(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162337
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20231031BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20231031BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20231031BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231031BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231031BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20231031BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20231031BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0569
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
H01M4/131
H01M10/0567
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138735
(22)【出願日】2023-08-29
(62)【分割の表示】P 2022058310の分割
【原出願日】2017-11-23
(31)【優先権主張番号】P 2016227494
(32)【優先日】2016-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】落合 輝明
(72)【発明者】
【氏名】川上 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】三上 真弓
(72)【発明者】
【氏名】門馬 洋平
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 彩恵
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正弘
(57)【要約】 (修正有)
【課題】充放電サイクルにおける容量の低下が抑制される正極活物質粒子を提供する。または、高容量の二次電池を提供する。または、充放電特性の優れた二次電池を提供する。または、安全性又は信頼性の高い二次電池を提供する。または、新規な物質、活物質粒子、蓄電装置を提供する。
【解決手段】第1の領域101と、第2の領域102と、を有し、第2の領域は、第1の領域の外側にする領域を有し、第1の領域は、リチウムと、コバルト、マンガン、およびニッケルより選ばれる一以上である元素Mと、酸素と、を有し、第2の領域は、元素Mと、酸素と、マグネシウムと、フッ素と、を有し、X線光電子分光で測定される元素Mに対するリチウムの原子数比(Li/M)は0.5以上0.85以下であり、X線光電子分光で測定される元素Mに対するマグネシウムの原子数比(Mg/M)は0.2以上0.5以下である正極活物質粒子100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、電解液と、を有するリチウムイオン二次電池であって、
前記正極は、集電体と、正極活物質層と、を有し、
前記正極活物質層は、コバルト酸リチウムを有する正極活物質粒子を複数有し、
前記電解液は、ビニレンカーボネートを有し、
前記正極活物質粒子は、
アルミニウムを有し、且つ層状岩塩型の結晶構造を有する第1の領域と、
マグネシウムと、フッ素と、を有し、且つ岩塩型の結晶構造を有する第2の領域と、を有し、
前記第2の領域は、前記第1の領域を被覆する領域を有し、
前記第2の領域の厚さは、0.5nm以上50nm以下であり、
前記第2の領域は、酸化マグネシウムを有し、前記酸化マグネシウムが有する酸素の一部は、フッ素で置換されている、
リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
正極と、負極と、電解液と、を有するリチウムイオン二次電池であって、
前記正極は、集電体と、正極活物質層と、を有し、
前記正極活物質層は、コバルト酸リチウムを有する正極活物質粒子を複数有し、
前記電解液は、ビニレンカーボネートを有し、
前記正極活物質粒子は、
アルミニウムを有し、且つ層状岩塩型の結晶構造を有する第1の領域と、
マグネシウムと、フッ素と、を有し、且つ岩塩型の結晶構造を有する第2の領域と、を有し、
前記第2の領域は、前記第1の領域を被覆する領域を有し、
前記第2の領域の厚さは、0.5nm以上50nm以下であり、
前記第2の領域は、酸化マグネシウムを有し、前記酸化マグネシウムが有するマグネシウムの一部は、フッ素と結合している、
リチウムイオン二次電池。
【請求項3】
正極と、負極と、電解液と、を有するリチウムイオン二次電池であって、
前記正極は、集電体と、正極活物質層と、を有し、
前記正極活物質層は、コバルト酸リチウムを有する正極活物質粒子を複数有し、
前記電解液は、ビニレンカーボネートを有し、
前記正極活物質粒子は、
アルミニウムを有し、且つ層状岩塩型の結晶構造を有する第1の領域と、
マグネシウムと、フッ素と、を有し、且つ岩塩型の結晶構造を有する第2の領域と、を有し、
前記第2の領域は、前記第1の領域を被覆する領域を有し、
前記第2の領域の厚さは、0.5nm以上50nm以下であり、
前記第2の領域は、酸化マグネシウムを有し、前記酸化マグネシウムが有する酸素の一部は、フッ素で置換されており、
前記第2の領域は、前記正極活物質粒子の表層部に存在する、
リチウムイオン二次電池。
【請求項4】
正極と、負極と、電解液と、を有するリチウムイオン二次電池であって、
前記正極は、集電体と、正極活物質層と、を有し、
前記正極活物質層は、コバルト酸リチウムを有する正極活物質粒子を複数有し、
前記電解液は、ビニレンカーボネートを有し、
前記正極活物質粒子は、
アルミニウムを有し、且つ層状岩塩型の結晶構造を有する第1の領域と、
マグネシウムと、フッ素と、を有し、且つ岩塩型の結晶構造を有する第2の領域と、を有し、
前記第2の領域は、前記第1の領域を被覆する領域を有し、
前記第2の領域の厚さは、0.5nm以上50nm以下であり、
前記第2の領域は、酸化マグネシウムを有し、前記酸化マグネシウムが有するマグネシウムの一部は、フッ素と結合しており、
前記第2の領域は、前記正極活物質粒子の表層部に存在する、
リチウムイオン二次電池。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、
前記第2の領域の厚さは、0.5nm以上3nm以下である、リチウムイオン二次電池。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、
前記正極は、さらに導電助剤を有し、
前記導電助剤は、炭素繊維を有する、リチウムイオン二次電池。
【請求項7】
請求項6において、
前記炭素繊維は、カーボンナノファイバー又はカーボンナノチューブである、
リチウムイオン二次電池。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一において、
前記電解液は、さらにジニトリル化合物を有する、リチウムイオン二次電池。
【請求項9】
請求項8において、
前記ジニトリル化合物は、スクシノニトリル又はアジポニトリルである、リチウムイオン二次電池。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一において、
前記正極活物質層が有する複数の正極活物質粒子の表面においてX線光電子分光を用いて測定したマグネシウム/コバルトの原子数比は、0.25より大きく0.3より小さい、リチウムイオン二次電池。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一において、
前記正極活物質層が有する複数の正極活物質粒子の表面においてX線光電子分光を用いて測定したフッ素/コバルトの原子数比は、0.05より大きく0.15より小さい、リチウムイオン二次電池。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一において、
前記正極活物質層が有する複数の正極活物質粒子の表面においてX線光電子分光を用いて測定したリチウム/コバルトの原子数比は0.5より大きく、0.85より小さい、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一様態は、物、方法、又は、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス
、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する
。本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、照明装置、電子機器
、またはそれらの製造方法に関する。または、電子機器およびそのオペレーティングシス
テムに関する。
【0002】
なお、本明細書中において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指す
ものである。例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電池(二次電池ともいう)、リチ
ウムイオンキャパシタ、及び電気二重層キャパシタなどを含む。
【0003】
また、本明細書中において電子機器とは、蓄電装置を有する装置全般を指し、蓄電装置
を有する電気光学装置、蓄電装置を有する情報端末装置などは全て電子機器である。
【背景技術】
【0004】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電
装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高容量であるリチウムイオン二次電池は
、携帯電話、スマートフォン、もしくはノート型コンピュータ等の携帯情報端末、携帯音
楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、又は、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車
(EV)、もしくはプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギ
ー自動車など、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大し、充電可能なエネルギ
ーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
【0005】
リチウムイオン二次電池に要求されている特性としては、さらなる高容量化、サイクル
特性の向上及び様々な動作環境での安全性、長期信頼性の向上などがある。
【0006】
リチウムイオン二次電池のサイクル特性の向上および高容量化のために、正極活物質の
改良が検討されている(特許文献1および特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-018914号公報
【特許文献2】特開2016-076454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようにリチウムイオン二次電池およびそれに用いられる正極活物質には、容量、サ
イクル特性、充放電特性、信頼性、安全性、又はコストといった様々な面で改善の余地が
残されている。
【0009】
本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池に用いることで、充放電サイクルにおける
容量の低下が抑制される正極活物質粒子を提供することを課題の一とする。または、本発
明の一態様は、高容量の二次電池を提供することを課題の一とする。または、本発明の一
態様は、充放電特性の優れた二次電池を提供することを課題の一とする。または、本発明
の一態様は、安全性又は信頼性の高い二次電池を提供することを課題の一とする。
【0010】
または、本発明の一態様は、新規な物質、活物質粒子、蓄電装置、又はそれらの作製方
法を提供することを課題の一とする。
【0011】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、明細書、図面、
請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、第1の領域と、第2の領域と、を有する正極活物質粒子であり、第
2の領域は、第1の領域の外側に接する領域を有し、第1の領域は、リチウムと、元素M
と、酸素と、を有し、元素Mは、コバルト、マンガン、およびニッケルより選ばれる一以
上の元素であり、第2の領域は、元素Mと、酸素と、マグネシウムと、フッ素と、を有し
、X線光電子分光で測定される元素Mに対するリチウムの原子数比(Li/M)は0.5
以上0.85以下であり、X線光電子分光で測定される元素Mに対するマグネシウムの原
子数比(Mg/M)は0.2以上0.5以下である正極活物質粒子である。X線光電子分
光は例えば、正極活物質粒子の表面より分析を行う。
【0013】
また、上記構成において、第2の領域の厚さは0.5nm以上50nm以下であること
が好ましい。
【0014】
また、上記構成において、第1の領域は層状岩塩型の結晶構造を有し、第2の領域は岩
塩型の結晶構造を有することが好ましい。
【0015】
また、上記構成において、第1の領域の結晶構造は空間群R-3mで表され、第2の領
域の結晶構造は空間群Fm-3mで表されることが好ましい。
【0016】
また、上記構成において、X線光電子分光で測定される元素Mに対するフッ素の原子数
比(F/M)は0.02以上0.15以下であることが好ましい。
【0017】
また、上記構成において、元素Mはコバルトであることが好ましい。
【0018】
または、本発明の一態様は、第1の領域と、第2の領域と、を有する正極活物質粒子で
あり、第2の領域は、第1の領域の外側に接する領域を有し、第1の領域は、リチウムと
、元素Mと、酸素と、を有し、元素Mは、コバルト、マンガン、およびニッケルより選ば
れる一以上の元素であり、第2の領域は、元素Mと、酸素と、マグネシウムと、フッ素と
、を有し、粒子は、複数の原料を用いて形成され、複数の原料が有する元素Mの原子数の
合計に対する、複数の原料が有するリチウムの原子数の合計の比(Li/M)は1.02
