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特開2023-162732位相差層付偏光板および画像表示装置
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  • 特開-位相差層付偏光板および画像表示装置 図1
  • 特開-位相差層付偏光板および画像表示装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162732
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】位相差層付偏光板および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231101BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20231101BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/13363
G02F1/1335 510
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073319
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100143650
【弁理士】
【氏名又は名称】山元 美佐
(72)【発明者】
【氏名】三田 聡司
(72)【発明者】
【氏名】有賀 草平
(72)【発明者】
【氏名】笹川 泰介
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB12
2H149AB13
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA18
2H149DA27
2H149DA39
2H149DB28
2H149EA02
2H149EA06
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA08Y
2H149FA12Z
2H149FA13Y
2H149FA24Y
2H149FA58Y
2H149FA66
2H149FD05
2H149FD21
2H149FD22
2H149FD25
2H149FD30
2H149FD35
2H149FD47
2H291FA22X
2H291FA30X
2H291FA94X
2H291FA95X
2H291FB04
2H291FB05
2H291FD12
2H291LA04
2H291PA04
2H291PA07
2H291PA44
2H291PA53
2H291PA64
(57)【要約】
【課題】過酷な高温高湿環境下においても優れた耐久性を有する画像表示装置の提供に貢献し得る位相差層付偏光板を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による位相差層付偏光板は、互いに対向する第一主面および第二主面を有する第一位相差層と、前記第一位相差層の前記第一主面側に配置される偏光子と、前記第一位相差層の前記第二主面側に配置される第一樹脂層と、前記偏光子と前記第一位相差層との間に配置される第二樹脂層と、を有し、前記第一位相差層は、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成され、Re(450)<Re(550)の関係を満足し、前記第一樹脂層は、100℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、前記第二樹脂層は、厚みが1μm以下であり、樹脂およびイソシアネート化合物を含む:ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび波長550nmの光で測定した面内位相差である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第一主面および第二主面を有する第一位相差層と、
前記第一位相差層の前記第一主面側に配置される偏光子と、
前記第一位相差層の前記第二主面側に配置される第一樹脂層と、
前記偏光子と前記第一位相差層との間に配置される第二樹脂層と、を有し、
前記第一位相差層は、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成され、Re(450)<Re(550)の関係を満足し、
前記第一樹脂層は、100℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、
前記第二樹脂層は、厚みが1μm以下であり、樹脂およびイソシアネート化合物を含む、
位相差層付偏光板:
ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび波長550nmの光で測定した面内位相差である。
【請求項2】
前記第一位相差層と前記偏光子との間に配置され、前記第二樹脂層に隣接して配置される接着剤層を有し、前記接着剤層は、接着剤組成物の硬化物層で構成され、前記接着剤組成物に含まれる単量体成分のモル分率の加重平均により算出されるオクタノール/水分配係数logPowは1.5以上4.0以下である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項3】
前記第二樹脂層は、ガラス転移温度が85℃以上で重量平均分子量Mwが50000以上500000未満の樹脂を含み、前記第二樹脂層における前記樹脂の含有量は50重量%以上90重量%以下である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項4】
前記第二樹脂層に含まれる前記イソシアネート化合物は、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、およびそれらの誘導体から選択される少なくとも1つを含み、前記第二樹脂層における前記イソシアネート化合物の含有量は10重量%以上50重量%以下である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項5】
前記第一位相差層の前記第二主面側に配置され、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す第二位相差層を有し、
前記第一樹脂層は前記第一位相差層と前記第二位相差層との間に配置される、
請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項6】
前記第一樹脂層は接着層として機能する、請求項5に記載の位相差層付偏光板。
【請求項7】
前記第一樹脂層は、100℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項8】
前記第一樹脂層は、25℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項9】
前記第一樹脂層は、100℃における貯蔵弾性率G´(100)に対する25℃における貯蔵弾性率G´(25)の比(G´(25)/G´(100))が10.0未満である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項10】
前記第一位相差層は、カーボネート結合およびエステル結合からなる群から選択される少なくとも1つの結合基と、下記一般式(I)で表される構造単位および下記一般式(II)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位とを含み、正の屈折率異方性を有する樹脂を含有する、請求項1に記載の位相差層付偏光板:
【化1】
【化2】
一般式(I)および(II)中、R~Rは、それぞれ独立に、直接結合、置換または非置換の炭素数1~4のアルキレン基であり、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数4~10のアリール基、置換または非置換の炭素数1~10のアシル基、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアリールオキシ基、置換または非置換のアミノ基、置換または非置換の炭素数1~10のビニル基、置換または非置換の炭素数1~10のエチニル基、置換基を有する硫黄原子、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基であり;ただし、R~Rは、互いに同一であっても、異なっていてもよく、R~Rのうち隣り合う少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の位相差層付偏光板を備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差層付偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置には、代表的には偏光板および位相差板が用いられている。実用的には、偏光板と位相差板とを一体化した位相差層付偏光板が広く用いられている(例えば、特許文献1)。近年、画像表示装置の用途の広がりに伴い、従来は要求されなかった過酷な高温高湿環境下における耐久性が求められる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3325560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、過酷な高温高湿環境下においても優れた耐久性を有する画像表示装置の提供に貢献し得る位相差層付偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.本発明の実施形態による位相差層付偏光板は、互いに対向する第一主面および第二主面を有する第一位相差層と、前記第一位相差層の前記第一主面側に配置される偏光子と、前記第一位相差層の前記第二主面側に配置される第一樹脂層と、前記偏光子と前記第一位相差層との間に配置される第二樹脂層と、を有し、前記第一位相差層は、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成され、Re(450)<Re(550)の関係を満足し、前記第一樹脂層は、100℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、前記第二樹脂層は、厚みが1μm以下であり、樹脂およびイソシアネート化合物を含む:ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび波長550nmの光で測定した面内位相差である。
2.上記1に記載の位相差層付偏光板は、上記第一位相差層と上記偏光子との間に配置され、上記第二樹脂層に隣接して配置される接着剤層を有してもよく、前記接着剤層は、接着剤組成物の硬化物層で構成され、前記接着剤組成物に含まれる単量体成分のモル分率の加重平均により算出されるオクタノール/水分配係数logPowは1.5以上4.0以下であり得る。
3.上記1または2に記載の位相差層付偏光板において、上記第二樹脂層は、ガラス転移温度が85℃以上で重量平均分子量Mwが50000以上500000未満の樹脂を含んでもよく、上記第二樹脂層における前記樹脂の含有量は50重量%以上90重量%以下であり得る。
4.上記1から3のいずれかに記載の位相差層付偏光板において、上記第二樹脂層に含まれる上記イソシアネート化合物は、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、およびそれらの誘導体から選択される少なくとも1つを含んでもよく、上記第二樹脂層における前記イソシアネート化合物の含有量は10重量%以上50重量%以下であり得る。
5.上記1から4のいずれかに記載の位相差層付偏光板は、上記第一位相差層の上記第二主面側に配置され、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す第二位相差層を有してもよく、上記第一樹脂層は上記第一位相差層と前記第二位相差層との間に配置され得る。
