(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162472
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】橋梁における床版の簡易連結工法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20231101BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20231101BHJP
E01D 24/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/12
E01D24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072797
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000112749
【氏名又は名称】フジミ工研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA13
2D059GG39
2D059GG41
2D059GG45
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】 橋梁用伸縮装置を用いずに床版を簡易的に連結するための所謂ノージョイント工法において、現場における生産性向上と品質の確保を図る。
【解決手段】 橋梁用伸縮装置を用いないで橋梁における床版20を連結して橋梁構造を構築する方法であって、道路構造物(床版20)に対して連結パネル(PCa連結パネル10)を貫通して差筋アンカー13を挿入することにより当該連結パネルを定着させる工程(S1)と、連結パネルの空隙内に間詰材14を打設する工程(S2)と、連結パネルの上部に表層材40(アスファルトやコンクリート等からなる舗装材)を施工する工程(S3)とを含む。連結パネルは、PCaパネルにより構成することが可能である。各工程により構築された橋梁構造を補修する場合には、連結パネルを残置して、表層材40のみを補修または交換する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁用伸縮装置を用いないで橋梁における床版を連結して橋梁構造を構築する方法であって、
道路構造物に対して連結パネルを貫通して差筋アンカーを挿入することにより当該連結パネルを定着させる工程と、
連結パネルの空隙内に間詰材を打設する工程と、
連結パネルの上部に表層材を施工する工程と、
を含むことを特徴とする橋梁における床版の簡易連結工法。
【請求項2】
前記連結パネルは、PCaパネルからなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の橋梁における床版の簡易連結工法。
【請求項3】
前記各工程により構築された橋梁構造を補修する場合には、
前記連結パネルを残置して、前記表層材のみを補修又は交換する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の橋梁における床版の簡易連結工法。
【請求項4】
既に橋梁用伸縮装置が取り付けられている場合には、
当該橋梁用伸縮装置を撤去した後に、
道路構造物に対して連結パネルを貫通して差筋アンカーを挿入することにより当該連結パネルを定着させる工程と、
連結パネルの空隙内に間詰材を打設する工程と、
連結パネルの上部に表層材を施工する工程と、を実施する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の橋梁における床版の簡易連結工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁における床版の簡易連結工法に関するものであり、詳しくは、橋梁用伸縮装置を用いずに床版を簡易的に連結するための所謂ノージョイント工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁用伸縮装置は、車両の通行による摩耗や損傷等の影響を受けるため、適時、交換補修しなければならない。従来、橋梁用伸縮装置を交換補修する際における橋梁用伸縮装置の撤去作業では、人力によるブレーカー等を用いたハツリ作業を行っている。このハツリ作業では、ブレーカーによる騒音が発生する。また、撤去すべき部分と下部構造物との境界が不明瞭となりやすく、下部構造物を不必要に痛めてしまい、橋梁の健全性に影響を与えるおそれがあった。さらに、橋梁用伸縮装置と床版・下部構造物等とを定着するために、多数の固定用のアンカーを床版に設けて、橋梁用伸縮装置との固定に用いており、交換補修時には全てのアンカー等を切断する必要があるため、作業が煩雑となってしまう。
【0003】
