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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162665
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】危険予知データベース生成装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231101BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20231101BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 F
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073156
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】安富 浩二
(72)【発明者】
【氏名】割石 浩司
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181BB15
5H181EE15
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF33
5H181LL04
5H181LL14
5H181MC15
5H181MC17
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】危険予知に関するより有用なデータベースを生成すること。
【解決手段】危険予知DB生成装置1は、位置を示す位置情報と当該位置周辺において車両の運転者が危険を回避するために行う動作に関する動作情報とを含む危険予知情報を取得する取得部11と、取得部11によって取得された危険予知情報を、位置を示す位置情報と当該位置周辺における車両の制御に関する制御情報とを含む車両データ、又は、位置を示す位置情報と当該位置周辺における事故に関する事故情報とを含む事故データの少なくとも一方のデータに対応付けた危険予知DB14を生成する生成部12と、を備える。生成部12は、危険予知情報と車両データ又は事故データの少なくとも一方のデータとの対応付けを、それぞれが含む位置情報に基づいて行ってもよい。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置を示す位置情報と当該位置周辺において車両の運転者が危険を回避するために行う動作に関する動作情報とを含む危険予知情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記危険予知情報を、位置を示す位置情報と当該位置周辺における車両の制御に関する制御情報とを含む車両データ、又は、位置を示す位置情報と当該位置周辺における事故に関する事故情報とを含む事故データの少なくとも一方のデータに対応付けたデータベースを生成する生成部と、
を備える危険予知データベース生成装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記危険予知情報と前記車両データ又は前記事故データの少なくとも一方のデータとの対応付けを、それぞれが含む位置情報に基づいて行う、
請求項1に記載の危険予知データベース生成装置。
【請求項3】
位置を示す位置情報と当該位置周辺における車両の運転者の視線に関する視線情報とを含む視線データ、又は、位置を示す位置情報と当該位置周辺における車両の挙動に関する挙動情報とを含む挙動データの少なくとも一方のデータに基づいて前記危険予知情報を推定する推定部をさらに備え、
前記生成部は、前記推定部によって推定された前記危険予知情報を前記車両データ又は前記事故データの少なくとも一方のデータに対応付けた前記データベースを生成する、
請求項1又は2に記載の危険予知データベース生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、危険予知に関するデータベースを生成する危険予知データベース生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、危険予測対象に設定された地域内を撮影した画像情報を用いて、車両に生じる危険を予測する危険予測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/141375号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、撮影した画像情報を用いた危険の予測では、例えば、車両の運転者が危険を回避するために行う動作などが反映されず、有用とは言えない。