(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162570
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】キャリアセット及び現像剤セット
(51)【国際特許分類】
G03G 9/113 20060101AFI20231101BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G03G9/113 362
G03G9/113 351
G03G9/113 352
G03G9/113 361
G03G9/097 372
G03G9/097 374
G03G9/097 375
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072985
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】清水 保
(72)【発明者】
【氏名】寺▲崎▼ 皓平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 麻美
(72)【発明者】
【氏名】田内 康大
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA09
2H500AA10
2H500AA13
2H500AB04
2H500AB05
2H500CA03
2H500CA13
2H500CA16
2H500CA18
2H500CB04
2H500CB05
2H500CB07
2H500CB12
2H500CB14
2H500EA42E
2H500EA44D
2H500FA04
2H500FA20
(57)【要約】
【課題】所望の画像濃度を有する画像を形成でき、かぶりの発生を抑制できるキャリアセットと、上述のキャリアセットを用いた現像剤セットとを提供する。
【解決手段】キャリアセットは、第1キャリア粒子を含む第1キャリアと、第2キャリア粒子を含む第2キャリアとを備える。前記第1キャリア粒子は、第1キャリアコアと、前記第1キャリアコアの表面を被覆する第1コート層とを有する。前記第1コート層は、ポリイミド樹脂及びフッ素樹脂粒子を含有する。前記第2キャリア粒子は、第2キャリアコアと、前記第2キャリアコアの表面を被覆する第2コート層とを有する。前記第2コート層は、シリコーン樹脂及びチタン酸バリウム粒子を含有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1キャリア粒子を含む第1キャリアと、第2キャリア粒子を含む第2キャリアとを備えるキャリアセットであって、
前記第1キャリア粒子は、第1キャリアコアと、前記第1キャリアコアの表面を被覆する第1コート層とを有し、
前記第1コート層は、ポリイミド樹脂及びフッ素樹脂粒子を含有し、
前記第2キャリア粒子は、第2キャリアコアと、前記第2キャリアコアの表面を被覆する第2コート層とを有し、
前記第2コート層は、シリコーン樹脂及びチタン酸バリウム粒子を含有する、キャリアセット。
【請求項2】
前記第1コート層及び前記第2コート層は、それぞれ、カーボンブラック粒子を更に含有する、請求項1に記載のキャリアセット。
【請求項3】
前記第1コート層における前記フッ素樹脂粒子の含有割合は、20質量%以上90質量%以下である、請求項1又は2に記載のキャリアセット。
【請求項4】
前記第2コート層において、前記シリコーン樹脂100質量部に対する前記チタン酸バリウム粒子の含有量は、3質量部以上60質量部以下である、請求項1又は2に記載のキャリアセット。
【請求項5】
前記フッ素樹脂粒子は、PFA粒子、PTFE粒子又FEP粒子を含む、請求項1又は2に記載のキャリアセット。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のキャリアセットを用いた現像剤セットであって、
前記第1キャリア及びトナーを含む第1現像剤と、
前記第2キャリア及び前記トナーを含む第2現像剤とを備える、現像剤セット。
【請求項7】
前記第1現像剤は、現像装置内に収容されている初期現像剤であり、
前記第2現像剤は、前記初期現像剤の使用開始後に前記現像装置内へ補給される補給用現像剤である、請求項6に記載の現像剤セット。
【請求項8】
前記トナーは、トナー粒子を含み、
前記トナー粒子は、トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着する外添剤とを備え、
前記外添剤は、樹脂粒子及び無機粒子を含む、請求項6に記載の現像剤セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアセット及び現像剤セットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法においては、例えば、キャリア及びトナーを含む2成分現像剤(以下、単に現像剤と記載することがある)が用いられる。現像剤には、所望の画像濃度を有する画像を形成できることが要求される。また、現像剤には、かぶりの発生を抑制できることが要求される。
【0003】
これらの要求を満たすため、キャリアコアと、キャリアコアの表面を被覆するコート層とを備えるキャリア粒子を含むキャリアを用いた現像剤が検討されている。また、トナーの帯電量を安定化させるため、上述のキャリアのコート層に無機粒子(例えば、強誘電体)を添加することも検討されている。このようなキャリアとして、例えば、コート樹脂と、チタン酸バリウム粒子とを含有するコート層を備えるキャリアが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のキャリアを用いた現像剤であっても、所望の画像濃度を有する画像を形成すると共に、かぶりの発生を十分に抑制することはできない。
【0006】
本発明の目的は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、所望の画像濃度を有する画像を形成できると共に、かぶりの発生を抑制できるキャリアセットと、上述のキャリアセットを用いた現像剤セットとを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のキャリアセットは、第1キャリア粒子を含む第1キャリアと、第2キャリア粒子を含む第2キャリアとを備える。前記第1キャリア粒子は、第1キャリアコアと、前記第1キャリアコアの表面を被覆する第1コート層とを有する。前記第1コート層は、ポリイミド樹脂及びフッ素樹脂粒子を含有する。前記第2キャリア粒子は、第2キャリアコアと、前記第2キャリアコアの表面を被覆する第2コート層とを有する。前記第2コート層は、シリコーン樹脂及びチタン酸バリウム粒子を含有する。
【0008】
本発明の現像剤セットは、上述のキャリアセットを用いた現像剤セットであって、前記第1キャリア及びトナーを含む第1現像剤と、前記第2キャリア及び前記トナーを含む第2現像剤とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明のキャリアセット及び現像剤セットは、所望の画像濃度を有する画像を形成できると共に、かぶりの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1キャリア粒子の一例と第2キャリア粒子の一例とを示す図である。
【
図2】第1キャリア粒子の第1コート層の一例を示す図である。
【
図3】第2キャリア粒子の第2コート層の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、トナーは、トナー粒子の集合体(例えば粉体)である。外添剤は、外添剤粒子の集合体(例えば粉体)である。キャリアは、キャリア粒子の集合体(例えば粉体)である。粉体(より具体的には、トナー粒子の粉体、外添剤粒子の粉体、キャリア粒子の粉体等)に関する評価結果(形状、物性等を示す値)は、何ら規定していなければ、粉体の相当数の粒子の各々について測定した値の個数平均である。
【0012】
材料の「主成分」は、何ら規定していなければ、質量基準で、その材料に最も多く含まれる成分を意味する。化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。本明細書に記載の各成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA-950」)を用いて測定されたメディアン径である。個数平均一次粒子径は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡を用いて測定した一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。個数平均一次粒子径は、例えば100個の一次粒子の円相当径の個数平均値である。
