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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162572
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】気液分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20231101BHJP
【FI】
B01D53/26 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072992
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012858
【氏名又は名称】パワードライヤー有限会社
(71)【出願人】
【識別番号】521182917
【氏名又は名称】株式会社大川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】本橋 孝雄
【テーマコード(参考)】
4D052
【Fターム(参考)】
4D052AA06
4D052BA00
4D052BB02
4D052FA01
(57)【要約】
【課題】簡単な構造の気液分離手段を採用することにより、容器本体に流れ込んだ圧縮空気を冷却化・整流化・結露化させながら、液状化現象の促進を図ること。
【解決手段】気液分離手段は、気液分離手段を構成する第1の気液分離手段は、前記圧縮空気の空気流を前記長筒状容器の吸入口側から該長筒状容器の底壁内面側へと整流的に案内する複数個の筋状溝を外周面に有する傘状の外筒と、この外筒に一体的に設けられた内筒から成り、一方、第2の気液分離手段は、前記蓋体に接続する接続筒の下端部に設けられていると共に、前記内筒の内部に入り込んだ気液分離中の空気流からさらに水分を除去する複数の気体流量制御小孔を有する盤状の邪魔部であること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液分離手段を構成する第1の気液分離手段は、前記圧縮空気の空気流を前記長筒状容器の吸入口側から該長筒状容器の底壁内面側へと整流的に案内する放射状の第1冷却フィン又は前記長筒状容器の底壁内面側から筒状胴体部の下端開口へと方向転換して該筒状胴体部の中に入り込んだ気液分離中の空気流を上方に向かって整流的に案内する放射状の第2冷却フィンのいずれか一方を有する筒状体であり、一方、第2の気液分離手段は、前記蓋体に接続する接続筒の下端部に設けられていると共に、気液分離中の空気流からさらに水分を除去する複数の気体流量制御小孔を有する盤状の邪魔部であることを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気液分離装置に於いて、前記筒状体は、外周面に前記第1冷却フィンが一体に設けられた外筒と、この外筒の内周面にその外周面が密着状態に接合し、かつその内周面に前記第2冷却フィンが一体に設けられた内筒とからなり、前記外筒の外周面と前記容器本体の内周面との間が、前記第1冷却フィンによって整流化される下向方向成分の空気流が通過する第1流路であることを特徴とする気液分離装置。
【請求項3】
請求項2に記載の気液分離装置に於いて、少なくとも前記筒状体及び前記第1・第2冷却フィンは、気液分離中の空気流の温度を奪うアルミニウム又は銅のいずれかの熱伝導性の高い材質で成形された吸熱部材であり、該吸熱部材の熱は、を介して前記長筒状容器の外部に放出されることを特徴とする気液分離装置。
【請求項4】
気液分離手段を構成する第1の気液分離手段は、前記圧縮空気の空気流を前記長筒状容器の吸入口側から該長筒状容器の底壁内面側へと整流的に案内する複数個の筋状溝を外周面に有する傘状の外筒と、この外筒に一体的に設けられた内筒から成り、一方、第2の気液分離手段は、前記蓋体に接続する接続筒の下端部に設けられていると共に、前記内筒の内部に入り込んだ気液分離中の空気流からさらに水分を除去する複数の気体流量制御小孔を有する盤状の邪魔部であることを特徴とする気液分離装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項4に記載の気液分離装置に於いて、前記気液分離装置は、車両のエアブレーキシステムのラインに含まれるエアタクの前側又は後側のいずれか一方に位置づけられていることを特徴とする気液分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気に含まれている水分を分離する気液分離装置に関し、特に、該気液分離装置によって乾燥化された空気を受け入れる空気吹き出し手段(容器も含む)に供給することができる気液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内に流入した水蒸気を含む圧縮空気は、流層を構成する流線を制御する筒状、壺形状、逆傘形状等の仕切り部材に形成した流体制御孔を通過する際、空気(気流)の速度が増し、その結果、高密度物質を通過させない効果を生み出し、圧縮空気内に存在する高密度物質である水滴・異物を除去する性能があることは、当業者に知られている。
【0003】
まず特許文献1の図8には、水分が高密度の圧縮空気を送る空気送付手段と、水分が低密度の乾燥空気を吹き出す空気吹き出し手段との間に接続状態で介在し、長筒状容器の内部に固定的に設けられ、かつ前記内部に流れ込んだ前記圧縮空気に含まれている水分を水滴状に分離して前記乾燥空気に換える気液分離手段を有する気液分離装置が開示されている。
【0004】
前記気液分離手段は、中心部に気体流通孔を有する逆傘状態の受板17と、この受板の上端部に略水平状態に固定され、かつ、流体制御用の多数の空気孔15とから構成されたものである。
【0005】
この気液分離手段は、非常にシンプルが構成なので、安価に製造することができるという利点があるものの、長筒状容器2に入り込んだ圧縮空気を冷却する機能を有しない点、圧縮空気と接触する面積が少ない点等から、圧縮空気を整流化・結露化させながら、液状化現象を促進させることができないという問題点がある(符号は特許文献1のもの)。
次に特許文献2は、本願の発明者が創作した気液分離装置であるが、この気液分離装置の筒状仕切り体の内部空間に垂設された気液分離手段は、その外周面に上方端部から下方端部に至るまで複数の環状突起と凹所を有するものの、特許文献1と同様に長筒状容器に入り込んだ圧縮空気を冷却する機能を有しない点、圧縮空気と接触する面積が少ない点等から、圧縮空気を整流化・結露化させながら、液状化現象を促進させることができないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2805138号公報の図8
【特許文献2】特許第5467180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主たる目的は、従来の特許文献の問題点に鑑み、簡単な構造の気液分離手段を採用することにより、容器本体に流れ込んだ圧縮空気を整流化・結露化させながら、液状化現象の促進を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の気液分離装置は、気液分離手段を構成する第1の気液分離手段は、前記圧縮空気の空気流を前記長筒状容器の吸入口側から該長筒状容器の底壁内面側へと整流的に案内する放射状の第1冷却フィン又は前記長筒状容器の底壁内面側から筒状胴体部の下端開口へと方向転換して該筒状胴体部の中に入り込んだ気液分離中の空気流を上方に向かって整流的に案内する放射状の第2冷却フィンのいずれか一方を有する筒状体であり、一方、第2の気液分離手段は、前記蓋体に接続する接続筒の下端部に設けられていると共に、気液分離中の空気流からさらに水分を除去する複数の気体流量制御小孔を有する盤状の邪魔部であることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
上記構成に於いて、前記筒状体は、外周面に前記第1冷却フィンが一体に設けられた外筒と、この外筒の内周面にその外周面が密着状態に接合し、かつその内周面に前記第2冷却フィンが一体に設けられた内筒とからなり、前記外筒の外周面と前記容器本体の内周面との間が、前記第1冷却フィンによって整流化される下向方向成分の空気流が通過する第1流路であることを特徴とする。また前記構成に於いて、少なくとも前記筒状体及び前記第1・第2冷却フィンは、気液分離中の空気流の温度を奪うアルミニウム又は銅のいずれかの熱伝導性の高い材質で成形された吸熱部材であり、該吸熱部材の熱は、を介して前記長筒状容器の外部に放出されることを特徴とする。