より大きく1.05より小さい正極活物質粒子である。
【0019】
また、上記構成において、複数の材料が有する元素Mの原子数の合計に対する、複数の
原料が有するマグネシウムの原子数は0.005以上0.05以下であることが好ましい
。
【0020】
また、上記構成において、複数の材料が有する元素Mの原子数の合計に対する、複数の
原料が有するフッ素の原子数は0.01以上0.1以下であることが好ましい。
【0021】
また、上記構成において、複数の原料の一は元素Mを有する化合物であり、複数の原料
の他の一はリチウムを有する化合物であり、複数の原料の他の一はマグネシウムを有する
化合物であることが好ましい。
【0022】
また、上記構成において、第2の領域の厚さは0.5nm以上50nm以下であること
が好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様により、リチウムイオン二次電池に用いることで、充放電サイクルにお
ける容量の低下が抑制される正極活物質を提供することができる。また、高容量の二次電
池を提供することができる。また、充放電特性の優れた二次電池を提供することができる
。また、安全性又は信頼性の高い二次電池を提供することができる。また、新規な物質、
活物質粒子、蓄電装置、又はそれらの作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】正極活物質粒子の作製方法の一例を説明する図。
【
図3】導電助剤としてグラフェン化合物を用いた場合の活物質層の断面図。
【
図16】曲げることのできる二次電池を説明する図。
【
図17】曲げることのできる二次電池を説明する図。
【
図31】二次電池のエネルギー密度の維持率を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であ
れば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈
されるものではない。
【0026】
また、結晶面および方向の表記は、結晶学上、数字に上付きのバーを付すが、本明細書
等における結晶面および方向の表記は、出願表記の制約上、数字の上にバーを付す代わり
に、数字の前に-(マイナス符号)を付して表現する。また、結晶内の方向を示す個別方
位は[ ]で、等価な方向すべてを示す集合方位は< >で、結晶面を示す個別面は(
)で、等価な対称性を有する集合面は{ }でそれぞれ表現する。
【0027】
本明細書等において、偏析とは、複数の元素(たとえばA,B,C)からなる固体にお
いて、ある元素(たとえばB)が不均一に分布する現象をいう。
【0028】
本明細書等において、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が有する層状岩塩型の結晶
構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列する岩塩型のイオン配列を有し、遷移金属と
リチウムが規則配列して二次元平面を形成するため、リチウムの二次元的拡散が可能であ
る結晶構造をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損があってもよい。
【0029】
また本明細書等において、二次元界面の構造に類似性があることをエピタキシという。
また二次元界面の構造に類似性を有する結晶成長を、エピタキシャル成長という。また三
次元的な構造上の類似性を有すること、または結晶学的に同じ配向であることをトポタキ
シという。そのためトポタキシである場合、断面の一部を観察すると、二つの領域(たと
えば下地となった領域と成長して形成された領域)の結晶の配向が一致する。
【0030】
岩塩型の結晶構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列している構造をいう。なお陽
イオンまたは陰イオンの欠損があってもよい。
【0031】
層状岩塩型結晶および岩塩型結晶の陰イオンは立方最密充填構造(面心立方格子構造)
をとる。層状岩塩型結晶と岩塩型結晶が接するとき、陰イオンにより構成される立方最密
充填構造が一致する結晶面が存在する。ただし、なお、層状岩塩型結晶の空間群はR-3
mであり、岩塩型結晶の空間群Fm-3mとは異なるため、上記の条件を満たす結晶面の
指数は層状岩塩型結晶と岩塩型結晶では異なる。本明細書では、層状岩塩型結晶及び岩塩
型結晶において上記条件を満たす結晶面の方向が互いに一致するとき結晶の配向が一致す
る、と言う事が出来る。
【0032】
たとえば層状岩塩型の結晶構造を有するコバルト酸リチウムと、岩塩型の結晶構造を有
する酸化マグネシウムが接するとき、結晶の配向が一致するのは、コバルト酸リチウムの
(1-1-4)面と酸化マグネシウムの{001}面が接する場合、コバルト酸リチウム
の(104)面と酸化マグネシウムの{001}面が接する場合、コバルト酸リチウムの
(0-14)面と酸化マグネシウムの{001}面が接する場合、コバルト酸リチウムの
(001)面と酸化マグネシウムの{111}面が接する場合、コバルト酸リチウムの(
012)面と酸化マグネシウムの{111}面が接する場合、等である。
【0033】
二つの領域の結晶の配向が一致することは、TEM(透過電子顕微鏡)像、STEM(
走査透過電子顕微鏡)像、HAADF-STEM(高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微
鏡)像、ABF-STEM(環状明視野走査透過電子顕微鏡)像等から判断することがで
きる。X線回折(XRD:X-ray diffraction)、電子線回折、中性子
線回折等も判断の材料にすることができる。結晶の配向が一致していると、TEM像等で
、直線上に陽イオンと陰イオンが交互に配列した列の方向の差が5度以下、より好ましく
は2.5度以下である様子が観察できる。なお、TEM像等では酸素、フッ素をはじめと
する軽元素は明確に観察できない場合があるが、その場合は金属元素の配列で配向の一致
を判断することができる。
【0034】
空間群は例えば、X線回折、電子線回折、STEM像およびTEM像のFFT(高速フ
ーリエ変換)、等から構造を解析し、求めることができる。例えば、STEM像のFFT
像を解析し、ICDD(International Centre for Diff
raction Data)データベースなどのデータベースと照合し、結晶構造を同定
する。
【0035】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である正極活物質粒子について説明する。
【0036】
[正極活物質の構造]
まず
図1を用いて、本発明の一態様である正極活物質粒子100について説明する。図
1(A)に示すように、正極活物質粒子100は、第1の領域101と、第1の領域10
1の外側に接する第2の領域102を有する。第2の領域102は、第1の領域101の
少なくとも一部を被覆するといってもよい。
【0037】
第2の領域102は、層状の領域であることが好ましい。
【0038】
第1の領域101と第2の領域102は、互いに異なる組成を有する領域である。なお
、二つの領域の境界は明瞭でない場合がある。
図1(A)では、第1の領域101と第2
の領域102を点線で分け、点線をまたいである元素が濃度勾配を有する様子をグレーの
濃淡で示した。
図1(B)以降では便宜上、第1の領域101と第2の領域102の境界
を点線のみで示すこととする。第1の領域101と第2の領域102の境界の詳細につい
ては後述する。
【0039】
また
図1(B)に示すように、正極活物質粒子100の内部に第2の領域102が存在
してもよい。たとえば第1の領域101が多結晶であるとき、粒界に第2の領域102が
偏析していてもよい。また、正極活物質粒子100の結晶欠陥のある部分に、第2の領域
102が偏析していてもよい。なお本明細書等において、結晶欠陥とはTEMにより観察
可能な体欠陥、または結晶中に他の元素の入り込んだ構造等をいうこととする。
【0040】
また、第2の領域102は、第1の領域101の全てを被覆していなくてもよい。
【0041】
言い換えれば、第1の領域101は、正極活物質粒子100の内部に存在し、第2の領
域102は、正極活物質粒子100の表層部に存在する。さらに第2の領域102は、正
極活物質粒子100の内部に存在していてもよい。
【0042】
また第1の領域101は、例えば固相Aといってもよい。また第2の領域102は、た
とえば固相Bといってもよい。
【0043】
<第1の領域101>
第1の領域101は、リチウムと、元素Mと、酸素と、を有する。元素Mは複数の元素
であってもよい。元素Mは例えば遷移金属より選ばれる一以上の元素である。例えば、第
1の領域101はリチウムと遷移金属を含む複合酸化物を有する。
【0044】
元素Mとしては、リチウムとともに層状岩塩型の複合酸化物を形成しうる遷移金属を用
いることが好ましい。たとえばマンガン、コバルト、ニッケルのうち一つもしくは複数を
用いることができる。つまり第1の領域101が有する遷移金属としてコバルトのみを用
いてもよいし、コバルトとマンガンの2種を用いてもよいし、コバルト、マンガン、ニッ
ケルの3種を用いてもよい。また例えば元素Mとして遷移金属に加えて、アルミニウムを
はじめとする遷移金属以外の金属を用いてもよい。
【0045】
つまり第1の領域101は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルトの一
部がマンガンで置換されたコバルト酸リチウム、ニッケル-マンガン-コバルト酸リチウ
ム、ニッケル-コバルト-アルミニウム酸リチウム等の、リチウムと遷移金属を含む複合
酸化物を有することができる。
【0046】
層状岩塩型の結晶構造は、リチウムが二次元的に拡散しやすいため第1の領域101と
して好ましい。また、第1の領域101が層状岩塩型の結晶構造を有する場合、意外にも
、後述する酸化マグネシウムの偏析が起こりやすい。しかし第1の領域101のすべてが
層状岩塩型の結晶構造でなくてもよい。たとえば第1の領域101の一部に結晶欠陥があ
ってもよいし、第1の領域101の一部は非晶質であってもよいし、その他の結晶構造を
有していてもよい。
【0047】
第1の領域101は、空間群R-3mで表される場合がある。
【0048】
<第2の領域102>
第2の領域は、元素Mと、酸素と、を有する。例えば第2の領域は、元素Mの酸化物を
有する。
【0049】
また第2の領域は、元素Mおよび酸素に加えて、マグネシウムを有することが好ましい
。また第2の領域はフッ素を有することが好ましい。第2の領域がマグネシウムやフッ素
を有することにより、二次電池の充放電における安定性が向上する場合があり、好ましい
。ここで二次電池の安定性が高いとは例えば、正極活物質粒子100の結晶構造の変化が
抑制されることを指す。あるいは、容量の変化が小さいことを指す。あるいは、第2の領
域102が有する遷移金属、例えばコバルトの価数変化が抑制されることを指す。
【0050】
第2の領域102は例えば酸化マグネシウムを有し、酸素の一部がフッ素で置換されて
いてもよい。酸化マグネシウムは化学的に安定な材料であるため、充放電を繰り返しても
劣化が生じにくく被覆層として好適である。
【0051】
酸化マグネシウムが部分的にフッ素により置換されることにより、例えばリチウムの拡
散性を高めることができ、充放電を妨げない。また、正極活物質の表層部、例えば第2の
領域102付近にフッ素が存在することで、フッ酸に溶けにくい場合がある。
【0052】
第2の領域102は、薄すぎると被覆層としての機能が低下するが、厚くなりすぎても
容量の低下を招く。そのため、第2の領域102の厚さは0.5nm以上50nm以下が
好ましく、0.5nm以上3nm以下がより好ましい。
【0053】
第2の領域102の厚さはTEMにより測定することができる。例えば正極活物質粒子
に加工を行い、断面を露出させた後にTEMにより観察を行えばよい。
【0054】
第2の領域102は、岩塩型の結晶構造を有すると、第1の領域101と結晶の配向が
一致しやすく、安定した被覆層として機能しやすいため好ましい。しかし、第2の領域1
02のすべてが岩塩型の結晶構造でなくてもよい。たとえば第2の領域102の一部は非
晶質であってもよいし、その他の結晶構造を有していてもよい。
【0055】
第2の領域102は、空間群Fm-3mで表される場合がある。
【0056】
一般的に、正極活物質粒子100は、充放電を繰り返すにつれ、コバルトやマンガン等
の遷移金属が電解液に溶出する、酸素が離脱する、結晶構造が不安定になる、といった副
反応が生じ、劣化が進んでゆく。しかしながら本発明の一態様の正極活物質粒子100は
、表層部に第2の領域102を有するため、第1の領域101が有するリチウムと遷移金
属を含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能である。
【0057】
本発明の一態様の正極活物質の作製プロセスにおける元素Mに対するリチウムの原子数
比と、形成される第2の領域との関係について説明する。作製プロセスにおいて、余剰な
元素Mが表面に多く分布し、第2の領域を形成する。元素Mに対するリチウムの原子数比
(以下、Li/Mと表す)を小さくすることにより余剰な元素Mが生じ、第2の領域を形
成することができる。
【0058】
第1の領域と比較して第2の領域においては、リチウムに対する元素Mの割合が高い(
すなわちLi/Mが小さい)。あるいは、第2の領域においては、リチウムが検出されな
い場合がある。
【0059】
一方、Li/Mを大きくすることにより、正極活物質粒子100の平均粒径が大きくな
る場合がある。平均粒径が大きくなるのに伴い、比表面積が小さくなる。二次電池におい
て電解液の分解などの副反応が生じる場合を考える。このような場合には、活物質粒子の
比表面積を小さくすることにより電解液と接する面積が減少し、副反応の量を減少させる
ことができる。ここで副反応とは例えば、二次電池の充放電における不可逆な反応を指す
。
【0060】
また
図1(B)に示すように第1の領域101の内部にも第2の領域102が存在する
と、第1の領域101が有するリチウムと遷移金属を含む複合酸化物の結晶構造をさらに
安定化することができ好ましい。
【0061】
また第2の領域102が有するフッ素は、MgF2、LiF、CoF2以外の結合状態
で存在していることが好ましい。具体的には、正極活物質粒子100の表面をXPS(X
線光電子分光)により分析したとき、フッ素の結合エネルギーのピーク位置は682eV
以上685eV以下であることが好ましく、684.3eV程度であることがより好まし
