(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162471
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】位置検知システム
(51)【国際特許分類】
B61L 25/02 20060101AFI20231101BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B61L25/02 G
G01C21/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072795
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】317005022
【氏名又は名称】独立行政法人自動車技術総合機構
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 大助
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智紀
(72)【発明者】
【氏名】森 崇
(72)【発明者】
【氏名】八木 誠
【テーマコード(参考)】
2F129
5H161
【Fターム(参考)】
2F129AA08
2F129BB15
2F129BB33
2F129BB66
2F129EE78
2F129GG18
5H161AA01
5H161BB02
5H161CC20
5H161DD20
5H161DD22
5H161FF07
(57)【要約】
【課題】軌道上を走行する車両において、低コストに精度良く車両の位置を検知する。
【解決手段】位置検知システム1は、軌道上を走行する車両2の位置を検知するためのシステムである。位置検知システム1は、軌道又は軌道近傍に設けられた標示3と、車両2に設けられたLiDAR4及び処理部5を備える。標示3は、複数の再帰性反射体6を有し、その再帰性反射体6の配置パターンによって情報を示す。LiDAR4は、車両2の前方に向けてレーザ光を照射し、その反射光によって再帰性反射体6の配置パターンを検知するとともに、標示3までの距離を測定する。処理部5は、再帰性反射体6の配置パターンが示す情報に基づいてその標示3の位置情報を取得し、その標示3の位置情報とその標示3までの距離から車両2の位置を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上を走行する車両の位置を検知するための位置検知システムであって、
軌道又は軌道近傍に設けられた標示と、
車両に設けられたLiDAR及び処理部を備え、
前記標示は、複数の再帰性反射体を有し、その再帰性反射体の配置パターンによって情報を示し、
前記LiDARは、車両の前方に向けてレーザ光を照射し、その反射光によって前記配置パターンを検知するとともに、前記標示までの距離を測定し、
前記処理部は、前記配置パターンが示す情報に基づいてその標示の位置情報を取得し、その標示の前記位置情報とその標示までの前記距離から前記車両の位置を算出することを特徴とする位置検知システム。
【請求項2】
前記各再帰性反射体は、前記標示におけるドット又は線を構成することを特徴とする請求項1に記載の位置検知システム。
【請求項3】
前記標示は、複数の線を構成する前記再帰性反射体に挟まれた領域に複数のドットを構成する前記再帰性反射体を有することを特徴とする請求項2に記載の位置検知システム。
【請求項4】
前記標示が示す情報は、その標示を一意に識別するための識別情報であり、
前記処理部は、標示の前記識別情報と、付加情報を対応させて予め記憶しており、
前記付加情報は、前記標示の位置情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の位置検知システム。
【請求項5】
前記車両は、駅間を列車として運転され、
前記標示は、駅に設けられ、
前記付加情報は、前記駅に関する駅情報をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の位置検知システム。
【請求項6】
前記駅情報は、駅名又は駅番号を含むことを特徴とする請求項5に記載の位置検知システム。
【請求項7】
前記駅情報は、自列車の停車駅と通過駅との区別を含むことを特徴とする請求項5に記載の位置検知システム。
【請求項8】
前記駅情報は、駅の番線を含むことを特徴とする請求項5に記載の位置検知システム。
【請求項9】
前記駅情報は、列車停止位置目標の情報を含むことを特徴とする請求項5に記載の位置検知システム。
【請求項10】