【0010】
また本発明の気液分離装置は、気液分離手段を構成する第1の気液分離手段は、前記圧縮空気の空気流を前記長筒状容器の吸入口側から該長筒状容器の底壁内面側へと整流的に案内する複数個の筋状溝を外周面に有する傘状の外筒と、この外筒に一体的に設けられた内筒から成り、一方、第2の気液分離手段は、前記蓋体に接続する接続筒の下端部に設けられていると共に、前記内筒の内部に入り込んだ気液分離中の空気流からさらに水分を除去する複数の気体流量制御小孔を有する盤状の邪魔部であることを特徴とする(請求項4)。
【0011】
そして、請求項4又は請求項1に記載の気液分離装置に於いて、前記気液分離装置は、車両のエアブレーキシステムのラインに含まれるエアタクの前側又は後側のいずれか一方に位置づけられていることを特徴とする。
【0012】
その他、実施形態によっては、接続筒の下端部は筒状体の上端部に圧入固定(例えば焼嵌め)され、一方、接続筒の上端部は蓋体の排風側の水平壁部に着脱可能に螺合するので、各部材を簡単に結合することができる。
【発明の効果】
【0013】
簡単な構造の気液分離手段を採用することにより、容器本体に流れ込んだ圧縮空気を整流化・結露化させながら、液状化現象の促進を図ることができる。
【0014】
すなわち、(1)第1実施形態の第1の気液分離手段は、前記圧縮空気の空気流を前記長筒状容器の吸入口側から該長筒状容器の底壁内面側へと整流的に案内する放射状の第1冷却フィン又は前記長筒状容器の底壁内面側から筒状胴体部の下端開口へと方向転換して該筒状胴体部の中に入り込んだ気液分離中の空気流を上方に向かって整流的に案内する放射状の第2冷却フィンのいずれか一方を有する筒状体であり、一方、第2の気液分離手段は、前記蓋体に接続する接続筒の下端部に設けられていると共に、気液分離中の空気流からさらに水分を除去する複数の気体流量制御小孔を有する盤状の邪魔部であるから、容器本体に流れ込んだ圧縮空気を効率的に整流化しつつ冷却化、結露化を促進することができる。
【0015】
(2)また第2実施形態の第1の気液分離手段は、前記圧縮空気の空気流を前記長筒状容器の吸入口側から該長筒状容器の底壁内面側へと整流的に案内する複数個の筋状溝を外周面に有する傘状の外筒と、この外筒に一体的に設けられた内筒から成り、一方、第2の気液分離手段は、前記蓋体に接続する接続筒の下端部に設けられていると共に、前記内筒の内部に入り込んだ気液分離中の空気流からさらに水分を除去する複数の気体流量制御小孔を有する盤状の邪魔部であるから、容器本体に流れ込んだ圧縮空気を効率的に容器本体の内周壁側に整流化した状態で誘導し、かつ結露化を促進することができる。
【0016】
なお、前記気液分離手段が液分離中の空気流の温度を奪うアルミニウム又は銅のいずれかの熱伝導性の高い材質で成形された吸熱部材である実施形態の場合には、気液分離手段は簡単な冷却器の構造となるので、安価に製造することができると共に、本発明の主たる課題(液状化現象の促進)を確実に達成することができる。また気液分離装置は、車両のエアブレーキシステムのラインに含まれるエアタクの前側又は後側のいずれか一方に位置づけられている実施形態(用途発明)の場合は、車両のエアブレーキシステムのラインに含まれるモレキュラー装置は、水滴化に関して、依然僅かな水蒸気を吸着しているものと推測され得るので、前記僅かな水蒸気を取り除くことにより、該エアブレーキシステムの品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1乃至図10は本発明の第1実施形態を示す各説明図。図11図13は本発明の筒状体の他の実施形態を示す各説明図。図14乃至図21は本発明の第2実施形態を示す各説明図。
図1】第1実施形態の本発明の主要部を正面視側から見た縦断面概略説明図。
図2】長筒状容器の分解斜視図。
図3】要部の概略説明図。
図4】要部の筒状体(外筒と内筒)の概略説明図。
図5図4の5-5線断面図。
図6図5の6-6線断面図。
図7】要部の概略説明図(接続管と邪魔板の斜視)。
図8】(a)は長筒状容器の蓋体に流れ込んだ圧縮空気の流線、(b)は蓋体内で方向変換して下方に流れる圧縮空気の流線をそれぞれ示す説明図。