い。これはMgF2、LiFのいずれとも一致しない結合エネルギーである。
【0062】
なお本明細書等において、XPS分析したときのある元素の結合エネルギーのピーク位
置とは、その元素の結合エネルギーに該当する範囲で、エネルギースペクトルの強度が極
大となる結合エネルギーの値をいうこととする。
【0063】
<第1の領域101と第2の領域102>
第1の領域101と第2の領域102は、TEM像、STEM像、FFT(高速フーリ
エ変換)解析、EDX(エネルギー分散型X線分析)、ToF-SIMS(飛行時間型二
次イオン質量分析法)による深さ方向の分析、XPS、オージェ電子分光法、TDS(昇
温脱離ガス分析法)等によって異なる組成を有することを確認できる。たとえばTEM像
およびSTEM像では、構成元素の違いが像の明るさの違いとなって観察されるため、第
1の領域101と第2の領域102の構成元素が異なることが観察できる。またEDXの
元素分布像でも第1の領域101と第2の領域102が異なる元素を有することが観察で
きる。しかし必ずしも、各種分析によって第1の領域101と第2の領域102の明確な
境界が観察できなくてもよい。
【0064】
リチウム、元素M、マグネシウムおよびフッ素の濃度は、ToF-SIMS、XPS、
オージェ電子分光法、TDS等により分析することができる。
【0065】
なおXPSは正極活物質粒子100の表面から5nmほどを定量的に分析可能である。
そのため第2の領域102の厚さが5nm未満の場合は第2の領域102および第1の領
域101の一部を合わせた領域、第2の領域102の厚さが表面から5nm以上の場合は
第2の領域102の、元素濃度を定量的に分析することができる。
【0066】
正極活物質粒子100においてXPSを用いて測定したLi/Mは例えば、0.5以上
0.85以下である。
【0067】
また、正極活物質粒子100においてXPSを用いて測定した元素Mに対するマグネシ
ウムの原子数比(以下、Mg/Mと表す)は0.15より大きいことが好ましく、0.2
以上0.5以下であることが好ましく、0.3以上0.4以下であることが好ましい。
【0068】
また、正極活物質粒子100においてXPSを用いて測定した元素Mに対するフッ素の
原子数比(以下、F/Mと表す)は0.02以上0.15以下であることが好ましい。
【0069】
第1の領域101および第2の領域102の結晶構造は例えば、電子回折像、またはT
EM像の高速逆フーリエ変換像を解析することにより評価することができる。
【0070】
<第3の領域103>
なおこれまで正極活物質粒子100が第1の領域101および第2の領域102を有す
る例について説明したが、本発明の一態様はこれに限らない。たとえば
図1(C)に示す
ように、正極活物質粒子100は第3の領域103を有していてもよい。第3の領域10
3は、たとえば、第2の領域102の少なくとも一部と接するように設けることができる
。第3の領域103は、グラフェン化合物をはじめとする炭素を有する被膜であってもよ
いし、リチウムまたは電解液の分解生成物を有する被膜であってもよい。第3の領域10
3が炭素を有する被膜である場合、正極活物質粒子100同士、および正極活物質粒子1
00と集電体との導電性を高めることができる。また第3の領域103がリチウムまたは
電解液の分解生成物を有する被膜である場合、電解液との過剰な反応を抑制し、二次電池
に用いた際、サイクル特性を向上させることができる。
【0071】
[作製方法]
第1の領域101および第2の領域102を有し、第2の領域102を偏析によって形
成する場合の正極活物質粒子100の作製方法を、
図2を用いて説明する。
【0072】
まず、出発原料を準備する(S11)。具体的には、リチウム源、元素M源、マグネシ
ウム源およびフッ素源をそれぞれ秤量する。リチウム源としてはたとえば炭酸リチウム、
フッ化リチウム、水酸化リチウム等を用いることができる。元素Mがコバルトの場合には
例えば、コバルト源として酸化コバルト、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト、炭酸
コバルト、シュウ酸コバルト、硫酸コバルト等を用いることができる。またマグネシウム
源としては、たとえば酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等を用いることができる。
またフッ素源としては、たとえばフッ化リチウム、フッ化マグネシウム等を用いることが
できる。つまり、フッ化リチウムはリチウム源としてもフッ素源としても用いることがで
きるし、フッ化マグネシウムはマグネシウム源としてもフッ素源としても用いることがで
きる。
【0073】
本実施の形態では、リチウム源として炭酸リチウム(Li2CO3)、コバルト源とし
て酸化コバルト(Co3O4)、マグネシウム源として酸化マグネシウム(MgO)、リ
チウム源およびフッ素源としてフッ化リチウム(LiF)を用いることとする。
【0074】
本発明の一態様においては、マグネシウム源とフッ素源を出発原料として同時に混合す
ることで、マグネシウムおよびフッ素を有する第2の領域102を、正極活物質粒子10
0の表層部に形成させることができた。
【0075】
ここで、出発原料が有するリチウムの原子数の合計を、元素Mの原子数の合計で割った
値を(Li/M)_Rとする。
【0076】
次に、秤量した出発原料を混合する(S12)。混合には例えばボールミル、ビーズミ
ル等を用いることができる。
【0077】
次に、S12で混合した材料に第1の加熱を行う(S13)。第1の加熱は800℃以
上1050℃以下で行うことが好ましく、900℃以上1000℃以下で行うことがより
好ましい。加熱時間は、2時間以上20時間以下とすることが好ましい。乾燥空気等の雰
囲気において、加熱処理を行うことが好ましい。本実施の形態では、1000℃で10時
間加熱することとし、昇温は200℃/h、乾燥空気の流量は10L/minとする。
【0078】
S13の第1の加熱により、第1の領域101が形成される。ここで(Li/M)_R
を小さくすることにより、元素Mが余剰となる。余剰な元素Mにより、第1の領域101
の外側に余剰な元素Mを主成分とする層が形成されやすくなる。例えば、第1の領域10
1が有する複合酸化物のLi/Mに対して、正極活物質粒子100全体のLi/Mを小さ
くする、すなわち元素Mを余剰状態とすることにより、第1の領域101の外側に、元素
Mおよび酸素を有する第2の領域102が形成される。
【0079】
なお、リチウムの一部はS13の第1の加熱により、系外(作製される粒子の外)へ出
る場合がある。すなわち、リチウムの一部が失われる。よって(Li/M)_R(原料に
おける元素Mに対するリチウムの比)に比べて、S16を経た後の正極活物質粒子全体に
おけるLi/Mが小さくなる場合がある。
【0080】
以下に、より具体的に第1の領域101および第2の領域102の形成について説明す
る。
【0081】
例えば元素Mがコバルトであり、第1の領域101がコバルト酸リチウムを有する場合
を考える。コバルト酸リチウムのLi/Mは1近傍の値となる。正極活物質粒子全体のL
i/Mを1より小さくすることにより、第1の領域101の外側に、元素Mおよび酸素を
有する第2の領域102が形成される。
【0082】
リチウムの一部が失われることを鑑みて、(Li/M)_Rを例えば1.05より小さ
くすることにより、第1の領域101の外側にコバルトを有する第2の領域102が形成
される。
【0083】
また、(Li/M)_Rを大きくすることにより、正極活物質粒子の比表面積が小さく
なる場合がある。
【0084】
第2の領域102は、二次電池の充放電過程においても安定であることが好ましい。遷
移金属以外の金属、例えばマグネシウムは価数がほぼ変化しないため、その化合物は遷移
金属化合物に比べて、リチウムイオン電池等の酸化還元反応を用いる二次電池において、
より安定であるといえる。第2の領域102がマグネシウムを有することにより、正極活
物質粒子100の表面における副反応が抑制される。よって第2の領域102はマグネシ
ウムを有することが好ましい。
【0085】
しかしながら発明者らの実験に依れば、(Li/M)_R(ここで元素Mはコバルト)
が大きくなると、すなわち原料の合計に占めるコバルトの原子数比が小さくなると、第2
の領域102が薄くなる、あるいは第2の領域102が形成されづらい場合があった。
【0086】
また第2の領域102が形成されづらい場合には、第1の領域101のマグネシウム濃
度が高まる場合がある。第1の領域101に存在するマグネシウムは、充放電を阻害する
場合がある。例えば、放電容量を減少させる、またはサイクル特性を低下させる場合があ
る。
【0087】
発明者らはコバルトを余剰状態にすることにより、第1の領域101としてコバルト酸
リチウムを有する領域を形成し、第2の領域102としてコバルトを骨格とした領域を形
成した後、あるいは形成するのと同時に、マグネシウムを第2の領域102に偏析させる
ことにより、マグネシウムを有し、かつ、岩塩型構造を有する第2の領域102が形成さ
れることを発見した。
【0088】
マグネシウムとフッ素は、S13の第1の加熱により、その一部が第2の領域102に
偏析する。マグネシウムは例えば、第2の領域102が有するコバルトとその一部が置換
されてもよい。また、フッ素は例えば、第2の領域102が有する酸素とその一部が置換
されてもよい。ただしこの時点では、マグネシウムとフッ素の他の一部はリチウムと遷移
金属を含む複合酸化物に固溶している状態である。
【0089】
また、本発明の一態様の正極活物質にフッ素を添加することにより、第2の領域102
にマグネシウムが偏析しやすくなる場合がある。
【0090】
マグネシウムと結合する酸素がフッ素と置換されることにより、置換したフッ素の周辺
においてマグネシウムが移動しやすくなる場合がある。
【0091】
また、酸化マグネシウムにフッ化マグネシウムを加えると、融点が下がる場合がある。
融点が下がることにより、加熱処理において原子の移動がしやすくなる。
【0092】
また、フッ素は酸素と比べて電気陰性度が大きい。よって、酸化マグネシウムのような
安定な化合物においても、フッ素を加えることにより、電荷の偏りが生じ、マグネシウム
と酸素との結合を弱める場合がある。
【0093】
これらの理由により、本発明の一態様の正極活物質にフッ素を添加することにより、マ
グネシウムが移動しやすくなり、第2の領域にマグネシウムが偏析しやすくなる場合があ
る。
【0094】
次に、S13で加熱した材料を室温まで冷却する(S14)。
【0095】
次に、S14で冷却した材料に第2の加熱を行う(S15)。第2の加熱は規定温度で
の保持時間を50時間以下で行うことが好ましく、2時間以上10時間以下で行うことが
より好ましい。規定温度としては500℃以上1200℃以下が好ましく、700℃以上
1000℃以下がより好ましく、800℃程度がさらに好ましい。また、酸素を含む雰囲
気で加熱することが好ましい。本実施の形態では、800℃で2時間加熱することとし、
昇温は200℃/h、乾燥空気の流量は10L/minとする。
【0096】
S15の第2の加熱を行うことで、出発原料に含まれたマグネシウムとフッ素の、リチ
ウムと遷移金属を含む複合酸化物の表層部への偏析が促進され、第2の領域102のマグ
ネシウム濃度とフッ素濃度を高めることができる。
【0097】
最後に、S15で加熱した材料を室温まで冷却し、回収して(S16)、正極活物質粒
子100を得ることができる。
【0098】
本実施の形態で説明した正極活物質粒子を用いることで、高容量でサイクル特性の良好
な二次電池とすることができる。本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用
いることができる。
【0099】
(実施の形態2)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した正極活物質粒子100を有する二次電池
に用いることのできる材料の例について説明する。本実施の形態では、正極、負極および
電解液が、外装体に包まれている二次電池を例にとって説明する。
【0100】
[正極]
正極は、正極活物質層および正極集電体を有する。
【0101】
<正極活物質層>
正極活物質層は、正極活物質粒子を有する。また、正極活物質層は、導電助剤およびバ
インダを有していてもよい。
【0102】
正極活物質粒子としては、先の実施の形態で説明した正極活物質粒子100を用いるこ
とができる。先の実施の形態で説明した正極活物質粒子100を用いることで、高容量で
サイクル特性に優れた二次電池とすることができる。
【0103】
導電助剤としては、炭素材料、金属材料、又は導電性セラミックス材料等を用いること
ができる。また、導電助剤として繊維状の材料を用いてもよい。活物質層の総量に対する
導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以
下がより好ましい。
【0104】
導電助剤により、活物質層中に電気伝導のネットワークを形成することができる。導電
助剤により、正極活物質どうしの電気伝導の経路を維持することができる。活物質層中に
導電助剤を添加することにより、高い電気伝導性を有する活物質層を実現することができ
る。
【0105】
導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素
繊維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊
維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、
カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナ
ノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。また、導電助剤として、
例えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)、グラファイト(黒鉛)粒
子、グラフェン、フラーレンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、
ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等
を用いることができる。
【0106】
また、導電助剤としてグラフェン化合物を用いてもよい。
【0107】
グラフェン化合物は、高い導電性を有するという優れた電気特性と、高い柔軟性および
高い機械的強度を有するという優れた物理特性と、を有する場合がある。また、グラフェ
