(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162494
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】スクリーン印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41F 15/08 20060101AFI20231101BHJP
B41F 15/12 20060101ALI20231101BHJP
B41F 35/00 20060101ALI20231101BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B41F15/08 303E
B41F15/12 A
B41F35/00 C
H05K3/34 505D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072841
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】村上 俊行
(72)【発明者】
【氏名】黒田 聖弥
(72)【発明者】
【氏名】峯 拓生
【テーマコード(参考)】
2C035
2C250
5E319
【Fターム(参考)】
2C035AA06
2C035FA22
2C035FB25
2C035FD01
2C035FD42
2C250FA06
2C250FA17
2C250FB06
2C250FB11
2C250FB16
5E319BB05
5E319CD29
5E319CD35
5E319GG20
(57)【要約】
【課題】マスクの清掃作業で掻き取ったペーストを次の清掃作業でマスクに付着させてしまう事態を防止することができるスクリーン印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】スクリーン印刷装置1が、印刷ヘッド18によるペーストPstの充填によりマスク13の裏面に付着したペーストPstをブレード42によって掻き取るマスク清掃ユニット21と、ブレード42を清掃するブレード清掃ユニット23を備える。ブレード清掃ユニット23は、ブレード42に接触する拭取り材74と、拭取り材74を移動させることでブレード42が掻き取ったペーストPstを拭き取る拭取り材移動機構62と、拭取り材74をブレード42の延びる方向と直交する方向に対して斜めに交差する軸線を中心に回転させることにより拭取り材74のブレード42に接触する部分を変更する接触部分変更機構90を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の開口が形成されたマスクを用いて基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、
前記基板が接触された前記マスクの開口にペーストを充填して前記基板にペーストを印刷する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドによるペーストの充填により前記マスクの裏面に付着したペーストをブレードによって掻き取るマスク清掃手段と、
前記ブレードが掻き取ったペーストを拭き取るブレード清掃手段と、を備え、
前記ブレード清掃手段は、
前記ブレードに接触する拭取り材と、
前記拭取り材を前記ブレードに沿った方向に移動させて前記ブレードが掻き取ったペーストを拭き取る拭取り材移動機構と、
前記拭取り材を前記ブレードの延びる方向と直交する方向に対して斜めに交差する軸線を中心に回転させることにより、前記拭取り材の前記ブレードに接触する部分を変更する接触部分変更機構と、
を備えたスクリーン印刷装置。
【請求項2】
前記接触部分変更機構は、前記軸線を中心に回転する回転軸を有して前記拭取り材を保持する拭取り材ホルダを備え、前記拭取り材は前記軸線を中心とする円周面を備えた立体形状を有する、請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
前記接触部分変更機構は、前記拭取り材ホルダに設けられたギアと、前記拭取り材ホルダの移動範囲内の前記ギアと接触し得る位置に配置されたギア接触部材と、を有し、前記拭取り材移動機構が前記拭取り材ホルダを移動させることによって前記ギアが前記ギア接触部材に接触すると、前記拭取り材ホルダが前記軸線を中心に回転する、請求項2に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】
前記回転軸が伝達するトルクの制限を行うトルクリミッタを備え、前記トルクリミッタにより、前記拭取り材が前記拭取り材移動機構によって前記ブレードに沿って移動するときには前記回転軸の回転が阻止され、前記拭取り材移動機構が前記拭取り材ホルダを移動させて前記ギアを前記ギア接触部材に接触させるときには前記回転軸の回転が許容される、請求項3に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項5】
前記拭取り材は多孔質材である、請求項1~4のいずれかに記載のスクリーン印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の開口が形成されたマスクを用いて基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の開口が形成されたマスクを用いて基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置が知られている。このようなスクリーン印刷装置では、スキージによってマスクの開口にペーストを充填した後に基板をマスクから分離させる動作(いわゆる版離れ)を行うが、この版離れがなされた後のマスクの下面には開口内から流れてきたペーストが付着しているので、そのまま次の印刷作業を実行すると、新たな基板の上面にペーストが付着して不良基板製造の原因となり得る。
【0003】
このため下記の特許文献1には、マスクの下面に付着した状態となっているペーストを除去するクリーニング装置を備えたスクリーン印刷装置が開示されている。このクリーニング装置は、マスクの下面をマスクに沿ったクリーニング方向に摺動することによりマスクの下面に付着したペーストを掻き取る複数の掻取り部材と、これら複数の掻取り部材を保持する保持体を備えている。複数の掻取り部材は、クリーニング方向に対して直列に並んで保持体に保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マスクを清掃した掻取り部材にはマスクから掻き取ったペーストが付着しており、そのまま次のマスクの清掃作業を行うと、掻取り部材に付着していたペーストが反対にマスクに付着してしまうおそれがあった。
【0006】
