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特開2023-16232光触媒ユニットおよび該光触媒ユニットの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016232
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】光触媒ユニットおよび該光触媒ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/12 20060101AFI20230126BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20230126BHJP
   C02F 1/72 20230101ALI20230126BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20230126BHJP
   A61L 9/18 20060101ALI20230126BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20230126BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20230126BHJP
   F24F 8/167 20210101ALI20230126BHJP
【FI】
B01J19/12 C
B01J35/02 J
C02F1/72 101
A61L9/00 C
A61L9/18
A61L9/20
A61L9/16 F
F24F8/167
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120413
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】506095456
【氏名又は名称】APSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 秀満
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 泰之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 剛文
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅夫
【テーマコード(参考)】
4C180
4D050
4G075
4G169
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180CC03
4C180DD03
4C180DD04
4C180DD09
4C180EA33X
4C180EA34X
4C180HH05
4C180HH15
4C180HH19
4D050AA01
4D050AB04
4D050BC06
4D050BC09
4D050BD02
4G075AA03
4G075AA13
4G075AA37
4G075AA57
4G075BA04
4G075BA05
4G075BA06
4G075BB10
4G075CA32
4G075CA33
4G075CA54
4G075DA02
4G075EB01
4G075EB31
4G075EC09
4G075ED02
4G075ED08
4G075FB02
4G169AA03
4G169BA48A
4G169CA02
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA06
4G169HA05
4G169HB01
4G169HB06
4G169HE03
4G169HE07
4G169HF03
4G169HF05
(57)【要約】
【課題】光触媒に効率よく紫外線を照射して光触媒による流体清浄化作用を向上できると同時に、光触媒フィルタと光照射部とからなる光触媒ユニットとして、薄型、小型化が可能であり、流路構造の設計自由度も高く、また、光量を大きくしたり数を増やすことなく、全体として十分な清浄化効果を得ることが可能な光触媒ユニットを提供する。
【解決手段】光触媒担持体は、ブロアファン様又はクロスフローファン様の羽根車、またはブロアファン又はクロスフローファンの羽根車であり、羽根車4は、各羽根板41を軸心40方向の両端部でそれぞれ連結する一対の連結板42、43を有し、各羽根板41と連結板42、43とは、各羽根板の端部の一部が連結板に形成された貫通溝を貫通して突出するとともに、当該突出部が軸心方向に交差する方向で且つ羽根板の面に平行な方向に屈曲して連結板の貫通溝の開口縁部に圧着した状態に固定されている。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過する流体通過路を有するとともに、該流体通過路内に、前記流体が接する表面に光触媒が担持された光触媒担持体を有する光触媒フィルタと、
前記光触媒フィルタの内部に設けられ、前記光触媒担持体の前記光触媒が担持された表面に向けて紫外線又は可視光の光を照射する光照射部とを備える光触媒ユニットであって、
前記光触媒担持体は、表面に前記光触媒が担持された金属製の複数の羽根板を有し、これら複数の羽根板が、前記流体通過路を通過する流体から圧力を受けて共通の軸心を中心に回転するブロアファン様又はクロスフローファン様の羽根車、またはモータ駆動により共通の軸心を中心に回転するブロアファン又はクロスフローファンの羽根車からなり、
前記羽根車は、各羽根板を前記軸心方向の両端部でそれぞれ連結する一対の連結板を有し、各羽根板と前記連結板とは、各羽根板の端部の一部が前記連結板に形成された貫通溝を貫通して突出するとともに、当該突出部が前記軸心方向に交差する方向で且つ羽根板の面に平行な方向に屈曲して連結板の貫通溝の開口縁部に圧着した状態に固定されており、
前記光照射部は、前記羽根車の羽根板よりも外周側の所定位置から当該羽根車の回転する羽根板に前記光を照射するように設けらている、
光触媒ユニット。
【請求項2】
前記羽根車を構成する前記一対の連結板の各表面にも、前記光触媒が担持されている、請求項1記載の光触媒ユニット。
【請求項3】
前記光触媒フィルタは、前記羽根車の外周側に周方向に延設され、前記羽根車との間に流体流路を形成する金属製の整流板と、該整流板の前記軸心方向の両端部にそれぞれ固定され、該整流板を挟み込むように設けられた上下一対のカバー板とを有し、
