(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162602
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】水栓装置
(51)【国際特許分類】
A47K 3/28 20060101AFI20231101BHJP
E03C 1/06 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A47K3/28
E03C1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073042
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 真樹
【テーマコード(参考)】
2D060
2D132
【Fターム(参考)】
2D060BA01
2D060BF01
2D060BF07
2D132FA02
2D132FB02
2D132FC04
2D132FD01
2D132FJ34
(57)【要約】
【課題】シャワーヘッドからの遠隔操作により水栓本体の吐水状態を適切に変更することが可能な水栓装置を提供すること。
【解決手段】水栓装置1は、水栓本体2の吐水状態を変更可能なアクチュエータ11を備える本体側ユニット10と、シャワーヘッド4に設けられるヘッド側ユニット20と、シャワーフック5に設けられシャワーヘッド4の引掛けに伴う電磁結合によりヘッド側ユニット20にワイヤレス給電を行う給電部30と、を有する。ヘッド側ユニット20は、使用者による吐水状態の変更操作を検出可能な操作検出部21を備え、操作検出部21の検出結果に基づく制御信号を本体側ユニット10に無線通信により送信して、本体側ユニット10のアクチュエータ11により水栓本体2の吐水状態を変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体と、該水栓本体とシャワーホースを介して通水可能に接続されるシャワーヘッドと、設置壁面に固定されて前記シャワーヘッドを着脱可能に引掛けることが可能なシャワーフックと、を有する水栓装置であって、
前記水栓本体の吐水状態を変更可能なアクチュエータ、該アクチュエータの作動を制御する本体側制御部、及び送信側から送られる信号を受信する受信部を備える本体側ユニットと、
前記シャワーヘッドに設けられ、使用者による前記吐水状態の変更操作を検出可能な操作検出部、該操作検出部の検出結果に基づく制御信号を前記受信部に無線通信により送信する送信部、及び前記操作検出部と前記送信部との作動を制御するヘッド側制御部を備えるヘッド側ユニットと、
前記シャワーフックに設けられる送電コイルと前記シャワーヘッドに設けられる受電コイルとを備え、前記シャワーヘッドの前記シャワーフックへの引掛けに伴い前記送電コイルと前記受電コイルとが互いに電磁結合されて、前記送電コイルから前記受電コイルに前記ヘッド側ユニットを駆動するための電力を電磁誘導により伝送する給電部と、を有し、
前記本体側制御部が、前記送信部から前記受信部に送られる前記制御信号に基づいて前記吐水状態を変更するように前記アクチュエータの作動を制御する水栓装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水栓装置であって、
前記シャワーヘッドに設けられ、前記給電部から伝送される電力により充電されて前記ヘッド側ユニットに駆動用の電力を供給する充電部を更に備える水栓装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水栓装置であって、
