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特開2023-162571シミュレーションシステムとそのオープンループテスト処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162571
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】シミュレーションシステムとそのオープンループテスト処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/07 20060101AFI20231101BHJP
   G06F 11/36 20060101ALI20231101BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G06F11/07 190
G06F11/36 196
G01M17/007 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072988
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 友和
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042HH07
5B042JJ29
5B042KK15
(57)【要約】
【課題】外部装置を追加することなく、容易に不具合箇所を検出することができるシミュレーションシステムを提供すること。
【解決手段】車両に搭載される車両部品を制御する制御プログラムを実行する制御装置10と、車両部品の動作を模擬するソフトウェアが実装されるシミュレーション装置1と、制御装置10とシミュレーション装置1とを接続するワイヤハーネス4と、シミュレーション装置1の出力端子2aと入力端子6aを接続するループバック用中間ハーネス5と、を備え、シミュレーション装置1は、車両部品の物理量を示す物理値を制御装置10に出力する信号の信号情報に変換するマップ72と、オープンループテストを実施する際に、マップ72から逆マップ73を自動生成し、シミュレーション装置1に設定された設定値と設定値に対応して制御装置10が認識した内部値とが不一致である場合、不一致の原因箇所の特定を自動実行する制御部7と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両部品を制御する制御プログラムを実行する制御装置と、
前記車両部品の動作を模擬するソフトウェアであるシミュレーションモデルが実装されるシミュレーション装置と、
前記制御装置と前記シミュレーション装置とを接続するワイヤハーネスと、を備えるシミュレーションシステムであって、
前記シミュレーション装置の前記ワイヤハーネスが接続される出力端子の出力を、前記シミュレーション装置の入力端子に入力するループバック用中間ハーネスを備え、
前記制御装置と前記シミュレーション装置とは通信可能に構成され、
前記シミュレーション装置は、前記車両部品の物理量を示す値である物理値を前記制御装置に出力する信号の情報である信号情報に変換するマップと、
前記ワイヤハーネス及び前記シミュレーションモデルが設計仕様通りにできていることを検証するオープンループテストを実施する際に、前記マップから前記信号情報を前記物理値に変換する逆マップを自動生成し、前記シミュレーション装置に設定された前記物理値である設定値と、前記設定値に対応して前記制御装置が認識した内部値と、が不一致である場合、不一致の原因箇所を特定するテストプログラムを自動実行する制御部と、を備えるシミュレーションシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記テストプログラムにおいて、
前記マップにより変換される前の前記物理値と、前記マップを用いて変換された前記信号情報と、前記出力端子から出力された信号と、前記入力端子に入力された信号と、前記逆マップにより変換される前の前記信号情報と、前記ワイヤハーネスを介して前記制御装置に入力された信号と、前記制御装置に入力された信号により前記制御装置が認識した内部値と、に基づいて、不一致の原因箇所を特定する請求項1に記載のシミュレーションシステム。
【請求項3】
車両に搭載される車両部品を制御する制御プログラムを実行する制御装置と、前記車両部品の動作を模擬するソフトウェアであるシミュレーションモデルが実装されるシミュレーション装置と、前記制御装置と前記シミュレーション装置とを接続するワイヤハーネスと、前記シミュレーション装置の前記ワイヤハーネスが接続される出力端子の出力を、前記シミュレーション装置の入力端子に入力するループバック用中間ハーネスと、前記シミュレーション装置に前記車両部品の物理量を示す値である物理値を前記制御装置に出力する信号の情報である信号情報に変換するマップと、を備えるシミュレーションシステムのオープンループテスト処理方法であって、
前記マップから前記信号情報を前記物理値に変換する逆マップを自動生成する自動生成ステップと、
前記シミュレーション装置に設定された前記物理値である設定値と、前記設定値に対応して前記制御装置が認識した内部値と、が一致するか否かを判定する判定ステップと、
前記設定値と、前記内部値とが一致すると判定された場合に、結果が正常であることを出力する正常出力ステップと、