図9】(c)は蓋体側から容器本体の内周壁と筒状体の外周壁の間の流路に向かって流れる圧縮空気の流線、(d)は容器本体の下端部側の内壁壁を旋回して方向変換し、筒状体の下端開口へ向かう圧縮空気の流線を示す説明図。
図10】(e)は筒状体の内部空間に入り込んだ圧縮空気の流線、(f)は邪魔板と接続管とを通過する乾燥空気の流線を示す説明図。
図11】本発明の筒状体の第2実施形態を示す斜視図。
図12図11の12-12線断面図。
図13】(a)筒状体が半径外方向にのみ冷却フィンを有する実施形態、(b)筒状体が半径内方向にのみ冷却フィンを有する実施形態。
図14】第2実施形態の本発明の主要部を正面視側から見た縦断面概略説明図。
図15】気液分離手段の斜視図(第1の気液分離手段と第2の第1の気液分離手段が一体的に結合)
図16】第1の気液分離手段の平面図。
図17図16の17-17線断面図。
図18】下端部に盤状の邪魔部を有する接続筒9Aの斜視図。
図19】第1の気液分離手段の斜視図。
図20】蓋体の吸引側及び第1の気液分離手段に案内される圧縮空気の流線及び水滴の落下状態の概略説明図。
図21】内筒の内部空間に入り込んだ圧縮空気の流線及び水滴の落下状態の概略説明図。
図22】本発明の適用例の実施形態を示す概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至図10は、本発明の第1実施形態の気液分離装置に関する各説明図である。
(1)気液分離装置…図1
図1は、本発明の主要部を正面視側から見た縦断面概略説明図で、気液分離装置Xの一例を示している。例えば気液分離装置Xは、水分が高密度の圧縮空気を送る空気送付手段Aと、水分が低密度の乾燥空気を吹き出す空気吹き出し手段Bとの間に接続状態で介在する。
【0019】
図1に於いて、例えば符号Aは空気を圧縮するエアコンプレッサー、送風機、エアポンプなどの空気送付手段である。空気送付手段Aは、例えば気体収納機能、空気発生機能、空気圧送機能等を有している。
【0020】
一方符号Bは、エアスプレーガン、エアモータ、エアブレーカ、水分吸着機能等空気吹出し手段である。L1は空気吹出し手段Bと空気送付手段Aの間に水分が高密度の圧縮空気aを供給する供給管(供給ライン)、L2は除水後の低密度の乾燥空気(気体)bを空気吹出し手段Bに供給する排風管(排風ライン)である。前記供給管L1と排風管L2の長さは、空気送付手段Aや空気吹出し手段Bの用途に対応して適宜に設定される。
【0021】
気液分離装置Xは長筒状容器1を有し、この長筒状容器1の下端部に突出形成された液体排出部分に手動式又は自動の容器型ドレインCが、一体的又は取り外し可能に取り付けられる。ドレインCは、普通一般にタンク状に形成されている。
【0022】
(2)長筒状容器1の構造…図1図2図3図8
図2は金属製の長筒状容器(容器本体1aと蓋体1bと締付け子1c)1の分解斜視図、図3は要部の概略説明図(管を取り付けた蓋体1bと接続筒は縦断面であり、筒状体は斜視図)である。長筒状容器1は、例えば角筒又は円筒(本実施形態)の容器本体1aと、この容器本体の上端部に設けられた蓋体1bとから成り、環状の締付け子1cが前記容器本体1aと蓋体1bを一体的に結合する。
【0023】
前記容器本体1aは、底壁部の下部中央部に気液分離後の液体を排出するための落下口2を有し、一方、前記蓋体1bは、周壁部の一部(図1では左側)に空気送付手段Aから圧送されてくる圧縮空気aを吸引する吸入口3を有し、一方、前記吸入口3の位置とは反対側の周壁部の一部(図1では右側)に気液分離後の乾燥空気bを排出する排風口4を有している。蓋体1bの内部には、ランドルド環状空間(視力検査のCマークに似た流路)5を形成し、かつ前記吸入口3と排風口4とを区画するC型状の案内壁部6や水平支持部が設けられ、前記案内壁部の基端部は蓋体の内周壁に接続している(図8を参照)。
【0024】
(3)気液分離手段…図1
長筒状容器1の内部には、複数個の気液分離手段7が固定的に設けられている。実施形態の気液分離手段7は、容器本体1aの内部空間に該容器本体の内周壁から離間して位置する筒状体8と、この筒状体の上端部と蓋体1bのC型状の案内壁部6の下端部に連続する水平支持部の螺合孔に螺着し、かつ複数の気体流量制御小孔15aが形成された盤状の邪魔部15を有する接続筒9とから成る。
ここでは、筒状体8を第1の気液分離手段とし、一方、複数の気体流量制御小孔15aを有する接続筒9を第2の気液分離手段という。
