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特開2023-162611液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162611
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231101BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 303
B41J11/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073055
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】金澤 学郎
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EB13
2C056EB20
2C056EB45
2C056EB49
2C056EB58
2C056EC11
2C056EC12
2C056EC34
2C056EC35
2C056EC37
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA29
2C056HA30
2C058AB15
2C058AB18
2C058AC07
2C058AC11
2C058AE02
2C058AE04
2C058AE08
2C058AF20
2C058AF23
2C058AF38
2C058GA03
2C058GD01
(57)【要約】
【課題】シート状媒体のノズル面への接触を抑制すると共に、記録品質の低下や記録速度の低下を抑制する。
【解決手段】プリンタのCPUは、記録指令を受信した後(S1:YES)、用紙の端部領域における浮き量Xを決定する(S2)。その後CPUは、浮き量Xが所定量Xt以上であるか否かを判断する(S3)。CPU101は、浮き量Xが所定量Xt以上であると判断された場合(S3:YES)、用紙の端部領域に対して端部制御を行い、浮き量Xが所定量Xt以上でないと判断された場合(S3:NO)、用紙の端部領域に対し、端部制御を行わず、用紙の中央領域と同様の制御を行う。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
ノズルが形成されたノズル面を有し、前記搬送機構により搬送されるシート状媒体に前記ノズルから液体を吐出させる吐出部と、
制御部と、を備え、
前記搬送機構は、
前記吐出部に対して前記搬送方向の上流側に配置され、シート状媒体を押えてシート状媒体が前記ノズル面に近づくのを規制する上流押え部材と、
前記吐出部に対して前記搬送方向の下流側に配置され、シート状媒体を押えてシート状媒体が前記ノズル面に近づくのを規制する下流押え部材と、を含み、
前記制御部は、
シート状媒体における前記搬送方向の端部領域の浮き量を決定する決定処理と、
前記浮き量が所定量以上であるか否かを判断する判断処理と、を実行し、
前記判断処理において前記浮き量が前記所定量以上であると判断された場合、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の一方のみがシート状媒体を押えているとき、前記搬送機構に複数回の小搬送の後に大搬送を行わせ、前記複数回の小搬送の間に前記吐出部に液体を吐出させる端部制御であって、前記小搬送は前記搬送機構にシート状媒体を小搬送量搬送させることであり、前記大搬送は前記搬送機構にシート状媒体を前記小搬送量よりも大きい大搬送量搬送させることである、端部制御を実行し、
前記判断処理において前記浮き量が前記所定量以上でないと判断された場合、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の一方のみがシート状媒体を押えているとき、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の両方がシート状媒体を押えているときと同じ制御を前記搬送機構及び前記吐出部に対して実行することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記決定処理において、前記ノズルからシート状媒体に吐出される液体の量が多いほど、前記浮き量が多いと決定することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記決定処理において、前記ノズルからシート状媒体の前記端部領域に吐出される液体の量が多いほど、前記浮き量が多いと決定することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記端部制御を実行する場合において、前記浮き量が多いほど、前記大搬送量を大きくすることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記端部制御を実行する場合において、前記浮き量が多いほど、前記端部制御を開始するタイミングを早めることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記搬送方向と直交しかつ前記ノズル面と平行な走査方向に前記吐出部を移動させる走査機構をさらに備え、
前記制御部は、前記端部制御における前記小搬送の後かつ前記大搬送の前に、前記走査機構により前記吐出部を前記搬送機構によるシート状媒体の搬送領域外に配置させ、前記吐出部が前記搬送領域外に配置された状態で前記搬送機構に前記大搬送を行わせることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の両方がシート状媒体を押えているとき、前記搬送機構に一定の基準搬送量でシート状媒体を搬送させる中央制御を実行し、
前記基準搬送量は、前記小搬送量よりも大きく、前記大搬送量よりも小さいことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
シート状媒体がロール状に巻回されたロール体を収容可能な第1収容部と、
