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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162451
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】永久磁石モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2792 20220101AFI20231031BHJP
   H02K 21/22 20060101ALI20231031BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20231031BHJP
【FI】
H02K1/2792
H02K21/22 M
H02K11/215
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023146854
(22)【出願日】2023-09-11
(62)【分割の表示】P 2018223567の分割
【原出願日】2018-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】横山 光之
(72)【発明者】
【氏名】中山 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】志賀 剛
(57)【要約】
【課題】それぞれの磁気配向が異なる主マグネットと補助マグネットとを備えるロータを備える永久磁石モータを提供する。
【解決手段】本実施形態の永久磁石モータは、第1方向に磁気配向された複数の主マグネット,及び前記第1方向とは異なる第2方向に磁気配向され、前記主マグネットの間に配置される複数の補助マグネットからなる磁石を備えるロータと、ステータと、このステータに対して位置が固定されている磁気センサと、を有し、前記ロータにおいて、前記主マグネットが前記ステータに対向する側の一端部は、前記磁気センサに対向する位置に係り、前記補助マグネットが前記ステータに対向する側の一端部は前記位置に係らないように配列されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に磁気配向された複数の主マグネット,及び前記第1方向とは異なる第2方向に磁気配向され、前記主マグネットの間に配置される複数の補助マグネットからなる磁石を備えるロータと、
ステータと、
このステータに対して位置が固定されている磁気センサと、を有し、
前記ロータにおいて、前記主マグネットが前記ステータに対向する方向の一端部は、前記磁気センサに対向する位置に係り、前記補助マグネットが前記ステータに対向する方向の一端部は前記位置に係らないように配列されている永久磁石モータ。
【請求項2】
前記補助マグネットの径方向厚さは、前記主マグネットよりも薄く設定されている請求項1記載の永久磁石モータ。
【請求項3】
前記主マグネットと前記補助マグネットとが、磁気センサに対向する端面側に段差を設けるように配列されている請求項1記載の永久磁石モータ。
【請求項4】
前記主マグネット及び前記補助マグネットの長手方向が軸方向に一致するラジアルギャップタイプであり、
前記補助マグネットの軸方向の一端面が、前記主マグネットの軸方向の一端面よりも軸方向に凹んだ状態で配置されている請求項1記載の永久磁石モータ。
【請求項5】
前記主マグネット及び前記補助マグネットの長手方向が径方向に一致するアキシャルギャップタイプであり、
前記補助マグネットの径方向の一端面が、前記主マグネットの径方向の一端面よりも径方向に凹んだ状態で配置されている請求項1記載の永久磁石モータ。
【請求項6】
前記ロータは、円周を複数に分割した円弧状に配列された状態で樹脂成形された複数の分割樹脂成形部を、円周状に連結した構造である請求項1から5の何れか一項に記載の永久磁石モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、それぞれの磁気配向が異なる主マグネットと補助マグネットとを有するロータを備える永久磁石モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、以下のようなハルバッハ配列磁石の製造方法が開示されている。リング状の空間に径方向に着磁された複数の第1磁石を所定の間隔で配置し、第1磁石により周方向の壁面が形成される複数の第2キャビティを形成する。その第2キャビティに磁石製造用の溶融樹脂を充填すると、充填された溶融樹脂を第2キャビティの近傍に配置された第2着磁部によって周方向に着磁し、第1磁石及び第2磁石をリング状の空間から取り出す。これにより、ハルバッハ配列磁石を樹脂モールドする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-50179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、上記の製造に固定型と可動型とを用いており、第2磁石を周方向に着磁するための第2着磁部は、可動型に配置されている。この第2着磁部は、特許文献1の段落[0044]に記載されているように複雑な構造であり、このような第2着磁部を用いて第2キャビティに溶融樹脂を充填する際に周方向に着磁することは、非常に困難である。
【0005】
