれかを使用して、パラメータの値を対応する容積に1組の訓練データとして関連付けるモデル(すなわち、数学的モデル)を構築することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、モデル生成装置154は、パラメータの値を対応する容積に関連付けるために多項式近似モデルを作成する。多項式近似モデルを生成するために、モデル生成装置154は、様々な回帰技術のいずれかを使用して多項式回帰などの曲線適合プロセスを実施することができる。モデル生成装置154によって使用できる回帰技術の例としては、最小二乗法、通常の最小二乗法、線形最小二乗法、部分最小二乗法、全最小二乗法、一般化最小二乗法、重み付け最小二乗法、非線形最小二乗法、非負最小二乗法、反復再重み付け最小二乗法、リッジ回帰、最小絶対偏差、ベイズ線形回帰、ベイズ多変量線形回帰などが挙げられる。
【0103】
他の実施形態では、モデル生成装置154は、パラメータの値を対応する容積に関連付けるためにニューラルネットワークモデルを作成する。ニューラルネットワークモデルを生成するために、モデル生成装置154は、機械学習プロセスを実施することができる。モデル生成装置154によって使用できる機械学習技術の例としては、決定木学習、相関ルール学習、人工ニューラルネットワーク、深層学習、帰納論理プログラミング、サポートベクターマシン、クラスタリング、ベイジアンネットワーク、強化学習、表現学習、類似度及び計量学習、スパース辞書学習、遺伝的アルゴリズム、ルールベース機械学習などが挙げられる。
【0104】
ここで図7Aを参照すると、例示的な実施形態による、いくつかの圧力減衰曲線252、254、256、及び258を図示するグラフ250が示されている。圧力減衰曲線252~258の各々は、既知の容積に対応し、陰圧回路及び/又は訓練回路内の圧力を対応する容積に対する時間の関数として表す。例えば、圧力減衰曲線252は300ccの容積に対応し、圧力減衰曲線254は200ccの容積に対応し、圧力減衰曲線256は100ccの容積に対応し、圧力減衰曲線258は50ccの容積に対応する。圧力減衰曲線252~258の各々は、上で説明したモデリング技術のいずれかを使用して、モデル生成装置154によって作成されてもよい。例えば、圧力減衰曲線252~258は、既知の容積毎に圧力試験手順を実行して既知の容積毎に圧力減衰を経時的にプロットすることによって作成することができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、制御装置118は、創傷114の容積を推定するときに、圧力減衰曲線252~258を使用して、測定した圧力値を対応する容積に変換する。例えば、制御装置118は、陰圧回路の圧力を測定し、圧力が測定された時間を特定することができる。制御装置118は、圧力減衰曲線252~258の間を補間して、測定した圧力と時間の対に対応する補間圧力値を決定することができる。例えば、時間tでは、制御装置118は、Pの圧力値を観測してもよい。時間tと圧力Pとの組み合わせは、グラフ250内に点260を定める。点260は、圧力減衰曲線252と圧力減衰曲線254とのほぼ中間にある。制御装置118は、圧力減衰曲線252と254との間を補間して、陰圧回路の容積が、圧力減衰曲線252に対応する既知の容積と圧力減衰曲線254に対応する既知の容積とのほぼ中間の容積(約250cc)であると推定することができる。他の実施形態では、制御装置118は、圧力モデルへの入力として動的圧力応答の観測したパラメータを適用することによって、創傷114の容積を推定する。
【0106】
ここで図7Bを参照すると、例示的な実施形態による、補助なしの圧力減衰曲線264と補助を伴う圧力減衰曲線262とを図示するグラフ260が示されている。グラフ260では、補助なしの圧力減衰曲線264と補助を伴う圧力減衰曲線262の両方は、同じ容積の陰圧回路及び/又は訓練回路に対応する。補助なしの圧力減衰曲線264は、図6Aに示す受動的試験手順の間(すなわち、高い漏出速度を補償するように空気圧ポンプ120を動作させていないとき)の圧力減衰を図示している。逆に、補助を伴う圧力減衰曲線262は、能動的試験手順の間の(すなわち、高い漏出速度を補償するように空気圧ポンプ120を動作させたときの)圧力減衰を図示している。図6Bを参照して述べたように、能動的試験手順の間に空気圧ポンプ120を動作させることによって圧力減衰が軽減され、それゆえ、補助なしの圧力減衰曲線264に対して補助を伴うより緩やかな圧力減衰曲線262が得られる。
【0107】
