(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162725
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】積層造形装置および積層造形装置用の小領域造形ユニット
(51)【国際特許分類】
B22F 12/30 20210101AFI20231101BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231101BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20231101BHJP
B22F 12/50 20210101ALI20231101BHJP
【FI】
B22F12/30
B33Y30/00
B33Y70/00
B22F12/50
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073304
(22)【出願日】2022-04-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 秀二
(72)【発明者】
【氏名】中野 勝裕
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA24
4K018BA13
4K018BB03
4K018BB04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】最終製品用の材料粉体とは別の材料粉体を使用して三次元造形物を簡単に製造することができる積層造形装置およびその小領域造形ユニットを提供する。
【解決手段】本発明によれば、積層造形装置用の小領域造形ユニット8であって、ベース台4に載置され、第1の造形領域Rの一部に第2の造形領域Rsを形成し、かつ第2の飛散防止枠を備える小領域用造形台82と、造形テーブル5に固定され前記第2の造形領域Rsを上下方向に移動する小領域用ベースプレート83と、前記造形テーブル5に固定された第1の飛散防止枠を備え、前記第1の飛散防止枠の開口は、前記第2の飛散防止枠の外縁よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の造形領域を有するベース台と、当該第1の造形領域に配置された造形テーブルと、当該造形テーブルを上下方向に移動させる造形テーブル駆動機構を備えた積層造形装置用の小領域造形ユニットであって、
前記小領域造形ユニットは、前記ベース台に載置され、前記第1の造形領域の一部に第2の造形領域を形成する小領域用造形台と、前記造形テーブルに固定され、前記第2の造形領域を上下方向に移動する小領域用ベースプレートと、前記造形テーブルに固定された第1の飛散防止枠を備え、前記第2の造形領域に三次元造形物が造形されるものであり、
前記小領域用造形台は、前記第2の造形領域を形成する開口と、当該開口の外周に設けられかつ下方向に突出して設けられた中空状の第2の飛散防止枠を有し、
前記小領域用ベースプレートは、前記第2の造形領域を形成する開口および前記第2の飛散防止枠の内側を上下方向に移動され、
前記第1の飛散防止枠は、中空状で前記小領域用ベースプレートの外周に上方向に突出して設けられ、
前記第1の飛散防止枠の開口は、前記第2の飛散防止枠の外縁よりも大きく形成されている、積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【請求項2】
前記小領域造形ユニットは、前記ベース台上を水平1軸方向に移動して前記第2の造形領域に材料粉体を供給して前記小領域用ベースプレートに材料粉体層を形成する小領域用リコータヘッドを備える、請求項1記載の積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【請求項3】
前記小領域用造形台は、前記開口を挟んで上方向に突出する一対の仕切板を備える、請求項1または2記載の積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【請求項4】
前記小領域用リコータヘッドは、その下面に前記水平1軸方向に延びる一対の溝を備え、前記溝の内側を前記仕切板が相対的に移動する、請求項2を引用する請求項3記載の積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【請求項5】
前記小領域用リコータヘッドは、前記材料粉体を収容する材料ケースを備え、前記材料ケースは前記水平1軸方向に直交する他の水平1軸方向に延びて形成され、その長手方向の最大長さは前記ベース台の前記他の水平1軸方向の幅と同じになるように形成されている、請求項2記載の積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【請求項6】
前記材料ケースは、その下部が逆角錐台形状をなす、請求項5記載の積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【請求項7】
前記小領域造形ユニットは前記積層造形装置に着脱可能に固定されている、請求項1または2記載の積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【請求項8】
前記小領域造形ユニットは、種類が異なる複数の前記小領域用造形台と前記小領域用ベースプレートと前記第1の飛散防止枠を備えた、請求項1または2記載の積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【請求項9】
第1の造形領域を有するベース台と、当該第1の造形領域に配置された造形テーブルと、当該造形テーブルを上下方向に移動させる造形テーブル駆動機構と、前記第1の造形領域の一部である第2の造形領域に三次元造形物が造形される小領域造形ユニットを備えた積層造形装置であって、
前記小領域造形ユニットは、前記ベース台に載置され、前記第1の造形領域の一部に第2の造形領域を形成する小領域用造形台と、前記造形テーブルに固定され、前記第2の造形領域を上下方向に移動する小領域用ベースプレートと、前記造形テーブルに固定された第1の飛散防止枠を備え、
前記小領域用造形台は、前記第2の造形領域を形成する開口と、当該開口の外周に設けられかつ下方向に突出して設けられた中空状の第2の飛散防止枠を備え、
前記小領域用ベースプレートは、前記第2の造形領域を形成する開口および前記第2の飛散防止枠の内側を上下方向に移動され、
前記第1の飛散防止枠は、中空状で前記小領域用ベースプレートの外周に上方向に突出して設けられ、
