(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162587
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】乗員検知装置及び乗員検知方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/89 20060101AFI20231101BHJP
G01S 13/04 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G01S13/89
G01S13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073019
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 準
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AC20
5J070AD13
5J070AE09
5J070AF03
5J070AH31
5J070AH39
5J070AK13
5J070AK40
5J070BE03
(57)【要約】
【課題】移動体の振動等の影響を抑制する。
【解決手段】乗員検知装置は、移動体の室内に向けて送信波を送信し、送信波が物体に反射されることにより発生する反射波を受信するセンサと、反射波の強度に基づいて、室内で移動している物体の位置を室内の空間に対応する三次元マップにおける複数の検知点からなる点群として示す点群情報を取得する取得部と、点群情報に基づいて、室内に設定された着座位置毎に検知点の数を示すプロット数を算出する演算部と、検知対象となっている着座位置のプロット数の第1期間内における時系列変化に対応する特徴量が所定の条件を満たしている状態が第2期間以上継続した場合に、当該着座位置に乗員が存在すると判定する判定部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の室内に向けて送信波を送信し、前記送信波が物体に反射されることにより発生する反射波を受信するセンサと、
前記反射波の強度に基づいて、前記室内で移動している物体の位置を前記室内の空間に対応する三次元マップにおける複数の検知点からなる点群として示す点群情報を取得する取得部と、
前記点群情報に基づいて、前記室内に設定された着座位置毎に前記検知点の数を示すプロット数を算出する演算部と、
検知対象となっている前記着座位置の前記プロット数の第1期間内における時系列変化に対応する特徴量が所定の条件を満たしている状態が第2期間以上継続した場合に、当該着座位置に乗員が存在すると判定する判定部と、
を備える乗員検知装置。
【請求項2】
前記特徴量は、前記第1期間内に取得される複数の前記プロット数の最小値であり、
前記判定部は、前記最小値が閾値以上である状態が前記第2期間以上継続した場合に乗員が存在すると判定する、
請求項1に記載の乗員検知装置。
【請求項3】
前記特徴量は、前記第1期間内に取得される複数の前記プロット数の平均値であり、
前記判定部は、前記平均値が閾値以上である状態が前記第2期間以上継続した場合に乗員が存在すると判定する、
請求項1に記載の乗員検知装置。
【請求項4】
前記特徴量は、前記第1期間内に取得される複数の前記プロット数の最小値及び平均値を含み、
前記判定部は、前記最小値が閾値以上であり且つ前記平均値が閾値以上である状態が前記第2期間以上継続した場合に乗員が存在すると判定する、
請求項1に記載の乗員検知装置。
【請求項5】
前記センサは、前記室内の前方に設けられた1列目の座席の背もたれ部より後方の天井部に設置され、
検知対象となる前記着座位置は、2列目以降の座席に対応するように設定される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の乗員検知装置。
【請求項6】
移動体の室内に向けて送信された送信波が物体に反射されることにより発生する反射波の強度に基づいて、前記室内で移動している物体の位置を前記室内の空間に対応する三次元マップにおける複数の検知点からなる点群として示す点群情報を取得する工程と、
前記点群情報に基づいて、前記室内に設定された着座位置毎に前記検知点の数を示すプロット数を算出する工程と、
検知対象となっている前記着座位置の前記プロット数の第1期間内における時系列変化に対応する特徴量が所定の条件を満たしている状態が第2期間以上継続した場合に、当該着座位置に乗員が存在すると判定する工程と、
