(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162315
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】改良されたTWC触媒を含有する高ドーパント担体
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20231031BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20231031BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023136291
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2021500111の分割
【原出願日】2019-07-26
(31)【優先権主張番号】62/711,034
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ジン、ユアン
(72)【発明者】
【氏名】長岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】清水 研一
(72)【発明者】
【氏名】鳥屋尾 隆
(57)【要約】 (修正有)
【課題】排気ガスを処理するための触媒物品、該触媒物品を使用した排気ガス処理方法を提供する。
【解決手段】排気ガスを処理するための触媒物品であって、基材と、基材上の第1の触媒領域と、基材上の第2の触媒領域とを含み、第1の触媒領域が、第1のPGM成分と、第1の無機酸化物とを含み、第2の触媒領域が、第2のPGM成分と、第2の無機酸化物とを含み、第1の無機酸化物及び第2の無機酸化物のうちの少なくとも1つが、10~30%のドーパントでドープされている、触媒物品。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金族金属(PGM)成分と無機酸化物とを含む触媒組成物であって、前記PGM成分における、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対する赤外線(IR)強度比が、基準COの吸着手順下で3:1未満である、触媒組成物。
【請求項2】
前記無機酸化物が、アルミナである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記無機酸化物が、ドーパントでドープされている、請求項1又は2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記ドーパントが、La、Sr、Si、Ba、Y、Pr、Nd、及びCeからなる群から選択される、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記無機酸化物中のドーパント含有量が、10重量%~30重量%である、請求項3又は4に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記ドーパントが、Laである、請求項3~5のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記PGMが、Pdである、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
酸素貯蔵能(OSC)材料、及び/又は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記PGM成分が、前記無機酸化物上に担持されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項10】
白金族金属(PGM)成分と無機酸化物とを含む触媒組成物であって、前記PGM成分における、gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対する赤外線(IR)強度比が、基準COの吸着手順下で5:1未満である、触媒組成物。
【請求項11】
前記無機酸化物が、アルミナである、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記無機酸化物が、ドーパントでドープされている、請求項10又は11に記載の触媒組成物。
【請求項13】
前記ドーパントが、La、Sr、Si、Ba、Y、Pr、Nd、及びCeからなる群から選択される、請求項12に記載の触媒組成物。
【請求項14】
前記無機酸化物中のドーパント含有量が、10重量%~30重量%である、請求項12又は13に記載の触媒組成物。
【請求項15】
前記ドーパントが、Laである、請求項12~14のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項16】
前記PGMが、Rhである、請求項10~15のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項17】
酸素貯蔵能(OSC)材料、及び/又は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分を更に含む、請求項10~16のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項18】
前記PGM成分が、前記無機酸化物上に担持されている、請求項10~17のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項19】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
基材と、
前記基材上の第1の触媒領域と、を含み、
前記第1の触媒領域が、第1のPGM成分と、第1の無機酸化物とを含み、前記PGM成分における、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比が、基準COの吸着手順下で3:1未満である、触媒物品。
【請求項20】
前記第1の無機酸化物が、アルミナである、請求項19に記載の触媒物品。
【請求項21】
前記第1の無機酸化物が、ドーパントでドープされている、請求項19又は20に記載の触媒物品。
【請求項22】
前記ドーパントが、La、Sr、Si、Ba、Y、Pr、Nd、及びCeからなる群から選択される、請求項21に記載の触媒物品。
【請求項23】
アルミナ中のドーパント含有量が、10重量%~30重量%である、請求項21又は22に記載の触媒物品。
【請求項24】
前記ドーパントが、Laである、請求項21~23のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項25】
前記第1のPGM成分が、Pdである、請求項19~24のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項26】
前記第1の触媒領域が、Pd以外のPGMを実質的に含まない、請求項25に記載の触媒物品。
【請求項27】
第1の酸素貯蔵能(OSC)材料、及び/又は、第1のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分を更に含む、請求項19~26のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項28】
前記第1のPGM成分が、前記第1の無機酸化物上に担持されている、請求項19~27のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項29】
第2の触媒領域を更に含む、請求項19~28のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項30】
前記第2の触媒領域が、第2のPGM成分を含む、請求項29に記載の触媒物品。
【請求項31】
前記第2のPGM成分が、Pd、Pt、Rh、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項30に記載の触媒物品。
【請求項32】
前記第2の触媒領域が、第2の酸素貯蔵能(OSC)材料、第2のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は第2の無機酸化物を更に含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項33】
前記第1の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項29~32のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項34】
前記第2の触媒領域が、前記第1の触媒領域上に担持/堆積されている、請求項33に記載の触媒物品。
【請求項35】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
基材と、
前記基材上の第1の触媒領域と、を含み、
前記第1の触媒領域が、第1のPGM成分と、第1の無機酸化物とを含み、前記PGM成分における、gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比が、基準COの吸着手順下で5:1未満である、触媒物品。
【請求項36】
前記第1の無機酸化物が、アルミナである、請求項35に記載の触媒物品。
【請求項37】
前記第1の無機酸化物が、ドーパントでドープされている、請求項35又は36に記載の触媒物品。
【請求項38】
前記ドーパントが、La、Sr、Si、Ba、Y、Pr、Nd、及びCeからなる群から選択される、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項39】
アルミナ中のドーパント含有量が、10重量%~30重量%である、請求項37又は38に記載の触媒物品。
【請求項40】
前記ドーパントが、Laである、請求項37~39のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項41】
前記第1のPGM成分が、Rhである、請求項35~40のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項42】
前記第1の触媒領域が、Rh以外のPGMを実質的に含まない、請求項41に記載の触媒物品。
【請求項43】
第1の酸素貯蔵能(OSC)材料、及び/又は、第1のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分を更に含む、請求項35~42のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項44】
