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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162578
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】過熱水蒸気生成装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/10 20060101AFI20231101BHJP
   F22B 21/26 20060101ALI20231101BHJP
   F22G 3/00 20060101ALI20231101BHJP
   F22B 1/28 20060101ALI20231101BHJP
   F22B 29/08 20060101ALI20231101BHJP
   F24C 1/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H05B6/10 311
F22B21/26
F22G3/00 Z
F22B1/28 Z
F22B29/08
F24C1/00 320B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073003
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 深
【テーマコード(参考)】
3K059
【Fターム(参考)】
3K059AB23
3K059AD03
(57)【要約】
【課題】過熱導体管の放熱を有効活用して熱効率を向上するとともに、導入ポートから導入された水又は水蒸気により過熱導体管が冷やされる影響を低減する。
【解決手段】予熱導体管3は、閉磁路鉄心2の周りに同心状に配置された第1予熱導体管31及び第2予熱導体管32を有し、各導体管31、32、4は径方向内側から第2予熱導体管32、過熱導体管4及び第1予熱導体管31の順に配置されるとともに、第1予熱導体管31、第2予熱導体管32及び過熱導体管4の順に直列に接続されており、第2予熱導体管32は、螺旋状の軸方向に短絡させた短絡部32Xを有しており、第1予熱導体管31に設けられた導入ポートP1から水又は水蒸気を導入して、第2予熱導体管32を介して、過熱導体管4に設けられた導出ポートP2から過熱水蒸気を導出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体管を電磁誘導により発熱させて当該導体管を流れる水又は水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気生成装置であって、
閉磁路鉄心と、
交流電圧が印加される一次コイルであり、前記閉磁路鉄心の周りに配置された螺旋状の予熱導体管と、
誘導電流が流れる二次コイルであり、前記閉磁路鉄心の周りに配置された螺旋状の過熱導体管とを備え、
前記予熱導体管は、前記閉磁路鉄心の周りに同心状に配置された第1予熱導体管及び第2予熱導体管を有し、
前記各導体管は径方向内側から前記第2予熱導体管、前記過熱導体管及び前記第1予熱導体管の順に配置されるとともに、前記第1予熱導体管、前記第2予熱導体管及び前記過熱導体管の順に直列に接続されており、
前記第2予熱導体管は、螺旋状の軸方向に短絡させた短絡部を有しており、
前記第1予熱導体管に設けられた導入ポートから水又は水蒸気を導入して、前記第2予熱導体管を介して、前記過熱導体管に設けられた導出ポートから過熱水蒸気を導出する、過熱水蒸気生成装置。
【請求項2】
前記第1予熱導体管の軸方向一端部に前記導入ポートが設けられており、
前記過熱導体管の軸方向他端部に前記導出ポートが設けられている、請求項1に記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項3】
前記第2予熱導体管の軸方向一端部及び前記過熱導体管の軸方向一端部が接続されており、
前記短絡部は、前記第2予熱導体管において、軸方向一端部側に設けられている、請求項1又は2に記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項4】