そこで本発明は、マスクの清掃作業で掻き取ったペーストを次の清掃作業でマスクに付着させてしまう事態を防止することができるスクリーン印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスクリーン印刷装置は、所定の開口が形成されたマスクを用いて基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、前記基板が接触された前記マスクの開口にペーストを充填して前記基板にペーストを印刷する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドによるペーストの充填により前記マスクの裏面に付着したペーストをブレードによって掻き取るマスク清掃手段と、前記ブレードが掻き取ったペーストを拭き取るブレード清掃手段と、を備え、前記ブレード清掃手段は、前記ブレードに接触する拭取り材と、前記拭取り材を前記ブレードに沿った方向に移動させて前記ブレードが掻き取ったペーストを拭き取る拭取り材移動機構と、前記拭取り材を前記ブレードの延びる方向と直交する方向に対して斜めに交差する軸線を中心に回転させることにより、前記拭取り材の前記ブレードに接触する部分を変更する接触部分変更機構と、を備えた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マスクの清掃作業で掻き取ったペーストを次の清掃作業でマスクに付着させてしまう事態をすることが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置の平面図
【
図2】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置の要部側面図
【
図3】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備えるマスク保持部とブレード清掃ユニットの平面図
【
図4】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備えるマスク保持部とブレード清掃ユニットの平面図
【
図5】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置の動作説明図
【
図6】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置の動作説明図
【
図7】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備えるマスク清掃ユニットの斜視図
【
図8】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備えるマスク清掃ユニットの側面図
【
図9】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置の動作説明図
【
図10】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備えるマスク清掃ユニットの動作説明図
【
図11】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備えるマスク清掃ユニットの断面図
【
図12】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備えるブレード清掃ユニットの一部とブレード清掃ユニット保持部の一部を示す斜視図
【
図13】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備えるブレード清掃ユニットの一部とブレード清掃ユニット保持部の一部を示す斜視図
【
図14】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備えるブレード清掃ユニットの一部をマスク清掃ユニットの一部とともに示す平面図
【
図15】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備えるブレード清掃ユニットの一部の側面図
【
図16】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備える接触部分変更機構の一部断面側面図
【
図17】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備える接触部分変更機構の動作説明図
【
図18】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備える接触部分変更機構の動作説明図
【
図19】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備えるスキージ清掃ユニットの一部をマスク清掃ユニットのブレードの一部とともに示す(a)側面図(b)平面図
【
図20】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が備える拭取り材の拭取り面に形成されるペーストの跡の一例を示す模式的説明図
【
図21】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置によるスクリーン印刷方法の工程図
【
図22】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が版離れを行った後にマスクの開口付近の状態をカメラによって撮像している状態を示す図
【
図23】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置が版離れを行った後にマスクの開口付近の状態をカメラによって撮像して得られた画像の一例を示す図
【
図24】本発明の一実施の形態の第1変形例におけるスクリーン印刷装置が備えるブレード清掃ユニットの一部をマスク清掃ユニットの一部とともに示す平面図
【
図25】本発明の一実施の形態の第2変形例におけるスクリーン印刷装置が備えるマスク保持部とブレード清掃ユニット保持部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1および
図2は本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置1を示している。スクリーン印刷装置1は、基板KBに部品を装着して実装基板を生産する部品実装ライン(図示せず)の一部を構成する装置であり、スクリーン印刷装置1の外部より送られてきた基板KBを搬入して位置決めし、基板KBの上面に設けられた電極DK(
図2)に半田等のペーストPstを印刷して外部に搬出する一連の動作から成る作業(スクリーン印刷動作)を繰り返し実行する。
【0011】
本実施の形態では説明の便宜上、基板KBの搬送(搬入、搬出)方向をX方向(作業者OPから見た左右方向)、X方向と直交する水平方向をY方向(作業者OPから見た前後方向)、上下方向をZ方向とする。また、Y方向(前後方向)のうち作業者OPから見た奥側方向(
図1における紙面上側)を前方、作業者OPから見た手前側方向(
図1における紙面下側)を後方とする。
【0012】
図1および
図2において、スクリーン印刷装置1は基板搬送部11、基板保持部12、マスク13、マスク保持部14、カメラ15、カメラ移動機構16、基板保持部移動機構17、印刷ヘッド18、印刷ヘッド移動機構19を備えている。またスクリーン印刷装置1は更に、マスク清掃ユニット21、マスク清掃ユニット移動機構22、ブレード清掃ユニット23およびブレード清掃ユニット保持部24を備えている。