ところで、接続筒9は、フランジ9a、筒状体8用の筒状嵌合部9b、盤状の邪魔部15用取付け部9c、前記フランジ9aの上面から突出する筒状螺合部9dを有する(図7参照)。
【0025】
なお、第2の気液分離手段である邪魔部15は、前記フランジ9a、嵌合部9b、取付け部9c、連結用の螺合筒部9dと同一の材質(例えば合成樹脂材、アルミニューム)で一体成形しても良い。実施形態では、接続筒9と盤状の邪魔部15とは別部材であるが、前記邪魔部15は前記接続筒9の下端部に一体的に取付けられ、接続筒9の螺合筒部9dを介して蓋体1bの水平部に連結される。
【0026】
さて、図1で示すように、筒状体8が接続筒9を介して容器本体1aの内部空間に垂設状態に位置付けられると、筒状体8の下端開口10は、容器本体1aの略中央部に位置し、前述の落下口2との間に所要の空間ができる。ここでは、説明の便宜上、筒状体8の下端開口を空気成分が入り込む「通気口10」ともいう。筒状体8は通気口10を基準として吸入口3側の気体上流室と排風口4側の気体下流室に区画される。なお、特に図示しないが、容器本体1aの底壁部の内面側には、縦断面漏斗状に形成された液体跳ね防止用隔壁部材を配設するのが好ましい(例えば特許第5467180号の図3を参照)。
【0027】
(4)気液分離手段の具体的構成…例えば図3図7
まず、第1実施形態の気液分離手段7を構成する筒状体(第1の気液分離手段)8は、半径外方向に延びる多数の第1冷却フィンを有する外筒11と、半径内方向に延びる多数の第2冷却フィンを有する内筒13とから構成されている。筒状体8の多数の第1冷却フィン12は、高密度の圧縮空気aの空気流を長筒状容器1の蓋体1bの吸入口3側から該長筒状容器1の底壁内面側へと冷却しながら整流的に案内する。
【0028】
これに対して、筒状体8の多数の第2冷却フィン14は、前記第1冷却フィン12を通過し、かつ、底壁内面側で折り返し、容器本体の底壁内面側から筒状胴体部の下端開口(通気口)10へと方向転換して該筒状胴体部の中に入り込んだ気液分離中の空気流を上端開口に向かってさらに冷却しながら整流的に案内する。
【0029】
付言すると、筒状体8は、外周面に半径外方向に前記第1冷却フィン12が一体に設けられた外筒11と、この外筒の内周面にその外周面が密着状態に接合し、かつその内周面に半径内方向に前記第2冷却フィン14が一体に設けられた内筒13とからなり、前記外筒11の外周面と容器本体1の内周面との間が、前記第1冷却フィン12によって整流化される下向方向成分の空気流が通過する第1流路となる。実施形態では、第1冷却フィン12及び第2冷却フィン14は、各筒体の長手方向に沿って略直線状の羽体であるが、少なくとも第1冷却フィン12又は第2冷却フィン14のいずれか一方は、空気流との接触面積を増やすために、やや螺旋状或いは曲線状に成形しても良い。
【0030】
次に、第1実施形態の気液分離手段7を構成する接続筒(第2の気液分離手段)9は、上端部側の筒状螺合部9dが蓋体1bの排風側に接続すると共に、下端部側が筒状体8の上端部に外嵌合状態に接続し、かつ気液分離中の空気流を邪魔部15の多数の流量制御小孔15aに通過させ、これにより、前記気液分離中の空気流からさらに水分を除去する。
前述したように、筒9は大径部側の上端部にフランジ9aを有し、このフランジの下方に肉厚状の嵌合部9bを有し、さらに、この嵌合部の下方に縮経状の取付け部9cを有する。一方、前記フランジ9aの上面には筒状螺合部9dが形成され、該筒状螺合部9dは蓋体1bの水平支持部に形成したメネジに螺合する。そして、接続筒9が蓋体1bの水平支持部に螺着すると、接続筒9の中心孔と蓋体1bの排風口4が連通状態となる。前記邪魔部15の気体流量制御小孔15aは、下面から上面に向って貫通状に形成されている。また貫通状の気体流量制御小孔15aは、放射状に多数形成され、内筒12の内部空間及び接続筒9の中心孔とそれぞれ連通状態となる。なお、流量制御小孔15aは、例えば1~2mm程度である。
【0031】
