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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001627
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】引抜工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 27/067 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
B25B27/067 Z
B25B27/067 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102461
(22)【出願日】2021-06-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】507300065
【氏名又は名称】有限会社田村製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】田村 智昭
【テーマコード(参考)】
3C031
【Fターム(参考)】
3C031DD09
3C031DD22
(57)【要約】
【課題】迅速に、かつ、容易に芯棒打込式アンカーボルトの引き抜きが可能な引抜工具の提供を目的とする。
【解決手段】引抜工具1は、芯棒打込式アンカーボルト100の芯棒101を保持する第一保持部20と、第一保持部20が連結され、芯棒101を引き抜く引抜力を、第一保持部20を介して芯棒101に伝達するシャフト部10と、を備えている。そして、シャフト部10は、第一保持部20が連結可能な連結部14と、連結部14に連接される軸部11と、軸部11に沿って摺動可能な可動部12と、可動部12で打撃される鍔部13と、を有しており、可動部12で鍔部13を打撃することで引抜力を発生させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯棒打込式アンカーボルトを引き抜くための引抜工具であって、
前記芯棒打込式アンカーボルトの芯棒を保持する第一保持部と、前記第一保持部が連結され、前記芯棒を引き抜く引抜力を、前記第一保持部を介して前記芯棒に伝達するシャフト部と、を備え、
前記シャフト部は、前記第一保持部が連結可能な連結部と、前記連結部に連接される軸部と、前記軸部に沿って摺動可能な可動部と、前記可動部で打撃される鍔部と、を有し、
前記可動部で前記鍔部を打撃することで前記引抜力を発生させる、
ことを特徴とする引抜工具。
【請求項2】
前記第一保持部は、一端側が前記連結部に連結されると共に、他端から前記一端側に向けて嵌合穴が設けられた筒状の本体部材と、前記他端側から前記嵌合穴に嵌め込まれる把持部材と、前記他端側の外周側面に螺合され、前記把持部材を前記一端側に押し込んで前記嵌合穴に嵌合させる筒状の押込部材と、を備え、
前記把持部材は、前記一端側に配置される基部と、前記基部から前記他端側に向けて設けられた複数の爪片と、を有し、前記嵌合穴に嵌合させることで、前記爪片の先端部が窄まって前記芯棒の頭部を把持する、
ことを特徴とする請求項1に記載された引抜工具。
【請求項3】
前記把持部材は、筒状であり、前記基部から前記先端部にかけて外径が大きくなる逆テーパー状に形成されており、
前記嵌合穴は、前記把持部材の最大外径よりも小さく形成された、
ことを特徴とする請求項2に記載された引抜工具。
【請求項4】
芯棒打込式アンカーボルトを引き抜くための引抜工具であって、
前記芯棒打込式アンカーボルトのアンカーボルト本体を保持する第二保持部と、前記第二保持部が連結され、前記アンカーボルト本体を引き抜く引抜力を、前記第二保持部を介して前記アンカーボルト本体に伝達するシャフト部と、を備え、
前記シャフト部は、前記第二保持部が連結可能な連結部と、前記連結部に連接される軸部と、前記軸部に沿って摺動可能な可動部と、前記可動部で打撃される鍔部と、有し、
前記可動部で前記鍔部を打撃することで前記引抜力を発生させる、
ことを特徴とする引抜工具。
【請求項5】
前記第二保持部は、筒状であり、内周側面に前記アンカーボルト本体に螺合するボルト保持用ねじが形成された、
ことを特徴とする請求項4に記載された引抜工具。
【請求項6】
前記可動部は、前記軸部が通された筒状であり、作業者が把持可能なグリップ部と、前記グリップ部に連接されて、前記グリップ部よりも外径が大きいハンマー部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載された引抜工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯棒打込式アンカーボルトを引き抜くための引抜工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、硬化したコンクリートに、構造用部材または設備機器等の固定対象物を固定するため、種々の「あと施工アンカーボルト」が使用されている。この「あと施工アンカーボルト」は、コンクリートに設けられた穿孔に固着されるものであり、例えば、芯棒打込式アンカーボルトが知られている。この芯棒打込式アンカーボルトは、主として、アンカーボルト本体と、このアンカーボルト本体の中心に差し込まれる芯棒と、アンカーボルト本体に螺合されるナットと、から構成される。
【0003】
この芯棒打込式アンカーボルトは、アンカーボルト本体が穿孔に差し込まれて、次いで、鎚等の打込み工具を用いてアンカーボルト本体の中心に芯棒が打ち込まれることで、固定される。具体的には、アンカーボルト本体は、芯棒の打ち込みにより、アンカーボルト本体の先端に形成された拡張片が、内部から放射状に押し拡げられて、穿孔内の内壁に食い込む。これにより、芯棒打込式アンカーボルトが、穿孔内に固定される。
【0004】
ところで、一般に、固定対象物を移動若しくは撤去する際、又は、誤った位置に固定された芯棒打込式アンカーボルトがある場合等には、不要となった芯棒打込式アンカーボルトを除去する必要がある。しかし、一度穿孔内に固定された芯棒打込式アンカーボルトは、引き抜くことが容易ではない。そこで、不要となった芯棒打込式アンカーボルトを除去するため、例えば、サンダー等の電動切断工具を用いて、穿孔内から突出する芯棒打込式アンカーボルトを切断する方法や、専用の剪断工具を用いて、穿孔内から突出する芯棒打込式アンカーボルトを剪断する方法、また、バール等の工具を用いて、穿孔内から芯棒打込式アンカーボルトを無理やり除去する方法等が用いられている。
【0005】