【0013】
図1において、基板搬送部11は、上流側搬送部11Aと下流側搬送部11Bを含む。上流側搬送部11Aと下流側搬送部11Bは、基板保持部12からみてX方向の両側に離れた位置に並んで配置されている。上流側搬送部11Aと下流側搬送部11Bは、Y方向に並んで配置されてそれぞれがX方向に延びた一対のコンベアMから構成されており、コンベアMを駆動させて基板KBをX方向に搬送する。基板搬送部11は、ペーストPstが印刷される前の基板KB(これからペーストPstが印刷される基板KB)を基板保持部12に搬入する動作と、ペーストPstを印刷した基板KBを基板保持部12から搬出する作業を行う。
【0014】
基板保持部12は、基板搬送部11によって搬入された基板KBを保持する機能を有する。基板保持部12は基板KBを水平姿勢かつ電極DKが上方を向く姿勢で保持する(
図2)。なお、基板保持部12は基板KBをX方向に移動させる基板移動機構(図示せず)を有しており、この基板移動機構によって上流側搬送部11Aから搬入された基板KBを保持位置まで移動し、保持位置から基板KBを下流側搬送部11Bに排出する。
【0015】
図1において、マスク13は金属製の矩形の板状部材から成る。マスク13の四辺は矩形の枠体から成るマスク枠13Wによって支持されている。マスク13の中央部には基板KBの電極DKの配置に応じた配置で設けられた複数の開口13Kが形成されている。
【0016】
図1、
図3および
図4において、マスク保持部14は、X方向に並んで配置されてそれぞれがY方向に延びた2つのマスク支持ガイド31と、2つのマスク支持ガイド31に設置された4つのマスク固定部32を備えている。
図1に示すように、2つのマスク支持ガイド31にはマスク枠13WのうちY方向に延びた2辺が載置され、これによりマスク13は水平姿勢に支持される。
【0017】
図1において、4つのマスク固定部32は2つのマスク支持ガイド31それぞれに2つずつ、Y方向に並んで配置されている。各マスク固定部32は例えば、図示しないシリンダによってマスク枠13Wの一部をマスク支持ガイド31に上方から押し付けてマスク支持ガイド31に固定する構成となっている。各マスク固定部32は、マスク13のサイズに応じてその位置を変えることができるように、マスク支持ガイド31上でY方向に移動させることが可能である。
【0018】
図2において、カメラ15は、基板保持部12に保持された基板KBとマスク13との間の高さに位置して設けられている。カメラ15は、上方と下方の双方の映像を同時にまたは切り替えて取得することが可能ある。カメラ15によって撮像されたマスク側マークと基板側マークの画像はスクリーン印刷装置1が備える制御部(図示せず)において処理され、マスク13と基板KBとの間の相対位置が算出される。
【0019】
図1において、カメラ移動機構16は、マスク保持部14の外側をY方向に延びたYガイド16aと、X方向に延びたXガイド16bを備えている。Xガイド16bは一端がYガイド16aに取り付けられており、Yガイド16aに沿って移動自在である。カメラ15はXガイド16bに取り付けられており、Xガイド16bに沿ってX方向に移動自在である。
【0020】
カメラ移動機構16は、Yガイド16aに対するXガイド16bのY方向への移動動作(
図2中に示す矢印A)と、Xガイド16bに対するカメラ15のX方向への移動動作とにより、マスク13の下方領域でカメラ15を水平面内(XY面内)に移動させる。これによりカメラ15は水平移動で基板KBとマスク13との間の空間に進出し、マスク13に設けられた図示しないマーク(マスク側マーク)と基板KBに設けられた図示しないマーク(基板側マーク)の双方を撮像することが可能である(
図5(a))。
【0021】
図2において、基板保持部移動機構17は、基板KBを保持した基板保持部12をX方向、Y方向、Z方向およびXY面内の回転方向(θ方向)に移動させる。基板保持部移動機構17は、制御部で求められたマスク13と基板KBとの間の相対位置に基づいて基板保持部12をX、Yおよびθ方向に移動させ、マスク13に対して基板KBを位置合わせした状態で基板保持部12を上昇させる。これにより基板保持部12は、基板KBを上昇させ、マスク13の下面に接触させる(
図5(b))。
【0022】
図1および
図2において、印刷ヘッド18は、X方向に延びたヘッドベース18aと2つのスキージ18bを備えている。スキージ18bはX方向に延びた板状の部材から成る。2つのスキージ18bはY方向に対向し、かつ、下方に向かって間隔が広がるように配置されている(
図2)。2つのスキージ18bはヘッドベース18aに対して独立して昇降させることができる。
【0023】
図2において、印刷ヘッド移動機構19は、一方のスキージ18bの下端をマスク13の上面に当接させた印刷ヘッド18をY方向に移動させる(
図5(b)→
図6(a))。これにより印刷ヘッド18は、スキージ18bによりマスク13上のペーストPstを掻き寄せて、マスク13の開口13KにペーストPstを充填し、基板KBの電極DKにペーストPstを印刷(塗布)する。
【0024】
マスク13の開口13KにペーストPstが充填されたら、基板保持部移動機構17は、基板保持部12を下降させて基板KBをマスク13から分離(版離れ)させる(
図6(b)中に示す矢印B)。基板KBがマスク13から版離れしたら、基板搬送部11は基板KBを外部に排出する。
【0025】
このように本実施の形態におけるスクリーン印刷装置1は、搬入された基板KBを保持する基板保持部12と、基板保持部12を移動させる基板保持部移動機構17と、基板KBが接触されたマスク13の開口13KにペーストPstを充填して基板KBにペーストPstを印刷する印刷ヘッド18と、これからペーストが印刷される基板KBを搬入し、印刷ヘッド18によりペーストPstが印刷された後、基板保持部移動機構17によってマスク13から分離された基板KBを搬出する基板搬送部11を備えた構成となっている。
【0026】
マスク清掃ユニット21は版離れがなされた後のマスク13の下面に付着しているペーストPstを掻き取るマスク清掃手段として機能を有するものである。マスク清掃ユニット21は、
図7に示すように、ブレード保持体41と、ブレード保持体41に保持された複数(ここでは4つ)のブレード42を備えている。ブレード保持体41は全体としてX方向に延びて上方に開口した枠体41aと、枠体41aのX方向の両端部に設けられたマスク受け部41bを備えている。複数のブレード42はX方向に延びた板状の部材から成り、Y方向に並行に並んだ状態で枠体41a内に保持されている。本実施の形態ではブレード42は樹脂から製造されており、適度な可撓性を有した部材となっている。
【0027】
2つのマスク受け部41bの上面であるマスク当接面41T(
図7)は水平面と平行であり、枠体41aの上面よりも相対的に高い位置に位置している(
図8)。ブレード42は垂直姿勢(XZ面に平行な姿勢)から上縁(エッジ42E)を前方に傾けた傾斜姿勢で枠体41aに保持されており(
図7および
図8)、この状態で各ブレード42のエッジ42Eは、2つのマスク受け部41bの上面(マスク当接面41T)よりも上方に位置した状態となっている(