そこで、危険予知に関するより有用なデータベースを生成することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る危険予知データベース生成装置は、位置を示す位置情報と当該位置周辺において車両の運転者が危険を回避するために行う動作に関する動作情報とを含む危険予知情報を取得する取得部と、取得部によって取得された危険予知情報を、位置を示す位置情報と当該位置周辺における車両の制御に関する制御情報とを含む車両データ、又は、位置を示す位置情報と当該位置周辺における事故に関する事故情報とを含む事故データの少なくとも一方のデータに対応付けたデータベースを生成する生成部と、を備える。
【0006】
このような側面においては、車両の運転者が危険を回避するために行う動作に関する動作情報を含む危険予知情報を、車両の制御に関する制御情報を含む車両データ又は事故に関する事故情報を含む事故データの少なくとも一方のデータに対応付けたデータベースが生成される。これにより、危険予知に関するより有用なデータベースを生成することができる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一側面によれば、危険予知に関するより有用なデータベースを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る危険予知データベース生成装置の機能構成の一例を示す図である。
図2】実施形態に係る危険予知データベース生成装置で用いられるコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】危険予知データベースの生成の一例を示すフローチャートである。
図4】位置がほぼ一致するか否かの判定ロジックの一例を説明するための図である。
図5】位置がほぼ一致するか否かの判定ロジックの別の一例を説明するための図である。
図6】危険予知情報の推定の一例を説明するための図である。
図7】危険予知情報のテーブル例を示す図である。
図8】車両データのテーブル例を示す図である。
図9】事故データのテーブル例を示す図である。
図10】視線データのテーブル例を示す図である。
図11】挙動データのテーブル例を示す図である。
図12】道路情報のテーブル例を示す図である。
図13】クラスタリングデータのテーブル例を示す図である。
図14】危険予知データベースの生成の別の一例を示すフローチャートである。
図15】実施形態に係る危険予知データベース生成装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本開示での実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の説明における本開示での実施形態は、本発明の具体例であり、特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限定されないものとする。
【0010】
図1は、実施形態に係る危険予知DB生成装置1(危険予知データベース生成装置)の機能構成の一例を示す図である。危険予知DB生成装置1は、危険予知に関するデータベースである危険予知DB14を生成するコンピュータ装置である。より具体的には、危険予知DB生成装置1は、車両を運転する際の運転者が注意すべき危険予知に関する危険予知DB14を生成するコンピュータ装置である。
【0011】
車両は、トラック、自動車、二輪車、電車など、車輪のついた乗り物である。車両は、人である運転者(乗務員)が手動で運転を行うことを想定するが、これに限るものではない。
【0012】
図1に示す通り、危険予知DB生成装置1は、格納部10、取得部11(取得部)、生成部12(生成部)、推定部13(推定部)、危険予知DB14及び出力部15を含んで構成される。
【0013】
危険予知DB生成装置1の各機能ブロックは、危険予知DB生成装置1内にて機能することを想定しているが、これに限るものではない。例えば、危険予知DB生成装置1の機能ブロックの一部は、危険予知DB生成装置1とは異なるコンピュータ装置であって、危険予知DB生成装置1とネットワーク接続されたコンピュータ装置内において、危険予知DB生成装置1と情報を適宜送受信しつつ機能してもよい。また、危険予知DB生成装置1の一部の機能ブロックは無くてもよいし、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックに統合してもよいし、一つの機能ブロックを複数の機能ブロックに分解してもよい。
【0014】
