IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

特開2023-162423ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162423
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー
(51)【国際特許分類】
   C08F 14/26 20060101AFI20231031BHJP
   C08F 214/26 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C08F14/26
C08F214/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144618
(22)【出願日】2023-09-06
(62)【分割の表示】P 2022158883の分割
【原出願日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2021161571
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022128027
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケブラー
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈人
(72)【発明者】
【氏名】安田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】山中 拓
(72)【発明者】
【氏名】宮本 政佳
(72)【発明者】
【氏名】村山 健太
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 亮太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】山本 絵美
(72)【発明者】
【氏名】西村 賢汰
(72)【発明者】
【氏名】浦岡 伸樹
(57)【要約】
【課題】水分や不純物が低減されたポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを提供する。
【解決手段】水分及び分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分及び分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項2】
下記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まない請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、及び、
【化1】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。Rは、H又は有機基である。)。
【請求項3】
前記含フッ素化合物の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに対し25質量ppb未満である請求項1又は2に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項4】
延伸可能であり、標準比重が2.160以下であり、水分及び分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項5】
延伸可能であり、標準比重が2.160以下であり、水分及び下記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、及び、
【化2】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。Rは、H又は有機基である。)。
【請求項6】
総延伸率2400%の延伸試験で得られた延伸ビードを用いて測定した破断強度が25.0N以上70.0N以下である請求項4又は5に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項7】
総延伸率2400%の延伸試験で得られた延伸ビードを用いて測定した破断強度が10.0N以上25.0N未満である請求項4又は5に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項8】
リダクションレシオ100における押出圧力が18MPa以下である請求項4又は5に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項9】
前記含フッ素化合物の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに対し25質量ppb未満である請求項4又は5に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項10】
水分含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに対し0.010質量%以下である請求項4又は5に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項11】
含フッ素界面活性剤の存在下で行う重合により得られる請求項4又は5に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項12】
延伸材料である請求項4又は5に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項13】
請求項4又は5に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを用いた延伸体。
【請求項14】
多孔膜、二軸延伸膜、又は、濾材である請求項13に記載の延伸体。
【請求項15】
ペースト押出可能であり、標準比重が2.135~2.200であり、水分及び分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まない変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項16】
ペースト押出可能であり、標準比重が2.135~2.200であり、水分及び下記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まない変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、及び、
【化3】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。Rは、H又は有機基である。)。
【請求項17】
リダクションレシオ1500における押出圧力が15~80MPaである請求項15又は16に記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項18】
前記含フッ素化合物の含有量が、前記変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに対し25質量ppb未満である請求項15又は16に記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項19】
水分含有量が、前記変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに対し0.010質量%以下である請求項15又は16に記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項20】
含フッ素界面活性剤の存在下で行う重合により得られる請求項15又は16に記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項21】
請求項15又は16に記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを用いた成形体。
【請求項22】
電線被覆材、又は、チューブである請求項21記載の成形体。
【請求項23】
ペースト押出可能であり、標準比重が2.135~2.200であり、水分及び一般式(2)で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まない、パーフルオロビニルエーテルで変性された変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
一般式(2):[Cn-12n-1COO]M
(式中、nは9~14の整数、Mはカチオンを表す。)
【請求項24】
パーフルオロビニルエーテルの変性量が0.02質量%以上、0.30質量%以下である請求項23に記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項25】
リダクションレシオ1500における押出圧力が15~80MPaである請求項23又は24に記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【請求項26】
前記含フッ素化合物の含有量の合計が、前記変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに対し25質量ppb未満である請求項23又は24に記載の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ファインパウダーは、電気絶縁性、耐水性、耐薬品性、耐熱性、クリーン性に優れる等の理由から、絶縁テープ、同軸ケーブルや酸素センサの被覆材、あるいは燃料や飲料水用のチューブ類等に用いられる。これらはPTFEファインパウダーのペースト押出成形によって製造される。近年では、各種用途での部材軽量化が進み、例えば被覆材では薄肉化が求められている。
【0003】
また、PTFEファインパウダーのペースト押出によって得られたテープを高度に延伸することによって多孔質材料に加工できることから、耐水透湿膜やフィルタ濾材も製造でき、衣類や分離膜、エアフィルター等の広範な用途に応用されている。
【0004】
PTFEファインパウダーは、テトラフルオロエチレン(TFE)の乳化重合により製造される。
【0005】
特許文献1には、炭化水素系界面活性剤を使用する乳化重合で得られたフッ素化ポリマー樹脂を酸化剤に曝露させることにより、フッ素化ポリマー樹脂の熱誘起変色を低減させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2015-516029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、水分や不純物が低減されたPTFEファインパウダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示(1)は、水分及び分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに関する。
【0009】
本開示(2)は、上記ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーは、下記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まない本開示(1)のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、及び、
【化1】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。Rは、H又は有機基である。)。
【0010】
本開示(3)は、上記含フッ素化合物の含有量が、上記ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに対し25質量ppb未満である本開示(1)又は(2)のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0011】
本開示(4)はまた、延伸可能であり、標準比重が2.160以下であり、水分及び分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに関する。
【0012】
本開示(5)はまた、延伸可能であり、標準比重が2.160以下であり、水分及び下記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに関する。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、及び、
【化2】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。Rは、H又は有機基である。)。
【0013】
本開示(6)は、総延伸率2400%の延伸試験で得られた延伸ビードを用いて測定した破断強度が25.0N以上70.0N以下である本開示(4)又は(5)のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0014】
本開示(7)は、総延伸率2400%の延伸試験で得られた延伸ビードを用いて測定した破断強度が10.0N以上25.0N未満である本開示(4)又は(5)のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0015】
本開示(8)は、リダクションレシオ100における押出圧力が18MPa以下である本開示(4)、(5)又は(7)のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0016】
本開示(9)は、上記含フッ素化合物の含有量が、上記ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに対し25質量ppb未満である本開示(4)~(8)のいずれかとの任意の組み合わせのポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0017】
本開示(10)は、水分含有量が、上記ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに対し0.010質量%以下である本開示(4)~(9)のいずれかとの任意の組み合わせのポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0018】
本開示(11)は、含フッ素界面活性剤の存在下で行う重合により得られる本開示(4)~(10)のいずれかとの任意の組み合わせのポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0019】
本開示(12)は、延伸材料である本開示(4)~(11)のいずれかとの任意の組み合わせのポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0020】
本開示(13)はまた、本開示(4)~(12)のいずれかとの任意の組み合わせのポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを用いた延伸体に関する。
【0021】
本開示(14)は、多孔膜、二軸延伸膜、又は、濾材である本開示(13)の延伸体である。
【0022】
本開示(15)はまた、ペースト押出可能であり、標準比重が2.135~2.200であり、水分及び分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まない変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに関する。
【0023】
本開示(16)はまた、ペースト押出可能であり、標準比重が2.135~2.200であり、水分及び下記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まない変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに関する。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、及び、
【化3】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。Rは、H又は有機基である。)。
【0024】
本開示(17)は、リダクションレシオ1500における押出圧力が15~80MPaである本開示(15)又は(16)の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0025】
本開示(18)は、上記含フッ素化合物の含有量が、上記変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに対し25質量ppb未満である本開示(15)~(17)のいずれかとの任意の組み合わせの変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0026】
本開示(19)は、水分含有量が、上記変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに対し0.010質量%以下である本開示(15)~(18)のいずれかとの任意の組み合わせのポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0027】
本開示(20)は、含フッ素界面活性剤の存在下で行う重合により得られる本開示(15)~(19)のいずれかとの任意の組み合わせの変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0028】
本開示(21)はまた、本開示(15)~(20)のいずれかとの任意の組み合わせの変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを用いた成形体に関する。
【0029】
本開示(22)は、電線被覆材、又は、チューブである本開示(21)の成形体である。
【0030】
本開示(23)はまた、ペースト押出可能であり、標準比重が2.135~2.200であり、水分及び一般式(2)で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まない、パーフルオロビニルエーテルで変性された変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
一般式(2):[Cn-12n-1COO]M
(式中、nは9~14の整数、Mはカチオンを表す。)
【0031】
本開示(24)は、パーフルオロビニルエーテルの変性量が0.02質量%以上、0.30質量%以下である本開示(23)の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0032】
本開示(25)は、リダクションレシオ1500における押出圧力が15~80MPaである本開示(23)又は(24)の変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【0033】
本開示(26)は、上記含フッ素化合物の含有量の合計が、上記変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーに対し25質量ppb未満である本開示(23)~(25)のいずれかとの任意の組み合わせの変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーである。
【発明の効果】
【0034】
本開示によれば、水分や不純物が低減されたPTFEファインパウダーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
PTFEファインパウダー中の水分や不純物によって、例えばクラックや欠陥が生じる等、均質な成形体を得る上での問題があった。また近年、持続性ある化学物質管理の一環として、PFOAをはじめとする低分子量含フッ素化合物の排出抑制も求められている。
鋭意検討した結果、極めて限定された条件下での処理により、水分や特定の不純物が低減されたPTFEファインパウダーが得られることが見出された。
【0036】
以下、本開示を具体的に説明する。
【0037】
本開示は、水分及び分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないPTFEファインパウダーを提供する。
本開示のPTFEファインパウダーは、水分及び分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないので、水分や当該含フッ素化合物が残留することによる不具合が発生しにくい。
【0038】
本開示のPTFEファインパウダーは、水分を実質的に含まない。水分を実質的に含まないとは、上記PTFEファインパウダーに対する水分含有量が0.010質量%以下であることを意味する。
上記水分含有量は、0.005質量%以下であることが好ましく、0.002質量%以下であることがより好ましい。
上記水分含有量は、以下の方法により測定する。
PTFEファインパウダーを150℃で2時間加熱した前後の質量を測定し、以下の式に従って算出する。試料を3回取り、それぞれ算出した後、平均を求め、当該平均値を採用する。
水分含有量(質量%)=[(加熱前のPTFEファインパウダーの質量(g))-(加熱後のPTFEファインパウダーの質量(g))]/(加熱前のPTFEファインパウダーの質量(g))×100
【0039】
本開示のPTFEファインパウダーは、分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まない。上記分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0040】
上記分子量1000以下の含フッ素化合物の量は、以下の方法により測定する。
試料を1g秤量し、メタノールを10g(12.6ml)加え、60分間の超音波処理を行ない、抽出液を得る。得られた抽出液を適宜窒素パージで濃縮し、濃縮後の抽出液中の含フッ素化合物をLC/MS/MS測定する。得られたLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる含フッ素化合物の構造式との一致を確認する。標準物質の5水準以上の含有量の水溶液を作製し、それぞれの含有量の水溶液のLC/MS分析を行ない、含有量と、その含有量に対するエリア面積と関係をプロットし、検量線を描く。上記検量線を用いて、抽出液中の含フッ素化合物のLC/MSクロマトグラムのエリア面積を、含フッ素化合物の含有量に換算する。
なお、この測定方法における検出下限は10質量ppbである。
【0041】
上記分子量1000以下の含フッ素化合物の量は、以下の方法によっても測定することができる。
試料を1g秤量し、メタノールを10g(12.6ml)加え、60℃で2時間、超音波処理を行ない、室温で静置した後、固形分を除き、抽出液を得る。得られた抽出液を適宜窒素パージで濃縮し、濃縮後の抽出液中の含フッ素化合物をLC/MS/MS測定する。得られたLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる含フッ素化合物の構造式との一致を確認する。濃度既知の含フッ素化合物のメタノール標準溶液を5水準調製し、液体クロマトグラフ質量分析計を用いて測定を行い、それぞれの濃度範囲において、メタノール標準溶液濃度とピークの積分値から一次近似を用い、検量線を作成する。上記検量線から、抽出液に含まれる含フッ素化合物の含有量を測定し、試料に含まれる含フッ素化合物の含有量を換算する。
なお、この測定方法における検出下限は1質量ppbである。
【0042】
上記分子量1000以下の含フッ素化合物としては、例えば、分子量1000g/mol以下の親水基を有する含フッ素化合物が挙げられる。上記含フッ素化合物の分子量は、800以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。
含フッ素界面活性剤の存在下で行う重合により得られる重合粒子には、PTFE以外に、含フッ素界面活性剤が含まれることが通常である。本明細書において、含フッ素界面活性剤は、重合時に使用されるものである。
上記分子量1000以下の含フッ素化合物は、重合の際に添加されていない化合物、例えば、重合途中で副生する化合物であってよい。
なお、上記分子量1000以下の含フッ素化合物は、アニオン性部とカチオン性部とを含む場合は、アニオン性部の分子量が1000以下であるフッ素を含む化合物を意味する。上記分子量1000以下の含フッ素化合物には、PTFEは含まれないものとする。
【0043】
上記親水基としては、例えば、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-COOM、-SOM(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。)等のアニオン性基が挙げられる。
【0044】
上記含フッ素界面活性剤としては、アニオン性部分の分子量が1000以下のフッ素を含む界面活性剤(アニオン性含フッ素界面活性剤)を用いることもできる。上記「アニオン性部分」は、上記含フッ素界面活性剤のカチオンを除く部分を意味する。例えば、F(CFn1COOMの場合には、「F(CFn1COO」の部分である。
上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(N):
n0-Rfn0-Y (N
(式中、Xn0は、H、Cl又は及びFである。Rfn0は、炭素数3~20で、鎖状、分枝鎖状又は環状で、一部又は全てのHがFにより置換されたアルキレン基であり、該アルキレン基は1つ以上のエーテル結合を含んでもよく、一部のHがClにより置換されていてもよい。Yはアニオン性基である。)で表される化合物が挙げられる。
のアニオン性基は、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-COOM、又は、-SOMであってよい。
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、例えば、Na、K又はLiである。
としては、H又はC1-10の有機基であってよく、H又はC1-4の有機基であってよく、H又はC1-4のアルキル基であってよい。
Mは、H、金属原子又はNR であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR であってよく、H、Na、K、Li又はNHであってよい。
上記Rfn0は、Hの50%以上がフッ素に置換されているものであってよい。
【0045】
上記含フッ素界面活性剤は、1種の含フッ素界面活性剤であってもよいし、2種以上の含フッ素界面活性剤を含有する混合物であってもよい。
【0046】