6.上記5に記載の位相差層付偏光板において、上記第一樹脂層は接着層として機能してもよい。
7.上記1から6のいずれかに記載の位相差層付偏光板において、上記第一樹脂層は、100℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であってもよい。
8.上記1から7のいずれかに記載の位相差層付偏光板において、上記第一樹脂層は、25℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であってもよい。
9.上記1から8のいずれかに記載の位相差層付偏光板において、上記第一樹脂層は、100℃における貯蔵弾性率G´(100)に対する25℃における貯蔵弾性率G´(25)の比(G´(25)/G´(100))が10.0未満であってもよい。
10.上記1から9のいずれかに記載の位相差層付偏光板において、上記第一位相差層は、カーボネート結合およびエステル結合からなる群から選択される少なくとも1つの結合基と、下記一般式(I)で表される構造単位および下記一般式(II)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位とを含み、正の屈折率異方性を有する樹脂を含有してもよい:
【化1】
【化2】
一般式(I)および(II)中、R~Rは、それぞれ独立に、直接結合、置換または非置換の炭素数1~4のアルキレン基であり、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数4~10のアリール基、置換または非置換の炭素数1~10のアシル基、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアリールオキシ基、置換または非置換のアミノ基、置換または非置換の炭素数1~10のビニル基、置換または非置換の炭素数1~10のエチニル基、置換基を有する硫黄原子、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基であり;ただし、R~Rは、互いに同一であっても、異なっていてもよく、R~Rのうち隣り合う少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
11.本発明の実施形態による画像表示装置は、上記1から10のいずれかに記載の位相差層付偏光板を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、過酷な高温高湿環境下においても優れた耐久性を有する画像表示装置の提供に貢献し得る位相差層付偏光板を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態に係る位相差層付偏光板の概略の構成を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の1つの実施形態に係る画像表示パネルの概略の構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。例えば、「Re(450)」は、23℃における波長450nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(450)」は、23℃における波長450nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0010】
A.位相差層付偏光板
図1は、本発明の1つの実施形態に係る位相差層付偏光板の概略の構成を示す模式的な断面図である。位相差層付偏光板100は、互いに対向する第一主面21aおよび第二主面21bを有する第一位相差層21と、第一位相差層21の第一主面21a側に配置された偏光板10、第二樹脂層50および接着層60と、第一位相差層21の第二主面21b側に配置された第一樹脂層30、第二位相差層22および粘着剤層40を有する。偏光板10は、第一位相差層21側から偏光子11および保護層12をこの順で含んでいる。偏光子11と第一位相差層21との間には保護層は配置されておらず、第二樹脂層50は偏光子11に隣接して配置されて偏光子11の保護材として機能し得る。位相差層付偏光板100は、代表的には、画像表示装置において第一位相差層21よりも偏光子11が視認側となるように配置される。位相差層付偏光板100は、例えば、偏光子11と保護層12とを積層して得られる偏光板10と、その他の層を積層することにより得ることができる。
【0011】
図示例では、偏光板10は、偏光子11と偏光子11の片側に配置される保護層12とを含んでいるが、さらに、偏光子11のもう片側に配置される第二保護層を含んでいてもよい。また、偏光板10は、偏光子11と保護層12とを含んでいるが、保護層12は省略されてもよい。
【0012】
第二樹脂層50は、偏光子11が他の部材に与え得る影響を低減し得る(バリア機能を有し得る)。例えば、偏光子に含まれ得るヨウ素の移動を抑制し得、位相差層付偏光板を画像表示装置に搭載した場合に、画像表示装置の金属部材の腐食を顕著に抑制することができる。位相差層付偏光板100はこのような樹脂層(例えば、第二位相差層22と粘着剤層40との間に配置される第三樹脂層)をさらに有していてもよい。
【0013】
第一位相差層21は、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成され、Re(450)<Re(550)の関係を満足する。第一位相差層21のRe(550)は、代表的には100nm~200nmである。第一位相差層21の遅相軸と偏光子11の吸収軸とのなす角度は、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは44°~46°であり、特に好ましくは約45°であり;あるいは、好ましくは130°~140°であり、より好ましくは132°~138°であり、さらに好ましくは134°~136°であり、特に好ましくは約135°である。
【0014】
位相差層付偏光板を構成する各部材は、任意の適切な接着層を介して積層され得る。接着層の具体例としては、接着剤層、粘着剤層が挙げられる。第一位相差層21は、接着層60を介して第二樹脂層50に積層されている。接着層60は、粘着剤層(例えば、アクリル系粘着剤層)であってもよいし、接着剤層であってもよい。粘着剤層である場合、その厚みは、好ましくは5μm~10μmである。接着剤層とすることにより、接着層の厚みを非常に薄く(例えば5μm未満に)することができ、位相差層付偏光板の薄型化に大きく貢献し得る。図示しないが、保護層12は、例えば、接着剤層を介して(好ましくは、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて)偏光子11に貼り合わせられる。接着剤層の厚みは、例えば0.05μm以上であり、好ましくは0.4μm~3.0μmであり、より好ましくは0.6μm~2.2μmである。
【0015】
第一位相差層21の第二主面21b側に配置される粘着剤層40により、例えば、位相差層付偏光板100は画像表示装置に含まれる画像表示パネルに貼り付け可能とされる。粘着剤層40の厚みは、好ましくは10μm~20μmである。粘着剤層40は、例えば、アクリル系粘着剤で構成される。図示しないが、粘着剤層40の表面には、実用的には、はく離ライナーが貼り合わせられる。はく離ライナーは、位相差層付偏光板が使用に供されるまで仮着され得る。はく離ライナーを用いることにより、例えば、粘着剤層40を保護するとともに、位相差層付偏光板のロール形成が可能となる。
【0016】
第一樹脂層30は、樹脂の硬化層であってもよく、樹脂の固化層であってもよく、これらの組み合わせからなる層であってもよい。第一樹脂層30は、第一位相差層21に直に接して配置される(第一位相差層21に直接形成される)ことが好ましい。1つの実施形態においては、第一樹脂層30は、第一位相差層21と第二位相差層22とを固着する接着層として機能し得る。
【0017】
第一樹脂層30の100℃における貯蔵弾性率G´(100)は、1.0×10Pa以上であり、好ましくは1.0×10Pa以上であり、より好ましくは3.0×10Pa以上である。一方、第一樹脂層30の100℃における貯蔵弾性率G´(100)は、1.0×1010Pa以下であることが好ましい。
【0018】
第一樹脂層30の25℃における貯蔵弾性率G´(25)は、好ましくは1.0×10Pa以上であり、より好ましくは1.0×10Pa以上であり、さらに好ましくは1.5×10Pa以上である。一方、第一樹脂層30の25℃における貯蔵弾性率G´(25)は、1.0×1010Pa以下であることが好ましい。第一樹脂層30の100℃における貯蔵弾性率G´(100)に対する25℃における貯蔵弾性率G´(25)の比(G´(25)/G´(100))は、好ましくは1.0よりも大きく、より好ましくは3.0以上である。一方、G´(25)/G´(100)は、好ましくは10.0未満であり、より好ましくは8.0以下である。
【0019】
第一樹脂層を設けることにより、過酷な高温高湿環境下においても優れた耐久性を有する位相差層付偏光板を実現することができる。具体的には、過酷な高温高湿環境下においてもクラックおよび剥がれが抑制された位相差層付偏光板を実現することができる。詳細は以下のとおりである。本発明の実施形態に用いられる第一位相差層は、非常に優れた円偏光特性を発現するので、非常に優れた反射防止機能を有する位相差層付偏光板(円偏光板)を実現することができる。さらに、このような第一位相差層は、後述する屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す第二位相差層と組み合わせて用いることにより、反射防止機能の広視野角化が可能となる。一方で、第一位相差層を構成する樹脂フィルムの延伸フィルムは、熱収縮が大きく、および、吸水率が高いので、高温高湿環境下における信頼性が不十分となる場合があり、さらに、特性に関する近年の新たな基準となりつつある過酷な高温高湿環境下においてはクラックおよび/または剥がれが発生する場合がある。本発明の実施形態によれば、第一樹脂層を設けることにより、第一位相差層の優れた特性を維持しつつ、位相差層付偏光板全体として、過酷な高温高湿環境下における耐久性および信頼性を顕著に改善することができる。その結果、過酷な高温高湿環境下においてもクラックおよび剥がれが抑制された位相差層付偏光板を実現することができる。また、第一樹脂層と第二樹脂層とを併せて用いることにより、極めて優れた耐久性を有する画像表示装置の提供することができる。なお、上記のメカニズムは推定であり、当該メカニズムは本発明の実施形態を限定または拘束するものではない。
【0020】
位相差層付偏光板に含まれてもよい第二位相差層22の屈折率特性は、代表的には、nz>nx=nyの関係を示す。このような位相差層を設けることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。
【0021】
位相差層付偏光板は、さらなる位相差層(図示せず)を有していてもよい。さらなる位相差層の光学的特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数、光弾性係数)、厚み、配置位置等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0022】
位相差層付偏光板は、枚葉状であってもよく長尺状であってもよい。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。長尺状の位相差層付偏光板は、ロール状に巻回可能である。
【0023】
B.偏光子
偏光子11としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子は、単層の樹脂フィルムから作製してもよく、二層以上の積層体を用いて作製してもよい。