上述した不都合を解消するため、できる限り橋梁用伸縮装置の設置を省略して床版を連結するための所謂ノージョイント工法が提案されている。(例えば、特許文献1~特許文献3参照)。特許文献1に記載された技術は、鋼桁橋梁の上部構造物において、構成が異なる鋼製主桁同士を連結して一体化し、ジョイントレス化するための連結構造及び既設鋼桁橋梁における連結工法に関するものである。
【0004】
この特許文献1に記載された技術は、橋軸直角方向Wに所定間隔を隔てて配置された橋軸方向Lの鋼製主桁を備えた上部構造物を橋軸方向Lに沿って複数配置した鋼桁橋梁の連結構造であって、橋軸方向に沿って隣り合う上部構造物同士の間に配置された橋軸直角方向に沿って配置された連結横桁に、鋼製主桁を連結したものである。
【0005】
特許文献2に記載された技術は、様々な主桁構造を備えた鋼桁橋梁の上部構造物をジョイントレス化するための連結構造及び既設鋼桁橋梁における連結工法に関するものである。
【0006】
この特許文献2に記載された技術は、橋軸直角方向Wに所定間隔を隔てて配置された橋軸方向の鋼製主桁と、鋼製主桁の端部近傍に配置された橋軸直角方向Wの鋼製横桁とを備えた上部構造物を橋軸方向Lに複数配置した鋼桁橋梁の連結構造として、橋軸方向に隣り合う上部構造物同士の対向部分において、鋼製横桁同士の間に設けられた連結部コンクリートと、鋼製横桁同士を連結するPC鋼棒とを備えている。また、PC鋼棒が鋼製主桁における上部に配置され、連結部コンクリートが、鋼製主桁の下フランジより所定高さ高い位置に設けてある。
【0007】
特許文献3に記載された技術は、橋梁ジョイント部の連続化構造において、交通荷重の載荷に伴う桁端の桁回転変位や温度変化等に伴う伸縮変形の一部を部分連結構造で抑制し、残りをジョイント部材の変形性能で吸収することで、表層アスファルト舗装の早期劣化を回避しつつ、耐久性の向上により円滑な交通荷重の通過を可能とし、しかも短時間で施工を可能とすることを目的としている。
【0008】
この特許文献3に記載された技術は、橋桁の隣接するRC床版の上部に設けた切欠きにモルタル類を打設して床版端部同士を部分的に一体化する部分連結構造を形成し、この部分連結構造の上面とその左右の床版上面とにビニロン繊維等をセメントマトリクス中に配合した、ひび割れ分散による擬似的な伸び性能が大きく、高い引張・曲げ変形能力を有し、鉛直剛性がRC床版とほぼ同等の高靭性繊維補強セメント複合材料からなる板状のプレキャストジョイント版を設置し、この上に防水シートを設け、その上を舗装材料で覆うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-133309号公報
【特許文献2】特開2018-31235号公報
【特許文献3】特開2008-190130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、道路管理者の維持負担が大きい伸縮装置を省略して、現場で床版を簡易的に連結し、ノージョイント化を行う従来の工法において、まず初めに既設伸縮装置を撤去した後に、床版連結用の鉄筋の配筋、同鉄筋と床版等との定着を図る差筋アンカー等を設置する。そして、モービル車などを用いて超速硬コンクリートを打設し、コンクリートが硬化した後に、表層舗装を施し交通開放している。しかし、このような施工手順では、確実な鉄筋配筋が必要となり作業が煩雑となりやすい。また、超速硬コンクリートを打設するためのモービル車が高コストであり、台数も限られていることから、特に繁忙期において、モービル車を手配することができない場合があった。なお、モービル車とは、特殊コンクリートや特殊モルタルを、現場で連続的に混練することが可能なミキサを搭載した移動式コンクリートプラントのことである。
【0011】
従来技術の問題点を纏めると以下のようになる。第1に、床版連結を行うため、確実な鉄筋の配筋が求められるため、作業が煩雑となってしまう。第2に、基本的に時間規制を伴う交通規制下における施工となるため、作業時間を短縮する必要がある。第3に、モービル車が高コストであり、かつ、繁忙期も含めて必要な時に手配出来ない恐れがあった。第4に、人力施工が大勢を占めており、現場の品質や耐久性は、施工時の作業品質に依存することになる。第5に、熟練者が高齢化したため、熟練者を含めた作業員の確保が困難となっている。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、橋梁用伸縮装置を用いずに床版を簡易的に連結するための所謂ノージョイント工法において、現場における生産性向上と品質の確保を図ることが可能な橋梁における床版の簡易連結工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る橋梁における床版の簡易連結工法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。
【0014】