ン化合物は平面的な形状を有する。グラフェン化合物は、接触抵抗の低い面接触を可能と
する。また、薄くても導電性が非常に高い場合があり、少ない量で効率よく活物質層内で
導電パスを形成することができる。そのため、グラフェン化合物を導電助剤として用いる
ことにより、活物質と導電助剤との接触面積を増大させることができるため好ましい。ま
た、電気的な抵抗を減少できる場合があるため好ましい。ここでグラフェン化合物として
例えば、グラフェンまたはマルチグラフェンまたはreduced Graphene
Oxide(以下、RGO)を用いることが特に好ましい。ここで、RGOは例えば、酸
化グラフェン(graphene oxide:GO)を還元して得られる化合物を指す
。
【0108】
粒径の小さい活物質粒子、例えば1μm以下の活物質粒子を用いる場合には、活物質粒
子の比表面積が大きく、活物質粒子同士を繋ぐ導電パスがより多く必要となる。このよう
な場合には、少ない量でも効率よく導電パスを形成することができるグラフェン化合物を
用いることが、特に好ましい。
【0109】
以下では一例として、活物質層200に、導電助剤としてグラフェン化合物を用いる場
合の断面構成例を説明する。
【0110】
図3(A)に、活物質層200の縦断面図を示す。活物質層200は、粒状の正極活物
質粒子100と、導電助剤としてのグラフェン化合物201と、バインダ(図示せず)と
、を含む。ここで、グラフェン化合物201として例えばグラフェンまたはマルチグラフ
ェンを用いればよい。ここで、グラフェン化合物201はシート状の形状を有することが
好ましい。また、グラフェン化合物201は、複数のマルチグラフェン、または(および
)複数のグラフェンが部分的に重なりシート状となっていてもよい。
【0111】
活物質層200の縦断面においては、
図3(A)に示すように、活物質層200の内部
において概略均一にシート状のグラフェン化合物201が分散する。
図3(A)において
はグラフェン化合物201を模式的に太線で表しているが、実際には炭素分子の単層又は
多層の厚みを有する薄膜である。複数のグラフェン化合物201は、複数の粒状の正極活
物質粒子100を包むように、覆うように、あるいは複数の粒状の正極活物質粒子100
の表面上に張り付くように形成されているため、互いに面接触している。
【0112】
ここで、複数のグラフェン化合物同士が結合することにより、網目状のグラフェン化合
物シート(以下グラフェン化合物ネットまたはグラフェンネットと呼ぶ)を形成すること
ができる。活物質をグラフェンネットが被覆する場合に、グラフェンネットは活物質同士
を結合するバインダとしても機能することができる。よって、バインダの量を少なくする
ことができる、又は使用しないことができるため、電極体積や電極重量に占める活物質の
比率を向上させることができる。すなわち、蓄電装置の容量を増加させることができる。
【0113】
ここで、グラフェン化合物201として酸化グラフェンを用い、活物質と混合して活物
質層200となる層を形成後、還元することが好ましい。グラフェン化合物201の形成
に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いることにより、グラフェン
化合物201を活物質層200の内部において概略均一に分散させることができる。均一
に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還
元するため、活物質層200に残留するグラフェン化合物201は部分的に重なり合い、
互いに面接触する程度に分散していることで三次元的な導電パスを形成することができる
。なお、酸化グラフェンの還元は、例えば熱処理により行ってもよいし、還元剤を用いて
行ってもよい。
【0114】
従って、活物質と点接触するアセチレンブラック等の粒状の導電助剤と異なり、グラフ
ェン化合物201は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、通常の導電助剤
よりも少量で粒状の正極活物質粒子100とグラフェン化合物201との電気伝導性を向
上させることができる。よって、正極活物質粒子100の活物質層200における比率を
増加させることができる。これにより、蓄電装置の放電容量を増加させることができる。
【0115】
バインダとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプ
レン-スチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-
プロピレン-ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。またバインダとし
て、フッ素ゴムを用いることができる。
【0116】
また、バインダとしては、例えば水溶性の高分子を用いることが好ましい。水溶性の高
分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメ
チルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピル
セルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉な
どを用いることができる。また、これらの水溶性の高分子を、前述のゴム材料と併用して
用いると、さらに好ましい。
【0117】
または、バインダとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸
メチル(ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビ
ニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド
、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロ
ピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリ
デン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマ
ー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることが好ましい。
【0118】
バインダは上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
【0119】
例えば粘度調整効果の特に優れた材料と、他の材料とを組み合わせて使用してもよい。
例えばゴム材料等は接着力や弾性力に優れる反面、溶媒に混合した場合に粘度調整が難し
い場合がある。このような場合には例えば、粘度調整効果の特に優れた材料と混合するこ
とが好ましい。粘度調整効果の特に優れた材料としては、例えば水溶性高分子を用いると
よい。また、粘度調整効果に特に優れた水溶性高分子としては、前述の多糖類、例えばカ
ルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキ
シプロピルセルロースおよびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘
導体や、澱粉を用いることができる。
【0120】
なお、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えばカルボキシメチ
ルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩などの塩とすることにより溶解度が上がり
、粘度調整剤としての効果を発揮しやすくなる。溶解度が高くなることにより電極のスラ
リーを作製する際に活物質や他の構成要素との分散性を高めることもできる。本明細書に
おいては、電極のバインダとして使用するセルロースおよびセルロース誘導体としては、
それらの塩も含むものとする。
【0121】
水溶性高分子は水に溶解することにより粘度を安定化させ、また活物質や、バインダと
して組み合わせる他の材料、例えばスチレンブタジエンゴムなどを、水溶液中に安定して
分散させることができる。また、官能基を有するために活物質表面に安定に吸着しやすい
ことが期待される。また、例えばカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は
、例えば水酸基やカルボキシル基などの官能基を有する材料が多く、官能基を有するため
に高分子同士が相互作用し、活物質表面を広く覆って存在することが期待される。
【0122】
活物質表面を覆う、または表面に接するバインダが膜を形成する場合には、不動態膜と
しての役割を果たして電解液の分解を抑える効果も期待される。ここで、不動態膜とは、
電気の伝導性のない膜、または電気伝導性の極めて低い膜であり、例えば活物質の表面に
不動態膜が形成された場合には、電池反応電位において、電解液の分解を抑制することが
できる。また、不動態膜は、電気の伝導性を抑えるとともに、リチウムイオンは伝導でき
るとさらに望ましい。
【0123】
<正極集電体>
正極集電体としては、ステンレス、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこ
れらの合金など、導電性が高い材料をもちいることができる。また正極集電体に用いる材
料は、正極の電位で溶出しないことが好ましい。また、シリコン、チタン、ネオジム、ス
カンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を
用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成し
てもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、
チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステ
ン、コバルト、ニッケル等がある。集電体は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチン
グメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体は、厚み
が5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
【0124】
[負極]
負極は、負極活物質層および負極集電体を有する。また、負極活物質層は、導電助剤お
よびバインダを有していてもよい。
【0125】
<負極活物質>
負極活物質としては、例えば合金系材料や炭素系材料等を用いることができる。
【0126】
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが
可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、
ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち
少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が
大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。このため、負極活物質に
シリコンを用いることが好ましい。また、これらの元素を有する化合物を用いてもよい。
例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、SnO、SnO2、Mg2Sn、SnS2、
V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag
3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、
InSb、SbSn等がある。ここで、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電
反応を行うことが可能な元素、および該元素を有する化合物等を合金系材料と呼ぶ場合が
ある。
【0127】
本明細書等において、SiOは例えば一酸化シリコンを指す。あるいはSiOは、Si
Oxと表すこともできる。ここでxは1近傍の値を有することが好ましい。例えばxは、
0.2以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.2以下が好ましい。
【0128】
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハ
ードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等を用いればよ
い。
【0129】
黒鉛としては、人造黒鉛や、天然黒鉛等が挙げられる。人造黒鉛としては例えば、メソ
カーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等が挙げ
られる。ここで人造黒鉛として、球状の形状を有する球状黒鉛を用いることができる。例
えば、MCMBは球状の形状を有する場合があり、好ましい。また、MCMBはその表面
積を小さくすることが比較的容易であり、好ましい場合がある。天然黒鉛としては例えば
、鱗片状黒鉛、球状化天然黒鉛等が挙げられる。
【0130】
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム-黒鉛層間化合物の生成時)
にリチウム金属と同程度に低い電位を示す(0.05V以上0.3V以下 vs.Li/
Li+)。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さ
らに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が比較的小さい、安価であ
る、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
【0131】
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4
Ti5O12)、リチウム-黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5
)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いること
ができる。
【0132】
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をも
つLi3-xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.