前記整流板と各カバー板とは、整流板の端部の一部がカバー板に形成された貫通溝を貫通して突出するとともに、当該突出部が前記軸心方向に交差する方向で且つ整流板の面に平行な方向に屈曲してカバー板の貫通溝の開口縁部に圧着した状態に固定されている、請求項1又は2記載の光触媒ユニット。
【請求項4】
前記光照射部は、前記整流板の外側の位置に設けられ、該整流板に形成された投光用の通孔を通じて内側の前記羽根車の軸心に向け前記光を照射する、請求項3記載の光触媒ユニット。
【請求項5】
前記羽根板の外周方向に設けられる流体導出口の開口面の中心点と、前記整流板に形成された投光用の前記通孔の内側開口面の中心点とを結ぶ直線上の両点の間に、前記整流板が存在し、前記通孔から内側に照射された光が直接前記流体導出口から出ていくことが無いように構成されている、請求項1~4の何れか1項に記載の光触媒ユニット。
【請求項6】
流体が通過する流体通過路を有するとともに、該流体通過路内に、前記流体が接する表面に光触媒が担持された光触媒担持体を有する光触媒フィルタと、
前記光触媒フィルタの内部に設けられ、前記光触媒担持体の前記光触媒が担持された表面に向けて紫外線又は可視光の光を照射する光照射部とを備える光触媒ユニットの製造方法であって、
前記光触媒担持体は、表面に前記光触媒が担持された金属製の複数の羽根板を有し、これら複数の羽根板が、前記流体通過路を通過する流体から圧力を受けて共通の軸心を中心に回転するブロアファン様又はクロスフローファン様の羽根車、またはモータ駆動により共通の軸心を中心に回転するブロアファン又はクロスフローファンの羽根車より構成し、
前記羽根車は、各羽根板を前記軸心方向の両端部でそれぞれ連結する一対の連結板を設けて構成し、
各羽根板と前記連結板とは、各羽根板の端部の一部を前記連結板に形成した貫通溝に貫通させて突出させ、カシメにより、当該突出部を前記軸心方向に交差する方向で且つ羽根板の面に平行な方向に屈曲変形させて連結板の貫通溝の開口縁部に固定し、
前記光照射部は、前記羽根車の羽根板よりも外周側の所定位置から当該羽根車の回転する羽根板に前記光を照射するように設けて構成する、
光触媒ユニットの製造方法。
【請求項7】
前記各羽根板及び一対の連結板からなる前記羽根車の全体の表面を、エッチング処理を含む粗面処理により粗面化し、
該粗面化した表面に、前記光触媒を担持する、
請求項7記載の光触媒ユニットの製造方法。
【請求項8】
前記粗面化した後、前記カシメによる固定箇所を再カシメする、請求項7記載の光触媒ユニットの製造方法。
【請求項9】
前記光触媒フィルタは、前記羽根車の外周側に周方向に延設され、前記羽根車との間に流体流路を形成する金属製の整流板と、該整流板の前記軸心方向の両端部にそれぞれ固定され、該整流板を挟み込むように設けられた上下一対のカバー板とを設けて構成し、
前記整流板と各カバー板とは、整流板の端部の一部をカバー板に形成した貫通溝に貫通させて突出させ、カシメにより、当該突出部を前記軸心方向に交差する方向で且つ整流板の面に平行な方向に屈曲変形させ、カバー板の貫通溝の開口縁部に固定する、請求項6~8の何れか1項に記載の光触媒ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒により空気等の流体を清浄化する光触媒ユニット、及び該光触媒ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光触媒を利用してウイルス等を分解する空気清浄化構造を有する空気清浄機が提案されている(たとえば、特許文献1、2参照。)。これら従来の光触媒による空気清浄化構造は、厚み方向に貫通する多数の空気通過孔を有する板状基材(フィルタ基材)の表裏面の一方の面に、酸化チタンなどの光触媒を担持させて光触媒フィルタを構成し、当該光触媒フィルタの光触媒担持面に対面する位置に紫外線ランプを、複数本間隔をあけて配置した光触媒ユニットを設け、該ユニットに対し、表裏一方の側からフィルタ厚み方向に空気を供給して、フィルタの空気通過孔、光触媒層及び複数本の紫外線ランプの間の隙間に空気を流通させる構造である。そして、光触媒層を通過する過程で、紫外線で励起した光触媒により空気中の有害物を分解・除去する。
【0003】
このような従来の光触媒ユニットを用いた空気清浄化構造は、光触媒フィルタと紫外線ランプとをフィルタの厚み方向に互いに対面させて配置していることからユニットの厚みが大きくなり、薄型コンパクト化に限界がある。また、紫外線ランプの間を空気が流通する構造であるため、空気の抵抗になる紫外線ランプの本数を増やすにも限界があり、光触媒フィルタへの紫外線の照射量、照射効率の向上にも一定の限界がある。たとえば、板状基材の空気通過孔の内面奥側まで光触媒を担持させたとしても、当該奥まで効率よく紫外線を照射させることが難しい。
【0004】
これに対し、表裏面に光触媒が担持される複数の板状部を、隣接する板状部の表裏面が隙間をあけて対向するように配置し、前記隙間を空気の流通路とする光触媒フィルタを構成し、前記光触媒フィルタの各板状部の端面のうち、前記隙間への空気の入口側の端面及び前記隙間からの空気の出口側の端面の少なくとも一方の側の端面に対向する位置であって、該端面から所定距離離れた位置に、前記隙間に向けて紫外線を照射する紫外線照射部を配置し、該紫外線照射部と各板状部の端面との間に、該端面に略平行な側方より空気を取り込み、前記板状部の間の隙間よりなる前記流通路に供給する空気供給路、又は前記流通路から出た空気を、前記端面に略平行な側方に排出する空気排出路を形成してなる空気清浄化構造が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
このような空気清浄化構造では、光触媒フィルタの各板状部の端面のうち空気の入口側又は出口側の端面から所定距離離れた位置に紫外線照射部を配置し、該紫外線照射部と各板状部の端面との間に、該端面に略平行な側方より空気を取り込む空気供給路、又は空気を前記端面に略平行な側方に排出する空気排出路を形成しており、紫外線ランプの隙間を通じて空気を供給又は排出するものではないので、紫外線照射部の設計の自由度が著しく向上し、各板状部の光触媒により効率よく紫外線を照射して光触媒による空気清浄化作用を著しく向上させることが容易となる。
【0006】
しかし、このような空気清浄化構造は、紫外線照射部と光触媒フィルタとの間の側方から空気をL字状に供給又は排出する構造であるため、空気の供給/排出の形態(流路)が限定されるとともに、ユニット全体として大型化してしまうことが避けられない。また、このようなL字状ではなくフィルタ厚み方向にまっすぐに流体を通したい場合等には、前記構成を採用できず、流路構造が限定されてしまうという問題があった。
【0007】
