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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162458
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20231101BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156062
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】大西 輝幸
(72)【発明者】
【氏名】磯部 晋一
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB19
3D333CC06
3D333CC18
3D333CC28
3D333CC46
3D333CC47
3D333CD04
3D333CD05
3D333CD06
3D333CD07
3D333CD31
3D333CD32
3D333CE06
3D333CE33
(57)【要約】
【課題】ワイヤーハーネスの固定部からコネクタまでの部位を、固定部によって折り曲げ方向を規定してドリップループを形成する。
【解決手段】第1、第2ハウジング部10,11を有するハウジング9と、第1、第2ハーネス部8a、8bを被覆した第1、第2コルゲートチューブ25a、25bを固定支持する固定部15と、を備え、ECUケーシング21aは、軸方向一端部に第1、第2ハーネス部が接続される第1、第2コネクタ部を有し、固定部は、第2ハウジング部の鉛直方向下側の位置に設けられた突出片16と、突出片に形成された取付孔に挿入して係り止めするクリップ18とを有し、固定部と第1、第2コネクタ部との間に有する各コルゲートチューブの一部が各コネクタ部の位置よりも鉛直方向の下側となるように位置決め規定した。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの回転力が伝達されるピニオン軸と、
前記ピニオン軸に設けられたトーションバーの捩れから操舵力を検出するトルクセンサと、
前記ピニオン軸と噛み合うラック歯が形成されたラックバーと、
前記ラックバーを介して転舵輪に付与する操舵力を発生する電動モータと、
前記電動モータを駆動制御する電子部品を収容するECUケーシングと、
前記ECUケーシングに設けられて、前記トルクセンサに一端部が接続されたワイヤーハーネスの他端部が接続されるコネクタと、
前記ピニオン軸及びトルクセンサを収容する第1ハウジング部と、前記ラックバーを収容する筒状の第2ハウジング部と、を有するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記ワイヤーハーネスの途中の部位を固定支持する固定部と、
を備えた電動パワーステアリング装置であって、
前記第1ハウジング部は、前記第2ハウジング部の周壁の鉛直方向上側に設けられ、
前記ECUケーシングは、前記第2ハウジング部の周壁の鉛直方向下側の位置であって、前記第2ハウジング部の長手方向の前記第1ハウジング部から離間した位置に設けられ、
前記固定部は、一部が前記第2ハウジング部の周壁の鉛直方向下側の前記第1ハウジング部と反対側の位置に設けられ、前記固定部と前記コネクタとの間に有する前記ワイヤーハーネスの一部が、前記コネクタの位置よりも鉛直方向の下側となるように規定することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記固定部は、前記第2ハウジング部の外面から径方向外側へ一体に突出した突出片と、該突出片に貫通形成された取付孔と、前記ワイヤーハーネスに取り付けられ、前記取付孔に挿入して係り止め可能なクリップと、を有し、
前記第2ハウジング部は、前記ワイヤーハーネスの前記固定部と第1ハウジング部との間の部位が第2ハウジング部の外面形状に沿って当接する当接部を有し、前記当接部が前記ワイヤーハーネスの途中の部位を前記突出片の方向へ案内することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記固定部は、前記第2ハウジング部の外面から径方向外側へ一体に突出した突出片と、該突出片に貫通形成された取付孔と、前記ワイヤーハーネスに取り付けられ、前記取付孔に挿入して前記突出片に前記ワイヤーハーネスを固定するクリップと、を有し、
前記取付孔は、前記第2ハウジング部近傍の一端から第2ハウジング部から離間する方向へ傾斜状に延びた長孔に形成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記ワイヤーハーネスの前記固定部による固定箇所からコネクタ側に延びた部位を、鉛直方向成分と第2ハウジング部に平行な水平方向成分とに分けたとき、前記固定部側では鉛直方向成分と水平方向成分との間の下向き傾斜状になり、最大下向き位置から前記コネクタ側では該コネクタ方向に向かって上向き傾斜状になっていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記ワイヤーハーネスは、2本の第1ハーネスと第2ハーネスを有し、