前記操作検出部が、接点式スイッチから成る水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓装置に関する。詳しくは、水栓本体と、水栓本体とシャワーホースを介して通水可能に接続されるシャワーヘッドと、設置壁面に固定されてシャワーヘッドを着脱可能に引掛けることが可能なシャワーフックと、を有する水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、浴室で使用されるシャワーヘッドを備えた水栓装置が開示されている。シャワーヘッドには、そのグリップ部に、内部の通水路の開閉を切り替えることが可能な押ボタンが設けられている。上記押ボタンの操作により、水栓本体から吐出される湯水をシャワーヘッドのヘッド部から噴出する状態と、ヘッド部までに留めて止水する状態と、に切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、水栓本体からの湯水の吐出そのものを止めるものではなく、水栓本体から吐出された湯水をシャワーヘッド内にて止める構成となっている。そのため、水栓本体からの吐止水の切り替えを行うために、水栓本体に別の操作部材を設ける必要がある。そこで、本発明は、シャワーヘッドからの遠隔操作により水栓本体の吐水状態を適切に変更することが可能な水栓装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の水栓装置は、次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明は、水栓本体と、該水栓本体とシャワーホースを介して通水可能に接続されるシャワーヘッドと、設置壁面に固定されて前記シャワーヘッドを着脱可能に引掛けることが可能なシャワーフックと、を有する水栓装置であって、前記水栓本体の吐水状態を変更可能なアクチュエータ、該アクチュエータの作動を制御する本体側制御部、及び送信側から送られる信号を受信する受信部を備える本体側ユニットと、前記シャワーヘッドに設けられ、使用者による前記吐水状態の変更操作を検出可能な操作検出部、該操作検出部の検出結果に基づく制御信号を前記受信部に無線通信により送信する送信部、及び前記操作検出部と前記送信部との作動を制御するヘッド側制御部を備えるヘッド側ユニットと、前記シャワーフックに設けられる送電コイルと前記シャワーヘッドに設けられる受電コイルとを備え、前記シャワーヘッドの前記シャワーフックへの引掛けに伴い前記送電コイルと前記受電コイルとが互いに電磁結合されて、前記送電コイルから前記受電コイルに前記ヘッド側ユニットを駆動するための電力を電磁誘導により伝送する給電部と、を有し、前記本体側制御部が、前記送信部から前記受信部に送られる前記制御信号に基づいて前記吐水状態を変更するように前記アクチュエータの作動を制御する水栓装置である。
【0007】
第1の発明によれば、シャワーヘッドのシャワーフックへの引掛けにより、給電部の送電コイルと受電コイルとが互いに電磁結合される。それにより、シャワーフックからヘッド側ユニットへのワイヤレス給電が可能となり、使用者が操作検出部に対して行った吐水状態の変更操作に基づく制御信号が、無線通信を介して本体側制御部に送信されるようになる。その結果、シャワーヘッドからの遠隔操作により水栓本体の吐水状態を適切に変更することができる。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記シャワーヘッドに設けられ、前記給電部から伝送される電力により充電されて前記ヘッド側ユニットに駆動用の電力を供給する充電部を更に備える水栓装置である。
【0009】
第2の発明によれば、シャワーヘッドをシャワーフックから取り外しても、ヘッド側ユニットを充電部からの電力供給により駆動させることができる。したがって、使用者がシャワーヘッドを手で掴んで使用する際にも、水栓本体の吐水状態の変更操作を簡便に行うことができる。
【0010】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明において、前記操作検出部が、接点式スイッチから成る水栓装置である。
【0011】
第3の発明によれば、操作検出部が非接触式の手かざしセンサから成る場合と比べて、使用者がシャワーヘッドを手で掴んで使用する際の誤検出を低減することができる。したがって、操作検出部を例えばシャワーヘッドを掴む手の位置に近い使い勝手の良い位置に配置することが可能となり、操作検出部の配置の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る水栓装置の概略構成を表す側面図である。
【
図2】シャワーヘッドをシャワーフックから取り外した状態を表す側面図である。
【
