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特開2023-162533金属表面のはんだ広がり防止被膜、その形成のための表面処理液およびはんだ広がり防止被膜の利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162533
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】金属表面のはんだ広がり防止被膜、その形成のための表面処理液およびはんだ広がり防止被膜の利用
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20231101BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20231101BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20231101BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20231101BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20231101BHJP
【FI】
C09D201/00
C23C26/00 A
H05K3/28 C
C09D5/00 D
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072903
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】722013405
【氏名又は名称】四国化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山地 範明
(72)【発明者】
【氏名】松浦 駿
(72)【発明者】
【氏名】中西 正人
(72)【発明者】
【氏名】勝村 真人
【テーマコード(参考)】
4J038
4K044
5E314
【Fターム(参考)】
4J038JA17
4J038JA25
4J038JB01
4J038JB35
4J038JC30
4J038JC35
4J038KA06
4J038NA12
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC10
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA21
4K044BB01
4K044BC08
4K044CA53
5E314AA24
5E314CC03
5E314CC04
5E314DD06
5E314FF01
5E314FF21
5E314GG22
(57)【要約】
【課題】本発明は、金属(特に銅)との親和性、耐熱性、およびはんだ広がり防止性に優れたはんだ広がり防止被膜を提供すること。
【解決手段】本発明のはんだ広がり防止被膜は、アゾールシラン化合物を含んでおり、アゾールシラン化合物はアゾール環とシリル基をもつ化合物であるので金属(特に銅)との相互作用を高めることができる。また、アゾールシラン化合物が互いに反応して脱水縮合しシロキサン結合(Si-O-Si)を形成すること、および、アゾールシラン化合物と金属イオン(特に銅イオン)が錯体を形成することにより、耐熱性およびはんだ広がり防止性に優れている。さらに、アゾールシラン化合物を含むはんだ広がり防止被膜を形成した金属表面は、樹脂との密着性を向上することが期待でき、例えば、プリント配線板の金属回路や電子部品の金属端子と封止樹脂(モールド樹脂)との密着性を向上することが期待できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾールシラン化合物を含むことを特徴とする金属表面のはんだ広がり防止被膜。
【請求項2】
請求項1に記載のはんだ広がり防止被膜を金属表面に形成するための、アゾールシラン化合物を含む表面処理液。
【請求項3】
金属を含む基材を前記表面処理液によって処理することによる、請求項1に記載のはんだ広がり防止被膜の形成方法。
【請求項4】
請求項1に記載のはんだ広がり防止被膜を金属表面に有するプリント配線板。
【請求項5】
請求項1に記載のはんだ広がり防止被膜を金属表面に有する電子部品。
【請求項6】
請求項1に記載のはんだ広がり防止被膜を金属表面に有する半導体ウェハ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属表面におけるはんだの濡れ広がりを防止するためのはんだ広がり防止被膜、その形成のための表面処理液およびはんだ広がり防止被膜の利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板において、抵抗、コンデンサ、ダイオード、集積回路等の電子部品の実装には、一般的にはんだ付けによる実装が行われている。
【0003】
近年、電子機器の小型化および高性能化のニーズが高まる中、プリント配線板に実装される電子部品の小型化および高密度実装が進んでいる。それに伴い、電子部品に使用される金属端子も小型化されたことで、はんだ付けの際に毛細管現象によりはんだが金属端子に吸い上がりやすくなっており、電子部品の短絡や性能不良の原因となる恐れがある。
【0004】
そのため、従来からはんだの吸い上がりを防止するために、金属表面におけるはんだの濡れ広がりを防ぐ様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には、ポリエーテル改質されたジメチルポリシロキサンを主体とするはんだ-付着防止層が提案されている。また、特許文献2には、アクリレート系の光硬化型の形成材料を硬化させたはんだ上がり防止帯が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003-510818号
【特許文献2】特開2010-161015号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に開示されるような材料を用いたはんだ広がり防止被膜では、はんだ広がり防止性は見られるものの、金属(特に銅)との親和性、およびはんだ付け(リフロー)の際の熱に対する耐熱性が十分なはんだ広がり防止被膜は得られなかった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、金属(特に銅)との親和性、耐熱性、およびはんだ広がり防止性に優れたはんだ広がり防止被膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アゾールシラン化合物を含むはんだ広がり防止被膜において、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の〔1〕~〔6〕の通りである。
【0010】
〔1〕アゾールシラン化合物を含むことを特徴とする金属表面のはんだ広がり防止被膜。
【0011】
〔2〕請求項1に記載のはんだ広がり防止被膜を金属表面に形成するための、アゾールシラン化合物を含む表面処理液。
【0012】
〔3〕金属を含む基材を前記表面処理液によって処理することによる、請求項1に記載のはんだ広がり防止被膜の形成方法。
【0013】
〔4〕請求項1に記載のはんだ広がり防止被膜を金属表面に有するプリント配線板。
【0014】
〔5〕請求項1に記載のはんだ広がり防止被膜を金属表面に有する電子部品。
【0015】
〔6〕請求項1に記載のはんだ広がり防止被膜を金属表面に有する半導体ウェハ。
【発明の効果】
【0016】
本発明のはんだ広がり防止被膜は、アゾールシラン化合物を含んでおり、アゾールシラン化合物はアゾール環とシリル基をもつ化合物であるので金属(特に銅)との相互作用を高めることができる。また、アゾールシラン化合物が互いに反応して脱水縮合しシロキサン結合(Si-O-Si)を形成すること、および、アゾールシラン化合物と金属イオン(特に銅イオン)が錯体を形成することにより、耐熱性およびはんだ広がり防止性に優れている。
【0017】
また、アゾールシラン化合物を含むはんだ広がり防止被膜を形成した金属表面は、樹脂との密着性を向上することが期待でき、例えば、プリント配線板の金属回路や電子部品の金属端子と封止樹脂(モールド樹脂)との密着性を向上することが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0019】
(アゾールシラン化合物)
アゾールシラン化合物は、モノアゾールシラン化合物、ジアゾールシラン化合物、トリアゾールシラン化合物およびテトラゾールシラン化合物からなる群から選択される1種以上のアゾールシラン化合物である。本発明においては、金属(特に銅)との親和性、耐熱性、はんだ広がり防止性および金属と樹脂との密着性のさらなる向上の観点から、アゾールシラン化合物は、好ましくはトリアゾールシラン化合物およびテトラゾールシラン化合物からなる群から選択される1種以上のアゾールシラン化合物を含む。アゾールシラン化合物はアゾール環にアミノ基が結合したアミノ基含有アゾールシラン化合物であることが好ましい。
【0020】
(トリアゾールシラン化合物)
トリアゾールシラン化合物は、窒素原子を3つ含む複素5員環化合物(すなわちトリアゾール化合物)において、置換基として、1分子中、1つのシリル基含有アルキル基(例えば、後述の一般式(Ia)における-(CH-Si(OR)3-n(OH)基)を有する化合物である。シリル基含有アルキル基はトリアゾール環を構成する原子と直接結合していてもよいし、連結基(例えば、酸素原子、硫黄原子、-NH-等)を介して結合していてもよい。シリル基含有アルキル基がトリアゾール環を構成する原子と直接結合している場合、結合する原子は、窒素原子であってもよいし、または炭素原子であってもよい。シリル基含有アルキル基が結合している原子は、金属(特に銅)との親和性、耐熱性、はんだ広がり防止性および金属と樹脂との密着性のさらなる向上の観点から、窒素原子であることが好ましい。トリアゾールシラン化合物を構成するトリアゾール環は1,2,4-トリアゾール環であってもよいし、または1,2,3-トリアゾール環であってもよい。トリアゾール環は、金属(特に銅)との親和性、耐熱性、はんだ広がり防止性および金属と樹脂との密着性のさらなる向上の観点から、1,2,4-トリアゾール環であることが好ましい。
