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  • 特開-ガス貯蔵装置の改善 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162298
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ガス貯蔵装置の改善
(51)【国際特許分類】
   F17C 11/00 20060101AFI20231031BHJP
   F17C 7/00 20060101ALI20231031BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
F17C11/00 A
F17C7/00 A
B01J23/889 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023135210
(22)【出願日】2023-08-23
(62)【分割の表示】P 2019568822の分割
【原出願日】2018-02-19
(31)【優先権主張番号】1703286.3
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】519315785
【氏名又は名称】シンプリー・ブリーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【弁理士】
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】バラット,ジョー・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シーグローブ,マシュー・ジェームス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】活性炭を使用して送達される酸素または空気が実質的に一酸化炭素を含まないことを保証する。
【解決手段】装置(10)は、室温で測定した場合に4から20bargの間の圧力にて活性炭(14)および酸素(30)で充填されたキャニスタ(12)を備える。キャニスタはバルブアセンブリ(18)で密閉され、バルブアセンブリの作動時にキャニスタからの酸素の放出が可能になる。酸素が生成させた一酸化炭素に、活性炭が反応しないことを保証するために、装置は、一酸化炭素の存在を防止するかまたは著しく減少させる触媒(16)を更に含む。特に好ましい実施形態では、装置は二酸化炭素で充填され、大容量吐出バルブを含み、ペット行動矯正装置として有用である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力下で酸素(30)を分配するための装置(10)であって、前記装置は、室温で測定した場合に4から20bargの間の圧力にて活性炭(14)および酸素(30)で充填されたキャニスタ(12)を備え、前記キャニスタはバルブアセンブリ(18)で密閉され、前記バルブアセンブリの作動時に前記キャニスタからの酸素の放出が可能になり、前記装置は一酸化炭素の存在を防止するかまたは著しく減少させる触媒(16)を更に含むことを特徴とする、装置(10)。
【請求項2】
前記触媒は、周囲温度で一酸化炭素を二酸化炭素に転換する触媒である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記触媒は二酸化マンガンおよび酸化銅を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記触媒はホプカライトである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記活性炭は、ヤシ殻または石炭ベースに由来する、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記活性炭は、0.4から0.5gcm-3の密度を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
圧力下でガス(30)を分配する装置(10)をチャージする方法であって、前記装置は、室温で測定したときに4から20bargの間の圧力下で前記ガスを吸着するための活性炭(14)で充填された、容積が1L以下のキャニスタ(12)を備え、前記キャニスタは、シール上で前記キャニスタに圧着されたバルブアセンブリ(18)で密閉され、前記バルブアセンブリの作動時に前記キャニスタからの前記ガスの放出が可能になり、前記ガス(30)は、二酸化炭素、酸素、窒素、または空気であり、前記キャニスタはスチールを含み、前記キャニスタは前記バルブアセンブリを介して単一ステップまたは2ステップの操作で充填される、方法。
【請求項8】
前記活性炭のパッキングを最大化するために振動を使用するステップを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
