(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162685
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】リアクトル及びリアクトルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20231101BHJP
H01F 41/00 20060101ALI20231101BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H01F37/00 M
H01F37/00 T
H01F41/00 C
H01F27/30 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073217
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿▲崎▼ 崇洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 直人
(72)【発明者】
【氏名】宗田 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】松木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】茂木 淳
【テーマコード(参考)】
5E043
【Fターム(参考)】
5E043FA04
(57)【要約】
【課題】ワニスの定着量を増加し、コアと絶縁材とコイルとの固着強度を向上したリアクトル及びリアクトルの製造方法を提供すること。
【解決手段】リアクトル1は、内側コア部11Aと、内側コア部11Aの外周に配置されるコイル31と、内側コア部11Aとコイル31との間に配置される絶縁材21と、内側コア部11Aと絶縁材21との間に配置される保護剤用定着材41と、を備え、内側コア部11Aは、1つ以上の内側コアによって形成され、保護剤用定着材41は、内側コア部11Aと絶縁材21とを接着するワニスが含侵する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側コア部と、
前記内側コア部の外周に配置されるコイルと、
前記内側コア部と前記コイルとの間に配置される保護剤用定着材と、
を備え、
前記内側コア部は、1つ以上の内側コアによって形成され、
前記保護剤用定着材は、前記内側コア部と前記コイルとを接着する保護剤が含侵する、
リアクトル。
【請求項2】
前記コイルと前記保護剤用定着材との間に配置される絶縁材、
をさらに備える、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記保護剤用定着材は、シート状であり、前記内側コア部と前記絶縁材との間に複数枚が配置される、
請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記保護剤用定着材は、折り畳まれた状態で配置される、
請求項3に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記保護剤用定着材は、不織布である、
請求項4に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記保護剤用定着材は、前記内側コア部の周方向において分割されており、
分割された前記保護剤用定着材は、前記内側コア部の周方向の角部の少なくとも1つを覆って配置されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記保護剤用定着材は、前記内側コア部の軸方向において複数に分割されており、
分割された前記保護剤用定着材の軸方向の長さは、前記内側コアの軸方向の長さより短い、
請求項1から5のいずれか一項に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記保護剤用定着材の短手方向の長さは、前記内側コアの軸方向の長さより短い、
請求項1から5のいずれか一項に記載のリアクトル。
【請求項9】
第1方向に沿って配置され、向かい合って配置された一対の内側コア部と、前記第1方向と異なる第2方向に沿って配置され、向かい合って配置された一対の外側コア部とによって矩形の環状に形成されたリアクトルコア、
を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のリアクトル。
【請求項10】
内側コア部と、