【0021】
トリアゾールシラン化合物の具体例として、例えば、一般式(Ia)および(Ib)で表されるトリアゾールシラン化合物が挙げられる。一般式(Ia)および(Ib)で表される化合物をそれぞれトリアゾールシラン化合物(Ia)およびトリアゾールシラン化合物(Ib)ということがある。
【0022】
【化1】
【0023】
式(Ia)中、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基または炭素数1~6のアルキルチオ基を表す。アルキル基の具体例として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、およびn-ドデシル基等が挙げられる。アルキルチオ基の具体例として、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基等が挙げられる。XおよびXは、同一であっても、または異なっていてもよく、好ましくは同一である。XおよびXは、金属(特に銅)との親和性、耐熱性、はんだ広がり防止性および金属と樹脂との密着性のさらなる向上の観点から、それぞれ独立して、好ましくは水素原子、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(特に炭素数1~8の直鎖状または分岐状のアルキル基)、フェニル基、またはアミノ基を表し、より好ましくは水素原子、炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、またはアミノ基を表し、さらに好ましくはアミノ基を表す。
式(Ia)中、mは1~12の整数を表す。mは、アゾールシラン化合物の溶解性の向上および金属(特に銅)との親和性、耐熱性、はんだ広がり防止性および金属と樹脂との密着性のさらなる向上の観点から、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、さらに好ましくは2~5の整数を表す。
式(Ia)中、nは0~3の整数を表す。
式(Ia)中、Rはメチル基またはエチル基を表す。Rは、作業環境の向上の観点から、好ましくはエチル基を表す。
【0024】
式(Ia)においてXまたはXの少なくとも一方がアミノ基であるトリアゾールシラン化合物(Ia)は、前記したアミノ基含有アゾールシラン化合物に包含される。このとき、m、nおよびRはそれぞれ、式(Ia)におけるm、nおよびRと同様である。XまたはXの一方がアミノ基である場合、他方の基は、式(Ia)におけるXおよびXと同様の範囲内の基から選択されてよい。
【0025】
【化2】
【0026】
式(Ib)中、X、X、m、nおよびRはそれぞれ、式(Ia)におけるX、X、m、nおよびRと同様である。
式(Ib)中、XおよびXは、金属(特に銅)との親和性、耐熱性、はんだ広がり防止性および金属と樹脂との密着性のさらなる向上の観点から、それぞれ独立して、好ましくは水素原子、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(特に炭素数1~8の直鎖状または分岐状のアルキル基)、フェニル基、またはアミノ基を表し、より好ましくは水素原子、炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、またはアミノ基を表し、さらに好ましくはアミノ基を表す。
式(Ib)中、mは、アゾールシラン化合物の溶解性の向上および金属(特に銅)との親和性、耐熱性、はんだ広がり防止性および金属と樹脂との密着性のさらなる向上の観点から、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、さらに好ましくは2~5の整数を表す。
式(Ib)中、nは0~3の整数を表す。
式(Ib)中、Rはメチル基またはエチル基を表す。Rは、作業環境の向上の観点から、好ましくはエチル基を表す。
【0027】
式(Ib)においてXまたはXの少なくとも一方がアミノ基であるトリアゾールシラン化合物(Ib)は、前記したアミノ基含有アゾールシラン化合物に包含される。このとき、m、nおよびRはそれぞれ、式(Ib)におけるm、nおよびRと同様である。XまたはXの一方がアミノ基である場合、他方の基は、式(Ib)におけるXおよびXと同様の範囲内の基から選択されてよい。
【0028】
トリアゾールシラン化合物(Ia)は一般式(Ia-1)~(Ia-4)で表されるトリアゾールシラン化合物を包含する。一般式(Ia-1)~(Ia-4)で表される化合物をそれぞれトリアゾールシラン化合物(Ia-1)、トリアゾールシラン化合物(Ia-2)、トリアゾールシラン化合物(Ia-3)、およびトリアゾールシラン化合物(Ia-4)ということがある。
【0029】
【化3】
【0030】
式(Ia-1)~(Ia-4)中、X、X、mおよびRはそれぞれ、式(Ia)におけるX、X、mおよびRと同様である。式(Ia-1)~(Ia-4)中、好ましいX、X、mおよびRもまた、それぞれ、式(Ia)における好ましいX、X、mおよびRと同様である。
【0031】
式(Ia-1)~(Ia-4)においてXまたはXの少なくとも一方がアミノ基であるトリアゾールシラン化合物(Ia-1)~(Ia-4)は、前記したアミノ基含有アゾールシラン化合物に包含される。このとき、mおよびRはそれぞれ、式(Ia-1)~(Ia-4)におけるmおよびRと同様である。XまたはXの一方がアミノ基である場合、他方の基は、式(Ia-1)~(Ia-4)におけるXおよびXと同様の範囲内の基から選択されてよい。
【0032】
トリアゾールシラン化合物(Ia-1)は、前記の一般式(Ia)においてnが0である場合のトリアゾールシラン化合物(トリアルコキシ体)である。
同様に、トリアゾールシラン化合物(Ia-2)は、nが1である場合のトリアゾールシラン化合物であり、トリアゾールシラン化合物(Ia-3)は、nが2である場合のトリアゾールシラン化合物であり、トリアゾールシラン化合物(Ia-4)は、nが3である場合のトリアゾールシラン化合物である。
【0033】
トリアゾールシラン化合物(Ia)の具体例として、例えば、以下に例示するトリアゾールシラン化合物(Ia-1)、および当該トリアゾールシラン化合物(Ia-1)において1つ~3つのアルコキシ基(例えばメトキシ基および/またはエトキシ基)がヒドロキシル基に加水分解(または変換)されてなるトリアゾールシラン化合物(Ia-2)~(Ia-4)が挙げられる:
1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-メチル-1-[2-(トリエトキシシリル)エチル]-1,2,4-トリアゾール、
5-メチル-1-[4-(トリメトキシシリル)ブチル]-1,2,4-トリアゾール、
3-エチル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-プロピル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-イソプロピル-1-[10-(トリメトキシシリル)デシル]-1,2,4-トリアゾール、
3-ブチル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-ヘキシル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
5-メチル-3-オクチル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-ドデシル-1-[6-(トリエトキシシリル)ヘキシル]-1,2,4-トリアゾール、
3,5-ジメチル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3,5-ジイソプロピル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-フェニル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-メチル-5-フェニル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-エチル-5-フェニル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3,5-ジフェニル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-ベンジル-1-[4-(トリエトキシシリル)ブチル]-1,2,4-トリアゾール、
3-ベンジル-5-フェニル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-ヘキシルチオ-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-ベンジル-5-プロピル-1-[6-(トリエトキシシリル)ヘキシル]-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-1-(トリエトキシシリル)メチル-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
5-アミノ-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
5-アミノ-3-エチル-1-[6-(トリメトキシシリル)ヘキシル]-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-5-フェニル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-5-ベンジル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-1-[6-(トリメトキシシリル)ヘキシル]-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-1-[6-(トリエトキシシリル)ヘキシル]-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-1-[12-(トリメトキシシリル)ドデシル]-1,2,4-トリアゾール、