図3】水栓装置の回路構成を模式的に表すシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0014】
《第1の実施形態》
(水栓装置1の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る水栓装置1の構成について、
図1~
図3を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。各図中に示す方向は、それぞれ、水栓装置1が設置される設置壁面Wの正面に立つ使用者から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、
図1~
図3のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る水栓装置1は、浴室の壁面(設置壁面W)に設置されるシャワーヘッド4を備えたいわゆる壁付タイプの混合水栓として構成される。この水栓装置1は、設置壁面Wの裏側から供給される湯と水とを内部で混合してシャワーヘッド4から噴出することができる機能を備える。
【0016】
具体的には、水栓装置1は、上記設置壁面Wの裏側を通って敷設される湯水の各供給配管と設置壁面Wを挟んで流路接続される水栓本体2を備える。水栓本体2は、設置壁面Wの手前側部に固定されている。また、水栓装置1は、上記水栓本体2の不図示の吐出口にフレキシブルホースから成るシャワーホース3を介して通水可能に接続されるシャワーヘッド4を備える。また、水栓装置1は、設置壁面Wに固定されてシャワーヘッド4を着脱可能に引掛けることが可能なシャワーフック5を備える。シャワーフック5は、水栓本体2よりも高い位置に設定されている。
【0017】
水栓本体2は、その内部に組み込まれた図示しない感温式の湯水混合弁と、湯水混合弁を設定温度に合わせた混合位置へと移送するスピンドルと、吐出口を開閉する開閉弁と、を備える。水栓本体2は、上記スピンドルの回転操作と開閉弁の開閉操作とが、それぞれ、シャワーヘッド4に設けられた操作検出部21からの遠隔操作によって行われる構成とされる。
【0018】
具体的には、シャワーヘッド4に設けられる操作検出部21は、湯水の吐水/止水を切り替える吐止水スイッチSW1と、湯水の吐水温度を上げる昇温スイッチSW2と、湯水の吐水温度を下げる降温スイッチSW3と、で構成される。これら吐止水スイッチSW1、昇温スイッチSW2及び降温スイッチSW3は、いずれも、非接触式のセンサではなく、押ボタン式の接点式スイッチによって構成される。
【0019】
上記水栓本体2に設けられる図示しない開閉弁は、シャワーヘッド4に設けられた吐止水スイッチSW1が使用者によって操作される度に、その操作に基づく制御信号を受けて駆動する電動式のアクチュエータ11により開弁/閉弁が交互に切り替えられる構成とされる。それにより、水栓本体2は、吐止水スイッチSW1が操作される度に、吐出口から湯水を吐水する状態と、吐水が止められる(止水される)状態と、に交互に切り替えられるようになっている。なお、開閉弁を開弁/閉弁に切り替える電動式のアクチュエータ11の具体例としては、開閉弁を電磁弁で構成したものが挙げられる。
【0020】
また、水栓本体2に設けられる図示しないスピンドルは、シャワーヘッド4に設けられた昇温スイッチSW2又は降温スイッチSW3が使用者によって操作される度に、その操作に基づく制御信号を受けて駆動する電動式のアクチュエータ11によりその操作に対応する回転位置へと回される構成とされる。上記スピンドルの回転により、湯水混合弁が、その操作に対応した設定温度となる混合位置へと移送される。
【0021】
その結果、水栓本体2の内部で混合される湯水の混合割合が、昇温スイッチSW2又は降温スイッチSW3の操作に対応した設定温度となるように調節される。なお、スピンドルを昇温スイッチSW2又は降温スイッチSW3の操作の度に対応する回転方向に一定の角度ずつ回転させる電動式のアクチュエータ11の具体例としては、パルス信号により一定の角度ずつ回転するように駆動が制御されるステッピングモータが挙げられる。
【0022】
