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  • 特開-撮像装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162708
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/50 20230101AFI20231101BHJP
   H04N 23/745 20230101ALI20231101BHJP
【FI】
H04N5/225 100
H04N5/235 700
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073270
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】安田 隆幸
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122DA03
5C122EA12
5C122EA13
5C122FC07
5C122HB01
5C122HB02
(57)【要約】
【課題】 画像データの伝送のために使用する伝送路の数を変更してもローリング歪みの急峻な変化を低減することを可能にする。
【解決手段】 動画記録待機時に、本画像データと副画像データをそれぞれ複数の伝送路における異なる伝送路に振り分けて信号処理部に並行して伝送し、動画記録時に、本画像データと副画像データを複数の伝送路における同じ伝送路を介して信号処理部に時分割で伝送するように切り替える切り替え、動画記録待機時と動画記録時とを切り替える際に、本画像データを信号処理部に伝送する際に用いる伝送路の数と、副画像データを信号処理部に伝送する際に用いる伝送路の数をそれぞれ変更する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、信号処理部と、前記撮像素子から読み出した画像データを前記信号処理部に伝送する複数の伝送路とを有する撮像装置であって、
前記撮像素子から取得した本画像データと副画像データを前記複数の伝送路に振り分ける振り分け部と、
動画記録待機時に、前記本画像データと前記副画像データをそれぞれ前記複数の伝送路における異なる伝送路に振り分けて前記信号処理部に並行して伝送し、前記動画記録時に、前記本画像データと前記副画像データを前記複数の伝送路における同じ伝送路を介して前記信号処理部に時分割で伝送するように切り替える切り替え部と、を有し、
前記切り替え部は、前記動画記録待機時と前記動画記録時とを切り替える際に、前記本画像データを前記信号処理部に伝送する際に用いる伝送路の数と、前記副画像データを前記信号処理部に伝送する際に用いる伝送路の数をそれぞれ少しずつ変更することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記本画像データは、ライブビューや動画記録に用いられることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記副画像データは、フリッカ検出に用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置内の撮像素子と画像処理部との伝送路のレーン数を、画質及び、消費電力の両方の観点から制御する技術があった。例えば、特許文献1では、撮像素子内で撮像した画像データを撮像素子内で圧縮する場合に、その圧縮率に従って伝送路のレーン数を可変に制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-136603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、画像データの圧縮率に応じて使用する伝送路数が決定される。そのため、圧縮率が大幅に変更された場合に、それに伴って伝送路数も変化する。そして、画像データの読み出し速度が増減し、結果としてローリング歪みが急峻に変わってしまう。
【0005】
本発明の目的は、画像データの伝送に使用する伝送路の数を変更しても、ローリング歪みの急峻な変化を低減することを可能にした撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、撮像素子と、信号処理部と、前記撮像素子から読み出した画像データを前記信号処理部に伝送する複数の伝送路とを有する撮像装置であって、前記撮像素子から取得した本画像データと副画像データを前記複数の伝送路に振り分ける振り分け部と、動画記録待機時に、前記本画像データと前記副画像データをそれぞれ前記複数の伝送路における異なる伝送路に振り分けて前記信号処理部に並行して伝送し、前記動画記録時に、前記本画像データと前記副画像データを前記複