複数のシート状媒体を積層した状態で収容可能な第2収容部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記搬送機構に前記第1収容部からシート状媒体を搬送させる場合、前記搬送機構に前記第2収容部からシート状媒体を搬送させる場合に比べ、前記浮き量が大きくなる方向に補正することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
シート状媒体がロール状に巻回されたロール体を収容可能な収容部をさらに備え、
前記制御部は、前記搬送機構に前記収容部からシート状媒体を搬送させる場合、前記端部制御を実行することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
シート状媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、ノズルが形成されたノズル面を有し、前記搬送機構により搬送されるシート状媒体に前記ノズルから液体を吐出させる吐出部と、を備えた液体吐出装置において、前記搬送機構は、前記吐出部に対して前記搬送方向の上流側に配置され、シート状媒体を押えてシート状媒体が前記ノズル面に近づくのを規制する上流押え部材と、前記吐出部に対して前記搬送方向の下流側に配置され、シート状媒体を押えてシート状媒体が前記ノズル面に近づくのを規制する下流押え部材と、を含む液体吐出装置を制御する制御方法であって、
シート状媒体における前記搬送方向の端部領域の浮き量を決定する決定処理と、
前記浮き量が所定量以上であるか否かを判断する判断処理と、を実行し、
前記判断処理において前記浮き量が前記所定量以上であると判断された場合、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の一方のみがシート状媒体を押えているとき、前記搬送機構に複数回の小搬送の後に大搬送を行わせ、前記複数回の小搬送の間に前記吐出部に液体を吐出させる端部制御であって、前記小搬送は前記搬送機構にシート状媒体を小搬送量搬送させることであり、前記大搬送は前記搬送機構にシート状媒体を前記小搬送量よりも大きい大搬送量搬送させることである、端部制御を実行し、
前記判断処理において前記浮き量が前記所定量以上でないと判断された場合、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の一方のみがシート状媒体を押えているとき、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の両方がシート状媒体を押えているときと同じ制御を前記搬送機構及び前記吐出部に対して実行することを特徴とする制御方法。
【請求項11】
シート状媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、ノズルが形成されたノズル面を有し、前記搬送機構により搬送されるシート状媒体に前記ノズルから液体を吐出させる吐出部と、を備えた液体吐出装置において、前記搬送機構は、前記吐出部に対して前記搬送方向の上流側に配置され、シート状媒体を押えてシート状媒体が前記ノズル面に近づくのを規制する上流押え部材と、前記吐出部に対して前記搬送方向の下流側に配置され、シート状媒体を押えてシート状媒体が前記ノズル面に近づくのを規制する下流押え部材と、を含む液体吐出装置を、
シート状媒体における前記搬送方向の端部領域の浮き量を決定する決定手段、及び、
前記浮き量が所定量以上であるか否かを判断する判断手段、として機能させ、
前記判断手段によって前記浮き量が前記所定量以上であると判断された場合、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の一方のみがシート状媒体を押えているとき、前記搬送機構に複数回の小搬送の後に大搬送を行わせ、前記複数回の小搬送の間に前記吐出部に液体を吐出させる端部制御であって、前記小搬送は前記搬送機構にシート状媒体を小搬送量搬送させることであり、前記大搬送は前記搬送機構にシート状媒体を前記小搬送量よりも大きい大搬送量搬送させることである、端部制御を実行させ、
前記判断手段によって前記浮き量が前記所定量以上でないと判断された場合、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の一方のみがシート状媒体を押えているとき、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の両方がシート状媒体を押えているときと同じ制御を前記搬送機構及び前記吐出部に対して実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状媒体に液体を吐出する液体吐出装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録用紙(シート状媒体)が上流側の押さえ部(上流押え部材)に押さえられていないと、記録用紙の上流側の端部が浮き上がり、記録用紙がインク吐出面(ノズル面)に接触してしまう虞があることが示されている。当該問題を抑制するため、特許文献1では、最後の単位印刷処理として、第2単位印刷処理(第1搬送処理での記録用紙Pの搬送量よりもノズルシフト量だけ小さい距離だけ記録用紙を搬送させる処理)(小搬送)を実行し、さらにその後スキップ搬送処理(大搬送)を実行することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-177775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような小搬送と大搬送とを含む端部制御は、シート状媒体のノズル面への接触を抑制するのに有効であるが、搬送量を一定とする制御に比べ、搬送ばらつきが生じ易く、搬送回数が増加し易い。搬送ばらつきによって記録品質が低下し、搬送回数の増加によって記録速度が低下し得る。したがって、シート状媒体がノズル面に接触する可能性が低い場合にも端部制御を行うと、記録品質の低下や記録速度の低下が問題となり得る。
【0005】