圧力下でガス(30)を分配する装置(10)であって、前記装置は、室温で測定したときに4から20bargの間の圧力下で前記ガスを吸着するための活性炭(14)で充填された、容積が1L以下のキャニスタ(12)を備え、前記キャニスタは、シール上で前記キャニスタに圧着されたバルブアセンブリ(18)で密閉され、前記バルブアセンブリの作動時に前記キャニスタからの前記ガスの放出が可能になり、前記ガス(30)は二酸化炭素、酸素、窒素、または空気であり、前記キャニスタはスチールを含む、装置。
【請求項10】
前記ガスは酸素である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ガスは二酸化炭素である、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
ペット行動矯正装置であって、大容量吐出バルブを備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記大容量吐出バルブは、少なくとも0.3mmのオリフィス直径を有するステムを有する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
ガスダスター装置であり、前記バルブアセンブリに接続可能なチューブを備えて、吐出時に前記ガスを標的表面に向けることを可能にする、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記キャニスタは、体積で少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%まで活性炭で充填されている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記キャニスタは1L以下の容積を有する、請求項9から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
請求項1から6または9または10のいずれか一項に記載の装置と、マスク、マウスピースおよび/またはノーズピースとを併せて備えるキット。
【請求項18】
コネクタを更に備える、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記装置からのガス使用量をモニタするためのレギュレータおよび/またはカウンタを更に備える、請求項1から6または9または10のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、ガス貯蔵装置の改良に関し、より具体的には、例えば、酸素または二酸化炭素でファイルされる装置に関する。本発明はまた、ガス、特に酸素、二酸化炭素、窒素、または空気を装置に貯蔵する改善された方法、および貯蔵装置自体に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]従来、ガスを充填したキャニスタは、圧縮ガスで充填するか、またはHFA-134aなどの噴射剤を使用するかのいずれかで吐出を促進している。そのようなシステムにはいくつかの不都合がある。
【0003】
[0003]例として、英国特許第2411812号は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)の形態の加圧された不活性凝縮ガスで充填されたキャニスタを備えるペット行動矯正装置を開示している。使用中、ガスは、例えば犬の頭部に向かって吐出されてシューという音を発生させる。しかし、そのような装置は、HFCの望ましくない性質(環境への被害)が立法上の段階的廃止を引き起こすこと、液体であるという性質により使用時の配向を制限するという事実(逆さにすると効果的に機能しない)、および減圧時に急速冷却が発生し、よって動物に近すぎる場所で作動させた場合、ペットにとって苦痛(場合により有害)となる場合があり、例えば利用者のポケット内で誤って作動させた場合、冷凍やけどを起こす可能性があるということを含む、いくつかの制限を有する。
【0004】
[0004]HFCの代わりに代替の推進剤を使用してもよいが、例えば、ブタンなどの炭化水素ガスは可燃性が高く、また揮発性物質が乱用される可能性もある。また推進剤の多くは残留堆積物を残し、ガスダスターなどの用途では敏感な電子機器に損傷を与える可能性がある。ガスダスターは、機器内の溝および隙間など、アクセスが困難な表面、および、従来の溶剤を用いてアクセスできないか、または掃除できない電子機器または敏感な機器を洗浄するために使用される装置である。
【0005】
[0005]しかし、空気、および酸素、窒素、二酸化炭素を含むその成分は容易には液化されないため、極めて高い圧力に対して補強する必要なしでは少量のガスしか貯蔵できない。
【0006】
[0006]国際公開第2005/054742号は、一定量の活性炭と、その表面に吸着されたガスとを有する密閉容器を備えるガス用の貯蔵容器を開示している。
【0007】
[0007]そのようなガスの1つが酸素である。