【0024】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0025】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0026】
上記二層以上の積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0027】
偏光子の厚みは、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは12μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは8μm以下であり、とりわけ好ましくは5μm以下である。偏光子の厚みの下限は、例えば1μmであり得る。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0028】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、例えば41.5%~46.0%であり、好ましくは43.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0029】
C.保護層
保護層12および図示しない第二保護層は、それぞれ、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、環状オレフィン系(例えば、ポリノルボルネン系)、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0030】
保護層12は、85℃の環境下に240時間置いた後の収縮率が、好ましくは0.05%未満であり、より好ましくは0.04%以下であり、さらに好ましくは0.03%以下である。収縮率は小さいほど好ましく、その下限は例えば0.01%であり得る。収縮率がこのような範囲であれば、過酷な高温高湿環境下における偏光子のクラックおよび偏光子と位相差層との剥がれをより良好に抑制することができる。保護層12は、好ましくは、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムまたは環状オレフィン系樹脂フィルムで構成されている。TACフィルムおよび環状オレフィン系樹脂フィルムは、好ましくは、押出またはキャストにより製膜され、成膜時に延伸を含まない。その結果、残留応力が小さいので、上記所望の収縮率を実現し得る。
【0031】
本発明の実施形態による位相差層付偏光板は、代表的には、画像表示装置の視認側に配置され、保護層12は、視認側に配置される。したがって、保護層12には、必要に応じて、ハードコート(HC)処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。さらに/あるいは、保護層12には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、位相差層付偏光板は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0032】
保護層の厚みは、代表的には300μm以下であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは5μm~80μm、さらに好ましくは10μm~60μmである。なお、表面処理が施されている場合、保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0033】
第二保護層は、1つの実施形態においては、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。
【0034】
D.第一位相差層
D-1.第一位相差層の特性
第一位相差層21の面内位相差Re(550)は、上記のとおり100nm~200nmであり、好ましくは110nm~180nmであり、より好ましくは120nm~160nmであり、さらに好ましくは130nm~150nmである。すなわち、第一位相差層は、いわゆるλ/4板として機能し得る。
【0035】
第一位相差層は、上記のとおりRe(450)<Re(550)の関係を満たし、好ましくはRe(550)<Re(650)の関係をさらに満たす。すなわち、第一位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散の波長依存性を示す。第一位相差層のRe(450)/Re(550)は、例えば0.5を超えて1.0未満であり、好ましくは0.7~0.95であり、より好ましくは0.75~0.92であり、さらに好ましくは0.8~0.9である。Re(650)/Re(550)は、好ましくは1.0以上1.15未満であり、より好ましくは1.03~1.1である。
【0036】
第一位相差層は、上記のように面内位相差を有するので、nx>nyの関係を有する。第一位相差層は、nx>nyの関係を有する限り、任意の適切な屈折率特性を示す。第一位相差層の屈折率特性は、代表的にはnx>ny≧nzの関係を示す。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。第一位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~2.0であり、より好ましくは0.9~1.5であり、さらに好ましくは0.9~1.2である。このような関係を満たすことにより、位相差層付偏光板を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
【0037】
第一位相差層の厚みは、λ/4板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは15μm~70μmであり、さらに好ましくは20μm~60μmであり、最も好ましくは20μm~50μmである。
【0038】
第一位相差層は、80℃~125℃で180分までの時間加熱した時の遅相軸方向の収縮率が、例えば4%以下であり、好ましくは3.5%以下であり、より好ましくは3%以下である。収縮率は小さいほど好ましく、その下限は、例えば0.5%であり得る。第一位相差層の収縮率がこのような範囲であれば、過酷な高温高湿環境下におけるクラックをより良好に抑制することができる。
【0039】
第一位相差層を構成する延伸フィルムの破断伸びは、好ましくは200%以上であり、より好ましくは210%以上であり、さらに好ましくは220%以上であり、特に好ましくは245%以上である。破断伸びの上限は、例えば500%であり得る。第一位相差層を構成する延伸フィルムの破断伸びがこのような範囲であれば、上記収縮率による効果との相乗的な効果により、過酷な高温高湿環境下におけるクラックをより良好に抑制することができる。なお、本明細書において「破断伸び」とは、所定の延伸温度(例えば、Tg-2℃)での固定端一軸延伸においてフィルムが破断した時の伸び率を意味する。
【0040】
第一位相差層は、その光弾性係数の絶対値が好ましくは20×10-12(m/N)以下であり、より好ましくは1.0×10-12(m/N)~15×10-12(m/N)であり、さらに好ましくは2.0×10-12(m/N)~12×10-12(m/N)である。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、位相差層付偏光板を画像表示装置に適用した場合に表示ムラを抑制することができる。
【0041】
D-2.第一位相差層の構成材料
第一位相差層は、代表的には、カーボネート結合およびエステル結合からなる群から選択される少なくとも1つの結合基を含む樹脂を含有する。言い換えれば、第一位相差層は、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、これらをまとめて単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)を含有する。
【0042】
ポリカーボネート系樹脂は、1つの実施形態においては、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、本発明に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、当該記載は本明細書に参考として援用される。
【0043】
ポリカーボネート系樹脂は、1つの実施形態においては、上記一般式(I)で表される構造単位および/または上記一般式(II)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を含む。これらの構造単位は、2価のオリゴフルオレンに由来する構造単位であり、以下、オリゴフルオレン構造単位と称する場合がある。このようなポリカーボネート系樹脂は、正の屈折率異方性を有する。
【0044】
第一位相差層は、1つの実施形態においては、アクリル系樹脂をさらに含有してもよい。アクリル系樹脂の含有量は、代表的には0.5質量%~1.5質量%である。なお、本明細書において「質量」単位の百分率または部は、「重量」単位の百分率または部と同義である。
【0045】
第一位相差層は、1つの実施形態においては、酸化防止剤をさらに含有してもよい。酸化防止剤としては、任意の適切な化合物を用いることができる。具体例としては、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]:商品名「Irganox1010」(BASF社製)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン:商品名「Irganox1330」(BASF社製)、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート:商品名「Irganox3114」(BASF社製)、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル:商品名「Irganox1076」(BASF社製)、2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]:商品名「Irganox1035」(BASF社製)、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]:商品名「Irganox1098」(BASF社製)、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]:商品名「Irganox245」(BASF社製)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]商品名「Irganox259」(BASF社製)、4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール:商品名「Irganox565」(BASF社製)、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3、-テトラメチルブチル)フェノール:商品名「アデカスタブLA-31」(ADEKA社製)等が挙げられる。酸化防止剤の含有量は、代表的には1.5質量%~3.5質量%である。
【0046】
D-2-1.ポリカーボネート系樹脂
<オリゴフルオレン構造単位>
オリゴフルオレン構造単位は、上記一般式(I)または(II)で表される。一般式(I)および(II)中、R~Rは、それぞれ独立に、直接結合、置換または非置換の炭素数1~4のアルキレン基であり、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数4~10のアリール基、置換または非置換の炭素数1~10のアシル基、置換または非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~10のアリールオキシ基、置換または非置換のアミノ基、置換または非置換の炭素数1~10のビニル基、置換または非置換の炭素数1~10のエチニル基、置換基を有する硫黄原子、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基である。ただし、R~Rは、互いに同一であっても、異なっていてもよく、R~Rのうち隣り合う少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0047】
