(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162550
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】接触抵抗測定装置およびインピーダンス測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20231101BHJP
【FI】
G01R27/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072944
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】飯島 淳司
(72)【発明者】
【氏名】西島 克俊
【テーマコード(参考)】
2G028
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028BE04
2G028CG04
2G028CG08
2G028DH04
2G028GL03
2G028GL07
2G028HN09
2G028HN11
2G028HN13
2G028LR02
2G028LR03
2G028MS02
(57)【要約】
【課題】正確なコンタクトチェックを行い得る接触抵抗測定装置を提供することを主目的とする。
【解決手段】異なる周波数f1~f3に規定された複数の判定用電流Ijを判定対象接触箇所を含む電流経路に供給する交流電流源SS1と、交流電流源SS1から判定用電流Ijが供給されたときに判定用電流Ijの周波数に対応すると共に判定対象接触箇所に生じた検出電圧Vd1を検出電圧Vd1の周波数と同じ周波数f1~f3の同期信号Sf1~Sf3で同期検波することにより、異なる周波数f1~f3に対応する各検出電圧Vd1の電圧値に応じて電圧値がそれぞれ変化する電圧V1~V3を出力する同期検波部SDU1と、異なる周波数f1~f3毎に判定対象接触箇所についての良否判定用処理を実行する処理部CONTとを備えて構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
判定対象接触箇所を含む電流経路に接触判定用交流電流を供給する第1交流電流源と、
前記第1交流電流源から前記接触判定用交流電流が供給されたときに当該接触判定用交流電流の周波数に対応すると共に前記判定対象接触箇所に生じた交流電圧を当該交流電圧の周波数と同じ周波数の同期信号で同期検波することにより、当該交流電圧の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧を出力する同期検波部と、
前記同期検波部から出力された前記直流電圧に基づいて前記判定対象接触箇所についての良否判定用処理を実行する処理部とを備えている接触抵抗測定装置であって、
前記第1交流電流源は、異なる周波数に規定された複数の前記接触判定用交流電流を前記電流経路に供給可能に構成され、
前記同期検波部は、前記複数の接触判定用交流電流が前記電流経路に供給されたときに前記判定対象接触箇所に生じた各前記交流電圧を当該各交流電圧の前記異なる周波数とそれぞれ同じ周波数の前記同期信号でそれぞれ同期検波することにより、当該異なる周波数に対応する当該各交流電圧の電圧値に応じて電圧値がそれぞれ変化する前記直流電圧を出力し、
前記処理部は、前記異なる周波数毎に前記良否判定用処理を実行する接触抵抗測定装置。
【請求項2】
前記第1交流電流源は、前記周波数が異なる複数の接触判定用交流電流を合成して前記電流経路に供給可能に構成され、
前記同期検波部は、前記異なる周波数に一対一で対応して設けられた複数の同期検波回路を備えて構成され、
前記複数の同期検波回路の各々は、前記異なる周波数に一対一で対応する周波数の前記交流電圧を当該交流電圧の周波数と同じ周波数の前記同期信号で同期検波することにより、当該周波数に対応する当該交流電圧の電圧値に応じて電圧値が変化する前記直流電圧をそれぞれ出力し、
前記処理部は、前記異なる周波数毎に前記良否判定用処理を実行する請求項1記載の接触抵抗測定装置。
【請求項3】
前記同期検波部は、前記各交流電圧を当該各交流電圧の前記異なる周波数とそれぞれ同じ周波数の同期信号で順次同期検波することにより、当該異なる周波数に対応する当該各交流電圧の電圧値に応じて電圧値がそれぞれ変化する直流電圧を順次出力し、
前記処理部は、前記異なる周波数毎に前記良否判定用処理を実行する請求項1記載の接触抵抗測定装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記良否判定用処理として、前記判定対象接触箇所の接触抵抗が予め規定された抵抗値よりも小さいときに当該判定対象接触箇所の接触抵抗が良好とする判定処理を前記異なる周波数毎に実行し、当該実行した判定処理の半数を超える回数において良好と判定したときに、当該判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に良好と判定する請求項1記載の接触抵抗測定装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記良否判定用処理として、前記判定対象接触箇所の接触抵抗が予め規定された抵抗値よりも小さいときに当該判定対象接触箇所の接触抵抗が良好とする判定処理を前記異なる周波数毎に実行し、当該実行した判定処理のすべてにおいて不良と判定したときに、当該判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に不良と判定する請求項1記載の接触抵抗測定装置。
【請求項6】
Hi側およびLo側の各ソース端子に一端および他端がそれぞれ接続される測定対象に測定用交流電流を供給する第2交流電流源と、前記測定用交流電流が供給されたときに前記測定対象の前記一端および前記他端の間に生じる交流電圧を、当該一端および当該他端にそれぞれ接続されたHi側およびLo側の信号検出用の各センス端子を介して測定すると共に、当該測定した交流電圧の電圧値と前記測定用交流電流の電流値とに基づいて前記測定対象のインピーダンスを測定する測定部とを備えているインピーダンス測定装置であって、
請求項1から5のいずれかに記載の前記接触抵抗測定装置を備え、
前記第1交流電流源は、前記各ソース端子と前記測定対象の前記一端および他端との各接触箇所を含む前記電流経路、並びに前記各センス端子と前記測定対象の前記一端および他端との各接触箇所を含む前記電流経路の少なくとも一方の当該電流経路に前記接触判定用交流電流を供給し、
前記処理部は、前記少なくとも一方の電流経路における前記各接触箇所を前記判定対象接触箇所とする前記良否判定用処理を前記異なる周波数毎に実行するインピーダンス測定装置。
【請求項7】
前記第2交流電流源は、前記第1交流電流源としても機能し、前記測定用交流電流を前記周波数が異なる複数の接触判定用交流電流のうちの1つとして、前記各ソース端子と前記測定対象の前記一端および他端との各接触箇所を含む前記電流経路に供給する請求項6記載のインピーダンス測定装置。
【請求項8】
前記接触抵抗測定装置として請求項4記載の接触抵抗測定装置を備え、
前記処理部は、前記判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に良好と判定したときに、前記測定部によって測定された前記測定対象のインピーダンスを出力する請求項6記載のインピーダンス測定装置。
【請求項9】
前記接触抵抗測定装置として請求項5記載の接触抵抗測定装置を備え、
前記処理部は、前記判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に良好と判定したときに、前記測定部によって測定された前記測定対象のインピーダンスを出力する請求項6記載のインピーダンス測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定対象接触箇所を含む電流経路に接触判定用交流電流を供給して判定対象接触箇所に生じた交流電圧をその交流電圧の周波数と同じ周波数の同期信号で同期検波して得られた直流電圧に基づいて判定対象接触箇所についての良否判定用処理を実行する接触抵抗測定装置、およびその接触抵抗測定装置を備えて測定対象のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、この種の接触抵抗測定装置を備えたインピーダンス測定装置として下記の特許文献1に開示されたインピーダンス測定装置が知られている。このインピーダンス測定装置は、Hi側とLo側の信号供給用の各ソース端子を介して測定対象(被測定試料)に交流の測定信号を供給する測定用信号源と、この測定信号の供給によって測定対象に生じる電圧をHi側とLo側の信号検出用の各センス端子を介して測定する測定部とを備えている。また、このインピーダンス測定装置では、測定部は、各センス端子の接触抵抗を検出するために、Hi側のセンス端子とLo側のセンス端子との間に交流定電流を供給する断線検出用交流定電流源と、第1および第2の2つのロックインアンプとを備えている。
【0003】
このインピーダンス測定装置では、測定用信号源から供給される交流定電流の周波数f11と、断線検出用交流定電流源から供給される交流定電流の周波数f12とを異なる周波数として、第1ロックインアンプは周波数f11で同期検波を行い、第2ロックインアンプは周波数f12で同期検波を行う。これにより、第1ロックインアンプからは、測定用の交流定電流が流れることによって測定対象に生じる電圧Vaが出力され、第2ロックインアンプからは、断線検出用の交流定電流が流れることによって、Hi側およびLo側のセンス端子間の抵抗によって生じる電圧Vbが出力される。
【0004】
この場合、Hi側のソース端子の接触抵抗をRC1とし、Lo側のソース端子の接触抵抗をRC2とし、Hi側のセンス端子の接触抵抗をRC3とし、Lo側のソース端子の接触抵抗をRC4とし、測定対象のインピーダンスをRxとすると、Hi側およびLo側のセンス端子間の抵抗は、抵抗(RC3+Rx+RC4)と交流定電流源の出力抵抗R01との合成抵抗となる。したがって、出力抵抗R01≫抵抗(RC3+Rx+RC4)で、かつ接触抵抗(RC3+RC4)≫インピーダンスRxのときには、上記電圧VbからHi側およびLo側のセンス端子間の接触抵抗(RC3+RC4)を検出することができ、これにより、Hi側およびLo側のセンス端子のコンタクトチェックが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4695920号公報(第7頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記のインピーダンス測定装置には、以下の改善すべき課題が存在している。具体的には、上記のインピーダンス測定装置では、第2ロックインアンプを用いてHi側およびLo側のセンス端子間の接触抵抗を検出している。この場合、第2ロックインアンプは、断線検出用交流定電流源の交流定電流の周波数f12で同期検波を行っている。したがって、断線検出用交流定電流源の交流定電流の周波数f12と同じかまたは近傍の周波数のノイズが周囲の環境において発生しているときには、抵抗(RC3+Rx+RC4)の検出に誤差が含まれることになり、Hi側およびLo側のセンス端子間の接触抵抗を誤って検出することになる。その結果、上記のインピーダンス測定装置には、コンタクトチェックエラーとなって、測定不能な状態になる。一方、コンタクトチェックの設定を解除することによって強制的に測定可能な状態とすることは可能である。しかしながら、このような場合には、インピーダンス測定装置によるインピーダンス測定の信頼性が低下することになる。このため、上記のインピーダンス測定装置には、コンタクトチェックの正確性を向上するべきとの改善すべき課題が存在する。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、正確なコンタクトチェックを行い得る接触抵抗測定装置、およびインピーダンス測定の信頼性を高め得るインピーダンス測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく本発明に係る接触抵抗測定装置は、判定対象接触箇所を含む電流経路に接触判定用交流電流を供給する第1交流電流源と、前記第1交流電流源から前記接触判定用交流電流が供給されたときに当該接触判定用交流電流の周波数に対応すると共に前記判定対象接触箇所に生じた交流電圧を当該交流電圧の周波数と同じ周波数の同期信号で同期検波することにより、当該交流電圧の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧を出力する同期検波部と、前記同期検波部から出力された前記直流電圧に基づいて前記判定対象接触箇所についての良否判定用処理を実行する処理部とを備えている接触抵抗測定装置であって、前記第1交流電流源は、異なる周波数に規定された複数の前記接触判定用交流電流を前記電流経路に供給可能に構成され、前記同期検波部は、前記複数の接触判定用交流電流が前記電流経路に供給されたときに前記判定対象接触箇所に生じた各前記交流電圧を当該各交流電圧の前記異なる周波数とそれぞれ同じ周波数の前記同期信号でそれぞれ同期検波することにより、当該異なる周波数に対応する当該各交流電圧の電圧値に応じて電圧値がそれぞれ変化する前記直流電圧を出力し、前記処理部は、前記異なる周波数毎に前記良否判定用処理を実行する。