上記含フッ素界面活性剤としては、例えば、以下の式で表される化合物が挙げられる。含フッ素界面活性剤は、これらの化合物の混合物であってよい。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、及び、
【化4】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。Rは、H又は有機基である。)。
本開示のPTFEファインパウダーは、上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないことが好ましい。
【0047】
上記の各式において、Mは、H、金属原子又はNR であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR であってよく、H、Na、K、Li又はNHであってよい。
は、H又はC1-10の有機基であってよく、H又はC1-4の有機基であってよく、H又はC1-4のアルキル基であってよい。
【0048】
本開示のPTFEファインパウダーが上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないものであると、当該含フッ素化合物が残留することによる不具合の発生を抑制することができる。
上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、上記PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0049】
TFE、変性モノマー等のモノマーを重合することにより得られる乳化重合粒子には、PTFE以外に、モノマーの重合により生じた含フッ素化合物が含まれることがある。上記分子量1000以下の含フッ素化合物(あるいは分子量1000g/mol以下の親水基を有する含フッ素化合物)には、このような、モノマーの重合により生じた含フッ素化合物も包含される。
【0050】
乳化重合粒子の一実施形態においては、親水基を有する含フッ素化合物として、下記の一般式(1)で表される化合物を含有する。
一般式(1):[X-Rf11-Ai+
(式中、Xは、H、Cl、Br、F又はI、Rf11は、直鎖若しくは分枝鎖の部分フッ素化若しくは完全フッ素化脂肪族基、又は、少なくとも1個の酸素原子により中断された直鎖若しくは分枝鎖の部分フッ素化若しくは完全フッ素化脂肪族基、Aは酸基、Yi+は価数iを有するカチオン、iは1~3の整数を表す)
【0051】
乳化重合粒子の一実施形態においては、親水基を有する含フッ素化合物として、下記の一般式(2)で表される化合物を含有する。
一般式(2):[Cn-12n-1COO]M
(式中、nは9~14の整数、好ましくは9~12の整数、Mはカチオンを表す。)
【0052】
一般式(2)で表される化合物(パーフルオロアルカン酸)は、パーフルオロアルキルビニルエーテル等を変性モノマーとして用いた場合に、重合中に形成されることが知られている(国際公開第2019/161153号参照)。
【0053】
乳化重合粒子の一実施形態においては、親水基を有する含フッ素化合物として、下記の一般式(3)で表される化合物を含有する。
一般式(3):[R31-O-L-CO ]M
(式中、R31は、直鎖若しくは分枝鎖の部分フッ素化若しくは完全フッ素化脂肪族基、又は、少なくとも1個の酸素原子により中断された直鎖若しくは分枝鎖の部分フッ素化若しくは完全フッ素化脂肪族基、Lは、直鎖若しくは分枝鎖の非フッ素化、部分フッ素化又は完全フッ素化アルキレン基、Mはカチオンを表す。)
【0054】
乳化重合粒子の一実施形態においては、親水基を有する含フッ素化合物として、一般式(4)で示される化合物を含有する。
一般式(4):[H-(CFCO ]M
(式中、mは3~19の整数、Mはカチオンを表す。)
【0055】
上記式中のカチオンを構成するMは、上述したMと同様であってよい。
【0056】
本開示のPTFEファインパウダーは、上記一般式(2)で表される含フッ素化合物を実質的に含まないことが好ましく、上記一般式(1)~(4)で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないことがより好ましい。これにより、当該含フッ素化合物が残留することによる不具合の発生を抑制することができる。
上記一般式で表される含フッ素化合物を実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、上記PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0057】
本開示のPTFEファインパウダーは、炭化水素系界面活性剤を実質的に含まないことも好ましい。これにより、当該炭化水素系界面活性剤が残留することによる不具合の発生を抑制することができる。上記炭化水素系界面活性剤は、フッ素原子を含まないことが好ましい。
上記炭化水素系界面活性剤を実質的に含まないとは、上記炭化水素系界面活性剤の量が、PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記炭化水素系界面活性剤の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0058】
上記炭化水素系界面活性剤の量は、以下の方法により測定する。
試料を1g秤量し、メタノールを10g(12.6ml)加え、60分間の超音波処理を行ない、抽出液を得る。得られた抽出液を適宜窒素パージで濃縮し、濃縮後の抽出液中の炭化水素系界面活性剤をLC/MS/MS測定する。得られたLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる炭化水素系界面活性剤の構造式との一致を確認する。標準物質の5水準以上の含有量の水溶液を作製し、それぞれの含有量の水溶液のLC/MS分析を行ない、含有量と、その含有量に対するエリア面積と関係をプロットし、検量線を描く。上記検量線を用いて、抽出液中の炭化水素系界面活性剤のLC/MSクロマトグラムのエリア面積を、炭化水素系界面活性剤の含有量に換算する。
なお、この測定方法における検出下限は10質量ppbである。
【0059】
上記炭化水素系界面活性剤の量は、以下の方法によっても測定することができる。
試料を1g秤量し、メタノールを10g(12.6ml)加え、60℃で2時間、超音波処理を行ない、室温で静置した後、固形分を除き、抽出液を得る。得られた抽出液を適宜窒素パージで濃縮し、濃縮後の抽出液中の炭化水素系界面活性剤をLC/MS/MS測定する。得られたLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる炭化水素系界面活性剤の構造式との一致を確認する。濃度既知の炭化水素系界面活性剤のメタノール標準溶液を5水準調製し、液体クロマトグラフ質量分析計を用いて測定を行い、それぞれの濃度範囲において、メタノール標準溶液濃度とピークの積分値から一次近似を用い、検量線を作成する。上記検量線から、抽出液に含まれる炭化水素系界面活性剤の含有量を測定し、試料に含まれる炭化水素系界面活性剤の含有量を換算する。
なお、この測定方法における検出下限は1質量ppbである。
【0060】
本開示のPTFEファインパウダーは、一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)(但し、PTFEを除く。)を実質的に含まないことが好ましい。
CX=CX11(-CZ-A (I)
(式中、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Xは、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;R11は連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
重合体(I)は、重合単位(I)を2以上含む。
【0061】
としてのアニオン性基には、サルフェート基、カルボキシレート基等のアニオン性基に加えて、-COOHのような酸基、-COONHのような酸塩基等のアニオン性基を与える官能基が含まれる。上記アニオン性基は、サルフェート基、カルボキシレート基、ホスフェート基、ホスホネート基、スルホネート基、又は、-C(CFOM(式中、Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。)が好ましく、サルフェート基、カルボキシレート基、ホスフェート基、ホスホネート基又はスルホネート基がより好ましい。
【0062】
重合体(I)は、一般式(I)で表される1種の単量体に基づく重合単位(I)のみを含むものであってもよいし、一般式(I)で表される2種以上の単量体に基づく重合単位(I)を含むものであってもよい。
【0063】
11は、連結基である。上記連結基は、(m+1)価連結基であり、mが1の場合は二価連結基である。連結基は、単結合であってもよく、少なくとも1個の炭素原子を含むことが好ましく、炭素原子の数は、2以上であってよく、4以上であってよく、8以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってもよい。上限は限定されないが、例えば、100以下であってよく、50以下であってよい。
【0064】
上記連結基は、鎖状又は分岐鎖状、環状又は非環状構造、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってよく、所望により硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含み、所望によりエステル、アミド、スルホンアミド、カルボニル、カーボネート、ウレタン、尿素及びカルバメートからなる群から選択される1つ以上の官能基を含んでよい。上記連結基は、炭素原子を含まず、酸素、硫黄又は窒素等のカテナリーヘテロ原子であってもよい。
【0065】
上記重合体(I)の数平均分子量は、0.1×10以上であってよく、また、75.0×10以下であってよい。
【0066】
上記重合体(I)の重量平均分子量は、0.2×10以上であってよく、また、150.0×10以下であってよい。
【0067】
重合体(I)を実質的に含まないとは、重合体(I)の量が、PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
重合体(I)の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0068】
重合体(I)の量は、以下の方法により測定する。
試料を1g秤量し、メタノールを10g(12.6ml)加え、60分間の超音波処理を行ない、抽出液を得る。得られた抽出液を適宜窒素パージで濃縮し、濃縮後の抽出液中の重合体(I)をLC/MS/MS測定する。
なお、この測定方法における検出下限は10質量ppbである。
【0069】
重合体(I)の量は、以下の方法によっても測定することができる。
試料を1g秤量し、メタノールを10g(12.6ml)加え、60℃で2時間、超音波処理を行ない、室温で静置した後、固形分を除き、抽出液を得る。得られた抽出液を適宜窒素パージで濃縮し、濃縮後の抽出液中の重合体(I)をLC/MS/MS測定する。得られたLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる重合体(I)の構造式との一致を確認する。濃度既知の重合体(I)のメタノール標準溶液を5水準調製し、液体クロマトグラフ質量分析計を用いて測定を行い、それぞれの濃度範囲において、メタノール標準溶液濃度とピークの積分値から一次近似を用い、検量線を作成する。上記検量線から、抽出液に含まれる重合体(I)の含有量を測定し、試料に含まれる重合体(I)の含有量を換算する。
なお、この測定方法における検出下限は1質量ppbである。
【0070】
本開示のPTFEファインパウダーは、延伸性に優れる点で、標準比重(SSG)が2.200以下であることが好ましく、2.180以下であることがより好ましく、2.170以下であることが更に好ましく、2.160以下であることが更により好ましく、2.150以下であることが更により好ましく、2.145以下であることが殊更に好ましく、2.140以下であることが特に好ましい。
上記SSGは、また、2.130以上であることが好ましい。
上記SSGは、ASTM D 4895に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定する。
【0071】
本開示のPTFEファインパウダーは、平均一次粒子径が350nm以下であることが好ましく、330nm以下であることがより好ましく、320nm以下であることが更に好ましく、300nm以下であることが更により好ましく、280nm以下であることが殊更に好ましく、250nm以下であることが特に好ましく、また、100nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがより好ましく、170nm以上であることが更に好ましく、200nm以上であることが特に好ましい。
上記平均一次粒子径は、以下の方法により測定する。
PTFE水性分散液を水で固形分濃度0.15質量%になるまで希釈し、得られた希釈ラテックスの単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向を測定して決定した数基準長さ平均粒子径とを測定して、検量線を作成する。この検量線を用いて、各試料の550nmの投射光の実測透過率から数平均粒子径を決定し、平均一次粒子径とする。
【0072】
本開示のPTFEファインパウダーは、平均二次粒子径が350μm以上であってよく、400μm以上であることが好ましく、450μm以上であることがより好ましく、500μm以上であることが更に好ましく、550μm以上であることが更により好ましく、600μm以上であることが殊更に好ましく、また、1000μm以下であることが好ましく、900μm以下であることがより好ましく、800μm以下であることが更に好ましく、700μm以下であることが更により好ましい。
上記平均二次粒子径は、JIS K 6891に準拠して測定する。
【0073】
本開示のPTFEファインパウダーは、リダクションレシオ(RR)100における押出圧力が5MPa以上であってよく、10MPa以上であることが好ましく、12MPa以上であることがより好ましく、15MPa以上であることが更に好ましく、17MPa以上であることが更により好ましい。
RR100における押出圧力は、また、加工性が向上する点で、50MPa以下であることが好ましく、40MPa以下であることがより好ましく、30MPa以下であることが更に好ましく、25MPa以下であることが更により好ましく、23MPa以下であることが更により好ましく、21MPa以下であることが更により好ましく、20MPa以下であることが特に好ましい。
【0074】
本開示のPTFEファインパウダーは、RR1600における押出圧力が20MPa以上であることが好ましく、25MPa以上であることがより好ましく、30MPa以上であることが更に好ましい。
RR1600における押出圧力は、また、加工性が向上する点で、60MPa以下であることが好ましく、50MPa以下であることがより好ましい。
【0075】
RR100における押出圧力は、以下の方法により測定する。
PTFE粉末50gに押出助剤としての炭化水素油(商品名:アイソパーE、エクソン化学社製)10.25gをポリエチレン容器内で3分間混合する。室温(25±2℃)で、押出機のシリンダーに上記混合物を充填し、シリンダーに挿入したピストンに0.47MPaの負荷をかけて1分間保持する。次にラム速度18mm/minでオリフィスから押出する。オリフィスの断面積に対するシリンダーの断面積の比は100である。押出操作の後半において、圧力が平衡状態になったときの荷重(N)をシリンダー断面積で除した値を押出圧力(MPa)とする。
【0076】
RR1600における押出圧力は、以下の方法により測定する。
PTFE粉末50gに押出助剤としての炭化水素油(商品名:アイソパーG、エクソン化学社製)10.25gをポリエチレン容器内で3分間混合する。室温(25±2℃)で、押出機のシリンダーに上記混合物を充填し、シリンダーに挿入したピストンに1.2MPaの負荷をかけて1分間保持する。次にラム速度18mm/minでオリフィスから押出する。オリフィスの断面積に対するシリンダーの断面積の比は1600である。押出操作の後半において、圧力が平衡状態になったときの荷重(N)をシリンダー断面積で除した値を押出圧力(MPa)とする。
【0077】
本開示のPTFEファインパウダーは、伸張可能であることが好ましい。
伸張可能であるとは、以下の伸張試験において伸張体が得られることを意味する。
上記のRR100でのペースト押出により得られたビードを230℃で30分間乾燥し、潤滑剤を除去する。乾燥後のビードを適当な長さに切断し、300℃に加熱した炉に入れ、炉内で、伸張速度100%/秒で延伸する。
【0078】
本開示のPTFEファインパウダーは、延伸性に優れる点で、25倍に伸張可能であることが好ましい。
25倍に伸張可能であるか否かは、以下の伸張試験により確認することができる。
上記のRR100でのペースト押出により得られたビードを230℃で30分間乾燥し、潤滑剤を除去する。乾燥後のビードを適当な長さに切断し、300℃に加熱した炉に入れる。炉内で、伸張速度100%/秒で、伸張試験前のビード長さの25倍になるまで伸張する。伸張中に破断しなければ、25倍に伸張可能であると判定する。
【0079】
本開示のPTFEファインパウダーは、破断強度が20.0N以上であることが好ましく、25.0N以上であることがより好ましく、30.0N以上であることが更に好ましく、32.0N以上であることが更により好ましく、35.0N以上であることが更により好ましい。破断強度は高ければ高いほどよいが、100.0N以下であってよく、80.0N以下であってもよく、50.0N以下であってもよい。
上記破断強度は、下記方法で求めた値である。
上記の25倍の伸張試験で得られた伸張ビード(ビードをストレッチすることによって作製されたもの)について、5.0cmのゲージ長である可動ジョーにおいて挟んで固定し、25℃で300mm/分の速度で引っ張り試験を行い、破断した時の強度を破断強度として測定する。
【0080】
本開示のPTFEファインパウダーは、押出圧力が一層低く、破断強度が一層高くなる点、及び、耐熱性が一層向上する点で、熱不安定指数(TII)が40未満であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましく、5未満であることが特に好ましい。
上記熱不安定指数は、また、-10以上であることが好ましく、0以上であることがより好ましい。
上記熱不安定指数は、ASTM D 4895に準拠して測定する。
【0081】
本開示のPTFEファインパウダーは、取り扱い性に優れる点で、平均アスペクト比が2.0以下であってよく、1.8以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましく、1.6以下であることが更に好ましく、1.5以下であることが更により好ましく、1.4以下であることが更により好ましく、1.3以下であることが殊更に好ましく、1.2以下であることが特に好ましく、1.1以下であることが最も好ましい。上記平均アスペクト比は、また、1.0以上であってよい。
上記平均アスペクト比は、PTFE粉末、又は、固形分濃度が約1質量%となるように希釈したPTFE水性分散液を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した200個以上の粒子について画像処理を行い、その長径と短径の比の平均より求める。
【0082】
本開示のPTFEファインパウダーは、取り扱い性に優れる点で、見掛密度が0.40g/ml以上であることが好ましく、0.43g/ml以上であることがより好ましく、0.45g/ml以上であることが更に好ましく、0.48g/ml以上であることが更により好ましく、0.50g/ml以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、0.70g/mlであっても構わない。
上記見掛密度は、JIS K 6892に準拠して測定する。
【0083】
本開示のPTFEファインパウダーは、非溶融二次加工性を有することが好ましい。上記非溶融二次加工性とは、ASTM D-1238及びD-2116に準拠して、融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質、言い換えると、溶融温度領域でも容易に流動しない性質を意味する。
【0084】
上記PTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体であってもよいし、TFEに基づく重合単位(TFE単位)と、変性モノマーに基づく重合単位(以下「変性モノマー単位」とも記載する)とを含む変性PTFEであってもよい。上記変性PTFEは、99.0質量%以上のTFE単位と、1.0質量%以下の変性モノマー単位とを含むものであってよい。また、上記変性PTFEは、TFE単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
上記PTFEとしては、上記変性PTFEが好ましい。
【0085】
上記変性PTFEは、延伸性が向上する点で、変性モノマー単位の含有量が全重合単位に対し0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.80質量%がより好ましく、0.50質量%が更に好ましく、0.40質量%が更により好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が更により好ましく、0.15質量%が更により好ましく、0.10質量%が更により好ましく、0.08質量%が更により好ましく、0.05質量%が特に好ましく、0.03質量%が最も好ましい。
本明細書において、上記変性モノマー単位とは、PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味する。
【0086】
上述した各重合単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0087】
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン等のパーハロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロアリルエーテル;パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール〔PDD〕等のビニルヘテロ環状体;(パーフルオロアルキル)エチレン、エチレン等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0088】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(A):
CF=CF-ORf (A)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0089】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(A)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0090】
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0091】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(A)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
【0092】
【化5】
【0093】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
【0094】
【化6】
【0095】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0096】
(パーフルオロアルキル)エチレン(PFAE)としては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン(PFBE)、(パーフルオロヘキシル)エチレン等が挙げられる。
【0097】
パーフルオロアリルエーテルとしては、例えば、一般式(B):
CF=CF-CF-ORf (B)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。
【0098】
上記Rfは、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基又は炭素数1~10のパーフルオロアルコキシアルキル基が好ましい。上記パーフルオロアリルエーテルとしては、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF=CF-CF-O-CFCFCFが更に好ましい。
【0099】
上記変性モノマーとしては、延伸性が向上する点で、PAVE及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0100】
上記変性モノマーとしては、また、押出圧力が一層低く、破断強度が一層高くなる点で、VDF、HFP、CTFE及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、VDF、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
また、耐熱性が向上する点で、上記PTFEがTFE単位、VDF単位及びHFP単位を含み、VDF単位及びHFP単位の合計量が、全重合単位に対し1.0質量%以下であることは、好適な態様の1つである。
【0101】
上記PTFEは、コアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造を有するPTFEとしては、例えば、粒子中に高分子量のPTFEのコアと、より低分子量のPTFE又は変性のPTFEのシェルとを含む変性PTFEが挙げられる。このような変性PTFEとしては、例えば、特表2005-527652号公報に記載されるPTFEが挙げられる。
【0102】
上記PTFEは、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線において、333~347℃の範囲に1つ以上の吸熱ピークが現れ、上記融解熱曲線から算出される290~350℃の融解熱量が62mJ/mg以上であることが好ましい。
【0103】
本開示のPTFEファインパウダーは、有機溶剤を実質的に含まないことが好ましい。有機溶剤を実質的に含まないとは、上記PTFEファインパウダーに対する有機溶剤含有量が5質量%以下であることを意味する。