前記内側コア部の外周に配置されるコイルと、
前記内側コア部と前記コイルとの間に配置される絶縁材と、
前記内側コア部と前記絶縁材との間に配置される保護剤用定着材と、
を備えたリアクトルの製造方法であって、
前記絶縁材の一方の面に前記保護剤用定着材を配置し、前記保護剤用定着材の前記絶縁材と接する面の反対側の面に前記内側コア部を配置し、
前記絶縁材及び前記保護剤用定着材によって、前記内側コア部を包んだ状態で、前記コイルの内側に配置し、
前記保護剤用定着材に保護剤用定着材を含侵させる、
リアクトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトル及びリアクトルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルの製造工程において、コアと絶縁材とコイルとを固着させるために、リアクトル全体に対してワニス含侵が行われる。外周面を絶縁シートによって被覆されたコアをコイルの内側に配置したリアクトル本体に対してワニス含侵を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リアクトルの製造工程において、ワニス含侵後にワニスの定着量が不足すると、コアと絶縁材とコイルとの固着強度が低下するおそれがある。そこで、ワニスの定着量を増加し、コアと絶縁材とコイルとの固着強度を向上することが望まれる。
【0005】
本開示は、ワニスの定着量を増加し、コアと絶縁材とコイルとの固着強度を向上したリアクトル及びリアクトルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、内側コア部と、前記内側コア部の外周に配置されるコイルと、前記内側コア部と前記コイルとの間に配置される絶縁材と、前記内側コア部と前記絶縁材との間に配置される保護剤用定着材と、を備え、前記内側コア部は、1つ以上の内側コアによって形成され、前記保護剤用定着材は、前記内側コア部と前記絶縁材とを接着する前記保護剤が含侵する、リアクトルが提供される。
【0007】
本開示に従えば、内側コア部と、前記内側コア部の外周に配置されるコイルと、前記内側コア部と前記コイルとの間に配置される絶縁材と、前記内側コア部と前記絶縁材との間に配置される保護剤用定着材と、を備えたリアクトルの製造方法であって、前記絶縁材の一方の面に前記保護剤用定着材を配置し、前記保護剤用定着材の前記絶縁材と接する面の反対側の面に前記内側コア部を配置し、前記絶縁材及び前記保護剤用定着材によって、前記内側コア部を包んだ状態で、前記コイルの内側に配置し、前記保護剤用定着材に保護剤用定着材を含侵させる、リアクトルの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ワニスの定着量を増加し、コアと絶縁材とコイルとの固着強度を向上したリアクトル及びリアクトルの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るリアクトルの正面図である。
【
図4】
図4は、内側コア部の周りに配置された保護剤用定着材を示す概略図である。
【
図5】
図5は、内側コア部の軸方向の端部の部分拡大図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るリアクトルの製造方法を示す工程図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るリアクトルの製造方法を示す工程図である。
【
図8】
図8は、内側コア部の周りに配置された保護剤の固着力の確認試験を示す図である。
【
図9】
図9は、内側コア部の周りに配置された保護剤の固着力の確認試験の試験結果を示す図である。
【
図10】
図10は、内側コア部の周りに配置された保護剤用定着材の変形例を示す概略図である。
【
図11】
図11は、内側コア部の周りに配置された保護剤用定着材の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0011】
[第1実施形態]
<リアクトル>
図1は、第1実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
図2は、第1実施形態に係るリアクトルの正面図である。
図3は、
図2のA-A線断面図である。リアクトル1は、例えば、小型の油圧ショベルのような作業車両の充電式のバッテリを充電する充電器に用いられる。リアクトル1は、内側コア部11Aと、外側コア部11Bと、絶縁材21と、コイル31と、保護剤用定着材41とを備える。