【0008】
[0008]圧縮酸素で充填された容器は、例えば治療またはスポーツ強化の目的などの適用範囲にて使用され得る。
【0009】
[0009]貯蔵手段として活性炭を使用することにより、より多量のガスを所与の容積内に貯蔵することが可能となる。酸素の場合、これは、活性炭のグレードに応じて、同じ圧力での圧縮のみによって得られるものの約2~3倍である。
【0010】
[0010]典型的には、ガスは4から17barg(室温で測定)の圧力で貯蔵され、容器は典型的には、少なくとも40体積%の活性炭を含有している。しかし、いくつかのキャニスタは20bargの圧力に耐えることができる。
【0011】
[0011]装置は、マスク、マウスピース、および/またはノーズピースを収容するように適合されてもよく、典型的には、充填および分配を可能にするバルブアセンブリを備える。装置はまた、活性炭とバルブアセンブリのバルブとの間にフィルタを含有することができる。
【0012】
[0012]装置は、コネクタ、例えばチューブを介してマスク、マウスピース、および/またはノーズピースに接続されてもよく、これらの構成要素は個別に、または部品のキットとして販売されてもよい。
【0013】
[0013]装置が約8bargを超える圧力にて酸素で充填される場合は、高活性の炭素(60%CTC(四塩化炭素)を超える活性を有する活性炭)を使用することが望ましいが、特により低い充填圧力においては、より低い活性の炭素を使用することもできる。
【0014】
[0014]出願人は、活性炭と酸素との間の反応の結果として、圧力下の酸素または空気でファイルされた活性炭を含む装置が、少なくない量の一酸化炭素(100ppmvを超える濃度)を含有すると結論付けた。このようなレベルでは本質的に危険ではないが、一酸化炭素はヘモグロビンに対して、酸素の250倍の結合親和性を有する。結果として、比較的低いレベルの一酸化炭素でさえ、純酸素を吸気することから得られる利点を打ち消し得る。実際、200ppmvの濃度において、一酸化炭素は頭痛および吐き気を引き起こす可能性がある。
【0015】
[0015]本発明の目的は、活性炭を使用して送達される酸素または空気が実質的に一酸化炭素を含まないことを保証することである。
【0016】
[0016]第2の独立した態様は、キャニスタをガスで充填することに伴う熱の影響を管理することであり、この態様は酸素に限定されない。実際、この第2の態様は、ガスが二酸化炭素の場合は、活性炭で充填されたキャニスタ内に吸着され得る体積ははるかに大きく(圧縮二酸化炭素の25倍にもなる)、吸着は発熱性であるゆえに、より大きな問題となる可能性がある。
【0017】
[0017]実際、ガスが二酸化炭素の場合、国際公開第2005/054742号は、いかなる発熱反応をも相殺するために、装置を固体二酸化炭素またはドライアイスで充填することを教示している。
【0018】
[0018]しかし、ドライアイスを正確に分配することは困難であることが分かり、1Lキャニスタの場合、わずか3g多く変動すると、1.6Lもの二酸化炭素の変動を生じる可能性があり、それによって、室温にて平衡化した場合に、装置の過圧力が生じる可能性がある。
【0019】
[0019]あるいは、国際公開第2008/064293号は、複数の冷却およびリチャージステップを伴うステップ的な充填プロセスを実施する必要なく、ドライアイスをキャニスタに入れ、次いでバルブアセンブリをキャニスタに圧着することによる充填方法を教示している。
【0020】
[0020]この方法の理由は、装置は典型的にはアルミニウム製キャニスタを使用して作製され、バルブアセンブリは、PETまたはシリコンゴムなどのプラスチック性シール上でキャニスタに圧着されるからである。アルミニウムの高い熱伝導率ゆえに、小さな装置(1L以下)においては、キャニスタへの熱の急速な伝達がシールを歪ませ、装置の故障、すなわち圧着部の周りの漏れを引き起こし、よって国際公開第2008/064293号で教示される方法を使用すると、出願人は結論付けた。
【0021】
[0021]国際公開第2005/070788号は、キャニスタの充填について教示している。キャニスタは、中空チューブ内に挿入された針を介して、分配される液体製品で充填され、動作時は、付勢手段の作用に抗してバルブが開き、液体が経路およびディップチューブを通過し、キャニスタを製品レベルまで充填することを可能にしている。
【0022】
[0022]国際公開第2014/037086号は、エアゾル産業へ導入すること、および受け入れられることを容易にするために、キャニスタの充填を既存の市販のキャニスタ製造/充填用の技法および装置と適合させる必要があることを教示している。開示された構成は、バッグオンバルブ構成であり、これにおいて、バッグオンバルブ構成が開口部を通して挿入され、そこでガス充填操作中に緩く保持され、緩く位置決めされたバルブブロックの周りの開口部を通してガスが供給される。ガス充填は、理想的には、例えば約1秒で迅速に達成され、次にバルブブロックが開口部内に直ぐにしっかりと固定され、圧着/ガスケットによって開口部内に密閉される。従って、炭素は、バッグオンバルブ構成と結合されたキャニスタ1に導入され、その状態を管理またはモニタする必要なく、キャニスタ内に密閉状態で保持される。