数の伝送路における同じ伝送路を介して前記信号処理部に時分割で伝送するように切り替える切り替え部と、を有し、前記切り替え部は、前記動画記録待機時と前記動画記録時とを切り替える際に、前記本画像データを前記信号処理部に伝送する際に用いる伝送路の数と、前記副画像データを前記信号処理部に伝送する際に用いる伝送路の数をそれぞれ少しずつ変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像データの伝送に使用する伝送路の数を変更しても、ローリング歪みの急峻な変化を低減することを可能にした撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る撮像装置を示す図。
図2】本発明の実施形態に係る撮像素子からの画素読み出しを示す図。
図3】本発明の実施形態に係る伝送路の使用状態を示す図。
図4】本発明の実施形態に係る伝送路のタイミングチャートを示す図。
図5】本発明の実施形態に係る画像処理装置のフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置の構成を示す図である。
【0010】
図1において、撮像装置100は、撮像素子101、信号処理部103、伝送路群105を備えている。
【0011】
本実施例において、撮像素子100は、ライブビュー表示用の画像や記録用の動画像といった本画像とフリッカ検出用の副画像の露光を行う。
【0012】
振り分け部102は、撮像素子100にて得られた本画像と副画像を切り替え部104の制御に従って伝送路群105へ振り分ける。
【0013】
複数の伝送路からなる伝送路群105は、撮像素子101にて撮像された本画像データや副画像データを信号処理部103へ伝送する。本実施例では、伝送路群は105a~105hの8つの伝送路からなり、各々の伝送路は、1.6Gbpsの伝送速度で伝送可能であるものとする。
【0014】
信号処理部103は、撮像素子101により撮像されて伝送路群105を介して伝送された本画像データを使用して、動画記録待機時にはライブビュー表示を行うための画像処理を行う。また、動画記録時には、本画像データを不図示の不揮発性メモリに記録される。さらに、副画像データを用いてフリッカ検出を行い、検出されたフリッカの影響がなくなるように制御する。
【0015】
また、信号処理部103は、ユーザによる動画記録待機状態から動画記録状態への遷移指示、もしくは動画記録状態から動画記録待機状態への遷移指示に従って、後述する切り替え部104を制御する。
【0016】
切り替え部104は、撮像素子101に対して読み出し方式の切り替えを指示する。また、本画像データと副画像データの各々を伝送するために、伝送路群105内の伝送路105a~105hのどの伝送路を使用するかを切り替える。
【0017】
次に、図2を用いて撮像素子101からの本画像データと副画像データとの読み出しについて説明する。
【0018】
画素部301には、水平6000画素、垂直4000画素の画素群が行列状に配列され、各画素には、ベイヤー配列になるようにR、G、Bのカラーフィルターのいずれかが設けられている。
【0019】
まず、画素部301において、垂直方向において3行に1行の画素を間引いて垂直2600画素の画素信号を読み出し、さらに垂直方向における2行分の画素信号を加算することにより、水平6000画素、垂直1300画素の本画像データ302を取得する。取得された本画像データ302は、振り分け部102へ転送される。
【0020】
次に、画素部301において、本画像データ302を取得する際に垂直方向に間引かれた垂直1300画素の画素信号を非加算で読み出すことにより、水平6000画素、垂直1300画素の副画像データ303を取得する。取得された副画像データ303は、振り分け部102へ転送される。なお、副画像データは、フリッカ検出等の評価値生成に使用するため、撮像素子101からの読み出し速度と伝送に使用する伝送路群105の数とに応じて垂直方向の間引きが行われる。
【0021】
このように、本画像データに用いる画素信号を読み出す際に、間引かれる画素行の画素信号を別途読み出すことにより、本画像データと副画像データを並行して読み出したり、各々を時分割で別々に読み出すことが可能である。
【0022】
次に、図3および図4を用いて、振り分け部102により、本画像データ302と副画像データ303の伝送に使用する伝送路群105への振り分け方法について説明する。ここで、本実施例では、撮像装置100が動画モードであり、本画像データが60fpsであり、副画像データが240fpsであるものとする。また、1画素あたりのビット数は12ビットであるものとする。
【0023】