【0012】
本実施形態では、保護剤は、例えば、ワニスであるがこれに限定されない。保護剤は、保護剤用定着材41に含侵可能な材料であればよい。保護剤は、例えば、電気絶縁性、耐熱性を有する材料であればよい。保護剤は、内側コア部11Aと絶縁材21とを固着可能な材料であればよい。
【0013】
以下の説明において、内側コア部11Aの軸方向と平行な方向を左右方向という。リアクトル1が設置された平面と直交する方向を上下方向という。左右方向及び上下方向は直交する。左右方向及び上下方向と直交する方向を前後方向という。前後方向と平行な軸がX軸であり、上下方向と平行な軸がY軸であり、左右方向と平行な軸がZ軸である。
【0014】
リアクトルコア11は、第1方向である左右方向に沿って配置され、向かい合って配置された一対の内側コア部11Aと、第2方向である上下方向に沿って配置され、向かい合って配置された一対の外側コア部11Bとによって矩形の環状に形成されている。
【0015】
一対の内側コア部11Aは、上下方向に離間して配置されている。上段の内側コア部11Aと下段の内側コア部11Aとは、上下方向に離間して配置されている。上段の内側コア部11Aと下段の内側コア部11Aとの区別を特に要しない場合、内側コア部11Aと記載する。
【0016】
内側コア部11Aは、1つ以上の内側コアによって形成される。本実施形態では、内側コア部11Aは、左右方向に並んで配置された2つの内側コアによって形成される。より詳しくは、上段の内側コア部11Aは、内側コア111及び内側コア112によって形成される。下段の内側コア部11Aは、内側コア113及び内側コア114によって形成される。個々の内側コア、本実施形態では、内側コア111、内側コア112、内側コア113及び内側コア114は、同様に構成されている。
【0017】
一対の外側コア部11Bは、左右方向に離間して配置されている。右側の外側コア部11Bと左側の外側コア部11Bとは、左右方向に離間して配置されている。右側の外側コア部11Bと左側の外側コア部11Bとの区別を特に要しない場合、外側コア部11Bと記載する。
【0018】
外側コア部11Bは、1つ以上の外側コアによって形成される。実施形態では、外側コア部11Bは、1つの外側コアによって形成される。より詳しくは、右側の外側コア部11Bは、外側コア115によって形成される。左側の外側コア部11Bは、外側コア116によって形成される。
【0019】
図2に示すように、リアクトルコア11は、内側コア111、内側コア112、外側コア116、内側コア114、内側コア113、外側コア115が時計回りに並んで、矩形の環状に形成されている。内側コア111と内側コア112との間には、ギャップ材121が配置されている。内側コア112と外側コア116との間には、ギャップ材122が配置されている。外側コア116と内側コア114との間には、ギャップ材123が配置されている。内側コア114と内側コア113との間には、ギャップ材124が配置されている。内側コア113と外側コア115との間には、ギャップ材125が配置されている。外側コア115と内側コア111との間には、ギャップ材126が配置されている。
【0020】
本実施形態では、リアクトルコア11は、ワニスによって矩形の環状に固着される。より詳しくは、内側コア111と内側コア112とギャップ材121とは、ワニスによって固着される。内側コア112と外側コア116とギャップ材122とは、ワニスによって固着される。外側コア116と内側コア114とギャップ材123とは、ワニスによって固着される。内側コア114と内側コア113とギャップ材124とは、ワニスによって固着される。内側コア113と外側コア115とギャップ材125とは、ワニスによって固着される。外側コア115と内側コア111とギャップ材126とは、ワニスによって固着される。
【0021】
図4は、内側コア部の周りに配置された保護剤用定着材を示す概略図である。
図4に示すように、絶縁材21は、内側コア部11Aとコイル31との間に配置される。絶縁材21は、内側コア部11Aの軸方向視における外周方向である周方向を覆って配置される。絶縁材21は、内側コア部11Aとコイル31とを絶縁する。絶縁材21は、電気絶縁性を有する材料で形成される。絶縁材21は、1枚のシート状である。絶縁材21は、例えば、絶縁紙である。
【0022】
コイル31は、内側コア部11Aの外周に配置される。コイル31の内周と内側コア部11Aの外周との間に、例えば数mm程度の隙間を生じる。コイル31の内周と内側コア部11Aの外周との間の隙間に、絶縁材21及び保護剤用定着材41が配置される。