再び図5を参照すると、制御装置118は、創傷容積推定器156を含むように示されている。創傷容積推定器156は、圧力センサ130及び/又は113によって収集された圧力測定値に基づいて創傷114の容積を推定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、創傷容積推定器156は、圧力試験手順を実施することによって創傷114の容積を推定する。圧力試験手順は、陰圧回路に圧力刺激を印加することと、圧力刺激に対する陰圧回路の動的圧力応答を観測することとを含み得る。上で説明したように、陰圧回路は、陰圧創傷療法を実施するときに陰圧に維持できるシステム100の任意の構成要素(例えば、導管136、除去流体キャニスタ106、管110、創傷ドレッシング112、及び/又は創傷114)を含み得る。
【0108】
圧力試験手順を実施するために、創傷容積推定器156は、弁132に閉鎖するように指示し、且つ陰圧回路内に陰圧を確立するように空気圧ポンプ120を動作させてもよい。陰圧が確立された時点で、創傷容積推定器156は、空気圧ポンプ120を作動停止してもよい。創傷容積推定器156は、所定時間にわたって弁132を開放させ、次いで、所定時間の経過後に閉鎖させてもよい。創傷容積推定器156は、圧力センサ130及び/又は113によって記録された圧力測定値を使用して圧力刺激に対する陰圧回路の動的圧力応答を観測してもよい。動的圧力応答は、先に説明したように、例えば、パージ深さパラメータ、リバウンドパラメータ、デルタパラメータ、及び漏出速度パラメータを含む様々なパラメータによって特徴付けられてもよい。
【0109】
創傷容積推定器156は、観測した動的圧力応答に基づいて創傷114の容積を推定することができる。例えば、創傷容積推定器156は、観測したパラメータと陰圧回路の容積及び/又は創傷114の容積との関係を定義する圧力モデルへの入力として、観測したパラメータを適用することができる。いくつかの実施形態では、圧力モデルは、モデル生成装置154によって(例えば、訓練回路を使用して収集された訓練データに基づいて訓練手順を実施することによって)作成されたモデルである。モデルは、多項式近似モデル、ニューラルネットワークモデル、又は観測したパラメータを陰圧回路の容積及び/若しくは創傷114の容積に関連付ける他の任意のモデルを含み得る。他の実施形態では、圧力モデルは、療法装置102の製造業者によってメモリ144に記憶された既存のモデルである。
【0110】
いくつかの実施形態では、創傷容積推定器156は、圧力試験手順を実行し、動的圧力応答を観測し、且つ創傷治療中に創傷容積を複数回推定するように構成される。次いで、創傷容積推定器156は、創傷治療中の創傷容積の変化に基づいて治癒の進行を決定することができる。いくつかの実施形態では、創傷容積推定器156は、推定した創傷容積に基づいて創傷114に送達すべき滴下流体105の体積を決定するように構成される。送達すべき滴下流体105の体積は、創傷114の容積の所定の割合(例えば、20%、50%、80%など)であってもよい。次いで、創傷容積推定器156は、決定した体積の滴下流体105を創傷114に送達するように滴下ポンプ122を動作させることができる。
【0111】
フロー図
ここで図8を参照すると、例示的な実施形態による、圧力モデルを生成するためのプロセス300のフローチャートが示されている。プロセス300は、訓練回路及び/又は陰圧回路の動的圧力応答を特徴付けるモデルを作成するために、療法装置102の1つ又は複数の構成要素によって実施することができる。例えば、プロセス300は、制御装置118、空気圧ポンプ120、弁132、並びに/又は圧力センサ130及び/若しくは113によって実施することができる。いくつかの実施形態では、プロセス300は、試験手順制御装置148とモデル生成装置154とによって実行される。
【0112】
プロセス300は、既知の容積を有する訓練回路に圧力刺激を印加すること(ステップ302)を含むように示されている。訓練回路は、療法装置102の1つ若しくは複数の構成要素(例えば、導管136、除去流体キャニスタ106など)及び/又はシステム100の他の構成要素(例えば、管110、創傷ドレッシング112)を含み得る。創傷治療条件下で、創傷ドレッシング112は通常、創傷114を取り囲む患者の皮膚116に適用される。しかしながら、訓練回路は、創傷114を既知の容積を有する訓練装置に置き換えてもよい。ステップ302は、弁132に閉鎖するように指示することと、訓練回路内に陰圧を確立するように空気圧ポンプ120を動作させることとを含み得る。陰圧が確立された時点で、空気圧ポンプ120が作動停止されてもよい。ステップ302は、所定時間にわたって弁132を開放させ、次いで、所定時間の経過後に弁132を閉鎖することを含み得る。
【0113】