図2は、危険予知DB生成装置1で用いられるコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。危険予知DB生成装置1は物理的には、図2に示すように、中央処理装置(プロセッサ)であるCPU(Central Processing Unit)100、主記憶装置であるRAM(Random access memory)101及びROM(Read Only Memory)102、キーボード、マイク及びディスプレイなどの入出力装置103、データ送受信デバイスである通信モジュール104、並びに、ハードディスク及びSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置105を含むコンピュータシステムとして構成されている。CPU100、RAM101及びROM102、入出力装置103、通信モジュール104、及び、補助記憶装置105は、それぞれ複数で構成されてもよい。図1に示す各機能ブロックの機能は、図2に示すCPU100、RAM101などのハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU100の制御のもとで入出力装置103及び通信モジュール104を動作させるとともに、RAM101及び補助記憶装置105におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0015】
以下、図1に示す危険予知DB生成装置1の各機能について説明する。
【0016】
格納部10は、危険予知DB生成装置1における各種の算出などで利用される任意の情報及び危険予知DB生成装置1における算出の結果などを格納する。格納部10によって格納された情報は、危険予知DB生成装置1の各機能によって適宜参照されてもよい。
【0017】
取得部11は、位置を示す位置情報と当該位置周辺において車両の運転者が危険を回避するために行う動作に関する動作情報とを含む危険予知情報を取得する。
【0018】
位置情報は、例えば、GPS(Global Positioning System)により取得された緯度・経度に関する情報であってもよい。
【0019】
危険予知情報は、各位置(地点)における、危険を回避するために運転者が行う動作(一般的に暗黙知)に関する情報である。危険予知情報は、時間、季節又は天候により変化してもよい。
【0020】
取得部11は、危険予知情報を、運送事業者(運行管理者及び運転手(乗務員))から取得してもよいし、周辺住民など車両を運転しない人(運送に関係のない人)から取得してもよいし、任意の人から取得してもよい。また、取得部11は、危険予知情報を、ネットワークなどを介して任意の装置から(自動で)取得してもよい。取得部11による取得の手段に関しては、車両に別置きデバイスを追加して、音声での入力又はボタン押下などにより取得してもよいし、アンケート(紙、デジタル)により取得してもよいし、上述の通りネットワークなどを介して任意の装置から(自動で)取得してもよい。
【0021】
取得部11は、取得した危険予知情報を、生成部12及び出力部15に出力してもよいし、格納部10によって格納させてもよい。
【0022】
生成部12は、取得部11によって取得された危険予知情報を、位置を示す位置情報と当該位置周辺における車両の制御に関する制御情報とを含む車両データ、又は、位置を示す位置情報と当該位置周辺における事故に関する事故情報とを含む事故データの少なくとも一方のデータに対応付けたデータベースである危険予知DB14を生成する。より具体的には、生成部12は、取得部11から入力された危険予知情報又は格納部10によって格納された危険予知情報を、車両データに対応付けた危険予知DB14、事故データに対応付けた危険予知DB14、又は、車両データ及び事故データに対応付けた危険予知DB14を生成する。なお、生成部12による危険予知DB14の生成とは、新規の危険予知DB14の作成と、既存の危険予知DB14への新規データ追加とを含む。
【0023】
生成部12は、危険予知情報と車両データ又は事故データの少なくとも一方のデータとの対応付けを、それぞれが含む位置情報に基づいて行ってもよい。より具体的には、生成部12は、危険予知情報を車両データに対応付ける際に、当該危険予知情報が含む位置情報と当該車両データが含む位置情報とに基づいて対応付けてもよい。また、生成部12は、危険予知情報を事故データに対応付ける際に、当該危険予知情報が含む位置情報と当該事故データが含む位置情報とに基づいて対応付けてもよい。また、生成部12は、危険予知情報を車両データ及び事故データに対応付ける際に、当該危険予知情報が含む位置情報と当該車両データが含む位置情報と当該事故データが含む位置情報とに基づいて対応付けてもよい。位置情報に基づく対応付けの一例としては、対象の位置情報それぞれが示す位置が、所定の地理的範囲内に含まれるものを対応付けることが挙げられる。