前記第1のPGM成分が、前記第1の無機酸化物上に担持されている、請求項35~43のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項45】
第2の触媒領域を更に含む、請求項35~44のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項46】
前記第2の触媒領域が、第2のPGM成分を含む、請求項45に記載の触媒物品。
【請求項47】
前記第2のPGM成分が、Pd、Pt、Rh、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項46に記載の触媒物品。
【請求項48】
前記第2の触媒領域が、第2の酸素貯蔵能(OSC)材料、第2のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は第2の無機酸化物を更に含む、請求項45~47のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項49】
前記第2の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項45~48のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項50】
前記第1の触媒領域が、前記第2の触媒領域上に担持/堆積されている、請求項49に記載の触媒物品。
【請求項51】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
基材と、
前記基材上の第1の触媒領域と、前記基材上の第2の触媒領域とを含み、
前記第1の触媒領域が、第1のPGM成分と、第1の無機酸化物とを含み、
前記第2の触媒領域が、第2のPGM成分と、第2の無機酸化物とを含み、
前記第1の無機酸化物及び前記第2の無機酸化物のうちの少なくとも1つが、10~30%のドーパントでドープされている、触媒物品。
【請求項52】
前記第1の無機酸化物及び/又は前記第2の無機酸化物のための前記ドーパントが、各々独立して、La、Sr、Si、Ba、Y、Pr、Nd、及びCeからなる群から選択される、請求項51に記載の触媒物品。
【請求項53】
前記第1の無機酸化物が、アルミナである、請求項51又は52に記載の触媒物品。
【請求項54】
前記第1の無機酸化物のための前記ドーパントが、Laである、請求項51~53のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項55】
前記第1のPGM成分が、Pdである、請求項51~54のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項56】
前記第1のPGM成分における、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比が、基準COの吸着手順下で3:1未満である、請求項51~55のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項57】
前記第2の無機酸化物が、アルミナである、請求項51~56のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項58】
前記第2の無機酸化物のための前記ドーパントが、Laである、請求項51~57のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項59】
前記第2のPGM成分が、Rhである、請求項51~58のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項60】
前記第2のPGM成分における、gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比が、基準COの吸着手順下で5:1未満である、請求項51~59のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項61】
請求項19~60のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、燃焼排気ガスの流れを処理するための排出物処理システム。
【請求項62】
内燃機関からの排気ガスの処理方法であって、前記排気ガスを請求項19~60のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させることを含む、排気ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するのに有用な触媒物品に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(「NOx」)を含む様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成される。排気ガス触媒を含む排出制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されている。ガソリンエンジン用途に通常使用される触媒はTWCである。TWCにより、次の3つの主な役割、すなわち、(1)COの酸化、(2)未燃HCの酸化、及び(3)NOxのN2への還元を行う。
【0003】
ほとんどの触媒コンバータでは、白金族金属(PGM)(例えば、Pt、Pd、及びRh)が触媒変換の活性部位とされ、担持担体としての他の無機化合物、例えば、アルミナ及びセリア-ジルコニア混合酸化物と組み合わせて広く使用されてきた。TWCの温度が約1000℃に達すると、特にガソリン車の高負荷運転下では、担持担体は通常、ドーパント元素によって安定化される。アルミナ材料の場合、例えば、熱耐久性は、ランタン(La)をドープされることで有意に改善される。アルミナ材料の熱安定性は1~2重量%前後で最大に達し、5重量%までほぼ変化しないことから、Laは典型的には5重量%未満の低含有量でTWCのアルミナに使用される(例えば、Thevenin et al.,Journal of Catalysis,2002,207,139-149;Shinjoh,Journal of Alloys and Compounds,2006,408-412,1061-1064を参照されたい)。このような担持担体の熱安定性の改善は、PGM粒子を高分散させて、より高い触媒性能を有するTWCを作製するのに有用である。
【0004】
他方、ガソリンエンジンの排気ガスでは、COの濃度が他の有害なHC及びNOxのガス濃度よりも顕著に高いため、PGMは通常、高濃度のCOに被毒し、すなわち、PGM活性部位が強く吸着したCOによって覆われ、それにより触媒性能が失活する。PGMの被毒対策は、PGMの活性部位を維持し、高濃度COガスの存在下で触媒変換を促進する、別の技術的アプローチである。本発明は、TWCの性能の改良のため、CO被毒の影響を低減するというニーズを解決するものである。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様は、白金族金属(PGM)成分と無機酸化物とを含む触媒組成物であって、PGM成分における、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対する赤外線(IR)強度比が、基準COの吸着手順下で3:1未満である、触媒組成物に関する。
【0006】
本開示の別の態様は、白金族金属(PGM)成分と無機酸化物とを含む触媒組成物であって、PGM成分における、gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対する赤外線(IR)強度比が、基準COの吸着手順下で5:1未満である、触媒組成物に関する。
【0007】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、基材と、基材上の第1の触媒領域と、を含み、第1の触媒領域が、第1のPGM成分と、第1の無機酸化物とを含み、当該PGM成分における、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比が、基準COの吸着手順下で3:1未満である、触媒物品に関する。
【0008】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、基材と、基材上の第1の触媒領域と、を含み、第1の触媒領域が、第1のPGM成分と、第1の無機酸化物とを含み、当該PGM成分における、gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比が、基準COの吸着手順下で5:1未満である、触媒物品に関する。
【0009】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、基材と、基材上の第1の触媒領域と、基材上の第2の触媒領域と、を含み、第1の触媒領域が、第1のPGM成分と、第1の無機酸化物とを含み、第2の触媒領域が、第2のPGM成分と、第2の無機酸化物とを含み、第1の無機酸化物及び第2の無機酸化物のうちの少なくとも1つが、10~30%のドーパントでドープされている、触媒物品に関する。
【0010】
本発明はまた、本発明の三元触媒成分を含む、内燃機関のための排気システムも包含する。
【0011】
本発明はまた、内燃機関からの排気ガスの処理、特にガソリンエンジンからの排気ガスの処理も包含する。本方法は、排気ガスを本発明の三元触媒成分又は物品と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1a】異なるLa担持量を有するPd/La-アルミナ触媒における、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比を示す。
【
図1b】Pd/La-Al
2O
3触媒における、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIRスペクトルを示す。
【
図2】異なるLa担持量でPd/La-アルミナコーティングされた触媒の、触媒性能を示す。
【
図3a】La担持量の異なるRh/La-Al
2O
3触媒における、gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比を示す。
【
図3b】Rh/La-Al
2O
3触媒における、gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ガソリンエンジン又は他のエンジンによって生成されるものなどの燃焼排気ガスの触媒処理、並びに関連する触媒物品及びシステムに関する。より具体的には、本発明は、車両排気システムにおけるNOx、CO、及びHCの同時処理に関する。
【0014】