【0023】
[0023]実際、熱の管理という点では、国際公開第2014/037086号は、ブランケットガスの使用と、キャニスタに入れる前に炭素の顆粒/ペレット/トロイドを二酸化炭素または他の吸着ガス、特に低温ガス、液体またはスノーの供給源と接触状態に保つことを教示している。
【0024】
[0024]本発明の更なる独立した目的は、活性炭の充填装置の製造において、熱を管理するかまたは製造プロセスを改善して、装置故障を低減し、より簡単であって、重要なことである、より正確な充填を保証する代替方法を見つけることである。
【0025】
[0025]上記とは対照的に、出願人は、より一般的なアルミニウムとは対照的に、スチール製のキャニスタを選択することにより、少なくとも小容積の装置、すなわち容積が1L以下のキャニスタについては、市販のガス処理装置を使用して、単一ステップまたは2ステップのプロセスで、室温で少なくとも最大17barg、更には最大20bargの圧力にて、装置のバルブアセンブリを介してキャニスタを充填することが可能であると結論付けた。これにより、部分的に組み立てた装置を充填し、その後バルブアセンブリをキャニスタに圧着すること、または部分的な充填のそれぞれの間に、多数回冷却してステップ的に装置を充填することの、いずれも必要がなくなる。
【0026】
[0026]これは、
i)充填プロセスの高速化、および、
ii)圧着部の周囲のキャニスタの故障、またはキャニスタの過圧力のいずれかによる故障の低減、
という重要な利点を有する。
【0027】
[0027]国際公開第2008/064293号の教示とは対照的に、第2の独立した態様の方法は、バルブアセンブリを介して、単一ステップまたは2ステップのプロセスで、活性炭を充填したスチール製キャニスタを備える装置をガス処理することを含むかまたは基本的にそれから構成される。
【0028】
[0028]ガスは特に二酸化炭素であるが、酸素、窒素、または空気であってもよい。
【0029】
[0029]装置は、キャニスタの容積が1L以下のものが好ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0030】
[0030]本発明の第1の態様によれば、圧力下の酸素を分配する装置が提供され、装置は、室温で測定した場合に4から20bargの間の圧力にて活性炭と酸素で充填されたキャニスタを備え、キャニスタはバルブアセンブリで密閉され、バルブアセンブリの作動時にキャニスタからの酸素の放出が可能になり、装置は一酸化炭素の存在を防止するかまたは著しく減少させる触媒を更に含むことを特徴とする。
【0031】
[0031]好ましい触媒は、周囲温度にて一酸化炭素を二酸化炭素に転換する。
【0032】
[0032]好ましい触媒は、酸化銅と酸化マンガンの混合物であるホプカライトである。本出願人独自の製剤SB100(商標)を含む様々な組成物が利用可能である。
[0033]単なる例として、ホプカライトIは50%MnO、30%CuO、15%Co、および5%AgOの混合物であり、「ホプカライトII」は二酸化マンガン:酸化銅が約3:1である。
【0033】
[0034]好ましくは、ホプカライトは0.4%(w/w)を超える濃度で使用される。
【0034】
[0035]ホプカライトには複数の形態があり、好ましい形態はペレットである。
【0035】
[0036]活性炭は、吸着されるガスを吸着するための広範な性能を発展させるために特別に処理された任意の炭素であってもよい。
【0036】
[0037]好適な炭素は、例えば、泥炭、木材、石炭、堅果殻、石油、コークス、および骨などの炭素源、または、ポリ(アクリロニトリル)またはフェノールホルムアルデヒドなどの合成源を含む。
【0037】
[0038]国際公開第2005/054742号(参照により組み込まれる)に開示されているように、炭素を活性化するための数多くの方法が存在し、活性化プロセスは、マクロポーラス(50nmを超える大きい細孔直径)からサブマイクロポーラス(2nm未満の細孔直径)に至るまでの様々なサイズの細孔の複雑なネットワークを発展させる。より大きな細孔は、輸送細孔として知られており、ガス種の吸着のほとんどが行われるより小さな細孔へのアクセスを提供する役割をする。
【0038】
[0039]活性炭は、粉末、顆粒、またはペレットの形態で、様々なサイズで提供されてもよく、どちらも吸着動力学に影響する。当業者は、必要とされる所望の材料吸着性能に応じて適切な組み合わせを選択するであろう。
【0039】
[0040]酸素と共に使用するのに好適な活性炭には、国際公開第2005/054742号の実施例1に概説されるように、様々な起源、密度、活性度、およびメッシュサイズのものが含まれ、その選択は吸着を最大化するように行われる。好ましい形態は、本出願人独自の活性炭SBC(商標)である。