前記固定部は、前記クリップに設けられた締結バンドを介して前記第1ハーネスと第2ハーネスを一緒に結束することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記第1ハーネスと第2ハーネスは、前記締結バンドによって互いに接触した状態で結束されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
請求項5に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記第1ハーネスと第2ハーネスは、前記固定部と前記コネクタとの間で、前記第2ハーネスが前記第1ハーネスよりも長く形成されて、前記第2ハーネスが第1ハーネスよりも鉛直方向下側に配置されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
請求項5に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記コネクタは、前記第1ハーネスと第2ハーネスに対応して2つの第1コネクタ部と第2コネクタ部を有し、
前記第1コネクタ部は、前記第2コネクタ部に対して鉛直方向上側に配置されていると共に、前記ラックバーの軸心方向に対して直交する水平方向に延びた断面横長形状になっている一方、
前記第2コネクタ部は、前記ラックバーの軸心方向に対して直交する垂直方向に延びた断面縦長形状になっていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項9】
請求項4に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記ワイヤーハーネスの前記固定部と前記コネクタとの間の長さは、前記固定部と前記トルクセンサとの間の長さよりも長く形成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項10】
請求項5に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記ワイヤーハーネスは、外周面に凹部と凸部とが交互に形成されたコルゲートチューブによって被覆され、
前記締結バンドの内周面には、前記コルゲートチューブの凹凸部に噛み合い嵌合する凹凸部を有することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項11】
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記ワイヤーハーネスのうち前記固定部から前記トルクセンサ方向に延びる部位を、鉛直方向成分と該鉛直方向成分と直交する水平方向成分とに分けたとき、前記トルクセンサ方向に延びた部位は、前記固定部側からトルクセンサ方向に向かって鉛直方向成分と水平方向成分との間の上向き傾斜状になっていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項12】
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記固定部は、前記第2ハウジング部の外面から径方向外側へ一体に突出した突出片と、該突出片に貫通形成された取付孔と、前記ワイヤーハーネスに取り付けられて、前記取付孔に挿入可能なクリップと、を有し、
前記クリップは、前記取付孔に挿入することによって前記突出片に前記ワイヤーハーネスを固定することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータの回転力によってステアリングの操作力をアシストする電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の電動パワーステアリング装置としては、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールの回転操作力が伝達されるピニオン軸と、前記ピニオン軸に設けられたトーションバーの捩れから操舵力を検出するトルクセンサと、前記ピニオン軸と噛み合うラック歯が形成されたラックバーを介して転舵輪に付与する操舵力をアシストする電動モータと、前記電動モータを駆動制御する電子制御部を収容するECUケーシングに設けられて、前記トルクセンサに一端部が接続されたワイヤーハーネスの他端部が接続されるコネクタと、を備えている。
【0004】
また、前記ワイヤーハーネスは、前記トルクセンサとコネクタとの途中の部位が締結バンドによって円筒状のラックバーハウジングに締め付け固定されて、車両の振動などによる影響を減少させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-011624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したパワーステアリング装置は、前述のように、ワイヤーハーネスの途中の部位が締結バンドによってラックバーハウジングに固定されているが、ワイヤーハーネスは、前記締結バンドによる固定箇所から前記コネクタまでの間の部位が直線的な下り傾斜状に形成されている。このため、外部からワイヤーハーネスに付着した洗車水や雨水などの水滴が前記ワイヤーハーネスを伝って締結バンドによる固定箇所からコネクタ方向へ流下して、該コネクタの内部に浸入するおそれがある。
【0007】
