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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162355
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】C3b不活性化ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20231031BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231031BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20231031BHJP
   C12N 9/50 20060101ALI20231031BHJP
   C12N 15/57 20060101ALI20231031BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231031BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231031BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231031BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231031BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231031BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20231031BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20231031BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K19/00 ZNA
C07K14/705
C12N9/50
C12N15/57
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K38/17
A61K31/7088
A61K35/12
A61K35/76
A61K48/00
A61P27/02
A61K9/08
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140001
(22)【出願日】2023-08-30
(62)【分割の表示】P 2019567602の分割
【原出願日】2018-06-08
(31)【優先権主張番号】1709222.2
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522294246
【氏名又は名称】コンプリメント・セラピューティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】アンウィン,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ,ポール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】C3b結合領域およびC3b不活性化領域を含むポリペプチドを提供する。
【解決手段】C3b不活性化領域が、特定の配列を含む、C3bをタンパク質分解的に切断可能であって、C3b結合領域が、別の特定の配列を含む、補体因子H、CR1、CD46、CD55またはC4結合タンパク質の1つによって結合される領域で、C3bに結合する、C3b結合領域およびC3b不活性化領域を含むポリペプチド、ならびに該ポリペプチドをコードする核酸およびベクター、該ポリペプチドを含む細胞および組成物、ならびにこれらを用いる使用および方法を提供する。
【選択図】図1-2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C3b結合領域およびC3b不活性化領域を含むポリペプチド。
【請求項2】
C3b不活性化領域が、C3bをタンパク質分解的に切断可能である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
C3b不活性化領域が、1303および/または1320位でC3 α’鎖を切断可能である、請求項1または請求項2記載のポリペプチド。
【請求項4】
C3b不活性化領域が、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなる、請求項1~3のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項5】
C3b結合領域が、補体因子Iの補因子によって結合される領域で、C3bに結合する、請求項1~4のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項6】
C3b結合領域が、補体因子H、CR1、CD46、CD55またはC4結合タンパク質の1つによって結合される領域で、C3bに結合する、請求項1~5のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項7】
C3b結合領域が、補体因子Hによって結合される領域、または補体受容体1(CR1)によって結合される領域で、C3bに結合する、請求項1~6のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項8】
C3b結合領域が、補体因子H補体制御タンパク質(CCP)ドメイン1~4によって結合される領域、あるいはCR1 CCPドメイン8~10または15~17によって結合される領域で、C3bに結合する、請求項1~7のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項9】
C3b結合領域が、配列番号11、13または14のアミノ酸配列に対して少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなる、請求項1~8のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項10】
ブルッフ膜(BrM)を渡って拡散可能である、請求項1~9のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項11】
グリコシル化されていない、請求項1~10のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項12】
C3b不活性化領域が、配列番号27のコンセンサス配列に一致するアミノ酸配列を欠く、請求項1~11のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項13】
ポリペプチドが検出配列を含み、該検出配列がタンパク質分解酵素の切断部位を含むかまたは該部位からなり、そしてタンパク質分解酵素でのポリペプチドの切断が、非内因性ペプチドの産生を生じる、請求項1~12のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項14】
配列番号32、33、34、35、36、37、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、69、70、71、72または73のアミノ酸配列に対して少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなる、請求項1~13のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項15】
分泌経路配列をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項16】
分泌経路配列が、配列番号27のコンセンサス配列に一致するアミノ酸配列の1つまたはそれより多いコピーを含み、そしてポリペプチドが分泌経路配列を除去するための切断配列をさらに含む、請求項15記載のポリペプチド。
【請求項17】
分泌経路配列を除去するための切断部位が、フーリン・エンドプロテアーゼ切断部位である、請求項16記載のポリペプチド。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項19】
請求項18の核酸を含むベクター。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項18記載の核酸、または請求項19記載のベクターを含む、細胞。
【請求項21】
ポリペプチドを産生するための方法であって、細胞内に、請求項18記載の核酸または請求項19記載のベクターを導入し、そしてポリペプチドの発現に適した条件下で、該細胞を培養する工程を含む、前記方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法によって得られるかまたは得られうる、細胞。
【請求項23】
請求項1~17のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項18記載の核酸、請求項19記載のベクター、あるいは請求項20または請求項22記載の細胞、並びに、薬学的に許容されうるキャリアー、アジュバント、賦形剤、または希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項24】
疾患または状態を治療するかまたは防止する方法における使用のための、請求項1~16のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項17記載の核酸、請求項18記載のベクター、請求項19または請求項21記載の細胞、あるいは請求項22記載の薬学的組成物。
【請求項25】
疾患または状態を治療するかまたは防止するための医薬品の製造における、請求項1~17のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項18記載の核酸、請求項19記載のベクター、請求項20または請求項22記載の細胞、あるいは請求項23記載の薬学的組成物の使用。
【請求項26】
請求項1~17のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項18記載の核酸、請求項19記載のベクター、請求項20または請求項22記載の細胞、あるいは請求項23記載の薬学的組成物を、被験体に投与する工程を含む、疾患または状態を治療するかまたは防止する方法。
【請求項27】
被験体において疾患または状態を治療するかまたは防止する方法であって、請求項18記載の核酸または請求項19記載のベクターを発現するかまたは含むように、被験体の少なくとも1つの細胞を修飾する工程を含む、前記方法。
【請求項28】
疾患または状態が、C3bまたはC3b含有複合体、C3bまたはC3b含有複合体に関連する活性/反応、あるいはC3bまたはC3b含有複合体に関連する活性/反応の産物が、病理学的に関与している疾患または状態である、請求項24記載の使用のための、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、または薬学的組成物、請求項25記載の使用、あるいは請求項26または請求項27記載の方法。
【請求項29】
疾患または状態が、加齢黄斑変性症(AMD)である、請求項24~28のいずれか一項記載の使用のための、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、または薬学的組成物、使用、あるいは方法。
【請求項30】
あらかじめ決定した量の請求項1~17のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項18記載の核酸、請求項19記載のベクター、請求項20または請求項22記載の細胞、あるいは請求項23記載の薬学的組成物を含む、部品キット。
【請求項31】
試料におけるポリペプチドを検出する方法であって:
(i)請求項13記載のポリペプチドを含有すると推測される試料を、検出配列のタンパク質分解的切断部位に特異的なタンパク質分解酵素と接触させ;そして
(ii)非内因性ペプチドの存在を検出する
工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年6月9日出願のGB1709222.2の優先権を請求し、該文献の内容および要素は、すべての目的のため、本明細書に援用される。
本発明は、分子生物学、免疫学、および医学の分野に関する。より具体的には、本発明は、C3b結合領域およびC3b不活性化領域を含むポリペプチド、該ポリペプチドをコードする核酸およびベクター、該核酸/ベクターを含み、そして/または該ポリペプチドを産生する細胞、該ポリペプチド/核酸/ベクター/細胞を含む組成物、ならびに例えばC3bが病理学的に関与している疾患/状態を治療するための、該ポリペプチド/核酸/ベクター/細胞の療法的および予防的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢黄斑変性症(AMD)は、先進国世界における失明の主因であり:2020年までに1億9600万人の人々が罹患すると概算されている。該疾患の初期段階は、黄斑(中心視力に関与する網膜の中心部分)における病変(ドルーゼンと称される)の形成によって特徴づけられる。これらのドルーゼンは、ブルッフ膜(BrM)に隣接して形成され、該膜は、目の血液供給(脈絡膜)を、視覚に必要な桿体細胞および錐体細胞を裏打ちする網膜色素上皮(RPE)から分離する膜である。ドルーゼンは、RPE細胞機能不全および細胞死を導き、そして続いて桿体細胞および錐体細胞の細胞死を導く。AMDは、主に遺伝性疾患であり、補体系の遺伝子における突然変異がAMDのリスク増加と強く関連する。実際、補体系の過剰活性化が、疾患病因形成に大きな役割を果たすことが明らかになってきている。
【0003】
代替経路、古典的経路およびレクチン経路を介した補体系の活性化は、C3転換酵素の形成に行きつく。代替経路によって形成されるC3転換酵素は、因子BbおよびC3bを含む。C3転換酵素は、C3タンパク質のC3aおよびC3b断片への加水分解を触媒する。表面(例えば細胞/組織)上へのC3bの沈着は、補体カスケードの増幅ループを開始し、最終的には細胞/組織破壊および局所炎症反応(これらはすべて、初期AMDに特徴的である)を導く。
【0004】
無細胞構造、例えばBrM上での補体の活性化は、補体因子H(FH)および補体因子I(FI)によって制御される。因子IはC3bを切断し、そして不活性化し(iC3bは、機能性C3転換酵素を形成するために因子Bbと集合することができない)、したがって、補体活性化を停止するが、因子Hなどの補因子の存在下でしかこれを行えない。
【0005】
最近5~10年で、AMDに対する、補体に基づくいくつかの療法が研究されてきている。これらには、補体制御因子全体、例えば因子Hまたは一部切除(truncated)因子HアイソフォームFHL-1を目の中に注入する試みが含まれている。こうした療法はほとんど成功してこなかったが、これは主に、これらのタンパク質が、ターゲット領域、すなわちBrM/RPE細胞界面に到達できないためである。
【発明の概要】
【0006】
1つの側面において、本発明は、C3b結合領域およびC3b不活性化領域を含むポリペプチドを提供する。
いくつかの態様において、C3b不活性化領域は、C3bをタンパク質分解的に切断可能である。いくつかの態様において、C3b不活性化領域は、1303および/または1320位でC3 α’鎖を切断可能である。いくつかの態様において、C3b不活性化領域は、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなる。いくつかの態様において、C3b結合領域は、補体因子Iの補因子によって結合される領域で、C3bに結合する。
【0007】
いくつかの態様において、C3b結合領域は、補体因子H、CR1、CD46、CD55またはC4結合タンパク質の1つによって結合される領域で、C3bに結合する。いくつかの態様において、C3b結合領域は、補体因子Hによって結合される領域、または補体受容体1(CR1)によって結合される領域で、C3bに結合する。いくつかの態様において、C3b結合領域は、補体因子H補体制御タンパク質(CCP)ドメイン1~4によって結合される領域、あるいはCR1 CCPドメイン8~10または15~17によって結合される領域で、C3bに結合する。いくつかの態様において、C3b結合領域は、配列番号11、13または14のアミノ酸配列に対して少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなる。
【0008】
いくつかの態様において、ポリペプチドは、ブルッフ膜(BrM)を渡って拡散可能である。いくつかの態様において、ポリペプチドはグリコシル化されていない。いくつかの態様において、C3b不活性化領域は、配列番号27のコンセンサス配列に一致するアミノ酸配列を欠く。
【0009】
いくつかの態様において、ポリペプチドは検出配列を含み、該検出配列はタンパク質分解酵素の切断部位を含むかまたは該部位からなり、そしてタンパク質分解酵素でのポリペプチドの切断が、非内因性ペプチドの産生を生じる。
【0010】
いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号32、33、34、35、36、37、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、69、70、71、72または73のアミノ酸配列に対して少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなる。
【0011】
いくつかの態様において、ポリペプチドは、分泌経路配列(seceretary pathway sequence)をさらに含む。いくつかの態様において、分泌経路配列は、配列番号27のコンセンサス配列に一致するアミノ酸配列の1つまたはそれより多いコピーを含み、そしてポリペプチドが分泌経路配列を除去するための切断配列をさらに含む。いくつかの態様において、分泌経路配列を除去するための切断部位は、エンドプロテアーゼ切断部位、例えばRPE細胞によって発現されるエンドプロテアーゼ、例えばフーリン(furin)・エンドプロテアーゼの切断部位である。
【0012】
別の側面において、本発明は、本発明記載のポリペプチドをコードする核酸を提供する。
別の側面において、本発明は、本発明の核酸を含むベクターを提供する。
【0013】
別の側面において、本発明は、本発明記載のポリペプチド、核酸、またはベクターを含む、細胞を提供する。
別の側面において、本発明は、ポリペプチドを産生するための方法であって、細胞内に、本発明記載の核酸またはベクターを導入し、そしてポリペプチドの発現に適した条件下で、該細胞を培養する工程を含む、前記方法を提供する。
【0014】
別の側面において、本発明は、本発明記載のポリペプチドを産生するための方法によって得られるかまたは得られうる、細胞を提供する。
別の側面において、本発明は、本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクター、または細胞、並びに、薬学的に許容されうるキャリアー、アジュバント、賦形剤、または希釈剤を含む、薬学的組成物を提供する。
【0015】
別の側面において、本発明は、疾患または状態を治療するかまたは防止する方法における使用のための、本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクターまたは薬学的組成物を提供する。
【0016】
別の側面において、本発明は、疾患または状態を治療するかまたは防止するための医薬品の製造における、本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクターまたは薬学的組成物の使用を提供する。
【0017】
別の側面において、本発明は、本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクターまたは薬学的組成物を、被験体に投与する工程を含む、疾患または状態を治療するかまたは防止する方法を提供する。
【0018】
別の側面において、本発明は、被験体において疾患または状態を治療するかまたは防止する方法であって、本発明記載の核酸またはベクターを発現するかまたは含むように、被験体の少なくとも1つの細胞を修飾する工程を含む、前記方法を提供する。
【0019】
本発明の多様な側面にしたがったいくつかの態様において、疾患または状態は、C3bまたはC3b含有複合体、C3bまたはC3b含有複合体に関連する活性/反応、あるいはC3bまたはC3b含有複合体に関連する活性/反応の産物が、病理学的に関与している疾患または状態である。いくつかの態様において、疾患または状態は、加齢黄斑変性症(AMD)である。