【0023】
図4に示すように、保護剤用定着材41は、内側コア部11Aと絶縁材21との間に配置される。保護剤用定着材41は、内側コア部11Aと絶縁材21とを接着する保護剤が含侵する。本実施形態では、保護剤用定着材41は、ワニスが含侵する。保護剤用定着材41は、絶縁材21によりも保護剤が含侵しやすい。保護剤用定着材41は、例えば、不織布であるがこれに限定されない。保護剤用定着材41は、内側コア部11Aとコイル31との間の隙間を埋めることのできるクッション性のある材料、かつワニスを含侵し定着できる材料であればよい。
【0024】
図2に示すように、本実施形態では、保護剤用定着材41は、内側コア部11Aの軸方向において複数に分割されている。より詳しくは、保護剤用定着材41は、上段の内側コア部11Aの各コアに1つずつ、および、下段の内側コア部11Aの各コアに1つずつ、合計4つが配置される。上段の内側コア部11Aには、保護剤用定着材41
1及び保護剤用定着材41
2が配置される。保護剤用定着材41
1は、上段の内側コア部11Aの内側コア111に巻き付けられる。保護剤用定着材41
2は、上段の内側コア部11Aの内側コア112に巻き付けられる。下段の内側コア部11Aにも、同様に保護剤用定着材41
1及び保護剤用定着材41
2が配置される。保護剤用定着材41
1は、下段の内側コア部11Aの内側コア113に巻き付けられる。保護剤用定着材41
2は、下段の内側コア部11Aの内側コア114に巻き付けられる。保護剤用定着材41
1、保護剤用定着材41
2は、保護剤用定着材41
1、保護剤用定着材41
2の区別を特に要しない場合、保護剤用定着材41と記載する。
【0025】
分割された保護剤用定着材41が内側コア部11Aを包んだ状態における軸方向の長さは、内側コア111、内側コア112、内側コア113及び内側コア114のそれぞれの軸方向の長さより短い。
【0026】
保護剤用定着材41の短手方向の長さは、内側コア部11Aの各コアの軸方向の長さより短い。本実施形態では、保護剤用定着材41の短手方向の長さは、内側コア111、内側コア112、内側コア113及び内側コア114のそれぞれの軸方向の長さより、例えば数mm程度短い。
【0027】
図5は、内側コア部の軸方向の端部の部分拡大図である。
図5に示すように、内側コア111を包んだ保護剤用定着材41
1の軸方向の端部とギャップ材126の端部との間には、距離dの隙間を有する。図示を省略しているが、内側コア112を包んだ保護剤用定着材41
2の軸方向の端部とギャップ材122(
図2参照)の端部との間には、距離dの隙間を有する。内側コア113を包んだ保護剤用定着材41
2の軸方向の端部とギャップ材125(
図2参照)の端部との間には、距離dの隙間を有する。内側コア114を包んだ保護剤用定着材41
2の軸方向の端部とギャップ材123(
図2参照)の端部との間には、距離dの隙間を有する。
【0028】
本実施形態では、保護剤用定着材41は、1枚のシート状であり、内側コア部11Aと絶縁材21との間に複数枚が積層されている。
図3、
図4においては、保護剤用定着材41は模式的に図示しているため、複数枚が積層されている状態は図示されていない。保護剤用定着材41は、長尺の矩形状である。複数枚の保護剤用定着材41は、絶縁材21と内側コア部11Aとの間の隙間に合わせて保護剤用定着材41同士の間隔が広がる。
【0029】
本実施形態では、保護剤用定着材41は、1枚のシートを折り畳まれた状態で配置される。本実施形態では、保護剤用定着材41は、長手方向に離間した、短手方向に沿った2つの折り目において折り畳まれる。保護剤用定着材41は、折り畳まれていることにより、複数枚が積層された状態になる。折り畳まれた保護剤用定着材41は、絶縁材21と内側コア部11Aとの間の隙間に合わせて折り目が開いて広がる。
【0030】
折り畳んでいない状態の保護剤用定着材41の長手方向の長さは、保護剤用定着材41を折り畳んで内側コア部11Aを包んだ際に、内側コア部11Aの軸方向視における周長より、例えば数mm程度短くなる程度の長さである。
【0031】
ブラケット61及びブラケット62は、リアクトルコア11を支持する。より詳しくは、ブラケット61及びブラケット62は、左右方向に離間して向かい合って配置される。ブラケット61及びブラケット62は、板状である。ブラケット61及びブラケット62は、軸方向を左右方向と平行にして配置されたリアクトルコア11を左右方向から挟む。ボルト63及びボルト64は、左右方向に沿って延在する。ボルト63及びボルト64は、リアクトルコア11をブラケット61及びブラケット62に固定する。ボルト63は、ブラケット61及びブラケット62の上側を固定する。ボルト64は、ブラケット61及びブラケット62の下側を固定する。