本発明は、前記特許文献1に記載した従来の技術的課題に鑑みて案出されたもので、ワイヤーハーネスの固定部からコネクタまでの部位に対して、前記固定部によって折り曲げ方向などを規定してドリップループを形成し、コネクタへの水の浸入を抑制できる電動パワーステアリング装置を提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、とりわけ、第1ハウジング部は、第2ハウジング部の周壁の鉛直方向上側に設けられ、ECUケーシングは、前記第2ハウジング部の周壁の鉛直方向下側の位置であって、前記第2ハウジング部の長手方向の前記第1ハウジング部から離間した位置に設けられ、ワイヤーハーネスを第2ハウジングに固定する固定部は、突出片が前記第2ハウジング部の周壁の鉛直方向下側の前記第1ハウジング部と反対側の位置に設けられ、前記固定部と前記コネクタとの間に有する前記ワイヤーハーネスの一部が、前記コネクタの位置よりも鉛直方向の下側となるように規定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固定部によってワイヤーハーネスの折り曲げ方向などを規定してドリップループを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の主要部を示す正面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】本実施形態に供されるハウジングの一部拡大図である。
図4図1の矢印A方向から視た第1、第2コネクタ部の概略図である。
図5】本実施形態に供されるコルゲートチューブにクリップが取り付けられた状態を示し、Aはコルゲートチューブにクリップが取り付けられた状態の側面図、同図BはAのB-B線断面図である。
図6】本実施形態に供されるコルゲートチューブの外周面とクリップのバンドの内周面にそれぞれ形成された凹凸部を示す概略図である。
図7】本実施形態に供されるコルゲートチューブにおける固定部からセンサコネクタまでの部位が第2ハウジングに当接している状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電動パワーステアリング装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の主要部を示す正面図、図2図1の要部拡大図である。
【0013】
電動パワーステアリング装置は、図1に示すように、運転者からの操舵力を伝達する操舵機構1と、運転者の操舵操作を補助する操舵アシスト機構2と、を備えている。
【0014】
操舵機構1は、車両の運転室内に配置された図示せぬステアリングホイールと車両の前輪である2つの転舵輪とを機械的に連結している。操舵機構1は、ステアリングホイールからの回転力が伝達される入力軸3と、図示せぬトーションバーを介して入力軸3に接続されたピニオン軸である出力軸4と、を有する操舵軸5と、この操舵軸5の回転を転舵輪に伝達する伝達機構6を備えている。
【0015】
また、操舵機構1は、トーションバーの捩れから操舵力を検出するトルクセンサ7を有している。このトルクセンサ7は、一般的なもので、トーションバーの捩りを電気信号に変換して、この電気信号を後述する電子制御ユニット21にワイヤーハーネス8を介して出力するようになっている。また、トルクセンサ7は、ワイヤーハーネス8の一端部(上端部)が接続される図外の一対のセンサコネクタ部を有している。
【0016】
出力軸4とトルクセンサ7は、後述するハウジング9の一部を構成する大径円筒状の第1ハウジング部10の内部に収容されており、センサコネクタ部は、第1ハウジング部10の外周壁に設けられている。第1ハウジング部10は、金属材である例えばアルミニウム合金材によって形成されている。
【0017】
伝達機構6は、出力軸4の外周に設けられた図示せぬピニオンと、転舵軸であるラックバー12の外周に設けられた図示せぬラックと、からなるラック&ピニオン機構(ラック&ピニオン・ギヤ)により構成されている。
【0018】
ラックバー12の両端は、図示せぬタイロッドおよび2つのナックルアームを介して対応する転舵輪にそれぞれ連結されている。
【0019】
ラックバー12は、ハウジング9の一部を構成する円筒状の転舵軸ハウジングである第2ハウジング部11内においてラックバー12の軸線P方向へ移動可能に設けられている。ラックバー12は、該ラックバー12の一対の軸方向端部である両端部12a,12bにおいて、図示せぬ第1ボールジョイントおよび第2ボールジョイントとそれぞれ接続可能となっている。ラックバー12は、金属材料によって形成されるとともに、概ね円柱状をなす図外の転舵軸本体部と、この転舵軸本体の外周面に形成された螺旋溝形状をなす転舵軸ボールねじ溝12cと、を備えている。転舵軸ボールねじ溝12cは、転造によってラックバー12の軸方向中央位置からラックバー12の一端部12a付近まで螺旋溝形状に形成されている。つまり、転舵軸ボールねじ溝12cは、ラックバー12の軸方向中央位置から第2ハウジング部11の一端部11aより露出した部位まで螺旋溝形状に形成されている。転舵軸ボールねじ溝12cは、後述するナットの同じく螺旋溝形状のナットボールねじ溝との間で複数のボールが循環するボールねじ機構を構成する。
【0020】
第2ハウジング部11は、第1ハウジング部10と同じく例えばアルミニウム合金材料によって円筒状に形成されて第1ハウジング部10と例えば鋳造などによって一体成形されている。また、第2ハウジング部11は、軸方向の両端部11a、11b側に図外の車体にボルトによって固定されるブロック状の一対の第1、第2ブラケット13a、13bが一体に設けられている。この各ブラケット13a、13bには、ボルトが挿通されるボルト挿通孔13c、13dが貫通形成されている。