【0020】
別の側面において、本発明は、あらかじめ決定した量の、本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、または薬学的組成物を含む、部品キット(kit of parts)を提供する。
【0021】
別の側面において、本発明は、試料におけるポリペプチドを検出する方法であって:
(i)本発明のポリペプチドを含有すると推測される試料を、検出配列のタンパク質分解的切断部位に特異的なタンパク質分解酵素と接触させ;そして
(ii)非内因性ペプチドの存在を検出する
工程を含む、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1-1】補体因子H補因子領域を含むC3b不活性化ポリペプチドの模式図。C3b不活性化ポリペプチドは、補体因子HのC3b結合領域(すなわちCCP1~4)、質量分析による生物学的試料における検出を可能にするように設計されたユニークなペプチドを生成する、操作されたタンパク質分解的切断部位(によって示される)を含む柔軟なリンカー、および補体因子Iのタンパク質分解ドメインを含む。図1Aは、補体因子Iのタンパク質分解ドメイン上でN-グリカンを含むポリペプチドを示す。図1Bは、補体因子Iのタンパク質分解ドメインが、N-グリコシル化のための部位を除去するように突然変異されているポリペプチドを示す。
図1-2】補体因子H補因子領域を含むC3b不活性化ポリペプチドの模式図。C3b不活性化ポリペプチドは、補体因子HのC3b結合領域(すなわちCCP1~4)、質量分析による生物学的試料における検出を可能にするように設計されたユニークなペプチドを生成する、操作されたタンパク質分解的切断部位(によって示される)を含む柔軟なリンカー、および補体因子Iのタンパク質分解ドメインを含む。図1Cは、補体因子Iのタンパク質分解ドメインが、N-グリコシル化のための部位を除去するように突然変異されており、そしてポリペプチドがタンパク質のN末端の代替グリコシル化配列、およびタンパク質から代替グリコシル化配列を除去するためのエンドペプチダーゼ切断部位を含む、ポリペプチドを示す。
図2】C3b分解の分析のウェスタンブロットの結果を示す写真。は、C3b分解のiC3b産物を示す。「キメラ」は、図1Aに模式的に示したポリペプチドを指す。
図3図1Aに模式的に示したポリペプチドの酵素的脱グリコシル化後のバンドシフトを示すInstant Blue染色ゲルを示す写真。「dキメラ」は脱グリコシル化ポリペプチドを指す。
図4-1】(図4A)BrMを通じた拡散後の全ヒト血清における可溶性補体タンパク質の存在を検出するウェスタンブロット、および(図4B)純粋な補体タンパク質に関して、全ヒト血清において見られたものと同じ拡散パターンが観察されたことを示すInstant Blue染色ゲルの写真。
図4-2】(図4A)BrMを通じた拡散後の全ヒト血清における可溶性補体タンパク質の存在を検出するウェスタンブロット、および(図4B)純粋な補体タンパク質に関して、全ヒト血清において見られたものと同じ拡散パターンが観察されたことを示すInstant Blue染色ゲルの写真。
図5-1】異なる精製タンパク質またはBrM拡散アッセイ由来の拡散物質の存在下での、C3b分解のInstant Blue染色ゲル分析の写真。(A)補体因子IがBrMを渡って拡散し、そしてC3bを分解する能力の分析結果を示す。(B)天然補体因子Iの脱グリコシル化(dFI)および生じるバンドシフトパターンを示す。
図5-2】異なる精製タンパク質またはBrM拡散アッセイ由来の拡散物質の存在下での、C3b分解のInstant Blue染色ゲル分析の写真。(C)脱グリコシル化補体因子IがBrMを渡って拡散し、そしてC3bを分解する能力の分析結果を示す。
図6】BrMを渡って拡散する能力の分析後の試料チャンバーおよび拡散物質チャンバーにおける、図1Cに模式的に示す脱グリコシル化キメラFH-FIポリペプチド(dFH-FI)の存在を検出するウェスタンブロットの結果の写真。
図7図1Aに模式的に示すキメラFH-FIポリペプチドの脱グリコシル化型(dFH-FI)を用いたC3b分解アッセイの分析のウェスタンブロットの結果を示す写真。
図8】ブルッフ膜(BrM)によって維持される目の別個のコンプリメントーム(complementone)領域の模式図。
図9-1】バイオレイヤー干渉計によって測定した、C3bのグリコシル化および脱グリコシル化キメラFH-FIポリペプチド(9A)ならびにFHおよびFHL-1(9B)の結合アフィニティを示す表およびグラフ。
図9-2】バイオレイヤー干渉計によって測定した、C3bのグリコシル化および脱グリコシル化キメラFH-FIポリペプチド(9A)ならびにFHおよびFHL-1(9B)の結合アフィニティを示す表およびグラフ。
図10-1】補体受容体1補因子領域を含む、C3b不活性化ポリペプチドの模式図。C3b不活性化ポリペプチドは、補体受容体1のC3b結合領域CCP8~10または15~17、質量分析適合性検出ペプチドを生成するためのモチーフ(「M」によって示される)、質量分析による生物学的試料における検出を可能にするように設計されたユニークなトリプシンペプチド(によって示される)を含む柔軟なリンカー、および補体因子Iのタンパク質分解ドメインを含む。図10Aは、CR1 CCP8~10および補因子上のN-グリカンおよびタンパク質分解ドメインを含むポリペプチド(CR1a-FI)を示す。図10Bは、CR1 CCP8~10を含み、そして補因子およびタンパク質分解ドメインが、N-グリコシル化のための部位を除去するように突然変異されているポリペプチド(nCR1a-FI)を示す。
図10-2】補体受容体1補因子領域を含む、C3b不活性化ポリペプチドの模式図。C3b不活性化ポリペプチドは、補体受容体1のC3b結合領域CCP8~10または15~17、質量分析適合性検出ペプチドを生成するためのモチーフ(「M」によって示される)、質量分析による生物学的試料における検出を可能にするように設計されたユニークなトリプシンペプチド(によって示される)を含む柔軟なリンカー、および補体因子Iのタンパク質分解ドメインを含む。図10Cは、CR1 CCP 15~17、ならびに補因子およびタンパク質分解ドメイン上にN-グリカンを含むポリペプチド(CR1b-FI)を示す。図10Dは、CR1 CCP 15~17を含み、補因子およびタンパク質分解ドメインが、N-グリコシル化のための部位を除去するように突然変異されているポリペプチド(nCR1b-FI)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、C3b結合領域およびC3b不活性化領域を含むポリペプチドに関する。該ポリペプチドは、ポリペプチドが、第二のタンパク質の必要性を伴わずに、C3bをiC3bに酵素的に切断可能であるように、補体因子Iおよび補体因子Iの補因子(例えば本明細書に記載するようなもの、例えば補体因子H、補体受容体1(CR1)等)の両方の活性ドメインを含む。重要なことに、iC3b、ならびにその分解産物C3dgおよびC3dはすべてオプソニンであり、そして破片除去の重要な仲介因子である。
【0024】
C3およびC3b
補体構成要素3(C3)は、自然免疫および補体系において、中心的な役割を有する免疫系タンパク質である。C3のプロセシングは、例えば、その全体が本明細書に援用されるFoleyら J Thromb Haemostasis (2015) 13:610-618に記載される。ヒトC3(UniProt:P01024;配列番号1)は、1,663アミノ酸配列(N末端の22アミノ酸シグナルペプチドを含む)を含む。アミノ酸23~667はC3 β鎖(配列番号2)をコードし、そしてアミノ酸749~1,663はC3 α’鎖(配列番号3)をコードする。C3 β鎖およびC3 α’鎖は、鎖間ジスルフィド結合(C3 β鎖のシステイン559、およびC3 α’鎖のシステイン816の間に形成される)を通じて会合し、C3bを形成する。C3aは、C3のアミノ酸672~748位に対応する77アミノ酸断片(配列番号4)であり、古典的経路およびレクチン経路を通じた活性化後、C3のタンパク質分解的切断によって生成される。
【0025】
C3bは、食細胞およびNK細胞による食作用のため、病原体、抗体-抗原免疫複合体、およびアポトーシス細胞をターゲティングする、強力なオプソニンである。C3bはまた、補体反応を活性化し、そして増幅するための転換酵素複合体の形成にも関与する。C3bは因子Bと会合して、C3bBb型C3転換酵素(代替経路)を形成し、そしてC4bおよびC2aと会合してC4b2a3b型C5転換酵素(古典的経路)を形成するか、またはC3bBbと会合してC3bBb3b型C5転換酵素(代替経路)を形成することも可能である。
【0026】
C3bは、α’鎖断片1(C3のアミノ酸749~1303位に対応する;配列番号5)およびα’鎖断片2(C3のアミノ酸1321~1,663位に対応する;配列番号6)を形成する、アミノ酸1303および1320位でのα’鎖のタンパク質分解的切断によって、iC3bと称される、転換酵素集合に関与不能な不活性型にプロセシングされうる。したがって、iC3bは、C3 β鎖、C3 α’鎖断片1およびC3 α’鎖断片2(ジスルフィド結合を通じて会合する)を含む。α’鎖の切断はまた、C3fも遊離させ、これはC3のアミノ酸1304~1320位に対応する(配列番号7)。
【0027】
本明細書において、「C3」は、任意の種由来のC3を指し、そして任意の種由来のC3のアイソフォーム、断片、変異体または相同体を含む。いくつかの態様において、C3は、哺乳動物C3(例えばカニクイザル(cynomolgous)、ヒトおよび/または齧歯類(例えばラットおよび/またはネズミ)C3)である。C3のアイソフォーム、断片、変異体または相同体は、随意に、所定の種由来の未成熟または成熟C3、例えばヒ
トC3(配列番号1)のアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有すると特徴づけられてもよい。
【0028】
本明細書において、「C3b」は、任意の種由来のC3bのアイソフォーム、断片、変異体または相同体を指し、そしてこれらを含む。いくつかの態様において、C3bは、哺乳動物C3b(例えばカニクイザル、ヒトおよび/または齧歯類(例えばラットおよび/またはネズミ)C3b)である。
【0029】
C3bのアイソフォーム、断片、変異体または相同体は、随意に、所定の種、例えばヒト由来のそれぞれのポリペプチドのアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有するC3 α’鎖断片1、C3 α’鎖断片2およびC3 βを含むと特徴づけられてもよい。すなわち、C3bは:配列番号5に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有するC3 α’鎖断片1;配列番号6に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有するC3 α’鎖断片2;および配列番号2に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有するC3 β鎖を含んでもよい。
【0030】
C3bのアイソフォーム、断片、変異体または相同体は、随意に、例えば、機能的特性/活性に関する適切なアッセイによる分析によって決定した際、参照C3bの機能的特性/活性を有する、機能的アイソフォーム、断片、変異体または相同体であってもよい。例えば、C3bのアイソフォーム、断片、変異体または相同体は、オプソニンとして作用する能力、および/または機能的C3/C5転換酵素を形成する能力によって特徴づけられてもよい。
【0031】
補体因子Iおよび補体因子Iの補因子
C3bからiC3bへのプロセシングは、補体因子I(ヒトにおいては遺伝子CFIによってコードされる)によって行われる。ヒト補体因子I(UniProt:P05156;配列番号8)は、583アミノ酸配列(N末端の18アミノ酸シグナルペプチドを含む)を有する。前駆体ポリペプチドは、フーリンによって切断されて、鎖間ジスルフィド結合によって連結された重鎖(アミノ酸19~335)および軽鎖(アミノ酸340~583)を含む、成熟補体因子Iを生じる。軽鎖のアミノ酸340~574は、補体因子Iのタンパク質分解ドメイン(配列番号9)をコードし、該ドメインは、C3bを切断してiC3bを産生する際に関与する、触媒三連構造を含有するセリンプロテアーゼである(Ekdahlら, J Immunol (1990) 144 (11):4269-74)。
【0032】
本明細書において、「補体因子I」は、任意の種由来の補体因子Iを指し、そして任意の種由来の補体因子Iのアイソフォーム、断片、変異体または相同体を含む。いくつかの態様において、補体因子Iは、哺乳動物補体因子I(例えばカニクイザル、ヒトおよび/または齧歯類(例えばラットおよび/またはネズミ)補体因子I)である。
【0033】
補体因子Iのアイソフォーム、断片、変異体または相同体は、随意に、所定の種由来の未成熟または成熟補体因子I、例えばヒト補体因子I(配列番号8)のアミノ酸配列に対
して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有すると特徴づけられてもよい。補体因子Iのアイソフォーム、断片、変異体または相同体は、随意に、例えば、機能的特性/活性に関する適切なアッセイによる分析によって決定した際、参照補体因子I(例えば全長ヒト補体因子I)の機能的特性/活性を有する、機能的アイソフォーム、断片、変異体または相同体であってもよい。例えば、補体因子Iのアイソフォーム、断片、変異体または相同体は、セリンプロテアーゼ活性を示してもよく、そして/またはC3bを不活性化することが可能であってもよい。
【0034】
補体因子Iの断片は、任意の長さ(アミノ酸数で)であってもよいが、随意に、成熟補体因子Iの長さの少なくとも25%であってもよく、そして成熟補体因子Iの長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の1つの最大長を有してもよい。補体因子Iの断片は、10アミノ酸の最小長、および15、20、25、30、40、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550または575アミノ酸の1つの最大長を有してもよい。
【0035】
いくつかの態様において、補体因子Iは、配列番号8に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有する。
【0036】
iC3bを生じる、補体因子IによるC3bのタンパク質分解的切断は、補体因子Iの補因子によって促進される。補体因子Iの補因子は、典型的には、C3bおよび/または補体因子Iに結合し、そして補体因子IによるC3bからiC3bへのプロセシングを増強する。補体因子Iの補因子として作用可能な分子には、補体因子H、補体受容体1(CR1)、CD46、CD55およびC4結合タンパク質(C4BP)、SPICE、VCP(またはVICE)、ならびにMOPICEが含まれる。
【0037】
補体因子H構造および機能は、その全体が本明細書に援用される、Wuら, Nat Immunol (2009) 10(7): 728-733に概説される。ヒト補体因子H(UniProt:P08603;配列番号10)は、1,233アミノ酸配列(N末端の18アミノ酸シグナルペプチド)を含み、そして~60アミノ酸の、20の補体制御タンパク質(CCP)ドメイン: CCP1=19~82位、CCP2=83~143位、CCP3=144~207位、CCP4=208~264位、CCP5=265~322位、CCP6=324~386位、CCP7=387~444位、CCP8=446~507位、CCP9=515~566位、CCP10=567~625位、CCP11=628~686位、CCP12=689~746位、CCP13=751~805位、CCP14=809~866位、CCP15=868~928位、CCP16=929~986位、CCP17=987~1045位、CCP18=1046~1104位、CCP19=1107~1165位、およびCCP20=1170~1230を含む。19~264位(配列番号11)に対応する補体因子Hの最初の4つのCCPドメイン(すなわちCCP1~CCP4)は、C3bからiC3bに切断するための補体因子I補因子活性に必要かつ十分である。CCP19~20もまた、C3bおよびC3dと会合することが示されてきている(Morganら, Nat Struct Mol Biol (2011) 18(4):463-470)一方、CCP7およびCCP19~20は、グリコサミノグリカン(GAG)およびシアル酸と結合し、そして自己および非自己の間の区別に関与する(Schmidtら, J Immunol (2008) 181(4):2610-2619; Kajanderら, PNAS (2011) 108(7):2897-2902)。
【0038】
補体受容体1(CR1)構造および機能は、どちらもその全体が本明細書に援用される、KheraおよびDas, Mol Immunol (2009) 46(5):761-772、ならびにJacquetら, J Immunol (2013) 190(7):3721-3731に概説される。ヒトCR1(UniProt:P17927;配列番号12)は、2,039アミノ酸配列(N末端の41アミノ酸シグナルペプチドを含む)を有し、そして各々7つのCCPを含む、4つの長鎖相同反復(LHR)ドメイン:LHR-A、LHR-B、LHR-CおよびLHR-Dに編成される、N末端の28のCCPを含む。CR1のC3b結合領域は、LHR-B中のCCP8~10(UniProt:P17927 491~684位;配列番号13)、およびLHR-C中のCCP15~17(UniProt:P17927 941~1134位;配列番号14)に見出される。
【0039】
CD46(膜補因子タンパク質(MCP)とも称される)構造および機能は、例えば、どちらもその全体が本明細書に援用される、LiszewskiおよびAtkinson, Human Genomics (2015) 9:7、ならびにLiszewskiら, J Biol Chem (2000) 275:37692-37701に記載される。ヒトCD46(UniProt:P15529;配列番号15)は、392アミノ酸配列(N末端の34アミノ酸シグナルペプチドを含む)を有し、そして309アミノ酸細胞外ドメイン(UniProt:P15529 35~343位)、23アミノ酸膜貫通ドメイン(UniProt:P15529 344~366位)、および26アミノ酸細胞質ドメイン(UniProt:P15529 367~392位)を含む。CD46の細胞外ドメインは、4つのCCP: CCP1=35~95位、CCP2=97~159位、CCP3=160~225位、およびCCP4=226~285位を含む。CD46のC3bへの結合および補因子活性は、CCP2~4を通じて仲介されることが示されてきている(UniProt:P15529 97~285位、配列番号16; Fornerisら, EMBO J 35(10): 1133-1149を参照されたい)。痘瘡ウイルスタンパク質、補体酵素痘瘡阻害剤(Smallpox Inhibitor of Complement Enzymes)(SPICE)は、4つのCCPドメインを含み、そして補体因子Iに対する補因子活性を示す、ウイルスタンパク質であり(Rosengardら, PNAS (2002) 99: 8808-8813)、そしてヒトCD46に対して、~40%の配列同一性を有する。
【0040】
CD55(崩壊加速因子(DAF)とも称される)構造および機能は、例えば、その全体が本明細書に援用される、Brodbeckら, Immnology (2000)
101(1):104-111に記載される。ヒトCD55(UniProt:P08174;配列番号17)は、381アミノ酸配列(N末端の34アミノ酸シグナルペプチドを含む)を有し、そして4つのCCP: CCP1=35~96位、CCP2=96~160位、CCP3=161~222位、およびCCP4=223~285位を含む。CD55のC3bへの結合および補因子活性は、CCP2~4を通じて仲介されることが示されてきている(UniProt:P08174 96~285位、配列番号18; Fornerisら, EMBO J 35(10):1133-1149を参照されたい)。
【0041】
C4結合タンパク質(C4BP)構造および機能は、どちらも、その全体が本明細書に援用される、Blomら, J Biol Chem (2001) 276(29):27136-27144およびFukuiら, J Biochem (2002) 132(5):719-728に記載される。ヒトC4BP(UniProt:P04003;配列番号19)は、597アミノ酸配列(N末端の48アミノ酸シグナルペプチドを含む)を有し、そして8つのCCP: CCP1=49~110位、CCP2=111~172位、CCP3=173~236位、CCP4=237~296位、CCP5=297~362位、CCP6=363~424位、CCP7=425~482位、およびCCP8=483~540位を含む。C3bの補体因子I仲介性不活性化のための補因子活性は、C4BPのCCP2~4を必要とすることが示されてきている(UniProt:P04003 111~296位、配列番号20; Fukuiら、上記を参照されたい)。