前記過熱導体管は、前記閉磁路鉄心の周りに同心状に配置されるとともに互いに逆向きに螺旋状に巻回された第1過熱導体管及び第2過熱導体管と、前記第1過熱導体管及び前記第2過熱導体管の軸方向一端部同士及び軸方向他端部同士を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続する接続管要素とを有する、請求項1又は2に記載の過熱水蒸気生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱水蒸気生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の過熱水蒸気生成装置としては、特許文献1に示すように、一次コイルとして第1導体管及び第2導体管を用い、当該第1導体管及び第2導体管の間に二次コイルである第3導体管(過熱導体管)を設けたものが考えられている。具体的には、水が導入される第1導体管の導入ポートが軸方向一端側に設けられ、過熱水蒸気が導出される第3導体管の導出ポートが軸方向他端側に設けられている。また、第2導体管と第3導体管とが軸方向一端側において互いに接続されている。
【0003】
この過熱水蒸気生成装置では、第1導体管及び第2導体管は通電加熱されるとともに、第3導体管の放熱を利用して加熱されるので、第3導体管からの装置外部への放熱を低減でき、熱効率を上げることができる。
【0004】
しかしながら、上記の構成では、第3導体管の軸方向一端部が、第1導体管の導入ポートから導入された水によって冷やされるため、第3導体管に流入する予熱された水又は水蒸気が冷やされてしまう。そうすると、過熱水蒸気を所望の温度に過熱するための時間が長くなってしまい、また、水量の変化によって生成される過熱水蒸気の温度は変化してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-34294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、過熱導体管の放熱を有効活用して熱効率を向上するとともに、導入ポートから導入された水又は水蒸気により過熱導体管が冷やされる影響を低減することをその主たる課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る過熱水蒸気生成装置は、導体管を電磁誘導により発熱させて当該導体管を流れる水又は水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気生成装置であって、閉磁路鉄心と、交流電圧が印加される一次コイルであり、前記閉磁路鉄心の周りに配置された螺旋状の予熱導体管と、誘導電流が流れる二次コイルであり、前記閉磁路鉄心の周りに配置された螺旋状の過熱導体管とを備え、前記予熱導体管は、前記閉磁路鉄心の周りに同心状に配置された第1予熱導体管及び第2予熱導体管を有し、前記各導体管は径方向内側から前記第2予熱導体管、前記過熱導体管及び前記第1予熱導体管の順に配置されるとともに、前記第1予熱導体管、前記第2予熱導体管及び前記過熱導体管の順に直列に接続されており、前記第2予熱導体管は、螺旋状の軸方向に短絡させた短絡部を有しており、前記第1予熱導体管に設けられた導入ポートから水又は水蒸気を導入して、前記第2予熱導体管を介して、前記過熱導体管に設けられた導出ポートから過熱水蒸気を導出することを特徴とする。
【0008】
このような過熱水蒸気生成装置によれば、一次コイルとして第1予熱導体管及び第2予熱導体管を用いるとともに、当該第1予熱導体管及び第2予熱導体管の間に二次コイルである過熱導体管を設けているので、第1予熱導体管及び第2予熱導体管は通電加熱されるとともに、過熱導体管の放熱を利用して加熱され、過熱導体管からの装置外部への放熱を低減でき、熱効率を上げることができる。
特に、本発明では、第2予熱導体管が、螺旋状の軸方向に短絡させた短絡部を有しているので、過熱導体管に流入する予熱された水又は飽和水蒸気を短絡電流によるジュール発熱により加熱することができる。その結果、導入ポートから導入された水又は水蒸気により過熱導体管が冷やされる影響を低減して、過熱水蒸気を所望の温度に加熱するための時間を短縮することができる。また、水量の変化による過熱水蒸気の温度変化に対応して、水量の変化に関わらず過熱水蒸気を所望の温度に加熱することができる。
