(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162675
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 7/08 20060101AFI20231101BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20231101BHJP
【FI】
B22F7/08 C
B22F1/00 K
B22F1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073181
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乙川 光平
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 万里奈
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA02
4K018AA03
4K018BA01
4K018BA02
4K018BB04
4K018BB05
4K018BD04
4K018CA44
4K018DA18
4K018JA36
4K018KA32
(57)【要約】
【課題】セルフアライメントによって部材同士の相対位置の位置調整を行うことができ、かつ、耐熱性、接合強度に優れた金属焼結体からなる接合層を形成する。
【解決手段】接合体100の製造方法は、接合用ペースト10を、35℃以下で、第1部材20と第2部材30との間に配置して積層体100Aとするステップと、積層体100Aを、接合用ペースト10の液相生成開始温度以上、かつ液相消失温度未満に昇温して、第1部材20と第2部材30との間に液相を生じさせるとともに液相を揮発させるステップと、積層体100Aを、液相消失温度より高い加熱温度に昇温して、金属焼結体を形成することで、第1部材20と第2部材30とが接合した接合体100を形成するステップと、を含む。第1部材20と第2部材30との少なくとも一方は、接合用ペースト10と接触する側の表面の展開面積比Sdrが、0.4以上である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉と銅塩とアミンとアルコールとを含み、前記銅塩中のCu重量Aと前記金属粉の重量Bとの比A/Bが0.02以上0.25以下である接合用ペーストを、35℃以下で、第1部材と第2部材との間に配置して積層体とするステップと、
前記積層体を、前記接合用ペーストの液相生成開始温度以上、かつ液相消失温度未満に昇温して、前記第1部材と前記第2部材との間に液相を生じさせるとともに液相を揮発させるステップと、
前記積層体を、液相消失温度より高い加熱温度に昇温して、金属焼結体を形成することで、前記第1部材と前記第2部材とが接合した接合体を形成するステップと、
を含み、
前記第1部材と前記第2部材との少なくとも一方は、前記接合用ペーストと接触する側の表面の展開面積比Sdrが、0.4以上である、
接合体の製造方法。
【請求項2】
前記液相を揮発させるステップでは、前記積層体を、前記液相生成開始温度より高い第1加熱温度に昇温して保持することで、前記液相を消失させて前記銅塩を還元し、
前記接合体を形成するステップでは、前記液相が消失した積層体を、前記第1加熱温度より高い第2加熱温度に昇温することで、前記金属焼結体を形成して前記接合体を形成する、請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
前記第1部材と前記第2部材との少なくとも一方に対して、直流電解めっきを実施し、その後、PRパルス電解めっきを実施することにより、前記第1部材と前記第2部材との少なくとも一方の前記接合用ペーストと接触する側の表面に、展開面積比Sdrが、0.4以上となる粗化めっき層を形成するステップを更に含む、請求項1又は請求項2に記載の接合体の製造方法。
【請求項4】
前記接合用ペーストは、銀塩を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、LEDやパワーモジュールといった半導体装置は、金属部材からなる回路層の上に半導体素子が接合された構造とされている。
ここで、半導体素子等の電子部品を回路層上に接合する際には、例えば特許文献1に示すように、はんだ材を用いた方法が広く使用されている。
また、特許文献2には、めっき膜とSn系はんだ層を形成し、熱処理によってこれらを合金化して合金層を形成し、電子部品を基板に実装する技術が提案されている。
【0003】
さらに、特許文献3には、金属粉を有する金属ペーストを用いて、半導体素子等の電子部品を回路上に接合する技術が提案されている。この金属ペーストにおいては、導電性の焼結体からなる接合層が形成され、この接合層を介して半導体素子等の電子部品が回路上に接合されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-271782号公報
【特許文献2】特許第6459656号公報