【0009】
したがって、本発明に係る接触抵抗測定装置によれば、接触抵抗測定装置の周囲の環境において異なる周波数のうちの1つの周波数と同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生しているときであっても、他の周波数によるコンタクトチェックに影響が出ないため、接触抵抗測定装置は、コンタクトチェックを正確に行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る接触抵抗測定装置は、前記第1交流電流源は、前記周波数が異なる複数の接触判定用交流電流を合成して前記電流経路に供給可能に構成され、前記同期検波部は、前記異なる周波数に一対一で対応して設けられた複数の同期検波回路を備えて構成され、前記複数の同期検波回路の各々は、前記異なる周波数に一対一で対応する周波数の前記交流電圧を当該交流電圧の周波数と同じ周波数の前記同期信号で同期検波することにより、当該周波数に対応する当該交流電圧の電圧値に応じて電圧値が変化する前記直流電圧をそれぞれ出力し、前記処理部は、前記異なる周波数毎に前記良否判定用処理を実行する。したがって、この接触抵抗測定装置によれば、各同期検波回路から直流電圧が同時に出力される結果、異なる周波数毎に良否判定用処理を同時に実行できるため、判定対象接触箇所についてのコンタクトチェックを瞬時に(短時間で)行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る接触抵抗測定装置は、前記同期検波部は、前記各交流電圧を当該各交流電圧の前記異なる周波数とそれぞれ同じ周波数の同期信号で順次同期検波することにより、当該異なる周波数に対応する当該各交流電圧の電圧値に応じて電圧値がそれぞれ変化する直流電圧を順次出力し、前記処理部は、前記異なる周波数毎に前記良否判定用処理を実行する。したがって、この接触抵抗測定装置によれば、異なる周波数に一対一で対応して設けられた複数の同期検波回路を備えて同期検波部を構成するのと比較して、同期検波部を簡易に構成できると共に安価に構成することができる。
【0012】
また、本発明に係る接触抵抗測定装置は、前記処理部は、前記良否判定用処理として、前記判定対象接触箇所の接触抵抗が予め規定された抵抗値よりも小さいときに当該判定対象接触箇所の接触抵抗が良好とする判定処理を前記異なる周波数毎に実行し、当該実行した判定処理の半数を超える回数において良好と判定したときに、当該判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に良好と判定する。したがって、この接触抵抗測定装置によれば、接触抵抗測定装置の周囲の環境において異なる周波数のうちの1つの周波数と同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生しているときであっても、他の周波数によるコンタクトチェックに影響が出ないため、接触抵抗測定装置は、コンタクトチェックを正確に行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る接触抵抗測定装置は、前記処理部は、前記良否判定用処理として、前記判定対象接触箇所の接触抵抗が予め規定された抵抗値よりも小さいときに当該判定対象接触箇所の接触抵抗が良好とする判定処理を前記異なる周波数毎に実行し、当該実行した判定処理のすべてにおいて不良と判定したときに、当該判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に不良と判定する。したがって、この接触抵抗測定装置によれば、接触抵抗測定装置の周囲の環境において異なる周波数のすべてと同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生していない限り、接触抵抗を最終的に良好と判定することになるため、接触抵抗測定装置は、判定対象接触箇所の接触抵抗を不良と判定するコンタクトチェックエラーの発生を低減することができる。
【0014】
また、本発明に係るインピーダンス測定装置は、Hi側およびLo側の各ソース端子に一端および他端がそれぞれ接続される測定対象に測定用交流電流を供給する第2交流電流源と、前記測定用交流電流が供給されたときに前記測定対象の前記一端および前記他端の間に生じる交流電圧を、当該一端および当該他端にそれぞれ接続されたHi側およびLo側の信号検出用の各センス端子を介して測定すると共に、当該測定した交流電圧の電圧値と前記測定用交流電流の電流値とに基づいて前記測定対象のインピーダンスを測定する測定部とを備えているインピーダンス測定装置であって、上記いずれかの接触抵抗測定装置を備え、前記第1交流電流源は、前記各ソース端子と前記測定対象の前記一端および他端との各接触箇所を含む前記電流経路、並びに前記各センス端子と前記測定対象の前記一端および他端との各接触箇所を含む前記電流経路の少なくとも一方の当該電流経路に前記接触判定用交流電流を供給し、前記処理部は、前記少なくとも一方の電流経路における前記各接触箇所を前記判定対象接触箇所とする前記良否判定用処理を前記異なる周波数毎に実行する。したがって、このインピーダンス測定装置によれば、インピーダンス測定装置の周囲の環境において異なる周波数のうちの1つと同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生しているときであっても、他の周波数によるコンタクトチェックに影響が出ないため、コンタクトチェックを正確に行うことができる結果、インピーダンス測定の信頼性を十分に高めることができる。
【0015】
また、本発明に係るインピーダンス測定装置は、前記第2交流電流源は、前記第1交流電流源としても機能し、前記測定用交流電流を前記周波数が異なる複数の接触判定用交流電流のうちの1つとして、前記各ソース端子と前記測定対象の前記一端および他端との各接触箇所を含む前記電流経路に供給する。したがって、このインピーダンス測定装置によれば、第2交流電流源が接触判定用交流電流を供給する第1交流電流源としての機能を兼用するため、第1交流電流源を2つ設ける必要がなくなる結果、インピーダンス測定装置を簡易に構成できると共に安価に構成することができる。
【0016】
また、本発明に係るインピーダンス測定装置は、前記処理部は、前記判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に良好と判定したときに、前記測定部によって測定された前記測定対象のインピーダンスを出力する。したがって、このインピーダンス測定装置によれば、インピーダンス測定の信頼性を十分に高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る接触抵抗測定装置によれば、接触抵抗測定装置の周囲の環境において異なる周波数のうちの1つの周波数と同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生しているときであっても、他の周波数によるコンタクトチェックに影響が出ないため、接触抵抗測定装置は、コンタクトチェックを正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】接触抵抗測定装置1の構成を示す構成図である。
【
図2】インピーダンス測定装置100の構成を示す構成図である。
【
図3】インピーダンス測定装置100Aの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、接触抵抗測定装置およびインピーダンス測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0020】
最初に、接触抵抗測定装置1について、
図1を参照して説明する。
【0021】
接触抵抗測定装置1は、判定対象接触箇所における接触抵抗の良否を判定可能に構成されており、一対の端子(Hi(ハイ)側のセンス端子Hp(信号検出用のセンス端子)およびLo(ロー)側のセンス端子Lp(信号検出用のセンス端子)ともいう))、交流電流源SS1、コンデンサC1,C2、演算増幅演算回路A1、フィルターFIL1、同期検波部SDU1、コンパレータCOM1~COM3、処理部CONTおよび出力部OUTを備えている。この場合、本例では、例えば、センス端子Hpおよびセンス端子Lpを二次電池である電池BATの一端である正極端子T1および他端である負極端子T2にそれぞれ接続する際におけるセンス端子Hpと正極端子T1との間の接触箇所、並びにセンス端子Lpと負極端子T2との間の接触箇所を判定対象接触箇所として、その各判定対象接触箇所におけるそれぞれの接触抵抗RHP,RLPの良否(予め規定された抵抗値よりも小さいか否か)を判定する。
【0022】
交流電流源SS1は、第1交流電流源として機能して、処理部CONTから開始信号が出力されたときに、接触判定用交流電圧Vjを出力して、判定対象接触箇所を含む電流経路に接触判定用の交流定電流である判定用電流Ijの供給を開始し、処理部CONTから停止信号が出力されたときに、接触判定用交流電圧Vjの出力を停止して、判定用電流Ijの供給を停止する。この場合、交流電流源SS1は、異なる周波数に規定された複数の交流電流(接触判定用交流電流:一例として、一定の振幅(既知)で、かつ一定の周波数で互いに異なる3つの周波数f1,f2,f3の交流電流)を合成して判定用電流Ijとして供給可能に構成されている。ただし、判定用電流Ijとしては、周波数が異なる2つの交流電流であっても良いし、周波数が異なる4つ以上の交流電流であっても良い。また、本例では、交流電流源SS1から供給された判定用電流Ijは、カップリング用のコンデンサC1、センス端子Hp、センス端子Hpと正極端子T1との接触箇所(判定対象接触箇所:接触抵抗RHP)、電池BAT、負極端子T2とセンス端子Lpとの接触箇所(判定対象接触箇所:接触抵抗RLP)およびセンス端子Lpを介して交流電流源SS1に戻る電流経路に供給される。また、交流電流源SS1は、後述する同期検波回路SD1~SD3に対して、同期検波用の同期信号として、判定用電流Ijの周波数と同じ周波数f1,f2,f3の同期信号Sf1~Sf3を出力する。
【0023】