また、本出願人は、薄型、小型化が可能で、流路構造の設計自由度も高い、次のような光触媒による流体清浄化構造も提案している(特許文献4)。すなわち、山部と谷部が交互に複数形成された波型の部材よりなり、前記山部の頂部および谷部の底部の一方又は双方に、流体を通過させるための流体通過穴が形成され、表裏面に光触媒が担持された光触媒フィルタと、前記光触媒フィルタの前記山部および谷部が延びている方向の一端側と他端側の一方又は双方に設けられ、前記山部および谷部が延びている内方に向けて紫外線又は可視光の光を照射する光照射部と、前記光触媒フィルタの前記表裏面のうち一方の面の側に設けられ、前記一方の面に向けて流体を供給する流体供給路と、前記光触媒フィルタの前記表裏面のうち他方の面の側に設けられ、前記流体供給路から供給されて前記流体通過穴を通過し、前記他方の面から出た流体を排出する流体排出路と、前記流体供給路及び前記流体排出路の一方又は双方に内装され、前記一方の面又は他方の面に対面して設けられる集塵フィルタとを備える光触媒による流体清浄化構造を提案している。
【0008】
このような流体清浄化構造によれば、光照射部は、従来のようにフィルタ面に対面した位置に設けるのではなく、光触媒フィルタの山部および谷部が延びている方向の一端側と他端側の一方又は双方に設けられ、その位置から前記山部および谷部が延びている内方に向けて紫外線又は可視光の光を照射するように構成しているため、光照射部に邪魔されることなく流体をフィルタ厚み方向にまっすぐに流通させることが可能となり、流路設計上の自由度が向上するとともに、フィルタ及び光照射部からなるユニットを著しく薄型化、コンパクト化することができる。
【0009】
しかしながら、上記のごとく光触媒フィルタの山部および谷部が延びている方向の端部から内方に光を照射する構造であるため、フィルタ効果を得るために光触媒フィルタを大面積化して山部、谷部が長くなると、内方奥まで光が十分に届きにくく、特に、光照射部の位置から離れた山部/谷部は光が不十分となり、光照射部の光量を大きくしたり、数は増やす必要があり、コスト増大および発熱の課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実用新案登録第3150894号公報
【特許文献2】特表2011-114894号公報
【特許文献3】特開2017-148484号公報
【特許文献4】特開2021-7676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、光触媒に効率よく紫外線を照射して光触媒による流体清浄化作用を向上できると同時に、光触媒フィルタと光照射部とからなる光触媒ユニットとして、薄型、小型化が可能であり、流路構造の設計自由度も高く、また、光量を大きくしたり数を増やすことなく、全体として十分な清浄化効果を得ることが可能な光触媒ユニットを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、かかる現況に鑑み、鋭意検討した結果、光触媒フィルタを従来からの山部、谷部を有する固定式の波板からなるものではなく、光触媒が担持された複数の羽根板が流体から圧力を受けて又はモータ等で駆動されて回転する羽根車を設け、この羽根車の回転する羽根板に対して外周側から光を照射すれば、該羽根板の表面に順次、均一に光を照らすことができ、これにより少ない光照射部で光触媒担持部に均一に効率よく光を供給し、光量を大きくしたり、数を増やすことなく、全体として十分な清浄化効果を得ることが可能となることを見出し、さらに高速回転させても問題がない優れた剛性を備える回転体の構造を発案し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 流体が通過する流体通過路を有するとともに、該流体通過路内に、前記流体が接する表面に光触媒が担持された光触媒担持体を有する光触媒フィルタと、前記光触媒フィルタの内部に設けられ、前記光触媒担持体の前記光触媒が担持された表面に向けて紫外線又は可視光の光を照射する光照射部とを備える光触媒ユニットであって、前記光触媒担持体は、表面に前記光触媒が担持された金属製の複数の羽根板を有し、これら複数の羽根板が、前記流体通過路を通過する流体から圧力を受けて共通の軸心を中心に回転するブロアファン様又はクロスフローファン様の羽根車、またはモータ駆動により共通の軸心を中心に回転するブロアファン又はクロスフローファンの羽根車からなり、前記羽根車は、各羽根板を前記軸心方向の両端部でそれぞれ連結する一対の連結板を有し、各羽根板と前記連結板とは、各羽根板の端部の一部が前記連結板に形成された貫通溝を貫通して突出するとともに、当該突出部が前記軸心方向に交差する方向で且つ羽根板の面に平行な方向に屈曲して連結板の貫通溝の開口縁部に圧着した状態に固定されており、前記光照射部は、前記羽根車の羽根板よりも外周側の所定位置から当該羽根車の回転する羽根板に前記光を照射するように設けらている、光触媒ユニット。
【0014】
(2) 前記羽根車を構成する前記一対の連結板の各表面にも、前記光触媒が担持されている、(1)記載の光触媒ユニット。
【0015】
(3) 前記光触媒フィルタは、前記羽根車の外周側に周方向に延設され、前記羽根車との間に流体流路を形成する金属製の整流板と、該整流板の前記軸心方向の両端部にそれぞれ固定され、該整流板を挟み込むように設けられた上下一対のカバー板とを有し、前記整流板と各カバー板とは、整流板の端部の一部がカバー板に形成された貫通溝を貫通して突出するとともに、当該突出部が前記軸心方向に交差する方向で且つ整流板の面に平行な方向に屈曲してカバー板の貫通溝の開口縁部に圧着した状態に固定されている、(1)又は(2)記載の光触媒ユニット。
【0016】
(4) 前記光照射部は、前記整流板の外側の位置に設けられ、該整流板に形成された投光用の通孔を通じて内側の前記羽根車の軸心に向け前記光を照射する、(3)記載の光触媒ユニット。
【0017】
(5) 前記羽根板の外周方向に設けられる流体導出口の開口面の中心点と、前記整流板に形成された投光用の前記通孔の内側開口面の中心点とを結ぶ直線上の両点の間に、前記整流板が存在し、前記通孔から内側に照射された光が直接前記流体導出口から出ていくことが無いように構成されている、(1)~(4)の何れかに記載の光触媒ユニット。
【0018】