を含む乗員検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗員検知装置及び乗員検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両制御システム等において、車室内に設置され電磁波等の送受信を行うセンサにより取得されるデータに基づいて車室内に存在する乗員を検知する乗員検知装置が利用されている。このような乗員検知装置において、反射波の強度の時系列変化に基づいて、生体に特有の動き(例えば胸部、背部等の脈動等)を検知する技術が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両等の移動体の室内に存在する乗員を検知しようとする場合、移動体の振動等の影響により、室内に存在する荷物等の物体が乗員であると誤検知される可能性がある。
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、移動体の振動等の影響を抑制可能な乗員検知装置及び乗員検知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態としての乗員検知装置は、移動体の室内に向けて送信波を送信し、送信波が物体に反射されることにより発生する反射波を受信するセンサと、反射波の強度に基づいて、室内で移動している物体の位置を室内の空間に対応する三次元マップにおける複数の検知点からなる点群として示す点群情報を取得する取得部と、点群情報に基づいて、室内に設定された着座位置毎に検知点の数を示すプロット数を算出する演算部と、検知対象となっている着座位置のプロット数の第1期間内における時系列変化に対応する特徴量が所定の条件を満たしている状態が第2期間以上継続した場合に、当該着座位置に乗員が存在すると判定する判定部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、第1期間内におけるプロット数の時系列変化に対応する特徴量が所定の条件を満たしている状態が第2期間以上継続した場合に乗員が存在すると判定される。これにより、移動体の振動等による乗員以外の物体の一時的な移動による誤検知を抑制でき、検知精度を向上させることができる。
【0008】
また、上記構成において、特徴量は、第1期間内に取得される複数のプロット数の最小値であり、判定部は、最小値が閾値以上である状態が第2期間以上継続した場合に乗員が存在すると判定してもよい。
【0009】
上記構成によれば、第1期間内に取得される複数のプロット数の最小値を特徴量として利用し、移動体の振動等による影響を効果的に抑制できる。
【0010】
また、上記構成において、特徴量は、第1期間内に取得される複数のプロット数の平均値であり、判定部は、平均値が閾値以上である状態が第2期間以上継続した場合に乗員が存在すると判定してもよい。
【0011】
上記構成によれば、第1期間内に取得される複数のプロット数の平均値を特徴量として利用して、移動体の振動等による影響を効果的に抑制できる。
【0012】
また、上記構成において、特徴量は、第1期間内に取得される複数のプロット数の最小値及び平均値を含み、判定部は、最小値が閾値以上であり且つ平均値が閾値以上である状態が第2期間以上継続した場合に乗員が存在すると判定してもよい。
【0013】
上記構成によれば、第1期間内に取得される複数のプロット数の最小値及び平均値を特徴量として利用して、移動体の振動等による影響を効果的に抑制できる。
【0014】
また、上記構成において、センサは、室内の前方に設けられた1列目の座席の背もたれ部より後方の天井部に設置され、検知対象となる着座位置は、2列目以降の座席に対応するように設定されてもよい。
【0015】
上記構成によれば、2列目シート、3列目シート等の後部座席に存在する乗員を高精度に検知できる。
【0016】
また、本発明の他の実施形態としての乗員検知方法は、移動体の室内に向けて送信された送信波が物体に反射されることにより発生する反射波の強度に基づいて、室内で移動している物体の位置を室内の空間に対応する三次元マップにおける複数の検知点からなる点群として示す点群情報を取得する工程と、点群情報に基づいて、室内に設定された着座位置毎に検知点の数を示すプロット数を算出する工程と、検知対象となっている着座位置のプロット数の第1期間内における時系列変化に対応する特徴量が所定の条件を満たしている状態が第2期間以上継続した場合に、当該着座位置に乗員が存在すると判定する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、第1実施形態の乗員検知装置が搭載される車両の車室内の構成の一例を示す側面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の乗員検知装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の乗員検知装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の車室の鳥瞰視に対応する点群情報の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