プロセス300は、圧力刺激に対する訓練回路の動的圧力応答を観測すること(ステップ304)と、訓練回路の既知の容積を動的圧力応答と関連付けること(ステップ306)とを含むように示されている。ステップ304は、圧力センサ130及び/又は113によって記録された圧力測定値を使用して訓練回路の圧力を経時的に監視することを含み得る。動的圧力応答は、先に説明したように、例えば、パージ深さパラメータ、リバウンドパラメータ、デルタパラメータ、及び漏出速度パラメータを含む様々なパラメータによって特徴付けられてもよい。ステップ306は、動的圧力応答のパラメータの値を入力訓練データとして記憶することと、訓練回路の既知の容積を入力訓練データに対応する出力訓練データとして記憶することとを含み得る。
【0114】
プロセス300は、全ての容積が試験されたかどうかを判定すること(ステップ308)を含むように示されている。全ての容積が試験されているわけではない(つまり、ステップ308の結果が「いいえ」である)場合、療法装置102が接続されている訓練装置を、異なる既知の容積を有する異なる訓練装置に置き換えることができる。次いで、圧力刺激を印加して既知の容積毎に訓練回路の動的圧力応答を観測するために、圧力刺激を印加してステップ302~306を繰り返すことができる。動的圧力応答パラメータの各組は、入力訓練データとして記憶することができ、且つ各組及び対応する既知の容積は、出力訓練データとして記憶することができる。
【0115】
全ての容積が試験された(つまり、ステップ308の結果が「はい」であった)時点で、プロセス300は、圧力モデルの生成(ステップ310)に進み得る。ステップ310は、様々なモデル生成技術のいずれかを使用して、動的圧力応答パラメータの値を対応する容積に1組の訓練データとして関連付けるモデル(すなわち、数学的モデル)を構築することを含み得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、ステップ310において生成されたモデルは、多項式近似モデルである。ステップ310は、様々な回帰技術のいずれかを使用して多項式回帰などの曲線適合プロセスを実施することを含み得る。ステップ310で使用できる回帰技術の例としては、最小二乗法、通常の最小二乗法、線形最小二乗法、部分最小二乗法、全最小二乗法、一般化最小二乗法、重み付け最小二乗法、非線形最小二乗法、非負最小二乗法、反復再重み付け最小二乗法、リッジ回帰、最小絶対偏差、ベイズ線形回帰、ベイズ多変量線形回帰などが挙げられる。
【0117】
いくつかの実施形態では、ステップ310において生成されたモデルは、ニューラルネットワークモデルである。ステップ310は、様々な機械学習技術のいずれかを使用して、動的圧力応答パラメータの値を対応する容積に1組の訓練データとして関連付けるニューラルネットワークモデルを生成することを含み得る。ステップ310で使用できる機械学習技術の例としては、決定木学習、相関ルール学習、人工ニューラルネットワーク、深層学習、帰納論理プログラミング、サポートベクターマシン、クラスタリング、ベイジアンネットワーク、強化学習、表現学習、類似度及び計量学習、スパース辞書学習、遺伝的アルゴリズム、ルールベース機械学習などが挙げられる。次いで、圧力モデルは、創傷114の容積を推定する際に使用されるように記憶することができる。
【0118】
ここで図9を参照すると、例示的な実施形態による、創傷の容積を推定するためのプロセス400のフローチャートが示されている。プロセス400は、創傷114の容積を推定するために、療法装置102の1つ又は複数の構成要素によって実施することができる。例えば、プロセス400は、制御装置118、空気圧ポンプ120、弁132、並びに/又は圧力センサ130及び/若しくは113によって実施することができる。いくつかの実施形態では、プロセス400は、試験手順制御装置148と創傷容積推定器156とによって実行される。
【0119】
プロセス400は、未知の容積を有する陰圧回路に圧力刺激を印加すること(ステップ402)を含むように示されている。陰圧回路は、療法装置102の1つ若しくは複数の構成要素(例えば、導管136、除去流体キャニスタ106など)及び/又はシステム100の他の構成要素(例えば、管110、創傷ドレッシング112、創傷114)を含み得る。創傷治療条件下で、創傷ドレッシング112は、創傷114を取り囲む患者の皮膚116に適用されてもよい。よって、創傷114の容積は、陰圧回路の一部を形成する。ステップ402は、弁132に閉鎖するように指示することと、陰圧回路内に陰圧を確立するように空気圧ポンプ120を動作させることとを含み得る。陰圧が確立された時点で、空気圧ポンプ120が作動停止されてもよい。ステップ402は、所定時間にわたって弁132を開放させ、次いで、所定時間の経過後に弁132を閉鎖することを含み得る。いくつかの実施形態では、ステップ402は、図6A図6Bを参照して説明したように、受動的試験手順及び/又は能動的試験手順を実行することを含む。