本発明の目的は、シート状媒体のノズル面への接触を抑制すると共に、記録品質の低下や記録速度の低下を抑制することができる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点によれば、シート状媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、ノズルが形成されたノズル面を有し、前記搬送機構により搬送されるシート状媒体に前記ノズルから液体を吐出させる吐出部と、制御部と、を備え、前記搬送機構は、前記吐出部に対して前記搬送方向の上流側に配置され、シート状媒体を押えてシート状媒体が前記ノズル面に近づくのを規制する上流押え部材と、前記吐出部に対して前記搬送方向の下流側に配置され、シート状媒体を押えてシート状媒体が前記ノズル面に近づくのを規制する下流押え部材と、を含み、前記制御部は、シート状媒体における前記搬送方向の端部領域の浮き量を決定する決定処理と、前記浮き量が所定量以上であるか否かを判断する判断処理と、を実行し、前記判断処理において前記浮き量が前記所定量以上であると判断された場合、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の一方のみがシート状媒体を押えているとき、前記搬送機構に複数回の小搬送の後に大搬送を行わせ、前記複数回の小搬送の間に前記吐出部に液体を吐出させる端部制御であって、前記小搬送は前記搬送機構にシート状媒体を小搬送量搬送させることであり、前記大搬送は前記搬送機構にシート状媒体を前記小搬送量よりも大きい大搬送量搬送させることである、端部制御を実行し、前記判断処理において前記浮き量が前記所定量以上でないと判断された場合、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の一方のみがシート状媒体を押えているとき、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の両方がシート状媒体を押えているときと同じ制御を前記搬送機構及び前記吐出部に対して実行することを特徴とする液体吐出装置が提供される。
【0007】
本発明の第2観点によれば、シート状媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、ノズルが形成されたノズル面を有し、前記搬送機構により搬送されるシート状媒体に前記ノズルから液体を吐出させる吐出部と、を備えた液体吐出装置において、前記搬送機構は、前記吐出部に対して前記搬送方向の上流側に配置され、シート状媒体を押えてシート状媒体が前記ノズル面に近づくのを規制する上流押え部材と、前記吐出部に対して前記搬送方向の下流側に配置され、シート状媒体を押えてシート状媒体が前記ノズル面に近づくのを規制する下流押え部材と、を含む液体吐出装置を制御する制御方法であって、シート状媒体における前記搬送方向の端部領域の浮き量を決定する決定処理と、前記浮き量が所定量以上であるか否かを判断する判断処理と、を実行し、前記判断処理において前記浮き量が前記所定量以上であると判断された場合、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の一方のみがシート状媒体を押えているとき、前記搬送機構に複数回の小搬送の後に大搬送を行わせ、前記複数回の小搬送の間に前記吐出部に液体を吐出させる端部制御であって、前記小搬送は前記搬送機構にシート状媒体を小搬送量搬送させることであり、前記大搬送は前記搬送機構にシート状媒体を前記小搬送量よりも大きい大搬送量搬送させることである、端部制御を実行し、前記判断処理において前記浮き量が前記所定量以上でないと判断された場合、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の一方のみがシート状媒体を押えているとき、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の両方がシート状媒体を押えているときと同じ制御を前記搬送機構及び前記吐出部に対して実行することを特徴とする制御方法が提供される。
【0008】
本発明の第3観点によれば、シート状媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、ノズルが形成されたノズル面を有し、前記搬送機構により搬送されるシート状媒体に前記ノズルから液体を吐出させる吐出部と、を備えた液体吐出装置において、前記搬送機構は、前記吐出部に対して前記搬送方向の上流側に配置され、シート状媒体を押えてシート状媒体が前記ノズル面に近づくのを規制する上流押え部材と、前記吐出部に対して前記搬送方向の下流側に配置され、シート状媒体を押えてシート状媒体が前記ノズル面に近づくのを規制する下流押え部材と、を含む液体吐出装置を、シート状媒体における前記搬送方向の端部領域の浮き量を決定する決定手段、及び、前記浮き量が所定量以上であるか否かを判断する判断手段、として機能させ、前記判断手段によって前記浮き量が前記所定量以上であると判断された場合、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の一方のみがシート状媒体を押えているとき、前記搬送機構に複数回の小搬送の後に大搬送を行わせ、前記複数回の小搬送の間に前記吐出部に液体を吐出させる端部制御であって、前記小搬送は前記搬送機構にシート状媒体を小搬送量搬送させることであり、前記大搬送は前記搬送機構にシート状媒体を前記小搬送量よりも大きい大搬送量搬送させることである、端部制御を実行させ、前記判断手段によって前記浮き量が前記所定量以上でないと判断された場合、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の一方のみがシート状媒体を押えているとき、前記上流押え部材及び前記下流押え部材の両方がシート状媒体を押えているときと同じ制御を前記搬送機構及び前記吐出部に対して実行させることを特徴とするプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、浮き量が所定量以上であると判断された場合は、端部制御を実行することで、シート状媒体のノズル面への接触を抑制することができる。一方、浮き量が所定量以上でないと判断された場合は、端部制御を実行しないことで、記録品質の低下や記録速度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの内部構造を示す概略側面図であり、ロール体が収容された状態を示す概略側面図である。