第1増幅器A1は、交流電圧検出部として機能し、非反転入力端子が入力抵抗R1を介してグランドG1に接続されると共にカップリング用のコンデンサC2を介してセンス端子Hpに接続され、反転入力端子が入力抵抗R2を介してグランドG1に接続され、かつ出力端子と反転入力端子との間に帰還抵抗R3が接続されて、非反転増幅器として機能する演算増幅器OP1を備えて構成されている。この構成により、第1増幅器A1は、交流電流源SS1から判定用電流Ijが供給されたときに、判定用電流Ijの周波数f1,f2,f3に対応すると共に判定対象接触箇所(センス端子Hpおよびセンス端子Lpの間)に生じた交流電圧をコンデンサC2を介して入力すると共に検出電圧Vd1(交流電圧)として検出して、検出電圧Vd1を規定の増幅率で増幅して出力する。
【0024】
フィルターFIL1は、第1増幅器A1から出力された検出電圧Vd1に含まれている周波数f1の周波数成分である交流電圧、周波数f2の周波数成分である交流電圧および周波数f3の周波数成分である交流電圧を主として通過させる狭帯域通過型フィルタとして構成されている。この構成により、フィルターFIL1は、第1増幅器A1から出力される検出電圧Vd1を入力すると共に、この検出電圧Vd1に含まれている通過帯域外の周波数成分(ノイズ成分)を除去して検出電圧Vd1を出力する。
【0025】
同期検波部SDU1は、異なる周波数f1,f2,f3に一対一で対応して設けられた複数(本例では3つ)の同期検波回路SD1~SD3と、各同期検波回路SD1~SD3の後段にそれぞれ配置されたローパスフィルターLPF1~LPF3とを備えて構成されている。ここで、同期検波回路SD1およびローパスフィルターLPF1は、周波数f1に一対一で対応して設けられた同期検波回路として機能して、第1増幅器A1によって検出された検出電圧Vd1をその検出電圧Vd1の周波数と同じ周波数の同期信号Sf1で同期検波することにより、検出電圧Vd1の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧の電圧V1を出力する。具体的には、同期検波回路SD1は、一例として乗算器を用いて構成されて、フィルターFIL1から出力された検出電圧Vd1と交流電流源SS1から出力された同期信号Sf1とを互いに乗算することにより(言い換えれば、フィルターFIL1から出力された検出電圧Vd1を同期信号Sf1で同期検波することにより)、検出電圧Vd1を構成する交流電圧のうちの周波数f1の判定用電流Ijに基づく交流電圧の電圧値(例えば、振幅)に応じて電圧値が変化する直流電圧を含む電圧V1を出力する。また、ローパスフィルターLPF1は、低域通過型フィルタとして構成されて、同期検波回路SD1から出力される電圧V1を入力して、交流成分を除去して平滑化することにより、周波数f1の検出電圧Vd1の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧としての電圧V1を出力する。つまり、この同期検波回路(同期検波回路SD1およびローパスフィルターLPF1)は、判定用電流Ijの周波数f1に対応する検出電圧Vd1の大きさを検出する。
【0026】
同期検波回路SD2およびローパスフィルターLPF2は、周波数f2に一対一で対応して設けられた同期検波回路として機能して、第1増幅器A1によって検出された検出電圧Vd1をその検出電圧Vd1の周波数と同じ周波数の同期信号Sf2で同期検波することにより、検出電圧Vd1の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧の電圧V2を出力する。具体的には、同期検波回路SD2は、一例として乗算器を用いて構成されて、フィルターFIL1から出力された検出電圧Vd1と交流電流源SS1から出力された同期信号Sf2とを互いに乗算することにより(言い換えれば、フィルターFIL1から出力された検出電圧Vd1を同期信号Sf2で同期検波することにより)、検出電圧Vd1を構成する交流電圧のうちの周波数f2の判定用電流Ijに基づく交流電圧の電圧値(例えば、振幅)に応じて電圧値が変化する直流電圧を含む電圧V2を出力する。また、ローパスフィルターLPF2は、低域通過型フィルタとして構成されて、同期検波回路SD2から出力される電圧V2を入力して、交流成分を除去して平滑化することにより、周波数f2の検出電圧Vd1の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧としての電圧V2を出力する。つまり、この同期検波回路(同期検波回路SD2およびローパスフィルターLPF2)は、判定用電流Ijの周波数f2に対応する検出電圧Vd1の大きさを検出する。
【0027】
同期検波回路SD3およびローパスフィルターLPF3は、周波数f3に一対一で対応して設けられた同期検波回路として機能して、第1増幅器A1によって検出された検出電圧Vd1をその検出電圧Vd1の周波数と同じ周波数の同期信号Sf3で同期検波することにより、検出電圧Vd1の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧の電圧V3を出力する。具体的には、同期検波回路SD3は、一例として乗算器を用いて構成されて、フィルターFIL1から出力された検出電圧Vd1と交流電流源SS1から出力された同期信号Sf3とを互いに乗算することにより(言い換えれば、フィルターFIL1から出力された検出電圧Vd1を同期信号Sf3で同期検波することにより)、検出電圧Vd1を構成する交流電圧のうちの周波数f3の判定用電流Ijに基づく交流電圧の電圧値(例えば、振幅)に応じて電圧値が変化する直流電圧を含む電圧V3を出力する。また、ローパスフィルターLPF3は、低域通過型フィルタとして構成されて、同期検波回路SD3から出力される電圧V3を入力して、交流成分を除去して平滑化することにより、周波数f3の検出電圧Vd1の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧としての電圧V3を出力する。つまり、この同期検波回路(同期検波回路SD3およびローパスフィルターLPF3)は、判定用電流Ijの周波数f3に対応する検出電圧Vd1の大きさを検出する。
【0028】
コンパレータCOM1は、他のコンパレータCOM2,3および処理部CONTと共に「処理部」を構成する。この場合、コンパレータCOM1は、一例として、演算増幅器で構成されて、予め規定された電圧の閾値電圧Vth1が処理部CONTによって反転入力端子に設定されており、ローパスフィルターLPF1から出力されて非反転入力端子に入力された電圧V1が閾値電圧Vth1の電圧値を超えたときに、ハイ(高電圧)の判定信号S1を出力する。この場合、電圧V1は、検出電圧Vd1に含まれる電圧のうちの、周波数f1の判定用電流Ijに基づいてセンス端子Hpおよびセンス端子Lpの間に生じる電圧(つまり、判定用電流Ijの周波数f1に対応する交流電圧の大きさ)を検出したものであることから、その電圧値は、電池BATの内部抵抗Rx(抵抗値をRxとする)と、接触抵抗RHP(抵抗値をRHPとする)および接触抵抗RLP(抵抗値をRLPとする)との直列合成抵抗(RHP+Rx+RLP)に比例する値(∝RHP+Rx+RLP)となっている。また、接触抵抗(RHP+RLP)≫内部抵抗(Rx)のときには、電圧V1は、その電圧値が接触抵抗(RHP+RLP)の大きさを示す電圧となる。したがって、閾値電圧Vth1を接触抵抗(RHP+RLP)に許容される最大抵抗値に対応する電圧値に規定しておくことにより、コンパレータCOM1は、センス端子Hpおよびセンス端子Lpの間の接触抵抗(RHP+RLP)が許容される最大抵抗値を超える大きい抵抗値であるとき(つまり、接触が不良のとき)には、ハイの判定信号S1を出力する。逆に、コンパレータCOM1は、接触抵抗(RHP+RLP)が許容される最大抵抗値以下の小さい抵抗値であるとき(つまり、接触が良好のとき)には、ロー(低電圧)の判定信号S1を出力する。
【0029】
コンパレータCOM2は、一例として、演算増幅器で構成されて、予め規定された電圧の閾値電圧Vth2が処理部CONTによって反転入力端子に設定されており、ローパスフィルターLPF2から出力されて非反転入力端子に入力された電圧V2が閾値電圧Vth2の電圧値を超えたときに、ハイ(高電圧)の判定信号S2を出力する。この場合、電圧V2は、検出電圧Vd1に含まれる電圧のうちの、周波数f2の判定用電流Ijに基づいてセンス端子Hpおよびセンス端子Lpの間に生じる電圧(つまり、判定用電流Ijの周波数f2に対応する交流電圧の大きさ)を検出したものであることから、その電圧値は、電池BATの内部抵抗Rxと、接触抵抗RHPおよび接触抵抗RLPとの直列合成抵抗(RHP+Rx+RLP)に比例する値(∝RHP+Rx+RLP)となっている。また、接触抵抗(RHP+RLP)≫内部抵抗(Rx)のときには、電圧V2は、その電圧値が接触抵抗(RHP+RLP)の大きさを示す電圧となる。したがって、閾値電圧Vth2を接触抵抗(RHP+RLP)に許容される最大抵抗値に対応する電圧値に規定しておくことにより、コンパレータCOM2は、センス端子Hpおよびセンス端子Lpの間の接触抵抗(RHP+RLP)が許容される最大抵抗値を超える大きい抵抗値であるとき(つまり、接触が不良のとき)には、ハイの判定信号S2を出力する。逆に、コンパレータCOM2は、接触抵抗(RHP+RLP)が許容される最大抵抗値以下の小さい抵抗値であるとき(つまり、接触が良好のとき)には、ロー(低電圧)の判定信号S2を出力する。
【0030】
コンパレータCOM3は、一例として、演算増幅器で構成されて、予め規定された電圧の閾値電圧Vth3が処理部CONTによって反転入力端子に設定されており、ローパスフィルターLPF3から出力されて非反転入力端子に入力された電圧V3が閾値電圧Vth3の電圧値を超えたときに、ハイ(高電圧)の判定信号S3を出力する。この場合、電圧V3は、検出電圧Vd1に含まれる電圧のうちの、周波数f3の判定用電流Ijに基づいてセンス端子Hpおよびセンス端子Lpの間に生じる電圧(つまり、判定用電流Ijの周波数f3に対応する交流電圧の大きさ)を検出したものであることから、その電圧値は、電池BATの内部抵抗Rxと、接触抵抗RHPおよび接触抵抗RLPとの直列合成抵抗(RHP+Rx+RLP)に比例する値(∝RHP+Rx+RLP)となっている。また、接触抵抗(RHP+RLP)≫内部抵抗(Rx)のときには、電圧V3は、その電圧値が接触抵抗(RHP+RLP)の大きさを示す電圧となる。したがって、閾値電圧Vth3を接触抵抗(RHP+RLP)に許容される最大抵抗値に対応する電圧値に規定しておくことにより、コンパレータCOM3は、センス端子Hpおよびセンス端子Lpの間の接触抵抗(RHP+RLP)が許容される最大抵抗値を超える大きい抵抗値であるとき(つまり、接触が不良のとき)には、ハイの判定信号S3を出力する。逆に、コンパレータCOM3は、接触抵抗(RHP+RLP)が許容される最大抵抗値以下の小さい抵抗値であるとき(つまり、接触が良好のとき)には、ロー(低電圧)の判定信号S3を出力する。なお、コンパレータCOM1~COM3による電圧V1~V3と閾値電圧Vth1~Vth3との上記の比較処理が、「同期検波部から出力された直流電圧(本例では、電圧V1~V3)に基づいて判定対象接触箇所について異なる周波数毎に実行される良否判定用処理の一部」に相当する。
【0031】
処理部CONTは、例えば、CPUで構成されて、コンパレータCOM1~COM3と共に「処理部」として機能し、第1増幅器A1によって検出された交流電圧の検出電圧Vd1(本例では、周波数f1,f2,f3の検出電圧Vd1)の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧の電圧V1~V3に基づいて判定対象接触箇所(本例では、センス端子Hpおよびセンス端子Lp間の接触抵抗(RHP+RLP))についての良否判定用処理を、異なる周波数f1,f2,f3毎に実行する。具体的には、処理部CONTは、コンパレータCOM1~COM3から出力される判定信号S1~S3に基づいて、判定対象接触箇所の接触抵抗(RHP+RLP)が許容される最大抵抗値以下の小さい抵抗値であるか否か(つまり、判定対象接触箇所の接触の良否)を判定する。また、処理部CONTは、良否判定用処理の処理結果を表す表示用データSdを出力部OUTに出力する。また、処理部CONTは、上記した閾値電圧Vth1~Vth3を対応するコンパレータCOM1~COM3に出力する。