(6) 流体が通過する流体通過路を有するとともに、該流体通過路内に、前記流体が接する表面に光触媒が担持された光触媒担持体を有する光触媒フィルタと、前記光触媒フィルタの内部に設けられ、前記光触媒担持体の前記光触媒が担持された表面に向けて紫外線又は可視光の光を照射する光照射部とを備える光触媒ユニットの製造方法であって、前記光触媒担持体は、表面に前記光触媒が担持された金属製の複数の羽根板を有し、これら複数の羽根板が、前記流体通過路を通過する流体から圧力を受けて共通の軸心を中心に回転するブロアファン様又はクロスフローファン様の羽根車、またはモータ駆動により共通の軸心を中心に回転するブロアファン又はクロスフローファンの羽根車より構成し、前記羽根車は、各羽根板を前記軸心方向の両端部でそれぞれ連結する一対の連結板を設けて構成し、各羽根板と前記連結板とは、各羽根板の端部の一部を前記連結板に形成した貫通溝に貫通させて突出させ、カシメにより、当該突出部を前記軸心方向に交差する方向で且つ羽根板の面に平行な方向に屈曲変形させて連結板の貫通溝の開口縁部に固定し、前記光照射部は、前記羽根車の羽根板よりも外周側の所定位置から当該羽根車の回転する羽根板に前記光を照射するように設けて構成する、光触媒ユニットの製造方法。
【0019】
(7) 前記各羽根板及び一対の連結板からなる前記羽根車の全体の表面を、エッチング処理を含む粗面処理により粗面化し、該粗面化した表面に、前記光触媒を担持する、(7)記載の光触媒ユニットの製造方法。
【0020】
(8) 前記粗面化した後、前記カシメによる固定箇所を再カシメする、(7)記載の光触媒ユニットの製造方法。
【0021】
(9) 前記光触媒フィルタは、前記羽根車の外周側に周方向に延設され、前記羽根車との間に流体流路を形成する金属製の整流板と、該整流板の前記軸心方向の両端部にそれぞれ固定され、該整流板を挟み込むように設けられた上下一対のカバー板とを設けて構成し、前記整流板と各カバー板とは、整流板の端部の一部をカバー板に形成した貫通溝に貫通させて突出させ、カシメにより、当該突出部を前記軸心方向に交差する方向で且つ整流板の面に平行な方向に屈曲変形させ、カバー板の貫通溝の開口縁部に固定する、(6)~(8)の何れかに記載の光触媒ユニットの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
以上のように構成してなる本願発明によれば、光触媒が担持された複数の羽根板に対し、外周側の位置に設けた光照射部より紫外線又は可視光の光を照射することで、流体中の有害物質や悪臭等をフィルタ表面に担持されている光触媒によって効率よく分解・除去することができる。また、光照射部は羽根板の外周側の位置に設けられ、光照射部に邪魔されることなく流体を流通させることが可能であり、流路設計上の自由度が向上するとともに、フィルタ及び光照射部からなるユニットを著しく薄型化、コンパクト化することができる。
【0023】
また、本発明によれば、光照射部からの光を回転する羽根板の表面に順次、均一に照らすことができ、少ない光照射部で光触媒担持部に均一に効率よく光を供給し、光量を大きくしたり、数を増やすことなく、全体として十分な清浄化効果を得ることが可能となり、コスト増大を避け、光照射部による発熱量を抑え、熱の問題も解決することができる。光照射部は、前記外周側の所定位置から当該羽根車の軸部に向けて光を照射することが、羽根板の両面に光を当てるうえで効率的である。
【0024】
また、とくに前記羽根車は、各羽根板を前記軸心方向の両端部でそれぞれ連結する一対の金属製の連結板を有し、各羽根板と前記連結板とは、各羽根板の端部の一部が前記連結板に形成された貫通溝を貫通して突出するとともに、当該突出部が前記軸心方向に交差する方向で且つ羽根板の面に平行な方向に屈曲して連結板の貫通溝の開口縁部に圧着した状態に固定されているので、当該固定構造は、屈曲して圧着している部分が板面に平行に屈曲した部分であることから応力開放等で緩みが生じにくく、優れた連結強度を維持でき、風圧によっても羽根板が倒れずに安定した姿勢を維持できるため、羽根車に設計通りの優れた回転バランスを与え、より高速で回転させることで、より優れた清浄化効果を得ることが可能となる。
【0025】
また、このような圧着による羽根板の固定構造は、カシメ加工で効率よく実現されるが、後述するように、当該固定構造は、板面に平行に屈曲した部分が二度のカシメを行っても強度を保つことができるため、一度目のカシメ(仮カシメ)を行った後、羽根板の表面に光触媒を担持するための下地処理としてのエッチング等を行い、固着部分が緩んでも、その後、二度目のカシメを行えば、強度を維持することができる。
【0026】
ここで、前記羽根車を構成する前記一対の連結板の各表面にも、前記光触媒が担持されているものでは、清浄化効果を高めることができるとともに、上述のとおり二度のカシメを行うことで、連結板も含めて羽根車全体について、エッチング等の下地処理および光触媒の担持を一度に効率よく行うことが可能である。
【0027】
また、前記光触媒フィルタが、前記羽根車の外周側に周方向に延設され、前記羽根車との間に流体流路を形成する金属製の整流板と、該整流板の前記軸心方向の両端部にそれぞれ固定され、該整流板を挟み込むように設けられた上下一対のカバー板とを有し、前記整流板と各カバー板とは、整流板の端部の一部がカバー板に形成された貫通溝を貫通して突出するとともに、当該突出部が前記軸心方向に交差する方向で且つ整流板の面に平行な方向に屈曲してカバー板の貫通溝の開口縁部に圧着した状態に固定されているものでは、流体流路を形成する整流板についても、羽根板の連結板への固定と同様の構造としたことから、緩みが生じにくく、風圧に耐える優れた連結強度を維持でき、風圧によっても安定した姿勢を維持できるので、寸法精度を維持でき、羽根車との隙間を必要最小限に抑えて薄型コンパクト化を図ることが可能となる。
【0028】
また、前記光照射部が、前記整流板の外側の位置に設けられ、該整流板に形成された投光用の通孔を通じて内側の前記羽根車の軸心に向け前記光を照射するものでは、光照射部が整流板内側の流体の流れを邪魔せず、圧損をより低減できるとともに、流体の流れの中に置かれることによる埃の付着等による劣化を回避することができる。また、このような光照射部は整流板とカバー板からなる筐体構造から独立して構成することができるので、整流板の内側に配置する場合に比べて、光照射部の配線等の処理も容易となり、製作上、組み立て上ともに作業が簡素化される。
【0029】
また、前記羽根板の外周方向に設けられる流体導出口の開口面の中心点と、前記整流板に形成された投光用の前記通孔の内側開口面の中心点とを結ぶ直線上の両点の間に、前記整流板が存在し、前記通孔から内側に照射された光が直接前記流体導出口から出ていくことが無いように構成されているものでは、人体に有害な紫外線が流体導出口から漏れることをより確実に防止できる。
【0030】