図2図1のプリンタにカット紙が収容された状態を示す概略側面図である。
図3】ヘッドの部分断面図である。
図4図1に示す領域IVの拡大図である。
図5図4に示すヘッド周辺の平面図である。
図6】(a)は、図5のVIA-VIA線に沿った断面図である。(b)は、図5の矢印VIB方向から見た側面図である。
図7図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図8】中央制御を説明するための図4に対応する図である。
図9】用紙先端に対する端部制御を説明するための図4に対応する図である。
図10】用紙後端に対する端部制御を説明するための図4に対応する図である。
図11図1のプリンタにおける記録に係る制御内容を示すフロー図である。
図12】用紙先端位置と浮き量との関係を示すグラフである。
図13】本発明の第2実施形態に係るプリンタにおける記録に係る制御内容を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るプリンタ1(液体吐出装置)は、図1及び図2に示すように、筐体1aと、筐体1aに対して着脱可能な給紙トレイ10,20と、排紙トレイ6とを備えている。給紙トレイ10が本発明の「第1収容部」「収容部」に該当し、給紙トレイ20が本発明の「第2収容部」に該当する。
【0012】
給紙トレイ10,20は、上方に開口した箱形状を有し、筐体1aに対して前後方向に移動可能である。給紙トレイ10,20は、筐体1aに対して前方に移動されることで筐体1aから引き出され、筐体1aに対して後方に移動されることで筐体1aに装着される。給紙トレイ10,20は、筐体1aに装着される装着位置(図1及び図2参照)と、装着位置よりも前方の引出位置(図示略)とを取り得る。給紙トレイ10,20が装着位置にあるとき、給紙トレイ20は、給紙トレイ10と上下方向に重なり、給紙トレイ10の上方に配置されている。
【0013】
排紙トレイ6は、筐体1aの上部前方の側壁で構成されている。排紙トレイ6は、左右方向に沿った軸6aを中心として回動することで、筐体1aの開口1xを開く開位置(図示略)と、開口1xを閉じる閉位置(図1及び図2参照)とを取り得る。
【0014】
プリンタ1は、さらに、搬送機構3と、切断機構4と、ヘッド5と、制御装置100とを備えている。搬送機構3のうち後述のローラ14a,14bを除く要素と、切断機構4と、ヘッド5と、制御装置100とは、筐体1aに支持されている。
【0015】
搬送機構3は、給紙トレイ10,20から選択的に用紙Pを搬送するように構成されており、ローラ14a,14bと、ローラ32,35及びアーム33,36と、ローラ対37a,37b,38,39と、プラテン9と、コルゲートプレート31と、ローラ34と、上記各ローラを駆動するための搬送モータ30(図7参照)とを含む。
【0016】
用紙Pは、ロール紙Pr(図1参照)及びカット紙Pc(図2参照)を総称したものであり、本発明の「シート状媒体」に該当する。カット紙Pcは、ロール紙Prよりも搬送方向(搬送機構3により用紙Pが搬送される方向)の長さが短い。
【0017】
搬送機構3において、ローラ14a,14bと、ローラ35及びアーム36と、ローラ対37a,37b,38,39と、ローラ34と、プラテン9とは、給紙トレイ10からヘッド5の下方を通って排紙トレイ6へとロール紙Prが搬送される搬送経路T1を構成する(図1参照)。搬送機構3において、ローラ32及びアーム33と、ローラ対37a,38,39と、ローラ34と、プラテン9とは、給紙トレイ20からヘッド5の下方を通って排紙トレイ6へとカット紙Pcが搬送される搬送経路T2を構成する(図2参照)。搬送経路T1,T2においてローラ対37aから排紙トレイ6までの部分は共通している。
【0018】
給紙トレイ10は、図1に示すように、ロール体Rを収容可能である。ロール体Rは、円筒状の芯部材Rcの外周面に長尺のロール紙Prがロール状に巻回されたものである。ロール体Rは、その回転軸Rx(芯部材Rcの中心軸)が左右方向に沿った状態で、給紙トレイ10に収容される。
【0019】
給紙トレイ10の底部に、ローラ14a,14bが配置されている。ローラ14a,14bは、左右方向に沿った軸を中心として回転可能である。ロール体Rは、給紙トレイ10に収容されたとき、その下側部分の外周面がローラ14a,14bに支持される。
【0020】
ロール体Rをセットする際には、ロール体Rを手動で図1の反時計回り方向に回転させ、ロール体Rからロール紙Prを巻き解く。そしてロール紙Prの先端(搬送方向の下流端)をローラ35と給紙トレイ10の底壁11との間に挟持させる。この状態で、制御装置100の制御により搬送モータ30(図7参照)が駆動されると、ローラ14a,14b,35が回転し、ロール紙Prが後方に給送される。給紙トレイ10からローラ35により給送されたロール紙Prは、給紙トレイ10の後方の側壁12と接触し、側壁12に沿って移動して、切断機構4へと案内される。
【0021】
ローラ35は、アーム36の一端に支持されている。アーム36の他端は、左右方向に沿った軸36aを介して筐体1aに支持されている。アーム36は、軸36aを中心として回動可能である。アーム36は、付勢部材(図示略)によりローラ35が底壁11に近づくように付勢されている。
【0022】
切断機構4は、カッター4aと、切断モータ40(図7参照)とを含む。カッター4aは、給紙トレイ10の後方の側壁12の上方かつローラ対37bの下方に配置されている。カッター4aは、例えば円板状の回転刃と従動刃とからなる。或いは、カッター4aは、回転刃と固定刃とからなってもよい。制御装置100の制御により切断モータ40が駆動されると、回転刃は、回転しながら、左右方向に往復移動する。ロール紙Prは、カッター4aにより左右方向に切断される。
【0023】
給紙トレイ20は、図2に示すように、複数のカット紙Pcを上下方向に積層した状態で収容可能である。カット紙Pcは、給紙トレイ20の底壁21の上面に支持される。
【0024】
