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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162552
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ロータリ圧縮機および冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/12 20060101AFI20231101BHJP
   F04C 18/356 20060101ALI20231101BHJP
   F04C 18/344 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
F04C29/12 D
F04C29/12 C
F04C18/356 L
F04C18/344 351P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072947
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】外島 隆造
(72)【発明者】
【氏名】片山 達也
(72)【発明者】
【氏名】上野 広道
(72)【発明者】
【氏名】吉良 ありさ
【テーマコード(参考)】
3H040
3H129
【Fターム(参考)】
3H040AA09
3H040BB01
3H040CC18
3H040CC19
3H040DD22
3H040DD39
3H129AA04
3H129AA09
3H129AA13
3H129AB03
3H129AB11
3H129BB09
3H129BB38
3H129CC24
3H129CC26
(57)【要約】
【課題】複数の圧縮部を備えるロータリ圧縮機において、アキュムレータから各圧縮部に流入する液冷媒の偏在を抑制する。
【解決手段】アキュムレータ(70)の出口管(73)には、吸入管(40)に接続する接続部(80)が設けられる。接続部(80)は、下方に延びる主流路(81)と、その流入口(85)が主流路(81)に連通し、その流出口(86)が吸入管(40)に連通する複数の分流路(83,84)と、主流路(81)の下に形成され、該主流路(81)を通過した液冷媒が衝突して該液冷媒を分流路(83,84)のそれぞれへ分流させる分岐部(87)とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(11)と、
前記ケーシング(11)に収容され、吸入管(40)から吸入された冷媒を圧縮する複数の圧縮部(50a,50b)と、
前記圧縮部(50a,50b)に吸入される前記冷媒を気液分離するアキュムレータ(70)とを備え、
前記アキュムレータ(70)は、前記ケーシング(11)へ液冷媒を戻す液戻し穴(75)が形成される1つの出口管(73)を有し、
前記出口管(73)には、該出口管(73)を前記吸入管(40)に接続する接続部(80)が設けられ、
前記接続部(80)は、
前記アキュムレータ(70)から流出した前記冷媒が流入するとともに下方に延びる主流路(81)と、
その流入口(85)が前記主流路(81)に連通し、その流出口(86)が前記吸入管(40)に連通する複数の分流路(83,84)と、
前記主流路(81)の下に形成され、該主流路(81)を通過した前記液冷媒が衝突して該液冷媒を前記分流路(83,84)のそれぞれへ分流させる分岐部(87)とを有する
ロータリ圧縮機。
【請求項2】
前記分流路(83,84)の前記流入口(85,85)は、水平方向に並ぶ
請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】
前記分流路(83,84)の前記流入口(85,85)は、上を向く
請求項2に記載のロータリ圧縮機。
【請求項4】
前記分流路(83,84)の前記流入口(85,85)は、前記主流路(81)の軸心(C)を挟んで配置される
請求項1~3のいずれか1つに記載のロータリ圧縮機。
【請求項5】
前記接続部(80)は、前記出口管(73)と一体に形成される
請求項1~3のいずれか1つに記載のロータリ圧縮機。
【請求項6】
前記接続部(80)は、前記出口管(73)とは別体の部材によって構成される
請求項1~3のいずれか1つに記載のロータリ圧縮機。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1つのロータリ圧縮機(10)と、
前記ロータリ圧縮機(10)で圧縮された前記冷媒が流れる冷媒回路(1a)とを備える
冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータリ圧縮機および冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの圧縮部を有するロータリ圧縮機が記載されている。このロータリ圧縮機には、アキュムレータが隣接して配置されている。アキュムレータは、端部が二股に分岐した出口管を有する。出口管の分岐端部のそれぞれは、各圧縮部に吸入管を介して接続されている。各圧縮部には、アキュムレータから出口管および吸入管を通じて、ガス冷媒および液冷媒が送り込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-97474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の出口管における分岐端部のそれぞれは、上下方向に並んで形成されている。そのため、出口管を通過する液冷媒は、重力により、上側の分岐端部よりも下側の分岐端部に多く流入し、各圧縮部に流入する液冷媒の量に偏りが生じてしまう。このように液冷媒の流入量に偏りが生じると、多くの液冷媒が流入した下側の圧縮部では、液冷媒を圧縮してしまい、ロータリ圧縮機が故障するおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、複数の圧縮部を備えるロータリ圧縮機において、アキュムレータから各圧縮部に流入する液冷媒の偏在を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、ケーシング(11)と、前記ケーシング(11)に収容され、吸入管(40)から吸入された冷媒を圧縮する複数の圧縮部(50a,50b)と、前記圧縮部(50a,50b)に吸入される前記冷媒を気液分離するアキュムレータ(70)とを備え、前記アキュムレータ(70)は、前記ケーシング(11)へ液冷媒を戻す液戻し穴(75)が形成される1つの出口管(73)を有し、前記出口管(73)には、該出口管(73)を前記吸入管(40)に接続する接続部(80)が設けられ、前記接続部(80)は、前記アキュムレータ(70)から流出した前記冷媒が流入するとともに下方に延びる主流路(81)と、その流入口(85)が前記主流路(81)に連通し、その流出口(86)が前記吸入管(40)に連通する複数の分流路(83,84)と、前記主流路(81)の下に形成され、該主流路(81)を通過した前記液冷媒が衝突して該液冷媒を前記分流路(83,84)のそれぞれへ分流させる分岐部(87)とを有するロータリ圧縮機である。
【0007】
第1の態様では、接続部(80)は、主流路(81)の下に形成された分岐部(87)を有する。これにより、主流路(81)を通過した液冷媒が分岐部(87)に衝突して均等に各分流路(83,84)に分けられる。その結果、アキュムレータから各圧縮部(50a,50b)に流入する液冷媒の偏在を抑制できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記分流路(83,84)の前記流入口(85,85)は、水平方向に並ぶ。
【0009】
第2の態様では、分流路(83,84)の流入口(85,85)が水平方向に並ぶことにより、主流路(81)を通過した液冷媒を各分流路(83,84)に均等に分けることができる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、前記分流路(83,84)の前記流入口(85,85)は、上を向く。
【0011】
第3の態様では、分流路(83,84)の流入口(85,85)が上を向くことにより、主流路(81)を通過した液冷媒が各分流路(83,84)に流入し易くできる。
【0012】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記分流路(83,84)の前記流入口(85,85)は、前記主流路(81)の軸心(C)を挟んで配置される。
【0013】
第4の態様では、分流路(83,84)の流入口(85,85)が主流路(81)の軸心(C)を挟んで配置されることにより、主流路(81)を通過した液冷媒を各分流路(83,84)へ均等に分けることができる。
【0014】
第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記接続部(80)は、前記出口管(73)と一体に形成される。
【0015】
第5の態様では、接続部(80)が出口管(73)と一体に形成されることにより、ロータリ圧縮機(10)を構成する部品の数を削減できる。これにより、ロータリ圧縮機(10)のコストを低減できる。
【0016】
第6の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記接続部(80)は、前記出口管(73)とは別体の部材によって構成される。