とくに、前記光触媒担持体が、ブロアファン様又はブロアファンの羽根車であり、前記流体通過路は、前記軸心に沿った方向、もしくは該軸心と直交する方向の一方側から前記流体を導入する流体導入部と、前記軸心に沿った方向、もしくは該軸心直交する方向の他方側に向けて前記流体を導出する流体導出部とを有するものでは、光照射部から回転する羽根板に向けて光を照射した状態で、流体通過路を通過する流体を羽根板の表面に担持された光触媒に接触させることにより、同じく流体中の有害物質や悪臭等を、光触媒の触媒作用によって効率よく分解・除去することができるとともに、流体通過路を通過する流体の流動方向が上記直交する方向に変化することや、回転する羽根板間に流体が一時滞留することから流体と光触媒が担持された羽根板の表面との接触機会が高まり、上記触媒作用を高めることができる。また、上記のとおり流体導入部に対して直交する方向に流体導出部が設けられるため、設計上のバリエーションを高めることができる。
【0031】
また、前記光触媒担持体が、前記クロスフローファン様又はクロスフローファンの羽根車であり、流体通過路が、前記軸心と直交する方向から前記流体を導入する流体導入部と、前記軸心と直交する方向の前記流体導入部と異なる位置から前記流体を導出する流体導出部とを有するものでは、同じく流体中の有害物質や悪臭等を、光触媒の触媒作用によって効率よく分解・除去することができるとともに、回転する羽根板間に流体が一時滞留する時間を前記ブロアファン様又はブロアファンのものよりも長くでき、流体と光触媒が担持された前記羽根板の表面との接触機会がより高まり、上記触媒作用を高めることができる。また、羽根板の軸心方向の寸法を自由に設定できるため、流体通過路を軸心方向に大きくとることができ、比較的大きな流路にも効率よく設置でき、流通抵抗をより低く抑えることも容易である。
【0032】
また、各羽根板と前記連結板とを、各羽根板の端部の一部を前記連結板に形成した貫通溝に貫通させて突出させ、カシメにより、当該突出部を前記軸心方向に交差する方向で且つ羽根板の面に平行な方向に屈曲変形させて連結板の貫通溝の開口縁部に固定する製造方法によれば、当該カシメは、羽根板を板面に平行に屈曲させて圧着させるカシメであるので、二度のカシメを行っても強度を保ることができ、一度目のカシメ(仮カシメ)を行った後、羽根板の表面に光触媒を担持するための下地処理としてのエッチング等を行い、固着部分が緩んでも、その後、二度目のカシメを行えば、強度を維持することができる。
【0033】
一般的にはエッチング処理は板厚が薄くなりカシメ部分が緩むことから、エッチング処理のような下地処理を行う場合には、カシメの様な部材同士の圧着方式は不適合であり、採用されない。しかし、本発明では、上記のように二度のカシメも可能な固定構造としたことから、通常と異なり、上記下地処理を行う場合でもカシメ方法を採用することが可能となった。そして、このようなカシメによる固定が可能になったことで、光触媒を担持する羽根板の枚数を増やし、紫外線の照射を受ける光触媒の表面積を最大化して清浄化効果を高めることが容易になったので、デバイスの最小化によっても、満足できる分解性能を確保することが可能になったのである。
【0034】
前記各羽根板及び一対の連結板からなる前記羽根車の全体の表面を、エッチング処理を含む粗面処理により粗面化し、該粗面化した表面に、前記光触媒を担持する製造方法では、効率よく光触媒の担持処理を行うことができる。
【0035】
ここで、前記粗面化した後、前記カシメによる固定箇所を再カシメすれば、強度を維持することができる。このような再カシメが可能な本発明では、上記のとおり、光触媒の担持処理も効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の代表的実施形態にかかる光触媒ユニットを示す斜視図。
図2】同じく光触媒ユニットの分解斜視図。
図3】同じく光触媒ユニットの一部省略斜視図。
図4】同じく光触媒ユニットの内部の光触媒フィルタを示す斜視図。
図5A】同じく光触媒ユニットの縦断面図。
図5B】同じく光触媒ユニットの縦断面図。
図5C】同じく光触媒ユニットの要部の縦断面図。
図6】同じく光触媒ユニットの内部構造を示す横断面図。
図7】(a)同じく光触媒フィルタの内部の羽根車(光触媒担持体)を示す斜視図,(b)は同じく羽根車の羽根板の配列状態を示す斜視図。
図8】同じく羽根車の製造手順を示す説明図。
図9A】同じく製造手順の説明図。
図9B】同じく製造手順の説明図。
図9C】同じく製造手順の説明図。
図9D】同じく製造手順の説明図。
図10A】本発明の光触媒ユニットの変形例を示す一部破断斜視図。
図10B】同じく変形例の縦断面図。
図11】本発明の光触媒ユニットの更に他の変形例の内部構造を示す斜視図。
図12】本発明の光触媒ユニットの更に他の変形例に係る光触媒フィルタを示す斜視図。
図13】同じく光触媒フィルタの横断面図。
図14】同じく光触媒フィルタの縦断面図。
図15】本発明の光触媒ユニットの更に他の変形例の内部構造を示す斜視図。
図16】同じく変形例の内部構造を示す横断面図。
図17】同じく変形例の内部構造を示す縦断面図。
図18】同じく変形例の要部の説明図。
図19A】モータ筐体と軸部とのカシメ加工を示す説明図。
図19B】モータ筐体と軸部とのカシメ加工を示す説明図。
図20】使用形態を示す説明図。
図21】他の使用形態を示す説明図。
図22】更に他の使用形態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、本発明の光触媒ユニットの実施形態を添付図面に基づき説明する。
【0038】
本発明の代表的実施形態に係る光触媒ユニット1は、図1図5Cに示すように、流体の導入口11および導出口12を有する筐体8内部に、流体が通過する表面に光触媒が担持された光触媒担持体(羽根車4)を有する光触媒フィルタ2と、前記光触媒が担持された光触媒担持体の表面に紫外線又は可視光の光を照射する光照射部3とを備えたものであり、光触媒が担持された光触媒担持体(羽根車4)の表面に対して光照射部3から紫外線又は可視光の光を照射することで、流体中の有害物質や悪臭等を光触媒によって効率よく分解・除去するものである。
【0039】
光触媒フィルタ2は、流体が通過する流体通過路10を有するとともに、流体通過路10内に、流体が接する表面に光触媒が担持された光触媒担持体(羽根車4)を有している。また、光照射部3は、光触媒フィルタ2の内部に設けられ、光触媒が担持された複数の羽根板41に対し、外周側の位置に設けた光照射部3から紫外線又は可視光の光を照射する。
【0040】