の車室の上面視に対応する点群情報の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態において乗員が存在する着座位置のプロット数の時系列変化の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態において乗員が存在しない着座位置のプロット数の時系列変化の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の乗員検知装置における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2実施形態の乗員検知装置における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第3実施形態の乗員検知装置における処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、並びに当該構成によりもたらされる作用、結果、及び効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によりも実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の乗員検知装置1が搭載される車両Cの車室R内の構成の一例を示す側面図である。図中、X方向は、車両Cの後部から前部へ向かう方向に対応し、Y方向は、車両Cの左側面から右側面へ向かう方向に対応し、Z方向は、車両Cの下部から上部へ向かう方向に対応している。
【0020】
車両Cは、移動体の一例であり、例えば内燃機関、モータ、又はそれらの双方(ハイブリッド機構)を駆動源とする自動車等であり得る。本実施形態の車両Cは、いわゆる3列シート車であり、第1シート列S1、第2シート列S2及び第3シート列S3を備えている。第1シート列S1には、運転席及び助手席が含まれる。
【0021】
乗員検知装置1は、車室R内に存在する乗員を検知する装置である。本実施形態では、第1シート列S1より後方、すなわち第2シート列S2及び第3シート列S3に存在する乗員を検知する乗員検知装置1について説明する。
【0022】
乗員検知装置1は、センサ2及び情報処理装置3を備える。センサ2は、車両Cの天井5に設置され、車室R内に向けて送信波を送信し、送信波が車室R内の物体に反射されることにより発生する反射波を受信する。本実施形態のセンサ2は、第1シート列S1の背もたれ部より後方に設置され、
図1に示される例では、第2シート列S2の背もたれ部の略上方に位置している。情報処理装置3は、ダッシュボード内に設置され、センサ2とCAN(Controller Area Network)等のネットワークを介して接続している。なお、センサ2及び情報処理装置3の設置位置は上記に限定されるものではない。また、センサ2は複数設置されてもよい。
【0023】
図2は、第1実施形態の乗員検知装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。センサ2は、送信器21、受信器22、ECU(Electronic Control Unit)23及び入出力部24を備える。送信器21は、車室R内に所定の周波数(例えば60GHz~65GHz等)の電磁波を送信波として送信(照射)するデバイスである。受信器22は、送信波が車室R内に存在する物体に反射されることにより発生する反射波を受信し、反射波の強度を示す電気信号を生成するデバイスである。送信器21及び受信器22は、例えば、発振回路、圧電素子、ADコンバータ、増幅器、フィルタ回路等を利用して構成され得る。送信器21及び受信器22は、それぞれ別体として構成されてもよいし、一体的に構成されてもよい。ECU23は、CPU、メモリ等を利用して構成されるマイクロコントローラであり、送信器21及び受信器22の制御、受信器22により受信された反射波に基づくデータの生成等に関する処理を実行する。入出力部24は、情報処理装置3やその他のデバイスとの間でCAN等の所定の規格に準ずる通信を確立するインターフェースデバイスである。
【0024】
情報処理装置3は、CPU(Central Processing unit)31、メモリ32及び入出力部33を備える。CPU31は、メモリ32に記憶されたプログラムに従って各種演算処理を実行する。メモリ32は、適宜な揮発性メモリ及び不揮発性メモリを利用して構成され得る。メモリ32には、CPU31に乗員検知装置1の機能を実現するための各種処理を実行させるプログラム、設定データ、センサ2から取得したデータ、CPU31により生成されたデータ等が記憶される。入出力部33は、センサ2やその他のデバイスとの間でCAN等の所定の規格に準ずる通信を確立するインターフェースデバイスである。
【0025】
なお、