ポリカーボネート系樹脂におけるオリゴフルオレン構造単位の含有量は、樹脂全体に対して、好ましくは1質量%~40質量%であり、より好ましくは10質量%~35質量%であり、さらに好ましくは15質量%~30質量%であり、特に好ましくは18質量%~25質量%である。オリゴフルオレン構造単位の含有量が多すぎる場合、光弾性係数が大きくなりすぎる、信頼性が不十分となる、位相差発現性が不十分となるといった問題が生じるおそれがある。さらに、オリゴフルオレン構造単位が樹脂中に占める割合が高くなるため、分子設計の幅が狭くなり、樹脂の改質が求められた時に改良が困難となる場合がある。一方、仮に、非常に少量のオリゴフルオレン構造単位により所望の逆分散波長依存性が得られたとしても、この場合には、オリゴフルオレン構造単位の含有量のわずかなばらつきに応じて光学特性が敏感に変化するので、諸特性が一定の範囲に収まるように製造することが困難となる場合がある。
【0048】
オリゴフルオレン構造単位の詳細は、例えば、国際公開第2015/159928号パンフレットに記載されている。当該公報は、本明細書に参考として援用される。
【0049】
<他の構造単位>
ポリカーボネート系樹脂は、代表的には、オリゴフルオレン構造単位に加えて他の構造単位を含み得る。1つの実施形態においては、他の構造単位は、好ましくはジヒドロキシ化合物またはジエステル化合物由来であり得る。目的とする逆分散波長性を発現させるためには、負の固有複屈折を有するオリゴフルオレン構造単位とともに、正の固有複屈折を有する構造単位をポリマー構造に組み込む必要があるため、共重合する他のモノマーとしては、正の複屈折を有する構造単位の原料となるジヒドロキシ化合物又はジエステル化合物がさらに好ましい。
【0050】
共重合モノマーとしては、芳香族環を含む構造単位を導入可能な化合物と、芳香族環を含む構造単位を導入しない、即ち脂肪族構造で構成される化合物が挙げられる。
【0051】
前記脂肪族構造で構成される化合物の具体例を以下に挙げる。エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物;ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール等の分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-アダマンタンジオール、水添ビスフェノールA、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等に例示される、脂環式炭化水素の2級アルコール、及び3級アルコールであるジヒドロキシ化合物;1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノール、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、リモネン等の、テルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等に例示される、脂環式炭化水素の1級アルコールであるジヒドロキシ化合物;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシアルキレングリコール類;イソソルビド等の環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物;スピログリコール、ジオキサングリコール等の環状アセタール構造を有するジヒドロキシ化合物;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸。
【0052】
前記芳香族環を含む構造単位を導入可能な化合物の具体例を以下に挙げる。2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3-フェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3,5-ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)メタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジクロロジフェニルエーテル等の芳香族ビスフェノール化合物;2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン等の芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物;テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸。
【0053】
尚、上記で挙げた脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸成分はジカルボン酸そのものとして前記ポリエステルカーボネートの原料とすることができるが、製造法に応じて、メチルエステル体、フェニルエステル体等のジカルボン酸エステルや、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体を原料とすることもできる。
【0054】
共重合モノマーとして、負の複屈折を有する構造単位を有する化合物として従来より知られている、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のフルオレン環を有するジヒドロキシ化合物や、フルオレン環を有するジカルボン酸化合物もオリゴフルオレン化合物と組み合わせて用いることができる。
【0055】
本発明の実施形態に用いられる樹脂は、前記脂環式構造を有する化合物によって導入可能な構造単位の中でも、共重合成分として下記式(III)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【化3】
【0056】
前記式(III)の構造単位を導入可能なジヒドロキシ化合物としては、スピログリコールを用いることができる。
【0057】
本発明の実施形態に用いられる樹脂において、前記式(III)で表される構造単位は5質量%以上、90質量%以下含有されていることが好ましい。上限は70質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下が特に好ましい。下限は10質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が特に好ましい。前記式(III)で表される構造単位の含有量が前記下限以上であれば、十分な機械物性や耐熱性、低い光弾性係数が得られる。さらに、アクリル系樹脂との相溶性が向上し、得られる樹脂組成物の透明性をさらに向上することができる。また、スピログリコールは重合反応の速度が比較的に遅いため、含有量を前記上限以下に抑えることで、重合反応を制御しやすくなる。
【0058】
本発明の実施形態に用いられる樹脂は、共重合成分としてさらに下記式(IV)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【化4】
【0059】
前記式(IV)で表される構造単位を導入可能なジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド(ISB)、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
本発明の実施形態に用いられる樹脂において、前記式(IV)で表される構造単位は5質量%以上、90質量%以下含有されていることが好ましい。上限は70質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下が特に好ましい。下限は10質量%以上がさらに好ましく、15質量%以上が特に好ましい。前記式(IV)で表される構造単位の含有量が前記下限以上であれば、十分な機械物性や耐熱性、低い光弾性係数が得られる。また、前記式(IV)で表される構造単位は吸水性が高い特性があるため、前記式(IV)で表される構造単位の含有量が前記上限以下であれば、吸水による成形体の寸法変化を許容範囲に抑えることができる。
【0061】
本発明の実施形態に用いられる樹脂は、さらに別の構造単位を含んでいてもよい。尚、かかる構造単位を「その他の構造単位」と称することがある。その他の構造単位を有するモノマーとしては、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(及びその誘導体)を採用することがより好ましく、1,4-シクロヘキサンジメタノールとトリシクロデカンジメタノールが特に好ましい。これらのモノマーに由来する構造単位を含む樹脂は、光学特性や耐熱性、機械特性等のバランスに優れている。また、ジエステル化合物の重合反応性は比較的低いため、反応効率を高める観点から、オリゴフルオレン構造単位を含有するジエステル化合物以外のジエステル化合物は用いないことが好ましい。
【0062】
本発明の実施形態に用いられる樹脂のガラス転移温度(Tg)は、110℃以上160℃以下であることが好ましい。上限は155℃以下がさらに好ましく、150℃以下がより好ましく、145℃以下が特に好ましい。下限は120℃以上がさらに好ましく、130℃以上が特に好ましい。ガラス転移温度が上記範囲外であると耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こしたり、第一位相差層の使用条件下における品質の信頼性が悪化する可能性がある。一方、ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時にフィルム厚みの斑が生じたり、フィルムが脆くなり、延伸性が悪化したりする場合があり、また、フィルムの透明性を損なう場合がある。
【0063】
D-2-2.アクリル系樹脂
アクリル系樹脂としては、熱可塑性樹脂としてのアクリル系樹脂が使用される。アクリル系樹脂の構造単位となる単量体としては、例えば、以下の化合物が挙げられる:メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリオイルオキシエチル、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルメタクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロドデシルメタクリレート、シクロドデシルアクリレート。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の単量体を組み合わせて用いる形態は、2種以上の単量体の共重合、1種の単量体の単独重合体の2つ以上のブレンド、およびこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、これらのアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体(例えば、オレフィン系単量体、ビニル系単量体)を併用してもよい。
【0064】
アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチル由来の構造単位を含む。アクリル系樹脂におけるメタクリル酸メチル由来の構造単位の含有量は70質量%以上、100質量%以下が好ましい。下限は80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。この範囲であると、本発明のポリカーボネート系樹脂と優れた相溶性が得られる。メタクリル酸メチル以外の構造単位としては、アクリル酸メチル、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレンを用いることが好ましい。アクリル酸メチルを共重合することで熱安定性を向上させることができる。フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレンを用いることで、アクリル系樹脂の屈折率を調整することができるため、組み合わせる樹脂の屈折率に合わせ込むことで、得られる樹脂組成物の透明性を向上させることができる。このようなアクリル系樹脂を用いることで、伸張性および位相差発現性に優れ、かつ、ヘイズの小さい逆分散位相差フィルムが得られ得る。
【0065】
アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwは、10,000以上、200,000以下である。下限は30,000以上が好ましく、50,000以上が特に好ましい。上限は180,000以下が好ましく、150,000以下が特に好ましい。分子量がこのような範囲であれば、ポリカーボネート系樹脂との相溶性が得られることで、最終的な位相差フィルム(位相差層)の透明性を向上させることができ、かつ、延伸時の伸張性を十分に向上させる効果が得られる。尚、上記の重量平均分子量はGPCにより測定される、ポリスチレン換算の分子量である。また、アクリル系樹脂は実質的に分岐構造を含有しないことが相溶性の観点から好ましい。分岐構造を含有しないことは、アクリル系樹脂のGPCカーブが単峰性であることなどで確認できる。
【0066】
D-2-3.ポリカーボネート系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド
ポリカーボネート系樹脂とアクリル系樹脂とを併用する場合、ポリカーボネート系樹脂とアクリル系樹脂とはブレンドされ、樹脂組成物として位相差フィルム(第一位相差層)の製造方法に供される(製造方法はD-3項で後述する)。ポリカーボネート系樹脂とアクリル系樹脂とは、好ましくは、溶融状態でブレンドされ得る。溶融状態でブレンドする方法としては、代表的には、押出機を用いた溶融混練が挙げられる。混練温度(溶融樹脂温度)は、好ましくは200℃~280℃であり、より好ましくは220℃~270℃であり、さらに好ましくは230℃~260℃である。混練温度がこのような範囲であれば、熱分解を抑制しながら、両樹脂が均一にブレンドされた樹脂組成物のペレットが得られ得る。押出機中の溶融樹脂温度が280℃を超えると、樹脂の着色および/または熱分解が発生する場合がある。一方、押出機中の溶融樹脂温度が200℃を下回ると、樹脂粘度が高くなり過ぎて押出機に過大な負荷が掛かったり、樹脂の溶融が不十分となる場合がある。なお、押出機の構成、スクリューの構成等としては、任意の適切な構成が採用され得る。光学フィルム用途に耐え得る樹脂の透明性を得るためには二軸押出機を用いることが好ましい。さらに、樹脂中の残存低分子成分や、押出混錬中の低分子量の熱分解成分は、製膜工程や延伸工程で冷却ロールや搬送ロールを汚染する懸念があるため、これを除去するために、真空ベントを備える押出機を用いることが好ましい。
【0067】
樹脂組成物(結果として、第一位相差層)におけるアクリル系樹脂の含有量は、上記のとおり0.5質量%以上、2.0質量%以下である。下限は0.6質量%以上がより好ましい。上限は1.5質量%以下が好ましく、1.0重量%以下がより好ましく、0.9重量%以下がさらに好ましく、0.8質量%以下が特に好ましい。このように、ポリカーボネート系樹脂にアクリル系樹脂をごく限定的な比率で配合することにより、伸張性および位相差発現性を顕著に増大させることができる。さらに、ヘイズを抑制することができる。このような効果は理論的には明らかでなく、試行錯誤により得られた予期せぬ優れた効果である。なお、アクリル系樹脂の含有量が少なすぎると、上記の効果が得られない場合がある。一方、アクリル系樹脂の含有量が多すぎると、ヘイズが高くなってしまう場合がある。また、伸張性および位相差発現性も上記範囲内の場合に比べて不十分となったり、かえって低下してしまう場合が多い。
【0068】
樹脂組成物は、機械特性および/または耐溶剤性等の特性を改質する目的で、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、AS、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等の合成樹脂、ゴム、およびこれらの組み合わせがさらにブレンドされてもよい。
【0069】
樹脂組成物は、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤の具体例としては、熱安定剤、酸化防止剤、触媒失活剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、染顔料、衝撃改良剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、核剤、難燃剤、無機充填剤、発泡剤が挙げられる。樹脂組成物に含まれる添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0070】
D-3.第一位相差層の形成方法
第一位相差層は、上記D-2項に記載のポリカーボネート系樹脂(アクリル系樹脂を併用する場合には樹脂組成物)からフィルムを形成し、さらにそのフィルムを延伸することにより得られる。フィルムを形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、キャスト塗工法(例えば、流延法)、カレンダー成形法、熱プレス法等が挙げられる。中でも得られるフィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができる押出成形法、またはキャスト塗工法が好ましい。キャスト塗工法では残存溶媒による問題が生じるおそれがあるため、特に好ましくは押出成形法、中でもTダイを用いた溶融押出成形法がフィルムの生産性や、後の延伸処理のし易さの観点から好ましい。成形条件は、使用される樹脂の組成や種類、第一位相差層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。このようにして、ポリカーボネート系樹脂と必要に応じてアクリル系樹脂とを含む樹脂フィルムが得られ得る。
【0071】
樹脂フィルム(未延伸フィルム)の厚みは、得られる第一位相差層の所望の厚み、所望の光学特性、後述の延伸条件などに応じて、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは50μm~300μmである。
【0072】
上記延伸は、任意の適切な延伸方法、延伸条件(例えば、延伸温度、延伸倍率、延伸方向)が採用され得る。具体的には、自由端延伸、固定端延伸、自由端収縮、固定端収縮などの様々な延伸方法を、単独で用いることも、同時もしくは逐次で用いることもできる。延伸方向に関しても、長さ方向、幅方向、厚さ方向、斜め方向等、様々な方向や次元に行なうことができる。
【0073】
上記延伸方法、延伸条件を適宜選択することにより、上記所望の光学特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数)を有する位相差層を得ることができる。
【0074】
上記フィルムの延伸温度は、1つの実施形態においては、好ましくはポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度(Tg)~Tg+30℃、さらに好ましくはTg~Tg+15℃、最も好ましくはTg~Tg+10℃である。アクリル系樹脂を併用する場合、延伸温度は、Tg以下の温度である。通常、ポリカーボネート系樹脂のフィルムを延伸する場合、Tg以下の温度ではフィルムがガラス状態であるので、延伸は実質的には不可能である。一方、アクリル系樹脂(代表的には、ポリメチルメタクリレート)を少量配合することにより、ポリカーボネート系樹脂のTgを実質的に変化させることなく、Tg以下での延伸が可能となる。さらに、理論的には明らかではないが、Tg以下で延伸を行うことにより、伸張性および位相差発現性に優れ、かつ、ヘイズの小さい逆分散位相差フィルム(第一位相差層)を実現することができる。具体的には、延伸温度は、好ましくはTg~Tg-10℃であり、より好ましくはTg~Tg-8℃であり、さらに好ましくはTg~Tg-5℃である。なお、上記フィルムは、例えばTg+5℃程度、また例えばTg+2℃程度までであれば、Tgよりも高い温度であっても適切に延伸され得る。
【0075】
上記のようにして得られる延伸フィルムは、必要に応じて、105℃以上の温度で2分間以上加熱する加熱処理に供される。加熱処理を施すことにより、上記所望の収縮率を有する第一位相差層を形成することができる。加熱温度は、好ましくは105℃~140℃であり、より好ましくは110℃~130℃であり、さらに好ましくは115℃~125℃である。加熱時間は、好ましくは2分間~150分間であり、より好ましくは3分間~120分間であり、さらに好ましくは5分間~60分間である。
【0076】
必要に応じて、延伸フィルムは、緩和処理に供されてもよい。これにより、延伸により生じる応力を緩和することができ、上記所望の収縮率を有する位相差層を形成することができる。緩和処理条件としては、任意の適切な条件を採用し得る。例えば、延伸フィルムを、延伸方向に沿って所定の緩和温度および所定の緩和率(収縮率)で収縮させる。緩和温度は、好ましくは60℃~150℃である。緩和率は、好ましくは3%~6%である。緩和処理が行われる場合、緩和処理は、代表的には、上記加熱処理の前に行われ得る。
【0077】
以上のようにして、第一位相差層を構成する位相差フィルムが得られ得る。
【0078】
E.第二位相差層
第二位相差層は、上記のとおり、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す、いわゆるポジティブCプレートであり得る。第二位相差層としてポジティブCプレートを用いることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。この場合、第二位相差層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nm、より好ましくは-70nm~-250nm、さらに好ましくは-90nm~-200nm、特に好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。すなわち、第二位相差層の面内位相差Re(550)は10nm未満であり得る。
【0079】
nz>nx=nyの屈折率特性を有する第二位相差層は、任意の適切な材料で形成され得る。第二位相差層は、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムからなる。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであっても液晶ポリマーであってもよい。当該液晶化合物および当該位相差層の形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、第二位相差層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは0.5μm~8μmであり、さらに好ましくは0.5μm~5μmである。
【0080】
F.第一樹脂層
上記第一樹脂層は、上記貯蔵弾性率を満足し得る、任意の適切な構成が採用され得る。第一樹脂層は、例えば、耐熱耐湿層として機能し得る。具体的には、第一樹脂層を設けることにより、過酷な高温高湿環境下においても優れた耐久性を有する位相差層付偏光板を実現することができる。
【0081】