光照射部3からの光は、回転する羽根板41の表面に順次、均一に照らす構造である。このため、少ない光照射部3で光触媒担持部に均一に効率よく光を供給し、光量を大きくしたり、数を増やすことなく、全体として十分な清浄化効果を得ることが可能となり、コスト増大を避け、光照射部による発熱量を抑え、熱の問題も解決することができる。
【0041】
対象とする流体は、空気や水をはじめ、種々の気体、液体等の流体が該当する。また、光触媒やこれに照射する紫外線又は可視光は、光触媒作用が生じる種々のものを広く利用できる。光触媒は、酸化チタン等の紫外線励起型の光触媒や、三酸化タングステンを主成分とした可視光励起型の光触媒などを広く用いることができる。光触媒の担持(光触媒層の形成)の方法は特に限定されないが、比較的コストの掛からないスラリー浸漬含浸法が好ましい。その他の浸漬含浸法、真空含浸法、ゾルゲル法などの手段を用いることもできる。
【0042】
光照射部3は、たとえば図外の電源等から供給される電力により光を照射する光源としてのLED素子を有するLED基板が用いられているが、これに限定されない。従来の光触媒フィルタでは光触媒担持体の表面に光を照射する照射部は、当該表面の大きさに応じてすべてを同時に照らせるだけの数を設ける必要があるが、本発明では、上述のとおり、羽根車4からなる光触媒担持体が回転するため、光照射部3の設置部に、羽根板41及び軸部40が近接した時点で、その表面に順次、光照射部3から光が照射される。したがって、1つ又は2つ程度の光照射部3を設けるだけで、すべての羽根板41の表面全体に均一に、光照射することが可能となる。
【0043】
本実施形態の光触媒担持体(羽根車4)は、表面に前記光触媒が担持された金属製の複数の羽根板41を有し、これら複数の羽根板41がモータ5の駆動により共通の軸心40を中心に回転するブロアファンの羽根車4で構成されている。
【0044】
より具体的には、図7(a),(b)にも示すように、羽根車4は各羽根板41を軸心方向の両端部でそれぞれ連結する一対の連結板42、43を有し、各羽根板41と前記連結板42、43とは、各羽根板41の端部(図面上の上下方向の上端部41a、下端部41b)の一部が連結板42、43に形成された貫通溝42c、43cを貫通して突出するとともに、当該突出部(上端部41aの突出部411,412,下端部41bの突出部413、414)が前記軸心方向に交差する方向で且つ羽根板の面に平行な方向に屈曲して連結板42、43の貫通溝42c、43cの開口縁部に圧着した状態で固定されている。
【0045】
このような羽根板41と連結板42、43の固定構造は、屈曲して圧着している部分(突出部411~414)が板面に平行な方向に屈曲しているため応力開放等で緩みが生じにくく、優れた連結強度を維持できる構造となっている。したがって、回転数を上げて風圧を強くしても羽根板が倒れず安定した姿勢を保つことができ、設計通りの優れた回転バランスが維持され、羽根車4をより高速で回転させ、優れた清浄化効果を得ることが可能となる。
【0046】
このような各羽根板41と連結板42,43との固定は、たとえば図8及び図9A,9Bに示すように、各羽根板41の端部41a,41bの一部を連結板に形成した貫通溝42c,43cに貫通させて突出させ、図示省略の支持具と加圧パンチ90、91を用いたカシメ加工方法により、当該突出部411,412,413,414を前記軸心方向に交差する方向で且つ羽根板の面に平行な方向に屈曲変形させて連結板42,43の貫通溝42c,43cの開口縁部に固定する方法で実現できる。
【0047】
羽根板41への光触媒の担持は、上記連結板42、43への固定の前の各部品の段階で担持しておくことも可能であるが、部品段階で担持した光触媒が上記した固定の際に脱落する等、品質が悪化する原因となるため、固定の後に行うことが好ましい。このように固定後に光触媒を担持する場合、羽根板41のみでなく、連結板42、43と一緒に羽根車4全体の表面に光触媒を担持することができるが、担持の際、表面をエッチング処理を含む粗面処理により粗面化し、該粗面化した表面に光触媒を担持することが好ましい。
【0048】
この粗面処理の際、エッチングにより羽根板41と連結板42、43との固着部分が痩せて緩む可能性がある。しかし、本発明の上記羽根板41と連結板42、43との固定構造は、板面に平行に屈曲した部分が二度のカシメを行っても強度を保つことができるため、図8図9A図9Bに示すような一度目のカシメ(仮カシメ)を行った後に、図9Cに示すように、羽根板41及び連結板42、43からなる羽根車4の全体表面に光触媒を担持するための下地処理および光触媒21の担持を行い、さらにその後、図9Dに示すように二度目のカシメを行えば、強度を維持した固定構造を実現できるのである。
【0049】
羽根板41の素材としては、アルミニウムやステンレス、チタンその他、種々の金属素材を用いることができる。軸部40や連結板42、43についても、これら素材を用いた金属製が好ましいが、これに限定されない。
【0050】
羽根車4を回転駆動するモータ5は、羽根車4に対して連結板42の内側面の中央部に取り付けられる。具体的には、図5A及び図5Cに示すように、軸心40を構成するシャフト50が軸受55A,55Bを介して、軸受ハウジング53内に回転自在に支持されるとともに、該軸受ハウジング53の外周面にステータ54が筒状に設けられ、さらにシャフト50の前記軸受ハウジング53から突出する先端部50aには、シャフト50に固定される円板状の蓋部510とその外周部から基端側に延びる円筒状の筒部511とからなるロータ51が設けられ、該ロータ51の前記筒部511内周面に、筒状のマグネット52が取り付けられたものである。
【0051】
ロータ51の蓋部510には、上記のとおり羽根車4の連結板42の内側面に固定されている。また、軸受ハウジング53は、図4に示すように、基端側の支持部56を通じて後述のカバー板72に固定されている。このような構造により、カバー板72側に固定された回転しない軸受ハウジング53及びステータ54に対し、シャフト50、ロータ51及び羽根車4が回転することになる。
【0052】
ここで、モータ5の前記シャフト50と羽根車4が取り付けられるロータ51との固定は、本出願人が特開2007-283404号公報で既に提案しているカシメ止めにより行うことが好ましい。具体的には、図19Aに示すように、シャフト50を通す挿通穴を有しかつロータ51の蓋部510の中心部に設けられた取付穴51b周囲の厚肉部51aを下方から当接支持する下受け支持具94に、ロータ51が取り付けられ、該ロータ51の取付穴51bと下受け支持具94の挿通穴にシャフト50が周溝50c側を上にして挿入してセットして厚肉部51aと周溝50cとが対向した状態にする。