【0032】
<リアクトルの製造方法>
次に、
図6、
図7を参照して、リアクトルの製造方法を説明する。
図6は、第1実施形態に係るリアクトルの製造方法を示す工程図である。
図7は、第1実施形態に係るリアクトルの製造方法を示す工程図である。
【0033】
まず、シート状の保護剤用定着材41を用意する(ステップS11)。ステップS11におけるシート状の保護剤用定着材41の長手方向の長さは、内側コア部11Aの軸方向視における周長の3倍程度の長さである。
【0034】
シート状の保護剤用定着材41を折り畳む(ステップS12)。本実施形態では、一例として、保護剤用定着材41を短手方向に沿った折り目41a及び折り目41bで折り曲げて三つ折りにする。三つ折りに折り畳まれた保護剤用定着材41は、3枚が積層されている。折り畳まれた保護剤用定着材41の長さは、内側コア部11Aの軸方向視における周長より、例えば数mm程度短い。
【0035】
絶縁材21の一方の面に折り畳まれた及び保護剤用定着材41を配置し、保護剤用定着材41の絶縁材21と接する面の反対側の面に内側コア部11Aを配置する(ステップS13)。
図6に示す例では、絶縁材21の一方の面に折り畳まれた保護剤用定着材41
1及び保護剤用定着材41
2を配置する。そして、折り畳まれた保護剤用定着材41
1上に内側コア111を配置する。折り畳まれた保護剤用定着材41
2上に内側コア112を配置する。内側コア111と内側コア112との間に、ギャップ材121を配置する。
【0036】
絶縁材21及び折り畳まれた保護剤用定着材41によって、内側コア部11Aを包む(ステップS14)。より詳しくは、折り畳まれた保護剤用定着材411を内側コア111の外周に沿って曲げ折り目41aと折り目41bを近づけて、内側コア111の露出している面を覆うように包む。保護剤用定着材411からは、周方向において内側コア111の一部が露出する。同様に、折り畳まれた保護剤用定着材412を内側コア112の外周に沿って曲げ折り目41aと折り目41bを近づけて、内側コア112の露出している面を覆うように包む。保護剤用定着材412からは、周方向において内側コア112の一部が露出する。内側コア部11Aを包んだ保護剤用定着材41は、例えば、接着テープなどによって仮留めされる。そして、絶縁材21を、保護剤用定着材411によって包まれた内側コア111及び保護剤用定着材412によって包まれた内側コア112に沿って曲げて、絶縁材21の左右方向の端部が保護剤用定着材411によって包まれた内側コア111及び保護剤用定着材412によって包まれた内側コア112を覆うように包む。絶縁材21は、周方向において内側コア111を包んだ保護剤用定着材411及び内側コア112を包んだ保護剤用定着材412が露出しないように巻きつけられる。保護剤用定着材411によって包まれた内側コア111及び保護剤用定着材412によって包まれた内側コア112を包んだ絶縁材21は、例えば、接着テープなどを使用して仮留めされる。
【0037】
ステップS14の後、折り畳まれた保護剤用定着材41は、絶縁材21と内側コア部11Aとの間の隙間に合わせて折り目が開いて広がる。
【0038】
絶縁材21及び保護剤用定着材41によって内側コア部11Aを包んだ状態で、コイル31の内側に配置する(ステップS15)。
【0039】
ステップS11からステップS15までの処理を2回行って、絶縁材21及び保護剤用定着材41によって包まれた内側コア部11Aを一対組み立てる。
【0040】
そして、絶縁材21及び保護剤用定着材41によって包まれた一対の内側コア部11Aを向かい合って配置し、一対の外側コア部11Bを向かい合って配置して、矩形の環状のリアクトルコア11を形成する。一対の内側コア部11Aと一対の外側コア部11Bとを矩形の環状に並べる際に、ギャップ材を配置する。より詳しくは、内側コア112と外側コア116との間に、ギャップ材122を配置する。外側コア116と内側コア114との間に、ギャップ材123を配置する。内側コア113と外側コア115との間に、ギャップ材125を配置する。外側コア115と内側コア111との間に、ギャップ材126を配置する。
【0041】
そして、矩形の環状に形成されたリアクトルコア11を、ブラケット61及びブラケット62によって左右方向から挟んだ状態で、ボルト63及びボルト64によって固定する。
