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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162311
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】壁紙
(51)【国際特許分類】
   D06N 7/00 20060101AFI20231031BHJP
   B32B 5/20 20060101ALI20231031BHJP
   B32B 27/22 20060101ALI20231031BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231031BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
D06N7/00
B32B5/20
B32B27/22
B32B27/30 101
B32B27/00 101
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135988
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2019060351の分割
【原出願日】2019-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010010
【氏名又は名称】ロンシール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 宗樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は発泡性を高くして起伏の高いエンボス加工を可能にしつつ優れた耐傷付き性も確保した壁紙を提供する。
【解決手段】基材と、前記基材に積層された発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層と、前記発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層に積層されたトップコート層、とを備え、前記発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層が平均重合度が1200を超え1600以下であるポリ塩化ビニル系樹脂とフタル酸ジイソノニルとハロゲン化金属塩とを含む壁紙。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に積層された発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層と、
前記発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層に積層されたトップコート層、とを備え、
前記発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層が平均重合度が1200を超え1600以下であるポリ塩化ビニル系樹脂とフタル酸ジイソノニルとハロゲン化金属塩とを含壁紙。
【請求項2】
前記ハロゲン化金属塩が塩化亜鉛である請求項1に記載の壁紙。
【請求項3】
前記トップコート層がシリコーン系化合物である請求項1または2に記載の壁紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床、壁、天井等の建築物内装材等の用途に用い、特に意匠性及び耐傷付き性に優れた壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
壁紙として、紙、織物、不織布等の基材上にポリ塩化ビニル系樹脂やオレフィン系樹脂からなる樹脂層が積層され、更に印刷処理やエンボス加工により意匠を付与した設計が知られている。特にエンボス加工の段階で樹脂層が厚い場合、起伏の大きいエンボス加工が可能になり意匠性が向上する。
【0003】
しかしながら、樹脂層を単純に厚くすると質量が増加することで施工性や防火性が低下すると云う問題がある。
【0004】
そこで樹脂層に発泡剤を含有して加熱後の発泡厚、換言すれば発泡性を高くする手法が採られており、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-74598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、発泡性を高くすると表面が柔らかくなり耐傷付き性が低下するという課題があった。
【0007】
即ち、本発明は発泡性を高くして起伏の高いエンボス加工を可能にしつつ優れた耐傷付き性も確保した壁紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題に対して鋭意検証した結果、基材と、前記基材に積層された発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層と、前記発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層に積層されたトップコート層、とを備え、前記発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層が平均重合度が1200を超え1600以下であるポリ塩化ビニル系樹脂とフタル酸ジイソノニルとハロゲン化金属塩とを含ことで、解決できることを見出した。
【0009】
発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層に充填剤を含有しなくてもよく、または充填剤が樹脂100重量部に対し0重量部を超えて20重量部以下含有しても好ましい。特にハロゲン化金属塩が塩化亜鉛を含有するとより好ましい。安定剤はカルシウム系化合物を含有してもよい。更に、トップコート層がシリコーン系化合物であることも好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、意匠性及び耐傷付き性に優れる壁紙を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の基本構成は基材上に発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層、及びトップコート層を付与する壁紙である。以下に詳細に説明する。
