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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162470
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2465 20160101AFI20231101BHJP
   H01M 8/008 20160101ALI20231101BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231101BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/008
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072793
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】蓑島 康平
(72)【発明者】
【氏名】秡川 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】梶原 隆
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA22
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE11
5H126JJ09
(57)【要約】
【課題】分解が容易な燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】一対のセパレータを備える単セルを複数積層したセル積層体を有し、隣り合う単セル間のシールに粘着シートを用い、当該単セルの当該粘着シートからの解体時に隣り合う当該単セル間の当該粘着シートを切断して解体する燃料電池スタックであって、隣り合う単セル間の前記粘着シートを介して対向する一方の単セルの第1対向セパレータと、もう一方の単セルの第2対向セパレータにおいて、前記第1対向セパレータと前記粘着シートとの間の粘着力と、前記第2対向セパレータと前記粘着シートとの間の粘着力が異なる、燃料電池スタック。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のセパレータを備える単セルを複数積層したセル積層体を有し、隣り合う単セル間のシールに粘着シートを用い、当該単セルの当該粘着シートからの解体時に隣り合う当該単セル間の当該粘着シートを切断して解体する燃料電池スタックであって、
隣り合う単セル間の前記粘着シートを介して対向する一方の単セルの第1対向セパレータと、もう一方の単セルの第2対向セパレータにおいて、
前記第1対向セパレータと前記粘着シートとの間の粘着力と、前記第2対向セパレータと前記粘着シートとの間の粘着力が異なる、燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池については、様々な研究がなされている。
例えば特許文献1では、必要なときに確実に分解することのできる燃料電池分解方法が開示されている。
特許文献2では、燃料電池を解体する必要が生じたときに確実に解体することができる燃料電池解体方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-209624号公報
【特許文献2】特開2005-251728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、単セル(以下セルと称する場合がある)間のシールにガスケットを用いていたが、コストを下げる観点から粘着シートを用いることが検討されている。
セル間のシール材に粘着シートを用いた燃料電池スタックにおいて、粘着シートとセルとを解体する際に、セルを無傷な状態で取り出したいが、現状、粘着シートとセパレータとを剥がすのに、エタノール等の有機溶媒を使って、粘着シートの粘着力を低下させ、刃、ヘラ等の解体用工具で剥離して解体するため、解体用工具の接触によりセルにもダメージを与えてしまい、セルを無傷な状態で取り出すのが困難である。
燃料電池の使用環境が通常最大120℃であり、粘着シートを使用した場合、スタックの締結解除後にもセル同士が粘着シートにより強固にくっついた状態となり、強固に張り付いたセルを解体すると局所的に入力がかかりセルが変形する。セルが変形すると、セルを再積層させる際に、シール性を確保するのが困難となる。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、分解が容易な燃料電池スタックを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示においては、一対のセパレータを備える単セルを複数積層したセル積層体を有し、隣り合う単セル間のシールに粘着シートを用い、当該単セルの当該粘着シートからの解体時に隣り合う当該単セル間の当該粘着シートを切断して解体する燃料電池スタックであって、