【0042】
そして、ブラケット61及びブラケット62に固定されたリアクトルコア11全体をワニスに漬ける。これにより、保護剤用定着材41に、保護剤である例えばワニスを含侵させる。保護剤用定着材41は、絶縁材21と内側コア部11Aとの間の隙間に合わせて折り目が開いて広がった状態のまま、ワニスが含侵して固着される。保護剤用定着材41にワニスが含侵するので、保護剤用定着材41が存在しない場合に比べて、絶縁材21と内側コア部11Aとの間に定着するワニスが多くなる。絶縁材21と内側コア部11Aとの固着強度が増加する。
【0043】
ワニスによる固着力が強固である場合、内側コア部11Aとコイル31との位置が強固に固定される。ワニスによる固着力が不十分である場合、内側コア部11Aとコイル31との位置がずれるおそれがある。内側コア部11Aとコイル31との位置がずれると、内側コア部11Aの角部と絶縁材21とが接触するおそれがある。
【0044】
<保護剤の固着力の確認試験>
次に、
図8、
図9を用いて、保護剤の固着力の確認試験を説明する。
図8は、内側コア部の周りに配置された保護剤の固着力の確認試験を示す図である。
図9は、内側コア部の周りに配置された保護剤の固着力の確認試験の試験結果を示す図である。この確認試験では、ステップS11からステップS15までの処理を行って製造された、絶縁材21及び保護剤用定着材41によって包まれた内側コア部11Aを試験片とする。
【0045】
試験片の内側コア部11Aを、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向にそれぞれ押圧して、試験片の内側コア部11Aとコイル31との変位を測定する試験を行う。X軸方向及びY軸方向の試験においては、試験片の内側コア部11Aを治具200によって軸方向に挟んだ状態で固定して試験を行う。X軸方向の試験では、図示しない押し板を介して試験片に対して、X軸方向に例えば500N以下の荷重FXを印加する。そして、荷重FXと、内側コア部11AのX軸方向の変位の関係を測定する。Y軸方向の試験では、
図8に示す押し板201を介して試験片に対して、Y軸方向に例えば500N以下の荷重FYを印加する。そして、荷重FYと、内側コア部11AのY軸方向の変位の関係を測定する。Z軸方向の試験では、図示しない押し板を介して試験片に対して、Z軸方向に荷重FZを印加する。荷重FZと、内側コア部11AのZ軸方向の関係を測定する。
【0046】
図9を用いて、試験結果を説明する。X軸方向の試験結果は、実線で示す。Y軸方向の試験結果は、破線で示す。Z軸方向の試験結果は、いずれの試験片でも、荷重FZが150Nで、絶縁材21が内側コア部11Aから剥離した。◆及び◇は、本実施形態に対する比較例として、保護剤用定着材41を備えず、絶縁材21によって内側コア部11Aを包みワニスを含浸させた比較例1、比較例2の試験片の試験結果を示す。黒塗りの□、□、●、○、黒塗りの△及び△は、本実施形態の内側コア部11Aであって、保護剤用定着材41によって内側コア部11Aを包みワニスを含浸させた実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5及び実施例6の試験片の試験結果を示す。
図9に示す試験結果より、本実施形態の試験片はいずれも比較例の試験片より、変位量が抑えられている。
【0047】
<効果>
実施形態では、絶縁材21と内側コア部11Aとの間に配置された保護剤用定着材41にワニスが含侵する。本実施形態によれば、保護剤用定着材41が存在しない場合に比べて、絶縁材21と内側コア部11Aとの間に定着するワニスを増加することができる。本実施形態によれば、絶縁材21と内側コア部11Aとの固着強度を増加することができる。本実施形態によれば、内側コア部11Aとコイル31との位置ずれを抑えて、内側コア部11Aの角部と絶縁材21との接触を抑制できる。
【0048】
本実施形態では、シート状の保護剤用定着材41は、内側コア部11Aと絶縁材21との間に複数枚が配置される。本実施形態によれば、複数枚の保護剤用定着材41は、絶縁材21と内側コア部11Aとの間の隙間に合わせて保護剤用定着材41同士の間隔が広がる。本実施形態によれば、保護剤用定着材41が広がっていることにより、絶縁材21と内側コア部11Aとの固着強度を増加することができる。
【0049】