【0032】
なお、コンパレータCOM1~COM3に関しては、処理部CONTの内部回路を用いて構成しても良く、その構成を採用する場合には、ローパスフィルターLPF1~LPF3の後段のコンパレータCOM1~COM3の配設を省くと共にローパスフィルターLPF1~LPF3から出力される電圧V1~V3を処理部CONTに直接入力する構成とする。また、本例では、コンパレータCOM1~COM3を用いて判定信号S1~S3を生成しているが、ローパスフィルターLPF1~LPF3から出力される電圧V1~V3を処理部CONTに直接入力して、処理部CONT内部のA/Dコンバータを含む演算回路が電圧V1~V3の電圧値を演算して、判定対象接触箇所の接触抵抗(RHP+RLP)が許容される最大抵抗値以下の小さい抵抗値であるか否か(つまり、判定対象接触箇所の接触の良否)を判定する構成を採用することもできる。この場合、処理部CONTは、接触抵抗(RHP+RLP)≫内部抵抗(Rx)のときには、電圧V1~V3の電圧値を判定用電流Ijの既知の電流値で除算することにより、接触抵抗(RHP+RLP)を演算する。また、処理部CONTは、接触抵抗(RHP+RLP)を演算(測定)したときには、表示用データSdに接触抵抗(RHP+RLP)を表示するためのデータを含めて出力部OUTに出力することによって接触抵抗(RHP+RLP)を表示させることもできる。なお、処理部CONTは、接触抵抗(RHP+RLP)の演算および出力部OUTに対する表示用データSdの出力だけを行い、判定対象接触箇所の接触の良否を判定しない構成、つまり、出力部OUTに表示させた接触抵抗(RHP+RLP)に基づき、判定対象接触箇所の接触の良否の判定を測定者に委ねる構成を採用することもできる。この場合、接触抵抗(RHP+RLP)の演算および出力部OUTへの表示用データSdの出力が、良否判定用処理に相当する。
【0033】
出力部OUTは、一例として、表示装置で構成されて、処理部CONTから出力される表示用データSdを入力して、判定対象接触箇所の接触の良否を表示する。また、出力部OUTは、接触抵抗(RHP+RLP)を表示するためのデータを含む表示用データSdを入力したときには、接触抵抗(RHP+RLP)の抵抗値を表示する。なお、出力部OUTは、表示装置に代えて種々のインターフェース回路で構成することもでき、外部インターフェース回路で構成したときには、外部インターフェース回路を介して伝送路で接続された外部装置に判定対象接触箇所の接触の良否や接触抵抗(RHP+RLP)の抵抗値を出力し、また媒体用インターフェース回路で構成されたときには、この媒体用インターフェース回路に接続された記憶媒体に判定対象接触箇所の接触の良否や接触抵抗(RHP+RLP)の抵抗値を記憶させる。
【0034】
次に、接触抵抗測定装置1の動作について、
図1を参照して説明する。なお、センス端子Hpおよびセンス端子Lpは、不図示の2本の測定ケーブルを介して電池BATの正極端子T1および負極端子T2にそれぞれ接続されているものとする。また、センス端子HpおよびB電池BATの正極端子T1の間の接触抵抗と測定ケーブルの配線抵抗とを接触抵抗RHPとし、センス端子Lpおよび電池BATの負極端子T2の間の接触抵抗と測定ケーブルの配線抵抗とを接触抵抗RLPとする。また、測定ケーブルの配線抵抗については、小さな抵抗のため、本例の説明においては無視するものとする。
【0035】
判定対象接触箇所についての良否判定用処理を実行する際には、処理部CONTが、開始信号を交流電流源SS1に出力すると共にコンパレータCOM1~COM3に対応する閾値電圧Vth1~Vth3を出力する。この際には、交流電流源SS1は、接触判定用交流電圧Vjを出力することにより、コンデンサC1を介して、判定対象接触箇所を含む上記の電流経路に周波数f1,f2,f3の交流電流を合成した判定用電流Ijの供給を開始すると共に同期検波回路SD1~SD3に同期信号Sf1~Sf3を出力する。この結果、センス端子Hpおよびセンス端子Lpの間に判定用電流Ijが供給されることにより、センス端子Hpと電池BATの正極端子T1との間、および電池BATの負極端子T2とセンス端子Lpとの間の判定対象接触箇所に周波数f1,f2,f3の判定用電流Ijが流れることに起因する交流電圧が発生する。この場合、発生した交流電圧は、検出電圧Vd1として、コンデンサC2を介して演算増幅器OP1の非反転入力端子に入力する。次いで、第1増幅器A1が、入力した検出電圧Vd1を規定の増幅率で増幅してフィルターFIL1に出力する。
【0036】
次いで、フィルターFIL1は、第1増幅器A1から出力される検出電圧Vd1を入力すると共に、この検出電圧Vd1に含まれている通過帯域外の周波数成分(ノイズ成分)を除去しつつ、検出電圧Vd1に含まれている周波数f1,f2,f3の周波数成分である交流電圧を検出電圧Vd1として通過させる。この後、フィルターFIL1を通過した周波数f1,f2,f3の周波数成分である検出電圧Vd1は、同期検波回路SD1~SD3に入力される。
【0037】
次いで、同期検波回路SD1は、入力した検出電圧Vd1を交流電流源SS1から出力された同期信号Sf1で同期検波して、検出電圧Vd1を構成する交流電圧のうちの周波数f1の判定用電流Ijに基づく交流電圧の電圧値(例えば、振幅)に応じて電圧値が変化する電圧V1を出力する。この後、ローパスフィルターLPF1は、同期検波回路SD1から出力される電圧V1を入力して、交流成分を除去して平滑化することにより、直流電圧の電圧V1をコンパレータCOM1の非反転端子に出力する。また、同期検波回路SD2は、入力した検出電圧Vd1を交流電流源SS1から出力された同期信号Sf2で同期検波して、検出電圧Vd1を構成する交流電圧のうちの周波数f2の判定用電流Ijに基づく交流電圧の電圧値(例えば、振幅)に応じて電圧値が変化する電圧V2を出力する。この後、ローパスフィルターLPF2は、同期検波回路SD2から出力される電圧V2を入力して、交流成分を除去して平滑化することにより、直流電圧の電圧V2をコンパレータCOM2の非反転端子に出力する。また、同期検波回路SD3は、入力した検出電圧Vd1を交流電流源SS1から出力された同期信号Sf3で同期検波して、検出電圧Vd1を構成する交流電圧のうちの周波数f3の判定用電流Ijに基づく交流電圧の電圧値(例えば、振幅)に応じて電圧値が変化する電圧V3を出力する。この後、ローパスフィルターLPF3は、同期検波回路SD3から出力される電圧V3を入力して、交流成分を除去して平滑化することにより、直流電圧の電圧V3をコンパレータCOM3の非反転端子に出力する。
【0038】
次いで、コンパレータCOM1は、良否判定処理の一部として、非反転端子に入力した電圧V1と、反転端子に入力されている閾値電圧Vth1とを比較することにより、電圧V1が閾値電圧Vth1の電圧値を超えたときに、ハイ(高電圧)の判定信号S1を出力し、電圧V1が閾値電圧Vth1の電圧値以下のときに、ロー(低電圧)の判定信号S1を処理部CONTに出力する。この場合、接触抵抗測定装置1の周囲の環境において周波数f1と同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生しているときには、電圧V1の電圧値が上がるため、電圧V1が閾値電圧Vth1の電圧値を超える結果、コンパレータCOM1は、接触抵抗が不良を意味するハイ(高電圧)の判定信号S1を出力する。
同様にして、コンパレータCOM2は、良否判定処理の一部として、非反転端子に入力した電圧V2と、反転端子に入力されている閾値電圧Vth2とを比較することにより、電圧V2が閾値電圧Vth2の電圧値を超えたときに、ハイ(高電圧)の判定信号S2を出力し、電圧V2が閾値電圧Vth2の電圧値以下のときに、ロー(低電圧)の判定信号S2を処理部CONTに出力する。この場合、接触抵抗測定装置1の周囲の環境において周波数f2と同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生しているときには、電圧V2の電圧値が上がるため、電圧V2が閾値電圧Vth2の電圧値を超える結果、コンパレータCOM2は、接触抵抗が不良を意味するハイ(高電圧)の判定信号S2を出力する。同様にして、コンパレータCOM3は、良否判定処理の一部として、非反転端子に入力した電圧V3と、反転端子に入力されている閾値電圧Vth3とを比較することにより、電圧V3が閾値電圧Vth3の電圧値を超えたときに、ハイ(高電圧)の判定信号S3を出力し、電圧V1が閾値電圧Vth1の電圧値以下のときに、ロー(低電圧)の判定信号S3を処理部CONTに出力する。この場合、接触抵抗測定装置1の周囲の環境において周波数f3と同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生しているときには、電圧V3の電圧値が上がるため、電圧V3が閾値電圧Vth3の電圧値を超える結果、コンパレータCOM3は、接触抵抗が不良を意味するハイ(高電圧)の判定信号S3を出力する。
【0039】
次に、処理部CONTは、入力した判定信号S1~S3に基づいて、異なる周波数f1,f2,f3毎に良否判定用処理を実行する。具体的には、処理部CONTは、コンパレータCOM1~COM3によって行われる電圧V1,V2,V3と閾値電圧Vth1,Vth2,Vth3との比較(良否判定処理における一部の処理である判定処理)の結果に基づき、良否判定用処理として、判定対象接触箇所の接触抵抗の良否を最終的に判定する。より具体的には、処理部CONTは、良否判定用処理として、異なる周波数f1,f2,f3毎にコンパレータCOM1~COM3によって実行された複数回(この例では3回)の判定処理の半数を超える回数(この例では2回以上)において判定対象接触箇所の接触抵抗が予め規定された抵抗値(閾値電圧Vth1~Vth3に対応する抵抗値)以下の小さい抵抗値のときに、つまり、良好と判定してローの判定信号S1~S3のうちの2つ以上が出力されたときに、判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に良好と判定する。一方、処理部CONTは、コンパレータCOM1~COM3による複数回(この例では3回)の判定処理の半数未満(この例では2回未満)において判定対象接触箇所の接触抵抗が予め規定された抵抗値(閾値電圧Vth1~Vth3に対応する抵抗値)以下の小さい抵抗値のときに、つまり、良好と判定してローの判定信号S1~S3のうちの2つ未満が出力されたときに、判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に不良と判定する。このように良否判定用処理を実行することにより、接触抵抗測定装置1の周囲の環境において1つの周波数(例えば、周波数f1)と同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生しているときであっても、他の周波数(この例では、周波数f2,f3)によるコンタクトチェックに影響が出ないため、接触抵抗測定装置1(処理部CONT)は、コンタクトチェックを正確に行うことができる。
【0040】