しかし、上記した切断または剪断する方法では、アンカーボルト本体が穿孔内に残存することで、様々な問題に発展する可能性が指摘されていた。例えば、アンカーボルト本体が残存する穿孔では、ひび割れ又は亀裂等のクラックが生じる。このクラックは、コンクリート内部に雨水や空気を侵入させやすくするため、コンクリート内部の鉄筋を腐食させる要因となる。そして、鉄筋の腐食は、後述する錆汁を発生させるばかりでなく、コンクリートで構成された構造物自体の耐久性を低下させる。
【0006】
さらに、鉄筋の腐食が進行すると、鉄筋自体が体積を膨張させることで、コンクリートを内部から破裂させる爆裂が生じる。この爆裂が生じると、コンクリートはコンクリート片として容易に剥がれ落ちる状態となり、崩れ落ちたコンクリート片が原因となって事故に繋がる可能性がある。
【0007】
また、例えば、穿孔内に残存するアンカーボルト本体及びコンクリート内部の鉄筋は、腐食することで錆汁を発生させる。この錆汁は、穿孔やクラックから流れ出すことで錆びだれとなり、コンクリート表面の美観を損なう。
【0008】
さらに、アンカーボルト本体が穿孔内に残存する場合には、残存する部分が、穿孔内に収まりきらず、コンクリートの表面から突出していることがある。このような場合には、この突出する部分に作業者が足を引っ掛けてしまい、転倒の原因となる。
【0009】
一方で、上記した除去する方法では、引き抜きが容易でないアンカーボルト本体を力任せに無理やり引き抜くものであるため、除去作業が思わぬ事故に繋がる可能性があった。
【0010】
そこで、穿孔内に固定された芯棒打込式アンカーボルトを確実に引き抜くために、例えば、アンカー抜取具が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2018-089709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一般に、芯棒打込式アンカーボルトを容易に引き抜くためには、まずは穿孔内に固定された芯棒打込式アンカーボルトにおいて、アンカーボルト本体と芯棒とを互いに分離させる必要がある。
【0013】
そのため、上記したアンカー抜取具は、芯棒の頭部を先端で保持するボルト状の引抜部材と、この引抜部材を内部空間に収容する本体部材と、引抜部材の後端部に取り付けられるナット状の移動部材と、を有している。引抜部材は、本体部材に収容されると共に、本体部材の天部に形成された挿通孔から、後端部を外部に露出させている。この外部に露出された後端部には移動部材が螺合して取り付けられており、この移動部材は本体部材の天部に当接するまで回転させて締め込まれている。
【0014】
上記のように組み立てられたアンカー抜取具を用いた芯棒打込式アンカーボルトの芯棒の引き抜き手順は、芯棒の頭部を引抜部材の先端で保持した状態で、レンチ等を用いて移動部材を締め込む方向に向けて回転させる。そうすると、本体部材に収容された引抜部材が、移動部材の回転に伴って、相対的に、アンカーボルト本体から離間する方向に向けて、移動を始める。その結果、引抜部材に保持された芯棒は、引抜部材と共に、アンカーボルト本体から離間する方向に移動していき、最終的にはアンカーボルト本体と芯棒とが互いに分離する。そして、芯棒が引き抜かれたアンカーボルト本体は、穿孔から容易に抜き出すことができる。
【0015】
すなわち、上記したアンカー抜取具は、引抜部材及び移動部材のそれぞれに設けられた互いに螺合するねじを利用して、芯棒を引き抜くものである。換言すれば、移動部材の回転運動を引抜部材の直線運動に変換することで芯棒を引き抜くものである。したがって、例えば、移動部材を1回転させたとしても、引抜部材はねじのピッチに相当する距離しか移動せず、芯棒を引き抜くためには、移動部材を相当回数にわたって回転させなければならない。そのため、芯棒打込式アンカーボルトの除去作業を迅速に行いたい作業者にとって、非常に手間がかかるものであった。
【0016】
また、移動部材を回転させる際には、スパナ又はレンチ等の締結工具を用いて締め込む必要があるため、作業者にとって必ずしも使い勝手が良いものとはいえないものであった。
【0017】
そこで、迅速に、かつ、容易に芯棒打込式アンカーボルトの引き抜きが可能な引抜工具の実現が求められている。本発明は、上記した従来技術の課題を解決すべくなされた引抜工具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る引抜工具は、芯棒打込式アンカーボルトを引き抜くための引抜工具であって、前記芯棒打込式アンカーボルトの芯棒を保持する第一保持部と、前記第一保持部が連結され、前記芯棒を引き抜く引抜力を、前記第一保持部を介して前記芯棒に伝達するシャフト部と、を備え、前記シャフト部は、前記第一保持部が連結可能な連結部と、前記連結部に連接される軸部と、前記軸部に沿って摺動可能な可動部と、前記可動部で打撃される鍔部と、を有し、前記可動部で前記鍔部を打撃することで前記引抜力を発生させる、ことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る引抜工具は、前記第一保持部は、一端側が前記連結部に連結されると共に、他端から前記一端側に向けて嵌合穴が設けられた筒状の本体部材と、前記他端側から前記嵌合穴に嵌め込まれる把持部材と、前記他端側の外周側面に螺合され、前記把持部材を前記一端側に押し込んで前記嵌合穴に嵌合させる筒状の押込部材と、を備え、
前記把持部材は、前記一端側に配置される基部と、前記基部から前記他端側に向けて設けられた複数の爪片と、を有し、前記嵌合穴に嵌合させることで、前記爪片の先端部が窄まって前記芯棒の頭部を把持する、ことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る引抜工具は、前記把持部材は、筒状であり、前記基部から前記先端部にかけて外径が大きくなる逆テーパー状に形成されており、前記嵌合穴は、前記把持部材の最大外径よりも小さく形成された、ことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る引抜工具は、芯棒打込式アンカーボルトを引き抜くための引抜工具であって、前記芯棒打込式アンカーボルトのアンカーボルト本体を保持する第二保持部と、前記第二保持部が連結され、前記アンカーボルト本体を引き抜く引抜力を、前記第二保持部を介して前記アンカーボルト本体に伝達するシャフト部と、を備え、前記シャフト部は、前記第二保持部が連結可能な連結部と、前記連結部に連接される軸部と、前記軸部に沿って摺動可能な可動部と、前記可動部で打撃される鍔部と、を有し、前記可動部で前記鍔部を打撃することで前記引抜力を発生させる、ことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る引抜工具は、前記第二保持部は、筒状であり、内周側面に前記アンカーボルト本体に螺合するボルト保持用ねじが形成された、ことを特徴とする。