ここで、一次コイルを形成する第1予熱導体管及び第2予熱導体管は、それぞれの巻数、導体管の通電断面積、導体管の通流孔径の設定により、発熱比や流体への熱伝達面積比、流体の流速比を調整することができる。
また、第1予熱導体管、第2予熱導体管及び過熱導体管の順に直列に接続されており、第1予熱導体管に設けられた導入ポートから水又は水蒸気を導入して、第2予熱導体管を介して、過熱導体管に設けられた導出ポートから過熱水蒸気を導出するので、過熱水蒸気生成装置の簡略化及び小型化することができる。ここで、過熱導体管に流入する水又は飽和水蒸気の温度を短絡部により高温にしているので、過熱導体管の長さを短くすることが可能となり、これによっても過熱水蒸気生成装置の小型化が可能となる。
【0009】
本発明の効果を顕著にするためには、前記第1予熱導体管の軸方向一端部に前記導入ポートが設けられており、前記過熱導体管の軸方向他端部に前記導出ポートが設けられていることが望ましい。
この構成であれば、導入ポートと導出ポートとが軸方向において反対側に配置されているので、導出ポートから導出される過熱水蒸気に対する導入ポートから導入される水の温度影響を小さくすることができる。過熱導体管の軸方向一端部は導入ポートから導入された水により冷やされるものの、過熱導体管の軸方向一端部には、短絡部により加熱された水又は飽和水蒸気が導入されるので、過熱時間の短縮が可能となり、水量の変化による過熱水蒸気の温度変化を抑制することができる。
【0010】
前記第2予熱導体管の軸方向一端部及び前記過熱導体管の軸方向一端部が接続されており、前記短絡部は、前記第2予熱導体管において、軸方向一端部側に設けられていることが望ましい。
この構成であれば、第2予熱導体管を流れる水又は飽和水蒸気を過熱導体管の軸方向一端部に流入する直前で短絡部により加熱できるので、短絡部による加熱効果をより顕著にすることができる。
【0011】
前記過熱導体管は、前記閉磁路鉄心の周りに同心状に配置されるとともに互いに逆向きに螺旋状に巻回された第1過熱導体管及び第2過熱導体管と、前記第1過熱導体管及び前記第2過熱導体管の軸方向一端部同士及び軸方向他端部同士を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続する接続管要素とを有することが望ましい。
この構成であれば、導体管とは別に電気接続部材を設ける必要が無く、導体管自体の構成により短絡回路を形成することができる。また、接続管要素が各管要素の軸方向一端部同士を接続し、軸方向他端部同士を接続する構成であり、短絡回路を構成するための接続構造を簡単にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、過熱導体管の放熱を有効活用して熱効率を向上するとともに、導入ポートから導入された水又は水蒸気により過熱導体管が冷やされる影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る流体加熱装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2】同実施形態の流体加熱装置の径方向における配置を模式的に示す図である。
図3】同実施形態の閉磁路鉄心の構成を示す図である。
図4】同実施形態の過熱導体管(第1過熱導体管及び第2過熱導体管)の構成を模式的に示す側面図である。
図5】同実施形態のコイル接続及び流体の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明に係る過熱水蒸気生成装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
<1.装置構成>
本実施形態に係る過熱水蒸気生成装置100は、導体管を電磁誘導により発熱させて当該導体管を流れる水を加熱して過熱水蒸気を生成するものである。その他、過熱水蒸気生成装置100としては、例えば、外部で生成された飽和水蒸気を加熱して過熱水蒸気を発生するものであっても良い。
【0016】