【0040】
[0041]高い微多孔性(2nm未満)、および高い表面積(500m/gを超え、より好ましくは1000m/gを超える)を有する活性炭を選択することが明らかに望ましい。そのような材料の1つは、国際公開第2005/054742号の表3に示されており、その開示は参照により組み込まれ、その表を以下に表1として複製する。
【0041】
[0042]
【表1】
【0042】
[0043]ガスで充填される装置については、国際公開第2005/054742号は、例えば二酸化炭素の取り込みが活性化の程度によって変動し得ることを教示している(四塩化炭素(CTC)蒸気を吸着する能力として測定)。国際公開第2005/054742号は、これが、0から20bargの圧力範囲で27%CTCから111%CTCの範囲のCTC値を有する活性炭に関して例示している。
【0043】
[0044]約8barg(その文献の図2)未満のより低い圧力では、より低い活性度の炭素がより高い取り込みを示し得ることが報告されており、活性炭の嵩密度が吸着を最大化する際の最も重要な要因のうちの1つとして現れていることが更に教示されている。この教示は、0.35から0.55g/cmの範囲の嵩密度を示している。
【0044】
[0045]この教示から、所与の用途に適切な活性炭を選択することは、当業者が日常的に行うことであることは明らかであろう。
【0045】
[0046]適切な活性炭を選択したら、キャニスタは活性炭で充填され、これは大部分の用途では、典型的には40%を超え、50%を経て、60%、70%以上(体積で)である。しかし、非常に少量の活性炭が使用され得る用途がある。
【0046】
[0047]好ましくは、装置には、活性炭とバルブアセンブリのバルブとの間に位置するフィルタも取り付けられている。より好ましくは、フィルタはHEPAフィルタである。
【0047】
[0048]装置が酸素または空気で充填されている場合、好ましくは装置には、マウスおよび/またはノーズピース、フェイスマスクなど、ならびに装置に接続するためのコネクタ、例えば柔軟なチューブが設けられる。アクチュエータが、バルブおよび任意選択的にレギュレータを介してキャニスタから吸着ガスを放出させることを可能にしている。
【0048】
[0049]好ましくは、装置はバルブアセンブリを介してチャージされ、充填プロセスの発熱性の性質を管理するように注意が払われる。これは、容積が約1L以下のスチール製キャニスタを使用することで効果的に達成できる。
【0049】
[0050]本発明の第2の独立した態様によれば、圧力下のガスを分配する装置をチャージする改良された方法が提供され、装置は、室温で測定した場合、4から20bargの間の圧力下でガスを吸着するための活性炭で充填された、容積が1L以下のキャニスタを備え、キャニスタは、シール上でキャニスタに圧着されたバルブアセンブリで密閉され、バルブアセンブリの作動時にキャニスタからのガスの放出が可能になり、ガスは、二酸化炭素、酸素、または空気であり、キャニスタはスチールを含み、キャニスタはバルブアセンブリを介して単一ステップまたは2ステップの操作でファイルされる。
【0050】
[0051]好ましくは、キャニスタは1L以下の容積を有し、例えば約370mL、640mL、および980mLのキャニスタを含む。
【0051】
[0052]このようなサイズのキャニスタは、充填された場合、典型的には、それぞれ約10L、20L、30Lの酸素、または40L、70L、または100Lの二酸化炭素を収容できる。
【0052】
[0053]本発明の第3の態様によれば、圧力下のガスを分配する装置が提供され、装置は、室温で測定した場合、4から20bargの間の圧力下でガスを吸着するための活性炭で充填された、容積が1L以下のキャニスタを備え、キャニスタは、シール上でキャニスタに圧着されたバルブアセンブリで密閉され、バルブアセンブリの作動時にキャニスタからガスの放出が可能になり、ガスは二酸化炭素、酸素、または空気であり、キャニスタはスチールを含む。
【0053】
[0054]装置は、酸素または二酸化炭素で充填されることが好ましい。
【0054】
[0055]好ましくは、キャニスタは1L以下の容積を有し、例えば370mL、640mL、および980mLのキャニスタを含む。
【0055】
[0056]二酸化炭素で充填された好ましい装置は、ペット行動矯正装置であり、この装置は大容量吐出バルブを備える。
【0056】
[0057]大容量吐出バルブは、少なくとも0.3mm、より好ましくは少なくとも0.4mm、および約0.6mmものオリフィス直径を有するステムを有する。
【0057】
[0058]二酸化炭素で充填された別の好ましい装置はガスダスター装置であり、それはバルブアセンブリに接続可能なチューブを備えて、吐出時にガスを標的表面に向けることを可能にする。
【0058】