【0023】
本発明に係る引抜工具は、前記可動部は、前記軸部が通された筒状であり、作業者が把持可能なグリップ部と、前記グリップ部に連接されて、前記グリップ部よりも外径が大きいハンマー部と、を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る引抜工具は、芯棒打込式アンカーボルトを引き抜くための引抜工具であって、芯棒打込式アンカーボルトの芯棒を保持する第一保持部と、第一保持部が連結され、芯棒を引き抜く引抜力を、第一保持部を介して芯棒に伝達するシャフト部と、を備えている。そして、シャフト部は、第一保持部が連結可能な連結部と、連結部に連接される軸部と、軸部に沿って摺動可能な可動部と、可動部で打撃される鍔部と、を有しており、可動部で鍔部を打撃することで引抜力を発生させる。そのため、可動部による鍔部の打撃のみで引抜力を発生させることができるので、スパナ又はレンチ等の締結工具を用いる必要がなく、芯棒打込式アンカーボルトの芯棒を容易に引き抜くことができる。また、芯棒の引き抜きに際し、締結工具を用いた回転作業が不要であるため、芯棒打込式アンカーボルトを迅速に引き抜くことができる。
【0025】
また、本発明に係る引抜工具は、第一保持部が、一端側が連結部に連結されると共に、他端から一端側に向けて嵌合穴が設けられた筒状の本体部材と、他端側から嵌合穴に嵌め込まれる把持部材と、他端側の外周側面に螺合され、把持部材を一端側に押し込んで嵌合穴に嵌合させる筒状の押込部材と、を備えている。そして、把持部材は、一端側に配置される基部と、基部から他端側に向けて設けられた複数の爪片と、を有しており、嵌合穴に嵌合させることで、爪片の先端部が窄まって芯棒の頭部を把持する。そのため、把持部材を嵌合穴に嵌合させるだけで、芯棒打込式アンカーボルトの芯棒を確実に保持することができる。
【0026】
さらに、本発明に係る引抜工具は、把持部材が、筒状であり、基部から先端部にかけて外径が大きくなる逆テーパー状に形成されている。また、嵌合穴が、把持部材の最大外径よりも小さく形成されている。そのため、把持部材を嵌合穴に嵌め込むだけで、先端部が窄まり、芯棒打込式アンカーボルトの芯棒を保持することができる。
【0027】
さらに、本発明に係る引抜工具は、芯棒打込式アンカーボルトを引き抜くための引抜工具であって、芯棒打込式アンカーボルトのアンカーボルト本体を保持する第二保持部と、第二保持部が連結され、アンカーボルト本体を引き抜く引抜力を、第二保持部を介してアンカーボルト本体に伝達するシャフト部と、を備えている。そして、シャフト部は、第二保持部が連結可能な連結部と、連結部に連接される軸部と、軸部に沿って摺動可能な可動部と、可動部で打撃される鍔部と、を有しており、可動部で鍔部を打撃することで引抜力を発生させる。そのため、可動部による鍔部の打撃のみで引抜力を発生させることができるので、締結工具を用いる必要がなく、芯棒打込式アンカーボルトのボルトを容易に引き抜くことができる。また、ボルトの引き抜きに際し、締結工具を用いた回転作業が不要であるため、芯棒打込式アンカーボルトを迅速に引き抜くことができる。
【0028】
また、本発明に係る引抜工具は、第二保持部が、筒状であり、内周側面にアンカーボルト本体に螺合する雌ねじであるボルト保持用ねじが形成されている。そのため、芯棒打込式アンカーボルトのアンカーボルト本体を確実に保持することができる。
【0029】
また、本発明に係る引抜工具は、可動部が、軸部が通された筒状であり、作業者が把持可能なグリップ部と、このグリップ部に連接されて、グリップ部よりも外径が大きいハンマー部と、を有している。そのため、作業者が本発明に係る引抜工具を用いて芯棒打込式アンカーボルトの芯棒またはアンカーボルト本体を引き抜く際には、グリップ部を把持した状態で、ハンマー部により鍔部を打撃することができる。すなわち、鍔部を確実に、かつ、強く打撃することができる。また、打撃の際にはハンマー部の重量が加わることで、ハンマー部が設けられていない場合と比較して、より強く鍔部を打撃することができる。したがって、ハンマー部が設けられていない場合と比較して、より大きい引抜力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る第一の実施形態の引抜工具の全体像を示す正面図である。
図2】本発明に係る第一の実施形態及び第二の実施形態の引抜工具を用いて芯棒打込式アンカーボルトを引き抜く手順が示されており、(a)は、芯棒打込式アンカーボルトの上部に上方から第一の実施形態の引抜工具を被せた状態を示す図、(b)は、第一の実施形態の引抜工具により芯棒打込式アンカーボルトの芯棒の頭部を保持した状態を示す断面図、(c)は、第一の実施形態の引抜工具により芯棒打込式アンカーボルトの芯棒を引き抜いた状態を示す断面図、(d)は、第二の実施形態の引抜工具により芯棒打込式アンカーボルトのアンカーボルト本体を保持した状態を示す断面図、(e)は、第二の実施形態の引抜工具により芯棒打込式アンカーボルトのアンカーボルト本体を引き抜いた状態を示す断面図である。
図3】本発明に係る第一の実施形態の引抜工具及び第二の実施形態の引抜工具におけるシャフト部を示す正面図である。
図4】本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部を示す正面図である。
図5】本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部を示す断面図である。
図6】本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部の本体部材を示す平面図である。
図7】本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部の本体部材を示す正面図である。
図8】本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部の本体部材を右方から見た状態を示す側面図である。
図9図6のIX-IX線断面図であって、本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部の本体部材を示す断面図である。
図10】本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部の把持部材を、右上方から見た状態を示す斜視図である。