6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を
示し好ましい。
【0133】
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため
、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わ
せることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合で
も、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質と
してリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
【0134】
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例え
ば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウ
ムとの合金を作らない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応
が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3
等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge
3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等
のフッ化物でも起こる。
【0135】
負極活物質層が有することのできる導電助剤およびバインダとしては、正極活物質層が
有することのできる導電助剤およびバインダと同様の材料を用いることができる。
【0136】
<負極集電体>
負極集電体には、正極集電体と同様の材料を用いることができる。なお負極集電体は、
リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることが好ましい。
【0137】
[電解液]
電解液は、溶媒と電解質を有する。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好
ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブ
チレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチロ
ラクトン、γ-バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネー
ト(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エ
チル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、
1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスル
ホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テ
トラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意
の組み合わせおよび比率で用いることができる。
【0138】
また、電解液の溶媒として、難燃性および難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を
一つ又は複数用いることで、蓄電装置の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇し
ても、蓄電装置の破裂や発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオ
ンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオンとして、四
級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニウムカチオン
等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオンおよびピリジニウムカチオン等
の芳香族カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1価のアミド系
アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキ
ルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレー
トアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、またはパーフルオロアルキルホスフ
ェートアニオン等が挙げられる。
【0139】
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、例えばLiPF6、LiClO4、L
iAsF6、LiBF4、LiAlCl4、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO
4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiCF3SO3、LiC4F9S
O3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiN(CF3SO2
)2、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2)、LiN(C2F5SO2)2等のリ
チウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いるこ
とができる。
【0140】
蓄電装置に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「
不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい。
具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、より
好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。
【0141】
また、電解液にビニレンカーボネート、プロパンスルトン(PS)、tert-ブチル
ベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、リチウムビス(オキサ
レート)ボレート(LiBOB)、またスクシノニトリル、アジポニトリル等のジニトリ
ル化合物などの添加剤を添加してもよい。添加剤の濃度は、例えば溶媒全体に対して0.
1weight%以上5weight%以下とすればよい。
【0142】
また、ポリマーを電解液で膨潤させたポリマーゲル電解質を用いてもよい。
【0143】
ポリマーゲル電解質を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、二次電
池の薄型化および軽量化が可能である。
【0144】
ゲル化されるポリマーとして、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル
、ポリエチレンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、フッ素系ポリマー
のゲル等を用いることができる。例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアル
キレンオキシド構造を有するポリマーや、PVDF、およびポリアクリロニトリル等、お
よびそれらを含む共重合体等を用いることができる。例えばPVDFとヘキサフルオロプ
ロピレン(HFP)の共重合体であるPVDF-HFPを用いることができる。また、形
成されるポリマーは、多孔質形状を有してもよい。
【0145】
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、
ポリエチレンオキシド(PEO)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることがで
きる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、
電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
【0146】
[セパレータ]
また二次電池は、セパレータを有することが好ましい。セパレータとしては、例えば、
紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いは
ナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、ア
クリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いるこ
とができる。セパレータは袋状に加工し、正極または負極のいずれか一方を包むように配
置することが好ましい。
【0147】
セパレータは多層構造であってもよい。たとえばポリプロピレン、ポリエチレン等の有
機材料フィルムに、セラミック系材料、フッ素系材料、ポリアミド系材料、またはこれら
を混合したもの等をコートすることができる。セラミック系材料としては、たとえば酸化
アルミニウム粒子、酸化シリコン粒子等を用いることができる。フッ素系材料としては、
たとえばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。ポリアミド系
材料としては、たとえばナイロン、アラミド(メタ系アラミド、パラ系アラミド)等を用
いることができる。
【0148】
セラミック系材料をコートすると耐酸化性が向上するため、高電圧充放電の際のセパレ
ータの劣化を抑制し、二次電池の信頼性を向上させることができる。またフッ素系材料を
コートするとセパレータと電極が密着しやすくなり、出力特性を向上させることができる
。ポリアミド系材料、特にアラミドをコートすると、耐熱性が向上するため、二次電池の
安全性を向上させることができる。
【0149】
たとえばポリプロピレンのフィルムの両面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料を
コートしてもよい。また、ポリプロピレンのフィルムの、正極と接する面に酸化アルミニ
ウムとアラミドの混合材料をコートし、負極と接する面にフッ素系材料をコートしてもよ
い。
【0150】
多層構造のセパレータを用いると、セパレータ全体の厚さが薄くても二次電池の安全性
を保つことができるため、二次電池の体積あたりの容量を大きくすることができる。
【0151】
(実施の形態3)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した正極活物質粒子100を有する二次電池
の形状の例について説明する。本実施の形態で説明する二次電池に用いる材料は、先の実
施の形態の記載を参酌することができる。
【0152】
[コイン型二次電池]
まずコイン型の二次電池の一例について説明する。
図4(A)はコイン型(単層偏平型
)の二次電池の外観図であり、
図4(B)は、その断面図である。
【0153】
コイン型の二次電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極
缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている
。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層30
6により形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設
けられた負極活物質層309により形成される。
【0154】
なお、コイン型の二次電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活
物質層は片面のみに形成すればよい。
【0155】
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウ
ム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス
鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニ
ウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極3
07とそれぞれ電気的に接続する。
【0156】
これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解質に含浸させ、
図4(B
)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、
負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介
して圧着してコイン形の二次電池300を製造する。
【0157】
正極304に、先の実施の形態で説明した正極活物質粒子を用いることで、高容量でサ
イクル特性に優れたコイン型の二次電池300とすることができる。
【0158】
[円筒型二次電池]
次に円筒型の二次電池の例について
図5を参照して説明する。円筒型の二次電池600
は、
図5(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および
底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)6
02とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0159】
図5(B)は、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池
缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで
捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に
捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602に
は、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれ
らの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる
。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ま
しい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子
は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けら
れた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、
コイン型の二次電池と同様のものを用いることができる。
【0160】
円筒型の二次電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形
成することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、
負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および
負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子
603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接さ
れる。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature
Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている
。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ60
1と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度
が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限し
て異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)
系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0161】
正極604に、先の実施の形態で説明した正極活物質粒子を用いることで、高容量でサ
イクル特性に優れた円筒型の二次電池600とすることができる。
【0162】
[蓄電装置の構造例]
蓄電装置の別の構造例について、
図6乃至
図10を用いて説明する。
【0163】
図6(A)及び
図6(B)は、蓄電装置の外観図を示す図である。蓄電装置は、回路基
板900と、二次電池913と、を有する。二次電池913には、ラベル910が貼られ
ている。さらに、
図6(B)に示すように、蓄電装置は、端子951と、端子952と、
アンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
【0164】
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子95
1、端子952、アンテナ914、アンテナ915、及び回路912に接続される。なお
、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端
子などとしてもよい。
【0165】
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914
及びアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また
、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電
体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915
は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能す
ることができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、ア
ンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だ
けでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
【0166】
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これに
より、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
【0167】
蓄電装置は、アンテナ914及びアンテナ915と、二次電池913との間に層916
を有する。層916は、例えば二次電池913による電磁界を遮蔽する機能を有する。層