【0014】
軟化点(Tm)は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT-500D」)を用いて測定した値である。高化式フローテスターで測定されたS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)において、「(ベースラインストローク値+最大ストローク値)/2」となる温度が、軟化点に相当する。融点(Mp)の測定値は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC-6220」)を用いて測定される吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)中の最大吸熱ピークの温度である。この吸熱ピークは、結晶化部位の融解に起因して現れる。ガラス転移点(Tg)は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC-6220」)を用いて「JIS(日本産業規格)K7121-2012」に従って測定した値である。示差走査熱量計で測定された吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)において、ガラス転移に起因する変曲点の温度(詳しくは、ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点の温度)が、ガラス転移点に相当する。
【0015】
酸価及び水酸基価の各々の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本産業規格)K0070-1992」に従い測定した値である。質量平均分子量(Mw)の各々の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。帯電性の強さは、何ら規定していなければ、日本画像学会から提供される標準キャリアに対する摩擦帯電のし易さである。例えば、日本画像学会から提供される標準キャリア(アニオン性:N-01、カチオン性:P-01)と測定対象とを攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。例えばQ/mメーター(トレック社製「MODEL 212HS」)を用いて、摩擦帯電させる前と後との測定対象の単位質量当たりの電荷量をそれぞれ測定し、摩擦帯電の前後での単位質量当たりの電荷量の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。以上、本明細書で用いる用語の意味、及び測定方法について、説明した。
【0016】
<第1実施形態:キャリアセット>
本発明の第1実施形態に係るキャリアセットは、第1キャリア粒子を含む第1キャリアと、第2キャリア粒子を含む第2キャリアとを備える。第1キャリア粒子は、第1キャリアコアと、第1キャリアコアの表面を被覆する第1コート層とを有する。第1コート層は、ポリイミド樹脂及びフッ素樹脂粒子を含有する。第2キャリア粒子は、第2キャリアコアと、第2キャリアコアの表面を被覆する第2コート層とを有する。第2コート層は、シリコーン樹脂及びチタン酸バリウム粒子を含有する。
【0017】
本発明のキャリアセットは、第2実施形態において後述するように、トナーと組み合わせることで現像剤セットとして用いることができる。現像剤セットは、例えば電子写真装置(画像形成装置)において画像の形成に用いることができる。現像剤セットでは、現像装置内においてキャリア及びトナーが攪拌されることで、トナーが帯電する。
【0018】
本発明のキャリアセットは、いわゆるトリクル現像方式の画像形成装置に好適である。トリクル現像方式の画像形成装置は、現像装置内の初期現像剤(初期トナー及び初期キャリア)による静電潜像の現像を開始した後、現像装置内の現像剤の排出と現像装置内への補給用現像剤(補給用トナー及び補給用キャリア)の補給とを行いつつ、現像装置内の現像剤で静電潜像を現像する。画像形成中において、現像装置内へトナーと一緒にキャリアも補給し、補給により過剰になった分だけ現像装置内のキャリアを排出することで、現像装置内のキャリアが劣化することを抑制できる。また、キャリアの劣化が抑制されることで、現像装置内のキャリアの交換回数を低減することができる。本発明のキャリアセットをトリクル現像方式の画像形成装置に用いる場合、第1キャリアを初期キャリアとして用い、第2キャリアを補給用キャリアとして用いることが好ましい。
【0019】
本発明のキャリアセットは、上述の構成を備えることにより、所望の画像濃度を有する画像を形成できると共に、かぶりの発生を抑制できる。その理由は、以下のように推察される。一般的なトナーは、外添剤として、無機粒子を含む。無機粒子としては、シリカ粒子と、シリカ粒子以外の他の無機粒子(例えば、酸化チタン粒子及び酸化アルミニウム粒子)とを組み合わせて用いることが多い。シリカ粒子は、トナー粒子の流動性を最適化する機能、及びトナー粒子に正帯電性を付与する機能を有する。他の無機粒子は、トナーの帯電量が過剰となることを抑制する機能を有する。ここで、他の無機粒子は、トナー母粒子との付着力が低い傾向がある。そのため、現像剤は、調製時や印刷中にトナー及びキャリアが攪拌された際に、他の無機粒子がトナーから脱離してキャリアの表面に付着する現象が発生することがある。現像剤において、他の無機粒子がトナーからキャリアに移行すると、トナーの帯電量が増大し、形成される画像の画像濃度が低下する。印刷初期に上述の現象が発生すると、トナーの帯電量が経時的に増大し、形成される画像の画像濃度が経時的に低下する。
【0020】
これに対して、第1キャリアは、ポリイミド樹脂及びフッ素樹脂粒子を含有する第1コート層を備える。フッ素樹脂粒子は、表面が滑らかな樹脂層を形成することができる。ポリイミド樹脂は、フッ素樹脂粒子のバインダーとして好適である。第1コート層は、フッ素樹脂粒子及びポリイミド樹脂を含有するため、表面の凹凸が小さい。第1キャリアは、表面の凹凸が小さい第1コート層を備えるため、他の無機粒子をごく少量しか保持することができない。そのため、第1キャリアを用いた現像剤は、調製直後の段階(印刷に使用する前の段階)で、付着可能な限界量の他の無機粒子が第1キャリアの表面に付着している。即ち、第1キャリアを用いた現像剤は、調製直後の段階において、これ以上の量の他の無機粒子が第1キャリアの表面に付着する余地がない。このため、第1キャリアを用いた現像剤は、第1キャリアに付着する他の無機粒子の量が印刷中に増大することはない。このように、第1キャリアを用いた現像剤は、印刷初期において、第1キャリアの表面に付着している他の無機粒子の量が変動しないため、トナーの帯電量が安定である。
【0021】
一方、シリカ粒子は、長時間の印刷(耐刷)の中で、時間をかけて徐々にトナー母粒子から脱離してキャリアに付着する。現像剤において、キャリアの表面の一定割合以上がシリカ粒子で覆われると、トナーの帯電量が低下し、形成される画像にかぶりが発生するようになる。これに対して、第2キャリアが備える第2コート層は、強誘電体であるチタン酸バリウム粒子と、シリコーン樹脂とを含有する。このような強誘電体を用いたキャリアは、トナーを帯電させる性能に優れている。また、シリコーン樹脂は、表面にナノオーダーの凹凸を多数有する層を形成することができる。そのため、第2キャリアの表面は、多数のシリカ粒子が付着する余地がある。これにより、第2キャリアを用いた現像剤は、第2キャリアの表面に多少のシリカ粒子が付着したとしても、トナーの帯電量が低下し難い。これらの結果、第2キャリアを用いた現像剤は、耐刷中にシリカ粒子が第2キャリアの表面に徐々に付着したとしても、トナーの帯電量の低下を抑制できる。
【0022】
このように、本発明のキャリアセットにおいて、第1キャリアは、印刷初期に画像濃度が経時的に低下することを抑制できる。また、第2キャリアは、耐刷中にかぶりが発生することを抑制できる。そのため、第1キャリアを初期キャリアとして用い、第2キャリアを補給用キャリアとして用いることにより、所望の画像濃度を有する画像を形成できると共に、かぶりの発生を抑制できる。
【0023】
以下、図面に沿って本発明のキャリアセットを説明する。
図1は、第1キャリア粒子の一例である第1キャリア粒子1の断面と、第2キャリア粒子の一例である第2キャリア粒子11の断面とを示す。第1キャリア粒子1は、第1キャリアコア2と、第1キャリアコア2の表面を被覆する第1コート層3とを備える。第1コート層3は、第1キャリアコア2の表面の全面を被覆している。第2キャリア粒子11は、第2キャリアコア12と、第2キャリアコア12の表面を被覆する第2コート層13とを備える。第2コート層13は、第2キャリアコア12の表面の全面を被覆している。
【0024】
図2は、第1コート層3の一例である。第1コート層3は、ポリイミド樹脂4及びフッ素樹脂粒子5を含有する。