なお、水栓本体2は、上記のような吐水/止水の切り替えと吐水温度の調節に加え、吐水量の調節を更に行える構成とされていても良い。具体的には、上述した開閉弁の開弁/閉弁を切り替えるアクチュエータ11を上記と同じようなステッピングモータにより構成することで、吐出口の開度を図示しない操作スイッチ(シャワーヘッド4に設ける操作スイッチ)の操作に応じた開度となるように一定の角度ずつ動かして調節することが可能となる。
【0023】
その場合の操作スイッチ(不図示)は、1つのスイッチにより操作の度に吐水量の大小を交互に切り替えるものであっても良いが、吐水量の大小を切り替えるためのスイッチを流量増用と流量減用とに分けてそれぞれの操作の度に吐水量を段階的に変化させるものであっても良い。なお、上記のような感温式の湯水混合弁を備える水栓本体2の基本構成は、電動式のアクチュエータ11により操作される点を除き、特開2021-175903号公報等の文献に開示された公知の構成と同一となっている。したがって、これらの具体的な構成についての説明は省略することとする。
【0024】
シャワーヘッド4は、いわゆるハンドシャワーであり、把持部となる棒状のグリップ部4Aと、グリップ部4Aの先から円板状に広がり内部に通水された湯水を幅広く噴出することが可能なヘッド部4Bと、を一体に備える樹脂部品から成る。シャワーヘッド4は、そのグリップ部4Aの図示下端部に、金属製の接続金具4Cを介してシャワーホース3の図示上端部が流路接続された構成とされる。
【0025】
接続金具4Cは、そのシャワーホース3と接続される図示下端部からグリップ部4Aと接続される図示上端部に向かって先太りとなる切頭円錐台状の形に形成されている。シャワーヘッド4は、
図2に示すように、使用者がグリップ部4Aを手で掴み取って自由に取り回せるように使用することができる他、
図1に示すように、接続金具4Cを設置壁面Wに固定された樹脂製のシャワーフック5に引掛けることでシャワーヘッド4から手を放して使用することもできる構成とされる。
【0026】
シャワーフック5は、シャワーヘッド4の接続金具4Cを図示手前側から差し込んで下方に落とし込むことで、シャワーヘッド4を定位置にホールドした状態に引掛けることができる構成とされる。具体的には、シャワーフック5は、その図示手前側部に、高さ方向に貫通する形に凹む引掛凹部5Aを備える構成とされる。引掛凹部5Aは、シャワーヘッド4の接続金具4Cの形に対応して、図示上端の開口が図示下端の開口よりも広がった形に形成されている。
【0027】
シャワーフック5の引掛凹部5Aは、シャワーヘッド4のヘッド部4Bを図示手前側に真っ直ぐ向けた状態でのみ、接続金具4Cを図示手前側から差し込んで引掛けることができる構成とされる。それにより、シャワーヘッド4は、シャワーフック5に引掛けられた状態では、常に、ヘッド部4Bがその正面に立つ使用者に向けて真っ直ぐに向けられた状態に保持されるようになっている。
【0028】
上記シャワーフック5は、使用者がシャワーヘッド4の接続金具4Cを引掛凹部5Aに図示手前側から差し込んで下方に落とし込むことで、接続金具4Cと緩やかに嵌合して、接続金具4Cを定位置にホールドした状態に保持できるようになっている。また、シャワーフック5は、上記ホールド状態から、使用者がシャワーヘッド4のグリップ部4Aを手で掴んで図示上方に引き上げることにより、接続金具4Cを嵌合状態から外してシャワーヘッド4をシャワーフック5から簡便に取り外せるようになっている(
図2参照)。
【0029】
図1に示すように、水栓装置1は、水栓本体2に設けられる電動式のアクチュエータ11を備える本体側ユニット10と、シャワーヘッド4に組み込まれる操作検出部21を備えるヘッド側ユニット20と、を更に備える。また、水栓装置1は、シャワーフック5とシャワーヘッド4とに跨って設けられてヘッド側ユニット20に電磁誘導によるワイヤレス給電を行うことが可能な給電部30を更に備える。シャワーヘッド4は、更に、給電部30から伝送される電力により充電されてヘッド側ユニット20に駆動用の電力を供給する充電部Bを備える。
【0030】
以下、本体側ユニット10、ヘッド側ユニット20、及び給電部30の各部の具体的な構成について説明する。
図3に示すように、本体側ユニット10は、上述した水栓本体2の吐水状態を変更可能な電動式のアクチュエータ11と、アクチュエータ11の作動を制御する本体側制御部12と、を有する。また、本体側ユニット10は、送信側から送られる信号を無線通信により受信する受信部13と、電源プラグ14Aを介して不図示の商用電源に接続される電源部14と、を有する。