前記第1の飛散防止枠の開口は、前記第2の飛散防止枠の外縁よりも大きく形成されている、積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形装置および積層造形装置用の小領域造形ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、積層造形装置は多品種生産を行う装置として注目を集めている。例えば、航空宇宙産業ではタービンブレードを代表にチタンなどの金属合金を使う製品が、医療業界ではインプラントのように生体親和性の高いコバルトクロム合金などを使う製品が製造され、また自動車業界では軽量化と耐熱性を合わせもつアルミニウムを使った自動車部品が製造されている。このように、様々な業界の製品に1台の装置で対応できるように複数の材料粉体を扱うことができる積層造形装置が望まれている。
【0003】
従来から、材料粉体を積層造形装置に自動的に供給し、積層造形装置から自動的に回収するユニットとしてMRS(Material Recycle System)ユニットが開発されている(特許文献1、特許文献2)。作業者が積層造形装置に取りつけられたMRSユニットを別のMRSユニットに交換することで粉末の種類を変更できるため、設備費を抑えながら製品の種類を増やすことができ、さらに設備稼働率を向上することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6132962号公報
【特許文献2】特許第6993492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、より多くの積層造形用の新材料が市場に出回るようになってきた。その影響により、試験的に少量の新材料を使用した試作品の造形に対する要求が高まっている。具体的には、製造業者は普段はMRSユニットを使用して最終製品を連続造形し、必要に応じて新材料を少量用いて試験片を造形し、試験片を評価することで新材料が実用可能かどうかの検証を行いたいと考えている。このような試作品の造形は、MRSユニットによる材料粉体の自動供給および自動回収作業になるべく影響を与えない方法で簡単に実施できることが好ましい。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、少量の材料粉体を用いて簡単に試作品を造形することができる積層造形装置および積層造形装置用の小領域造形ユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の造形領域を有するベース台と、当該第1の造形領域に配置された造形テーブルと、当該造形テーブルを上下方向に移動させる造形テーブル駆動機構を備えた積層造形装置用の小領域造形ユニットであって、前記小領域造形ユニットは、前記ベース台に載置され、前記第1の造形領域の一部に第2の造形領域を形成する小領域用造形台と、前記造形テーブルに固定され、前記第2の造形領域を上下方向に移動する小領域用ベースプレートと、前記造形テーブルに固定された第1の飛散防止枠を備え、前記第2の造形領域に三次元造形物が造形されるものであり、前記小領域用造形台は、前記第2の造形領域を形成する開口と、当該開口の外周に設けられかつ下方向に突出して設けられた中空状の第2の飛散防止枠を有し、前記小領域用ベースプレートは、前記第2の造形領域を形成する開口および前記第2の飛散防止枠の内側を上下方向に移動され、前記第1の飛散防止枠は、中空状で前記小領域用ベースプレートの外周に上方向に突出して設けられ、前記第1の飛散防止枠の開口は、前記第2の飛散防止枠の外縁よりも大きく形成されていることを特徴とする。
また本発明は、第1の造形領域を有するベース台と、当該第1の造形領域に配置された造形テーブルと、当該造形テーブルを上下方向に移動させる造形テーブル駆動機構と、前記第1の造形領域の一部である第2の造形領域に三次元造形物が造形される小領域造形ユニットを備えた積層造形装置であって、前記小領域造形ユニットは、前記ベース台に載置され、前記第1の造形領域の一部に第2の造形領域を形成する小領域用造形台と、前記造形テーブルに固定され、前記第2の造形領域を上下方向に移動する小領域用ベースプレートと、前記造形テーブルに固定された第1の飛散防止枠を備え、
前記小領域用造形台は、前記第2の造形領域を形成する開口と、当該開口の外周に設けられかつ下方向に突出して設けられた中空状の第2の飛散防止枠を備え、前記小領域用ベースプレートは、前記第2の造形領域を形成する開口および前記第2の飛散防止枠の内側を上下方向に移動され、前記第1の飛散防止枠は、中空状で前記小領域用ベースプレートの外周に上方向に突出して設けられ、前記第1の飛散防止枠の開口は、前記第2の飛散防止枠の外縁よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、三次元造形物Kを形成した後の未固化の材料粉体は第1の飛散防止枠の内側に蓄積されるため、第1の飛散防止枠の内側を掃除することで複数種類の材料粉体を簡単に試用することが可能となる。また、小領域造形ユニットを使用した造形からMRSユニットを使用した連続造形に切り替える場合であっても、最終製品造形時の材料粉体の回収系統および供給系統に新材料が混入することがないため、簡単に造形方法を切り替えることが可能となる。
【0009】
本発明の小領域用造形台は、前記開口を挟んで上方向に突出する一対の仕切板を備えることを特徴とする。
また本発明の小領域造形ユニットは、前記ベース台上を水平1軸方向に移動して前記第2の造形領域に材料粉体を供給して前記小領域用ベースプレートに材料粉体層を形成する小領域用リコータヘッドを備え、さらに前記小領域用リコータヘッドはその下面に前記水平1軸方向に延びる一対の溝を備え、前記溝の内側を前記仕切板が相対的に移動することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、移動する小領域用リコータヘッドによって押し出される余剰の材料粉体は一対の仕切板の間に蓄積されるため、仕切板の内側を清掃することで簡単に小領域造形ユニットを使用した造形からMRSユニットを使用した造形に切り替えることができる。
【0011】
本発明の小領域用リコータヘッドは、前記材料粉体を収容する材料ケースを備え、前記材料ケースは前記水平1軸方向に直交する他の水平1軸方向に延びて形成され、その長手方向の最大長さは前記ベース台の前記他の水平1軸方向の幅と同じになるように形成されていることを特徴とする。
また本発明の材料ケースは、その下部が逆角錐台形状をなすことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、材料ケースが大きく形成されているため、材料粉体を1度投入するだけで三次元造形物を造形することが可能となる。
また、材料ケースの下部が逆角錐台形状をなしているため、パウダーガイドに設けられた材料排出口から適切に材料粉体を排出することができる。
【0013】
本発明の小領域造形ユニットは、種類が異なる複数の前記小領域用造形台と前記小領域用ベースプレートと前記第1の飛散防止枠を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、複数種類の小領域用造形台、小領域用ベースプレートおよびベースプレート用取付部材を備えることで、第2の造形領域の大きさを変更することができ、サイズの異なる三次元造形物を造形することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の積層造形装置では、小領域造形ユニットを取りつけるだけで、最終製品用の材料粉体とは別の材料粉体を使用して三次元造形物を簡単に製造することができ、また小領域造形ユニットを使用した造形とMRSユニットを使用した造形を切り替える際の清掃および作業を最小限とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の積層造形装置100の概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態の積層造形装置100の概略構成図である。
【
図4】小領域用リコータヘッド81の斜視図である。
【
図5】小領域用リコータヘッド81を別の角度から見た斜視図である。
【
図6】小領域用リコータヘッド81のD-D断面図である。
【
図7】小領域用リコータヘッド81を矢印B方向からみた側面図である。
【
図8】第1の造形領域Rを上から下方向にみた平面図である。
【
図11】ベースプレート用取付部材84の平面図である。
【
図12】ベースプレート用取付部材84の断面図である。
【
図15】未固化の材料粉体Mの蓄積状態を説明するための説明図である。
【
図16】リコータヘッド31を取り付けた積層造形装置100の概略構成図である。
【
図18】リコータヘッド31を上から下方向にみた平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0018】
<1. 積層造形装置>
(1.1 積層造形装置の全体構成)
図1、
図2、
図16に示すように、本発明の一実施形態の積層造形装置100は、材料粉体層6の形成と固化層の形成を繰り返して所望の三次元造形物を製造する装置である。
積層造形装置100は、チャンバ1と、照射装置13と、不活性ガス供給装置15と、ヒュームコレクタ19と、造形テーブル駆動機構52と、リコータヘッド31と、ベースプレート33と、第1の造形領域Rを有するベース台4と、材料粉体回収ユニット40と、造形テーブル5と、リコータヘッド駆動機構51と、材料供給ユニット60と、小領域造形ユニット8とを備える。
【0019】
積層造形装置100は、
図16に示すように最終製品を連続造形する場合は、材料粉体回収ユニット40および材料供給ユニット60とから構成されるMRSユニット、リコータヘッド31、ベースプレート33を使用して三次元造形物を製造する。具体的には、最初にリコータヘッド駆動機構51によって水平1軸方向(矢印B方向)にリコータヘッド31を往復移動させ、造形テーブル5に配置されたベースプレート33上に材料粉体層6を形成する。そして、材料粉体層6にレーザ光Lを照射することによって、三次元造形物を得る。1サイクル目の積層造形完了後、造形テーブル5を降下させることによって、未固化の材料粉体と切削屑などの不純物とが下部の粉体排出部27aから排出される。移動するリコータヘッド31によって押し出される余剰の未固化の材料粉体と不純物も同様にベース台上に設けられた粉体排出部27bから排出される。排出された材料粉体は、シューター29に案内され材料回収用バケット30に収容される。そして、後述する材料粉体回収ユニット40により不純物を含んだ材料粉体の中から不純物が除去され、材料供給ユニット60により新規材料粉体および不純物が取り除かれた材料粉体が再びリコータヘッド31の材料ケース311に供給される。以上の工程を繰り返すことによって、三次元造形物を連続造形する。
【0020】
一方、積層造形装置100は、
図1および
図2に示すように、新材料を少量使用して試験片を造形する場合は、小領域造形ユニット8を使用して三次元造形物を製造する。小領域造形ユニット8を使用する場合は、材料供給ユニット60からの材料粉体の供給および粉体排出部27a,27bからの材料粉体の回収は行わない。MRSユニット、材料粉体の回収系統および供給系統を使用しないことで、最終製品用の材料粉体と新材料との混在が防止され、試験片の造形と最終製品の造形を切り替える際の清掃および作業が最小限となる。
【0021】
(1.2 積層造形装置の具体的構成)
チャンバ1は、三次元造形物が形成される領域である第1,第2の造形領域R,Rsを覆い且つ所定濃度の不活性ガスで充満される。本明細書において「不活性ガス」とは、材料粉体と実質的に反応しないガスであり、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が例示される。
【0022】
チャンバ1の上方には、照射装置13が設けられる。照射装置13は、第1,第2の造形領域R,Rs上に形成される材料粉体層6の所定箇所にレーザ光Lを照射して、照射位置の材料粉体を固化させる。照射装置13はレーザ光又は電子ビームを照射して材料粉体を固化可能なものであればよい。レーザ光Lは、例えば、CO2レーザ、ファイバーレーザ、YAGレーザ等を用いることができる。また、チャンバ1内には、造形物の造形後又は造形途中に、固化層が積層されて得られた固化体の表面や不要部分に対して機械加工を施すための切削装置(不図示)が設けられてもよい。
【0023】
材料粉体は、複数の種類の金属元素を所定の割合で含む金属粉末(例:炭素鋼構成元素)であり、各金属粒子は、例えば平均粒径35μmの球形である。
【0024】
図1に示すように、チャンバ1への不活性ガス供給系統には、不活性ガス供給装置15と、ヒュームコレクタ19が接続されている。不活性ガス供給装置15は、不活性ガスを供給する機能を有し、例えば、不活性ガスのガスボンベである。ヒュームコレクタ19は、その上流側及び下流側にダクトボックス21,23を有する。チャンバ1から排出されたガス(ヒュームを含む不活性ガス)は、ダクトボックス21を通じてヒュームコレクタ19に送られ、ヒュームコレクタ19においてヒュームが除去された不活性ガスがダクトボックス23を通じてチャンバ1へ送られる。このような構成により、不活性ガスの再利用が可能になっている。
【0025】
不活性ガス供給系統は、チャンバ1の供給口1bと、付着防止部17に接続される。チャンバ1の
図1の左壁面1fに設けられた供給口1bを通じてチャンバ1の造形空間1d内に不活性ガスが充填される。
【0026】