【0042】
本明細書において、「補体因子H」、「補体受容体1(CR1)」、「CD46」、「CD55」および「C4結合タンパク質(C4BP)」は、任意の種由来の該タンパク質を指し、そして任意の種由来のタンパク質のアイソフォーム、断片、変異体または相同体を含む。いくつかの態様において、該タンパク質は、哺乳動物(例えばカニクイザル、ヒトおよび/または齧歯類(例えばラットおよび/またはネズミ))のものである。
【0043】
SPICE、VCP(またはVICE)、およびMOPICEとして知られる痘瘡、ワクシニア、およびサル痘のポックスウイルス補体阻害剤は、補体因子Iの補因子に相同性を有し、そして例えば、Liszewskiら J Immunol (2008) 181(6):4199-4207およびLiszewskiら J Immunol (2009) 183(5):3150-3159に概説される。SPICE、VCPおよびMOPICEのアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号21、配列番号22および配列番号23に示される。
【0044】
補体因子Iの補因子のアイソフォーム、断片、変異体または相同体は、随意に、所定の種、例えばヒト由来の未成熟または成熟タンパク質のアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有すると特徴づけられてもよい。補因子のアイソフォーム、断片、変異体または相同体は、随意に、例えば、機能的特性/活性に関する適切なアッセイによる分析によって決定した際、参照タンパク質の機能的特性/活性を有する、機能的アイソフォーム、断片、変異体または相同体であってもよい。例えば、補体因子Iの所定の補因子のアイソフォーム、断片、変異体または相同体は、補体因子Iに関する補因子活性、例えば、補体因子IによるC3bの不活性化を増強する能力を示してもよい。
【0045】
断片は、任意の長さ(アミノ酸数で)であってもよいが、随意に、成熟タンパク質の長さの少なくとも25%であってもよく、そして成熟タンパク質の長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の1つの最大長を有してもよい。
【0046】
いくつかの態様において、補体因子Hは、配列番号10に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有する。いくつかの態様において、補体受容体1は、配列番号12に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有する。いくつかの態様において、CD46は、配列番号15に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有する。いくつかの態様において、CD55は、配列番号17に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有する。いくつかの態様において、C4BPは、配列番号19に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有する。いくつかの態様において、SPICEは、配列番号21に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有する。いくつかの態様において、VCPは、配列番号22に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有する。いくつかの態様において、MOPICEは、配列番号23に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つのアミノ酸配列同一性を有する。
【0047】
C3b結合領域
本発明のポリペプチドはC3b結合領域を含む。
本明細書において、「C3b結合領域」は、C3bに結合可能な領域を指す。いくつかの態様において、C3b結合領域は、C3bに特異的に結合可能である。C3bへの結合は、C3b結合領域およびC3bの間で形成される、非共有相互作用、例えばファンデルワールス力、静電相互作用、水素結合、および疎水性相互作用によって仲介されてもよい。いくつかの態様において、C3b結合領域は、C3b以外の分子に結合するよりも、より大きなアフィニティ、および/またはより長い期間、C3bに結合する。
【0048】
ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR;例えば、Heartyら, Methods Mol Biol (2012) 907:411-442;またはRichら, Anal Biochem. 2008 Feb 1; 373(1):112-20を参照されたい)、バイオレイヤー干渉法(例えば、Ladら, (2015) J Biomol Screen 20(4):498-507;またはConcepcionら, Comb Chem High Throughput Screen. 2009 Sep; 12(8):791-800を参照されたい)、マイクロスケール熱泳動(MST)分析(例えば、Jerabek-Willemsenら, Assay Drug Dev Technol. 2011 Aug; 9(4): 342-353を参照されたい)を含む、当業者に周知の技術を用いて、あるいは放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって、推定上のC3b結合領域がC3bに結合する能力を分析してもよい。こうした分析を通じて、所定のターゲットに対する結合を決定し、そして定量化してもよい。いくつかの態様において、結合は、所定のアッセイにおいて検出される反応であってもよい。
【0049】
いくつかの態様において、こうしたアッセイにおいて、C3b結合領域は、こうしたアッセイにおいて検出される、該領域が結合しない陰性対照分子に対する結合シグナルのレベルの1倍より高く、例えば、>1.01、>1.02、>1.03、>1.04、>1.05、>1.06、>1.07、>1.08、>1.09、>1.1、>1.2、>1.3、>1.4、>1.5、>1.6、>1.7、>1.8、>1.9、>2、>3、>4、>5、>6、>7、>8、>9、>10、>15、>20、>25、>30、>35、>40、>45、>50、>60、>70、>80、>90、または>100倍の1つである、C3bへの結合を示す。
【0050】
いくつかの態様において、C3b結合領域は、所定のアッセイにおいて、補体因子Iの補因子(またはその断片)によって示される、C3bへの結合のアフィニティに類似である結合アフィニティで、C3bに結合可能である。結合の参照アフィニティに類似の結合アフィニティは、例えば、匹敵するアッセイにおける、補体因子Iの参照補因子によって示されるC3bへの結合レベルの±40%、例えば該結合レベルの±35%、±30%、±25%、±20%、±15%、±10%または±5%の1つであってもよい。
【0051】
C3b結合領域は、例えば、C3bに結合可能な核酸またはアミノ酸配列を含んでもよいし、またはこうした配列からなってもよい。いくつかの態様において、C3b結合領域は、C3bに結合可能な核酸アプタマーを含むかまたは該アプタマーからなる。いくつかの態様において、C3b結合領域は、C3bに結合可能なアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなる。いくつかの態様において、C3bに結合可能なアミノ酸配列は、C3b結合アプタマー、またはC3b結合抗体、またはC3b結合抗原結合断片(例えばC3結合scFv、ミニボディ、Fab等)のアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなる。C3bに結合可能な核酸およびペプチドアプタマーならびに抗体/断片は、当該技術分野に知られ、そしてC3b結合核酸/ペプチドアプタマーおよび抗体/断片を、当業者に周知の方法によって産生してもよい。例えば、核酸およびペプチドアプタマーの選択および産生のための方法は、例えば、Yueceら, Analyst (2015) 140(16):5379-99に記載され、そして抗体/断片を生成するための方法は、Antibodies: A Laboratory Manual, 第2版, 2014; Edward A. Greenfield, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される。
【0052】
いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドのC3b結合領域は、補体因子Iの補因子によって結合される領域で、C3bに結合可能である(すなわち同じ領域または重複する領域に結合する)。いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドのC3b結合領域は、補体因子H、CR1、CD46、CD55、C4BP、SPICE、VCP、またはMOPICEの1またはそれより多くに結合されるC3bの領域で、C3bに結合可能である。
【0053】
いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドのC3b結合領域は、補体因子Hによって結合されるC3bの領域で、C3bに結合可能である。いくつかの態様において、C3b結合領域は、補体因子H CCP1~4(配列番号11)によって結合されるC3bの領域で、C3bに結合可能である。
【0054】
C3b結合領域が、補体因子Iの所定の補因子(またはその断片)によって結合されるC3bの領域で、C3bに結合するかどうかを、ELISA、および表面プラズモン共鳴(SPR)分析を含む、当業者に知られる多様な方法によって決定してもよい。C3b結合領域が、補体因子Iの所定の補因子(またはその断片)によって結合される領域で、C3bに結合するかどうかを決定する、適切なアッセイの例は、競合ELISAアッセイである。
【0055】
例えば、C3b結合領域が、補体因子Iの所定の補因子(またはその断片)によって結合されるC3bの領域で、C3bに結合するかどうかを、補因子/断片およびC3bの一方または両方と、C3b結合領域を含む/からなるペプチド/ポリペプチドの存在下で、またはこれらのインキュベーション後、補因子/断片とC3bの相互作用の分析によって決定してもよい。所定の補因子/断片によって結合されるC3bの領域で、C3bに結合する、C3b結合領域を、C3b結合領域の非存在下(または適切な対照ペプチド/ポリペプチドの存在下)での相互作用レベルに比較した際の、C3b結合領域の存在下で、あるいは一方または両方の相互作用パートナーとC3b結合領域のインキュベーション後、補因子/断片およびC3bの間の相互作用レベルの低下/減少の観察によって同定する。例えば、組換え相互作用パートナーを用いて、適切な分析をin vitroで行ってもよい。こうしたアッセイの目的のため、相互作用レベルを検出しそして/または測定する目的のために、相互作用パートナーの一方または両方および/または所定のC3b結合領域を含む/からなるペプチド/ポリペプチドを標識するか、あるいは検出可能実体と組み合わせて用いてもよい。
【0056】
いくつかの態様において、C3b結合領域は、補体因子Iの補因子として作用する。補体因子Iの補因子は、補体因子IによるC3bの切断を増強する。補体因子Iの補因子は、例えば補体因子Iによるタンパク質分解的切断に好ましい配向で、C3bを提示してもよい。C3b結合領域は、好ましくは、補体因子IによるC3bのタンパク質分解的切断を阻害しない。
【0057】
例えば、C3b結合領域の非存在下(または適切な対照ペプチド/ポリペプチドの存在下)での補体因子IによるC3bのタンパク質分解的切断のレベルまたは速度に比較した際の、C3b結合領域を含む/からなるペプチド/ポリペプチドの存在下で(またはこれらとのインキュベーション後)、適切なアッセイにおいて、補体因子IによるC3bのタンパク質分解的切断のレベルまたは速度の分析によって、補体因子Iの補因子として作用するC3b結合領域を決定してもよい。C3b結合領域を含む/からなるペプチド/ポリペプチドの存在下で(またはこれらとのインキュベーション後)、補体因子IによるC3bのタンパク質分解的切断のレベルまたは速度の増加の検出によって、補体因子Iの補因子として作用するC3b結合領域を同定する。例えば、補体因子IによるC3bの切断の1つまたはそれより多い産物、例えばiC3bまたはC3fの検出によって、補体因子IによるC3bのタンパク質分解のレベルまたは速度を決定してもよい。
【0058】
いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドのC3b結合領域は、補体因子H、CR1、CD46、CD55、C4BP、SPICE、VCP、またはMOPICEの1つまたはそれより多くのC3b結合領域を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドのC3b結合領域は、補体因子HまたはCR1のC3b結合領域を含む。
【0059】
いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドのC3b結合領域は、配列番号11、13、14、16、18、20、21、22または23の1つのアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、例えば少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなる。
【0060】
いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドのC3b結合領域は、配列番号11の1つのアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、例えば少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなる。いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドのC3b結合領域は、アミノ酸配列、配列番号11を含むかまたは該配列からなる。
【0061】
いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドのC3b結合領域は、配列番号13の1つのアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、例えば少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなる。いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドのC3b結合領域は、アミノ酸配列、配列番号13を含むかまたは該配列からなる。
【0062】
いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドのC3b結合領域は、配列番号14の1つのアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、例えば少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなる。いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドのC3b結合領域は、アミノ酸配列、配列番号14を含むかまたは該配列からなる。
【0063】
C3b不活性化領域
本発明のポリペプチドは、C3b不活性化領域を含む。
本明細書において、「C3b不活性化領域」は、C3bの生物学的機能を減少させるかまたは防止することが可能な領域を指す。C3b不活性化領域は、C3bに結合可能であり、そして/またはC3bの構造に物理的変化を引き起こすことも可能である。
【0064】
いくつかの態様において、C3b不活性化領域は、以下の1つまたはそれより多くが可能である:機能性C3bBb型C3転換酵素形成の減少/防止;機能性C4b2a3b型C5転換酵素形成の減少/防止;機能性C3bBb3b型C5転換酵素形成の減少/防止;C3bBb型C3転換酵素活性の減少;C4b2a3b型C5転換酵素活性の減少;C3bBb3b型C5転換酵素活性の減少;C3bBb型C3転換酵素量の減少;C3bBb3b型C5転換酵素量の減少;C4b2a3b型C5転換酵素量の減少;C3b量の減少;iC3b量の増加;C3f量の増加;C3dg量の増加;C3d量の増加;C5b量の減少;C5a量の減少。
【0065】
適切なアッセイにおける、転換酵素量および/または転換酵素活性の分析によって、推定上のC3b不活性化領域が、機能性転換酵素形成を減少させる/防止するか、あるいは転換酵素量を減少させる能力を分析してもよい。例えば、推定上のC3b不活性化領域を含む/からなるペプチド/ポリペプチドの存在下で、または該ペプチド/ポリペプチドとのインキュベーション後、転換酵素量および/または転換酵素活性を分析してもよい。推定上のC3b結合領域の非存在下(または適切な対照ペプチド/ポリペプチドの存在下)での、転換酵素レベルおよび/または転換酵素活性と比較した際の、推定上のC3b不活性化領域の存在下での、または該領域とのインキュベーション後の、転換酵素レベルおよび/または転換酵素活性の低下/減少の観察によって、C3b不活性化領域を同定する。適切な読み取り、例えば転換酵素活性の産物を用いて、転換酵素レベル/転換酵素活性を検出してもよい。
【0066】
例えば、当業者に周知の抗体に基づく方法、例えばウェスタンブロット、ELISA、質量分析またはレポーターに基づく方法によって、所定の転換酵素、C3b、iC3b、C3dg、C3d、C3f、C5bまたはC5aの量を分析してもよい。
【0067】
例えば組換え的に産生されていてもよい適切な因子を用いて、適切な分析をin vitroで行ってもよい。
いくつかの態様において、C3b不活性化領域は、C3bを不可逆的に不活性化することが可能である。いくつかの態様において、C3b不活性化領域は、C3bをタンパク質分解的に切断することが可能である。いくつかの態様において、C3b不活性化領域は、セリンプロテアーゼ活性を示す。いくつかの態様において、C3b不活性化領域は、C3bをタンパク質分解的に切断して、iC3bおよびC3fを形成することが可能である。いくつかの態様において、C3b不活性化領域は、残基1303および/または1320で、C3bのC3 α’鎖を切断することが可能である。
【0068】
切断が起こるために適切な条件下で、そして適切な時間量で、推定上のC3b不活性化領域を含む/からなるペプチド/ポリペプチドと、組換えC3bをインキュベーションして、そして続いてiC3bおよび/またはC3fを検出することによって、推定上のC3b不活性化領域が、C3bを切断して、iC3bおよびC3fを形成する能力を分析してもよい。
【0069】
例えば、本明細書にその全体が援用される、Clarkら J. Immunol (2014) 193, 4962-4970に記載される方法によって、推定上のC3b不活性化領域がC3bを切断する能力を分析してもよい。
【0070】
いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドのC3b不活性化領域は、補体因子IのC3b不活性化領域を含む。
いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドのC3b不活性化領域は、配列番号9の1つのアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、例えば少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなる。いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドのC3b不活性化領域は、アミノ酸配列、配列番号9を含むかまたは該配列からなる。
【0071】
ポリペプチドのさらなる特徴
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、C3b結合領域およびC3b不活性化領域の間にリンカーを含んでもよい。連結されたC3b結合領域およびC3b不活性化領域は、単一ポリペプチドとして好適に発現され、そしてしたがって、その相補的活性は共局在する。
【0072】