【0120】
プロセス400は、圧力刺激に対する陰圧回路の動的圧力応答を観測すること(ステップ404)、動的圧力応答を特徴付けるパラメータについての値を決定すること(ステップ406)とを含むように示されている。ステップ404は、圧力センサ130及び/又は113によって記録された圧力測定値を使用して陰圧回路の圧力を経時的に監視することを含み得る。動的圧力応答は、先に説明したように、例えば、パージ深さパラメータ、リバウンドパラメータ、デルタパラメータ、及び漏出速度パラメータを含む様々なパラメータによって特徴付けられてもよい。ステップ406は、動的圧力応答のパラメータの値を記憶することを含み得る。
【0121】
プロセス400は、創傷容積をパラメータの関数として定義する圧力応答モデルへの入力としてパラメータの値を適用すること(ステップ408)を含むように示されている。いくつかの実施形態では、圧力応答モデルは、プロセス300を実施することによって(例えば、訓練回路を使用して収集された訓練データを使用して回帰プロセス又は機械学習プロセスを実施することによって)作成されたモデルである。モデルは、多項式近似モデル、ニューラルネットワークモデル、又は観測したパラメータを陰圧回路の容積及び若しくは創傷114の容積に関連付ける他の任意のモデルを含み得る。
【0122】
プロセス400は、モデルの出力に基づいて創傷の容積を推定すること(ステップ410)を含むように示されている。いくつかの実施形態では、圧力応答モデルの出力は、創傷114の推定容積である。よって、圧力応答モデルの出力は、推定した創傷容積として使用することができる。他の実施形態では、圧力応答モデルの出力は、陰圧回路の推定容積である。圧力応答モデルの出力が陰圧回路の推定容積である場合、ステップ410は、創傷114の推定容積を特定するために陰圧回路の他の構成要素の既知の容積を減算することを含み得る。例えば、ステップ410は、残りの唯一の容積が創傷114の容積となるように導管136、除去流体キャニスタ106、管110、及び/又は創傷ドレッシング112の既知の容積を減算することを含み得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、陰圧回路の一部を形成する除去流体キャニスタ106の容積は、キャニスタ106内の空気の体積に制限される。キャニスタ106内の空気の体積は、キャニスタ106内の除去流体107の液面に基づいて変化し得る。いくつかの実施形態では、除去流体キャニスタ106は、キャニスタ106内の除去流体107の液面を記録するように動作するセンサ(例えば、液面センサ、重量センサなど)を含む。次いで、除去流体107の観測した液面は、キャニスタ106内の空気の体積を推定するために使用することができる。他の実施形態では、キャニスタ106内の空気の体積は、デッドスペース検出プロセスを実行することによって推定することができる。キャニスタ106内の空気の体積を推定するために使用できるデッドスペース検出プロセスの例が、2017年10月26日に出願された米国仮特許出願第62/577,579号明細書で詳細に説明されており、この明細書の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
ここで図10を参照すると、例示的な実施形態による、治癒の進行を経時的に監視するためのプロセス500のフローチャートが示されている。プロセス500は、創傷114の容積に基づいて治癒の進行を評価するために、療法装置102の1つ又は複数の構成要素によって実施することができる。例えば、プロセス500は、制御装置118、空気圧ポンプ120、弁132、並びに/又は圧力センサ130及び/若しくは113によって実施することができる。
【0125】
プロセス500は、創傷治療中に創傷容積を複数回推定するために圧力試験手順を実行すること(ステップ502)を含むように示されている。ステップ502は、創傷治療中にプロセス400を複数回(例えば1日1回)実施することを含み得る。プロセス400が実施される度に、創傷114の容積が推定されてもよい。創傷容積の各推定値は、推定値が取得された時間と共に記憶することができる。時間と推定創傷容積の対は、療法装置102のメモリにデータ点として記憶することができ、且つ/又は(例えば、通信インターフェース124若しくはユーザインターフェース126を介して)療法装置102の出力としてユーザに提示することができる。いくつかの実施形態では、推定した創傷容積は、図11に示すように、時間の関数としてプロットすることができる。
【0126】