【0021】
なお、第1ハウジング部10と第2ハウジング部11とによってハウジング9が構成されている。
【0022】
第2ハウジング部11の鉛直方向下側には、補強リブ14が軸方向に沿って一体に設けられている。この補強リブ14は、細長い板状に形成されて、第2ハウジング部11の一端部11aから他端部11b側の第2ブラケット13b近傍まで延長形成されている。
【0023】
図3はハウジングの一部拡大図である。
【0024】
また、図3に示すように、第2ブラケット13bと補強リブ14との間には、固定部15が設けられている。この固定部15は、補強リブ14のブラケット13近傍の一部から鉛直方向下側に突出した突出片16と、該突出片16のほぼ中央に貫通形成された取付孔17と、取付孔17に挿入して係り止めされる後述のクリップ18と、から構成されている。
【0025】
突出片16は、図3の正面から視てほぼ楕円形状に形成され、補強リブ14の端縁から第2ブラケット13の側端縁まで長手方向に沿って延びて設けられ、補強リブ14と同じ薄い肉厚の板状に形成されている。
【0026】
取付孔17は、細長い長孔状に形成されて、第2ハウジング部11側の上端17aから下端17bまで図3中右下方向へ傾斜状に形成されている。
【0027】
クリップ18は、ワイヤーハーネス8の長手方向の途中に取り付けられ、具体的な構造などについては後述する。
【0028】
操舵アシスト機構2は、図1及び図2に示すように、操舵機構1に操舵力を付与する電動アクチュエータである電動モータ20を備えている。この電動モータ20は、第2ハウジング部11の軸方向と平行に配置された円筒状のモータハウジング20aと、該モータハウジング20aの内部収容された図外のロータやステータ、磁石などの複数の部品と、を有している。電動モータ20は、伝達機構6を介してラックバー12に連係しており、図外のナットを回転駆動して、該ナットの回転に伴いラックバー12を軸方向に移動させるようになっている。
【0029】
伝達機構6は、電動モータ20の出力軸の先端部外周に固定された入力プーリとラックバー12の外周に固定された出力プーリが、ベルトを介して接続されることでラックバー12と連係されている。そして、出力プーリとラックバー12との間には、減速機であるボールねじ機構が設けられている。ボールねじ機構は、一般的な構造であって、前述したように、ラックバー12の外周面に設けられた転舵軸ボールねじ溝12cと、ナットの環状をなすナット本体の内周面に設けられた図外のナットボールねじ溝と、これらボールねじ溝の間を循環する複数のボールと、を備えている。
【0030】
転舵軸ボールねじ溝12cは、螺旋溝形状に形成され、ラックバー12が挿入されるナット本体の内周面に形成された螺旋溝形状のナットボールねじ溝との間に、螺旋状のボール循環通路を形成する。
【0031】
そして、このボール循環通路内を、複数のボールが循環する。ボールは、ラックバー12の軸線P方向においてラックバー12を軸方向に移動させる。
【0032】
また、電動モータ20の軸方向の一端部側には、該電動モータ20の駆動を制御する電子制御部である電子制御ユニット(ECU)21が一体的に設けられている。この電子制御ユニット21は、各種制御処理を記憶および実行する機能を有し、図示せぬ舵角センサからの舵角の信号やトルクセンサ7からの操舵トルクの信号に基づいて電動モータ20を駆動制御するようになっている。
【0033】
電子制御ユニット21は、モータハウジング20aと直列に配置されたほぼ円筒状のECUケーシング21aと、該ECUケーシング21aの内部に収容された回路基板やコンデンサなどの複数の電子部品と、を備えている。ECUケーシング21aは、例えば合成樹脂材によって有底円筒状に一体に形成され、軸方向の一端部がモータハウジング20aに例えばボルトなどの結合手段によって結合されている。また、ECUケーシング21aの軸方向の他端部には、ワイヤーハーネス8の他端部が接続されるコネクタ22が設けられている。
【0034】
図4図1の矢印A方向から視た第1、第2コネクタ部の概略図である。
【0035】
コネクタ22は、ワイヤーハーネス8の後述する一対の第1、第2ハーネス8a、8bに対応して一対の第1、第2コネクタ部22a、22bから構成されている。この第1、第2コネクタ部22a、22bは、図4に示すように、それぞれ正面視ほぼ矩形状に形成されており、鉛直方向上側、つまり第2ハウジング部11側に配置された第1コネクタ部22aは、ラックバー12の軸線Pに対して直交する方向へ水平に延びた断面横長形状に形成されている。一方、第1コネクタ部22aより鉛直方向下側に配置された第2コネクタ部22bは、ラックバー12の軸線P方向に対して直交する垂直上下方向に延びた断面縦長形状に形成されている。
【0036】
ワイヤーハーネス8は、トルクセンサ7と電子制御ユニット21の故障やトラブルなどに対して備えるいわゆる冗長化を図るために、一対の第1ハーネス8aと第2ハーネス8bによって構成されている。また、第1ハーネス8aと第2ハーネス8bは、長手方向の両端部にセンサコネクタや第1、第2コネクタ部22a、22bにそれぞれ接続される雄型の端子23、24a、24bがそれぞれ設けられている。つまり、第1、第2ハーネス8a、8bのトルクセンサ7側の一端部には一つの第1端子23が設けられ、第1、第2ハーネス8a、8bのそれぞれの他端部には2つの第2、第3端子24a、24bが設けられている。この第2、第3端子24a、24bが、第1、第2コネクタ部22a、22bにそれぞれ接続される。