リンカーは、好適には、ポリペプチドの効率的な発現および/または拡散を提供するために十分に短い一方、これらがそれぞれの機能を実行可能であるように、すなわちC3b結合領域がC3bに結合可能であり、そしてC3b不活性化領域がC3bを不活性化可能であるように、(リンカーの長さおよび/または組成を通じて)領域間の連結の柔軟性の度合いを保持するように設計される。リンカーは、アミノ酸配列を含むかまたは該配列からなってもよく、そしてC3b結合領域およびC3b不活性化領域のアミノ酸配列の末端に(例えばペプチド結合によって)共有結合されていてもよい。
【0073】
リンカーはペプチドまたはポリペプチドリンカーであってもよい。リンカーは柔軟なリンカーであってもよい。柔軟なリンカーのアミノ酸配列は、当業者に知られ、そして例えば、その全体が本明細書に援用される、Chenら, Adv Drug Deliv Rev (2013) 65(10):1357-1369に記載される。いくつかの態様において、柔軟なリンカーの配列は、セリンおよびグリシン残基を含む。いくつかの態様において、リンカーは、1~100、1~50、1~20、1~10または1~5アミノ酸残基のアミノ酸配列からなるペプチド/ポリペプチドである。
【0074】
いくつかの態様において、リンカーは、モチーフGGGGS(配列番号45);すなわち「GS」の1つまたはそれより多いコピーを含む。いくつかの態様において、リンカーは、配列番号45の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つのコピーを含む。
【0075】
好適には、C3b結合領域およびC3b不活性化領域の連結は、C3bの効率的な捕捉および不活性化を提供する。
本発明のポリペプチドの他の領域の間に、さらなるリンカーを提供してもよい。
【0076】
例えば産生、半減期、最大濃度等を分析するため、in vivoで剤を追跡し、検出し、そしてそのレベルおよび位置を定量化することが可能な療法剤を開発することが好適である。したがって、本発明のポリペプチドの検出を容易にする部分の包含は、例えば内因性タンパク質(例えば内因性補体因子Hおよび/または補体因子Iの内因性補因子)からポリペプチドを区別可能にするために有用である。
【0077】
本明細書において、「内因性」タンパク質/ペプチドは、(本発明記載のポリペプチド
、核酸、ベクター、細胞または薬学的組成物での治療前に)関連する細胞タイプ、組織、または被験体によってコードされ/発現されている、タンパク質/ペプチドを指す。「非内因性」タンパク質/ペプチドは、(本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または薬学的組成物での治療前に)関連する細胞タイプ、組織、または被験体によってコードされていない/発現されていない、タンパク質/ペプチドを指す。
【0078】
したがって、いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、例えばポリペプチドを含有する生物学的試料において、ポリペプチドの検出を容易にするアミノ酸配列(本明細書において、以後、「検出配列」と称される)を含む。いくつかの態様において、検出配列は、例えば、本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または薬学的組成物を、被験体に投与した後、被験体から得た試料において、ポリペプチドの検出を容易にするアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなる。
【0079】
例えば、いくつかの態様において、検出配列は、内因性ヒトC3b結合タンパク質および/または内因性ヒトC3b不活性化タンパク質に存在しないアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなる。いくつかの態様において、検出配列は、内因性ヒトタンパク質に存在しないアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなる。
【0080】
いくつかの態様において、検出配列は、酵素、例えばタンパク質分解酵素で処理した試料において、ポリペプチドの検出を容易にする。いくつかの態様において、検出配列は、プロテアーゼの切断部位を含むかまたは該部位からなる。いくつかの態様において、検出配列は、プロテアーゼでの処理後、非内因性ペプチドの生成を提供する(ここで、「非内因性ペプチド」は、関連する宿主細胞/組織/被験体によって内因性に産生されないペプチドを指す)。この方式で、本発明のポリペプチドは、内因性タンパク質(例えばC3b結合タンパク質および/または内因性C3b不活性化タンパク質)から区別されることも可能であり、そしてしたがって、検出され、そして定量化されることも可能である。
【0081】
いくつかの態様において、検出配列は、トリプシンペプチドの生成を提供し、それによってトリプシンで処理された試料におけるポリペプチドの検出を容易にする。
いくつかの態様において、検出配列は、ポリペプチドのリンカーに含まれる。いくつかの態様において、検出配列は、リンカーに隣接する(すなわち、リンカーのNまたはC末端の1~5、1~10、1~15、1~20または1~30アミノ酸残基以内)。いくつかの態様において、検出配列は、本発明のポリペプチドの1つまたはそれより多い他の領域、例えばC3b結合領域、リンカー、C3b不活性化領域等の1つまたはそれより多いアミノ酸を含んでもよい。
【0082】
例えば、配列番号32、33および34に示す本発明の例示的なポリペプチドは、アルギニン残基を含むリンカーを含み、トリプシンでのポリペプチドの切断に際して、2つの特異的ペプチド:GDAVCTESGWRPLPSCEEGGGGSR(配列番号46)、およびGGGGSGGGGSIVGGK(配列番号47)の生成を提供する。
【0083】
いくつかの態様において、リンカーは、配列番号24のアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなるペプチド/ポリペプチドである。いくつかの態様において、リンカーは、配列番号48のアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなるペプチド/ポリペプチドである。いくつかの態様において、リンカーは、配列番号67のアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなるペプチド/ポリペプチドである。いくつかの態様において、リンカーは、配列番号68のアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなるペプチド/ポリペプチドである。
【0084】
いくつかの態様において、ポリペプチドは、C3b結合領域以外の補体因子Iの補因子
(例えば補体因子H、CR1、CD46、CD55、C4BP、SPICE、VCP、またはMOPICE)の領域に対して、実質的な配列同一性を有するアミノ酸配列を欠いてもよい。すなわち、いくつかの態様において、ポリペプチドは、補体因子Iの補因子のC3b結合領域以外の、補体因子Iの補因子のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を欠く。
【0085】
本明細書において、参照アミノ酸配列に対応するアミノ酸配列は、典型的には、参照配列に対して、少なくとも60%、例えば少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つの配列同一性を含む。
【0086】
ポリペプチドが、C3b結合機能以外の補体因子Iの補因子の特定の特性を欠くことが望ましい可能性もある。例えば、そうでなければ、ブルッフ膜(BrM)を通じた拡散を阻害するか、または天然補因子ファミリータンパク質の作用に干渉するか、またはそうでなければ病原性細菌によって利用されて、宿主免疫系を破壊しうる領域を、ポリペプチドが欠くことが望ましい可能性もある。
【0087】
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、CCP6~8をコードする補体因子Hのアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を欠く。いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号39に対応するアミノ酸配列を欠く。
【0088】
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、CCP19~20をコードする補体因子Hのアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を欠く。いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号40に対応するアミノ酸配列を欠く。
【0089】
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、補体因子HのC3b結合領域以外の、補体因子Hのアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を欠く。いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号25に対応するアミノ酸配列を欠く。
【0090】
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、C3b結合領域以外の、補体因子HアイソフォームFHL-1のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を欠く。いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号41に対応する配列を欠く。
【0091】
いくつかの態様において、ポリペプチドは、タンパク質分解ドメイン以外の、補体因子Iに対して実質的な配列同一性を有するアミノ酸配列を欠いてもよい。すなわち、いくつかの態様において、ポリペプチドは、タンパク質分解ドメイン以外の補体因子Iのアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を欠く。いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号26に対応するアミノ酸配列を欠く。
【0092】
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、300~1000アミノ酸、例えば350~900、400~850、450~800、500~750アミノ酸の1つからなる。
【0093】
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、グリコシル化のための1つまたはそれより多い部位を欠く。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、N連結グリコシル化のための1つまたはそれより多い部位を欠く。いくつかの態様において、ポリペプチドは、N連結グリカンを欠く。いくつかの態様において、ポリペプチドは、非グリコシル化(aglycosyl)されている(すなわち、グリコシル化されていない)。いくつかの態様において、ポリペプチドは、例えばグリコシダーゼ(例えばペプチドNグリコシダーゼ)での処理によって脱グリコシル化されている。脱グリコシル化は、好まし
くは非変性性である。
【0094】
Fenailleら, Glycobiology (2007) 17(9)932-944は、補体因子Hの217位(UniProt:P08603にしたがった番号付け、配列番号10に示す)のアスパラギンが、220位(UniProt:P08603にしたがった番号付け)のプロリン残基の存在のため、グリコシル化されないことを報告する。
【0095】
いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号66のコンセンサス配列に一致する配列を欠く。いくつかの態様において、C3b結合領域およびC3b不活性化領域の1つまたはそれより多くは、配列番号66のコンセンサス配列に一致する配列を欠く。いくつかの態様において、ポリペプチドは、C3b結合領域および/またはC3b不活性化領域を含み、ここで、配列番号66のコンセンサス配列に一致する1つまたはそれより多くの配列が、Nグリコシル化のための部位を除去するように突然変異されている。
【0096】
いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号27のコンセンサス配列に一致する配列を欠く。いくつかの態様において、C3b結合領域およびC3b不活性化領域の1つまたはそれより多くは、配列番号27のコンセンサス配列に一致する配列を欠く。いくつかの態様において、ポリペプチドは、C3b結合領域および/またはC3b不活性化領域を含み、ここで、配列番号27のコンセンサス配列に一致する1つまたはそれより多くの配列が、Nグリコシル化のための部位を除去するように突然変異されている。
【0097】
いくつかの態様において、C3b不活性化領域は、配列番号27のコンセンサス配列に一致する配列を欠く。いくつかの態様において、C3b不活性化領域は、配列番号9の1つのアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、例えば少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなり、ここでC3b不活性化領域は、置換N464Q、N494Q、およびN536Q(UniProt:P05156にしたがった番号付け)を含む。
【0098】
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、分泌経路配列をさらに含んでもよい。本明細書において、分泌経路配列は、ポリペプチドの分泌を指示するアミノ酸配列である。分泌経路配列は、粗面小胞体を渡るポリペプチド鎖の搬出が開始されたら、成熟タンパク質から切断されてもよい。哺乳動物細胞によって分泌されるポリペプチドは、一般的に、ポリペプチドのN末端に融合したシグナルペプチドを有し、これは、翻訳されたポリペプチドから切断されて、ポリペプチドの「成熟」型を産生する。
【0099】
いくつかの態様において、分泌経路配列は、グリコシル化のための1つまたはそれより多い部位を含む。いくつかの態様において、分泌経路配列はグリコシル化されている。いくつかの態様において、分泌経路配列は、N連結グリコシル化のための1つまたはそれより多い部位を含む。いくつかの態様において、分泌経路配列は、配列番号27のコンセンサス配列に一致する1つまたはそれより多い配列を含む。
【0100】
いくつかの態様において、分泌経路配列は、リーダー配列(シグナルペプチドまたはシグナル配列としてもまた知られる)を含んでもよいしまたは該配列からなってもよい。リーダー配列は、通常、単一のアルファ螺旋を形成する、5~30の疎水性アミノ酸の配列からなる。分泌されるタンパク質および細胞表面で発現されるタンパク質は、しばしば、リーダー配列を含む。リーダー配列は、新規に翻訳されたポリペプチド(例えばリーダー配列を除去するプロセシングの前)に存在しうる。リーダー配列は、多くのタンパク質に関して知られ、そしてGenBank、UniProt、Swiss-Prot、TrEMBL、Protein Information Resource、Protein
Data Bank、Enembl、およびInterProなどのデータベースに記録され、そして/または例えばSignalP(Petersenら, 2011 Nature Methods 8: 785-786)またはSignal-BLAST(FrankおよびSippl, 2008 Bioinformatics 24: 2172-2176)などのアミノ酸配列分析ツールを用いて、同定/予測可能である。
【0101】
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドから分泌経路配列を除去するための切断部位をさらに含んでもよい。いくつかの態様において、ポリペプチドから分泌経路配列を除去するための切断部位は、エンドプロテアーゼの切断部位である。いくつかの態様において、切断部位は、ポリペプチドが発現される細胞によって発現されるエンドプロテアーゼのものである。いくつかの態様において、切断部位は、シグナルペプチダーゼ切断部位である。いくつかの態様において、切断部位は、プロテアーゼ切断部位、例えばポリペプチドを発現する細胞によって発現されるエンドプロテアーゼの切断部位である。いくつかの態様において、切断部位は、RPE細胞によって発現されるエンドプロテアーゼの切断部位である。いくつかの態様において、切断部位は、フーリン・エンドプロテアーゼ切断部位である。いくつかの態様において、ポリペプチドから分泌経路配列を除去するための切断部位は、配列番号28または29のコンセンサス配列に一致する配列を含むかまたは該配列からなる。
【0102】
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、さらなる機能性アミノ酸配列を含んでもよい。例えば、ポリペプチドは、ポリペプチドの発現、フォールディング、輸送、プロセシング、精製または検出を容易にするアミノ酸配列(単数または複数)を含んでもよい。例えば、ポリペプチドは、タンパク質タグ、例えばHis(例えば6XHis;配列番号30)、FLAG、Myc、GST、MBP、HA、E、またはビオチンタグをコードする配列を、随意に:ポリペプチドのNまたはC末端に;リンカー中に;あるいはリンカーのNまたはC末端に、含んでもよい。
【0103】
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、タンパク質タグを除去するための切断部位をさらに含んでもよい。例えば、精製後、ポリペプチドの精製のために用いたタグを除去することが望ましい可能性もある。いくつかの態様において、切断部位は、例えばタバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位、例えば配列番号31に示すようなものであってもよい。
【0104】
本明細書において、「ポリペプチド」には、複合体に(例えば共有的にまたは非共有的に)会合していてもよい、1つより多いポリペプチド鎖を含む分子が含まれる。すなわち、本発明の意味内の「ポリペプチド」は、1つまたはそれより多いポリペプチド鎖を含む分子を含む。例えば、いくつかの態様において、ポリペプチドは、多数のポリペプチド鎖の複合体であってもよい。
【0105】
本発明のポリペプチドは、異なる領域の特定の組み合わせおよび相対配置で提供されてもよい。
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、以下の1つにしたがった相対配置で提供されてもよい:
N末端-[C3b結合領域]-[リンカー領域]-[C3b不活性化領域]-C末端
N末端-[分泌経路配列]-[エンドプロテアーゼ切断部位]-[C3b結合領域]-[リンカー領域]-[C3b不活性化領域]-C末端。
【0106】
本発明のポリペプチドは、多様な異なる態様において、そしてin vitroまたはin vivoの発現/産生の異なる段階で、例えばシグナルペプチド、タンパク質タグ
、その除去のための切断部位等を含んでもよい。
【0107】
本発明のポリペプチドは、本明細書記載の任意のC3b結合領域、および本明細書記載の任意のC3b不活性化領域を、随意に、本明細書記載の本発明のポリペプチドの任意のさらなる特徴(例えばシグナルペプチド、リンカー、検出配列、タンパク質タグ、タンパク質タグを除去するための切断部位、分泌経路配列、分泌経路配列を除去するための切断部位)の1つまたはそれより多くと組み合わせて含んでもよい。
【0108】
本発明のポリペプチドの特定の例示的態様の領域を、以下の表に要約する。
【0109】
【表1-1】
【0110】
【表1-2】
【0111】
【表1-3】
【0112】
いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドは、配列番号32、33、34、35、36、37、49または69のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなる。
【0113】
いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドは、配列番号50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、70、71、72または73のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなる。
【0114】
ポリペプチドの機能特性
本発明のポリペプチドは、1つまたはそれより多い機能特性を参照することによって特徴づけられてもよい。
【0115】