【0024】
生成部12は、(後述の)推定部13によって推定された危険予知情報を車両データ又は事故データの少なくとも一方のデータに対応付けたデータベースである危険予知DB14を生成してもよい。より具体的には、生成部12は、推定部13によって推定された危険予知情報又は格納部10によって格納された危険予知情報を、車両データに対応付けた危険予知DB14、事故データに対応付けた危険予知DB14、又は、車両データ及び事故データに対応付けた危険予知DB14を生成する。
【0025】
推定部13は、位置を示す位置情報と当該位置周辺における車両の運転者の視線に関する視線情報とを含む視線データ、又は、位置を示す位置情報と当該位置周辺における車両の挙動に関する挙動情報とを含む挙動データの少なくとも一方のデータに基づいて危険予知情報を推定する。より具体的には、推定部13は、視線データに基づいて危険予知情報を推定する、挙動データに基づいて危険予知情報を推定する、又は、視線データ及び挙動データに基づいて危険予知情報を推定する。
【0026】
推定部13は、推定した危険予知情報を、生成部12及び出力部15に出力してもよいし、格納部10によって格納させてもよい。
【0027】
危険予知DB14は、上述の通り、危険予知情報を車両データに対応付けたデータベース、危険予知情報を事故データに対応付けたデータベース、又は、危険予知情報を車両データ及び事故データに対応付けたデータベースである。危険予知DB14の各データには、任意のデータをさらに対応付けてもよい。
【0028】
出力部15は、危険予知DB14の一部又は全てのデータを出力する。出力部15は、取得部11から入力された危険予知情報を出力してもよいし、推定部13から入力された危険予知情報を出力してもよい。出力部15は、出力の一例として、ディスプレイ又は(車両の運転者が装着する)ヘッドアップディスプレイなどの入出力装置103を介して危険予知DB生成装置1のユーザ(運転者も含む)に出力してもよいし、通信モジュール104を介して他の装置に送信してもよい。
【0029】
以下では、危険予知DB生成装置1の各機能ブロックの詳細について、様々な具体例を挙げながら説明する。
【0030】
取得部11は、危険予知情報を運送事業者(運行管理者および乗務員)から取得してもよいし、周辺住民など車両を運転しない人(運送に関係のない人)から取得してもよいし、任意の人から取得してもよい。また、取得部11は、危険予知情報を、ネットワークなどを介して任意の装置から(自動で)取得してもよい。なお取得の手段に関しては、車両に別置きデバイスを追加して、音声での入力、ボタン押下など、またアンケート(紙、デジタル)により取得してもよいし、上述の通りネットワークなどを介して任意の装置から(自動で)取得してもよい。ここで危険予知情報は、各地点における、危険を回避するために乗務員が行う動作(一般的に暗黙知)が時間、季節、天候により変化するものを指す。
【0031】
生成部12は、複数の事業者の情報をデータベース(危険予知DB14)に保管の際に、車両データ(車両のビッグデータ)及び事故データ(公開の事故データ)を付加する。その際に下記のステップ(1)及び(2)を経て危険予知情報と車両データ又は事故データ(以降では「車両事故データ」と記すが、「車両事故ビッグデータ」に置き換えてもよい)と紐づける。
【0032】
(1)[危険予知発生位置と車両事故データにある各事象の位置が概ね一致する場合]
よく発生する事故と、その原因(危険予知の裏返し)が分かっている位置である。乗務員に情報提供する際に、具体的にどこで、どのように注意すべきかのアナウンスが可能である。また、該当位置で車両事故データに更新があった場合、その更新を通知することで、繰り返しの注意喚起が可能である。
【0033】
(2)[危険予知発生位置と車両事故データにある各事象の位置が概ね一致しない場合]
(2a)[車両事故データのみ存在する場合]
原因は分からないが危険と推測される位置を通知可能である。また、暗黙知である危険予知情報がまだ顕在化されていない可能性が高いため、乗務員から情報を引き出すためのデータにもなる。
(2b)[危険予知情報のみ存在する場合]
十分に危険予知ができているため、危険情報が存在しない場所と推定可能である。
【0034】
危険予知DB生成装置1において、上記のステップ(1)及び(2)で取得した情報を下記の目的(A)~(C)で使用してもよい。