図11】本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部の把持部材を、正面上方から見た状態を示す斜視図である。
図12】本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部の把持部材を示す平面図である。
図13】本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部の把持部材を示す正面図である。
図14図12のXIV-XIV線断面図であって、本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部の把持部材を示す断面図である。
図15図12のXV-XV線断面図であって、本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部の把持部材を示す断面図である。
図16】本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部の押込部材を示す平面図である。
図17】本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部の押込部材を示す正面図である。
図18図16のXVIII-XVIII線断面図であって、本発明に係る第一の実施形態の引抜工具における第一保持部の押込部材を示す断面図である。
図19】本発明に係る第二の実施形態の引抜工具における第二保持部を示す平面図である。
図20】本発明に係る第二の実施形態の引抜工具における第二保持部を示す正面図である。
図21図19のXXI-XXI線断面図であって、本発明に係る第二の実施形態の引抜工具における第二保持部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る第一の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る第一の実施形態である引抜工具1の全体像を示す正面図である。なお、以下の説明において、便宜上、X方向を左右方向、Y方向を上下方向、そしてZ方向を前後方向として説明する。
【0032】
引抜工具1は、金属製であり、芯棒打込式アンカーボルト100の芯棒101(図2(b)参照)を引き抜くために用いられるものである。引抜工具1は、芯棒101を引き抜く引抜力を発生させるシャフト部10と、このシャフト部10に連結される第一保持部20と、を備えている(図1参照)。
【0033】
シャフト部10は、図1及び図3に示すように、上下方向を軸方向とした円柱状の軸部11と、この軸部11が通されて、上下方向に摺動が可能な可動部12と、を備えている。さらに、シャフト部10は、軸部11の上端に設けられて可動部12による打撃を受け止める鍔部13と、軸部11の下端に形成され、第一保持部20が連結される連結部14と、を備えている。
【0034】
軸部11は、上下方向を軸方向とする円柱状の軸部材である。軸部11は、上端の外周側面及び下端の外周側面に雄ねじが形成されている。上端の雄ねじは、上端ねじ11Aであり、鍔部13が固定されている。また、下端の雄ねじである下端ねじ11Bは、第一保持部20が連結される連結部14である。
【0035】
可動部12は、上下方向を軸方向とする円筒状であり、中心には可動部12を貫通する円孔である可動部軸孔12Aが形成されている。この可動部軸孔12Aは、その内径が軸部11の外径よりもわずかに大きく形成されており、軸部11が通されている。そのため、可動部12は、シャフト部10における鍔部13と連結部14との間において、摺動が可能である。
【0036】
また、可動部12は、外径が異なる3つの部位から構成されている。具体的には、可動部12は、上部に設けられた外径が大きいハンマー部12Bと、このハンマー部12Bの下端に連接され、下方に向けて外径が窄められた連接部12Cと、この連接部12Cの下端に連接され、ハンマー部12Bと比較して外径が小さいグリップ部12Dと、から構成されている。
【0037】
ハンマー部12Bは、鍔部13を打撃するための部位であり、外径と内径との間の差が大きく、厚みをもって形成されている。また、連接部12Cは、外径が異なるハンマー部12Bとグリップ部12Dとを滑らかに連接するための部位であり、上部から下部にかけて、逆テーパー状にR加工が施されている。そして、グリップ部12Dは、作業者が引抜工具1を使用する際に把持する部位であり、外径と内径との差が小さく、ハンマー部12Bと比較して厚みが薄く形成されている。なお、ハンマー部12Bの上端には、平面に形成された打撃面12Eが設けられている。この打撃面12Eは、後述する鍔部13の打撃受け面13Dに対向して設けられている。
【0038】
鍔部13は、上下方向を軸方向とする円筒状であり、中心には鍔部13を貫通する円孔である鍔部軸孔13Aが形成されている。この鍔部軸孔13Aの内周側面には、軸部11の上端ねじ11Aに螺合する雌ねじである固定ねじ13Bが形成されている。鍔部13は、鍔部軸孔13Aの下方から、軸部11の上端が差し込まれて、固定ねじ13Bに上端ねじ11Aを螺合させることで、軸部11の上端に固定されている。
【0039】
また、鍔部13は、鍔部13の下端において、可動部12のハンマー部12Bによる打撃を受け止めるために、打撃受け部13Cが設けられている。打撃受け部13Cは、鍔部13の下端から周囲に向けて放射状に広がる環状のフランジであり、上下方向に厚みをもたせて形成されている。打撃受け部13Cは、ハンマー部12Bと同一の外径に形成されている。さらに、打撃受け部13Cは、その下端が平面に形成されており、ハンマー部12Bの打撃面12Eに対向する打撃受け面13Dが設けられている。
【0040】
続けて、第一保持部20について説明する。
なお、以下の説明において、第一保持部20における本体部材30の「一端」とは上端を意味し、本体部材30の「他端」とは下端を意味する。
【0041】
第一保持部20は、図4及び図5に示すように、3つの部材から構成されている。具体的には、シャフト部10に連結される本体部材30と、この本体部材30に設けられた嵌合穴31に嵌め込まれる把持部材40と、本体部材30に連結されて、把持部材40を押し込んで嵌合穴31に嵌合させる押込部材50と、から構成されている。
【0042】
本体部材30は、図6図7図8及び図9に示すように、上下方向を軸方向とする円筒状であり、中心には本体部材30を貫通する円孔である本体部材軸孔30Aが設けられている。本体部材軸孔30Aは、2つの役割を果たす孔から構成されており、本体部材軸孔30Aの上側は、連結部14に連結される第一連結孔30Bであり、本体部材軸孔30Aの下側は、把持部材40が嵌め込まれる嵌合穴31である。
