(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162662
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/535 20060101AFI20231101BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20231101BHJP
A61F 13/512 20060101ALI20231101BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A61F13/535 200
A61F13/56 210
A61F13/512 200
A61F13/512 300
A61F13/49 312Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073152
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】林 純也
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200CA02
3B200CA06
3B200DA01
3B200DB26
3B200DB27
3B200DC04
3B200DC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】排泄物が着用者の肌に接触することを抑制することができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収体4は、背側領域Bにおいて、前記吸収体4の幅方向に沿って、少なくとも一部が切断された切断部41と、前記切断部41から背側の領域において、前記幅方向の中央部に位置し防水シート3に固定されていない第1非固定部と、前記第1非固定部の前記幅方向両側に位置し前記防水シート3に固定された第1固定部とを含み、前記切断部41から背側の領域における前記吸収体4と前記防水シート3との間に、前記幅方向に伸縮可能な弾性部材91が設けられ、前記弾性部材91は、平面視で前記第1非固定部と重なる領域において、前記幅方向の中央部に位置し前記吸収体4に固定されていない第2非固定部と、前記第2非固定部の前記幅方向両側に位置し前記吸収体4に固定された第2固定部とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背側領域と、腹側領域と、前記背側領域と前記腹側領域との間に位置する股下領域とを有する吸収性物品であって、
透液性のトップシートと、遮水性の防水シートと、前記トップシートと前記防水シートとの間に設けられた吸収体とを有し、
前記吸収体は、前記背側領域において、前記吸収体の幅方向に沿って、少なくとも一部が切断された切断部と、前記切断部から背側の領域において、前記幅方向の中央部に位置し前記防水シートに固定されていない第1非固定部と、前記第1非固定部の前記幅方向両側に位置し前記防水シートに固定された第1固定部とを含み、
前記切断部から背側の領域における前記吸収体と前記防水シートとの間に、前記幅方向に伸縮可能な弾性部材が設けられ、
前記弾性部材は、平面視で前記第1非固定部と重なる領域において、前記幅方向の中央部に位置し前記吸収体に固定されていない第2非固定部と、前記第2非固定部の前記幅方向両側に位置し前記吸収体に固定された第2固定部とを含む吸収性物品。
【請求項2】
前記切断部から背側の領域において、前記吸収体の背側の端部及び前記幅方向の両端部が、前記防水シートに固定されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1非固定部の前記幅方向の長さは、8.0cm~10.0cmであり、前記第1非固定部の前記幅方向に直交する方向の長さは、5.0cm~8.0cmである請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は、前記切断部から股下側の領域において、前記幅方向の中央部の背側の端部に形成されたスリットを含む請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記トップシートは、平面視で前記切断部と重なる部分が切断されている請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ等の吸収性物品において、便が排泄された場合に、便が吸収性物品の上に滞留し着用者の肌に接触することを抑制するための工夫がされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液透過性のトップシートと、液不透過性の防水シートと、これら両シート間に配置された吸収体と、トップシートの上面に配置されてトップシートとの間に空隙を形成し、少なくとも股下部領域に開口部を有するスキンコンタクトシートを具備する使い捨て吸収性物品が開示されている。特許文献1の使い捨て吸収性物品では、便を開口部からスキンコンタクトシートとトップシートの間に形成された空隙に導き、便が着用者の肌に接触することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の吸収性物品では、一旦、便がスキンコンタクトシートとトップシートの間に形成された空隙に導かれたとしても、着用者の体勢によって、便はトップシート上を移動又は拡散し、股下部領域の開口部に戻り、着用者の肌に再度接触する可能性があり不十分な点がある。そして、便が肌に長時間接触すると、肌荒れが生じる等、肌への負担が増加するという問題が生じる。