本発明に係る橋梁における床版の簡易連結工法は、橋梁用伸縮装置を用いないで橋梁における床版を連結して橋梁構造を構築する方法に関するものであり、次の工程(a)~(c)を含んでいる。(a)道路構造物に対して連結パネルを貫通して差筋アンカーを挿入することにより当該連結パネルを定着させる工程。(b)連結パネルの空隙内に間詰材を打設する工程。(c)連結パネルの上部に表層材(アスファルト、コンクリート、プレキャストコンクリート版のような各種プレキャスト部材等)を施工する工程。
【0015】
上述した橋梁における床版の簡易連結工法において、連結パネルは、PCaパネルにより構成することが可能である。
【0016】
また、各工程により構築された橋梁構造を補修する場合には、連結パネルを残置して、表層材(アスファルトやコンクリート等)のみを交換施工することが可能である。
【0017】
また、既に橋梁用伸縮装置が取り付けられている場合には、当該橋梁用伸縮装置を撤去した後に、上述した各工程を実施して床版を簡易連結することにより橋梁構造を構築することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る橋梁における床版の簡易連結工法は、橋梁用伸縮装置を用いずに床版を簡易的に連結する工法であるため、現場における生産性向上と品質の確保を図ることが可能となる。また、床版の上部に設置する連結パネルをPCaパネルとすることにより、容易に橋梁構造を構築することができ、施工時間の短縮、施工コストの低減、周辺環境への影響低減等を図ることができる。
【0019】
したがって、本発明に係る橋梁における床版の簡易連結工法によれば、所謂ノージョイント工法において、施工現場の生産性向上及び品質確保が可能となる。なお、本発明に係る橋梁における床版の簡易連結工法は、既に橋梁用伸縮装置が設置されている橋梁においても、これをノージョイント化する際に適用可能な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る橋梁における床版の簡易連結工法の手順を示すフローチャート。
【
図2】本発明の実施形態に係る橋梁における床版の簡易連結工法に用いるPCa連結パネルの模式図。
【
図3】本発明の実施形態に係る橋梁における床版の簡易連結工法の手順を示す模式図(既存の橋梁用伸縮装置が設置されている場合)。
【
図4】本発明の実施形態に係る橋梁における床版の簡易連結工法の手順を示す模式図(PCa連結パネルの設置準備状態)。
【
図5】本発明の実施形態に係る橋梁における床版の簡易連結工法の手順を示す模式図(PCa連結パネルの設置工程)。
【
図6】本発明の実施形態に係る橋梁における床版の簡易連結工法の手順を示す模式図(間詰材の充填工程)。
【
図7】本発明の実施形態に係る橋梁における床版の簡易連結工法の手順を示す模式図(表層材の施工工程)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る橋梁における床版の簡易連結工法(以下、床版の簡易連結工法という場合がある)を説明する。
図1~7は本発明の実施形態に係る床版の簡易連結工法を説明するもので、
図1は床版の簡易連結工法の手順を示すフローチャート(a:既存の橋梁用伸縮装置が存在しない場合、b:既存の橋梁用伸縮装置が存在する場合)、
図2は床版の簡易連結工法に用いるPCa連結パネルの模式図(a:平面図、b:縦断面図、c:側面図)、
図3~7は床版の簡易連結工法の手順を示す模式図である。なお、
図1(a)において、「既存の橋梁用伸縮装置が存在しない場合」とは、橋梁の新設、架け替え、床版の更新等、新規に連結パネルを施工する場合のことである。
【0022】
<床版の簡易連結工法の概要>
本発明に係る床版の簡易連結工法は、橋梁用伸縮装置を用いない所謂ノージョイント工法に関する技術であり、
図1(a)に示すように、道路構造物(例えば床版)に対して連結パネルを貫通して差筋アンカーを挿入することにより当該連結パネルを定着させる工程(S1)と、連結パネルの空隙内に間詰材を打設する工程(S2)と、連結パネルの上部に表層材(アスファルト、コンクリート、プレキャストコンクリート版のような各種プレキャスト部材等)を施工する工程(S3)とを主要な工程とする。また、既存の橋梁用伸縮装置が設置されている場合には、
図1(b)に示すように、既存の橋梁用伸縮装置及び表層材を撤去し(S11)、上述した連結パネルの定着工程(S1)、間詰材の打設工程(S2)、表層材の施工工程(S3)を実施する。
【0023】
この床版の簡易連結工法は、特に、橋脚の橋軸方向の長さが短い場合に好適に適用することができる技術である。また、上述したように、橋梁の新設、架け替え、床版の更新等、新規に連結パネルを施工する場合だけではなく、既に橋梁用伸縮装置が設置されている橋梁構造においても適用することができる。
【0024】