ところで、圧縮空気を整流化・結露化させながら、液状化現象の促進を図るという発明の課題との関係では、気液分離手段7は、半径外方向に放射状の第1冷却フィン及び半径内方向に放射状の第2冷却フィンを有する筒状体(第1の気液分離手段)8と、この筒状体と蓋体との間に介在し、かつ気液分離中の空気流を多数の流量制御小孔を通過させ、これにより、前記気液分離中の空気流からさらに水分を除去する仕切り状の邪魔部15とから構成され、前記気液分離手段7(8、15)が液分離中の空気流の温度を奪うアルミニウム又は銅のいずれかの熱伝導性の高い材質で成形された吸熱部材であることが望ましい。このような実施形態の場合には、少なくとも第1の気液分離手段8は簡単な冷却器の構造となるので、安価に製造することができると共に、容器本体1aに流れ込んだ圧縮空気を全体的に冷却かつ整流化させながら、結露を積極的に発生させ、より多くの液状化現象の促進を図ることができる。
【0032】
したがって、実施形態の気液分離手段7には、第1の気液分離手段としての筒状体8(実施形態では外筒11と内筒13)の他に、上端部が蓋体1bの排風側に接続すると共に、下端部が前記筒状体8の上端開口の上端部に接続し、かつ気液分離中の空気流を多数の流量制御小孔15aを通過させ、これにより、前記気液分離中の空気流からさらに水分を除去する第2の気液分離手段としての邪魔部15が含まれている。
ところで、前記筒状体8、前記第1・第2冷却フィン12、14及び邪魔部15は、気液分離中の空気流の温度を奪うアルミニウム又は銅のいずれかの熱伝導性の高い材質で成形された吸熱部材であり、該吸熱部材の熱は、接続筒9及び蓋体1bを介して長筒状容器1の外部に放出される。
【0033】
しかして、空気成分との接触抵抗の値を低減化するために、筒状体8、第1・第2冷却フィン12、14、邪魔部15、それに接続筒8と蓋体1bを含む各部材は、空気成分に対する接触圧力、接触面積、接触面の表面の粗さ、各材料の熱伝導率、各部材の長さや厚さ、各部材の硬度等の要素を考慮して、それぞれ熱伝導性の高い材質を適宜に選択するのが好ましい。それ故に、前記アルミニウム又は銅は、それらの合金も当然に含まれる。なお、容器本体1aと蓋体1bの結合構造は公知技術なので、ここでは説明を割愛する。
【0034】
(5)空気成分の流線方向
まず、図8の上方の概略図(a)は、長筒状容器1の蓋体1bに流れ込んだ圧縮空気aの流線を示し、下方の概略図(b)は、蓋体1b内で方向変換して下方に流れる圧縮空気の流線を示す。前述した如く、蓋体1bの壁部の内周壁と平面視C型状の案内壁部との間には、ランドルド環状空間(視力検査のCマークに似た流路)5が形成されていることから、吸入口3から内部空間に入り込んだ圧縮空気aの流線方向は、矢印で示すように、時計方向と半時計方向に分流する。分流した空気成分は、蓋体の上壁の内壁に遮られるから概略図(b)で示すように下方方向へ流れる。
【0035】
次に、図9の上方の概略図(c)は蓋体1b側から容器本体1aの上端部側の内周壁と筒状体8の外筒11の外周壁の間の流路に向かって流れる圧縮空気の流線を示し、下方の概略図(d)は容器本体1aの下端部側の内壁壁を旋回して方向変換し、前記外筒11の下端開口10へ向かう圧縮空気の流線を示す。図9に於いて、圧縮空気は容器本体1aの上端部側の内周壁、筒状体8の外筒11の外周壁及び放射状の多数の第1冷却フィン12の各面に接触しながら下降するが、この時、水分を含んだ空気は第1冷却フィン12の各面に案内され、かつ下方方向へと整流化され、外筒11の外周壁及び放射状の多数の第1冷却フィン12によって冷やされる。
【0036】
付言すると、圧縮空気中の水分が外筒11の外周壁と放射状の多数の第1冷却フィン12の各面に接触させることにより、積極的に結露を発生させることができるから、これにより液状化現象が促進する。ここでは一次的に圧縮空気が冷やされることにより、水滴化現象が効率良く発生し、気体から不純物(空気よりも比重の大きい物質)を除去することができる。
【0037】
次に、図10の上方の概略図(e)は筒状体の内部空間に入り込んだ圧縮空気の流線を示し、下方の概略図(f)は邪魔板と接続管とを通過する乾燥空気の流線を示す。実施形態では、内筒13にも第2冷却フィン14が設けられているから、内筒13の下端開口10から入り込んだ冷風状態の圧縮空気は、さらに、内筒13の内周壁と放射状の多数の第2冷却フィン14の各面に接触して二次的に冷やされる。
【0038】
したがって、ここでも結露によって液状化現象がさらに促進し、この内筒13内でも水滴化現象が効率良く発生し、気体から不純物(空気よりも比重の大きい物質)を除去することができる。そして、概略図(f)で示すように、二次的に冷やされた気液分離中の圧縮空気は、仕切り状の邪魔部15の多数の流量制御小孔15aを通過する際、気液分離中の空気流からさらに水分を除去され乾燥空気bとなって排風口4から排出される。