本実施形態では、ヒュームコレクタ19からの不活性ガスが供給口1bに送られ、不活性ガス供給装置15からの不活性ガスが付着防止部17に送られるように構成されている。従って、本実施形態の不活性ガス供給系統によると、チャンバ1の上面に取り付けられているウィンドウにヒュームが付着してレーザ光の透過性が低下することを防止するために設けられる付着防止部17には、不活性ガス供給装置15から新鮮な不活性ガスが供給され、チャンバ1の中の不活性ガスを循環供給する供給口1bからはヒュームコレクタ19で浄化された不活性ガスが供給されるので、使用量に制限がある新鮮な不活性ガスの消費量が抑えられる利点がある。
【0027】
チャンバ1からのヒューム排出系統は、排気ファン(不図示)が設けられているチャンバ1の排出口1cに接続される。チャンバ1の造形空間1d内のヒュームを含む不活性ガスが排出口1cを通じて排出されることによって、造形空間1d内に供給口1bから排出口1cに向かう不活性ガスの流れが形成される。
【0028】
図1に示すように、積層造形装置100にはMRSユニットとして最終製品用の材料粉体を積層造形装置に自動的に供給し、積層造形装置から回収する材料供給ユニット60と材料粉体回収ユニット40が設けられている。
材料供給ユニット60は、チャンバ1の
図1の右壁面1eに近接した位置に設けられたメインダクト71と、中間ダクト69と、中間ダクトシャッター70から構成される。材料タンク46に格納された新規材料粉体がメインダクト71に供給され、材料粉体は中間ダクト69を経由して中間ダクト出口69aからリコータヘッド31に供給されるように構成されている。
中間ダクト出口69aは、1つ以上の中間ダクトシャッター70によって開閉される。中間ダクト出口69aは、小領域造形ユニット8を使用する場合は、常時中間ダクトシャッター70によって閉じられている。
材料粉体回収ユニット40は、材料回収用搬送装置41と、不純物除去装置43と、新規材料粉体が格納された材料タンク46と、材料乾燥装置47と、材料供給用搬送装置48から構成される。MRSユニットを使用して連続造形する場合、ベース台4の両端に設けられた粉体排出部27bから不純物を含む未固化の材料粉体が排出されて、シューター29を介して材料回収用バケット30に収容される。1サイクル目の積層造形完了後、造形テーブル5を降下させることによって未固化の材料粉体と切削屑などの不純物とが下部の粉体排出部27aから排出されるか、または造形テーブル5を上昇させて刷毛等により材料粉体を粉体排出部27bから排出し、MRSユニットのリカバリーモードを使って吸引排出される。材料回収用搬送装置41により材料回収用バケット30に収集された造形後の材料粉体を不純物除去装置43へと搬送して材料粉体の中から不純物を除去し、材料タンク46内に設けられた材料乾燥装置47によって材料粉体を乾燥する。不純物が取り除かれた材料粉体および新規材料粉体は材料供給用搬送装置48により材料タンク46からメインダクト71に供給される。
MRSユニットである材料供給ユニット60と材料粉体回収ユニット40は、小領域造形ユニット8を使用する場合には使用しない。
【0029】
ベース台4は、チャンバ1内に設けられた枠体であり、第1の造形領域Rおよび第2の造形領域Rsを有している。ベース台4は、造形テーブル5と、材料保持壁26と、材料回収用バケット30とを内蔵している。
図2に示すように、第1の造形領域Rは最終製品を連続造形する場合の造形領域であり、第2の造形領域Rsは新材料評価等の目的により試験片を造形する場合の造形領域である。第2の造形領域Rsは第1の造形領域Rの一部であって第2の造形領域Rsは第1の造形領域R内に形成されている。
【0030】
造形テーブル5は、第1,第2の造形領域R,Rsに設けられ、造形テーブル駆動機構52によって駆動され上下方向(矢印A方向)に移動可能である。第2の造形領域Rsで造形する場合は、造形テーブル5上にベースプレート用取付部材84および小領域用ベースプレート83が配置され、その上に材料粉体層6が形成される。第1の造形領域Rで造形する場合は、造形テーブル5上にベースプレート33が配置され、その上に材料粉体層6が形成される。
【0031】
図2及び
図3に示すように、リコータヘッド駆動機構51は、後述する小領域用リコータヘッド81またはリコータヘッド31を移動させるモータ51gと、ボールネジ51aと、ボールネジ51aに螺合されたスライド部材51bとを備える。
小領域用リコータヘッド81およびリコータヘッド31は、後述するリコート部材32を介してスライド部材51bに固定されている。リコート部材32は小領域用リコータヘッド81とリコータヘッド31に共通して使用する部材である。その他の構成部品を交換することで小領域用リコータヘッド81からリコータヘッド31へ、リコータヘッド31から小領域用リコータヘッド81へ変更して造形を行う。
ボールネジ51aの回転に伴ってスライド部材51bが移動すると、小領域用リコータヘッド81またはリコータヘッド31はスライド部材51bと共に矢印B方向に移動する。ボールネジ51aは回転可能に支持されており、モータ51gによって回転駆動される。駆動機構は、回転モータとボールネジとを組み合わせた構成を用いる上記の方法に限定されず、例えば、リニアモータを用いることも可能である。
【0032】
図17および
図18に示すようにリコータヘッド31は、材料粉体を格納する材料ケース311と、リコート部材32と、一対のブレード312と、材料粉体の有無を検出するセンサ313と、材料排出口314aを備えたパウダーガイド314と、材料ケース支持枠315を備える。リコータヘッド31は、第1の造形領域R上を矢印B方向に往復移動し、その際に、パウダーガイド314の材料排出口314aから材料ケース311に格納された材料粉体を吐出する。そしてブレード312によって第1の造形領域Rに吐出された材料粉体を均し、材料粉体層6を形成する。
【0033】
図5、
図6、
図7、
図17、
図18に示すようにリコート部材32は、材料ケース311または小領域用材料ケース811を固定して支持し、リコータヘッド31および小領域用リコータヘッド81を矢印B方向に移動させるための基部である。リコート部材32は、リコータヘッド31および小領域用リコータヘッド81に共通して使用される。リコート部材32は、矢印C方向に延びる直方体形状をなし、長手方向の長さはベース台4の矢印C方向の幅より広くなるように構成されている。リコート部材32は、一対のガイド機構321と、一対の溝322を備える。
【0034】
ガイド機構321は、リコート部材32の矢印C方向の両端に設けられた一対の支持台である。ベース台4に設けられた図示しないガイドレールにそれぞれ取りつけられることで、リコータヘッド31および小領域用リコータヘッド81はガイドレールに沿ってベース台4上を往復移動する。
【0035】
リコート部材32の下面には一対の溝322と干渉防止用の隙間が設けられる。