本実施形態では、シート状の保護剤用定着材41は、折り畳まれた状態で内側コア部11Aと絶縁材21との間に配置される。本実施形態によれば、保護剤用定着材41は、折り畳まれていることにより、複数枚が重なり合った状態になる。折り畳まれた保護剤用定着材41は、絶縁材21と内側コア部11Aとの間の隙間に合わせて折り目が開いて広がる。本実施形態によれば、折り畳まれた保護剤用定着材41が広がっていることにより、絶縁材21と内側コア部11Aとの固着強度を増加することができる。
【0050】
本実施形態では、保護剤用定着材41の短手方向の長さは、内側コア111、内側コア112、内側コア113及び内側コア114のそれぞれの軸方向の長さより、例えば数mm程度短い。本実施形態によれば、リアクトルコア11の製造時に、保護剤用定着材41の端部が、ギャップ材及び外側コア部11Bに噛み込まれることを抑えることができる。
【0051】
本実施形態では、保護剤用定着材41は、不織布である。リアクトルコア11の製造時、内側コア部11Aとコイル31との公差が大きく位置決めが難しい。本実施形態では、保護剤用定着材41が不織布であるので、クッション性により、内側コア部11Aとコイル31との間の隙間を埋めることができる。また、本実施形態では、保護剤用定着材41が不織布であるので、ワニスが含侵しやすく、絶縁材21と内側コア部11Aとの間に定着するワニスを増加することができる。
【0052】
<変形例1>
図10は、内側コア部の周りに配置された保護剤用定着材の変形例を示す概略図である。
図10においては、保護剤用定着材41は模式的に図示しているため、複数枚が積層されている状態は図示されていない。
図10に示す例では、保護剤用定着材41は、内側コア部11Aの周方向において分割されている。
図10に示す例では、保護剤用定着材41は、保護剤用定着材41
3、保護剤用定着材41
4、保護剤用定着材41
5及び保護剤用定着材41
6の4つに分割されている。分割された保護剤用定着材41は、内側コア部11Aの周方向の角部の少なくとも1つを覆って配置されている。本実施形態では、保護剤用定着材41
3、保護剤用定着材41
4、保護剤用定着材41
5及び保護剤用定着材41
6は、内側コア部11Aの4つの角部に配置されている。この変形例によれば、内側コア部11Aの角部と絶縁材21とが接触することを抑制できる。
【0053】
<変形例2>
図11は、内側コア部の周りに配置された保護剤用定着材の変形例を示す概略図である。
図12は、リアクトルの変形例の正面図である。
図11においては、保護剤用定着材41は模式的に図示しているため、複数枚が積層されている状態は図示されていない。
図11、
図12に示す例では、保護剤用定着材41は、保護剤用定着材41
7及び保護剤用定着材41
8の2つに分割されている。保護剤用定着材41は、軸方向においては分割されていない。保護剤用定着材41が内側コア部11Aを包んだ状態における軸方向の長さは、内側コア部11Aの軸方向の長さより、例えば例えば数mm程度短い。保護剤用定着材41が内側コア部11Aを包んだ状態における軸方向の長さは、内側コア111、内側コア112及びギャップ材121を合わせた軸方向の長さより短い。保護剤用定着材41が内側コア部11Aを包んだ状態における軸方向の長さは、内側コア113、内側コア114及びギャップ材124のそれぞれの軸方向の長さより短い。
【0054】
<変形例3>
図13は、リアクトルの変形例を示す概略図である。
図13に示す例では、リアクトル1は、絶縁材21を備えていない。リアクトル1は、内側コア部11Aと、内側コア部11Aの外周に配置されるコイル31と、内側コア部11Aとコイル31との間に配置される保護剤用定着材41と、を備え、内側コア部11Aは、1つ以上の内側コアによって形成され、保護剤用定着材41は、内側コア部11Aとコイル31とを接着するワニスが含侵する。この変形例では、保護剤用定着材41が絶縁材としても機能する。
【0055】
<その他の変形例>
上記では、1枚の保護剤用定着材41を折り畳んで使用するものとして説明したが、複数枚の保護剤用定着材41を重ねて配置してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…リアクトル、11…リアクトルコア、11A…内側コア部、11B…外側コア部、111…内側コア、112…内側コア、113…内側コア、114…内側コア、115…外側コア、116…外側コア、121…ギャップ材、122…ギャップ材、123…ギャップ材、124…ギャップ材、125…ギャップ材、126…ギャップ材、21…絶縁材、31…コイル、41…保護剤用定着材、61…ブラケット、62…ブラケット、63…ボルト、64…ボルト。