【0037】
また、第1、第2ハーネス8a、8bは、図1図2に示すように、それぞれが第1、第2コルゲートチューブ25a、25bによって被覆されている。
【0038】
図5Aはコルゲートチューブにクリップが取り付けられた状態を示す側面図、同図BはAのB-B線断面図、図6はコルゲートチューブの外周面とクリップのバンドの内周面にそれぞれ形成された凹凸部を示す概略図である。
【0039】
各コルゲートチューブ25a,25bは、周知の構造であって、図5図6に示すように、外周に蛇腹状の凹凸部25e、25fが形成されて自由に撓み変形可能になっている。
【0040】
なお、第1、第2ハーネス8a、8bは、第1、第2コルゲートチューブ25a、25bによって被覆されていることか、便宜上、第1、第2ハーネス8a、8bを第1、第2コルゲートチューブ25a、25bとして説明する
各コルゲートチューブ25a、25bには、突出片16の取付孔17に挿通して係り止めされる前記クリップ18が取り付けられている。
【0041】
このクリップ18は、図5A,Bに示すように、合成樹脂製のクリップ本体18aと、該クリップ本体18aに設けられた可撓性の締結バンド(結束バンド)18bと、から構成されている。クリップ本体18aは、締結バンド18bを引き出し可能に支持する頭部18cと、該頭部18cの図中下端に一体に設けられた扁平状のフランジ部18dと、該フランジ部18dの下端から延出して取付孔17に挿入される脚部18eと、から構成されている。この脚部18eは、外形が取付孔17の長孔形状とほぼ同じ横断面ほぼ長円形状に形成され、両側面に撓み変形可能な複数の爪部18fを有している。したがって、脚部18eは、取付孔17に挿入されると各爪部18fが内側に撓み変形しつつ取付孔17に最大に挿入されると、各原形状に弾性復帰して外側に拡がってフランジ部18dと協働して取付孔17の開口縁に係り止めされるようになっている。
【0042】
締結バンド18bは、頭部18cの上端に設けられ、2本の第1、第2コルゲートチューブ25a、25bの外周面を巻回して並列状態に結束するようになっている。また、締結バンド18bの内面には、図6に示すように、各コルゲートチューブ25a、25bの凹凸部25e、25fに嵌合可能な凹凸部18f、18gが形成されている。
【0043】
クリップ18は、図2に示すように、取付孔17内に挿入して係り止めした際、取付孔17の傾斜角度に倣って第2ハウジング部11側からブラケット13方向に向かって下り傾斜状に配置されることになる。
【0044】
また、各コルゲートチューブ25a、25bは、固定部15から第1、第2コネクタ部22a、22bまでの長さが直線的な長さよりも十分に長く設定されて撓みによる屈曲変形可能な長さになっている。
【0045】
そして、それぞれ各コルゲートチューブ25a、25bは、止め点である固定部15によって、特に固定部15と第1、第2コネクタ部22a、22bまで間の部位の取り回し構成が規定される。
【0046】
すなわち、クリップ18は、固定部15の傾斜状の取付孔17の傾斜角度に沿って傾斜状に配置されていることから、第1コルゲートチューブ25aと第2コルゲートチューブ25bはその取り回し角度がクリップ18位置から鉛直方向下側へ傾斜状に規定され、それぞれ最下位部25c、25dから各コネクタ部22a、22b方向へ傾斜状に立ち上がるように屈曲変形されている。つまり、それぞれの最下位部25c、25dは、各コネクタ部22a、22bの位置よりも十分に低い位置になっており、これによって、ドリップループが形成されている。
【0047】
また、第1、第2コルゲートチューブ25a、25bは、固定部15から各コネクタ部22a、22b間の長さL1が、固定部15からセンサコネクタ(端子23)までの長さL2よりも長く形成されている。このため、固定部15と各コネクタ部22a、22bとの間に前述したドリップループを形成し易くなる。
【0048】
図7はコルゲートチューブが固定部からセンサコネクタまでに第2ハウジングに当接している状態を示す概略図である。
【0049】
第1、第2コルゲートチューブ25a、25bの固定部15からトルクセンサ7のセンサコネクタ部(第1端子23)までの部位は、図7に示すように、その一部が第2ハウジング部11の円弧状外面に沿って湾曲状に変形しつつ当接している。この第2ハウジング部11の当接部11bが、第1,第2コルゲートチューブ25a、25bの途中の部位を固定部15方向へ案内するようになっている。
【0050】
さらに、固定部15と各コネクタ部22a、22b間における第2コルゲートチューブ25bは、第1コルゲートチューブ25aよりも長く形成されて、第1コルゲートチューブ25aよりも鉛直方向下側に配置されている。したがって、第1コルゲートチューブ25aと第2コルゲートチューブ25bは、互いに離間した状態になっているので例えば振動などによる干渉が抑制される。
【0051】
また、図2に示すように、第1、第2コルゲートチューブ25a、25bの固定部15から各コネクタ部22a、22b側に延びた部位を、鉛直方向成分(矢印A)とこの鉛直方向と直交する第2ハウジング部11と平行な水平方向成分(矢印B)とに分けたとき、前記固定部15側では矢印A成分と矢印B成分との間の下向き傾斜状の矢印C成分になり、最大下向きの最下位部25c、25dから各コネクタ部22a、22b側では該各コネクタ部22a、22b方向に向かって上向き傾斜状になっている。