【特許文献3】特許第6428339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2に記載されたように、はんだ材を用いて、部材同士を接合する際には、接合時の昇温過程において液相が生じる。このとき、液相の表面張力によって部材同士の相対位置が調整される。すなわち、部材同士の相対位置がセルフアライメントされることになる。
しかしながら、はんだ材を用いて接合した場合には、部材同士の間に形成される接合層には、金属間化合物が生成しており、熱伝導率が比較的低くなるおそれがあった。さらに、温度サイクルを負荷した際に接合層にクラックが生じ易く、接合信頼性が低下するおそれがあった。
【0006】
さらに、はんだ材を介して半導体素子等の電子部品と回路層とを接合した場合には、高温環境下で使用した際にはんだの一部が溶融し、半導体素子等の電子部品と回路層と接合信頼性が低下するおそれがあった。
特に、最近では、半導体素子自体の耐熱性が向上しており、かつ、半導体装置が自動車のエンジンルーム等の高温環境下で使用されることがあり、従来のようにはんだ材で接合した構造では対応が困難となってきている。
【0007】
一方、特許文献3に記載された金属ペーストにおいては、接合層が金属の焼結体で構成されていることから、熱伝導率に優れており、接合信頼性にも優れている。
また、金属の焼結体によって接合層を形成した場合には、比較的低温条件で接合層を形成できるとともに接合層自体の融点は高くなるため、高温環境下においても接合強度が大きく低下しない。
しかしながら、金属ペーストを用いて部材同士を接合する場合には、接合時の昇温過程において液相が生じない。このため、部材同士の相対位置をセルフアライメントすることができなかった。
【0008】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、セルフアライメントによって部材同士の相対位置の位置調整を行うことができ、かつ、耐熱性、接合強度に優れた金属焼結体からなる接合層を形成可能な接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る接合体の製造方法は、金属粉と銅塩とアミンとアルコールとを含み、前記銅塩中のCu重量Aと前記金属粉の重量Bとの比A/Bが0.02以上0.25以下である接合用ペーストを、35℃以下で、第1部材と第2部材との間に配置して積層体とするステップと、前記積層体を、前記接合用ペーストの液相生成開始温度以上、かつ液相消失温度未満に昇温して、前記第1部材と前記第2部材との間に液相を生じさせるとともに液相を揮発させるステップと、前記積層体を、液相消失温度より高い加熱温度に昇温して、金属焼結体を形成することで、前記第1部材と前記第2部材とが接合した接合体を形成するステップと、を含み、前記第1部材と前記第2部材との少なくとも一方は、前記接合用ペーストと接触する側の表面の展開面積比Sdrが、0.4以上である。
【0010】
前記液相を揮発させるステップでは、前記積層体を、前記液相生成開始温度より高い第1加熱温度に昇温して保持することで、前記液相を消失させて前記銅塩を還元し、前記接合体を形成するステップでは、前記液相が消失した積層体を、前記第1加熱温度より高い第2加熱温度に昇温することで、前記金属焼結体を形成して前記接合体を形成することが好ましい。
【0011】
前記第1部材と前記第2部材との少なくとも一方に対して、直流電解めっきを実施し、その後、PRパルス電解めっきを実施することにより、前記第1部材と前記第2部材との少なくとも一方の前記接合用ペーストと接触する側の表面に、展開面積比Sdrが、0.4以上となる粗化めっき層を形成するステップを更に含むことが好ましい。
【0012】
前記接合用ペーストは、銀塩を更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、セルフアライメントによって部材同士の相対位置の位置調整を行うことができ、かつ、耐熱性、接合強度に優れた金属焼結体からなる接合層を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る接合用ペーストの模式図である。
【
図3】
図3は、接合体の製造方法を説明する模式図である。
【
図5】
図5は、実施例における第2部材のマウント位置、および、セルフアライメントの確認方法の説明図である。
【
図6】
図6は、実施例における液相生成温度の評価方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0016】
(接合用ペースト)
本実施形態に係る接合用ペースト10は、第1部材と第2部材とを接合して接合体を製造する際に使用されるものである。接合用ペースト10は、例えば、絶縁回路基板の回路層(第1部材)に、電子部品として半導体素子(第2部材)を接合する際に用いられるものである。
【0017】
図1は、本実施形態に係る接合用ペーストの模式図である。
図1に示すように、接合用ペースト10は、金属粉12と、銅塩14と、アミン16と、アルコール18とを含む。
【0018】