図3は、第2コート層13の一例である。第2コート層13は、シリコーン樹脂14及びチタン酸バリウム粒子15を含有する。
【0025】
以上、
図1~3に基づいて本発明のキャリアセットの一例について説明した。但し、本発明のキャリアセットにおいて、第1キャリア粒子及び第2キャリア粒子は、
図1~3に示す第1キャリア粒子1及び第2キャリア粒子11に限定されない。例えば、第1コート層は、第1キャリアコアの少なくとも一部を被覆していればよい。すなわち、第1キャリアコアの一部は、露出していてもよい。同様に、第2コート層は、第2キャリアコアの少なくとも一部を被覆していればよい。すなわち、第2キャリアコアの一部は、露出していてもよい。以下、第1キャリア粒子及び第2キャリア粒子の各構成について詳細を説明する。
【0026】
[第1キャリア粒子]
第1キャリア粒子は、第1キャリアコアと、第1キャリアコアの表面を被覆する第1コート層とを有する。
【0027】
(第1キャリアコア)
第1キャリアコアは、磁性材料を含有することが好ましい。第1キャリアコアは、磁性材料の粒子であってもよく、結着樹脂と、結着樹脂中に分散した磁性材料の粒子とを備える粒子(以下、樹脂キャリアコアと記載することがある)であってもよい。
【0028】
第1キャリアコアに含有される磁性材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、及びこれら金属のうち1種以上を含む合金)、並びに強磁性金属酸化物が挙げられる。強磁性金属酸化物としては、フェライトと、スピネルフェライトの1種であるマグネタイトとが挙げられる。フェライトとしては、例えば、Baフェライト、Mnフェライト、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライト、Mn-Mgフェライト、Ca-Mgフェライト、Liフェライト、Cu-Znフェライト、及びMn-Mg-Srフェライトが挙げられる。第1キャリアコアの製造方法としては、例えば、磁性材料を粉砕及び焼成する工程を含む方法が挙げられる。第1キャリアコアの製造において、磁性材料の添加量(特に、強磁性材料の割合)を変更することで、第1キャリアの飽和磁化を調整できる。また、第1キャリアコアの製造において、焼成温度を変更することで、第1キャリアコアの円形度を調整できる。なお、第1キャリアコアは、市販品を使用してもよい。
【0029】
第1キャリアコアとして用いる磁性材料の粒子としては、例えば、フェライト粒子が挙げられる。フェライト粒子は、現像剤による画像形成のために十分な磁性を有する傾向がある。なお、一般的な製法により製造されたフェライト粒子は、真球にはならず、表面に適度な凹凸を有する傾向がある。第1キャリアコアがフェライト粒子(フェライトコア)である場合、フェライトコアの表面と第1コート層との密着性を改善させる観点から、フェライトコアの表面の算術平均粗さ(詳しくは、JIS(日本産業規格)B0601-2013で規定される算術平均粗さRa)としては、0.3μm以上2.0μm以下が好ましい。
【0030】
樹脂キャリアコアにおける結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、又はフェノール樹脂が好ましく、フェノール樹脂がより好ましい。樹脂キャリアコアにおける磁性材料の粒子としては、例えば上記磁性材料において例示した磁性材料のうち1種以上の磁性材料を含む粒子が挙げられる。
【0031】
第1キャリア粒子において、第1キャリアコア及び第1コート層の合計質量に対する第1キャリアコアの質量割合としては、70質量%以上99質量%以下が好ましく、90質量%以上99質量%以下がより好ましい。
【0032】
第1キャリアコアの体積中位径としては、20μm以上60μm以下が好ましい。第1キャリアコアの体積中位径を20μm以上とすることで、本発明のキャリアセットは、キャリア現像の発生を抑制できる。第1キャリアコアの体積中位径を60μm以下とすることで、本発明のキャリアセットを用いた現像剤セットに良好な現像性を付与できる。
【0033】
印加磁場3000Oeでの第1キャリアコアの飽和磁化としては、65emu/g以上90emu/g以下が好ましい。第1キャリアコアの飽和磁化を65emu/g以上とすることで、本発明のキャリアセットを用いた現像剤セットは、キャリア現像の発生を抑制できる。第1キャリアコアの飽和磁化を90emu/g以下とすることで、本発明のキャリアセットを用いた現像剤セットに良好な現像性を付与できる。
【0034】
(第1コート層)
第1コート層は、ポリイミド樹脂及びフッ素樹脂粒子を含有する。第1コート層は、カーボンブラック粒子を更に含有することが好ましい。第1コート層において、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂粒子及びカーボンブラック粒子の合計含有割合としては、90質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
【0035】
第1キャリアコア100質量部に対する第1コート層の質量としては、0.5質量部以上10.0質量部以下が好ましい。第1コート層の質量を0.5質量部以上とすることで、第1キャリアコアの露出を抑制できる。第1コート層の質量を10.0質量部以下とすることで、第1キャリアがトナーを帯電させ易くなる。
【0036】
(ポリイミド樹脂)
ポリイミド樹脂は、熱硬化性樹脂である。熱硬化後のポリイミド樹脂は、フェライト等との無機材料との密着性が良好である。また、熱硬化後のポリイミド樹脂は耐熱性に優れる。そのため、ポリイミド樹脂を第1コート層のバインダーとして用いることにより、フッ素樹脂粒子を第1キャリアコアに強固に密着させることができる。
【0037】
また、ポリイミド樹脂は、他の樹脂(例えば、ポリアミドイミド樹脂)と比較して熱収縮性が低い傾向がある。一般に、キャリアの製造工程では、キャリアコアの表面を樹脂で被覆した後に、熱処理を行う場合がある。熱収縮性が高い樹脂でキャリアコアを被覆する場合、上述の熱処理によって樹脂が収縮してキャリアコアが露出することがある。キャリアコアが露出すると、樹脂が剥離してキャリアの性能が低下する原因となる。これに対して、ポリイミド樹脂は、熱収縮性が低いため、上述の熱処理を行った際に、収縮してキャリアコアが露出することを抑制できる。その結果、第1コート層のバインダーとしてポリイミド樹脂を用いることにより、第1キャリアの耐久性を向上できる。
【0038】
更に、フッ素樹脂粒子は、表面の粘着性が極端に低い。これに対して、ポリイミド樹脂は、フッ素樹脂粒子のような表面の粘着性の低い物質に対しても良好な密着性を発揮できる。そのため、第1コート層のバインダーとしてポリイミド樹脂を用いることにより、フッ素樹脂粒子の脱離を抑制できる。
【0039】
ポリイミド樹脂は、主鎖中に芳香環を有する芳香族ポリイミド樹脂が好ましい。ポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体(ポリアミック酸)のイミド化物が挙げられる。
【0040】
第1コート層において、ポリイミド樹脂の含有割合としては、10.0質量%以上80.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以上40.0質量%以下がより好ましい。ポリイミド樹脂の含有割合を10.0質量%以上とすることで、第1コート層からフッ素樹脂粒子が脱離することを効果的に抑制できる。ポリイミド樹脂の含有割合を80.0質量%以下とすることで、第1キャリアがトナーを帯電させ易くなる。
【0041】
(フッ素樹脂粒子)
フッ素樹脂粒子は、フッ素樹脂を含む。フッ素樹脂粒子において、フッ素樹脂の含有割合としては、例えば、90質量%以上であり、100質量%が好ましい。
【0042】
フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリジクロロジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、及びテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体が挙げられる。
【0043】
フッ素樹脂粒子としては、PTFE粒子、PFA粒子又はFEP粒子が好ましく、PFA粒子又はFEP粒子がより好ましい。PFA及びFEPは、フッ素樹脂の中でも、耐薬品性、耐熱性及び電気特性に優れると同時に、耐摩耗性及び加工性にも優れる。そのため、フッ素樹脂粒子としてPFA粒子又はFEP粒子を用いることにより、キャリアとして好ましい特性を第1キャリアに付与できると共に、第1キャリアを容易に製造できる。
【0044】
フッ素樹脂粒子の個数平均一次粒子径としては、50nm以上500nm以下が好ましく、200nm以上300nm以下がより好ましい。フッ素樹脂粒子の個数平均一次粒子径を50nm以上500nm以下とすることで、第1コート層からフッ素樹脂粒子が脱離することを効果的に抑制できる。
