IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシオ計算機株式会社の特許一覧

特開2023-162406外装部材、時計、外装部材の製造方法
<>
  • 特開-外装部材、時計、外装部材の製造方法 図1
  • 特開-外装部材、時計、外装部材の製造方法 図2
  • 特開-外装部材、時計、外装部材の製造方法 図3
  • 特開-外装部材、時計、外装部材の製造方法 図4
  • 特開-外装部材、時計、外装部材の製造方法 図5
  • 特開-外装部材、時計、外装部材の製造方法 図6
  • 特開-外装部材、時計、外装部材の製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162406
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】外装部材、時計、外装部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 45/00 20060101AFI20231031BHJP
   G04B 37/22 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
G04B45/00 D
G04B37/22 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143624
(22)【出願日】2023-09-05
(62)【分割の表示】P 2021154080の分割
【原出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 陽
(57)【要約】
【課題】可視光を透過する材料で形成された外装部材の見栄えを良くする。
【解決手段】ベゼル3は、可視光を透過するサファイアガラスで形成され、本体ケース2に対向する内面に、可視光に含まれるある波長域の光を反射する不透明層Lを有し、不透明層Lは内面と反対側の外面を介して視認可能である。これにより、ベゼル3の見栄えを良くすることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を透過するある材料で形成され、
ある部材に対向する内面に、可視光に含まれるある波長域の光を反射する不透明層を有し、前記不透明層は前記内面と反対側の外面を介して視認可能である、
ことを特徴とする外装部材。
【請求項2】
前記内面は、前記ある部材の被対向部分に対向する内側面と、前記ある部材の前記被対向部分とは異なる固定部分に固定される下面とを含み、
前記不透明層として、前記内側面にスパッタリング層を有し、前記下面に蒸着層を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の外装部材。
【請求項3】
前記外面は外側面と上面を含み、
前記内面は、前記ある部材の固定部分に固定される下面を含み、
前記外側面と前記下面とがなす角部に面取りされた面取り面を有し、
前記面取り面に前記不透明層を有し、
前記下面に対する前記面取り面の傾斜角は、前記上面側からの光が前記面取り面において或る反射率で反射するような角度に予め設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の外装部材。
【請求項4】
前記外装部材は、貫通孔を含む環状の形状を有し、
前記内面は、前記貫通孔を画成する内側面と、前記ある部材の固定部分に固定される下面とを含み、
前記貫通孔に前記ある部材の被対向部分が嵌合し、前記内側面が前記被対向部分に対向する、
ことを特徴とする請求項1に記載の外装部材。
【請求項5】
前記ある材料はサファイアガラスである、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の外装部材。
【請求項6】
前記内面及び前記外面を含む全ての面が鏡面仕上げされている、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の外装部材。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の外装部材と、
時刻表示部を収容する、前記ある部材としてのケースと、を備える、
ことを特徴とする時計。
【請求項8】
前記ケースは、前記外装部材の前記下面が帯状の部材により固定された前記固定部分を有し、
前記帯状の部材は、一方の面及び他方の面に接着層を有し、前記一方の面の前記接着層が前記外装部材の前記下面に接着され、かつ、前記他方の面の前記接着層が前記固定部分に接着されている、
ことを特徴とする、少なくとも請求項2から4のいずれか一項を引用する請求項7に記載の時計。
【請求項9】
前記外装部材の前記外面は外側面を含み、
前記外装部材は、前記下面の外側の部分に、前記下面と前記外側面とに連なる面取り面を有し、
前記ケースは、前記外装部材の前記下面が固定された前記固定部分よりも外側の少なくとも一部分に、前記面取り面に対向するように突設された凸部と、を有する、
ことを特徴とする少なくとも請求項2又は請求項4を引用する請求項7に記載の時計。
【請求項10】