具体的に過熱水蒸気生成装置100は、図1及び図2に示すように、閉磁路鉄心2と、交流電圧が印加される一次コイルであり、閉磁路鉄心2の周りに配置される螺旋状(コイル状)の予熱導体管3と、誘導電流が流れる二次コイルであり、閉磁路鉄心2の周りに配置される螺旋状(コイル状)の過熱導体管4とを備えている。
【0017】
閉磁路鉄心2は、特に図3に示すように、2つの矩形環状の鉄心要素21、22を有し、当該2つの鉄心要素21、22の脚鉄心部21a、22aを互いに密着するように組み合わせて構成されている。2つの鉄心要素21、22は互いに同一形状をなすものであり、各鉄心要素21、22は、外側から内側に行くにしたがって幅が小さくなるように磁性鋼板を積層して構成された、矩形環状に変形された巻鉄心である。なお磁性鋼板には、方向性電磁鋼板を用いている。これらの鉄心要素21、22を用いることで、閉磁路鉄心2の断面形状は、多段形状となる。
【0018】
予熱導体管3は、閉磁路鉄心2の周りに同心状に配置された第1予熱導体管31及び第2予熱導体管32を有している。これら第1予熱導体管31及び第2予熱導体管32は、螺旋状に巻回されている。
【0019】
第1、第2予熱導体管31、32は、それぞれ単層巻きであり、径方向最外側に第1予熱導体管31が配置され、径方向最内側に第2予熱導体管32が配置されている。
【0020】
第1予熱導体管31の軸方向一端部に導入ポートP1が設けられており、第1予熱導体管31の軸方向他端部が第2予熱導体管32の軸方向他端部に接続されている。また、第2予熱導体管32の軸方向一端部が過熱導体管4の軸方向一端部に接続されている。
【0021】
なお、導入ポートP1又はその近傍には、第1予熱導体管31に流入する水の流量を調整するための流量調整バルブ5が設けられている。さらに、交流電圧を印加する交流電源(不図示)は、第1予熱導体管31の軸方向一端部に設けられた給電端子61及び第2予熱導体管32の軸方向一端部に設けられた給電端子62に接続されている。
【0022】
そして、第1予熱導体管31は、導体管31の巻回部分が互いに短絡しないように構成されている。なお、巻回部分とは螺旋1巻き部分のことである。具体的には、導体管31は、各巻回部分の外側周面が互いに接触しないように隙間を持って巻回されることにより、導体管31の巻回部分が互いに短絡しないように構成されている。その他、第1予熱導体管31は、その外側周面に絶縁体(不図示)が巻かれる等の絶縁処理が施されることにより、巻回部分が互いに短絡しないように構成されていても良い。
【0023】
また、第2予熱導体管32は、図1に示すように、導体管32の巻回部分が互いに短絡させた短絡部32Xを有している。なお、第2予熱導体管32において短絡部32X以外の部分の巻回部分は、互いに短絡しないように構成されている。その他、第2予熱導体管32において短絡部32X以外の部分の巻回部分は、その外側周面に絶縁体(不図示)が巻かれる等の絶縁処理が施されることにより互いに短絡しないように構成されていても良い。
【0024】
具体的に短絡部32Xは、導体管32の巻回部分を螺旋状の軸方向に短絡させて構成されている。ここで、短絡部32Xは、導体管32の巻回部分同士を溶接等の接合により接続して構成しても良いし、巻回部分同士に架け渡された電気接続部材をそれぞれの巻回部分に溶接などの接合により接続して構成しても良い。さらに、短絡部32Xは、2以上の巻回部分を短絡させて構成されている。さらに、短絡部32Xは、第2予熱導体管32において、軸方向一端部側に設けられている。本実施形態では、第2予熱導体管32の軸方向一端部側の最も外側の巻回部分を含むように短絡部32Xが形成されている。
【0025】
過熱導体管4は、図4に示すように、互いに逆向きに螺旋状に巻回された第1過熱導体管41及び第2過熱導体管42と、第1過熱導体管41及び第2過熱導体管42の軸方向一端部同士及び軸方向他端部同士を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続する第1、第2接続管要素43、44とを有している。第1過熱導体管41及び第2過熱導体管42は、軸方向から見て径方向に隙間が形成されている。
【0026】