図8)。
【0028】
マスク清掃ユニット移動機構22は、マスク清掃ユニット21をマスク13の下面に沿った水平方向(Y方向)に移動させるマスク清掃手段移動部として機能するものであり、
図1に示すように、マスク保持部14のX方向の外側をY方向に延びた移動ガイド22aと、X方向に延びた移動ベース22bを備えている。移動ベース22bは移動ガイド22aによって支持された状態で、Y方向に移動自在になっている。
【0029】
移動ベース22bの上部にはマスク清掃ユニット21(詳細にはブレード保持体41の枠体41a)が取り付けられている。移動ベース22bは枠体41aの内部空間と通じる空間を有しており、枠体41aの内部空間内の空気は移動ベース22bに繋がる吸引装置22S(
図2)によって吸引することができる。
【0030】
移動ベース22b(すなわちマスク清掃ユニット21)は、マスク保持部14におけるY方向の外側(詳細には後方であり作業者OP)の位置を待機位置としている。マスク清掃ユニット21によってマスク13の下面に付着したペーストPstを掻き取る清掃作業(マスク清掃作業)を行う場合には、マスク清掃ユニット移動機構22によって、待機位置に位置したマスク清掃ユニット21を前方に移動させた後、向きを反転させてマスク清掃ユニット21を後方に移動させる(
図9中に示す矢印C)。
【0031】
マスク清掃ユニット21が後方に移動されるとき(
図10(a)→
図10(b))、マスク清掃ユニット21は4つのブレード42それぞれのエッジ42Eをマスク13の下面に当接させるとともに、一対のマスク受け部41bそれぞれの上面(マスク当接面41T)をマスク13の下面に当接させる。このためマスク清掃ユニット21がマスク清掃ユニット移動機構22によって後方に移動されると、4つのブレード42はそれぞれマスク13の下面を摺動し、マスク13の下面に付着しているペーストPstをエッジ42Eにおいて掻き取る。各ブレード42はマスク13の下面に当接している間、進行方向とは反対の方向(ここでは前方)に弾性的に撓むように変形することによって、マスク13の下面にエッジ42Eを密着させた状態を維持する(
図10(a)→
図10(b))。
【0032】
上記ようにブレード42がマスク13の下面に当接している間、一対のマスク受け部41bは、ブレード42が過剰な力でマスク13に押し当てられないようにするためのストッパとして機能する。これによりブレード42の弾性変形は一定範囲内に保たれ、ブレード42の摩耗の進行が想定の範囲内にコントロールされる。
【0033】
マスク清掃ユニット21がブレード42によってマスク13の下面に付着したペーストPstを掻き取っている間(
図10(a)→
図10(b))、ブレード保持体41の枠体41a内の空気は吸引装置22Sによって吸引される。これによりマスク13の開口13K内に付着しているペーストPstが隣接するブレード42の間から吸い出され(
図10(a),(b)中に示す矢印D)、マスク13に付着したペーストPstが取り除かれる。
【0034】
このように本実施の形態のマスク清掃ユニット21は、ブレード42の上縁(エッジ42E)をマスク13の下面に当接させた状態でマスク13の下方をマスク13と平行な水平方向(Y軸方向)に移動することによって、マスク13の下面に付着したペーストPstを掻き取る構成となっている。
【0035】
マスク清掃ユニット21によるマスク清掃作業が終了したら、マスク清掃ユニット移動機構22はマスク清掃ユニット21を待機位置に復帰させる。待機位置に復帰したマスク清掃ユニット21は各ブレード42のエッジ42Eと一対のマスク受け部41bをマスク13から離間させる。
【0036】
図11は、マスク清掃作業の終了後、ブレード42のエッジ42Eがマスク13の下面から離間した状態のマスク清掃ユニット21を示している。各ブレード42は、マスク13から離間した状態では弾性的に変形していない元の形状に復帰する。そして各ブレード42のエッジ42Eは、2つのマスク受け部41bの上面(マスク当接面41T)よりも上方に位置した状態となる。
【0037】
ブレード清掃ユニット23は、マスク清掃作業においてマスク清掃ユニット21がブレード42によりマスク13の下面から掻き取ったペーストPstを拭き取って清掃するブレード清掃手段として機能する。このためブレード清掃ユニット23は、
図3および
図4に示すように、マスク清掃ユニット21の待機位置に相当する位置、すなわち、平面視におけるマスク13の外側(マスク保持部14におけるマスク13が設置される領域の後方)の位置に位置する。
【0038】
ブレード清掃ユニット保持部24は、ブレード清掃ユニット23をマスク清掃ユニット21の待機位置に相当する位置(平面視におけるマスク13の外側の位置)に保持するブレード清掃手段保持部として機能する。このためブレード清掃ユニット保持部24は、
図3および
図4に示すように、マスク保持部14を構成する一対のマスク支持ガイド31のうちマスク13の外側領域(詳細にはマスク保持部14におけるマスク13が設置される領域の後方領域)に設けられている。
【0039】
図3および
図4において、ブレード清掃ユニット保持部24は仕切り部51、一対の位置決め部52、一対の支持部53、一対の案内部54および一対のフック部55を備えている。仕切り部51はX方向に延びた部材であり、一対のマスク支持ガイド31に両端部が支持されている。
【0040】
図3および
図4において、一対の位置決め部52はそれぞれ仕切り部51の両端それぞれの後面側に設けられている。
図12にも示すように、一対の位置決め部52はそれぞれブロック状の部材から成り、後面である被当接面52Mには係合穴52Hが設けられている。
【0041】
図3、
図12および
図13において、一対の支持部53はそれぞれ、仕切り部51から後方に延びた形状を有する。各支持部53の上面には、後方から前方に向かってなだらかに上昇する斜面部を有するガイド面53Mが形成されている。案内部54は本実施の形態ではマスク支持ガイド31の一部から成り、内側(一対の案内部54が対向する側)の面である案内面54MはYZ面に平行に形成されている。
【0042】
図3、
図4および
図12から分かるように、一対の支持部53は、マスク保持部14を構成する一対のマスク支持ガイド31の一部(仕切り部51よりも後方の部分)から成っている。すなわち本実施の形態では、ブレード清掃ユニット保持部24はマスク保持部14と一体化して設けられた構成となっている。このためブレード清掃ユニット保持部24をマスク保持部14に取り付ける構造物を省略でき、製造コストを安価にすることができる。
【0043】
図3、
図4および
図14において、ブレード清掃ユニット23は、拭取り部61、拭取り材移動機構62、一対の被保持部63およびギア操作部64を備えている。拭取り部61は、
図14および
図15に示すように、ベース部71、保持部72、拭取り材ホルダ73、拭取り材74、ギア75およびトルクリミッタ76を備えている。
【0044】
図14および
図15において、ベース部71は水平方向に延びた板状の部材から成り、保持部72はブロック状の部材から成る。保持部72は、ベース部71の上面に立設された複数の位置決めのためのピン71P(