可視光を透過するある材料を環状に形成する加工工程と、
前記加工工程により環状に形成された前記ある材料の下面に、可視光に含まれるある波長域の光を反射する不透明層を蒸着により形成する第1表面処理工程と、
前記第1表面処理工程により前記不透明層が前記下面に形成された前記ある材料の内側面に、スパッタリングにより前記不透明層を形成する第2表面処理工程と、
を備えることを特徴とする外装部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装部材、時計、外装部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時計等の外装部材として、サファイアガラス等の可視光を透過する透明材料を用いるものがある(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、外装部材と、外装部材が設けられる或る部材との間の隙間に、ゴミ等の異物が混入すると、可視光を透過する外装部材を通じて異物が視認できてしまい、見栄えを著しく損ねる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-70939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、可視光を透過する材料で形成された外装部材の見栄えを良くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は、外装部材であって、
可視光を透過するある材料で形成され、
ある部材に対向する内面に、可視光に含まれるある波長域の光を反射する不透明層を有し、前記不透明層は前記内面と反対側の外面を介して視認可能である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、可視光を透過する材料で形成された外装部材の見栄えを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る時計の正面図である。
図2図1のA-A線での時計の断面図である。
図3図2のB部の拡大図である。
図4図2のC部の拡大図である。
図5】実施形態に係るベゼルの製造方法を説明するための図である。
図6】実施形態に係るベゼルの製造方法の流れを示すフロー図である。
図7】他のベゼル保持構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1から図7を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0009】
図1は、本実施形態に係る時計100の正面図であり、図2は、図1のA-A線での時計100の断面図であり、図3及び図4は、図2のB部及びC部の拡大図である。
なお、以下の説明において、XYZの各方向は各図に示した向きをいうものとする。つまり、X方向はアナログ式の時計における3時-9時方向をいい、Y方向は12時-6時方向をいい、Z方向は時計100(本体ケース2)の正面-背面方向をいう。また、図2では、本体ケース2内の収容物の図示を省略している。
【0010】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る時計100は、ユーザの手首に装着される腕時計である。具体的に、時計100は、本体ケース2と、ベゼル3とを備えている。
本体ケース2は、円筒状に形成され、正面側(視認側)の開口部が可視光を透過する透明の風防部材23で、背面側の開口部が裏蓋24で、それぞれ閉塞されている。
本体ケース2のY方向の両側部には、図示しないバンドが取り付けられるバンド取付部25が設けられている。
【0011】
本体ケース2の内部には、図示しない時計モジュールが収容されている。
時計モジュールの最も正面側には、時刻を表示する時刻表示部26が配置されている。時刻表示部26は、アナログ式の場合には、文字板と、文字板上で中央回りに回転して時刻を表示する複数の指針とを含む。時刻表示部26は、風防部材23越しに正面側から視認可能となっている。
また、時計モジュールの内部には、電源部である電池、制御回路が実装された回路基板、複数の指針を運針させる運針機構等が収容されている。
【0012】
ベゼル3は、本発明に係る外装部材の一例であり、可視光を透過するある材料、例えばサファイアガラスで形成されている。ベゼル3は、正面視でほぼ円環板状に形成され、本体ケース2の正面側に取り付けられている。より詳しくは、本体ケース2の正面側の外周面側には、断面L字状の環状の凹部21が形成されており、ベゼル3の後述する内側面34で画成された中央の貫通孔は、この凹部21の嵌合部分21a(被対向部分)に正面側から嵌合されており、嵌合部分21aの周面とベゼル3の内側面34との間には、若干の隙間が設けられており、嵌合部分21aの周面と内側面34は互いに対向している。これは、ベゼル3がサファイアガラスすなわち脆性材料で構成されているため、ベゼル3の貫通孔を嵌合部分21aに仮に圧入した場合には、それによりベゼル3又は嵌合部分21aが破損する可能性があるためである。