前記設定値と、前記内部値とが不一致であると判定された場合に、前記シミュレーション装置において不一致の原因箇所の特定を自動実行する原因箇所特定ステップと、を備えるオープンループテスト処理方法。
【請求項4】
前記原因箇所特定ステップは、
前記ワイヤハーネスを介して前記制御装置に入力された信号の情報と、前記内部値と、を取得する取得ステップと、
前記マップにより変換される前の前記物理値と、前記マップを用いて変換された前記信号情報と、前記出力端子から出力された信号と、前記入力端子に入力された信号と、前記逆マップにより変換される前の前記信号情報と、前記ワイヤハーネスを介して前記制御装置に入力された信号の情報と、前記内部値と、に基づいて、不一致の原因箇所を特定する特定ステップと、
不一致の原因箇所を出力する原因出力ステップと、を備える請求項3に記載のオープンループテスト処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
シミュレータを利用した車載電子コントローラ機能の開発を行なう手法として、HILS(Hardware In the Loop Simulation)システムがある。
【0003】
HILSシステム構築の過程で、ECM(Engine Control Module)などの制御装置とHILSシステムとを接続するために製造したワイヤハーネスや、エンジン挙動を模擬するように設定されたシミュレーションモデルが設計仕様通りに動作することを検証するオープンループテストが実施される。
【0004】
オープンループテストの実施中に、HILSシステム側でセットされた値と、ECM側で認識された値とが不一致になる場合がある。このような場合の原因として複数の箇所が考えられるため、原因箇所の特定は容易ではない。このため、HILSシステム構築完了までに時間がかかってしまう。また、HILSシステム構築完了までの時間を予測することが難しいという面もある。
【0005】
特許文献1には、車両制御に関するプログラムを実行する制御装置と、制御装置に接続され、車両動作を模擬する機能装置と、機能装置に接続され、ユーザによって設定されたシミュレーション条件に基づいて機能装置に対して制御信号を出力することで、機能装置および制御装置のシミュレーションを実行するシミュレーション装置と、機能装置に接続され、機能装置に入出力される制御信号を収集する収集装置とを備えるシミュレーションシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-170403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のシミュレーションシステムでは、新たに収集装置という外部装置を追加しなければならないという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、外部装置を追加することなく、容易に不具合箇所を検出することができるシミュレーションシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、車両に搭載される車両部品を制御する制御プログラムを実行する制御装置と、前記車両部品の動作を模擬するソフトウェアであるシミュレーションモデルが実装されるシミュレーション装置と、前記制御装置と前記シミュレーション装置とを接続するワイヤハーネスと、を備えるシミュレーションシステムであって、前記シミュレーション装置の前記ワイヤハーネスが接続される出力端子の出力を、前記シミュレーション装置の入力端子に入力するループバック用中間ハーネスを備え、前記制御装置と前記シミュレーション装置とは通信可能に構成され、前記シミュレーション装置は、前記車両部品の物理量を示す値である物理値を前記制御装置に出力する信号の情報である信号情報に変換するマップと、前記ワイヤハーネス及び前記シミュレーションモデルが設計仕様通りにできていることを検証するオープンループテストを実施する際に、前記マップから前記信号情報を前記物理値に変換する逆マップを自動生成し、前記シミュレーション装置に設定された前記物理値である設定値と、前記設定値に対応して前記制御装置が認識した内部値と、が不一致である場合、不一致の原因箇所を特定するテストプログラムを自動実行する制御部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、外部装置を追加することなく、容易に不具合箇所を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施例に係るシミュレーションシステムの概念構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係るシミュレーションシステムの不一致の原因のパターンの例を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係るシミュレーションシステムのオープンループテスト実行処理の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、従来のシミュレーションシステムの概念構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係るシミュレーションシステムは、車両に搭載される車両部品を制御する制御プログラムを実行する制御装置と、車両部品の動作を模擬するソフトウェアであるシミュレーションモデルが実装されるシミュレーション装置と、制御装置とシミュレーション装置とを接続するワイヤハーネスと、を備えるシミュレーションシステムであって、シミュレーション装置のワイヤハーネスが接続される出力端子の出力を、シミュレーション装置の入力端子に入力するループバック用中間ハーネスを備え、制御装置とシミュレーション装置とは通信可能に構成され、シミュレーション装置は、車両部品の物理量を示す値である物理値を制御装置に出力する信号の情報である信号情報に変換するマップと、ワイヤハーネス及びシミュレーションモデルが設計仕様通りにできていることを検証するオープンループテストを実施する際に、マップから信号情報を物理値に変換する逆マップを自動生成し、シミュレーション装置に設定された物理値である設定値と、設定値に対応して制御装置が認識した内部値と、が不一致である場合、不一致の原因箇所を特定するテストプログラムを自動実行する制御部と、を備えるよう構成されている。