プロセス500は、創傷治療中の創傷容積の変化に基づいて治癒の進行を決定すること(ステップ504)を含むように示されている。ステップ504は、創傷容積の変化を特定するために、創傷容積の現在の推定値を創傷容積の1つ又は複数の以前の推定値と比較することを含み得る。いくつかの実施形態では、ステップ504は、創傷114が治癒している速度を経時的な創傷容積の変化に基づいて決定することを含む。いくつかの実施形態では、ステップ504は、一連の創傷容積推定値に基づいて、創傷114が完全に治癒される時間を外挿又は予測することを含む。例えば、ステップ504は、ステップ502において取得された一連の創傷容積推定値に基づいて、推定した創傷容積がゼロ(又は別の閾値)に達する時間を予測することを含み得る。
【0127】
ここで図11図12を参照すると、例示的な実施形態による、創傷容積推定値の適用を図示するグラフ600及びフローチャート700が示されている。制御装置118は、推定した創傷容積を使用して創傷114に送達すべき滴下流体105の体積を算出することができる(ステップ702)。いくつかの実施形態では、制御装置118は、推定した創傷容積に流体滴下係数を乗じることによって創傷114に送達すべき滴下流体105の体積を算出する。流体滴下係数は、滴下流体105の算出した体積が創傷114の容積未満となるように1未満(すなわち、0から1の間)であってもよい。いくつかの実施形態では、流体滴下係数は、約0.2~約0.8である。しかしながら、流体滴下係数は、種々の代替的な実施形態において任意の値を有することができると考えられる。
【0128】
グラフ600では、線602は創傷114の推定容積を時間の関数として表し、それに対して、線604は創傷114に経時的に送達すべき滴下流体105の算出した体積を表す。時間tでは、創傷114の推定容積はVである。時間tでの推定した創傷容積Vに流体滴下係数F(例えば、F=0.8)を乗じて、時間tにおいて創傷114に送達すべき滴下流体105 Vの体積を算出することができる(つまり、V*F=V)。創傷114が治癒するにつれて、創傷114の推定容積が減少して、時間tにおいてVの値に達する。時間tでの推定した創傷容積Vに流体滴下係数Fを乗じて、時間tにおいて創傷114に送達すべき滴下流体105 Vの体積を算出することができる(つまり、V*F=V)。
【0129】
次いで、制御装置118は、算出した体積の滴下流体105を創傷114に送達するようにポンプを動作させることができる(ステップ704)。ステップ704は、滴下流体キャニスタ104から滴下流体105を引き出して管109及び108を介して滴下流体105を創傷114に送達するように滴下ポンプ122を動作させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、算出した体積の滴下流体105はまた、空気圧ポンプ120の動作を制御するためにも使用される。例えば、制御装置118は、管110を介して創傷114からその体積の滴下流体105を除去するように空気圧ポンプ120を動作させることができる。空気圧ポンプ120が動作する時間量は、創傷114に送達された滴下流体105の体積の関数であってもよい。
【0130】
創傷療法グラフ
ここで図13を参照すると、例示的な実施形態による、創傷療法プロセスのいくつかの段階を図示するグラフ800が示されている。図13に図示する創傷療法プロセスは、先に説明したように、療法装置102の1つ又は複数の構成要素によって実施することができる。線802は、創傷療法プロセスの各段階における陰圧回路内の陰圧を表す。
【0131】
時間tでは、療法装置102が、時間tからtの間に生じる初期引き下げ段階804の間に陰圧回路内の陰圧を低下させるように空気圧ポンプ120の動作を開始する。時間tでは、陰圧回路内の陰圧が、大気圧よりも低い約125mmHgに達し、空気圧ポンプ120が作動停止される。
【0132】
時間tからtの間では、密封性確認段階806の間に圧力センサ130及び/又は113からの測定値を使用して陰圧回路内の陰圧が監視される。時間tからtの間の実質的な圧力の変化は、創傷ドレッシング112と患者の皮膚との間のシールが気密でないことを表し得、それに対して、時間tからtの間の実質的に一定の圧力は、創傷ドレッシング112が患者の皮膚に適切に封着されていることを表し得る。
【0133】
時間tでは、陰圧回路内の陰圧が大気圧よりも低い約200mmHgまで低下するまで、空気圧ポンプ120を作動させる。200mmHgの陰圧に達したときに、空気圧ポンプ120が作動停止され、創傷容積決定段階808が開始される。空気圧ポンプ120は、陰圧を約200mmHgに維持し且つ陰圧回路への空気の漏出を補償するように、段階808の間に間欠的に作動させてもよい。
【0134】