なお、以下では、「径方向」とは、Z方向に沿ったベゼル3の中心軸Axに垂直な方向をいい、「周方向」とは、中心軸Axを中心とする回転方向をいう。また、「内」「外」とは、特に断りのない限り、中心軸Axを中心とする径方向の内側及び外側をいう。
【0013】
図3に示すように、ベゼル3は、上面(正面側の面)31、下面(背面側の面)32、外側面33、内側面34を有する略矩形の断面形状に形成されている。この断面形状は、Z方向の高さ(厚さ)と径方向の幅との比が、ほぼ1:1となっている。そのため、ベゼル3各面で光が反射しやすく、位置によって色調のムラが発生しにくい。
上面31と外側面33とのなす角部は面取りされており、面取り面(上側テーパ面)35が形成されている。
下面32と外側面33とがなす角部も面取りされており、その面取り面(下側テーパ面)36は下面32に対して所定の傾斜角θ(本実施形態では約30度)を有している。傾斜角θは、ベゼル3内をZ方向に沿った光が下側テーパ面36に入射したときに、この下側テーパ面36である反射率で反射される(光がベゼル3外に略抜けない)角度に予め設定されている。すなわち、Z方向に沿った光が下側テーパ面36に入射する入射角θIが、ベゼル3の材料であるサファイアガラスの屈折率と空気の屈折率で定まる臨界角(例えば34度)以上の角度か、この臨界角を含むある角度範囲内(臨界角±5度)の角度になるように、傾斜角θは予め設定されている。なお、上面31及び下面32は、互いに平行であり、かつ、Z方向に直交している。上記の角度範囲は、下側テーパ面36での高い反射率を確保しながら、下側テーパ面36の良好な意匠性が得られるように設定されている。
また、ベゼル3の全ての面は、所定の平滑度まで鏡面仕上げされている。
【0014】
ベゼル3の各面のうち、上面31、外側面33、上側テーパ面35が、外側(時計100における外方)に位置して視認される側の面である。以下、上面31、外側面33、上側テーパ面35を総称して「外面」という。一方、下面32、内側面34、下側テーパ面36は、内側に位置して上記の上面31などの外面を介して視認される面である。以下、これらの下面32、内側面34、下側テーパ面36を総称して「内面」という。
内面である下面32、内側面34、下側テーパ面36には、その表面全面に亘り人間が視認可能な不透明層(不透明膜)Lが形成されている。不透明層Lは、可視光に含まれるある波長域の光を反射するものであり、本実施形態では青色の薄膜である。このうち、下面32及び下側テーパ面36に形成された不透明層L1は、蒸着による蒸着層(蒸着膜)であり、内側面34に形成された不透明層L2は、スパッタリングによるスパッタリング層(スパッタリング膜)である。内面に形成された不透明層Lは、外面を介して視認可能である。
【0015】
ベゼル3の下面32は、両面に接着層を有する帯状の両面テープ5により、本体ケース2の座面22(凹部21内の上面)の固定部分に固定されており、両面テープ5の一方の面の接着層が下面32に接着され、他方の面の接着層が座面22に接着されている。
本体ケース2の座面22の固定部分よりも外側の部分には、下側テーパ面36に対向するように突設された凸部22aを有している。凸部22aは、ベゼル3の下側テーパ面36の1/3程度の高さに形成され、ベゼル3の下面32と本体ケース2の座面22との間に塵芥等の異物が混入したり、この座面22の固定部分(下面32と座面22とを固定する両面テープ5)が側方から視認されたりするのを防ぐ。また、凸部22aは、本体ケース2の座面22の少なくとも周方向の一部以外の部分に形成されている。本実施形態では、図4に示すように、3時方向の座面22の一部分だけは、中心軸Ax回りの所定の角度範囲に亘って凸部22aが形成されておらず、平坦部となっている。そのため、この平坦部からベゼル3の下面32と本体ケース2の座面22との間に図示しないジグを挿入し、両面テープ5を下面32又は座面22から剥がしてベゼル3を本体ケース2から取り外すことができる。
【0016】
続いて、ベゼル3の製造方法について説明する。
図5は、ベゼル3の製造方法を説明するための図であり、図6は、ベゼル3の製造方法の流れを示すフロー図である。
【0017】
図5及び図6に示すように、ベゼル3の作製にあたっては、まず素材である、可視光を透過する透明のサファイアガラスを環状に形成する(ステップS1(加工工程):図5(a))。ここでは、サファイアが各面31~36を有する最終形状まで加工された後に、各面31~36が鏡面仕上げされる。
こうして、ブランク状態(透明)のベゼル3Aが作製される。
【0018】
次に、加工工程後のベゼル3Aの下面32及び下側テーパ面36に対し、蒸着により青色の不透明層L1を形成する(ステップS2(第1表面処理工程):図5(b))。
こうして、下面32及び下側テーパ面36に不透明層(蒸着層)L1が形成されたベゼル3Bが作製される。
【0019】
次に、第1表面処理工程後のベゼル3Bの内側面34に対し、スパッタリングにより青色の不透明層L2を形成する(ステップS3(第2表面処理工程):図5(c))。このとき、不透明層L1が形成されている下面32には予めマスキングを施しておく。
こうして、内側面34に不透明層(スパッタリング層)L2が形成され、ベゼル3が完成する。
【0020】