第一樹脂層は、好ましくは、実質的に光学的に等方性を有する。第一樹脂層の面内位相差Re(550)は、好ましくは0nm~10nmであり、より好ましくは0nm~5nmであり、さらに好ましくは0nm~3nmであり、特に好ましくは0nm~2nmである。第一樹脂層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-10nm~+10nmであり、より好ましくは-5nm~+5nmであり、さらに好ましくは-3nm~+3nmであり、特に好ましくは-2nm~+2nmである。第一樹脂層のRe(550)およびRth(550)がこのような範囲であれば、画像表示装置に適用した場合に表示特性に対する悪影響を防止することができる。
【0082】
第一樹脂層の厚み3μmにおける380nmでの光線透過率は、高ければ高いほど好ましい。具体的には、光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率がこのような範囲であれば、所望の透明性を確保することができる。光線透過率は、例えば、ASTM-D-1003に準じた方法で測定され得る。
【0083】
第一樹脂層のヘイズは、低ければ低いほど好ましい。具体的には、ヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1%以下である。ヘイズが5%以下であると、位相差層付偏光板に良好なクリヤー感を与えることができる。その結果、画像表示装置の表示内容を良好に視認することができる。
【0084】
1つの実施形態においては、第一樹脂層と第一位相差層との密着性は、高ければ高いほど好ましい。具体的には、密着性は、JIS K 5600-5-6に記載の碁盤目剥離試験において、好ましくは2点以下、より好ましくは1点以下、特に好ましくは0点の状態を示す。密着性が碁盤目剥離試験により2点以下であると、過酷な高温高湿環境下における位相差層付偏光板の剥がれを良好に抑制することができ、かつ、リワーク時の剥がれ等の外観に関する問題を抑制することができる。
【0085】
上記のとおり、第一樹脂層は、代表的には、樹脂の硬化層または固化層である。硬化層は、例えば、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化型樹脂または活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化層であり得る。硬化層の具体例としては、単純な硬化層に加えて、ハードコート層、活性エネルギー線硬化型接着剤で構成された接着剤層、架橋剤による架橋層が挙げられる。固化層は、例えば、熱可塑性樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化層であり得る。これらは、単独で第一樹脂層を構成してもよく、二種以上組み合わせて第一樹脂層を構成してもよい。
【0086】
(ハードコート層)
ハードコート層(実質的には、ハードコート層を形成する組成物)は、硬化成分と代表的には光重合開始剤とを含む。硬化成分の代表例としては、活性エネルギー線硬化型(メタ)アクリレートが挙げられる。活性エネルギー線硬化型(メタ)アクリレートとしては、例えば、紫外線硬化型(メタ)アクリレート、電子線硬化型(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましくは、紫外線硬化型(メタ)アクリレートである。簡単な加工操作にて効率よくハードコート層を形成することができるからである。紫外線硬化型(メタ)アクリレートは、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等を含む。紫外線硬化型(メタ)アクリレートは、紫外線重合官能基を好ましくは2個以上、より好ましくは3~6個有するモノマー成分およびオリゴマー成分を含む。紫外線硬化型(メタ)アクリレートの具体例としては、ウレタンアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、ポリエーテルウレタンジアクリレートが挙げられる。これら以外に、後述する活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化成分を用いてもよい。硬化成分は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。硬化方式は、ラジカル重合方式であってもよく、カチオン重合方式であってもよい。1つの実施形態においては、(メタ)アクリレートにシリカ粒子やポリシルセスキオキサン化合物などを配合した有機無機ハイブリッド材料を用いてもよい。ハードコート層の構成材料および形成方法は、例えば特開2011-237789号公報、特開2020-064236号公報、特開2010-152331号公報等に記載されている。これらの公報の記載は、本明細書に参考として援用される。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。また、(メタ)アクリルを単にアクリルと称する場合がある。
【0087】
(活性エネルギー線硬化型接着剤)
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤が挙げられる。また、硬化メカニズムの観点からは、活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、ラジカル硬化型、カチオン硬化型、アニオン硬化型、ラジカル硬化型とカチオン硬化型とのハイブリッドが挙げられる。
【0088】
接着剤は、ハードコート層を形成する組成物と同様に、硬化成分と代表的には光重合開始剤とを含む。硬化成分としては、代表的には、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基などの官能基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーが挙げられる。硬化成分の具体例としては、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリントリアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、γ-ブチロラクトンアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリル酸付加物、アクリロイルモルホリン、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン、N-メチルピロリドン、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が挙げられる。硬化成分として、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート等を用いてもよい。これら以外に、上記のハードコート層の硬化成分を用いてもよい。硬化成分は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。接着剤は、上記の硬化成分に加えてオリゴマー成分をさらに含有してもよい。オリゴマー成分を用いることにより、硬化前の接着剤の粘度を低減し、操作性を高めることができる。オリゴマー成分の代表例としては、(メタ)アクリル系オリゴマー、ポリウレタン系(メタ)アクリルオリゴマーが挙げられる。
【0089】
(架橋剤による架橋層)
架橋層(実質的には、架橋層を形成する組成物)は、硬化成分と架橋剤とを含む。硬化成分としては、ハードコート層および活性エネルギー線硬化型接着剤に関して上で説明したものが挙げられる。架橋剤は、熱架橋剤であってもよく光架橋剤であってもよい。すなわち、架橋層は、熱架橋層であってもよく光架橋層であってもよい。熱架橋剤としては、例えば、有機系架橋剤、多官能性金属キレートが挙げられる。有機系架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤が挙げられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。光架橋剤としては、例えば、光酸発生剤が挙げられる。光酸発生剤としては、例えば、有機過酸化物が挙げられる。熱架橋剤または光架橋剤は、それぞれ、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0090】
(熱硬化性樹脂の硬化層)
熱硬化性樹脂としては、硬化層が上記所望の貯蔵弾性率を有する限りにおいて任意の適切な熱硬化性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂の代表例としては、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂には、例えば、オキセタン化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマー)が配合されてもよい。
【0091】
(固化層)
固化層は、上記のとおり、例えば、熱可塑性樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化層であり得る。熱可塑性としては、固化層が上記所望の貯蔵弾性率を有する限りにおいて任意の適切な熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂の代表例としては、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0092】
(メタ)アクリル系樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは100℃~220℃であり、より好ましくは110℃~200℃であり、さらに好ましくは120℃~160℃である。(メタ)アクリル系樹脂は、環構造を含む繰り返し単位を有していてもよい。環構造を含む繰り返し単位としては、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位、無水マレイン酸単位、マレイミド(N-置換マレイミド)単位が挙げられる。環構造を含む繰り返し単位は、1種類のみが(メタ)アクリル系樹脂の繰り返し単位に含まれていてもよく、2種類以上が含まれていてもよい。(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体とホウ素含有単量体との共重合体(ホウ素含有(メタ)アクリル系樹脂)であってもよい。ホウ素含有(メタ)アクリル系樹脂は、上記のような環構造を含む繰り返し単位を有していてもよい。
【0093】
エポキシ樹脂としては、好ましくは芳香族環を有するエポキシ樹脂が用いられる。芳香族環を有するエポキシ樹脂を用いることにより、固化層と第一位相差層との密着性が向上し得る。芳香族環を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂などのノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノールなどの多官能型のエポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などが挙げられる。好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が用いられる。エポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
有機溶媒としては、熱可塑性樹脂を溶解または均一に分散し得る任意の適切な有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の具体例としては、酢酸エチル、トルエン、メチリエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。
【0095】
有機溶媒溶液の樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部~20重量部である。このような樹脂濃度であれば、第一位相差層に密着した均一な塗布膜を形成することができる。