【0006】
上記の点に鑑みて、本発明の一形態は、排泄物が着用者の肌に接触することを抑制することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の形態は、背側領域と、腹側領域と、前記背側領域と前記腹側領域との間に位置する股下領域とを有する吸収性物品であって、透液性のトップシートと、遮水性の防水シートと、前記トップシートと前記防水シートとの間に設けられた吸収体とを有し、前記吸収体は、前記背側領域において、前記吸収体の幅方向に沿って、少なくとも一部が切断された切断部と、前記切断部から背側の領域において、前記幅方向の中央部に位置し前記防水シートに固定されていない第1非固定部と、前記第1非固定部の前記幅方向両側に位置し前記防水シートに固定された第1固定部とを含み、前記切断部から背側の領域における前記吸収体と前記防水シートとの間に、前記幅方向に伸縮可能な弾性部材が設けられ、前記弾性部材は、平面視で前記第1非固定部と重なる領域において、前記幅方向の中央部に位置し前記吸収体に固定されていない第2非固定部と、前記第2非固定部の前記幅方向両側に位置し前記吸収体に固定された第2固定部とを含む。
【0008】
上記第一の形態によれば、弾性部材の収縮力により、切断部から背側の領域において、吸収体の幅方向中央部が収縮され、肌面側に凸となるように変形する隆起部が形成されると共に、吸収体と防水シートの間に、股下領域側に向く開口を有するポケットが形成される。そして、着用者から排泄された便等の排泄物は、開口を介してポケットの内部空間へ移動して収容される。よって、排泄物が着用者の肌に接触することを抑制することができる。また、吸収体は、切断部から背側の吸収体は、肌面側に隆起する一方で、切断部から股下側の吸収体は、切断部から背側の吸収体より非肌面側に位置するため、切断部を境に段差が形成される。このため、一旦ポケットに収容された排泄物が、背側から股下側に逆流しようとしてもこの段差が障壁となり、切断部から股下側の吸収体上に戻ることを抑制することができる。さらに、背側領域にポケットが形成されるため、股下領域及び腹側領域における着用感を快適に維持することができる。
【0009】
本発明の第二の形態は、前記切断部から背側の領域において、前記吸収体の背側の端部及び前記幅方向の両端部が、前記防水シートに固定されている。
【0010】
上記第二の形態によれば、ポケットの背側及び両端部が閉止されるため、ポケットに収容された排泄物が、ポケット内部から背側に漏れ出すことを防止することができる。
【0011】
本発明の第三の形態は、前記第1非固定部の前記幅方向の長さは、8.0cm~10.0cmであり、前記第1非固定部の前記幅方向に直交する方向の長さは、5.0cm~8.0cmである。
【0012】
上記第三の形態によれば、着用者が乳幼児である場合、ポケットの内部空間の容積を、排泄物を十分に収容できる大きさとすることができ、排泄物が着用者の肌に接触することをより抑制することができる。
【0013】
本発明の第四の形態は、前記吸収体は、前記切断部から股下側の領域において、前記幅方向の中央部の背側の端部に形成されたスリットを含む。
【0014】
上記第四の形態によれば、スリットを基点として、切断部から股下側の吸収体が非肌面側に窪みやすくなり、ポケットの開口が開いた状態を維持することができる。よって、排泄物をポケットの内部に容易に導くことができる。
【0015】
本発明の第五の形態は、前記トップシートは、平面視で前記切断部と重なる部分が切断されている。
【0016】
上記第五の形態によれば、トップシートがポケットの開口を遮ることがなく、排泄物をポケットの内部により容易に導くことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一形態の吸収性物品によれば、排泄物が着用者の肌に接触することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態による吸収性物品の肌面側から見た平面展開図である。
【
図6】切断部の作製方法を説明するための図である。
【