TWCの技術開発のほとんどが、ドープされており高い熱耐久性を有する担体材料の開発により当該性能を改良するべく、PGMの分散を高く維持して熱安定性を改良することに注力してきた。これまで、担体用のドーパントは、TWC用の安定剤として使用することに焦点が置かれており、当該材料の安定化のためのドーパント含有量は5重量%未満で十分である。実際に、アルミナに対するLaドーピングでは、1000℃で熱エージングした後の表面積が、La=0重量%での60m2/gから、La=5重量%での90m2/gまで改善され、それ以上のLaのドーピングによっては、表面積の更なる改善はなされず、例えば、La=20重量%で67m2/gである。驚くべきことに、本発明者らは、多量にドープした担体材料でのみ、PGMに対するCO被毒の効果的な抑制が見られることを見出した。本発明者らは、担体材料中のドープ元素に、高濃度COガス下であってもPGM活性部位を有効利用するための新たな役割を見出した。本発明のプロセスによると、PGMの量を低減し、触媒のコストを下げることができる可能性がある。
【0015】
本開示の一態様は、白金族金属(PGM)成分と無機酸化物とを含む触媒組成物であって、PGM成分における、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対する赤外線(IR)強度比が、基準COの吸着手順下で3:1未満である、触媒組成物に関する。
【0016】
PGM成分は、Pd、Rh、又はPtであってもよい。いくつかの実施形態では、PGM成分は、Pd又はRhである。更なる実施形態では、PGM成分は、Pdである。
【0017】
触媒組成物は、最大20重量%のPGM成分を含んでもよい。好ましくは、触媒組成物は、0.05~10重量%、より好ましくは0.2~5重量%のPGM成分を含んでもよい。
【0018】
触媒組成物は、別のPGM成分を更に含んでもよい。
【0019】
基準COの吸着手順は、以下のとおりであってよい。事前準備として、PGM触媒粉末を酸化し(10%のO2、100cc/分、Heバッファ)、有機混入物を除去し、次いで3%のH2下で還元し(100cc/分、Heバッファ)、触媒の金属PGMを形成する。次いで、吸着のためにCOガス(1%のCO、100cc/分、Heバッファ)を導入し、IRスペクトルを室温(例えば、約20~25℃)で収集する。粉末試料の量は、典型的には、IR測定の場合、30mgであってもよい。
【0020】
典型的には、PGMに対するCOの吸着については、主要な2通りの状態がIRスペクトルに出現する。Pdについては2090cm-1前後、Rhについては2070cm-1前後、又はPtについては2090cm-1前後のIR吸収ピークは、粒子の表面でCOが1つのPGM原子に結合しているatopサイトに帰属可能である。Pdについては1990cm-1前後、Rhについては1870cm-1前後、又はPtについては1850cm-1前後のIR吸収ピークは、粒子の表面でCOが2つのPGM原子に結合しているbridgeサイトに帰属可能である。bridgeサイトではCOがPGM表面上に強く吸着されており、このように安定化されたbridgeサイトのCOにより、PGMの吸着部位が遮断され、すなわち、COにより活性部位が被毒することがある。atopサイトでは、COのPGM表面上への吸着はより弱く、bridgeサイトのCOと比較してatopサイトのCOの脱着及び反応は促進され得る。bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対する比が低くなっていることは、PGMに対するCO被毒の影響が抑制される傾向にあることを意味し得る。
【0021】
PGM成分における、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比は、5:2未満又は2:1未満であってもよい。
【0022】
無機酸化物は、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物であってもよい。無機酸化物は、好ましくは、ガソリンエンジンの排気に伴う温度などの高温で、化学的及び物理的安定性を示す、耐火金属酸化物である。無機酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択することができる。より好ましくは、無機酸化物は、アルミナである。無機酸化物は、PGM成分のための担体材料であってもよい。
【0023】
無機酸化物は、好ましくは、未使用で80m2/g超の比表面積、0.1~4mL/gの範囲の細孔容積を有する。100m2/g超の比表面積を有する高比表面積の無機酸化物、例えば高比表面積アルミナが特に好ましい。
【0024】
無機酸化物は、ドーパントでドープされていてもよい。ドーパントは、La、Sr、Si、Ba、Y、Pr、Nd、及びCeからなる群から選択することができる。好ましくは、ドーパントは、La、Ba、又はCeであってもよい。最も好ましくは、ドーパントは、Laである。無機酸化物(例えば、アルミナ)中のドーパント含有量は、10~30重量%、10~25重量%、又は10~20重量%であってもよい。無機酸化物(例えば、アルミナ)中のドーパント含有量はまた、15~30重量%、15~25重量%、又は15~20重量%であってもよい。
【0025】
触媒組成物は、酸素貯蔵能(OSC)材料、及び/又は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分を、更に含んでもよい。
【0026】
OSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、OSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、La、Nd、Y、Prなどのいくつかのドーパントを更に含んでもよい。
【0027】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアのセリアに対するモル比が、少なくとも50:50であってよく、好ましくは60:40より高く、より好ましくは75:25より高くてもよい。加えて、OSC材料は、PGM成分の担体材料として機能することができる。いくつかの実施形態では、PGM成分は、OSC材料及び無機酸化物上に担持されている。
【0028】
OSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、触媒組成物の総重量に基づいて、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは35~65重量%であってもよい。
【0029】
OSC材料と無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下、最も好ましくは2:1以下の重量比を有してもよい。
【0030】
あるいは、OSC材料と無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは、8:1~1:8、又は5:1~1:5の重量比、より好ましくは、4:1~1:4、又は3:1~1:3の重量比、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有してもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、OSC材料上に堆積されていてもよい。あるいは、又は加えて、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、無機酸化物上に堆積されていてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、OSC材料と無機酸化物との両方の上に堆積されていてもよく、すなわち、その上に存在してもよい。
【0032】
好ましくは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、無機酸化物(例えば、アルミナ)上に担持/堆積されている。無機酸化物に接触していることに加えて、又はそれに代えて、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、OSC材料に、及びPGM成分にも接触していてもよい。
【0033】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくは、バリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、触媒組成物の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。
【0034】
好ましくは、バリウムは、BaCO3複合材料として存在する。このような材料を、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、incipient wetness含浸又は噴霧乾燥によって予備形成することができる。
【0035】
本開示の別の態様は、白金族金属(PGM)成分と無機酸化物とを含む触媒組成物であって、PGM成分における、gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比が、基準COの吸着手順下で5:1未満である、触媒組成物に関する。
【0036】
PGM成分は、Pd、Rh、又はPtであってもよい。いくつかの実施形態では、PGM成分は、Pd又はRhである。更なる実施形態では、PGM成分は、Rhである。
【0037】
触媒組成物は、最大20重量%のPGM成分を含んでもよい。好ましくは、触媒組成物は、0.05~10重量%、より好ましくは0.2~5重量%のPGM成分を含んでもよい。
【0038】
触媒組成物は、別のPGM成分を更に含んでもよい。
【0039】
典型的には、PGMに対するCOの吸着については、主要な2通りの状態がIRスペクトルに出現する。Pdについては2090cm-1前後、Rhについては2070cm-1前後、又はPtについては2090cm-1前後のIR吸収ピークは、粒子の表面でCOが1つのPGM原子に結合しているatopサイトに帰属可能である。Pdについては1990cm-1前後、Rhについては1870cm-1前後、又はPtについては1850cm-1前後のIR吸収ピークは、粒子の表面でCOが2つのPGM原子に結合しているbridgeサイトに帰属可能である。bridgeサイトではCOがPGM表面上に強く吸着され、こうして安定化されたbridgeサイトのCOにより、PGMの吸着部位が遮断され、すなわち、COにより活性部位が被毒することがある。atopサイトでは、COのPGM表面上への吸着はより弱く、bridgeサイトのCOと比較してatopサイトのCOの脱着及び反応は促進され得る。bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対する比が低くなっていることは、CO被毒のPGMに対する影響が抑制される傾向にあることを意味し得る。