上記有機溶剤含有量は、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、0.01質量%以下であることが更により好ましく、0.001質量%以下であることが特に好ましい。
【0104】
本開示のPTFEファインパウダーは、例えば、PTFEの水性分散液を準備する工程(A)、上記水性分散液を凝析してPTFEの湿潤粉末を得る工程(B)、及び、上記湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置し、130~300℃の温度で2時間以上の時間熱処理して、PTFEファインパウダーを得る工程(C)を含む製造方法によって好適に製造することができる。
本開示は、上記製造方法も提供する。
【0105】
工程(A)における上記水性分散液は、例えば、乳化重合によって製造することができる。
【0106】
上記乳化重合は公知の方法により行うことができる。例えば、アニオン性含フッ素界面活性剤及び重合開始剤の存在下、上記PTFEを構成するのに必要なモノマーの乳化重合を水性媒体中で行うことにより、上記PTFEの粒子(一次粒子)を含む水性分散液が得られる。上記乳化重合において、必要に応じて、連鎖移動剤、緩衝剤、pH調整剤、安定化助剤、分散安定剤、ラジカル捕捉剤等を使用してもよい。
【0107】
上記水性分散液は、上述した含フッ素化合物の少なくとも1種を含むものであってよい。
【0108】
上記工程(A)は、TFE及び必要に応じて変性モノマーを乳化重合する工程であってもよい。
【0109】
上記乳化重合は、例えば、アニオン性含フッ素界面活性剤及び重合開始剤の存在下、水性媒体中で行うことができる。
上記乳化重合は、重合反応器に、水性媒体、上記アニオン性含フッ素界面活性剤、モノマー及び必要に応じて他の添加剤を仕込み、反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に所定量の重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行うことができる。重合反応開始後に、目的に応じて、モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤及び上記界面活性剤等を追加添加してもよい。
【0110】
上記重合開始剤としては、重合温度範囲でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性及び/又は水溶性の重合開始剤を使用することができる。更に、還元剤等と組み合わせてレドックスとして重合を開始することもできる。上記重合開始剤の濃度は、モノマーの種類、目的とするPTFEの分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0111】
上記重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、又は水溶性ラジカル重合開始剤を使用できる。
【0112】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネート等のジアルキルパーオキシカーボネート類、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類、ジt-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類等が、また、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフロロ(又はフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類等が代表的なものとして挙げられる。
【0113】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、例えば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸等のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t-ブチルパーマレエート、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド等が挙げられる。なかでも、過硫酸アンモニウム、ジコハク酸パーオキサイドが好ましい。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤も併せて含んでもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
【0114】
水溶性ラジカル重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(例えば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、又は逐次的に、又は連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱で除熱を行いながら、反応温度を上昇させてもよい範囲であり、より好ましい上限は、装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。
上述した各物性が容易に得られる点で、重合開始剤の添加量は、水性媒体に対して0.1ppm以上に相当する量が好ましく、1.0ppm以上に相当する量がより好ましく、また、100ppm以下に相当する量が好ましく、10ppm以下に相当する量がより好ましい。
【0115】
例えば、30℃以下の低温で重合を実施する場合等では、重合開始剤として、酸化剤と還元剤を組み合わせるレドックス開始剤を用いるのが好ましい。酸化剤としては、過硫酸塩、有機過酸化物、過マンガン酸カリウム、三酢酸マンガン、セリウム硝酸アンモニウム、臭素酸塩等が挙げられる。還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤の分解速度を上げるため、レドックス開始剤の組み合わせには、銅塩、鉄塩を加えることも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
【0116】
上記レドックス開始剤としては、酸化剤が、過マンガン酸又はその塩、過硫酸塩、三酢酸マンガン、セリウム(IV)塩、若しくは、臭素酸又はその塩であり、還元剤が、ジカルボン酸又はその塩、若しくは、ジイミンであることが好ましい。
より好ましくは、酸化剤が、過マンガン酸又はその塩、過硫酸塩、若しくは、臭素酸又はその塩であり、還元剤が、ジカルボン酸又はその塩である。
【0117】
上記レドックス開始剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウム、三酢酸マンガン/シュウ酸、三酢酸マンガン/シュウ酸アンモニウム、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸アンモニウム等の組合せが挙げられる。
レドックス開始剤を用いる場合は、酸化剤又は還元剤のいずれかをあらかじめ重合槽に仕込み、ついでもう一方を連続的又は断続的に加えて重合を開始させてもよい。例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウムを用いる場合、重合槽にシュウ酸アンモニウムを仕込み、そこへ過マンガン酸カリウムを連続的に添加することが好ましい。
なお、本明細書のレドックス開始剤において、「過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウム」と記載した場合、過マンガン酸カリウムとシュウ酸アンモニウムとの組合せを意味する。他の化合物においても同じである。
【0118】
上記レドックス開始剤は特に、塩である酸化剤と塩である還元剤との組み合わせであることが好ましい。
例えば、上記塩である酸化剤は、過硫酸塩、過マンガン酸塩、セリウム(IV)塩及び臭素酸塩からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、過マンガン酸塩が更に好ましく、過マンガン酸カリウムが特に好ましい。
また、上記塩である還元剤は、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩及び臭素酸塩からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、シュウ酸塩が更に好ましく、シュウ酸アンモニウムが特に好ましい。
【0119】
上記レドックス開始剤として具体的には、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウム、臭素酸カリウム/亜硫酸アンモニウム、三酢酸マンガン/シュウ酸アンモニウム、及び、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウム、臭素酸カリウム/亜硫酸アンモニウム、及び、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、過マンガン酸カリウム/シュウ酸であることが更に好ましい。
【0120】
レドックス開始剤を使用する場合、重合初期に酸化剤と還元剤を一括で添加してもよいし、重合初期に還元剤を一括で添加し、酸化剤を連続して添加してもよいし、重合初期に酸化剤を一括で添加し、還元剤を連続して添加してもよいし、酸化剤と還元剤の両方を連続して添加してもよい。
【0121】
上記レドックス重合開始剤は、重合初期に一方を添加し、残る一方を連続的に添加する場合、SSGが低いPTFEを得る点で、徐々に添加する速度を減速させることが好ましく、更に重合途中で中止することが好ましく、該添加中止時期としては、重合反応に消費される全TFEの20~40質量%が消費される前が好ましい。
【0122】
重合開始剤としてレドックス開始剤を使用する場合、水性媒体に対して、酸化剤の添加量が0.1ppm以上であることが好ましく、0.3ppm以上であることがより好ましく、0.5ppm以上であることが更に好ましく、1ppm以上であることが更により好ましく、5ppm以上であることが特に好ましく、10ppm以上であることが殊更に好ましく、また、10000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることが更に好ましく、10ppm以下であることが更により好ましい。還元剤の添加量は0.1ppm以上であることが好ましく、1.0ppm以上であることがより好ましく、3ppm以上であることが更に好ましく、5ppm以上であることが更により好ましく、10ppm以上であることが特に好ましく、また、10000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることが更に好ましく、10ppm以下であることが更により好ましい。
また、上記乳化重合でレドックス開始剤を用いる場合、重合温度は、100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましく、90℃以下が更に好ましい。また、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましい。
【0123】
上記重合開始剤としては、上述した各物性が容易に得られる点で、水溶性ラジカル重合開始剤、及び、レドックス開始剤が好ましい。
【0124】
上記水性媒体は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
【0125】
上記乳化重合において、必要に応じて、核形成剤、連鎖移動剤、緩衝剤、pH調整剤、安定化助剤、分散安定剤、ラジカル捕捉剤、重合開始剤の分解剤、ジカルボン酸等を使用してもよい。
【0126】
上記乳化重合は、粒子径を調整する目的で、核形成剤を添加して行うことが好ましい。上記核形成剤は、重合反応の開始前に添加することが好ましい。
上記核形成剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、フルオロポリエーテル、非イオン性界面活性剤、及び、連鎖移動剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、非イオン性界面活性剤であることがより好ましい。
【0127】
上記フルオロポリエーテルとしては、例えば、パーフルオロポリエーテル(PFPE)酸又はその塩が挙げられる。
上記パーフルオロポリエーテル(PFPE)酸又はその塩は、分子の主鎖中の酸素原子が、1~3個の炭素原子を有する飽和フッ化炭素基によって隔てられる任意の鎖構造を有してよい。また、2種以上のフッ化炭素基が、分子中に存在してよい。代表的な構造は、下式に表される繰り返し単位を有する:
(-CFCF-CF-O-)
(-CF-CF-CF-O-)
(-CF-CF-O-)-(-CF-O-)
(-CF-CFCF-O-)-(-CF-O-)
【0128】
これらの構造は、Kasaiによって、J.Appl.Polymer Sci.57,797(1995)に記載されている。この文献に開示されているように、上記PFPE酸又はその塩は、一方の末端又は両方の末端にカルボン酸基又はその塩を有してよい。上記PFPE酸又はその塩は、また、一方の末端又は両方の末端に、スルホン酸、ホスホン酸基又はこれらの塩を有してよい。また、上記PFPE酸又はその塩は、各末端に異なる基を有してよい。単官能性のPFPEについては、分子の他方の末端は、通常、過フッ素化されているが、水素又は塩素原子を含有してよい。上記PFPE酸又はその塩は、少なくとも2つのエーテル酸素、好ましくは少なくとも4つのエーテル酸素、更により好ましくは少なくとも6つのエーテル酸素を有する。好ましくは、エーテル酸素を隔てるフッ化炭素基の少なくとも1つ、より好ましくは、このようなフッ化炭素基の少なくとも2つは、2又は3個の炭素原子を有する。更により好ましくは、エーテル酸素を隔てるフッ化炭素基の少なくとも50%は、2又は3個の炭素原子を有する。また、好ましくは、上記PFPE酸又はその塩は、合計で少なくとも15個の炭素原子を有し、例えば、上記の繰返し単位構造中のn又はn+mの好ましい最小値は、少なくとも5である。1つの末端又は両方の末端に酸基を有する2つ以上の上記PFPE酸又はその塩が、本開示の製造方法に使用され得る。上記PFPE酸又はその塩は、好ましくは、6000g/モル未満の数平均分子量を有する。
【0129】
PTFEを一層高分子量化することができ、延伸性を向上させることができる点で、上記乳化重合は、ラジカル捕捉剤又は重合開始剤の分解剤を添加して行うことが好ましい。上記ラジカル捕捉剤又は重合開始剤の分解剤は、重合反応の開始後、好ましくは、重合反応に消費される全TFEの10質量%以上、好ましくは20質量%以上が重合される前に添加することが好ましく、また、50質量%以下、好ましくは40質量%以下が重合される前に添加することが好ましい。後述する脱圧及び再昇圧を行う場合は、その後に添加することが好ましい。
【0130】
上記ラジカル捕捉剤としては、重合系内の遊離基に付加もしくは連鎖移動した後に再開始能力を有しない化合物が用いられる。具体的には、一次ラジカルまたは成長ラジカルと容易に連鎖移動反応を起こし、その後単量体と反応しない安定ラジカルを生成するか、あるいは、一次ラジカルまたは成長ラジカルと容易に付加反応を起こして安定ラジカルを生成するような機能を有する化合物が用いられる。
一般的に連鎖移動剤と呼ばれるものは、その活性は連鎖移動定数と再開始効率で特徴づけられるが連鎖移動剤の中でも再開始効率がほとんど0%のものがラジカル捕捉剤と称される。
上記ラジカル捕捉剤は、例えば、重合温度におけるTFEとの連鎖移動定数が重合速度定数より大きく、かつ、再開始効率が実質的にゼロ%の化合物ということもできる。「再開始効率が実質的にゼロ%」とは、発生したラジカルがラジカル捕捉剤を安定ラジカルにすることを意味する。
好ましくは、重合温度におけるTFEとの連鎖移動定数(Cs)(=連鎖移動速度定数(kc)/重合速度定数(kp))が0.1より大きい化合物であり、上記化合物は、連鎖移動定数(Cs)が0.5以上であることがより好ましく、1.0以上であることが更に好ましく、5.0以上であることが更により好ましく、10以上であることが特に好ましい。
【0131】
上記ラジカル捕捉剤としては、例えば、芳香族ヒドロキシ化合物、芳香族アミン類、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、キノン化合物、テルペン、チオシアン酸塩、及び、塩化第二銅(CuCl)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
芳香族ヒドロキシ化合物としては、非置換フェノール、多価フェノール、サリチル酸、m-又はp-のサリチル酸、没食子酸、ナフトール等が挙げられる。
上記非置換フェノールとしては、о-、m-又はp-のニトロフェノール、о-、m-又はp-のアミノフェノール、p-ニトロソフェノール等が挙げられる。多価フェノールとしては、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシン、ナフトレゾルシノール等が挙げられる。
芳香族アミン類としては、о-、m-又はp-のフェニレンジアミン、ベンジジン等が挙げられる。
上記キノン化合物としては、о-、m-又はp-のベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、アリザリン等が挙げられる。
チオシアン酸塩としては、チオシアン酸アンモン(NHSCN)、チオシアン酸カリ(KSCN)、チオシアン酸ソーダ(NaSCN)等が挙げられる。
上記ラジカル捕捉剤としては、なかでも、芳香族ヒドロキシ化合物が好ましく、非置換フェノール又は多価フェノールがより好ましく、ハイドロキノンが更に好ましい。
【0132】
上記ラジカル捕捉剤の添加量は、標準比重を適度に小さくする観点から、重合開始剤濃度の3~500%(モル基準)に相当する量が好ましい。より好ましい下限は10%(モル基準)であり、更に好ましくは15%(モル基準)である。より好ましい上限は400%(モル基準)であり、更に好ましくは300%(モル基準)である。
【0133】
上記重合開始剤の分解剤としては、使用する重合開始剤を分解できる化合物であればよく、例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、ジイミン塩、シュウ酸、シュウ酸塩、銅塩、及び鉄塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
上記分解剤の添加量は、標準比重を適度に小さくする観点から、開始剤濃度の3~500%(モル基準)に相当する量が好ましい。より好ましい下限は10%(モル基準)であり、更に好ましくは15%(モル基準)である。より好ましい上限は400%(モル基準)であり、更に好ましくは300%(モル基準)である。
【0134】
上記乳化重合は、重合中に生じる凝固物の量を減少させるために水性媒体に対して5~500ppmのジカルボン酸の存在下に行ってもよく、10~200ppmのジカルボン酸の存在下に行うことが好ましい。上記ジカルボン酸が水性媒体に対して少な過ぎると、充分な効果が得られないおそれがあり、多過ぎると、連鎖移動反応が起こり、得られるポリマーが低分子量のものとなるおそれがある。上記ジカルボン酸は、150ppm以下であることがより好ましい。上記ジカルボン酸は、重合反応の開始前に添加してもよいし、重合途中に添加してもよい。
【0135】
上記ジカルボン酸としては、例えば、一般式:HOOCRCOOH(式中、Rは炭素数1~5のアルキレン基を表す。)で表されるものが好ましく、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸がより好ましく、コハク酸が更に好ましい。
【0136】
上記乳化重合において、重合温度、重合圧力は、使用するモノマーの種類、目的とするPTFEの分子量、反応速度によって適宜決定される。通常、重合温度は、5~150℃であり、10℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。また、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。
重合圧力は、0.05~10MPaGである。重合圧力は、0.3MPaG以上がより好ましく、0.5MPaG以上が更に好ましい。また、5.0MPaG以下がより好ましく、3.0MPaG以下が更に好ましい。
【0137】
変性モノマーとしてVDFを用いる場合、上記乳化重合においては、上述した各物性が容易に得られる点で、重合開始時(開始剤添加時)の反応器内のガス中のVDF濃度を0.001モル%以上とすることが好ましく、0.01モル%以上とすることがより好ましい。上記濃度は、また、15モル%以下であってよく、6.0モル%以下とすることが好ましく、5.0モル%以下とすることが更に好ましく、3.0モル%以下とすることが更により好ましく、1.0モル%以下とすることが特に好ましい。上記VDF濃度は、その後、重合反応の終了まで維持してもよいし、途中で脱圧を実施しても構わない。VDFは重合開始前に一括で仕込むのが好ましいが、一部を重合開始後に連続的又は断続的に添加してもよい。
【0138】
変性モノマーとしてVDFを用いる場合、上記乳化重合においては、VDFを重合容器に投入した後、重合が終了するまで、脱圧を行わないことが好ましい。これにより、重合の最終までVDFを系中に残すことでき、得られるPTFEの破断強度を一層高くすることができる。
【0139】
変性モノマーとしてHFPを用いる場合、上記乳化重合においては、上述した各物性が容易に得られる点で、重合開始時(開始剤添加時)の反応器内のガス中HFP濃度を0.01~3.0モル%とすることが好ましい。更に、重合反応に消費される全TFEの40質量%が重合される時点での反応器内のガス中HFP濃度が0モル%より大きく0.2モル%以下であることが好ましい。上記HFP濃度は、その後、重合反応の終了まで維持することが好ましい。HFPは重合開始前に一括で仕込んでもよく、一部を重合開始前に仕込み、重合開始後に連続的又は断続的に添加してもよい。HFPが重合反応の最後まで残るようにすることで、得られるPTFEの破断強度が高いにも関わらず、押出圧力が低下する。
【0140】
変性モノマーとしてHFPを用いる場合、上記乳化重合においては、得られるPTFEの破断強度が一層向上する点で、重合反応に消費される全TFEの5~40質量%が重合される前に脱圧し、その後TFEのみにより再昇圧することが好ましい。
上記脱圧は、反応器内の圧力が0.2MPaG以下となるように行うことが好ましく、0.1MPaG以下となるように行うことがより好ましく、0.05MPaG以下となるように行うことが更に好ましい。また、0.0MPaG以上となるように行うことが好ましい。
また、上記脱圧、再昇圧は複数回行ってもよい。脱圧は真空ポンプを用いて減圧下まで行ってもよい。
【0141】
変性モノマーとしてCTFEを用いる場合、上記乳化重合においては、上述した各物性が容易に得られる点で、重合開始時(開始剤添加時)の反応器内のガス中のCTFE濃度を0.001モル%以上とすることが好ましく、0.01モル%以上とすることがより好ましい。上記濃度は、また、3.0モル%以下とすることが好ましく、1.0モル%以下とすることがより好ましい。上記CTFE濃度は、その後、重合反応の終了まで維持してもよいし、途中で脱圧を実施しても構わない。CTFEは重合開始前に一括で仕込むのが好ましいが、一部を重合開始後に連続的又は断続的に添加してもよい。
【0142】
変性モノマーとしてCTFEを用いる場合、上記乳化重合においては、CTFEを重合容器に投入した後、重合が終了するまで、脱圧を行わないことが好ましい。これにより、重合の最終までCTFEを系中に残すことでき、得られるPTFEの破断強度を一層高くすることができる。
【0143】
工程(B)における凝析は、公知の方法により行うことができる。
【0144】
工程(C)においては、工程(B)で得られた湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置し、130~300℃の温度で2時間以上の時間熱処理する。このように極めて限定された条件下で熱処理することにより、上記分子量1000以下の含フッ素化合物を水とともに効率よく除去することができ、当該含フッ素化合物及び水分の含有量を上述の範囲内とすることができる。
【0145】
工程(C)における熱処理の温度は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、140℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましく、180℃以上であることが更により好ましく、200℃以上であることが更に好ましく、220℃以上であることが特に好ましく、また、280℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましい。
【0146】
工程(C)における熱処理の時間は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、5時間以上であることが好ましく、10時間以上であることがより好ましく、15時間以上であることが更に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、100時間であることが好ましく、50時間であることがより好ましく、30時間であることが更に好ましい。
【0147】
工程(C)における風速は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、0.01m/s以上であることが好ましく、0.03m/s以上であることがより好ましく、0.05m/s以上であることが更に好ましく、0.1m/s以上であることが更により好ましい。また、粉末の飛び散りを抑制する観点で、50m/s以下が好ましく、30m/s以下がより好ましく、10m/s以下が更に好ましい。
【0148】
工程(C)における熱処理は、電気炉又はスチーム炉を用いて行うことができる。例えば、並行流箱型電気炉、通気式箱型電気炉、通気式コンベア式電気炉、バンド電気炉、輻射式コンベア式電気炉、流動層電気炉、真空電気炉、攪拌式電気炉、気流式電気炉、熱風循環式電気炉等の電気炉、又は、上記に対応するスチーム炉(上記各電気炉の装置名における電気炉をスチーム炉に読み替えた装置)を用いて行うことができる。水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、並行流箱型電気炉、通気式箱型電気炉、通気式コンベア式電気炉、バンド電気炉、流動層電気炉、熱風循環式電気炉、上記に対応するスチーム炉(上記各電気炉の装置名における電気炉をスチーム炉に読み替えた装置)が好ましい。
【0149】
工程(C)における熱処理は、上記湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置して行う。上記底面及び/又は側面に通気性のある容器は、上記熱処理温度に耐え得るものであればよいが、ステンレス等の金属製であることが好ましい。