図7】一実施形態による吸収性物品の他の例を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。本明細書において、吸収性物品1の前後方向をD1、前後方向と直交する、吸収性物品1の幅方向をD2とする。本明細書では、前後方向D1は、吸収体4の前後方向、また、幅方向D2は、吸収体4の幅方向を示すものとしても用いる。なお、前後方向とは、着用者の前後方向に対応する。本明細書において、吸収性物品1及び吸収体4の前後方向の前側を腹側又は前方とし、前後方向の後ろ側の背側又は後方とする。また、吸収性物品1の着用者と対向する面を肌面、吸収性物品1の肌面と反対側の面、又は衣類と対向する面を非肌面とする。
【0020】
図1は、一実施形態による吸収性物品の肌面側から見た平面展開図であり、
図2は、
図1のI-I断面を示す図である。
【0021】
図1に示すように、吸収性物品1は、背側領域Bと、腹側領域Fと、背側領域Bと腹側領域Fとの間に位置する股下領域Mとを有する。背側領域Bは、股下領域Mより前後方向D1の一方側に延在し、腹側領域Fは、股下領域Mより前後方向D1の他方側に延在している。背側領域Bは、着用時に着用者の背部に対応する領域であり、腹側領域Fは、着用時に着用者の腹部に対応する領域であり、股下領域Mは、着用時に着用者の股下に対応する領域である。本明細書において、背側領域Bの任意の点から股下領域M側の方向を股下側と言う場合がある。股下領域Mの背側の端部(後端)は、吸収性物品1の背側の端部(後端)から75mm~110mm前方に位置し、股下領域Mの腹側の端部(前端)は、吸収性物品1の腹側の端部(前端)から45mm~80mm後方に位置していてよい。
【0022】
図1及び
図2に示すように、吸収性物品1は、透液性のトップシート2と、遮水性の防水シート3と、トップシート2と防水シート3との間に設けられた吸収体4とを有する。吸収体4は、背側領域B、股下領域M及び腹側領域Fに含まれるように設けられている。吸収体4は、形状維持等のために、クレープ紙又は不織布等からなる包装シート5によって包まれていてもよい。吸収性物品1は、防水シート3の非肌面側にバックシート6を設けていてもよい。吸収性物品1は、両側部において、防水シート3、バックシート6、及びギャザーシート71で構成されたサイドフラップSFを有していてよい。本実施形態では、サイドフラップSFを備えている例を示すが、サイドフラップSFを備えていない構成としてもよい。また、吸収性物品1は、バックシート6、防水シート3、及びトップシート2が前後方向それぞれに延出して構成された、吸収体4の存在しないエンドフラップEFと、背側領域Bの幅方向D2の両側部にそれぞれ設けられた連結テープ8、8を有する。吸収性物品1を装着する場合、吸収性物品1の背側領域B及び腹側領域Fをそれぞれ着用者の身体に沿って当てた後、連結テープ8、8を腹側に持ち込み、バックシート6の外面側に設けられたフロントターゲットテープ11に係合させる。
【0023】
吸収性物品1は、全体としては、前後方向D1に所定の長さを有し、前後方向と直交する幅方向D2に所定の幅を有する細長い形状(細長形状)を有している。吸収性物品1の前後方向D1の長さは、300mm~520mmであることが好ましく、320mm~440mmであることがより好ましい。当該前後方向D1の長さの中心における、吸収性物品1の幅方向D2の長さは、160mm~250mmであることが好ましく、170mm~240mmであることがより好ましい。なお、ここで言う「長さ」とは、吸収性物品1が展開され最も伸張した状態の長さを意味する。吸収性物品1の前後方向D1の長さが、300mm~520mmであり、当該前後方向D1の長さの中心における、吸収性物品1の幅方向D2の長さが、160mm~250mmであることにより、乳幼児が着用した際、脚周り及び胴回りにフィットさせることができる。
【0024】
トップシート2は、尿等の排泄液を速やかに透過させる透液性のシートである。トップシート2としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布の構成繊維としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とすることが好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となった親水性繊維を含む)であってもよく、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった撥水性繊維を含む)であってもよい。
【0025】