【0031】
電動式のアクチュエータ11は、前述した水栓本体2の内部に設けられる不図示の感温式の湯水混合弁を設定温度となる位置へと移送するようスピンドルを回転操作するステッピングモータや、吐出口の開閉切り替えを行う電磁弁で構成される。本体側制御部12は、不図示の演算処理部であるCPU、CPUによる実行プログラムを記憶するROM、一時的なデータ記憶部となるRAM、及びタイマ等の機能部を備える。
【0032】
電源部14は、いわゆるAC/DCコンバータから成り、不図示の商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換して本体側制御部12に供給する。本体側制御部12は、後述するヘッド側ユニット20の送信部23から受信部13に吐水状態の変更に纏わる制御信号が送られることにより、受信部13から制御信号の入力を受ける。それにより、本体側制御部12は、受信した制御信号に基づき、アクチュエータ11の作動を制御する。アクチュエータ11の具体的な作動の制御は、前述した通りである。
【0033】
ヘッド側ユニット20は、使用者による吐水状態の変更操作を検出可能な操作検出部21と、操作検出部21の作動を制御するヘッド側制御部22と、を有する。また、ヘッド側ユニット20は、操作検出部21の検出結果に基づく制御信号を本体側ユニット10の受信部13に無線通信により送信する送信部23を更に有する。
【0034】
ヘッド側制御部22は、不図示の演算処理部であるCPU、CPUによる実行プログラムを記憶するROM、一時的なデータ記憶部となるRAM、及びタイマ等の機能部を備える。ヘッド側制御部22は、操作検出部21と送信部23とにそれぞれ電気的に接続されて、これらの作動を制御する。
【0035】
操作検出部21は、前述したように、吐水/止水の切り替え操作を行うための吐止水スイッチSW1と、吐水温度を上げる昇温スイッチSW2と、吐水温度を下げる降温スイッチSW3と、で構成される。ヘッド側制御部22は、上記操作検出部21を構成する吐止水スイッチSW1、昇温スイッチSW2、及び降温スイッチSW3のいずれかの操作が行われて、その検出信号の入力を受けると、その検出結果に基づく吐水状態の変更操作に纏わる制御信号を、送信部23から本体側ユニット10の受信部13に無線通信により送信する。
【0036】
送信部23は、極低の消費電力での通信が可能なBluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)やWifi(登録商標)等の無線通信規格に基づく無線通信により受信部13に制御信号を送信する。
【0037】
給電部30は、シャワーフック5に内蔵される送電コイル31と、シャワーヘッド4のグリップ部4Aに内蔵される受電コイル32と、を有する。また、給電部30は、送電コイル31と電気的に接続されて設置壁面Wの奥部(浴室外部)に設置される送電制御部33と、電源プラグ34Aを介して不図示の商用電源に接続される電源部34と、を有する。また、給電部30は、受電コイル32と電気的に接続されてシャワーヘッド4のグリップ部4Aに内蔵される受電制御部35を有する。
【0038】
送電制御部33と受電制御部35は、それぞれ、不図示の演算処理部であるCPU、CPUによる実行プログラムを記憶するROM、一時的なデータ記憶部となるRAM、及びタイマ等の機能部を備える。電源部34は、いわゆるAC/DCコンバータから成り、不図示の商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換して送電制御部33に供給する。
【0039】
送電コイル31と受電コイル32とは、
図1に示すように、シャワーヘッド4の接続金具4Cがシャワーフック5に引掛けられて保持される状態において、互いのコイル状に巻かれた巻き部同士が図示前後方向に対向する配置となるように設けられている。具体的には、送電コイル31は、シャワーフック5の接続金具4Cが引掛けられる引掛凹部5Aの図示奥側の部分から上方に膨出する部分に組み込まれている。また、受電コイル32は、シャワーヘッド4の接続金具4Cより図示上方に離間したグリップ部4Aの内部に組み込まれている。