(金属粉)
金属粉12は、銀、銅のいずれか一種または二種であることが好ましい。すなわち、金属粉12は、銀及び銅の少なくとも一方を含むことが好ましい。金属粉12は、一次粒子の状態でその平均粒径が100nm以上3μm以下の範囲内であることが好ましい。金属粉12の一次粒子の平均粒径は、次の方法により求められる。先ず、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、金属粉12のサイズに応じて倍率を決め、金属粉12のSEM像を撮影する。10000倍から50000倍の範囲で撮影を行うことが好ましい。次いで、画像解析ソフトを用いてSEM像を解析し、1サンプルあたり300個以上の粒子についてHeywood径を求め、Heywood径の算術平均値を一次粒子の平均粒径とする。
【0019】
(銅塩)
銅塩14は、アミン16とともに添加されることで、銅錯体を形成するものであればよい。本実施形態では、銅塩14として有機カルボン酸銅塩を用いることが好ましい。具体的には、銅塩14として、酢酸銅(II)一水和物、クエン酸銅2.5水和物、2-エチルヘキサン酸銅、オレイン酸銅、グルコン酸銅、ステアリン酸銅、安息香酸銅等を用いることができ、銅塩14として酢酸銅(II)一水和物を用いることが好ましい。
なお、本実施形態においては、銅塩14として、2種類以上の銅塩を含有していてもよい。
【0020】
(アミン)
アミン16は、銅塩14とともに添加されることで、銅錯体を形成するものであればよい。本実施形態では、アミン16として、直鎖アルキルアミンを含むことが好ましい。具体的には、アミン16として、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ステアリンアミン、アミノデカン等を用いることができ、アミン16としてドデシルアミンを用いることが好ましい。
なお、本実施形態においては、アミン16として、2種類以上のアミンを含有していてもよい。
【0021】
(アルコール)
アルコール18は、任意のアルコールであってよいが、グリセリン、α-テルピネオール、ジエチレングリコール(DEG)等を用いることができる。特に、アルコール18としてグリセリンを用いることが好ましい。
なお、本実施形態においては、アルコール18として、2種類以上のアルコールを含有していてもよい。
【0022】
(各成分の含有比率)
接合用ペースト10においては、銅塩14中のCu重量Aと金属粉12の重量Bとの比A/Bが、0.02以上0.25以下の範囲内とされている。
ここで、銅塩14中のCu重量Aと金属粉12の重量Bとの比A/Bが0.02未満の場合には、銅塩14の含有量が不十分となり、接合時の昇温過程で液相が十分に形成されずセルフアライメント性が損なわれるおそれがある。一方、上述の重量比A/Bが0.25を超えると、液相が過剰に生成し、揮発する有機物量が多くなり、焼成後の金属焼結体密度が低くなり接合強度が低くなるおそれがある。
このことから、本実施形態では、銅塩14中のCu重量Aと金属粉12の重量Bとの比A/Bを0.02以上0.25以下の範囲内に設定している。
なお、上述の重量比A/Bは、0.04以上であることが好ましく、0.06以上であることがさらに好ましい。また、上述の重量比A/Bは、0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることがさらに好ましい。
【0023】
接合用ペースト10は、金属粉12の含有量が、25mass%以上75mass%以下の範囲内であることが好ましい。
また、接合用ペースト10は、銅塩14の含有量が、4mass%以上16mass%以下の範囲内であることが好ましい。
さらに、接合用ペースト10は、アミン16の含有量が、16mass%以上54mass%以下の範囲内であることが好ましい。
また、接合用ペースト10は、アルコール18の含有量が、1mass%以上10mass%以下の範囲内であることが好ましい。
なお、各含有量は、接合用ペーストを100mass%とした時である。
【0024】
(接合用ペーストの特性)
接合用ペースト10は、15℃以上35℃以下の温度範囲内でペースト状であり、35℃からの昇温過程で液相が生成し、液相生成開始温度以上の昇温過程で液相が消失し、液相消失温度以上で金属焼結体を形成する構成とされていることが好ましい。本実施形態においては、上述のように、銅塩14とアミン16とを含んでいることから、これらを混合することで金属錯体(銅錯体)が形成されることになる。この金属錯体は、15℃以上35℃以下の温度範囲内でペースト状となり、さらに加熱することで液相が生じることになる。
【0025】
(銀塩)
接合用ペースト10は、さらに銀塩を含んでもよい。接合用ペースト10に含まれる銀塩は、アミンとともに添加されることで、銀錯体を形成するものであればよい。本実施形態では、銀塩として、酢酸銀、シュウ酸銀、プロピオン酸銀、ミリスチン酸銀、酪酸銀等を用いることができる。特に、銀塩として酢酸銀を用いることが好ましい。本実施形態においては、銀塩として、2種類以上の銀塩を含有していてもよい。銀塩を含めることで、接合性をより向上できる。