【0017】
第6の態様では、接続部(80)を出口管(73)とは別体の部材によって構成することにより、接続部(80)および出口管(73)を互いに異なる材質で構成することができる。これにより、接続部(80)および出口管(73)のそれぞれをより安価な材料を採用でき、ロータリ圧縮機(10)のコストを低減できる。
【0018】
第7の態様は、第1~第6のいずれか1つの態様のロータリ圧縮機(10)と、前記ロータリ圧縮機(10)で圧縮された前記冷媒が流れる冷媒回路(1a)とを備える冷凍装置である。
【0019】
第7の態様では、アキュムレータ(70)から各圧縮部(50a,50b)に流入する液冷媒の偏在を抑制できるロータリ圧縮機(10)を備えるので、故障しにくい冷凍装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態に係る冷凍装置の概略の配管系統図である。
図2図2は、ロータリ圧縮機の構成を示す縦断面図である。
図3図3は、出口管の接続部の周辺を拡大して示す縦断面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線矢視断面図である。
図5図5は、変形例2の図3に相当する図である。
図6図6は、参考例の図3に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0022】
《実施形態》
(1)冷凍装置の概要
図1に示すように、ロータリ圧縮機(10)は、冷凍装置(1)に設けられる。冷凍装置(1)は、冷媒が充填された冷媒回路(1a)を有する。冷媒回路(1a)は、ロータリ圧縮機(10)、放熱器(3)、減圧機構(4)、および蒸発器(5)を有する。減圧機構(4)は、膨張弁である。冷媒回路(1a)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。
【0023】
冷凍サイクルでは、ロータリ圧縮機(10)によって圧縮された冷媒が、放熱器(3)において空気に放熱する。放熱した冷媒は、減圧機構(4)によって減圧され、蒸発器(5)において蒸発する。蒸発した冷媒は、ロータリ圧縮機(10)に吸入される。
【0024】
冷凍装置(1)は、空気調和装置である。空気調和装置は、冷房専用機、暖房専用機、あるいは冷房と暖房とを切り換える空気調和装置であってもよい。この場合、空気調和装置は、冷媒の循環方向を切り換える切換機構(例えば四方切換弁)を有する。冷凍装置(1)は、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などであってもよい。冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する。
【0025】
(2)ロータリ圧縮機
ロータリ圧縮機(10)は、吸入した低圧のガス冷媒を圧縮し、高圧のガス冷媒を吐出する。図2に示すように、本実施形態のロータリ圧縮機(10)は、2気筒のロータリ圧縮機(10)である。ロータリ圧縮機(10)は、ケーシング(11)と、駆動機構(20)と、圧縮機構(50)と、アキュムレータ(70)とを備える。
【0026】
(2-1)ケーシング
ケーシング(11)は、縦長の円筒状の密閉容器で構成される。ケーシング(11)は、胴部(12)と、下部鏡板(13)と、上部鏡板(14)とを有している。胴部(12)は、上下方向(軸方向)に延びる円筒状に構成されている。胴部(12)は、上下方向の両端が開口している。下部鏡板(13)は、胴部(12)の下端に固定されている。上部鏡板(14)は、胴部(12)の上端に固定されている。
【0027】
胴部(12)の下部には、吸入管(40)が貫通して固定されている。上部鏡板(14)には、吐出管(16)が貫通して固定されている。
【0028】
ケーシング(11)の底部には、貯留部(18)が形成されている。貯留部(18)には、圧縮機構(50)及び後述する駆動軸(30)の摺動部を潤滑するための油(冷凍機油)が貯留される。貯留部(18)は、下部鏡板(13)及び胴部(12)の下部の内壁によって構成される。
【0029】
(2-2)駆動機構
駆動機構(20)は、ケーシング(11)内に収容される。駆動機構(20)は、圧縮機構(50)を駆動させる。駆動機構(20)は、電動機(21)および駆動軸(30)を有する。
【0030】
電動機(21)は、ケーシング(11)内の上部に配置される。電動機(21)は、圧縮機構(50)の上方に配置される。電動機(21)が通電されると、駆動軸(30)が回転駆動される。
【0031】