【0052】
一方、図2に示すように、第1、第2コルゲートチューブ25a、25bの固定部15からトルクセンサ7方向に延びた部位を、垂直方向成分(矢印C)と該垂直方向成分と直交する水平方向成分(矢印D)に分けたとき、前記トルクセンサ7方向に延びた部位は、固定部15側からトルクセンサ7方向に向かって矢印C成分と矢印D成分との間の上向き傾斜状の矢印E成分になっている。
〔本実施形態における作用効果〕
電動パワーステアリング装置の基本的な作動は、運転者がステアリングホイールを回転操作すると、入力軸3が回転してトーションバーが捩られ、これにより生じるトーションバーの弾性力によって、出力軸4が回転する。そして、出力軸4の回転運動が上記ラック&ピニオン機構によりラックバー12の軸方向に沿う直線運動に変換され、タイロッドを介して図示せぬナックルアームが車幅方向へと押し引きされることによって、対応した転舵輪の向きが変更される。
【0053】
また、前記トーションバーの捩りを検出したトルクセンサ7からの制御信号がワイヤーハーネス8を介して電子制御ユニット21に送信され、この制御信号に基づいて電子制御ユニット21が電動モータ20の駆動制御を行う。この電動モータ20の回転駆動力を、ボール螺子機構などを介してラックバー12に伝達して転舵輪に対する操舵力をアシストする。
【0054】
そして、本実施形態では、第1、第2ハーネス8a、8bを被覆した第1、第2コルゲートチューブ25a、25bの途中を固定部15によって第2ハウジング部11に固定した際、前記固定部15と各コネクタ部22a、22bとの間の部位を、クリップ18などの固定部15によって各コネクタ部22a、22bの位置よりも鉛直方向下側の方向となるように位置決め規定することができる。つまり、固定部15によって第1、第2コルゲートチューブ25a、25bの一部を、各コネクタ部22a、22bより鉛直方向下側に折曲形成して、いわゆるドリップループに形成することができる。
【0055】
このため、トルクセンサ7側などから第1、第2コルゲートチューブ25a、25bの外面を伝って流下した水滴はドリップループの最下位部25c、25dから滴下する。これによって、第1、第2コネクタ部22a、22b内への水の浸入を効果的に抑制することができる。
【0056】
特に、固定部15における突出片16の第2ハウジング部11の鉛直方向下側に配置した特異な形成位置と、各コルゲートチューブ25a、25bに対する取付孔17やクリップ18の配置角度による位置決め規定と、によって各コルゲートチューブ25a、25bの一部を屈曲変形させてドリップループを形成するので、この形成作業と構造が簡単であり、コストの点で有利である。
【0057】
また、各コルゲートチューブ25a、25bの固定部15から各コネクタ部22a、22bまでの短い長さの中でドリップループを形成することが可能になると共に、複雑な屈曲変形を抑制できるのでドリップループが崩れ難くなる。
【0058】
固定部15は、クリップ18の締結バンド18bを介して2本のコルゲートチューブ25a、25bを一緒に結束できるので、それぞれ別個に固定する場合に比較して部品点数の削減が図れる。
【0059】
さらに、固定部15によって2本のコルゲートチューブ25a、25bが結束されて横断面ほぼ扁平状になることから、この点でもドリップループの形状が崩れることなく屈曲形状を維持することができる。
【0060】
また、各コルゲートチューブ25a、25bは、その一部が第2ハウジング部11の当接部11bに沿って接触しながら突出片16方向へ案内されることから、突出片16とクリップ18による第2ハウジング部11に対する固定作業が容易になる。
【0061】
第1コネクタ部22aと第2コネクタ部22bは、それぞれの位置が互いに上下に離間していると共に、断面形状が異なっていることから、それぞれに接続された第1、第2コルゲートチューブ25a、25bを各コネクタ部22a、22b付近で離間させることができる。このため、特に、車両の振動などによる各コルゲートチューブ25a、25b同士の干渉が抑制される。この結果、該各コルゲートチューブ25a、25bの干渉に伴う各コネクタ部22a、22b間の干渉や、干渉による破損などを効果的に抑制できる。
【0062】
さらに、各コルゲートチューブ25a、25bの外周面の凹凸部25e、25fと締結バンド18bの内周面の凹凸部18f、18gを、噛み合い嵌合させることで、両コルゲートチューブ25a、25bをクリップ18に強固かつ確実に結合させることが可能になる。
【0063】
また、ワイヤーハーネス8の第1、第2ハーネス8a、8bは、第1、第2コルゲートチューブ25a、25bによって被覆されていることから、洗車や車両走行中に跳ね上げられた泥や水などの直接的な付着を抑制できる。
【0064】
固定部15の突出片16は、ハウジング9の鋳造時などに第1、第2ハウジング部10,11や補強リブ14と一緒に成形できるので、その成形作業も容易である。また突出片16は、補強リブ14と協働して第1ハウジング部10の剛性の向上に寄与することができる。
【0065】
また、第1、第2コルゲートチューブ25a、25bは、前述のように、固定部15から第1、第2コネクタ部22a、22bまでの間の部位が、鉛直方向の矢印A成分と水平方向の矢印B成分との間の傾斜状の矢印C成分から矢印B成分に変向して各コネクタ部22a、22b側に向かって延びている。このため、各コルゲートチューブ25a、25bは、短い長さとなって複雑な屈曲変形が抑制されてドリップループの形が崩れ難くなる。