【0040】
Rhの場合、更なる吸着状態であるgem-ジカルボニル型では、粒子の表面で2つのCO分子が1つのRh原子に結合している。2090及び2030cm-1前後のIR吸収ピークは、Rhのgem-ジカルボニル型に帰属可能である。gem-ジカルボニルは、CO-Rhの安定な局所錯体構造であり、すなわち、COにより活性部位が被毒されるため、Rhにおいて、gem-ジカルボニルサイトのCOは、atopサイトのCOよりも触媒反応性が低くなる。gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対する比が低くなっていることは、Rhに対するCO被毒の影響が抑制される傾向にあることを意味し得る。
【0041】
PGM成分における、gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比は、4:1未満、3:1未満、又は5:2未満であってもよい。
【0042】
無機酸化物は、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物であってもよい。無機酸化物は、好ましくは、ガソリンエンジンの排気に伴う温度などの高温で、化学的及び物理的安定性を示す、耐火金属酸化物である。無機酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択することができる。より好ましくは、無機酸化物は、アルミナである。無機酸化物は、PGM成分のための担体材料であってもよい。
【0043】
無機酸化物は、好ましくは、未使用で80m2/g超の比表面積、0.1~4mL/gの範囲の細孔容積を有する。100m2/g超の比表面積を有する高比表面積の無機酸化物、例えば高比表面積アルミナが特に好ましい。
【0044】
無機酸化物は、ドーパントでドープされていてもよい。ドーパントは、La、Sr、Si、Ba、Y、Pr、Nd、及びCeからなる群から選択することができる。好ましくは、ドーパントは、La、Ba、又はCeであってもよい。最も好ましくは、ドーパントは、Laである。無機酸化物(例えば、アルミナ)中のドーパント含有量は、10~30重量%、10~25重量%、又は10~20重量%であってもよい。無機酸化物(例えば、アルミナ)中のドーパント含有量はまた、15~30重量%、15~25重量%、又は15~20重量%であってもよい。
【0045】
触媒組成物は、酸素貯蔵能(OSC)材料、及び/又は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分を、更に含んでもよい。
【0046】
OSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、OSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、La、Nd、Y、Prなどのいくつかのドーパントを更に含んでもよい。
【0047】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアのセリアに対するモル比が、少なくとも50:50であってよく、好ましくは60:40より高く、より好ましくは75:25より高くてもよい。加えて、OSC材料は、PGM成分のための担体材料として機能することができる。いくつかの実施形態では、PGM成分は、OSC材料及び無機酸化物上に担持されている。
【0048】
OSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、触媒組成物の総重量に基づいて、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは35~65重量%であってもよい。
【0049】
OSC材料と無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下、最も好ましくは2:1以下の重量比を有してもよい。
【0050】
あるいは、OSC材料と無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8、又は5:1~1:5の重量比、より好ましくは4:1~1:4、又は3:1~1:3の重量比、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有してもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、OSC材料上に堆積されていてもよい。あるいは、又は加えて、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、無機酸化物上に堆積されていてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、OSC材料と無機酸化物との両方の上に堆積されていてもよく、すなわち、その上に存在してもよい。
【0052】
好ましくは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、無機酸化物(例えば、アルミナ)上に担持/堆積されている。無機酸化物に接触していることに加えて、又はそれに代えて、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、OSC材料に、及びPGM成分にも接触していてもよい。
【0053】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくは、バリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、触媒組成物の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。
【0054】
好ましくは、バリウムは、BaCO3複合材料として存在する。このような材料を、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、incipient wetness含浸又は噴霧乾燥によって予備形成することができる。
【0055】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、基材と、基材上の第1の触媒領域と、を含み、第1の触媒領域が、第1のPGM成分と、第1の無機酸化物とを含み、当該PGM成分における、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比が、基準COの吸着手順下で3:1未満である、触媒物品に関する。
【0056】
第1のPGM成分は、Pd、Rh、又はPtであってもよい。いくつかの実施形態では、第1のPGM成分は、Pd又はRhである。更なる実施形態では、第1のPGM成分は、Pdである。更に別の更なる実施形態では、第1の触媒領域は、パラジウム以外のPGMを実質的に含まない。
【0057】
第1の触媒領域は、最大350g/ft3の第1のPGM成分を含んでもよい。好ましくは、第1の触媒領域は、10~300g/ft3、より好ましくは25~150g/ft3の第1のPGM成分を含んでもよい。
【0058】
第1のPGM成分における、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比は、5:2未満又は2:1未満であってもよい。
【0059】
第1の無機酸化物は、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物であってもよい。第1の無機酸化物は、好ましくは、ガソリンエンジンの排気に伴う温度などの高温で、化学的及び物理的安定性を示す耐火金属酸化物である。第1の無機酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択することができる。より好ましくは、第1の無機酸化物は、アルミナである。第1の無機酸化物は、第1のPGM成分のための担体材料であってもよい。
【0060】
第1の無機酸化物は、好ましくは、未使用で80m2/g超の比表面積、0.1~4mL/gの範囲の細孔容積を有する。100m2/g超の比表面積を有する高比表面積の無機酸化物、例えば高比表面積アルミナが特に好ましい。
【0061】
第1の無機酸化物は、ドーパントでドープされていてもよい。ドーパントは、La、Sr、Si、Ba、Y、Pr、Nd、及びCeからなる群から選択することができる。好ましくは、ドーパントは、La、Ba、又はCeであってもよい。最も好ましくは、ドーパントは、Laである。第1の無機酸化物(例えば、アルミナ)中のドーパント含有量は、10~30重量%、10~25重量%、又は10~20重量%であってもよい。第1の無機酸化物(例えば、アルミナ)中のドーパント含有量はまた、15~30重量%、15~25重量%、又は15~20重量%であってもよい。
【0062】
第1の触媒領域は、第1の酸素貯蔵能(OSC)材料、及び/又は第1のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分を更に含んでもよい。
【0063】
第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.1~5g/in3であってもよい。好ましくは、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.5~3.5g/in3であり、最も好ましくは、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は1~2.5g/in3である。
【0064】
第1のOSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第1のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、La、Nd、Y、Prなどのいくつかのドーパントを更に含んでもよい。
【0065】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアのセリアに対するモル比が、少なくとも50:50であってよく、好ましくは60:40より高く、より好ましくは75:25より高くてもよい。加えて、第1のOSC材料は、第1のPGM成分のための担体材料として機能することができる。いくつかの実施形態では、第1のPGM成分を、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物上に担持する。
【0066】