時間tでは、空気圧ポンプ120が作動停止され、漏出決定段階810が開始する。時間tからtの間に、陰圧回路に空気が漏出する速度を決定するために、陰圧回路内の陰圧が監視される。時間tでは、約200mmHgに戻るように陰圧を低下させるように空気圧ポンプ120が再び作動される。空気圧ポンプ120は、陰圧を約200mmHgに維持し且つ陰圧回路への空気の漏出を補償するように、時間tからtの間に間欠的に作動させてもよい。
【0135】
時間tでは、空気圧ポンプ120が作動停止され、創傷容積決定段階812が開始する。創傷容積決定段階812の間に、療法装置102は、図6A図6Dを参照して説明した圧力試験手順の1つ又は複数を実施してもよい。グラフ200、210、220及び230に示す時間範囲は、完全にグラフ800における時間tからtの間に生じ得る。
【0136】
時間tでは、空気圧ポンプ120が作動され、滴下段階814のための引き下げ中に陰圧が大気圧よりも低い約125mmHgまで低下する。時間tにおいて約125mmHgの陰圧に達したときに、空気圧ポンプ120が作動停止される。空気圧ポンプ120は、陰圧を約125mmHgに維持し且つ陰圧回路への空気の漏出を補償するように、時間tからtの間に間欠的に作動させてもよい。時間tからtの間に、滴下流体105は創傷114に送達されてもよい。
【0137】
例示的な実施形態の構成
種々の例示的な実施形態に示すようなシステム及び方法の構築及び配置は、例示的なものに過ぎない。少数の実施形態のみが本開示に詳述されているが、多くの修正(例えば、種々の要素のサイズ、寸法、構造、形状、及び比率、パラメータ値、取り付け配置、材料の使用量、色、向きなどにおける変更)が可能である。例えば、要素の位置を逆にするか又は別様に変更することができ、且つ別個の要素の性質又は数を改変又は変更することができる。よって、そのような全ての修正は、本開示の範囲内に含まれるように意図されている。任意の工程又は方法ステップの順番又は順序は、代替的な実施形態に従って変更又は再順序付けすることができる。本発明の範囲から逸脱することなく、他の置換、修正、変更、及び省略を、例示的な実施形態の設計、動作条件及び配置において行うことができる。
【0138】
本開示は、種々の動作を遂行するための方法、システム及び任意の機械可読媒体上のプログラム製品を考慮している。本開示の実施形態は、既存のコンピュータプロセッサを使用して、この若しくは別の目的のために組み込まれた、適切なシステムのための専用コンピュータプロセッサによって、又は、配線接続されたシステムによって実現することができる。本開示の範囲内の実施形態は、機械実行可能命令若しくはデータ構造を搬送するか又は記憶するための機械可読媒体を含むプログラム製品を含む。そのような機械可読媒体は、汎用若しくは専用コンピュータによって又はプロセッサを備えた他の機械によってアクセスできる任意の利用可能な媒体とすることができる。例として、そのような機械可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROM若しくは他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置若しくは他の磁気記憶装置、或いは、機械実行可能命令若しくはデータ構造の形態の所望のプログラムコードを搬送若しくは記憶するために使用でき且つ汎用若しくは専用コンピュータによって又はプロセッサを備えた他の機械によってアクセスできる他の任意の媒体を含むことができる。上記の組み合わせも機械可読媒体の範囲内に含まれる。機械実行可能命令は、例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は専用処理機に、ある特定の機能又は機能群を実行させる命令及びデータを含む。
【0139】
図は方法ステップの特定の順序を示しているが、ステップの順序は、描かれている順序とは異なる場合がある。また、2つ以上のステップを同時に又は部分的に同時に実施することができる。そのような変更は、選択されたソフトウェアシステム及びハードウェアシステム並びに設計者の選択に依存する。そのような全ての変更は本開示の範囲内である。同様に、ソフトウェア実施態様は、種々の接続ステップ、処理ステップ、比較ステップ、及び決定ステップを実現するルールベース論理及び他の論理を用いた標準的なプログラミング技術で実現することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A-6B】
図6C-6D】
図7A-7B】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷の容積を推定するためのシステムにおいて、
ポンプと圧力センサとに通信可能に結合された制御装置であって、
陰圧回路に圧力刺激を印加することを含む圧力試験手順を実行し、