【0012】
「発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層」
発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層はポリ塩化ビニル系樹脂からなる層を発泡させた層である。
発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層に用いるポリ塩化ビニル系樹脂には、平均重合度が1200を超えて1600以下のものとする。平均重合度を当該範囲内に限定することで高い発泡性と耐傷付き性を両立することが可能になる。平均重合度が1200以下の場合は耐傷付き性が不足し、1600を超えると発泡性が低下する。平均重合度の測定は「JIS K 6720-2:1999 プラスチック ― 塩化ビニルホモポリマー及びコポリマー(PVC) ― 第2部:試験片の作り方及び諸性質の求め方」を用いることができる。
【0013】
発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層に用いるポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルを主たる構成成分とすればよいが、塩化ビニル以外の共重合成分を含んでもよい。具体的にはポリ塩化ビニル、エチレン-塩化ビニル共重合体、プロピレン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニル-アクリル系樹脂共重合体、塩化ビニル-ウレタン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。また、塩化ビニル系樹脂としては、ペースト加工用ポリ塩化ビニル系樹脂やサスペンジョンポリ塩化ビニル系樹脂を用いることができる。さらにこれらポリ塩化ビニル系樹脂を1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。特にペースト加工用ポリ塩化ビニル系樹脂を用いるとペーストコーティングが可能となり、安価な設備で多様な配合剤の多量配合による多様な発泡製品が可能となり、更に少量多品種製品に適するなど好ましい。
【0014】
ペースト加工用ポリ塩化ビニル系樹脂とは、主に乳化重合法やミクロ懸濁重合法により得られる、1次粒子の平均粒子径が例えば0.02~20.0μmである微細なポリマー粒子であり、可塑剤の添加によりペースト状になるのが一般的な特徴である。サスペンジョンポリ塩化ビニル系樹脂とは、主に懸濁重合法により得られる、1次粒子の平均粒子径が例えば50~200μmでポーラスな不定形状の塩化ビニル系樹脂のことである。このポーラスな形状を有することで可塑剤等の液体を吸収できるため、ペースト状とならないのが特徴であり、押出加工やカレンダー加工で主に用いられる。
【0015】
発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層には、可塑剤としてフタル酸ジイソノニル(DINP)を用いる。また、フタル酸ジイソノニルに他の可塑剤を合わせて用いても良い。この様な可塑剤としては、ジ‐2‐エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジオクチルテレフタレート(DOTP)等のフタル酸系可塑剤、二塩基酸とグリコールの重縮合を基本構造とし、その両末端を一塩基酸または一価アルコールにより停止することにより分子量を800~8000としたポリエステル系可塑剤、DOA(ジ‐2‐エチルヘキシルアジペート)、DIDA(ジイソデシルアジペート)などのアジピン酸エステル系可塑剤、DOS(ジ‐2‐エチルヘキシルセバケート)などのセバシン酸エステル系可塑剤、DOZ(ジ‐2‐エチルヘキシルアゼレート)などのアゼライン酸エステル系可塑剤といった脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリス(イソプロピル化フェニル)、リン酸トリス(ジクロロプロピル)等などのリン酸エステル系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤を用いることができる。
【0016】
フタル酸ジイソノニル(DINP)はジ‐2‐エチルヘキシルフタレート(DOP)と比較して耐傷付き性に優れるため好適に用いられる。したがって、可塑剤としてフタル酸ジイソノニル(DINP)を単独で用いるか、フタル酸ジイソノニル(DINP)を主な可塑剤として用いることが好ましい。さらに、フタル酸ジイソノニル(DINP)と合わせて用いる他の可塑剤の添加量は、フタル酸ジイソノニル(DINP)の添加量を超えないことが好ましい。
【0017】
発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層に添加されるフタル酸ジイソノニル(DINP)の添加量はポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して20~80重量部が好ましい。フタル酸ジイソノニル(DINP)の添加量が80重量部を超えると耐傷付き性が低下したり、壁紙表面からのフタル酸ジイソノニル(DINP)のブリードや壁紙のブロッキング等が生じたりする場合がある。また20重量部より少ないと塩化ビニル樹脂の可塑化が低下し加工性が低下するおそれがある。フタル酸ジイソノニル(DINP)の添加量は30重量部~60重量部がより好ましく、35重量部~45重量部がさらに好ましい。
【0018】
