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  • 特開-鉄心構造及び静止巻線機器 図1
  • 特開-鉄心構造及び静止巻線機器 図2
  • 特開-鉄心構造及び静止巻線機器 図3
  • 特開-鉄心構造及び静止巻線機器 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162535
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】鉄心構造及び静止巻線機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/24 20060101AFI20231101BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H01F27/24 H
H01F27/24 M
H01F30/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072906
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】石橋 幹弥
(57)【要約】
【課題】鉄心のレグ部の冷却に不利な部位の磁束密度を低減して鉄心の最大温度上昇の低減を図る。
【解決手段】鉄心1は、奥行方向に三つ以上積層されるブロックコア10を有する。鉄心1のレグ部11のブロックコア10間には、ギャップ13が確保される。ギャップ13は、レグ部11の奥行方向で長さが異なるように確保される。レグ部11の奥行方向中央のギャップ13は、奥行方向前後のギャップ13よりも長大に設定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心のレグ部の奥行方向に三つ以上積層されるブロックコアを有し、
前記ブロックコア間のギャップは、前記レグ部の奥行方向で長さが異なり、
奥行方向中央の前記ブロックコア間のギャップは、奥行方向前後の前記ブロックコア間のギャップよりも長大であること
を特徴とする鉄心構造。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄心構造を有する静止巻線機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器、リアクトル等の静止巻線機器の技術に係り、フェライトなどの複数のブロックコアを積層した鉄心を有する変圧器及びリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
大容量の変圧器の鉄心は、一般的に、例えばフェライトコアからなる板状の磁性体を額縁状に配置したものを一方向に積層した構造を成す(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願昭58-12915号公報
【特許文献2】特開平5-326289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4に示されたブロックコア10を積層して成る鉄心1は、ブロックコア10間にギャップ13を確保する際に横断面に対してギャップ13の幅を均等に設定される。これにより、図2(a)のようにレグ部11の奥行き方向で前後中央の各磁路の磁気抵抗は均一となる。また、ギャップ13を確保しない場合でも、これらの磁路の磁気抵抗は均一となるので、レグ部11の磁束密度は均一化される。
【0005】
しかしながら、図3(a)のように、空冷において冷却的に不利となるレグ部11の中央付近の温度が高くなり、ホットスポットが生じる。
【0006】
本発明は、以上の事情を鑑み、鉄心のレグ部の冷却に不利な部位の磁束密度を低減して鉄心の最大温度上昇の低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、鉄心のレグ部の奥行方向に三つ以上積層されるブロックコアを有し、前記ブロックコア間のギャップは、前記レグ部の奥行方向で長さが異なり、奥行方向中央の前記ブロックコア間のギャップは、奥行方向前後の前記ブロックコア間のギャップよりも長大であることを特徴とする鉄心構造である。
【0008】
本発明の一態様は、上記の鉄心構造を有する静止巻線機器である。
【発明の効果】
【0009】
以上の本発明によれば、鉄心のレグ部の冷却に不利な部位の磁束密度が低減し、鉄心の最大温度上昇を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)本発明の一態様である鉄心の正面図、(b)当該鉄心の上面図、(c)当該鉄心の側面図、(d)当該鉄心のA,C断面図、(e)当該鉄心のB断面図。
図2】(a)従来の鉄心の磁束密度分布、(b)本発明の鉄心の磁束密度分布。
図3】(a)従来の鉄心の温度分布、(b)本発明の鉄心の温度分布。
図4】(a)従来の鉄心の正面図、(b)当該鉄心の上面図、(c)当該鉄心の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1に示された本発明の鉄心構造の一態様である鉄心1は、例えば、内鉄形若しくは外鉄形の変圧器、リアクトル等の静止巻線機器に適用される。
【0013】
鉄心1は、一次巻線,二次巻線等の巻線が券回されるレグ部11と、当該巻線が券回されないヨーク部12と、を有する。
【0014】
鉄心1は、奥行方向に三つ以上積層したブロックコア10から成る。鉄心1のレグ部11のブロックコア10間にはギャップ13が確保される。
【0015】
ギャップ13は、レグ部11の奥行方向で長さが異なるように確保される。特に、図3(a)のホットスポットを生じやすい鉄心1のレグ部11の奥行方向中央にギャップ13が確保される。
【0016】
すなわち、図1のように、レグ部11の奥行方向中央のギャップ13は奥行方向前後のギャップ13よりも長大に設定される。但し、奥行方向中央と奥行方向前後のギャップ13の長さの差が大きくなり過ぎると、奥行方向前後の磁束密度が高くなり過ぎ、発熱が大きくなることから、磁束密度及び温度の低減効果が得られなくなる。
【0017】
以上の鉄心1の構造によれば、レグ部11の奥行方向中央のギャップ13の長さが奥行方向前後のギャップ13の長さよりも大きく設定することで、レグ部11の奥行方向中央のブロックコア10の磁束密度を低減できる。そして、これにより、レグ部11の奥行方向中央のブロックコア10の損失密度も低減できる。また、レグ部11の奥行方向中央のブロックコア10は奥行方向前後のブロックコア10と比較して冷却条件が厳しいが、以上の動作によって最大温度を下げることができる。
【0018】
図2,3を参照して鉄心1の具体的な作用効果について説明する。
【0019】
図2(a)は従来の鉄心1の磁束密度分布、同図(b)は本発明の鉄心1の磁束密度分布を示す。この両者の磁束密度分布の比較から明らかなように、本発明の鉄心1の構造によれば、従来の鉄心1と比べて鉄心1の奥行方向中央のブロックコア10の磁束密度を低減でき、当該中央のブロックコア10の損失密度も低減できることが示された。
【0020】
図3(a)は従来の鉄心1の温度分布、同図(b)は本発明の鉄心1の温度分布を示す。この両者の温度分布の比較から明らかなように、本発明の鉄心1の構造によれば、従来の鉄心1に比べて冷却的に不利なレグ部11の中央の温度を低減できることが示された。特に、鉄心1の奥行方向にブロックコア10を三つ以上配置し、レグ部11のヒートスポット付近にギャップ13を確保する場合に温度低減の効果があることが示された。
【符号の説明】
【0021】
1…鉄心、10…ブロックコア、11…レグ部、12…ヨーク部、13…ギャップ
図1
図2
図3
図4