溝322は、後述する小領域用造形台82がベース台4に載置された場合に仕切板821の上面に小領域用リコータヘッド81の下面が干渉しないように設けられたものである。小領域用リコータヘッド81がベース台4上を移動すると、仕切板821は溝322の内側で相対的に移動する。溝322は、リコート部材32の矢印B方向の一端部から他端部にかけて延び、直線状に形成されている。
【0036】
図17および
図18に示すように、リコート部材32の矢印B方向の両側面には、長尺状の一対のブレード312が設けられる。ブレード312は、パウダーガイド314に設けられた材料排出口314aから排出される材料粉体を平坦化して、材料粉体層6を形成する。ブレード312の長手方向である矢印C方向の長さは第1の造形領域Rの矢印C方向の幅と同じに形成されている。
【0037】
リコート部材32の上部には、パウダーガイド314が設けられる。パウダーガイド314は、材料排出口314aが設けられ、材料ケース311から流下する材料粉体がベースプレート33の上の所定の位置に材料粉体が自由落下して供給されるように材料粉体の流動を案内する。
【0038】
材料ケース支持枠315は、材料ケース311をリコート部材32に固定して支持するための枠体であり、中空状で矢印C方向に延びる直方体形状をなす。材料ケース支持枠315は、その枠体の内側に材料ケース311を収納するものであり、リコート部材32の上部に取り付けられる。
【0039】
一対のブレード312、材料ケース311、センサ313、パウダーガイド314および材料ケース支持枠315は、リコート部材32に着脱可能に取り付けられている。リコータヘッド31から小領域用リコータヘッド81に交換する場合は、リコート部材32からブレード312、材料ケース311、センサ313、パウダーガイド314および材料ケース支持枠315を取り外し、小領域用リコータヘッド81の小領域用ブレード812と小領域用材料ケース811と小領域用センサ813と小領域用パウダーガイド814に付け替える。
【0040】
<2.小領域造形ユニット>
小領域造形ユニット8は、第2の造形領域Rs内で三次元造形物を製造するための装置であって、チャンバ1内に着脱可能に取り付けられる。小領域造形ユニット8は、小領域用リコータヘッド81と、小領域用造形台82と、小領域用ベースプレート83と、ベースプレート用取付部材84とを備える。小領域用造形台82、小領域用ベースプレート83およびベースプレート用取付部材84は、いずれも鉄または鋼鉄などの金属で構成される。小領域用造形台82、小領域用ベースプレート83およびベースプレート用取付部材84は、同一の材質でもよく、または、異なる材質としてもよい。
【0041】
(2.1 小領域用リコータヘッド)
図3に示すように、小領域用リコータヘッド81はベース台4上に配置され、リコータヘッド駆動機構51によって水平1軸方向(矢印B方向)に往復移動可能に構成される。小領域用リコータヘッド81は、チャンバ1内で移動しながら第2の造形領域Rs上に材料粉体を供給し平坦化して材料粉体層6を形成する。
図4乃至
図7に示すように、小領域用リコータヘッド81は、材料粉体を収容する小領域用材料ケース811と、小領域用材料ケース811を支持するリコート部材32と、小領域用センサ813と、一対の小領域用ブレード812と、小領域用パウダーガイド814を備える。
【0042】
図4乃至
図7に示すように、小領域用材料ケース811は、内部に材料粉体を一時的に蓄えるための容器であり、小領域用リコータヘッド81の移動方向(
図1、
図2、
図3の矢印B方向)に直交する他の水平1軸方向(矢印C方向)に延びた形状をなす。小領域用材料ケース811の容積は、なるべく1回の材料粉体の投入だけで三次元造形物が製造可能であるように大きく設計されている。具体的には小領域用材料ケース811の他の水平1軸方向(矢印C方向)である長手方向の最大長さはベース台4の矢印C方向の幅と同じになるように構成され、またその上面はリコート部材32の上面から上方向に突出して固定されている。しかしながら、小領域用材料ケース811内で材料粉体が適切に落下することや、気流を妨げないこと、小領域用リコータヘッド81の移動に負荷がかかりすぎないこと等の機械的制約により小領域用材料ケース811の大きさは決定される。
小領域用材料ケース811は、材料供給口811aと、ケース出口811bと、第1傾斜側面811cと、第2傾斜側面811dと、第3傾斜側面811eと、第4傾斜側面811fを備える。
材料供給口811aは、材料粉体を投入するための開口であり、小領域用材料ケース811の上面に設けられ、他の水平1軸方向(矢印C方向)に延びる長方形状をなす。材料供給口811aの水平1軸方向(矢印C方向)の長さはベース台4の矢印C方向の幅と同じ大きさとなるように構成されている。また、ケース出口811bは、小領域用材料ケース811から材料粉体を排出するための方形状の開口であり、小領域用材料ケース811の下面に設けられ、材料排出口814aと略同一方向に延びている。
【0043】
第1傾斜側面811c及び第2傾斜側面811dは、ケース出口811bを挟むように矢印C方向に沿って配置された台形状の平板であり、ケース出口811bに向かって傾斜している。水平面との間になす第1傾斜側面811c及び第2傾斜側面811dの傾斜角度は相互に異なる角度であっても同じ角度であってもよい。実用上、第1傾斜側面811cの傾斜角度および第2傾斜側面811dの傾斜角度は、材料粉体が滑り落ちる程度の角度に形成されている。
第3傾斜側面811e及び第4傾斜側面811fは、ケース出口811bを挟むように矢印B方向に沿って配置された台形状の平板であり、ケース出口811bに向かって傾斜している。水平面との間になす第3傾斜側面811e及び第4傾斜側面811fの傾斜角度は相互に異なる角度であっても同じ角度であってもよい。実用上、第3傾斜側面811eの傾斜角度および第4傾斜側面811fの傾斜角度は、材料粉体が滑り落ちる程度の角度に形成されている。
第1傾斜側面811cと第3傾斜側面811eおよび第4傾斜側面811fが隣り合い、第2傾斜側面811dと第3傾斜側面811eおよび第4傾斜側面811fが隣り合って配置されている。そのため、小領域用材料ケース811の下部は逆角錐台形状をなす。小領域用材料ケース811の下部が逆角錐台形状であることにより、重力により凝集した材料粉体による詰まりを解消して、ケース出口811bからの材料粉体の排出を促進することができる。
【0044】
小領域用材料ケース811のケース出口811bには、小領域用材料ケース811内の材料粉体の有無を検知する小領域用センサ813が固定されている。小領域用センサ813により小領域用材料ケース811への材料粉体の補充が必要であると判断されると、小領域用リコータヘッド81は一時停止される。
チャンバ1内の造形工程に邪魔にならない場所にあらかじめ図示しない材料補充ボトルを設けておくことも可能である。そうすれば、積層造形装置100の扉のグローブドアを使用して、造形工程中に扉を開けずに材料粉体を補充し、造形を再開することができる。