上記底面及び/又は側面に通気性のある容器としては、底面及び/又は側面に通気性を有するトレー(バット)が好ましく、底面及び/又は側面がメッシュで作製されたトレー(メッシュトレー)が更に好ましい。
上記メッシュは、織網とパンチングメタルのいずれかであることが好ましい。
上記メッシュの目開きは、2000μm以下(ASTM規格の10メッシュ以上)が好ましく、595μm以下(30メッシュ以上)がより好ましく、297μm以下(50メッシュ以上)が更に好ましく、177μm以下(80メッシュ以上)が更により好ましく、149μm以下(100メッシュ以上)が殊更に好ましく、74μm以下(200メッシュ以上)が特に好ましい。また、25μm以上(500メッシュ以下)が好ましい。
上記メッシュが織網である場合の織り方としては、例えば、平織、綾織、平畳織、綾畳織が挙げられる。
上記メッシュがパンチングメタルである場合の開孔率は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましい。また、95%以下が好ましい。
【0150】
工程(C)において、上記湿潤粉末の配置量は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、10g/cm以下であることが好ましく、8g/cm以下であることがより好ましく、5g/cm以下であることが更に好ましく、3g/cm以下であることが特に好ましく、また、0.01g/cm以上であることが好ましく、0.05g/cm以上であることがより好ましく、0.1g/cm以上であることが更に好ましい。
【0151】
工程(C)において熱処理する湿潤粉末の水分含有量は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、上記湿潤粉末に対し10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、また、150質量%以下であることが好ましく、100質量%以下であることがより好ましい。
【0152】
本開示のPTFEファインパウダーは、従来公知のPTFEファインパウダーと比べても何ら劣ることのない優れた物性を有し、従来公知のPTFEファインパウダーと同じ方法で使用でき、同じ用途に使用することができる。
【0153】
本開示のPTFEファインパウダーは、延伸体の原料として特に有用である。本開示のPTFEファインパウダーを用いた延伸体も、本開示の好適な態様である。
【0154】
上記延伸体は、本開示のPTFEファインパウダーを延伸することで得ることができる。
【0155】
上記延伸体は、その形状が膜、チューブ、繊維、ロッドであることも好ましい。
【0156】
上記延伸体が膜(延伸膜又は多孔膜)である場合、公知のPTFE延伸方法によって延伸することができる。
好ましくは、シート状又は棒状のペースト押出物を押出方向にロール延伸することで、一軸延伸膜を得ることができる。
更に、テンター等により幅方向に延伸して、二軸延伸膜も得ることができる。
延伸前に半焼成処理を行うことも好ましい。
【0157】
上記延伸体は、高い空孔率を持つ多孔体とすることができ、エアフィルター、薬液フィルター等の各種精密濾過フィルターの濾材、高分子電解質膜の支持材等として好適に利用できる。
また、繊維分野、医療分野、エレクトロケミカル分野、シール材分野、空気濾過分野、換気/内圧調整分野、液濾過分野、一般消費材分野等で使用する製品の素材としても有用である。
以下に、具体的な用途を例示する。
【0158】
エレクトロケミカル分野
誘電材料プリプレグ、EMI遮蔽材料、伝熱材料等。より詳細には、プリント配線基板、電磁遮蔽シールド材、絶縁伝熱材料、絶縁材料等。
シール材分野
ガスケット、パッキン、ポンプダイアフラム、ポンプチューブ、航空機用シール材等。
【0159】
空気濾過分野
ULPAフィルター(半導体製造用)、HEPAフィルター(病院・半導体製造用)、円筒カートリッジフィルター(産業用)、バグフィルター(産業用)、耐熱バグフィルター(排ガス処理用)、耐熱プリーツフィルター(排ガス処理用)、SINBRANフィルター(産業用)、触媒フィルター(排ガス処理用)、吸着剤付フィルター(HDD組込み)、吸着剤付ベントフィルター(HDD組込み用)、ベントフィルター(HDD組込み用他)、掃除機用フィルター(掃除機用)、汎用複層フェルト材、GT用カートリッジフィルター(GT向け互換品用)、クーリングフィルター(電子機器筐体用)等。
【0160】
換気/内圧調整分野
凍結乾燥用の容器等の凍結乾燥用材料、電子回路やランプ向けの自動車用換気材料、容器キャップ向け等の容器用途、タブレット端末や携帯電話端末等の小型端末を含む電子機器向け等の保護換気用途、医療用換気用途等。
【0161】
液濾過分野
半導体液ろ過フィルター(半導体製造用)、親水性PTFEフィルター(半導体製造用)、化学薬品向けフィルター(薬液処理用)、純水製造ライン用フィルター(純水製造用)、逆洗型液ろ過フィルター(産業排水処理用)等。
【0162】
一般消費材分野
衣類、ケーブルガイド(バイク向け可動ワイヤ)、バイク用衣服、キャストライナー(医療サポーター)、掃除機フィルター、バグパイプ(楽器)、ケーブル(ギター用信号ケーブル等)、弦(弦楽器用)等。
【0163】
繊維分野
PTFE繊維(繊維材料)、ミシン糸(テキスタイル)、織糸(テキスタイル)、ロープ等。
【0164】
医療分野
体内埋設物(延伸品)、人工血管、カテーテル、一般手術(組織補強材料)、頭頸部製品(硬膜代替)、口内健康(組織再生医療)、整形外科(包帯)等。
【0165】
本開示のPTFEファインパウダーは、防塵用添加剤、ドリップ防止剤、電池用結着剤等の各種添加剤、塗装用途、ガラスクロス含浸加工用途にも好適に利用できる。
また、本開示のPTFEファインパウダーを含む水性分散液は、例えば、調理用品の表面コーティング剤、ガラス繊維、カーボン繊維、ケブラー繊維等に含浸して屋根材等の含浸体の製造に用いられ、また、高周波プリント基板、搬送用ベルト、パッキン等の用途において、被塗装物上に塗布し焼成することよりなるフィルム形成に用いられて、種々の用途に適用できる。
【0166】
本開示はまた、延伸可能であり、標準比重が2.160以下であり、水分及び分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないPTFEファインパウダー(以下「PTFEファインパウダー(1a)」ともいう)を提供する。PTFEファインパウダー(1a)は、水分及び分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないので、水分や当該含フッ素化合物が残留することによる不具合が発生しにくい。
【0167】
本開示はまた、延伸可能であり、標準比重が2.160以下であり、水分及び下記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないPTFEファインパウダー(以下「PTFEファインパウダー(1b)」ともいう)を提供する(以下「PTFEファインパウダー(1a)」と「PTFEファインパウダー(1b)」を合わせて「PTFEファインパウダー(1)」ともいう)。PTFEファインパウダー(1b)は、水分及び下記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないので、水分や当該含フッ素化合物が残留することによる不具合が発生しにくい。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、及び、
【化7】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。Rは、H又は有機基である。)。
【0168】
PTFEファインパウダー(1)は、水分を実質的に含まないので、押出圧力が安定しており、延伸強度が安定した一軸延伸体や、膜の均質性が高く、外観が良好であり、圧損、捕集効率等の膜性能が安定した二軸延伸膜を製造することができる。
【0169】
PTFEファインパウダー(1)は、延伸可能である。
PTFEファインパウダー(1)について、延伸可能であるとは、以下の延伸試験において延伸体が得られることを意味する。
下記のペースト押出により得られたビードを230℃で30分加熱することにより、潤滑剤をビードから除去する。次に、ビード(押出成形体)を適当な長さに切断し、クランプ間隔が2.0インチ(51mm)の間隔となるよう、各末端をクランプに固定し、空気循環炉中で300℃に加熱した。次いでクランプを所望の延伸率(総延伸率)に相当する分離距離となるまで所望の速度(延伸速度)で離し、延伸試験を実施する。この延伸方法は、押出スピード(84cm/分でなく51cm/分)が異なることを除いて、本質的に米国特許第4,576,869号明細書に開示された方法に従う。『延伸率』とは、延伸による長さの増加であり、通常元の長さと関連して表される。上記作製方法において、上記延伸速度は、100%/秒であり、上記総延伸率は2400%である。
【0170】
上記ペースト押出は、下記方法で行う。
PTFE粉末100gに、潤滑剤(商品名:アイソパーH(登録商標)、エクソン社製)21.7gを添加し、室温にて3分間混合してPTFEファインパウダー混合物を得る。次いで、得られたPTFEファインパウダー混合物を、押出前少なくとも1時間、室温(25℃)に放置した後にオリフィス(直径2.5mm、ランド長11mm、導入角30°)を通して、室温で100:1の減速比(ダイスの入り口の断面積と出口の断面積の比)でペースト押出し、均一なビード(beading;押出成形体)を得る。押出スピード、すなわち、ラムスピードは、20インチ/分(51cm/分)とする。
【0171】
PTFEファインパウダー(1)は、標準比重(SSG)が2.160以下である。上記SSGは、2.150以下であることが好ましく、2.145以下であることがより好ましく、2.140以下であることが更に好ましい。
上記SSGは、また、2.130以上であることが好ましい。
【0172】
PTFEファインパウダー(1)は、水分を実質的に含まない。水分を実質的に含まないとは、上記PTFEファインパウダーに対する水分含有量が0.010質量%以下であることを意味する。
上記水分含有量は、0.008質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以下であることが好ましく、0.002質量%以下であることがより好ましい。
【0173】
PTFEファインパウダー(1a)は、分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まない。上記分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0174】
上記分子量1000以下の含フッ素化合物としては、上述したものが挙げられる。PTFEファインパウダー(1)は、含フッ素界面活性剤の存在下で行う重合により得られることが好ましい。
【0175】
上記含フッ素界面活性剤についても上述したものが挙げられ、特に、以下の式で表される化合物が挙げられる。含フッ素界面活性剤は、これらの化合物の混合物であってよい。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、及び、
【化8】
(各式中、Mは、上記と同じ。)。
PTFEファインパウダー(1a)は、上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないことが好ましい。PTFEファインパウダー(1b)は、上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まない。
【0176】
PTFEファインパウダー(1)が上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないものであると、当該含フッ素化合物が残留することによる不具合の発生を抑制することができる。
上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、上記PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0177】
PTFEファインパウダー(1)は、上記一般式(2)で表される含フッ素化合物を実質的に含まないことが好ましく、上記一般式(1)~(4)で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないことがより好ましい。これにより、当該含フッ素化合物が残留することによる不具合の発生を抑制することができる。
上記一般式で表される含フッ素化合物を実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、上記PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0178】
PTFEファインパウダー(1)は、炭化水素系界面活性剤を実質的に含まないことも好ましい。これにより、当該炭化水素系界面活性剤が残留することによる不具合の発生を抑制することができる。上記炭化水素系界面活性剤は、フッ素原子を含まないことが好ましい。
上記炭化水素系界面活性剤を実質的に含まないとは、上記炭化水素系界面活性剤の量が、PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記炭化水素系界面活性剤の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0179】
PTFEファインパウダー(1)は、上述した重合体(I)(但し、PTFEを除く。)を実質的に含まないことが好ましい。
【0180】
重合体(I)を実質的に含まないとは、重合体(I)の量が、PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
重合体(I)の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0181】
PTFEファインパウダー(1)は、総延伸率2400%の延伸試験で得られた延伸ビードを用いて測定した破断強度が25.0N以上70.0N以下であってもよい(以下「PTFEファインパウダー(1-1)」ともいう)。PTFEファインパウダー(1-1)は、破断強度が28.0N以上であることが好ましく、30.0N以上であることがより好ましく、また、60.0N以下であることが好ましく、50.0N以下であることがより好ましい。
上記破断強度は、下記方法で求めた値である。
下記の延伸試験で得られた延伸ビード(ビードを延伸することによって作製されたもの)について、5.0cmのゲージ長である可動ジョーにおいて挟んで固定し、25℃で300mm/分の速度で引っ張り試験を行い、破断した時の強度を破断強度として測定する。
【0182】
上記延伸試験は、下記方法で行う。
下記のペースト押出により得られたビードを230℃で30分加熱することにより、潤滑剤をビードから除去する。次に、ビード(押出成形体)を適当な長さに切断し、クランプ間隔が2.0インチ(51mm)の間隔となるよう、各末端をクランプに固定し、空気循環炉中で300℃に加熱した。次いでクランプを所望の延伸率(総延伸率)に相当する分離距離となるまで所望の速度(延伸速度)で離し、延伸試験を実施する。この延伸方法は、押出スピード(84cm/分でなく51cm/分)が異なることを除いて、本質的に米国特許第4,576,869号明細書に開示された方法に従う。『延伸率』とは、延伸による長さの増加であり、通常元の長さと関連して表される。上記作製方法において、上記延伸速度は、100%/秒であり、上記総延伸率は2400%である。
【0183】
上記ペースト押出は、下記方法で行う。
PTFE粉末100gに、潤滑剤(商品名:アイソパーH(登録商標)、エクソン社製)21.7gを添加し、室温にて3分間混合してPTFEファインパウダー混合物を得る。次いで、得られたPTFEファインパウダー混合物を、押出前少なくとも1時間、室温(25℃)に放置した後にオリフィス(直径2.5mm、ランド長11mm、導入角30°)を通して、室温で100:1の減速比(ダイスの入り口の断面積と出口の断面積の比)でペースト押出し、均一なビード(beading;押出成形体)を得る。押出スピード、すなわち、ラムスピードは、20インチ/分(51cm/分)とする。
【0184】
PTFEファインパウダー(1-1)は、リダクションレシオ(RR)100における押出圧力が5MPa以上であってよく、10MPa以上であることが好ましく、12MPa以上であることがより好ましく、15MPa以上であることが更に好ましく、17MPa以上であることが更により好ましい。
RR100における押出圧力は、また、加工性が向上する点で、50MPa以下であることが好ましく、40MPa以下であることがより好ましく、30MPa以下であることが更に好ましく、25MPa以下であることが更により好ましく、23MPa以下であることが更により好ましく、21MPa以下であることが更により好ましく、20MPa以下であることが特に好ましい。
【0185】
PTFEファインパウダー(1)は、また、総延伸率2400%の延伸試験で得られた延伸ビードを用いて測定した破断強度が10.0N以上25.0N未満であってもよい(以下「PTFEファインパウダー(1-2)」ともいう)。PTFEファインパウダー(1-2)は、破断強度が12.0N以上であることが好ましく、15.0N以上であることがより好ましく、また、23.0N以下であることが好ましく、20.0N以下であることがより好ましい。
【0186】
また、PTFEファインパウダー(1-2)は、RR100における押出圧力が18MPa以下であることが好ましく、17MPa以下であることがより好ましく、16MPa以下であることが更に好ましく、15MPa以下であることが更により好ましく、また、8MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましい。
【0187】
PTFEファインパウダー(1)は、破断強度(N)/押出圧力(MPa)で表される強度比が1.85N/MPa以上であることが好ましく、1.90N/MPa以上であることがより好ましく、1.90N/MPa超であることが更に好ましく、1.95N/MPa以上であることが更により好ましく、2.00N/MPa以上であることが更により好ましく、2.05N/MPa以上であることが更により好ましく、2.10N/MPa以上であることが更により好ましく、2.20N/MPa以上であることが更により好ましく、2.25N/MPa以上であることが特に好ましい。強度比は高ければ高いほどよいが、5.00N/MPa以下であってよく、4.00N/MPa以下であってもよい。
上記強度比が高いほど、破断強度が高く、かつ押出圧力が低いことを意味する。
上記破断強度及び押出圧力は、上述の方法で求めた値である。
【0188】
PTFEファインパウダー(1)は、耐熱性が一層向上する点で、応力緩和時間が450秒以上であることが好ましく、500秒以上であることがより好ましく、550秒以上であることが更に好ましく、600秒以上であることが特に好ましい。
応力緩和時間は、長ければ長いほどよいが、2000秒以下であってよく、1000秒以下であってもよい。
上記応力緩和時間は、下記方法で求めた値である。
クランプ間隔1.5インチ(38mm)、延伸速度1000%/秒とする以外は、上記延伸評価試験と同様にして得られた延伸ビードの両方の末端を固定具につなげ、ぴんと張られた全長8インチ(20cm)のビードサンプルとする。オーブンを390℃に保ち、オーブン側部にある(覆われた)スリットを通して固定具をオーブン中に挿入する。オーブンに挿入した時点からビードサンプルが破断するまでに要する時間を応力緩和時間として測定する。
【0189】
PTFEファインパウダー(1)のその他の特性は、上述した本開示のPTFEファインパウダーと同様であってもよい。
【0190】
PTFEファインパウダー(1)は、有機溶剤を実質的に含まないことが好ましい。有機溶剤を実質的に含まないとは、上記PTFEファインパウダーに対する有機溶剤含有量が5質量%以下であることを意味する。
上記有機溶剤含有量は、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、0.01質量%以下であることが更により好ましく、0.001質量%以下であることが特に好ましい。
【0191】
PTFEファインパウダー(1)(PTFEファインパウダー(1-1)及び(1-2))は、例えば、PTFEの水性分散液を準備する工程(A1)、上記水性分散液を凝析してPTFEの湿潤粉末を得る工程(B1)、及び、上記湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置し、130~300℃の温度で2時間以上の時間熱処理して、PTFEファインパウダーを得る工程(C1)を含む製造方法によって好適に製造することができる。
【0192】
工程(A1)は、上述した工程(A)と同様に実施することができる。
PTFEファインパウダー(1-2)を容易に得る観点では、重合開始剤として水溶性ラジカル重合開始剤を使用する場合の添加量は、水性媒体に対して0.1ppm以上に相当する量が好ましく、1.0ppm以上に相当する量がより好ましく、5.0ppm以上に相当する量が更に好ましく、10.0ppm以上に相当する量が更により好ましく、また、500ppm以下に相当する量が好ましく、200ppm以下に相当する量がより好ましく、100ppm以下に相当する量が更に好ましく、50ppm以下に相当する量が更により好ましい。
【0193】
工程(B1)は、上述した工程(B)と同様に実施することができる。
【0194】
工程(C1)は、上述した工程(C)と同様に実施することができる。
PTFEファインパウダー(1-1)を容易に得る観点では、工程(C1)における熱処理の温度は、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることが更に好ましく、200℃以上であることが更により好ましい。
PTFEファインパウダー(1-2)を容易に得る観点では、工程(C1)における熱処理の温度は、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、160℃以下であることが更に好ましく、150℃以下であることが更により好ましい。
【0195】
PTFEファインパウダー(1)は、従来公知のPTFEファインパウダーと比べても何ら劣ることのない優れた物性を有し、従来公知のPTFEファインパウダーと同じ方法で使用でき、同じ用途に使用することができる。
【0196】
PTFEファインパウダー(1)は、上述した本開示のPTFEファインパウダーと同様の用途に好適に用いることができるが、延伸材料として特に有用である。延伸材料としてPTFEファインパウダー(1)を用いた延伸体も、本開示の好適な態様である。
【0197】
上記延伸体は、PTFEファインパウダー(1)を延伸することで得ることができる。
【0198】
上記延伸体は、その形状が膜、チューブ、繊維、ロッドであることも好ましい。
【0199】
上記延伸体が膜(延伸膜又は多孔膜)である場合、公知のPTFE延伸方法によって延伸することができる。
好ましくは、シート状又は棒状のペースト押出物を押出方向に圧延、乾燥して未焼成フィルムを得て、さらに、ロール延伸することで、一軸延伸膜を得ることができる。
更に、テンター等により幅方向に延伸して、二軸延伸膜も得ることができる。
延伸前に半焼成処理を行うことも好ましい。
【0200】
上記延伸体は、高い空孔率を持つ多孔体とすることができ、エアフィルター、薬液フィルター等の各種精密濾過フィルターの濾材、高分子電解質膜の支持材等として好適に利用できる。
また、繊維分野、医療分野、エレクトロケミカル分野、シール材分野、空気濾過分野、換気/内圧調整分野、液濾過分野、一般消費材分野等で使用する製品の素材としても有用である。
以下に、具体的な用途を例示する。
【0201】
エレクトロケミカル分野
誘電材料プリプレグ、EMI遮蔽材料、伝熱材料等。より詳細には、プリント配線基板、電磁遮蔽シールド材、絶縁伝熱材料、絶縁材料等。
シール材分野
ガスケット、パッキン、ポンプダイアフラム、ポンプチューブ、航空機用シール材等。
【0202】
空気濾過分野
ULPAフィルター(半導体製造用)、HEPAフィルター(病院・半導体製造用)、円筒カートリッジフィルター(産業用)、バグフィルター(産業用)、耐熱バグフィルター(排ガス処理用)、耐熱プリーツフィルター(排ガス処理用)、SINBRANフィルター(産業用)、触媒フィルター(排ガス処理用)、吸着剤付フィルター(HDD組込み)、吸着剤付ベントフィルター(HDD組込み用)、ベントフィルター(HDD組込み用他)、掃除機用フィルター(掃除機用)、汎用複層フェルト材、GT用カートリッジフィルター(GT向け互換品用)、クーリングフィルター(電子機器筐体用)等。
【0203】
換気/内圧調整分野
凍結乾燥用の容器等の凍結乾燥用材料、電子回路やランプ向けの自動車用換気材料、容器キャップ向け等の容器用途、タブレット端末や携帯電話端末等の小型端末を含む電子機器向け等の保護換気用途、医療用換気用途等。
【0204】
液濾過分野
半導体液ろ過フィルター(半導体製造用)、親水性PTFEフィルター(半導体製造用)、化学薬品向けフィルター(薬液処理用)、純水製造ライン用フィルター(純水製造用)、逆洗型液ろ過フィルター(産業排水処理用)等。
【0205】
一般消費材分野
衣類、ケーブルガイド(バイク向け可動ワイヤ)、バイク用衣服、キャストライナー(医療サポーター)、掃除機フィルター、バグパイプ(楽器)、ケーブル(ギター用信号ケーブル等)、弦(弦楽器用)等。
【0206】
繊維分野
PTFE繊維(繊維材料)、ミシン糸(テキスタイル)、織糸(テキスタイル)、ロープ等。
【0207】
医療分野
体内埋設物(延伸品)、人工血管、カテーテル、一般手術(組織補強材料)、頭頸部製品(硬膜代替)、口内健康(組織再生医療)、整形外科(包帯)等。
【0208】
PTFEファインパウダー(1-1)を用いた延伸体は、多孔膜、二軸延伸膜、又は、濾材として好適に用いられる。
PTFEファインパウダー(1-2)を用いた延伸体は、空気濾過分野で使用する製品の素材として有用であり、なかでも、HEPAフィルターとして特に好適に用いられる。
【0209】
PTFEファインパウダー(1)は、防塵用添加剤、ドリップ防止剤、電池用結着剤等の各種添加剤、塗装用途、ガラスクロス含浸加工用途にも好適に利用できる。
また、PTFEファインパウダー(1)を含む水性分散液は、例えば、調理用品の表面コーティング剤、ガラス繊維、カーボン繊維、ケブラー繊維等に含浸して屋根材等の含浸体の製造に用いられ、また、高周波プリント基板、搬送用ベルト、パッキン等の用途において、被塗装物上に塗布し焼成することよりなるフィルム形成に用いられて、種々の用途に適用できる。
【0210】