図14)に側方から当接されることでベース部71に対して位置決めされ、その状態でベース部71に上方から螺入されたボルト71Bによってベース部71上に固定されている。
【0045】
図14および
図15において、拭取り材ホルダ73は、一端(後端)側が保持部72によって保持された回転軸73a、回転軸73aの他端(前端)側に設けられた円盤状のベース73bおよびベース73bから回転軸73aの延びる方向に沿って前方に延びた複数の保持棒73cを有している。回転軸73aの軸線73Jは、マスク清掃ユニット21のブレード42の延びる方向(X方向)と直交する方向(Y方向)から角度Θだけ傾いた姿勢で水平面内を延びている(
図14)。拭取り材74は例えば多孔質材から成り、円周面を備えた立体形状(円柱形状)を有している(
図7参照)。
【0046】
拭取り材74は複数の保持棒73cに挿通されることによって、拭取り材ホルダ73に着脱自在に保持されている。ギア75は回転軸73aに固定して設けられており、回転軸73aと一体となって回転軸73aの軸線73Jまわりに回転する。
図16(
図16は
図14中に示す矢視V1-V1から見た図)に示すように、ギア75は外周に多数の歯(外周歯75T)を有しており、その外周歯75Tは回転軸73aの軸線73Jに対して傾いている。すなわちギア75は本実施の形態では斜歯歯車であり、その外周歯75Tの向き(幅方向に延びる峰)はYZ面とほぼ平行に延びている(
図14)。
【0047】
図14および
図15において、トルクリミッタ76は保持部72内に設けられており、回転軸73aが伝達するトルクの制限を行う。詳細には、トルクリミッタ76は、拭取り材74またはギア75から回転軸73aに作用するトルクが予め定めた所定の制限値(トルク制限値)以下である場合にはそのトルクが保持部72に伝達されるようにし(回転軸73aの回転は阻止される)、ギア75から回転軸73aに作用するトルクがトルク制限値を上回る場合にはそのトルクが保持部72に伝達されないようにする(回転軸73aの回転は許容される)。
【0048】
拭取り材移動機構62は全体としてX方向に延びた機構部であり、拭取り材74を(直接的にはベース部71を)X方向に移動させる(
図7中に示す矢印E)。これにより拭取り材74は、マスク清掃ユニット21が備えるブレード42の一方側の端部(ここでは右端部)に設定された初期位置(
図7中に実線で示す拭取り材74参照)と、ブレード42の他方側の端部(ここでは左端部)に設定された最大移動位置(
図7中に破線で示す拭取り部61参照)との間で移動する。
【0049】
図3および
図4において、一対の被保持部63は、拭取り材移動機構62のX方向の両端部から前方に延びて設けられている。すなわち一対の被保持部63は、マスク清掃ユニット21が備えるブレード42に沿った拭取り材74の移動方向である拭取り材移動方向(X方向)に離れた位置に配置されている。
【0050】
図3において、一対の被保持部63それぞれの前端部には、X方向の内側(一対の被保持部63が対向する側)に突出して延びた突出部63Tが形成されている。突出部63Tの前面である当接面63Mからは係合ピン63Pが前方に突出して延びている(
図12および
図14も参照)。
【0051】
図3、
図4および
図14において、ギア操作部64は、ブレード清掃ユニット23が備える一対の被保持部63のうちの一方側(ここでは右側の被保持部63)に設けられている。
図16に示すように、ギア操作部64はスプリング付きの蝶番81、スペーサ82およびギア接触部材83を備えて構成されている。
【0052】
図14および
図16において、蝶番81は一方の羽根部(固定側羽根部81a)が被保持部63の上面に水平姿勢で固定されており、他方の羽根部(可動側羽根部81b)はY方向に延びた軸部81cの軸線まわりに揺動自在になっている。スペーサ82は蝶番81の可動側羽根部81bの下面側に取り付けられており、ギア接触部材83は基端側(
図16における右端側)がスペーサ82に取り付けられている。このためギア接触部材83はスペーサ82および可動側羽根部81bと一体となって、軸部81cの軸線を支点として揺動(起伏)する。
【0053】
スペーサ82は、ギア接触部材83が水平姿勢を超えて倒伏することがないように、可動側羽根部81bの(従ってギア接触部材83の)起伏範囲を制限する。これによりギア接触部材83は、その先端部83Tに押し上げ力が作用していない状態では、
図16に示すように、スペーサ82が被保持部63に当接することで水平姿勢となり、固定側羽根部81aと同一平面上に位置する。水平姿勢に位置した状態のギア接触部材83の先端部83Tに押し上げ力が作用すると、可動側羽根部81bは軸部81cの軸線まわりに起仰(先端部83Tを上げる方向)するが、その押仕上げ力が除去されると、付勢ばねの付勢力によって元の水平姿勢に復帰する。
【0054】
図14および
図16において、ギア接触部材83にはZ方向(ギア接触部材83の厚さ方向)に貫通した開口部83Kが設けられている。拭取り材74が初期位置に位置した状態では(
図14)、ギア75が有する外周歯75Tのうち1つの外周歯75Tが下方から係合する(
図16も参照)。開口部83Kは平面視においてほぼ長方形形状であり、X方向に対向する2辺のうち左側の辺はY方向、すなわち斜歯歯車であるギア75の外周歯75Tの向きとほぼ一致している。
【0055】
図14に示すように、拭取り材74が初期位置に位置してギア75の外周歯75Tのうちの1つがギア接触部材83の開口部83Kに下方から入り込んでいる状態では(
図16)、ギア接触部材83はギア75から押し上げ力を受けない。このため拭取り材74が初期位置に位置した状態では、蝶番81の可動側羽根部81bは固定側羽根部81aと同一平面上に位置する。
【0056】
ここで、拭取り材74が初期位置から最大移動位置に向かって移動すると(
図17(a)→
図17(b))、開口部83Kに入り込んでいた外周歯75Tは水平姿勢となっているギア接触部材83からその移動を妨げる方向(ここでは右向き)の力を受ける。しかしながら、このときギア接触部材83の開口部83K内に入り込んでいた外周歯75Tはギア接触部材83の先端部83Tを押し上げて(起仰させて)開口部83Kから離脱するので、ギア75はギア接触部材83によって回転させられることなく、最大移動位置の側に移動する(
図17(b)中に示す矢印F)。
【0057】
一方、これとは反対に、最大移動位置から移動してきた拭取り材74が初期位置に戻る場合には(
図18(a)→
図18(b)→
図18(c))、その戻る過程において、ギア75の外周歯75Tのうちの1つがギア接触部材83の先端部83Tに側方(ここでは左方)から当接する。このとき外周歯75Tはギア接触部材83を倒伏方向(先端部83Tを下げる方向)に押圧するが、ギア接触部材83はスペーサ82があるために倒伏方向へは変位せず水平姿勢を支持する。このため外周歯75Tにはギア接触部材83からの大きな反力G(
図18(b))が作用する。
【0058】
トルクリミッタ76に設定されるトルク制限値(T0)は、上記反力Gによってギア75(すなわち回転軸73a)に作用するトルク(T1)よりも小さい値に設定されている(T0<T1)。このため回転軸73aはギア75とともに軸線73Jまわりに回転する(