給紙トレイ20が筐体1aに装着された状態において、給紙トレイ20にカット紙Pcが収容されていないとき、ローラ32は、底壁21に接触する(図1参照)。給紙トレイ20が筐体1aに装着された状態において、給紙トレイ20にカット紙Pcが収容されているとき、ローラ32は、最上層のカット紙Pcと接触する(図2参照)。この状態で、制御装置100の制御により搬送モータ30(図7参照)が駆動されると、ローラ32が回転し、カット紙Pcが後方に給送される。
【0025】
ローラ32は、アーム33の一端に支持されている。アーム33の他端は、左右方向に沿った軸33aを介して筐体1aに支持されている。アーム33は、軸33aを中心として回動可能である(図1及び図2参照)。アーム33は、付勢部材(図示略)によりローラ32が底壁21に近づくように付勢されている。
【0026】
ヘッド5(本発明の「吐出部」に該当する。)は、図3に示すように、流路ユニット51及びアクチュエータユニット52を含む。流路ユニット51の内部には、インクタンク(図示略)に連通する共通流路51xと、共通流路51xから分岐した複数の個別流路51yとが形成されている。各個別流路51yは、圧力室51c及びノズル51nを含む。ノズル51nは、個別流路51yの先端に位置し、流路ユニット51の下面に開口している。流路ユニットの下面は、複数のノズル51nが形成されたノズル面5aである。圧力室51cは、流路ユニット51の上面に開口している。アクチュエータユニット52は、流路ユニット51の上面に複数の圧力室51cを覆うように配置された振動板521と、振動板521の上面に配置された圧電層522と、圧電層522の上面に複数の圧力室51cのそれぞれと対向するように配置された複数の個別電極523とを含む。振動板521及び圧電層522において各個別電極523と各圧力室51cとで挟まれた部分は、圧力室51c毎に個別のユニモルフ型アクチュエータとして機能し、ドライバIC50(図3参照)による各個別電極523への電圧の印加に応じて独立して変形可能である。アクチュエータが圧力室51cに向かって凸となるように変形することにより、圧力室51cの容積が減少し、圧力室51c内のインクに圧力が付与され、ノズル51nからインクが吐出される。
【0027】
ヘッド5は、図4及び図5に示すように、キャリッジ5cに保持されている。キャリッジ5cは、ヘッド5を保持しつつ、走査機構8(図5参照)によって左右方向に移動可能である。左右方向は、ヘッド5周辺の搬送方向と直交しかつノズル面5aと平行な方向であり、本発明の「走査方向」に該当する。
【0028】
走査機構8は、図5に示すように、キャリッジ5cを支持する2本のガイドレール81,82と、キャリッジ5cに連結された無端ベルト83と、走査モータ80とを含む。無端ベルト83は、走査モータ25と連結されている。制御装置100の制御により走査モータ25が駆動されると、無端ベルト83が走行し、ガイドレール81,82に沿ってキャリッジ5c及びヘッド5が走査方向に移動する。
【0029】
プラテン9は、図4に示すように、ヘッド5及びキャリッジ5cの下方においてノズル面5aと平行に配置されており、用紙Pを支持する表面を有する。当該表面における搬送方向上流側の領域には、それぞれ搬送方向に延びる6つのリブ9a(図5参照)が形成されている。6つのリブ9aは、図5に示すように、走査方向に等間隔に配置されている。
【0030】
プラテン9を搬送方向に挟むように、ローラ対38,39が配置されている。図4に示すように、ローラ対38は、ヘッド5に対して搬送方向の上流側に配置されており、上ローラ38a及び下ローラ38bを含む。ローラ対39は、ヘッド5に対して搬送方向の下流側に配置されており、上ローラ39a及び下ローラ38bを含む。
【0031】
ローラ対38の上ローラ38aの上方に、コルゲートプレート31の基部が配置されている。コルゲートプレート31の先端(搬送方向の下流端)は、プラテン9の表面と若干の間隔を介して対向している。コルゲートプレート31は、図5に示すように、走査方向に等間隔をなして、7つ設けられている。6つのリブ9aは、走査方向に隣接するコルゲートプレート31の間にそれぞれ配置されている。
【0032】
ローラ対39は、図5に示すように、上ローラ39aと下ローラ39bとからなる組を6組有する。6つの組は、走査方向に等間隔に並んでいる。6つの組は、それぞれ、6つのリブ9aと走査方向の位置が一致している。
【0033】
ローラ対39に対して搬送方向の下流側に、図4に示すように、ローラ34が配置されている。ローラ34は、図5に示すように、走査方向に等間隔をなして、7つ設けられている。上記ローラ対39の6組は、走査方向に隣接するローラ34の間にそれぞれ配置されている。7つのローラ34は、それぞれ、7つのコルゲートプレート31と走査方向の位置が一致している。
【0034】
ローラ38a,38b,39bは外周面に突起が形成されていないゴムローラであるのに対し、ローラ34,39aは外周面に複数の突起が形成された拍車ローラである。これにより、用紙Pの表面に着弾したインクがローラ34,39aに付着し難くなっている。
【0035】
図6(a)に示すように、各リブ9aの上端は、各コルゲートプレート31の先端よりも上方に位置する。このような位置関係において、6つのリブ9aの上端が用紙Pを下方から支持すると共に、7つのコルゲートプレート31の先端が用紙Pを上方から押圧することにより、用紙Pに走査方向に沿った波形状が付与される。
【0036】
図6(b)に示すように、上ローラ39aと下ローラ39bとの接触点は、ローラ34の下端よりも上方に位置する。このような位置関係において、6つの下ローラ39bが用紙Pを下方から支持すると共に、7つのローラ34が用紙Pを上方から押圧することにより、用紙Pに走査方向に沿った波形状が付与される。
【0037】
図6(a),(b)に示すように用紙Pに走査方向に沿った波形状が付与されることで、用紙Pに腰が与えられ、良好な搬送が実現される。
【0038】
ここで、コルゲートプレート31が本発明の「上流押え部材」に該当し、上ローラ39aが本発明の「下流押え部材」に該当する。図4に示すように、コルゲートプレート31は、ヘッド5に対して搬送方向の上流側に配置され、用紙Pを押えて用紙Pがノズル面5aに近づくのを規制する。上ローラ39aは、ヘッド5に対して搬送方向の下流側に配置され、用紙Pを押えて用紙Pがノズル面5aに近づくのを規制する。
【0039】