本開示はまた、ペースト押出可能であり、標準比重が2.135~2.200であり、水分及び分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まない変性PTFEファインパウダー(以下「PTFEファインパウダー(2a)」ともいう)を提供する。PTFEファインパウダー(2a)は、水分及び分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないので、水分や当該含フッ素化合物が残留することによる不具合が発生しにくい。
【0211】
本開示はまた、ペースト押出可能であり、標準比重が2.135~2.200であり、水分及び下記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まない変性PTFEファインパウダー(以下「PTFEファインパウダー(2b)」ともいう)を提供する(以下「PTFEファインパウダー(2a)」と「PTFEファインパウダー(2b)」を合わせて「PTFEファインパウダー(2)」ともいう)。PTFEファインパウダー(2b)は、水分及び下記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないので、水分や当該含フッ素化合物が残留することによる不具合が発生しにくい。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、及び、
【化9】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。Rは、H又は有機基である。)。
【0212】
PTFEファインパウダー(2)は、水分を実質的に含まないので、押出圧力が安定しており、線径ぶれが小さく、スパークやクラックが発生せず、外観が良好な成形体を製造することができる。
【0213】
PTFEファインパウダー(2)は、ペースト押出可能である。
下記のRR1500押出圧力の測定途中で150MPa以上となる場合は、ペースト押出できないと判断する。また、RR1500押出により得られたロッド状物を引張測定すると、伸びが5%以下で破断した場合にはペースト押出できないと判断する。ここで、引張測定とは、室温において引張速度200mm/minにてロッド状物を引っ張ることである。
また、押出圧力が平衡状態にならない場合は、押出不可と判断する。
ペースト押出可能とは、ペースト押出できない、または押出不可と判断された以外のことを示し、均一な押出物(ロッド状物)を得ることを示す。
【0214】
RR1500における押出圧力は、以下の方法により測定する。
PTFE粉末50gと押出助剤である炭化水素油(商品名アイソパーG、エクソンモービル社製)10.25gとをガラス瓶中で混合し、室温(25±2℃)で1時間熟成する。次に、シリンダー(内径25.4mm)付きの押出ダイ(絞り角30°で、下端にオリフィス(オリフィス直径:0.65mm、オリフィス長:2mm)を有する)に上記混合物を充填し、シリンダーに挿入したピストンに1.2MPaの負荷を加えて1分間保持する。その後、直ちに室温においてラム速度20mm/分で上記混合物をオリフィスから押出し、ロッド状物を得る。押出後半において、圧力が平衡状態になる部分の圧力をシリンダー断面積で除した値を押出圧力とする。
【0215】
PTFEファインパウダー(2)は、水分を実質的に含まない。水分を実質的に含まないとは、上記PTFEファインパウダーに対する水分含有量が0.010質量%以下であることを意味する。
上記水分含有量は、0.008質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以下であることがより好ましく、0.002質量%以下であることが更に好ましい。
【0216】
PTFEファインパウダー(2a)は、分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まない。上記分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0217】
上記分子量1000以下の含フッ素化合物としては、上述したものが挙げられる。PTFEファインパウダー(2)は、含フッ素界面活性剤の存在下で行う重合により得られることが好ましい。
【0218】
上記含フッ素界面活性剤についても上述したものが挙げられ、特に、以下の式で表される化合物が挙げられる。含フッ素界面活性剤は、これらの化合物の混合物であってよい。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、及び、
【化10】
(各式中、Mは、上記と同じ。)。
PTFEファインパウダー(2a)は、上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないことが好ましい。PTFEファインパウダー(2b)は、上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まない。
【0219】
PTFEファインパウダー(2)が上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないものであると、当該含フッ素化合物が残留することによる不具合の発生を抑制することができる。
上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、上記PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0220】
PTFEファインパウダー(2)は、上記一般式(2)で表される含フッ素化合物を実質的に含まないことが好ましく、上記一般式(1)~(4)で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないことがより好ましい。これにより、当該含フッ素化合物が残留することによる不具合の発生を抑制することができる。
上記一般式で表される含フッ素化合物を実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、上記PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0221】
PTFEファインパウダー(2)は、炭化水素系界面活性剤を実質的に含まないことも好ましい。これにより、当該炭化水素系界面活性剤が残留することによる不具合の発生を抑制することができる。上記炭化水素系界面活性剤は、フッ素原子を含まないことが好ましい。
上記炭化水素系界面活性剤を実質的に含まないとは、上記炭化水素系界面活性剤の量が、PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記炭化水素系界面活性剤の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0222】
PTFEファインパウダー(2)は、上述した重合体(I)(但し、PTFEを除く。)を実質的に含まないことが好ましい。
【0223】
重合体(I)を実質的に含まないとは、重合体(I)の量が、PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
重合体(I)の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0224】
PTFEファインパウダー(2)は、標準比重(SSG)が2.135~2.200である。である。上記SSGは、2.190以下であることが好ましく、2.185以下であることがより好ましく、2.180以下であることが更に好ましく、2.175以下であることが更により好ましく、また、2.145以上であることが好ましく、2.155以上であることがより好ましく、2.160以上であることが更に好ましく、2.165以上であることが更により好ましい。
【0225】
PTFEファインパウダー(2)は、RR1500における押出圧力が15~80MPaであることが好ましい。RR1500における押出圧力は、70MPa以下であることがより好ましく、60MPa以下であることが更に好ましく、55MPa以下であることが更により好ましく、また、20MPa以上であることがより好ましく、25MPa以上であることが更に好ましい。
【0226】
RR1500における押出圧力は、以下の方法により測定する。
PTFE粉末50gと押出助剤である炭化水素油(商品名アイソパーG、エクソンモービル社製)10.25gとをガラス瓶中で混合し、室温(25±2℃)で1時間熟成する。次に、シリンダー(内径25.4mm)付きの押出ダイ(絞り角30°で、下端にオリフィス(オリフィス直径:0.65mm、オリフィス長:2mm)を有する)に上記混合物を充填し、シリンダーに挿入したピストンに1.2MPaの負荷を加えて1分間保持する。その後、直ちに室温においてラム速度20mm/分で上記混合物をオリフィスから押出し、ロッド状物を得る。押出後半において、圧力が平衡状態になる部分の圧力をシリンダー断面積で除した値を押出圧力とする。
【0227】
PTFEファインパウダー(2)は変性PTFEファインパウダーである。すなわち、PTFEファインパウダー(2)を構成するPTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく重合単位(TFE単位)と、変性モノマーに基づく重合単位(以下「変性モノマー単位」とも記載する)とを含む変性PTFEである。上記変性PTFEは、99.0質量%以上のTFE単位と、1.0質量%以下の変性モノマー単位とを含むものであってよい。また、上記変性PTFEは、TFE単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
【0228】
上記変性PTFEは、変性モノマー単位の含有量が全重合単位に対し0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.80質量%がより好ましく、0.50質量%が更に好ましく、0.40質量%が更により好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が更により好ましく、0.15質量%が更により好ましく、0.10質量%が更により好ましく、0.08質量%が更により好ましく、0.05質量%が特に好ましく、0.03質量%が最も好ましい。
【0229】
上記変性モノマーとしては、上述した本開示のPTFEファインパウダーについて例示したものが挙げられる。
上記変性モノマーとしては、上述した各物性が容易に得られる点で、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕等のフルオロ(アルキルビニルエーテル);パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール〔PDD〕等のビニルヘテロ環状体;ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のフルオロオレフィン等が好ましく、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
なかでも、フルオロ(アルキルビニルエーテル)及びフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、PAVE、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。PAVEとHFPとを併用することも好ましい。PAVEとしては、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕が好ましい。
【0230】
ペースト押出性が一層向上する点で、PTFEファインパウダー(2)を構成する変性PTFEは、コアシェル構造を有することが好ましい。上記コアシェル構造において、コアとシェルとは両者間に必ずしも明確な境界がある必要はなく、コアとシェルとの境界付近においてコアを構成する変性PTFEとシェルを構成する変性PTFEとが入り混じったものであってもよい。
【0231】
上記コアシェル構造におけるコアは、変性モノマーに基づく重合単位を有する変性PTFEであることが好ましい。
上記コアにおける変性モノマーとしては、フルオロ(アルキルビニルエーテル)、ビニルヘテロ環状体及びフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、フルオロ(アルキルビニルエーテル)及びフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、PAVE、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
【0232】
上記コアシェル構造におけるシェルは、変性モノマーに基づく重合単位を有する変性PTFE、及び/又は、連鎖移動剤を用いる重合によって得られる変性PTFEであることが好ましい。
上記シェルにおける変性モノマーとしては、フルオロ(アルキルビニルエーテル)及びフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、PAVE、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
【0233】
上記連鎖移動剤としては、上記シェルを構成する変性PTFEの分子量を低減するものであれば特に限定されず、例えば、水溶性アルコール、炭化水素及びフッ素化炭化水素等の非過酸化有機化合物、ジコハク酸パーオキサイド〔DSP〕等の水溶性有機過酸化物、過硫酸アンモニウム〔APS〕、過硫酸カリウム〔KPS〕等の過硫酸塩からなるもの等が挙げられる。
上記連鎖移動剤は、非過酸化有機化合物、水溶性有機過酸化物及び過硫酸塩の何れかを少なくとも1種有するものであればよい。
上記連鎖移動剤において、非過酸化有機化合物、水溶性有機過酸化物及び過硫酸塩は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
【0234】
上記連鎖移動剤としては、反応系内で分散性及び均一性が良好である点で、炭素数1~4の水溶性アルコール、炭素数1~4の炭化水素及び炭素数1~4のフッ化炭化水素等からなる群より選択される少なくとも1つからなるものであることが好ましく、メタン、エタン、n-ブタン、イソブタン、メタノール、HFC-134a、HFC-32、DSP、APS及びKPSよりなる群から選択される少なくとも1つからなるものであることがより好ましく、メタノール及び/又はイソブタンからなるものであることが更に好ましく、メタノールからなるものであることが特に好ましい。
【0235】
PTFEファインパウダー(2)のその他の特性は、上述した本開示のPTFEファインパウダーと同様であってもよい。
【0236】
PTFEファインパウダー(2)は、有機溶剤を実質的に含まないことが好ましい。有機溶剤を実質的に含まないとは、上記PTFEファインパウダーに対する有機溶剤含有量が5質量%以下であることを意味する。
上記有機溶剤含有量は、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、0.01質量%以下であることが更により好ましく、0.001質量%以下であることが特に好ましい。
【0237】
PTFEファインパウダー(2)は、例えば、変性PTFEの水性分散液を準備する工程(A2)、上記水性分散液を凝析して変性PTFEの湿潤粉末を得る工程(B2)、及び、上記湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置し、130~300℃の温度で2時間以上の時間熱処理して、PTFEファインパウダーを得る工程(C2)を含む製造方法によって好適に製造することができる。
【0238】
上記工程(A2)は、TFE及び変性モノマーを乳化重合する工程であることが好ましい。
工程(A2)は、重合反応初期に変性モノマーを反応系に仕込み重合反応を行う工程(1)、並びに、上記工程(1)の後に、連鎖移動剤、及び/又は、変性モノマーを反応系に導入する工程(2)を含むことが好ましい。
【0239】
工程(1)における変性モノマーとしては、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕等のフルオロ(アルキルビニルエーテル);パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール〔PDD〕等のビニルヘテロ環状体;ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のフルオロオレフィン等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
なかでも、フルオロ(アルキルビニルエーテル)及びフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、PAVE、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
工程(1)における変性モノマーとして、PAVEとHFPとを併用することも好ましい。
PAVEとしては、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕が好ましい。
【0240】
工程(2)における連鎖移動剤としては、コアシェル構造のシェルを構成する変性PTFEの分子量を低減するものであれば特に限定されず、例えば、水溶性アルコール、炭化水素及びフッ素化炭化水素等の非過酸化有機化合物、ジコハク酸パーオキサイド〔DSP〕等の水溶性有機過酸化物、過硫酸アンモニウム〔APS〕、過硫酸カリウム〔KPS〕等の過硫酸塩からなるもの等が挙げられる。
上記連鎖移動剤は、非過酸化有機化合物、水溶性有機過酸化物及び過硫酸塩の何れかを少なくとも1種有するものであればよい。
上記連鎖移動剤において、非過酸化有機化合物、水溶性有機過酸化物及び過硫酸塩は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
【0241】
上記連鎖移動剤としては、反応系内で分散性及び均一性が良好である点で、炭素数1~4の水溶性アルコール、炭素数1~4の炭化水素及び炭素数1~4のフッ化炭化水素等からなる群より選択される少なくとも1つからなるものであることが好ましく、メタン、エタン、n-ブタン、イソブタン、メタノール、HFC-134a、HFC-32、DSP、APS及びKPSよりなる群から選択される少なくとも1つからなるものであることがより好ましく、メタノール及び/又はイソブタンからなるものであることが更に好ましく、メタノールからなるものであることが特に好ましい。
【0242】
工程(2)における変性モノマーとしては、上述したフルオロ(アルキルビニルエーテル)及びフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、PAVE、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
【0243】
工程(2)においては、上記連鎖移動剤と上記変性モノマーとを併用することも好ましい。
【0244】
工程(1)における変性モノマーとしてCTFEを用いる場合、工程(2)においては、変性モノマーとしてCTFEを用いることが好ましい。
工程(1)における変性モノマーとしてPAVE(及びHFP)を用いる場合、工程(2)においては、連鎖移動剤としてメタノール(及び変性モノマーとしてHFP)を用いることが好ましい。
【0245】
上記工程(1)は、該工程(1)と工程(2)とを含む乳化重合工程全体で用いるTFEの転化率が80%以上、好ましくは80~97%、より好ましくは85~95%となるまで重合反応を行うことが好ましい。
本明細書において、上記「転化率」は、目的とするTFE単位の量に相当するTFEの量のうち、重合開始時から重合途中のある時点までの間に重合に消費されたTFEの量が占める割合である。
【0246】
上記工程(1)及び上記工程(2)において、使用する変性剤の種類、目的とする変性PTFEの組成及び収量等に応じて、反応条件を適宜設定することができる。
【0247】
上記乳化重合は、アニオン性含フッ素界面活性剤及び重合開始剤の存在下、水性媒体中で実施することができる。必要に応じて分散安定剤等を使用してもよい。
上記アニオン性含フッ素界面活性剤は、上記水性媒体の0.02~0.3質量%とすることができる。
【0248】
上記重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム〔APS〕等の過硫酸塩、ジコハク酸パーオキサイド〔DSP〕等の水溶性有機過酸化物等を用いることができ、また、これらの重合開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、APS、DSP等は、上述した連鎖移動剤としての作用をも有するので好ましい。
上記乳化重合は、重合開始剤が水性媒体100質量部あたり0.0001~0.02質量部となる量にて行うことが好ましい。
【0249】
上記水性媒体としては、上述した工程(A)と同様のものを用いることができる。
【0250】
上記乳化重合は、重合温度10~95℃にて行うことができるが、重合開始剤として過硫酸塩又は水溶性有機過酸化物を使用する場合、60~90℃にて行うことが好ましい。
上記乳化重合は、通常、0.5~3.9MPaG、好ましくは、0.6~3MPaGにて行うことができる。
上記乳化重合は、また、重合初期、特にTFEの転化率が全体の15%以下の範囲まで0.5MPaG以下の圧力にて反応を行い、それ以後0.5MPaGを超える圧力に保つことによっても行うことができるし、芯部の形成途中で反応圧力を、例えば0.1MPaG以下に低下させ、再度TFEを供給し所定の圧力にて反応させることによっても行うことができる。
【0251】
工程(B2)は、上述した工程(B)と同様に実施することができる。
【0252】
工程(C2)は、上述した工程(C)と同様に実施することができる。
ペースト押出性に一層優れたPTFEファインパウダーが得られる点では、工程(C2)における熱処理の温度は、200℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることが更に好ましい。
【0253】
PTFEファインパウダー(2)は、従来公知のPTFEファインパウダーと比べても何ら劣ることのない優れた物性を有し、従来公知のPTFEファインパウダーと同じ方法で使用でき、同じ用途に使用することができる。
【0254】
PTFEファインパウダー(2)は、成形体の原料として特に有用である。PTFEファインパウダー(2)を用いた成形体も、本開示の好適な態様である。
【0255】
上記成形体は、PTFEファインパウダー(2)を成形することで得ることができる。
【0256】
上記成形は、特に限定されないが、通常、ペースト押出にて行う。
上記ペースト押出は、所望する成形体の形状、用途等に応じて適宜条件を設定して行うことができ、例えば、押出助剤を混合して約1~24時間熟成し、圧力0.5~5.0MPaにて予備成形を行った後、押出圧力2~100MPaにて押出を行い、360~460℃にて焼成することにより行うことができる。
【0257】
上記成形体は、例えば、航空機、自動車、医療機器、精密機械等において、耐熱性や耐薬品性が要求されるプリント基板、電線被覆、チューブ等として好適に使用することができ、なかでも、芯線密着強度等が要求される電線被覆材、又は、医薬用チューブ等のチューブとして使用することが好ましい。
【0258】
本開示はまた、ペースト押出可能であり、標準比重が2.135~2.200であり、水分及び一般式(2)で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まない、パーフルオロビニルエーテルで変性された変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー(以下「PTFEファインパウダー(3)」ともいう)を提供する。
一般式(2):[Cn-12n-1COO]M
(式中、nは9~14の整数、Mはカチオンを表す。)
【0259】
PTFEファインパウダー(3)は、水分を実質的に含まないので、押出圧力が安定しており、線径ぶれが小さく、スパークやクラックが発生せず、外観が良好な成形体を製造することができる。
【0260】
PTFEファインパウダー(3)は、ペースト押出可能である。
下記のRR1500押出圧力の測定途中で150MPa以上となる場合は、ペースト押出できないと判断する。また、RR1500押出により得られたロッド状物を引張測定すると、伸びが5%以下で破断した場合にはペースト押出できないと判断する。ここで、引張測定とは、室温において引張速度200mm/minにてロッド状物を引っ張ることである。
また、押出圧力が平衡状態にならない場合は、押出不可と判断する。
ペースト押出可能とは、ペースト押出できない、または押出不可と判断された以外のことを示し、均一な押出物(ロッド状物)を得ることを示す。
【0261】
RR1500における押出圧力は、以下の方法により測定する。
PTFE粉末50gと押出助剤である炭化水素油(商品名アイソパーG、エクソンモービル社製)10.25gとをガラス瓶中で混合し、室温(25±2℃)で1時間熟成する。次に、シリンダー(内径25.4mm)付きの押出ダイ(絞り角30°で、下端にオリフィス(オリフィス直径:0.65mm、オリフィス長:2mm)を有する)に上記混合物を充填し、シリンダーに挿入したピストンに1.2MPaの負荷を加えて1分間保持する。その後、直ちに室温においてラム速度20mm/分で上記混合物をオリフィスから押出し、ロッド状物を得る。押出後半において、圧力が平衡状態になる部分の圧力をシリンダー断面積で除した値を押出圧力とする。
【0262】
PTFEファインパウダー(3)は、水分を実質的に含まない。水分を実質的に含まないとは、上記PTFEファインパウダーに対する水分含有量が0.010質量%以下であることを意味する。
上記水分含有量は、0.008質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以下であることがより好ましく、0.002質量%以下であることが更に好ましい。
【0263】
PTFEファインパウダー(3)は、下記の一般式(2)で表される含フッ素化合物を実質的に含まない。
一般式(2):[Cn-12n-1COO]M
(式中、nは9~14の整数、Mはカチオンを表す。)
これにより、当該含フッ素化合物が残留することによる不具合の発生を抑制することができる。
上記一般式(2)で表される含フッ素化合物を実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、上記PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0264】
一般式(2)で表される含フッ素化合物としては、上述したものが挙げられる。
【0265】