【0096】
第一樹脂層の厚みは、好ましくは500nm~5μmであり、より好ましくは800nm~4μmであり、さらに好ましくは1μm~3μmである。第一樹脂層は、このような非常に薄い厚みであっても、過酷な高温高湿環境下においても優れた耐久性を有する位相差層付偏光板を実現することができる。第一樹脂層の厚みが薄すぎると、第一樹脂層自体の形成が困難となる場合があり、仮に形成されても効果が不十分となる場合がある。第一樹脂層の厚みが厚すぎても、硬化収縮によるカールが発生し第一樹脂層自体の形成が困難となる、あるいは、十分に硬化せず第一樹脂層が逆に脆弱層として機能してしまうという不具合が生じる場合がある。
【0097】
第一樹脂層は、代表的には、第一樹脂層を形成する組成物を第一位相差層に塗布し、塗布膜を硬化または固化させることにより形成される。具体的には、第一樹脂層は、層を形成する組成物を第一位相差層の第二主面に塗布し、塗布膜を硬化または固化させることにより形成される。第一樹脂層が活性エネルギー線硬化層である場合には、塗布膜に活性エネルギー線(例えば、可視光線、紫外線、電子線)を照射することにより塗布膜を硬化させることができる。第一樹脂層が熱硬化層である場合には、塗布膜を加熱することにより塗布膜を硬化させることができる。第一樹脂層が固化層である場合には、塗布膜を加熱することにより塗布膜を固化させることができる。
【0098】
第一樹脂層を形成する形成面(例えば、第一位相差層の表面)は、予め、表面改質されていてもよい。具体的には、表面改質により、形成面の表面エネルギーを上昇させておいてもよい。表面改質により、例えば、得られる第一樹脂層のせん断破壊強度を調整し得る。また、第一樹脂層と第一位相差層との密着性を向上させ得る。表面改質は、例えば、コロナ処理、プラズマ処理により行われる。これらは、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0099】
G.第二樹脂層
上述のとおり、第二樹脂層は、偏光子が他の部材に与え得る影響を低減し得る(バリア機能を有し得る)。例えば、偏光子に含まれ得るヨウ素の移動を抑制し得、位相差層付偏光板を画像表示装置に搭載した場合に、画像表示装置の金属部材の腐食を顕著に抑制することができる。第二樹脂層は、代表的には、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物である。このような構成であれば、厚みを非常に薄く(例えば10μm以下に)することができる。第二樹脂層の厚みは、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.7μm以下である。一方、樹脂膜の厚みは、好ましくは0.05μm以上であり、より好ましくは0.08μm以上であり、さらに好ましくは0.1μm以上であり、特に好ましくは0.2μm以上である。さらに、このような構成であれば、接着層を介することなく、偏光板(偏光子)に直に第二樹脂層を形成することができる。このような第二樹脂層は、例えば、水溶液または水分散体のような水系の塗布膜の固化物に比べて吸湿性および透湿性が小さいので加湿耐久性に優れるという利点を有する。その結果、高温高湿環境下においても光学特性を維持し得る、耐久性に優れた位相差層付偏光板を得ることができる。また、このような第二樹脂層は、例えば、紫外線硬化性樹脂の硬化物に比べて紫外線照射による偏光板(偏光子)に対する悪影響を抑制することができる。第二樹脂層は、好ましくは、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物である。固化物は、硬化物に比べてフィルム成形時の収縮が小さい、および、残存モノマー等が含まれないのでフィルム自体の劣化が抑制され、かつ、残存モノマー等に起因する偏光板(偏光子)に対する悪影響を抑制することができる。
【0100】
好ましくは、第二樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は85℃以上であり、重量平均分子量(Mw)は50000以上である。TgおよびMwがこのような範囲であれば、第二樹脂層を樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物で構成することによる効果との相乗的な効果により、非常に薄いにもかかわらず、偏光子に含まれ得るヨウ素の移動を顕著に抑制することができる。第二樹脂層を構成する樹脂のTgは、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。Tgの上限は、例えば200℃であり得る。また、第二樹脂層を構成する樹脂のMwは、好ましくは60000以上であり、より好ましくは70000以上であり、さらに好ましくは80000以上である。一方、Mwは、好ましくは500000未満であり、好ましくは400000以下であり、さらに好ましくは300000以下である。
【0101】
第二樹脂層は、上記樹脂に加えてイソシアネート化合物をさらに含む。イソシアネート化合物として、好ましくは、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらの誘導体(例えば、変性物、付加物)が用いられる。これらは、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。このようなイソシアネート化合物を用いることにより偏光板(偏光子)に対する優れた密着性を達成し得る。イソシアネート化合物として、上記に加えて、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはその誘導体の少なくとも一つを用いることが好ましい。このような構成によれば、後述する接着剤層との接着性により優れ得る。
【0102】
第二樹脂層における樹脂の含有量は、例えば50重量%以上であり、55重量%以上であってもよく、60重量%以上であってもよい。一方、第二樹脂層における樹脂の含有量は、例えば90重量%以下であり、85重量%以下であってもよく、80重量%以下であってもよい。第二樹脂層におけるイソシアネート化合物の含有量は、例えば10重量%以上であり、15重量%以上であってもよく、20重量%以上であってもよい。一方、第二樹脂層におけるイソシアネート化合物の含有量は、例えば50重量%以下であり、45重量%以下であってもよく、40重量%以下であってもよい。イソシアネート化合物100重量部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびその誘導体の使用量は、好ましくは10重量部~40重量部である。
【0103】
第二樹脂層を構成する樹脂としては、有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物が形成され得る、任意の適切な熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることができる。好ましくは、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。エポキシ系樹脂とアクリル系樹脂とを組み合わせて用いてもよい。以下、第二樹脂層に用いられ得るエポキシ系樹脂およびアクリル系樹脂の代表例を説明する。
【0104】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、好ましくは芳香族環を有するエポキシ樹脂が用いられる。芳香族環を有するエポキシ樹脂をエポキシ樹脂として用いることにより、偏光板(偏光子)に対する優れた密着性を達成し得る。芳香族環を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂などのノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノールなどの多官能型のエポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などが挙げられる。好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が用いられる。エポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
<アクリル系樹脂>
アクリル系樹脂は、代表的には、直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体由来の繰り返し単位を主成分として含有する。本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。アクリル系樹脂は、目的に応じた任意の適切な共重合単量体由来の繰り返し単位を含有し得る。共重合単量体(共重合モノマー)としては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマーが挙げられる。モノマー単位の種類、数、組み合わせおよび共重合比等を適切に設定することにより、上記所定のTgおよびMwを有するアクリル系樹脂が得られ得る。
【0106】
<ホウ素含有アクリル系樹脂>
アクリル系樹脂は、1つの実施形態においては、50重量部を超える(メタ)アクリル系単量体と0重量部を超えて50重量部未満の式(1)で表される単量体(以下、共重合単量体と称する場合がある)とを含むモノマー混合物を重合することにより得られる共重合体(以下、ホウ素含有アクリル系樹脂と称する場合がある)を含む:
【化5】
(式中、Xはビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基を含む官能基を表し、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基、または、置換基を有していてもよいヘテロ環基を表し、RおよびRは互いに連結して環を形成してもよい)。
【0107】
ホウ素含有アクリル系樹脂は、代表的には下記式で表される繰り返し単位を有する。式(1)で表される共重合単量体と(メタ)アクリル系単量体とを含むモノマー混合物を重合することにより、ホウ素含有アクリル系樹脂は側鎖にホウ素を含む置換基(例えば、下記式中kの繰り返し単位)を有する。これにより、偏光板(偏光子)に対する優れた密着性を達成し得る。このホウ素を含む置換基は、ホウ素含有アクリル系樹脂に連続して(すなわち、ブロック状に)含まれていてもよく、ランダムに含まれていてもよい。
【化6】
(式中、Rは任意の官能基を表し、jおよびkは1以上の整数を表す)。
【0108】
<(メタ)アクリル系単量体>
(メタ)アクリル系単量体としては任意の適切な(メタ)アクリル系単量体を用いることができる。例えば、直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体、および、環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体が挙げられる。
【0109】