3,5-ジアミノ-1-(トリメトキシシリル)メチル-1,2,4-トリアゾール、
3,5-ジアミノ-1-(トリエトキシシリル)メチル-1,2,4-トリアゾール、
3,5-ジアミノ-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3,5-ジアミノ-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3,5-ジアミノ-1-[6-(トリメトキシシリル)ヘキシル]-1,2,4-トリアゾール、
3,5-ジアミノ-1-[12-(トリメトキシシリル)ドデシル]-1,2,4-トリアゾール、
3-メチルチオ-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-イソプロピルチオ-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-ヘキシルチオ-1-[10-(トリエトキシシリル)デシル]-1,2,4-トリアゾール、
3-エチルチオ-5-イソプロピル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3,5-ビス(メチルチオ)-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
5-ヘキシルチオ-3-メチルチオ-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-5-メチルチオ-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
5-アミノ-3-メチルチオ-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
5-アミノ-3-メチルチオ-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール、
5-アミノ-3-イソプロピルチオ-1-[6-(トリエトキシシリル)ヘキシル]-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-5-ヘキシルチオ-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,4-トリアゾール等。
【0034】
トリアゾールシラン化合物(Ia)のうち、トリアゾールシラン化合物(Ia-1)は、WO2018/186476号、米国特許出願公開第2012/0021232号明細書、WO2019/058773号に準拠して合成することができる。具体的には、以下の反応スキーム(E)に示すように、一般式(Ia-x)で示されるトリアゾール化合物(本明細書中、トリアゾール化合物(Ia-x)ということがある)と、一般式(Ia-y)で示されるハロゲン化アルキルシラン化合物(本明細書中、ハロゲン化アルキルシラン化合物(Ia-y)ということがある)を、脱ハロゲン化水素剤の存在下、適量の反応溶媒中において適宜の反応温度および反応時間にて反応させることにより、概ね高収率で合成することができる。
【0035】
【化4】
【0036】
反応スキーム(E)中、X、X、mおよびRはそれぞれ、式(Ia)におけるX、X、mおよびRと同様である。
【0037】
トリアゾールシラン化合物(Ia)のうち、トリアゾールシラン化合物(Ia-2)~(Ia-4)は、トリアルコキシ体のトリアゾールシラン化合物(Ia-1)を適量の水と接触させて加水分解することにより、合成することができる。
【0038】
トリアゾールシラン化合物(Ia)は、トリアゾールシラン化合物(Ia-1)~(Ia-4)の混合物であってもよい。
【0039】
トリアゾールシラン化合物(Ib)は一般式(Ib-1)~(Ib-4)で表されるトリアゾールシラン化合物を包含する。一般式(Ib-1)~(Ib-4)で表される化合物をそれぞれトリアゾールシラン化合物(Ib-1)、トリアゾールシラン化合物(Ib-2)、トリアゾールシラン化合物(Ib-3)、およびトリアゾールシラン化合物(Ib-4)ということがある。
【0040】
【化5】
【0041】
式(Ib-1)~(Ib-4)中、X、X、mおよびRはそれぞれ、式(Ia)におけるX、X、mおよびRと同様である。式(Ib-1)~(Ib-4)中、好ましいX、X、mおよびRは、それぞれ、式(Ib)における好ましいX、X、mおよびRと同様である。
【0042】
式(Ib-1)~(Ib-4)においてXまたはXの少なくとも一方がアミノ基であるトリアゾールシラン化合物(Ib-1)~(Ib-4)は、前記したアミノ基含有アゾールシラン化合物に包含される。このとき、mおよびRはそれぞれ、式(Ib-1)~(Ib-4)におけるmおよびRと同様である。XまたはXの一方がアミノ基である場合、他方の基は、式(Ib-1)~(Ib-4)におけるXおよびXと同様の範囲内の基から選択されてよい。
【0043】
トリアゾールシラン化合物(Ib-1)は、前記の一般式(Ib)においてnが0である場合のトリアゾールシラン化合物(トリアルコキシ体)である。
同様に、トリアゾールシラン化合物(Ib-2)は、nが1である場合のトリアゾールシラン化合物であり、トリアゾールシラン化合物(Ib-3)は、nが2である場合のトリアゾールシラン化合物であり、トリアゾールシラン化合物(Ib-4)は、nが3である場合のトリアゾールシラン化合物である。
【0044】
トリアゾールシラン化合物(Ib)の具体例として、例えば、以下に例示するトリアゾールシラン化合物(Ib-1)、および当該トリアゾールシラン化合物(Ib-1)において1つ~3つのアルコキシ基(例えばメトキシ基および/またはエトキシ基)がヒドロキシル基に加水分解(または変換)されてなるトリアゾールシラン化合物(Ib-2)~(Ib-4)が挙げられる:
1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル」-1,2,3-トリアゾール、
1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル」-1,2,3-トリアゾール、
4-メチル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-エチル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-プロピル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-イソプロピル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-ブチル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-ヘキシル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-ドデシル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4,5-ジメチル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-ベンジル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-フェニル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4,5-ジフェニル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-アミノ-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-メチルチオ-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-イソプロピルチオ-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-ヘキシルチオ-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-メチル-3-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-ヘキシル-3-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-メチルチオ-3-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-アミノ-3-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-プロピル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-アミノ-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2,3-トリアゾール、
4-アミノ-1-[6-(トリエトキシシリル)ヘキシル]-1,2,3-トリアゾール、
4-アミノ-1-[10-(トリエトキシシリル)デシル]-1,2,3-トリアゾール、
4-アミノ-1-[12-(トリエトキシシリル)ドデシル]-1,2,3-トリアゾール。
【0045】
トリアゾールシラン化合物(Ib)のうち、トリアゾールシラン化合物(Ib-1)は、トリアゾール化合物(Ia-x)の代わりに、一般式(Ib-x)で表されるトリアゾール化合物(本明細書中、トリアゾール化合物(Ib-x)ということがある)を用いること以外、前記した反応スキーム(E)と同様の方法により、概ね高収率で合成することができる。
【0046】
【化6】
【0047】
式(Ib-x)中、XおよびXはそれぞれ、式(Ia)におけるXおよびXと同様である。
【0048】
トリアゾールシラン化合物(Ib)のうち、トリアゾールシラン化合物(Ib-2)~(Ib-4)は、トリアルコキシ体のトリアゾールシラン化合物(Ib-1)を適量の水と接触させて加水分解することにより、合成することができる。
【0049】
トリアゾールシラン化合物(Ib)は、トリアゾールシラン化合物(Ib-1)~(Ib-4)の混合物であってもよい。
【0050】