前記駅情報は、駅で開扉するドアの情報を含むことを特徴とする請求項5に記載の位置検知システム。
【請求項11】
前記配置パターンは、誤り検知又は誤り訂正のための冗長性を有することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の位置検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の位置を検知するための位置検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地上側で車両の位置を検知する方法として、軌道回路を用いる検知方法がある。軌道回路は、鉄道事業者にとって保守管理の負担が大きい。車両側で車両の位置を検知する方法としては、速度発電機を用いる検知方法が一般的である。衛星測位は、トンネル内で使用できないからである。
【0003】
速度発電機を用いる検知方法では、速度発電機で車輪の回転を検知し、車輪の回転数と車輪径から車両の走行距離を積算する。
【0004】
しかし、車輪の回転数は、車輪の滑走や空転によって誤差が生じる。また、車輪径が摩耗によって小さくなり、計算に用いる初期径との差が大きくなるため、走行距離の積算に誤差が生じる。このため、速度発電機を用いる検知方法は、積算する走行距離に誤差が累積し、誤差補正のための情報が必要である。
【0005】
また、車両の位置を知るためには、走行距離だけでなく車両の初期位置又は固有地点の絶対位置の情報も必要である。
【0006】
従来から、速度発電機を用いて走行距離を積算し、位置が分かっている地上子を車上子で検知して自列車の位置情報を補正する列車位置検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、地上子の設置は高コストである。また、地上子は、車両からの落雪等によって破損することがあり、修理にコストがかかる。
【0007】
また、無線を用いて列車位置を検知する列車において、列車に車上子と車上トランスポンダを搭載し、地上に地上子と地上トランスポンダを設置する列車初期位置設定装置が知られている(特許文献2参照)。この列車初期位置設定装置は、車上子と地上子との電磁的な結合と、車上トランスポンダと地上トランスポンダとの間の通信を用いて列車の初期位置を設定する。しかしながら、地上子と地上トランスポンダの設置は高コストである。
【0008】
なお、車上子は、地上子の真上で電磁的に結合するので、地上子の真上に来るまでその地上子の存在が分からない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平4-108479号公報
【特許文献2】特開2004─359156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題を解決するものであり、軌道上を走行する車両において、低コストに精度良く車両の位置を検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の位置検知システムは、軌道上を走行する車両の位置を検知するためのシステムであって、軌道又は軌道近傍に設けられた標示と、車両に設けられたLiDAR及び処理部を備え、前記標示は、複数の再帰性反射体を有し、その再帰性反射体の配置パターンによって情報を示し、前記LiDARは、車両の前方に向けてレーザ光を照射し、その反射光によって前記配置パターンを検知するとともに、前記標示までの距離を測定し、前記処理部は、前記配置パターンが示す情報に基づいてその標示の位置情報を取得し、その標示の前記位置情報とその標示までの前記距離から前記車両の位置を算出することを特徴とする。
【0012】
この位置検知システムにおいて、前記各再帰性反射体は、前記標示におけるドット又は線を構成することが好ましい。
【0013】
この位置検知システムにおいて、前記標示は、複数の線を構成する前記再帰性反射体に挟まれた領域に複数のドットを構成する前記再帰性反射体を有してもよい。
【0014】
この位置検知システムにおいて、前記標示が示す情報は、その標示を一意に識別するための識別情報であり、前記処理部は、標示の前記識別情報と、付加情報を対応させて予め記憶しており、前記付加情報は、前記標示の位置情報を含むことが好ましい。
【0015】
この位置検知システムにおいて、前記車両は、駅間を列車として運転され、前記標示は、駅に設けられ、前記付加情報は、前記駅に関する駅情報をさらに含んでもよい。
【0016】
この位置検知システムにおいて、前記駅情報は、駅名又は駅番号を含んでもよい。
【0017】
この位置検知システムにおいて、前記駅情報は、自列車の停車駅と通過駅との区別を含んでもよい。