また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(同一又は類似の不織布層が積層されたSSS(スパンボンド+スパンボンド+スパンボンド)不織布等の他、異なる不織布層が積層された、スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS(スパンボンド+メルトブローン+スパンボンド)不織布、SMMS(スパンボンド+メルトブローン+メルトブローン+スパンボンド)不織布等)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。積層不織布は、すべての層を含む一体の不織布として製造され、すべての層にわたる繊維結合加工がなされたものであることが好ましい。これにより、肌触りを向上させることができるため、着用者の肌に接触した場合、肌に刺激を与えることを防止することができる。なお、積層不織布は、別々に製造された複数の不織布をホットメルト接着剤等の接合手段により貼り合わせたものでもよい。
【0026】
トップシート2は、吸収性物品1の前後方向D1の一端から他端まで延び、幅方向D2において吸収体4よりも側方に延び、防水シート3と接合されている。他の実施形態として、例えば、後述する起き上がりギャザー7の起点が吸収体4の側縁よりも幅方向D2中央側に位置する場合等、必要に応じて、トップシート2の幅方向D2の長さを吸収体4の幅方向D2の長さより短くする等、適宜の変形が可能である。
【0027】
防水シート3は、排泄液を透過させない遮水性のシートである。防水シート3としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを好適に用いることができる。また、防水シート3としては、不織布を基材として防水性を高めたものを用いてもよい。防水シート3は、前後方向D1及び幅方向D2において吸収体4と同じか、又は吸収体4より広範囲に亘り延在していることが望ましい。
【0028】
吸収体4は、排泄液を吸収し、保持する部分であり、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維、針葉樹又は広葉樹を用いた天然繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtexであることが好ましく、1~10dtexであることがより好ましく、1~5dtexであることがさらに好ましい。吸収体4には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、粒子以外に粉体も含む。高吸収性ポリマー粒子としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用できる。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、例えば、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系の材料等を用いることができる。また、吸収体4の平面視形状は、前後方向D1の中央部分が括れた形状であってよい。換言すると、吸収体4は、幅方向D2の長さが、前後方向D1の中央に向かって徐々に小さくなっていてよい。
【0029】
バックシート6は、防水シート3の非肌面側全体を覆い、吸収性物品1の外面を布のような外観とするものである。バックシート6としては、不織布が用いられる。不織布の構成繊維としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布としては、具体的には、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(同一又は類似の不織布層が積層されたSSS(スパンボンド+スパンボンド+スパンボンド)不織布等を用いることができる。バックシート6の繊維目付けは、10~50g/m2であることが好ましく、15~30g/m2であることがより好ましい。
【0030】
サイドフラップSFにおいては、吸収性物品1の前後方向D1に複数本、図示の例では2本の脚周り弾性部材12、12が配設され、平面ギャザーが形成されている。この平面ギャザーは、着用した際に、吸収性物品1を脚周りにて沿って保持してフィット性を向上させ、吸収性物品1がずれることを防止する。
【0031】
吸収性物品1は、幅方向D2の両側部に、装着者の肌面側に立ち上がる起き上がりギャザー7を有していることが好ましい。起き上がりギャザー7により、トップシート2上を伝わって横方向に移動する排泄物を阻止し、横漏れを防止することができる。
図1及び
図2に示す例では、起き上がりギャザー7を有しているが、起き上がりギャザー7を有していない構成であってもよい。
【0032】
起き上がりギャザー7は、ギャザーシート71と、ギャザー弾性部材13とを含み、吸収体4の側縁近傍に起立端を有する。ギャザーシート71の先端が、吸収性物品1の前後方向D1に沿って二重に折り返され、この折り返し部の内方に2本のギャザー弾性部材13、13が配置されている。起き上がりギャザー7は、ギャザー弾性部材13、13の伸縮力を利用して起立することができる。起き上がりギャザー7が起立することにより、起き上がりギャザー7を着用者の身体表面に密着させることができる。なお、図示の例では、ギャザー弾性部材13の数は2本であるが、1本であってもよい。
【0033】
