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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162599
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】慣性センサー、および慣性計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/125 20060101AFI20231101BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20231101BHJP
   G01P 21/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G01P15/125 Z
G01P15/08 101B
G01P21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073038
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 照夫
(72)【発明者】
【氏名】木暮 翔太
(57)【要約】
【課題】ノイズ特性を悪化させることなく、容易に可動体の検査を実施することができる慣性センサー、慣性計測装置を提供すること。
【解決手段】慣性センサーは、基体と、前記基体上に設けられるセンサー素子と、前記センサー素子を覆う蓋体と、を備え、前記センサー素子は、前記基体に固定される固定部と、前記基体と水平な第1軸を軸として回動可能な可動体と、前記固定部と前記可動体とを接続する第1回転バネおよび第2回転バネと、前記可動体に設けられる可動櫛歯電極群と、前記可動櫛歯電極群と対向し、前記基体に設けられる固定櫛歯電極群と、前記可動体に設けられる第1検査用電極と、前記基体または前記蓋体に設けられ、前記基体の平面視において、前記第1検査用電極と重なる第2検査用電極と、を有し、前記平面視において、前記第1検査用電極には、複数のダンピング調整孔が設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体上に設けられるセンサー素子と、
前記センサー素子を覆う蓋体と、を備え、
前記センサー素子は、前記基体に固定される固定部と、
前記基体と水平な第1軸を軸として回動可能な可動体と、
前記固定部と前記可動体とを接続する第1回転バネおよび第2回転バネと、
前記可動体に設けられる可動櫛歯電極群と、
前記可動櫛歯電極群と対向し、前記基体に設けられる固定櫛歯電極群と、
前記可動体に設けられる第1検査用電極と、
前記基体または前記蓋体に設けられ、前記基体の平面視において、前記第1検査用電極と重なる第2検査用電極と、を有し、
前記平面視において、前記第1検査用電極には、複数のダンピング調整孔が設けられる、
慣性センサー。
【請求項2】
前記可動体は、
前記第1回転バネから第1方向に延在する第1バーと、
前記第2回転バネから前記第1方向に延在し、前記第1バーと対となる第2バーと、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1バーと前記第2バーとを接続する第3バーとを有し、
前記第1検査用電極は、前記第3バーに設けられる、
請求項1に記載の慣性センサー。
【請求項3】
前記可動体は、
前記第1回転バネから第1方向に延在する第1バーと、
前記第2回転バネから前記第1方向に延在し、前記第1バーと対となる第2バーと、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1バーと前記第2バーとを接続する第3バーとを有し、
前記第1検査用電極は、前記第1バーおよび前記第2バーに設けられる、
請求項1に記載の慣性センサー。
【請求項4】
前記第1バーと、前記第2バーとが線対称となる対象軸を第2軸としたときに、
前記第1検査用電極は、前記第2軸に対して線対称に設けられる、
請求項2または3に記載の慣性センサー。
【請求項5】
前記ダンピング調整孔は、前記第2軸に対して線対称に設けられる、
請求項4に記載の慣性センサー。
【請求項6】
前記センサー素子を第1センサー素子としたときに、
前記第1センサー素子と、前記第1センサー素子と同じ構成の第2センサー素子を備え、
前記第2センサー素子は、前記第1軸および前記第2軸を含む平面において180°回転させた姿勢で配置され、
前記第1センサー素子と前記第2センサー素子とは、前記第2軸に沿って並んで配置される、
請求項5に記載の慣性センサー。
【請求項7】
請求項1~3、請求項5~6のいずれか一項に記載の慣性センサーと、
前記慣性センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部と、を含む、
慣性計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性センサー、および当該慣性センサーを備えた慣性計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物理量センサーの一例として、シリコンMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いた加速度センサーや角速度センサーが開発されている。例えば、特許文献1には、加速度計が基板平面に対して垂直な加速度成分で移動するときに、基板平面から回転する可動ロータを有する加速度センサーが開示されている。当該文献によれば、加速度センサーは、シーソーフレームからなるロータを備え、当該ロータにおける縦方向の2本のロータバーは、1以上の第1のたわみ電極を含み、第2のたわみ電極は、1以上の第1のたわみ電極の上方および/または下方の内部パッケージ平面においてそれらが重なるように固定されている。そして、加速度センサーは、少なくとも1つの第1のたわみ電極および少なくとも1つの第2のたわみ電極に試験電圧を印加することによって、自己検査を実施するように構成され得るとしている。
【0003】
このような加速度センサーでは、静止時におけるノイズのレベルが高くなり、動作検出の分解能及び精度に影響を及ぼす虞があった。一般にシリコンMEMSによる加速度センサーでは、センサー素子を起因とするブラウンノイズが支配的であることが知られており、このブラウンノイズを低減することは重要である。ブラウンノイズは素子のダンピングに1/2乗で依存するため、ダンピングを小さくした加速度センサー素子が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-23614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の加速度センサーでは、第1のたわみ電極を有することで、ダンピングが大きくなり、これによりノイズレベルが悪化する虞があった。