図3(a)は、動画記録待機時(状態A)で使用される伝送路群105を示す図であり、図4(a)は、動画記録待機時(状態A)の撮像素子101からの本画像データ及び副画像データの読み出し時間と、伝送路の使用期間とを示す図である。動画記録待機時(状態A)では、同時刻に伝送路群105を分配して使用するため、本画像データと副画像データとを同時に信号処理部103へ伝送することが可能である。
【0024】
動画記録待機時では、ローリング歪みを許容して伝送路群105の中で本画像データの伝送に使用する伝送路数を減らして本画像データの読み出し速度を下げる。具体的には、振り分け部102により、本画像データが伝送路群105の中の6つの伝送路105a~105fに振り分けられて伝送される。
【0025】
各伝送路の伝送速度は1.6Gbpsであるため、水平6000画素、垂直1300ラインからなる本画像データの読み出し時間および伝送時間(図4(a)のt501)は、10.0msecとなる。また、1ラインあたりの読み出し時間および伝送時間は、7.7μsecとなる。
【0026】
副画像データは、振り分け部102により本画像データの伝送に使用しない伝送路群105の中の2つの伝送路105g、105hに振り分けられて伝送される。このとき、副画像データの1ラインあたりの読み出し時間および伝送時間は、適切なフリッカ検出を行うために、本画像データと同じ7.7μsecに合わせられる。
【0027】
ここで、副画像データの読み出し時間および伝送時間(図4(a)のt502)は、4msecにする必要がある。しかしながら、撮像素子101からの読み出し速度に起因する読み出し可能ライン数と、伝送に使用する伝送路群105の数に起因する伝送可能ライン数とのいずれかによって律速される。すなわち、撮像素子101からの読み出し速度に起因する副画像データの読み出し可能ライン数が520ラインであるのに対し、使用する伝送路数に起因する副画像データの伝送可能ライン数は260ラインとなる。
【0028】
したがって、副画像データ全ての水平6000画素、垂直1300ラインを伝送することができないため、副画像データは垂直方向において260ラインに間引かれて読み出され、伝送される。
【0029】
次に、図3(b)は、動画記録待機時から動画記録時への遷移時(状態B)と、動画記録時から動画記録待機時への遷移時(こちらも状態B)を示す図である。また、図4(b)は、動画記録待機時から動画記録時への遷移時(状態B)と、動画記録時から動画記録待機時への遷移時(こちらも状態B)の撮像素子101からの本画像データ及び副画像データの読み出し時間と、伝送路の使用期間とを示す図である。状態Bでも、同時刻に伝送路群105を分配して使用するため、本画像データと副画像データとを同時に信号処理部103へ伝送することが可能である。
【0030】
動画記録待機時と動画記録時との遷移時では、本画像のローリング歪みの急峻な変化を低減させる目的で、本画像データの伝送に仕様する伝送路数を少しずつ増やしたり、少しずつ減らしたりする。そして、本画像データの伝送に使用する伝送路数に応じて読み出し速度を早くしたり遅くしたりする。
【0031】
具体的には、振り分け部102により、伝送路群105の中の伝送路105a~105gの7つの伝送路に振り分けられて伝送される。各伝送路の伝送速度は1.6Gbpsであるため、水平6000画素、垂直1300ラインからなる本画像データの読み出し時間および伝送時間(図4(b)のt503)は、8.6msecとなる。また、1ラインあたりの読み出し時間および伝送時間は、6.7μsecとなる。
【0032】
副画像データは、振り分け部102により本画像データの伝送に使用しない伝送路群105の中の1つの伝送路105hに振り分けられて伝送される。このときも、副画像データの1ラインあたりの読み出し時間および伝送時間は、本画像データと同じ6.8μsecに合わせられる。
【0033】
ここで、副画像データの読み出し時間および伝送時間(図4(b)のt502)は、4msecにする必要がある。撮像素子101からの読み出し速度に起因する副画像データの読み出し可能ライン数が600ラインであるのに対し、使用する伝送路数に起因する副画像データの伝送可能ライン数は130ラインとなる。
【0034】
したがって、副画像データ全ての水平6000画素、垂直1300ラインを伝送することができないため、副画像データは垂直方向において130ラインに間引かれて読み出され、伝送される。
【0035】
次に、図3(c)は、動画記録時(状態C)を示す図である。また、図4(c)は、動画記録時(状態C)の撮像素子101からの本画像データ及び副画像データの読み出し時間と、伝送路の使用期間とを示す図である。動画記録時は、本画像のローリング歪みをできる限り低減するために、伝送路群105を副画像データと時分割で共有して使用することにより、本画像データの読み出し速度を速くすることができる。すなわち、伝送路群105を同時刻で分配して使用しないため、本画像データと副画像データとは時分割で信号処理部103へ伝送される。