【0040】
上記配置により、送電コイル31と受電コイル32とは、シャワーヘッド4がシャワーフック5に引掛けられることで、互いに電磁結合されるように近接配置される構成とされる。また、
図2に示すように、送電コイル31と受電コイル32とは、シャワーヘッド4がシャワーフック5から取り外されることで、互いの電磁結合が解消される構成とされる。
【0041】
給電部30は、Qi規格又はPMA規格に基づく無線電力伝送により、送電コイル31から受電コイル32にワイヤレス給電を行う。具体的には、
図3に示すように、給電部30は、送電制御部33から1次側コイルである送電コイル31に高周波の交流電流を流すことで、電磁誘導作用により2次側コイルである受電コイル32に誘導電流を生じさせる。
【0042】
それにより、受電コイル32に電気的に接続された受電制御部35を介して充電部Bに電力が供給されて充電部Bが充電される。そして、この充電部Bにおいて充電された電力が、ヘッド側ユニット20に駆動用の電力として供給される。受電制御部35は、受電コイル32による受電及び充電部Bへの充電を制御する。
【0043】
ヘッド側ユニット20のヘッド側制御部22は、所定値以上の電力が供給されることで起動し、ヘッド側制御部22に電気的に接続された操作検出部21への電力供給を行うと共に、操作検出部21から吐水状態の変更操作に纏わる検出信号を受信する。そして、ヘッド側制御部22は、上記受信した検出信号に基づいて吐水状態の変更操作に纏わる制御信号を送信部23から本体側ユニット10の受信部13に無線通信により送信する。
【0044】
したがって、水栓本体2から離れて使用されるシャワーヘッド4に給電用の配線や通信用の配線を接続しなくても、シャワーヘッド4に設けられた操作検出部21から水栓本体2の吐水状態を遠隔操作によって変更することが可能となる。よって、水栓本体2に対し、吐水する湯水の温度調節を行うための温調ハンドルや吐水/止水の切り替えを行うための切替ハンドル等の操作部材を設定することなく、シャワーヘッド4側で全ての操作を遠隔で行える構成とすることができる。
【0045】
また、シャワーヘッド4に充電部Bが内蔵されていることにより、シャワーヘッド4をシャワーフック5から取り外しても、操作検出部21による遠隔操作によって水栓本体2の吐水状態を変更することが可能となる。操作検出部21を構成する吐止水スイッチSW1、昇温スイッチSW2、及び降温スイッチSW3の配置は特に限定されないが、使用者がシャワーヘッド4のグリップ部4Aを掴んだ際に力が掛かりにくい部位、例えばグリップ部4Aの手で把持される部位から周方向及び/又は高さ方向に外れた部位に配置すると良い。それにより、使用者がシャワーヘッド4を手で掴んで使用する際の誤検出を低減することができる。
【0046】
なお、給電部30は、上記電力伝送の効率を高めるために、送電回路と受電回路とを送電コイル31と受電コイル32とにそれぞれ不図示のコンデンサを直列に繋いだLC共振回路とする構成としても良い。それにより、送電コイル31と受電コイル32との間で、磁界共鳴を伴う電磁誘導によりワイヤレス給電をより高効率に行うことが可能となる。
【0047】
以上をまとめると、第1の実施形態に係る水栓装置1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0048】
すなわち、水栓装置(1)は、水栓本体(2)と、水栓本体(2)とシャワーホース(3)を介して通水可能に接続されるシャワーヘッド(4)と、設置壁面(W)に固定されてシャワーヘッド(4)を着脱可能に引掛けることが可能なシャワーフック(5)と、を有する。水栓装置(1)は、更に、本体側ユニット(10)と、ヘッド側ユニット(20)と、給電部(30)と、を有する。本体側ユニット(10)は、水栓本体(2)の吐水状態を変更可能なアクチュエータ(11)、アクチュエータ(11)の作動を制御する本体側制御部(12)、及び送信側から送られる信号を受信する受信部(13)を備える。
【0049】