駆動軸(30)は、電動機(21)と圧縮機構(50)と連結する。駆動軸(30)は、ケーシング(11)の胴部(12)の軸心上に位置している。駆動軸(30)の下端には、給油ポンプ(30a)が取り付けられている。給油ポンプ(30a)は、貯留部(18)に貯留された油を搬送する。搬送された油は、駆動軸(30)の内部の油通路(30b)を通じて、圧縮機構(50)及び駆動軸(30)の摺動部へ供給される。
【0032】
駆動軸(30)は、1つの主軸部(31)と、2つの偏心部(32,32)とを有する。主軸部(31)の上部は、電動機(21)に固定される。各偏心部(32,32)は、主軸部(31)よりも大径の円柱状の部分である。各偏心部(32,32)は、主軸部(31)の回転中心から偏心している。各偏心部(32,32)の軸心は、主軸部(31)の軸心から所定量だけ偏心している。主軸部(31)の軸心に対するフロント側(上側)の偏心部(32)の偏心方向は、主軸部(31)の軸心に対するリア側(下側)の偏心部(32)の偏心方向と180°異なっている。
【0033】
駆動軸(30)におけるフロント側の偏心部(32)よりも上部の主軸部(31)は、後述するフロントヘッド(52)のフロント貫通口(52c)の内部に位置して回転可能に支持されている。駆動軸(30)におけるリア側の偏心部(32)よりも下部の主軸部(31)は、後述するリアヘッド(53)のリア貫通口(53c)の内部に位置して回転可能に支持されている。
【0034】
(2-3)圧縮機構
圧縮機構(50)は、ケーシング(11)内に収容される。圧縮機構(50)は、電動機(21)の下方に配置される。圧縮機構(50)は、複数の圧縮部(50a,50b)を含む。本実施形態の圧縮機構(50)は、1つのフロントヘッド(52)と、1つのリアヘッド(53)と、1つの中間プレート(58)と、2つの圧縮部(50a,50b)とを有する。各圧縮部(50a,50b)は、1つのシリンダ(51)と、1つのピストン(60)とを有する。2つの圧縮部(50a,50b)は、上下方向(軸方向)に間隔を空けて設けられる。2つの圧縮部(50a,50b)は、フロント側(上側)の第1圧縮部(50a)と、リア側(下側)の第2圧縮部(50b)とで構成される。
【0035】
圧縮機構(50)は、上から下へ向かって順に、フロントヘッド(52)と、フロント側のシリンダ(51)と、中間プレート(58)と、リア側のシリンダ(51)と、リアヘッド(53)とが、重なり合った状態で配置される。フロント側のシリンダ(51)、リア側のシリンダ(51)、フロントヘッド(52)、リアヘッド(53)、および中間プレート(58)は、締結部材(図示省略)を介して一体化されている。
【0036】
各シリンダ(51,51)は、偏心部(32,32)の外周を覆う筒状の部材である。各シリンダ(51,51)は、ケーシング(11)の胴部(12)における下部の内周面に固定されている。各シリンダ(51,51)は、扁平な略環状に形成されている。
【0037】
各シリンダ(51,51)の中央部には、円形状の圧縮室(55)が形成されている。各シリンダ(51,51)には、径方向に延びる吸入口(56)が形成されている。各吸入口(56,56)の流出端は、対応する圧縮室(55)と連通している。各吸入口(56,56)の流入端には、吸入管(40)が接続されている。各圧縮部(50a,50b)の圧縮室(55)では、吸入管(40)から吸入された冷媒が圧縮される。
【0038】
フロントヘッド(52)は、フロント側のシリンダ(51)の上端部に積層されている。フロントヘッド(52)は、フロント側のシリンダ(51)の内部空間を上方から覆うように配置されている。フロントヘッド(52)の中央部には、上下方向に貫通するフロント貫通口(52c)が形成されている。フロントヘッド(52)には、圧縮室(55)で圧縮されたガス冷媒を吐出するための吐出通路(図示省略)が形成される。吐出通路は、フロントヘッド(52)におけるシリンダ(51)に積層する偏平な環状部分を上下方向(軸方向)に貫通する。
【0039】
リアヘッド(53)は、リア側のシリンダ(51)の下端部に積層されている。リアヘッド(53)は、リア側のシリンダ(51)の内部空間を下方から覆うように配置されている。リアヘッド(53)の中央部には、上下方向(軸方向)に貫通するリア貫通口(53c)が形成されている。
【0040】
中間プレート(58)は、フロント側およびリア側のシリンダ(51)の間に挟み込まれるように配置される。中間プレート(58)は、フロント側のシリンダ(51)の内部空間を下方から覆うとともに、リア側のシリンダ(51)の内部空間を上方から覆う。中間プレート(58)は、円形の平板状の部材である。中間プレート(58)の中央部には、該中間プレート(58)を厚さ方向に貫通する貫通孔が形成される。貫通孔には、駆動軸(30)が挿通される。
【0041】