なお、処理部CONTの良否判定用処理として、以下の処理を実行することもできる。具体的には、処理部CONTが、良否判定用処理として、異なる周波数f1,f2,f3毎に実行したコンパレータCOM1~COM3による複数回(この例では3回)の判定処理のすべて(この例では3回)において判定対象接触箇所の接触抵抗が予め規定された抵抗値(閾値電圧Vth1~Vth3)を超える大きな抵抗値のときに(つまり、不良と判定したときに)、判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に不良と判定し、コンパレータCOM1~COM3による複数回(この例では3回)の判定処理の少なくとも1回において判定対象接触箇所の接触抵抗が予め規定された抵抗値(閾値電圧Vth1~Vth3)以下の小さい抵抗値のときに、判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に良好と判定する。このように良否判定用処理を実行することにより、接触抵抗測定装置1の周囲の環境において3つの周波数f1,f2,f3のすべてと同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生していない限り、接触抵抗を最終的に良好と判定することになるため、接触抵抗測定装置1(処理部CONT)は、判定対象接触箇所の接触抵抗を不良と判定するコンタクトチェックエラーの発生を低減することができる。
【0041】
この後、処理部CONTは、良否判定用処理の最終的な判定結果を表示用データSdとして出力部OUTに出力する。次いで、出力部OUTは、表示用データSdに基づき、判定対象接触箇所の接触抵抗(RHP+RLP)が許容される最大抵抗値よりも小さい抵抗値であるか否か、つまり判定対象接触箇所の接触抵抗の良否を表示する。この場合、判定対象接触箇所の接触抵抗が不良と表示するときには、警告表示を併せて表示させることもできる。また、出力部OUTに音声出力部を設けて警告音を出力させる構成を採用しても良い。
【0042】
なお、処理部CONTが、コンパレータCOM1~COM3による複数回(この例では3回)の判定処理の判定結果のみを表示用データSdに含めて出力部OUTに出力する構成を採用することもできる。この構成を採用した場合には、測定者が、判定処理の判定結果に基づいて判定することになる。
【0043】
このように、この接触抵抗測定装置1によれば、交流電流源SS1が、異なる周波数に規定された複数の判定用電流Ijを電流経路に供給し、同期検波回路SD1~SD3およびローパスフィルターLPF1~LPF3が、複数の判定用電流Ijが上記の電流経路に供給されたときに判定対象接触箇所に生じた異なる周波数f1,f2,3にそれぞれ対応する各検出電圧Vd1(検出電圧Vd1のうちの周波数f1,f2,3にそれぞれ対応する交流電圧)を、周波数f1,f2,3とそれぞれ同じ周波数の同期信号Sf1~Sf3でそれぞれ同期検波することにより、周波数f1,f2,3に対応する検出電圧Vd1の電圧値に応じて電圧値がそれぞれ変化する電圧V1~V3を出力し、処理部CONTが、周波数f1,f2,3毎に良否判定用処理を実行する。これにより、接触抵抗測定装置1の周囲の環境において異なる周波数のうちの1つの周波数(例えば、周波数f1)と同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生しているときであっても、他の周波数(この例では、周波数f2,f3)によるコンタクトチェックに影響が出ないため、接触抵抗測定装置1(処理部CONT)は、コンタクトチェックを正確に行うことができる。
【0044】
また、この接触抵抗測定装置1によれば、交流電流源SS1が、周波数が異なる複数の接触判定用交流電流(周波数f1,f2,f3の判定用電流Ij)を合成して電流経路に供給し、異なる周波数f1,f2,f3に一対一で対応して設けられた複数の同期検波回路(同期検波回路SD1~SD3およびローパスフィルターLPF1~LPF3)の各々が、異なる周波数f1,f2,f3に一対一で対応する周波数(周波数f1,f2,f3のいずれか)の検出電圧Vd1をその検出電圧Vd1の周波数と同じ周波数(周波数f1,f2,f3のいずれか)の同期信号(同期信号Sf1~Sf3のうちの対応するいずれか)で同期検波することにより、その周波数(周波数f1,f2,f3のいずれか)に対応する検出電圧Vd1の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧(電圧V1~V3のいずれか)をそれぞれ出力し、処理部CONTが、異なる周波数f1,f2,f3毎に良否判定用処理を実行する。したがって、この接触抵抗測定装置1によれば、各同期検波回路(SD1~SD3およびローパスフィルターLPF1~LPF3)から直流電圧である電圧V1~V3が同時に出力される結果、異なる周波数f1,f2,f3毎に良否判定用処理を同時に実行できるため、判定対象接触箇所についてのコンタクトチェックを瞬時に(短時間で)行うことができる。
【0045】
また、この接触抵抗測定装置1によれば、処理部(コンパレータCOM1~COM3および処理部CONT)が、良否判定用処理として、判定対象接触箇所(センス端子Hpおよびセンス端子Lpの間)の接触抵抗(RHP+RLP)が予め規定された抵抗値よりも小さいときに判定対象接触箇所の接触抵抗が良好とする判定処理を異なる周波数f1,f2,f3毎に実行し、実行した判定処理の半数を超える回数において良好と判定したときに、判定対象接触箇所の接触抵抗(RHP+RLP)を最終的に良好と判定する。したがって、この接触抵抗測定装置1によれば、接触抵抗測定装置1の周囲の環境において1つの周波数(例えば、周波数f1)と同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生しているときであっても、他の周波数(この例では、周波数f2,f3)によるコンタクトチェックに影響が出ないため、接触抵抗測定装置1(処理部CONT)は、コンタクトチェックを正確に行うことができる。
【0046】
また、この接触抵抗測定装置1によれば、処理部(コンパレータCOM1~COM3および処理部CONT)が、良否判定用処理として、判定対象接触箇所(センス端子Hpおよびセンス端子Lpの間)の接触抵抗(RHP+RLP)が予め規定された抵抗値よりも小さいときに判定対象接触箇所の接触抵抗が良好とする判定処理を異なる周波数f1,f2,f3毎に実行し、実行した判定処理のすべてにおいて不良と判定したときに、判定対象接触箇所の接触抵抗(RHP+RLP)を最終的に不良と判定する。したがって、この接触抵抗測定装置1によれば、接触抵抗測定装置1の周囲の環境において異なる周波数f1,f2,f3のすべてと同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生していない限り、接触抵抗を最終的に良好と判定することになるため、接触抵抗測定装置1は、判定対象接触箇所の接触抵抗を不良と判定するコンタクトチェックエラーの発生を低減することができる。
【0047】
次に、上記の接触抵抗測定装置1を備えて、測定対象のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置について、
図2を参照して説明する。なお、上記した接触抵抗測定装置1と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0048】
インピーダンス測定装置100は、Hi側のソース端子Hc(測定用交流信号供給用のソース端子)、Lo側のソース端子Lc(測定用交流信号供給用のソース端子)、測定用交流電流源PM、コンデンサC3、同期検波部SDU2、コンパレータCOM4,COM5および測定部MUを備えて、測定対象の一例としての電池BATの正極端子T1(一方の電極)にHi側のソース端子HcおよびHi側のセンス端子Hpが接続され(例えば、不図示の測定ケーブルを介して接続され)、電池BATの負極端子T2(他方の電極)にLo側のソース端子LcおよびLo側のセンス端子Lpが接続された(例えば、不図示の測定ケーブルを介して接続された)状態において、インピーダンスの一例としての電池BATの内部抵抗Rxを測定可能に構成されている。
【0049】
測定用交流電流源PMは、第1交流電流源および第2交流電流源として機能して、Hi側とLo側の各ソース端子Hc,Lc間に接続される電池BATに出力交流電流Ioを供給する。一例として、測定用交流電流源PMは、交流電流源SS2、演算増幅器OP2、帰還抵抗4、接地抵抗5およびカップリング用のコンデンサC4を備えている。また、測定用交流電流源PMは、測定用交流電流源PM用の不図示の電源系から供給される直流電圧(グランドG1とは電位が異なるグランドG2の電位を基準とする直流電圧(直流正電圧および直流負電圧))に基づいて動作する。
【0050】
交流電流源SS2は、処理部CONTから測定開始信号が出力されたときに、交流電圧Voを出力して、電池BATを含む電流経路に測定用および接触判定用の交流定電流である出力交流電流Ioの供給を開始し、処理部CONTから測定停止信号が出力されたときに、交流電圧Voの出力を停止して、出力交流電流Ioの供給を停止する。この場合、交流電流源SS1は、周波数が異なる複数の交流電流(一例として、一定の振幅(既知)で、かつ一定の周波数で互いに異なる2つの周波数f4,f5の交流電流)を合成して出力交流電流Ioとして供給可能に構成されている。なお、周波数f4の交流電流は測定用交流電流および接触判定用交流電流として用いられ、周波数f5の交流電流は接触判定用交流電流として用いられる。また、周波数f4,f5は、上記の周波数f1,f2,f3とは異なる周波数に規定されている。また、交流電流源SS2は、後述する同期検波回路SD4,SD5に対して、同期検波用の同期信号として、出力交流電流Ioの周波数と同じ周波数f4,f5の同期信号Sf4,Sf5を出力すると共に後述する同期検波回路SDRに対して、同期検波用の同期信号として、周波数f4の同期信号Sf4を出力する。なお、交流電流源SS2は、周波数f4,f5の2つの出力交流電流Ioに限らず、周波数f1,f2,f3とは異なり、かつ周波数が互いに異なる3つ以上の交流電流を合成して出力交流電流Ioとして供給可能に構成しても良い。
【0051】
演算増幅器OP2は、出力端子と反転入力端子との間に帰還抵抗R4が接続されると共に、反転入力端子が接地抵抗R5を介してグランドG2に接続されて、非反転入力端子に入力された交流電圧Voを増幅して出力する。また、演算増幅器OP2は、出力端子がコンデンサC4を介してソース端子Hcに接続され、かつ反転入力端子がソース端子Lcに接続されている。この構成により、演算増幅器OP2は、交流電圧Voの電圧値を接地抵抗5の抵抗値で除算して得られる既知の電流値の交流定電流を出力交流電流Ioとして、ソース端子Hc,Lc間に接続される電池BATに供給可能となっている。また、測定用交流電流源PM用の上記の直流電圧(作動用の直流正電圧および直流負電圧)の基準となるグランドG2は、測定部MU用の直流電圧(作動用の直流正電圧および直流負電圧)の基準となるグランドG1とは電気的に分離されていることから、出力交流電流Ioは、
図2に示すように、演算増幅器OP2の出力端子から、コンデンサC4、ソース端子Hc、電池BAT、ソース端子Lcおよび接地抵抗5を介してグランドG2に至る経路にのみ流れる。なお、本例の電池BATは、直流起電力を発生させるバッテリであることから、この直流起電力が演算増幅器OP2の出力端子に印加される事態を回避するために、コンデンサC4が設けられている。したがって、測定対象が直流起電力を発生させないものであるときには、コンデンサC4を設けることなく、演算増幅器OP2の出力端子をソース端子Hcに直接接続する構成を採用することもできる。
【0052】