脚周り弾性部材12又はギャザー弾性部材13としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。
【0034】
ギャザーシート71としては、スパンボンド法、エアスルー法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法により得られた不織布を用いることができる。特にサイドフラップ部SFを構成するギャザーシート71は、ごわつき感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。ギャザーシート71を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができる。
【0035】
連結テープ8は、プラスチック、 ポリラミ不織布、不織布、紙等のテープ基材81を有し、テープ基材81の基部がサイドフラップSFに接合されている。テープ基材81の突出片部の肌面側の面(トップシート2側の面)にフック材82を有する。フック材82は、テープ基材81に接着剤により剥離不能に接着され、多数の係合片を有する。連結テープ8は、製品状態では、トップシート2側に折り畳まれ、フック材82がギャザーシート71に対して剥離可能に接合された状態となっている。
【0036】
次に、吸収体4及び吸収体4と関連する構成について詳細に説明する。
【0037】
吸収体4は、背側領域Bにおいて、吸収体4の幅方向D2に沿って、少なくとも一部が切断された切断部41を有する。
図3は、
図1の要部拡大図であり、
図4は、
図3のII-II断面を示す図であり、
図5は、
図3のIII-III断面を示す図である。
図4では、トップシート2、セカンドシート10、及び包装シート5を省略している。
図5では、接着剤層14を省略している。
図3及び
図4に示すように、切断部41から背側の領域における吸収体4と防水シート3との間に、幅方向D2に伸縮可能な弾性部材91が設けられている。弾性部材91は、2枚の不織布シート93、93の間に配置されたウエストシート9の形態で設けられていてよい。また、吸収体4は、切断部41から背側の領域において、幅方向D2の中央部に位置し、防水シート3に固定されていない第1非固定部A1と、第1非固定部A1の幅方向D2両側に位置し、防水シート3に固定された第1固定部B1、B1とを含む。
【0038】
具体的には、吸収体4の第1固定部B1は、不織布シート93を介して防水シート3に固定されている。固定手段として、吸収体4の第1固定部B1と不織布シート93とを接合する接着剤層14、及び、平面視で第1固定部B1と重なる領域において、不織布シート93と防水シート3とを接合する接着剤層14が設けられている。また、防水シート3とバックシート6の間に、接着剤層14が全面に亘って設けられ、防水シート3がバックシート6に固定されている。
【0039】
弾性部材91は、平面視で第1非固定部A1と重なる領域において、幅方向D2の中央部に位置し、吸収体4に固定されていない第2非固定部A2と、第2非固定部A2の幅方向D2両側に位置し、吸収体4に固定された第2固定部B2とを含む。
【0040】
具体的には、弾性部材91の第2固定部B2は、不織布シート93を介して吸収体4に固定されている。固定手段として、平面視で第2固定部B2と重なる領域において、吸収体4と不織布シート93を接合する接着剤層14が設けられている。
【0041】
上述の各接着剤層14を構成する接着剤としては、ホットメルト接着剤が挙げられる。本実施形態では、固定手段として、接着剤層14を用いているが、これに限らず、融着、圧着等、任意の固定手段を用いることができる。
【0042】
また、弾性部材91よりも背側の領域において、吸収体4と防水シート3との間に、幅方向D2に伸縮可能な弾性部材92が、前後方向D1に間隔を空けて複数設けられていてよい。この場合、弾性部材91、92を不織布シート93、93の間に配置したウエストシート9を予め作製し、このウエストシート9を吸収体4と防水シート3との間に配置することが好ましい。これにより、吸収性物品1の製造工程を簡略化することができる。
【0043】
弾性部材91、92としては、糸ゴム、伸縮性フィルム、又はこれらに不織布を張り合わせた部材等が挙げられる。弾性部材91、92を構成する材料としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等を用いることができる。
【0044】
本実施形態では、弾性部材91が2枚の不織布シート93、93の間に配置されたウエストシート9の形態で用いられる例を示しているが、不織布シート93、93が無く、弾性部材91の第2固定部B2が、直接、吸収体4に固定されていてもよい。この場合、弾性部材91の第2固定部B2と吸収体4を接合する接着剤層を設けることができる。
【0045】
