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  • 特開-哺乳瓶用乳首 図1
  • 特開-哺乳瓶用乳首 図2
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  • 特開-哺乳瓶用乳首 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162545
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】哺乳瓶用乳首
(51)【国際特許分類】
   A61J 11/00 20060101AFI20231101BHJP
【FI】
A61J11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072920
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000107284
【氏名又は名称】ジェクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】平岡 勝之
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047PP22
(57)【要約】
【課題】シリコン素材によって製造したものであっても吐出口の端面が再接着せず、安定した乳の吐出を行うことができるとともに、乳首の咥える方向によって吐出量を加減することができる。
【解決手段】哺乳瓶に装着するシリコン樹脂の乳首であって、乳首先端部に設けられた吐出口は中心から3~6方向に均等角度で拡開した放射状であり、当該放射状を構成するそれぞれの線分の対向する面同士には隙間が設けられた。特に吐出口は略十字状とし、その縦横の線分の長さが異なるように設定した。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳瓶に装着する軟質素材からなる乳首であって、乳首先端部に設けられた吐出口は中心から3~6方向に均等角度で拡開した放射状であり、当該放射状を構成するそれぞれの線分の対向する面同士には隙間が設けられたことを特徴とする乳首。
【請求項2】
放射状の線分は、略十字状である請求項1記載の乳首。
【請求項3】
略十字状の縦横の線分の長さが異なっている請求項2記載の乳首。
【請求項4】
略十字状の縦横の線分は、一方が0.6mmであり、他方が0.9mmである請求項3記載の乳首。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、哺乳瓶の先端部に取り付ける乳首の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
哺乳瓶に乳首を装着して乳幼児に乳を与えることは旧来から周知である。特に、新生児は乳歯が生え揃わない時期であり、固形物などを食することができないので哺乳瓶によって乳を与えることは通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-044124号公報
【特許文献2】特開2021-153958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された発明は本願出願人に係るものである。そして、特許文献1の発明も特許文献2の発明も、乳首先端部の乳吐出口は円形である。この場合、乳児は乳首を咥えて変形させながら乳を吸引するが、吐出口が円形であるため、どの方向から咥えて変形させても吐出量は変わらない。
【0005】
一方、吐出口の形態として、十字状のものが存在するが、この構成では乳首先端部を刃物で十字にカットして吐出口とするものである。しかしながら、近年の乳首の素材はシリコンを採用することが多く、この場合シリコン素材の特性として切断端面同士が再接着若しくは固着してしまい、乳児が乳首を咥えても容易に再接着した部分が剥離しないので安定した吐出口が確保できないという問題がある。
【0006】
本発明は、哺乳瓶に装着する乳首の吐出口を改良したものであり、シリコン素材によって製造したものであっても吐出口の端面が再接着せず、安定した乳の吐出を行うことができるとともに、乳首の咥える方向によって吐出量を加減することができる構成を開示することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の乳首は、上記目的を達成するために、その素材を軟質素材とした。また、乳首先端部に設けられた吐出口は3~6方向に均等角度で拡開した放射状とし、当該放射状を構成するそれぞれの線分の対向する面同士には隙間を設けるという手段を用いた。この手段では、線分の対向する面同士に隙間が設けられているので、軟質素材、特にシリコン樹脂の特性である面同士が接着若しくは固着して剥離しないということを回避することができる。また、当該乳首の吐出口からは乳が滲み出るので、乳児が乳首を咥えた場合に母乳を与えられている感触と同様の感触を与えることができる。
【0008】
さらに、放射状の線分はより特定して略十字状とした。このようにすることによって、乳児が乳首を咥える方向にかかわらず、十分な授乳量を確保することができる。また、略十字状の縦横の線分の長さが異なるように設定した。この構成では、乳首を咥える方向によって吐出口の開口形態が異なり、吐出量を変えることができるので、乳児の吸引量に適正に対応することができる。さらに、略十字状の縦横の線分の一方を0.6mmとし、他方を0.9mmとした構成では、新生児期の授乳量を適切に実現することができるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述した手段を用いたので、乳首先端の吐出口が再接触によって閉じることがなく、咥える方向によって吐出量を加減することができた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の乳首の全体を示す側面図