【0013】
これにより、本発明の一実施の形態に係るシミュレーションシステムは、外部装置を追加することなく、容易に不具合箇所を検出することができる。
【実施例0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係るシミュレーションシステムについて詳細に説明する。
【0015】
図1において、本発明の一実施例に係るシミュレーションシステムは、シミュレーション装置1と、制御装置10と、を含んで構成される。
【0016】
制御装置10は、例えば、エンジン制御を行なうECMのような、車両に搭載されるエンジンなどの車両部品を制御する制御プログラムを実行する。制御装置10として、ECMのような車載電子コントローラをそのまま使用してもよい。
【0017】
シミュレーション装置1は、エンジンなどの車両部品を擬似して、制御装置10に擬似信号を出力して、制御装置10の制御プログラムの動作を確認する。
【0018】
シミュレーション装置1と制御装置10は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行なう。
【0019】
制御装置10は、コネクタ11と、インターフェース回路12と、制御部13と、を含んで構成される。
【0020】
コネクタ11は、シミュレーション装置1と接続されるワイヤハーネス4に接続され、インターフェース回路12に篏合される。
【0021】
インターフェース回路12は、ワイヤハーネス4を介してシミュレーション装置1と信号を送受信する。ワイヤハーネス4を介する信号の送受信は、例えば、電圧のようなアナログ信号により送受信される。インターフェース回路12は、例えば、受信した電圧の電圧値を制御部13に出力する。シミュレーション装置1から制御装置10に入力される信号は、アナログ信号に限らず、デジタル信号やPWM(Pulse Width Modulation)信号などでもよい。
【0022】
制御部13は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0023】
コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、前述した車両部品を制御する制御プログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納された制御プログラムを実行することにより、コンピュータユニットは、車両部品を制御する処理を行なう。
【0024】
制御部13のROMには、例えば、シミュレーション装置1から入力された信号の情報である電圧値を車両部品の物理量を示す値である物理値に変換するマップ14が格納されている。
【0025】
制御部13は、例えば、シミュレーション装置1から入力された電圧値をマップ14により変換した車両部品の物理値をRAMの格納領域15に格納する。
【0026】
シミュレーション装置1は、出力用I/Oボード2と、コネクタ3と、ワイヤハーネス4と、ループバック用中間ハーネス5と、入力用I/Oボード6と、制御部7と、を含んで構成される。
【0027】
出力用I/Oボード2は、ワイヤハーネス4を介して制御装置10と信号を送受信する。出力用I/Oボード2には、コネクタ3が接続される出力端子2aが設けられている。出力用I/Oボード2は、例えば、制御部7が出力する電圧値の電圧を出力端子2aから出力する。出力用I/Oボード2には、出力端子2aから出力した電圧の電圧値を検出する不図示の電圧計が設けられており、この電圧計により検出された電圧値は、制御部7に通知される。
【0028】
ワイヤハーネス4は、シミュレーション装置1と制御装置10を接続する。シミュレーション装置1と制御装置10は、ワイヤハーネス4を介して信号の送受信を行なう。ワイヤハーネス4には、ワイヤハーネス4の各信号線を所望のタイミングで断線させる断線ボックス8が設けられている。
【0029】
ループバック用中間ハーネス5は、出力用I/Oボード2の出力を入力用I/Oボード6に入力する。
【0030】
入力用I/Oボード6は、ループバック用中間ハーネス5を介して出力用I/Oボード2から入力された信号を制御部7に出力する。入力用I/Oボード6には、ループバック用中間ハーネス5が接続される入力端子6aが設けられている。入力用I/Oボード6は、例えば、入力端子6aに入力された電圧の電圧値を制御部7に出力する。入力用I/Oボード6には、入力端子6aに入力された電圧の電圧値を検出する不図示の電圧計が設けられており、この電圧計により検出された電圧値は、制御部7に通知される。
【0031】