特に、本発明記載のポリペプチドは、以下の特性の1つまたはそれより多くを所持してもよい(前記特性に関する適切なアッセイにおける分析によって決定されるように):
C3bへの結合;
補体因子Iの補因子(またはその断片)によって示される、C3bへの結合のアフィニティに類似である結合アフィニティでのC3bへの結合;
補体因子Iの補因子(またはその断片)によって結合されるC3b領域でのC3bへの結合;
C3bの不活性化;
機能性C3bBb型C3転換酵素の形成の減少/防止;
機能性C3Bb3b型C5転換酵素の形成の減少/防止;
機能性C4b2a3b型C5転換酵素の形成の減少/防止;
C3bBb型C3転換酵素活性の減少;
C3bBb3b型C5転換酵素活性の減少;
C4b2a3b型C5転換酵素活性の減少;
C3bBb型C3転換酵素量の減少;
C3bBb3b型C5転換酵素量の減少;
C4b2a3b型C5転換酵素量の減少;
C3b量の減少;
iC3b量の増加;
C3dg量の増加;
C3d量の増加;
C3f量の増加;
C5b量の減少;
C5a量の減少。
【0116】
所定のポリペプチドが、先の段落に言及した機能特性を所持するかどうかを、例えば本明細書で上に記載するように分析してもよい。
いくつかの態様において、本発明記載のポリペプチドは、こうした特性に関する適切なアッセイにおける分析によって決定されるように、ブルッフ膜(BrM)を通じて拡散する能力を所持する。
【0117】
ブルッフ膜(BrM)は、網膜および脈絡膜の間に位置する、薄い(2~4μm)無細胞の5層細胞外マトリックスであり、前方の鋸状縁に伸長している。ブルッフ膜は、代謝活性網膜色素上皮(RPE)および毛細血管床(脈絡毛細管枝)の間に位置し、そしてRPE基底層および血管壁としての2つの主要な機能を果たす。BrMの構造および機能は、例えば、その全体が本明細書に援用される、CurcioおよびJohnson, Structure, Function and Pathology of Bruch’s Membrane, : Ryanら (2013), Retina, Vol. 1, Part 2: Basic Science and Translation to Therapy. 第5版 London: Elsevier中, pp466-481に概説される。
【0118】
所定のポリペプチドがBrMを通じて拡散する能力を、例えば、Clarkら J. Immunol (2014) 193, 4962-4970に記載されるように、例えばin vitroで分析してもよい。簡潔には、McHargら, J Vis Exp (2015) 1-7に記載されるように、BrMをドナーの目から単離してもよく、そしてウッシングチャンバーに黄斑部をマウントしてもよい。マウントしたら、5mm直径の黄斑部は、2つの同一区画間の唯一のバリアである。BrMの両側をPBSで洗浄してもよく、そしてヒト血清をPBSと1:1で希釈して、そしてBrMの片側のウッシング区画(試料チャンバー)に添加してもよい。分析しようとするポリペプチドを、PBS中で試料チャンバーに添加してもよく、そしてBrMのもう一方の側の区画(拡散物質チャンバー)にPBSのみを添加してもよく、そしてウッシングチャンバーを、試料チャンバーおよび拡散物質チャンバーの両方で穏やかに攪拌しながら、室温で24時間インキュベーションしてもよい。続いて、各チャンバー由来の試料を、ポリペプチドの存在に関して、例えばELISA分析またはウェスタンブロットなどの抗体に基づく検出法を用いて、分析してもよい。拡散物質チャンバー中のポリペプチドの検出は、ポリペプチドが、BrMを通じて拡散可能であることを示す。こうした実験において、BrMを通じて拡散可能/拡散不能であることが知られる、適切な陽性および陰性対照タンパク質を含めてもよい。
【0119】
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、補体因子Iよりも、BrMを通じて拡散する優れた能力を示す。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、補体因子Hよりも、BrMを通じて拡散する優れた能力を示す。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、一部切除補体因子HアイソフォームFHL-1(UniProt:P08603-2;配列番号38)に比較した際、BrMを通じて拡散する、類似の能力を示す。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、補体因子HアイソフォームFHL-1に比較した際、BrMを通じて拡散する優れた能力を示す。
【0120】
上述のように、BrMを通じた拡散を分析し、そして拡散物質チャンバーへの拡散速度の改善を検出し、そして/または実験終了時の拡散物質チャンバー中のポリペプチドの比率の増加を検出することによって、所定の参照ポリペプチドに比較した際、BrMを通じて拡散する優れた能力を示すポリペプチドを同定してもよい。上述のように、BrMを通じた拡散を分析し、そして参照ポリペプチドに関する拡散速度の30%以内、例えば25%、20%、15%、または10%の1つ以内の拡散物質チャンバーへの拡散速度を検出し、そして/または実験終了時の拡散物質チャンバー中の参照ポリペプチドの比率の30%以内、例えば25%、20%、15%、または10%の1つ以内の拡散チャンバー中のポリペプチドの比率を検出することによって、所定の参照ポリペプチドに比較した際、BrMを通じて拡散する、類似の能力を示すポリペプチドを同定してもよい。
【0121】
核酸、細胞、組成物およびキット
本発明は、本発明記載のポリペプチドをコードする核酸を提供する。いくつかの態様において、核酸は、例えば他の核酸、または天然存在生物学的物質から精製されるかまたは単離される。
【0122】
本発明はまた、本発明記載のポリペプチドをコードする核酸を含むベクターも提供する。
「ベクター」は、本明細書において、細胞内に外因性核酸をトランスファーするためのビヒクルとして用いられる核酸(DNAまたはRNA)である。ベクターは、細胞における核酸の発現のための発現ベクターであってもよい。こうしたベクターには、発現しようとする配列をコードする核酸に機能可能であるように連結されたプロモーター配列が含まれてもよい。ベクターにはまた、終結コドンおよび発現エンハンサーも含まれてもよい。当該技術分野に知られる、任意の適切なベクター、プロモーター、エンハンサーおよび終結コドンを用いて、本発明記載のベクターから、本発明記載のポリペプチドを発現してもよい。
【0123】
本明細書において、用語「機能可能であるように連結された」には、選択した核酸配列および制御核酸配列(例えばプロモーターおよび/またはエンハンサー)が、ヌクレオチドの発現を制御配列の影響または調節下に置く(それによって発現カセットを形成する)ように、共有連結されている状況が含まれてもよい。したがって、制御配列は、制御配列が、核酸配列の転写を達成可能である場合、選択した核酸配列に機能可能であるように連結されている。適切な場合、次いで、生じた転写物を所望のポリペプチドに翻訳してもよい。
【0124】
本発明記載の核酸および/またはベクターは、好ましくは、細胞、例えば初代ヒト免疫細胞内への導入のために提供される。適切なベクターには、例えば、どちらもその全体が
本明細書に援用される、Mausら, Annu Rev Immunol (2014) 32:189-225またはMorganおよびBoyerinas, Biomedicines 2016 4, 9に記載されるように、プラスミド、バイナリーベクター、DNAベクター、mRNAベクター、ウイルスベクター(例えばガンマレトロウイルスベクター(例えばネズミ白血病ウイルス(MLV)由来ベクター)、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターおよびヘルペスウイルスベクター)、トランスポゾンに基づくベクター、および人工染色体(例えば酵母人工染色体)が含まれる。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、または単純ヘルペスウイルスベクターであってもよい。いくつかの態様において、レンチウイルスベクターは、pELNSであってもよいし、またはpELNSに由来してもよい。いくつかの態様において、ベクターは、CRISPR/Cas9をコードするベクターであってもよい。
【0125】
いくつかの態様において、本発明記載の核酸は、配列番号32、33、34、35、36、37、または49のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含むかまたは該配列からなる。
【0126】
いくつかの態様において、本発明記載の核酸は、配列番号42、43または44、あるいはコドン縮重の結果として、配列番号42、43または44の1つと同じアミノ酸配列をコードする核酸配列に対して、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する核酸配列を含むかまたは該配列からなる。
【0127】
いくつかの態様において、本発明記載の核酸は、配列番号50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、70、71、72または73のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含むかまたは該配列からなる。
【0128】
いくつかの態様において、本発明記載の核酸は、配列番号62、63、64または65、あるいはコドン縮重の結果として、配列番号62、63、64または65の1つと同じアミノ酸配列をコードする核酸配列に対して、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する核酸配列を含むかまたは該配列からなる。
【0129】
本発明はまた、本発明記載のポリペプチドを含むかまたは発現する細胞も提供する。やはり提供するのは、本発明記載の核酸またはベクターを含むかまたは発現する細胞である。本発明記載のポリペプチド、核酸またはベクターを含むかまたは発現する細胞は、本発明記載のポリペプチドを分泌してもよい。すなわち、ポリペプチド、核酸またはベクターの発現は、細胞からの本発明記載のポリペプチドの可溶性産生を生じてもよい。
【0130】
細胞は、真核細胞、例えば哺乳動物細胞であってもよい。哺乳動物は、ヒト、または非ヒト哺乳動物(例えばウサギ、モルモット、ラット、マウスまたは他の齧歯類(齧歯目の任意の動物を含む)、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ウシ(雌牛、例えば乳牛、またはウシ目
の任意の動物を含む)、ウマ(ウマ目の任意の動物を含む)、ロバ、および非ヒト霊長類)であってもよい。いくつかの態様において、細胞は、ヒト被験体由来であってもよいし、またはヒト被験体から得られていてもよい。
【0131】
いくつかの態様において、細胞は目の細胞である。いくつかの態様において、細胞は、網膜、脈絡膜、網膜色素上皮または黄斑の細胞である。いくつかの態様において、細胞は網膜細胞である。いくつかの態様において、細胞は網膜色素上皮細胞(RPE)である。
【0132】
本発明はまた、本発明記載の核酸またはベクターを含む細胞を産生するための方法であって、本発明記載の核酸またはベクターを細胞内に導入する工程を含む、前記方法も提供する。本発明はまた、本発明記載のポリペプチドを含むかまたは発現する細胞を産生するための方法であって、本発明記載の核酸またはベクターを細胞内に導入する工程を含む、前記方法も提供する。いくつかの態様において、方法は、細胞による核酸またはベクターの発現に適した条件下で、細胞を培養する工程をさらに含む。いくつかの態様において、方法は、in vitroまたはex vivoで実行される。いくつかの態様において、方法はin vivoで実行される。
【0133】
本発明はまた、本発明記載の細胞を産生するための方法によって得られたかまたは得られうる細胞も提供する。
本発明はまた、本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクターまたは細胞を含む組成物も提供する。
【0134】
本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクターおよび細胞を、臨床使用のための薬学的組成物として配合してもよく、そしてこれらは、薬学的に許容されうるキャリアー、希釈剤、賦形剤またはアジュバントを含んでもよい。
【0135】
本発明にしたがって、薬学的に有用な組成物を産生するための方法もまた提供し、こうした産生法は:本明細書に記載するようなポリペプチド、細胞、核酸またはベクターを単離し;そして/または本明細書に記載するようなポリペプチド、細胞、核酸またはベクターを、薬学的に許容されうるキャリアー、アジュバント、賦形剤または希釈剤と混合する工程より選択される、1つまたはそれより多い工程を含んでもよい。
【0136】
部品キットもまた提供する。いくつかの態様において、キットは、あらかじめ決定した量の、本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または組成物を有する少なくとも1つの容器を有してもよい。
【0137】
キットは、明記する疾患/状態を治療するため、被験体に投与するための使用説明書とともに、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または組成物を提供してもよい。注射または注入に適切であるように、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または組成物を配合してもよい。いくつかの態様において、静脈内、眼内、網膜下または結膜内注射、点眼剤としての投与(すなわち眼適用)または経口投与に適しているように、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または組成物を配合してもよい。
【0138】
いくつかの態様において、キットは、本発明記載の細胞を産生するための材料を含んでもよい。例えば、キットは、本発明記載のポリペプチド、核酸またはベクターを発現するかまたは含むように、細胞を修飾するための材料、あるいは本発明記載の核酸またはベクターを細胞内に導入するための材料を含んでもよい。
【0139】
いくつかの態様において、キットは、あらかじめ決定した量の別の療法剤(例えばAMDの治療のための療法剤)を有する少なくとも1つの容器をさらに含んでもよい。こうし
た態様において、キットはまた、2つの医薬品または薬学的組成物が特定の疾患または状態のための組み合わせた治療を提供するように、これらを同時にまたは別個に投与してもよいように、第二の医薬品または薬学的組成物も含んでもよい。
【0140】
タンパク質発現
本発明記載のポリペプチドを細胞において産生するために適した分子生物学技術は当該技術分野に周知であり、例えば、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York: Cold
Spring Harbor Press, 1989に示されるものがある。ポリペプチドは、核酸配列から発現されてもよい。核酸配列は、細胞に存在するベクターに含有されてもよいし、または細胞ゲノム内に取り込まれてもよい。
【0141】
本発明記載のタンパク質を産生するために、ポリペプチドの発現に適した任意の細胞を用いてもよい。細胞は原核細胞または真核細胞であってもよい。適切な原核細胞には大腸菌(E. coli)が含まれる。真核細胞の例には、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)が含まれる。原核細胞は真核細胞と同じ翻訳後修飾を可能にしないものがあるため、いくつかの場合、細胞は原核細胞ではない。さらに、真核細胞においては非常に高い発現レベルが可能であり、そして適切なタグを用いると、真核細胞からタンパク質を精製するのはより容易でありうる。タンパク質の細胞培地内への分泌を増進する、特定のプラスミドもまた利用してもよい。
【0142】
関心対象のポリペプチドを産生する方法は、ポリペプチドを発現するように修飾された細胞の培養または発酵を伴ってもよい。栄養素、空気/酸素および/または増殖因子の適切な供給を提供して、培養または発酵をバイオリアクター中で行ってもよい。培地/発酵ブロスを細胞から分配し、タンパク質内容物を抽出し、そして分泌されたポリペプチドを単離するため、個々のタンパク質を分離することによって、分泌されたタンパク質を収集してもよい。培養、発酵および分離技術は、当業者に周知である。
【0143】
バイオリアクターには、1つまたはそれより多い容器が含まれ、その中で細胞を培養してもよい。バイオリアクター中の培養は、リアクター内への反応物の連続流入およびリアクターからの培養細胞の連続流出を伴って、連続的に行われてもよい。あるいは、培養はバッチで行われてもよい。バイオリアクターは、培養中の細胞にとって最適な条件が提供されるように、pH、酸素、流入および流出速度、ならびに容器内の攪拌などの環境条件を監視し、そして制御する。
【0144】
ポリペプチドを発現する細胞の培養後、好ましくはポリペプチドを単離する。細胞培養からポリペプチドを分離するために適した任意の方法を用いてもよい。関心対象のポリペプチドを培養から単離するため、関心対象のポリペプチドを含有する培地から、培養した細胞をまず分離することが必要でありうる。関心対象のポリペプチドが細胞から分泌される場合、分泌されたポリペプチドを含有する培地から、遠心分離によって、細胞を分離してもよい。関心対象のポリペプチドが細胞内で集積する場合、遠心分離前に、例えば超音波、迅速凍結融解または浸透圧溶解を用いて、細胞を破壊することが必要であろう。遠心分離は、培養した細胞を含有するペレット、または培養した細胞の細胞破片、ならびに培地および関心対象のポリペプチドを含有する上清を生じるであろう。
【0145】
次いで、他のタンパク質および非タンパク質構成要素を含有しうる上清または培地から、関心対象のポリペプチドを単離することが望ましい可能性もある。上清または培地からポリペプチド構成要素を分離する一般的なアプローチは、沈殿によるものである。異なる溶解度のポリペプチド/タンパク質は、硫酸アンモニウムなどの沈殿剤の異なる濃度で沈殿する。例えば、沈殿剤が低濃度であると、水溶性タンパク質が抽出される。したがって、増加する濃度の沈殿剤を添加することによって、異なる溶解度のタンパク質を区別することも可能である。続いて、透析を用いて、分離されたタンパク質から硫酸アンモニウムを除去してもよい。
【0146】
ポリペプチドを単離/精製するための他の方法、例えばイオン交換クロマトグラフィおよびサイズクロマトグラフィが当該技術分野に知られる。また、ポリペプチド上の分子タグ(例えばHis、FLAG、Myc、GST、MBP、HA、E、またはビオチンタグ)に対する適切な結合パートナーを用いて、ポリペプチドをアフィニティ精製してもよい。これらの技術を沈殿の代替法として用いてもよいし、または沈殿に続いて行ってもよい。
【0147】
いくつかの場合、例えばアミノ酸配列、分子タグ、部分等を除去するため、ポリペプチドをプロセシングすることがさらに望ましい可能性もある。
いくつかの態様において、処理は、アミノ酸配列の切断および除去のための適切なエンドペプチダーゼでの処理である。
【0148】
いくつかの態様において、処理は、関心対象の部分を除去する酵素での処理である。いくつかの態様において、ペプチド:N-グリコシダーゼ(PNGアーゼ)での処理のように、例えばグリコシダーゼでの処理によって、ポリペプチドを処理してグリカンを除去する(すなわちポリペプチドを脱グリコシル化する)。
【0149】
関心対象のポリペプチドが培地から単離されたら、タンパク質を濃縮することが望ましい可能性もある。限外濾過または凍結乾燥によるなど、関心対象のタンパク質を濃縮するためのいくつかの方法が当該技術分野に知られる。
【0150】
いくつかの態様において、ポリペプチドの産生は、例えば本発明のポリペプチドをコードする核酸またはベクターを含む細胞を宿主に導入した後、あるいは本発明のポリペプチドをコードする核酸またはベクターを宿主の細胞内に導入した後、in vivoで起こる。こうした態様において、ポリペプチドは転写され、翻訳され、そして成熟ポリペプチドへと翻訳後プロセシングされる。いくつかの態様において、ポリペプチドは、宿主において所望の位置で、in situで産生される。
【0151】
補体系および加齢黄斑変性症(AMD)