【0066】
さらに、第1、第2コルゲートチューブ25a、25bは、前述のように、固定部15からセンサコネクタ(第1端子23)なでの間の部位が垂直方向の矢印C成分と水平方向の矢印D成分との間の傾斜状の矢印E成分に沿ってセンサコネクタ側に向かって延びている。このため、センサコネクタから固定部15までの各コルゲートチューブ25a、25bを第2ハウジング11の当接部11dに無理なく第2ハウジング部11の当接部11dに沿わせることができる。
【0067】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、ワイヤーハーネス8としては1本であっても良く、したがって、電子制御ユニット21側のコネクタ22も1つにすることも可能である。
【0068】
さらに、例えば突出片16や取付孔17の形成位置などを変更してワイヤーハーネス8の撓み変形態様を規制してドリップループの形状をさらに変更することも可能である。
【0069】
以上説明した実施形態に基づく電動パワーステアリング装置としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
【0070】
その1つの態様として、ステアリングホイールの回転力が伝達されるピニオン軸と、前記ピニオン軸に設けられたトーションバーの捩れから操舵力を検出するトルクセンサと、前記ピニオン軸と噛み合うラック歯が形成されたラックバーと、前記ラックバーを介して転舵輪に付与する操舵力を発生する電動モータと、前記電動モータの出力軸と反対側の位置に配置され、前記電動モータを駆動制御する電子部品を収容するECUケーシングと、前記ECUケーシングに設けられて、前記トルクセンサに一端部が接続されたワイヤーハーネスの他端部が接続されるコネクタと、前記ピニオン軸及びトルクセンサを収容する第1ハウジング部と、前記ラックバーを収容する筒状の第2ハウジング部と、を有するハウジングと、前記ハウジングに設けられ、前記ワイヤーハーネスの途中の部位を固定支持する固定部と、を備えた電動パワーステアリング装置であって、
前記第1ハウジング部は、前記第2ハウジング部の周壁の鉛直方向上側に設けられ、前記ECUケーシングは、前記第2ハウジング部の周壁の鉛直方向下側の位置であって、前記第2ハウジング部の長手方向の前記第1ハウジング部から離間した位置に設けられ、前記固定部は、一部が前記第2ハウジング部の周壁の鉛直方向下側の前記第1ハウジング部と反対側の位置に設けられ、前記固定部と前記コネクタとの間に有する前記ワイヤーハーネスの一部が、前記コネクタの位置よりも鉛直方向の下側となるように規定する。
【0071】
この発明の態様によれば、ワイヤーハーネスの途中を固定部で第2ハウジング部に固定支持した際に、固定部とコネクタとの間の一部を、前記固定部によってコネクタの位置よりも鉛直方向下側となるように規定した。これによって、ワイヤーハーネスの一部は、コネクタより鉛直方向下側に折り曲げられていわゆるドリップループが形成される。このため、トルクセンサ側からワイヤーハーネスの外面を伝って流下した水滴がドリップループから滴下することから、コネクタ内への浸入を抑制できる。
【0072】
特に、固定部の第2ハウジング部に対する特異な形成位置と、ワイヤーハーネスに対する固定部の形状規定と、によってワイヤーハーネスの一部の撓み変形させてドリップループを形成するので、この形成作業と構造が簡単であり、コストの点で有利である。
【0073】
さらに好ましくは、前記固定部は、前記第2ハウジング部の外面から径方向外側へ一体に突出した突出片と、該突出片に貫通形成された取付孔と、前記ワイヤーハーネスに取り付けられ、前記取付孔に挿入して係り止め可能なクリップと、を有し、
前記第2ハウジング部は、前記ワイヤーハーネスの前記固定部と第1ハウジング部との間の部位が第2ハウジング部の外面形状に沿って当接する当接部を有し、前記当接部が前記ワイヤーハーネスの途中の部位を前記突出片の方向へ案内する。
【0074】
この発明の態様によれば、第2ハウジング部の当接部によって、ワイヤーハーネスの途中の部位を突出片方向へ案内することができるので、突出片でのワイヤーハーネスの固定作業が容易になる。
【0075】
さらに好ましくは、前記固定部は、前記第2ハウジング部の外面から径方向外側へ一体に突出した突出片と、該突出片に貫通形成された取付孔と、前記ワイヤーハーネスに取り付けられ、前記取付孔に挿入して前記突出片に前記ワイヤーハーネスを固定するクリップと、を有し、
前記取付孔は、前記第2ハウジング部近傍の一端から第2ハウジング部から離間する方向へ傾斜状に延びた長孔に形成されている。
【0076】
この発明の態様によれば、取付孔を第2ハウジング部近傍の一端から第2ハウジング部から離間する方向へ傾斜状に延びた長孔に形成したことから、この取付孔に挿入されるクリップも取付孔の形状に沿って傾斜状に配置される。これによって、固定部からコネクタ方向へ延びたワイヤーハーネスに対して、前記取付孔を介してクリップによってトルクセンサと反対方向の鉛直下方向へ強制的に向きを規定することができる。したがって、ワイヤーハーネスのコネクタ側の部位が、コネクタよりも下方に位置したドリップループを形成できる。
【0077】