【0018】
この位置検知システムにおいて、前記駅情報は、駅の番線を含んでもよい。
【0019】
この位置検知システムにおいて、前記駅情報は、列車停止位置目標の情報を含んでもよい。
【0020】
この位置検知システムにおいて、前記駅情報は、駅で開扉するドアの情報を含んでもよい。
【0021】
この位置検知システムにおいて、前記配置パターンは、誤り検知又は誤り訂正のための冗長性を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の位置検知システムによれば、再帰性反射体を有する標示を軌道又は軌道近傍に設けるので、地上子を軌道に設けるよりも低コストに車両の位置を検知することができる。また、標示までの距離の測定にLiDARのレーザ光を用いるので、精度良く車両の位置を検知することができる。さらに、LiDARが車両の前方に向けてレーザ光を照射するので、標示の手前から車両の位置を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る位置検知システムの構成図である。
【
図2】
図2は同システムにおける標示の配置を例示する平面図である。
【
図3】
図3(a)~(d)は同システムにおけるLiDARの表示例である。
【
図4】
図4は本発明の実施形態の変形例に係る位置検知システムにおける標示の配置を例示する平面図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は同変形例におけるLiDARの表示例である。
【
図6】
図6は本発明の実施例における標示の配置を示す平面図である。
【
図7】
図7は本発明の別の実施例における標示の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係る位置検知システムを
図1乃至
図5を参照して説明する。
図1に示すように、位置検知システム1は、軌道上を走行する車両2の位置を検知するためのシステムである。位置検知システム1は、標示3と、LiDAR4及び処理部5を備える。標示3は、軌道又は軌道近傍に設けられる。LiDAR4及び処理部5は、車両2に設けられる。標示3は、複数の再帰性反射体6を有し、その再帰性反射体6の配置パターンによって情報を示す。
【0025】
LiDAR4は、車両2の前方に向けてレーザ光Lを照射し、その反射光によって標示3における再帰性反射体6の配置パターンを検知するとともに、その標示3までの距離を測定する。
【0026】
処理部5は、再帰性反射体6の配置パターンが示す情報に基づいて標示3の位置情報を取得し、取得した標示3の位置情報と測定した標示3までの距離から車両2の位置を算出する。車両2の位置は、例えばキロ程で表される。
【0027】
位置検知システム1についてさらに詳述する。車両2は、例えば路面電車である(軌道法参照)。車両2は、普通鉄道の車両であってもよい(鉄道事業法参照)。
【0028】
処理部5は、コンピュータであり、CPUとメモリ等を有し、プログラムを実行することによって機能する(
図1参照)。処理部5は、LiDAR4から入力されたデータを処理し、その処理結果を出力する。処理結果の出力先は、例えば、車両2に搭載されたディスプレイ、又は処理結果を利用する装置又は他のシステム等である。
【0029】
LiDARとは、Light Detection And Ranging(光による検知と測距)、又はLaser Imaging Detection And Ranging(レーザによる画像化検知と測距)の略称であり、LIDARとも書かれる。一般的に、LiDARは、レーザ光を照射し、その光を反射した物体までの距離を測定するとともに、その物体の位置や形状を検知する。
【0030】
位置検知システム1では、LiDAR4は、標示3の再帰性反射体6の配置パターンを検知するとともに、その標示3までの距離を測定するために用いられる。すなわち、標示3は、LiDAR4のターゲットマーカである。
【0031】
再帰反射とは、広い照射角にわたって、入射光の光路にほぼ沿う方向に、選択的に反射光が戻るような反射である(JIS Z8713「再帰性反射体―光学的特性―用語」参照)。再帰性反射体は、その反射光のほとんどが戻る表面を有する(同JIS参照)。例えば、屈折率が高い微小なガラス球が多数埋め込まれた透明な合成樹脂は、ガラス球によって入射光を再帰反射する。
【0032】