AMDにおける補体の役割は、例えば、本明細書にその全体が援用される、Zipfelら 第2章, LambrisおよびAdamis(監修), Inflammation and Retinal Disease: Complement Biology and Pathology, Advances in Experimental Medicine and Biology 703, Springer Science+Business Media, LLC(2010)中に記載される。加齢黄斑変性症(AMD)は、目の裏側の網膜の中心部分である黄斑の進行性破壊として現れ、中心視力の喪失を導く。該疾患は、よく見られる疾患であり、推測値では、2020年までに、何らかの型のAMDを患う人々は、全世界で1億9600万になると予測されており;AMDは現在、世界中で、すべての失明登録の8.7%に関与している(Wongら Lancet Glob Heal (2014) 2:e106-16)。疾患初期段階では、黄斑の形態学的変化が見られ、これにはまず、脈絡毛細管枝における血管の喪失が含まれ(Whitmoreら, Prog Retin Eye Res (2015) 45:1-29)、これらの血管は、ブルッフ膜(BrM)直下にある有窓血管である。これはまた、AMDに先立つ補体活性化および代謝回転増加の主な領域の1つでもある。
【0152】
初期AMD型のドルーゼンと呼ばれる特徴的な病変は、BrM内にある。ドルーゼンは、脂質および細胞破片の集積から形成され、そしてこれには、一連の補体活性化産物が含まれる(Andersonら, Prog Retin Eye Res (2009)
29:95-112; Whitcupら, Int J Inflam (2013) 1-10)。BrM内にドルーゼンが存在すると、細胞外マトリックスを渡る脈絡膜からRPE細胞への栄養素の流動が妨げられ、細胞機能不全および最終的には死を導く。RPE細胞の単層が、神経感覚網膜の桿体細胞および錐体細胞を支持するため、これらの細胞が死ぬと、光受容細胞の機能不全が引き起こされ、そして続いて視力が失われる。これは、症例のほぼ90%に相当する地図状委縮、または「乾性」AMDと称される、AMDの後期段階の1つに相当する。症例の残りの割合においては、ドルーゼンの存在が脈絡膜血管新生(CNV)を促進し、この場合、RPE細胞からの血管内皮増殖因子(VEGF)の合成増加が、脈絡膜/脈絡毛細管枝からの過剰な血管増殖を促進し、これがBrMを突破し、そして神経感覚網膜内に漏出する。これは「湿性」AMDと称され、そして症例の10%にしか相当しないが、後期段階AMDの最も悪性の型である。抗VEGF抗体断片の目の硝子体内への注射が、これらの血管の増殖を遅延させるかまたは逆転させることが可能な、湿性AMDの治療があるが、これは、そもそもその形成を防止することはできない。乾性AMDは治療不能なままである。
【0153】
AMDを発展させる遺伝的リスクに関連する主要なSNPの1つは、補体、因子H(FH;例えば、Hainesら, Science (2005) 308:419-21を参照されたい)およびその選択的スプライシング変異体、因子H様タンパク質1(FHL-1)の主な液相制御因子におけるY402H多型を導くCFH遺伝子におけるものである。白人欧州遺伝形質の個体のほぼ30%は、この多型を少なくとも1コピー有し、ヘテロ接合体であると、AMDのリスクは~3倍増加する(Sofatら, Int J Epidemiol (2012) 41:250-262)。第七の補体制御タンパク質(CCP)ドメインに現れるY402H多型は、BrMへのFH/FHL-1の結合を減少させ、そしてBrMが無細胞性であることを考慮すると、これらの血液伝播性補体制御因子の結合のいかなる妨害も、この表面上での補体制御の減衰を生じるであろう(Clarkら, J Biol Chem (2010) 285:30192-202)。BrMへのFH/FHL-1の結合は、グルコサミノグリカン(GAG)、ヘパラン硫酸(HS)およびデルマタン硫酸(DS)を含む、硫酸化糖によって仲介される。BrMに見られるGAG配列のファミリーは、そのCCP7ドメインを通じて、そしてCCP19~20に見られるFHの二次係留部位は通じずに、FH/FHL-1を補充可能であるため、以前考えられていたよりも、高い組織特異性を有するようである(Clarkら, J Immunol (2013) 190:2049-2057)。BrM内の補体の主な制御因子は、一部切除FHL-1タンパク質であり(Clarkら J. Immunol (2014) 193, 4962-4970)、これはCCP7に1つの表面係留部位を持つのみであり、そしてCCP19~20を欠き:Y402H多型は、FHのCCP19~20ドメインが主なGAG仲介性係留部位であることが知られる腎臓疾患とは関連しない(Clarkら, J Immunol (2013) 190:2049-2057)ことが発見されてきているため、これは進化のねじれである可能性がある。それ自体、正常な加齢プロセスの一部と見なされる、HSおよびDSのBrM発現レベルにおける加齢性の変化もまた、AMDと関連付けられてきており、そして遺伝的に駆動されるAMDの加齢性の性質をある程度説明することも可能である。
【0154】
根底にある血管系もまた、AMDに重要であることを示唆する、説得力があるデータがある。BrMに結合しないFHのC末端CCP19~20領域の稀な突然変異(R1210C)は、AMDと非常に高レベルの関連を有し、そしてこの突然変異を所持するFHタンパク質は、アルブミンに共有結合することが見出されている(Sanchez-Corralら, Am J Hum Genet (2002) 71:1285-1295)。また、いくつかの研究によって、地図状委縮およびRPE細胞における関連する色素変化に先立つ、大きな融合性のドルーゼンは、RPE細胞の機能不全から、乾性AMDがまず生じ、脈絡膜内の二次的影響が伴うことが示唆される(BhuttoおよびLutty Mol Aspects Med (2012) 33:295-317)。対照的に、Whitmoreらは、終末補体膜攻撃複合体(MAC)の沈着を含む、後期段階AMDのすべての型に先行する脈絡毛細管枝の変化を報告し、そしてこれが一次事象であり、RPE委縮が二次事象であると論じる(Whitmoreら, Prog Retin Eye Res (2015) 45:1-29)。これらの変化が、酸化ストレスによって駆動される加齢性のものであるか、またはRPE細胞機能不全の結果であるかどうかは、現時点では不明であるが、これらの構造における天然存在変化は、年齢によって影響を受けることが知られている。
【0155】
療法的適用
本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクター、細胞および薬学的組成物は、療法的および予防的方法に使用を見出す。
【0156】
本発明は、医学的治療または予防の方法において使用するための、本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または薬学的組成物を提供する。本発明はまた、疾患または状態を治療するかまたは防止するための医薬品の製造における、本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または薬学的組成物の使用も提供する。本発明はまた、疾患または状態を治療するかまたは防止する方法であって、本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または薬学的組成物の療法的または予防的有効量を、被験体に投与する工程を含む、前記方法も提供する。
【0157】
特に、本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクター、細胞および薬学的組成物は、補体制御不全、特に過活動性補体反応に関連する疾患/状態の治療または防止に使用を見出す。
【0158】
ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞および薬学的組成物は:C3bBb型C3転換酵素、C3bBb3b型C5転換酵素またはC4b2a3b型C5転換酵素のレベルまたは活性の減少;C3b、C5bまたはC5aのレベルの減少;あるいはiC3b、C3f、C3dgまたはC3dのレベルの増加の1つまたはそれより多くから利益を得るであろう疾患/状態の治療または防止に使用を見出す。
【0159】
「治療」は、例えば、疾患/状態の発展または進行の減少、疾患/状態の症状の軽減、あるいは疾患/状態の病理の減少であってもよい。疾患/状態の治療または軽減は、疾患/状態の進行の防止、例えば状態の悪化の防止または発展速度の遅延に有効であってもよい。いくつかの態様において、治療または軽減は、疾患/状態の改善、例えば疾患/状態の症状の減少または疾患/状態の重症度/活性の何らかの他の相関物の減少を導いてもよい。疾患/状態の防止/予防は、状態の悪化の防止または疾患/状態の発展の防止、例えば初期段階の疾患/状態がより後期の慢性段階に発展することの防止を指してもよい。
【0160】
いくつかの態様において、治療または防止しようとする疾患または状態は、C3bまたはC3b含有複合体に関連する疾患/状態、C3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応、あるいはC3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応の産物であってもよい。すなわち、いくつかの態様において、治療または防止しようとする疾患または状態は、C3b、C3b含有複合体、C3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応、あるいは前記活性/反応の産物が病理学的に関連する疾患/状態である。いくつかの態様において、疾患/状態は、対照状態と比較した際の、C3bまたはC3b含有複合体のレベル増加、C3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応のレベル増加、あるいはC3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応の産物のレベル増加と関連してもよい。
【0161】
いくつかの態様において、障害は、FH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/またはCD46と、FH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/またはCD46と関連する活性/反応と、あるいはFH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/またはCD46と関連する活性/反応の産物と、関連する障害であってもよい。いくつかの態様において、障害は、FH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/またはCD46が、FH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/またはCD46と関連する活性/反応が、あるいは前記活性/反応の産物が、病理学的に関連している障害である。いくつかの態様において、障害は、対照状態と比較した際の、FH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/またはCD46のレベル減少と、FH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/またはCD46と関連する活性/または反応のレベル減少と、あるいはFH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/またはCD46と関連する活性/反応の産物のレベル減少と、関連してもよい。
【0162】
いくつかの態様において、障害は、対照状態に比較した際の、C3、C3b、C3転換酵素および/またはC3bBbのレベル増加と関連する。いくつかの態様において、障害は、対照状態と比較した際の、iC3bのレベル減少と関連する。
【0163】
治療は、C3bまたはC3b含有複合体のレベル、C3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応、あるいはC3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応の産物のレベルの減少を目的としてもよい。いくつかの態様において、治療は:C3bBb型C3転換酵素、C3bBb3b型C5転換酵素またはC4b2a3b型C5転換酵素のレベルまたは活性の減少;C3b、C5bまたはC5aのレベルの減少;あるいはiC3b、C3f、C3dgまたはC3dのレベルの増加を目的とする。
【0164】
本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、細胞および組成物の投与は、C3bの切断を通じて、C3bまたはC3b含有複合体、C3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応、あるいはC3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応の産物のレベルの減少を引き起こしてもよい。
【0165】
いくつかの態様において、治療は、被験体における、例えば特定の位置での、特定の臓器、組織、構造または細胞タイプでの、C3bまたはC3b含有複合体、C3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応、あるいはC3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応の産物のレベルの減少を目的としてもよい。いくつかの態様において、治療は、目における、例えば網膜、脈絡膜、網膜色素上皮、黄斑における、そして/またはBrM/RPE細胞界面での、C3bまたはC3b含有複合体、C3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応、あるいはC3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応の産物のレベルの減少を目的としてもよい。
【0166】
いくつかの態様において、治療は、本発明のポリペプチド、核酸またはベクターを含む/発現するように、細胞または細胞集団を修飾する工程を含んでもよい。いくつかの態様において、治療は、本発明のポリペプチドのin situ産生のため、in vivoでの細胞/集団の修飾を含んでもよい。
【0167】
いくつかの態様において、治療は、本発明のポリペプチド、核酸またはベクターを含む/発現するように修飾された細胞または細胞集団を、被験体に投与する工程を含んでもよい。いくつかの態様において、治療は、ex vivoまたはin vitroでの細胞
/集団の修飾を含んでもよい。
【0168】
いくつかの態様において、治療は、例えば本発明記載の細胞を投与するか、または本発明記載の細胞を生成することによる、本発明のポリペプチドを産生する細胞または細胞集団を被験体に提供することを目的とする。
【0169】
いくつかの態様において、細胞は目の細胞である。いくつかの態様において、細胞は、網膜、脈絡膜、網膜色素上皮または黄斑の細胞である。いくつかの態様において、細胞は網膜細胞である。いくつかの態様において、細胞は網膜色素上皮細胞(RPE)である。
【0170】
本発明は、被験体において疾患または状態を治療するかまたは防止する方法であって、少なくとも1つの細胞が、本発明記載のポリペプチド、核酸またはベクターを発現するかまたは含むように修飾する工程を含む、前記方法を提供する。
【0171】
本発明にしたがって修飾される少なくとも1つの細胞は、当業者に周知の方法にしたがって修飾されてもよい。修飾は、トランスファーされた核酸の永続的または一過性の発現のための核酸トランスファーを含んでもよい。任意の適切な遺伝子操作プラットホームを用いて、本発明にしたがって細胞を修飾してもよい。細胞を修飾するために適した方法には、遺伝子操作プラットホーム、例えばガンマレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、DNAトランスフェクション、トランスポゾンに基づく遺伝子送達およびRNAトランスフェクションの使用が含まれ、例えば、本明細書の上記に援用される、Mausら, Annu Rev Immunol (2014) 32:189-225に記載される通りである。
【0172】
治療すべき被験体は、任意の動物またはヒトであってもよい。被験体は、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。被験体は非ヒト哺乳動物であってもよいが、より好ましくはヒトである。被験体は男性または女性であってもよい。被験体は患者であってもよい。被験体は、治療が必要な疾患または状態を持つと診断されたか、あるいはこうした疾患または状態を有すると推測されていてもよい。
【0173】
治療すべき被験体は、例えば、適切なアッセイを用いた、被験体、または被験体から得た試料(例えば細胞、組織、血液試料)の分析によって決定した際に、C3bまたはC3b含有複合体、C3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応、あるいはC3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応の産物のレベル上昇を示してもよい。
【0174】
被験体は、C3bまたはC3b含有複合体、あるいはC3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応の陽性制御因子/エフェクターの発現または活性のレベルの増加を有してもよいし、あるいはC3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応の産物の発現または活性のレベルの増加を有してもよい。被験体は、C3bまたはC3b含有複合体によって上方制御される活性のレベルの増加を有してもよい。
【0175】
被験体は、C3bまたはC3b含有複合体、あるいはC3bまたはC3b含有複合体と関連する活性/反応の陰性制御因子の発現または活性のレベルの減少を有してもよいし、あるいはC3bまたはC3b含有複合体によって下方制御される因子の発現または活性のレベルの減少を有してもよい。被験体は、C3bまたはC3b含有複合体によって下方制御される活性のレベルの減少を有してもよい。
【0176】
増加/減少は、関連する疾患/状態の非存在下での発現/活性のレベル、例えば健康な対照被験体または健康な対照被験体から得た試料における発現/活性のレベルに対するも
のであってもよい。
【0177】
いくつかの態様において、被験体は、疾患または状態を発展させる/これらに罹患するリスクを有してもよい。いくつかの態様において、被験体は、疾患または状態を発展させる/これらに罹患するリスクを増加させる、1つまたはそれより多い素因要因を所持してもよい。
【0178】
いくつかの態様において、被験体は、加齢黄斑変性症(AMD)の1つまたはそれより多いリスク要因を所持してもよい。いくつかの態様において、被験体は、AMD関連遺伝的変異体を1つまたはそれより多く所持してもよい。AMD関連遺伝的変異体は、例えば、本明細書にその全体が援用される、Clarkら, J Clin Med (2015) 4(1):18-31に記載される。いくつかの態様において、被験体は、以下のAMD関連遺伝的変異体(またはこうした変異体とLD=r≧0.8を有する変異体)の1つまたはそれより多くを所持してもよい:CFHにおけるY402H(すなわちrs1061170)、rs1410996、CFHにおけるI62V、CFHにおけるR53C、CFHにおけるD90G、CFHにおけるR1210C、またはrs6685931
【0179】
いくつかの態様において、被験体は、AMDに関する1つまたはそれより多いリスク要因、例えば1つまたはそれより多いAMD関連遺伝的変異体を所持すると決定されたことに基づいて、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または組成物での療法的または予防的治療に関して選択される。いくつかの態様において、被験体は、1つまたはそれより多いこうしたリスク要因を有すると決定されている。いくつかの態様において、本発明の方法は、被験体が、1つまたはそれより多いこうしたリスク要因を所持するかどうかを決定する工程を含む。
【0180】
いくつかの態様において、治療または防止すべき疾患または状態は、目の疾患/状態であってもよい。いくつかの態様において、治療または防止すべき疾患または状態は、AMD、乾性(すなわち非滲出性)AMD、緑内障、自己免疫ブドウ膜炎、脈絡膜血管新生(CNV)、および糖尿病性網膜症より選択されてもよい。いくつかの態様において、治療または防止すべき疾患または状態は、AMDである。いくつかの態様において、治療または防止すべき疾患または状態は、乾性AMDである。いくつかの態様において、治療すべき疾患または状態は、湿性(滲出性)AMDである。本明細書において、用語「AMD」には、初期AMD、中期AMD、後期/進行AMD、地図状委縮(「乾性」(すなわち非滲出性)AMD)、および「湿性」(すなわち滲出性)AMDが含まれ、これらは各々、それ自体で、本明細書に記載するように検出され、治療され、そして/または防止される障害でありうる。