各ピストン(60,60)は、フロント側およびリア側のシリンダ(51,51)のそれぞれの内部に収容されている。シリンダ(51)とピストン(60)とによって、圧縮室(55)が形成されている。各ピストン(60,60)は、真円形の環状に形成されている。各ピストン(60,60)の内部には、対応する偏心部(32)が嵌め込まれている。圧縮室(55)の内部は、ブレード(図示省略)によって、低圧室と高圧室とに区画されている。本実施形態の圧縮機構(50)は、いわゆる揺動ピストン式の圧縮機構(50)である。
【0042】
(2-4)吸入管
吸入管(40)は、各シリンダ(51,51)の吸入口(56)に連通するとともに、対応する継手管(19)の内部に配置される。本実施形態のロータリ圧縮機(10)は、2つの吸入管(40,40)と、2つの継手管(19,19)を有する。
【0043】
各継手管(19,19)は、円筒状の部材である。各継手管(19,19)の一端は、ケーシング(11)の胴部(12)に形成された貫通孔(15)に挿通されて固定されている。ケーシング(11)の各貫通孔(15,15)は、対応する吸入口(56)に対向する位置に形成される。各継手管(19,19)は、ケーシング(11)の胴部(12)からアキュムレータ(70)側に向かって延びる。
【0044】
各吸入管(40,40)は、対応する継手管(19)の内部を通ってケーシング(11)の外に延びる。各吸入管(40,40)は、対応する圧縮部(50a,50b)の吸入口(56)と、後述するアキュムレータ(70)の出口管(73)とを繋ぐ。各吸入管(40,40)は、吸入管本体(41)と接続管部(42)とで構成される。
【0045】
吸入管本体(41)は、真っ直ぐな円筒状の部材である。吸入管本体(41)の流出側の端部は、対応する圧縮部(50a,50b)の吸入口(56)に接続される。吸入管本体(41)の流入側の端部は、接続管部(42)の流出側の端部に接続される。
【0046】
接続管部(42)は、円筒状の部材である。接続管部(42)の流入側の端部は、出口管(73)の下端に接続される。上側の接続管部(42)は、出口管(73)の下端から吸入管本体(41)に向かって屈曲している。下側の接続管部(42)は、出口管(73)の下端から下方に延びた後、吸入管本体(41)に向かって屈曲している。なお、吸入管(40)は、吸入管本体(41)と接続管部(42)とが一体に形成されてもよい。
【0047】
(2-5)アキュムレータ
アキュムレータ(70)は、ケーシング(11)の側方に隣接して配置される。アキュムレータ(70)は、圧縮機構(50)の上流側に設けられる。アキュムレータ(70)は、圧縮機構(50)に吸入される前の冷媒を一時的に貯留するとともに、ガス冷媒に含まれる液冷媒を気液分離する。アキュムレータ(70)は、密閉容器(71)と、入口管(72)と、出口管(73)とを1つずつ有する。
【0048】
密閉容器(71)は、縦長の円筒状の部材で構成されている。密閉容器(71)の内部には、ガス貯留部(71a)と液貯留部(71b)とが形成される、ガス貯留部(71a)は、密閉容器(71)の内部空間の上部に位置する。液貯留部(71b)は、密閉容器(71)の内部空間の下部あるいは底部に位置する。ガス貯留部(71a)には、密閉容器(71)内で分離されたガス冷媒が貯留される。液貯留部(71b)には、密閉容器(71)内で分離された液冷媒が貯留される。なお、液貯留部(71b)には、液冷媒に加えて、密閉容器(71)内に流入した冷凍機油が貯留されてもよい。
【0049】
入口管(72)は、密閉容器(71)の頂部を貫通する。入口管(72)は、密閉容器(71)に蒸発器(5)を通過した冷媒を流入させる。入口管(72)の下端部は、密閉容器(71)の内部空間における上部寄りの位置に開口している。
【0050】
出口管(73)は、密閉容器(71)の底部を貫通する。出口管(73)は、密閉容器(71)から冷媒を流出させる。出口管(73)は、銅で構成されている。出口管(73)は、本体部(74)と接続部(80)とを有する。
【0051】
本体部(74)は、密閉容器(71)内を上方に真っ直ぐに延びる管状の部分である。本体部(74)の上端部は、密閉容器(71)の内部空間における上部寄りの位置に開口している。本体部(74)の上端部は、ガス貯留部(71a)と連通する。本体部(74)の軸心は、密閉容器(71)の軸心と概ね一致する。本体部(74)の下端部は、密閉容器(71)の下端部と概ね同じ高さに位置する。
【0052】
本体部(74)の下部には、液戻し穴(75)が1つ形成されている。液戻し穴(75)は、密閉容器(71)内で分離された後の液冷媒をケーシング(11)に戻すための穴である。液戻し穴(75)は、液貯留部(71b)と連通する。液戻し穴(75)には、液貯留部(71b)の液冷媒が流れる。液戻し穴(75)の径は、本体部(74)の内径に比べて非常に小さい。本体部(74)の内部には、ガス貯留部(71a)に貯留されたガス冷媒と、液貯留部(71b)に貯留された液冷媒とが流れる。