つまり、ノイズ特性を悪化させることなく、容易に可動体の検査を実施することができる慣性センサー、慣性計測装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る一態様の慣性センサーは、基体と、前記基体上に設けられるセンサー素子と、前記センサー素子を覆う蓋体と、を備え、前記センサー素子は、前記基体に固定される固定部と、前記基体と水平な第1軸を軸として回動可能な可動体と、前記固定部と前記可動体とを接続する第1回転バネおよび第2回転バネと、前記可動体に設けられる可動櫛歯電極群と、前記可動櫛歯電極群と対向し、前記基体に設けられる固定櫛歯電極群と、前記可動体に設けられる第1検査用電極と、前記基体または前記蓋体に設けられ、前記基体の平面視において、前記第1検査用電極と重なる第2検査用電極と、を有し、前記平面視において、前記第1検査用電極には、複数のダンピング調整孔が設けられる。
【0007】
本願に係る一態様の慣性計測装置は、上記記載の慣性センサーと、前記慣性センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る慣性センサーの平面図。
図2図1のb-b断面における慣性センサーの断面図。
図3】櫛歯電極群の立体的形状を示す斜視図。
図4】櫛歯電極群の立体的形状を示す斜視図。
図5】センサー素子における検出原理の説明図。
図6図2におけるd部の拡大図。
図7】加速度センサーの検出機能の検査方法の流れを示すフローチャート図。
図8】実施形態2に係るセンサー素子の平面図。
図9】実施形態3に係るセンサー素子の平面図。
図10】実施形態4に係るセンサー素子の平面図。
図11】実施形態5に係る慣性計測装置の分解斜視図。
図12】回路基板の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1
***慣性センサーの構成***
図1は、実施形態1に係る慣性センサーの平面図である。図2は、図1のb-b断面における慣性センサーの断面図である。
まず、本実施形態に係る慣性センサーの一例として図1図2に示す、加速度センサー100を用いて説明する。加速度センサー100は、例えば、鉛直方向の加速度を検出する加速度センサーである。なお、各図には、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸を図示している。本実施形態では、Z軸方向を鉛直方向としているが、これに限定するものではない。
【0010】
加速度センサー100は、MEMSデバイスからなる1軸の加速度センサーである。
加速度センサー100は、基体1と、基体1上に配置されたセンサー素子50と、センサー素子50を覆う蓋体5などから構成される。
基体1は、例えば、半導体シリコンで構成されたシリコン基板、または、ホウケイ酸ガラスなどのガラス材料で構成されたガラス基板を用いる。なお、これらの材質に限定するものではなく、石英基板や、ウエハ直接接合によるSOI(Silicon On Insulator)基板などを用いてもよい。
【0011】
図2に示すように、SOI基板から成る基体1には、周縁部から掘下げられた凹部1bが設けられている。凹部1bは、センサー素子50を収納する収納空間Sを形成する一部位である。凹部1bには、凹部1bの底面から突出した突起状のマウント部14が設けられている。
マウント部14には、埋込絶縁層2を介してセンサー素子50の固定部3が固定される。換言すれば、センサー素子50は、固定部3において基体1に固定される。好適例では、固定部3はマウント部14に対して直接接合される。
センサー素子50は、例えば、リン(P)、ボロン(B)、砒素(As)等の不純物がドープされた導電性のシリコン基板をエッチング、および、パターニングすることにより形成される。好適例では、ボッシュプロセスによる深堀エッチング技術を用いる。
【0012】
蓋体5は、好適例としてシリコン基板を用いる。なお、ガラス基板やセラミックス基板を用いても良い。蓋体5には、周縁部から掘下げられた凹部5bが設けられている。凹部5bは、センサー素子50を収納する収納空間Sを形成する一部位である。
基体1と蓋体5とは、好適例では、低融点ガラスからなるガラスフリット13を介して接合される。なお、接合方法は、陽極接合であっても良いし、活性化接合、拡散接合、金属共晶接合などを用いても良い。
収納空間Sは、好適例において、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが封入され、気密封止されている。なお、-40℃~120℃程度の使用温度環境において、ほぼ大気圧となっていることが好ましい。
【0013】
図1に示すように、センサー素子50は、固定部3と、固定部3の中心を通りX軸に沿った揺動軸61まわりに揺動可能な可動体8と、固定部3と可動体8とを接続する第1回転バネ4a、第2回転バネ4bなどから構成される。なお、揺動軸61は、第1軸に相当する。換言すれば、可動体8は、基体1と水平なX軸に沿った第1軸としての揺動軸61を軸として回動可能に設けられる。
第1回転バネ4a、第2回転バネ4bは、好適例では、捩れバネであり、固定部3の両脇に設けられている。第1回転バネ4a、固定部3、第2回転バネ4bは一体化されており、揺動軸61上に配置されている。換言すれば、第1回転バネ4aおよび第2回転バネ4bは、固定部3と可動体8とを接続する。
【0014】
可動体8は、第1回転バネ4aからYプラス方向に延在する第1バー6aと、第2回転バネ4bからYプラス方向に延在する第2バー6bと、第1バー6aと第2バー6bとを接続する第3バー7とを有する。なお、Yプラス方向は、第1方向に相当する。換言すれば、可動体8は、第1回転バネ4aから第1方向に延在する第1バー6aと、第2回転バネ4bから第1方向に延在し、第1バー6aと対となる第2バー6bと、第1方向と交差する第2方向としてのXプラス方向に延在し、第1バー6aと第2バー6bとを接続する第3バー7とを有する。なお、好適例において、可動体8は、第1バー6a、第2バー6bよりも第3バー7の質量が大きくなるように、換言すれば、可動体8の先端が重くなるように構成される。これは、揺動軸61を中心とする慣性モーメントを大きくするためである。
このような構成により、センサー素子50は、揺動軸61を軸として可動体8が揺動する、いわゆる片側シーソー構造の加速度センサーとして構成される。
【0015】
***加速度の検出原理***
第3バー7には、可動櫛歯電極群20が設けられている。可動櫛歯電極群20は、可動電極群20aと可動電極群20bとから構成される。可動電極群20aと可動電極群20bとは、Y軸方向に延在する中心軸62を対象軸として、左右対称となる位置に設けられている。可動電極群20aは、第3バー7からYマイナス方向に延在する4本の可動電極21から構成される。4本の可動電極21は、第3バー7の延在方向に沿って等ピッチで櫛歯状に設けられている。同様に、可動電極群20bは、第3バー7からYマイナス方向に延在する4本の可動電極22から構成される。4本の可動電極22は、第3バー7の延在方向に沿って等ピッチで櫛歯状に設けられている。なお、可動電極21,22は4本に限定するものではなく、複数本であれば良く、例えば、8本でも良いし、10本であっても良い。
【0016】
そして、基体1には、可動櫛歯電極群20と対向する固定櫛歯電極群10が設けられている。固定櫛歯電極群10は、固定電極群10aと固定電極群10bとから構成される。固定電極群10aは、基体1に設けられた台座部9aと、台座部9aからYプラス方向に延在する3本の固定電極11から構成される。3本の固定電極11は、可動電極群20aにおける4本の可動電極21の間隙部分に収まるように、等ピッチで櫛歯状に設けられている。これにより、固定電極11と可動電極21とは、X軸の延在方向において対向するように配置される。