同期検波部SDU2は、異なる周波数f4,f5に一対一で対応して設けられた複数(本例では2つ)の同期検波回路SD4,SD5と、各同期検波回路SD4,SD5の後段にそれぞれ配置されたローパスフィルターLPF4,LPF5とを備えて構成されている。ここで、同期検波回路SD4およびローパスフィルターLPF4は、周波数f4に一対一で対応して設けられた同期検波回路として機能して、測定用交流電流源PMから出力交流電流Ioが供給されたときにソース端子Hcに発生する交流電圧Vd3をその検出電圧Vd3の周波数と同じ周波数の同期信号Sf4で同期検波することにより、検出電圧Vd3の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧の電圧V4を出力する。具体的には、同期検波回路SD4は、一例として乗算器を用いて構成されて、検出電圧Vd3と交流電流源SS2から出力された同期信号Sf4とを互いに乗算することにより(言い換えれば、検出電圧Vd3を同期信号Sf4で同期検波することにより)、検出電圧Vd3を構成する交流電圧のうちの周波数f4の出力交流電流Ioに基づく交流電圧の電圧値(例えば、振幅)に応じて電圧値が変化する直流電圧を含む電圧V4を出力する。また、ローパスフィルターLPF4は、低域通過型フィルタとして構成されて、同期検波回路SD4から出力される電圧V4を入力して、交流成分を除去して平滑化することにより、周波数f4の検出電圧Vd3の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧としての電圧V4を出力する。つまり、この同期検波回路(同期検波回路SD4およびローパスフィルターLPF4)は、出力交流電流Ioの周波数f4に対応する検出電圧Vd3の大きさを検出する。
【0053】
同期検波回路SD5およびローパスフィルターLPF5は、周波数f5に一対一で対応して設けられた同期検波回路として機能して、測定用交流電流源PMから出力交流電流Ioが供給されたときにソース端子Hcに発生する交流電圧Vd3をその検出電圧Vd3の周波数と同じ周波数の同期信号Sf5で同期検波することにより、検出電圧Vd3の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧の電圧V5を出力する。具体的には、同期検波回路SD5は、一例として乗算器を用いて構成されて、検出電圧Vd3と交流電流源SS2から出力された同期信号Sf5とを互いに乗算することにより(言い換えれば、検出電圧Vd3を同期信号Sf5で同期検波することにより)、検出電圧Vd3を構成する交流電圧のうちの周波数f5の出力交流電流Ioに基づく交流電圧の電圧値(例えば、振幅)に応じて電圧値が変化する直流電圧を含む電圧V5を出力する。また、ローパスフィルターLPF5は、低域通過型フィルタとして構成されて、同期検波回路SD5から出力される電圧V5を入力して、交流成分を除去して平滑化することにより、周波数f5の検出電圧Vd3の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧としての電圧V5を出力する。つまり、この同期検波回路(同期検波回路SD5およびローパスフィルターLPF5)は、出力交流電流Ioの周波数f5に対応する検出電圧Vd3の大きさを検出する。
【0054】
コンパレータCOM4は、コンパレータCOM1~COM3,COM5および処理部CONTと共に「処理部」を構成する。この場合、コンパレータCOM4は、一例として、演算増幅器で構成されて、予め規定された電圧の閾値電圧Vth4が処理部CONTによって反転入力端子に設定されており、ローパスフィルターLPF4から出力されて非反転入力端子に入力された電圧V4が閾値電圧Vth4の電圧値を超えたときに、ハイ(高電圧)の判定信号S4を出力する。この場合、電圧V4は、検出電圧Vd3に含まれる電圧のうちの、周波数f4の出力交流電流Ioに基づいてソース端子HcおよびグランドG2の間に生じる電圧(つまり、出力交流電流Ioの周波数f4に対応する交流電圧の大きさ)を検出したものであることから、その電圧値は、電池BATの内部抵抗Rx(抵抗値をRxとする)と、接触抵抗RHC(抵抗値をRHCとする)および接触抵抗RLC(抵抗値をRLCとする)との直列合成抵抗(RHC+Rx+RLC)に比例する値(∝RHC+Rx+RLC)となっている。また、接触抵抗(RHC+RLC)≫内部抵抗(Rx)のときには、電圧V4は、その電圧値が接触抵抗(RHC+RLC)の大きさを示す電圧となる。したがって、閾値電圧Vth4を接触抵抗(RHC+RLC)に許容される最大抵抗値に対応する電圧値に規定しておくことにより、コンパレータCOM4は、ソース端子HcおよびグランドG2の間の接触抵抗(RHP+RLP)が許容される最大抵抗値を超えるような大きい抵抗値であるとき(つまり、接触が不良のとき)には、ハイの判定信号S4を出力する。逆に、コンパレータCOM4は、接触抵抗(RHP+RLP)が許容される最大抵抗値以下の小さい抵抗値であるとき(つまり、接触が良好のとき)には、ロー(低電圧)の判定信号S4を出力する。
【0055】
コンパレータCOM5は、一例として、演算増幅器で構成されて、予め規定された電圧の閾値電圧Vth5が処理部CONTによって反転入力端子に設定されており、ローパスフィルターLPF5から出力されて非反転入力端子に入力された電圧V5が閾値電圧Vth5の電圧値を超えたときに、ハイ(高電圧)の判定信号S5を出力する。この場合、電圧V5は、検出電圧Vd3に含まれる電圧のうちの、周波数f5の出力交流電流Ioに基づいてソース端子HcおよびグランドG2の間に生じる電圧(つまり、出力交流電流Ioの周波数f5に対応する交流電圧の大きさ)を検出したものであることから、その電圧値は、電池BATの内部抵抗Rxと、接触抵抗RHCおよび接触抵抗RLCとの直列合成抵抗(RHC+Rx+RLC)に比例する値(∝RHC+Rx+RLC)となっている。また、接触抵抗(RHC+RLC)≫内部抵抗(Rx)のときには、電圧V5は、その電圧値が接触抵抗(RHC+RLC)の大きさを示す電圧となる。したがって、閾値電圧Vth5を接触抵抗(RHC+RLC)に許容される最大抵抗値に対応する電圧値に規定しておくことにより、コンパレータCOM5は、ソース端子HcおよびグランドG2の間の接触抵抗(RHP+RLP)が許容される最大抵抗値を超えるような大きい抵抗値であるとき(つまり、接触が不良のとき)には、ハイの判定信号S5を出力する。逆に、コンパレータCOM5は、接触抵抗(RHP+RLP)が許容される最大抵抗値以下の小さい抵抗値であるとき(つまり、接触が良好のとき)には、ロー(低電圧)の判定信号S5を出力する。なお、通常は、帰還抵抗R4の抵抗値R4≫接触抵抗(RHP+RLP)のため、抵抗値R4の存在に関しては無視した。また、接触抵抗(RHP+RLP)が許容される最大抵抗値を超えるような大きい抵抗値であるときには、接触抵抗(RHC+RLC)≫接地抵抗R5の抵抗値R5のため、抵抗値R5の存在に関しては無視した。
【0056】
測定部MUは、上記した接触抵抗測定装置1の構成に加えて、同期検波回路SDR、ローパスフィルターLPFRおよびA/DコンバータAD1を備えて構成されている。また、処理部CONTは、接触抵抗測定装置1における上記した機能に加えて、同期検波回路SD4に閾値電圧Vth4を出力すると共に同期検波回路SD5に閾値電圧Vth5を出力し、かつ、コンパレータCOM4,COM5から判定信号S4,S5を入力すると共にA/DコンバータAD1から後述する電圧信号SRを入力する。また、処理部CONTは、判定信号S1~S5に基づいて、判定対象接触箇所(本例では、ソース端子Hcとソース端子Lcとの間、およびセンス端子Hpとセンス端子Lpとの間)に対する良否判定処理を実行すると共に、電池BATの内部抵抗Rxを測定(演算)する測定部としても機能し、電圧信号SRに基づいて、測定対象としての電池BATの内部抵抗Rx(インピーダンスの一例)を測定する。
【0057】
同期検波回路SDRは、一例として乗算器を用いて構成されて、第1増幅器A1によって検出されてフィルターFIL1を介して出力された交流電圧の検出電圧Vd2と交流電流源SS2から出力された同期信号Sf4とを互いに乗算することにより(言い換えれば、フィルターFIL1から出力された検出電圧Vd2を同期信号Sf4で同期検波することにより)、検出電圧Vd2を構成する交流電圧のうちの周波数f4の出力交流電流Ioに基づく交流電圧の電圧値(例えば、振幅)に応じて電圧値が変化する直流電圧を含む電圧VRを出力する。また、ローパスフィルターLPFRは、低域通過型フィルタとして構成されて、同期検波回路SDRから出力される電圧VRを入力して、交流成分を除去して平滑化することにより、周波数f4の検出電圧Vd2の電圧値に応じて電圧値が変化する直流電圧としての電圧VRを出力する。つまり、この同期検波回路(同期検波回路SDRおよびローパスフィルターLPFR)は、出力交流電流Ioの周波数f4に対応する検出電圧Vd2の大きさを検出する。
【0058】
A/DコンバータAD1は、ローパスフィルターLPFRから出力された電圧VRをA/D変換して、電池BATの内部抵抗Rxの大きさに比例する電圧値を示す電圧信号SRを処理部CONTに出力する。
【0059】
出力部OUTは、上記した機能に加えて、ソース端子Hcとソース端子Lcとの間を判定対象接触箇所として、接触の良否を表示する。また、接触抵抗(RHC+RLC)や電池BATの内部抵抗Rxを表示するためのデータを含む表示用データSdを入力したときには、接触抵抗(RHP+RLP)や内部抵抗Rxの抵抗値を表示する。また、出力部OUTは、外部インターフェース回路で構成したときには、外部インターフェース回路を介して伝送路で接続された外部装置に判定対象接触箇所の接触の良否や、接触抵抗(RHC+RLC),(RHP+RLP)および内部抵抗Rxの抵抗値を出力し、また媒体用インターフェース回路で構成されたときには、この媒体用インターフェース回路に接続された記憶媒体に判定対象接触箇所の接触の良否や接触抵抗(RHC+RLC),(RHP+RLP)および内部抵抗Rxの抵抗値を記憶させる。
【0060】
次に、インピーダンス測定装置100の動作について説明する。なお、上記した接触抵抗測定装置1と同じ動作については、重複した説明を省略する。また、ソース端子Hcおよびソース端子Lcは、不図示の2本の測定ケーブルを介して電池BATの正極端子T1および負極端子T2にそれぞれ接続されており、センス端子Hpおよびセンス端子Lpは、不図示の2本の測定ケーブルを介して電池BATの正極端子T1および負極端子T2にそれぞれ接続されているものとする。また、ソース端子Hcおよび電池BATの正極端子T1の間の接触抵抗と測定ケーブルの配線抵抗とを接触抵抗RHCとし、ソース端子Lcおよび電池BATの負極端子T2の間の接触抵抗と測定ケーブルの配線抵抗とを接触抵抗RLCとする。また、測定ケーブルの配線抵抗については、小さな抵抗のため、本例の説明においては無視するものとする。
【0061】
インピーダンス測定の際には、処理部CONTが、開始信号を測定用交流電流源PMおよび交流電流源SS1に出力する、また、処理部CONTは、コンパレータCOM1~COM5に対応する閾値電圧Vth1~Vth5を出力する。この際には、測定用交流電流源PMは、出力交流電流Ioを出力することにより、ソース端子Hcと電池BATの正極端子T1との間、およびソース端子Lcと電池BATの負極端子T2との間の判定対象接触箇所を含む電流経路に周波数f4,f5の交流電流を合成した出力交流電流Ioの供給を開始する。この際には、出力交流電流Ioは、演算増幅器OP2の出力端子、コンデンサC4、ソース端子Hc、電池BAT、ソース端子Lc、接地抵抗R5およびグランドG2からなる電流経路を流れる。また、交流電流源SS2は、同期検波回路SD4,SDRに同期信号Sf4を出力すると共に同期検波回路SD5に同期信号Sf5を出力する。この結果、ソース端子Hcおよびソース端子Lcの間に出力交流電流Ioが供給されることにより、ソース端子Hcと電池BATの正極端子T1との間、および電池BATの負極端子T2とソース端子Lcとの間の判定対象接触箇所に周波数f4,f5の出力交流電流Ioが流れることに起因する交流電圧が発生する。この場合、発生した交流電圧は、検出電圧Vd3として、コンデンサC3を介して同期検波回路SD4,SD5に入力する。
【0062】