PTFEファインパウダー(3)は、上記一般式(1)、(3)、(4)で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないことがより好ましい。これにより、当該含フッ素化合物が残留することによる不具合の発生を抑制することができる。
上記一般式で表される含フッ素化合物を実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、上記PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0266】
PTFEファインパウダー(3)は、分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないことが好ましい。上記分子量1000以下の含フッ素化合物を実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0267】
上記分子量1000以下の含フッ素化合物としては、上述したものが挙げられる。PTFEファインパウダー(3)は、含フッ素界面活性剤の存在下で行う重合により得られることが好ましい。上記含フッ素界面活性剤についても上述したものが挙げられる。
【0268】
PTFEファインパウダー(3)は、炭化水素系界面活性剤を実質的に含まないことも好ましい。これにより、当該炭化水素系界面活性剤が残留することによる不具合の発生を抑制することができる。上記炭化水素系界面活性剤は、フッ素原子を含まないことが好ましい。
上記炭化水素系界面活性剤を実質的に含まないとは、上記炭化水素系界面活性剤の量が、PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記炭化水素系界面活性剤の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0269】
PTFEファインパウダー(3)は、上述した重合体(I)(但し、PTFEを除く。)を実質的に含まないことが好ましい。
【0270】
重合体(I)を実質的に含まないとは、重合体(I)の量が、PTFEファインパウダーに対し25質量ppb以下であることを意味する。
重合体(I)の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、5質量ppb以下であることが更に好ましく、3質量ppb以下であることが特に好ましく、1質量ppb以下が殊更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0271】
PTFEファインパウダー(3)は、標準比重(SSG)が2.135~2.200である。である。上記SSGは、2.190以下であることが好ましく、2.185以下であることがより好ましく、2.180以下であることが更に好ましく、2.175以下であることが更により好ましく、また、2.145以上であることが好ましく、2.155以上であることがより好ましく、2.160以上であることが更に好ましく、2.165以上であることが更により好ましい。
【0272】
PTFEファインパウダー(3)は、RR1500における押出圧力が15~80MPaであることが好ましい。RR1500における押出圧力は、70MPa以下であることがより好ましく、60MPa以下であることが更に好ましく、55MPa以下であることが更により好ましく、また、20MPa以上であることがより好ましく、25MPa以上であることが更に好ましい。
【0273】
RR1500における押出圧力は、以下の方法により測定する。
PTFE粉末50gと押出助剤である炭化水素油(商品名アイソパーG、エクソンモービル社製)10.25gとをガラス瓶中で混合し、室温(25±2℃)で1時間熟成する。次に、シリンダー(内径25.4mm)付きの押出ダイ(絞り角30°で、下端にオリフィス(オリフィス直径:0.65mm、オリフィス長:2mm)を有する)に上記混合物を充填し、シリンダーに挿入したピストンに1.2MPaの負荷を加えて1分間保持する。その後、直ちに室温においてラム速度20mm/分で上記混合物をオリフィスから押出し、ロッド状物を得る。押出後半において、圧力が平衡状態になる部分の圧力をシリンダー断面積で除した値を押出圧力とする。
【0274】
PTFEファインパウダー(3)は、パーフルオロビニルエーテルで変性された変性PTFEファインパウダーである。すなわち、PTFEファインパウダー(3)を構成するPTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく重合単位(TFE単位)と、パーフルオロビニルエーテルに基づく重合単位(以下「パーフルオロビニルエーテル単位」とも記載する)とを含む変性PTFEである。上記変性PTFEは、99.0質量%以上のTFE単位と、1.0質量%以下のパーフルオロビニルエーテル単位とを含むものであってよい。また、上記変性PTFEは、TFE単位及びパーフルオロビニルエーテル単位のみからなるものであってよい。
【0275】
上記変性PTFEは、パーフルオロビニルエーテル単位の含有量が全重合単位に対し0.02質量%以上、0.30質量%以下であることが好ましい。パーフルオロビニルエーテル単位の含有量の下限としては、0.03質量%がより好ましく、0.05質量%が更に好ましく、0.10質量%が更により好ましい。パーフルオロビニルエーテル単位の含有量の上限としては、0.27質量%が好ましく、0.25質量%がより好ましい。
【0276】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、上述した本開示のPTFEファインパウダーについて例示したものが挙げられる。上記パーフルオロビニルエーテルとしては、PAVEが好ましい。PAVEとしては、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕が好ましく、PPVEがより好ましい。
【0277】
PTFEファインパウダー(3)は、パーフルオロビニルエーテル以外の他の変性モノマーに基づく重合単位(以下「他の変性モノマー単位」とも記載する)を含むものであってもよい。他の変性モノマー単位を含む場合、パーフルオロビニルエーテル単位と他の変性モノマー単位との合計量が全重合単位に対し1.0重量%以下であることが好ましい。
【0278】
上記他の変性モノマーとしては、上述した本開示のPTFEファインパウダーについて例示したものが挙げられる。
上記他の変性モノマーとしては、上述した各物性が容易に得られる点で、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール〔PDD〕等のビニルヘテロ環状体;ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のフルオロオレフィン等が好ましく、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
なかでも、フルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、HFPがより好ましい。
【0279】
ペースト押出性が一層向上する点で、PTFEファインパウダー(3)を構成する変性PTFEは、コアシェル構造を有することが好ましい。上記コアシェル構造において、コアとシェルとは両者間に必ずしも明確な境界がある必要はなく、コアとシェルとの境界付近においてコアを構成する変性PTFEとシェルを構成する変性PTFEとが入り混じったものであってもよい。
【0280】
上記コアシェル構造におけるコアは、パーフルオロビニルエーテルに基づく重合単位を有する変性PTFE、又は、パーフルオロビニルエーテルに基づく重合単位及び他の変性モノマーに基づく重合単位を有する変性PTFEであることが好ましい。
上記コアにおける他の変性モノマーとしては、ビニルヘテロ環状体及びフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、フルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましく、HFPが更により好ましい。
【0281】
上記コアシェル構造におけるシェルは、他の変性モノマーに基づく重合単位を有する変性PTFE、及び/又は、連鎖移動剤を用いる重合によって得られる変性PTFEであることが好ましい。
上記シェルにおける他の変性モノマーとしては、フルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、HFPが更に好ましい。
【0282】
上記連鎖移動剤としては、上記シェルを構成する変性PTFEの分子量を低減するものであれば特に限定されず、例えば、水溶性アルコール、炭化水素及びフッ素化炭化水素等の非過酸化有機化合物、ジコハク酸パーオキサイド〔DSP〕等の水溶性有機過酸化物、過硫酸アンモニウム〔APS〕、過硫酸カリウム〔KPS〕等の過硫酸塩からなるもの等が挙げられる。
上記連鎖移動剤は、非過酸化有機化合物、水溶性有機過酸化物及び過硫酸塩の何れかを少なくとも1種有するものであればよい。
上記連鎖移動剤において、非過酸化有機化合物、水溶性有機過酸化物及び過硫酸塩は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
【0283】
上記連鎖移動剤としては、反応系内で分散性及び均一性が良好である点で、炭素数1~4の水溶性アルコール、炭素数1~4の炭化水素及び炭素数1~4のフッ化炭化水素等からなる群より選択される少なくとも1つからなるものであることが好ましく、メタン、エタン、n-ブタン、イソブタン、メタノール、HFC-134a、HFC-32、DSP、APS及びKPSよりなる群から選択される少なくとも1つからなるものであることがより好ましく、メタノール及び/又はイソブタンからなるものであることが更に好ましく、メタノールからなるものであることが特に好ましい。
【0284】
PTFEファインパウダー(3)のその他の特性は、上述した本開示のPTFEファインパウダーと同様であってもよい。
【0285】
PTFEファインパウダー(3)は、有機溶剤を実質的に含まないことが好ましい。有機溶剤を実質的に含まないとは、上記PTFEファインパウダーに対する有機溶剤含有量が5質量%以下であることを意味する。
上記有機溶剤含有量は、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、0.01質量%以下であることが更により好ましく、0.001質量%以下であることが特に好ましい。
【0286】
PTFEファインパウダー(3)は、例えば、変性PTFEの水性分散液を準備する工程(A3)、上記水性分散液を凝析して変性PTFEの湿潤粉末を得る工程(B3)、及び、上記湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置し、130~300℃の温度で2時間以上の時間熱処理して、PTFEファインパウダーを得る工程(C3)を含む製造方法によって好適に製造することができる。
【0287】
上記工程(A3)は、TFE及びパーフルオロビニルエーテルを乳化重合する工程であることが好ましい。
工程(A3)は、重合反応初期にパーフルオロビニルエーテルを反応系に仕込み重合反応を行う工程(3)、並びに、上記工程(3)の後に、連鎖移動剤、及び/又は、パーフルオロビニルエーテルを反応系に導入する工程(4)を含むことが好ましい。工程(3)及び(4)においては、パーフルオロビニルエーテルに加えて、パーフルオロビニルエーテル以外の他の変性モノマーを添加してもよい。
【0288】
工程(3)におけるパーフルオロビニルエーテルとしては、PAVEが好ましい。PAVEとしては、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、PPVEが好ましく、PPVEがより好ましい。
【0289】
工程(3)における他の変性モノマーとしては、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール〔PDD〕等のビニルヘテロ環状体;ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のフルオロオレフィン等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
なかでも、フルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、HFPが更に好ましい。
【0290】
工程(4)における連鎖移動剤としては、コアシェル構造のシェルを構成する変性PTFEの分子量を低減するものであれば特に限定されず、例えば、水溶性アルコール、炭化水素及びフッ素化炭化水素等の非過酸化有機化合物、ジコハク酸パーオキサイド〔DSP〕等の水溶性有機過酸化物、過硫酸アンモニウム〔APS〕、過硫酸カリウム〔KPS〕等の過硫酸塩からなるもの等が挙げられる。
上記連鎖移動剤は、非過酸化有機化合物、水溶性有機過酸化物及び過硫酸塩の何れかを少なくとも1種有するものであればよい。
上記連鎖移動剤において、非過酸化有機化合物、水溶性有機過酸化物及び過硫酸塩は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
【0291】
上記連鎖移動剤としては、反応系内で分散性及び均一性が良好である点で、炭素数1~4の水溶性アルコール、炭素数1~4の炭化水素及び炭素数1~4のフッ化炭化水素等からなる群より選択される少なくとも1つからなるものであることが好ましく、メタン、エタン、n-ブタン、イソブタン、メタノール、HFC-134a、HFC-32、DSP、APS及びKPSよりなる群から選択される少なくとも1つからなるものであることがより好ましく、メタノール及び/又はイソブタンからなるものであることが更に好ましく、メタノールからなるものであることが特に好ましい。
【0292】
工程(4)における他の変性モノマーとしては、上述したフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、HFPが更に好ましい。
【0293】
工程(4)においては、上記連鎖移動剤と上記他の変性モノマーとを併用することも好ましい。
【0294】
工程(3)における他の変性モノマーとしてCTFEを用いる場合、工程(4)においては、他の変性モノマーとしてCTFEを用いることが好ましい。
工程(3)における他の変性モノマーとしてHFPを用いる場合、工程(4)においては、連鎖移動剤としてメタノール(及び他の変性モノマーとしてHFP)を用いることが好ましい。
【0295】
上記工程(3)は、該工程(3)と工程(4)とを含む乳化重合工程全体で用いるTFEの転化率が80%以上、好ましくは80~97%、より好ましくは85~95%となるまで重合反応を行うことが好ましい。
本明細書において、上記「転化率」は、目的とするTFE単位の量に相当するTFEの量のうち、重合開始時から重合途中のある時点までの間に重合に消費されたTFEの量が占める割合である。
【0296】
上記工程(3)及び上記工程(4)において、使用する変性剤の種類、目的とする変性PTFEの組成及び収量等に応じて、反応条件を適宜設定することができる。
【0297】
上記乳化重合は、アニオン性含フッ素界面活性剤及び重合開始剤の存在下、水性媒体中で実施することができる。必要に応じて分散安定剤等を使用してもよい。
上記アニオン性含フッ素界面活性剤は、上記水性媒体の0.02~0.3質量%とすることができる。
【0298】
上記重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム〔APS〕等の過硫酸塩、ジコハク酸パーオキサイド〔DSP〕等の水溶性有機過酸化物等を用いることができ、また、これらの重合開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、APS、DSP等は、上述した連鎖移動剤としての作用をも有するので好ましい。
上記乳化重合は、重合開始剤が水性媒体100質量部あたり0.0001~0.02質量部となる量にて行うことが好ましい。
【0299】
上記水性媒体としては、上述した工程(A)と同様のものを用いることができる。
【0300】
上記乳化重合は、重合温度10~95℃にて行うことができるが、重合開始剤として過硫酸塩又は水溶性有機過酸化物を使用する場合、60~90℃にて行うことが好ましい。
上記乳化重合は、通常、0.5~3.9MPaG、好ましくは、0.6~3MPaGにて行うことができる。
上記乳化重合は、また、重合初期、特にTFEの転化率が全体の15%以下の範囲まで0.5MPaG以下の圧力にて反応を行い、それ以後0.5MPaGを超える圧力に保つことによっても行うことができるし、芯部の形成途中で反応圧力を、例えば0.1MPaG以下に低下させ、再度TFEを供給し所定の圧力にて反応させることによっても行うことができる。
【0301】
工程(B3)は、上述した工程(B)と同様に実施することができる。
【0302】
工程(C3)は、上述した工程(C)と同様に実施することができる。
ペースト押出性に一層優れたPTFEファインパウダーが得られる点では、工程(C3)における熱処理の温度は、200℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることが更に好ましい。
【0303】
PTFEファインパウダー(3)は、従来公知のPTFEファインパウダーと比べても何ら劣ることのない優れた物性を有し、従来公知のPTFEファインパウダーと同じ方法で使用でき、同じ用途に使用することができる。
【0304】
PTFEファインパウダー(3)は、成形体の原料として特に有用である。PTFEファインパウダー(3)を用いた成形体も、本開示の好適な態様である。
【0305】
上記成形体は、PTFEファインパウダー(3)を成形することで得ることができる。
【0306】
上記成形は、特に限定されないが、通常、ペースト押出にて行う。
上記ペースト押出は、所望する成形体の形状、用途等に応じて適宜条件を設定して行うことができ、例えば、押出助剤を混合して約1~24時間熟成し、圧力0.5~5.0MPaにて予備成形を行った後、押出圧力2~100MPaにて押出を行い、360~460℃にて焼成することにより行うことができる。
【0307】
上記成形体は、例えば、航空機、自動車、医療機器、精密機械等において、耐熱性や耐薬品性が要求されるプリント基板、電線被覆、チューブ等として好適に使用することができ、なかでも、芯線密着強度等が要求される電線被覆材、又は、医薬用チューブ等のチューブとして使用することが好ましい。
【実施例0308】
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0309】
各種物性は下記方法にて測定した。
【0310】
平均一次粒子径
PTFE水性分散液を水で固形分濃度0.15質量%になるまで希釈し、得られた希釈ラテックスの単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向を測定して決定した数基準長さ平均粒子径とを測定して、検量線を作成する。この検量線を用いて、各試料の550nmの投射光の実測透過率から数平均粒子径を決定し、平均一次粒子径とする。
【0311】
見掛密度
JIS K6892に準拠して測定した。
【0312】
平均二次粒子径
JIS K6891に準拠して測定した。
【0313】
標準比重(SSG)
ASTM D 4895に準拠して形成されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定した。
【0314】
変性モノマーの含有量
PMVEの含有量は、PTFE粉末を370℃で溶解させて、19F-NMR測定を行ない、得られる官能基に由来するシグナルから下記式に基づいて算出した。
PMVE含有量(質量%)=(664B/(300A+364B))×100
(A:-120ppm付近に現れるCFシグナルと-136ppm付近に現れるCFシグナルの合計積分値、B:-54ppm付近に現れるPMVE由来のCFシグナルの積分値)
ケミカルシフト値はポリマー主鎖由来のCFシグナルのピークトップを-120ppmとした際のものを用いた。
VDF含有量は、以下の方法により求めた。PTFE粉末を19F-NMR測定した。また、そのPTFE粉末をプレス成形することで薄膜ディスクを作成し、FT-IR測定した赤外線吸光度から、1429cm-1/2360cm-1の吸光度の比を求めた。上記19F-NMRの測定値と、上記吸光度比とから検量線を作成した。この検量線からVDF含有量を算出した。
HFP含有量は、PTFE粉末をプレス成形することで薄膜ディスクを作成し、薄膜ディスクをFT-IR測定した赤外線吸光度から、982cm-1における吸光度/935cm-1における吸光度の比に0.3を乗じて求めた。
CTFE含有量は、PTFE粉末をプレス成形することで薄膜ディスクを作成し、薄膜ディスクをFT-IR測定した赤外線吸光度から、957cm-1の吸光度/2360cm-1の吸光度の比に0.58を乗じて求めた。
【0315】
水分含有量
約20gのPTFE粉末を150℃、2時間加熱した前後の質量を測定し、以下の式に従って算出した。試料を3回取り、それぞれ算出した後、平均を求め、当該平均値を採用した。
水分含有量(質量%)=[(加熱前のPTFE粉末の質量(g))-(加熱後のPTFE粉末の質量(g))]/(加熱前のPTFE粉末の質量(g))×100
【0316】
含フッ素化合物含有量(1)
PTFE粉末をそれぞれ1g秤量し、メタノールを10g(12.6ml)加え、60分間の超音波処理を行ない、抽出液を得た。得られた抽出液をLC/MS/MS測定した。抽出液中の含フッ素化合物について、液体クロマトグラフ質量分析計(Waters,LC-MS ACQUITY UPLC/TQD)を用いて測定を行った。測定機器構成とLC-MS測定条件を表1に示す。濃度既知の含フッ素化合物の水溶液を用いて、5水準以上の含有量の水溶液を作製し、それぞれの含有量の水溶液のLC/MS分析を行ない、含有量とその含有量に対するエリア面積と関係をプロットし、検量線を描いた。上記検量線を用いて、抽出液中の含フッ素化合物のLC/MSクロマトグラムのエリア面積を、含フッ素化合物の含有量に換算した。
なお、この測定方法における検出下限は10質量ppbである。
【0317】
【表1】
【0318】
含フッ素化合物含有量(2)
PTFE粉末に含まれる含フッ素化合物含有量の含有量は、粉末から抽出される含フッ素化合物含有量の含有量として求めた。
【0319】
<PTFE粉末からの含フッ素化合物含有量の抽出>
PTFE粉末1gにメタノール10g(12.6mL)を加え、60℃で2時間、超音波処理を行った。室温で静置した後、固形分を除き、抽出液を得た。
【0320】
<パーフルオロエーテルカルボン酸A、Cの測定>
1.パーフルオロエーテルカルボン酸A、Cの検量線
濃度既知のパーフルオロエーテルカルボン酸A、Cのメタノール標準溶液を5水準調製し、液体クロマトグラフ質量分析計(Agilent,Ultivo トリプル四重極LC-MS)を用いて測定を行った。それぞれの濃度範囲において、メタノール標準溶液濃度とピークの積分値から一次近似を用い、検量線を作成した。
【0321】
測定機器構成とLC-MS測定条件
【表2】
【0322】
MRM測定パラメータ
【表3】
【0323】
2.PTFE粉末に含まれるパーフルオロエーテルカルボン酸A、Cの含有量
液体クロマトグラフ質量分析計を用い、検量線から、抽出液に含まれるパーフルオロエーテルカルボン酸A、Cの含有量を測定した。下記関係式(1)により、PTFE粉末に含まれるパーフルオロエーテルカルボン酸Aの含有量を求めた。
=X×12.6 (1)
:粉体中に含まれるパーフルオロエーテルカルボン酸Aの含有量(質量ppb)
:抽出液に含まれるパーフルオロカルボン酸Aの含有量(ng/mL)
下記関係式(2)により、PTFE粉末に含まれるパーフルオロエーテルカルボン酸Cの含有量を求めた。
=X×12.6 (2)
:粉体中に含まれるパーフルオロエーテルカルボン酸Cの含有量(質量ppb)
:抽出液に含まれるパーフルオロカルボン酸Cの含有量(ng/mL)
PTFE粉末に含まれるパーフルオロエーテルカルボン酸A、Cの含有量の定量下限は1質量ppbである。
【0324】
<一般式(2)で表される化合物の含有量>
一般式(2)で表される化合物の含有量は同じ炭素数の直鎖パーフルオロカルボン酸の検量線により求めた。
【0325】
1.パーフルオロカルボン酸の検量線
濃度既知のパーフルオロノナン酸、パーフルオロデカン酸、パーフルオロウンデカン酸、パーフルオロドデカン酸、パーフルオロトリデカン酸、パーフルオロテトラデカン酸のメタノール標準溶液を5水準調製し、液体クロマトグラフ質量分析計(Agilent,Ultivo トリプル四重極LC-MS)を用いて測定を行った。それぞれの濃度範囲において、メタノール標準溶液濃度とピークの積分値から一次近似を用い、検量線を作成した。
【0326】
測定機器構成とLC-MS測定条件
【表4】
【0327】
MRM測定パラメータ
【表5】
【0328】
2.粉体に含まれる一般式(2)で表される化合物の含有量
液体クロマトグラフ質量分析計を用い、検量線から、抽出液に含まれる炭素数nの一般式(2)で表される化合物の含有量を測定した。下記関係式(3)により、粉体に含まれる炭素数nの一般式(2)で表される化合物の含有量を求めた。
Yn=Xn×12.6 (3)
Yn:粉体中に含まれる炭素数nの一般式(2)で表される化合物の含有量(質量ppb)
Xn:抽出液に含まれる炭素数nの一般式(2)で表される化合物の含有量(ng/mL)
粉体に含まれる炭素数nの一般式(2)で表される化合物の含有量の定量下限は1質量ppbである。
【0329】
MRM測定パラメータ
【表6】
【0330】
リダクションレシオ100おける押出圧力(RR100押出圧力)
PTFE粉末100gに、潤滑剤(商品名:アイソパーH(登録商標)、エクソン社製)21.7gを添加し、室温にて3分間混合してPTFEファインパウダー混合物を得た。次いで、得られたPTFEファインパウダー混合物を、押出前少なくとも1時間、室温(25℃)に放置した後にオリフィス(直径2.5mm、ランド長11mm、導入角30°)を通して、室温で100:1の減速比(ダイスの入り口の断面積と出口の断面積の比)でペースト押出し、均一なビード(beading;押出成形体)を得た。押出スピード、すなわち、ラムスピードは、20インチ/分(51cm/分)とした。押出圧力は、ペースト押出において押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、ペースト押出に用いたシリンダーの断面積で除した値とした。
【0331】
リダクションレシオ1500における押出圧力(RR1500押出圧力)