(A)乗務員:危険情報の先読みのために、情報を事務所、またモバイル端末で確認可能(デジタル地図上での表記等)とする。また車両の走行中に音声などによるアナウンス等による認知促進を行う。また乗務員が装着したヘッドアップディスプレイなどに、乗務員が目に見える形での情報提示・補完を行う。
(B)運行管理者:危険情報の可視化による安全指導の補助ツールとして使用する。危険位置および危険度合(危険予知数)が見える。
(C)経営者:荷主との運賃交渉時に使用する。
【0035】
上記の目的(A)~(C)により、運送事業者の各人に下記の変化・効果(A)~(C)が得られる。
(A)乗務員:これまで各乗務員の認知範囲(各乗務員の経験及び乗務員間の情報やり取り)に限られていたものが大幅に情報補完される。これによって、危険位置及びその回避内容を先読み認知し、事故・ヒヤリハットの削減に貢献する。
(B)運行管理者:乗務員に対して運行管理者が認知する危険情報が一般的に少ない状況になっていた。その一方、国土交通省がまとめた“安全教育マニュアル「自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル」”にあるように、運転者の運転適性に応じた安全運転を指導する必要がある。危険予知DB生成装置1により、乗務員と管理者の知識が同等になる、かつ各乗務員の運転適性を把握することにより、的確な安全指導が可能となる。
(C)経営者:これまで各社の安全対策で例えば安全のために一部遠回りで輸送しても、追加距離分の燃料代を荷主に請求することは難しかった。危険予知DB生成装置1により、なぜ遠回りすべきかが複数の事業者・乗務員の指摘が入ることで、荷主との交渉時に有利に働くことができる。
【0036】
取得部11は、危険予知情報を運送事業者(運行管理者および乗務員)から取得してもよい。生成部12は、複数の事業者の情報をデータベース(危険予知DB14)に保管の際に、車両データ及び事故データを付加してもよい。出力部15は、取得した情報(危険予知DB14の情報)を運送事業者の業務へ活用するよう出力してもよい。
【0037】
図3は、危険予知データベースの生成の一例を示すフローチャートである。まず、生成部12が、危険予知情報と車両データ及び事故データ(車両事故データ)に基づいて、危険位置(危険予知情報が含む位置情報が示す位置)と、車両事故データの危険発生位置(車両データが含む位置情報が示す位置又は事故データが含む位置情報が示す位置)とがほぼ一致しているか否か(両位置が所定の地理的範囲内にあるか否か)を判定する(ステップS1)。S1にてほぼ一致していると判定された場合(S1:YES)、生成部12が、よく発生する事故とその原因(危険予知の裏返し)が分かっていると判定し(ステップS2)、危険予知DB14を生成する。生成部12は、危険予知DB14を生成する際に、当該判定の結果をさらに対応付けて危険予知DB14を生成してもよい。
【0038】
S1にてほぼ一致していないと判定された場合(S1:NO)、生成部12が、危険予知情報のみが存在するか否かを判定する(ステップS3)。S3にて危険予知情報のみが存在すると判定された場合(S3:YES)、生成部12が、危険予知により危険事情が発生していないと推定すると共に、ある程度危険予知情報が自明な場所と推定し(初心者用などに活用)(ステップS4)、危険予知DB14を生成する。生成部12は、危険予知DB14を生成する際に、当該推定の結果をさらに対応付けて危険予知DB14を生成してもよい。
【0039】
S3にて危険予知情報のみが存在しないと判定された場合(S3:NO)、生成部12が、車両事故データの危険発生位置のみ存在するか否かを判定する(ステップS5)。S5にて車両事故データの危険発生位置のみが存在すると判定された場合(S5:YES)、生成部12が、原因が分かっていない(情報が取得できていない)が危険な場所と推定される位置と判定すると共に、視線データ及び車両挙動より推測される危険予知情報を付加し(対応付け)(ステップS6)、危険予知DB14を生成する。生成部12は、危険予知DB14を生成する際に、当該判定の結果をさらに対応付けて危険予知DB14を生成してもよい。
【0040】
S5にて車両事故データの危険発生位置のみが存在しないと判定された場合(S5:NO)、処理を終了する。
【0041】