[0059]好ましくは、キャニスタは、体積で少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%まで活性炭で充填されている。装置をドライアイスで充填する場合、効率的な充填を最大化することを可能にしないように、ドライア
イス用に十分なスペースを残しておかなければならない。
【0059】
[0060]ガスが酸素または空気である場合は、装置は、マスク、マウスピース、および/またはノーズピース、ならびにコネクタ、例えばチューブのうちの1つまたは複数と一緒に提供されてもよく、これらの構成要素は個別に、または部品のキットとして販売できる。
【0060】
[0061]装置またはキットは、使用上の指示と共に提供されてもよい。
【0061】
[0062]更なる実施形態では、装置は、使用量を判定するためのレギュレータおよび/またはカウンタ、または他の手段を備えてもよい。カウンタは、装置に組み込まれてもよく、または、例えばスマートフォンまたはウェアラブルデバイス、例えばFit Bit(登録商標)など、ユーザが携帯または着用するデバイスに使用量を伝達してもよい。これにより、ユーザまたは第三者が、パフォーマンスと回復に対する酸素摂取の影響をモニタすることが可能になる。
【0062】
[0063]本発明の実施形態が、添付の図面を参照して以下に更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明の第1の態様による装置である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
[0064]図1は本発明の第1の態様による装置(10)を示す。装置は、活性炭(14)および触媒(16)で充填された好ましくはスチール製のキャニスタ(12)を備え、キャニスタ(12)はバルブ(20)およびアクチュエータ(22)を備えるバルブアセンブリ(18)で密閉されている。フィルタ(24)によって、活性炭がバルブステム(26)を目詰まりさせることが防止される。
【0065】
[0065]本発明の第2の態様によれば、装置はガス(30)、例えば酸素で充填され、ガス(30)は活性炭の中に吸着され、その後、アクチュエータ(22)の作動により装置から放出され得る。
【0066】
[0066]装置(10)を充填するために、独自のガス処理装置を使用して圧力下にて、バルブ(20)を介してガス(30)をキャニスタ(12)の中に強制的に入れる。
【0067】
[0067]本発明は、実施例1および2で生成された試験データを参照することにより更に例示される。
【0068】
実施例1
一酸化炭素レベルへの触媒の影響
【0069】
[0068]1L未満の様々なサイズのキャニスタ(12)を以下に述べるように組み立てた。
a)ホプカライトの正味濃度が約0.5%w/wを超えるように、1個または2個のホプカライト(16)のペレットを空の(スチール)キャニスタ(12)に加えた。
b)好ましくは充填を最大化するために振動を使用して、キャニスタ(12)に顆粒状活性炭(14)を充填した。
c)フィルタ(24)をバルブアセンブリ(18)のバルブステム(26)に取り付け、保護されたバルブステム(24,26)を活性炭(14)の中に挿入した。
d)バルブアセンブリ(18)をキャニスタ(12)に圧着させた。
e)装置(10)を、酸素(30)を使用して独自のガス処理装置でガス処理した。
【0070】
[0069]充填後の分析にて、高圧では、高度に活性化された炭素表面との酸素の相互作用により、少量の一酸化炭素が形成されたように見えることが確認された。試験では、室温での1か月間の貯蔵後、装置から吐出されたガス中の一酸化炭素濃度は約300ppmvであり、600ppmvにもなり得ることが示された。
【0071】
[0070]この濃度は、健康への直接的な危険はないが、このタイプの製品では極めて望ましくないため、本出願人は、触媒(例えばホプカライト)の追加によって問題を緩和できるかどうかを確認するために、いくつかの更なる試験を実施した。
【0072】
[0071]表2に示すように、活性炭前駆体の種類は、ホプカライトの量と同様に変化させ、一酸化炭素の量は、ファイリング後、約200日で判定した。
【表2】
【0073】
[0072]表2から分かるように、ホプカライトの添加は一酸化炭素濃度を大幅に減少させ、データは、濃度が0.4%よりも大きければ、一酸化炭素濃度を確実にゼロにするのに十分な効果があることを示した。
【0074】
[0073]酸素によるキャニスタのガス処理を、典型的には10bargで作動する市販のガス処理装置を使用して実行した。
【0075】
実施例2
熱伝達および装置故障へのキャニスタタイプの影響
【0076】
[0074]アルミニウム構造の従来のキャニスタを二酸化炭素でガス処理した場合、活性炭への二酸化炭素の発熱吸着により、温度が46.5℃上昇することが確認された。この急激な温度上昇により、キャニスタとバルブアセンブリとの間のシール(通常はゴム)が変形し、装置の漏れおよび早過ぎる減圧が発生した。
【0077】