トリアゾールシラン化合物(Ia)およびトリアゾールシラン化合物(Ib)以外のトリアゾールシラン化合物としては、例えば、
3-トリメトキシシリルメチルチオ-1,2,4-トリアゾール、
3-[3-(トリメトキシシリル)プロピルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-[3-(トリエトキシシリル)プロピルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-[6-(トリエトキシシリル)ヘキシルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-[12-(トリメトキシシリル)ドデシルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-メチル-5-[2-(トリエトキシシリル)エチルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-メチル-5-[4-(トリメトキシシリル)ブチルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-メチル-5-[10-(トリメトキシシリル)デシルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-5-(トリエトキシシリル)メチルチオ-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-5-[3-(トリメトキシシリル)プロピルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-5-[3-(トリエトキシシリル)プロピルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-5-[6-(トリメトキシシリル)ヘキシルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-アミノ-5-[12-(トリメトキシシリル)ドデシルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-メルカプト-5-[2-(トリメトキシシリル)エチルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-メルカプト-5-[5-(トリメトキシシリル)ペンチルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-メルカプト-5-[8-(トリメトキシシリル)オクチルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-メチルチオ-5-[3-(トリメトキシシリル)プロピルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-メチルチオ-5-[4-(トリエトキシシリル)ブチルチオ]-1,2,4-トリアゾール、
3-メチルチオ-5-[10-(トリメトキシシリル)デシルチオ]-1,2,4-トリアゾール等を挙げることができる。
【0051】
(モノアゾールシラン化合物)
モノアゾールシラン化合物は、窒素原子を1つ含む複素5員環化合物(すなわちモノアゾール化合物)において、置換基として、1分子中、1つのシリル基含有アルキル基(例えば、前記一般式(Ia)における-(CH-Si(OR)3-n(OH)基と同様の基)を有する化合物である。シリル基含有アルキル基が結合している原子は、モノアゾール環を構成する原子であり、例えば、窒素原子であってもよいし、または炭素原子であってもよい。モノアゾールシラン化合物は、置換基(例えば、前記一般式(Ia)におけるXおよびXと同様の基)をさらに有していてもよい。当該置換基が結合している原子は、モノアゾール環を構成する原子であり、例えば、窒素原子であってもよいし、または炭素原子であってもよい。
【0052】
モノアゾールシラン化合物が置換基としてアミノ基を有する場合、当該モノアゾールシラン化合物は前記したアミノ基含有アゾールシラン化合物に包含される。
【0053】
(ジアゾールシラン化合物)
ジアゾールシラン化合物は、窒素原子を2つ含む複素5員環化合物(すなわちジアゾール化合物)において、置換基として、1分子中、1つのシリル基含有アルキル基(例えば、前記一般式(Ia)における-(CH-Si(OR)3-n(OH)基と同様の基)を有する化合物である。シリル基含有アルキル基が結合している原子は、ジアゾール環を構成する原子であり、例えば、窒素原子であってもよいし、または炭素原子であってもよい。シリル基含有アルキル基が結合している原子は、金属(特に銅)との親和性、耐熱性、はんだ広がり防止性および金属と樹脂との密着性のさらなる向上の観点から、窒素原子であることが好ましい。ジアゾールシラン化合物は、置換基(例えば、前記一般式(Ia)におけるXおよびXと同様の基)をさらに有していてもよい。当該置換基が結合している原子は、ジアゾール環を構成する原子であり、例えば、窒素原子であってもよいし、または炭素原子であってもよい。
【0054】
ジアゾールシラン化合物が置換基としてアミノ基を有する場合、当該ジアゾールシラン化合物は前記したアミノ基含有アゾールシラン化合物に包含される。
【0055】
(テトラゾールシラン化合物)
テトラゾールシラン化合物は、窒素原子を4つ含む複素5員環化合物(すなわちテトラゾール化合物)において、置換基として、1分子中、1つのシリル基含有アルキル基(例えば、後述の一般式(Ic)における-(CH-Si(OR)3-n(OH)基と同様の基)を有する化合物である。シリル基含有アルキル基が結合している原子は、テトラゾール環を構成する原子であり、例えば、窒素原子であってもよいし、または炭素原子であってもよい。シリル基含有アルキル基が結合している原子は、金属(特に銅)との親和性、耐熱性、はんだ広がり防止性および金属と樹脂との密着性のさらなる向上の観点から、窒素原子であることが好ましい。テトラゾールシラン化合物は、置換基(例えば、前記一般式(Ia)におけるXと同様の基)をさらに有していてもよい。当該置換基(例えば、前記一般式(Ia)におけるXと同様の基)が結合している原子は、テトラゾール環を構成する原子であり、例えば、窒素原子であってもよいし、または炭素原子であってもよい。当該置換基(例えば、前記一般式(Ia)におけるXと同様の基)が結合している原子は、金属(特に銅)との親和性、耐熱性、はんだ広がり防止性および金属と樹脂との密着性のさらなる向上の観点から、炭素原子であることが好ましい。
【0056】
テトラゾールシラン化合物の具体例として、例えば、一般式(Ic)で表されるテトラゾールシラン化合物が挙げられる。一般式(Ic)で表される化合物をテトラゾールシラン化合物(Ic)ということがある。
【0057】
【化7】
【0058】
式(Ic)中、X、m、nおよびRはそれぞれ、式(Ia)におけるX、m、nおよびRと同様である。
式(Ic)中、Xは、金属(特に銅)との親和性、耐熱性、はんだ広がり防止性および金属と樹脂との密着性のさらなる向上の観点から、好ましくは水素原子、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(特に炭素数1~8の直鎖状または分岐状のアルキル基)、フェニル基、またはアミノ基を表し、より好ましくはフェニル基またはアミノ基を表し、さらに好ましくはアミノ基を表す。
式(Ic)中、mは、アゾールシラン化合物の溶解性の向上の観点から、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、さらに好ましくは2~5の整数を表す。
式(Ic)中、nは0~3の整数を表す。
式(Ic)中、Rはメチル基またはエチル基を表す。Rは、作業環境の向上の観点から、好ましくはエチル基を表す。
【0059】
式(Ic)中、シリル基含有アルキル基(すなわち-(CH-Si(OR)3-n(OH))は2位の窒素原子に結合しているが、1位の窒素原子に結合していてもよい。詳しくは、一般式(Ic)で表されるテトラゾールシラン化合物(Ic)は、一般式(Ic)においてシリル基含有アルキル基が2位の窒素原子の代わりに1位の窒素原子に結合しているテトラゾールシラン化合物を包含する。
【0060】
式(Ic)においてXがアミノ基であるテトラゾールシラン化合物(Ic)は、前記したアミノ基含有アゾールシラン化合物に包含される。このとき、m、nおよびRはそれぞれ、式(Ic)におけるm、nおよびRと同様である。
【0061】
テトラゾールシラン化合物(Ic)は一般式(Ic-1)~(Ic-4)で表されるテトラゾールシラン化合物を包含する。一般式(Ic-1)~(Ic-4)で表される化合物をそれぞれテトラゾールシラン化合物(Ic-1)、テトラゾールシラン化合物(Ic-2)、テトラゾールシラン化合物(Ic-3)、およびテトラゾールシラン化合物(Ic-4)ということがある。一般式(Ic-1)~(Ic-4)中、シリル基含有アルキル基は2位の窒素原子に結合しているが、式(Ic)と同様に、1位の窒素原子に結合していてもよい。
【0062】
【化8】
【0063】
式(Ic-1)~(Ic-4)中、X、mおよびRはそれぞれ、式(Ia)におけるX、mおよびRと同様である。式(Ic-1)~(Ic-4)中、好ましいX、mおよびRは、それぞれ、式(Ic)における好ましいX、mおよびRと同様である。
【0064】
式(Ic-1)~(Ic-4)中、シリル基含有アルキル基(すなわち-(CH-Si(OR)3-n(OH))は2位の窒素原子に結合しているが、1位の窒素原子に結合していてもよい。詳しくは、一般式(Ic-1)~(Ic-4)で表されるテトラゾールシラン化合物(Ic-1)~(Ic-4)はそれぞれ、一般式(Ic-1)~(Ic-4)においてシリル基含有アルキル基が2位の窒素原子の代わりに1位の窒素原子に結合しているテトラゾールシラン化合物を包含する。
【0065】
式(Ic-1)~(Ic-4)においてXがアミノ基であるテトラゾールシラン化合物(Ic-1)~(Ic-4)は、前記したアミノ基含有アゾールシランカップリング剤に包含される。このとき、mおよびRはそれぞれ、式(Ic-1)~(Ic-4)におけるmおよびRと同様である。
【0066】