【0017】
同様に、固定電極群10bは、基体1に設けられた台座部9bと、台座部9bからYプラス方向に延在する3本の固定電極12から構成される。3本の固定電極12は、可動電極群20bにおける4本の可動電極22の間隙部分に収まるように、等ピッチで櫛歯状に設けられている。これにより、固定電極12と可動電極22とは、X軸の延在方向において対向するように配置される。なお、固定電極11,12は、3本に限定するものではなく、可動電極21,22の本数と対応した本数であれば良く、例えば、可動電極21が8本の場合、固定電極11は7本とする。
【0018】
図3は、櫛歯電極群の立体的形状を示す斜視図であり、固定電極群10a、可動電極群20aにおける斜視図である。
図3に示すように、可動電極21は、Y軸方向における厚みが一部で凹んでいる。具体的には、可動電極21は、Y軸方向において、範囲aにより示される部分の厚みが薄くなっている。換言すれば、可動電極21は、根元の第3バー7と同じ厚さからYマイナス方向の途中で階段状に切り欠かれて薄くなっている。これにより、4本の可動電極21共に、固定電極群10aの固定電極11と対向する部分においては、Zプラス側における厚みが薄くなっている。
また、固定電極群10aと、可動電極群20aとからなる検出部をN型検出部25nという。N型検出部25nでは、対向配置された固定電極11と可動電極21とにより平行平板型の容量が形成される。当該容量は、加速度による可動電極21の変位に伴い、固定電極11との間における重なり面積の変化に応じて変化する。
【0019】
図4は、櫛歯電極群の立体的形状を示す斜視図であり、固定電極群10b、可動電極群20bにおける斜視図である。
図4に示すように、固定電極12は、Y軸方向における厚みが一部で凹んでいる。具体的には、固定電極12は、Y軸方向において、範囲bにより示される部分の厚みが薄くなっている。換言すれば、固定電極12は、根元の台座部9bと同じ厚さからYプラス方向の途中で階段状に切り欠かれて薄くなっている。これにより、3本の固定電極12共に、可動電極群20bの可動電極22と対向する部分においては、Zプラス側における厚みが薄くなっている。
また、固定電極群10bと、可動電極群20bとからなる検出部をP型検出部25pという。P型検出部25pでは、対向配置された固定電極12と可動電極22とにより平行平板型の容量が形成される。当該容量は、加速度による可動電極22の変位に伴い、固定電極12との間における重なり面積の変化に応じて変化する。
【0020】
図5は、センサー素子における検出原理の説明図である。
図5では、左側に初期状態を示し、右側には加速度が生じている状態として、加速度の向きがZプラス方向の場合と、加速度の向きがZマイナス方向の場合とを図示している。詳しくは、XZ平面に沿った断面における固定電極11と可動電極21との重なり具合、および、固定電極12と可動電極22との重なり具合を示している。なお、初期状態とは、Zプラス方向およびZマイナス方向において重力も含めて加速度が生じていない状態である。以降、Zプラス方向およびZマイナス方向のことをZプラス/マイナス方向ともいう。
【0021】
まず、初期状態において、N型検出部25nでは、固定電極11および可動電極21のZマイナス側における端部の位置は一致しており、面一になっている。同様に、P型検出部25pにおいても、固定電極12および可動電極22のZマイナス側における端部の位置は一致しており、面一になっている。なお、初期状態における固定電極11と可動電極21との重なり面積、および、固定電極12と可動電極22との重なり面積を初期面積ともいう。
【0022】
次に、Zプラス方向の加速度が生じた場合、N型検出部25nの可動電極21、および、P型検出部25pの可動電極22は、それぞれ、加速度に伴う慣性力を受けてZマイナス側に変位する。この際、N型検出部25nにおける固定電極11と可動電極21との重なり面積は、可動電極21がZマイナス方向に変位することにより、初期面積よりも小さくなる。他方、P型検出部25pにおいては、固定電極12と可動電極22との重なり面積は、可動電極22がZマイナス方向に変位しても初期面積が維持される。換言すれば、可動電極22がZマイナス方向に変位しても、重なり面積が一定に維持される。
このように、Zプラス方向に加速度が生じた場合は、N型検出部25nでは重なり面積が減少し、P型検出部25pでは重なり面積が維持される。
【0023】
次に、Zマイナス方向の加速度が生じた場合、N型検出部25nの可動電極21、および、P型検出部25pの可動電極22は、それぞれ、加速度に伴う慣性力を受けてZプラス側に変位する。この際、N型検出部25nにおける固定電極11と可動電極21との重なり面積は、可動電極21がZプラス方向に変位しても初期面積が維持される。他方、P型検出部25pにおける固定電極12と可動電極22との重なり面積は、可動電極22がZプラス方向に変位することにより、初期面積よりも小さくなる。
このように、Zマイナス方向の加速度が生じた場合は、N型検出部25nでは重なり面積が維持され、P型検出部25pでは重なり面積が減少する。
【0024】
上記の相関関係に基づき、N型検出部25nおよびP型検出部25pにおける重なり面積の変化を、静電容量の変化として検出することにより、Zプラス/マイナス方向における加速度を検出することができる。詳しくは、N型検出部25nにおける容量と、P型検出部25pにおける容量との差分を、差動増幅回路を用いて検出することにより、Zプラス/マイナス方向における加速度を検出することができる。なお、差動増幅回路は、後述の制御IC236(図12)に内蔵されている。加速度の検出時には、交流の検出信号が用いられる。
また、上記では、可動電極21および固定電極12に切欠き部を設ける構成として説明したが、この構成に限定するものではなく、例えば、固定電極11および可動電極22に切欠き部を設ける構成としても良い。
【0025】
図1に戻る。
基体1のXプラス側の一辺は、蓋体5から張り出して形成されており、当該張り出し部には、複数の接続パッドが設けられている。
接続パッド41は、P型検出部25pの固定電極群10bと配線71により電気的に接続されている。
接続パッド42は、N型検出部25nの固定電極群10aと配線72により電気的に接続されている。
接続パッド44は、可動櫛歯電極群20、第1検査用電極30を含む可動体8と配線74により電気的に接続されている。
接続パッド41,42,44は、不図示のボンディングワイヤーなどの配線を介して、制御IC236(図12)と電気的に接続している。
【0026】
***検査用電極の構成***
可動体8には、第1検査用電極30が設けられている。詳しくは、第3バー7における可動電極群20aと可動電極群20bとの間に、略長方形状の第1検査用電極30が設けられている。
第1検査用電極30は、第3バー7からYマイナス方向に、その長辺が延在するように設けられている。第1検査用電極30は、X軸、Y軸、Z軸方向全てにおいて剛性を維持できる形状をしており、静電引力を最大化するために大面積で設けられている。