隣り合う単セル間の前記粘着シートを介して対向する一方の単セルの第1対向セパレータと、もう一方の単セルの第2対向セパレータにおいて、
前記第1対向セパレータと前記粘着シートとの間の粘着力と、前記第2対向セパレータと前記粘着シートとの間の粘着力が異なる、燃料電池スタックを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の燃料電池スタックは、容易に分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の燃料電池スタックのマニホールド付近の一例を示す断面模式図である。
図2図2は、従来の燃料電池スタックのセパレータと単セル間の粘着シートの一例を示す断面模式図である。
図3図3は、本開示の燃料電池スタックのセパレータと単セル間の粘着シートの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本開示の実施に必要な事柄(例えば、本開示を特徴付けない燃料電池スタックの一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
また、図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、数値範囲における上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
【0010】
本開示においては、一対のセパレータを備える単セルを複数積層したセル積層体を有し、隣り合う単セル間のシールに粘着シートを用い、当該単セルの当該粘着シートからの解体時に隣り合う当該単セル間の当該粘着シートを切断して解体する燃料電池スタックであって、
隣り合う単セル間の前記粘着シートを介して対向する一方の単セルの第1対向セパレータと、もう一方の単セルの第2対向セパレータにおいて、
前記第1対向セパレータと前記粘着シートとの間の粘着力と、前記第2対向セパレータと前記粘着シートとの間の粘着力が異なる、燃料電池スタックを提供する。
【0011】
本開示においては、粘着シートの表裏に粘着力の強弱をつける。粘着シートとセルの接着力が弱い界面を作ることでセルの分解を容易にする。
【0012】
本開示の燃料電池スタックは、一対のセパレータを備える単セルを複数積層したセル積層体を有し、隣り合う単セル間のシールに粘着シートを用い、当該単セルの当該粘着シートからの解体時に隣り合う当該単セル間の当該粘着シートを切断して解体する。
本開示においては、単セル及び燃料電池スタックのいずれも燃料電池と称する場合がある。
【0013】
単セル間の粘着シートを切断して解体する方法は、例えば、粘着シートの切断用の解体用工具を用いて粘着シートを切断する方法等が挙げられる。
解体用工具は、粘着シートを切断することができるものであればよく、例えば、刃、ヘラ等であってもよい。
【0014】
セル積層体は、単セルを複数個積層した積層体である。
セル積層体における単セルの積層数は特に限定されず、2~数百個であってもよい。
セル積層体は、締結部材により締結荷重が付与されていてもよい。
締結部材は、両端ネジ付きボルトとナット等のシャフト部材、及び、ばね部材等が挙げられる。
燃料電池スタックは、セル積層体の積層方向両端に一対のエンドプレートを有していてもよい。
セル積層体の締結は、セル積層体の積層方向両端に配置される一対のエンドプレートを介して、両端ネジ付きボルトとナット等のシャフト部材等を用いてネジ締めにより締結荷重を付与する方法、ばね部材を用いて締結荷重を付与する方法等が挙げられる。
セル積層体の締結の解除は、ネジ締めの解除や、ばね部材の除去等により締結荷重を解除する方法等が挙げられる。
【0015】
燃料電池の単セルは、通常、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)を備える。
膜電極ガス拡散層接合体は、アノード側ガス拡散層及び、アノード触媒層及び、電解質膜及び、カソード触媒層及び、カソード側ガス拡散層をこの順に有する。
【0016】
カソード(酸化剤極)は、カソード触媒層及びカソード側ガス拡散層を含む。
アノード(燃料極)は、アノード触媒層及びアノード側ガス拡散層を含む。
カソード触媒層及びアノード触媒層をまとめて触媒層と称する。
触媒層は、例えば、電気化学反応を促進する触媒金属、プロトン伝導性を有する電解質、及び、電子伝導性を有する担体等を備えていてもよい。
触媒金属としては、例えば、白金(Pt)、及び、Ptと他の金属とから成る合金(例えばコバルト、及び、ニッケル等を混合したPt合金)等を用いることができる。
電解質としては、フッ素系樹脂等であってもよい。フッ素系樹脂としては、例えば、ナフィオン溶液等を用いてもよい。
上記触媒金属は担体上に担持されており、各触媒層では、触媒金属を担持した担体(触媒担持担体)と電解質とが混在していてもよい。
触媒金属を担持するための担体は、例えば、一般に市販されているカーボンなどの炭素材料等が挙げられる。
【0017】