【0026】
接合用ペースト10が銀塩を含む場合、銀塩中のAg重量Cと金属粉12の重量Bとの比C/Bが、0.01以上0.25以下の範囲内であることが好ましく、0.02以上0.2以下であることがより好ましく、0.03以上0.1以下であることが更に好ましい。比C/Bがこの範囲となることで、接合性をより向上できる。
また、接合用ペースト10は、銀塩を含む場合、銀塩の含有量が、0.1mass%以上12mass%以下の範囲内であることが好ましい。
【0027】
本実施形態の接合用ペースト10は、上述の金属粉12、銅塩14、アミン16、必要に応じてアルコール18や銀塩を、所定の配合となるように秤量し、これらを混合することで製造することができる。
【0028】
(第1部材及び第2部材)
図2は、第1部材の模式図である。本実施形態では、接合用ペースト10を接合層として、第1部材20と第2部材30とを接合して、接合体100を製造する。第1部材20と第2部材30は任意のものであってよいが、例えば、第1部材20と第2部材30とのうちの一方が基板で、他方が電子部品であってよい。すなわち、基板と電子部品とが接合層で接合された半導体モジュールを、接合体100として製造してよい。基板としては、特に限定されないが、例えば、無酸素銅板、銅モリブデン板、高放熱絶縁基板(例えば、DCB(Direct Copper Bond))、LED(Light Emitting Diode)パッケージなどの半導体素子搭載用基材等が挙げられる。また電子部品としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、ダイオード、ショットキーバリヤダイオード、MOS-FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、サイリスタ、ロジック、センサー、アナログ集積回路、LED、半導体レーザー、発信器等の半導体素子が挙げられる。
【0029】
(第1部材)
第1部材20は、例えば銅であってよいが、その材料は銅に限られず任意であってよい。
図2に示すように、第1部材20の、接合用ペースト10が塗布される側の表面を表面20Aとし、表面20Aと反対側の表面を、表面20Bとする。この場合、第1部材20は、表面20Aの展開面積比Sdrが、0.4以上であることが好ましい。なお以降において、展開面積比Sdrがこれらの範囲にあることを、適宜、「展開面積比Sdrが上記範囲となる」と記載する。接合用ペースト10が塗布される側の展開面積比Sdrが上記範囲となることで、接合用ペースト10と第1部材20との接触性が向上して、接合性をより向上できる。
本実施形態では、第1部材20は、表面20Aの全域にわたって展開面積比Sdrが上記範囲であることが好ましいが、それに限られず、表面20Aのうち、少なくとも接合用ペースト10が塗布される領域の展開面積比Sdrが、上記範囲であってよい。また、第1部材20は、表面20Bの展開面積比Sdrは任意であってよいが、表面20Bの展開面積比Sdrも上記範囲であってよい。
展開面積比Sdrは、レーザ顕微鏡(オリンパス社製OLS5000)の100倍の対物レンズを用いて、129μm×129μmの測定範囲で観察し、サンプルの傾き、ノイズを除去する処理を行い、得られた画像を解析し、ISO25178に準拠して測定できる。
【0030】
本実施形態では、第1部材20は、粗化めっき層22により、展開面積比Sdrが上記範囲となる領域が形成されている。すなわち
図2の例では、第1部材20は、表面20A側に粗化めっき層22が形成されており、粗化めっき層22の表面が、表面20A(展開面積比Sdrが上記範囲となる領域)となっている。
【0031】
粗化めっき層22の形成方法は任意であるが、例えば、第1部材20の対象となる表面に対して、直流電解めっきを実施し、その後、PR(Periodic Reverse)パルス電解めっきを実施することにより、第1部材20の対象となる表面に、展開面積比Sdrが上記範囲となる粗化めっき層22が形成できる。より具体的な粗化めっき層22の形成方法の例を以下で説明する。
【0032】
粗化めっき層22を形成する場合、第1部材20の対象となる表面に電解めっき処理を施す。本実施形態では、電解めっき液として硫酸銅(CuSO4)および硫酸(H2SO4)を主成分とした硫酸銅浴に、3,3´-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウムを添加した水溶液からなる電解液を用いることが好ましい。また、めっき浴の温度は例えば25℃以上35℃以下の範囲内とすることが好ましい。
【0033】
そして、電解めっき処理としては、まず、直流電解めっき法で実施し、その後、PRパルス電解めっき法で実施する。
直流電解めっき法においては、電流密度を1A/dm2以上20A/dm2以下の範囲内、印加時間を10秒以上120秒以下の範囲内とすることが好ましい。
ここで、電解めっき処理として、まず、直流電解めっき法で実施し、その後、PRパルス電解めっき法で実施することで、第1部材20の表層結晶粒が大きい場合であっても、大きな表層結晶粒の表面に、分散して細かな凹凸を形成することができる。