制御装置100は、図7に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、及び、各種制御回路を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)104を有する。制御装置100は、PC(Personal Computer)等の外部装置(図示略)と通信可能に接続されている。CPU101及びASIC104が、本発明の「制御部」に該当する。
【0040】
ROM102には、CPU101が各種動作を制御するためのプログラムやデータが格納されている。RAM103は、CPU101が上記プログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。CPU101は、外部装置から受信した記録指令に基づいて、ROM102やRAM103に記憶されているプログラムやデータにしたがい、ASIC104に対する指令を行う。
【0041】
ASIC104は、搬送モータ30、ドライバIC50、走査モータ80及び切断モータ40が接続されている。ASIC104は、CPU101からの指令にしたがい、搬送モータ30、ドライバIC50及び走査モータ80(さらに、ロール紙Prに記録を行う場合は切断モータ40)を制御し、用紙Pに画像を記録する記録処理を実行する。
【0042】
記録処理において、ASIC104は、搬送機構3に用紙Pを搬送方向に搬送させる搬送動作と、走査機構8にヘッド5を走査方向に移動させながらノズル51nからインクを吐出させる吐出動作とを、交互に行わせる。即ち、記録中、用紙Pは間欠的に搬送される。吐出動作は、1回の搬送動作とその次の回の搬送動作との間の搬送停止中に行われる。搬送動作と吐出動作とが交互に繰り返し行われることにより、用紙Pの表面にインクのドットが形成され、画像が記録される。
【0043】
1回の吐出動作は、記録解像度や記録速度等に応じて、「(i)ヘッド5が走査方向に往動又は復動を行いつつインクを吐出する場合」と「(ii)ヘッド5が走査方向に1又は複数の往復動を行い、往動及び復動のそれぞれでインクを吐出する場合」とがある。
【0044】
ここで、図8~10を参照し、記録処理における搬送制御について説明する。
【0045】
図8に示すように、コルゲートプレート31及び上ローラ39aの両方が用紙Pを押えているとき、ASIC104は、搬送機構3に一定の基準搬送量D0で用紙Pを搬送させる「中央制御」を実行する。
【0046】
図9及び図10に示すように、コルゲートプレート31及び上ローラ39aの一方のみが用紙Pを押えているとき、ASIC104は、後述のように用紙Pの浮き量Xが所定量Xt以上であると判断された場合に、搬送機構3に複数回の小搬送の後に大搬送を行わせ、複数回の小搬送の間に吐出動作を行わせる「端部制御」を実行する。
【0047】
図9は、用紙の先端(搬送方向の下流端)領域に対する端部制御を示す。図9において、破線で示す用紙Pは、コルゲートプレート31によって押えられ、上ローラ39aによって押えられていない。
【0048】
図10は、用紙の後端(搬送方向の上流端)領域に対する端部制御を示す。図10において、破線で示す用紙Pは、上ローラ39aによって押えられ、コルゲートプレート31によって押えられていない。
【0049】
図9及び図10は、1回の吐出動作において「(ii)ヘッド5が走査方向に1又は複数の往復動を行い、往動及び復動のそれぞれでインクを吐出する場合」を例示している。本例では、複数回の小搬送の後に大搬送が行われ、さらに大搬送の後に複数回の小搬送が行われる。
【0050】
小搬送は、搬送機構3に用紙Pを小搬送量D1a,D1b,D1a’,D1b’(基準搬送量D0よりも小さい量)搬送させることである。大搬送は、搬送機構3に用紙Pを大搬送量D2a,D2a’(小搬送量D1a,D1b,D1a’,D1b’よりも大きく、基準搬送量D0よりも大きい量)搬送させることである。大搬送量D2a,D2a’は、ノズル領域の搬送方向の長さ(ヘッド5に形成された複数のノズル51nのうち、搬送方向の最上流に位置するノズル51nから最下流に位置するノズル51nまでの搬送方向の距離)よりも短い。
【0051】
小搬送量D1a,D1b,D1a’,D1b’は、互いに同じであることに限定されず、互いに異なってもよい。大搬送量D2a,D2a’は、互いに同じであることに限定されず、互いに異なってもよい。また、連続して行われる複数回の小搬送において、図9及び図10では搬送量が一定であるが、搬送量が一定であることには限定されない。
【0052】
浮き量Xは、用紙Pにおける搬送方向の端部領域(先端領域及び後端領域を含む。図9では用紙Pの先端領域)の浮き量(プラテン9の表面から用紙Pの最高点までの距離)をいう。端部領域は、用紙Pの端部(先端又は後端)を含む領域であり、端部領域の搬送方向の長さは、例えばコルゲートプレート31の先端から上ローラ39aまでの搬送方向の長さにノズル領域の搬送方向の長さを足した値である。なお、図9及び図10では用紙Pの先端領域及び後端領域がそれぞれ上側に凸となるように湾曲しているが、下側に凸となる場合もあり得る。
【0053】
次いで、図11を参照し、記録に係る制御内容について説明する。
【0054】
先ず、CPU101は、外部装置から記録指令を受信したか否かを判断する(S1)。
【0055】
外部装置から記録指令を受信していないと判断した場合(S1:NO)、CPU101は、S1の処理を繰り返す。
【0056】
外部装置から記録指令を受信したと判断した場合(S1:YES)、CPU101は、用紙Pの先端領域及び後端領域それぞれの浮き量Xを決定する(S2:決定処理)。
【0057】
ここで、浮き量Xは、用紙Pの先端又は後端の搬送方向の位置に応じて変化する。例えば、図12に示すように、用紙Pの先端がコルゲートプレート31(図9参照)の先端と搬送方向に同じ位置にあるときの浮き量を初期値X0として、用紙Pの先端が当該位置から搬送方向の下流側に移動するにつれて、浮き量が漸進的に増加する。浮き量Xは、用紙Pの先端がローラ39aと搬送方向に同じ位置にあるときに最大値となる。その後、用紙Pの先端がローラ39aよりも搬送方向の下流側に移動するにつれて、浮き量が漸進的に減少し、用紙Pの先端がローラ39aよりも搬送方向下流側の所定位置を通過すると一定となる。