【0045】
第1コート層において、フッ素樹脂粒子の含有割合としては、20.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、60.0質量%以上80.0質量%以下がより好ましい。フッ素樹脂粒子の含有割合を20.0質量%以上とすることで、第1キャリアがトナーを帯電させ易くなる。フッ素樹脂粒子の含有割合を90.0質量%以下とすることで、第1コート層におけるポリイミド樹脂の量が確保される。その結果、第1コート層からフッ素樹脂粒子が脱離することを効果的に抑制できる。
【0046】
(カーボンブラック粒子)
カーボンブラック粒子は、第1コート層における電荷の移動を促進する。第1キャリアは、第1コート層がカーボンブラック粒子を含有することで、トナー粒子への電荷の付与を促進できる。その結果、本発明のキャリアセットを用いた現像剤セットは、かぶりの発生を更に効果的に抑制できる。また、第1コート層がカーボンブラック粒子を含有することで、現像剤中のトナー濃度が変動した場合においても、トナーの帯電量の変動を抑えることができる。
【0047】
カーボンブラック粒子の個数平均一次粒子径としては、10nm以上200nm以下が好ましく、20nm以上60nm以下がより好ましい。カーボンブラック粒子の個数平均一次粒子径を10nm以上とすることで、本発明のキャリアセットを用いた現像剤は、かぶりの発生を更に効果的に抑制できる。カーボンブラック粒子の個数平均一次粒子径を200nm以下とすることで、第1コート層からカーボンブラック粒子が脱離することを抑制できる。
【0048】
第1コート層において、樹脂100質量部(ポリイミド樹脂及びフッ素樹脂粒子の合計質量)に対するカーボンブラック粒子の含有量としては、0.1質量部以上10.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以上4.0質量部以下がより好ましい。カーボンブラック粒子の含有量を0.1質量部以上とすることで、本発明のキャリアセットを用いた現像剤セットは、かぶりの発生を更に効果的に抑制できる。カーボンブラック粒子の含有量を10.0質量部以下とすることで、第1コート層からカーボンブラック粒子が脱離することを抑制できる。
【0049】
(他の成分)
第1コート層は、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂粒子及びカーボンブラック粒子以外の他の成分を少量であれば更に含有してもよい。他の成分としては、例えば、カーボンブラック粒子以外の導電材、及び添加剤が挙げられる。カーボンブラック粒子以外の導電材としては、酸化金属粒子(例えば、酸化チタン粒子及び酸化スズ粒子)、及び有機導電材が挙げられる。添加剤としては、例えば、電荷制御剤、密着向上剤及び架橋剤が挙げられる。
【0050】
[第1キャリアの製造方法]
第1キャリアの製造方法の一例について説明する。第1キャリアの製造方法は、第1キャリアコアの表面をコート液でコーティングするコーティング工程と、コーティング後の第1キャリアコアを加熱する加熱工程とを備える。
【0051】
(コーティング工程)
本工程では、第1キャリアコアの表面をコート液でコーティングする。コート液は、ポリイミド樹脂(例えば、未硬化のポリイミド樹脂)及びフッ素樹脂粒子と、溶媒と、必要に応じて添加される他の成分(例えば、カーボンブラック粒子)とを含有する。本工程により、コート液でコーティングされた第1キャリアコアが得られる。
【0052】
第1キャリアコアの表面をコート液でコーティングする方法としては、例えば、コート液に第1キャリアコアを浸漬させる方法、及び流動層中の第1キャリアコアにコート液を噴霧する方法が挙げられる。コート液に第1キャリアコアを浸漬させる方法では、第1キャリアコアの表面の凸部には少量のコート液が塗布される一方で、第1キャリアコアの表面の凹部には多量のコート液が塗布されるため、コート液の塗布量が不均一になる傾向がある。これに対して、流動層中の第1キャリアコアにコート液を噴霧する方法では、第1キャリアコアの表面の凸部及び凹部の何れに対してもコート液を均一に塗布できる傾向がある。以上から、第1キャリアコアの表面にコート液を塗布する方法としては、流動層中の第1キャリアコアにコート液を噴霧する方法が好ましい。
【0053】
(加熱工程)
本工程では、コーティング後の第1キャリアコアを加熱し、コート液に含まれる溶媒を除去する。また、コート液に未硬化のポリイミド樹脂が含まれる場合、未硬化のポリイミド樹脂を熱硬化させる。その結果、コート液から第1コート層が形成される。加熱条件としては、例えば、加熱温度を150℃以上300℃以下、加熱時間を30分以上90分以下とすることができる。
【0054】
[第2キャリア粒子]
第2キャリア粒子は、第2キャリアコアと、第2キャリアコアの表面を被覆する第2コート層とを有する。第2キャリアコアは、例えば、第1キャリアコアと同様とすることができる。そのため、第2キャリアコアの説明は省略する。
【0055】
(第2コート層)
第2コート層は、シリコーン樹脂及びチタン酸バリウム粒子を含有する。第2コート層は、カーボンブラック粒子を更に含有することが好ましい。第2コート層において、シリコーン樹脂、チタン酸バリウム粒子及びカーボンブラック粒子の合計含有割合としては、90質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
【0056】
第2キャリアコア100質量部に対する第2コート層の質量としては、0.5質量部以上10.0質量部以下が好ましい。第2コート層の質量を0.5質量部以上とすることで、第2キャリアコアの露出を抑制できる。第2コート層の質量を10.0質量部以下とすることで、第2キャリアがトナーを帯電させ易くなる。
【0057】
(シリコーン樹脂)
シリコーン樹脂は、ポリシロキサン構造(例えば、アルキルポリシロキサン構造)を有する樹脂である。シリコーン樹脂としては、例えば、メチル基を有するシリコーン樹脂、及びエポキシ樹脂変性シリコーン樹脂が挙げられる。メチル基を有するシリコーン樹脂としては、例えば、メチル基を有し、かつフェニル基を有しないシリコーン樹脂、並びにメチル基及びフェニル基を有するシリコーン樹脂(以下「メチルフェニルシリコーン樹脂」と記載することがある)が挙げられる。シリコーン樹脂としては、メチルフェニルシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂変性シリコーン樹脂が好ましい。
【0058】
第2コート層におけるシリコーン樹脂の含有割合としては、60質量%以上95質量%以下が好ましく、70質量%以上90質量%以下がより好ましい。シリコーン樹脂の含有割合を60質量%以上とすることで、第2コート層からチタン酸バリウム粒子が脱離することを抑制できる。シリコーン樹脂の含有量を95質量%以下とすることで、第2コート層におけるチタン酸バリウム粒子の量を十分に確保できる。
【0059】
第2コート層は、樹脂として、シリコーン樹脂のみを含有することが好ましいが、他の樹脂を更に含有してもよい。第2コート層が含有する樹脂全体におけるシリコーン樹脂の含有割合としては、90質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
【0060】
第2コート層におけるシリコーン樹脂の含有量としては、キャリアコア100質量部に対して、0.3質量部以上8.0質量部以下が好ましい。シリコーン樹脂の含有量を0.3質量部以上とすることで、第2コート層からチタン酸バリウム粒子が脱離することを抑制できる。シリコーン樹脂の含有量を8.0質量部以下とすることで、本発明のキャリアセットを用いた現像剤セットは、かぶりの発生を抑制できる。
【0061】
(チタン酸バリウム粒子)
チタン酸バリウム粒子は、チタン酸バリウムを含む。チタン酸バリウム粒子において、チタン酸バリウムの含有割合としては、例えば、90質量%以上であり、100質量%が好ましい。
【0062】
チタン酸バリウム粒子の個数平均一次粒子径としては、40nm以上400nm以下が好ましく、60nm以上200nm以下が好ましく、80nm以上120nm以下がより好ましい。チタン酸バリウム粒子の個数平均一次粒子径を40nm以上とすることで、本発明のキャリアセットを用いた現像剤セットは、かぶりの発生を抑制できる。チタン酸バリウム粒子の個数平均一次粒子径を500nm以下とすることで、第2コート層からチタン酸バリウム粒子が脱離することを抑制できる。
【0063】