図18(c)中に示す矢印R)。このとき回転する回転軸73aの角度はギア75の外周歯75Tの1つ分の角度であり、拭取り材74も回転軸73aの軸線73Jまわりにギア75の外周歯75Tの1つ分だけ回転する。
【0059】
このような構成のブレード清掃ユニット23をブレード清掃ユニット保持部24に装着するときには、ブレード清掃ユニット23が備える一対の突出部63Tをブレード清掃ユニット保持部24が備える一対の支持部53(ガイド面53M)に載せる。そして、その状態でブレード清掃ユニット23の全体を前方へ移動させる。
【0060】
ブレード清掃ユニット23を前方へ移動させると、ブレード清掃ユニット23の一対の係合ピン63Pは、ブレード清掃ユニット保持部24の一対の係合穴52Hに入り込み、一対の突出部63Tそれぞれの当接面63Mは、一対の位置決め部52それぞれの被当接面52Mに当接する(
図3→
図4および
図12→
図13)。これによりブレード清掃ユニット23は、ブレード清掃ユニット保持部24に対してY方向に位置決めされる。
【0061】
一対の突出部63Tそれぞれの当接面63Mが一対の位置決め部52それぞれの被当接面52Mに当接するまでの間に、ブレード清掃ユニット23の一対の被保持部63(突出部63T)はそれぞれ、ブレード清掃ユニット保持部24の一対の支持部53(ガイド面53M)によって下面が案内され、ブレード清掃ユニット保持部24に対するZ方向の位置決めがなされる。また一対の被保持部63(突出部63T)はそれぞれ、ブレード清掃ユニット保持部24の一対の案内部54(案内面54M)によって側面が案内されて、X方向の位置決めがなされる。
【0062】
ブレード清掃ユニット23の一対の突出部63Tは、その当接面63Mがブレード清掃ユニット保持部24の一対の被当接面52Mに当接するまでの間に、ブレード清掃ユニット保持部24に設けられた一対のフック部55それぞれの傾斜面55M(
図12)に当接してフック部55を弾性的に押し下げる。そして、当接面63Mが被当接面52Mに当接するタイミングで突出部63Tの下面が傾斜面55Mを通過し終えると、フック部55は突出部63Tによる押し下げから解放されて元の姿勢に復帰する。
【0063】
元に姿勢に復帰したフック部55は突出部63Tの背面63N(
図3および
図12)に係合する(
図12→
図13)。これによりブレード清掃ユニット23はブレード清掃ユニット保持部24に保持(固定)される。ブレード清掃ユニット23がブレード清掃ユニット保持部24に保持された状態では、ブレード清掃ユニット23が備える拭取り部61の拭取り材74は、待機位置に位置したマスク清掃ユニット21の上方に位置した状態となる(
図1および
図2)。
【0064】
このように本実施の形態におけるスクリーン印刷装置1が備えるブレード清掃ユニット23は、マスク清掃ユニット21が備えるブレード42に接触する拭取り材74と、拭取り材74をブレード42のエッジ42Eに沿った方向(X方向)に移動させてブレード42が掻き取ったペーストPstを拭き取る拭取り材移動機構62と、ブレード42に沿った方向(X方向)に離れた位置に配置され、ブレード清掃ユニット保持部24に保持される一対の被保持部63とを備えた構成となっている。そして、このブレード清掃ユニット23は、ブレード42に沿った方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に移動されてブレード清掃ユニット保持部に装着(保持)されるようになっており、ブレード清掃ユニット保持部24は、ブレード清掃ユニット23が装着される際に一対の被保持部63(詳細には一対の突出部63T)の下面を支持する一対の支持部53と、支持部53上を移動する被保持部63それぞれの側面を案内する一対の案内部54とを有する構成となっている。
【0065】
ブレード清掃ユニット保持部24に保持された状態のブレード清掃ユニット23を取り外す場合には、一対のフック部55を押し下げながらブレード清掃ユニット23を後方へ引き抜けばよい。このように本実施の形態におけるスクリーン印刷装置1では、ブレード清掃ユニット23のブレード清掃ユニット保持部24への着脱作業を行い易いものとなっている。
【0066】
上述したように、本実施の形態におけるスクリーン印刷装置1は、ブレード42が掻き取ったペーストPstを拭き取るブレード清掃ユニット23を着脱自在な状態で保持するブレード清掃ユニット保持部24を備えており、ブレード清掃ユニット保持部24からブレード清掃ユニット23を容易に取り外すことができるので、ブレード清掃ユニット23がスクリーン印刷装置1のメンテナンスや点検等の際の支障になることがない。また、一対の被保持部63を一対の支持部53で支持するので、ブレード清掃ユニット23をブレード清掃ユニット保持部24によって安定的に保持することができる。
【0067】
ブレード清掃ユニット23によって、マスク清掃作業後におけるマスク清掃ユニット21の各ブレード42のエッジ42Eに付着したペーストPstを拭き取る作業(ブレード清掃作業)を行う場合には、拭取り材移動機構62によって、初期位置に位置した拭取り部61を最大移動位置へ向けて移動させる。これにより拭取り材74は4つのブレード42それぞれのエッジ42Eに接触した状態でX方向、すなわち各ブレード42の延びる方向に移動してエッジ42E上を摺動し、各ブレード42がマスク13の下面から掻き取ったペーストPstを拭き取る。
【0068】
拭取り材74がブレード42のエッジ42E上を摺動している間、拭取り材74は、
図19(a),(b)に示すように(
図19(b)は
図19(a)中に示す矢視V2-V2から見た図)、拭取り材74が有する円周面のうち軸線73Jを円周面に投影した投影線TSを中心とした一定範囲内の面を拭取り面74MとしてペーストPstを拭き取る。本実施の形態では、マスク清掃ユニット21は4つのブレード42を備えているため、拭取り材74が4つのブレード42から拭き取ったペーストPstの跡は、4本の平行な線となる(
図19(b))。これら4つの平行なペーストPstの線の延びる方向はブレード42が延びる方向(Y方向)と平行であり、平面視において回転軸73aの軸線73J(投影線TS)から角度Θだけ傾いた方向となる。
【0069】
上記のように拭取り材74がブレード42のエッジ42E上を摺動するためには拭取り材74が回転軸73aとともに回転してはならず、回転軸73aが回転するのを阻止する必要がある。このためトルクリミッタ76に設定されるトルク制限値(T0)は、ブレード清掃作業時(拭取り材74の移動時)に拭取り材74の拭取り面74Mがブレード42から抗力を受けることによって回転軸73aに作用するトルク(T2)よりも大きい値に設定されている(T2<T0)。
【0070】
このように本実施の形態では、回転軸73aが伝達するトルクの制限を行うトルクリミッタ76を備えており、そのトルクリミッタ76により、拭取り材74が拭取り材移動機構62によってブレード42に沿って移動するときには回転軸73aの回転が阻止され、拭取り材移動機構62が拭取り材ホルダ73を移動させてギア75をギア接触部材83に接触させるときには回転軸73aの回転が許容されるようになっている。そのため、トルクリミッタ76におけるトルク制限値(T0)と、最大移動位置の側に位置していた拭取り材74が初期位置の側に移動する過程でギア75の外周歯75Tのうちの1つがギア接触部材83の先端部83Tから受ける反力G(