【0058】
また、浮き量Xは、用紙Pの端部領域(先端領域又は後端領域)に対するインクの吐出量、用紙Pの種類、インクの種類等のパラメータに基づいて変化する。例えば、図12に示すように、吐出量が多いほど、浮き量Xが多くなる。図12の例において、浮き量Xは、吐出量小の場合、用紙Pの先端の位置にかかわらず所定量Xtよりも小さいが、吐出量中及び大の場合、用紙Pの先端がローラ39a近傍にあるときに所定量Xtよりも大きくなる。所定量Xtは、例えばプラテン9の表面とノズル面5aとの間隔(図9参照)である。
【0059】
吐出量を導出するには、記録指令に含まれる画像データをRGB各色の濃度データに変換し、当該濃度データを吐出データ(ノズル51n毎の各吐出周期における吐出量を示すデータ)に変換する。
【0060】
ROM103に、上記各パラメータに応じた図12のような関数(用紙Pの先端又は後端の搬送方向の位置と、浮き量Xとの関係を示す関数)やテーブルが記憶されている。当該関数やテーブルは、予め行われた実験に基づくものである。
【0061】
S2において、CPU101は、ROM103に記憶された上述の関数やテーブルに基づいて、用紙Pの先端領域及び後端領域(端部領域)それぞれにおける浮き量Xの最大値を決定する。
【0062】
なお、プリンタ1はロール紙Prを収容する給紙トレイ10とカット紙Pcを収容する給紙トレイ20とを有し、S2では、搬送機構3に給紙トレイ10からロール紙Prを搬送させる場合、搬送機構3に給紙トレイ20からカット紙Pcを搬送させる場合に比べ、浮き量Xが大きくなる方向に補正する。具体的には、ロール紙搬送の場合、図12に示す関数の初期値X0をカット紙搬送の場合に比べて大きくする。
【0063】
S2の後、CPU101は、浮き量Xが所定量Xt以上であるか否かを判断する(S3:判断処理)。S2では、用紙Pの先端領域及び後端領域それぞれの浮き量Xの最大値が決定される。S3では、用紙Pの先端領域及び後端領域の浮き量Xの最大値のそれぞれについて、所定量Xt以上であるか否かを判断する。
【0064】
用紙Pの先端領域及び後端領域の浮き量Xの最大値の少なくとも一方が所定量Xt以上であると判断した場合(S3:YES)、CPU101は、ASIC104を通じて搬送モータ30、ドライバIC50及び走査モータ80(さらに、ロール紙Prに記録を行う場合は切断モータ40)を制御し、記録処理を実行する。このとき、用紙Pの先端領域及び後端領域のうち、浮き量Xが所定量Xt以上であると判断された領域に対し、端部制御(図9及び図10参照)を行う(S4)。
【0065】
S4において、ASIC104は、S2で決定された浮き量Xが多いほど、端部制御を開始するタイミングを早めると共に、大搬送量D2a,D2a’(図9及び図10参照)を大きくする。大搬送量D2a,D2a’を大きくするため、ASIC104は、例えば、大搬送の前の小搬送を開始するタイミングを早めたり、大搬送の後の小搬送を開始するタイミングを遅くしたり、或いは、大搬送の前の小搬送を開始するタイミングを変えずに複数回の小搬送の搬送量を小さくしたりしてよい。
【0066】
大搬送の開始タイミングや大搬送量D2a,D2a’の値は、図12に示す関数に基づいて決定される。例えば図12において、吐出量大の場合、浮き量Xが初期値X0から漸進的に増加し、所定量Xtよりも若干小さい値に達するタイミングで、大搬送が開始される。そして、浮き量Xが最大値から漸進的に減少し、所定量Xtよりも若干小さい値に達するタイミングで、大搬送が終了される。
【0067】
小搬送の回数や小搬送量D1a,D1b,D1a’,D1b’の値は、記録解像度や記録速度に応じて決定される。
【0068】
また、S4において、ASIC104は、小搬送の後かつ大搬送の前に、走査機構8(図5参照)によりヘッド5を搬送領域外(図5に示すヘッド5の位置)に配置させる。そして、ASIC104は、ヘッド5が搬送領域外に配置された状態で、搬送機構3に大搬送を行わせる。搬送領域は、搬送機構3によって用紙Pが搬送される領域(図5に一点鎖線で示す領域)である。
【0069】
用紙Pの先端領域及び後端領域の浮き量Xの最大値の両方が所定量Xt以上でないと判断した場合(S3:NO)、CPU101は、ASIC104を通じて搬送モータ30、ドライバIC50及び走査モータ80(さらに、ロール紙Prに記録を行う場合は切断モータ40)を制御し、記録処理を実行する。このとき、ASIC104は、用紙Pの先端領域及び後端領域に対し、端部制御(図9及び図10参照)を行わず、中央制御(図8参照)を行う(S5)。即ち、ASIC104は、コルゲートプレート31及び上ローラ39aの一方のみが用紙Pを押えているとき、コルゲートプレート31及び上ローラ39aの両方が用紙Pを押えているときと同じ制御を、搬送モータ30及びドライバIC50に対して実行する。
【0070】
S4又はS5の後、CPU101は、当該ルーチンを終了する。
【0071】
以上に述べたように、本実施形態によれば、浮き量Xが所定量Xt以上であると判断された場合(S3:YES)、端部制御(図9及び図10参照)を実行することで、用紙Pのノズル面5aへの接触を抑制することができる。一方、浮き量Xが所定量Xt以上でないと判断された場合(S3:NO)、端部制御を実行しないことで、記録品質の低下や記録速度の低下を抑制することができる。
【0072】
CPU101は、S2(決定処理)において、ノズル51nから用紙Pに吐出されるインクの量(吐出量)が多いほど、浮き量Xが多いと決定する(図12参照)。この場合、インクの付着によって用紙Pがカールする現象に基づき、実効的に浮き量Xを決定できる。
【0073】
CPU101は、S2(決定処理)において、用紙Pの全体ではなく用紙Pの端部領域に対する吐出量が多いほど、浮き量Xが多いと決定する。この場合、より精確に浮き量Xを決定できる。
【0074】
ASIC104は、端部制御を実行する場合において、浮き量Xが多いほど、大搬送量D2a,D2a’(図9及び図10参照)を大きくする。この場合、用紙Pのノズル面5aへの接触をより確実に抑制することができる。
【0075】
ASIC104は、端部制御を実行する場合において、浮き量Xが多いほど、端部制御を開始するタイミングを早める。この場合、用紙Pのノズル面5aへの接触をより確実に抑制することができる。