次いで、同期検波回路SD4は、入力した検出電圧Vd3を交流電流源SS2から出力された同期信号Sf4で同期検波して、検出電圧Vd3を構成する交流電圧のうちの周波数f4の出力交流電流Ioに基づく交流電圧の電圧値(例えば、振幅)に応じて電圧値が変化する電圧V4を出力する。この後、ローパスフィルターLPF4は、同期検波回路SD4から出力される電圧V4を入力して、交流成分を除去して平滑化することにより、直流電圧の電圧V4をコンパレータCOM4の非反転端子に出力する。また、同期検波回路SD5は、入力した検出電圧Vd3を交流電流源SS2から出力された同期信号Sf5で同期検波して、検出電圧Vd3を構成する交流電圧のうちの周波数f5の出力交流電流Ioに基づく交流電圧の電圧値(例えば、振幅)に応じて電圧値が変化する電圧V5を出力する。この後、ローパスフィルターLPF5は、同期検波回路SD4から出力される電圧V5を入力して、交流成分を除去して平滑化することにより、直流電圧の電圧V2をコンパレータCOM5の非反転端子に出力する。
【0063】
次いで、コンパレータCOM4は、良否判定処理の一部として、非反転端子に入力した電圧V4と、反転端子に入力されている閾値電圧Vth4とを比較することにより、電圧V4が閾値電圧Vth4の電圧値を超えたときに、ハイ(高電圧)の判定信号S4を出力し、電圧V4が閾値電圧Vth4の電圧値以下のときに、ロー(低電圧)の判定信号S4を処理部CONTに出力する。同様にして、コンパレータCOM5は、良否判定処理の一部として、非反転端子に入力した電圧V5と、反転端子に入力されている閾値電圧Vth5とを比較することにより、電圧V5が閾値電圧Vth5の電圧値を超えたときに、ハイ(高電圧)の判定信号S5を出力し、電圧V5が閾値電圧Vth5の電圧値以下のときに、ロー(低電圧)の判定信号S5を処理部CONTに出力する。
【0064】
次に、処理部CONTは、入力した判定信号S1~S3に基づく上記した良否判定用処理を実行する。具体的には、処理部CONTは、コンパレータCOM1~COM3による電圧V1~V3と閾値電圧Vth1~Vth3との比較(良否判定処理における一部の処理である判定処理)の結果に基づき、良否判定用処理として、センス端子Hpと電池BATの正極端子T1との間、およびソース端子Hcと電池BATの負極端子T2との間の判定対象接触箇所の接触抵抗の良否を最終的に判定する。
【0065】
また、処理部CONTは、入力した判定信号S4,S5に基づいて、異なる周波数f4,f5毎に良否判定用処理を実行する。具体的には、コンパレータCOM4,COM5による電圧V4,V5と閾値電圧Vth4,Vth5との比較(良否判定処理における一部の処理である判定処理)の結果に基づき、良否判定用処理として、ソース端子Hcと電池BATの正極端子T1との間、およびソース端子Lcと電池BATの負極端子T2との間の判定対象接触箇所の接触抵抗の良否を最終的に判定する。より具体的には、処理部CONTは、良否判定用処理として、異なる周波数f4,f5毎に実行したコンパレータCOM4,COM5によって実行された複数回(この例では2回)の判定処理の半数を超える回数(この例では、すべての回数でもある2回)において判定対象接触箇所の接触抵抗が予め規定された抵抗値(閾値電圧Vth4,Vth5に対応する抵抗値)以下の小さい抵抗値(つまり、良好と判定したとき)のときに、判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に良好と判定し、コンパレータCOM4,COM5による複数回(この例では2回)の判定処理の半数以下(この例では1回以下)において判定対象接触箇所の接触抵抗が予め規定された抵抗値(閾値電圧Vth4,Vth5に対応する抵抗値)以下の小さい抵抗値のときに、判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に不良と判定する。このように良否判定用処理を実行することにより、接触抵抗測定装置1の周囲の環境において複数の周波数(例えば、周波数f5)と同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生しているときであっても、他の周波数(この例では、周波数f4)によるコンタクトチェックに影響が出ないため、インピーダンス測定装置100(処理部CONT)は、コンタクトチェックを正確に行うことができる。
【0066】
この後、処理部CONTは、良否判定用処理の最終的な判定結果を表示用データSdとして出力部OUTに出力する。次いで、出力部OUTは、表示用データSdに基づき、判定対象接触箇所の接触抵抗(RHC+RLC,RHP+RLP)が許容される最大抵抗値よりも小さい抵抗値であるか否か、つまり判定対象接触箇所の接触抵抗の良否を表示する。
【0067】
なお、処理部CONTが、コンパレータCOM1~COM3による複数回(この例では3回)、およびコンパレータCOM4,COM5による複数回(この例では2回)の判定処理の判定結果のみを表示用データSdに含めて出力部OUTに出力する構成を採用することもできる。この構成を採用した場合には、測定者が、判定処理の判定結果に基づいて判定することになる。
【0068】
次に、判定対象接触箇所の接触抵抗の抵抗値が良好であったときには、処理部CONTは、電池BATの内部抵抗Rxのインピーダンス測定処理を自動的に実行する。この場合、出力交流電流Ioが電池BATの内部を流れることに起因する交流電圧が発生する。この際に、発生した交流電圧は、検出電圧Vd2として、コンデンサC2を介して演算増幅器OP1の非反転入力端子に入力する。次いで、第1増幅器A1が、入力した検出電圧Vd2を規定の増幅率で増幅してフィルターFIL1に出力する。次いで、フィルターFIL1は、第1増幅器A1から出力される検出電圧Vd2を入力すると共に、この検出電圧Vd2に含まれている通過帯域外の周波数成分(ノイズ成分)を除去しつつ、検出電圧Vd2に含まれている周波数f1,f2,f3,f4の周波数成分である交流電圧を検出電圧Vd2として通過させる。この後、フィルターFIL1を通過した周波数f1,f2,f3,f4の周波数成分である検出電圧Vd2は、同期検波回路SD1~SD3,SDRに入力される。
【0069】
この際に、同期検波回路SDRは、入力した検出電圧Vd2を交流電流源SS2から出力された同期信号Sf4で同期検波して、検出電圧Vd2を構成する交流電圧のうちの周波数f4の出力交流電流Ioに基づく交流電圧の電圧値(例えば、振幅)に応じて電圧値が変化する電圧VRを出力する。この後、ローパスフィルターLPFRは、同期検波回路SDRから出力される電圧VRを入力して、交流成分を除去して平滑化することにより、直流電圧の電圧VRをA/DコンバータAD1に出力する。次いで、A/DコンバータAD1は、ローパスフィルターLPFRから出力された電圧VRをA/D変換して電圧信号SRを処理部CONTに出力する。この場合、電圧VRは、検出電圧Vd2に含まれる電圧のうちの、周波数f4の出力交流電流Ioに基づいてセンス端子Hpおよびセンス端子Lpの間に生じる電圧(つまり、出力交流電流Ioの周波数f4に対応する交流電圧の大きさ)を検出したものであることから、その電圧値は、電池BATの内部抵抗Rxに比例する値(∝Rx)となっている。したがって、電圧信号SRは、電池BATの内部抵抗Rxに比例する値を示す測定値となっている。
【0070】
次いで、処理部CONTは、電圧信号SRで示される測定値を出力交流電流Ioの既知の電流値で除算して電池BATの内部抵抗Rxを算出する。この後、処理部CONTは、表示用データSdを出力することにより、電池BATの内部抵抗Rxを出力部OUTに表示させる。
【0071】
このように、このインピーダンス測定装置100によれば、接触抵抗測定装置1と同様にして、処理部CONTが、周波数f1,f2,f3毎に良否判定用処理を実行すると共に周波数f4,f5毎に良否判定用処理を実行する。これにより、インピーダンス測定装置100の周囲の環境において1つまたは複数の周波数(例えば、周波数f1,f5)と同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生しているときであっても、他の周波数(この例では、周波数f2,f3,f4)によるコンタクトチェックに影響が出ないため、インピーダンス測定装置100(処理部CONT)は、コンタクトチェックを正確に行うことができる結果、インピーダンス測定の信頼性を十分に高めることができる。
【0072】
また、このインピーダンス測定装置100によれば、異なる周波数と同数の同期検波回路(同期検波回路SD1~SD3およびローパスフィルターLPF1~LPF3)を用いているため、接触抵抗測定装置1と同様にして、処理部CONTによる異なる周波数毎の良否判定用処理を極めて迅速に実行することができ、その結果として、インピーダンスの測定時間を十分に短縮することができる。
【0073】
また、このインピーダンス測定装置100によれば、交流電流源SS2は、第1交流電流源としても機能し、測定用交流電流としての出力交流電流Ioを周波数f4,f5が異なる複数の接触判定用交流電流としての出力交流電流Ioのうちの1つとして、ソース端子Hcと測定対象としての電池BATの一端である正極端子T1および他端である負極端子T2との各接触箇所を含む電流経路に供給する。したがって、このインピーダンス測定装置100によれば、第2交流電流源が接触判定用交流電流を供給する第1交流電流源としての機能を兼用するため、第1交流電流源を2つ設ける必要がなくなる結果、インピーダンス測定装置100を簡易に構成できると共に安価に構成することができる。
【0074】
また、このインピーダンス測定装置100によれば、処理部CONTが、判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に良好と判定したときに、測定部(測定部MUおよび処理部CONT)によって測定された電池BATの内部抵抗Rxを出力部OUTに出力する。したがって、このインピーダンス測定装置によれば、インピーダンス測定の信頼性を十分に高めることができる。
【0075】
続いて、他のインピーダンス測定装置としてのインピーダンス測定装置100Aについて、
図3を参照して説明する。なお、インピーダンス測定装置100と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0076】
インピーダンス測定装置100Aは、インピーダンス測定装置100における同期検波部SDU2に代えて、同期検波部SDU3を備えて構成されると共に、コンパレータCOM5の配設を省略している。この場合、同期検波部SDU3は、スイッチSW1、同期検波回路SD4およびローパスフィルターLPF4を備えて構成されている。また、このインピーダンス測定装置100Aでは、処理部CONTが、スイッチSW1の切替制御と、スイッチSW1の切替制御と連動してコンパレータCOM4に対する閾値電圧Vth4,Vth5の出力切替制御とを順次実行する。
【0077】
スイッチSW1は、COM(コモン)接点、a接点およびb接点を備えて構成され、処理部CONTの切替制御に従い、COM接点とa接点との接続、およびCOM接点とb接点との接続をいずれか一方に切り替える。この場合、交流電流源SS2からの同期信号Sf4がa接点に入力されると共に交流電流源SS2からの同期信号Sf5がb接点に入力される。また、スイッチSW1のCOM接点は、同期検波回路SD4の同期信号の入力部に接続されている。したがって、スイッチSW1は、処理部CONTの切替制御に従い、同期検波回路SD4に対して同期信号Sf4および同期信号Sf5のいずれか一方を出力する。
【0078】