【0043】
第一連結孔30Bは、本体部材30の一端から下方に向けて、本体部材30の中央のやや下側まで形成されている。第一連結孔30Bは、その内径がシャフト部10の連結部14の外径よりもわずかに大きく形成されている。また、第一連結孔30Bの内周側面には、連結部14に螺合する雌ねじである第一連結ねじ30Cが形成されている。そのため、本体部材30は、本体部材30の一端側から第一連結孔30Bに連結部14が差し込まれて、第一連結ねじ30Cと連結部14とを螺合させることで、シャフト部10に連結することができる。
【0044】
嵌合穴31は、第一連結孔30Bの下端に連接されており、本体部材30の中央のやや下側から、本体部材30の他端まで形成されている。この嵌合穴31は、形状の異なる2つの孔から構成されており、具体的には、第一連結孔30Bの下端に連接された円柱状の孔である円柱孔31Aと、この円柱孔31Aの下端に連接され、本体部材30の他端にかけて内径が大きくなるように形成された円錐台形状の孔である嵌合孔31Bと、から構成される。すなわち、嵌合穴31は、本体部材30の他端側を開口させた漏斗状の孔として形成されている。なお、嵌合孔31Bの最大内径は、後述する把持部材40の爪部40Bの最大外径よりも小さくなるように形成されている。
【0045】
また、本体部材30の一端側の外周側面には、左右方向の端部が平面に形成された締結工具用平面30Dが設けられている。この締結工具用平面30Dは、本体部材30を連結部14に連結する際に、スパナ又はレンチ等の締結工具(図示省略)を嵌めるために設けられている。さらに、本体部材30の他端側の外周側面には、雄ねじである外周ねじ30Eが形成されている。この外周ねじ30Eには、後述する押込部材50の押込ねじ50Bが螺合される。
【0046】
把持部材40は、図10図11図12図13図14及び図15に示すように、上下方向を軸方向とする円筒状であり、嵌合穴31に嵌め込み可能に形成されている。具体的には、把持部材40は、上部に形成された円筒状の基部40Aと、この基部40Aの下端から下方にかけて、逆テーパー状に、外径が大きくなるように形成された円錐台形状の爪部40Bと、から構成されている。なお、把持部材40は、基部40Aが本体部材30の一端側に配置され、本体部材30の他端側から一端側に向けて押し込まれることで、嵌合穴31に嵌合する(図5参照)。
【0047】
また、基部40Aは、その外径が、嵌合穴31の円柱孔31Aの内径よりも、わずかに小さく形成されている。そのため、把持部材40が嵌合穴31に嵌め込まれる際には、基部40Aが円柱孔31Aに収まるように形成されている(図5参照)。
【0048】
爪部40Bは、把持部材40が嵌合穴31に嵌め込まれる際に、その円錐台形状が嵌合孔31Bに押し込まれる。具体的には、爪部40Bは、その周囲の4箇所に等間隔で、すり割り40Cが設けられている(図12参照)。このすり割り40Cは、基部40Aの下端から爪部40Bの下端にかけて設けられており、爪部40Bを4分割にしている。この4分割された爪部40Bは、4本の爪片40Dとなり、把持部材40が嵌合穴31に嵌め込まれる際に、先端である先端部40Eが、軸心側に窄むように形成されている。
【0049】
また、爪部40Bの最大外径、すなわち、4本の爪片40Dからなる円錐台形状の最大外径は、嵌合孔31Bの最大内径よりも大きく形成されている(図5参照)。そのため、把持部材40が嵌合穴31に嵌め込まれる際には、爪部40Bが嵌合孔31Bに押し込まれて、4本の爪片40Dの先端部40Eが軸心側に窄むことで、爪部40Bが嵌合孔31Bに嵌合する。
【0050】
さらに、爪片40Dでは、先端部40Eにおいて、その内周側面に軸心方向に向けて突出する突起片40Fが形成されている。第一保持部20では、この突起片40Fにより、芯棒打込式アンカーボルト100の芯棒101が把持される(図2(b)参照)。具体的には、突起片40Fが芯棒101の芯棒本体101Aの上端に食い込むことで、芯棒101の頭部101Bを把持することができる。なお、先端部40Eの下端は、把持部材40の軸心に対して垂直な平面として形成されており、後述する押込部材50の環状押込片50Cに当接する当接面40Gが設けられている。
【0051】
また、すり割り40Cの基部40A側における端部である基端部40Hは、円孔状に加工が施されている。すなわち、すり割り40Cは、側面視した場合に、円孔状である基端部40Hから、一本の直線状の溝が下方に向けて突出する柄杓状に形成されている(図10及び図15参照)。これにより、基端部40Hが円孔状でない場合と比較して、爪片40Dに力が加えられた場合に、基端部40Hにかかる力を分散することができる。そのため、爪片40Dの欠けや折れ曲がり等の欠損を防ぐことができる。
【0052】
押込部材50は、図16図17及び図18に示すように、上下方向を軸方向とする円柱状であり、中心には押込部材50を貫通する円孔である押込部材軸孔50Aが設けられている。押込部材軸孔50Aの内径は、本体部材30の外径よりもわずかに大きく形成されている。また、押込部材軸孔50Aの内周側面には、外周ねじ30Eに螺合する雌ねじである押込ねじ50Bが形成されている。そのため、この押込ねじ50Bと外周ねじ30Eとを螺合させることで、押込部材50を本体部材30の他端側に連結することができる。
【0053】
また、押込部材50は、その下端において、押込部材軸孔50Aを塞ぐようにして、押込部材50の軸心に対して垂直な環状押込片50Cが設けられている。この環状押込片50Cは、把持部材40が本体部材30の嵌合穴31に差し込まれて、その上から押込部材50が本体部材30の他端側に連結されたときに、把持部材40の先端部40Eにおける当接面40Gに対向して、当接面40Gに当接するように形成されている。そのため、把持部材40を嵌合穴31に嵌合させる際には、環状押込片50Cと当接面40Gとを当接させた状態で、押込部材50を本体部材30の一端側に向けて締め込むことで、把持部材40が、本体部材30の一端側に押し込まれて、嵌合穴31に嵌合する。
【0054】
なお、環状押込片50Cは、その中心に円孔であるボルト挿通孔50Dが形成されており、芯棒打込式アンカーボルト100のアンカーボルト本体102が挿通可能に形成されている(図2(b)参照)。また、ボルト挿通孔50Dは、窄まった状態の爪部40Bの外径よりも小さく形成されているため、把持部材40が挿通することはない。
【0055】
また、押込部材50は、その上部において前後方向及び左右方向の端部が平面に形成された締結工具用平面50Eが設けられている。この締結工具用平面50Eは、押込部材50を本体部材30に連結する際に、締結工具を嵌めるために設けられている。