第1のOSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは35~65重量%であってもよい。
【0067】
第1の触媒領域における第1のOSC材料担持量は、1.5g/in3未満であり得る。いくつかの実施形態では、第1の触媒領域における第1のOSC材料担持量は、1.2g/in3、1.0g/in3、0.9g/in3、0.8g/in3、0.7g/in3、又は0.6g/in3以下である。
【0068】
第1のOSC材料と無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下、最も好ましくは2:1以下の重量比を有してもよい。
【0069】
あるいは、第1のOSC材料と第1の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8、又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4、又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有してもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料上に堆積されていてもよい。あるいは、又は加えて、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、無機酸化物上に堆積されていてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料と第1の無機酸化物との両方の上に堆積されていてもよく、すなわち、その上に存在してもよい。
【0071】
好ましくは、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1の無機酸化物(例えば、アルミナ)上に担持/堆積されている。第1の無機酸化物に接触していることに加えて、又はそれに代えて、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料に、及び第1のPGM成分にも接触していてもよい。
【0072】
第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくは、バリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。
【0073】
好ましくは、バリウムは、BaCO3複合材料として存在する。このような材料を、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、incipient wetness含浸又は噴霧乾燥によって予備形成することができる。
【0074】
触媒物品は、第2の触媒領域を更に含んでもよい。第2の触媒領域は、第2のPGM成分、第2の酸素貯蔵能(OSC)材料、第2のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は第2の無機酸化物を含んでもよい。
【0075】
第2のPGM成分は、パラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、第1のPGM成分がRhであるとき、第2のPGM成分はPdであってもよい。他の実施形態では、第1のPGM成分がPdであるとき、第2のPGM成分はRhであってもよい。
【0076】
第2の触媒領域は、最大350g/ft3の第2のPGM成分を含んでもよい。好ましくは、第2の触媒領域は、10~300g/ft3、より好ましくは25~150g/ft3の第2のPGM成分を含んでもよい。
【0077】
第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.1~5g/in3であってもよい。好ましくは、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.5~3.5g/in3であり、最も好ましくは、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は1~2.5g/in3である。
【0078】
第2の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第2の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、ランタナ、シリカ、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、チタニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第2の無機酸化物は、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第2の無機酸化物は、アルミナ、ランタン/アルミナ複合酸化物、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。特に好ましい第2の無機酸化物の1つは、ランタン-アルミナ複合酸化物である。第2の無機酸化物は、第2のPGM成分のための担体材料、及び/又は第2のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のための担体材料であってもよい。
【0079】
第2の無機酸化物は、好ましくは、未使用で80m2/g超の比表面積、0.1~4mL/gの範囲の細孔容積を有する。100m2/g超の比表面積を有する高比表面積の無機酸化物、例えば高比表面積アルミナが特に好ましい。他の好ましい第2の無機酸化物としては、ランタン/アルミナ複合酸化物が挙げられ、これは、所望によりセリウム含有成分、例えば、セリアを更に含む。このような場合、セリアは、例えばコーティングとして、ランタン/アルミナ複合酸化物の表面上に存在してもよい。
【0080】
あるいは、第2の無機酸化物はまた、第1の無機酸化物と同じ特徴を有してもよい(例えば、ドーパントは、10~30%であってもよく、及び/又は、第2のPGM成分における、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比は、3:1未満であってもよい)。
【0081】
第2のOSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第2のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、La、Nd、Y、Prなどのいくつかのドーパントを更に含んでもよい。
【0082】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアのセリアに対するモル比が、少なくとも50:50であってよく、好ましくは60:40より高く、より好ましくは75:25より高くてもよい。加えて、第2のOSC材料は、第2のPGM成分のための担体材料として機能することができる。いくつかの実施形態では、第2のPGM成分を、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物上に担持する。
【0083】
第2のOSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは35~65重量%であってもよい。
【0084】
第2の触媒領域における第2のOSC材料担持量は、1.5g/in3未満であり得る。いくつかの実施形態では、第2の触媒領域における第2のOSC材料担持量は、1.2g/in3、1.0g/in3、0.9g/in3、0.8g/in3、0.7g/in3、又は0.6g/in3以下である。
【0085】
第2のOSC材料と第2の無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下最も好ましくは2:1以下の重量比を有してもよい。
【0086】
あるいは、第2のOSC材料と第2の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは、8:1~1:8、又は5:1~1:5の重量比、より好ましくは、4:1~1:4、又は3:1~1:3の重量比、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有してもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2のOSC材料上に堆積されていてもよい。あるいは、又は加えて、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2の無機酸化物上に堆積されていてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2のOSC材料と第2の無機酸化物との両方の上に堆積されていてもよく、すなわち、その上に存在してもよい。
【0088】
好ましくは、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2の無機酸化物(例えば、アルミナ)上に担持/堆積されている。第2の無機酸化物に接触していることに加えて、又はそれに代えて、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2のOSC材料に、及び第2のPGM成分にも接触していてもよい。
【0089】
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくは、バリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。
【0090】
好ましくは、バリウムは、BaCO3複合材料として存在する。このような材料を、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、incipient wetness含浸又は噴霧乾燥によって予備形成することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、60:1~1:60の重量比を有する。好ましくは、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、30:1~1:30の重量比を有する。より好ましくは、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、20:1~1:20の重量比を有する。最も好ましくは、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、15:1~1:15の重量比を有する。