【0045】
図4乃至
図7に示すように、リコート部材32の矢印B方向の両側面でリコート部材32の矢印C方向中心位置には、方形状の一対の小領域用ブレード812が設けられる。小領域用ブレード812は、小領域用パウダーガイド814に設けられた材料排出口814aから排出される材料粉体を平坦化して、材料粉体層6を形成する。小領域用ブレード812の長手方向である矢印C方向の長さは第2の造形領域Rsの矢印C方向の幅と同じであり、小領域用ブレード812をリコート部材32に取り付けた場合、小領域用ブレード812は後述する小領域用造形台82の一対の仕切板821の内側に配置される。
【0046】
小領域用材料ケース811のケース出口811bの直下でリコート部材32の上部には、小領域用パウダーガイド814が設けられる。小領域用パウダーガイド814は、ケース出口811bから流下する材料粉体が小領域用ベースプレート83の上面とリコート部材32の下面との間に形成される空間において、小領域用ベースプレート83の上の所定の位置に材料粉体が自由落下して供給されるように材料粉体の流動を案内する部材である。小領域用パウダーガイド814は、材料粉体が落下する通孔を備え、通孔の入口は小領域用材料ケース811のケース出口811bに連通し、通孔の出口は材料排出口814aとなる。材料排出口814は、矢印C方向に延びており、矢印C方向の長さは第2の造形領域Rsの矢印C方向の幅と同じである。小領域用パウダーガイド814をリコート部材32に取り付けた場合、小領域用パウダーガイド814の材料排出口814aは小領域用造形台82の一対の仕切板821の内側に配置される。
【0047】
一対の小領域用ブレード812と小領域用材料ケース811と小領域用センサ813と小領域用パウダーガイド814は、リコート部材32に着脱可能に取り付けられている。
【0048】
(2.2 小領域用造形台)
図8、
図10、
図13に示すように小領域用造形台82は、ベース台4上に着脱可能に載置される枠体である。小領域用造形台82は全体が方形状の平板であり、第2の造形領域Rsを除いて第1の造形領域R全体を覆う状態でチャンバ1内のベース台4上に載置される。
小領域用造形台82は、一対の仕切板821と、平板822と、第2の飛散防止枠823とを備える。
平板822は、第2の造形領域Rsを除いた第1の造形領域R全体を覆う板であり、外縁825は方形状に形成されている。平板822は、中心位置に方形状の開口826を有する。開口826の内側には後述する小領域用ベースプレート83が配置され、開口826内で試験片等の小さな造形物が製造される。このように開口826の内側は第2の造形領域Rsとなる。
仕切板821は、開口826を挟むように矢印B方向に沿って配置された一対の平板である。仕切板821は小領域用リコータヘッド81の材料排出口814aから供給された材料粉体が仕切板821に挟まれた領域以外に飛散することを防止する。
仕切板821は、小領域用造形台82の矢印B方向の一端から他端にかけて延び、上方向に突出して平板822に立設される。仕切板821の矢印C方向の位置は、リコート部材32の溝322の位置とそれぞれ一致している。仕切板821の上下方向の高さは、小領域用リコータヘッド81が矢印B方向に移動する際に上面が干渉しない大きさに形成されている。
開口826の外周を覆うように中空矩形状の第2の飛散防止枠823が設けられる。第2の飛散防止枠823は、下方向(造形テーブル5側)に突出して平板822に垂直に固定される。第2の飛散防止枠823の外縁は、矢印C方向に幅D1に形成され、矢印B方向に幅W1に形成されている。第2の飛散防止枠823の上下方向(矢印A方向)の高さは、造形テーブル5を上限位置まで移動した場合に下面が後述するベースプレート用取付部材84の上面に衝突しない大きさに形成されている。
【0049】
(2.3 ベースプレート用取付部材と小領域用ベースプレート)
図11、
図12、
図13に示すようにベースプレート用取付部材84は、造形テーブル5上に着脱可能に配置される台座である。ベースプレート用取付部材84は、造形テーブル5に固定される台座本体841と、小領域用ベースプレート83上の材料粉体が造形テーブル5側に飛散するのを防止するための第1の飛散防止枠842を備える。
台座本体841は、断面方形状の下板841bと、断面方形状の上板841aから構成される。上板841aの上面の面積は下板841bの上面の面積よりも小さく、上板841aは下板841bの上面の中心に一体的に固定されている。
小領域用ベースプレート83および上板841aの外周には、上板841aの側面から間隔W22を空けて側面を囲むように第1の飛散防止枠842が設けられている。第1の飛散防止枠842は中空矩形状の平板であり、下板841bの上面に立設されている。第1の飛散防止枠842は上方向(ベース台4の上面側)に突出して設けられる。第1の飛散防止枠842の開口は、矢印C方向に幅D2に形成され、矢印B方向に幅W21に形成されている。第1の飛散防止枠842の開口は、第2の飛散防止枠823の外縁よりも大きく形成されており、第2の飛散防止枠823の外縁のサイズと比較すると、D2>D1かつW21>W1の関係が成り立つ。
小領域用ベースプレート83は、その上面に材料粉体が撒布されて、試験片等の小さな造形物を製造するプレートであり、断面方形状に形成されている。小領域用ベースプレート83の上面のサイズおよび台座本体841の上板841aのサイズは、造形テーブル5が上下方向に移動した際に小領域用ベースプレート83および上板841aの外側面が第2の飛散防止枠823の内側面に接触しない程度に一回り小さいサイズとなっている。小領域用ベースプレート83は、機械構造上、82mm×82mm×18mmが最大サイズとなる。
ベースプレート用取付部材84の下面は固定ボルト等で造形テーブル5に固定される。ベースプレート用取付部材84の上面である上板841aの上面には、さらに小領域用ベースプレート83が固定される。小領域用ベースプレート83の水平方向(矢印C方向および矢印B方向)の位置は、小領域用造形台82の開口826の内側である。よって、造形テーブル5が上下方向(矢印A方向)に移動した場合は、小領域用ベースプレート83は開口826の内側である第2の造形領域Rsを上下方向に移動する。
本実施形態では、台座本体841および小領域用ベースプレート83は略正方形となる平面を備えるが、その例に限定されない。
【0050】
また、小領域造形ユニット8は、種類の異なる複数の小領域用造形台82と、その小領域用造形台82に適応する複数の小領域用ベースプレート83およびベースプレート用取付部材84を備えている。具体的には、水平方向(矢印C方向および矢印B方向)の開口826の大きさ、第2の飛散防止枠823の水平方向の開口の大きさ、外縁の大きさ、上下方向の高さの少なくともひとつが異なる複数の小領域用造形台82を備えている。また、その小領域用造形台82の種類に応じて、水平方向(矢印C方向および矢印B方向)の大きさ、上下方向の高さが異なる小領域用ベースプレート83および台座本体841を備え、さらに水平方向の開口の大きさ、上下方向の高さが異なる第1の飛散防止枠842を備える。また、