PTFE粉末50gと押出助剤である炭化水素油(商品名アイソパーG、エクソンモービル社製)10.25gとをガラス瓶中で混合し、室温(25±2℃)で1時間熟成した。次に、シリンダー(内径25.4mm)付きの押出ダイ(絞り角30°で、下端にオリフィス(オリフィス直径:0.65mm、オリフィス長:2mm)を有する)に上記混合物を充填し、シリンダーに挿入したピストンに1.2MPaの負荷を加えて1分間保持した。その後、直ちに室温においてラム速度20mm/分で上記混合物をオリフィスから押出し、ロッド状物を得た。押出後半において、圧力が平衡状態になる部分の圧力をシリンダー断面積で除した値を押出圧力とした。
なお、圧力が平衡状態にならない場合は、押出不可とした。
【0332】
押出圧力の変動係数
上記押出圧力の測定において、ペースト押出の押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、平衡状態における負荷の平均値と標準偏差から、押出圧力の変動係数を求めた。
(押出圧力の変動係数)=(負荷の標準偏差)/(負荷の平均値)
【0333】
延伸試験
上記のペースト押出により得られたビードを230℃で30分加熱することにより、潤滑剤をビードから除去した。次に、ビード(押出成形体)を適当な長さに切断し、クランプ間隔が2.0インチ(51mm)の間隔となるよう、各末端をクランプに固定し、空気循環炉中で300℃に加熱した。次いでクランプを所望の延伸率(総延伸率)に相当する分離距離となるまで所望の速度(延伸速度)で離し、延伸試験を実施した。この延伸方法は、押出スピード(84cm/分でなく51cm/分)が異なることを除いて、本質的に米国特許第4,576,869号明細書に開示された方法に従う。『延伸率』とは、延伸による長さの増加であり、通常元の長さと関連して表される。上記作製方法において、上記延伸速度は、100%/秒であり、上記総延伸率は2400%である。
【0334】
破断強度(総延伸率2400%の延伸試験で得られた延伸ビードを用いて測定した破断強度)
上記延伸試験で得られた延伸ビード(ビードを延伸することによって作製されたもの)について、5.0cmのゲージ長である可動ジョーにおいて挟んで固定し、25℃で300mm/分の速度で引っ張り試験を行い、破断した時の強度を破断強度として測定した。
【0335】
延伸膜評価
(二軸延伸膜及び濾材の作製)
PTFE粉末100質量部に、押出助剤としての炭化水素油(出光興産社製「IPソルベント2028」)28質量部を加えて混合した。ペースト押出装置の先端部に、短手方向長さ2mm×長手方向長さ150mmの矩形状の押出口が形成されたシートダイを取り付けたペースト押出装置にこの混合物を入れ、ペースト押出によりシート形状の成形体を得た。そして、このシート状成形体を70℃に加熱したカレンダーロールによりフィルム状に成形し、助剤を含む未焼成フィルムを得た。
ついで、この助剤を含む未焼成フィルムを250℃の熱風乾燥炉に通して押出助剤を蒸発除去し、平均厚み200μmの未焼成フィルムを得た。この未焼成フィルムを、長手方向に延伸倍率10倍で延伸し、一軸延伸膜を得た。延伸温度は250℃で行った。次に、得られた一軸延伸膜(長手方向延伸フィルム)を、連続クリップできるテンターを用いて幅方向に延伸倍率43倍で延伸し、二軸延伸膜を得た。得られた二軸延伸膜に熱固定を行いPTFE多孔膜を得た。この時の延伸温度は290℃、熱固定温度は345℃、また延伸速度は330%/秒であった。
次いで、通気性支持材として、PETを芯に、PEを鞘に用いた芯/鞘構造の繊維からなるスパンボンド不織布(ユニチカ社製「エルベスT0303WDO」)を用い、得られた複層多孔膜を挟持するよう、当該不織布をラミネート装置を用いて熱融着により積層して3層構造の濾材を得た。
【0336】
(成形時の押出圧力)
上記二軸延伸膜の作製においてペースト押出するときのペースト押出装置から求めた。押出圧力は、ペースト押出において押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、ペースト押出に用いたシリンダーの断面積で除した値とした。
【0337】
(未焼成フィルムの外観)
未焼成フィルムに破れや穴あきが発生したものをBadとし、均質なフィルムはGoodとした。また、均質なフィルムであったとしても乾燥前の助剤を含む未焼成フィルムにおいて、10m当たりに1ヶ所の失透現象(助剤濃度が不均一な現象)が発生したものをNo Goodとした。
【0338】
(PTFE多孔膜の外観)
上記二軸延伸膜の作製により得られたPTFE多孔膜の外観を目視により観察した。
PTFE多孔膜100m当たりに1か所以上の100×100mm以上の薄層部が発生したものをNo Goodとし、100m当たり1か所以上の膜の破断や、貫通孔が1箇所以上あるものをBadとし、均質な膜はGoodとした。
【0339】
(膜厚)
膜厚計(1D-110MH型、ミツトヨ社製)を使用し、多孔膜を5枚重ねて全体の膜厚を測定し、その値を5で割った数値を多孔膜1枚の膜厚とした。この膜厚は、1枚の多孔膜全体についての膜厚(平均膜厚)である。
【0340】
濾材の評価
(圧力損失)
ロール状に巻き取られた長尺の濾材から、先端部を含む5m程度の部分を引き出し、濾材の長手方向に200mmごとに25個に分割しかつ幅方向に両端部を除き130mmごとに4個に分割してなる格子状の100箇所について圧力損失を測定した。ここでの圧力損失の測定は、濾材の幅方向に5個以上のフィルタホルダを備える測定装置を用いて、上記濾材を長手方向に 移動させて複数の格子状の箇所について連続して測定することにより行った。
得られた濾材の測定サンプルを、直径100mmのフィルタホルダにセットし、コンプレッサで入口側を加圧し、流速計で空気の透過する流量を5.3cm/秒に調整し、この時の圧力損失をマノメータで測定した。
【0341】
(圧力損失の変動係数)
上記で測定した圧力損失からなる圧力損失分布から標準偏差を求め、求めた標準偏差を、測定した全ての箇所の圧力損失の平均値で割ることにより、変動係数を求めた。
(圧力損失の変動係数)=(圧力損失の標準偏差)/(圧力損失の平均値)×100(%)
【0342】
(捕集効率)
JIS B9928 附属書5(規定)NaClエアロゾルの発生方法(加圧噴霧法)記載の方法に準じて、アトマイザーで発生させたNaCl粒子を、静電分級器(TSI社製)で、粒径0.1μmに分級し、アメリシウム241を用いて粒子帯電を中和した後、透過する流量を5.3cm/秒に調整し、パーティクルカウンター(TSI社製、CNC)を用いて、測定試料である濾材の前後での粒子数を求め、次式により捕集効率を算出した。
捕集効率(%)=(CO/CI)×100
CO=測定試料が捕集したNaCl 0.1μmの粒子数
CI=測定試料に供給されたNaCl 0.1μmの粒子数
【0343】
被覆電線評価
(被覆電線の作製)
(i)予備成形
得られたPTFE粉末2kgに対して押出助剤(アイソパーH)17質量%(410g)を混合し、12時間常温で熟成したのち、10メッシュのSUS金網を通して予備成形機(田端機械工業社製)にて、ラム速度を100mm/分として、3MPaの圧力下、常温環境下にて30分間予備成形を行い、予備成形体を得た。
(ii)ペースト押出
得られた予備成形体をφ50mmの電線成形機(田端機械工業社社製)を用いて、芯線として、AWG18、外径1.024mmのニッケルメッキ銅線を用い、ラム速度33mm/分、芯線速度23m/分にて、押出した。
(iii)乾燥及び焼成
得られる押出物を160℃に設定したキャブスタンへ通した後、200℃、220℃、250℃と段階的に設定した乾燥炉へ通して乾燥を行なった。さらに、250℃から460℃に段階的に設定した焼成炉に23m/分にて通過させて焼成を行ない冷却して、被覆層厚み0.36mmの被覆電線を得た。
【0344】
(電線成形時の押出圧力)
押出圧力は、(ii)の押出において押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、電線成形時に用いたシリンダーの断面積で除した値とした。
【0345】
(線径ぶれ)
(ii)の押出において押出負荷が平衡状態になった時の被覆電線を外径測定器(キーエンス社製)に通過させて、得られた外径測定値の平均値と標準偏差から、次式により線径ぶれを算出した。
線径ぶれ=(外径の標準偏差/外径の平均値)×100(%)
【0346】
(スパークテスト)
(iii)乾燥及び焼成後の被覆電線を高周波スパークテスタ(Clinton社製)に通過させて、印加電圧5kv条件下でのスパーク個数を計測した。
【0347】
(自己巻き耐熱性)
国際公開第2006-054612号記載の自己巻き耐熱性に準拠して自己巻き耐熱性試験を行なった。
被覆電線の巻き付け部分に生じたクラックを目視にて観察した。
クラックが発生したものをBadとし、クラックが発生しなかったものをGoodとした。
【0348】
以下の分子量1000以下の含フッ素界面活性剤を準備した。
パーフルオロエーテルカルボン酸Aアンモニウム塩:富士フィルム和光純薬(株)製、Ammonium perfluoro(2-methyl-3-oxahexanoate)、構造式:CFCFCFOCF(CF)COONH
パーフルオロエーテルカルボン酸Bアンモニウム塩:パーフルオロエーテルカルボン酸BをApollo Scientific Ltd より購入し、アンモニウム塩とした。Ammonium perfluoro-3,6-dioxaoctanoate、構造式:CFCFOCFCFOCFCOONH
パーフルオロエーテルカルボン酸Cアンモニウム塩:Ammonium 2,3,3,3-tetrafluoro-2-[1,1,2,3,3,3-hexafluoro-2-(trifluoromethoxy)propoxy]-propionate、構造式:CFOCF(CF)CFOCF(CF)COONH
【0349】
以下の親水性モノマーを準備した。
親水性モノマーD:Ammonium 2,3,3,3-tetrafluoro-2-[(1,1,2-trifluoro-2-propenyl)oxy]- Propanoate、構造式:CH=CFCFOCF(CF)COONH
【0350】
製造例1
ステンレススチール製攪拌翼と温度調節用ジャケットを備えた内容量6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水3480g、パラフィンワックス100g、パーフルオロエーテルカルボン酸Aのアンモニウム塩15.75g、及び親水性モノマーD35mgを仕込み、70℃に加温しながらオートクレーブ内を窒素ガスで置換して酸素を除いた。TFEを圧入して系内圧力を0.78MPaGとし、攪拌しながら系内温度を70℃に保った。次いで、水20gに過硫酸アンモニウム14.0mgを溶解した水溶液をTFEで圧入し、重合反応を開始した。重合反応の進行に伴い系内圧力が低下するがTFEを追加して系内温度を70℃、系内圧力を0.78MPaGに維持した。
重合開始からTFEが433g消費された時点で、ラジカル捕捉剤としてヒドロキノン17.0mgを水20gに溶解した水溶液をTFEで圧入した。重合はその後も継続し、TFEの重合量が重合開始から1273gになった時点で撹拌及びTFEの供給を止め、直ちに系内のガスを放出して常圧とし、重合反応を終了した。水性分散液を取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液Aを得た。得られたPTFE水性分散液Aの平均一次粒子径は295nm、固形分濃度は26.5質量%であった。
【0351】
比較例1
製造例1で得られたPTFE水性分散液Aを固形分濃度13質量%まで希釈し、容器内で撹拌しながらPTFEを凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。
得られたPTFE湿潤粉末をステンレス製の平板トレー(底面及び側面に通気性のないトレー。以下同様。)に配置し(配置量:2.0g/cm)、180℃の熱風循環式電気炉内で平板トレーを熱処理した。5時間後、平板トレーを取り出し、平板トレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。
【0352】
比較例2
5時間の熱処理を20時間の熱処理に変更する以外は比較例1と同様にして、PTFE粉末を得た。
【0353】
比較例3
熱処理温度180℃を250℃に変更する以外は比較例1と同様にして、PTFE粉末を得た。
【0354】
製造例2
ステンレススチール製攪拌翼と温度調節用ジャケットを備えた内容量6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水3600g、パラフィンワックス180g及びパーフルオロエーテルカルボン酸Bのアンモニウム塩5.4g、コハク酸0.108g、シュウ酸0.0252gを仕込み、70℃に加温しながら重合槽内を窒素ガスで置換して酸素を除いた。攪拌しながら槽内温度を70℃に保ったのち、TFEガスを導入し、2.7MPaGの圧力とした。
内容物を攪拌しながら、過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した脱イオン水を一定速度で連続的に添加し、重合槽内の圧力が2.7MPaGに一定になるよう、TFEを連続的に供給した。TFE消費量が184gの時点で、パーフルオロエーテルカルボン酸Bのアンモニウム塩3.8gを添加、TFE消費量が900gの時点で、上記過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した脱イオン水全量を添加した。TFE消費量が1543gの時点で、攪拌及びTFE供給を停止して、重合槽内のTFEをパージし、重合反応を終了した。水性分散液を取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液Bを得た。得られたPTFE水性分散液Bの平均一次粒子径は310nm、固形分濃度は30.6質量%であった。
【0355】
比較例4
製造例2で得られたPTFE水性分散液Bを固形分濃度13質量%まで希釈し、容器内で撹拌しながら凝析剤として硝酸を加え、PTFEを凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。
得られたPTFE湿潤粉末をステンレス製の平板トレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、210℃の熱風循環式電気炉内で平板トレーを熱処理した。18時間後、平板トレーを取り出し、平板トレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。
【0356】
製造例3
ステンレス製攪拌翼と温度調節用ジャケットを備えた内容量6リットルのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水3560g、パラフィンワックス104g、パーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩5.4g、及び親水性モノマーD35mgを仕込み、70℃に加温しながらオートクレーブ内を窒素ガスで置換して酸素を除いた。TFEを圧入して系内圧力を0.60MPaGとし、攪拌しながら系内温度を70℃に保った。次いで、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)0.60gをTFEで圧入した。続いて、脱イオン水20gに過硫酸アンモニウム15mgを溶解した水溶液をTFEで圧入し、系内圧力を0.78MPaGにし、重合反応を開始した。重合反応の進行に伴い系内圧力が低下するがTFEを追加して系内温度を70℃、系内圧力を0.78MPaGに維持した。
重合開始からTFEが429g消費された時点で、ラジカル捕捉剤としてヒドロキノン14mgを脱イオン水20gに溶解した水溶液をTFEで圧入した。重合はその後も継続し、TFEの重合量が重合開始から1225gになった時点で撹拌及びTFEの供給を止め、直ちに系内のガスを放出して常圧とし、重合反応を終了した。水性分散液を取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液Cを得た。得られたPTFE水性分散液Cの平均一次粒子径は234nm、固形分濃度は25.4質量%であった。
【0357】
比較例5
製造例3で得られたPTFE水性分散液Cを固形分濃度13質量%まで希釈し、容器内で撹拌しながら凝析剤として硝酸を加え、PTFEを凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。
得られたPTFE湿潤粉末をステンレス製の平板トレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、210℃の熱風循環式電気炉内で平板トレーを熱処理した。18時間後、平板トレーを取り出し、平板トレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。
【0358】
比較例6
ステンレス製の平板トレーをステンレス製のメッシュトレーに、180℃、5時間の熱処理を200℃、1時間の熱処理に変更する以外は、比較例1と同様にしてPTFE粉末を得た。
【0359】
実施例1
ステンレス製の平板トレーをステンレス製のメッシュトレーに変更する以外は、比較例1と同様にしてPTFE粉末を得た。
得られたPTFE粉末のSSGは2.158であった。
【0360】
実施例2
5時間の熱処理を20時間の熱処理に変更する以外は、実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。
【0361】
実施例3
ステンレス製の平板トレーをステンレス製のメッシュトレーに、210℃、18時間の熱処理を180℃、5時間の熱処理に変更する以外は、比較例4と同様にしてPTFE粉末を得た。
得られたPTFE粉末のSSGは2.153であった。
【0362】
実施例4
ステンレス製の平板トレーをステンレス製のメッシュトレーに、210℃、18時間の熱処理を180℃、20時間の熱処理に変更する以外は、比較例5と同様にしてPTFE粉末を得た。
得られたPTFE粉末のPMVE含有量は0.046質量%、SSGは2.145であった。
【0363】
上記で得られた各PTFE粉末(PTFEファインパウダー)の物性を上述の方法で測定した。結果を表7~11に示す。
【0364】
【表7】
【表8】
【0365】
表7及び8に示す結果から、平板トレーを用いると水分含有量が0.010質量%を超えることが分かる。また、メッシュトレーを用いても熱処理時間が1時間と短いと水分含有量が高いことが分かる。
一方、メッシュトレーを用いると、平板トレーと同じ熱処理時間であっても、水分含有量が0.005質量%以下と低い。
【0366】
【表9】
【表10】
【表11】
比較例1で得られたPTFE粉末を用いて成形加工を行なったところ、未焼成フィルムに穴あきが発生したため、一軸延伸膜及び二軸延伸膜が得られなかった。
【0367】
また、実施例1~4で得られたPTFE粉末からは、下記式で表される含フッ素化合物は検出されないか、又は含有量が10質量ppb以下であった。
F(CFCOOH、
F(CFCOOH、
H(CFCOOH、
H(CFCOOH、
CFO(CFOCHFCFCOOH、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOH、
CFCFCFOCF(CF)COOH(パーフルオロエーテルカルボン酸A)、
CFCFOCFCFOCFCOOH(パーフルオロエーテルカルボン酸B)、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOH、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH(パーフルオロエーテルカルボン酸C)、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOH、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOH、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOH、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOH、及び、
【化11】
(式中、MはHである。)
【0368】
製造例4
内容量6Lの撹拌機付きSUS製反応器に、3600gの脱イオン水、180gのパラフィンワックス、5.4gのパーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩、26.5mgのシュウ酸を入れた。次いで反応器の内容物を70℃まで加熱しながら吸引すると同時にテトラフルオロエチレン(TFE)でパージして反応器内の酸素を除き、内容物を攪拌した。反応器中に2.60gのクロロトリフルオロエチレン(CTFE)をTFEで圧入し、引き続きTFEを加えて、2.70MPaGにした。開始剤として脱イオン水に3.4mgの過マンガン酸カリウムを溶解した過マンガン酸カリウム水溶液を連続的に反応器に添加した。開始剤の注入後に圧力の低下が起こり重合の開始が観測された。反応器にTFEを加えて圧力を2.70MPaG一定となるように保った。TFEの仕込み量が430gに達した時点で、過マンガン酸カリウム水溶液の仕込みを停止した。TFEの仕込み量が1660gに達した時点でTFEの供給を止め、撹拌を停止して反応を終了した。その後に、反応器内の圧力が常圧になるまで排気し、窒素置換を行ない、内容物を反応器から取り出して冷却した。パラフィンワックスを取り除いて、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は31.4質量%、平均一次粒子径は248nmであった。
【0369】
実施例5
製造例4で得られたPTFE水性分散液を固形分濃度13質量%にまで希釈して、撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、210℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。18時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末のSSGは2.150、CTFE含有量は0.100質量%であった。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表12に示す。
【0370】
製造例5
CTFE仕込量を1.28gに、過マンガン酸カリウム仕込量を3.87mgに、最終TFE量を1790gに変えた以外は製造例4と同じ条件で重合を実施し、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は33.0質量%、平均一次粒子径は263nmであった。
【0371】
実施例6
製造例5で得られたPTFE水性分散液を用い、実施例5と同様にして湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、実施例5と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末のSSGは2.150、CTFE含有量は0.050質量%であった。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表12に示す。
【0372】
製造例6
ステンレススチール製攪拌翼と温度調節用ジャケットを備えた内容量6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水3580g、パラフィンワックス100g及びパーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩の5.4gを仕込み、70℃に加温しながらオートクレーブ内を窒素ガスで置換して酸素を除いた。HFPの0.50gをTFEで圧入した後、TFEを圧入して系内圧力を0.78MPaGとし、攪拌しながら系内温度を70℃に保った。次いで、水20gに過硫酸アンモニウム15.4mgを溶解した水溶液をTFEで圧入し、重合反応を開始した。重合反応の進行に伴い系内圧力が低下するがTFEを追加して系内温度を70℃、系内圧力を0.78MPaGに維持した。
重合開始からTFEが430g消費された時点で、ラジカル捕捉剤としてヒドロキノン18.0mgを水20gに溶解した水溶液をTFEで圧入した。重合はその後も継続し、TFEの重合量が重合開始から1540gになった時点で攪拌及びTFEの供給を止め、直ちに系内のガスを放出して常圧とし、重合反応を終了した。水性分散液を取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は29.6質量%、平均一次粒子径は246nmであった。
【0373】
実施例7
製造例6で得られたPTFE水性分散液を固形濃度13質量%まで希釈し、撹拌機付きの容器内で攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、180℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。18時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。
得られたPTFE粉末のSSGは2.146、HFP含有量は0.019質量%であった。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表12に示す。
【0374】
製造例7
HFPの仕込み量を0.06gに変更する以外は、製造例6と同様にしてPTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は29.2質量%、平均一次粒子径は274nmであった。
【0375】
実施例8
製造例7で得られたPTFE水性分散液を用い、実施例7と同様にして湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、熱処理温度を160℃に変更する以外は、実施例7と同様にしてPTFE粉末を得た。
得られたPTFE粉末のSSGは2.154、HFP含有量は0.002質量%であった。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表12に示す。
【0376】
製造例8
内容量6Lの撹拌機付きSUS製反応器に、3600gの脱イオン水、180gのパラフィンワックス、5.4gのパーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩を入れた。次いで反応器の内容物を80℃まで加熱しながら吸引すると同時にテトラフルオロエチレン(TFE)でパージして反応器内の酸素を除き、内容物を攪拌した。反応器中に3.1gのフッ化ビニリデン(VDF)をTFEで圧入し、引き続きTFEを加えて、2.70MPaGにした。開始剤として脱イオン水に過硫酸アンモニウム(APS)7.2mgを溶解した水溶液を反応器に添加した。開始剤の注入後に圧力の低下が起こり重合の開始が観測された。反応器にTFEを加えて圧力を2.70MPaG一定となるように保った。TFEの仕込み量が430gに達した時点で、18.2mgのヒドロキノンを脱イオン水で溶解した水溶液を添加した。TFEの仕込み量が1580gに達した時点でTFEの供給を止め、撹拌を停止して反応を終了した。その後に、反応器内の圧力が常圧になるまで排気し、窒素置換を行ない、内容物を反応器から取り出して冷却した。パラフィンワックスを取り除いて、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は30.3質量%、平均一次粒子径は223nmであった。