カソード側ガス拡散層及びアノード側ガス拡散層をまとめてガス拡散層と称する。
ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材等であってもよい。
導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質体等が挙げられる。
【0018】
電解質膜は、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0019】
単セルは樹脂フレームを備えていてもよい。
樹脂フレームは、膜電極ガス拡散層接合体の外周に配置され、且つ、カソードセパレータとアノードセパレータとの間に配置される。
樹脂フレームは、骨格部と、開口部と、孔を有していてもよい。
骨格部は、膜電極ガス拡散層接合体と接続する樹脂フレームの主要部分である。
開口部は、膜電極ガス拡散層接合体の保持領域であり、膜電極ガス拡散層接合体を収納するために骨格部の一部を貫通する領域である。開口部は、樹脂フレームにおいて、膜電極ガス拡散層接合体の周囲(外周部)に骨格部が配置される位置に配置されていればよく、樹脂フレームの中央に有していてもよい。
樹脂フレームの孔は、反応ガス、及び、冷媒等の流体を単セルの積層方向に流通させる。樹脂フレームの孔は、セパレータの孔と連通するように位置合わせされて配置されていてもよい。
樹脂フレームは、枠状のコア層と、コア層の両面に設けられた枠状の二つのシェル層、即ち、第1シェル層と第2シェル層とを含んでいてもよい。
第1シェル層及び第2シェル層は、コア層と同様に、コア層の両面に枠状に設けられていてもよい。
【0020】
コア層は、ガスシール性、絶縁性を有する構造部材であればよく、燃料電池の製造工程での熱圧着時の温度条件下でも構造が変化しない材料により形成されていてもよい。具体的には、コア層の材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、PC(ポリカーボネート)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PA(ポリアミド)、PI(ポリイミド)、PS(ポリスチレン)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、シクロオレフィン、PES(ポリエーテルサルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、LCP(液晶ポリマー)、エポキシ樹脂等の樹脂等であってもよい。コア層の材料は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、フッ素系ゴム、シリコン系ゴム等のゴム材であってもよい。
コア層の厚さは、絶縁性を担保する観点から、5μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、セル厚さを低減する観点から、100μm以下であってもよく、90μm以下であってもよい。
【0021】
第1シェル層及び第2シェル層は、コア層とアノードセパレータ及びカソードセパレータとを接着してシール性を確保するために、他の物質との接着性が高く、熱圧着時の温度条件下で軟化し、コア層よりも粘度及び融点が低い性質を有していてもよい。具体的には、第1シェル層及び第2シェル層は、ポリエステル系及び変性オレフィン系等の熱可塑性樹脂であってもよく、変性エポキシ樹脂である熱硬化性樹脂であってもよい。
第1シェル層を構成する樹脂と第2シェル層を構成する樹脂とは、同種の樹脂であってもよく、異なる種類の樹脂であってもよい。コア層の両面にシェル層を設けることで、樹脂フレームと2つのセパレータとの間の加熱プレスによる接着が容易になる。
第1シェル層及び第2シェル層のそれぞれのシェル層の厚さは、接着性を担保する観点から、5μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、セル厚さを低減する観点から、100μm以下であってもよく、40μm以下であってもよい。
【0022】
樹脂フレームにおいて、第1シェル層及び第2シェル層は、それぞれアノードセパレータ及びカソードセパレータと接着する部分にのみに設けられていてもよい。コア層の一方の面に設けられた第1シェル層は、カソードセパレータと接着していてもよい。コア層の他方の面に設けられた第2シェル層は、アノードセパレータと接着していてもよい。そして、樹脂フレームは、一対のセパレータにより挟持されてもよい。
【0023】
単セルは、一対のセパレータを備える。
一対のセパレータは、樹脂フレーム及び膜電極ガス拡散層接合体を挟持する。
一対のセパレータは、一方がアノードセパレータであり、もう一方がカソードセパレータである。本開示では、アノードセパレータとカソードセパレータとをまとめてセパレータという。
セパレータは、反応ガス及び冷媒等の流体を単セルの積層方向に流通させるための供給孔及び排出孔等の孔を有していてもよい。冷媒としては、低温時の凍結を防止するために例えばエチレングリコールと水との混合溶液を用いることができる。