テトラゾールシラン化合物(Ic-1)は、前記の一般式(Ic)においてnが0である場合のテトラゾールシラン化合物(トリアルコキシ体)である。
同様に、テトラゾールシラン化合物(Ic-2)は、nが1である場合のテトラゾールシラン化合物であり、テトラゾールシラン化合物(Ic-3)は、nが2である場合のテトラゾールシラン化合物であり、テトラゾールシラン化合物(Ic-4)は、nが3である場合のテトラゾールシラン化合物である。
【0067】
テトラゾールシラン化合物(Ic)の具体例として、例えば、以下に例示するテトラゾールシラン化合物(Ic-1)、および当該テトラゾールシラン化合物(Ic-1)において1つ~3つのアルコキシ基(例えばメトキシ基および/またはエトキシ基)がヒドロキシル基に加水分解(または変換)されてなるテトラゾールシラン化合物(Ic-2)~(Ic-4)が挙げられる:
5-アミノ-2-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-2H-テトラゾール、
5-アミノ-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1H-テトラゾール、
5-アミノ-2-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-2H-テトラゾール、
5-アミノ-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1H-テトラゾール、
5-フェニル-2-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-2H-テトラゾール、
5-フェニル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1H-テトラゾール、
5-フェニル-2-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-2H-テトラゾール、
5-フェニル-1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1H-テトラゾール。
【0068】
テトラゾールシラン化合物(Ic)のうち、テトラゾールシラン化合物(Ic-1)は、トリアゾール化合物(Ia-x)の代わりに、一般式(Ic-x)で表されるテトラゾール化合物(本明細書中、テトラゾール化合物(Ic-x)ということがある)を用いること以外、前記した反応スキーム(E)と同様の方法により、概ね高収率で合成することができる。
【0069】
【化9】
【0070】
式(Ic-x)中、Xは、式(Ia)におけるXと同様である。
【0071】
テトラゾールシラン化合物(Ic)のうち、テトラゾールシラン化合物(Ic-2)~(Ic-4)は、トリアルコキシ体のテトラゾールシラン化合物(Ic-1)を適量の水と接触させて加水分解することにより、合成することができる。
【0072】
テトラゾールシラン化合物(Ic)は、テトラゾールシラン化合物(Ic-1)~(Ic-4)の混合物であってもよい。
【0073】
アゾールシラン化合物以外にも、アミノ基をもつシランカップリング剤や、シリル基含有アルキル基をもつトリアジン化合物であるトリアジンシラン化合物をはんだ広がり防止被膜に含まれる成分として利用することもできる。
【0074】
(アゾールシラン化合物の加水分解および濃度)
アゾールシラン化合物は、前述のとおり、水と接触すると加水分解される。この加水分解の態様をスキーム(F)に示す。このスキーム(F)においては、前記のアゾールシラン化合物の有するシリル基が加水分解される様、即ち、トリアルコキシシリル基(a)が、漸次、ジアルコキシヒドロキシシリル基(b)、ジヒドロキシアルコキシシリル基(c)、トリヒドロキシシリル基(d)に変化する様が示されている。なお、化学式(e)で示される基のXは、繰り返し単位の数を表す整数である。詳しくは、表面処理液中に生成したヒドロキシシリル基を有するアゾールシラン化合物(例えば前記したトリアゾールシラン化合物(Ia-2)~(Ia-4)、トリアゾールシラン化合物(Ib-2)~(Ib-4)およびテトラゾールシラン化合物(Ic-2)~(Ic-4))の一部は、表面処理液中において徐々に、互いに反応して脱水縮合し、ヒドロキシシリル基がシロキサン結合(Si-O-Si)を形成し(上記スキーム(F)における化学式(e)参照)、水に溶け難いシランオリゴマーに変換されてもよい。なお、表面処理液中におけるシランオリゴマーの生成量が多くなると、不溶解分が析出して、表面処理液が白濁し、処理品を汚染する恐れがある。このため、表面処理液はシランオリゴマーの生成量が抑制され、透明性を有することが好ましい。
【0075】
【化10】
【0076】
(表面処理液)
本発明の表面処理液は、前記のアゾールシラン化合物を含有する。例えば、トリアゾールシラン化合物(Ia)、トリアゾールシラン化合物(Ib)、およびテトラゾールシラン化合物(Ic)において、-(CH-Si(OR)3-n(OH)で示される基のnが1~3の整数である化合物は、nが0である化合物が表面処理液中で加水分解されて生成する種である。これらはいずれも表面処理液の成分として好適である。また、nが1~3の整数である各アゾールシラン化合物は、例えば、nが0である各アゾールシラン化合物を含む表面処理液から揮発分を除去することにより表面処理液から抽出して用いることができる。
【0077】
本発明の実施においては、表面処理液を調製する際の原料として、nが0である化合物を用いることが好ましい。
【0078】
本発明の表面処理液は、アゾールシラン化合物と水を混合することにより調製される。
表面処理液の調製に用いられる水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水が好ましい。
また、本発明の表面処理液には、アゾールシラン化合物の溶解(水溶液化)を促進させるために、可溶化剤を用いるのが好ましい。可溶化剤としては、酸、アルカリ、有機溶剤が挙げられる。これらの可溶化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、可溶化剤と水を使用する場合の表面処理液の調製方法については、アゾールシラン化合物と水を混合した後に可溶化剤を加えてもよいし、アゾールシラン化合物と、水および可溶化剤の混合液を混合してもよいし、アゾールシラン化合物と可溶化剤を混合した後に水を加えてもよい。
【0079】
前記の酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2-エチル酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸、グリセリン酸、マロン酸、コハク酸、レブリン酸、安息香酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、メタンスルホン酸、5-スルホサリチル酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、3-メチル-4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ベンゼントリスルホン酸、スルファミン酸、アミノ酸等の有機酸等が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0080】
前記のアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、へプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、アリルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-1-プロパノール、N,N-ジメチルエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアミン類等が挙げられる。これらのアルカリは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0081】
前記の有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、2-ピロリドン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、炭酸ジメチル、エチレンカーボネート、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0082】
可溶化剤の含有量としては、表面処理液中0.1~99重量%であることが好ましく、0.5~99重量%であることがより好ましく、1~99重量%であることがさらに好ましい。
【0083】
本発明の実施においては、表面処理液中におけるアゾールシラン化合物の濃度が、トリアルコキシ体のアゾールシラン化合物の濃度に換算して、0.0001~1.0000mol/Lであることが好ましく、0.0010~0.5000mol/Lであることがより好ましく、0.0050~0.2000mol/Lであることがさらに好ましく、0.0100~0.1000mol/Lであることが特に好ましい。
【0084】
ところで、表面処理液中に生成したヒドロキシシリル基を有するアゾールシラン化合物は、徐々に、互いに反応して脱水縮合し、ヒドロキシシリル基がシロキサン結合(Si-O-Si)を形成し(スキーム(F)参照)、水に溶け難いシランオリゴマー(スキーム(F)中の化学式(e)で示される基を有するトリアゾールシラン化合物)に変換される。なお、化学式(e)で示される基のXは繰り返し単位の数を表す整数である。
【0085】
表面処理液中におけるシランオリゴマーの生成量が多くなると、不溶解分が析出して(処理液が白濁し)、処理槽や処理槽に接続された配管、処理液中に浸漬されて処理液の温度や液面を検出するためのセンサー類に付着し、円滑な表面処理が阻害される惧れがある。
これを避けるために、表面処理液の調製には、水に難溶性であるシランオリゴマーの可溶化剤として、前述の有機溶剤を表面処理液中に含有させることが好ましい。また、表面処理液の調製においては、アゾールシラン化合物の溶解を促進させる為に、前述の可溶化剤(酸、アルカリ、有機溶剤)を含有させることが好ましい。なお、有機溶剤は、シランオリゴマーの可溶化剤としての機能も有しているから、本発明の表面処理液には、可溶化剤として、酸、アルカリ、有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有させることが好ましい。