フタル酸ジイソノニル(DINP)と他の可塑剤を合わせて添加する場合、フタル酸ジイソノニル(DINP)と他の可塑剤との合計の可塑剤の添加量を総添加量として、総添加量はポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して20~80重量部が好ましい。可塑剤の総添加量が80重量部を超えると壁紙からの可塑剤のブリードや壁紙のブロッキング等が起こったり発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層が充分に発泡しない場合がある。20重量部より少ないと発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層が荒れて平滑な表面が得られない場合がある。可塑剤の添加量は30重量部~60重量部がより好ましく、35重量部~55重量部がさらに好ましい。
【0019】
発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層には充填剤を実質的に含まないことが好適である。耐傷付き性は充填剤が添加される程低下するため、耐傷付き性を最大限向上させる場合は充填剤を含まないことが好適となる。
【0020】
また、耐傷付き性の他に低廉化や難燃性の向上を求める場合は発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層に充填剤を用いることもできる。この場合、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、充填剤を0重量部を超えて20重量部以下とすることが好ましく、15重量部以下がさらに好ましい。
【0021】
充填剤としては特に限定されないが、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、ケイ酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化アンモニウム、タルク、シリカ、珪藻土等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0022】
発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層に安定剤を用いる場合は、ハロゲン化金属塩を含むことが好ましい。これにより熱安定性が向上し更に発泡が促進される。
【0023】
ハロゲン化金属塩としては塩化亜鉛、塩化鉄、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム塩化銅、フッ化亜鉛、フッ化鉄、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化銅等が挙げられるが、特に塩化亜鉛が好ましい。しかし、塩化亜鉛はポリ塩化ビニルの加工時の脱塩酸を促進し、いわゆるジンクバーニングと呼ばれる黒化をもたらすため多量の添加は好ましくない。したがって、ポリ塩化ビニル系樹脂に対しハロゲン化金属塩の添加量は0.05~0.25wt%であると充分な発泡促進性が得られ好ましい。
【0024】
安定剤として更に、バリウム系化合物、カルシウム系化合物、バリウム系化合物、カルシウム系化合物、スズ系化合物、亜鉛系化合物、カリウム系化合物等を含んでもよく、特にカルシウム系化合物が好ましい。カルシウム系化合物の含有量は特に制限しないが、例えばポリ塩化ビニル系樹脂に対し0.10~0.60wt%であると充分な熱安定性効果と安定的な発泡性が得られ好ましい。
【0025】
本発明に用いる発泡剤としては公知のものを用いることができ、例えばアゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、オキシベンゼンスルホニルヒドラジド、パラトルエンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
【0026】
発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層には課題解決に支障を来さない限りにおいて、着色剤、加工助剤、抗菌剤、防カビ剤、防炎剤、脱泡剤、減粘剤等の各種添加剤を適宜加えてもよい。
【0027】
発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層の坪量としては特に限定されないが、隠ぺい性と施工性から130g/m~200g/mであると好ましい。130g/m未満であると隠蔽性に欠けたり、施工性が低下したりする場合がある。200g/mを超過すると防火性が低下する場合がある。
【0028】
「トップコート層」
本発明では、発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層の上にトップコート層を付与する。トップコート層はシリコーン系化合物、フッ素系化合物、ウレタン系化合物、アクリル系化合物、塩化ビニル系化合物等が挙げられ、これらを2種以上組み合わせた共重合体や混合物でも構わないが、特にシリコーン-アクリレート系が好適である。
【0029】
トップコート層の塗布量は特に限定されないが、乾燥状態で0.5g/m~6g/mであると好ましい。0.5g/m未満であると充分な耐傷付き性が得られない場合がある。また6g/mを超過するとエンボス加工時にパンク等の不具合が発生する場合がある。
【0030】
必要に応じて発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層の上に印刷層又は機能層を付与してもよいが、その場合は印刷層又は機能層の上にトップコート層を付与する。
【0031】
「基材」
本発明に用いる基材としては、普通紙(パルプ主体で公知のサイズ剤により処理したもの)、難燃紙(パルプ主体でスルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン等の難燃剤により処理したもの)、無機質紙(水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機添加剤を含むもの)、フリース紙(パルプとポリエステル等の合成繊維等を混合して抄紙したもの)が挙げられる。特に普通紙を用いると耐傷付き性、施工性が向上するため好ましい。