図4は、位置がほぼ一致するか否かの判定ロジックの一例を説明するための図である。車両事故データは、緯度Xと、経度Yと、当該緯度X及び当該経度Yにより示される位置周辺で発生した事故の発生種別Zとが対応付いているとする。危険位置は、緯度Pと、経度Qと、当該緯度P及び当該経度Qにより示される位置周辺において車両の運転者が危険を回避するために行う危険予知内容Kとが対応付いているとする。生成部12は、緯度X及び経度Yにより示される位置と、緯度P及び経度Qにより示される位置とが、所定の地理的範囲内にある場合、例えば、緯度X及び経度Yにより示される地点より半径100mの円内に緯度P及び経度Qにより示される位置が存在する場合、位置がほぼ一致すると判定する。一方、生成部12は、緯度X及び経度Yにより示される位置と、緯度P及び経度Qにより示される位置とが、所定の地理的範囲内にない場合、例えば、緯度X及び経度Yにより示される地点より半径100mの円内に緯度P及び経度Qにより示される位置が存在しない場合、位置がほぼ一致しないと判定する。
【0042】
図5は、位置がほぼ一致するか否かの判定ロジックの別の一例を説明するための図である。車両事故データ及び危険位置に関する前提は図4と同様である。一般的に、車両事故データはおおむね交差点中心に対し発生する傾向が強い。そこで、発生位置は道路の数に応じて分類する。例えば、4差路なら4つに分類し、T字路なら3つに分類するなど。該当交差点の道幅、制限速度が図5に示すように定義される場合、分類する際の式は以下の通りとなる。
A,B:L/2+L*V*a(定数)
C,D:L/2+L*V*a(定数)
危険位置が上記に該当する場合、同一位置(位置がほぼ一致する)と判定する。一方、危険位置が上記に該当しない場合、同一位置ではない(位置がほぼ一致しない)と判定する。
【0043】
図6は、危険予知情報の推定の一例を説明するための図である。図6は、図3のS6、すなわち、原因が分かっていない(情報が取得できていない)が危険な場所と推定(推測)する場面を説明する図である。推定部13は、危険予知をしている車両(危険予知車両)と、していない車両を、視線データ及び挙動データ(車両挙動。ペダルワーク、ハンドル操舵など)より分類し、考えられる危険予知を推定する。図6に示す通り、車両が矢印で示されているように右折する場合を想定する。なお、車両進行方向は優先道路であり、左右の道路には一時停止が存在すると仮定する。
【0044】
危険予知車両の場合、視線データについては、右折時には確認ポイントA、B及びCに対し運転者の視線が存在していることを示し、挙動データについては、交差点進入前から運転者はアクセルを踏まず、ブレーキをやや踏んでいつでも停止できるようにしていることを示しているとする。危険予知車両でない場合、視線データについては、右折時には確認ポイントA及びBに対し運転者の視線が存在することを示し、挙動データについては、交差点進入にあたり、右折できる程度の速度で運転者は右折していることを示しているとする。
【0045】
上記の危険予知車両でない場合、運転者は確認ポイントCを見ていないため、急制動が発生しやすい場所である。そこで推定部13は、新しい危険予知情報として、交差点通行時には、一時停止無視車両が存在する旨、通行時には注意する旨の情報を推定する。
【0046】
図7は、危険予知情報のテーブル例を示す図である。図7に示すテーブル例では、位置(緯度経度)(以降では「A」として参照する)と、当該位置周辺における危険予知の内容である危険予知内容(以降では「B」として参照する)と、当該危険予知が対象とする危険が発生しやすい時間(以降では「C」として参照する)とが対応付いている。
【0047】
図8は、車両データ(車両ビッグデータ)のテーブル例を示す図である。図8に示すテーブル例では、位置情報(以降では「D」として参照する)と、当該位置情報が示す位置周辺での車両の制御の発生内容(急減速など)(以降では「E」として参照する)とが対応付いている。
【0048】
図9は、事故データ(公開事故データ)のテーブル例を示す図である。図9に示すテーブル例では、位置(緯度経度)(以降では「F」として参照する)と、当該位置周辺における事故内容(以降では「G」として参照する)とが対応付いている。
【0049】
図10は、視線データ(乗務員視線情報)のテーブル例を示す図である。図10に示すテーブル例では、車両の内外の映像情報である車両内外映像(以降では「H」として参照する)と、視線計測装置(による車両の運転者の視線の計測結果に関する情報)(以降では「I」として参照する)とが対応付いている。視線データには、位置がさらに対応付いてもよい。具体的には、視線データは、位置(緯度経度)と、当該位置周辺におけるHと、当該位置周辺におけるIとが対応付いてもよい。
【0050】
図11は、挙動データ(車両挙動情報)のテーブル例を示す図である。図11に示すテーブル例では、位置(緯度経度)(以降では「J」として参照する)と、当該位置周辺における車両のアクセル開度(以降では「K」として参照する)と、当該位置周辺における車両のブレーキ有無(ギア変速、エキゾーストブレーキの作動も含む)(以降では「L」として参照する)と、当該位置周辺における車両のハンドル舵角(以降では「M」として参照する)とが対応付いている。