【0056】
以上、引抜工具1の構成について説明した。
続けて、本発明に係る第二の実施形態について図面を用いて説明する。
【0057】
図19図20及び図21は、それぞれ本発明に係る第二の実施形態である引抜工具2における第二保持部60を示す平面図、正面図及び断面図である。引抜工具2は、引抜工具1と同様に、シャフト部10を備えており、このシャフト部10の連結部14に、引抜工具1の第一保持部20に代えて、この第二保持部60が連結される。そのため、以下では、引抜工具1とは異なる構成である第二保持部60について説明する。
【0058】
第二保持部60は、金属製であり、シャフト部10に連結されて、芯棒打込式アンカーボルト100のアンカーボルト本体102(図2(d)参照)を引き抜くために用いられるものである。第二保持部60は、上下方向を軸方向とする円筒状の部材であり、中心には第二保持部60を貫通する中心孔である第二保持部軸孔60Aが設けられている。なお、第二保持部60の上端側の外周側面には、左右方向の端部が平面に形成された締結工具用平面60Bが設けられている。この締結工具用平面60Bは、第二保持部60を連結部14に連結する際に、締結工具を嵌めるために設けられている。
【0059】
第二保持部軸孔60Aは、2つの役割を果たす孔から構成されている。第二保持部軸孔60Aの上側は、連結部14に連結される第二連結孔60Cであり、第二保持部軸孔60Aの下側は、芯棒打込式アンカーボルト100のアンカーボルト本体102を保持するボルト孔60Dである。
【0060】
第二連結孔60Cは、第二保持部60の上端から下方に向けて、第二保持部60の中央のやや下側まで形成されている。第二連結孔60Cは、その内径がシャフト部10の連結部14の外径よりもわずかに大きく形成されている。また、第二連結孔60Cの内周側面には、連結部14に螺合する雌ねじである第二連結ねじ60Eが形成されている。そのため、第二保持部60は、第二連結孔60Cの上方から連結部14が差し込まれて、第二連結ねじ60Eと連結部14とを螺合させることで、シャフト部10に連結することができる。
【0061】
ボルト孔60Dは、第二連結孔60Cの下端に連接されており、第二保持部60の中央のやや下側から第二保持部60の下端まで形成されている。このボルト孔60Dは、芯棒打込式アンカーボルト100のアンカーボルト本体102の外径よりもわずかに大きく形成されている。また、ボルト孔60Dの内周側面には、アンカーボルト本体102のボルトねじ102B(図2(d)参照)に螺合する雌ねじであるボルト保持用ねじ60Fが形成されている。そのため、このボルト保持用ねじ60Fにボルトねじ102Bを螺合させることで、第二保持部60は、アンカーボルト本体102を確実に保持することができる。
【0062】
以上、引抜工具2の構成について説明した。
続けて、本発明に係る引抜工具1および引抜工具2を用いて引き抜かれる芯棒打込式アンカーボルト100の構成について、図2(a)及び(b)を用いて説明する。
【0063】
図2(a)は、芯棒打込式アンカーボルト100の上方から、引抜工具1の第一保持部20を被せた状態を示している。また、図2(b)は、図2(a)の状態における芯棒打込式アンカーボルト100及び第一保持部20を上下方向に沿って切断した状態を示す断面図である。
【0064】
芯棒打込式アンカーボルト100は、芯棒101と、アンカーボルト本体102と、ナット103と、を備えている(図2(b)参照)。
【0065】
芯棒101は、上下方向に伸びた釘状の部材であり、棒状の芯棒本体101Aと、芯棒本体101Aの上端に設けられた頭部101Bと、を有している。芯棒101は、頭部101B以外が、アンカーボルト本体102の上方から、アンカーボルト本体102を貫通する貫通孔102Aに挿入される。
【0066】
アンカーボルト本体102は、上下方向を軸方向とする円筒状の部材であり、中心に貫通孔102Aが形成されている。アンカーボルト本体102は、上部の外周側面において、ナット103が螺合される雄ねじであるボルトねじ102Bが形成されている。また、アンカーボルト本体102は、下端部である下端部102Cにおいて、拡張用すり割り102Dが形成されている(図2(a)参照)。この拡張用すり割り102Dが設けられた部分は、貫通孔102Aに芯棒101が打ち込まれることで、芯棒101から離れる方向に向かって放射状に拡がる拡張片102Eとなっている(図2(b)参照)。この拡張片102Eがコンクリートに食い込むことにより、芯棒打込式アンカーボルト100は、穿孔内に堅固に固定される。
【0067】
ナット103は、上下方向を軸方向とする円筒状の部材であり、その内周側面には、アンカーボルト本体102のボルトねじ102Bに螺合する雌ねじであるナットねじ103Aが形成されている。
【0068】
以上、芯棒打込式アンカーボルト100の構成について説明した。
次に、引抜工具1及び引抜工具2を用いて芯棒打込式アンカーボルト100を引き抜く手順について、図2(a)ないし図2(e)を用いて説明する。
【0069】
まず、第一保持部20において、把持部材40を、基部40A側から本体部材30の嵌合穴31に差し込み、その上から、押込部材50を本体部材30の他端側に軽く螺合させて、第一保持部20を組み立てる(図示省略)。この状態の第一保持部20を、図2(a)及び図2(b)に示すように、穿孔(P)外に露出している芯棒打込式アンカーボルト100のアンカーボルト本体102の上部に被せる。このとき、押込部材50のボルト挿通孔50Dに芯棒打込式アンカーボルト100のアンカーボルト本体102の上部を通し、さらに、把持部材40の爪片40Dにおける突起片40F間に、芯棒101の頭部101Bが差し込まれた状態とする。
【0070】
次に、突起片40F間に頭部101Bが差し込まれた状態で、押込部材50を締め込み、押込部材50を本体部材30の一端側に進める。そうすると、把持部材40は、本体部材30の一端側に向けて、爪部40Bを窄ませながら、爪部40Bが嵌合孔31Bに押し込まれて、嵌合穴31に嵌合される。最終的には、嵌合穴31に嵌合された把持部材40において、爪片40Dの先端部40Eが窄んだ状態となり、突起片40Fが、頭部101Bの下端とアンカーボルト本体102の上端との間に入り込む。そして、突起片40Fが、芯棒本体101Aの上端に食い込むことで、頭部101Bが、先端部40Eにより把持される(図2(b)参照)。なお、押込部材50を締め込む際には、締結工具を用いて押込部材50の外周側面を把持して締め込んでもよい。
【0071】