【0032】
基材の坪量としては特に限定されないが、隠ぺい性と施工性から50g/m~170g/mであると好ましい。50g/m未満であると隠蔽性に欠けたり、施工性が低下したりする場合がある。170g/mを超過すると防火性が低下する場合がある。
【0033】
本発明の壁紙の製造方法としては公知の方法が用いることができるが、基材の上側にポリ塩化ビニル系樹脂を含有する発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層を積層する工程と、発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層の上側にトップコート層を付与する工程を有していればよい。例えばポリ塩化ビニル系樹脂に可塑剤、発泡剤等を配合しブレンダー等で混練して得られたポリ塩化ビニル系樹脂組成物を基材上にペーストコーティング法又はカレンダー法にて積層しポリ塩化ビニル系樹脂層を得る。次に、得られたポリ塩化ビニル系樹脂層に、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷又はシルクスクリーン印刷等を用いてトップコート層を積層し、ヒーターエンボス機または発泡エンボス機にてポリ塩化ビニル系樹脂層を発泡させ発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層を得る。さらに発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層にメカニカルエンボスを行うことで壁紙の表面にエンボスを施すことができる。
また基材にポリ塩化ビニル系樹脂層を積層する際にペーストコーティングを用いると多様な配合剤の多量配合にも適応可能となり好ましい。
【実施例0034】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0035】
実施例1では、表1に示す如く基材として坪量65g/mの普通紙を用い、平均重合度1210のポリ塩化ビニル樹脂、フタル酸ジイソノニル、カルシウム・塩化亜鉛系安定剤、アゾジカルボンアミドを所定量で混合したペーストゾルを、ペーストコーターで塗布することで基材上にポリ塩化ビニル系樹脂層を付与した。次いで、グラビア印刷機を用いてシリコーン-アクリレート系トップコート層を乾燥状態の塗布量0.9g/mで付与した。その後ギアオーブンにて215℃、40秒で加熱発泡させ、メカニカルエンボス機を用いてエンボスを施した。
【0036】
実施例2では平均重合度1300のポリ塩化ビニル樹脂を使用し、フタル酸ジイソノニルを減量した他は実施例1に準拠した。
【0037】
実施例3では平均重合度1550のポリ塩化ビニル樹脂を使用した他は実施例1に準拠した。
【0038】
実施例4では発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層に炭酸カルシウムを含有し、フタル酸ジイソノニルを増量した他は実施例1に準拠した。
【0039】
比較例1では、表2に示す如く平均重合度1050のポリ塩化ビニル樹脂を使用した他は実施例1に準拠した。
【0040】
比較例2では平均重合度1700のポリ塩化ビニル樹脂を使用した他は実施例1に準拠した。
【0041】
比較例3ではフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、炭酸カルシウムを使用した他は実施例2に準拠した。
【0042】
比較例4ではハロゲン化金属塩を含まないバリウム・亜鉛系安定剤を使用した他は実施例1に準拠した。
【0043】
比較例5では平均重合度1700のポリ塩化ビニル樹脂を使用し、炭酸カルシウムを増量した他は実施例4に準拠した。
【0044】
実施例1乃至4及び比較例1乃至5について、以下評価を行った。
【0045】
[発泡性評価]
エンボスを施す前のギアオーブンにて215℃、40秒で加熱発泡させた際の発泡倍率(発泡後の発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層厚さ÷発泡前の発泡性ポリ塩化ビニル系樹脂層厚さ)が5.1以上であれば合格、5.1未満であれば不合格とした。
各厚さはJIS P 8118:2014「紙及び板紙-厚さ,密度及び比容積の試験方法」の9.3.1「厚さの測定」に準拠し、調湿しない室温で測定した。
【0046】
[耐傷付き性]
壁紙工業会規定の規格「表面強化壁紙性能規定」に準じ、30mm×250mmの試験体表面を荷重200gfとした摩擦子を装備したJIS L 0849で規定する摩擦試験機II型を用いて毎分30回往復の速度で引掻き、比較的大きな表面層の破れが見られなければ合格、表面層の破れが明確に見えたら不合格とした。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
[評価結果]
実施例1乃至は4は何れも良好な発泡性と耐傷付き性を示し、本発明の望ましい形態である。
【0050】
これに対し、比較例1及び3ではそれぞれ、ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度が低い又はフタル酸ジイソノニルを使用しないことにより耐傷付き性が不足した。比較例2ではポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度が高く発泡性が低下した。比較例4及び5ではそれぞれ、ハロゲン化金属塩を含む安定剤を使用しない且つトップコート層を付与しない、又はポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度が高い且つ炭酸カルシウム含有量が多いことにより、発泡性、耐傷付き性共に不合格となった。