【0092】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、基材と、基材上の第1の触媒領域と、を含み、第1の触媒領域が、第1のPGM成分と、第1の無機酸化物とを含み、当該PGM成分における、gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比が、基準COの吸着手順下で5:1未満である、触媒物品に関する。
【0093】
第1のPGM成分は、Pd、Rh、又はPtであってもよい。いくつかの実施形態では、第1のPGM成分は、Pd又はRhである。更なる実施形態では、第1のPGM成分は、Rhである。更に別の更なる実施形態では、第1の触媒領域は、Rh以外のPGMを実質的に含まない。
【0094】
第1の触媒領域は、最大350g/ft3の第1のPGM成分を含んでもよい。好ましくは、第1の触媒領域は、10~300g/ft3、より好ましくは25~150g/ft3の第1のPGM成分を含んでもよい。
【0095】
第1のPGM成分における、gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比は、4:1未満、3:1未満、又は5:2未満であってもよい。
【0096】
第1の無機酸化物は、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物であってもよい。第1の無機酸化物は、好ましくは、ガソリンエンジンの排気に伴う温度などの高温で、化学的及び物理的安定性を示す耐火金属酸化物である。第1の無機酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択することができる。より好ましくは、第1の無機酸化物は、アルミナである。第1の無機酸化物は、第1のPGM成分のための担体材料であってもよい。
【0097】
第1の無機酸化物は、好ましくは、未使用で80m2/g超の比表面積、0.1~4mL/gの範囲の細孔容積を有する。100m2/g超の比表面積を有する高比表面積の無機酸化物、例えば高比表面積アルミナが特に好ましい。
【0098】
第1の無機酸化物は、ドーパントでドープされていてもよい。ドーパントは、La、Sr、Si、Ba、Y、Pr、Nd、及びCeからなる群から選択することができる。好ましくは、ドーパントは、La、Ba、又はCeであってもよい。最も好ましくは、ドーパントは、Laである。第1の無機酸化物(例えば、アルミナ)中のドーパント含有量は、10~30重量%、10~25重量%、又は10~20重量%であってもよい。第1の無機酸化物(例えば、アルミナ)中のドーパント含有量はまた、15~30重量%、15~25重量%、又は15~20重量%であってもよい。
【0099】
第1の触媒領域は、第1の酸素貯蔵能(OSC)材料、及び/又は第1のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分を更に含んでもよい。
【0100】
第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.1~5g/in3であってもよい。好ましくは、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.5~3.5g/in3であり、最も好ましくは、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は1~2.5g/in3である。
【0101】
第1のOSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第1のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、La、Nd、Y、Prなどのいくつかのドーパントを更に含んでもよい。
【0102】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアのセリアに対するモル比が、少なくとも50:50であってよく、好ましくは60:40より高く、より好ましくは75:25より高くてもよい。加えて、第1のOSC材料は、第1のPGM成分のための担体材料として機能することができる。いくつかの実施形態では、第1のPGM成分を、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物上に担持する。
【0103】
第1のOSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは35~65重量%であってもよい。
【0104】
第1の触媒領域における第1のOSC材料担持量は、1.5g/in3未満であり得る。いくつかの実施形態では、第1の触媒領域における第1のOSC材料担持量は、1.2g/in3、1.0g/in3、0.9g/in3、0.8g/in3、0.7g/in3、又は0.6g/in3以下である。
【0105】
第1のOSC材料と無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下、最も好ましくは2:1以下の重量比を有してもよい。
【0106】
あるいは、第1のOSC材料と第1の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8、又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4、又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有してもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料上に堆積されていてもよい。あるいは、又は加えて、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、無機酸化物上に堆積されていてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料と第1の無機酸化物との両方の上に堆積されていてもよく、すなわち、その上に存在してもよい。
【0108】
好ましくは、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1の無機酸化物(例えば、アルミナ)上に担持/堆積されている。第1の無機酸化物に接触していることに加えて、又はそれに代えて、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料に、及び第1のPGM成分にも接触していてもよい。
【0109】
第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくは、バリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。
【0110】
好ましくは、バリウムは、BaCO3複合材料として存在する。このような材料を、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、incipient wetness含浸又は噴霧乾燥によって予備形成することができる。
【0111】
触媒物品は、第2の触媒領域を更に含んでもよい。第2の触媒領域は、第2のPGM成分、第2の酸素貯蔵能(OSC)材料、第2のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は第2の無機酸化物を含んでもよい。
【0112】
第2のPGM成分は、パラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、第1のPGM成分がRhであるとき、第2のPGM成分はPdであってもよい。他の実施形態では、第1のPGM成分がPdであるとき、第2のPGM成分はRhであってもよい。
【0113】
第2の触媒領域は、最大350g/ft3の第2のPGM成分を含んでもよい。好ましくは、第2の触媒領域は、10~300g/ft3、より好ましくは25~150g/ft3の第2のPGM成分を含んでもよい。
【0114】
第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.1~5g/in3であってもよい。好ましくは、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.5~3.5g/in3であり、最も好ましくは、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は1~2.5g/in3である。
【0115】
第2の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第2の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、ランタナ、シリカ、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、チタニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第2の無機酸化物は、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第2の無機酸化物は、アルミナ、ランタン/アルミナ複合酸化物、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。特に好ましい第2の無機酸化物の1つは、ランタン-アルミナ複合酸化物である。第2の無機酸化物は、第2のPGM成分のための担体材料、及び/又は第2のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のための担体材料であってもよい。
【0116】
第2の無機酸化物は、好ましくは、未使用で80m2/g超の比表面積、0.1~4mL/gの範囲の細孔容積を有する。100m2/g超の比表面積を有する高比表面積の無機酸化物、例えば高比表面積アルミナが特に好ましい。他の好ましい第2の無機酸化物としては、ランタン/アルミナ複合酸化物が挙げられ、これは、所望によりセリウム含有成分、例えば、セリアを更に含む。このような場合、セリアは、例えばコーティングとして、ランタン/アルミナ複合酸化物の表面上に存在してもよい。
【0117】
あるいは、第2の無機酸化物はまた、第1の無機酸化物と同じ特徴を有してもよい(例えば、ドーパントは、10~30%であってもよく、及び/又は、第2のPGM成分における、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比は、3:1未満であってもよい)。
【0118】
第2のOSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第2のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、La、Nd、Y、Prなどのいくつかのドーパントを更に含んでもよい。