そこで、それぞれの磁気配向が異なる主マグネットと補助マグネットとを備えるロータマグネットをより簡単に製造できるロータを備える永久磁石モータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の永久磁石モータは、第1方向に磁気配向された複数の主マグネット,及び前記第1方向とは異なる第2方向に磁気配向され、前記主マグネットの間に配置される複数の補助マグネットからなる磁石を備えるロータと、
ステータと、
このステータに対して位置が固定されている磁気センサと、を有し、
前記ロータにおいて、前記主マグネットが前記ステータに対向する方向の一端部は、前記磁気センサに対向する位置に係り、前記補助マグネットが前記ステータに対向する方向の一端部は前記位置に係らないように配列されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態であり、分割樹脂部の平面図,正面図及び側面図
図2】分割樹脂部を成形型により樹脂成型する状態を説明する図
図3】ロータの製造工程を示すフローチャート
図4】完成したロータを示す斜視図
図5】永久磁石モータの一部を示す斜視図(その1)
図6】永久磁石モータの一部を示す斜視図(その2)
図7】ロータが回転している際に磁気センサが出力する信号波形を示す図
図8】主マグネットと補助マグネットとの軸方向配置に段差を設けない場合の図7相当図
図9】第2実施形態であり、ロータの製造工程を示すフローチャート
図10】第3実施形態であり、分割樹脂部を示す斜視図
図11】第4実施形態であり、分割樹脂部を示す斜視図
図12】第5実施形態であり、ロータヨークを透過させた状態で示す永久磁石モータの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のハルバッハ配列磁石を備えるロータマグネットの分割樹脂成形部1を示している。分割樹脂成形部1は、それぞれ8個の主マグネット2と補助マグネット3とを交互に配列した状態で樹脂4により成形されており、中心角60度の円弧状を成している。主マグネット2は、縦×横寸法が30×10.42[mm]であり、補助マグネット3は、縦×横寸法が30×5.25[mm]である。補助マグネット3の厚さ寸法は、主マグネット2よりも若干薄くなるように設定されている。分割樹脂成形部1の高さ寸法は38mmであり、図中上方では、補助マグネット3の上面が主マグネット2よりも2mm高くなるように段差が形成されている。本実施形態におけるマグネット2,3の長手方向は軸方向,つまり上記の縦方向である。分割樹脂成形部1の横幅寸法は104.37mmであり、縦幅寸法は70.76mmである。
【0009】
図2は、分割樹脂成形部1を樹脂成形する場合のイメージである。尚、この段階で主マグネット2は未着磁であり、補助マグネット3は周方向に着磁済みである。主マグネット2と補助マグネット3とを交互に配列した状態で、金型であるコア5,キャビティ6内に収容する。コア5の図中下方には、位置決め入れ子7,磁石突き出しピン8及び樹脂部突き出しピン9が配置されている。一方、図中上方であるキャビティ6側には、磁石保持ピン10及び樹脂充填ゲート11が配置されている。樹脂充填ゲート11より樹脂4が充填されて成形が行われる。
【0010】
図3は、ロータの製造工程を示すフローチャートである。未着磁の主マグネット2と、着磁済みの補助マグネット3とを樹脂成形型にそれぞれ挿入し(S1,S2)、両マグネット2,3を交互に、円弧状に配置する(S3)。それから、両マグネット2,3を磁石突き出しピン8により固定し(S4)、複数のゲート11から樹脂4を充填する(S5)。成形された分割樹脂成形部1を取り出すと(S6)、着磁装置に挿入して(S7)主マグネット2を着磁する(S8)。この時点で、分割樹脂成形部1が完成する(S9)。6個の分割樹脂成形部1をリング状に組立てて円周状にすると(S10)、図4に示すロータヨーク12の内周側に挿入して(S11)ロータ13が完成する(S12)。
【0011】
図5及び図6は、ロータ13に対し、回転位置を検出するため、例えばホールセンサ等の磁気センサを配置した例を示す。また、これらの図では、ステータヨーク21及びコイル22を備えるステータ23の一部についても図示している。補助マグネット3の図中では上になる下端面は、ロータヨーク12の下端面の位置と同等か、下端面よりも若干低くなる位置にある。これに対して、主マグネット2の下端面は、ロータヨーク12の下端面よりも高くなっている。すなわち、両マグネット2,3それぞれの下端面が段差,つまり凹凸を成すように配列されている。
【0012】
そして、例えば3個の磁気センサ24は、図6に示すように、ロータヨーク12の下端面に対し若干のギャップを措いた状態で、図示しない支持部材によって支持されている。これにより、ロータ13が回転した際には、磁気センサ24が、上記した下端面が凹凸を成す配列における凹部が係る位置となっている。尚、ロータ13,ステータ23及び磁気センサ24とで、ラジアルギャップタイプの永久磁石モータ25が構成されている。
【0013】
図7は、図5及び図6に示すように磁気センサを配置し、ロータ13が回転している際に磁気センサが出力した信号の波形を示す。図8は、主マグネット2,補助マグネット3の軸方向配置に段差を設けない場合の同波形である。段差を設けることで漏れ磁束が抑制されており、磁気センサの出力信号に抜けやばらつきが無く、磁極判別を安定して行うことができている。
【0014】