そして、図1に示すように、第1検査用電極30には、平面視において、複数のダンピング調整孔31が設けられている。なお、ダンピング調整孔31については、後述する。
【0027】
図2に示すように、蓋体5の底面には、第1検査用電極30と対向する第2検査用電極15が設けられている。
図1に示すように、第2検査用電極15は、平面的に略長方形状をなしており、第1検査用電極30と重なる位置に設けられている。なお、蓋体5に第2検査用電極15が設けられる構成に限定するものではなく、第1検査用電極30と対向配置される構成であれば良く、例えば、基体1の凹部1bの底面に第2検査用電極15を設けても良い。換言すれば、センサー素子50は、可動体8に設けられる第1検査用電極30と、基体1または蓋体5に設けられ、基体1の平面視において、第1検査用電極30と重なる第2検査用電極15とを有する。
【0028】
基体1のXプラス側の張り出し部には、第2検査用電極15と電気的に接続する接続パッド43が設けられている。第2検査用電極15と接続パッド43との間は、配線73により電気的に接続される。
接続パッド43は、不図示のボンディングワイヤーなどの配線を介して、制御IC236(図12)と電気的に接続している。
【0029】
***ダンピング調整孔の形成態様***
図6は、図2におけるd部の拡大図である。
第1検査用電極30と第2検査用電極15との間に検査用の直流信号を印加し、両者間に静電引力を生じさせて、可動体8を揺動することにより、加速度センサー100の検出機能をチェックすることができる。他方、可動体8が揺動する際には、収納空間S内において気体のダンピングが生じる。第1検査用電極30のダンピング調整孔31は、このダンピングを小さくするために、設けられている。
【0030】
図6に示すように、第1検査用電極30と第2検査用電極15との間におけるダンピングは、ダンピング調整孔31内を通過する気体の孔中ダンピング33と、第1検査用電極30と第2検査用電極15と間におけるスクイズフィルムダンピング34とに区分けされる。
孔中ダンピング33は、ダンピング調整孔31を大きくすると気体が通りやすくなり、ダンピングを低減することができる。スクイズフィルムダンピング34は、第1検査用電極30の面積におけるダンピング調整孔31の占有率を高くすることにより、第1検査用電極30と第2検査用電極15との対向面積が減少するためダンピングを低減することができる。他方、ダンピング調整孔31を大きくしたり、占有率を高めると、第1検査用電極30の質量が減少するため、可動体8の先端が軽くなり、加速度の検出感度が低下してしまう。このように、検出感度とダンピングとはトレードオフの関係にある。
【0031】
第1検査用電極30のダンピング調整孔31は、検出感度とダンピングとのバランスを取って設けられている。詳しくは、孔中ダンピング33と、スクイズフィルムダンピング34との差がなるべく小さくなるように、好ましくは、孔中ダンピング33とスクイズフィルムダンピング34とが等しくなるように複数のダンピング調整孔31を配置している。好適例では、第1検査用電極30の面積におけるダンピング調整孔31の占有率は、75%以上であることが好ましく、78%以上であることがより好ましく、82%以上であることがさらに好ましい。また、ダンピング調整孔31の形状は、正方形とすることが好ましい。なお、正方形の面積に対して±25%以内の面積を有する多角形であっても良い。また、第1検査用電極30は、中心軸62を対象軸として、左右対称となるように形成されている。複数のダンピング調整孔31の配置も、左右対称となっている。
【0032】
***加速度センサーの検査方法***
図7は、加速度センサーの検出機能の検査方法の流れを示すフローチャート図である。
続いて、加速度センサー100における検出機能の検査方法について、図7を主体に、適宜、図1を交えて説明する。なお、図7の検査方法は、制御IC236(図12)に付属する記憶部に記憶された検査プログラムを、制御ICが実行することにより行われる。なお、検出機能の検査は、加速度センサー100に加速度が加わっていない静置状態で行われる。
【0033】
ステップS10では、加速度センサー100を加速度の検出モードから、検出機能の検査モードに切替える。
ステップS11では、初期状態における検出値を取得するために、検出用の微弱な交流信号を加速度センサー100に印加する。このとき、可動櫛歯電極群20、第1検査用電極30を含む可動体8の電位と、P型検出部25pの固定電極群10bの電位と、N型検出部25nの固定電極群10aの電位は、全て共通のGND電位とし、加速度センサー100の内部には静電引力が生じない状態にしておく。
【0034】
ステップS12では、第1検査用電極30と第2検査用電極15との間の静電容量による検査データが読み取られる。当該検査データは、初期値として記憶される。
ステップS13では、検査用電極に検査用の直流信号が重畳される。好適例では、第1検査用電極30と第2検査用電極15との間に、3~5V程度の直流電圧が重畳される。具体的には、第1検査用電極30の電位をGND電位のまま、第2検査用電極15の電位を5Vにしても良いし、その逆であっても良い。これにより、第1検査用電極30と第2検査用電極15との間に静電引力が生じ、可動体8が揺動し、変位する。
【0035】
ステップS14では、可動体8の変位に伴う、第1検査用電極30と第2検査用電極15との間の静電容量による検査データが読み取られる。当該検査データは、検査値として記憶される。
ステップS15では、検出機能が機能しているか否か判定する。具体的には、初期値と検査値との差分が、予め設定した値以上であるか否か判定する。予め設定した値以上である場合は、検出機能が機能していると判定し、検査モードを終了する。予め設定した値に満たない場合は、検査不良のフラグを通知する。
【0036】
以上、述べた通り、本実施形態の加速度センサー100によれば、以下の効果を得ることができる。
慣性センサーとしての加速度センサー100は、基体1と、基体1上に設けられるセンサー素子50と、センサー素子50を覆う蓋体5とを備え、センサー素子50は、基体1に固定される固定部3と、基体1と水平な第1軸としての揺動軸61を軸として回動可能な可動体8と、固定部3と可動体8とを接続する第1回転バネ4aおよび第2回転バネ4bと、可動体8に設けられる可動櫛歯電極群20と、可動櫛歯電極群20と対向し、基体1に設けられる固定櫛歯電極群10と、可動体8に設けられる第1検査用電極30と、基体1または蓋体5に設けられ、基体1の平面視において、第1検査用電極30と重なる第2検査用電極15とを有し、平面視において、第1検査用電極30には、複数のダンピング調整孔31が設けられる。
【0037】
これによれば、加速度センサー100は、センサー機能を検査するための第1検査用電極30と第2検査用電極15とを備えている。そして、第1検査用電極30には、複数のダンピング調整孔31が設けられている。このダンピング調整孔31は、ダンピングを抑制しながらも、必要な検出感度が得られるように配置されている。よって、ダンピングに起因するノイズを低減するとともに、容易にセンサー機能検査を行うことができる。