第2コート層において、シリコーン樹脂100質量部に対するチタン酸バリウムの含有量としては、2.0質量部以上100.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以上60.0質量部以下がより好ましく、15.0質量部以上40.0質量部以下が更に好ましい。チタン酸バリウム粒子の含有量を2.0質量部以上とすることで、本発明のキャリアセットを用いた現像剤セットは、かぶりの発生を更に効果的に抑制できる。チタン酸バリウム粒子の含有量を100.0質量部以下とすることで、第2コート層からチタン酸バリウム粒子が脱離することを抑制できる。
【0064】
(チタン酸バリウム粒子の製造方法)
チタン酸バリウム粒子の製造方法は、特に限定されないが、例えば、水熱合成法が挙げられる。水熱合成法で作成されたチタン酸バリウム粒子は、その内部に空隙を有するために、真比重が小さい。また、水熱合成法で作成されたチタン酸バリウム粒子の粒子径分布は、シャープである。これらのため、水熱合成法で作成されたチタン酸バリウム粒子は、第2コート層中で均一に分散し易く、均一な帯電付与能を有する第2キャリアが得られ易い。以上から、チタン酸バリウム粒子は、水熱合成物であることが好ましい。
【0065】
(カーボンブラック粒子)
第2コート層が含有するカーボンブラック粒子としては、第1コート層が含有するカーボンブラック粒子と同様とすることができる。
【0066】
第2コート層において、シリコーン樹脂100質量部に対するカーボンブラック粒子の含有量としては、1.0質量部以上20.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以上10.0質量部以下がより好ましい。カーボンブラック粒子の含有量を1.0質量部以上とすることで、本発明のキャリアセットを用いた現像剤セットは、かぶりの発生を更に効果的に抑制できる。カーボンブラック粒子の含有量を20.0質量部以下とすることで、第2コート層からカーボンブラック粒子が脱離することを抑制できる。
【0067】
(他の成分)
なお、第2コート層は、シリコーン樹脂、チタン酸バリウム粒子、及びカーボンブラック粒子以外の他の成分を更に含有してもよい。他の成分としては、例えば、第1コート層で例示した他の成分と同様とすることができる。
【0068】
[第2キャリアの製造方法]
第2キャリアは、コーティング工程に用いるコート液の組成を変更する以外は、第1キャリアの製造方法と同様の方法により製造できる。そのため、以下ではコート液についてのみ説明する。
【0069】
(コート液)
コート液は、シリコーン樹脂(例えば、未硬化のシリコーン樹脂)及びチタン酸バリウム粒子と、溶媒と、必要に応じて添加される他の成分(例えば、カーボンブラック粒子)とを含有する。
【0070】
<第2実施形態:現像剤セット>
本発明の第2実施形態に係る現像剤セットは、第1実施形態に記載のキャリアセットを用いる。本発明の現像剤セットは、第1キャリア及びトナーを含む第1現像剤と、第2キャリア及びトナーを含む第2現像剤とを備える。
【0071】
本発明の現像剤セットは、トリクル現像方式の画像形成装置に用いる現像剤セットであることが好ましい。この場合、第1現像剤は、現像装置内に収容されている初期現像剤として用いることが好ましい。第2現像剤は、初期現像剤の使用開始後に現像装置内へ補給される補給用現像剤として用いることが好ましい。初期現像剤として用いる第1現像剤は、第1キャリアを主成分とし、少量のトナーを含む。補給用現像剤として用いる第2現像剤は、トナーを主成分とし、少量のキャリアを含む。
【0072】
第1現像剤は、例えば、混合機(より具体的には、例えば、ボウルミル及びロッキングミキサ(登録商標))を用いて、第1キャリアとトナーとを攪拌しながら混合することで得られる。第1現像剤におけるトナー濃度としては、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0073】
第2現像剤は、例えば、上述の混合機を用いて、第2キャリアとトナーとを攪拌しながら混合することで得られる。第2現像剤におけるトナー濃度としては、60質量%以上97質量%以下が好ましく、80質量%以上92質量%以下がより好ましい。以下、第1キャリア及び第2キャリアについては第1実施形態で説明済みであるため、トナーについて説明する。
【0074】
[トナー]
トナーは、トナー粒子を含む。トナー粒子は、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着する外添剤とを備える。外添剤は、無機粒子及び樹脂粒子を含む。トナーは、トナー粒子を含む。以下、トナーの詳細について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0075】
図4は、トナーに含まれるトナー粒子21の一例を示す。
図4に示すトナー粒子21は、トナー母粒子22と、トナー母粒子22の表面に付着した外添剤23とを備える。外添剤23は、樹脂粒子23a及び無機粒子23bを含む。
【0076】
以上、図面に基づいてトナー粒子について説明した。但し、トナー粒子は、
図4に示すトナー粒子21とは異なる構造であってもよい。具体的には、トナー粒子は、外添剤として、樹脂粒子及び無機粒子以外の粒子(以下、「その他の外添剤粒子」と記載することがある)を含んでいてもよい。トナー母粒子は、トナーコアと、トナーコアを被覆するシェル層とを含むカプセルトナー粒子であってもよい。
【0077】
(樹脂粒子)
樹脂粒子は、無機粒子がトナー母粒子から脱離する現象、及び無機粒子がトナー母粒子に埋没する現象を抑制するスペーサとしての機能を有する。樹脂粒子としては、スチレン-(メタ)アクリル樹脂粒子が好ましい。
【0078】
スチレン-(メタ)アクリル樹脂粒子は、スチレン-(メタ)アクリル樹脂を含む。スチレン-(メタ)アクリル樹脂は、スチレンと、アクリルモノマーとの共重合体である。アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0079】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、又は(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが挙げられる。
【0080】
スチレン-(メタ)アクリル樹脂としては、スチレンと(メタ)アクリル酸ブチルとの共重合体が好ましい。
【0081】
樹脂粒子の個数平均一次粒子径としては、20nm以上300nm以下が好ましく、20nm以上100nm以下がより好ましくい。樹脂粒子の個数平均一次粒子径を20nm以上とすることで、トナー母粒子への樹脂粒子の埋没を抑制できる。また、樹脂粒子の個数平均一次粒子径を300nm以下とすることで、トナー母粒子からの樹脂粒子の脱離を抑制できる。
【0082】
トナー母粒子からの脱離を抑制しながら樹脂粒子の機能を十分に発揮させる観点から、トナー粒子における樹脂粒子の含有量としては、トナー母粒子100質量部に対して、0.1質量部以上3.0質量部以下が好ましく、0.3質量部以上1.0質量部以下がより好ましい。
【0083】
(無機粒子)
無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、及び金属酸化物(より具体的には、酸化アルミニウム粒子、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、及びチタン酸バリウム)の粒子が挙げられる。トナーは、無機粒子として、シリカ粒子と、シリカ粒子以外の無機粒子(特に、酸化アルミニウム又は酸化チタン)とを含むことが好ましい。無機粒子の個数平均一次粒子径としては、1nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上40nm以下がより好ましい。
【0084】
トナー粒子が無機粒子を含有する場合、その含有量としては、トナー母粒子100質量部に対して、0.01質量部以上10.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上5.0質量部以下がより好ましい。
【0085】
(トナー母粒子)
トナー母粒子は、例えば、結着樹脂と、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤からなる群から選択される少なくとも1つとを含有する。以下、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤について、説明する。
【0086】
(結着樹脂)
低温定着性に優れたトナーを得るために、トナー母粒子は、結着樹脂として熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、結着樹脂全体の85質量%以上の割合で熱可塑性樹脂を含有することがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N-ビニル樹脂等)、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰り返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂等)も、結着樹脂として使用できる。