図19に示すように、上下方向の高さが大きい三次元造形物Kを造形する場合は、第1の飛散防止枠842および第2の飛散防止枠823は上下方向の高さが大きいものを使用し、さらにベースプレート用取付部材84と小領域用ベースプレート83の間に三次元造形物Kの高さに対応するための接続部材85を設けてもよい。
このように、複数種類の小領域用造形台82、小領域用ベースプレート83およびベースプレート用取付部材84を備えることで、第2の造形領域Rsの大きさを変更することができ、サイズの異なる三次元造形物を造形することが可能となる。
【0051】
<3.小領域造形ユニットの取付方法と三次元造形物の製造方法>
次に、積層造形装置100に小領域造形ユニット8を取り付ける方法と小領域造形ユニット8を使用した三次元造形物の製造方法について説明する。小領域造形ユニット8を取り付ける方法においては、リコータヘッド31から小領域用リコータヘッド81に交換する場合を例に挙げて説明を行う。
【0052】
(3.1 小領域造形ユニットの取付方法)
まず、ベースプレート33を造形テーブル5から取り外す。そして、小領域用ベースプレート83をベースプレート用取付部材84に固定し、その後、
図13に示すように小領域用ベースプレート83が取り付けられたベースプレート用取付部材84を造形テーブル5上に固定する。その後、ベースプレート用取付部材84および小領域用ベースプレート83を載置した状態で造形テーブル5の高さを適切な位置に調整する。
次に、リコータヘッド31から小領域用リコータヘッド81に交換する作業を行う。具体的には、リコート部材32の矢印B方向の側面からブレード312を取り外し、リコート部材32の上面からセンサ313、材料ケース311、材料ケース支持枠315およびパウダーガイド314を順に取り外す。リコータヘッド31の構成部材を取り外すと、リコート部材32だけがベース台4上に取り付けられた状態となる。
今度は、リコート部材32の矢印B方向の側面に小領域用ブレード812を取り付け、リコート部材32の上面に小領域用パウダーガイド814、小領域用材料ケース811および小領域用センサ813を取り付ける。小領域用リコータヘッド81の構成部材をリコート部材32に取りつけると、小領域用リコータヘッド81がベース台4上に取り付けられた状態となる。
さらに、ベース台4の上に小領域用造形台82の外縁825を接触させて、第2の造形領域Rsを除いた第1の造形領域R全体を覆う状態で小領域用造形台82を載置する。ベースプレート用取付部材84、小領域用ベースプレート83および小領域用造形台82を載置すると、小領域用造形台82の開口826に小領域用ベースプレート83の上面が配置される構成となる。
このように、ベースプレート用取付部材84、小領域用ベースプレート83を取り付け、リコータヘッド31から小領域用リコータヘッド81に交換し、小領域用造形台82を載置すると、積層造形装置100に小領域造形ユニット8が取り付けられた状態となる。
【0053】
図14に示すように、小領域用ベースプレート83および上板841aの外縁の大きさよりも第2の飛散防止枠823の開口は大きく形成され、第2の飛散防止枠823の外縁の大きさよりも第1の飛散防止枠842の開口が大きく形成されている。よって、造形テーブル5が上下方向に移動した場合であっても、小領域用ベースプレート83および上板841aの外側面が第2の飛散防止枠823の内側面に接触することがなく、同様に第2の飛散防止枠823の外側面が第1の飛散防止枠842の内側面に接触することがない。
【0054】
(3.2 三次元造形物の製造方法)
上述のように小領域造形ユニット8を積層造形装置100に設置した後に、小領域造形ユニット8を使用して造形を行う。
具体的には、
図2に示すように小領域用リコータヘッド81は、第2の造形領域Rsの左側でチャンバ1の造形テーブル5上をすぎた左壁面1f側の初期位置に位置している。作業者は、小領域用材料ケース811の材料供給口811aから、試験片等を造形するために使用する材料粉体を投入する。
造形が開始されると、小領域用材料ケース811内に材料粉体が充填されている小領域用リコータヘッド81を第2の造形領域Rsの左側から右側に移動させる。一対の仕切板821の間に材料排出口814aから材料粉体が撒布され、小領域用ベースプレート83上に材料粉体層6が形成される。
次に、材料粉体層6中の所定部位にレーザ光Lを照射することによって材料粉体層6のレーザ光照射部位を固化させ、固化層を得る。
【0055】
1層目の固化層を形成後、造形テーブル5の高さを材料粉体層6の1層分下げる。第2の造形領域Rs上を小領域用リコータヘッド81が往復移動することにより、固化層を覆うように造形テーブル5上に2層目の材料粉体層6が形成される。次に、上記と同様の方法で、材料粉体層6中の所定部位にレーザ光Lを照射して材料粉体層のレーザ光照射部位を固化させることにより、2層目の固化層を得る。
【0056】
2層目の固化層を形成した後、小領域用リコータヘッド81は第2の造形領域Rsの外(
図1における第2の造形領域Rsの右側)に戻る。以上の工程を繰り返すことによって、3層目以降の固化層が形成され、三次元造形物Kが形成される。隣接する固化層は、互いに強く固着される。
【0057】
小領域用リコータヘッド81が往復移動する矢印B方向の移動範囲は、第2の造形領域Rs上に材料粉体層6を形成できる範囲に設定されている。小領域用リコータヘッド81がベース台4の左右端に設けられた粉体排出部27bまで到達しないように制御されていてもよいし、粉体排出部27bから材料粉体が排出されないように粉体排出部27bを被覆するカバーが設けられていてもよい。
【0058】
図15に示すように、造形テーブル5を降下させながら三次元造形物Kを製造すると、切削屑などの不純物を含んだ未固化の材料粉体Mが小領域用ベースプレート83の上面と第2の飛散防止枠823の隙間から落下して、第1の飛散防止枠842の内側に蓄積される。また、移動する小領域用リコータヘッド81によって押し出される余剰の材料粉体Mは、一対の仕切板821の間に蓄積される。造形テーブル5上の材料粉体Mは第2の飛散防止枠823および第1の飛散防止枠842によって飛散が防止され、
図1に示す材料保持壁26および材料回収用バケット30に連通する粉体排出部27aまで到達することがない。さらにベース台4上の材料粉体Mは一対の仕切板821の間に保持されるため、材料回収用バケット30に連通する粉体排出部27bに到達することがない。