[0075]結果として、過熱と過圧力のリスクを回避するために、ガスをステップ的に導入して、ステップの間に装置が冷却されるようにする必要があった。
【0078】
[0076]しかし、同様のサイズのスチール製キャニスタを二酸化炭素でガス処理した場合、キャニスタの温度上昇はわずか3.7℃であることが確認され、その結果、本出願者は、ゴム製シールに応力を加えるリスク、または容器に過圧力を加えるリスクなしで、単一ステップの手順で装置を充填することができた。
【0079】
[0077]試験結果は以下の通りである。
【0080】
[0078]使用したガス:二酸化炭素
【0081】
[0079]スチール製キャニスタのサイズ:直径65mm、高さ195mm、容積=πr2h=646mL
【0082】
[0080]アルミニウム製キャニスタのサイズ:直径66mm、高さ218mm、容積=πr2h=745mL
【0083】
[0081]室温でのスチール製キャニスタ:14.5℃
【0084】
[0082]室温でのアルミニウム製キャニスタ:14.5℃
【0085】
[0083]スチール製キャニスタの炭素量:265グラム
【0086】
[0084]アルミニウム製キャニスタの炭素量:282グラム
【0087】
[0085]両方のキャニスタを10bargの圧力でガス処理した。
【0088】
[0086]10bargに加圧した後のスチール製キャニスタの温度:18.2℃
【0089】
[0087]10bargに加圧した後のアルミニウム製キャニスタの温度:61℃
【0090】
[0088]このプロセスでは熱管理が重要な考慮事項である。その理由は、発熱が多すぎると、キャニスタとバルブアセンブリの間で2つの構成要素が一緒に圧着される場所に設けられた典型的にはゴムシールの変形に起因して、装置が故障する可能性があるからである。
【0091】
[0089]これまでは、熱管理は、固体二酸化炭素を使用するか、または圧力下での複数回のガス処理ステップとその後の冷却を必要とする充填プロセスの、いずれかを使用することで対処していた。
【0092】
好ましい活性炭源
【0093】
[0090]活性炭のこれら形態および派生物はいずれも酸素貯蔵用途に好適である可能性があるが、HDS活性炭としても知られるヤシ殻由来の顆粒状活性炭を使用することが好ましい。この理由は、灰分が少なく優れた物理的特性を提供し、環境に配慮した資格を有する持続可能な材料であるからである。
【0094】
[0091]正確な粒度分布は、取り扱いに問題を生じさせることなく、キャニスタに最大重量で充填されるようなものでなければならない。
[0092]好適なメッシュ範囲は、例えば、CTC活性度が>85%、水分が<5%において、30×70または12×20USメッシュである。
【0095】
[0093]適切な、しかし非限定的な密度範囲は、0.4から0.5gcm-3である。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力下で酸素(30)を分配するための装置(10)であって、前記装置は、室温で測定した場合に4から20bargの間の圧力にて、ガス貯蔵手段としての少なくとも40体積%の活性炭(14)および酸素(30)で充填されたキャニスタ(12)を備え、前記キャニスタはバルブアセンブリ(18)で密閉され、前記バルブアセンブリの作動時に前記キャニスタからの酸素の放出が可能になり、前記装置は一酸化炭素の存在を防止するかまたは5ppm未満に減少させる触媒(16)を更に含み、前記触媒(16)は、酸化銅と酸化マンガンの混合物、又は、酸化銅と酸化マンガンと酸化コバルトと酸化銀の混合物のいずれかからなり、前記活性炭(14)に対し0.4%のよりも大きい重量パーセント濃度を有し、前記キャニスタ(12)は1L以下の容積を有する、ことを特徴とする、装置(10)。
【請求項2】
前記触媒は、3:1の比率の二酸化マンガンおよび酸化銅、又は、50%の酸化マンガン(MnO)、30%の酸化銅(CuO)、15%の酸化コバルト(Co)、および5%の酸化銀(AgO)からなる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記触媒は、周囲温度で一酸化炭素を二酸化炭素に転換する触媒である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記活性炭は、ヤシ殻または石炭ベースに由来する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記活性炭は、0.4から0.5gcm-3の密度を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置からのガス使用量をモニタするためのレギュレータおよび/またはカウンタを更に備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の装置と、マスク、マウスピースおよび/またはノーズピースとを併せて備えるキット。
【請求項8】
コネクタを更に備える、請求項7に記載のキット。
【外国語明細書】