第1過熱導体管41及び第2過熱導体管42は、第1予熱導体管31及び第2予熱導体管32の間に配置されている。また、過熱導体管4の軸方向一端部が第2予熱導体管32の軸方向一端部に接続されており、過熱導体管4の軸方向他端部に導出ポートP2が設けられている。なお、導出ポートP2又はその近傍には、過熱水蒸気の温度を制御するための温度センサ7が設けられている。
【0027】
このような構成により、各導体管31、32、41、42は、径方向内側から第2予熱導体管32、第2過熱導体管42、第1過熱導体管41及び第1予熱導体管31の順に配置されるとともに、第1予熱導体管31、第2予熱導体管32及び過熱導体管4の順に直列に接続されることになる。
【0028】
また、第1接続管要素43には、第2予熱導体管32の軸方向一端部が接続されており、第2接続管要素44には、導出ポートP2が設けられている。この構成により、第1接続管要素43から流入した流体は、接続管要素43により第1過熱導体管41及び第2過熱導体管42に分岐して流れ、第1過熱導体管41及び第2過熱導体管42を流れた流体は、第2接続管要素44で合流して導出ポートP2から流出する。
【0029】
また、このように接続した過熱導体管4は、第1過熱導体管41及び第2過熱導体管42が接続管要素43、44により電気的に並列接続される構成である。そして、一次コイルである第1、第2予熱導体管31、32により生じる磁束によって、第1過熱導体管41及び第2過熱導体管42により閉回路が形成されて短絡電流が流れる。つまり、第1過熱導体管41には、軸方向一端部から軸方向他端部に向かって短絡電流が流れ、第2過熱導体管42には、軸方向他端部から軸方向一端部に向かって短絡電流が流れる。
【0030】
また、本実施形態の過熱水蒸気生成装置100では、図1及び図2に示すように、第1予熱導体管31と第1過熱導体管41との間、第1過熱導体管41と第2過熱導体管42との間、及び、第2過熱導体管42と第2予熱導体管32との間に、断熱材8が充填されている。この断熱材8は、各予熱導体管31、32の巻回部分間の隙間にも充填されており、各過熱導体管41、42の巻回部分間の隙間にも充填される。本実施形態では、第1予熱導体管31の外周にケーシング9が設けられており、第1予熱導体管31とケーシング9との間に断熱材8が設けられている。その他、閉磁路鉄心2の脚鉄心部21a、22aと第2予熱導体管32との間に断熱材8を充填しても良い。
【0031】
このように構成した本実施形態の過熱水蒸気生成装置100において、第1予熱導体管31に設けられた給電端子61及び第2予熱導体管32に設けられた給電端子62に交流電源により交流電圧を印加することで、第1、第2予熱導体管31、32に交流電流が流れて閉磁路鉄心2に磁束が流れる。当該磁束によって第1過熱導体管41、第2過熱導体管42及び接続管要素43、44に短絡電流が流れて、過熱導体管4がジュール発熱する。また、第1、第2予熱導体管31、32は、交流電圧が印加されることで通電によりジュール発熱するとともに、過熱導体管4からの伝熱により加熱される。さらに、第2予熱導体管32では、短絡部32Xに短絡電流が流れて、第2予熱導体管32のその他の部分よりも高温に加熱される。
【0032】
これにより、図5に示すように、第1予熱導体管31の導入ポートP1から導入された水は、第1、第2予熱導体管31、32を流れることにより、第1、第2予熱導体管31、32により加熱されて高温の水又は飽和水蒸気となる。また、過熱導体管4に流入する直前に第2予熱導体管32の短絡部32Xによりさらに加熱される。その後、第2予熱導体管32から過熱導体管4に流入した高温の水又は飽和水蒸気は、過熱導体管4により加熱されて過熱水蒸気となり、導出ポートP2から導出される。
【0033】
<2.本実施形態の効果>
このように構成した過熱水蒸気生成装置100によれば、一次コイルとして第1予熱導体管31及び第2予熱導体管32を用いるとともに、当該第1予熱導体管31及び第2予熱導体管32の間に二次コイルである過熱導体管4を設けているので、第1予熱導体管31及び第2予熱導体管32は通電加熱されるとともに、過熱導体管4の放熱を利用して加熱され、過熱導体管4からの装置外部への放熱を低減でき、熱効率を上げることができる。
【0034】