以上のように、本実施形態によれば、可視光を透過する材料で形成されたベゼル3が、本体ケース2に対向する内面に、可視光に含まれるある波長域の光を反射する不透明層Lを有し、不透明層Lは内面と反対側の外面を介して視認可能である。
これにより、例えば仮に下面32及び/又は内側面34と本体ケース2との間の隙間に塵芥等の異物が混入した場合でも、ベゼル3を通じて視認側から異物は視認されない。したがって、視認側から異物が視認されていた従来に比べ、ベゼル3の見栄えを良くすることができる。
また、ベゼル3の内面の不透明層Lが外面を介して視認可能なので、奥行きのある着色をベゼル3に施すことができ、ベゼル3の見栄えをより良くすることができる。さらにこの場合、ベゼル3の内面全て(下面32及び内側面34)の不透明層Lを共通の色(青色)とすることにより、あたかもベゼル3全体が着色されているかのような、すなわち、あたかもベゼル3がカラーサファイアで形成されているかのような見栄えが得られる。
【0021】
また、本実施形態によれば、ベゼル3は、貫通孔を含む環状の形状を有し、その内面は、貫通孔を画成する内側面34と、本体ケース2の固定部分(座面22)に固定される下面32とを含み、貫通孔には本体ケース2の嵌合部分21aが嵌合する。
これにより、本体ケース2に嵌合するベゼル3の内側面34及び下面32について上述した効果を適切に得ることができる。
【0022】
また、本実施形態によれば、ベゼル3は、不透明層Lとして、内側面34にスパッタリング層、下面32に蒸着層を有している。
これにより、内側面34及び下面32のそれぞれに好適に不透明層Lを形成することができる。
【0023】
また、本実施形態によれば、ベゼル3の外側面33と下面32とがなす角部が面取りされており、その面取り面である下側テーパ面36が下面32に対してなす傾斜角θは、上面側からの光が当該下側テーパ面36において或る反射率で反射するような角度に予め設定されている。
これにより、正面側からZ方向に沿った光がベゼル3内を導光して下側テーパ面36に入射したときに、所定の反射率で反射させることができる。特に、傾斜角θが臨界角以上(又はその近傍)の場合には、この光は下側テーパ面36でほぼ全反射する。したがって、より一層ベゼル3の見栄えを不透明層Lの色に見せることができる。
【0024】
また、本実施形態によれば、ベゼル3はサファイアガラスで形成され、内面及び外面を含む全ての面が鏡面仕上げされている。
サファイアのような脆性材料は、例えば梨地状のような凹凸のある面ではクラックが入るおそれがある。この点、本実施形態によれば、ベゼル3の全ての面を所定の平滑度まで鏡面仕上げすることにより、クラックの発生を抑えて強度を向上させることができる。また、見栄えもさらに良くすることができる。さらに、ベゼル3の強度が向上するため、ベゼルを他部材の内側に配置していた従来に比べ(図7参照)、より多くの面を時計100の外側に露出させた状態に配置できる。
【0025】
また、本実施形態によれば、ベゼル3は、視認側とは反対側の下面32が、両面に接着層を有する帯状の両面テープ5により本体ケース2に固定されている。
これにより、ベゼル3を十分な接着強度で本体ケース2に固定できる。また、接着剤で固定する場合と異なり、液剤が固定部からはみ出たりすることがなく、また比較的簡単に両者を分離できる。
【0026】
また、本実施形態によれば、ベゼル3の下面32の外側の部分に、下面32と外側面33とに連なる面取り面(下側テーパ面36)を有し、本体ケース2は、座面22のうちベゼル3を固定する固定部分よりも外側の少なくとも一部分に、ベゼル3の下側テーパ面36に対向するように突設された凸部22aを有する。これにより、ベゼル3の下面32と本体ケース2の座面22との間に塵芥等の異物が混入したり、この固定部分が側方から視認されたりするのを防ぐことができる。
さらに、この凸部22aは、本体ケース2の固定部分よりも外側の部分の全体ではなく、少なくとも周方向の一部以外の部分に形成されている。これにより、この座面22の一部分からベゼル3の下面32と本体ケース2の座面22との間に図示しないジグを挿入し、両面テープ5を剥がしてベゼル3を本体ケース2から取り外すことができる。
すなわち、例えば図7に示すように、ベゼルを本体ケース(又は他の外装部材)の凹部に落とし込んで嵌合し、接着剤で本体ケースと固定させた構造では、視認方向が正面側の一方向だけであるうえに、ベゼルと本体ケースとの分離が困難である。この点、本実施形態によれば、ベゼル3を側方(外径側)からも視認でき、かつ強固に固定でき、さらに分離も可能である。さらに本実施形態によれば、面取り面(下側テーパ面36)により、上記のジグを挿入しやすくすることができる。
【0027】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0028】
例えば、上記実施形態では、ベゼル3の下面32、外側面33、下側テーパ面36が、不透明層Lを有する非視認側面であることとしたが、この非視認側面はこれらに限定されず、少なくとも1つあればよい。例えば面取り面36がない(面取りしてない)ベゼルであってもよい。