また、本実施形態では、弾性部材91の第2非固定部A2が、吸収体4に固定されていない例を示したが、他の例として、第2非固定部A2を吸収体4と接合した上で、第2非固定部A2の伸縮力が機能しない状態又は伸縮力を大幅に低下させた状態にしてもよい。例えば、第2非固定部A2全体を吸収体4に連続して接合してもよく、第2非固定部A2を切断してもよい。
【0046】
以上の構成により、
図4に示すように、吸収体4の第1非固定部A1に、弾性部材91の収縮力により、幅方向D2内向きの力が加わるため、肌面側に凸となるように変形する隆起部43が形成される。換言すると、切断部41から背側の領域において、弾性部材91の収縮力により、吸収体4の幅方向D2中央部が収縮され、肌面側に凸となるように変形する隆起部43が形成される。このとき、吸収体4の第1非固定部A1は、防水シート3に固定されていないため、吸収体4は肌面側に凸となるように変形(隆起)するが、防水シート3は変形(隆起)しない。
【0047】
同時に、
図5に示すように、吸収体4と防水シート3の間に、股下領域M側に向く開口15を有するポケット16が形成される。本実施形態では、吸収体4と防水シート3の間に不織布シート93が介在しているが、不織布シート93がない構成であってよい。ポケット16は、便等の排泄物を一時貯留し排泄物の拡散を抑制する機能を有する。着用者から排泄された排泄物は、股下側から背側に移動し、開口15を介してポケット16の内部空間へ移動して収容される。よって、排泄物が着用者の肌に接触することを抑制することができ、肌への負担を軽減することができる。
【0048】
また、吸収体4は、
図5に示すように、切断部41から背側の吸収体4は、肌面側に隆起する一方で、切断部41から股下側の吸収体4は、切断部41から背側の吸収体4より非肌面側に位置するため、切断部41を境に段差が形成される。このため、一旦ポケット16に収容された排泄物が、背側から股下側に逆流しようとしてもこの段差が障壁となり、切断部41から股下側の吸収体4上に戻ることを抑制することができる。さらに、背側領域Bにポケット16が形成されるため、股下領域M及び腹側領域Fにおける着用感を維持することができる。また、ポケット16は既存の部材で構成されているため、ポケットを別部材として肌面に設けた場合と比べて、ごわつきが少なく快適に着用することができる。
【0049】
通常の吸収性物品では、背側領域において、着用者の背骨の両側の窪みと吸収性物品との間に隙間ができ、この隙間から便が漏れやすいことが指摘されているところ、本実施形態の吸収性物品1では、隆起部43が着用者の背中に密着するため、背側から排泄物が漏れることを抑制することができる。
【0050】
第1非固定部A1の幅方向D2の長さは、8.0cm~10.0cmであることが好ましく、前後方向D1の長さは、5.0cm~8.0cmであることが好ましい。なお、第1非固定部A1の幅方向D2の長さとは、変形した状態の最短距離ではなく全長を意味する。第1非固定部A1の幅方向D2の長さが、8.0cm~10.0cm、前後方向D1の長さが、5.0cm~8.0cmであることにより、着用者が乳幼児である場合、ポケット16の内部空間の容積を、排泄物を十分に収容できる大きさとすることができ、排泄物が着用者の肌に接触することをより抑制することができる。
【0051】
第1非固定部A1に形成される隆起部43の幅方向D2の長さは、1.5cm~5.0cmであることが好ましく、前後方向D1の長さは、1.5cm~3.0cmであることが好ましく、肌面と直交する方向の高さは、1.0cm~2.0cmであることが好ましい。ここで、長さ及び高さは、それぞれの最大値を意味する。隆起部43の幅方向D2の長さが、1.5cm~5.0cm、前後方向D1の長さが、1.5cm~3.0cm、肌面と直交する方向の高さが、1.0cm~2.0cmであることにより、着用者が乳幼児である場合、ポケット16の内部空間の容積を、排泄物を十分に収容できる大きさとすることができ、排泄物が着用者の肌に接触することをより抑制することができる。
【0052】
弾性部材91の張力は、2.0cN~10.0cNであることが好ましい。弾性部材91の張力が、2.0cN~10.0cNであることにより、隆起部43の肌面と直交する方向の高さを上述の好ましい範囲とすることができる。また、弾性部材91の第2非固定部の伸張した状態の長さは、2.5cm~5.0cmであることが好ましい。換言すると、弾性部材91の伸張した状態における第2固定部B2、B2の間の距離は、2.5cm~5.0cmであることが好ましい。弾性部材91の伸張した状態における第2固定部B2、B2の間の距離が、2.5cm~5.0cmあることにより、隆起部43の肌面と直交する方向の高さを上述の好ましい範囲とすることができる。
【0053】
切断部41と吸収性物品1の背側の端縁との最短距離は、85mm~120mmであることが好ましい。切断部41と吸収性物品1の背側の端縁との最短距離が、85mm~120mmであることにより、着用者が乳幼児である場合、着用者の排泄口(肛門)の近傍にポケット16の開口15を配置することができる。
【0054】