【0086】
同様に、表面処理液の安定性やはんだ広がり防止被膜(以降、化成皮膜とも云う)の均一性を向上させるために、塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオン等のハロゲン化物イオンや銅イオン、鉄イオン、亜鉛イオンなどの金属イオンを生成する物質を用いることもできる。
【0087】
ハロゲン化物イオンは、化成皮膜を均一に形成する効果を示す。ハロゲン化物イオンを生成する物質としては、例えば、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅等が挙げられる。ハロゲン化合物は他の成分の不純物として含まれていてもよい。
【0088】
表面処理液中におけるハロゲン化物イオンの含有量は、特に限定されず、例えば、0.10mol/L以下(特に0~0.10mol/L)が好ましく、0.050mol/L以下(特に0~0.050mol/L)であることがより好ましく、0.020mol/L以下(特に0~0.020mol/L)であることがさらに好ましく、0.010mol/L以下(特に0~0.010mol/L)であることが特に好ましい。
【0089】
銅イオンは、アゾールシラン化合物と錯体を形成し、化成皮膜の強度を高めたり、金属(特に銅)との親和性、耐熱性、はんだ広がり防止性および金属と樹脂との密着性を高めたりすることができる。銅イオンの価数は、1価でも2価でもよい。銅イオンを生成する物質としては、例えば、金属銅、硫酸銅(およびその水和物(特に五水和物))、ギ酸銅(およびその水和物(特に四水和物))、硝酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、酢酸銅(およびその水和物(特に一水和物))、水酸化銅、酸化銅、硫化銅、炭酸銅、臭化第一銅、臭化第二銅、リン酸銅、安息香酸銅が挙げられる。
また、表面処理液中の銅イオンは、表面処理液による銅回路の処理時に、銅回路に含まれる金属銅や酸化銅から溶出した銅イオンを含んでいてもよい。
【0090】
表面処理液中における銅イオンの含有量は、特に限定されず、例えば、1.00mol/L以下(特に0mol/L以上1.00mol/L以下)が好ましく、0.50mol/L以下(特に0mol/L以上0.50mol/L以下)がより好ましく、0.10mol/L以下(特に0mol/L以上0.10mol/L以下)がさらに好ましく、0.010mol/L以下(特に0mol/L以上0.010mol/L以下)が特に好ましい。
【0091】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、公知のカップリング剤を併用してもよい。公知のカップリング剤としては、チオール基(メルカプト基)、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、アミノ基、クロロプロピル基等を有するシラン系カップリング剤(シランカップリング剤)が挙げられる。
【0092】
このようなシラン系カップリング剤の例としては、例えば、
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプトシラン化合物、
ビニルトリクロルシラン、
ビニルトリメトキシシラン、
ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン化合物、
p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリルシラン化合物、
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン化合物、
3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシシラン化合物、
3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、
3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシシラン化合物、
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、
3-アミノプロピルトリエトキシシラン、
3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、
N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、
N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物、
3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドシラン化合物、
3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピルシラン化合物、
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィドシラン化合物、および
3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等のイソシアナトシラン化合物等を挙げることができる。
その他、アルミニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等も挙げることができる。
【0093】
本発明の表面処理液は通常、-1.0~12.0のpHで調整可能である。本発明の表面処理液は、はんだ広がり防止性のさらなる向上の観点から、4.0~11.5のpHを有することが好ましい。また、酸性領域であれば4.0~7.0のpHを有することがより好ましく、塩基性領域であれば8.0~11.5のpHを有することがより好ましく、8.5~9.5のpHを有することがさらに好ましい。
【0094】
(表面処理方法)
本発明の表面処理液を使用するに当たっては、従来の表面処理液の場合と同様の表面処理方法を採用することができる。
この表面処理方法としては、例えば、適宜量のアゾールシラン化合物を含む表面処理液を金属を含む基材にスプレー塗布する方法や、同アゾールシラン化合物を含む表面処理液を金属を含む基材に刷毛等で塗布する方法や、同アゾールシラン化合物を含む表面処理液を金属を含む基材にスピンコーターで塗布する方法や、同アゾールシラン化合物を含む表面処理液に金属を含む基材を浸漬する方法等を挙げることができる。これらの方法により、金属表面にアゾールシラン化合物を含むはんだ広がり防止被膜を形成することができる。
【0095】
本発明に使用される金属を含む基材としては、例えば、金属から形成された粒状、針状、繊維状、織物状、板状、箔状、無定形等の基材や、金属を含むプリント配線板および電子部品等を挙げることができる。
【0096】
前記の金属としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、鉄、銀、金およびこれらの合金等が挙げられ、これらの金属からなる板や箔、めっき膜、回路基板、端子などを基材とすることができる。
前記合金の具体例としては、銅合金では、銅を含む合金であれば特に限定されず、例えば、Cu-Ag系、Cu-Te系、Cu-Mg系、Cu-Sn系、Cu-Si系、Cu-Mn系、Cu-Be-Co系、Cu-Ti系、Cu-Ni-Si系、Cu-Zn-Ni系、Cu-Cr系、Cu-Zr系、Cu-Fe系、Cu-Al系、Cu-Zn系、Cu-Co系、KFC等のCu-Fe-P系等の合金が挙げられる。
また、その他の合金では、アルミニウム合金(Al-Si合金)、ニッケル合金(Ni-Cr合金)、鉄合金(Fe-Ni合金、ステンレス、鋼)等が挙げられる。
これらの金属の中では、銅および銅合金が好ましい。
【0097】
本発明の表面処理液による表面処理を基材に施すことにより、アゾールシラン化合物による化成皮膜を金属表面に形成し、金属表面のはんだ広がり防止性を向上させることができる。
なお、この処理による効果をより発揮させるために、表面処理した基材を更に加熱処理してもよい。
【0098】
表面処理液と基材を接触させる時間(処理時間)については、1秒~10分とすることが好ましく、5秒~3分とすることがより好ましい。処理時間が1秒未満の場合には基材表面に形成される化成皮膜の膜厚が薄くなり、はんだ広がり防止性が十分に得られ難く、一方10分より長くしても、化成皮膜の膜厚に大差はないため、生産性の観点から、10分以内で処理するのが好ましい。
また、表面処理液を基材表面に接触させる際の処理液の温度については、5~50℃とすることが好ましいが、前記の処理時間との関係において、適宜設定すればよい。
【0099】
本発明の表面処理液と基材を接触させた後は、水洗してから乾燥してもよいし、水洗せずに乾燥させてもよい。
乾燥は、室温~150℃の温度とすることが好ましい。
なお、水洗に用いる水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水が好ましいが、水洗の方法や時間には特に制限なく、スプレーや浸漬等の手段による適宜の時間で構わない。
【0100】
なお、化成皮膜の膜厚は、0.5~1,000nmであることが好ましく、1~200nmであることがより好ましく、1~100nmであることがさらに好ましい。膜厚が0.5nm以上であるとはんだ広がり防止性が十分に高められ、1,000nm以下であると化成皮膜の耐熱性を維持できる。
【0101】
本発明において、乾燥後の化成皮膜に対し、プラズマ、レーザー、イオンビーム、オゾン、加熱、加湿等の処理を行い、化成皮膜の表面を改質させてもよい。あるいは、プラズマ、レーザー、イオンビーム、パーミス・ブラシなどの機械研磨やドリル等加工方法を用いて、金属表面の樹脂・イオン残渣除去を目的とした洗浄を行ってもよい。
【0102】
本発明の表面処理液を銅または銅合金(以下、両者を指して、単に銅ということがある)の表面に接触させる前に、当該銅の表面に、酸洗処理、アルカリ処理、粗化処理、耐熱処理、防錆処理または化成処理から選択される少なくとも1つの前処理を行ってもよい。