図2に示されるハードウェア構成は例示であり、乗員検知装置1のハードウェア構成は上記に限定されるものではない。
【0026】
図3は、第1実施形態の乗員検知装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の乗員検知装置1は、取得部101、演算部102、判定部103及び出力部104を備える。これらの機能部101~104は、例えば、
図2に例示されるようなハードウェア及びソフトウェア(プログラム)の協働により構成され得る。また、これらの機能部101~104の一部又は全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用のハードウェア(回路等)により構成されてもよい。
【0027】
取得部101は、センサ2により受信される反射波の強度に基づいて、車室R内で移動している物体(移動物体)の位置を車室R内の空間に対応する三次元マップにおける複数の検知点からなる点群として示す点群情報を取得する。
【0028】
図4は、第1実施形態の車室Rの鳥瞰視に対応する点群情報201の一例を示す図である。
図5は、第1実施形態の車室Rの上面視に対応する点群情報201の一例を示す図である。ここで例示する点群情報201は、車室R内の空間に対応する三次元マップ(例えばボクセルマップ等)上に、移動物体の位置に対応する点(例えばボクセル等)を検知点Pとしてプロットした情報である。ここでは、第2シート列S2上に3つの着座位置R21~R23が設定され、第3シート列S3上に2つの着座位置R31,R32が設定されており、第2シート列S2の右端の着座位置R23に乗員が着座している場合が例示されている。このような場合、
図4及び
図5に示されるように、三次元マップの着座位置R23上の空間に対応する部分に、乗員の胸部や背部の脈動等に対応する複数の検知点Pからなる点群Gが出現する。点群情報201は、このような点群Gに関する情報、すなわち三次元マップ上に出現する複数の検知点Pの位置、個数等を示す情報を含む。
【0029】
演算部102(
図3参照)は、上記のような点群情報201に基づいて、車室R内に設定された着座位置R21~R23,R31,R32毎に検知点Pの数を示すプロット数を算出する。
【0030】
判定部103は、検知対象となっている着座位置のプロット数の第1期間内における時系列変化に対応する特徴量が所定の条件を満たしている状態が第2期間以上継続した場合に、当該着座位置に乗員が存在すると判定する。本実施形態においては、第1期間内に取得される複数のプロット数の最小値を特徴量とする。第1期間内に取得される複数のプロット数とは、例えば、第1期間を分割する複数の単位時間(フレーム)のそれぞれにおいて取得される複数のプロット数等であり得る。判定部103は、当該特徴量としての最小値が閾値以上である状態が第2期間以上継続した場合に、検知対象となっている着座位置に乗員が存在すると判定する。
【0031】
図6は、第1実施形態において乗員が存在する着座位置のプロット数の時系列変化の一例を示す図である。
図6に示されるグラフにおいて、横軸は経過時間(フレーム数)に対応し、縦軸は検知対象となっている着座位置(例えば着座位置R23)のプロット数に対応している。線L1は、検知対象となっている着座位置のプロット数の時系列変化を示している。
【0032】
図6において、第1期間t1、第2期間t2、最小値Nmin及び閾値N1が例示されている。最小値Nminは、予め設定された第1期間t1内に取得される複数のプロット数のうちの最小値である。本実施形態の判定部103は、このような最小値Nminが予め設定された閾値N1以上である状態(特徴量が所定の条件を満たしている状態の一例)が、予め設定された第2期間t2以上継続した場合に、検知対象となっている着座位置に乗員が存在すると判定する。第1期間t1及び第2期間t2は、使用状況等に応じて適宜設定されるべき値であるが、例えば、第1期間t1は5秒~10秒(25フレーム~50フレーム)程度、第2期間t2は1秒~5秒(5フレーム~25フレーム)程度であり得る。このような判定方法により、車両Cの振動等による乗員以外の物体(荷物等)の一時的な移動に対応する検知点P(点群G)が乗員として誤検知される可能性を抑制できる。
【0033】
図7は、第1実施形態において乗員が存在しない着座位置のプロット数の時系列変化の一例を示す図である。
図7に例示されるように、乗員が存在しない場合であっても、車両Cの振動等により乗員以外の物体が一時的に移動し、プロット数が一時的に閾値N1以上となる場合がある。しかし、本実施形態の判定部103によれば、
図6に示されるように、第1期間t1内における最小値Nminが閾値N1以上である状態が第2期間t2以上継続したか否かに基づいて乗員の有無が判定されるため、
図7に示されるような車両Cの振動等による一時的なプロット数の増加による影響を除去できる。
【0034】
出力部104(