【0053】
接続部(80)は、出口管(73)の下部に位置する円柱状の部分である。接続部(80)は、本体部(74)の下に連続して設けられる。接続部(80)は、本体部(74)と一体に形成されている。接続部(80)の外径は、本体部(74)の外径よりも大きい。
【0054】
図3に示すように、接続部(80)の内部には、冷媒流路が形成される。接続部(80)の冷媒流路は、主流路(81)と、複数(本実施形態では、2つ)の分流路(83,84)とを有する。本実施形態の接続部(80)の冷媒流路は、概ね逆Y字状に形成される。
【0055】
主流路(81)は、接続部(80)の上部に形成される。主流路(81)は、接続部(80)の内部を下方に延びる。本実施形態の主流路(81)は、概ね鉛直方向に延びる。主流路(81)の横断面は、円形状に形成される。主流路(81)における流入口の径は、本体部(74)の流入口の径と同じである。主流路(81)の流出口の径は、該主流路(81)の流入口の径よりも大きい。言い換えると、主流路(81)の径は、下方に向かうに従って大きくなる。主流路(81)の流入端は、本体部(74)の流出端に接続する。主流路(81)には、密閉容器(71)から流出したガス冷媒および液冷媒が流入する。
【0056】
各分流路(83,84)は、主流路(81)から分岐した流路である。各分流路(83,84)は、接続部(80)の下部に形成される。各分流路(83,84)は、接続部(80)の内部を下方に真っ直ぐに延びる。各分流路(83,84)は、概ね鉛直方向に延びる。各分流路(83,84)の横断面は、円形状に形成される。各分流路(83,84)の径は、一定である。各分流路(83,84)の径は、主流路(81)における流入端(上端)の径よりも小さい。
【0057】
2つの分流路(83,84)は、第1分流路(83)と第2分流路(84)とで構成される。第1分流路(83)は、ケーシング(11)寄りに位置する。第2分流路(84)は、第1分流路(83)よりもケーシング(11)から離れている。各分流路(83,84)の流入口(85,85)は、主流路(81)の流出端に接続し、主流路(81)に連通する。各分流路(83,84)の流出口(86,86)は、吸入管(40)における接続管部(42)の流入端に接続し、吸入管(40)に連通する。具体的には、第1分流路(83)の流出口(86)は、上側の接続管部(42)の流入端に接続する。第2分流路(84)の流出口(86)は、下側の接続管部(42)の流入端に接続する。
【0058】
図3および図4に示すように、各分流路(83,84)の流入口(85,85)は、水平方向に並んでいる。本実施形態では、各分流路(83,84)は水平方向に並んでいる。このように、各分流路(83,84)の流入口(85,85)が水平方向に並んでいることにより、主流路(81)を通過した液冷媒を、いずれかの分流路(83,84)に偏ることなく、各分流路(83,84)に概ね均等に分かれさせることができる。
【0059】
各分流路(83,84)の流入口(85,85)は、上を向いている。これにより、主流路(81)を通過した液冷媒を各分流路(83,84)へ流入させやすくできる。
【0060】
図4に示すように、各分流路(83,84)の流入口(85,85)は、主流路(81)の軸心(C)を挟んで左右両側に配置される。本実施形態の第1分流路(83)および第2分流路(84)の流入口(85,85)のそれぞれは、主流路(81)の軸心(C)を挟んで、対向して配置される。言い換えると、各分流路(83,84)の軸心(C1,C2)と主流路(81)の軸心(C)とが一直線上に並ぶ。ここで、主流路(81)の軸心(C)と第1分流路(83)の軸心(C1)との距離をL1とし、主流路(81)の軸心(C)と第2分流路(84)の軸心(C2)との距離をL2とする。このとき、本実施形態では、距離L1と距離L2とが等しい。
【0061】
接続部(80)は、1つの分岐部(87)を有する。図4に示すように、分岐部(87)は、接続部(80)の内部における各分流路(83,84)の流入口(85,85)の間に形成される。図3に示すように、分岐部(87)は、主流路(81)の直ぐ下に形成される。分岐部(87)は、主流路(81)を通過した液冷媒が落下して衝突することにより、該液冷媒を各分流路(83,84)のそれぞれへ分流させる。本実施形態の分岐部(87)は、中央部が下方に窪んだ凹面状に形成される。分岐部(87)の中心は、主流路(81)の軸心と一致する。このように、接続部(80)が分岐部(87)を有することにより、主流路(81)を通過した液冷媒が分岐部(87)に衝突して、各分流路(83,84)に概ね均等に分けることができる。