【0103】
前記の酸洗処理とは、銅の表面に付着した油脂成分を除去する為と、銅の表面の酸化皮膜を除去する為に行うものである。この酸洗処理には、塩酸系溶液、硫酸系溶液、硝酸系溶液、硫酸-過酸化水素系溶液、有機酸系溶液、無機酸-有機溶媒系溶液、有機酸-有機溶媒系溶液等の溶液を用いることができる。
【0104】
前記のアルカリ処理とは、銅の表面に付着した油脂成分を除去する為や、前工程の残渣(例えば、銅回路形成用ドライフィルムレジストなど)を除去する為に行うものである。このアルカリ処理には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物や、アンモニア、エタノールアミン、モノプロパノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアミン類、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム等を含む水溶液や有機溶媒系溶液等の溶液を用いることができる。
【0105】
前記の粗化処理とは、アンカー効果による銅と樹脂の密着性を高める為に行うものであり、銅の表面に凹凸形状が付与され、銅と樹脂材料との密着性を高めることができる。この粗化処理においては、マイクロエッチング法、電気めっき法、無電解めっき法、酸化法(ブラックオキサイド、ブラウンオキサイド)、酸化・還元法、ブラシ研磨法、ジェットスクラブ法等の方法を採用することができる。
【0106】
マイクロエッチング法においては、例えば、有機酸-第二銅イオン系、硫酸-過酸化水素系、過硫酸塩系、塩化銅系や塩化鉄系の各エッチング剤を使用することができる。電気めっき法においては、銅の表面に微細な銅粒子を析出させることにより、銅の表面に凹凸を形成させる。
【0107】
前記の耐熱処理においては、銅の表面に、ニッケル、ニッケル-リン、亜鉛、亜鉛-ニッケル、銅-亜鉛、銅-ニッケル、銅-ニッケル-コバルトまたはニッケル-コバルトから選択される少なくとも1種の皮膜が形成される。この皮膜の形成は公知の電気めっきによる方法を採用して行うことができるが、電気めっきに限定されるものではなく、蒸着その他の手段を使用しても何ら差し支えない。
【0108】
前記の防錆処理とは、銅の表面が酸化腐食することを防止する為に行うものであり、銅の表面に、亜鉛または亜鉛合金組成のめっき皮膜や、電解クロメートのめっき皮膜を形成させる方法を採用することができる。また、ベンゾトリアゾール系防錆剤など有機化合物系の防錆剤を含む処理液を銅の表面に接触させてもよい。
【0109】
前記の化成処理においては、錫の不動態皮膜を形成する方法や、酸化銅の不動態皮膜を形成する方法を採用することができる。
【0110】
本発明の表面処理液を銅の表面に接触させる前および/または後に、銅イオンを含む水溶液を前記銅の表面に接触させてもよい。この銅イオンを含む水溶液は、銅の表面に形成される化成皮膜の造膜性を高める機能や、銅の表面に形成される化成皮膜の厚みを均一にさせる機能を有する。銅イオンの価数は、特に限定されず、1価または2価の銅イオンである。
銅イオンを含む水溶液の銅イオン源としては、水に溶解する銅塩であれば特に限定されず、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、ギ酸銅、酢酸銅などの銅塩が挙げられる。銅塩を水に可溶化するために、アンモニアや塩酸などを添加してもよい。
【0111】
本発明の表面処理液を銅の表面に接触させる前および/または後に、酸性水溶液またはアルカリ性水溶液を前記銅の表面に接触させてもよい。この酸性水溶液またはアルカリ性水溶液も、前記の銅イオンを含む水溶液と同様に、銅の表面に形成される化成皮膜の厚みを均一にさせる機能を有する。
酸性水溶液およびアルカリ性水溶液は、特に限定されないが、酸性水溶液としては、硫酸、硝酸、塩酸等の鉱酸を含む水溶液や、ギ酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、アミノ酸などの有機酸を含む水溶液等が挙げられる。アルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物や、アンモニア、エタノールアミン、モノプロパノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアミン類、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム等を含む水溶液が挙げられる。
【0112】
本発明の表面処理液を銅の表面に接触させる前に、公知のカップリング剤を含む水溶液を前記銅の表面に接触させてもよい。
【0113】
本発明の表面処理液を銅の表面に接触させた後に、公知のカップリング剤を含む水溶液を前記銅の表面に接触させてもよい。
【0114】
本発明の表面処理液を銅の表面に接触させた後に、例えばベンゾトリアゾール系の防錆剤などの公知の有機化合物系防錆剤を含む処理液を接触させてもよい。
【0115】
なお、本発明において、金属(特に銅または銅合金)を含む基材(特にプリント配線板や電子部品)に対して、本発明のはんだ広がり防止被膜やはんだ広がり防止被膜を形成するための表面処理液を好適に用いることができる。例えば、プリント配線板の金属配線層に抵抗、コンデンサ、ダイオード、集積回路等の電子部品をはんだ付けにより実装する際に、プリント配線板の金属配線層や電子部品の金属端子の所定部位へのはんだの濡れ広がりを防止するためのはんだ広がり防止被膜およびそれを形成するための表面処理に好適であり、はんだ付けによる実装時のプリント配線板や電子部品の短絡および性能不良を防ぐことができる。
【0116】
半導体ウェハにおける利用例では、半導体ウェハ上に形成された半導体回路におけるはんだ広がり防止や、半導体回路と保護膜(例えば、感光性ポジ型、感光性ネガ型、非感光性のバッファーコートやバンプ保護膜などの絶縁性保護膜)との間の接着性(密着性)を高めることを目的とする半導体回路の表面処理に好適である。
また、半導体ウェハ上に再配線層を形成するパッケージ基板(WL-CSP、FO-WLP、PLP)や2.5次元(2.5D)または3次元(3D)インターポーザー基板において、銅回路再配線層におけるはんだ広がり防止や、銅回路再配線層と絶縁材料との接着性(密着性)を高めることを目的とする銅回路再配線層の表面処理に好適である。
前記の保護膜や絶縁材料としては、例えば、ポリイミド樹脂やポリベンゾオキサゾール樹脂、シリコーン樹脂などが上げられる。
【0117】
前記のプリント配線板は、本発明の表面処理液と銅配線の表面を接触させて、その後水洗・乾燥した後、銅配線表面に絶縁樹脂層を形成させることにより作製することができる。この接触の方法については、前述のとおりであり、表面処理液中への銅配線の浸漬または該処理液による銅配線へのスプレー等が簡便かつ確実であり好ましい。
また、前記の水洗の方法についても特に制限はないが、洗浄水中への銅配線の浸漬または洗浄水による銅配線表面へのスプレーが簡便かつ確実であり好ましい。
前記の絶縁樹脂層の形成には、公知の方法、例えば半硬化の樹脂材料を貼り付ける方法や溶剤を含む液状の樹脂材料を塗布する手段等を採用することができる。次いで、上下の配線を導通させる為に、ビアホールを形成する。このプロセスを繰り返すことにより、多層プリント配線板を作製できる。
【0118】
前記のプリント配線板の回路形成方法において、本発明の表面処理液を使用するセミアディティブ工法の例を以下に示す。
(a)絶縁性基板またはスルーホール貫通孔及びビア孔を有する絶縁性基板の第1面及び第1面とは反対側の第2面並びにスルーホール貫通孔及びビア孔内壁に第1導電層を有する絶縁性基板を準備する工程、
(b)第1面および第2面に光架橋性樹脂層及びマスク層を形成して、第1面および第2面並びにスルーホール貫通孔及びビア孔内壁の第1導電層を光架橋性樹脂層及びマスク層で覆う工程、
(c)第1面及び第2面並びにスルーホール貫通孔及びビア孔周辺の光架橋性樹脂層をパターン露光する工程、
(d)第1面及び第2面並びにスルーホール貫通孔及びビア孔周辺のマスク層を除去する工程、
(e)光架橋性樹脂層除去液を使用して、第1面及び第2面、並びにスルーホール貫通孔及びビア孔周辺の未硬化光架橋性樹脂層を現像除去し、第1面上の第1導電層及び第2面上の第1導電層並びにスルーホール貫通孔及びビア孔周辺の第1導電層を露出する工程、
(f)第1面上及び第2面上並びにスルーホール貫通孔及びビア孔内壁に露出している第1導電層上に電解めっき処理により第2導電層を形成する工程、
(g)第1面上及び第2面上並びにスルーホール貫通孔及びビア孔周辺の硬化光架橋性樹脂層を除去して、第1面上及び第2面上並びにスルーホール貫通孔及びビア孔内壁の第1及び第2導電層を露出する工程、
(h)露出する第1導電層をフラッシュエッチングして除去する工程、
(i)第1面上及び第2面上並びにスルーホール貫通孔及びビア孔内壁の第1及び第2導電層に無電解めっき及び電解めっき処理により第3導電層を形成する工程、
(j)第1面上及び第2面上並びにスルーホール貫通孔及びビア孔内壁の第1、第2及び第3導電層上に絶縁樹脂層を積層する工程、を少なくとも1つ以上含む回路基板の製造方法において、第1面上及び第2面上並びにスルーホール貫通孔及びビア孔内壁の第1、第2及び第3導電層の内の少なくとも1つ以上の金属層に本発明の表面処理液を接触させ、プリント配線板を製造する。
【0119】
さらに、前記のプリント配線板の回路形成方法において、本発明の表面処理液を使用するサブトラクティブ工法の例を以下に示す。
(a)絶縁性基板またはスルーホール貫通孔及びビア孔を有する絶縁性基板の第1面及び第1面とは反対側の第2面並びにスルーホール貫通孔及びビア孔内壁に第1導電層を有する絶縁性基板を準備する工程、
(b)第1面および第2面に光架橋性樹脂層及びマスク層を形成して、第1面および第2面並びにスルーホール貫通孔及びビア孔内壁の第1導電層を光架橋性樹脂層及びマスク層で覆う工程、
(c)第1面及び第2面並びにスルーホール貫通孔及びビア孔周辺の光架橋性樹脂層をパターン露光する工程、
(d)第1面及び第2面並びにスルーホール貫通孔及びビア孔周辺のマスク層を除去する工程、