【0036】
各伝送路の伝送速度は1.6Gbpsであるため、水平6000画素、垂直1300ラインからなる本画像データの読み出し時間および伝送時間(図4(c)のt504)は、7.5msecとなる。また、1ラインあたりの読み出し時間および伝送時間は、5.6μsecとなる。
【0037】
副画像データは、本画像データの伝送に使用しない伝送路群105がないので、振り分け部102により時分割で8つの伝送路105a~105hの全てに振り分けられて伝送される。このときも、副画像データの1ラインあたりの読み出し時間および伝送時間は、本画像と同じ5.7μsecに合わせられる。
【0038】
ここで、副画像データの読み出し時間および伝送時間(図4(c)のt502)は、4msecにする必要がある。撮像素子101からの読み出し速度に起因する副画像データの読み出し可能ライン数が690ラインであるのに対し、使用する伝送路数に起因する副画像データの伝送可能ライン数は1060ラインとなる。
【0039】
したがって、副画像データ全ての水平6000画素、垂直1300ラインを伝送することができないため、副画像データは垂直方向において690ラインに間引かれて読み出され、伝送される。
【0040】
このように、動画記録待機時から動画記録時に遷移する際に、撮像素子101から信号処理部103へ本画像データを伝送するための用いる伝送路群105の数を少しずつ多くしたり少なくしたりする。そして、読み出し速度を少しずつ増減させることが可能となり、フリッカ検出等の評価値用の副画像データを取得しながらも、本画像データのローリング歪みが急峻に変化することなく動画撮影を行うことが可能となる。
【0041】
図5は、本発明の実施形態に係る、フローチャートを示す図である。以下、図5を用いて、本画像データのローリング歪みの急峻な変化を低減することを可能にした動作シーケンスを説明する。
【0042】
ステップS1000において、ユーザの操作により撮像装置100の電源がオンし、動画モードが設定される。切り替え部104からの指示により、振り分け部102による伝送群105の本画像データと副画像データの振り分け、及び、撮像素子101からの本画像データと副画像データの読み出しが図3(a)、図4(a)で説明した動画記録待機状態(状態A)となる。
【0043】
ステップS1001において、ユーザの操作により動画記録の開始が指示されると、ステップS1002に進む。
【0044】
ステップS1002において、切り替え部104からの指示により、振り分け部102による伝送群105の本画像データと副画像データの振り分け、及び、撮像素子101からの本画像データと副画像データの読み出し速度が切り替わる。
【0045】
すなわち、図3(a)、図4(a)で説明した状態Aから図3(b)、図4(b)で説明した状態Bに遷移した後、さらに、図3(c)、図4(c)で説明した状態Cに遷移するように制御する。
【0046】
ステップS1003において、ユーザの操作により動画記録の停止が指示されると、ステップS1004に進む。
【0047】
ステップS1004において、切り替え部104からの指示により、振り分け部102による伝送群105の本画像データと副画像データの振り分け、及び、撮像素子からの本画像データと副画像データの読み出し速度を変更する。すなわち、図3(c)、図4(c)の状態Cから図3(b)、図4(b)の状態Bに遷移した後、さらに、図3(a)、図4(a)の状態Aに遷移するように制御する。
【0048】
ステップS1005において、ユーザの操作により撮像装置100の電源がオフしたり、動画モード以外のモードに設定されると、本フローの動作を終了する。
【0049】
以上のように、設定される撮影モードの種別に応じて切り替え部104の制御により、振り分け部102による本画像データと副画像データで使用する伝送路群105の数や撮像素子101の読み出し速度を制御する。そして、撮像素子101から信号処理部103へ本画像データを伝送するために用いる伝送路群105の数を少しずつ多くしたり少なくすることで、読み出し速度も応じて少しずつ増減させることが可能となる。そして、フリッカ検出等の評価値用の副画像データを取得しながらも、本画像データのローリング歪みが急峻に変化することなく、動画撮影を行うことが可能となる。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0051】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0052】
100 撮像装置
101 撮像素子
102 振り分け部
103 信号処理部
104 切り替え部
105 伝送路群
図1
図2
図3
図4
図5