図18(b))によって回転軸73aに作用するトルク(T1)と、ブレード清掃作業時に拭取り材74がブレード42から受ける抗力により回転軸73aが受けるトルク(T2)とは、T2<T0<T1の関係を有するものとなっている。
【0071】
本実施の形態では、上記のように、トルクリミッタ76におけるトルク制限値(T0)がブレード清掃作業時に拭取り材74がブレード42から受ける抗力により回転軸73aが受けるトルク(T2)よりも大きい値に設定されているので(T2<T0)、拭取り材74をブレード42の延びる方向(X方向)のどちらの方向へ移動させる場合であっても回転軸73aは回転しない。このためブレード清掃作業においては、ブレード清掃ユニット23は初期位置から最大移動位置へ移動する経路(往路)においてだけ、あるいは最大移動位置から初期位置まで移動する経路(復路)においてだけでなく、往路と復路の双方において拭取り材74によりブレード42からペーストPstを拭き取ることができる。
【0072】
このように本実施の形態におけるスクリーン印刷装置1では、マスク清掃ユニット21のブレード42に付着したペーストPstを拭き取るようになっているので、マスク清掃ユニット21がマスク13の清掃作業で掻き取ったペーストを次の清掃作業でマスク13に付着させてしまう事態を防止することができる。
【0073】
本実施の形態では、拭取り部61を構成するギア75は、拭取り材移動機構62によって拭取り材74を初期位置から最大移動位置まで移動させる往路動作の際には、ギア接触部材83によって回転させられることはなく(
図17(a)→
図17(b))、最大移動位置から初期位置に移動させる復路動作の際には、ギア75の外周歯75Tがギア接触部材83に当接した際に、ギア接触部材83から受ける反力Gによって回転させられる(
図18(a)→
図18(b)→
図18(c))。このときギア75は外周歯75Tの1つ分だけ回転するので、拭取り材74における拭取り面74Mは、外周歯75Tの1つ分に相当する距離Lだけ拭取り材74の円周面上を移動し、拭取り材74における拭取り面74Mが変更される。
【0074】
このように本実施の形態におけるスクリーン印刷装置1が備えるブレード清掃ユニット23は、軸線73Jを中心に回転する回転軸73aを有して円柱状(円周面を備えた立体形状)の拭取り材74を保持する拭取り材ホルダ73と、拭取り材ホルダ73に設けられたギア75と、拭取り材ホルダ73の移動範囲(ここでは初期位置と最大移動位置との間の範囲)内のギア75と接触し得る位置に配置されたギア接触部材83を備えた構成となっている。そして、拭取り材移動機構62が拭取り材ホルダ73を移動させることによってギア75がギア接触部材83に接触すると、拭取り材ホルダ73が軸線73Jを中心に回転して拭取り面74Mを変更するようになっている。
【0075】
本実施の形態では、軸線73Jを中心に拭取り材ホルダ73を回転させるという単純な動作で拭取り材74のブレード42に接触する部分(拭取り面74M)を変更することができ、構成を簡素化することが可能である。また、拭取り材ホルダ73を回転させるためだけの専用の動力源(例えばモータやシリンダ等)を必要としないので、装置構成を簡単にすることができる。
【0076】
本実施の形態では、拭取り材ホルダ73、ギア75およびギア接触部材83は、拭取り材74をブレード42の延びる方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に対して斜めに交差する軸線73Jを中心に回転させることにより、拭取り材74のブレード42に接触する部分(拭取り面74M)を変更する接触部分変更機構90となっている。
【0077】
図20(a),(b),(c)は、ギア接触部材83によりギア75を外周歯75Tの1つ分ずつ回転させた場合に、拭取り材74の拭取り面74Mに形成されるペーストPstの跡の状況を模式的に示したものである。
図20(b)は
図20(a)の状態から外周歯75Tの1つ分に相当する距離Lだけ拭取り面74Mが移動した状態を示しており、
図20(c)は
図20(a)の状態から外周歯75Tの5つ分に相当する距離5L(L×5)だけ拭取り面74Mが移動した状態を示している。
【0078】
図20(a),(b),(c)から分かるように、拭取り面74MにおいてペーストPstの跡の延びる方向は、拭取り材74が有する円周面のうち回転軸73aの軸線73Jを円周面に投影した投影線TSと直交する方向に対して傾いている。このため、或る拭取り面74Mと外周歯75Tの1つ分に相当する距離Lだけ移動した拭取り面74Mとがその一部(端部)においてが重なったとしても、或る拭取り面74MにおけるペーストPstの跡と、距離Lだけ移動した拭取り面74MにおけるペーストPstとは、その端部領域TRにおいて重ならない(
図20(b),(c))。
【0079】
これは、拭取り材74が軸線73Jを中心とする円周面を備えた立体形状(円柱形状)であって、その軸線73Jを中心に回転することでブレード42との拭取り面74Mを変えることができる構成であることに加えて、回転軸73aの軸線73Jがブレード42の延びる方向(X方向)と直交する方向(Y方向)から水平方向に傾いていることによって得られる効果である。
【0080】
次に、スクリーン印刷装置1が行うスクリーン印刷動作の流れ(スクリーン印刷方法)を説明する。スクリーン印刷装置1によるスクリーン印刷方法は、
図21に示すように、基板搬入工程、接触工程、印刷工程、版離れ工程、基板搬出工程をこの順で行い、これと並行して、マスク清掃工程とブレード清掃工程をこの順で実行するようになっている。
【0081】
基板搬入工程は、これからペーストPstが印刷される基板KBを搬入する基板搬入作業を行う工程であり、基板搬送部11がスクリーン印刷装置1の外部から供給された基板KBを搬送(搬入)することによって実行される。接触工程は、基板搬入工程で搬入した基板KBをマスク13に位置合わせしてマスク13の下面に接触させる接触作業を行う工程であり、基板保持部移動機構17によって基板KBをマスク13の下面に接触させることによって実行される。
【0082】
印刷工程は、接触工程で基板KBを接触させたマスク13の開口13KにペーストPstを充填して基板KBにペーストPstを印刷する印刷作業を行う工程であり、基板KBが接触されたマスク13の開口13Kに印刷ヘッド18でペーストPstを充填することによって実行される。版離れ工程は、印刷工程の後、基板KBをマスク13から分離させる版離れ作業を行う工程であり、ペーストPstが印刷された基板KBを基板保持部移動機構17によってマスク13から分離させることによって実行される。基板搬出工程は、印刷工程が実行された後の基板KBを搬出する基板搬出作業を行う工程であり、基板搬送部11が基板KBをスクリーン印刷装置1の外部に搬送することによって実行される。
【0083】