尚、本実施形態では、主マグネット2と補助マグネット3との縦寸法を等しくしているため、磁気センサ24を配置する側の下端面側に段差を設けることで上端面側にも段差が形成される実施形態となっている。これに替えて、主マグネット2と補助マグネット3との縦寸法を異ならせることで、上端面側を段差の無い構造とすることもできる。
【0015】
以上のように本実施形態によれば、径方向に磁気配向された複数の主マグネット2,及び周方向に磁気配向され、主マグネット2の間に配置される複数の補助マグネット3からなるハルバッハ配列磁石をロータマグネットとして製造する際に、未着磁状態の主マグネット2と周方向に着磁された補助マグネット3とを、円周を複数に分割した円弧状に配列した状態で樹脂成形して分割樹脂成形部1を生成する。そして、各分割樹脂成形部1の主マグネット2を径方向に着磁し、複数の分割樹脂成形部1を円周状に連結する。これにより、ハルバッハ配列磁石を有するロータマグネットの組立て性を簡素化できる。また、マグネット2及び3を着磁した後に複数の分割樹脂成形部1を連結するので、マグネット2,3それぞれの着磁を容易に行うことができる。
【0016】
この場合、補助マグネット3の径方向厚さ寸法を、主マグネット2よりも薄く設定することで、分割樹脂成形部1の剛性を向上させることができる。また、主マグネット2と補助マグネット3とが磁気センサに対向する端面側に段差を設けることで、分割樹脂成形部1の剛性を向上させることができ、且つ、磁気センサによる磁極判別を安定して行うことが可能になる。
【0017】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。第2実施形態では、ロータの製造工程が若干相違している。図9に示すように、ステップS7まで実行すると、主マグネット2を着磁せずにステップS10及びS11を実行する。そして、ロータフレーム12の内周側にリング状の分割樹脂成形部1を挿入した状態で、着磁装置により主マグネット2を着磁する(S13)。これにより、ロータ13が完成する(S14)。このような第2実施形態によれば、ロータフレーム12にリング状の分割樹脂成形部1を挿入した状態で主マグネット2を着磁するので、組み立て時にマグネット2及び3の磁気反発力や吸引力が作用せず、組み立てを容易に行うことができる。
【0018】
(第3,第4実施形態)
図10図11はそれぞれ第3,第4実施形態であり、分割樹脂部の他の構成例を示す。図10に示す第3実施形態では、補助マグネット14の厚さ寸法を主マグネット2と同一にすると共に、第1実施形態のように段差を設けずに構成した分割樹脂部15であり、図8に示す磁気センサの信号波形に対応した構成である。
【0019】
図11に示す第4実施形態は、第3実施形態の構成において、補助マグネット16の厚さを、第1実施形態と同様に主マグネット2よりも薄くして分割樹脂部16を構成している。
【0020】
(第5実施形態)
図12は、アキシャルギャップタイプの永久磁石モータ31に適用した第5実施形態を示す。このモータ31は、図中上方にロータ32が位置し、同下方にステータ33が位置している。図中では透過させた状態で示されているロータヨーク34は、リング状の平板で構成されており、そのロータヨーク34の下面側に主マグネット35,補助マグネット36が配置されている。主マグネット35は、下から上方向に、すなわち軸方向に磁気配向されている。補助マグネット36は第1実施形態等と同様に、周方向に磁気配向されている。
【0021】
主マグネット35の長手方向である径方向の長さは、補助マグネット36の径方向長さよりも長く設定されている。主マグネット35の径方向端部は、ロータヨーク34の外縁よりも外方となるように突出している。補助マグネット36の径方向端面は、ロータヨーク34の外縁に等しくなるように位置するか、又はその外縁よりもやや内側に位置している。すなわち、両マグネット35,36それぞれの先端面が、周方向において段差,つまり凹凸を成すように配列されている。マグネット35,36については、第1実施形態と同様の製造方法で樹脂成形されている。
【0022】
そして、磁気センサ24は、ロータヨーク34の外縁に対し若干のギャップを措いた状態で、図示しない支持部材によって支持されている。これにより、ロータ32が回転した際には、磁気センサ24が、上記した先端面が凹凸を成す配列における凹部が係る位置となっている。
【0023】
尚、本実施形態では、主マグネット35と補助マグネット36の径方向の寸法を異ならせることで、磁気センサ24を配置する外周側に段差を設け、中心軸側には段差を設けない実施形態となっている。これに替えて、主マグネット35と補助マグネット36との径方向の寸法を等しくするなどして、中心軸側にも段差を有する構造とすることもできる。
以上のように第5実施形態によれば、本発明をアキシャルギャップタイプの永久磁石モータ31にも適用できる。
【0024】
(その他の実施形態)
分割樹脂部は、リングを6分割するものに限らず、4分割や8分割等にしても良い。
各部の寸法は、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0025】
図面中、1は分割樹脂成形部、2は主マグネット、3は補助マグネット、4は樹脂、12はロータフレーム、13はロータ、14は補助マグネット、15,16は分割樹脂成形部を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12