また、ベゼル3の形状は特に限定されず、貫通孔を含む環状でなく、例えば弧状などであってもよい。ベゼル3の材料もサファイアガラスに限定されず、可視光を透過する材料であればよい。また、ベゼル3の材質によっては、両面テープで固定せずに、接着など他の適当な固定方法で固定してもよい。
また、本体ケース2には凸部22aがなくてもよい。
【0029】
また、不透明層Lの色は青色以外であってもよい。また、複数の非視認側面に対応した複数の不透明層Lを形成する場合、これらの色が完全に同一でなくともよく、互いに同系色であればよい。
また、不透明層Lを形成する手法は、スパッタリングと蒸着に限定されない。
【0030】
また、上記実施形態では、時刻表示部がアナログ式のものとしたが、デジタル式であってもよいし、アナログ式とデジタル式の2つの時刻表示部が設けられてもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、本発明に係る外装部材を時計に設けた場合を例として説明した。しかし、本発明に係る外装部材は、時計が備えるものに限定されず、特に透明材料を用いた見栄えが望ましいものに好適に適用可能である。
【0032】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
可視光を透過するある材料で形成され、
ある部材に対向する内面に、可視光に含まれるある波長域の光を反射する不透明層を有し、前記不透明層は前記内面と反対側の外面を介して視認可能である、
ことを特徴とする外装部材。
<請求項2>
前記内面は、前記ある部材の被対向部分に対向する内側面と、前記ある部材の前記被対向部分とは異なる固定部分に固定される下面とを含み、
前記不透明層として、前記内側面にスパッタリング層を有し、前記下面に蒸着層を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の外装部材。
<請求項3>
前記外面は外側面と上面を含み、
前記内面は、前記ある部材の固定部分に固定される下面を含み、
前記外側面と前記下面とがなす角部に面取りされた面取り面を有し、
前記面取り面に前記不透明層を有し、
前記下面に対する前記面取り面の傾斜角は、前記上面側からの光が前記面取り面において或る反射率で反射するような角度に予め設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の外装部材。
<請求項4>
前記外装部材は、貫通孔を含む環状の形状を有し、
前記内面は、前記貫通孔を画成する内側面と、前記ある部材の固定部分に固定される下面とを含み、
前記貫通孔に前記ある部材の被対向部分が嵌合し、前記内側面が前記被対向部分に対向する、
ことを特徴とする請求項1に記載の外装部材。
<請求項5>
前記ある材料はサファイアガラスである、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の外装部材。
<請求項6>
前記内面及び前記外面を含む全ての面が鏡面仕上げされている、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の外装部材。
<請求項7>
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の外装部材と、
時刻表示部を収容する、前記ある部材としてのケースと、を備える、
ことを特徴とする時計。
<請求項8>
前記ケースは、前記外装部材の前記下面が帯状の部材により固定された前記固定部分を有し、
前記帯状の部材は、一方の面及び他方の面に接着層を有し、前記一方の面の前記接着層が前記外装部材の前記下面に接着され、かつ、前記他方の面の前記接着層が前記固定部分に接着されている、
ことを特徴とする、少なくとも請求項2から4のいずれか一項を引用する請求項7に記載の時計。
<請求項9>
前記外装部材の前記外面は外側面を含み、
前記外装部材は、前記下面の外側の部分に、前記下面と前記外側面とに連なる面取り面を有し、
前記ケースは、前記外装部材の前記下面が固定された前記固定部分よりも外側の少なくとも一部分に、前記面取り面に対向するように突設された凸部と、を有する、
ことを特徴とする少なくとも請求項2又は請求項4を引用する請求項7に記載の時計。
<請求項10>
可視光を透過するある材料を環状に形成する加工工程と、
前記加工工程により環状に形成された前記ある材料の下面に、可視光に含まれるある波長域の光を反射する不透明層を蒸着により形成する第1表面処理工程と、
前記第1表面処理工程により前記不透明層が前記下面に形成された前記ある材料の内側面に、スパッタリングにより前記不透明層を形成する第2表面処理工程と、
を備えることを特徴とする外装部材の製造方法。
【符号の説明】
【0033】
100 時計
2 本体ケース(ある部材、ケース)
21a 嵌合部分(被対向部分)
22 座面(固定部分)
22a 凸部
26 時刻表示部
3 ベゼル(外装部材)
31 上面
32 下面
33 外側面
34 内側面
35 上側テーパ面
36 下側テーパ面
5 両面テープ
Ax 中心軸
L 不透明層
L1 不透明層(蒸着層)
L2 不透明層(スパッタリング層)
θ 傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7