従って、ノイズ特性を悪化させることなく、容易に可動体の検査を実施することができる慣性センサーとしての加速度センサー100を提供することができる。
【0038】
また、可動体8は、第1回転バネ4aから第1方向としてのYプラス方向に延在する第1バー6aと、第2回転バネ4bからYプラス方向に延在し、第1バー6aと対となる第2バー6bと、Yプラス方向と交差する第2方向としてのXプラス方向に延在し、第1バー6aと第2バー6bとを接続する第3バー7とを有し、第1検査用電極30は、第3バー7に設けられる。
これによれば、一定の質量を有する第1検査用電極30が可動体8の先端に設けられるため、加速度が加わった際の回転モーメントを高めることができる。
従って、検出感度が高い加速度センサー100を提供することができる。
【0039】
また、第1バー6aと、第2バー6bとが線対称となる対象軸を第2軸としての中心軸62としたときに、第1検査用電極30は、中心軸62に対して線対称に設けられる。
また、ダンピング調整孔31は、中心軸62に対して線対称に設けられる。
これによれば、第1検査用電極30は、中心軸62を対象軸として左右対称となるように設けられる。よって、外部からの衝撃などに対して不要な振動モードを低減することができる。特に、X軸方向における不要な慣性力を抑制することができる。
従って、信頼性が高い加速度センサー100を提供することができる。
【0040】
実施形態2
***センサー素子の異なる態様-1***
図8は、実施形態2に係るセンサー素子の平面図であり、図1に対応している。
上記実施形態では、加速度センサー100は、揺動軸61を軸として可動体8のYプラス方向の先端側が揺動する片側シーソー構造のセンサー素子50を備えるとして説明したが、この構成に限定するものではなく、両側シーソー構造であっても良い。例えば、本実施形態の加速度センサー110では、Yマイナス方向にもう1つのセンサー素子51を備えており、両側シーソー構造を採用している。以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0041】
図8に示すように、本実施形態の加速度センサー110は、第1センサー素子としてのセンサー素子50に加えて、Yマイナス方向に第2センサー素子としてのセンサー素子51を備えている。なお、図8では、基体1、蓋体5の図示を省略し、センサー素子50,51のみを図示している。
センサー素子51は、センサー素子50と同じ構成であるが、配置姿勢が異なる。センサー素子51は、センサー素子50を、XY平面において中心点jを中心にして180°回転させた姿勢で配置される。固定部39は、センサー素子50,51で共通に設けられており、その中心が中心点jである。中心点jを通りX軸に沿った線分を区画線63としている。換言すれば、センサー素子51は、第1軸としての揺動軸61a、および、第2軸としての中心軸62を含むXY平面において180°回転させた姿勢で配置される。
【0042】
区画線63を境界線として、センサー素子50はYプラス側に配置され、センサー素子51はYマイナス側に配置されている。換言すれば、センサー素子50とセンサー素子51とは、中心軸62に沿って並んで配置される。固定部39には、2本の揺動軸61a、61bが通っている。センサー素子50は、揺動軸61aを軸として可動体8のYプラス方向の先端側が揺動する片側シーソー構造となっている。センサー素子51は、揺動軸61bを軸として可動体8のYマイナス方向の先端側が揺動する片側シーソー構造となっている。これにより、両側シーソー構造の加速度センサー110が構成される。
【0043】
加速度センサー110では、センサー素子50のN型検出部25nと、センサー素子51のN型検出部25nとが、対角位置に配置される。同様に、センサー素子50のP型検出部25pと、センサー素子51のP型検出部25pとが、対角位置に配置される。これにより、センサー素子50の検出データとセンサー素子51の検出データとの平均を取ることにより、検出精度を高めることができる。
そして、センサー素子50,51の第1検査用電極30には、それぞれ複数のダンピング調整孔31が設けられている。
【0044】
以上、述べた通り、本実施形態の加速度センサー110によれば、実施形態1での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
加速度センサー110は、第1センサー素子としてのセンサー素子50と、センサー素子50と同じ構成の第2センサー素子としてのセンサー素子51を備え、センサー素子51は、第1軸としての揺動軸61a、および、第2軸としての中心軸62を含むXY平面において180°回転させた姿勢で配置され、センサー素子50とセンサー素子51とは、中心軸62に沿って並んで配置される。
【0045】
加速度センサー110は、センサー機能を検査するための第1検査用電極30と第2検査用電極15とを備えている。そして、第1検査用電極30には、複数のダンピング調整孔31が設けられている。
従って、ノイズ特性を悪化させることなく、容易に可動体の検査を実施することができる慣性センサーとしての加速度センサー110を提供することができる。
さらに、姿勢の異なる2つのセンサー素子50,51を備えているため、2つのセンサー素子による検出データの平均を取ることにより、検出精度を高めることができる。
【0046】
実施形態3
***センサー素子の異なる態様-2***
図9は、実施形態3に係るセンサー素子の平面図であり、図1に対応している。なお、図9では、基体1、蓋体5の図示を省略し、センサー素子52のみを図示している。
上記実施形態では、第1検査用電極30が可動体8の第3バー7からYマイナス方向に突出して設けられるものとして説明したが、この構成に限定するものではなく、可動体8に第1検査用電極が設けられていれば良い。例えば、本実施形態の加速度センサー120では、可動体8の第3バー17に重なる位置に第1検査用電極35が設けられている。
以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
図9に示すように、本実施形態における加速度センサー120のセンサー素子52では、可動体8の第3バー17が幅広に形成されており、第3バー17に重なる位置に2つの第1検査用電極35が設けられている。換言すれば、第1検査用電極35は、第3バー17に設けられる。
また、第1検査用電極35は第3バー17から突出していないため、可動電極群20aと可動電極群20bとの間には、他の構成部位はなく、両者間の距離が、図1に比べて短くなっている。これに伴ない、可動体8全体のX軸方向における長さも短くなっている。
【0048】
第1検査用電極35は、長方形をなしており、その長辺方向が第3バー17の延在方向と一致している。第1検査用電極35には、略正方形をなしたダンピング調整孔31が複数設けられている。複数のダンピング調整孔31は、前述の通り、検出感度とダンピングとのバランスを取って配置されている。蓋体5(図1)には、第1検査用電極35と重なる位置に、第2検査用電極16が設けられている。