【0034】
PRパルス電解めっき法は、電流の方向を周期的に反転させながら通電して電解めっきする方法である。例えば、1A/dm2以上30A/dm2以下の正電解(第1部材20を陽極とする陽極電解)を1ms以上1000ms以下、1A/dm2以上30A/dm2以下の負電解(第1部材20を負極とする負極電解)を1ms以上1000ms以下として、これを繰り返す。これにより、第1部材20の表面の溶解と銅の析出とが繰り返し実施され、粗化めっき層22が形成されることになる。
【0035】
ここで、粗化めっき層22を形成する第1部材20の表面性状、および、各種めっき条件(パルス印加時間、パルス波形(析出量/溶解量比)、パルス周波数)によって、粗化めっき層22の表面粗さを調整することが可能となる。
例えば、パルス印加時間を長くするか、パルス波形として析出量/溶解量比を調整すると、凸部の大きさを大きくすることができる。パルス周波数を調整すると、凸部の個数を増加させることができる。
【0036】
以上のように、本実施形態では、粗化めっき層22を形成することで、展開面積比Sdrが上記範囲となる領域を形成している。ただし、第1部材20の、展開面積比Sdrが上記範囲となる領域は、粗化めっき層22であることに限られず、任意の処理により、対象の領域の展開面積比Sdrを上記範囲としてよい。
【0037】
(第2部材)
第2部材30は、例えばSi基板の表面に金又は銀のめっきが形成された部材であってよいが、それに限られず任意の部材であってよい。第2部材30の、接合用ペースト10が塗布される側の表面を表面30Aとし、表面30Aと反対側の表面を、表面30Bとする。この場合、第2部材30は、表面30Aの展開面積比Sdrが、0.4以上であることが好ましい。
接合用ペースト10が塗布される側の展開面積比Sdrが上記範囲となることで、接合用ペースト10と第2部材30との接触性が向上して、接合性をより向上できる。
本実施形態では、第2部材30は、表面30Aの全域にわたって展開面積比Sdrが上記範囲であることが好ましいが、それに限られず、表面30Aのうち、少なくとも接合用ペースト10が塗布される領域の展開面積比Sdrが、上記範囲であってよい。また、第2部材30は、表面30Bの展開面積比Sdrは任意であってよいが、表面30Bの展開面積比Sdrも上記範囲であってよい。
【0038】
本実施形態では、第2部材30は、粗化めっき層32により、展開面積比Sdrが上記範囲となる領域が形成されている。すなわち
図2の例では、第2部材30は、表面30A側に粗化めっき層32が形成されており、粗化めっき層32の表面が、表面30A(展開面積比Sdrが上記範囲となる領域)となっている。粗化めっき層32の形成方法は、第1部材20の粗化めっき層22と同様なので、説明を省略する。
なお、第2部材30の、展開面積比Sdrが上記範囲となる領域は、粗化めっき層32であることに限られず、任意の処理により、対象の領域の展開面積比Sdrを上記範囲としてよい。
【0039】
以上の説明では、第1部材20と第2部材30の両方において、接合用ペースト10が塗布される領域の展開面積比Sdrが上記範囲となっている。ただしそれに限られず、第1部材20と第2部材30との少なくとも一方の、接合用ペースト10が塗布される領域の展開面積比Sdrが上記範囲であればよい。
【0040】
(接合体の製造方法)
次に、接合用ペースト10を用いた接合体100の製造方法を説明する。
図3は、接合体の製造方法を説明する模式図である。本実施形態では、第1部材20(例えば絶縁回路基板の回路層)と第2部材30(例えば半導体素子)とが接合層10Aにより接合された接合体100(例えば半導体装置)を製造するものである。
【0041】
本製造方法においては、接合用ペースト10と、第1部材20と、第2部材30とを準備する。
【0042】
(ペースト配置工程)
次に、
図3のステップS01(ペースト配置工程)に示すように、第1部材20と第2部材30との間に、接合用ペースト10を配置して、第1部材20と第2部材30との間に接合用ペースト10が配置された積層体100Aを形成する。具体的には、第1部材20の表面20Aと第2部材30の表面30Aとの間に、接合用ペースト10を配置(塗布)する。接合用ペースト10は、第1部材20の接合用ペースト10が塗布される領域上と、第2部材30の接合用ペースト10が塗布される領域上との間に設けられるといえる。
本実施形態では、第1部材11の表面20Aに、メタルマスク印刷によって、接合用ペースト10を印刷するが、接合用ペースト10の塗布方法は任意であってよい。また、接合用ペースト10塗布厚さは、20μm以上500μm以下の範囲内とすることが好ましい。
ステップS01は、35℃以下の環境下で実施され、15℃以上35℃以下の環境下で実施されることが好ましい。35℃以下で積層体100Aを形成することで、接合用ペースト10をペースト状の状態で用いることができるため、積層体100Aを容易に形成できる。