【0053】
周溝50cはシャフト50の端部近傍に形成され、下受け支持具94により周溝50cと厚肉部51aが対向する位置にセットされる。本例ではバーリング加工により形成された厚肉部51aが上向きとなるようにセットされているが、下向きにセットすることも勿論可能である。
【0054】
そして、セットされたシャフト50およびロータ51に対し、上方から厚肉部51aに当接するスペーサ治具93を介して加圧パンチ92を押下し、厚肉部51aが下受け支持具94との間で圧縮プレスすることにより、厚肉部51aが取付穴中心方向に塑性変形して対向するシャフト50の周溝50c内の隙間に食い込んでゆき、最終的には、図19Bに示すように塑性変形した厚肉部51aが周溝50c内部を満たし、シャフト50とロータ51とが強固に一体化した状態に組み付けられる。
【0055】
このようなカシメ止めによれば、シャフト50に対してロータ51を同軸に精度良く組み付けることができ、高速回転させても振動が生じなく、静寂性を維持できることになる。なお、厚肉部51aは、バーリング加工により穴縁部を一方向に起立させて形成しているが、その他の形状に加工しても勿論よい。
【0056】
図10A図10Bに示すように、モータ5をより薄型に構成することで、羽根車4、光触媒ユニット1も薄型化することが可能である。上記のようなカシメ止めによれば、シャフト50の先端部50aのギリギリの位置にロータ51を強固に精度よく固定することができる。さらに軸受55A,55Bの間隔も縮めることで、このような薄型化が可能である。羽根車4と外側の連結板42、43との隙間についても、このように微小な隙間にすることが可能である。これは、上記モータ5のカシメ止めの構造による安定的な固定に加え、羽根板41と連結板42,43との固定構造、整流板6とカバー板71、72との固定構造を後述する固定構造としたことで実現される。
【0057】
本実施形態の羽根車4は、ブロアファンの羽根車4で構成されているが、クロスフローファンの羽根車で構成し、これを別途の駆動モータで回転駆動するように構成してもよい。
【0058】
本実施形態の光触媒フィルタ2は、図2図6に示すように、光触媒担持体である羽根車4、およびモータ5以外に、該羽根車4の外周側に周方向に延設され、羽根車4との間に流体流路10を形成する整流板6と、整流板6の前記軸心方向の両端部にそれぞれ固定され、整流板6を挟み込むように設けられた上下一対のカバー板71、72とを備えている。整流板6の途切れた開口部が流体を排出する排出口20として機能し、一方のカバー板72の中央部には、図4に示すように、羽根車4の各羽根板41間の隙間に対して軸方向に流体を供給する供給穴720が開設されている。該供給穴720を通じて、羽根車4を回転する上記モータ5の支持部56がカバー板72の外面に伸び、該面上に固定されている。
【0059】
整流板6と各カバー板71、72との固定構造は、上述の羽根車4を構成する各羽根板41と前記連結板42、43との固定構造と同様の強固な構造が採用されている。具体的には、整流板6の端部(図面上の上下方向の上端部6a、下端部6b)の一部がカバー板71、72に形成された貫通溝71c、72cを貫通して突出するとともに、当該突出部(上端部6aの突出部61,下端部6bの突出部62)が前記軸心方向に交差する方向で且つ整流板6の面に平行な方向に屈曲してカバー板71、72の貫通溝71c、72cの開口縁部に圧着した状態に固定されている。
【0060】
このような整流板6とカバー板71、72との固定は、上記した羽根車4のカシメ加工と同様のカシメ加工(ただし、光触媒は担持しないので二度目のカシメは不要)により、突出部61、62を軸心方向に交差する方向で且つ整流板6の面に平行な方向に屈曲変形させ、カバー板71、72の貫通溝71c、72cの開口縁部に固定する方法により実現できる。これにより、羽根車4と同様、整流板6とカバー板71、72の組み付けについても、剛性を備え、風圧にも耐え、精度を維持でき、薄型コンパクト化(羽根車との隙間の最小化)が可能に構成されている。
【0061】
このような光触媒フィルタ2に光を照射する上記光照射部3は、図2図3および図6に示すように、整流板6の外側の位置に設置され、整流板6に形成された投光用の通孔60を通じて内側の前記羽根車4の軸心40に向け前記光を照射するように構成されている。これにより光照射部3が流体通過路10内で空気の流れの邪魔することを回避でき、圧損を低減できるとともに埃等による劣化の問題を回避でき、さらに組み付け等が容易化する。本例では発光素子が通孔60内部に入り込んだ状態に設置されているが、これに限定されない。
【0062】
また、光照射部3の配置に関し、光照射部3は、図6に示すように、流体導出口12の開口面の中心点120と、整流板6に形成された上記投光用の通孔60の内側開口面の中心点600とを結ぶ直線L1上の両点間の領域に、整流板6が存在し、通孔60から内側に照射された光が当該整流板6に遮断されて直接流体導出口12から外部に出ていくことが無いように構成されている。なお、本発明のようなブロアファン(やクロスフローファン)の羽根板41の存在も光照射部3からの光が外部に漏れにくい作用効果を奏している。
【0063】
光照射部3の照射方向は、前記所定位置から当該羽根車4の軸部40に向けて光を照射するようにされているが、軸部40からずれた斜め方向に向けて光を照射してもよい。斜め上又は下方向から照射してもよい。しかし、上記のとおりすべての羽根板41の表面全体、つまり流体の通過方向の上流側に位置する羽根板41の上面及び流体の通過方向の下流側に位置する羽根板41の下面の両方に均一に光照射するには、軸部40の軸心に直角な方向に光を照射することが好ましい。
【0064】
整流板6は、羽根車4に対面する内周面が光を反射する反射面とされる金属製の反射部材を兼ねている。反射面には、金属素材面をそのまま又は鏡面に加工した面や、鏡面シートを内周面に貼り付けたもの、反射素材を塗布したものなどで構成される。
【0065】
筐体8は、図1図2図3および図5A図5Cに示すように、光触媒フィルタ2を上下から包み込むように収容する上下半割状の分割ケース80、81と、上側の分割ケース81の上面に設けられ、該上面に配置される光照射部3やモータ5に電力を供給したり動作を制御する制御基板19が収容される第1のカバー板83と、下側の分割ケース80の底板中央部に形成される流体取り込み口800を覆うように分割ケース80の下面全面に隙間を介して設けられる第2のカバー板82とより構成されている。このカバー板82と分割ケース80の隙間の側方への開口82dが流体の導入口11となる。このカバー板82により光照射部3の光が流体取り込み口800を通じて外部に漏れないように構成されている。