図2に示すように、本実施形態では、各再帰性反射体6は、標示3におけるドット(大きさを有する点)を構成する。ドットを構成する再帰性反射体6の一具体例は、再帰反射をする道路鋲である。道路鋲は、路面から突出する外形を有し、少なくとも進来する車両に向いている側に反射面を有する。例えば、道路鋲は、四角錐等の多角錐又は円錐の外形を有し、進来する車両に向いている錐体面が反射面となるように設けられる。道路鋲は、軌道に設けられる。例えば、路面電車の併用軌道の場合、道路鋲は、路面に固定される。スラブ軌道の場合、道路鋲は、スラブに固定される。バラスト軌道の場合、道路鋲は、マクラギに固定される。
【0033】
図2の例では、再帰性反射体6の配置パターンは、3セル×3セルの2次元コードである。各セルは、ドットの有無から成る2値(1ビット)である。セル数は、3×3より多くてもよい。
【0034】
再帰性反射体6の配置パターンは、誤り検知又は誤り訂正のための冗長性を有する。すなわち、再帰性反射体6の配置パターンにおいて、エラー検出符号又はエラー訂正符号(冗長ビット)がデータ部に付加される。これにより、位置検知システム1は、少数の再帰性反射体6を読み取れなくても標示3が示す情報を取得できるので、ノイズ(太陽光等の外乱光)に対して強くなるとともに、再帰性反射体6の修理や交換の頻度が低減される。
【0035】
図3(a)~(d)は、標示3(3a、3b、3c、3d)をLiDAR4から見たLiDAR4の表示例を示す。同図の表示例は、LiDAR4から見た標示3の斜視図と同等である。なお、LiDARによっては、真上から俯瞰しているような表示が可能なものもある。
図3(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ、
図2の標示3a、標示3b、標示3c、標示3dに対応する。
【0036】
LiDAR4が照射したレーザ光は、標示3だけでなく、その周辺物体によっても反射される。反射の強さは、LiDAR4から見た輝度として表される。標示3の再帰性反射体6は、LiDAR4が照射したレーザ光を再帰反射するので、輝度が高くなる。LiDAR4は、検知する輝度に閾値を設けることにより、再帰性反射体6を周辺物体から区別して検知する。
【0037】
LiDAR4が検知した再帰性反射体6の配置パターンに基づき、処理部5は、その配置パターンが示す情報を読み取る(
図1参照)。
【0038】
図4に示すように、本実施形態における標示3の変形例として、各再帰性反射体6は、標示3における線を構成する。その線は、例えば、直線であり、折れ線、多角形、開曲線、閉曲線等であってもよい。線を構成する再帰性反射体6の一具体例は、再帰反射をする反射テープである。反射テープは、軌道に設けられる。例えば、路面電車の併用軌道の場合、反射テープは、路面に貼り付けられる。スラブ軌道の場合、反射テープは、スラブに貼り付けられる。バラスト軌道の場合、反射テープは、マクラギに貼り付けられる。
【0039】
図4の例では、再帰性反射体6の配置パターンは、複数の反射テープの各々の長さ及び相対位置によって構成される。
【0040】
再帰性反射体6の配置パターンは、誤り検知又は誤り訂正のための冗長性を有する。
【0041】
図5(a)、(b)は標示3(3e、3f)をLiDAR4から見たLiDAR4の表示例を示す。
図5(a)、(b)は、それぞれ、
図4の標示3e、標示3fに対応する。
【0042】
標示3は、ドットを構成する再帰性反射体6と線を構成する再帰性反射体の組み合わせであってもよい。
【0043】
本実施形態では、標示3が示す情報は、その標示3を一意に識別するための識別情報である。処理部5は、標示3の識別情報と、付加情報を対応させて予め記憶している。付加情報は、標示3の位置情報を含む。
【0044】
例えば、処理部5は、そのメモリ又は記憶装置にデータベースを有する。そのデータベースは、データを表形式のテーブルとして有する。テーブルの行に該当するレコードは、各標示3に対応する。テーブルの列に該当するカラムは、識別情報と付加情報に対応する。付加情報のカラムは、複数あってもよく、少なくとも標示3の位置情報のカラムがある。処理部5は、このようなデータベースを用い、標示3の識別情報を条件にして、その識別情報を有する標示3の付加情報を参照する。
【0045】
これにより、処理部5は、標示3が示す識別情報に基づいて、その識別情報に対応する付加情報に含まれる位置情報を取得することができ、車両2の位置を算出することができる。
【0046】
なお、本実施形態の変形例として、標示3が示す情報は、識別情報ではなく、その標示3の位置情報そのものであってもよい。これにより、処理部5における処理がシンプルになる。但し、その場合、標示3の情報量(ビット数)が大きくなる可能性がある。
【0047】
以上、本実施形態に係る位置検知システム1によれば、再帰性反射体6を有する標示3を軌道又は軌道近傍に設けるので、地上子を設けるよりも低コストに車両2の位置を検知することができる(