【0119】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアのセリアに対するモル比が、少なくとも50:50であってよく、好ましくは60:40より高く、より好ましくは75:25より高くてもよい。加えて、第2のOSC材料は、第2のPGM成分のための担体材料として機能することができる。いくつかの実施形態では、第2のPGM成分は、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物上に担持されている。
【0120】
第2のOSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは35~65重量%であってもよい。
【0121】
第2の触媒領域における第2のOSC材料担持量は、1.5g/in3未満であってもよい。いくつかの実施形態では、第2の触媒領域における第2のOSC材料担持量は、1.2g/in3、1.0g/in3、0.9g/in3、0.8g/in3、0.7g/in3、又は0.6g/in3以下である。
【0122】
第2のOSC材料と第2の無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下、最も好ましくは2:1以下の重量比を有してもよい。
【0123】
あるいは、第2のOSC材料と第2の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは、8:1~1:8、又は5:1~1:5の重量比、より好ましくは、4:1~1:4、又は3:1~1:3の重量比、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有してもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2のOSC材料上に堆積されていてもよい。あるいは、又は加えて、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2の無機酸化物上に堆積されていてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2のOSC材料と第2の無機酸化物との両方の上に堆積されていてもよく、すなわち、その上に存在してもよい。
【0125】
好ましくは、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2の無機酸化物(例えば、アルミナ)上に担持/堆積されている。第2の無機酸化物に接触していることに加えて、又はそれに代えて、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2のOSC材料に、及び第2のPGM成分にも接触していてもよい。
【0126】
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくは、バリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。
【0127】
好ましくは、バリウムは、BaCO3複合材料として存在する。このような材料を、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、incipient wetness含浸又は噴霧乾燥によって予備形成することができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、60:1~1:60の重量比を有する。好ましくは、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、30:1~1:30の重量比を有する。より好ましくは、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、20:1~1:20の重量比を有する。最も好ましくは、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、15:1~1:15の重量比を有する。
【0129】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、基材と、基材上の第1の触媒領域と、基材上の第2の触媒領域と、を含み、第1の触媒領域が、第1のPGM成分と、第1の無機酸化物とを含み、第2の触媒領域が、第2のPGM成分と、第2の無機酸化物とを含み、第1の無機酸化物及び第2の無機酸化物のうちの少なくとも1つが、10~30%のドーパントでドープされている、触媒物品に関する。
【0130】
触媒物品は、第1のPGM成分(例えば、Pd)における、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対する比が、基準COの吸着手順下で3:1未満であってもよい。
【0131】
触媒物品は、第2のPGM成分(例えば、Rh)における、gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対する比が、基準COの吸着手順下で5:1未満であってもよい。
【0132】
第1の無機酸化物又は第2の無機酸化物のためのドーパントは、各々独立して、La、Sr、Si、Ba、Y、Pr、Nd、及びCeからなる群から選択される。更なる実施形態では、第1の無機酸化物又は第2の無機酸化物のためのドーパントはLaである。
【0133】
本開示の第3及び/又は第4の態様における、上記開示の全ての特徴、範囲、制限が、本開示のこの第5の態様に当てはまる。
【0134】
本発明の触媒物品は、当業者に知られている更なる成分を含んでもよい。例えば、本発明の組成物は、少なくとも1つのバインダー及び/又は少なくとも1つの界面活性剤を更に含んでもよい。バインダーが存在する場合、分散性のあるアルミナバインダーが好ましい。
【0135】
好ましくは、基材は、フロースルーモノリス又はウォールフローガソリン微粒子フィルタである。より好ましくは、基材は、フロースルーモノリスである。
【0136】
フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面とを有しており、それらの間に長手方向が画定される。フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面との間に延びている、複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、長手方向に伸びており、複数の内側表面(例えば、各チャネルを画定するウォールの表面)を提供する。複数のチャネルの各々は、第1の面にある開口部と、第2の面にある開口部と、を有する。誤解を回避するために、フロースルーモノリス基材はウォールフローフィルタではない。
【0137】
第1の面は、典型的には基材の入口端部にあり、第2の面は基材の出口端部にある。
【0138】
チャネルは一定の幅のものであってもよく、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有してもよい。
【0139】
好ましくは、長手方向に直交する平面内で、モノリス基材は、1平方インチ当たり100~900のチャネル、好ましくは300~750のチャネルを有する。例えば、第1の面上では、開いている第1のチャネル及び閉じた第2のチャネルの密度は、1平方インチ当たり300~750チャネルである。チャネルは、矩形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形形状である断面を有してもよい。
【0140】
モノリス基材は、触媒材料を保持するための担体として作用する。モノリス基材を形成するのに好適な材料としては、コージライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア若しくはケイ酸ジルコニウムなどのセラミック様材料、又は多孔質の耐火金属が挙げられる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は、当該技術分野において周知である。
【0141】
本明細書に記載のフロースルーモノリス基材は、単一構成要素(すなわち、単一のれんが状塊)であることに留意されたい。それにもかかわらず、排出物処理システムを形成する場合、使用されるモノリスは、複数のチャネルを一緒に接着することによって形成されてもよく、又は本明細書に記載のように複数のより小さいモノリスを一緒に接着することによって形成されてもよい。このような技術は、排出物処理システムの好適なケーシング及び構成とともに、当該技術分野において公知である。
【0142】
本発明の触媒物品がセラミック基材を含む実施形態では、セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コージライト及びスポジュメンなど)、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製されていてもよい。コージエライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0143】
本発明の触媒物品が金属基材を含む実施形態では、金属基材は、他の微量金属に加えて、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びに鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを含有するフェライト合金で作製されていてもよい。
【0144】
いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積されていてもよい。更なる実施形態では、第2の触媒領域は、第1の触媒領域上に担持/堆積されていてもよい。
【0145】
他の実施形態では、第2の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積されていてもよい。更なる実施形態では、第1の触媒領域は、第2の触媒領域上に担持/堆積されている。
【0146】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、NOx、CO、及びHCを含有する、車両排気ガスの処理方法に関する。本発明によって作製されたTWCを備えた触媒コンバータは、従来のTWCと比較して、改良された触媒性能を示した(例えば、実施例3及び実施例5、並びに表2及び表3を参照されたい)。
【0147】
本開示の別の態様は、システムを通して排気ガスを送り出すための導管とともに本明細書に記載の触媒物品を含む、車両排気ガス処理用システムに関する。
【0148】
定義