供給孔は、燃料ガス供給孔、酸化剤ガス供給孔、及び、冷媒供給孔等が挙げられる。
排出孔は、燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔、及び、冷媒排出孔等が挙げられる。
セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガス流路を有していてもよい。また、セパレータは、ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷媒流路を有していてもよい。
アノードセパレータは、アノード側ガス拡散層に接する面に燃料ガス流路を有していてもよい。また、アノードセパレータは、アノード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷媒流路を有していてもよい。
カソードセパレータは、カソード側ガス拡散層に接する面に酸化剤ガス流路を有していてもよい。また、カソードセパレータは、カソード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷媒流路を有していてもよい。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材等であってもよい。導電性部材としては、例えば、熱硬化樹脂、熱可塑樹脂、及び、樹脂繊維等の樹脂材、カーボン粉末、及び、カーボン繊維等のカーボン材を圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、鉄、アルミニウム、及び、ステンレス等)板等であってもよい。また、セパレータが集電機能を備えるものであってもよい。
セパレータの形状は、長方形、横長6角形、横長8角形、円形、及び、長丸形状等であってもよい。
【0024】
本開示においては、燃料ガス、及び、酸化剤ガスをまとめて反応ガスと称する。アノードに供給される反応ガスは、燃料ガスであり、カソードに供給される反応ガスは酸化剤ガスである。燃料ガスは、主に水素を含有するガスであり、水素であってもよい。酸化剤ガスは、酸素を含有するガスであり、酸素、空気、及び、乾燥空気等であってもよい。
【0025】
燃料電池スタックは、各供給孔が連通した入口マニホールド、及び、各排出孔が連通した出口マニホールド等の各孔が連通したマニホールドを有していてもよい。
入口マニホールドは、燃料ガス入口マニホールド、酸化剤ガス入口マニホールド、及び、冷媒入口マニホールド等が挙げられる。
出口マニホールドは、燃料ガス出口マニホールド、酸化剤ガス出口マニホールド、及び、冷媒出口マニホールド等が挙げられる。
本開示においては、燃料ガス入口マニホールド、及び、燃料ガス出口マニホールドをまとめて燃料ガスマニホールドという。
本開示においては、酸化剤ガス入口マニホールド、及び、酸化剤ガス出口マニホールドをまとめて酸化剤ガスマニホールドという。
本開示においては、燃料ガスマニホールド、及び、酸化剤ガスマニホールドをまとめて反応ガスマニホールドという。
本開示においては、冷媒入口マニホールド、及び、冷媒出口マニホールドをまとめて冷媒マニホールドという。
【0026】
粘着シートは、隣り合う単セル間に配置され、隣り合う単セルのシール部材として用いられる。
粘着シートは、ポリエステル系及び変性オレフィン系等の熱可塑性樹脂であってもよく、変性エポキシ樹脂である熱硬化性樹脂であってもよい。
粘着シートの形状は、枠状であってもよい。粘着シートのシールラインとなる枠は、セパレータのシールラインリブと位置合わせされていてもよい。粘着シートは、セパレータの孔を除くセパレータの一面全体を覆う形状であってもよい。
粘着シートのシールラインとなる枠の幅は、セパレータのシールラインリブの幅と同じであってもよく、セパレータのシールラインリブの幅よりも大きくてもよい。
粘着シートは、平面視において反応ガスマニホールドを構成する孔を囲うように孔の周囲部をシールしてもよく、すべての孔を囲うように、セパレータの外周縁部をシールしてもよい。ここでいう反応ガスマニホールドは、燃料ガスマニホールドであってもよく、酸化剤ガスマニホールドであってもよく、これらの両方のマニホールドであってもよい。また、燃料ガスマニホールドは、燃料ガス入口マニホールドであってもよく、燃料ガス出口マニホールドであってもよく、これらの両方のマニホールドであってもよい。さらに、酸化剤ガスマニホールドは、酸化剤ガス入口マニホールドであってもよく、酸化剤ガス出口マニホールドであってもよく、これらの両方のマニホールドであってもよい。
粘着シートは、平面視において燃料ガス入口マニホールドを構成する孔、燃料ガス出口マニホールドを構成する孔、酸化剤ガス入口マニホールドを構成する孔、及び、酸化剤ガス出口マニホールドを構成する孔、を囲うように孔の周囲部をシールしてもよく、且つ、セパレータの外周縁部をシールしてもよい。粘着シートは、セパレータの孔を除くセパレータの一面全体を覆っていてもよい。