また、第1部材20と第2部材30との少なくとも一方は、接合用ペースト10が塗布される領域の展開面積比Sdrが上記範囲となっているため、接合用ペースト10や後述の液相が、第1部材20や第2部材30の表面に適切にゆきわたり、適切に接合することが可能となる。
【0043】
(液相形成揮発工程)
次に、
図3のステップS02及びステップS03に示すように、積層体100Aを、液相生成開始温度以上、かつ液相消失温度未満に昇温することで、第1部材20と第2部材30との間に液相を生成させた後で、その液相を徐々に揮発させる。具体的には、積層体100Aを、液相生成開始温度以上、かつ液相消失温度未満となる第1加熱温度まで昇温させる。液相生成開始温度は、積層体100Aが液相の生成を開始する温度であり、35℃を超え100℃以下の範囲内であることが好ましい。液相消失温度とは、積層体100Aから生じた液相が揮発により完全に消失する温度であり、例えば100℃以上200℃以下の範囲内であることが好ましい。
このとき、液相生成開始温度からの昇温過程において、接合用ペースト10に含まれる銅塩とアミンとによって形成される銅錯体が液化し、第1部材20と第2部材30との間に液相が生成される。これにより、
図3のステップS02に示すように、液相の表面張力によって、第1部材20と第2部材30との相対位置がセルフアライメントされることになる。
【0044】
そして、液相が生成した積層体100Aは、
図3のステップS03(液相揮発工程)に示すように、液相生成開始温度より高い第1加熱温度まで昇温されて保持されることで、液相が消失(揮発)して、接合用ペースト10に含まれる銅塩が還元される。すなわち、ステップS03においては、第1部材20と第2部材30との相対位置がセルフアライメントされた後、さらに第1加熱温度まで加熱して保持する。第1加熱温度は、100℃以上200℃以下の範囲内であることが好ましく、第1加熱温度での保持時間は、5分以上180分以下の範囲内であることが好ましい。また、液相が一気に揮発しないような温度に設定することが好ましい。
このとき、
図3のステップS03に示すように、アルコール18が銅錯体を還元することでナノサイズの銅粒子が生成するとともに、有機成分(銅塩14の酸成分、アミン16、アルコール18)が揮発し、殆どの液相が消失する。
【0045】
(焼結工程)
図3のステップS04(焼結工程)においては、第1加熱温度まで加熱されて液相が消失した積層体100Aを、第2加熱温度に昇温することで、接合用ペースト10から金属焼結体である接合層10Aを形成して、接合体100を形成する。すなわち、ステップS04においては、有機成分が揮発した後、さらに第2加熱温度まで加熱する。第2加熱温度は、液相消失温度よりも高い温度であり、第1加熱温度より高いことが好ましい。第2加熱温度は、200℃以上400℃以下であることが好ましい。第2加熱温度での保持時間は、1分以上90分以下の範囲内であることが好ましい。
このとき、金属粉の焼結が進行し、ステップS04に示すように、金属の焼結体からなる接合層10Aが形成されて、接合層10Aにより、第1部材20と第2部材30とが接合されて、接合体100が形成される。
【0046】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る接合体100の製造方法は、金属粉12と銅塩14とアミン16とアルコール18とを含み、銅塩14中のCu重量Aと金属粉12の重量Bとの比A/Bが0.02以上0.25以下である接合用ペースト10を、35℃以下で、第1部材20と第2部材30との間に配置して積層体100Aとするステップを含む。そして、本製造方法は、積層体100Aを、接合用ペースト10の液相生成開始温度以上、かつ液相消失温度未満に昇温して、第1部材20と第2部材30との間に液相を生じさせるとともに液相を揮発させるステップと、積層体100Aを、液相生成開始温度より高い加熱温度に昇温して、液相を消失させて金属焼結体を形成することで、第1部材20と第2部材30とが接合した接合体100を形成するステップと、を含む。ここで、第1部材20と第2部材30との少なくとも一方は、接合用ペーストと接触する側の表面の展開面積比Sdrが、0.4以上である。
【0047】
本実施形態に係る接合用ペースト10は、金属粉12と銅塩14とアミン16とアルコール18とを含み、15℃以上35℃以下の温度範囲内でペースト状であり、35℃からの昇温過程で液相が生じる構成とされているので、第1部材20と第2部材30との間に、この接合用ペースト10を配設して接合する場合には、接合時の昇温過程において、第1部材20と第2部材30との間に液相が生じ、この液相の表面張力により、第1部材20と第2部材30との相対位置をセルフアライメントすることができる。なお、金属粉12を含有しているので、液相が生じた場合でも、第1部材20と第2部材30の間に距離を確保することができ、接合層10Aを十分に形成することができる。
さらに、本実施形態においては、液相生成開始温度以上に昇温して液相を消失させ、さらに液相消失温度以上に昇温して金属焼結体を形成する構成とされているので、焼成後に再度高温環境下に置いても液相が生じず、耐熱性、接合強度に優れた接合層を形成することができる。