【0087】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂は、1種以上の多価アルコールモノマーと、1種以上の多価カルボン酸モノマーとの重合体である。なお、多価カルボン酸モノマーの代わりに、多価カルボン酸誘導体(より具体的には、多価カルボン酸の無水物、多価カルボン酸ハライド等)を使用してもよい。
【0088】
ポリエステル樹脂としては、非晶性ポリエステル樹脂が好ましい。非晶性ポリエステル樹脂については、明確な融点を測定できないことが多い。よって、示差走査熱量計を用いて測定される吸熱曲線において明確に吸熱ピークを判断できないポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂と判断して差し支えない。
【0089】
(着色剤)
着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。着色剤としては、例えば、黒色着色剤、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤が挙げられる。
【0090】
黒色着色剤としては、例えば、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
【0091】
トナーにおいて、着色剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下が好ましい。
【0092】
(電荷制御剤)
電荷制御剤は、例えば、帯電安定性及び帯電立ち上がり特性に優れたトナーを得る目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。電荷制御剤としては、例えば、正電荷制御剤、及び負電荷制御剤が挙げられる。トナー母粒子に正電荷制御剤を含有させることでトナーのカチオン性(正帯電性)を強めることができる。トナー母粒子に負電荷制御剤を含有させることでトナーのアニオン性(負帯電性)を強めることができる。正電荷制御剤としては、例えば、ピリジン、ニグロシン、及び4級アンモニウム塩が挙げられる。トナーにおいて、電荷制御剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0093】
(離型剤)
離型剤は、例えば、耐ホットオフセット性に優れたトナーを得る目的で使用される。離型剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系ワックス、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、植物由来ワックス、動物由来ワックス、鉱物由来ワックス、脂肪酸エステルを主成分とするエステルワックス、及び脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスが挙げられる。離型剤としては、植物由来ワックス(例えば、カルナバワックス)が好ましい。トナーにおいて、離型剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下が好ましい。
【0094】
なお、トナー粒子は、必要に応じて、公知の添加剤を含有してもよい。トナー粒子の体積中位径としては、4μm以上12μm以下が好ましい。トナー母粒子の体積中位径としては、4μm以上12μm以下が好ましく、5μm以上9μm以下がより好ましい。
【0095】
[トナーの製造方法]
トナーの製造方法の一例を説明する。トナーの製造方法は、トナー母粒子を調製するトナー母粒子調製工程と、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる外添工程とを備える。外添剤は、樹脂粒子及び無機粒子を含む。
【0096】
(トナー母粒子調製工程)
トナー母粒子調製工程では、例えば粉砕法又は凝集法によりトナー母粒子を調製する。トナー母粒子調製工程では、粉砕法によりトナー母粒子を調製することが好ましい。つまり、トナーにおいて、トナー母粒子は粉砕トナー母粒子であることが好ましい。
【0097】
(外添工程)
本工程では、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる方法としては、例えば混合装置を用いて、トナー母粒子と、外添剤粒子とを攪拌しながら混合する方法が挙げられる。
【実施例0098】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0099】
チタン酸バリウム粒子、カーボンブラック粒子及びキャリアコアの個数平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(電界放出形走査電子顕微鏡、日本電子株式会社製「JSM-7600F」)を用いて、測定した。個数平均一次粒子径の測定において、100個の一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)を測定し、その個数平均値を求めた。
【0100】
<キャリアの調製>
以下の方法により、下記表1に示すキャリア(C-1)~(C-11)を調製した。まず、キャリアの調製に用いた成分を説明する。
【0101】
ポリイミド樹脂溶液:未硬化のポリイミド樹脂を含有する溶液(荒川化学工業株式会社製「コンポセラン(登録商標)H801D」、樹脂濃度15質量%)
ポリアミドイミド樹脂溶液:ポリアミドイミド樹脂を含有する溶液(荒川化学工業社製「コンポセラン(登録商標)AI301」、樹脂濃度:18質量%)
PFA粒子:デュポン社製特注品、個数平均一次粒子径250nm
FEP粒子:デュポン社製特注品、個数平均一次粒子径250nm
PTFE粒子:デュポン社製特注品、個数平均一次粒子径250nm
キャリアコア:マンガンフェライト粒子(DOWAIPクリエイション株式会社製、体積中位径20.3μm、飽和磁化67emu/g)
シリコーン樹脂溶液(KR-255):メチルフェニルシリコーン樹脂含有溶液(信越化学工業株式会社製「KR-255」、樹脂濃度:50質量%)
シリコーン樹脂溶液(KR-301):メチルフェニルシリコーン樹脂含有溶液(信越化学工業株式会社製「KR-301」、樹脂濃度:40質量%)
シリコーン樹脂溶液(ES-1001N):エポキシ樹脂変性シリコーン樹脂含有溶液(信越化学工業株式会社製「ES-1001N」、樹脂濃度:45質量%)
チタン酸バリウム粒子:水熱合成法により製造されたチタン酸バリウムを含む粒子(堺化学工業株式会社製「BT-01」、個数平均一次粒子径:102nm)
カーボンブラック粒子(EC):カーボンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「ケッチェンブラック(登録商標)EC300J」、個数平均一次粒子径39.5μm)
カーボンブラック粒子(MA):カーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」、個数平均一次粒子径24nm)
【0102】
[キャリア(C-1)]
ポリイミド樹脂溶液にPFA粒子及びカーボンブラック粒子(EC)を分散させることにより、コート液を調整した。コート液の調製においては、「PFA粒子の質量:未硬化のポリイミド樹脂の質量:カーボンブラック粒子(EC)の質量=70:30:2」となるように各成分の使用量を調整した。
【0103】
流動層コーティング装置(フロイント産業株式会社製「スパイラフロー(登録商標)SFC-5」)を用いて、キャリアコア100質量部に対して、上述のコート液の全量(固形分を3質量部含有)を噴霧することで塗布した。このようにして、コート液でコーティングされたキャリアコアを得た。次に、コート液でコーティングされたキャリアコアを200℃で60分間加熱した。これにより、キャリアコアと、キャリアコアを被覆するコート層とを備えるキャリア(C-1)を得た。コート層は、ポリイミド樹脂、PFA粒子及びカーボンブラック粒子を含有していた。
【0104】
[キャリア(C-2)]
コート液の調製においてPFA粒子の代わりに等量のFEP粒子を用いた以外は、キャリア(C-1)の調製と同様の方法により、キャリア(C-2)を調製した。
【0105】
[キャリア(C-3)]
ホモミキサーを用いて以下の材料を分散処理することにより、コート液を調製した。
シリコーン樹脂溶液(KR-255):361.2質量部(樹脂量180.6質量部)
・チタン酸バリウム粒子:18.1質量部(シリコーン樹脂100質量部に対して10.0質量部)
・カーボンブラック粒子(EC):14.4質量部(シリコーン樹脂100質量部に対して8.0質量部)