【0181】
いくつかの態様において、障害は、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非典型的溶血性尿毒症症候群(aHUS)、自己免疫ブドウ膜炎、II型膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN
II)、敗血症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、IgA腎症、発作性夜間血色素尿症(PNH)、自己免疫溶血性貧血(AIHA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、関節リウマチ(RA)、C3腎炎因子糸球体腎炎(C3 NF GN)、遺伝性血管性浮腫(HAE)、後天性血管性浮腫(AAE)、脳脊髄炎、アテローム性動脈硬化症、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、およびアルツハイマー病より選択されてもよい。いくつかの場合、障害は、神経学的および/または神経変性性障害である。
【0182】
医学的治療法はまた、自己および/または異種細胞または不死化細胞株を用いるものを含む、in vivo、ex vivo、および養子免疫療法を伴ってもよい。
投与は、好ましくは、「療法的有効量」であり、これは、個体に対して利益を示すために十分なものである。投与する実際の量、ならびに投与の速度および時間経過は、治療中の疾患の性質および重症度に応じるであろう。治療の処方、例えば投薬量に関する決定等は、開業医および他の医師の責任の範囲内であり、そして典型的には、治療すべき状態、個々の患者の状態、送達部位、投与法、および医師に知られる他の要因を考慮する。上述の技術およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第20版, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins刊行に見出されうる。
【0183】
本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクターおよび細胞は、臨床的使用のための薬学的組成物または医薬品として配合されてもよく、そして薬学的に許容されうるキャリアー、希釈剤、賦形剤またはアジュバントを含んでもよい。組成物は、注射または注入、あるいは点眼剤としての投与(すなわち眼適用)を含んでもよい、局所、非経口、全身、腔内、静脈内、動脈内、筋内、クモ膜下腔内、眼内、結膜内、網膜下、皮下、皮内、クモ膜下腔内、経口または経皮投与経路のために配合されてもよい。適切な配合物は、無菌または等張媒体中に、ポリペプチド、核酸、ベクター、または細胞を含んでもよい。医薬品および薬学的組成物は、ゲルを含む液体型で配合されてもよい。液体配合物は、ヒトまたは動物の体の選択した臓器または領域への注射または注入(例えばカテーテルを通じたもの)による投与のために配合されてもよい。
【0184】
投与の特定の様式および/または部位は、C3b不活性化が望ましい位置にしたがって選択されてもよい。
本発明にしたがって、薬学的に有用な組成物の産生のための方法もまた提供され、こうした産生法は:本明細書に記載するようなポリペプチド、核酸、ベクター、または細胞の単離;および/または本明細書に記載するようなポリペプチド、核酸、ベクター、または細胞と、薬学的に許容されうるキャリアー、アジュバント、賦形剤または希釈剤との混合より選択される1つまたはそれより多い工程を含んでもよい。
【0185】
例えば、本発明のさらなる側面は、医学的治療の方法において使用するための医薬品または薬学的組成物を配合するかまたは産生する方法であって、本明細書に記載するようなポリペプチド、核酸、ベクター、または細胞と、薬学的に許容されうるキャリアー、アジュバント、賦形剤または希釈剤を混合することによって、薬学的組成物または医薬品を配合する工程を含む、前記方法に関する。
【0186】
投与は、単独であっても、あるいは治療すべき状態に応じて、同時または連続的のいずれかで、他の治療(例えば他の療法的または予防的介入)と組み合わされてもよい。
本発明で使用するために適した他の療法剤または治療は、食事療法、光力学療法(PDT)、レーザー光凝固、抗VEGF(血管内皮増殖因子)療法、および/または当該技術分野に知られるさらなる療法を含んでもよく、例えば、Al-Zamil WMおよびYassin SA, Clin Interv Aging. 2017 Aug 22;12:1313-1330を参照されたい。抗VEGF療法は、ラニビズマブ(Lucentis、Genentech/Novartisによって産生)、Avastin(Genentech)、ベバシズマブ(認可外Avastin)、およびアフリベルセプト(Regeneron/BayerのEylea(登録商標)/VEGF Trap-Eye)などの剤を含んでもよい。本発明とともに使用するために適したさらなる剤または技術には、APL-2(Apellis)、AdPEDF(GenVec)、被包細胞技術(ECT; Neurotech)、乳酸スクアラミン(EVIZONTM、Genaera)、OT-551(抗酸化点眼剤、Othera)、酢酸アネコルタブ(Retaane(登録商標)、Alcon)、ベバシラニブ(siRNA、Acuity Pharmaceuticals)、ペガプタニブ・ナトリウム(Macugen(登録商標))、およびAAVCAGsCD59(臨床試験同定子: NCT03144999)が含まれる。
【0187】
本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または組成物、および療法剤を、同時にまたは連続して投与してもよい。
同時投与は、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または組成物、および療法剤の、一緒の、例えば両方の剤を含有する薬学的組成物(組み合わせ調製物)として、または互いの直後の、そして随意に、同じ投与経路を通じた、例えば同じ組織、動脈、静脈、または他の血管への投与を指す。連続投与は、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または組成物、あるいは療法剤の一方の投与に続く、所定の時間間隔後の、他の剤の別個の投与を指す。2つの剤が同じ経路によって投与される必要はないが、いくつかの態様においてはこれが当てはまる。時間間隔は、任意の時間間隔であってもよい。
【0188】
ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または組成物の多数の用量を提供してもよい。用量の1つまたはそれより多く、あるいは各々には、別の療法剤の同時または連続投与が付随してもよい。
【0189】
多数の用量は、あらかじめ決定した時間間隔によって分離されていてもよく、これらは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31日、あるいは1、2、3、4、5、または6か月の1つより選択されてもよい。例えば、用量は、7、14、21または28日(プラスまたはマイナス3、2、または1日)ごとに1回投与されてもよい。
【0190】
検出
本発明はまた、試料において、ポリペプチドを検出する方法であって:
(i)本発明のポリペプチドを含有すると推測される試料を、該ポリペプチドの検出配列のタンパク質分解的切断部位に特異的なタンパク質分解酵素と接触させ;そして
(ii)非内因性ペプチドの存在を検出する
工程を含む、前記方法も提供する。
【0191】
本明細書に記載するように、被験体への本発明記載のポリペプチド、核酸、ベクター、細胞または薬学的組成物の投与後に、該方法を実行する。
試料は、被験体由来の任意の生物学的試料であってもよい。いくつかの態様において、試料は、液体生検、例えば眼液(涙液、眼房水、または硝子体液)、血液、血漿等であってもよい。いくつかの態様において、試料は、細胞学的試料または組織試料、例えば目の細胞/組織の外科的試料である。
【0192】
試料を、所定の酵素のタンパク質分解活性に適した条件下(例えば温度、pH等)、および適した時間、所定のタンパク質分解酵素と接触させる。
非内因性ペプチドの検出は、任意の適切な手段によってもよく、例えば質量分析法、またはウェスタンブロット、ELISA等の特定の結合剤を使用する方法によってもよい。いくつかの態様において、方法は、試料における非内因性ペプチドの量を定量化し、そして随意に、試料におけるポリペプチドの量または濃度に対して、非内因性ペプチドの量を相関させる工程をさらに含んでもよい。
【0193】
方法の例示的な態様において、アミノ酸配列、配列番号37からなるポリペプチドを含有すると推測される試料を、ポリペプチドのトリプシン処理に適した条件下および適した時間、トリプシンと接触させ、そして続いて、ペプチド、配列番号46および47の一方または両方の検出によって、配列番号37にしたがったポリペプチドの存在を確認する。
【0194】
配列同一性
2つまたはそれより多いアミノ酸または核酸配列の間のパーセント同一性を決定する目的のため、対のおよび多数の配列整列を、当業者に知られる多様な方法で、例えば公的に利用可能なコンピュータソフトウェア、例えばClustalOmega(Sоeding, J. 2005, Bioinformatics 21, 951-960)、T-coffee(Notredameら 2000, J. Mol. Biol. (2000) 302, 205-217)、Kalign(LassmannおよびSonnhammer 2005, BMC Bioinformatics, 6(298))およびMAFFT(KatohおよびStandley 2013, Molecular Biology and Evolution, 30(4) 772-780)ソフトウェアを用いて、達成してもよい。こうしたソフトウェアを用いる場合、好ましくは、例えばギャップペナルティおよび伸長ペナルティに関する、デフォルトパラメータを用いる。
【0195】
配列
【0196】
【表2-1】
【0197】
【表2-2】
【0198】
【表2-3】
【0199】
【表2-4】
【0200】
【表2-5】
【0201】
【表2-6】
【0202】
【表2-7】
【0203】
【表2-8】
【0204】
【表2-9】
【0205】
【表2-10】
【0206】
【表2-11】
【0207】
【表2-12】
【0208】
【表2-13】
【0209】
【表2-14】
【0210】
【表2-15】
【0211】
【表2-16】
【0212】
【表2-17】
【0213】
【表2-18】
【0214】
【表2-19】
【0215】
【表2-20】
【0216】
【表2-21】
【0217】
【表2-22】
【0218】
【表2-23】
【0219】
【表2-24】
【0220】
本発明には、こうした組み合わせが明らかに許容されえないかまたは明白に回避される場合を除いて、記載する側面および好ましい特徴の組み合わせが含まれる。
本明細書に用いるセクション見出しは、構成上の目的のためのみであり、そして記載する主題を限定するとは見なされないものとする。
【0221】
付随する図を参照しながら、例として、本発明の側面および態様がここで例示される。さらなる側面および態様が当業者には明らかであろう。本文書に言及するすべての文書は、本明細書に援用される。
【0222】
以下に続く請求項を含めて、本明細書全体で、文脈が別に必要としない限り、単語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの変形は、言及する整数または工程、あるいは整数または工程の群の包含を示すが、いかなる他の整数または工程、あるいは整数または工程の群の排除も示さないことが理解されるであろう。
【0223】
明細書および付随する請求項で用いた際、単数形「a」、「an」および「the」には、文脈が明らかに別に示さない限り、複数の参照対象が含まれることに注目しなければならない。本明細書において、「約」1つの特定の値から、そして/または「約」別の特定の値までとして範囲が示されうる。こうした範囲が示された場合、別の態様には、1つの特定の値から、そして/またはもう一方の特定の値までが含まれる。同様に、先行詞「約」の使用によって、値が近似値として示された際、特定の値は別の態様を形成することが理解されるであろう。
【0224】
核酸配列が開示される場合、その逆相補体もまた、明らかに意図される。
【実施例0225】
以下の実施例において、本発明者らは、補体因子HのC3b結合補因子領域および補体因子IのC3b不活性化タンパク質分解領域を含む、キメラC3b不活性化ポリペプチドの設計、ならびに脱グリコシル化されたキメラペプチドが、ブルッフ膜(BrM)を渡って拡散し、そしてC3bをiC3bに分解する能力を記載する。
【0226】
実施例1:補体因子H補因子領域を含むキメラC3b不活性化ポリペプチドの生成
配列番号32、33および34に示すアミノ酸配列をコードするDNA挿入物を、組換えDNA技術によって調製し、そしてベクター内にクローニングして、キメラタンパク質の組換え発現のための構築物を生成した。アミノ酸配列およびその特徴を以下に示す。
【0227】
【化1-1】
【0228】
【化1-2】
【0229】
【化1-3】
【0230】
図1Aは、N末端6xHisタグを除去するためのTEVプロテアーゼでの処理後、アミノ酸配列、配列番号32を有するタンパク質FH-FIの模式図を示す。
図1Bは、N末端6xHisタグを除去するためのTEVプロテアーゼでの処理後、およびN-グリカンを除去するためのペプチド:N-グリコシダーゼ(PNGアーゼ)での処理後、アミノ酸配列、配列番号32を有するタンパク質FH-FI(すなわちdキメラ)の模式図を示す。
【0231】
N末端代替グリコシル化配列、および補体因子H補因子領域のすぐ上流にフーリン・エンドプロテアーゼ切断部位をさらに含む、配列番号34に示す配列をコードする、さらなるFH-FI構築物を設計した。この構築物にコードされるFH-FIタンパク質の模式図を図1Cに示す。好適には、図1Cに模式的に示すポリペプチドは、フーリン・エンドプロテアーゼの内因性発現を有する細胞によって、非グリコシル化型で分泌されるであろう。したがって、このタンパク質をコードする構築物は、in vivoで、例えば所望の部位で、非グリコシル化ポリペプチドを産生可能な細胞を生成するために有用である。
【0232】
実施例2:キメラC3b不活性化ポリペプチドによる、C3bのiC3bへの分解
Clarkら J. Immunol (2014) 193, 4962-4970に記載されるように、キメラC3b不活性化FH-FIポリペプチドをC3bに分解する能力をin vitroで調べた。簡潔には、総体積20μlで反応を行った。精製C3b、因子Iおよび因子H;精製C3bおよびキメラFH-FIポリペプチド;または精製C3bおよび細胞培地対照をPBS中で一緒に混合して、そして37℃で15分間インキュベーションした。5μlの5xSDS還元試料緩衝液を添加し、そして100℃で10
分間煮沸することによって、反応を停止した。
【0233】
続いて、ウェスタンブロッティングによって、C3bおよびiC3b 68kDa iC3b産物を検出した。簡潔には、いかなる近傍に移動するバンドの解像も可能にするために、試料をプレキャスト4-12% NuPAGE Bis Tris SDSゲル(Thermo Fisher Scientific、英国オルトリナム)上で、200Vで60分間泳動し、そして次いで、トランスファー緩衝液(25mM Tris、192mMグリシン、10%(v/v)メタノール)中、半乾燥トランスファー装置を用いて、ゲルを80mAで1.5時間、ニトロセルロース膜上にトランスファーした。膜を、PBS、10%(w/v)ミルク、0.2%(w/v)BSA中で、4℃で16時間ブロッキングした後、抗C3b抗体クローン755(Cambridge Biosciences、英国ケンブリッジ;カタログ番号2072)を、PBS、0.2%(v/v)Tween-20(PBS-T)中、0.5μg/mlで、室温で2時間添加した。膜をPBS-Tで2x30分間洗浄した後、1:2000希釈のHRPコンジュゲート化二次抗体を、室温で2時間添加した。膜をPBS-Tで2x30分間洗浄した後、SuperSignal West Pico化学発光基質(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号34080)を室温で3分間添加した。Super RX-N X線フィルム(富士フィルム、カタログ番号PPB5080)を、処理した膜に室温で5分間曝露することによって、反応バンドを検出し、そして自動化X線フィルム現像装置上で現像した。
【0234】
図2は、図1Aに模式的に示すキメラFH-FIポリペプチドによる、C3b分解の分析結果を示す。iC3b 68kDaバンド()の検出によって示されるように、FH-FIは、C3bをiC3bに分解可能であることが見出された。
【0235】
実施例3:キメラC3b不活性化ポリペプチドの脱グリコシル化
3.1 キメラC3b不活性化ポリペプチドの脱グリコシル化
以下のように、図1Aに模式的に示すキメラFH-FIポリペプチドを脱グリコシル化して、N連結グリカンを除去した。
【0236】
キチン結合ドメインでタグ化されたRemove-iT PNGアーゼ(New England Biolabs、カタログ番号P0706S)を用いて、(N-グリカンを除去することによって)精製キメラポリペプチドを、非変性条件下で脱グリコシル化した。2μlのGlycoBuffer 2(10x)を、総体積18μl中、20μgタンパク質に添加した。吸引によって穏やかに混合した後、5μlのPNGアーゼFを添加し、そして吸引によって注意深く混合した。反応を、37℃の水槽中で24時間放置した。続いて、PNGアーゼFの除去のため、50μlの磁気キチンビーズ(New England Biolabs、カタログ番号E8036S)をPBS中で洗浄し、そして磁気エッペンドルフホルダーを用いてペレットにした。採取したビーズを脱グリコシル化反応に適用し、そして室温で10分間インキュベーションした。磁気スタンドを用いて、磁気キチンビーズおよび会合したPNGアーゼFをペレットにし、そして脱グリコシル化タンパク質を含有する上清を収集した。ゲル電気泳動によって、脱グリコシル化タンパク質を分析した。いかなる近傍に移動するバンドの解像も可能にするために、プレキャスト4-12% NuPAGE Bis Tris SDSゲル(Thermo Fisher Scientific、英国オルトリナム)を、200Vで60分間泳動し、そして次いで、ゲルを、Instant Blue染色(Expedeon、英国ハーストン)で、室温で60分間染色した。
【0237】
図3は、図1Aに模式的に示すキメラFH-FIポリペプチドの脱グリコシル化がバンドシフトを引き起こすことを示す。バンド移動の増加は、グリカンの喪失、そしてその結
果の流体力学半径の減少を示す。
【0238】
実施例4:ブルッフ膜を渡る、キメラC3b不活性化ポリペプチドの拡散
4.1 補体因子IおよびHは、ブルッフ膜を渡って拡散することが不可能である
異なる補体タンパク質が、ブルッフ膜(BrM)を渡って拡散する能力を分析した。
【0239】
濃縮された(enriched)黄斑BrMを通じた、可溶性タンパク質の受動拡散を、Clarkら J. Immunol (2014) 193, 4962-4970に記載されるように行った。簡潔には、濃縮BrMの黄斑領域を、McHargら, J Vis Exp (2015) 1-7に記載されるように、ドナーの目から単離し、そしてウッシングチャンバー(Harvard Apparatus、米国ハムデン)にマウントした;BrMを除去した目の組織は、AMDの巨視的証拠を示さなかった。マウントしたら、5mm直径の黄斑領域は、2つの同一の区画間の唯一のバリアであった。BrMの両側を2mlのPBSで、室温で5分間洗浄した。ヒト全血清を用いた実験のため、ヒト血清(Sigma-Aldrich、英国プール、カタログ番号H4522)をPBSで、1:1で希釈して、そして2mlを、試料チャンバーと称されるウッシング区画に添加した。精製補体を用いた実験のため、精製タンパク質を、100μg/mlで、PBS中で試料チャンバーに添加した。1分後、第二の区画に漏洩(膜の完全性の侵害を示す)が検出されなかったら、拡散物質チャンバーと称されるウッシングチャンバーの第二の区画に、2mlのPBSのみを添加し、そして各区画で穏やかに攪拌しながら、室温で24時間放置して、拡散タンパク質の勾配が生じるのを回避した。各チャンバー由来の試料を続いて、ゲル電気泳動によって分析して、そしてInstant Blue染色(Expedeon、英国ハーストン)で、室温で60分間染色するか、または上述のようにウェスタンブロッティングに供した。ウェスタンブロッティング実験において、以下の抗体を用いた:抗FIクローン271203(R&D Systems、カタログ番号MAB3307)、抗FDクローン255706(R&D Systems、カタログ番号MAB1824);および抗FBクローン313011(R&D Systems、カタログ番号MAB2739)、抗FHクローンOX23(ABcamカタログ番号ab17928)、抗C3bクローン755(Cambridge Biosciencesカタログ番号2072)、およびClarkら J. Immunol (2014) 193, 4962-4970に記載されるポリクローナル抗FHL-1抗体。