【0051】
図12は、道路情報(道路データ)のテーブル例を示す図である。図12に示すテーブル例では、車線数又は道幅(いずれも道全体ではなく、進行方向に対して)(以降では「N」として参照する)と、制限速度(以降では「O」として参照する)とが対応付いている。道路情報には、位置がさらに対応付いてもよい。具体的には、道路情報は、位置(緯度経度)と、当該位置周辺におけるNと、当該位置周辺におけるOとが対応付いてもよい。
【0052】
図13は、クラスタリングデータのテーブル例を示す図である。図13に示すテーブル例では、N、O及びDより作成されたクラスタリングデータ(以降では「P」として参照する)が含まれる。クラスタリングデータは、図5で説明した分類する際の式に関連する。クラスタリングデータには、位置がさらに対応付いてもよい。具体的には、クラスタリングデータは、位置(緯度経度)と、当該位置周辺におけるPとが対応付いてもよい。
【0053】
図14は、危険予知データベースの生成の別の一例を示すフローチャートである。図14に示す各フローは、生成部12により実行される。まず、道路情報に基づいてデータクラスタリングカラムPを作成する(ステップS10)。具体的には、車両データのクラスタリング(点データ同士の紐づけ)を行う。この際、NとOを用いて、式「N*O(秒速変換)*a定数(5s程度)」などによりP領域の生成を行う。
【0054】
S10に続き、車両データ及び事故データに基づいて、入力データがP領域内に存在するか否かを判定する(ステップS11)。すなわち、入力データの領域内外判定を行う。具体的には、S10の結果、D及びFを用いて判定を実施する。
【0055】
S11にて存在すると判定された場合(S11:YES)、車両データ及び事故データより危険ポイント(危険事情多発ポイント)を特定する(ステップS12)。具体的には、S10の結果、E及びGを用いて、対象領域におけるE及びGの数を集計及び分析する。
【0056】
S12に続き、入力データがP領域内に存在するか否かを判定する(ステップS13)。すなわち、危険予知情報の領域内外判定を行う。具体的には、S12の結果及びAを用いて判定を実施する。
【0057】
S13にて存在すると判定された場合(S13:YES)、危険予知情報を付加する(ステップS14)。具体的には、S12の結果、B及びCを用いて、該当地点における危険予知内容B及びC(発生しやすい時間)を付加する。S14により、危険な場所かつ危険予知を特定することができる(ステップS15)。
【0058】
S13にて存在しないと判定された場合(S13:NO)、挙動データ及び視線データに基づいて危険予知情報(危険予知内容)を推定して付加する(ステップS16)。具体的には、S12の結果及びJを用いて、該当車両が危険事情ポイントに接近することを確認する。また、H、I、K、L及びMを用いて、視線先対象を補足、対象物を認知したうえで、危険回避行動(K+L+M)がどのように実施されたかのデータを取得する。S16により、危険な場所かつ危険予知を特定することができる(ステップS17)。
【0059】
S11にて存在しないと判定された場合(S11:NO)、危険予知情報に基づいて危険予知内容のみ付加する(ステップS18)。すなわち、危険予知情報(危険予知内容)のみが存在の場合の情報を付加する。具体的には、P領域、A、B及びCを用いて、対象領域Pにおいて、Aが存在する場合、該当地点における危険予知内容B及びC(発生しやすい時間)を付加する。ただし、危険事情(D及びF)は発生していないため、危険度は低い場所又は十分に注意が行われている場所と推定(推測)される。S18により、危険予知により危険を回避できている(ステップS19)。
【0060】
続いて、図15を参照しながら、危険予知DB生成装置1が実行する処理の例を説明する。図15は、危険予知DB生成装置1が実行する危険予知データベース生成処理の一例を示すフローチャートである。
【0061】
まず、取得部11が、位置を示す位置情報と当該位置周辺において車両の運転者が危険を回避するために行う動作に関する動作情報とを含む危険予知情報を取得する(ステップS20)。次に、生成部12が、S20にて取得された危険予知情報を、位置を示す位置情報と当該位置周辺における車両の制御に関する制御情報とを含む車両データ、又は、位置を示す位置情報と当該位置周辺における事故に関する事故情報とを含む事故データの少なくとも一方のデータに対応付けた危険予知DB14を生成する(ステップS21)。
【0062】
続いて、実施形態に係る危険予知DB生成装置1の作用効果について説明する。
【0063】