第1検査用電極35は、中心軸62を対象線として、左右対称に2ヶ所設けられている。なお、2ヶ所に限定するものではなく、ダンピング調整孔31を含めて左右対称に設けられていれば良く、例えば、第3バー17の中央に1つ設けても良いし、左右に2つずつ設けることであっても良い。第2検査用電極16も、中心軸62を対象線として、左右対称に設けられている。
【0049】
以上、述べた通り、本実施形態の加速度センサー120によれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
加速度センサー120では、第3バー17に重なる位置に設けられた第1検査用電極35と、第1検査用電極35と重なる位置に設けられた第2検査用電極16とを備えており、両者間に検査用信号を印加することにより、センサー機能を検査することができる。そして、第1検査用電極30には、複数のダンピング調整孔31が設けられている。
さらに、第1検査用電極35が第3バー17から突出していないため、コンパクトに構成することができる。
従って、小型で、ノイズ特性を悪化させることなく、容易に可動体の検査を実施することができる慣性センサーとしての加速度センサー120を提供することができる。
【0050】
実施形態4
***センサー素子の異なる態様-3***
図10は、実施形態4に係るセンサー素子の平面図であり、図1図9に対応している。なお、図10では、基体1、蓋体5の図示を省略し、センサー素子53のみを図示している。
上記実施形態では、第1検査用電極30が可動体8の第3バー7からYマイナス方向に突出して設けられるものとして説明したが、この構成に限定するものではなく、可動体8に第1検査用電極が設けられていれば良い。例えば、本実施形態の加速度センサー130では、可動体8の第1バー6a、第2バー6bにそれぞれ第1検査用電極36が設けられている。以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0051】
図10に示すように、本実施形態における加速度センサー130のセンサー素子53では、可動体8の第1バー6aの揺動軸61側に第1検査用電極36が設けられ、第2バー6bの揺動軸61側にも第1検査用電極36が設けられている。換言すれば、第1検査用電極36は、第1バー6aおよび第2バー6bに設けられる。
【0052】
第1検査用電極36は、長方形をなしており、その長辺方向が第1バー6aの延在方向と交差するように設けられている。第1検査用電極36の長辺方向における両端は、第1バー6aから突出している。第1検査用電極36には、略正方形をなしたダンピング調整孔31が複数設けられている。複数のダンピング調整孔31は、前述の通り、検出感度とダンピングとのバランスを取って配置されている。蓋体5(図1)には、第1検査用電極36と重なる位置に、第2検査用電極19が設けられている。
第1検査用電極36は、中心軸62を対象線として、第1バー6aと第2バー6bとの2ヶ所に、左右対称に設けられている。第2検査用電極19も、中心軸62を対象線として、左右対称に設けられている。
【0053】
以上、述べた通り、本実施形態の加速度センサー130によれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
加速度センサー130では、可動体8の第1バー6a、第2バー6bにそれぞれ設けられた第1検査用電極36と、各第1検査用電極36と対となる第2検査用電極19とを備えており、両者間に検査用信号を印加することにより、センサー機能を検査することができる。そして、第1検査用電極30には、複数のダンピング調整孔31が設けられている。従って、ノイズ特性を悪化させることなく、容易に可動体の検査を実施することができる慣性センサーとしての加速度センサー130を提供することができる。
【0054】
実施形態5
***慣性計測装置***
図11は、実施形態5に係る慣性計測装置の分解斜視図である。図12は、回路基板の斜視図である。次に、本実施形態の慣性計測装置200の一例について図11図12を用いて説明する。
【0055】
図11に示す、慣性計測装置200は、IMU(Inertial Measurement Unit)であり、自動車や、ロボットなどの運動体の姿勢や挙動などの慣性運動量を検出する装置である。なお、被装着体は自動車などの運動体に限らず、例えば、橋梁や、高架軌道などの建造物であっても良い。建造物に取付ける場合は、建造物の健全度をチェックする構造ヘルスモニタリングシステムとして用いられる。
慣性計測装置200は、3軸に沿った方向の加速度を検出する加速度センサーと、3軸回りの角速度を検出する角速度センサーとを備えた、いわゆる6軸モーションセンサーである。
【0056】
慣性計測装置200は、平面形状が略正方形の直方体である。また正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、ネジ穴211が形成されている。この2ヶ所のネジ穴211に2本のネジを通して、自動車などの被装着体の被装着面に慣性計測装置200を固定することができる。なお、部品の選定や設計変更により、例えば、スマートフォンやデジタルカメラに搭載可能なサイズに小型化することも可能である。
【0057】
慣性計測装置200は、アウターケース210と、接合部材220と、センサーモジュール230を有し、アウターケース210の内部に、接合部材220を介在させて、センサーモジュール230を挿入した構成となっている。センサーモジュール230は、インナーケース231と回路基板232を有している。インナーケース231には、回路基板232との接触を防止するための凹部231aや、後述するコネクター233を露出させるための開口231bが設けられている。そしてインナーケース231の下面には、接着剤を介して回路基板232が接合されている。
【0058】
図12に示すように、回路基板232の上面には、コネクター233、Z軸回りの角速度を検出する角速度センサー234z、X軸、Y軸及びZ軸の各軸方向の加速度を検出する加速度センサーユニット235などが実装されている。
また、回路基板232の側面には、X軸回りの角速度を検出する角速度センサー234x及びY軸回りの角速度を検出する角速度センサー234yが実装されている。
【0059】
加速度センサーユニット235は、前述したZ軸方向の加速度を測定するための加速度センサー100を少なくとも含み、必要に応じて、一軸方向の加速度を検出したり、二軸方向や三軸方向の加速度を検出したりすることができる。なお、加速度センサー100に換えて、加速度センサー110,120,130を用いても良い。
角速度センサー234x,234y,234zとしては、特に限定されないが、例えばコリオリの力を利用した振動ジャイロセンサーを用いることができる。
【0060】
回路基板232の下面には、制御部としての制御IC236が実装されている。
制御IC236は、例えば、MCU(Micro Controller Unit)であり、不揮発性メモリーを含む記憶部や、A/Dコンバーターなどを内蔵しており、慣性計測装置200の各部を制御する。記憶部には、加速度、および角速度を検出するための順序と内容を規定したプログラムや、加速度センサー100の検出機能の検査方法を規定した検査プログラム、付随するデータなどが記憶されている。また、回路基板232には、その他にも複数の電子部品が実装されている。換言すれば、慣性計測装置200は、慣性センサーとしての加速度センサー100と、加速度センサー100から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部としての制御IC236を含んで構成される。