次に、頭部101Bが先端部40Eにより把持された状態で、第一保持部20にシャフト部10を連結する(図2(c)参照)。具体的には、第一保持部20における本体部材30の第一連結孔30Bに、シャフト部10の連結部14を差し込み、連結部14を第一連結ねじ30Cに螺合させる。
【0072】
続けて、連結部14に第一保持部20が連結された状態で、グリップ部12Dを把持して、可動部12を摺動させる(図示省略)。このとき、可動部12は、芯棒101に接近させた状態から、芯棒101を引き抜く方向(図2(c)における矢印Wで示す方向)に勢いをつけて、摺動させる。このようにすることで、ハンマー部12Bによって鍔部13が強く打撃され、芯棒101を引き抜く引抜力を発生させることができる。
【0073】
その際、シャフト部10では、鍔部13が打撃されて発生する引抜力が、軸部11を介して、第一保持部20に伝わる。さらに、その引抜力は、第一保持部20を介して、芯棒101に伝わる。これにより、芯棒101を、アンカーボルト本体102から離間させることができる(図2(c)参照。)。なお、一度で芯棒101が離間しない場合には、複数回にわたって、ハンマー部12Bにより鍔部13を打撃する。
【0074】
その後、芯棒101を離間させて拡張片102Eを拡げる付勢力がなくなったアンカーボルト本体102は、比較的容易に穿孔(P)から引き抜くことができる。さらに、以下の手順により、引抜工具2を用いてアンカーボルト本体102を引き抜く。
【0075】
まず、図2(d)に示すように、芯棒101を離間させたアンカーボルト本体102に対して、第二保持部60を被せて、アンカーボルト本体102を保持する。具体的には、第二保持部60のボルト孔60Dに、アンカーボルト本体102を差し込み、ボルト保持用ねじ60Fに、アンカーボルト本体102のボルトねじ102Bを螺合させる。これにより、第二保持部60で、アンカーボルト本体102を、確実に保持することができる。なお、予めボルトねじ102Bに螺合されたナット103は、アンカーボルト本体102から取り外しておくことが好ましい。
【0076】
次に、図2(e)に示すように、第一保持部20を取り外したシャフト部10を、第二保持部60に連結する。具体的には、シャフト部10の連結部14を、第二保持部60の第二連結孔60Cに差し込み、連結部14を第二連結ねじ60Eに螺合させる。
【0077】
続けて、第二保持部60にシャフト部10が連結された状態で、芯棒101を離間させたときと同様に、可動部12を摺動させて、ハンマー部12Bにより、鍔部13を打撃する(図示省略)。これにより、アンカーボルト本体102を引き抜く引抜力が、軸部11及び第二保持部60を介して、アンカーボルト本体102に伝わり、穿孔(P)からアンカーボルト本体102を引き抜くことができる(図2(e)参照。)。
【0078】
なお、穿孔(P)内への固定が不安定であり、芯棒101を離間させることなく、芯棒打込式アンカーボルト100を引き抜くことができるような場合には、引抜工具1を用いることなく、引抜工具2を用いて、芯棒101が打ち込まれたままの芯棒打込式アンカーボルト100を引き抜くことも可能である。
【0079】
以上、芯棒打込式アンカーボルト100を引き抜く手順について説明した。
次に、引抜工具1及び引抜工具2の効果について説明する。
【0080】
引抜工具1は、第一保持部20で芯棒101を保持した状態において、可動部12により鍔部13を打撃するだけで、芯棒101を引き抜くことができる。したがって、締結工具を用いる必要がなく、芯棒101を容易に引き抜くことができる。また、芯棒101の引き抜きの際に、締結工具を用いた回転作業が不要であるため、芯棒打込式アンカーボルト100を迅速に引き抜くことができる。
【0081】
また、引抜工具1の第一保持部20は、把持部材40を嵌合穴31に嵌合させることで、爪片40Dの先端部40Eが窄まり、先端部40Eの突起片40Fで、芯棒101の頭部101Bを把持することができる(図2(b)参照)。また、把持部材40を嵌合穴31に嵌合させる際には、押込部材50を本体部材30の一端側に締め込むことで、把持部材40を嵌合穴31に嵌合させることができる。そのため、把持部材40を容易に嵌合穴31に嵌合させることができると共に、芯棒101を確実に保持することができる。
【0082】
さらに、引抜工具1の把持部材40は、基部40Aから先端部40Eにかけて外径が大きくなる逆テーパー状に形成されており、また、嵌合穴31が、把持部材40の最大外径よりも小さく形成されている。そのため、把持部材40を嵌合穴31に嵌め込むだけで、爪片40Dの先端部40Eが窄まり、芯棒101を保持することができる。
【0083】
また、引抜工具2は、第一保持部20に代えて、シャフト部10に連結される第二保持部60を備えている。そのため、芯棒101を離間させたアンカーボルト本体102を第二保持部60で保持した状態で、可動部12により鍔部13を打撃するだけで、アンカーボルト本体102を引き抜くことができる。したがって、締結工具を用いる必要がなく、アンカーボルト本体102を容易に引き抜くことができる。また、アンカーボルト本体102の引き抜きの際に、締結工具を用いた回転作業が不要であるため、芯棒打込式アンカーボルト100を迅速に引き抜くことができる。
【0084】
また、引抜工具2の第二保持部60は、その内周側面にアンカーボルト本体102のボルトねじ102Bに螺合するボルト保持用ねじ60Fが形成されている。そのため、アンカーボルト本体102を容易に、かつ、確実に保持することができる。
【0085】
また、引抜工具1及び引抜工具2は、可動部12が、作業者が把持可能なグリップ部12Dと、グリップ部12Dよりも外径が大きいハンマー部12Bと、を有している。そのため、作業者は芯棒101またはアンカーボルト本体102を引き抜く際に、グリップ部12Dを把持して、ハンマー部12Bにより鍔部13を打撃することができる。すなわち、鍔部13を確実に、かつ、強く打撃することができる。
【0086】
また、打撃の際にはハンマー部12Bの重量が加わることで、ハンマー部12Bが設けられていない場合と比較して、より強く鍔部13を打撃することができる。したがって、ハンマー部12Bが設けられていない場合と比較して、より大きい引抜力を発生させることができる。さらに、グリップ部12Dよりも外径が大きいハンマー部12Bが設けられていることで、鍔部13を打撃する際に、グリップ部12Dを把持する作業者の手が、打撃面12Eと打撃受け面13Dとの間に挟まれることがなく、事故を未然に防ぐことができる。
【0087】
以上の通り、本発明に係る実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0088】