また、本実施形態においては、銅塩中のCu重量Aと金属粉の重量Bとの比A/Bが0.02以上の範囲内とされているので、銅塩の含有量が確保され、接合時の昇温過程で液相を十分に形成し、セルフアライメントすることができる。さらに、銅塩中のCu重量Aと金属粉の重量Bとの比A/Bが0.25以下の範囲内とされているので、生成される液相量が過剰にならず、揮発する有機物量が抑制されることで、焼成後の金属焼結体密度が十分高くなり、強い接合強度を実現できる。
さらに、本実施形態においては、アルコールを含んでいるので、接合時の昇温過程において、液相となった銅塩の銅イオンを還元することでナノサイズの銅粒子を生成することができ、銅イオンと錯形成していた有機成分が揮発するようになり液相を確実消失させることが可能となる。
さらに、本実施形態においては、第1部材20と第2部材30との少なくとも一方の、接合用ペーストと接触する側の表面粗さを高くすることで、接合用ペースト10や液相を、第1部材20や第2部材30の表面に適切にゆきわたらせることができ、適切に接合させて、セルフアライメント性及び接合強度を向上できる。
【0048】
本製造方法の液相を揮発させるステップは、積層体100Aを、液相生成開始温度より高い第1加熱温度に昇温して保持することで、液相を消失させて銅塩14を還元し、接合体100を形成するステップでは、液相が消失した積層体100Aを、第1加熱温度より高い第2加熱温度に昇温することで、金属焼結体(接合層10A)を形成して接合体100を形成することが好ましい。本製造方法によると、第1加熱温度の加熱と、第2加熱温度での加熱との2段階の加熱を行うことで、液相を適切に消失させて、焼結を適切に実行できる。
【0049】
本製造方法は、第1部材20と第2部材30との少なくとも一方に対して、直流電解めっきを実施し、その後、PRパルス電解めっきを実施することにより、第1部材20と第2部材30との少なくとも一方の接合用ペースト10と接触する側の表面に、展開面積比Sdrが、0.4以上となる粗化めっき層を形成するステップを更に含む。このように粗化めっき処理を行うことで、接合用ペースト10と接触する側の表面を適切に荒らして、接合用ペースト10や液相を、第1部材20や第2部材30の表面に適切にゆきわたらせることができ、セルフアライメント性及び接合強度を向上できる。
【0050】
接合用ペースト10は、銀塩を更に含むことが好ましい。銀塩を更に含むことで、接合強度を更に向上できる。
【0051】
(実施例)
図4は、実施例のサンプルを示す表であり、
図5は、実施例における第2部材のマウント位置、および、セルフアライメントの確認方法の説明図であり、
図6は、実施例における液相生成温度の評価方法の説明図であり、
図7は、各例の評価結果を示す表である。
【0052】
それぞれの実施例及び比較例においては、
図4に示す銅塩とアミンとを、
図4に示す比率で混合し、銅塩-アミン混合物を得た。そして、銅塩-アミン混合物と、
図4に示す金属粉、アルコールと、一部においては銀塩を混合し、各種混合物を得た。
【0053】
次に、厚み2mmであり、材質及び展開面積比Sdrが
図4に示した値となる第1部材上に、上述の混合物を配設した(厚み:50μm、面積:3mm角)。配設した混合物の上に、厚み0.4mmであり材質及び展開面積比Sdrが
図4に示した値となる第2部材をマウントした。この工程は、15℃以上35℃以下の室温で行った。
ここでの展開面積比Sdrは、混合物が配置される領域の粗さを指し、上述の実施形態で説明した方法で測定した値である。
第2部材の混合物マウント位置は、
図5(a)に示すように、混合物の配設面と素子面の2辺が一致するように調整した。これを加熱して接合層を形成し、第1部材と第2部材とを接合した。加熱条件は、
図4に示すものとした。例えば実施例1では、室温から、
図7に示す第1加熱温度まで加熱して、
図7に示す保持時間(第1加熱時間)だけ保持した。その後、さらに昇温して、
図7に示す第2加熱温度まで加熱して、
図7に示す保持時間(第2加熱時間)だけ保持した。その後、室温まで降温した。なお、昇温速度および降温速度は2℃/分とした。
金属粉としてSnAgCuを用いた例29においては、相生成温度をSnAgCuの溶融温度とし、液相消失温度をフラックスの揮発温度とした。
金属粉としてCuコアSnシェルを用いた例30においては、液相生成温度をSnの融点とし、液相消失温度をフラックスの揮発温度とした。
得られた混合物および接合状況について、以下の項目を評価した。
【0054】
(15℃-35℃での性状)
得られた各混合物を目視にて確認し、粉末状の残留物が確認される場合(いわゆるぼそぼその状態である場合)を「粉状」とした。「粉状」であった混合物以外の各混合物については、粘度をレオメータ(TAインスツルメント製DHR-3)により、測定温度を15℃および35℃とし、せん断速度を10(1/s)として測定した。15℃および35℃いずれの粘度も10Pa・s以上であるものを「ペースト状」であるとし、いずれかの温度での測定で10Pa・s未満であるものを「液状」であるとした。
【0055】