制御部7は、CPUと、RAMと、ROMと、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0032】
コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部7として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、コンピュータユニットは、本実施例における制御部7として機能する。
【0033】
制御部7のROMには、例えば、車両部品の物理量を示す値である物理値を制御装置10に出力する信号の情報である信号情報としての電圧値に変換するマップ72が格納されている。制御部7は、例えば、RAMの出力物理値格納領域71に設定された値を車両部品の物理値として、マップ72により変換した電圧値を出力用I/Oボード2に出力する。
【0034】
制御部7は、マップ72から、制御装置10に出力する信号の情報である電圧値を車両部品の物理値に変換する逆マップ73を自動生成する。制御部7は、例えば、入力用I/Oボード6から入力された信号情報である電圧値を逆マップ73により変換して入力物理値格納領域74に格納する。
【0035】
制御部7は、例えば、CANを介して制御装置10から受信した情報を、RAMの受信情報格納領域75に格納する。
【0036】
このようなシミュレーション装置1では、制御装置10の制御プログラムにより制御する車両部品を模擬するソフトウェアとしてシミュレーションモデルが動作している。シミュレーション装置1は、シミュレーションモデルにより、ワイヤハーネス4を介して制御装置10に、例えば車両部品の状態を示す擬似信号を出力し、制御装置10から出力される、例えば車両部品への信号の整合性を検証するシミュレーションを行なう。
【0037】
このようなシミュレーションを行なう際には、制御装置10の制御プログラムが実際の車両部品に接続されているときと同様に動作するように、制御装置10の入出力ピンに対応したワイヤハーネス4を設計して製造し、入出力ピン毎に必要な擬似負荷、実負荷等を接続するとともに、擬似信号の出力、制御装置10からの信号の受信等ができるようにシミュレーションモデルを設定する。
【0038】
シミュレーション装置1と制御装置10を接続する際の第一ステップとして、これらのハードウェア及びソフトウェアが設計仕様通りに製造、設定できていることを検証するオープンループテストが行なわれる。
【0039】
図4は、従来のシミュレーションシステムを示す図である。図4において、従来のシミュレーションシステムは、シミュレーション装置100と、制御装置110と、を含んで構成される。
【0040】
制御装置110は、コネクタ111と、インターフェース回路112と、制御部113と、を含んで構成される。
【0041】
コネクタ111は、シミュレーション装置100と接続されるワイヤハーネス103に接続され、インターフェース回路112に篏合される。
【0042】
インターフェース回路112は、ワイヤハーネス103を介してシミュレーション装置100と信号を送受信する。ワイヤハーネス103を介する信号の送受信は、例えば、電圧により送受信される。インターフェース回路112は、例えば、受信した電圧の電圧値を制御部113に出力する。
【0043】
制御部113は、CPUと、RAMと、ROMと、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0044】
コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、前述した車両部品を制御する制御プログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納された制御プログラムを実行することにより、コンピュータユニットは、車両部品を制御する処理を行なう。
【0045】
制御部113のROMには、例えば、シミュレーション装置1から入力された信号の情報である電圧値を車両部品の物理量を示す値である物理値に変換するマップ114が格納されている。
【0046】
制御部113は、例えば、シミュレーション装置100から入力された電圧値を車両部品の物理値に変換した値をRAMの格納領域115に格納する。
【0047】
制御装置110にはモニタ用PC116が接続され、制御装置110のRAMの内容を確認できるようになっている。モニタ用PC116は、パーソナルコンピュータによって構成される。
【0048】
シミュレーション装置100は、出力用I/Oボード101と、コネクタ102と、ワイヤハーネス103と、制御部105と、を含んで構成される。
【0049】
出力用I/Oボード101は、ワイヤハーネス103を介して制御装置110と信号を送受信する。出力用I/Oボード101には、コネクタ102が接続される図示しない出力端子が設けられている。出力用I/Oボード101は、例えば、制御部105が出力する電圧値の電圧を出力端子から出力する。
【0050】
ワイヤハーネス103は、シミュレーション装置100と制御装置110を接続する。シミュレーション装置100と制御装置110は、ワイヤハーネス103を介して信号の送受信を行なう。ワイヤハーネス103には、ワイヤハーネス103の各信号線を所望のタイミングで断線させる断線ボックス104が設けられている。
【0051】
制御部105は、CPUと、RAMと、ROMと、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0052】
コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部105として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、コンピュータユニットは、本実施例における制御部105として機能する。
【0053】
制御部105のROMには、例えば、車両部品の物理値を制御装置110に出力する信号の情報である電圧値に変換するマップ107が格納されている。制御部105は、例えば、RAMの出力物理値格納領域106に設定された値を車両部品の物理値として、マップ107により変換した電圧値を出力用I/Oボード101に出力する。
【0054】
シミュレーション装置100には、シミュレーション実行用PC108が接続され、RAMの出力物理値格納領域106への値の設定や、シミュレーションモデルの実行などを行なうことができるようになっている。シミュレーション実行用PC108は、パーソナルコンピュータによって構成される。
【0055】
このような従来のシミュレーションシステムでは、オープンループテストとして、例えば、シミュレーション装置100のRAMの出力物理値格納領域106にアクセル開度として30%をセットしたとき、モニタ用PC116により制御装置110のRAMの格納領域115の内容を確認し、シミュレーション装置100でセットしたアクセル開度の値である30%を認識していれば、アクセル開度に関わる入出力設定については合格と判定する。
【0056】
オープンループテストを実施する中で、何らかの原因によって、シミュレーション装置100にセットした値と、制御装置110で認識される値にズレが生じる場合がある。この原因としては、マップ107またはマップ114の設定ミス、出力用I/Oボード101の不調、コネクタ102またはコネクタ111の製造ミス、ワイヤハーネス103の断線、制御装置110の内部回路の故障などが考えられるが、この特定は容易ではない。
【0057】
また、原因の調査については、基本的に技術者の経験等に基づいてマニュアル操作によって実施されるため、技術者の経験により試験時間のばらつきが大きく、時間管理においてシステム構築完了までの時間予測が立て辛く、試験データが一元的に残らず、テストの再現性に乏しい。
【0058】
このため、本実施例においては、ループバック用中間ハーネス5により出力用I/Oボード2から出力された信号を入力用I/Oボード6に入力し、制御部7でモニタできるようにした。
【0059】
また、制御装置10に入力された電圧値や、制御部13で認識した値を、CANを介してシミュレーション装置1に送信するようにした。
【0060】
また、車両部品の物理量を示す値である物理値を制御装置10に出力する信号の情報である電圧値に変換するマップ72の確からしさを判定するため、逆マップ73を自動生成しておき、ループバック用中間ハーネス5によりループバックされて入力用I/Oボード6に入力された電圧値から物理値を逆変換するようにしている。
【0061】
このような構成としたことで、シミュレーション装置1の制御部7において、図1におけるAからHの矢印で示した箇所での値を取得することができ、これらを比較することで原因箇所の特定を容易にした。
【0062】
Aの矢印で示したのは、RAMの出力物理値格納領域71に設定された物理量を示す物理値である。
【0063】
Bの矢印で示したのは、出力物理値格納領域71に設定された物理値がマップ72で変換された電圧値である。
【0064】
Cの矢印で示したのは、出力用I/Oボード2から出力された電圧値である。
Dの矢印で示したのは、入力用I/Oボード6に入力された電圧値である。
Eの矢印で示したのは、入力用I/Oボード6から制御部7に出力された電圧値である。
【0065】
Fの矢印で示したのは、入力用I/Oボード6から制御部7に出力された電圧値が逆マップ73で変換され、入力物理値格納領域74に格納された値である。
【0066】
Gの矢印で示したのは、インターフェース回路12に入力された電圧値である。
Hの矢印で示したのは、インターフェース回路12に入力された電圧値がマップ14で変換された値である。
【0067】
なお、G、Hの矢印で示した値は、制御装置10からCANを介してシミュレーション装置1に送信され、受信情報格納領域75に格納される。
【0068】
制御部7は、オープンループテストの結果、シミュレーション装置1にセットした値と、制御装置10で認識される値とが不一致である場合、不一致の原因箇所の特定を行なうテストプログラムを自動実行する。
【0069】
制御部7は、図2に示すようなパターンで不一致の原因を特定する。図2において、パターン1は、AとFとHの値が等しく、かつBとCとDとEとGの値が等しいときで、この場合、制御部7は、正常であると判定する。
【0070】
パターン2は、AとFの値が異なり、かつBとCとDとEとGの値が等しく、かつHとFの値が等しいときで、この場合、制御部7は、不一致の原因は、物理値を出力電圧値に変換するテーブルであるマップ72の設定ミスであるとする。
【0071】
パターン3は、BとCの値が異なり、かつCとDとEとGの値が等しいときで、この場合、制御部7は、不一致の原因は、出力用I/Oボード2の不調であるとする。
【0072】
パターン4は、EとGの値が異なり、かつBとCとDとEの値が等しいときで、この場合、制御部7は、不一致の原因は、ワイヤハーネス4の製造ミスであるとする。
【0073】