例えば、本実施形態では、第一保持部20を備えた引抜工具1及び第二保持部60を備えた引抜工具2を示したが、第一保持部及び第二保持部の両方を備えた引抜工具としてもよい。その際には、軸部における一方の端部に第一保持部を備え、さらに、軸部における他方の端部に第二保持部を備えると共に、可動部を挟むようにして二つの鍔部を設けて、いずれの鍔部においても可動部によって打撃が可能に構成されたものであってもよい。
【0089】
また、本実施形態では、軸部11が中心に通された可動部12と、軸部11に固定された鍔部13とを備えた構成を示したが、鍔部を可動部で正確に打撃することができる構成であれば、軸部、可動部及び鍔部は、別々に設けられていてもよい。
【0090】
さらに、本実施形態では、把持部材40が円錐台形状に形成された爪部40Bを有し、嵌合穴31が円錐台形状の嵌合孔31Bを有する構成を示したが、把持部材が嵌合穴に嵌め込まれる際に、把持部材の先端部が窄まって芯棒を把持することができる構成であればよく、例えば、トング型の把持部材と、テーパー状に窄まる内壁を有する嵌合穴とから構成されるものであってもよい。
【0091】
また、本実施形態では、把持部材40における先端部40Eの突起片40Fを、芯棒本体101Aの上端に食い込ませることで、芯棒101の頭部101Bを保持する構成を示したが、芯棒101を確実に保持することができる構成であれば、例えば、ペンチ等の工具のように、把持部材の先端部によって、頭部101Bを挟んで保持する構成であってもよい。
【0092】
さらに、本実施形態では、第二保持部60の内周側面にボルト保持用ねじ60Fが形成された構成を示したが、アンカーボルト本体102を保持することができる構成であれば、例えば、第一保持部20のように、爪片でアンカーボルト本体102を把持するものであってもよい。
【0093】
また、本実施形態では、可動部12にハンマー部12Bとグリップ部12Dとが設けられた構成を示したが、可動部は鍔部を打撃できる構成であれば、その形状は任意である。例えば、可動部が円筒状の部材であり、その円筒状の部材から突出して作業者が把持可能なハンドル部が設けられた構成等であってもよい。
【0094】
さらに、本実施形態では、すり割り40Cが4箇所に設けられ、爪片40Dが4つ形成された構成を示したが、すり割り及び爪片の数は、任意である。
【符号の説明】
【0095】
1 引抜工具
2 引抜工具
10 シャフト部
11 軸部
11A 上端ねじ
11B 下端ねじ
12 可動部
12A 可動部軸孔
12B ハンマー部
12C 連接部
12D グリップ部
12E 打撃面
13 鍔部
13A 鍔部軸孔
13B 固定ねじ
13C 打撃受け部
13D 打撃受け面
14 連結部
20 第一保持部
30 本体部材
30A 本体部材軸孔
30B 第一連結孔
30C 第一連結ねじ
30D 締結工具用平面
30E 外周ねじ
31 嵌合穴
31A 円柱孔
31B 嵌合孔
40 把持部材
40A 基部
40B 爪部
40C すり割り
40D 爪片
40E 先端部
40F 突起片
40G 当接面
40H 基端部
50 押込部材
50A 押込部材軸孔
50B 押込ねじ
50C 環状押込片
50D ボルト挿通孔
50E 締結工具用平面
60 第二保持部
60A 第二保持部軸孔
60B 締結工具用平面
60C 第二連結孔
60D ボルト孔
60E 第二連結ねじ
60F ボルト保持用ねじ
100 芯棒打込式アンカーボルト
101 芯棒
101A 芯棒本体
101B 頭部
102 アンカーボルト本体
102A 貫通孔
102B ボルトねじ
102C 下端部
102D 拡張用すり割り
102E 拡張片
103 ナット
103A ナットねじ
P 穿孔
W 引き抜く方向
X 左右方向
Y 上下方向
Z 前後方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2021-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯棒打込式アンカーボルトを引き抜くための引抜工具であって、
前記芯棒打込式アンカーボルトの芯棒を保持する第一保持部と、前記第一保持部が連結され、前記芯棒を引き抜く引抜力を、前記第一保持部を介して前記芯棒に伝達するシャフト部と、を備え、
前記第一保持部は、嵌合穴が設けられた本体部材と、前記嵌合穴に嵌合されることで窄まって前記芯棒を把持する把持部材と、を有し、
前記シャフト部は、前記第一保持部が連結可能な連結部と、前記連結部に連接される軸部と、前記軸部に沿って摺動可能な可動部と、前記可動部で打撃される鍔部と、を有し、
作業者により前記可動部で前記鍔部打撃されることで前記引抜力発生して前記芯棒が引き抜かれる、
ことを特徴とする引抜工具。
【請求項2】
前記第一保持部は、一端側が前記連結部に連結されると共に、他端から前記一端側に向けて前記嵌合穴が設けられた筒状の前記本体部材と、前記他端側から前記嵌合穴に嵌め込まれる前記把持部材と、前記他端側の外周側面に螺合され、前記把持部材を前記一端側に押し込んで前記嵌合穴に嵌合させる筒状の押込部材と、を備え、
前記把持部材は、前記一端側に配置される基部と、前記基部から前記他端側に向けて設けられた複数の爪片と、を有し、前記嵌合穴に嵌合させることで、前記爪片の先端部が窄まって前記芯棒の頭部を把持する、
ことを特徴とする請求項1に記載された引抜工具。
【請求項3】
前記把持部材は、筒状であり、前記基部から前記先端部にかけて外径が大きくなる逆テーパー状に形成されており、
前記嵌合穴は、前記把持部材の最大外径よりも小さく形成された、
ことを特徴とする請求項2に記載された引抜工具。
【請求項4】
芯棒打込式アンカーボルトを引き抜くための引抜工具であって、
前記芯棒打込式アンカーボルトのアンカーボルト本体を保持する第二保持部と、前記第二保持部が連結され、前記アンカーボルト本体を引き抜く引抜力を、前記第二保持部を介して前記アンカーボルト本体に伝達するシャフト部と、を備え、
前記第二保持部は、筒状であり、内周側面に前記アンカーボルト本体に螺合するボルト保持用ねじが形成され、
前記シャフト部は、前記第二保持部が連結可能な連結部と、前記連結部に連接される軸部と、前記軸部に沿って摺動可能な可動部と、前記可動部で打撃される鍔部と、有し、
作業者により前記可動部で前記鍔部打撃されることで前記引抜力発生して前記アンカーボルト本体が引き抜かれる、
ことを特徴とする引抜工具。
【請求項5】
前記可動部は、前記軸部が通された筒状であり、作業者が把持可能なグリップ部と、前記グリップ部に連接されて、前記グリップ部よりも外径が大きいハンマー部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された引抜工具。