粘着シートの厚みは特に限定されず、10~100μmであってもよい。
【0027】
粘着シートは、第1面を有する第1粘着層と、第2面を有する第2粘着層をこの順に有する2層構造であってもよく、第1面を有する第1粘着層と、ゴム層と、第2面を有する第2粘着層をこの順に有する3層構造であってもよい。
第1粘着層と、第2粘着層はまとめて粘着層と称する。
第1粘着層と、第2粘着層は、同じ材料で構成されていてもよく、異なる材料で構成されていてもよい。
粘着層は、粘着シートで例示した材料と同様の材料を例示することができる。
粘着層の形状は、粘着シートの形状と同じである。
粘着層の厚みは特に限定されず、5~50μmであってもよい。
第1粘着層と、第2粘着層は、同じ厚みであってもよく、異なる厚みであってもよい。
【0028】
ゴム層の材料としては、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、フッ素系ゴム、シリコン系ゴム等が挙げられる。
ゴム層の厚みは特に限定されず、5~90μmであってもよい。
【0029】
セパレータは、反応ガス流路、冷媒流路等の流路を構成するリブを有していてもよい。
一対のセパレータは、粘着シート側に当該粘着シートとのシールラインとなるシールラインリブを有していてもよい。シールラインリブは、平面視したときに、供給孔及び排出孔等の孔を囲うように配置されていてもよく、これらの複数の孔を全て囲うようにセパレータの外周縁部に沿って配置されていてもよい。また、シールラインリブは、粘着シートのシールラインと位置合わせされて配置されていてもよい。
【0030】
本開示の第1実施形態においては、隣り合う単セル間の粘着シートを介して対向する一方の単セルの第1対向セパレータと、もう一方の単セルの第2対向セパレータにおいて、第1対向セパレータと粘着シートとの間の粘着力と、第2対向セパレータと粘着シートとの間の粘着力が異なる。
粘着力を異ならしめる方法としては、第1対向セパレータの粘着シートとのシールラインとなる第1シールラインリブの剛性と、第2対向セパレータの粘着シートとのシールラインとなる第2シールラインリブの剛性を異ならしめる方法、及び、粘着シートの第1対向セパレータ側の第1面の粘着力と、粘着シートの第2対向セパレータ側の第2面の粘着力を異ならしめる方法等が挙げられる。
【0031】
本開示の第2実施形態においては、第1対向セパレータの粘着シートとのシールラインとなる第1シールラインリブの剛性の方が、第2対向セパレータの粘着シートとのシールラインとなる第2シールラインリブの剛性よりも高くてもよい。粘着シートから解体する側のセルの第1対向セパレータの第1シールラインリブの剛性を高くすることにより、解体時にセルの変形を抑制することができる。
第1シールラインリブと第2シールラインリブをまとめてシールラインリブと称する。
シールラインリブの剛性を変更する方法は、例えば、セパレータの厚さの変更(例えば、厚さ70~120μmの範囲内)、セパレータの基材物性の変更(例えば、セパレータの材質がSUSの場合は、SUSのグレードの変更等)、シールラインリブ幅の変更(リブ幅が小さいと剛性が高くなり、リブ幅が大きいと剛性が低くなる)等が挙げられる。
【0032】
本開示の第3実施形態においては、第1対向セパレータの粘着シートとのシールラインとなる第1シールラインリブの幅の方が、第2対向セパレータの粘着シートとのシールラインとなる第2シールラインリブの幅よりも小さくてもよい。第1シールラインリブの幅を第2シールラインリブの幅よりも小さくすることにより、粘着シートと第1シールラインリブとの接触面積が粘着シートと第2シールラインリブとの接触面積よりも小さくなり、粘着シートから第1対向セパレータを有するセルの解体が容易になり、容易に燃料電池スタックを分解することができる。
第1シールラインリブの幅を第2シールラインリブの幅よりも小さくすることは、1つの単セルにおいてアノードセパレータのシールラインリブの幅とカソードセパレータのシールラインリブの幅を異ならしめることにより達成してもよい。
【0033】
本開示の第4実施形態においては、粘着シートにおいて、粘着シートの第1対向セパレータ側の第1面の粘着力の方が、粘着シートの第2対向セパレータ側の第2面の粘着力よりも弱くてもよい。これにより、粘着シートから第1対向セパレータを有するセルの解体が容易になり、容易に燃料電池スタックを分解することができる。
粘着シートの第1面と第2面の粘着力を異ならしめる方法は、例えば、第1面の第1対向セパレータとの接着面積を第2面の第2対向セパレータとの接着面積よりも小さくする方法、第1面と第2面の粘着シートの物性を異なるものとする方法、及び、第1面と第2面の表面粗さを異なるものとする方法等が挙げられる。
【0034】
本開示の第5実施形態においては、粘着シートにおいて、粘着シートの第1対向セパレータ側の第1面の表面粗さの方が、粘着シートの第2対向セパレータ側の第2面の表面粗さよりも粗くてもよい。これにより、粘着シートの第1対向セパレータ側の第1面の粘着力の方が、粘着シートの第2対向セパレータ側の第2面の粘着力よりも弱くなり、粘着シートから第1対向セパレータを有するセルの解体が容易になる。