以下の説明において、連結パネルの最も好ましい例としてPCa化された連結パネルについて説明するが、施工の容易性、コスト、耐久性等の種々の条件を満たすことができれば、鋼材やFRP等を用いた連結パネルを使用することもできる。
【0025】
<PCa連結パネル>
本発明は、橋梁用伸縮装置を省略して橋梁構造を構築することを特徴としており、特にPCa(Precast Concrete)連結パネルを用いることが好ましい。本実施形態のPCa連結パネル10は、予め工場で製作された部材である。このPCa連結パネル10は、
図2に示すように、内部に複数の鉄筋11が配筋されており、格子状(井桁状)にコンクリート12が打設されている。
【0026】
PCa連結パネル10は、複数の差筋アンカー13(
図5~7参照)を用いて床版20に固定する。例えば、PCa連結パネル10を床版20に設置した後、PCa連結パネル10の鉄筋11に差筋アンカー13を溶接する。そして、PCa連結パネル10の間隙に間詰材14を充填することにより、床版20に対してPCa連結パネル10を固定する。間詰材14は、施工条件に応じて、コンクリートやモルタル等の材料を適宜選択して使用する。
【0027】
また、本実施形態では、床版20に定着させる構造のPCa連結パネル10を示したが、PCa連結パネル10を床版20と一体にPCa化してもよい。すなわち、PCa化した床版20と、当該床版20と一体にPCa化したPCa連結パネル10とを、本発明で規定するPCa連結パネル10として機能させることができる。
【0028】
<伸縮装置本体>
本発明は、橋梁用伸縮装置を省略した橋梁構造に使用するものであるが、既に橋梁用伸縮装置が設置されている場合には、この橋梁用伸縮装置を撤去した後に、本発明に係る床版の簡易連結工法を適用することができる。橋梁用伸縮装置は、
図3に示すように、伸縮装置本体30を備えて構成されている。この伸縮装置本体30は、橋梁において橋桁の温度伸縮やクリープによる収縮を拘束せず、橋梁を通過する自動車等の走行性能を損なわないように、橋桁の伸縮に追従させるための装置である。
【0029】
本実施形態における伸縮装置本体30は、従来より用いられている一般的な構造の装置であり、
図3に示すように、道路の延長方向(車両の進行方向)の中央付近に設置された本体部31を備えている。本体部31は、複数の鉄筋32に支持されており、表層材40の内部に埋め込まれるようになっている。また、鉄筋32の下端部(アンカー筋)を、床版20に埋め込むことにより、伸縮装置本体30が床版20に定着してある。また、伸縮装置本体30には、本体部31の上部に位置する第1の防水機構33と、隣り合う表層材40の下端部間に掛け渡す第2の防水機構34を設けてある。
【0030】
<床版の簡易連結工法における施工手順>
図3~
図7を参照して、本発明の実施形態に係る橋梁における床版の簡易連結工法における施工手順を説明する。なお、本発明の実施形態に係る橋梁における床版の簡易連結工法は、既に橋梁用伸縮装置が設置されている場合にも適用可能な工法であるため、
図3~
図7において、既存の橋梁用伸縮装置が設置されている場合を含めて図示を行っているが、既存の橋梁用伸縮装置が設置されていない場合には、当該橋梁用伸縮装置の撤去作業は必要ない。
【0031】
図3は既存の橋梁用伸縮装置が設置されている状態を示す説明図、
図4はPCa連結パネル10の設置準備状態を示す説明図、
図5はPCa連結パネル10を設置した状態を示す説明図、
図6はPCa連結パネル10の設置後に間詰材(充填材)を打設(充填)する工程を示す説明図、
図7は表層材(アスファルト、コンクリート、プレキャストコンクリート版のような各種プレキャスト部材等)を施工する工程を示す説明図である。なお、以下の説明では、PCa連結パネル10を固定する対象は床版20であるが、橋梁の構造に応じて、床版20ではなく、他の道路構造物にPCa連結パネル10を固定してもよい。
【0032】
以下に説明する床版の簡易連結工法における施工手順では、既存の橋梁用伸縮装置が存在する場合についても説明している。この点、本発明の床版の簡易連結工法は、既設の橋梁用伸縮装置を撤去する際に、ブレーカー等によるハツリ作業で既設の床版20や下部構造物等に対する不必要な損傷が発生することを防止するとともに、橋梁用伸縮装置の撤去作業に伴い発生する騒音を低減することを目的としている。
【0033】
しかし、既存の橋梁用伸縮装置が存在する場合に、この橋梁用伸縮装置を撤去しなければ、本発明の実施形態に係る床版の簡易連結工法を適用することはできない。そして、本発明の実施形態に係る床版の簡易連結工法は、橋梁用伸縮装置を撤去した後には、上述した本発明の目的を達成することができる。そこで、既存の橋梁用伸縮装置が存在する場合についても説明を行っており、この既存の橋梁用伸縮装置を撤去する工程は、以後、本発明に係る床版の簡易連結工法を適用するために必要な工程であるため、本発明の目的に反するものではない。
【0034】
<施工手順>