・トルエン:1444.8質量部
【0106】
(塗布工程及び加熱工程)
流動層コーティング装置(株式会社パウレック製「FD-MP-01 D型」)を用いて、5000質量部のキャリアコアを流動させながら、キャリアコアに上述のコート液の全量(固形分を213.1質量部含有)を噴霧して塗布した。このようにして、コート液でコーティングされたキャリアコアを得た。コーティングの条件は、給気温度75℃、給気風量0.3m3/分、ローター回転数400rpmとした。次いで、コート液でコーティングされたキャリアコアを、電気炉を用いて200℃で1時間焼成した。これにより、キャリアコアと、キャリアコアを被覆するコート層とを備えるキャリア(C-3)を得た。コート層は、シリコーン樹脂、チタン酸バリウム粒子及びカーボンブラック粒子を含有していた。
【0107】
[キャリア(C-4)]
コート液の調製においてチタン酸バリウムの使用量を54.2質量部(シリコーン樹脂100質量部に対して30.0質量部)に変更した以外は、キャリア(C-3)の調製と同様の方法により、キャリア(C-4)を調製した。
【0108】
[キャリア(C-5)]
コート液の調製においてPFA粒子の代わりに等量のPTFE粒子を用いた以外は、キャリア(C-1)の調製と同様の方法により、キャリア(C-5)を調製した。
【0109】
[キャリア(C-6)]
以下の点を変更した以外は、キャリア(C-1)の調製と同様の方法により、キャリア(C-6)を調製した。キャリア(C-6)の調製においては、コート液の調製においてPFA粒子の代わりに等量のFEP粒子を用いた。また、キャリア(C-6)の調製においては、ポリイミド樹脂溶液の代わりに等量(樹脂量換算)のポリアミドイミド樹脂溶液を用いた。
【0110】
[キャリア(C-7)]
コート液の調製においてカーボンブラック粒子(EC)の代わりに等量のカーボンブラック粒子(MA)を用いた以外は、キャリア(C-1)の調製と同様の方法により、キャリア(C-7)を調製した。
【0111】
[キャリア(C-8)]
コート液の調製においてチタン酸バリウム粒子を用いなかった以外は、キャリア(C-3)の調製と同様の方法により、キャリア(C-8)を調製した。
【0112】
[キャリア(C-9)]
コート液の調製においてシリコーン樹脂溶液(KR-255)の代わりに樹脂量換算において等量のシリコーン樹脂溶液(KR-301)を用いた以外は、キャリア(C-3)の調製と同様の方法により、キャリア(C-9)を調製した。
【0113】
[キャリア(C-10)]
コート液の調製においてシリコーン樹脂溶液(KR-255)の代わりに樹脂量換算において等量のシリコーン樹脂溶液(ES-1001N)を用いた以外は、キャリア(C-3)の調製と同様の方法により、キャリア(C-10)を調製した。
【0114】
[キャリア(C-11)]
コート液の調製においてカーボンブラック粒子(EC)の代わりに等量のカーボンブラック粒子(MA)を用いた以外は、キャリア(C-3)の調製と同様の方法により、キャリア(C-11)を調製した。
【0115】
[キャリア(C-12)]
コート液の調製においてPFA粒子を用いなかった以外はキャリア(C-1)の調製と同様の方法により、キャリア(C-12)を調製した。
【0116】
なお、下記表3及び4において、「BaTiO3粒子」、「質量部」、「PI」、「PAI」、「Si(KR-255)」、「Si(KR-301)」及び「Si(ES-1001N)」は、それぞれ、「チタン酸バリウム粒子」、「樹脂溶液に含まれる樹脂100質量部に対する質量部」、「ポリイミド樹脂溶液」、「ポリアミドイミド樹脂溶液」、「シリコーン樹脂溶液(KR-255)」、「シリコーン樹脂溶液(KR-301)」及び「シリコーン樹脂溶液(ES-1001N)」を示す。
【0117】
【0118】
[トナーの調製]
以下の方法により、下記表2に示すトナー(T-1)~(T-3)を調製した。まず、各トナーの調製に用いる原料を調製した。
【0119】
(非晶性ポリエステル樹脂の合成)
温度計(熱電対)、脱水管、窒素ガス導入管、及び攪拌装置(攪拌羽根)を備えた反応容器を油浴にセットした。この反応容器内に、BPA-PO(ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物)1575質量部と、BPA-EO(ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物)163質量部と、フマル酸377g質量部、触媒(酸化ジブチル錫)4質量部とを投入した。続けて、反応容器内を窒素雰囲気にした後、内容物を攪拌しながら、油浴を用いて反応容器内の温度を220℃に昇温させた。窒素雰囲気且つ温度220℃の条件で、副生水を留去しながら、反応容器の内容物を8時間重合反応させた。続けて、反応容器内を減圧した後、減圧雰囲気(圧力:8kPa)且つ温度220℃の条件で、反応溶液の内容物を更に1時間重合反応させた。続けて、反応容器内の温度を210℃まで下げた後、反応容器内に無水トリメリット酸336質量部を加えた。そして、減圧雰囲気(圧力:8kPa)且つ温度210℃の条件で、反応容器の内容物を反応させた。反応における反応時間は、反応生成物である非晶性ポリエステル樹脂の物性値が、以下の物性になるように調節した。その後、反応容器から反応生成物を取り出して冷却することで、以下の物性を有する非晶性ポリエステル樹脂を得た。なお、得られたポリエステル樹脂は、示差走査熱量計を用いて測定される吸熱曲線において明確な吸熱ピークが確認されず明確な融点を測定できなかったことから、非晶性であると判断した。
【0120】
(非晶性ポリエステル樹脂の物性)
軟化点(Tm):100℃
ガラス転移点(Tg):50℃
質量平均分子量(Mw):30,000
酸価:15mgKOH/g
水酸基価:30mgKOH/g
【0121】
(トナー母粒子の調製)
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-10B」)を用いて、結着樹脂100質量部と、着色剤4質量部と、電荷制御剤1質量部と、離型剤5質量部とを混合し、混合物を得た。結着樹脂としては、上述の非晶性ポリエステル樹脂を用いた。着色剤としては、銅フタロシアニンブルー顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)を用いた。電荷制御剤としては、4級アンモニウム塩(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P-51」)を用いた。離型剤としては、カルナバワックス(株式会社加藤洋行製「特製カルナウバワックス1号」)を用いた。
【0122】
得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM-30型」)を用いて溶融混練し、溶融混練物を得た。溶融混練物を、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル」)を用いて粉砕し、粉砕物を得た。粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェット」)を用いて分級した。これにより、体積中位径が6.8μmである粉体状のトナー母粒子を得た。
【0123】
(樹脂粒子の調製)
温度計(熱電対)、攪拌装置、還流冷却器、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応容器を、80℃のウォーターバス中にセットした。この反応容器に、イオン交換水300質量部と、ジ-tert-ブチルペルオキサイド1質量部とを投入し、溶液を得た。得られた溶液を80℃の温度に維持し攪拌しながら、窒素ガス雰囲気下、過硫酸アンモニウム0.2質量部と、モノマー混合物60質量部とを、溶液に1時間かけて滴下した。モノマー混合物は、スチレン20モル%と、メタクリル酸ブチル80モル%との混合物であった。次いで、反応容器内の内容物を、攪拌しながら重合反応させた。重合反応の反応条件は、反応温度100℃、反応時間3時間、且つ攪拌速度1400rpmであった。反応により得られたエマルション溶液を乾燥させて、樹脂粒子(R1)を得た。樹脂粒子(R1)の個数平均一次粒子径は、30nmであった。
【0124】
(トナー(T-1)の調製)
上述のトナー母粒子100.0質量部と、上述の樹脂粒子(R1)0.5質量部と、シリカ粒子1.0質量部と、0.5質量部の二酸化チタン粒子とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-20B」)を用いて、4,000rpmの条件で5分間混合した。シリカ粒子としては、日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)RA-200」(BET比表面積:約150m2/g、個数平均一次粒子径:約12nm、密度:約2.2g/cm3)を用いた。二酸化チタン粒子としては、イーエムジャパン株式会社製「NT-TiO2-11」(BET比表面積:15~35m2/g、個数平均一次粒子径:約100nm、密度:4.23g/cm3)を用いた。得られた混合物を200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別することで、トナー(T-1)を得た。