【0076】
ASIC104は、端部制御における小搬送の後かつ大搬送の前に、走査機構8(図5参照)によりヘッド5を搬送領域外(図5に示すヘッド5の位置)に配置させ、ヘッド5が搬送領域外に配置された状態で搬送機構3に大搬送を行わせる。この場合、用紙Pのノズル面5aへの接触をより確実に抑制することができる。
【0077】
ASIC104は、コルゲートプレート31及び上ローラ39aの両方が用紙Pを押えているときは、搬送量D0を一定とする中央制御(図8参照)を実行する。これにより、安定した記録品質が得られる。
【0078】
S2において、CPU101は、搬送機構3に給紙トレイ10からロール紙Prを搬送させる場合、搬送機構3に給紙トレイ20からカット紙Pcを搬送させる場合に比べ、浮き量Xが大きくなる方向に補正する。ロール紙Prはカット紙Pcに比べて、カールが生じ易く、浮き量Xが大きくなり易い。そのため、ロール紙Prが搬送される場合は浮き量Xが大きくなる方向に補正することで、端部制御を実行し易くし、用紙Pのノズル面5aへの接触を確実に抑制することができる。
【0079】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係るプリンタ(液体吐出装置)は、制御内容が第1実施形態と異なる。
【0080】
第1実施形態(図11参照)では、S2において、CPU101は、搬送機構3に給紙トレイ10からロール紙Prを搬送させる場合、搬送機構3に給紙トレイ20からカット紙Pcを搬送させる場合に比べ、浮き量Xが大きくなる方向に補正する。
【0081】
これに対し、第2実施形態(図13参照)では、CPU101は、S2で上記補正を行う代わりに、記録指令の受信後かつS2の前に、搬送機構3に給紙トレイ10からロール紙Prを搬送させるか否かを判断する(S20)。搬送機構3に給紙トレイ10からロール紙Prを搬送させると判断した場合(S20:YES)、CPU101は、処理をS4に進め、ASIC104を通じて端部制御ありの記録処理を実行する。一方、搬送機構3に給紙トレイ10からロール紙Prを搬送させない(即ち、給紙トレイ20からカット紙Pcを搬送させる)と判断された場合(S20:NO)、CPU101は、処理をS2に進め、第1実施形態と同様に浮き量Xに応じて端部制御を行うか否かを選択する。
【0082】
本実施形態は、ロール紙Prがカット紙Pcに比べてカールが生じ易く浮き量Xが大きくなり易い点に着目してなされたものであり、ロール紙Prが搬送される場合(S20:YES)は端部制御を実行する(S4)ことで、用紙Pのノズル面5aへの接触を確実に抑制することができる。
【0083】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0084】
上流押え部材は、上述の実施形態ではコルゲートプレート31であるが、これに限定されず、ローラであってもよい。
【0085】
下流押え部材は、上述の実施形態ではローラ39aであるが、これに限定されず、プレートであってもよい。
【0086】
浮き量は、上述の実施形態では吐出量、用紙の種類等に基づいて決定されるが、吐出量そのものであってもよい(決定処理で吐出量を決定し、判断処理で吐出量が所定量以上か否かを判断してよい。
【0087】
小搬送の後かつ大搬送の前に走査機構により吐出部を搬送領域外に配置させることは、浮き量が比較的大きい場合に行い、浮き量が比較的小さい場合は行わなくてもよい。
【0088】
浮き量を低減させるため、1回の搬送動作とその次の回の搬送動作との間の時間間隔を所定時間より長くしてもよい。
【0089】
上流押え部材及び下流押え部材の両方がシート状媒体を押えているときの制御として、上述の実施形態では中央制御(一定の基準搬送量でシート状媒体を搬送させる制御)を例示したが、これに限定されない。例えば、上流押え部材及び下流押え部材の両方がシート状媒体を押えているとき、各搬送動作の搬送量が一定でなくてもよい。
【0090】
図9及び図10では、1回の吐出動作において「(ii)ヘッド5が走査方向に1又は複数の往復動を行い、往動及び復動のそれぞれでインクを吐出する場合」において、複数回の小搬送の後に大搬送が行われ、さらに大搬送の後に複数回の小搬送が行われる例を示したが、これに限定されない。例えば、記録解像度や記録速度に応じて、1回の吐出動作において「(i)ヘッド5が走査方向に往動又は復動を行いつつインクを吐出する場合」は、大搬送の後に複数回の小搬送が行われなくてよい。
【0091】
吐出部は、左右方向に移動しつつノズルから液体を吐出するシリアル式に限定されず、位置が固定された状態でノズルから液体を吐出するライン式であってもよい。即ち、本発明の液体吐出装置は、走査機構を備えることに限定されない。
【0092】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、任意の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液、金属粒子が溶媒中に分散された液体等)であってよい。
【0093】
シート状媒体は、紙に限定されず、布やプラスチックフィルムであってもよい。即ち、シート状媒体は、シート状である限り、任意の材料で構成されてよい。
【0094】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。
【0095】
本発明に係るプログラムは、フレキシブルディスク等のリムーバブル型記録媒体やハードディスク等の固定型記録媒体に記録して配布可能である他、通信回線を介して配布可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 プリンタ(液体吐出装置)
3 搬送機構
5 ヘッド(吐出部)
5a ノズル面
8 走査機構
10 給紙トレイ(第1収容部;収容部)
20 給紙トレイ(第2収容部)
31 コルゲートプレート(上流押え部材)
39a 上ローラ(下流押え部材)
51n ノズル
100 制御装置
101 CPU(制御部)
104 ASIC(制御部)
P 用紙(シート状媒体)
R ロール体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13