図3に示すように、既存の橋梁用伸縮装置が存在する場合には、この橋梁用伸縮装置を撤去する必要がある。そこで、ブレーカー等によるハツリ作業により、既存の橋梁用伸縮装置を撤去する。ハツリ作業は、PCa連結パネル10を設置するための空間を確保するための作業である。ハツリ作業が終了すると、
図4に示すように、既存の橋梁用伸縮装置を床版20に定着させるためのアンカー筋(鉄筋32)の下部が床版20に残った状態となる。また、既存の橋梁用伸縮装置が存在しない場合には、ハツリ作業は不要であるが、表層材の撤去作業及びPCa連結パネル10を設置する空間を形成するための作業(箱抜き作業)が必要となる。
【0035】
この状態で、
図5に示すように、ハツリ作業で形成した空間の下部にPCa連結パネル10を設置し、差筋アンカー13を用いてPCa連結パネル10を床版20に接続する。続いて、
図6に示すように、間詰材14(充填材)を打設(充填)し、
図7に示すように、PCa連結パネル10の上部に表層材40(アスファルト、コンクリート、プレキャストコンクリート版のような各種プレキャスト部材等)を施工して、橋梁構造を完成させる。
【0036】
なお、
図6に示すように、PCa連結パネル10の空隙内に間詰材(充填材)14を打設(充填)する際に、第2の防水機構34を除去した場所に目地材15を施工する。また、
図7に示すように、PCa連結パネル10の上部に表層材40(アスファルト、コンクリート、プレキャストコンクリート版のような各種プレキャスト部材等)を施工する際に、PCa連結パネル10と表層材40との間に防水材50を施工する。
【0037】
なお、
図5~
図7において、床版20に残置された橋梁用伸縮装置のアンカー筋(鉄筋32)や、橋梁伸縮装置の第2の防水機構34を除去した後に施工する目地材15を図示しているが、PCa連結パネル10を用いて橋梁構造を新設する場合、及びPCa連結パネル10が既に設置されている状態で表層材40を補修・交換する場合には、残置した鉄筋32及び目地材15は存在しない。
【0038】
<施工手順/PCa連結パネルを新設する場合>
橋梁施工時に本発明の実施形態に床版の簡易連結工法を適用する場合には、
図5に示すように、PCa連結パネル10を設置し、差筋アンカー13を用いてPCa連結パネル10を床版20に固定した後に、
図6に示すように、PCa連結パネル10の空隙内に間詰材(充填材)14を打設(充填)し、
図7示すように、PCa連結パネル10の上部に表層材40(アスファルト、コンクリート、プレキャストコンクリート版のような各種プレキャスト部材等)及び防水材50を施工して、橋梁構造を完成させる。
【0039】
<施工手順/表層材を補修・交換する場合>
橋梁構造に限らず、道路の表層材40(アスファルト、コンクリート、プレキャストコンクリート版のような各種プレキャスト部材等)は、車両の通行等により摩耗や損傷するため、定期的に補修工事が必要となる。本発明の実施形態に係る床版の簡易連結工法により、既に橋脚構造が構築されている場合には、表層材40(アスファルト、コンクリート、プレキャストコンクリート版のような各種プレキャスト部材等)のみを撤去し、新たに表層材40(アスファルト、コンクリート、プレキャストコンクリート版のような各種プレキャスト部材等)及び防水材50を施工するだけでよい。したがって、施工が容易となり、工期を短縮することができるとともに、補修コストを低減することができる。
【0040】
<従来技術と比較した有利な効果>
本発明は床版を簡易連結することにより、橋梁構造のノージョイント化工事の普及を図ることを目的としている。そこで、本発明に係る床版の簡易連結工法では、格子状(井桁形状)に製作したコンクリート製パネル(PCa連結パネル)を用いることにより、鉄筋の配筋作業を簡略化するとともに、充填材の打設量を低減している。また、間詰材14として、無収縮系の充填材(例えば、無収縮モルタル)を使用してもよい。
【0041】
これにより、素早く確実な施工を容易に実現することが可能となるため、橋梁構造のノージョイント化に対する様々な障壁をなくし、橋梁構造のノージョイント化を広く普及することができる。また、橋梁構造のメンテナンスに関しては、表層に施工した表層材の打替えや、修繕のみの作業となり、従来型の橋梁用伸縮装置を用いた橋梁構造と比較して、維持コストを大幅に低減することができる。さらに、車両の走行性や、橋梁構造の止水性を向上させることができる。また、間詰材14として無収縮系の充填材を用いた場合には、超速硬コンクリートを打設するためのモービル車が不要となり、施工コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 PCa連結パネル
11 鉄筋
12 コンクリート
13 差筋アンカー
14 間詰材
15 目地材
20 床版
30 伸縮装置本体
31 本体部
32 伸縮装置本体の鉄筋
33 第1の防水機構
34 第2の防水機構
40 表層材
50 防水材