916としては、例えば磁性体を用いることができる。
【0168】
【0169】
例えば、
図7(A-1)及び
図7(A-2)に示すように、
図6(A)及び
図6(B)
に示す二次電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよい。
図7(A-1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、
図7(A-2)は
、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、
図6(A)及び
図6(B)に
示す蓄電装置と同じ部分については、
図6(A)及び
図6(B)に示す蓄電装置の説明を
適宜援用できる。
【0170】
図7(A-1)に示すように、二次電池913の一対の面の一方に層916を挟んでア
ンテナ914が設けられ、
図7(A-2)に示すように、二次電池913の一対の面の他
方に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば二次電池913
による電磁界を遮蔽する機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることが
できる。
【0171】
上記構造にすることにより、アンテナ914及びアンテナ915の両方のサイズを大き
くすることができる。
【0172】
又は、
図7(B-1)及び
図7(B-2)に示すように、
図6(A)及び
図6(B)に
示す二次電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれに別のアンテナを設けてもよい
。
図7(B-1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、
図7(B-2)
は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、
図6(A)及び
図6(B)
に示す蓄電装置と同じ部分については、
図6(A)及び
図6(B)に示す蓄電装置の説明
を適宜援用できる。
【0173】
図7(B-1)に示すように、二次電池913の一対の面の一方に層916を挟んでア
ンテナ914及びアンテナ915が設けられ、
図7(B-2)に示すように、二次電池9
13の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918
は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918
には、例えばアンテナ914及びアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用する
ことができる。アンテナ918を介した蓄電装置と他の機器との通信方式としては、NF
Cなど、蓄電装置と他の機器との間で用いることができる応答方式などを適用することが
できる。
【0174】
又は、
図8(A)に示すように、
図6(A)及び
図6(B)に示す二次電池913に表
示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電気
的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくても
よい。なお、
図6(A)及び
図6(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、
図6(A
)及び
図6(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
【0175】
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを
表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレク
トロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペ
ーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
【0176】
又は、
図8(B)に示すように、
図6(A)及び
図6(B)に示す二次電池913にセ
ンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に
接続される。なお、
図6(A)及び
図6(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図
6(A)及び
図6(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
【0177】
センサ921としては、例えば、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、
光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、
流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定することができる機能を有すればよ
い。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電装置が置かれている環境を示すデー
タ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
【0178】
さらに、二次電池913の構造例について
図9及び
図10を用いて説明する。
【0179】
図9(A)に示す二次電池913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設
けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液に含浸され
る。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐
体930に接していない。なお、
図9(A)では、便宜のため、筐体930を分離して図
示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952
が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウム
など)又は樹脂材料を用いることができる。
【0180】
なお、
図9(B)に示すように、
図9(A)に示す筐体930を複数の材料によって形
成してもよい。例えば、
図9(B)に示す二次電池913は、筐体930aと筐体930
bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体950
が設けられている。
【0181】
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテ
ナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、二次電池913による電界
の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930a
の内部にアンテナ914やアンテナ915などのアンテナを設けてもよい。筐体930b
としては、例えば金属材料を用いることができる。
【0182】
さらに、捲回体950の構造について
図10に示す。捲回体950は、負極931と、
正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟
んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回
体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに
複数重ねてもよい。
【0183】
負極931は、端子951及び端子952の一方を介して
図6に示す端子911に接続
される。正極932は、端子951及び端子952の他方を介して
図6に示す端子911
に接続される。
【0184】
正極932に、先の実施の形態で説明した正極活物質粒子100を用いることで、高容
量でサイクル特性に優れた二次電池913とすることができる。
【0185】
[ラミネート型二次電池]
次に、ラミネート型の二次電池の例について、
図11乃至
図17を参照して説明する。
ラミネート型の二次電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なく
とも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて二次電池も曲げること
もできる。
【0186】
図11を用いて、ラミネート型の二次電池980について説明する。ラミネート型の二
次電池980は、
図11(A)に示す捲回体993を有する。捲回体993は、負極99
4と、正極995と、セパレータ966と、を有する。捲回体993は、
図10で説明し
た捲回体950と同様に、セパレータ966を挟んで負極994と、正極995とが重な
り合って積層され、該積層シートを捲回したものである。
【0187】
なお、負極994、正極995およびセパレータ966からなる積層の積層数は、必要
な容量と素子体積に応じて適宜設計すればよい。負極994はリード電極997およびリ
ード電極998の一方を介して負極集電体(図示せず)に接続され、正極995はリード
電極997およびリード電極998の他方を介して正極集電体(図示せず)に接続される
。
【0188】
図11(B)に示すように、外装体となるフィルム981と、凹部を有するフィルム9
82とを熱圧着などにより貼り合わせて形成される空間に上述した捲回体993を収納す
ることで、
図11(C)に示すように二次電池980を作製することができる。捲回体9
93は、リード電極997およびリード電極998を有し、フィルム981と、凹部を有
するフィルム982との内部で電解液に含浸される。
【0189】
フィルム981と、凹部を有するフィルム982は、例えばアルミニウムなどの金属材
料や樹脂材料を用いることができる。フィルム981および凹部を有するフィルム982
の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときにフィルム981と、凹部
を有するフィルム982を変形させることができ、可撓性を有する二次電池を作製するこ
とができる。
【0190】
また、
図11(B)および
図11(C)では2枚のフィルムを用いる例を示しているが
、1枚のフィルムを折り曲げることによって空間を形成し、その空間に上述した捲回体9
93を収納してもよい。
【0191】
正極995に、先の実施の形態で説明した正極活物質粒子100を用いることで、高容
量でサイクル特性に優れた二次電池980とすることができる。
【0192】
また
図11では外装体となるフィルムにより形成された空間に捲回体を有する二次電池
980の例について説明したが、たとえば
図12のように、外装体となるフィルムにより
形成された空間に、短冊状の複数の正極、セパレータおよび負極を有する二次電池として
もよい。
【0193】
図12(A)に示すラミネート型の二次電池500は、正極集電体501および正極活
物質層502を有する正極503と、負極集電体504および負極活物質層505を有す
る負極506と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外
装体509内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置され
ている。また、外装体509内は、電解液508で満たされている。電解液508には、
実施の形態2で示した電解液を用いることができる。
【0194】
図12(A)に示すラミネート型の二次電池500において、正極集電体501および
負極集電体504は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、正
極集電体501および負極集電体504の一部は、外装体509から外側に露出するよう
に配置してもよい。また、正極集電体501および負極集電体504を、外装体509か
ら外側に露出させず、リード電極を用いてそのリード電極と正極集電体501、或いは負
極集電体504と超音波接合させてリード電極を外側に露出するようにしてもよい。
【0195】
ラミネート型の二次電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、
アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該
金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成
樹脂膜を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。
【0196】
また、ラミネート型の二次電池500の断面構造の一例を
図12(B)に示す。
図12
(A)では簡略のため、2つの集電体で構成する例を示しているが、実際は、複数の電極
層で構成する。
【0197】
図12(B)では、一例として、電極層数を16としている。なお、電極層数を16と
しても二次電池500は、可撓性を有する。
図12(B)では負極集電体504が8層と
、正極集電体501が8層の合計16層の構造を示している。なお、
図12(B)は負極
の取り出し部の断面を示しており、8層の負極集電体504を超音波接合させている。勿
論、電極層数は16に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極層数が多い場
合には、より多くの容量を有する二次電池とすることができる。また、電極層数が少ない
場合には、薄型化でき、可撓性に優れた二次電池とすることができる。
【0198】
ここで、ラミネート型の二次電池500の外観図の一例を
図13及び
図14に示す。図
13及び
図14は、正極503、負極506、セパレータ507、外装体509、正極リ
ード電極510及び負極リード電極511を有する。
【0199】
図15(A)は正極503及び負極506の外観図を示す。正極503は正極集電体5
01を有し、正極活物質層502は正極集電体501の表面に形成されている。また、正
極503は正極集電体501が一部露出する領域(以下、タブ領域という)を有する。負
極506は負極集電体504を有し、負極活物質層505は負極集電体504の表面に形
成されている。また、負極506は負極集電体504が一部露出する領域、すなわちタブ
領域を有する。正極及び負極が有するタブ領域の面積や形状は、
図15(A)に示す例に
限られない。
【0200】
[ラミネート型二次電池の作製方法]
ここで、
図13に外観図を示すラミネート型二次電池の作製方法の一例について、
図1
5(B)、(C)を用いて説明する。
【0201】
まず、負極506、セパレータ507及び正極503を積層する。
図15(B)に積層
された負極506、セパレータ507及び正極503を示す。ここでは負極を5組、正極
を4組使用する例を示す。次に、正極503のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタ
ブ領域への正極リード電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接等を用いれ
ばよい。同様に、負極506のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極
リード電極511の接合を行う。
【0202】
次に外装体509上に、負極506、セパレータ507及び正極503を配置する。
【0203】
次に、
図15(C)に示すように、外装体509を破線で示した部分で折り曲げる。そ
の後、外装体509の外周部を接合する。接合には例えば熱圧着等を用いればよい。この
時、後に電解液508を入れることができるように、外装体509の一部(または一辺)
に接合されない領域(以下、導入口という)を設ける。
【0204】
次に、外装体509に設けられた導入口から、電解液508を外装体509の内側へ導
入する。電解液508の導入は、減圧雰囲気下、或いは不活性ガス雰囲気下で行うことが
好ましい。そして最後に、導入口を接合する。このようにして、ラミネート型の二次電池
である二次電池500を作製することができる。
【0205】
正極503に、先の実施の形態で説明した正極活物質粒子100を用いることで、高容
量でサイクル特性に優れた二次電池500とすることができる。
【0206】
[曲げることのできる二次電池]
次に、曲げることのできる二次電池の例について
図16および
図17を参照して説明す
る。
【0207】
図16(A)に、曲げることのできる電池250の上面概略図を示す。
図16(B1)
、(B2)、(C)にはそれぞれ、
図16(A)中の切断線C1-C2、切断線C3-C
4、切断線A1-A2における断面概略図である。電池250は、外装体251と、外装
体251の内部に収容された正極211aおよび負極211bを有する。正極211aと
電気的に接続されたリード212a、および負極211bと電気的に接続されたリード2
12bは、外装体251の外側に延在している。また外装体251で囲まれた領域には、
正極211aおよび負極211bに加えて電解液(図示しない)が封入されている。
【0208】
電池250が有する正極211aおよび負極211bについて、
図17を用いて説明す
る。
図17(A)は、正極211a、負極211bおよびセパレータ214の積層順を説
明する斜視図である。
図17(B)は正極211aおよび負極211bに加えて、リード
212aおよびリード212bを示す斜視図である。
【0209】
図17(A)に示すように、電池250は、複数の短冊状の正極211a、複数の短冊
状の負極211bおよび複数のセパレータ214を有する。正極211aおよび負極21
1bはそれぞれ突出したタブ部分と、タブ以外の部分を有する。正極211aの一方の面
のタブ以外の部分に正極活物質層が形成され、負極211bの一方の面のタブ以外の部分
に負極活物質層が形成される。
【0210】
正極211aの正極活物質層の形成されていない面同士、および負極211bの負極活
物質層の形成されていない面同士が接するように、正極211aおよび負極211bは積
層される。
【0211】
また、正極211aの正極活物質層が形成された面と、負極211bの負極活物質層が
形成された面の間にはセパレータ214が設けられる。
図17では見やすくするためセパ
レータ214を点線で示す。
【0212】
また
図17(B)に示すように、複数の正極211aとリード212aは、接合部21
5aにおいて電気的に接続される。また複数の負極211bとリード212bは、接合部
215bにおいて電気的に接続される。
【0213】
次に、外装体251について
図16(B1)、(B2)、(C)、(D)を用いて説明
する。
【0214】
外装体251は、フィルム状の形状を有し、正極211aおよび負極211bを挟むよ
うに2つに折り曲げられている。外装体251は、折り曲げ部261と、一対のシール部
262と、シール部263と、を有する。一対のシール部262は、正極211aおよび
負極211bを挟んで設けられ、サイドシールとも呼ぶことができる。また、シール部2
63は、リード212a及びリード212bと重なる部分を有し、トップシールとも呼ぶ
ことができる。