【0035】
本開示の第6実施形態においては、粘着シートにおいて、粘着シートの第1対向セパレータ側の第1面の粘着力の方が、粘着シートの第2対向セパレータ側の第2面の粘着力よりも弱く、且つ、第1対向セパレータの粘着シートとのシールラインとなる第1シールラインリブの剛性の方が、第2対向セパレータの粘着シートとのシールラインとなる第2シールラインリブの剛性よりも高くてもよい。
セル締結の際にリブの剛性が高い側に粘着シートの粘着力の弱い側の第1面を貼り付けて締結する。粘着シートの粘着力が弱く解体しやすい側のリブの剛性を高くすることで、剛性が高く固いものに接着した粘着力が弱く柔らかい粘着シートははがれやすいため、粘着シートからのセルの解体を容易にし、且つ、リブの剛性が高いため、セルの変形をより抑制することができる。
【0036】
本開示の第7実施形態においては、粘着シートにおいて、粘着シートの第1対向セパレータ側の第1面の粘着力の方が、粘着シートの第2対向セパレータ側の第2面の粘着力よりも弱く、且つ、第1対向セパレータの粘着シートとのシールラインとなる第1シールラインリブの幅の方が、第2対向セパレータの粘着シートとのシールラインとなる第2シールラインリブの幅よりも小さくてもよい。
粘着シートの粘着力が弱い側の第1面をリブ幅が小さいほうに張り付けることにより、粘着シートとリブとの接触面積が小さくなり、粘着シートの粘着力が弱く解体しやすい側のリブの剛性を高くすることで、剛性が高く固いものに接着した粘着力が弱く柔らかい粘着シートははがれやすいため、セルの解体を容易にし、且つ、リブの剛性が高いため、セルの変形を抑制することができる。
粘着シートの粘着力が強い側の第2面をリブ幅が大きいほうに張り付けることにより、貼り付け性を確保し、生産の高速化を図ることができる。
【0037】
図1は、本開示の燃料電池スタックのマニホールド付近の一例を示す断面模式図である。
図1で示すように本開示の燃料電池スタックは、一対のセパレータ10と一対のセパレー10に挟持される樹脂フレーム11(及びMEGA)を備える単セル100を有し、隣り合う単セル100間に粘着シート12がマニホールド20のシールのために配置されている。
本開示の燃料電池スタックの分解の際には、粘着シート12が、解体したい箇所である。
【0038】
図2は、従来の燃料電池スタックのセパレータと単セル間の粘着シートの一例を示す断面模式図である。
図2で示すように従来の燃料電池スタックは、一方の単セルの第1対向セパレータ42ともう一方の単セルの第2対向セパレータ50との間に、粘着シート60が配置されている。
従来の燃料電池スタックにおいては、粘着シート60において、粘着シート60の第1対向セパレータ42側の第1面63と、粘着シート60の第2対向セパレータ50側の第2面62の粘着力が同じであり、且つ、第1対向セパレータ42の粘着シート60とのシールラインとなる第1シールラインリブ43の幅の大きさと、第2対向セパレータ50の粘着シート60とのシールラインとなる第2シールラインリブ51の幅の大きさが同じである。
従来の燃料電池スタックは、第1対向セパレータ42と粘着シート60との間の粘着力と、第2対向セパレータ50と粘着シート60との間の粘着力が同じため、単セルの粘着シート60からの解体が困難であり、解体時にセルが変形する恐れがある。
【0039】
図3は、本開示の燃料電池スタックのセパレータと単セル間の粘着シートの一例を示す断面模式図である。図3において図2と同じ構成については同じ符号を用い、その説明は省略する。
本開示の燃料電池スタックにおいては、粘着シート60において、粘着シート60の第1対向セパレータ40側の第1面61の方が、粘着シート60の第2対向セパレータ50側の第2面62の粘着力よりも弱く、且つ、第1対向セパレータ40の粘着シート60とのシールラインとなる第1シールラインリブ41の幅の大きさの方が、第2対向セパレータ50の粘着シート60とのシールラインとなる第2シールラインリブ51の幅の大きさよりも小さい。
本開示の燃料電池スタックは、第1対向セパレータ40と粘着シート60との間の粘着力の方が、第2対向セパレータ50と粘着シート60との間の粘着力よりも弱いため、第1対向セパレータ40を有する単セルの粘着シート60からの解体が容易であり、且つ、第1シールラインリブ41の幅の大きさの方が、第2シールラインリブ51の幅の大きさよりも小さいため、第1シールラインリブ41の方が、第2シールラインリブ51よりも剛性が高く、第1対向セパレータ40を有する単セルの粘着シート60からの解体時にセルが変形することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 セパレータ
11 樹脂フレーム
12、60 粘着シート
20 マニホールド
40、42 第1対向セパレータ
41、43 第1シールラインリブ
50 第2対向セパレータ
51 第2シールラインリブ
61、63 第1面
62 第2面
100 単セル
図1
図2
図3