前記圧力センサによって記録された圧力測定値を使用して前記圧力刺激に対する前記陰圧回路の動的圧力応答を観測し、且つ
前記動的圧力応答に基づいて前記創傷の創傷容積を推定する
ように構成された前記制御装置
を備えることを特徴とする、創傷の容積を推定するためのシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記制御装置が、前記陰圧回路内に陰圧を確立するように前記ポンプを動作させるように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記試験手順が、
前記陰圧回路内に陰圧を確立するように前記ポンプを動作させることと、
前記陰圧回路内に前記陰圧が確立された後に前記圧力刺激を印加することと
をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記システムが、前記陰圧回路に沿って位置するオリフィスから、前記陰圧回路に、空気が既知の速度で漏出することを可能にすることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記圧力刺激を印加することが、
前記陰圧回路内に所定の陰圧を達成するように前記ポンプを動作させることと、
前記陰圧回路内で前記所定の陰圧に達したときに前記ポンプを作動停止することと
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記動的圧力応答に基づいて前記創傷容積を推定することが、
前記動的圧力応答を特徴付ける1つ又は複数のパラメータについての値を決定することと、
前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との関係を定義するモデルへの入力として前記1つ又は複数のパラメータの前記値を適用することと
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との前記関係を定義する前記モデルが多項式近似モデルであることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムにおいて、前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との前記関係を定義する前記モデルがニューラルネットワークであることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項6に記載のシステムにおいて、前記制御装置が、
既知の容積を有する訓練回路に前記圧力刺激を印加することを含む訓練手順を実行し、
前記圧力センサによって記録された圧力測定値を使用して前記圧力刺激に対する前記訓練回路の動的圧力応答を観測し、且つ
前記既知の容積を前記訓練回路の前記動的圧力応答と関連付けること
によって、前記1つ又は複数のパラメータと前記創傷容積との前記関係を定義する前記モデルを生成するように構成される
ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記モデルを生成することが、
複数の既知の容積に対して前記訓練手順を繰り返すことと、
前記複数の既知の容積の各々について前記訓練回路の前記動的圧力応答を観測することと、
前記複数の既知の容積と前記訓練回路の前記動的圧力応答との相関関係を生成することと
をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記制御装置が、
前記圧力試験手順を実行し、前記動的圧力応答を観測し、且つ創傷治療中に前記創傷容積を複数回推定し、並びに
創傷治療中の前記創傷容積の変化に基づいて治癒の進行を決定する
ように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記制御装置が、
前記推定した創傷容積に基づいて前記創傷に送達すべき滴下流体の体積を決定し、且つ
前記体積の滴下流体を前記創傷に送達するように前記ポンプを動作させる
ように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記制御装置が、前記推定した創傷容積に流体滴下係数を乗じることによって前記創傷に送達すべき滴下流体の前記体積を決定するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムにおいて、前記流体滴下係数は、全創傷容積未満の創傷容積が前記滴下流体で満たされるように1未満であることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項13に記載のシステムにおいて、前記流体滴下係数が約0.2~約0.8であることを特徴とするシステム。
【外国語明細書】