【0377】
実施例9
製造例8で得られたPTFE水性分散液を固形分濃度13質量%にまで希釈して、撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、210℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。18時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末のSSGは2.221、VDF含有量は0.025質量%であった。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表12に示す。
【0378】
製造例9
内容量6Lの撹拌機付きSUS製反応器に、3600gの脱イオン水、180gのパラフィンワックス、5.4gのパーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩、0.0265gのシュウ酸を入れた。次いで反応器の内容物を70℃まで加熱しながら吸引すると同時にテトラフルオロエチレン(TFE)でパージして反応器内の酸素を除き、内容物を攪拌した。反応器中に1.70gのフッ化ビニリデン(VDF)をTFEで圧入し、引き続きTFEを加えて、2.70MPaGにした。開始剤として脱イオン水に3.4mgの過マンガン酸カリウムを溶解した過マンガン酸カリウム水溶液を連続的に反応器に添加した。開始剤の注入後に圧力の低下が起こり重合の開始が観測された。反応器にTFEを加えて圧力を2.70MPaG一定となるように保った。TFEの仕込み量が430gに達した時点で、過マンガン酸カリウム水溶液の仕込みを停止した。TFEの仕込み量が1815gに達した時点でTFEの供給を止め、撹拌を停止して反応を終了した。その後に、反応器内の圧力が常圧になるまで排気し、窒素置換を行ない、内容物を反応器から取り出して冷却した。パラフィンワックスを取り除いて、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は33.3質量%、平均一次粒子径は251nmであった。
【0379】
実施例10
製造例9で得られたPTFE水性分散液を固形分濃度13質量%にまで希釈して、撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、210℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。18時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末のSSGは2.206、VDF含有量は0.011質量%であった。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表12に示す。
【0380】
【表12】
【0381】
また、実施例5~10で得られたPTFE粉末からは、下記式で表される含フッ素化合物は検出されないか、又は含有量が10質量ppb未満であった。
F(CFCOOH、
F(CFCOOH、
H(CFCOOH、
H(CFCOOH、
CFO(CFOCHFCFCOOH、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOH、
CFCFCFOCF(CF)COOH(パーフルオロエーテルカルボン酸A)、
CFCFOCFCFOCFCOOH(パーフルオロエーテルカルボン酸B)、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOH、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH(パーフルオロエーテルカルボン酸C)、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOH、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOH、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOH、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOH、及び、
【化12】
(式中、MはHである。)
【0382】
実施例11
180℃、5時間の熱処理を210℃、18時間の熱処理に変更する以外は、実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表13及び14に示す。
【0383】
実施例12
180℃、5時間の熱処理を210℃、5時間の熱処理に変更する以外は、実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表13及び14に示す。
【0384】
比較例7
180℃、5時間の熱処理を210℃、18時間の熱処理に変更する以外は、比較例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表13及び14に示す。
【0385】
実施例13
180℃、20時間の熱処理を210℃、18時間の熱処理に変更する以外は、実施例4と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表13及び14に示す。
【0386】
比較例8
210℃、18時間の熱処理を210℃、5時間の熱処理に変更する以外は、比較例5と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表13及び14に示す。
【0387】
製造例10
ステンレススチール製攪拌翼と温度調節用ジャケットを備えた内容量6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水3580g、パラフィンワックス100g及びパーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩5.4gを仕込み、70℃に加温しながらオートクレーブ内を窒素ガスで置換して酸素を除いた。HFP0.11gをTFEで圧入した後、TFEを圧入して系内圧力を0.78MPaGとし、攪拌しながら系内温度を70℃に保った。次いで、水20gに過硫酸アンモニウム15.4mgを溶解した水溶液をTFEで圧入し、重合反応を開始した。重合反応の進行に伴い系内圧力が低下するがTFEを追加して系内温度を70℃、系内圧力を0.78MPaGに維持した。
重合開始からTFEが430g消費された時点で、ラジカル捕捉剤としてヒドロキノン18.0mgを水20gに溶解した水溶液をTFEで圧入した。重合はその後も継続し、TFEの重合量が重合開始から1540gになった時点で攪拌及びTFEの供給を止め、直ちに系内のガスを放出して常圧とし、重合反応を終了した。水性分散液を取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は29.8質量%、平均一次粒子径は312nmであった。
【0388】
実施例14
製造例10で得られたPTFE水性分散液を固形分濃度13質量%にまで希釈して、撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、180℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。18時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末のSSGは2.153、HFP含有量は0.005質量%であった。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表13及び14に示す。
【0389】
【表13】
【0390】
【表14】
【0391】
表11、13、14に示す結果から、水分含有量が多くなると、押出圧力が小さくなり、押出圧力の変動係数が大きくなることが分かる。また、未焼成フィルム、及びPTFE多孔膜の外観が悪くなる。
水分含有量が0.1%を超えて多くなると、未焼成フィルムに穴あきが発生した。
水分含有量が多くなると、濾材の圧力損失が小さく、圧力損失の変動係数が大きくなり、不均一になることが分かる。
【0392】
実施例15
180℃、5時間の熱処理を135℃、18時間の熱処理に変更する以外は、実施例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表15及び16に示す。
【0393】
比較例9
180℃、5時間の熱処理を135℃、18時間の熱処理に変更する以外は、比較例1と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表15及び16に示す。
【0394】
製造例11
ステンレススチール製攪拌翼と温度調節用ジャケットを備えた内容量6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水3600g、パラフィンワックス180g及びパーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩5.4gを仕込み、85℃に加温しながら重合槽内を窒素ガスで置換して酸素を除いた。攪拌しながら槽内温度を85℃に保ったのち、TFEガスを導入し、2.4MPaGの圧力とした。内容物を攪拌しながら、ジコハク酸パーオキサイド468mgを溶解した脱イオン水を添加し、重合を開始した。重合の進行に伴い重合槽内の圧力が低下するが、2.4MPaGに一定になるよう、TFEを連続的に供給した。
TFE消費量が1580gの時点で、攪拌及びTFE供給を停止して、重合槽内のTFEをパージし、重合反応を終了した。水性分散液を取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の平均一次粒子径は294nm、固形分濃度は30.4質量%であった。
【0395】
実施例16
製造例11で得られたPTFE水性分散液を固形分濃度13質量%にまで希釈して、撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、170℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。18時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末のSSGは2.160であった。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表15及び16に示す。
【0396】
製造例12
ステンレススチール製攪拌翼と温度調節用ジャケットを備えた内容量6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水3600g、パラフィンワックス180g及びパーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩5.4g、シュウ酸0.0252gを仕込み、70℃に加温しながら重合槽内を窒素ガスで置換して酸素を除いた。攪拌しながら槽内温度を70℃に保ったのち、TFEガスを導入し、2.7MPaGの圧力とした。内容物を攪拌しながら、過マンガン酸カリウム7.5mgを溶解した脱イオン水を一定速度で連続的に添加し、重合槽内の圧力が2.7MPaGに一定になるよう、TFEを連続的に供給した。
TFE消費量が1730gの時点で、攪拌及びTFE供給を停止して、重合槽内のTFEをパージし、重合反応を終了した。水性分散液を取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液を得た。
得られたPTFE水性分散液の平均一次粒子径は296nm、固形分濃度は32.4質量%であった。
【0397】
実施例17
製造例12で得られたPTFE水性分散液を固形分濃度13質量%にまで希釈して、撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、180℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。18時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末のSSGは2.156であった。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表15及び16に示す。
【0398】
【表15】
【0399】
【表16】
【0400】
表15の実施例15と比較例9より、水分含有量が多くなると、押出圧の低下、圧力損失の低下となることが分かる。
HEPA濾材として好適であるが、比較例9で示すように水分含有量が多くなると押出圧が低下、押出圧力の変動係数は悪化する。また、延伸膜評価において、押出圧力が低下し、濾材の圧力損失が悪化する。
実施例16、17は、実施例15よりSSGが大きいため、濾材の捕集効率が低くなるが、圧力損失が低く、圧力損失の変動係数が小さいため、濾材として使用することが出来る。
【0401】
製造例13
ステンレススチール製攪拌翼と温度調節用ジャケットを備えた内容量6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水3580g、パラフィンワックス100g、及びパーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩5.4gを仕込み、80℃に加温しながらオートクレーブ内を窒素ガスで置換して酸素を除いた。CTFE1.20gを加えた後、更にTFEを圧入して系内圧力を0.78MPaGとし、攪拌しながら系内温度を80℃に保った。次いで、水20gにジコハク酸パーオキサイド360mgを溶解した水溶液と、水20gに過硫酸アンモニウム10mgを溶解した水溶液をTFEで圧入し、重合反応を開始した。重合反応の進行に伴い系内圧力が低下するがTFEを追加して系内温度を80℃、系内圧力を0.78MPaGに維持した。重合開始からTFEが1530g消費された(転化率90%)時点で、CTFE4.2gをTFEで圧入した。重合はその後も継続し、TFEの重合量が重合開始から1700gになった時点で撹拌及びTFEの供給を止め、直ちに系内のガスを放出して常圧とし、重合反応を終了した。水性分散液を取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の平均一次粒子径は241nm、固形分濃度は32.0質量%であった。
【0402】
実施例18
製造例13で得られたPTFE水性分散液を固形分濃度13質量%にまで希釈して、撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、145℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。18時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。得られたPTFE粉末のSSGは2.170、CTFE含有量は0.23質量%であった。結果を表17~19に示す。
【0403】
実施例19
145℃、18時間の熱処理を145℃、5時間の熱処理に変更する以外は、実施例18と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表17~19に示す。
【0404】
比較例10
製造例13で得られたPTFE水性分散液を固形分濃度13質量%まで希釈し、容器内で撹拌しながらPTFEを凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。
得られたPTFE湿潤粉末をステンレス製の平板トレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、145℃の熱風循環式電気炉内で平板トレーを熱処理した。18時間後、平板トレーを取り出し、平板トレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表17~19に示す。
【0405】
比較例11
145℃、18時間の熱処理を145℃、5時間の熱処理に変更する以外は、比較例10と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表17~19に示す。
【0406】
製造例14
ステンレススチール製攪拌翼と温度調節用ジャケットを備えた内容量6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水3560g、パラフィンワックス100g、及びパーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩0.9gを仕込み、70℃に加温しながらオートクレーブ内を窒素ガスで置換して酸素を除いた。PPVE0.67gとHFP0.37gを加えた後、更にTFEを圧入して系内圧力を0.78MPaGとし、攪拌しながら系内温度を70℃に保った。次いで、水20gにジコハク酸パーオキサイド322mgを溶解した水溶液と、水20gに過硫酸アンモニウム13mgを溶解した水溶液をTFEで圧入し、重合反応を開始した。重合反応の進行に伴い系内圧力が低下するがTFEを追加して系内温度を70℃、系内圧力を0.78MPaGに維持した。重合開始からTFEが160g消費された時点で、パーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩4.5gをTFEで圧入した。重合開始からTFEが1440g消費された(転化率90%)時点で、HFP1.57gとメタノール0.5gをTFEで圧入した。重合はその後も継続し、TFEの重合量が重合開始から1600gになった時点で撹拌及びTFEの供給を止め、直ちに系内のガスを放出して常圧とし、重合反応を終了した。水性分散液を取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の平均一次粒子径は249nm、固形分濃度は30.7質量%であった。
【0407】
実施例20
製造例14で得られたPTFE水性分散液を固形分濃度13質量%にまで希釈して、撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、145℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。18時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。得られたPTFE粉末のSSGは2.176、PPVE含有量は0.03質量%、HFP含有量は0.05質量%であった。結果を表17~19に示す。
【0408】
比較例12
メッシュトレーでの熱処理を平板トレーでの熱処理に変更する以外は、実施例20と同様にして
PTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表17~19に示す。
【0409】
製造例15
ステンレススチール製攪拌翼と温度調節用ジャケットを備えた内容量6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水3560g、パラフィンワックス100g、及びパーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩1.2gを仕込み、80℃に加温しながらオートクレーブ内を窒素ガスで置換して酸素を除いた。PPVE2.6gとHFP0.67gを加えた後、更にTFEを圧入して系内圧力を1.5MPaGとし、攪拌しながら系内温度を80℃に保った。次いで、水20gにジコハク酸パーオキサイド285mgを溶解した水溶液と、水20gに過硫酸アンモニウム11mgを溶解した水溶液をTFEで圧入し、重合反応を開始した。重合反応の進行に伴い系内圧力が低下するがTFEを追加して系内温度を80℃、系内圧力を1.5MPaGに維持した。重合開始からTFEが180g消費された(転化率10%)時点で、TFEの供給と攪拌を停止し、続いて系内圧力を0.1MPaGに達するまでガスをゆっくりと放出し、その後、系内圧力を1.5MPaGになるまでTFEを供給し、再び攪拌を開始した。また、同時にパーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩4.5gをTFEで圧入した。重合開始からTFEが1620g消費された(転化率90%)時点で、HFP5.70gとメタノール0.17gをTFEで圧入した。重合はその後も継続し、TFEの重合量が重合開始から1800gになった時点で撹拌及びTFEの供給を止め、直ちに系内のガスを放出して常圧とし、重合反応を終了した。水性分散液を取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の平均一次粒子径は252nm、固形分濃度は33.2質量%であった。
【0410】
実施例21
製造例15で得られたPTFE水性分散液を固形分濃度13質量%にまで希釈して、撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、145℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。18時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。得られたPTFE粉末のSSGは2.176、PPVE含有量は0.03質量%、HFP含有量は0.07質量%であった。結果を表17~19に示す。
【0411】
製造例16
ステンレススチール製攪拌翼と温度調節用ジャケットを備えた内容量6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水3560g、パラフィンワックス100g、及びパーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩1.45gを仕込み、70℃に加温しながらオートクレーブ内を窒素ガスで置換して酸素を除いた。PPVE3.0gを加えた後、更にTFEを圧入して系内圧力を0.78MPaGとし、攪拌しながら系内温度を70℃に保った。次いで、水20gにジコハク酸パーオキサイド326mgを溶解した水溶液と、水20gに過硫酸アンモニウム12mgを溶解した水溶液をTFEで圧入し、重合反応を開始した。重合反応の進行に伴い系内圧力が低下するがTFEを追加して系内温度を70℃、系内圧力を0.78MPaGに維持した。重合開始からTFEが170g消費された時点で、パーフルオロエーテルカルボン酸Cのアンモニウム塩2.2gをTFEで圧入した。重合開始からTFEが1530g消費された(転化率90%)時点で、メタノール0.28gをTFEで圧入した。重合はその後も継続し、TFEの重合量が重合開始から1700gになった時点で撹拌及びTFEの供給を止め、直ちに系内のガスを放出して常圧とし、重合反応を終了した。水性分散液を取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の平均一次粒子径は243nm、固形分濃度は31.6質量%であった。
【0412】
実施例22
製造例16で得られたPTFE水性分散液を固形分濃度13質量%にまで希釈して、撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約40質量%であった。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、145℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。18時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。得られたPTFE粉末のSSGは2.166、PPVE含有量は0.13質量%であった。結果を表17~19に示す。
また、得られたPTFE粉末には、炭素数9~14の一般式(2)で表される化合物の含有量は、定量下限未満であった。
【0413】
比較例13
メッシュトレーでの熱処理を平板トレーでの熱処理に変更する以外は、実施例22と同様にしてPTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表17、18に示す。
また、得られたPTFE粉末には、一般式(2)で表わされる炭素数9の化合物の含有量は、2質量ppb、炭素数11の化合物の含有量は11質量ppb、炭素数13の化合物の含有量は18質量ppbであり、炭素数10、12、及び14の化合物の含有量は定量下限未満であった。
【0414】
【表17】
【0415】
【表18】
【0416】
表17より、水分含有量が多くなると、押出圧力が低下し、押出圧力の変動係数が大きくなることが分かる。水分含有量が0.1%を超えると、押出圧力が不安定で良好なビードが得られなかった。
被覆電線評価では、水分含有量が多くなると、線径ぶれが大きくなり、スパークの個数が10個超えとなり、自己巻き耐熱性が低下することが分かる。
【0417】
【表19】
【0418】
また、実施例11~22で得られたPTFE粉末からは、下記式で表される含フッ素化合物は検出されないか、又は含有量が10質量ppb以下であった。
F(CFCOOH、
F(CFCOOH、
H(CFCOOH、
H(CFCOOH、
CFO(CFOCHFCFCOOH、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOH、
CFCFCFOCF(CF)COOH(パーフルオロエーテルカルボン酸A)、
CFCFOCFCFOCFCOOH(パーフルオロエーテルカルボン酸B)、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOH、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH(パーフルオロエーテルカルボン酸C)、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOH、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOH、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOH、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOH、及び、
【化13】
(式中、MはHである。)