【0061】
また、慣性計測装置200は、図11図12の構成に限定するものではなく、例えば、角速度センサー234x,234y,234zを設けずに、慣性センサーとして加速度センサー100だけを設ける構成としても良い。この場合、例えば、加速度センサー100と制御IC236とを1つの実装パッケージとして構成することにより、慣性計測装置200を1チップの実装部品として提供することができる。
【0062】
以上、述べた通り、本実施形態の慣性計測装置200によれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
慣性計測装置200は、慣性センサーとしての加速度センサー100と、加速度センサー100から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部としての制御IC236を含んで構成される。
【0063】
これによれば、慣性計測装置200は、ノイズ特性を悪化させることなく、容易に可動体の検査を実施することができる慣性センサーとしての加速度センサー130を備えている。従って、検出精度が高く、信頼性に優れた慣性計測装置200を提供することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…基体、1b…凹部、2…埋込絶縁層、3…固定部、4a…第1回転バネ、4b…第2回転バネ、5…蓋体、5b…凹部、6a…第1バー、6b…第2バー、7…第3バー、8…可動体、9a…台座部、9b…台座部、10…固定櫛歯電極群、10a…固定電極群、10b…固定電極群、11…固定電極、12…固定電極、13…ガラスフリット、14…マウント部、15…第2検査用電極、16…第2検査用電極、17…第3バー、19…第2検査用電極、20…可動櫛歯電極群、20a…可動電極群、20b…可動電極群、21…可動電極、22…可動電極、25n…N型検出部、25p…P型検出部、30…第1検査用電極、31…ダンピング調整孔、33…孔中ダンピング、34…スクイズフィルムダンピング、35…第1検査用電極、36…第1検査用電極、39…固定部、41~44…接続パッド、50,51,52,53…センサー素子、61…揺動軸、61a,61b…揺動軸、62…中心軸、63…区画線、71~74…配線、110,120,130…加速度センサー、200…慣性計測装置、210…アウターケース、211…ネジ穴、220…接合部材、230…センサーモジュール、231…インナーケース、231a…凹部、231b…開口、232…回路基板、233…コネクター、234x…角速度センサー、234y…角速度センサー、234z…角速度センサー、235…加速度センサーユニット、236…制御IC。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-02-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体に設けられているセンサー素子と、
前記センサー素子を覆っている蓋体と、
含み
前記センサー素子は、
前記基体に固定されている固定部と、
前記基体と水平な第1軸を揺動軸として揺動可能な可動体と、
前記固定部と前記可動体とを接続している第1回転バネおよび第2回転バネと、
前記可動体に設けられている可動櫛歯電極群と、
前記可動櫛歯電極群と対向し、前記基体に設けられている固定櫛歯電極群と、
前記可動体に設けられている第1検査用電極と、
前記基体または前記蓋体に設けられ、面視において、前記第1検査用電極と重なっている第2検査用電極と、
を有し、
前記平面視において、前記第1検査用電極は、複数のダンピング調整孔が設けられている、
慣性センサー。
【請求項2】
請求項1において、
前記可動体は、
前記第1回転バネから第1方向に延在している第1バーと、
前記第2回転バネから前記第1方向に延在し、前記第1バーと対をなす第2バーと、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1バーと前記第2バーとを接続している第3バーと
含み
前記第1検査用電極は、前記第3バーに設けられている、
慣性センサー。
【請求項3】
請求項1において、
前記可動体は、
前記第1回転バネから第1方向に延在している第1バーと、
前記第2回転バネから前記第1方向に延在し、前記第1バーと対をなす第2バーと、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1バーと前記第2バーとを接続している第3バーと
含み
前記第1検査用電極は、前記第1バーおよび前記第2バーに設けられている、
慣性センサー。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記第1バーと、前記第2バーとが線対称をなす基準となる対軸を第2軸としたとき、
前記第1検査用電極は、前記第2軸に対して線対称である、
慣性センサー。
【請求項5】
請求項4において、
前記ダンピング調整孔は、前記第2軸に対して線対称である、
慣性センサー。
【請求項6】
請求項5において、
前記センサー素子を第1センサー素子としたとき、
前記第1センサー素子と、
前記第1センサー素子と同じ構成である第2センサー素子と、
含み
前記第2センサー素子は、
前記第1軸および前記第2軸を含む平面において180°回転させた姿勢で配置され、
前記第1センサー素子と前記第2センサー素子とは、前記第2軸に沿って並んで配置されている、
慣性センサー。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の慣性センサーと、
前記慣性センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部と、
を含む、
慣性計測装置。
【請求項8】
請求項5または6に記載の慣性センサーと、
前記慣性センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部と、
を含む、
慣性計測装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本願に係る一態様の慣性センサーは、基体と、前記基体上に設けられるセンサー素子と、前記センサー素子を覆う蓋体と、を備え、前記センサー素子は、前記基体に固定される固定部と、前記基体と水平な第1軸を揺動軸として揺動可能な可動体と、前記固定部と前記可動体とを接続する第1回転バネおよび第2回転バネと、前記可動体に設けられる可動櫛歯電極群と、前記可動櫛歯電極群と対向し、前記基体に設けられる固定櫛歯電極群と、前記可動体に設けられる第1検査用電極と、前記基体または前記蓋体に設けられ、前記基体の平面視において、前記第1検査用電極と重なる第2検査用電極と、を有し、前記平面視において、前記第1検査用電極には、複数のダンピング調整孔が設けられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