マスク清掃工程は、印刷工程でマスク13の下面に付着したペーストPstをマスク清掃ユニット21のブレード42で掻き取るマスク清掃作業を行う工程であり、マスク清掃ユニット移動機構22によってマスク清掃ユニット21マスク13の下面で移動されることによって実行される。ブレード清掃工程は、マスク清掃工程でマスク13の下面からペーストPstを掻き取ったブレード42をブレード清掃ユニット23で清掃するブレード清掃作業を行う工程であり、ブレード清掃ユニット23が拭取り材移動機構62により拭取り材74をブレード42の延びる方向に移動させることによって実行される。
【0084】
本実施の形態におけるスクリーン印刷方法を構成する基板搬入工程、印刷工程、基板搬出工程、マスク清掃工程およびブレード清掃工程のうち、基板搬入工程、印刷工程および基板搬出工程はペーストPstの印刷対象である基板KBの1枚ごとにこの順で実行される。マスク清掃工程はマスク13にブレード42を接触させて行うので印刷工程の実行中には行うことができない(ブレード清掃工程の実行中にも行うことができない)。従って、1枚の基板KBについてペーストPstの印刷が終了するごとにマスク清掃作業を実行する場合には、
図21に示すように、マスク清掃作業を、版離れ作業(工程)が終了した後、次の接触作業(工程)が開始されるまでの間(基板KBの搬出開始から次の基板KBの搬入が完了するまでの間)に実行するようにする。
【0085】
また、ブレード清掃作業はマスク清掃工程でマスク13の下面からペーストPstを掻き取ったマスク清掃ユニット21のブレード42を清掃する作業(工程)であるので、マスク清掃作業の実行中には行うことができず、マスク清掃作業が終了した後に開始することになる。ブレード清掃作業はマスク清掃作業が行われている間を除いて実行することが可能であるが、1枚の基板KBについてペーストPstの印刷が終了するごとにマスク清掃作業(工程)とブレード清掃作業(固定)を実行する場合には、
図21に示すように、マスク清掃作業が終了してから次の版離れ作業(工程)が終了するまでの間にブレード清掃作業(工程)を完了するようにする。
【0086】
このように版離れ作業(工程)が終了した後、次の接触作業(工程)が開始されるまでの間にマスク清掃作業(工程)が実行され、そのマスク清掃作業が終了してから次の版離れ作業(工程)が終了するまでの間にブレード清掃作業(工程)が完了するようにすれば、マスク清掃作業のためにスクリーン印刷装置1の稼働を停止させる必要がないのは勿論のこと、ブレード清掃作業(工程)のためにもスクリーン印刷装置1の稼働を停止させる必要がない。よって本実施の形態におけるスクリーン印刷装置1(スクリーン印刷方法)によれば、スクリーン印刷装置1(ひいては部品実装ライン)の生産性の低下を防止しつつ、マスク13の清掃作業で掻き取ったペーストPstが次のマスク13に付着してしまう事態を防止することができる。
【0087】
前述の説明では、1枚の基板KBについてペーストPstの印刷が終了するごとにマスク清掃作業を実行する場合を説明したが、マスク清掃作業(工程)は、基板KBが1枚印刷されるごとに行われなければならないわけではなく、基板KBが数枚印刷されるごとに行われるのであってもよい。あるいは
図22に示すように、版離れ終了直後のマスク13の下面をカメラ15によって撮像し、これにより得られた画像GZ(
図23)に基づいて、開口13KにおけるペーストPstの付着状況を調べる。そして、
図23に示すように、マスク13の開口13Kに滲み部分NJや詰まり部分TMが認められた場合に、それを契機としてマスク清掃作業を行い、その後にブレード清掃作業を行うようにしてもよい。
【0088】
(第1変形例)
本実施の形態における第1変形性を示す。第1変形例では、
図24に示すように、ブレード清掃ユニット23が備えるギア75が斜歯歯車ではなく平歯車になっている。また、ギア接触部材83が備える開口部83Kが平面視において台形上になっており、X方向に対向する2辺のうち左側の辺は、ギア75の外周歯75Tの向きとほぼ一致するように斜めを向いている。このような構成であっても、拭取り材移動機構62が拭取り材ホルダ73を移動させることによってギア75がギア接触部材83に接触すると、拭取り材ホルダ73が回転軸73aの軸線73Jを中心に回転するので、前述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
(第2変形例)
次に、本実施の形態における第2変形例を示す。第2変形例では、
図25に示すように、ブレード清掃ユニット保持部24が、マスク保持部14とは別部材となっている。すなわち、第2変形例では、仕切り部51から後方に延びる一対の案内部54が一対のマスク支持ガイド31の一部ではなく。一対のマスク支持ガイドとは独立した部材となっている。この第2変形例のようにブレード清掃ユニット保持部24がマスク保持部14とは別部材となっている構成は、一対のマスク支持ガイド31のY方向の間隔が基板KBのサイズに合わせて変化させることができるようになっている場合に(
図25中に示す矢印H参照)、極めて有用である。
【0090】
以上説明したように、本実施の形態におけるスクリーン印刷装置1では、マスク清掃ユニット21のブレード42に付着したペーストPstを拭き取るブレード清掃手段(ブレード清掃ユニット23)を備えているので、マスク清掃ユニット21がマスク13の清掃作業で掻き取ったペーストPstを次の清掃作業でマスク13に付着させてしまう事態を防止することができる。
【0091】
また本実施の形態におけるスクリーン印刷装置1では、ブレード42の延びる方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に対して斜めに交差する軸線73Jを中心に回転させることで拭取り材74のブレード42に接触する部分(拭取り面74M)を変更することができ、しかも拭取り材74の広い範囲をブレードの清掃に使用することが可能であるので、拭取り材74の交換頻度を少なくでき、メンテナンスに要するコストを低減することができる。
【0092】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述したものに限定されず、種々の変形等が可能である。例えば、上述の実施の形態では、拭取り材74は円周面を備えた立体形状(円柱形状)を有するものであったがこれは一例であり、拭取り材74の形状は限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0093】
マスクの清掃作業で掻き取ったペーストを次の清掃作業でマスクに付着させてしまう事態を防止することができるスクリーン印刷装置を提供する。
【符号の説明】
【0094】
1 スクリーン印刷装置
13 マスク
13K 開口
17 基板保持部移動機構
18 印刷ヘッド
21 マスク清掃ユニット(マスク清掃手段)
23 ブレード清掃ユニット(ブレード清掃手段)
24 ブレード清掃ユニット保持部
42 ブレード
61 拭取り部
62 拭取り材移動機構
63 被保持部
64 ギア操作部
73 拭取り材ホルダ
73a 回転軸
73J 軸線
74 拭取り材
74M 拭取り面
75 ギア
76 トルクリミッタ
83 ギア接触部材
90 接触部分変更機構
Pst ペースト
KB 基板