また、コンパレータCOM4は、検出電圧Vd3を検出電圧Vd3の異なる周波数f4,f5とそれぞれ同じ周波数f4,f5の同期信号Sf4,Sf5で順次同期検波することにより、異なる周波数f4,f5に対応する検出電圧Vd3の電圧値に応じて電圧値がそれぞれ変化する直流電圧の電圧V4,V5を順次出力する。具体的には、コンパレータCOM4は、処理部CONTから閾値電圧Vth4が反転端子に出力された際には、ローパスフィルターLPF4から出力されて非反転入力端子に入力された電圧V4が閾値電圧Vth4の電圧値を超えたときに、ハイ(高電圧)の判定信号S4を出力する。一方、処理部CONTから閾値電圧Vth5が反転端子に出力された際には、ローパスフィルターLPF4から出力されて非反転入力端子に入力された電圧V5が閾値電圧Vth5の電圧値を超えたときに、ハイ(高電圧)の判定信号S4を出力する。
【0079】
次に、インピーダンス測定装置100Aの動作について説明する。なお、上記した接触抵抗測定装置1およびインピーダンス測定装置100と同じ動作については、重複した説明を省略する。
【0080】
このインピーダンス測定装置100Aでは、判定対象接触箇所についての良否判定用処理を実行する際に、処理部CONTは、スイッチSW1に対して切替制御を実行すると共に、この切替制御と連動してコンパレータCOM4に対する閾値電圧Vth4,Vth5の出力切替制御を実行する。具体的には、処理部CONTは、スイッチSW1に対してCOM接点とa接点とを接続する接続制御(以下、「接続制御A」ともいう」)を実行するときには、コンパレータCOM4に対して閾値電圧Vth4を出力する。この場合、交流電流源SS2から出力された同期信号Sf4が、スイッチSW1のa接点およびCOM接点を介して、同期検波回路SD4に出力される。この際には、同期検波回路SD4は、入力した検出電圧Vd3を同期信号Sf4で同期検波して、検出電圧Vd3を構成する交流電圧のうちの周波数f4の出力交流電流Ioに基づく交流電圧の電圧値(例えば、振幅)に応じて電圧値が変化する電圧V4を出力する。この後、ローパスフィルターLPF4は、同期検波回路SD4から出力される電圧V4を入力して、交流成分を除去して平滑化することにより、直流電圧の電圧V4をコンパレータCOM4の非反転端子に出力する。次いで、コンパレータCOM4は、良否判定処理の一部として、非反転端子に入力した電圧V4と、反転端子に入力されている閾値電圧Vth4とを比較することにより、電圧V4が閾値電圧Vth4の電圧値を超えたときに、ハイ(高電圧)の判定信号S4を出力し、電圧V4が閾値電圧Vth4の電圧値以下のときに、ロー(低電圧)の判定信号S4を処理部CONTに出力する。
【0081】
一方、処理部CONTは、スイッチSW1に対してCOM接点とb接点とを接続する接続制御(以下、「接続制御B」ともいう」)を接続制御Aの実行後に順次実行するときには、コンパレータCOM4に対して閾値電圧Vth5を出力する。この場合、交流電流源SS2から出力された同期信号Sf5は、スイッチSW1のb接点およびCOM接点を介して、同期検波回路SD4に出力される。この際には、同期検波回路SD4は、入力した検出電圧Vd3を同期信号Sf5で同期検波して、検出電圧Vd3を構成する交流電圧のうちの周波数f5の出力交流電流Ioに基づく交流電圧の電圧値(例えば、振幅)に応じて電圧値が変化する電圧V5を出力する。この後、ローパスフィルターLPF4は、同期検波回路SD4から出力される電圧V5を入力して、交流成分を除去して平滑化することにより、直流電圧の電圧V5をコンパレータCOM4の非反転端子に出力する。次いで、コンパレータCOM4は、良否判定処理の一部として、非反転端子に入力した電圧V4と、反転端子に入力されている閾値電圧Vth5とを比較することにより、電圧V5が閾値電圧Vth5の電圧値を超えたときに、ハイ(高電圧)の判定信号S5を出力し、電圧V5が閾値電圧Vth5の電圧値以下のときに、ロー(低電圧)の判定信号S4を処理部CONTに出力する。
【0082】
次いで、処理部CONTは、入力した判定信号S4,S5に基づいて、異なる周波数f4,f5毎に良否判定用処理を実行する。具体的には、処理部CONTは、接続制御Aを実行したときのコンパレータCOM4による電圧V4と閾値電圧Vth4との比較(良否判定処理における一部の処理である判定処理)の結果と、接続制御Bを実行したときのコンパレータCOM4による電圧V5と閾値電圧Vth5との比較(良否判定処理における一部の処理である判定処理)の結果とに基づき、上記したインピーダンス測定装置100による良否判定用処理と同様にして、良否判定用処理として、ソース端子Hcと電池BATの正極端子T1との間、およびソース端子Lcと電池BATの負極端子T2との間の判定対象接触箇所の接触抵抗の良否を最終的に判定する。
【0083】
この後、処理部CONTは、良否判定用処理の最終的な判定結果を表示用データSdとして出力部OUTに出力する。次いで、出力部OUTは、表示用データSdに基づき、判定対象接触箇所の接触抵抗(RHC+RLC,RHP+RLP)が許容される最大抵抗値よりも小さい抵抗値であるか否か、つまり判定対象接触箇所の接触抵抗の良否を表示する。
【0084】
次に、判定対象接触箇所の接触抵抗の抵抗値が良好であったときには、処理部CONTは、インピーダンス測定装置100と同様にして、電池BATの内部抵抗Rxのインピーダンス測定処理、および表示用データSdを出力部OUTに出力する出力制御を実行する。
【0085】
このように、このインピーダンス測定装置100Aによれば、インピーダンス測定装置100と同様にして、処理部CONTが、周波数f1,f2,3毎に良否判定用処理を実行すると共に周波数f4,f5毎に良否判定用処理を実行する。これにより、インピーダンス測定装置100Aの周囲の環境において1つまたは複数の周波数(例えば、周波数f1,f5)と同じかまたは近傍の周波数のノイズが発生しているときであっても、他の周波数(この例では、周波数f2,f3,f4)によるコンタクトチェックに影響が出ないため、インピーダンス測定装置100A(処理部CONT)は、コンタクトチェックを正確に行うことができる結果、インピーダンス測定の信頼性を十分に高めることができる。
【0086】
また、このインピーダンス測定装置100A(接触抵抗測定装置1)では、1つのスイッチSW1と、同期検波回路SD4およびLPFで構成される1つの同期検波回路とを用いて同期検波部SD3を構成して、同期検波部SD3が、検出電圧Vd3を検出電圧Vd3の異なる周波数f4,f5とそれぞれ同じ周波数の同期信号Sf4,Sf5で順次同期検波することにより、異なる周波数f4,f5に対応する検出電圧Vd3の電圧値に応じて電圧値がそれぞれ変化する電圧V4,V5を順次出力し、処理部CONTが、異なる周波数f4,f5毎に良否判定用処理を実行する。したがって、このインピーダンス測定装置100Aによれば、異なる周波数f4,f5に一対一で対応して設けられた複数の同期検波回路を備えて同期検波部を構成するのと比較して、同期検波部SDU3を簡易に構成できると共に安価に構成することができる。
【0087】
なお、インピーダンス測定装置100,100Aにおいて、交流電流源SS2は異なる周波数f4,f5の出力交流電流Ioを合成して出力しているが、この構成に限らず、処理部CONTの切替制御に従い、スイッチSW1の切替制御に同期して、周波数f4の出力交流電流Ioおよび周波数f5の出力交流電流Ioを合成することなく順次出力する構成を採用することができる。また、インピーダンス測定装置100,100Aにおいて、測定用交流電流および接触判定用交流電流を兼用する周波数f4の出力交流電流Ioを出力する交流電流源SS2を例に挙げて説明したが、接触判定用交流電流の周波数と、測定用交流電流の周波数とを互いに異なる周波数とすることもできる。ただし、測定用交流電流および接触判定用交流電流を兼用させた構成によれば、交流電流源SS2(第1交流信号電源および第2交流信号電源)をより簡易かつ安価に構成することができる。
【0088】
また、インピーダンス測定装置100,100Aでは、ソース端子Hc,Lcと電池BATの正極端子T1および負極端子T2との各接触箇所を含む電流経路、並びにセンス端子Hp,Lpと電池BATの正極端子T1および負極端子T2との各接触箇所を含む電流経路の双方を判定対象接触箇所としているが、これに限定されない。インピーダンス測定装置として、コンタクトチェックの精度は低下するものの、どちらか一方の電流経路における各接触箇所を判定対象接触箇所として良否判定用処理を実行する構成を採用することもできる。
【0089】
また、良否判定用処理として、処理部CONTが、3回の判定処理の半数を超える回数において良好と判定したときに、その判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に良好と判定する例や、判定処理のすべてにおいて不良と判定したときに、その判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に不良と判定する例について説明したが、これに限らない。コンタクトチェックの精度は低下するものの、例えば、偶数回の良否判定用処理を実行するときには、偶数回の判定処理の半数以上の回数において良好と判定したときに、処理部CONTが、その判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に良好と判定しても良い。また、複数回の判定処理のうちの予め規定した1回以上の回数において良好と判定したときに、処理部CONTが、その判定対象接触箇所の接触抵抗を最終的に良好と判定しても良い。このように判定することにより、接触抵抗測定装置1の周囲の環境において広い周波数領域においてノイズが発生しているときであっても、コンタクトチェックが可能となる。
【0090】
また、接触抵抗測定装置については、インピーダンス測定装置への適用に限られない。例えば、端子やプローブなどで接触対象を接触させる際の判定対象接触箇所についての良否判定処理を必要とする電流計、電圧計、電力計および抵抗計などの計測装置や、電流の供給や電圧の印加を行う電力装置などに広く接触抵抗測定装置を適用することができる。また、インピーダンス測定装置についても、測定対象は電池BATに限らず、内部抵抗Rxを有するすべてを測定対象とすることができる。
【0091】
また、フィルターFIL1、同期検波部SDU1,SUD2,SUD3、コンパレータCOM1~COM5、ローパスフィルターLPFRおよびA/DコンバータAD1を処理部CONTとは別体に構成した例について説明したが、処理部CONTが、これらの構成要素の一部または全部の機能をディジタル処理で実行することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本願発明によれば、判定対象接触箇所についての良否判定用処理を実行する処理部を備えている接触抵抗測定装置において、周波数が異なる複数の接触判定用交流電流を判定対象接触箇所を含む電流経路に供給して、処理部が異なる周波数毎に良否判定用処理を実行することにより、コンタクトチェックを正確に行うことができる。また、そのような接触抵抗測定装置を備えたインピーダンス測定装置は、インピーダンス測定の信頼性を十分に高めることができる。これにより、本願発明は、このような接触抵抗測定装置や、インピーダンス測定を行うインピーダンス測定装置などに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 接触抵抗測定装置
100,100A インピーダンス測定装置
A1 第1増幅器
A2 第2増幅器
AD1 A/D変換回路
BAT 電池
COM1~COM5 コンパレータ
CONT 処理部
FIL1 フィルター
Hc,Lc ソース端子
Hp,Lp センス端子
Ij 判定用電流
Io 出力交流電流
LPF1~LPF5,LPFR ローパスフィルター
OUT 出力部
RHC,RLC,RHP,RLP 接触抵抗
Rx 内部抵抗
S1~S5 判定信号
SD1~SD5 同期検波回路
Sf1~Sf5 同期信号
SS1,SS2 交流電流源
V1~V5 電圧
Vd1~Vd3 検出電圧
Vth1~Vth5 閾値電圧
T1 正極端子
T2 負極端子