【0125】
(トナー(T-2)の調製)
二酸化チタン粒子の代わりに酸化アルミニウム粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROXIDE(登録商標)Alu C805」、BET比表面積:75~105m2/g)0.75質量部を用いた以外は、トナー(T-1)の調製と同様の方法により、トナー(T-2)を調製した。
【0126】
(トナー(T-3)の調製)
樹脂粒子(R1)を用いなかった以外は、トナー(T-1)の調製と同様の方法により、トナー(T-3)を調製した。
【0127】
【0128】
<現像剤の調製>
下記表3に示すキャリア及びトナーを組み合わせ、初期現像剤及び補給用現像剤を調製した。まず、粉体混合機(愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー(登録商標)」、混合方式:容器回転揺動方式)を用い、8質量部のトナーと100質量部のキャリアとを、30分間混合した。これにより、初期現像剤(A-1)~(A-12)(トナー濃度約7質量%)を得た。また、上述の粉体混合機を用い、100質量部のトナーと10質量部のキャリアとを、30分間混合した。これにより、補給用現像剤(B-1)~(B-13)(トナー濃度約91質量%)を得た。
【0129】
【0130】
<評価>
下記表4に示す通りに初期現像剤(A-1)~(A-12)及び補給用現像剤(B-1)~(B-13)を組み合わせ、実施例1~14及び比較例1~10の現像剤セットを用意した。そして、各実施例及び比較例の現像剤セットを用いて画像形成した際の画像濃度及びかぶりを評価した。評価結果を下記表5に示す。但し、比較例10の現像剤セットでは、トナーが評価機内部で飛散してしまい、まともに画像形成を行うことができなかった。そのため、下記表5では、各測定値を「-」としている。
【0131】
【0132】
[評価機]
評価機として、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 7054ci」、感光体ドラム:アモルファスシリコンドラム)を用いた。この評価機は、感光体と、感光体に形成された静電潜像を現像剤(詳しくは、現像剤に含まれるトナー)により現像する現像装置と、現像装置内の現像剤を排出する現像剤排出部と、補給用現像剤を現像装置内へ補給する補給用現像剤供給部とを備えていた。
【0133】
評価機のシアン用現像装置に初期現像剤(詳しくは、初期現像剤(A-1)~(A-12)の何れか)を投入した。また、評価機の補給用シアン現像剤供給部に補給用現像剤(詳しくは、補給用現像剤(B-1)~(B-13)の何れか)を投入した。
【0134】
[記録媒体]
記録媒体として、A4サイズの普通紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」)を用いた。
【0135】
[画像形成]
温度20℃かつ湿度65%RHの環境下で、上述の評価機を用いて、画像(印字率4%の文字パターン画像)を50万枚の記録媒体に印刷した。印刷においては、7枚の記録媒体に連続して印刷した後に印刷を停止するという動作を繰り返すように評価機を設定した(間欠印刷)。印刷の指示を評価機が受け付けると、評価機は、シアン用現像装置内の初期現像剤により感光体の静電潜像を現像して記録媒体に対する印刷を行った。その後、評価機は、シアン用現像装置内の現像剤の排出と、シアン用現像装置内への補給用現像剤の補給とを行いつつ、シアン用現像装置内の現像剤により感光体の静電潜像を現像することにより、記録媒体に対する印刷を引き続き行った。
【0136】
なお、上述の画像形成では、現像剤の補給及び排出を行うことにより、記録媒体を10万枚印刷する毎に概ね50質量%のキャリアが入れ替わっていると考えられる(半減期10万枚印刷)。初期現像剤に含まれる初期キャリアは、耐刷の初期から使用しているため、10万枚目の記録媒体を印刷する頃には半数程度がシアン用現像装置から排出されている。また、シアン用現像装置内に残っている初期キャリアについても、表面にトナー成分が付着することで徐々に機能が低下している。これに対して、補給用現像剤に含まれる補給用キャリアは、フレッシュな状態でシアン用現像装置に随時補給され続けている。これらの結果、10万枚目の記録媒体を印刷する頃には、初期キャリアは印刷結果にはあまり影響せず、補給用キャリアによる影響が印刷結果において支配的になっていると考えられる。
【0137】
上述の印刷においては、1枚目(初期)の印刷後、1000枚目の印刷後、10万枚目の印刷後、及び50万枚目の印刷後のそれぞれにおいて、評価機を用いて評価用画像(ソリッド画像部及び空白部を含む画像)を記録媒体に印刷した。評価用画像が印刷された記録媒体の各々に対して、画像濃度(ID)及びかぶり濃度(FD)を測定した。
【0138】
[画像濃度]
画像濃度の測定では、反射濃度計(X-Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)を用いて、評価用画像が印刷された記録媒体のソリッド画像部の反射濃度(画像濃度(ID))を測定した。画像濃度は、以下の基準で判定した。
【0139】
(画像濃度の基準)
A(良好):1枚目、1000枚目、10万枚目、及び50万枚目の何れにおいても、画像濃度が1.30以上である。
B(不良):1枚目、1000枚目、10万枚目、及び50万枚目の少なくとも1つにおいて、画像濃度が1.30未満である。
【0140】
[かぶり]
かぶり濃度の測定では、上述の反射濃度計を用いて、評価用画像が印刷された記録媒体の空白部の反射濃度を測定した。また、上述の反射濃度計を用いて、未印刷の記録媒体の反射濃度を測定した。そして、式「かぶり濃度=空白部の反射濃度-未印刷の記録媒体の反射濃度」に基づいて、かぶり濃度を算出した。かぶり濃度は、以下の基準で判定した。
【0141】
(かぶりの基準)
A(良好):1枚目、1000枚目、10万枚目、及び50万枚目の何れにおいても、かぶり濃度が0.005以下である。
B(不良):1枚目、1000枚目、10万枚目、及び50万枚目の少なくとも1つにおいて、かぶり濃度が0.005超である。
【0142】
下記表5において、「初期」、「1k」、「100k」及び「500k」は、それぞれ、「1枚目」、「1000枚目」、「10万枚目」及び「50万枚目」を示す。
【0143】
【0144】
表1~5に示すように、実施例1~14の現像剤セットにおいて用いたキャリアセットは、第1キャリア粒子を含む第1キャリアと、第2キャリア粒子を含む第2キャリアとを備えていた。第1キャリア粒子は、第1キャリアコアと、第1キャリアコアの表面を被覆する第1コート層とを有していた。第1コート層は、ポリイミド樹脂及びフッ素樹脂粒子を含有していた。第2キャリア粒子は、第2キャリアコアと、第2キャリアコアの表面を被覆する第2コート層とを有していた。第2コート層は、シリコーン樹脂及びチタン酸バリウム粒子を含有していた。実施例1~14の現像剤セットは、画像濃度及びかぶりが良好であった。
【0145】
一方、比較例1、3、4及び6において用いたキャリアセットは、補給用キャリアのコート層にシリコーン樹脂及びチタン酸バリウム粒子が含有されておらず、代わりにポリイミド樹脂及びフッ素樹脂粒子が含有されていた。その結果、比較例1、3、4及び6では、かぶりの発生を抑制できなかった。
【0146】
比較例2、5及び7において用いたキャリアセットは、初期キャリアのコート層にポリイミド樹脂及びフッ素樹脂粒子が含有されておらず、代わりにシリコーン樹脂及びチタン酸バリウム粒子が含有されていた。その結果、比較例2、5及び7では、画像濃度が不良であった。また、比較例2では、かぶりの発生も抑制できなかった。
【0147】
比較例8において用いたキャリアセットは、初期キャリアのコート層にポリイミド樹脂が含有されておらず、代わりにポリアミドイミド樹脂が含有されていた。その結果、比較例8では、かぶりの発生を抑制できなかった。
【0148】
比較例9において用いたキャリアセットは、補給用キャリアのコート層にチタン酸バリウム粒子が含有されていなかった。その結果、比較例9では、かぶりの発生を抑制できなかった。
【0149】
比較例10において用いたキャリアセットは、初期キャリアのコート層にフッ素樹脂粒子が含有されていなかった。その結果、比較例10では、キャリアによってトナーを十分に帯電させることができず、まともに画像形成を行うことができなかった。