図2】同、側断面図
図3】同、吐出口を拡大したところを示す拡大斜視図
図4】同、吐出口をさらに拡大して示した平面図
図5】同、十字状の吐出口の長い方から挟み込んで変形させた状態を示す拡大平面図
図6】同、拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面に従って説明する。図1は典型的な乳首の側面、図2はその断面を示したもので、1は素材を軟質素材で形成された乳首全体、2は乳首の立ち上がり曲面、3は哺乳瓶のキャップ(図示せず)の開口部を嵌入させるための環状の凹部、4は哺乳瓶とそのキャップの間で乳首を締め付け固定するためのフランジ、5は乳首先端部である。また、乳首先端部5の中心部には乳の吐出口6が形成されている。なお、本発明の乳首全体1の形状は図示した形状に限定されるものではなく、例えば立ち上がり曲面2の曲面構成などについては公知の構成を広く適用することができる。なお、本実施形態における乳首の素材は軟質素材を広く適用することができるが、特に衛生面、成形性などを考慮するとシリコン樹脂が好ましい。ただし、軟質素材としてエラストマーを利用することもある。
【0012】
ここで、本発明の吐出口6は、図3に示したように、平面視で略十字状に形成される。十字の縦横の長さについては同一とすることもあるが、縦横の長さを変えて一方の線分7aを他方の線分7bよりも長く構成する。本実施形態では、十字を構成する線分のそれぞれ縦横の長さを短い方を0.6mmとし、長い方を0.9mmに設定する。ただし、それぞれの線分7a・7bの長さはこれらの数値に厳格に限定されるものではなく、ある程度の範囲で選択することができる。そして、本発明において十字状の吐出口6として特に求められる要件としては、十字状のそれぞれの線分7a・7bの長さ部分に刃物で切込みを入れる程度ではなく、図4に示すように切込みによって形成された面8・8同士は接触せずに隙間を維持していることである。すなわち、十字状の刃物で押切りを行って面同士が接触しているのではなく、厚みを有する十字状の刃物によって抜き加工を行い、図4に示す構造を実現している。つまり、薄い刃で切込みを形成した場合には切込みによって生じた面同士は常時接触することになるので、素材がシリコンの場合には面同士が接着若しくは固着してしまい、容易に開口しないということを避けるために、対面する部分に隙間を形成している。隙間の幅は特に限定するものではないが、必要な条件は、切込みによって形成された面8・8間が、力が加わらない状態において接触しないことである。なお、略十字状の線分7a・7bの端部は図4に示すようにアール状である。シリコン素材を用いた場合には角張った部分から亀裂が成長する傾向にあるが、本実施形態のように端部をアール状とすることによって亀裂が生じにくく、当初の形態を維持することができる。
【0013】
なお、本実施形態を示した図3では、吐出口6を略十字状としたが、本発明を実現するためには中心から3~6方向に均等角度で拡開した放射状とすることもある。この場合においても、各線分は面同士が接着しない程度の隙間を設けることが要求される。
【0014】
本実施形態では、図示した略十字状に限らず、中心から3~6方向に拡開した線分からなる吐出口6は抜き加工によって形成するが、別途インジェクション成形時に金型として当該吐出口6に見合った形状の内子を用いることもある。このようにすれば、抜き加工の工程を省略することができる。
【0015】
本実施形態の乳首によって乳児に乳を与える際には、乳首先端部5を変形させない状態で乳児の口に滴下させる方法(方法1)、特に略十字状の吐出口6の場合には短い方を挟んで変形させる方法(方法2)、および図5および図6に示すように長い方を挟んで変形させる方法(方法3)を適宜選択する。表1にはこれら3種類の方法を用いて吐出口から乳を吐出させた場合の吐出量をそれぞれ10回測定した結果を示す。この表1に示した数値は、乳児の吸引力を想定した力で30秒吸引し、その吐出量を測定したものである。このように、方法2と方法3では変形によって生じる開口面積の相違から、吐出量も異なることを示している。なお、本実施形態の構成は新生児期を対象として設計したものであり、対象となる乳児に対する適切な吐出量を4.5ml/30秒とした。
【0016】
【表1】
【0017】
なお、上記のように本実施形態における設定値は新生児を対象としたものであり、月齢が増して必要な乳の量が多くなれば十字状の線分7a・7bの長さを適宜変更することは本発明の範囲である。
【0018】
ところで、本実施形態の一つに示したように十字状の線分7a・7bによって構成された吐出口は、切込み部分には隙間が形成されているので、哺乳瓶を上下逆にした場合には吐出口から乳が滲み出ることになる。しかしながら、授乳期の女性の乳首からは絶えず母乳が滲み出ており、乳児は乳首を咥えたときに本実施形態の乳首のように乳が滲み出ている形態が安心感を与えることになる。
【符号の説明】
【0019】
1 乳首全体
2 立ち上がり曲面
3 環状の凹部
4 フランジ
5 乳首先端部
6 吐出口
7a・7b 略十字状を構成する線分
8 切込みによって形成された面
図1
図2
図3
図4
図5
図6