【0039】
なお、仕切り部材に形成した流体制御孔を通過する際、空気(気流)の速度が増し、その結果、高密度物質を通過させない効果を生み出し、圧縮空気内に存在する高密度物質である水滴・異物を除去する性能があることは、当業者に知られている。
【実施例0040】
この欄では、気液分離手段を構成する筒状体8Aの他の実施形態について、簡単に説明する。また図11図13を参照にして、本発明の筒状体の他の実施形態を説明する。さらに、図14乃至図21を参照にして、本発明の第2実施形態の気液分離手段7Aを説明する。加えて、図22を参照にして、本発明の新規な用途例を説明する。
なお、これらの実施形態を説明するにあたって、第1実施形態と同一の部分には同一又は同様の符号を付し、重複する説明を割愛する。
【0041】
まず、図11は本発明の筒状体8Aの第2実施形態を示す斜視図、図12図11の12-12線断面図である。図11及び図12から理解することができるように、第2実施形態の筒状体8Aが第1実施形態のそれと主に異なる点は、筒状体8Aの筒が「一つ」であることである。この一つの筒の外周面に放射状に多数の第1冷却フィンが半径外方向に延伸していると共に、該一つの筒の内周面に放射状に多数の第2冷却フィン14Aが半径内方向に延伸している。なお、多数の第1冷却フィン12A及び第2冷却フィン14Aの接触面積、接触面の表面の粗さ、各材料の熱伝導率、各部材の長さや厚さ、各部材の硬度等の要素は、適宜に設計されている。
【0042】
次に、図13(a)は筒状体8Bが半径外方向にのみ冷却フィン12Bを有する実施形態、図13(b)は筒状体8Cが半径内方向にのみ冷却フィン14Bを有する実施形態である。
【0043】
次に、図14乃至図21を参照にして、本発明の第2実施形態を説明する。
前述した本発明の第1実施例と主に異なる点は、次の通りである。
【0044】
(a)気液分離手段7Aの第1の気液分離手段8Dは、圧縮空気の空気流を長筒状容器1の吸入口3側から該長筒状容器の底壁内面側へと整流的に案内する複数個の筋状溝21を外周面に有する傘状の外筒11Aと、この外筒に一体的に設けられた内筒13Aから成り、一方、第2の気液分離手段9Aは、蓋体1bに接続する接続筒9の下端部に設けられていると共に、前記内筒13Aの内部に入り込んだ気液分離中の空気流からさらに水分を除去する複数の気体流量制御小孔15aを有する盤状の邪魔部(9c=15A)である。
【0045】
(b)付言すると、第2の気液分離手段は接続筒9Aであり、この接続筒9Aの邪魔部(9c=15A)は、嵌合部9bの下端部に同一の材質で肉厚状に一体形成されている。そして、複数の気体流量制御小孔15aは、望ましくは盤状の邪魔部15Aの外周面から内周面まで貫通状に形成されている。
【0046】
(c)気体流量制御小孔15aは、外周面の周方向に所定間隔を有して、例えば6個~8個形成され、かつ接続筒9Aの流路に連通している。
【0047】
(d)接続筒9Aの盤状の邪魔部15の下面中央部には、柱状の連結部23が下方に向って突出形成されている。この連結部23は、例えば同一構成の気液分離手段7Aが複数個存在する場合に於いて、上方に位置する気液分離手段7Aに対して、下方に位置する気液分離手段7Aの筒状螺合部9dを連結部23に緊密状態に嵌合することにより、上下方向に2個、3個という具合に連結するために用いられる。
【0048】
(e)傘状の外筒11Aの外周面に上端から下端に形成された筋状溝21は、圧縮空気aを、冷却化する機能、整流化させる機能及び水滴化した水分を容器本体1bの内壁面に衝突させるために設けたものである。したがって、外筒11Aの外周面の傾斜角度は、任意に設定することができる。実施形態では、図16で示すように、筋状溝21は外筒11Aの外周面の周方向に所定間隔を有して8個形成されている。
【0049】
(f)実施形態では、傘状の外筒11Aよりも略寸胴状の内筒13Aが長い。しかし、両方の長さの相違は、発明の本質的事項ではない。また略寸胴状の内筒13Aの外周面と外筒11Aの内周面との間に環状の間隙22が形成されているが、この環状の間隙22も、発明の本質的事項ではない。
【0050】