【0215】
外装体251は、正極211aおよび負極211bと重なる部分に、稜線271と谷線
272が交互に並んだ波形状を有することが好ましい。また、外装体251のシール部2
62及びシール部263は、平坦であることが好ましい。
【0216】
図16(B1)は、稜線271と重なる部分で切断した断面であり、
図16(B2)は
、谷線272と重なる部分で切断した断面である。
図16(B1)、(B2)は共に、電
池250及び正極211aおよび負極211bの幅方向の断面に対応する。
【0217】
ここで、負極211bの幅方向の端部、すなわち負極211bの端部と、シール部26
2との間の距離を距離Laとする。電池250に曲げるなどの変形を加えたとき、後述す
るように正極211aおよび負極211bが長さ方向に互いにずれるように変形する。そ
の際、距離Laが短すぎると、外装体251と正極211aおよび負極211bとが強く
擦れ、外装体251が破損してしまう場合がある。特に外装体251の金属フィルムが露
出すると、当該金属フィルムが電解液により腐食されてしまう恐れがある。したがって、
距離Laを出来るだけ長く設定することが好ましい。一方で、距離Laを大きくしすぎる
と、電池250の体積が増大してしまう。
【0218】
また、積層された正極211aおよび負極211bの合計の厚さが厚いほど、負極21
1bと、シール部262との間の距離Laを大きくすることが好ましい。
【0219】
より具体的には、積層された正極211aおよび負極211bの合計の厚さを厚さtと
したとき、距離Laは、厚さtの0.8倍以上3.0倍以下、好ましくは0.9倍以上2
.5倍以下、より好ましくは1.0倍以上2.0倍以下であることが好ましい。距離La
をこの範囲とすることで、コンパクトで、且つ曲げに対する信頼性の高い電池を実現でき
る。
【0220】
また、一対のシール部262の間の距離を距離Lbとしたとき、距離Lbを正極211
aおよび負極211bの幅(ここでは、負極211bの幅Wb)よりも十分大きくするこ
とが好ましい。これにより、電池250に繰り返し曲げるなどの変形を加えたときに、正
極211aおよび負極211bと外装体251とが接触しても、正極211aおよび負極
211bの一部が幅方向にずれることができるため、正極211aおよび負極211bと
外装体251とが擦れてしまうことを効果的に防ぐことができる。
【0221】
例えば、一対のシール部262の間の距離Laと、負極211bの幅Wbとの差が、正
極211aおよび負極211bの厚さtの1.6倍以上6.0倍以下、好ましくは1.8
倍以上5.0倍以下、より好ましくは、2.0倍以上4.0倍以下を満たすことが好まし
い。
【0222】
言い換えると、距離Lb、幅Wb、及び厚さtが、下記数式1の関係を満たすことが好
ましい。
【0223】
【0224】
ここで、aは、0.8以上3.0以下、好ましくは0.9以上2.5以下、より好まし
くは1.0以上2.0以下を満たす。
【0225】
また、
図16(C)はリード212aを含む断面であり、電池250、正極211aお
よび負極211bの長さ方向の断面に対応する。
図16(C)に示すように、折り曲げ部
261において、正極211aおよび負極211bの長さ方向の端部と、外装体251と
の間に空間273を有することが好ましい。
【0226】
図16(D)に、電池250を曲げたときの断面概略図を示している。
図16(D)は
、
図16(A)中の切断線B1-B2における断面に相当する。
【0227】
電池250を曲げると、曲げの外側に位置する外装体251の一部は伸び、内側に位置
する他の一部は縮むように変形する。より具体的には、外装体251の外側に位置する部
分は、波の振幅が小さく、且つ波の周期が大きくなるように変形する。一方、外装体25
1の内側に位置する部分は、波の振幅が大きく、且つ波の周期が小さくなるように変形す
る。このように、外装体251が変形することにより、曲げに伴って外装体251にかか
る応力が緩和されるため、外装体251を構成する材料自体が伸縮する必要がない。その
結果、外装体251は破損することなく、小さな力で電池250を曲げることができる。
【0228】
また、
図16(D)に示すように、電池250を曲げると、正極211aおよび負極2
11bとがそれぞれ相対的にずれる。このとき、複数の積層された正極211aおよび負
極211bは、シール部263側の一端が固定部材217で固定されているため、折り曲
げ部261に近いほどずれ量が大きくなるように、それぞれずれる。これにより、正極2
11aおよび負極211bにかかる応力が緩和され、正極211aおよび負極211b自
体が伸縮する必要がない。その結果、正極211aおよび負極211bが破損することな
く電池250を曲げることができる。
【0229】
また、正極211aおよび負極211bと外装体251との間に空間273を有してい
ることにより、曲げた時、内側に位置する正極211aおよび負極211bが、外装体2
51に接触することなく、相対的にずれることができる。
【0230】
図16および
図17で例示した電池250は、繰り返し曲げ伸ばしを行っても、外装体
の破損、正極211aおよび負極211bの破損などが生じにくく、電池特性も劣化しに
くい電池である。電池250が有する正極211aに、先の実施の形態で説明した正極活
物質粒子100を用いることで、さらに高容量でサイクル特性に優れた電池とすることが
できる。
【0231】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を電子機器に実装する例について説
明する。
【0232】
まず実施の形態3の一部で説明した、曲げることのできる二次電池を電子機器に実装す
る例を
図18(A)乃至(G)に示す。曲げることのできる二次電池を適用した電子機器
として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コン
ピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレ
ーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末
、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0233】
また、フレキシブルな形状を備える二次電池を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動
車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
【0234】
図18(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体740
1に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、
スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、二
次電池7407を有している。上記の二次電池7407に本発明の一態様の二次電池を用
いることで、軽量で長寿命な携帯電話機を提供できる。
【0235】
図18(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機74
00を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている二次電
池7407も湾曲される。また、その時、曲げられた二次電池7407の状態を
図18(
C)に示す。二次電池7407は薄型の二次電池である。二次電池7407は曲げられた
状態で固定されている。なお、二次電池7407は集電体7409と電気的に接続された
リード電極を有している。
【0236】
図18(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は
、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び二次電池7104を備える
。また、
図18(E)に曲げられた二次電池7104の状態を示す。二次電池7104は
曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して二次電池7104の一部また
は全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径
の値で表したものを曲率半径であり、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半
径が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または二次電池7104の主表面の一部
または全部が変化する。二次電池7104の主表面における曲率半径が40mm以上15
0mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。上記の二次電池7104に本発明
の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯表示装置を提供できる。
【0237】
図18(F)は、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200
は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7
205、入出力端子7206などを備える。
【0238】
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、イン
ターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することがで
きる。
【0239】
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行う
ことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面
に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7
207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
【0240】
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オ
フ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を
持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーティング
システムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
【0241】
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能
である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリー
で通話することもできる。
【0242】
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクター
を介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充
電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により
行ってもよい。
【0243】
携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の二次電池を有している
。本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯情報端末を提供できる
。例えば、
図18(E)に示した二次電池7104を、筐体7201の内部に湾曲した状
態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる。
【0244】
携帯情報端末7200はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋セ
ンサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサや、タッチセンサ、加圧センサ、加速度セ
ンサ、等が搭載されることが好ましい。
【0245】
図18(G)は、腕章型の表示装置の一例を示している。表示装置7300は、表示部
7304を有し、本発明の一態様の二次電池を有している。また、表示装置7300は、
表示部7304にタッチセンサを備えることもでき、また、携帯情報端末として機能させ
ることもできる。
【0246】
表示部7304はその表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うこと
ができる。また、表示装置7300は、通信規格された近距離無線通信などにより、表示
状況を変更することができる。
【0247】
また、表示装置7300は入出力端子を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接
データのやりとりを行うことができる。また入出力端子を介して充電を行うこともできる
。なお、充電動作は入出力端子を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0248】
表示装置7300が有する二次電池として本発明の一態様の二次電池を用いることで、
軽量で長寿命な表示装置を提供できる。
【0249】
また、先の実施の形態で示したサイクル特性のよい二次電池を電子機器に実装する例を
図18(H)、
図19および
図20を用いて説明する。
【0250】
日用電子機器に二次電池として本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿
命な製品を提供できる。例えば、日用電子機器として、電動歯ブラシ、電気シェーバー、
電動美容機器などが挙げられ、それらの製品の二次電池としては、使用者の持ちやすさを
考え、形状をスティック状とし、小型、軽量、且つ、大容量の二次電池が望まれている。
【0251】
図18(H)はタバコ収容喫煙装置(電子タバコ)とも呼ばれる装置の斜視図である。
図18(H)において電子タバコ7500は、加熱素子を含むアトマイザ7501と、ア
トマイザ7501に電力を供給する二次電池7504と、液体供給ボトルやセンサなどを
含むカートリッジ7502で構成されている。安全性を高めるため、二次電池7504の
過充電や過放電を防ぐ保護回路を二次電池7504に電気的に接続してもよい。
図18(
H)に示した二次電池7504は、充電機器と接続できるように外部端子を有している。
二次電池7504は持った場合に先端部分となるため、トータルの長さが短く、且つ、重
量が軽いことが望ましい。本発明の一態様の二次電池は高容量、良好なサイクル特性を有
するため、長期間に渡って長時間の使用ができる小型であり、且つ、軽量の電子タバコ7
500を提供できる。
【0252】
次に、
図19(A)および
図19(B)に、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を
示す。
図19(A)および
図19(B)に示すタブレット型端末9600は、筐体963
0a、筐体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表
示部9631、表示モード切り替えスイッチ9626、電源スイッチ9627、省電力モ
ード切り替えスイッチ9625、留め具9629、操作スイッチ9628、を有する。表
示部9631には、可撓性を有するパネルを用いることで、より広い表示部を有するタブ
レット端末とすることができる。
図19(A)は、タブレット型端末9600を開いた状
態を示し、
図19(B)は、タブレット型端末9600を閉じた状態を示している。
【0253】
また、タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄
電体9635を有する。蓄電体9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと筐
体9630bに渡って設けられている。
【0254】
表示部9631は、一部をタッチパネルの領域とすることができ、表示された操作キー
にふれることでデータ入力をすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切
り替えボタンが表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631
にキーボードボタン表示することができる。
【0255】
また、表示モード切り替えスイッチ9626は、縦表示又は横表示などの表示の向きを
切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えス
イッチ9625は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用
時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末
は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検
出装置を内蔵させてもよい。
【0256】
図19(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9
633、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634を有する。また、蓄
電体9635として、本発明の一態様に係る二次電池を用いる。
【0257】
なお、タブレット型端末9600は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630aお
よび筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより
、表示部9631を保護できるため、タブレット型端末9600の耐久性を高めることが
できる。また、本発明の一態様の二次電池を用いた蓄電体9635は高容量、良好なサイ
クル特性を有するため、長期間に渡って長時間の使用ができるタブレット型端末9600
を提供できる。
【0258】
また、この他にも
図19(A)および
図19(B)に示したタブレット型端末は、様々
な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻
などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力によって操作又は編集
する、タッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能
、等を有することができる。
【0259】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル
、表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、
筐体9630の片面又は両面に設けることができ、蓄電体9635の充電を効率的に行う
構成とすることができる。
【0260】
また、
図19(B)に示す充放電制御回路9634の構成、および動作について