(液相生成の有無/液相生成開始温度)
熱重量示差熱分析(TG-DTA)(NETZSCH社、STA-2500 Regulus)を用いて測定した。窒素雰囲気、10℃/分の昇温速度、25℃から500℃まで示差熱分析を行った。TGカーブで重量減少が見られず、且つ、DTAカーブにおいて吸熱ピークが見られる場合を液相が生成したと判断した。
液相生成開始温度は、
図6に示されるようにDTAカーブのピークから低温部(低温側)に向かって引いた接線がDTAカーブの平らな部分の延長線と交わる点の温度とした。各例の液相生成開始温度を
図7に示す。
【0056】
(液相の消失/液相消失温度)
液相消失温度は、上記TGカーブにおいて重量減少時の接線が、重量減少が終わった定常状態の直線の延長線と交わる点の温度とした。各例の液相消失温度を
図7に示す。
【0057】
(セルフアライメント)
焼成を行った後に、接合材と第2部材で隣接する辺の距離を測定し、
図5(b)に示すように、4辺全てで0.2mm以上の距離があればセルフアライメント性有りとして「〇」とし、
図5(c)に示すように、1辺でも0.2mm未満の距離であればセルフアライメント性無しとして「×」とした。各例のセルフアライメントの評価結果を
図7に示す。
【0058】
(シェア強度)
接合強度は、せん断強度評価試験機(TRY PRESICION社製MFM 1500HF)を用いて測定した。
具体的には、接合強度の測定は、接合体の第1部材を水平に固定し、接合層の表面(上面)から50μm上方の位置でシェアツールにより、接合体の第2部材を横から水平方向に押して、第2部材が破断されたときの強度を測定することによって行った。なお、シェアツールの移動速度は0.1mm/秒とした。1条件に付き3回強度試験を行い、それらの算術平均値を接合強度の測定値とした。
シェア強度が20MPa未満であるものを「×」、20MPa以上であるものを「〇」とした。各例のシェア強度の評価結果を
図7に示す。
【0059】
(耐熱性評価)
焼成後のサンプルについて、冷熱衝撃試験機(エスペック社製TSE-11-A)を用いて175℃にて15分加熱後、-40℃に降温して15分冷却後、さらに175℃に昇温する過程を1サイクルとする熱衝撃試験を100サイクル実施した。
超音波映像装置(日立パワーソリューションズ社製FSP8V)を用い、第2部材と第1部材が接合層で接合されている部分を確認するために撮像した。使用したトランデューサー(プローブ)は周波数140MHzである。撮影した像から剥離している面積を求め、剥離面積がチップ面積の10%未満であるものを「〇」、10%以上であるものを「×」とした。なお、超音波映像装置による像では、第2部材と第1部材が剥離をしている部分は白、接合している部分は灰色に見える。各例の耐熱性の評価結果を
図7に示す。
【0060】
図7に、各例の本実施形態に示した接合用ペーストを用い、第1部材及び第2部材の少なくとも一方の展開面積比Sdrが0.4以上である実施例においては、セルフアライメント、シェア強度、及び耐熱性の評価がすべて合格となっており、セルフアライメントによって部材同士の相対位置の位置調整を行うことができ、かつ、耐熱性、接合強度を向上できることが分かる。
一方、本実施形態に示した接合用ペーストを用いることと、第1部材及び第2部材の少なくとも一方の展開面積比Sdrが0.4以上であることとの少なくとも一方を満たさない比較例においては、セルフアライメント、シェア強度、及び耐熱性の評価の少なくとも1つが不合格となっており、セルフアライメント性、耐熱性、及び接合強度を向上できないことが分かる。
例えば、比較例1では、Cu重量Aと金属粉の重量Bとの比A/Bが0.02より低いため、液相量が不十分となりセルフアライメントが不十分であった。
比較例2では、比A/Bが0.25より高く、液相量が過剰で有機物が多くなり、結果として焼結体密度が低くなって接合強度が不十分であった。
比較例3、4においては、硬くて脆い金属間化合物を形成するはんだ材を接合に用いたものであり、金属粉と銅塩とを含む接合用ペーストを用いてないため、耐熱性が不十分であった。
比較例5においては、銅塩を有していない接合用ペーストとされており、昇温過程で液相が生じず、セルフアライメント性が不十分であった。
比較例6においては、液相消失温度より高い加熱温度に昇温して、金属焼結体を形成することで、接合体を形成するステップが含まれていないため、有機成分が残存して接合強度が不十分であった。
比較例7においては、液相生成開始温度以上、かつ液相消失温度未満に昇温して、液相を生じさせるとともに液相を揮発させるステップが含まれていないため、液相が急激に揮発することによるガス抜け痕が残ってしまい、接合強度が不十分であった。
比較例8、9においては、第1部材と第2部材との両方のSdrが0.4未満であるため、接合強度が不十分であった。
【0061】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
10 接合用ペースト
12 金属粉
14 銅塩
16 アミン
18 アルコール
20 第1部材
30 第2部材
100 接合体
100A 積層体