一方、内筒13Aの内部に入り込んだ気液分離中の気体は、接続筒9Aの流路に流れ込んで行く必要があるので、接続筒9Aの下端部の邪魔部15の外周面と内筒13Aの内周面の上端部との間には、狭い環状間隙24が設定されていることが必要である。
【0051】
(g)筋状溝21及び気体流量制御小孔15aの数は、任意に設定することができる。なお、気液分離手段7Aの傘状の外筒11A及び内筒13Aは、第1実施形態と同様に、気液分離中の空気流の温度を奪うアルミニウム又は銅のいずれかの熱伝導性の高い材質で成形された吸熱部材であることが望ましい。
【0052】
なお、図20は蓋体1bの吸引側3及び第1の気液分離手段8Aに案内される圧縮空気aの流線及び水滴の落下状態を示す。また、図21は内筒13Aの内部空間に入り込んだ圧縮空気の流線及び水滴の落下状態を示す。
上記のように構成しても、第1実施例と同様に、本発明の主たる課題を達成することができる。
【0053】
最後に、図22は、本発明の適用例の他の実施形態を示す概略説明図である。気液分離装置Xは、車両のエアブレーキシステムのラインに含まれるエアタクの前側又は後側のいずれか一方に位置づけることができる。何故ならば、車両のエアブレーキシステムのラインに含まれるモレキュラー装置は、水滴化に関して、依然と僅かな水蒸気を吸着しているものと推測され得るからである。
【0054】
図22は、例えば車両のエアブレーキシステムのラインに含まれるエアタクの前側に配設した実施形態である。特に図示しないが、水蒸気は配管内で冷え、水滴に変化するのでラインの上流域より、下流域の方が良いと考えられるので、水滴排除の効率性に配慮して、当然にエアタクの後側に位置づけても良い。
【0055】
ここでは図22の実施形態について説明する。本発明の気液分離装置Xは、圧縮空気を送る空気送付手段Aとしての車両用圧縮機と、水分が低密度の乾燥空気を吹き出す空気吹き出し手段Bとしての車両用乾燥空気収納機との間に接続状態で介在する。なお、圧縮空気の密度は、車両用圧縮機の性能如何による。
【0056】
すなわち、この実施形態の空気送付手段Aは、電車、自動車等の車両のエンジン、電動モータ、車両に搭載されている蓄電器等を動力源とした圧縮機であり、該車両用圧縮機Aは比較的高密度の圧縮空気を送る第1配管31を介して長筒状容器1の吸入口3側に接続し、一方、前記空気吹き出し手段Bは、前記長筒状容器1の排風口4側に第2配管32を介して接続する車両用乾燥空気収納機(例えばモレキュラーケミカルドライヤー装置等)であり、前記車両用乾燥空気収納機Bには第3配管33を介して車両のエアブレーキシステムYを構成するエアタンク34が接続している。
【0057】
なお、前記車両のエアブレーキシステムYの構成について、符号35はブレーキペタル、36はブレーキバルブ、37は差圧弁を含む複数個の制御弁装置、38はエアマスタ、39は車輪40に制動をかけるブレーキ装置である。車両のエアブレーキシステムYは、公知知技術なので、詳細な説明は割愛する(例えば特開平6-1219号公報)。
【0058】
上記構成に於いて、特に、車両用乾燥空気収納機Bに水滴用捕捉器機が存在しない場合には、本発明の液分離装置Xを適用することにより、結果的に、エアブレーキシステムYの性能や品質を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、空気吹き出し手段(容器も含む)に乾燥空気を供給する気液分離装置の技術分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
X…気液分離装置、
A…空気送付手段、
B…空気吹き出し手段、
Y…エアブレーキシステム、
1…長筒状容器、1a…容器本体、1b…蓋体、1c…締付け子、
2…落下口、3…吸入口、4…排風口、5…ランドルド環状空間、6…案内壁部、
7、7A…気液分離手段、8…筒状体、9…接続筒、
10…筒状体の下端開口、
11、11A…外筒、12…第2冷却フィン、
13、13A…内筒、14…第2冷却フィン、
15、15A…邪魔部、15a…流量制御小孔、
22…間隙、23…連結部、
33…エアタンク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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