図19
(C)にブロック図を示し説明する。
図19(C)には、太陽電池9633、蓄電体96
35、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、
表示部9631について示しており、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コ
ンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、
図19(B)に示す充放電制御回路9
634に対応する箇所となる。
【0261】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する
。太陽電池で発電した電力は、蓄電体9635を充電するための電圧となるようDCDC
コンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電
池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ963
7で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部963
1での表示を行わない際には、スイッチSW1をオフにし、スイッチSW2をオンにして
蓄電体9635の充電を行う構成とすればよい。
【0262】
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、
圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄
電体9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信
して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成と
してもよい。
【0263】
図20に、他の電子機器の例を示す。
図20において、表示装置8000は、本発明の
一態様に係る二次電池8004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置80
00は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカ
部8003、二次電池8004等を有する。本発明の一態様に係る二次電池8004は、
筐体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を
受けることもできるし、二次電池8004に蓄積された電力を用いることもできる。よっ
て、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係
る二次電池8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能と
なる。
【0264】
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発
光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Dev
ice)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field
Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0265】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用な
ど、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0266】
図20において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る二次電池8
103を用いた電子機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、
光源8102、二次電池8103等を有する。
図20では、二次電池8103が、筐体8
101及び光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例
示しているが、二次電池8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明
装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8103に
蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給
が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8103を無停電電源として用い
ることで、照明装置8100の利用が可能となる。
【0267】
なお、
図20では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示して
いるが、本発明の一態様に係る二次電池は、天井8104以外、例えば側壁8105、床
8106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓
上型の照明装置などに用いることもできる。
【0268】
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることがで
きる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発
光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0269】
図20において、室内機8200及び室外機8204を有するエアコンディショナーは
、本発明の一態様に係る二次電池8203を用いた電子機器の一例である。具体的に、室
内機8200は、筐体8201、送風口8202、二次電池8203等を有する。
図20
では、二次電池8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、二
次電池8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室
外機8204の両方に、二次電池8203が設けられていても良い。エアコンディショナ
ーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8203に蓄積された
電力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に二次電池8
203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時
でも、本発明の一態様に係る二次電池8203を無停電電源として用いることで、エアコ
ンディショナーの利用が可能となる。
【0270】
なお、
図20では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナー
を例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコ
ンディショナーに、本発明の一態様に係る二次電池を用いることもできる。
【0271】
図20において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る二次電池8304
を用いた電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、
冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、二次電池8304等を有する。
図20では、
二次電池8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は
、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8304に蓄積された電力
を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない
時でも、本発明の一態様に係る二次電池8304を無停電電源として用いることで、電気
冷凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
【0272】
また、電子機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量
のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、二
次電池に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑え
ることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉83
02、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、二次電池8304に電力を
蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行
われる昼間において、二次電池8304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用
率を低く抑えることができる。
【0273】
上述の電子機器の他、本発明の一態様の二次電池はあらゆる電子機器に搭載することが
できる。本発明の一態様により、二次電池のサイクル特性が良好となる。また、本発明の
一態様によれば、高容量の二次電池とすることができ、よって、二次電池自体を小型軽量
化することができる。そのため本発明の一態様である二次電池を、本実施の形態で説明し
た電子機器に搭載することで、より長寿命で、より軽量な電子機器とすることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0274】
(実施の形態5)
本実施の形態では、車両に本発明の一態様である二次電池を搭載する例を示す。
【0275】
二次電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又は
プラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現でき
る。
【0276】
図21において、本発明の一態様である二次電池を用いた車両を例示する。
図21(A
)に示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車
である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用い
ることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様である二次電池を用いること
で、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8400は二次電池を有
する。二次電池は電気モーター8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401や
ルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
【0277】
また、二次電池は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表
示装置に電力を供給することができる。また、二次電池は、自動車8400が有するナビ
ゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
【0278】
図21(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有する二次電池8024にプ
ラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電する
ことができる。
図21(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭
載された二次電池8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。
充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ
等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステ
ーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、
外部からの電力供給により自動車8500に搭載された二次電池8024を充電すること
ができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変
換して行うことができる。
【0279】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供
給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を
組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給
電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部
に太陽電池を設け、停車時や走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触
での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
【0280】
また、
図21(C)は、本発明の一態様の二次電池を用いた二輪車の一例である。
図2
1(C)に示すスクータ8600は、二次電池8602、サイドミラー8601、方向指
示灯8603を備える。二次電池8602は、方向指示灯8603に電気を供給すること
ができる。
【0281】
また、
図21(C)に示すスクータ8600は、座席下収納8604に、二次電池86
02を収納することができる。二次電池8602は、座席下収納8604が小型であって
も、座席下収納8604に収納することができる。
【0282】
本発明の一態様によれば、二次電池のサイクル特性が良好となり、二次電池の容量を大
きくすることができる。よって、二次電池自体を小型軽量化することができる。二次電池
自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることが
できる。また、車両に搭載した二次電池を車両以外の電力供給源としても用いることもで
きる。この場合、例えば電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することがで
きる。電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避できれば、省エネルギー、およ
び二酸化炭素の排出の削減に寄与することができる。また、サイクル特性が良好であれば
二次電池を長期に渡って使用できるため、コバルトをはじめとする希少金属の使用量を減
らすことができる。
【0283】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例0284】
本実施例では、元素Mとしてコバルトを用いた正極活物質粒子を作製し、評価を行った
。
【0285】
<正極活物質粒子の作製>
リチウム源およびコバルト源の濃度を変えた、Sample 1からSample 1
0までの正極活物質粒子を作製した。出発原料として、炭酸リチウム(Li2CO3)、
四酸化三コバルト(Co3O4)、酸化マグネシウム(MgO)およびフッ化リチウム(
LiF)を用いた。
【0286】
それぞれのサンプルについて、出発原料の炭酸リチウム、四酸化三コバルト、酸化マグ
ネシウムおよびフッ化リチウムのモル比を、表1に示す値となるように秤量した。
【0287】
【0288】
表1より、四酸化三コバルトに含まれるコバルトの原子数に対し、炭酸リチウムとフッ
化リチウムのそれぞれに含まれるリチウムの原子数の和は、Sample 1では1.0
00倍、Sample 2では1.010倍、Sample 3では1.020倍、Sa
mple 4では1.030倍、Sample 5では1.035倍、Sample 6
では1.040倍、Sample 7では1.051倍、Sample 8では1.06
1倍、Sample 9では1.081倍、Sample 10では1.131倍である
。また、表1より、四酸化三コバルトに含まれるコバルトの原子数に対し、酸化マグネシ
ウムに含まれるマグネシウムの原子数は0.010倍である。また、表1より、四酸化三
コバルトに含まれるコバルトの原子数に対し、フッ化リチウムに含まれるフッ素の原子数
は0.020倍である。
【0289】
上記の10サンプルについて、それぞれ実施の形態1に記載した作製方法と同様に、出
発原料を混合し、第1の加熱を行い、冷却した後解砕処理を行い、第2の加熱を行い、冷
却し、回収して、Sample 1からSample 10までの正極活物質粒子を得た
。第1の加熱条件として、乾燥空気雰囲気下、1000℃において10時間の処理を行っ
た。第2の加熱条件として、乾燥空気雰囲気下、800℃において2時間の処理を行った
。
【0290】
<SEM観察>
得られたそれぞれのサンプルについて、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning
Electron Microscope)により観察を行った。Sample 1お
よびSample 4の観察結果を
図22(A)および(B)に、Sample 7およ
びSample 8の観察結果を
図23(A)および(B)に、Sample 9および
Sample 10の観察結果を
図24(A)および(B)に、それぞれ示す。Li/C
oが大きくなるのに伴い、粒子が大きくなる様子がみられ、Sample 4では5μm
程度の粒径の粒子が多くみられるのに対し、Sample 8では20μm程度の粒径の
粒子が多くみられ、Sample 10では50μmを超える粒径の粒子がみられた。
【0291】
<粒度分布>
次に、得られたそれぞれのサンプルのうち、Sample 1からSample 4ま
で、およびSample 6からSample 10までについて、粒度分布の測定を行
った。測定には、レーザー回折粒度分布測定装置(SALD-2200形、島津製作所製
)を用いた。Sample 1からSample 4まで、およびSample 6から
Sample 10までの測定結果を
図25に示す。
図25(A)はSample 1か
ら4、およびSample 6の結果を、
図25(B)はSample 7からSamp
le 10までの結果を、それぞれ示す。
図25において縦軸は相対強度、横軸は粒径で
ある。
【0292】
また
図26には、横軸に、炭酸リチウムとフッ化リチウムのそれぞれに含まれるリチウ
ムの原子数の和を四酸化三コバルトに含まれるコバルトの原子数で割った値((Li/C
o)_R)を示し、縦軸に相対強度のピーク値、ここでは相対強度が極大値となった粒度
を示す。
【0293】
(Li/Co)_Rが大きくなるのに伴い、粒度のピーク値は増大する傾向がみられた。
また、(Li/Co)_Rの値が1.05近傍でピーク値の増大が急峻になる傾向がみら
れた。