【0066】
分割ケース80、81の側方境界部分における、光触媒フィルタ2の排出口20に対応する位置には、それぞれ切り欠き溝80d、81dが形成され、これら切り欠き溝からなる開口部の内側に、上記排出口20から延びて流体の導出口12を構成する筒状の導出部材84が取り付けられている。
【0067】
また、本実施形態のように、上側の分割ケース81の上面に制御基板19等を収容する第1のカバー板83を設けるもの以外に、図11に示すように分割ケース80.81を側方に長く構成し、制御基板等を光触媒フィルタ2の横に並べて設けるようにしても良い。これにより第1のカバー板を省略し、ユニット全体を薄型化することが可能となる。
【0068】
また、導出口12を構成する導出部材84に対し、導出した流体の向きを変えたり、他へ流体を運ぶチューブを接続できる等のアタッチメントを設けることも好ましい例である。図20(a),(b)は、導出部材84に対して噴出ノズルを設けたアタッチメント85Aを着脱できるように設けた例を示している。このような例によれば、アタッチメント85Aによって、たとえば衣服の胸ポケットに入れた光触媒ユニット1から上方の顔に向けて清浄化された流体を噴出させることができる。
【0069】
図21は、導出部材84から出る流体の流れを90度屈曲させて排出できるアタッチメント85Bを、同じく着脱自在に設けた例である。この例によれば、机等の上に寝かしておいた光触媒ユニット1から横方向に出る清浄化された流体を上方の顔に向けて排出させることができる。
【0070】
図22は、導出部材84から出る流体をチューブ86内に供給することができるように、チューブ86を取り付けることができるアタッチメント85Cを、同じく着脱自在に設けた例である。この例によれば、チューブ86を介して、例えばフェイスシールド13やマスク等に設けた排出孔15を有する管状の排出部14に清浄化された流体を送ることができる。
【0071】
以上の実施形態は、モータ5を用いて羽根車4を回転させるファンを構成した例を挙げたが、本発明はこれに限定されず、モータ5を省略し、風車のように流体通過路10を通過する流体から圧力を受け、共通の軸心を中心に回転するブロアファン様又はクロスフローファン様の羽根車を構成したものでもよい。
【0072】
たとえば、図12図14に示すものは、ブロアファン様の羽根車4Dを備えた光触媒フィルタ2Dを構成した例を示している。モータ5が省略されていることの他は、基本的には、上述した図1図9Dの光触媒フィルタ2と同じであるので、同一構造には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0073】
このような実施形態のものは、建物の換気を行う換気ダク等内の電動ファン7などで流体が強制的に流通する流体通過路10に沿って設置されることで機能させることができる。また、筐体内部に流体を流すためのファンを別途設けることでも機能させることができる。自然に流通する環境下に設けて機能させることも勿論できる。筐体は上記した図1図9Dの筐体8とは異なるもの、すなわち流体を外部から導きやすい構造や内部に流体を流すファンを別途設ける構造などを適宜採用することが好ましい。
【0074】
図15図18に示すものは、クロスフローファン様の羽根車4Eを備えた光触媒フィルタ2Eを備える光触媒フィルタ2E又は光触媒ユニット1Eを構成した例を示している。羽根車4Eを回転させるモータは省略されており、整流板を兼ねた筐体8Eの内部の流体通過路10の上流位置(本例では導入口11の付近)に流体を流すための電動ファン17が設けられている。羽根車4Eは、この電動ファン17により生じる流体の流れから圧力を受け、風車のように回転する。
【0075】
羽根車4Eは2個並列に設けられており、各羽根車4Eに対して光照射部3は回転方向に沿って3か所に配置されている。また、羽根板41Eは軸方向に長いため、光照射部3は軸方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。
【0076】
本実施形態の羽根車4Eを構成する各羽根板41Eも、上述の各実施形態と同様、軸方向両端部に連結板42、43が設けられている。その固定構造も、図18に示すように、上述の各実施形態と同様であるので、説明は省略するが、カシメによる強固な固定構造とされている。その他の構成についても、基本的には、上述した図1図9Dの光触媒フィルタ2と同様であるので、同一構造には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0077】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。たとえば各実施形態において、流体の流れる方向を逆方向に設定したものでもよい。
【符号の説明】
【0078】
1,1E 光触媒ユニット
2、2D、2E 光触媒フィルタ
3 光照射部
4,4D,4E 羽根車
5 モータ
6 整流板
6a 上端部
6b 下端部
8、8E 筐体
10 流体通過路
11 導入口
12 導出口
13 フェイスシールド
14 排出部
15 排出孔
17 電動ファン
19 制御基板
20 排出口
21 光触媒
40 軸心
41、41E 羽根板
41a,41b 端部
42、43 連結板
42c、43c 貫通溝
50 シャフト
50a 先端部
50c 周溝
51 ロータ
51a 厚肉部
51b 取付穴
53 軸受ハウジング
54 ステータ
54 マグネット
55A,55B 軸受
56 支持部
60 通孔
61、62 突出部
71、72 カバー板
71c、72c 貫通溝
80、81 分割ケース
80d、81d 切り欠き溝
82、83 カバー板
82d 開口
84 導出部材
85B アタッチメント
85C アタッチメント
86 チューブ
90、91 加圧パンチ
92 加圧パンチ
93 スペーサ治具
94 支持具
120 中心点
411,412,413,414 突出部
510 蓋部
511 筒部
600 中心点
720 供給穴
800 取り込み口
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
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図16
図17
図18
図19A
図19B
図20
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図22