図3参照)は、判定部103による判定結果に基づいて、検知対象となる着座位置に乗員が存在するか否かを示す検知信号を出力する。検知信号は、例えば、シートベルトリマインダ等の所定の機能に利用される。
【0035】
図8は、第1実施形態の乗員検知装置1における処理の一例を示すフローチャートである。乗員検知処理が開始されると、取得部101はセンサ2により受信された反射波の強度に基づく点群情報201を取得する(S101)。演算部102は点群情報201に基づいて着座位置毎にプロット数を算出し、
図6に例示されるようなプロット数の時系列変化を示す情報を着座位置毎に生成する(S102)。
【0036】
判定部103は検知対象となっている着座位置のプロット数の時系列変化を示す情報から、F(例えば初期値0)番目のフレーム(第Fフレーム)を始点とする第1期間t1(例えば40フレーム分の期間)におけるプロット数の最小値Nminを取得し(S103)、当該最小値Nminが閾値N1以上であるか否かを判定する(S104)。最小値Nminが閾値N1以上である場合(S104:Yes)、判定部103は第2期間t2(例えば10フレーム分の期間)が経過したか否かを判定する(S105)。第2期間t2が経過していない場合(S105:No)、判定部103はFに1を加算し(S108)、F(例えば1)番目のフレームを始点とする第1期間t1における最小値Nminを取得する(S103)。
【0037】
第2期間t2が経過した場合(S105:Yes)、すなわち最小値Nminが閾値N1以上である状態が第2期間t2(例えば10フレーム分)継続した場合、判定部103は対象となっている着座位置に乗員が存在すると判定し(S106)、出力部104は当該着座位置に乗員が存在することを示す検知信号を所定の機構に出力する(S107)。
【0038】
最小値Nminが閾値N1以上でない場合(S104:No)、すなわち第2期間t2が経過する前に最小値Nminが閾値N1より小さくなる状態が生じた場合、判定部103は検知対象となっている着座位置に乗員が存在しないと判定する(S109)。その後、他の着座位置についても上記と同様に乗員の有無が判定される。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、第1期間t1内に取得される複数のプロット数の最小値Nminが閾値N1以上である状態(第1期間t1内におけるプロット数の時系列変化に対応する特徴量が所定の条件を満たしている状態の一例)が第2期間t2以上継続した場合に乗員が存在すると判定される。これにより、車両Cの振動等による乗員以外の物体の一時的な移動による誤検知を抑制でき、検知精度を向上させることができる。
【0040】
以下に他の実施形態について説明するが、第1実施形態と同一又は同様の箇所についてはその説明を省略する。
【0041】
(第2実施形態)
第2実施形態の乗員検知装置1は、第1期間t1内におけるプロット数の時系列変化に対応する特徴量として、第1期間t1内に取得される複数のプロット数の平均値を用いる点で第1実施形態と相違する。すなわち、本実施形態の判定部103は、当該平均値が閾値以上である状態が第2期間t2以上継続した場合に、検知対象となっている着座位置に乗員が存在すると判定する。
【0042】
図9は、第2実施形態の乗員検知装置1における処理の一例を示すフローチャートである。乗員検知処理が開始されると、取得部101はセンサ2により受信された反射波の強度に基づく点群情報201を取得する(S201)。演算部102は点群情報201に基づいて着座位置毎にプロット数を算出し、プロット数の時系列変化を示す情報を着座位置毎に生成する(S202)。
【0043】
判定部103は検知対象となっている着座位置のプロット数の時系列変化を示す情報から、F(例えば初期値0)番目のフレーム(第Fフレーム)を始点とする第1期間t1(例えば40フレーム分の期間)におけるプロット数の平均値Naveを取得し(S203)、当該平均値Naveが閾値N2以上であるか否かを判定する(S204)。平均値Naveが閾値N2以上である場合(S204:Yes)、判定部103は第2期間t2(例えば10フレーム分の期間)が経過したか否かを判定する(S205)。第2期間t2が経過していない場合(S205:No)、判定部103はFに1を加算し(S208)、F(例えば1)番目のフレームを始点とする第1期間t1における平均値Naveを取得する(S203)。
【0044】
第2期間t2が経過した場合(S205:Yes)、すなわち平均値Naveが閾値N2以上である状態が第2期間t2(例えば10フレーム分)継続した場合、判定部103は対象となっている着座位置に乗員が存在すると判定し(S206)、出力部104は当該着座位置に乗員が存在することを示す検知信号を所定の機構に出力する(S207)。
【0045】