***加速度の検出原理***
第3バー7には、可動櫛歯電極群20が設けられている。可動櫛歯電極群20は、可動電極群20aと可動電極群20bとから構成される。可動電極群20aと可動電極群20bとは、Y軸方向に延在する中心軸62を対軸として、左右対称となる位置に設けられている。可動電極群20aは、第3バー7からYマイナス方向に延在する4本の可動電極21から構成される。4本の可動電極21は、第3バー7の延在方向に沿って等ピッチで櫛歯状に設けられている。同様に、可動電極群20bは、第3バー7からYマイナス方向に延在する4本の可動電極22から構成される。4本の可動電極22は、第3バー7の延在方向に沿って等ピッチで櫛歯状に設けられている。なお、可動電極21,22は4本に限定するものではなく、複数本であれば良く、例えば、8本でも良いし、10本であっても良い。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
第1検査用電極30のダンピング調整孔31は、検出感度とダンピングとのバランスを取って設けられている。詳しくは、孔中ダンピング33と、スクイズフィルムダンピング34との差がなるべく小さくなるように、好ましくは、孔中ダンピング33とスクイズフィルムダンピング34とが等しくなるように複数のダンピング調整孔31を配置している。好適例では、第1検査用電極30の面積におけるダンピング調整孔31の占有率は、75%以上であることが好ましく、78%以上であることがより好ましく、82%以上であることがさらに好ましい。また、ダンピング調整孔31の形状は、正方形とすることが好ましい。なお、正方形の面積に対して±25%以内の面積を有する多角形であっても良い。また、第1検査用電極30は、中心軸62を対軸として、左右対称となるように形成されている。複数のダンピング調整孔31の配置も、左右対称となっている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
ステップS10では、加速度センサー100を加速度の検出モードから、検出機能の検査モードに切替える。
ステップS11では、初期状態における検出値を取得するために、検用の微弱な交流信号を加速度センサー100に印加する。このとき、可動櫛歯電極群20、第1検査用電極30を含む可動体8の電位と、P型検出部25pの固定電極群10bの電位と、N型検出部25nの固定電極群10aの電位は、全て共通のGND電位とし、加速度センサー100の内部には静電引力が生じない状態にしておく。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
また、第1バー6aと、第2バー6bとが線対称となる対軸を第2軸としての中心軸62としたときに、第1検査用電極30は、中心軸62に対して線対称に設けられる。
また、ダンピング調整孔31は、中心軸62に対して線対称に設けられる。
これによれば、第1検査用電極30は、中心軸62を対軸として左右対称となるように設けられる。よって、外部からの衝撃などに対して不要な振動モードを低減することができる。特に、X軸方向における不要な慣性力を低減することができる。
従って、信頼性が高い加速度センサー100を提供することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
第1検査用電極35は、長方形をなしており、その長辺方向が第3バー17の延在方向と一致している。第1検査用電極35には、略正方形をなしたダンピング調整孔31が複数設けられている。複数のダンピング調整孔31は、前述の通り、検出感度とダンピングとのバランスを取って配置されている。蓋体5(図1)には、第1検査用電極35と重なる位置に、第2検査用電極16が設けられている。
第1検査用電極35は、中心軸62を対線として、左右対称に2ヶ所設けられている。なお、2ヶ所に限定するものではなく、ダンピング調整孔31を含めて左右対称に設けられていれば良く、例えば、第3バー17の中央に1つ設けても良いし、左右に2つずつ設けることであっても良い。第2検査用電極16も、中心軸62を対線として、左右対称に設けられている。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
以上、述べた通り、本実施形態の加速度センサー120によれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
加速度センサー120では、第3バー17に重なる位置に設けられた第1検査用電極35と、第1検査用電極35と重なる位置に設けられた第2検査用電極16とを備えており、両者間に検査用信号を印加することにより、センサー機能を検査することができる。そして、第1検査用電極3には、複数のダンピング調整孔31が設けられている。
さらに、第1検査用電極35が第3バー17から突出していないため、コンパクトに構成することができる。
従って、小型で、ノイズ特性を悪化させることなく、容易に可動体の検査を実施することができる慣性センサーとしての加速度センサー120を提供することができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
第1検査用電極36は、長方形をなしており、その長辺方向が第1バー6aの延在方向と交差するように設けられている。第1検査用電極36の長辺方向における両端は、第1バー6aから突出している。第1検査用電極36には、略正方形をなしたダンピング調整孔31が複数設けられている。複数のダンピング調整孔31は、前述の通り、検出感度とダンピングとのバランスを取って配置されている。蓋体5(図1)には、第1検査用電極36と重なる位置に、第2検査用電極19が設けられている。
第1検査用電極36は、中心軸62を対線として、第1バー6aと第2バー6bとの2ヶ所に、左右対称に設けられている。第2検査用電極19も、中心軸62を対線として、左右対称に設けられている。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
以上、述べた通り、本実施形態の加速度センサー130によれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
加速度センサー130では、可動体8の第1バー6a、第2バー6bにそれぞれ設けられた第1検査用電極36と、各第1検査用電極36と対となる第2検査用電極19とを備えており、両者間に検査用信号を印加することにより、センサー機能を検査することができる。そして、第1検査用電極3には、複数のダンピング調整孔31が設けられている。従って、ノイズ特性を悪化させることなく、容易に可動体の検査を実施することができる慣性センサーとしての加速度センサー130を提供することができる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
これによれば、慣性計測装置200は、ノイズ特性を悪化させることなく、容易に可動体の検査を実施することができる慣性センサーとしての加速度センサー10を備えている。従って、検出精度が高く、信頼性に優れた慣性計測装置200を提供することができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正の内容】
図5