【0240】
実験結果を図4A(全ヒト血清)および4B(精製補体タンパク質)に示す。補体因子H、B、IおよびC3bは、BrMを通じて拡散不能であることが見出され、一方、因子DおよびFHL-1はBrMを渡って拡散可能である。
【0241】
補体因子IがBrMを渡って拡散し、そしてC3bを分解することができないことは、上記実施例2に本質的に記載するように実行したC3b分解アッセイで確認した。PBS中でともに混合した2μgの精製C3bおよび0.1μgのFHL-1、ならびに0.04μgの精製FIまたはBrMを渡る精製FIの拡散を調べた拡散実験の拡散物質チャンバーから採取した10μl試料を用いて、20μlの総体積中で反応を行った。
【0242】
結果を図5Aに示す。FHL-1およびFIの存在下では、C3bのα鎖の分解の観察が可能であった。拡散物質チャンバー由来の試料にFHL-1およびC3bを添加すると、すなわちFIの非存在下では、C3b α鎖の分解がないことが示された。精製FIを同じ試料に直接添加し、そして続いてC3b α鎖が、その構成要素である43kDaおよび68kDa iC3b分解産物に分解されることによって、アッセイの妥当性が確認された。
【0243】
補体因子Iは、「拡散物質+、C3b+、FHL-1+、補充FI-」レーン(すなわ
図5Aのゲルのレーン8)において、iC3b産物が存在しないことによって立証されるように、拡散物質中には存在しないことが示された。この実験はまた、FHL-1は、単独ではC3bを分解不能であることも示す(図5Aのゲルのレーン7および8)。
【0244】
本発明者らは次に、補体因子Iのグリコシル化状態が、BrMを渡って拡散する能力に重要であるかどうかを調べた。脱グリコシル化補体因子I(図5BにおいてdFIと示される)を、上記実施例3.1に記載するように、Remove-iT PNGアーゼFでの補体因子Iの処理によって調製した。脱グリコシル化は、バンドシフトと関連し;重鎖バンドは最もグリコシル化されており、そしてしたがって、最大の移動を示す(図5B)。
【0245】
脱グリコシル化補体因子IがBrMを渡って拡散し、そしてC3bを分解する能力を、上記実施例2に本質的に記載するように実行したC3b分解アッセイで分析した。PBS中でともに混合した2μgの精製C3bおよび0.1μgのFHL-1、ならびにBrMを渡るdFIの拡散を調べた拡散実験の拡散物質チャンバーから採取した10μl試料を用いて、20μlの総体積中で反応を行った。
【0246】
結果を図5Cに示す。脱グリコシル化補体因子Iは、拡散物質チャンバー中に存在することが示され、そして「拡散物質+、C3b+、FHL-1+」レーン(すなわち図5Cのゲルのレーン7)におけるiC3bの存在によって立証されるように、C3bを分解することが可能であった。
【0247】
4.2 脱グリコシル化キメラFH-FI C3b不活性化ポリペプチドは、ブルッフ膜を渡って拡散する
実施例3に記載するように調製した脱グリコシル化キメラFH-FIポリペプチドを、上記実施例4.1に記載するようなアッセイにおいて、BrMを渡って拡散する能力に関して分析した。
【0248】
実験結果を図6に示す。脱グリコシル化キメラFH-FIポリペプチド(図6において、dFH-FIと示される)は、BrMを渡って拡散可能であることが示された。
実施例5:脱グリコシル化キメラFH-FI C3b不活性化ポリペプチドは、C3b分解活性を保持する
上記実施例2に記載するようなアッセイにおいて、実施例3に記載するように調製した脱グリコシル化キメラFH-FIポリペプチドが、C3bをiC3bに分解する能力に関して分析した。
【0249】
実験結果を図7に示す。脱グリコシル化キメラFH-FIポリペプチド(図7においてdFH-FIと示す)は、C3bからiC3bへの分解が可能であることが示された。
実施例6:非グリコシル化キメラFH-FIポリペプチドを、ブルッフ膜を渡って拡散し、そしてC3b分解活性を保持する能力に関して評価する
例えば図1Bに模式的に示すような、非グリコシル化キメラFH-FIポリペプチドを、上記の実施例4.1に記載するようなアッセイにおいて、BrMを渡って拡散する能力に関して分析する。
【0250】
例えば図1Bに模式的に示すような、非グリコシル化キメラFH-FIポリペプチドを、上記実施例2に記載するようなアッセイにおいて、C3bをiC3bに分解する能力に関して分析する。
【0251】
実施例7:グリコシル化および脱グリコシル化キメラFH-FIポリペプチドは、C3bに対する結合アフィニティを示す
グリコシル化キメラFH-FIポリペプチド(例えば図1Aに模式的に示すようなもの)および脱グリコシル化キメラFH-FIポリペプチド(実施例3に記載するように調製したもの)の、C3bに対する結合アフィニティを評価した。
【0252】
バイオレイヤー干渉法を用いて、アフィニティ測定を計算した。陽性対照として、天然補体制御因子、ならびにC3b結合ポリペプチドFHおよびFHL-1を含めた。
結果を図9Aおよび9Bに示す。キメラFH-FIのグリコシル化型および脱グリコシル化型はどちらも、C3bに対する結合アフィニティを示した(図9A)。グリコシル化キメラFH-FIは、KD 5.21e-9Mで、C3bへの最強の結合を示す。脱グリコシル化キメラFH-FIは、KD 4.76e-8Mで、より弱く結合する。どちらのキメラFH-FIポリペプチドも、図9Bに示すようにFH(KD 5.83e-7M)またはFHL-1(KD 1.17e-6M)のいずれよりもより強くC3bに結合する。
【0253】
実施例8:補体受容体1補因子領域を含むキメラC3b不活性化ポリペプチドの生成
配列番号50、51、52および53に示すアミノ酸配列をコードするDNA挿入物を設計し、そして組換えDNA技術によって産生し、そしてベクター内にクローニングして、キメラタンパク質の組換え発現のための構築物を生成する。アミノ酸配列およびその特徴を以下に示す。
【0254】
【化2-1】
【0255】
【化2-2】
【0256】
【化2-3】
【0257】
【化2-4】
【0258】
図10A~10Dは、N末端6xHisタグを除去するためにTEVプロテアーゼで処理した後の、配列番号50~53のタンパク質の模式図を示す。
実施例9:キメラCR1a-FIおよびCR1b-FIポリペプチドが、ブルッフ膜を渡って拡散し、そしてC3b分解活性を保持する能力に関して評価する
図10Aおよび10Cに模式的に示すキメラCR1a-FIおよびCR1b-FIポリペプチドが、上記実施例2に記載するようなアッセイにおいて、C3bをiC3bに分解する能力に関して分析する。
【0259】
図10Aおよび10Cに模式的に示すキメラCR1a-FIおよびCR1b-FIポリペプチドが、上記実施例4.1に記載するようなアッセイにおいて、BrMを渡って拡散する能力に関して分析する。
【0260】
上記実施例3.1に記載するように、Remove-iT PNGアーゼFでの処理によって、図10Aおよび10Cに模式的に示すキメラCR1a-FIおよびCR1b-FIポリペプチドの脱グリコシル化型を調製する。脱グリコシル化キメラCR1a-FIおよびCR1b-FIポリペプチドの図を、図10Bおよび10Dに示す。
【0261】
キメラCR1a-FIおよびCR1b-FIポリペプチドの脱グリコシル化型が、上記実施例4.1に記載するようなアッセイにおいて、BrM膜を渡って拡散する能力に関して、そして上記実施例2に記載するアッセイにおいて、C3bをiC3bに分解する能力に関して分析する。
【0262】
実施例10:ブルッフ膜を渡る、キメラC3b不活性化ポリペプチドの非グリコシル化型の拡散
例えば図10Bおよび10Dに模式的に示すような、非グリコシル化キメラnCR1a-FIおよびnCR1b-FIポリペプチドが、上記実施例4.1に記載するようなアッセイにおいて、BrMを渡って拡散する能力に関して分析する。
【0263】
例えば図10Cおよび10Dに模式的に示すような、非グリコシル化キメラnCR1a-FIおよびnCR1b-FIポリペプチドが、上記実施例2に記載するようなアッセイにおいて、C3bをiC3bに分解する能力に関して分析する。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
【配列表】
2023162355000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)補体因子Iのタンパク質分解ドメインを含むC3bを不活性化する領域、および、(ii)C3bに結合可能な領域、を含むポリペプチドであって、
ここにおいて、C3bに結合可能な領域は、補体因子H(FH)、補体受容体1(CR1)、CD46またはCD55の、C3b結合領域を含み、そして、
ここにおいて、ポリペプチドは、配列GGGGSの1つまたはそれより多いコピーを含むリンカーを含まない、
前記ポリペプチド。
【請求項2】
補体因子Iのタンパク質分解ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列からなる、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
C3bに結合可能な領域が、配列番号11、13、14、16および18から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列からなる、請求項1または請求項2記載のポリペプチド。
【請求項4】
グリコシル化されていない、請求項1~3のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項5】
C3bを不活性化する領域、および/または、C3bに結合可能な領域が、配列番号27または配列番号66のコンセンサス配列に一致するアミノ酸配列を欠く、請求項1~4のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項6】
脱グリコシル化されている、請求項1~5のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項7】
分泌経路配列を含む、請求項1~6のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項8】
分泌経路配列が、配列番号27のコンセンサス配列に一致するアミノ酸配列の1つまたはそれより多いコピーを含み、そしてポリペプチドが分泌経路配列を除去するための切断配列をさらに含む、請求項7記載のポリペプチド。
【請求項9】
配列番号32、33、34、35、36、37、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、69、70、71、72または73のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列からなる、請求項1~8のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項11】
請求項10の核酸を含むベクター。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項10記載の核酸、または請求項11記載のベクターを含む、細胞。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項10記載の核酸、請求項11記載のベクター、または請求項12記載の細胞を含む、薬学的組成物であって、ここにおいて、前記組成物は、随意に薬学的に許容されうるキャリアー、アジュバント、賦形剤、または希釈剤を含む、前記薬学的組成物。
【請求項14】
補体制御不全に関連する疾患または状態を治療するかまたは防止するための医薬品の製造における、請求項1~9のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項10記載の核酸、請求項11記載のベクター、請求項12記載の細胞、または請求項13記載の薬学的組成物の使用。
【請求項15】
疾患または状態が、黄斑変性症、AMD、乾性(非滲出性)AMD、緑内障、自己免疫ブドウ膜炎、湿性(滲出性)AMD、脈絡膜血管新生(CNV)、糖尿病性網膜症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非典型的溶血性尿毒症症候群(aHUS)、II型膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN II)、敗血症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、IgA腎症、発作性夜間血色素尿症(PNH)、自己免疫溶血性貧血(AIHA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、関節リウマチ(RA)、C3腎炎因子糸球体腎炎(C3 NF GN)、遺伝性血管性浮腫(HAE)、後天性血管性浮腫(AAE)、脳脊髄炎、アテローム性動脈硬化症、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、およびアルツハイマー病から選択される、請求項14記載の使用。
【請求項16】
治療が、ポリペプチド、核酸またはベクターを含むように、または、発現するように、細胞または細胞集団を修飾することを含む、請求項14または請求項15に記載の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0263
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0263】
例えば図10Cおよび10Dに模式的に示すような、非グリコシル化キメラnCR1a-FIおよびnCR1b-FIポリペプチドが、上記実施例2に記載するようなアッセイにおいて、C3bをiC3bに分解する能力に関して分析する。
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
C3b結合領域およびC3b不活性化領域を含むポリペプチド。
[態様2]
C3b不活性化領域が、C3bをタンパク質分解的に切断可能である、態様1記載のポリペプチド。
[態様3]
C3b不活性化領域が、1303および/または1320位でC3 α’鎖を切断可能である、態様1または態様2記載のポリペプチド。
[態様4]
C3b不活性化領域が、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなる、態様1~3のいずれか一項記載のポリペプチド。
[態様5]
C3b結合領域が、補体因子Iの補因子によって結合される領域で、C3bに結合する、態様1~4のいずれか一項記載のポリペプチド。
[態様6]
C3b結合領域が、補体因子H、CR1、CD46、CD55またはC4結合タンパク質の1つによって結合される領域で、C3bに結合する、態様1~5のいずれか一項記載のポリペプチド。
[態様7]
C3b結合領域が、補体因子Hによって結合される領域、または補体受容体1(CR1)によって結合される領域で、C3bに結合する、態様1~6のいずれか一項記載のポリペプチド。
[態様8]
C3b結合領域が、補体因子H補体制御タンパク質(CCP)ドメイン1~4によって結合される領域、あるいはCR1 CCPドメイン8~10または15~17によって結合される領域で、C3bに結合する、態様1~7のいずれか一項記載のポリペプチド。
[態様9]
C3b結合領域が、配列番号11、13または14のアミノ酸配列に対して少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなる、態様1~8のいずれか一項記載のポリペプチド。
[態様10]
ブルッフ膜(BrM)を渡って拡散可能である、態様1~9のいずれか一項記載のポリペプチド。
[態様11]
グリコシル化されていない、態様1~10のいずれか一項記載のポリペプチド。
[態様12]
C3b不活性化領域が、配列番号27のコンセンサス配列に一致するアミノ酸配列を欠く、態様1~11のいずれか一項記載のポリペプチド。
[態様13]
ポリペプチドが検出配列を含み、該検出配列がタンパク質分解酵素の切断部位を含むかまたは該部位からなり、そしてタンパク質分解酵素でのポリペプチドの切断が、非内因性ペプチドの産生を生じる、態様1~12のいずれか一項記載のポリペプチド。
[態様14]
配列番号32、33、34、35、36、37、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、69、70、71、72または73のアミノ酸配列に対して少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなる、態様1~13のいずれか一項記載のポリペプチド。
[態様15]
分泌経路配列をさらに含む、態様1~14のいずれか一項記載のポリペプチド。
[態様16]
分泌経路配列が、配列番号27のコンセンサス配列に一致するアミノ酸配列の1つまたはそれより多いコピーを含み、そしてポリペプチドが分泌経路配列を除去するための切断配列をさらに含む、態様15記載のポリペプチド。
[態様17]
分泌経路配列を除去するための切断部位が、フーリン・エンドプロテアーゼ切断部位である、態様16記載のポリペプチド。
[態様18]
態様1~17のいずれか一項記載のポリペプチドをコードする核酸。
[態様19]
態様18の核酸を含むベクター。
[態様20]
態様1~17のいずれか一項記載のポリペプチド、態様18記載の核酸、または態様19記載のベクターを含む、細胞。
[態様21]
ポリペプチドを産生するための方法であって、細胞内に、態様18記載の核酸または態様19記載のベクターを導入し、そしてポリペプチドの発現に適した条件下で、該細胞を培養する工程を含む、前記方法。
[態様22]
態様21記載の方法によって得られるかまたは得られうる、細胞。
[態様23]
態様1~17のいずれか一項記載のポリペプチド、態様18記載の核酸、態様19記載のベクター、あるいは態様20または態様22記載の細胞、並びに、薬学的に許容されうるキャリアー、アジュバント、賦形剤、または希釈剤を含む、薬学的組成物。
[態様24]
疾患または状態を治療するかまたは防止する方法における使用のための、態様1~17のいずれか一項記載のポリペプチド、態様18記載の核酸、態様19記載のベクター、態様20または態様22記載の細胞、あるいは態様23記載の薬学的組成物。
[態様25]
疾患または状態を治療するかまたは防止するための医薬品の製造における、態様1~17のいずれか一項記載のポリペプチド、態様18記載の核酸、態様19記載のベクター、態様20または態様22記載の細胞、あるいは態様23記載の薬学的組成物の使用。
[態様26]
態様1~17のいずれか一項記載のポリペプチド、態様18記載の核酸、態様19記載のベクター、態様20または態様22記載の細胞、あるいは態様23記載の薬学的組成物を、被験体に投与する工程を含む、疾患または状態を治療するかまたは防止する方法。
[態様27]
被験体において疾患または状態を治療するかまたは防止する方法であって、態様18記載の核酸または態様19記載のベクターを発現するかまたは含むように、被験体の少なくとも1つの細胞を修飾する工程を含む、前記方法。
[態様28]
疾患または状態が、C3bまたはC3b含有複合体、C3bまたはC3b含有複合体に関連する活性/反応、あるいはC3bまたはC3b含有複合体に関連する活性/反応の産物が、病理学的に関与している疾患または状態である、態様24記載の使用のための、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、または薬学的組成物、態様25記載の使用、あるいは態様26または態様27記載の方法。
[態様29]
疾患または状態が、加齢黄斑変性症(AMD)である、態様24~28のいずれか一項記載の使用のための、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、または薬学的組成物、使用、あるいは方法。
[態様30]
あらかじめ決定した量の態様1~17のいずれか一項記載のポリペプチド、態様18記載の核酸、態様19記載のベクター、態様20または態様22記載の細胞、あるいは態様23記載の薬学的組成物を含む、部品キット。
[態様31]
試料におけるポリペプチドを検出する方法であって:
(i)態様13記載のポリペプチドを含有すると推測される試料を、検出配列のタンパク質分解的切断部位に特異的なタンパク質分解酵素と接触させ;そして
(ii)非内因性ペプチドの存在を検出する
工程を含む、前記方法。