平均値Naveが閾値N2以上でない場合(S204:No)、すなわち第2期間t2が経過する前に平均値Naveが閾値N2より小さくなる状態が生じた場合、判定部103は検知対象となっている着座位置に乗員が存在しないと判定する(S209)。その後、他の着座位置についても上記と同様に乗員の有無が判定される。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、第1期間t1内に取得される複数のプロット数の平均値Naveが閾値N2以上である状態(第1期間t1内におけるプロット数の時系列変化に対応する特徴量が所定の条件を満たしている状態の一例)が第2期間t2以上継続した場合に乗員が存在すると判定される。これにより、第1実施形態と同様に、車両Cの振動等による乗員以外の物体の一時的な移動による誤検知を抑制でき、検知精度を向上させることができる。
【0047】
(第3実施形態)
第3実施形態の乗員検知装置1は、第1期間t1内におけるプロット数の時系列変化に対応する特徴量として、第1期間t1内に取得される複数のプロット数の最小値Nmin及び平均値Naveを用いる点で第1実施形態又は第2実施形態と相違する。すなわち、本実施形態の判定部103は、最小値Nminが閾値N1以上であり且つ平均値Naveが閾値N2以上である状態が第2期間t2以上継続した場合に、検知対象となっている着座位置に乗員が存在すると判定する。
【0048】
図10は、第3実施形態の乗員検知装置1における処理の一例を示すフローチャートである。乗員検知処理が開始されると、取得部101はセンサ2により受信された反射波の強度に基づく点群情報201を取得する(S301)。演算部102は点群情報201に基づいて着座位置毎にプロット数を算出し、プロット数の時系列変化を示す情報を着座位置毎に生成する(S302)。
【0049】
判定部103は検知対象となっている着座位置のプロット数の時系列変化を示す情報から、F(例えば初期値0)番目のフレーム(第Fフレーム)を始点とする第1期間t1(例えば40フレーム分の期間)におけるプロット数の最小値Nmin及び平均値Naveを取得し(S303)、最小値Nminが閾値N1以上であり且つ平均値Naveが閾値N2以上であるか否かを判定する(S304)。最小値Nminが閾値N1以上であり且つ平均値Naveが閾値N2以上である場合(S304:Yes)、判定部103は第2期間t2(例えば10フレーム分の期間)が経過したか否かを判定する(S305)。第2期間t2が経過していない場合(S305:No)、判定部103はFに1を加算し(S308)、F(例えば1)番目のフレームを始点とする第1期間t1における最小値Nmin及び平均値Naveを取得する(S303)。
【0050】
第2期間t2が経過した場合(S305:Yes)、すなわち最小値Nminが閾値N1以上であり且つ平均値Naveが閾値N2以上である状態が第2期間t2(例えば10フレーム分)継続した場合、判定部103は対象となっている着座位置に乗員が存在すると判定し(S306)、出力部104は当該着座位置に乗員が存在することを示す検知信号を所定の機構に出力する(S307)。
【0051】
最小値Nminが閾値N1以上であり且つ平均値Naveが閾値N2以上でない場合(S304:No)、すなわち第2期間t2が経過する前に最小値Nminが閾値N1より小さくなるか又は平均値Naveが閾値N2より小さくなる状態が生じた場合、判定部103は検知対象となっている着座位置に乗員が存在しないと判定する(S309)。その後、他の着座位置についても上記と同様に乗員の有無が判定される。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、最小値Nminが閾値N1以上であり且つ平均値Naveが閾値N2以上である状態(第1期間t1内におけるプロット数の時系列変化に対応する特徴量が所定の条件を満たしている状態の一例)が第2期間t2以上継続した場合に乗員が存在すると判定される。これにより、車両Cの振動等による乗員以外の物体の一時的な移動による誤検知を第1実施形態又は第2実施形態より厳密に抑制でき、検知精度を向上させることができる。
【0053】
上述したような実施形態の乗員検知装置1の機能を実現するための処理をコンピュータ(情報処理装置3)に実行させるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0054】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1…乗員検知装置、2…センサ、3…情報処理装置、5…天井、21…送信器、22…受信器、24…入出力部、31…CPU、32…メモリ、33…入出力部、101…取得部、102…演算部、103…判定部、104…出力部、201…点群情報、C…車両、G…点群、R…車室、着座位置…R21~R23,R31,R32、P…検知点、S1…第1シート列、S2…第2シート列、S3…第3シート列、t1…第1期間、t2…第2期間