【0062】
図3に示すように、出口管(73)を正面からみたときに、液戻し穴(75)は、第1分流路(83)および第2分流路(84)のそれぞれの軸心(C1,C2)の中点を通る仮想直線A上に形成される。言い換えると、液戻し穴(75)は、該液戻し穴(75)と各分流路(83,84)との距離が互いに等しくなる位置に形成される。このため、液戻し穴(75)から流入した液冷媒が、いずれかの分流路(83,84)に偏ることなく、概ね均等に各分流路(83,84)に流入する。なお、本実施形態では、仮想直線Aは主流路(81)の軸心と概ね一致する。
【0063】
ここで、複数の分流路のうちいずれかの分流路に液冷媒が多く流入し、液冷媒の流入量に偏りが生じた場合、他の分流路に比べて液冷媒の流入量が多い分流路では、該分流路を流れるガス冷媒の割合が他の分流路に比べて小さい。そのため、液冷媒の流入量が多い分流路では、他の分流路に比べてガス冷媒の流速が速くなり、分流路における圧力損失が大きくなってしまう。本実施形態の接続部(80)の構成では、各分流路(83,84)に流入する液冷媒の量を概ね均等にできるので、各分流路(83,84)におけるガス冷媒の流速を概ね等しくすることができる。これにより、特定の分流路(83,84)における圧力損失の上昇を抑制できる。
【0064】
また、本実施形態の出口管(73)は接続部(80)を有するので、複数の圧縮部(50a,50b)を有する圧縮機構(50)にアキュムレータ(70)を接続する場合においても、複数の出口管を用いる必要がない。そのため、アキュムレータ(70)のコストを低減でき、ロータリ圧縮機(10)のコストを低減できる。
【0065】
(3)ロータリ圧縮機の運転動作
各ピストン(60,60)は、駆動軸(30)の回転駆動に伴って、対応する圧縮室(55,55)内で偏心回転する。ピストン(60)の偏心回転に伴い低圧室の容積が徐々に大きくなると、吸入管(40)を流れる冷媒が吸入口(56)から低圧室へ吸入されていく。そして、低圧室が吸入口(56)から遮断されると、遮断された空間が高圧室を構成する。
【0066】
さらにピストン(60)が偏心回転すると、高圧室の容積が徐々に小さくなり、高圧室の内圧が上昇する。高圧室の内圧が所定の圧力を超えるとリード弁(図示省略)が開き、高圧室の冷媒が吐出通路を通じて、圧縮機構(50)の外部へ流出する。
【0067】
この高圧冷媒は、ケーシング(11)の内部空間を上方へ流れ、電動機(21)のコアカット(図示省略)等を通過する。電動機(21)の上方へ流出した高圧冷媒は、吐出管(16)より冷媒回路へ送られる。
【0068】
(4)特徴
(4-1)
出口管(73)には、該出口管(73)を吸入管(40)に接続する接続部(80)が設けられる。接続部(80)は、主流路(81)と複数の分流路(83,84)と分岐部(87)とを有する。主流路(81)は、アキュムレータ(70)から流出した冷媒が流入するとともに下方に延びる。各分流路(83,84)は、その流入口(85)が主流路(81)に連通し、その流出口(86)が吸入管(40)に連通する。分岐部(87)は、主流路(81)の下に形成され、該主流路(81)を通過した液冷媒が衝突して該液冷媒を分流路(83,84)のそれぞれへ分流させる。
【0069】
これにより、主流路(81)を通過した液冷媒は、分岐部(87)に衝突することで、均等に各分流路(83,84)に分かれる。その結果、アキュムレータ(70)から各圧縮部(50a,50b)に流入する液冷媒の偏在を抑制できる。
【0070】
(4-2)
複数の分流路(83,84)の流入口(85,85)は、互いに水平方向に並ぶ。これにより、主流路(81)を通過した液冷媒を各分流路(83,84)に均等に分けることができる。
【0071】
(4-3)
複数の分流路(83,84)における流入口(85,85)のそれぞれは、上を向く。これにより、主流路(81)を通過した液冷媒を各分流路(83,84)に流入し易くできる。
【0072】
(4-4)
複数の分流路(83,84)の流入口(85,85)は、主流路(81)の軸心(C)を挟んで互いに配置される。これにより、主流路(81)を通過した液冷媒を各分流路(83,84)に均等に分けることができる。
【0073】
(4-5)
接続部(80)は、出口管(73)と一体に形成される。これにより、ロータリ圧縮機(10)を構成する部品の数を削減できる。これにより、ロータリ圧縮機(10)のコストを低減できる。
【0074】
(4-6)
冷凍装置(1)は、接続部(80)を有する出口管(73)を備えるロータリ圧縮機(10)と、ロータリ圧縮機(10)で圧縮された前記冷媒が流れる冷媒回路(1a)とを備える。これにより、アキュムレータ(70)から各圧縮部(50a,50b)に流入する液冷媒の偏在を抑制できるロータリ圧縮機(10)を備えるので、故障しにくい冷凍装置を提供できる。