ヘッド側ユニット(20)は、シャワーヘッド(4)に設けられ、使用者による吐水状態の変更操作を検出可能な操作検出部(21)、操作検出部(21)の検出結果に基づく制御信号を受信部(13)に無線通信により送信する送信部(23)、及び操作検出部(21)と送信部(23)との作動を制御するヘッド側制御部(22)を備える。給電部(30)は、シャワーフック(5)に設けられる送電コイル(31)とシャワーヘッド(4)に設けられる受電コイル(32)とを備え、シャワーヘッド(4)のシャワーフック(5)への引掛けに伴い送電コイル(31)と受電コイル(32)とが互いに電磁結合されて、送電コイル(31)から受電コイル(32)にヘッド側ユニット(20)を駆動するための電力を電磁誘導により伝送する。
【0050】
本体側制御部(12)は、送信部(23)から受信部(13)に送られる制御信号に基づいて吐水状態を変更するようにアクチュエータ(11)の作動を制御する。上記構成によれば、シャワーヘッド(4)のシャワーフック(5)への引掛けにより、給電部(30)の送電コイル(31)と受電コイル(32)とが互いに電磁結合される。それにより、シャワーフック(5)からヘッド側ユニット(20)へのワイヤレス給電が可能となり、使用者が操作検出部(21)に対して行った吐水状態の変更操作に基づく制御信号が、無線通信を介して本体側制御部(12)に送信されるようになる。その結果、シャワーヘッド(4)からの遠隔操作により水栓本体(2)の吐水状態を適切に変更することができる。
【0051】
また、水栓装置(1)が、シャワーヘッド(4)に設けられ、給電部(30)から伝送される電力により充電されてヘッド側ユニット(20)に駆動用の電力を供給する充電部(B)を更に備える。上記構成によれば、シャワーヘッド(4)をシャワーフック(5)から取り外しても、ヘッド側ユニット(20)を充電部(B)からの電力供給により駆動させることができる。したがって、使用者がシャワーヘッド(4)を手で掴んで使用する際にも、水栓本体(2)の吐水状態の変更操作を簡便に行うことができる。
【0052】
また、操作検出部(21)が、接点式スイッチから成る。上記構成によれば、操作検出部(21)が非接触式の手かざしセンサから成る場合と比べて、使用者がシャワーヘッド(4)を手で掴んで使用する際の誤検出を低減することができる。したがって、操作検出部(21)を例えばシャワーヘッド(4)を掴む手の位置に近い使い勝手の良い位置に配置することが可能となり、操作検出部(21)の配置の自由度を高めることができる。
【0053】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0054】
1.本発明の水栓装置は、シャワーヘッドに充電部を備えない構成であっても良い。そのような構成であっても、シャワーヘッドをシャワーフックに引掛けた状態では、給電部によるワイヤレス給電により操作検出部によるシャワーヘッドからの遠隔操作を行って、水栓本体の吐水状態を変更することができる。
【0055】
2.使用者による吐水状態の変更操作を検出可能な操作検出部は、接点式の操作スイッチの他、使用者の手かざしを非接触で検出可能な赤外線センサ等の光電センサから成るものであっても良い。また、操作検出部を接点式の操作スイッチで構成する場合、操作スイッチには、押ボタン式のスイッチの他、トグルスイッチ、ロッカスイッチ、ロータリースイッチ、スライドスイッチ、又はタクトスイッチ等の各種タイプのスイッチを適用することができる。
【0056】
3.送信部から受信部への無線通信は、赤外線通信等の光無線通信により行うものであっても良い。
【0057】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1…水栓装置、2…水栓本体、3…シャワーホース、4…シャワーヘッド、4A…グリップ部、4B…ヘッド部、4C…接続金具、5…シャワーフック、5A…引掛凹部、10…本体側ユニット、11…アクチュエータ、12…本体側制御部、13…受信部、14…電源部、14A…電源プラグ、20…ヘッド側ユニット、21…操作検出部、SW1…吐止水スイッチ(接点式スイッチ)、SW2…昇温スイッチ(接点式スイッチ)、SW3…降温スイッチ(接点式スイッチ)、22…ヘッド側制御部、23…送信部、30…給電部、31…送電コイル、32…受電コイル、33…送電制御部、34…電源部、34A…電源プラグ、35…受電制御部、B…充電部、W…設置壁面