このように小領域造形ユニット8を使用すれば、第1の飛散防止枠842内および小領域用造形台82の一対の仕切板821内を清掃するだけで複数種類の新材料を簡単に検証することが可能となる。さらに、小領域造形ユニット8を使用した造形からMRSユニットを使用した連続造形に切り替える場合であっても、最終製品造形時の材料粉体の回収系統および供給系統に新材料が混入することがないため、簡単に造形方法を切り替えることが可能となる。
【0059】
(他の実施形態)
本発明の積層造形装置100に図示しない制御部を設け、小領域用リコータヘッド81を振動させて小領域用材料ケース811内の材料粉体の排出を促進可能に構成されていてもよい。具体的には、制御部は、モータ51gの正転及び逆転を繰り返し切り替えるように制御して小領域用リコータヘッド81をリコート前に水平1軸方向(矢印B方向)の前後に移動させることで、小領域用リコータヘッド81を振動させる。制御部による小領域用リコータヘッド81の振動は、モータ51gを用いる上記の方法に限定されない。例えば、小領域用材料ケース811の側面の外側に超音波振動子を取り付け、制御部により超音波振動子を制御して小領域用リコータヘッド81を振動させてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 :チャンバ
1b :供給口
1c :排出口
1d :造形空間
1e :右壁面
1f :左壁面
13 :照射装置
15 :不活性ガス供給装置
17 :付着防止部
19 :ヒュームコレクタ
21 :ダクトボックス
23 :ダクトボックス
27a :粉体排出部
27b :粉体排出部
29 :シューター
30 :材料回収用バケット
31 :リコータヘッド
32 :リコート部材
33 :ベースプレート
4 :ベース台
40 :材料粉体回収ユニット
41 :材料回収用搬送装置
43 :不純物除去装置
46 :材料タンク
47 :材料乾燥装置
48 :材料供給用搬送装置
5 :造形テーブル
51 :リコータヘッド駆動機構
52 :造形テーブル駆動機構
6 :材料粉体層
60 :材料供給ユニット
69 :中間ダクト
69a :中間ダクト出口
70 :中間ダクトシャッター
71 :メインダクト
8 :小領域造形ユニット
81 :小領域用リコータヘッド
82 :小領域用造形台
83 :小領域用ベースプレート
84 :ベースプレート用取付部材
85 :接続部材
L :レーザ光
R :第1の造形領域
Rs :第2の造形領域
100 :積層造形装置
【手続補正書】
【提出日】2023-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の造形領域を有するベース台と、当該第1の造形領域に配置された造形テーブルと、当該造形テーブルを上下方向に移動させる造形テーブル駆動機構を備えた積層造形装置用の小領域造形ユニットであって、前記小領域造形ユニットは、前記ベース台に載置され、前記第1の造形領域の一部に第2の造形領域を形成する小領域用造形台と、前記造形テーブルに固定され、前記第2の造形領域を上下方向に移動する小領域用ベースプレートと、前記造形テーブルに固定された第1の飛散防止枠を備え、前記第2の造形領域に三次元造形物が造形されるものであり、前記小領域用造形台は、前記第2の造形領域を形成する開口と、当該開口の外周に設けられかつ下方向に突出して設けられた中空状の第2の飛散防止枠と、前記開口を挟んで上方向に突出する一対の仕切板を有し、前記小領域用ベースプレートは、前記第2の造形領域を形成する開口および前記第2の飛散防止枠の内側を上下方向に移動され、前記第1の飛散防止枠は、中空状で前記小領域用ベースプレートの外周に上方向に突出して設けられ、前記第1の飛散防止枠の開口は、前記第2の飛散防止枠の外縁よりも大きく形成されている、積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【請求項2】
前記小領域造形ユニットは、前記ベース台上を水平1軸方向に移動して前記第2の造形領域に材料粉体を供給して前記小領域用ベースプレートに材料粉体層を形成する小領域用リコータヘッドを備える、請求項1記載の積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【請求項3】
前記小領域用リコータヘッドは、その下面に前記水平1軸方向に延びる一対の溝を備え、前記溝の内側を前記仕切板が相対的に移動する、請求項2記載の積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【請求項4】
前記小領域用リコータヘッドは、前記材料粉体を収容する材料ケースを備え、前記材料ケースは前記水平1軸方向に直交する他の水平1軸方向に延びて形成され、その長手方向の最大長さは前記ベース台の前記他の水平1軸方向の幅と同じになるように形成されている、請求項2記載の積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【請求項5】
前記材料ケースは、その下部が逆角錐台形状をなす、請求項4記載の積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【請求項6】
前記小領域造形ユニットは前記積層造形装置に着脱可能に固定されている、請求項1記載の積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【請求項7】
前記小領域造形ユニットは、種類が異なる複数の前記小領域用造形台と前記小領域用ベースプレートと前記第1の飛散防止枠を備えた、請求項1記載の積層造形装置用の小領域造形ユニット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、第1の造形領域を有するベース台と、当該第1の造形領域に配置された造形テーブルと、当該造形テーブルを上下方向に移動させる造形テーブル駆動機構を備えた積層造形装置用の小領域造形ユニットであって、前記小領域造形ユニットは、前記ベース台に載置され、前記第1の造形領域の一部に第2の造形領域を形成する小領域用造形台と、前記造形テーブルに固定され、前記第2の造形領域を上下方向に移動する小領域用ベースプレートと、前記造形テーブルに固定された第1の飛散防止枠を備え、前記第2の造形領域に三次元造形物が造形されるものであり、前記小領域用造形台は、前記第2の造形領域を形成する開口と、当該開口の外周に設けられかつ下方向に突出して設けられた中空状の第2の飛散防止枠と、前記開口を挟んで上方向に突出する一対の仕切板を有し、前記小領域用ベースプレートは、前記第2の造形領域を形成する開口および前記第2の飛散防止枠の内側を上下方向に移動され、前記第1の飛散防止枠は、中空状で前記小領域用ベースプレートの外周に上方向に突出して設けられ、前記第1の飛散防止枠の開口は、前記第2の飛散防止枠の外縁よりも大きく形成されていることを特徴とする。