切断部41から背側の領域において、吸収体4の背側の端部及び幅方向D2の両端部が、防水シート3に固定されていることが好ましい。具体的には、
図3に示すように、吸収体4の背側の端部及び幅方向D2の両端部と、防水シート3とを接合する接着剤層14が設けられていることが好ましい。吸収体4の背側の端部及び幅方向D2の両端部と、防水シート3とを接合する接着剤層14は、平面視でコの形状に形成されていることが好ましい。吸収体4の背側の端部及び幅方向D2の両端部が、防水シート3に固定されていることにより、ポケット16の背側及び両端部が閉止されるため、ポケット16に収容された排泄物が、ポケット内部から背側に漏れ出すことを防止することができる。
【0055】
トップシート2は、
図5に示すように、平面視で切断部41と重なる部分が切断されていることが好ましい。これにより、トップシート2がポケット16の開口15を遮ることがなく、排泄物をポケット16の内部により容易に導くことができる。トップシート2は、平面視で切断部41と重なる部分が切断されていない場合、メッシュ状の構造を有することが好ましく、メッシュの孔径は、軟便等の排泄物を透過させ、ポケット16の内部に容易に導くことができる大きさであることが好ましい。
【0056】
セカンドシート10もトップシート2と同様に、平面視で切断部41と重なる部分が切断されていることが好ましい。セカンドシート10は、平面視で切断部41と重なる部分が切断されていない場合、メッシュ状の構造を有することが好ましく、メッシュの孔径は、軟便等の排泄物を透過させ、ポケット16の内部に容易に導くことができる大きさであることが好ましい。
【0057】
図6は、切断部41の作製方法を説明するための図である。
図6は、吸収体4の前後方向D1の断面を示している。吸収体4に切断部41を作製する際、吸収体4を切断することにより、吸収体4内部のパルプやポリマーが流出しないよう、切断前に予め、
図6に示すように、切断予定位置Cにおける、肌面側の包装シート5と非肌面側の包装シート5とを接合する。具体的には、切断前に予め、切断予定位置Cにおける、肌面側の包装シート5と非肌面側の包装シート5との間に接着剤層14を設けてよい。
【0058】
図7は、一実施形態による吸収性物品1の他の例を示す要部拡大図である。吸収体4は、
図7に示すように、切断部41から股下側の領域において、幅方向D2の中央部の背側の端部に形成されたスリット42を含んでいてよい。吸収体4は、スリット42を含むことにより、スリット42を基点として、切断部41から股下側の吸収体4が非肌面側に窪みやすくなり、ポケット16の開口15が開いた状態を維持することができる。よって、排泄物をポケットの内部に容易に導くことができる。
【0059】
スリット42の平面視形状は、三角形であることが好ましく、三角形の頂点が股下側を向いていることが好ましい。スリット42を基点として、切断部41から股下側の吸収体4が非肌面側により窪みやすくなり、ポケット16の開口15が開いた状態をより維持することができる。よって、排泄物をポケットの内部により容易に導くことができる。
【0060】
スリット42の平面視形状が、三角形である場合、スリット42の幅方向D2の長さ(三角形の底辺の長さ)は、1.5cm~5.0cmであることが好ましく、前後方向D1の長さ(三角形の高さ)は、1.5cm~3.0cmであることが好ましい。スリット42の平面視形状が、幅方向D2の長さ1.5cm~5.0cm、前後方向D1の長さ1.5cm~3.0cmの三角形であることにより、吸収体4の吸収性能を維持しつつ、ポケット16の開口15が開いた状態をより維持することができる。なお、切断部41の長さは、
図7に示すようにスリット42の幅方向D2の長さと同じであってよい。これにより、切断部41の長さが、吸収体4の幅方向D2の長さに対して比較的短い場合であっても、ポケット16の開口15が開いた状態を維持することができる。
【0061】
本実施形態の吸収性物品1は、乳幼児用又は介護用のおむつを含む。また、本実施形態の吸収性物品1は、上端に胴部開口を有し、下部に一対の脚部開口を有するパンツタイプのおむつに適用されてもよい。
【0062】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 吸収性物品
2 トップシート
3 防水シート
4 吸収体
41 切断部
42 スリット
43 隆起部
5 包装シート
6 バックシート
7 起き上がりギャザー
71 ギャザーシート
8 連結テープ
81 テープ基材
82 フック材
9 ウエストシート
91、92 弾性部材
93 不織布シート
10 セカンドシート
11 フロントターゲットテープ
12 脚周り弾性部材
13 ギャザー弾性部材
14 接着剤層
15 開口
16 ポケット
SF サイドフラップ
EF エンドフラップ
B 背部領域
M 股下領域
F 腹部領域
A1 第1非固定部
A2 第2非固定部
B1 第1固定部
B2 第2固定部
C 切断予定部
D1 前後方向
D2 幅方向