図1参照)。また、位置検知システム1は、標示3までの距離の測定にLiDAR4のレーザ光を用いるので、精度良く車両2の位置を検知することができる。さらに、位置検知システム1は、LiDAR4が車両2の前方に向けてレーザ光を照射するので、標示3の手前から車両2の位置を検知することができる。
【0048】
位置検知システム1のLiDAR4は、速度発電機と異なり、車輪の滑走や空転の影響を受けない。位置検知システム1によって検知した車両2の位置は、速度発電機を用いて得られる位置情報を補正するために用いてもよい。また、車両2の位置情報が必要な箇所に標示3を設けることによって、速度発電機を省略してもよい。
【0049】
位置検知システム1の処理部5が予め記憶している付加情報として、位置情報以外の情報を付加することにより、位置検知システム1を車両2の位置検知以外にも利用することができる。その利用例について説明する。
【0050】
車両2は、駅間を列車として運転される。列車の編成は、1両でも複数両でもよい。標示3は、駅の軌道又は軌道近傍に設けられる。標示3は、軌道における軌間(左右のレールの間)に設けられることが望ましい。標示3は、軌道におけるレール外側に設けてもよい。標示3は、軌道近傍に設けてもよい。軌道近傍とは、軌道に近いLiDAR4の検知範囲内であり、例えば、駅のホームの長手方向の端部である。付加情報は、位置情報に加えて、駅に関する駅情報を含む。なお、列車の運転区間において、標示3は、駅だけでなく、駅と駅の中間に設けてもよい。
【0051】
これにより、位置検知システム1を用いて、自列車の位置に加えて、駅に関する駅情報を得ることができる。その駅情報は、例えば、車上改札システム、自動案内放送、案内表示器の表示自動切り替え、運転支援システム、定点停止システム等に利用される。それらを可能にするための駅情報の例について説明する。
【0052】
例えば、処理部5が付加情報として予め記憶している駅情報は、駅名又は駅番号を含む。駅番号は、駅に付与される番号である。
【0053】
これにより、位置検知システム1を用いて、自列車が進入する駅又は停車している駅を特定することできる。
【0054】
また、例えば、処理部5が付加情報として予め記憶している駅情報は、自列車の停車駅と通過駅との区別を含む。
【0055】
これにより、位置検知システム1を用いて、列車が停車駅を誤って通過する駅誤通過を防止することができる。
【0056】
また、例えば、処理部5が付加情報として予め記憶している駅情報は、駅の番線を含む。
【0057】
これにより、位置検知システム1を用いて、自列車が進入する駅の番線又は停車している番線を特定することができる。なお、そのような駅の番線は、速度発電機を用いても分からない情報である。
【0058】
また、例えば、処理部5が付加情報として予め記憶している駅情報は、列車停止位置目標の情報を含む。列車停止位置目標の情報は、駅における自列車が停止すべき位置の情報である。
【0059】
これにより、位置検知システム1が出力する情報をブレーキの制御に利用することができる。この位置検知システム1を用いることにより、定点停止システムを低コストに実現することができる。
【0060】
また、例えば、処理部5が付加情報として予め記憶している駅情報は、駅で開扉するドアの情報を含む。そのドアの情報とは、例えば、駅で開扉するドアが列車の右側か左側かの情報である。位置検知システム1が取得したドアの情報は、乗務員に提供しても、ドアの制御に用いてもよい。
【0061】
これにより、位置検知システム1を用いて、駅で開けてはいけないドアが誤って開くことを防ぐことができる。
【実施例0062】
本発明の位置検知システム1を実際の車両で試験を行った。車両2として、路面電車事業者が所有する車両を用いた。位置検知システム1のLiDAR4として、非反復走査パターン方式のLiDARを用いた。そのLiDARを路面電車の車内運転席に設置した。標示3の再帰性反射体6として道路鋲を用いた。その道路鋲は、四角錐の外形を有し、底面100×100mm角、高さ18mmである。
図6に示すように、複数の道路鋲を軌道に設置し、標示3g、3h、3iを構成した。なお、標示3hは、標示3gの道路鋲の線路方向の離隔を広げたものである。
【0063】
車両2の走行方向を白抜き矢印で示す。LiDAR4は、白抜き矢印の方向(前方)にレーザ光を照射する。
【0064】
車両2の停止時に、位置検知システム1は、LiDAR4を用いて標示3gを正確に読み取ることができた。車両2の走行時に、位置検知システム1は、LiDAR4を用いて標示3g、3h、3iをそれぞれ正確に読み取ることができた。