【0075】
(5)変形例
上記実施形態については以下のような変形例としてもよい。なお、以下の説明では、原則として上記実施形態と異なる点について説明する。
【0076】
(5-1)変形例1
接続部(80)は、出口管(73)とは別体の部材によって構成されてもよい。この場合、出口管(73)は、本体部(74)のみ有する。接続部(80)は、例えば鉄で構成される。接続部(80)は、出口管(73)の下に溶接やろう付けによって固定される。
【0077】
本変形例では、接続部(80)を出口管(73)とは別体の部材によって構成することにより、接続部(80)および出口管(73)を互いに異なる材質で構成することができる。これにより、接続部(80)および出口管(73)のそれぞれをより安価な材料を採用でき、ロータリ圧縮機(10)のコストを低減できる。
【0078】
(5-2)変形例2
図5に示すように、接続部(80)における各分流路(83,84)は、水平方向に延びてもよい。具体的には、接続部(80)の冷媒流路は、概ね逆T字状に形成される。主流路(81)の構成は、上記実施形態と同様である。本変形例の各分流路(83,84)は、接続部(80)の内部を水平方向に真っ直ぐに延びる。各分流路(83,84)の流入口(85,85)は、水平方向に並ぶ。各分流路(83,84)の流入口(85,85)は、横を向いている。分岐部(87)は、主流路(81)の直ぐ下に形成される。分岐部(87)は、接続部(80)における底部の中央部に形成される。
【0079】
本変形例においても、接続部(80)が分岐部(87)を有するので、主流路(81)を通過した液冷媒が分岐部(87)に衝突して、各分流路(83,84)に概ね均等に分けることができる。
【0080】
(6)参考例
上記実施形態については以下のような参考例としてもよい。なお、以下の説明では、原則として上記実施形態と異なる点について説明する。
【0081】
図6に示すように、本参考例では、上記実施形態に対して、アキュムレータ(70)の構成が異なる。本参考例では、密閉容器(71)の下端部は、出口管(73)の本体部(74)における下端部よりも下に位置する。言い換えると、接続部(80)の上部は、密閉容器(71)内に収容されている。
【0082】
出口管(73)は、2つの液戻し穴(75a,75b)を有する。各液戻し穴(75a,75b)は、出口管(73)における接続部(80)の上部に形成されている。なお、本参考例では、液戻し穴(75a,75b)は、出口管(73)の本体部(74)に形成されていない。各液戻し穴(75a,75b)は、接続部(80)を上下方向に貫通する。第1液戻し穴(75a)は、第1分流路(83)に連通する。第2液戻し穴(75b)は、第2分流路(84)に連通する。第1液戻し穴(75a)および第2液戻し穴(75b)には、液貯留部(71b)の液冷媒が流入する。
【0083】
本参考例では、接続部(80)に第1液戻し穴(75a)および第2液戻し穴(75b)が形成されることにより、液貯留部(71b)の液冷媒が、第1液戻し穴(75a)および第2液戻し穴(75b)を介して、各分流路(83,84)へ直接流入する。これにより、液冷媒が各分流路(83,84)へ均等に流入しやすくなる。その結果、アキュムレータ(70)から各圧縮部(50a,50b)へ流入する液冷媒の偏在を抑制できる。
【0084】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0085】
上記実施形態の圧縮機構(50)は2つ以上の圧縮部を有してもよい。この場合、出口管(73)の接続部(80)は、圧縮部と同じ数の分流路を有する。
【0086】
上記実施形態の圧縮機構(50)は、ローリングピストン式であってもよい。この圧縮機構(50)では、実施形態のブレードに代えて、ピストン(60)から分離したベーンにより圧縮室(55)が仕切られる。
【0087】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0088】
以上に述べた「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本開示は、ロータリ圧縮機および冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 冷凍装置
1a 冷媒回路
10 ロータリ圧縮機
11 ケーシング
40 吸入管
50a,50b 圧縮部
70 アキュムレータ
73 出口管
80 接続部
81 主流路
83,84 分流路
85 流入口
86 流出口
87 分岐部
C 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6