用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野において公知であり、通常、触媒の製造中に基材に適用される接着性コーティングを指す。
【0149】
本明細書で使用されるとき、頭字語「PGM」は、「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は、概ね、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir及びPtからなる群から選択される金属を指す。概ね、用語「PGM」は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0150】
本明細書で使用されるとき、用語「混合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、酸化物の単相での混合物を指す。本明細書で使用されるとき、用語「複合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0151】
本明細書で使用されるとき、「本質的になる」という表現は、特定の材料、及び例えばその特徴の基本特性に実質的に影響しない微量不純物などの任意の他の材料、又は工程を含む特徴の範囲を制限する。「から本質的になる」という表現は、「からなる」という表現を包含する。
【0152】
材料に関して本明細書で使用されるとき、「実質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容物との関係において、当該物質が少量、例えば、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることを意味する。「実質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0153】
材料に関して本明細書で使用されるとき、「本質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容物との関係において、材料が微量、例えば、1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下であることを意味する。「本質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0154】
本明細書で使用される重量%として表されるドーパントの量、特に総量に対する任意の言及は、担体材料又はその耐火金属酸化物の重量を指す。
【0155】
本明細書で使用される用語「担持量」は、金属重量基準でのg/ft3の単位での測定値を指す。
【0156】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識する。
【実施例0157】
材料
全ての材料は市販されており、別途記載のない限り、既知の供給元から入手した。
【0158】
ドープされた無機酸化物を合成するための基本手順
表面積約150m2/gの市販のγ-Al2O3をAl2O3担体として使用し、このAl2O3担体に対するLa添加を以下のように添加した。Al2O3担体に、La(NO3)3を含有する水溶液(La濃度=2.0mmol/mL)をLaについての目標担持量で含浸させた。この後、120℃で2時間乾燥し、空気中、600℃で2時間焼成して、LaをドープされたAl2O3材料を得た。
【0159】
実施例1
Laの含有量が1、4、10、及び15重量%であり、3重量%のPdを担持しているLaドープアルミナを含む触媒粉末を、基準COの吸着手順下でCOに暴露した。bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対する比を、IR分光法によって検出した。
【0160】
図1a及び
図1bに示すように、bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比は、アルミナ担体中のLa含有量の増加とともに低くなっていた。bridgeサイトのCOの、atopサイトのCOに対する比が低くなっていることは、PGMに対するCO被毒が抑制される傾向にあることを意味し得る。
【0161】
実施例2
Laの含有量が5重量%又は10重量%であり、1重量%のPdを担持させたLaドープアルミナからなり、コージライト基材上にコーティングされている触媒に対して、以下の条件下で、表1に示す組成を有する模擬排気ガスを用いた触媒性能試験を実施した。
【0162】
触媒性能試験では、HC、CO、及びNOx成分の各々の50%が変換される温度について評価した。50%が変換される温度が低くなっていることは、排気ガス浄化触媒としての性能がより良好になっていることを意味する。
【0163】
触媒性能試験では、ガス流量を100,000/時間の空間速度で設定し、温度を100℃から400℃まで、25℃/分の加熱速度で上昇させ、触媒を通過した後のガス組成を分析し、変換率を測定した。
【0164】
【0165】
図2に示すように、HC、CO、及びNOについての50%の変換での温度は、La=10重量%の高含有量Laドープアルミナについては、5重量%の場合より低くなった。
【0166】
実施例3
触媒1(比較)
触媒1は、二重層構造を有する三元(Pd-Rh)触媒である。底層は、第1のCeZr混合酸化物と、4重量%でのLa安定化アルミナと、Baプロモーターとからなるウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約2.5g/in3であり、Pd担持量は90g/ft3であった。上層は、第2のCeZr混合酸化物と、La安定化アルミナとからなるウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は約1.0g/in3であり、Rh担持量は9g/ft3であった。触媒1の総ウォッシュコート担持量は約3.5g/in3であった。
【0167】
触媒2
触媒2は、二重層構造を有する三元(Pd-Rh)触媒である。底層は、第1のCeZr混合酸化物と、15重量%での高含有量Laドープアルミナと、Baプロモーターとからなるウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約2.5g/in3であり、Pd担持量は90g/ft3であった。上層は、第2のCeZr混合酸化物と、La安定化アルミナとからなるウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は約1.0g/in3であり、Rh担持量は9g/ft3であった。触媒2の総ウォッシュコート担持量は約3.5g/in3であった。
【0168】
比較触媒1及び触媒2を、燃料カットエージングサイクルにより、950℃のピーク温度で、75時間ベンチエージングし、1.5Lのエンジンを有する商用車両に対し車両排出を実施した。触媒の前後で排出量を測定した。
【0169】
【0170】
表2に示すように、触媒2は、比較触媒1と比較して、HC、NMHC、CO、及びNOxの排出量の有意な減少を示した。
【0171】
実施例4
Laの含有量が1、4、10、及び15重量%であり、3重量%のRhを担持しているLaドープアルミナを含む触媒粉末を、基準COの吸着手順下でCOに暴露した。gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対する比を、IR分光法によって検出した。
【0172】
図3a及び
図3bに示すように、gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対するIR強度比は、アルミナ担体中のLa含有量の増加とともに低くなっていた。gem-ジカルボニルサイトのCOの、atopサイトのCOに対する比が低くなっていることで、PGMに対するCO被毒は抑制される傾向にあることを意味し得る。
【0173】
実施例5
触媒3(比較)
触媒3は、二重層構造を有する三元(Pd-Rh)触媒である。底層は、第1のCeZr混合酸化物と、4重量%でのLa安定化アルミナと、Baプロモーターとからなるウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約2.0g/in3であり、Pd担持量は140g/ft3であった。上層は、第2のCeZr混合酸化物と、La安定化アルミナとからなるウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は約1.0g/in3であり、Rh担持量は25g/ft3であった。触媒3の総ウォッシュコート担持量は約3.0g/in3であった。
【0174】
触媒4
触媒4は、二重層構造を有する三元(Pd-Rh)触媒である。底層は、第1のCeZr混合酸化物と、4重量%でのLa安定化アルミナと、Baプロモーターとからなるウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約2.0g/in3であり、Pd担持量は140g/ft3であった。上層は、第2のCeZr混合酸化物と、15重量%での高含有量Laドープアルミナとからなるウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は約1.0g/in3であり、Rh担持量は25g/ft3であった。触媒4の総ウォッシュコート担持量は約3.0g/in3であった。
【0175】
触媒5
触媒5は、二重層構造を有する三元(Pd-Rh)触媒である。底層は、第1のCeZr混合酸化物と、15重量%での高含有量Laドープアルミナと、Baプロモーターとからなるウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約2.0g/in3であり、Pd担持量は140g/ft3であった。上層は、第2のCeZr混合酸化物と、15重量%での高含有量Laドープアルミナとからなるウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は約1.0g/in3であり、Rh担持量は25g/ft3であった。触媒5の総ウォッシュコート担持量は約3.0g/in3であった。
【0176】
比較触媒3、触媒4、及び触媒5を、燃料カットエージングサイクルにより、950℃のピーク温度で、75時間ベンチエージングし、1.5Lのエンジンを有する商用車両に対し車両排出を実施した。触媒の前後で排出量を測定した。
【0177】
【0178】
表3に示すように、触媒4及び触媒5は、比較触媒3と比較して、HC、NMHC、CO、及びNOxの排出量の有意な減少を示した。
前記第1の無機酸化物及び/又は前記第2の無機酸化物のための前記ドーパントが、各々独立して、La、Sr、Si、Ba、Y、Pr、Nd、及びCeからなる群から選択される、請求項1に記載の触媒物品。