危険予知DB生成装置1によれば、取得部11が、位置を示す位置情報と当該位置周辺において車両の運転者が危険を回避するために行う動作に関する動作情報とを含む危険予知情報を取得し、生成部12が、取得部11によって取得された危険予知情報を、位置を示す位置情報と当該位置周辺における車両の制御に関する制御情報とを含む車両データ、又は、位置を示す位置情報と当該位置周辺における事故に関する事故情報とを含む事故データの少なくとも一方のデータに対応付けた危険予知DB14を生成する。この構成により、車両の運転者が危険を回避するために行う動作に関する動作情報を含む危険予知情報を、車両の制御に関する制御情報を含む車両データ又は事故に関する事故情報を含む事故データの少なくとも一方のデータに対応付けた危険予知DB14が生成される。これにより、危険予知に関するより有用なデータベース(危険予知DB14)を生成することができる。
【0064】
また、危険予知DB生成装置1において、生成部12は、危険予知情報と車両データ又は事故データの少なくとも一方のデータとの対応付けを、それぞれが含む位置情報に基づいて行ってもよい。この構成により、位置情報に基づくより正確でより有用なデータベース(危険予知DB14)を生成することができる。
【0065】
また、危険予知DB生成装置1によれば、推定部13が、位置を示す位置情報と当該位置周辺における車両の運転者の視線に関する視線情報とを含む視線データ、又は、位置を示す位置情報と当該位置周辺における車両の挙動に関する挙動情報とを含む挙動データの少なくとも一方のデータに基づいて危険予知情報を推定し、生成部12は、推定部13によって推定された危険予知情報を車両データ又は事故データの少なくとも一方のデータに対応付けた危険予知DB14を生成してもよい。この構成により、視線データ又は挙動データの少なくとも一方のデータに基づいて推定された危険予知情報を、車両データ又は事故データの少なくとも一方のデータに対応付けた危険予知DB14が生成される。これにより、視線データ又は挙動データの少なくとも一方のデータに基づく、より正確でより有用なデータベース(危険予知DB14)を生成することができる。
【0066】
従来、以下の技術的課題があった。
(1)危険情報が発生した場合には、情報抽出が可能であるが、事故未然の特に危険予知に関しては取得ができない。
(2)各位置における車両及び乗務員の安全性は高まると考えられるが、運送会社で実施されている安全活動との関連性が乏しく、相乗的な効果が得られていない。
(3)危険情報の抽出・蓄積により危険場所を統計的に取得することは可能であるが、該当危険場所でどのように回避すべきか(つまり危険予知)の情報がなく、乗務員が何に気を付けるべきかがわからない。
【0067】
危険予知DB生成装置1は、(注意喚起する際に出す)地図を一手段とした事業者への安全情報提供ソリューションであると言える。危険予知DB生成装置1は、運送事業者の安全に寄与するソリューションの仕組みであるとも言える。危険予知DB生成装置1は、以下の2つの特徴を備える。
(1)実際に目に見える車両運転時の危険事情を捉えるのではなく、各乗務員が意識的、無意識的に実施している危険予知行動を言語化し、収集可視化するものである。
(2)情報は複数の運送事業者から共通のフォーマットで取得することにより、危険情報を統計的に分析可能となる。
得られた情報は運送事業者の乗務員、運行管理者、経営者にそれぞれ、危険を先読みした運転、的確な安全指導、情報に基づいた荷主との交渉が効果として得られる。
【0068】
危険予知DB生成装置1は、各乗務員(運転者)が意識的、無意識的に実施している危険予知行動を言語化し、収集可視化し、事故情報等と紐づけして、共通のフォーマットで取得することにより、危険情報を統計的に分析する安全情報提供装置である。危険予知DB生成装置1によれば、これまで各乗務員の認知範囲(各乗務員の経験および乗務員間の情報やり取り)に限られていたものが大幅に情報補完され、危険位置、およびその回避内容を先読み認知し、事故・ヒヤリハットの削減に貢献する。運行管理者については、乗務員と管理者の知識が同等になる、かつ各乗務員の運転適性を把握することにより、的確な安全指導が可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1…危険予知DB生成装置、10…格納部、11…取得部、12…生成部、13…推定部、14…危険予知DB、15…出力部、100…CPU、101…RAM、102…ROM、103…入出力装置、104…通信モジュール、105…補助記憶装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15