さらに好ましくは、前記ワイヤーハーネスの前記固定部による固定箇所からコネクタ側に延びた部位を、鉛直方向成分と第2ハウジング部に平行な水平方向成分とに分けたとき、前記固定部側では鉛直方向成分と水平方向成分との間の下向き傾斜状になり、最大下向き位置から前記コネクタ側では該コネクタ方向に向かって上向き傾斜状になっている。
【0078】
この発明の態様によれば、クリップからコネクタまでのワイヤーハーネスの短い長さの中でドリップループを形成することが可能になると共に、複雑な屈曲が抑制されてドリップループが崩れ難くなる。
【0079】
さらに好ましくは、前記ワイヤーハーネスは、2本の第1ハーネスと第2ハーネスを有し、
前記固定部は、前記クリップに設けられた締結バンドを介して前記第1ハーネスと第2ハーネスを一緒に結束する。
【0080】
この発明の態様によれば、クリップによって2本のハーネスを纏めて結束できるので、それぞれ別個に固定する場合に比較して部品点数の削減が図れる。
【0081】
さらに好ましくは、前記第1ハーネスと第2ハーネスは、前記クリップによって互いに接触した状態で結束されている。
【0082】
2つのハーネスを接触させることによって並列一体化して横断面ほぼ扁平状になることから、ドリップループの形状が崩れることなく形状を維持することができる。
【0083】
さらに好ましくは、前記第1ハーネスと第2ハーネスは、前記固定部と前記コネクタとの間で、前記第2ハーネスが前記第1ハーネスよりも長く形成されて、前記第2ハーネスが第1ハーネスよりも鉛直方向下側に配置されている。
【0084】
この発明の態様によれば、固定部とコネクタとの間では、第1ハーネスと第2ハーネスは互いに離間した状態になっていることから、振動などによる互いの干渉を抑制できる。
【0085】
さらに好ましくは、前記コネクタは、前記第1ハーネスと第2ハーネスに対応して2つの第1コネクタ部と第2コネクタ部を有し、
前記第1コネクタ部は、前記第2コネクタ部に対して鉛直方向上側に配置されていると共に、前記ラックバーの軸心方向に対して直交する水平方向に延びた断面横長形状になっている一方、
前記第2コネクタ部は、前記ラックバーの軸心方向に対して垂直方向に延びた断面縦長形状になっている。
【0086】
この発明の態様によれば、第1コネクタ部と第2コネクタ部とは、互いに上下に離間していると共に、断面形状が異なっていることから、それぞれに接続された第1、第2ハーネスを各コネクタ部付近で離間させることが可能になる。このため、特に、車両の振動などによる各ハーネス同士の干渉が抑制されると共に、該各ハーネスの干渉に伴う各コネクタ部間の干渉や、干渉による破損なども効果的に抑制できる。
【0087】
さらに好ましくは、前記ワイヤーハーネスの前記固定部と前記コネクタとの間の長さは、前記固定部と前記トルクセンサとの間の長さよりも長く形成されている。
【0088】
この発明の態様によれば、トルクセンサとコネクタとの間のワイヤーハーネスのうち、固定部とコネクタとの間の長さを長くすることによって、この範囲でドリップループを形成するための長さを確保できる。
【0089】
さらに好ましくは、前記ワイヤーハーネスは、外周面に凹部と凸部とが交互に形成されたコルゲートチューブによって被覆され、
前記締結バンドの内周面には、前記コルゲートチューブの凹凸部に噛み合い嵌合する凹凸部を有している。
【0090】
この発明の態様によれば、コルゲートチューブと締結バンドとの互いの凹凸部を噛み合い嵌合させることで、コルゲートチューブを締結バンドに強固かつ確実に結合させることが可能になる。
【0091】
さらに好ましくは、前記ワイヤーハーネスのうち前記固定部から前記トルクセンサ方向に延びる部位を、鉛直方向成分と該鉛直方向成分と直交する水平方向成分とに分けたとき、前記トルクセンサ方向に延びた部位は、前記固定部側からトルクセンサ方向に向かって鉛直方向成分と水平方向成分との間の上向き傾斜状になっている。
【0092】
この発明の態様によれば、ワイヤーハーネスの固定部からトルクセンサまでの部位を、第2ハウジング部の外面に沿って無理なく取り回すことができる。
【0093】
さらに好ましくは、前記固定部は、前記第2ハウジング部の外面から径方向外側へ一体に突出した突出片と、該突出片に貫通形成された取付孔と、前記ワイヤーハーネスに取り付けられて、前記取付孔に挿入可能なクリップと、を有し、
前記クリップは、前記取付孔に挿入することによって前記突出片に前記ワイヤーハーネスを固定する。
【0094】
この発明の態様によれば、ワイヤーハーネスを前記クリップによって突出片に固定支持することによって、ワイヤーハーネスの前記固定部とコネクタとの間の部位を、ドリップループが最も形成し易い方向へ規制することができる。
【符号の説明】
【0095】
1…操舵機構、2…操舵アシスト機構、3…入力軸、4…出力軸(ピニオン軸)、5…操舵軸、7…トルクセンサ、8…ワイヤーハーネス、8a…第1ハーネス、8b…第2ハーネス、9…ハウジング、10…第1ハウジング部、11…第2ハウジング部、11b…当接部、15…固定部、16…突出片、17…取付孔、18…クリップ、18a…クリップ本体、18b…締結バンド、21…電子制御ユニット(ECU)、22…コネクタ、22a…第1コネクタ部、22b…第2コネクタ部、23…第1端子、24a…第1端子、24b…第2端子、25a…第1コルゲートチューブ、25b…第2コルゲートチューブ、25c・25d…最下位部、P…ラックバーの軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7