パターン5は、FとHの値が異なり、かつBとCとDとEとGの値が等しく、かつAとFの値が等しいときで、この場合、制御部7は、不一致の原因は、制御装置10の入力電圧値を物理値に変換するテーブルであるマップ14の設定ミスであるとする。
【0074】
以上のように構成された本実施例に係るシミュレーション装置1によるオープンループテスト実行処理について、図3を参照して説明する。なお、以下に説明するオープンループテスト実行処理は、ユーザによりオープンループテスト実行が選択されると実行される。
【0075】
ステップS1において、制御部7は、出力物理値格納領域71に物理値の設定を行なう。ステップS1の処理を実行した後、制御部7は、ステップS2の処理を実行する。
【0076】
ステップS2において、制御部7は、出力物理値格納領域71に格納されたシミュレーション装置1の設定値(Aの値)と、受信情報格納領域75に格納された制御装置10のマップ14により電圧値が変換された値である内部値(Hの値)を取得する。ステップS2の処理を実行した後、制御部7は、ステップS3の処理を実行する。
【0077】
ステップS3において、制御部7は、シミュレーション装置1の設定値(Aの値)と制御装置10の内部値(Hの値)が一致しているか否かを判定する。
【0078】
シミュレーション装置1の設定値(Aの値)と制御装置10の内部値(Hの値)が一致していると判定した場合には、制御部7は、ステップS4の処理を実行する。シミュレーション装置1の設定値(Aの値)と制御装置10の内部値(Hの値)が一致していないと判定した場合には、制御部7は、ステップS5の以降の原因箇所を特定するテストプログラムの処理を実行する。
【0079】
ステップS4において、制御部7は、オープンループテストの結果としてOKを出力しオープンループテストの検査を終了する。ステップS4の処理を実行した後、制御部7は、オープンループテスト実行処理を終了する。
【0080】
ステップS5において、制御部7は、受信情報格納領域75に格納された制御装置10のインターフェース回路12に入力された電圧値である内部演算値(Gの値)を取得する。ステップS5の処理を実行した後、制御部7は、ステップS6の処理を実行する。
【0081】
ステップS6において、制御部7は、シミュレーション装置1の内部演算値であるB、C、D、E、Fの値を取得する。ステップS6の処理を実行した後、制御部7は、ステップS7の処理を実行する。
【0082】
ステップS7において、制御部7は、図2のようなパターンで内部演算値の組み合わせを比較し、原因箇所を特定する。ステップS7の処理を実行した後、制御部7は、ステップS8の処理を実行する。
【0083】
ステップS8において、制御部7は、特定された原因箇所を出力する。ステップS8の処理を実行した後、制御部7は、ステップS9の処理を実行する。
【0084】
ステップS9において、制御部7は、オープンループテストの結果としてNGを出力しオープンループテストの検査を終了する。ステップS9の処理を実行した後、制御部7は、オープンループテスト実行処理を終了する。
【0085】
このように、本実施例では、制御部7は、物理値を制御装置10に出力する信号の情報である信号情報としての電圧値に変換するマップ72から、制御装置10に出力する信号の信号情報である電圧値を車両部品の物理値に変換する逆マップ73を自動生成し、オープンループテストを実施する際に、シミュレーション装置1での設定値と、制御装置10で認識した内部値とが不一致である場合、不一致の原因箇所を特定するテストプログラムを実行する。
【0086】
これにより、シミュレーション装置1での設定値と、制御装置10で認識した内部値とが不一致である場合、テストプログラムにより不一致の原因箇所が特定され、容易に不一致の原因箇所を特定することができる。
【0087】
また、テストプログラムにより不一致の原因箇所が特定されるため、シミュレーションシステム構築完了までにかかる時間を容易に予測することができる。
【0088】
また、テストデータを一元的に管理することができ、テストの再現性を向上させることができる。
【0089】
また、制御部7は、テストプログラムにおいて、マップ72により変換される前の物理値と、マップ72を用いて変換された電圧値と、出力端子2aから出力された電圧の電圧値と、入力端子6aに入力された電圧の電圧値と、逆マップ73により変換される前の電圧値と、逆マップ73を用いて変換された物理値と、制御装置10に入力された電圧の電圧値と、制御装置10に入力された電圧の電圧値が制御装置10のマップ14により変換された物理値と、に基づいて、不一致の原因箇所を特定する。
【0090】
これにより、外部装置を追加することなく、オープンループテストを実行するのと同時に不具合箇所を検出することができる。
【0091】
なお、本実施例においては、エンジン制御コントローラの例を示したが、トランスミッション制御コントローラやハイブリッド制御コントローラなどにも適用することができる。
【0092】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0093】
1 シミュレーション装置
2 出力用I/Oボード
2a 出力端子
3 コネクタ
4 ワイヤハーネス
5 ループバック用中間ハーネス
6 入力用I/Oボード
6a 入力端子
7 制御部
10 制御装置
12 インターフェース回路
13 制御部
14 マップ
15 格納領域
71 出力物理値格納領域
72 マップ
73 逆マップ
74 入力物理値格納領域
75 受信情報格納領域
図1
図2
図3
図4