(e)光架橋性樹脂層除去液を使用して、第1面及び第2面、並びにスルーホール貫通孔及びビア孔周辺の未硬化光架橋性樹脂層を現像除去し、第1面上の第1導電層及び第2面上の第1導電層並びにスルーホール貫通孔及びビア孔周辺の第1導電層を露出する工程、
(f)第1面上及び第2面上並びにスルーホール貫通孔及びビア孔内壁に露出している第1導電層をエッチングして除去する工程、
(g)第1面上及び第2面上並びにスルーホール貫通孔及びビア孔周辺の硬化光架橋性樹脂層を除去して、第1面上及び第2面上並びにスルーホール貫通孔及びビア孔内壁の第1及び第2導電層を露出する工程、
(h)第1面上及び第2面上並びにスルーホール貫通孔及びビア孔内壁の第1及び第2導電層に無電解めっき及び電解めっき処理により第3導電層を形成する工程、
(i)第1面上及び第2面上並びにスルーホール貫通孔及びビア孔内壁の第1、第2及び第3導電層上に絶縁樹脂層を積層する工程、を少なくとも1つ以上含む回路基板の製造方法において、第1面上及び第2面上並びにスルーホール貫通孔及びビア孔内壁の第1、第2及び第3導電層の内の少なくとも1つ以上の金属層本発明の表面処理液を接触させ、プリント配線板を製造する。
【0120】
前記の銅配線や導電層については、無電解めっき法、電解めっき法、蒸着法、スパッタ法、ダマシン法等どのような方法で作製されたものでもよく、インナービアホール、スルーホール、接続端子等を含んだものでもよい。
【0121】
また、本発明に係る「銅」とは、プリント配線板、リードフレーム等の電子デバイス、装飾品、建材等に用いられる箔(電解銅箔、圧延銅箔、樹脂付銅箔、キャリア付銅箔、無電解銅箔、スパッタ銅箔、薄銅箔)、めっき膜(無電解銅めっき膜、電解銅めっき膜)、蒸着法、スパッタ法、ダマシン法等により形成された薄膜や、粒、針、繊維、線、棒、管、板、柱(ピラー)等の用途・形態において用いられるものである。なお、近年の高周波の電気信号が流れる銅配線の場合には、銅の表面は平均粗さが0.1μm以下の平滑面であることが好ましい。銅の表面に、前処理として、ニッケル、亜鉛、クロム、錫等のめっきを施してもよい。
【0122】
また例えば、ワイヤボンディング実装する際のリードフレームにおける利用例では、本発明の表面処理液は、リードフレーム作成工程の金属表面もしくは、半導体チップをマウント(ダイボンディング・プレベーキング工程の前後)した後のフレーム金属表面、ワイヤボンディング実装した後のフレーム金属表面、樹脂封止(樹脂モールド、ベーキング工程の前後)するまでの工程のフレーム金属表面におけるはんだ広がり防止や、封止樹脂や半導体チップマウント時の各種金属表面と接着剤との接着性(密着性)を高めることを目的とするリードフレームの表面処理に好適である。
【0123】
また例えば、半導体チップを近接配置するための集積技術を高めた微細配線基板における利用例では、本発明の表面処理液は、2.1次元(2.1D)有機基板あるいはガラス基板、半導体を基板に内蔵した部品内蔵基板(EPS基板)、コアレス基板において、銅回路配線層におけるはんだ広がり防止や、銅回路配線層と絶縁材料との接着性(密着性)を高めることを目的とする銅回路配線層の表面処理にも好適である。
また例えば、本発明の金属の表面処理液は、パターン配線を内蔵し上下層をレーザービア加工し、ビアフィルめっきを行う場合や、上下層の導通はめっきで形成した銅ピラーを使用し、絶縁層はモールド樹脂を使用するMISを用いた回路埋め込み基板(ETS基板)を用いる場合において、銅回路配線層や銅ピラーにおけるはんだ広がり防止や、銅回路配線層や銅ピラーと絶縁材料との接着性(密着性)を高めることを目的とする銅回路配線層の表面処理に好適である。
【0124】
また、例えば半導体チップの上下層の導通をさせるために、1)前処理工程、2)はんだバンプ形成工程、3)はんだ広がり防止被膜処理工程、4)フラックス工程、5)チップ接着工程、6)フラックス洗浄工程、7)アンダーフィル工程、8)モールド工程が含まれる工程で、銅ピラーや銅回路配線層等の金属表面のはんだ広がり防止性や、金属表面と封止樹脂(モールド樹脂)との接着性(密着性)を高めることを目的とする表面処理にも最適である。
前記はんだバンプ形成工程におけるはんだバンプの組成としては、Sn単体や各種のはんだ合金であれば特に限定されず、各種のはんだ合金として、例えば、Sn-Sb系合金、Sn-Pb系合金、Sn-Cu系合金、Sn-Ag系合金、Sn-Bi系合金、Sn-In系合金等の二元系合金;上述した二元系合金に、Sb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、Pからなる群から選ばれる1種類以上の金属を添加した多元系合金等が挙げられる。はんだバンプは、はんだペースト塗布、はんだボール、はんだめっき等によって、例えば銅ピラー上や銅回路配線層上に形成することができる。
前記フラックス工程に使用されるフラックスとしては、有機酸、アミン、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物、チキソ剤、ロジン、溶剤、界面活性剤、高分子化合物、シランカップリング剤、着色剤のいずれか、または2つ以上の組み合わせで構成されるフラックスを使用することができる。。
前記モールド工程に使用される封止樹脂(モールド樹脂)としては、剛性や硬度等の機械的強度の高い絶縁性樹脂を用いることができ、具体的には、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの絶縁性樹脂を用いることができる。また、これらの樹脂にシリカやアルミナ等のフィラーを混入することもできる。
【0125】
また、本発明の表面処理液で処理されるキャリア付銅箔とは、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法の何れかの方法によって回路を形成する工程を含むプリント配線板に使用される極薄電解銅箔であり、銅箔キャリアと、銅箔キャリア上に積層された剥離層と、剥離層の上に積層された極薄銅層とを備えたものである。銅の表面に、酸洗処理、粗化処理、耐熱処理、防錆処理または化成処理からなる群から選択される少なくとも1つの前処理を施してもよい。
【実施例0126】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0127】
<表面処理液の調整>
アゾールシラン化合物として、3-アミノ-5-[3-(トリエトキシシリル)プロピルチオ]-1,2,4-トリアゾールを用いた。3-アミノ-5-[3-(トリエトキシシリル)プロピルチオ]-1,2,4-トリアゾールは特開2016-125143号に記載された方法に準拠して合成した。
イオン交換水を入れたビーカーに、合成した3-アミノ-5-[3-(トリエトキシシリル)プロピルチオ]-1,2,4-トリアゾール1重量%と酢酸3重量%を投入し、均一になるまで撹拌した。その後、pHが11になるまで水酸化ナトリウムを投入して均一になるまで撹拌することで、表面処理液を得た。
【0128】
<はんだ広がり防止性試験>
調製した表面処理液を用いて、下記のはんだ広がり防止性の評価を行った。
【0129】
[実施例1]
(1)金属を含む基板
金属を含む基板として、銅張積層板を用いた。
(2)金属を含む基板の表面処理
以下の工程a~bに従って、前記金属を含む基板の処理を行った。
a. 粗化処理(メック社製粗化剤CZ8101 30℃/30秒)、水洗、水切り
b.酸清浄(10%硫酸水溶液 室温/30秒)、水洗、水切り
c.表面処理液への浸漬処理(30℃/1分)、水洗、水切り、乾燥/1分(100℃)
(3)はんだ広がり防止被膜の有無の確認
表面処理後の金属を含む基板の銅表面へのはんだ広がり防止被膜の形成の有無は、分光光度計(島津製作所社製UV-1800)を用いて、溶解させたはんだ広がり防止被膜の吸光度を測定することによって確認した。
(4)はんだ処理
表面処理後の金属を含む基板の銅表面にフラックス(千住金属工業社製WF6317)をメタルマスクを用いて塗布し、その上にはんだボール(千住金属工業社製ECO SOLDER M31、合金組成Sn-3.5Ag-0.75Cu、ボールサイズφ=0.76mm)を載せ仮接着した状態でリフロー処理を行い、金属を含む基板へはんだ処理を行った。
リフロー装置:弘輝テック社製MASRN-200N2H
リフロー雰囲気:窒素
リフロー温度:150~180℃/90秒の後、260℃/10秒
リフロー回数:1~2回
(4)はんだ濡れ面積の測定
はんだ処理後の金属を含む基板について、金属を含む基板を平面視した際のはんだの濡れ広がった部分の面積をデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製VH-6300)を用いて測定した。
【0130】
[比較例1]
実施例1の(2)金属を含む基板の表面処理において、「c.表面処理液への浸漬処理」を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてはんだ広がり防止性試験を行った。
【0131】
実施例1および比較例1のはんだ広がり防止性試験の結果を表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
表1の結果より、本発明のアゾールシラン化合物を含むはんだ広がり防止被膜を形成した実施例1は、はんだ広がり防止被膜の無い比較例1よりもはんだの濡れ広がり面積が小さく、はんだ広がり防止性に優れることが確認できた。また、本発明のアゾールシラン化合物を含むはんだ広がり防止被膜を形成した実施例1は、はんだ広がり防止被膜が金属を含む基板の銅表面に形成されており、金属(銅)との親和性に優れることが確認できた。さらに、本発明のアゾールシラン化合物を含むはんだ広がり防止被膜を形成した実施例1は、リフロー回数を増やした場合にも優れたはんだ広がり防止性を維持していることから、耐熱性に優れることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明のはんだ広がり防止被膜は、金属(特に銅)との親和性、耐熱性、およびはんだ広がり防止性に優れており、プリント配線板に実装される電子部品の小型化および高密度実装におけるはんだ付けに対応し、電子機器の小型化および高性能化の実現に大いに貢献し得るものであるから、産業上の利用可能性は多大である。