特に、本実施形態では、第2予熱導体管32が、螺旋状の軸方向に短絡させた短絡部32Xを有しているので、過熱導体管4に流入する予熱された水又は飽和水蒸気を短絡電流によるジュール発熱によりさらに加熱することができる。その結果、導入ポートP1から導入された水又は水蒸気により過熱導体管4が冷やされる影響を低減して、過熱水蒸気を所望の温度に加熱するための時間を短縮することができる。また、水量の変化による過熱水蒸気の温度変化に対応して、水量の変化に関わらず過熱水蒸気を所望の温度に加熱することができる。
【0035】
ここで、一次コイルを形成する第1予熱導体管31及び第2予熱導体管32は、それぞれの巻数、導体管の通電断面積、導体管の通流孔径の設定により、発熱比や流体への熱伝達面積比、流体の流速比を調整することができる。
【0036】
また、第1予熱導体管31、第2予熱導体管32、過熱導体管4の順に直列に接続されており、第1予熱導体管31に設けられた導入ポートP1から水又は水蒸気を導入して、第2予熱導体管32及び第3予熱導体管33を介して、過熱導体管4に設けられた導出ポートP2から過熱水蒸気を導出するので、過熱水蒸気生成装置100の簡略化及び小型化することができる。ここで、過熱導体管4に流入する水又は飽和水蒸気の温度を短絡部32Xにより高温にしているので、過熱導体管4の長さを短くすることが可能となり、これによっても過熱水蒸気生成装置100の小型化が可能となる。
【0037】
さらに、過熱導体管4を第1過熱導体管41と第2過熱導体管42と接続管要素43、44とから構成しているので、導体管とは別に電気接続部材を設ける必要が無く、導体管自体の構成により短絡回路を形成することができる。また、接続管要素43、44が各過熱導体管41、42の軸方向一端部同士を接続し、軸方向他端部同士を接続する構成であり、短絡回路を構成するための接続構造を簡単にすることができる。また、過熱導体管4が第1過熱導体管41及び第2過熱導体管42を有するので、流体との接触面積(熱交換面積)を大きくすることができ、流体の加熱効率を向上することができる。
【0038】
過熱導体管4を複数回巻きの二次コイルとすることで励磁電流を小さくするとともに漏れインピーダンスを減少できるので、閉磁路鉄心2の断面積を小さくして鉄心の使用量を少なくし、鉄損を低減でき熱効率を上げることができる。また、閉磁路鉄心2を多段形状として鉄心の表面積を増やしているので、冷却効果を大きくすることができる。
【0039】
<3.本発明の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態では、第1、第2予熱導体管31、32がそれぞれ単層巻きのものであったが、第1、第2予熱導体管31、32の少なくとも1つが、二層巻き以上のものであっても良い。
【0040】
また、前記実施形態では、第1過熱導体管41及び第2過熱導体管42は巻回方向が互いに逆向きであったが、第1過熱導体管41及び第2過熱導体管42の巻回方向が同じ向きであっても良い。この場合、第1過熱導体管41の軸方向一端部と第2過熱導体管42の軸方向他端部とが接続管要素43により接続されており、第1過熱導体管41の軸方向他端部と第2過熱導体管42の軸方向一端部とが接続管要素44により接続された構成とする。
【0041】
さらに、前記実施形態の過熱導体管4は、2重管構造をなすものであったが、4重管又はそれ以上の偶数重の管要素を有するものであっても良い。この場合、2つの管要素毎にそれぞれ接続管要素で接続する。例えば、前記実施形態の過熱導体管4を同心円状に複数配置した構成とすることが考えられる。
【0042】
その上、前記実施形態は、単相交流方式だけでなく、三相交流方式にも適用可能である。
【0043】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
100・・・過熱水蒸気生成装置
2・・・閉磁路鉄心
21、22・・・鉄心要素
21a、22a・・・脚鉄心部
3・・・予熱導体管
31・・・第1予熱導体管
32・・・第2予熱導体管
32X・・・短絡部
4・・・過熱導体管
41・・・第1過熱導体管
42・・・第2過熱導体管
43、44・・・接続管要素
P1・・・導入ポート
P2・・・導出ポート
8・・・断熱材
図1
図2
図3
図4
図5