直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸メチル2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸メチルが用いられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、ビフェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、m-ビフェニルオキシエチルアクリレート、p-ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、p-ビフェニルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、m-ビフェニルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-ビフェニル=カルバマート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-p-ビフェニル=カルバマート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-m-ビフェニル=カルバマート、o-フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート等のビフェニル基含有モノマー、ターフェニル(メタ)アクリレート、o-ターフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルが用いられる。これらの単量体を用いることにより、ガラス転移温度の高い重合体が得られる。これらの単量体は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体に代えて、(メタ)アクリロイル基を有するシルセスキオキサン化合物を用いてもよい。シルセスキオキサン化合物を用いることにより、ガラス転移温度が高いアクリル系重合体が得られる。シルセスキオキサン化合物は、種々の骨格構造、例えば、カゴ型構造、ハシゴ型構造、ランダム構造などの骨格を持つものが知られている。シルセスキオキサン化合物は、これらの構造を1種のみを有するものでもよく、2種以上を有するものでもよい。シルセスキオキサン化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
(メタ)アクリロイル基を含有するシルセスキオキサン化合物として、例えば、東亜合成株式会社SQシリーズのMACグレード、および、ACグレードを用いることができる。MACグレードは、メタクリロイル基を含有するシルセスキオキサン化合物であり、具体的には、例えば、MAC-SQ TM-100、MAC-SQ SI-20、MAC-SQ HDM等が挙げられる。ACグレードは、アクリロイル基を含有するシルセスキオキサン化合物であり、具体的には、例えば、AC-SQ TA-100、AC-SQ SI-20等が挙げられる。
【0113】
(メタ)アクリル系単量体は、モノマー混合物100重量部に対して、50重量部を超えて用いられる。
【0114】
<共重合単量体>
共重合単量体としては、上記式(1)で表される単量体が用いられる。このような共重合単量体を用いることにより、得られる重合体の側鎖にホウ素を含む置換基が導入される。共重合単量体は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
上記式(1)における脂肪族炭化水素基としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20の直鎖または分岐のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3~20の環状アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基が挙げられる。上記アリール基としては、置換基を有していてもよい炭素数6~20のフェニル基、置換基を有していてもよい炭素数10~20のナフチル基等が挙げられる。ヘテロ環基としては、置換基を有していてもよい少なくとも1つのヘテロ原子を含む5員環基または6員環基が挙げられる。なお、RおよびRは互いに連結して環を形成してもよい。RおよびRは、好ましくは水素原子、もしくは、炭素数1~3の直鎖または分岐のアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0116】
Xで表される官能基が含む反応性基は、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種である。好ましくは、反応性基は(メタ)アクリル基および/または(メタ)アクリルアミド基である。これらの反応性基を有することにより、偏光板(偏光子)に対する優れた密着性を達成し得る。
【0117】
1つの実施形態においては、Xで表される官能基は、Z-Y-で表される官能基であることが好ましい。ここで、Zはビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基を含む官能基を表し、Yはフェニレン基またはアルキレン基を表す。
【0118】
共重合単量体としては、具体的には以下の化合物を用いることができる。
【化7】
【化8】
【0119】
共重合単量体は、モノマー混合物100重量部に対して、0重量部を超えて50重量部未満の含有量で用いられる。好ましくは0.01重量部以上50重量部未満であり、より好ましくは0.05重量部~20重量部であり、さらに好ましくは0.1重量部~10重量部であり、特に好ましくは0.5重量部~5重量部である。
【0120】
<ラクトン環等含有アクリル系樹脂>
アクリル系樹脂は、別の実施形態においては、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位、無水マレイン酸単位およびマレイミド(N-置換マレイミド)単位から選択される環構造を含む繰り返し単位を有する。環構造を含む繰り返し単位は、1種類のみがアクリル系樹脂の繰り返し単位に含まれていてもよく、2種類以上が含まれていてもよい。
【0121】
ラクトン環単位は、好ましくは、下記一般式(2)で表される:
【0122】
【化9】
一般式(2)において、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。アクリル系樹脂には、単一のラクトン環単位のみが含まれていてもよく、上記一般式(2)におけるR、RおよびRが異なる複数のラクトン環単位が含まれていてもよい。ラクトン環単位を有するアクリル系樹脂は、例えば特開2008-181078号公報に記載されており、当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0123】
グルタルイミド単位は、好ましくは、下記一般式(3)で表される:
【0124】
【化10】
【0125】
一般式(3)において、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~8のアルキル基を示し、R13は、炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、または炭素数6~10のアリール基を示す。一般式(3)において、好ましくは、R11およびR12は、それぞれ独立して水素またはメチル基であり、R13は水素、メチル基、ブチル基またはシクロヘキシル基である。より好ましくは、R11はメチル基であり、R12は水素であり、R13はメチル基である。アクリル系樹脂には、単一のグルタルイミド単位のみが含まれていてもよく、上記一般式(3)におけるR11、R12およびR13が異なる複数のグルタルイミド単位が含まれていてもよい。グルタルイミド単位を有するアクリル系樹脂は、例えば、特開2006-309033号公報、特開2006-317560号公報、特開2006-328334号公報、特開2006-337491号公報、特開2006-337492号公報、特開2006-337493号公報、特開2006-337569号公報に記載されており、当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。なお、無水グルタル酸単位については、上記一般式(3)におけるR13で置換された窒素原子が酸素原子となること以外は、グルタルイミド単位に関する上記の説明が適用される。
【0126】
無水マレイン酸単位およびマレイミド(N-置換マレイミド)単位については、名称から構造が特定されるので、具体的な説明は省略する。
【0127】
アクリル系樹脂における環構造を含む繰り返し単位の含有割合は、好ましくは1モル%~50モル%、より好ましくは10モル%~40モル%、さらに好ましくは20モル%~30モル%である。なお、アクリル系樹脂は、主たる繰り返し単位として、上記の(メタ)アクリル系単量体由来の繰り返し単位を含む。
【0128】
第二樹脂層は、代表的には、上記樹脂の有機溶媒溶液を塗布して塗布膜を形成し、得られた塗布膜を固化または熱硬化させることにより形成され得る。有機溶媒としては、上記樹脂を溶解または均一に分散し得る任意の適切な有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の具体例としては、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。溶液の樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部~20重量部である。このような樹脂濃度であれば、均一な塗布膜を形成することができる。
【0129】
溶液は、任意の適切な基材に塗布してもよいが、偏光板(偏光子)に塗布することが好ましい。溶液を基材に塗布する場合、代表的には、基材上に形成された第二樹脂層を、偏光板(偏光子)に転写する。転写は、代表的には、接着層を介して行われることから、溶液を偏光板(偏光子)に塗布することにより、第二樹脂層を直に形成し、接着層を省略することができる。溶液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。具体例としては、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)が挙げられる。
【0130】
上記塗布膜の固化または熱硬化の加熱温度は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは50℃~70℃である。加熱温度がこのような範囲であれば、偏光子に対する悪影響を防止することができる。加熱時間は、例えば1分~10分であり得る。
【0131】
第二樹脂層(実質的には、上記樹脂の有機溶媒溶液)は、目的に応じて任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。添加剤の具体例としては、紫外線吸収剤;レベリング剤;ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーまたは無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;難燃剤;などが挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、添加量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0132】
H.接着剤層
第二樹脂層に隣接して配置される接着剤層(接着層60)は、好ましくは、接着剤組成物の硬化物で構成される。具体的には、電子線硬化性、紫外線硬化性、可視光線硬化性などの活性エネルギー線硬化型接着剤組成物(ラジカル重合硬化型接着剤組成物)の硬化物で構成されることが好ましい。接着剤層の厚みは、好ましくは3μm以下であり、より好ましくは2μm以下である。このような厚みによれば、位相差層付偏光板の薄型化に大きく貢献し得る。また、接着剤組成物から接着剤層を形成する際に生じ得る収縮による他の部材への影響を小さくすることができる。例えば、優れた接着性を得る観点から、接着剤層の厚みは、好ましくは0.05μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上である。
【0133】
ラジカル重合硬化型接着剤組成物を構成する単量体成分としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の炭素-炭素二重結合のラジカル重合性の官能基を有する化合物が挙げられる。これら単量体成分は、単官能ラジカル重合性化合物または重合性官能基を2以上有する多官能ラジカル重合性化合物のいずれも用いることができる。また、これらラジカル重合性化合物は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味する。
【0134】
上記接着剤組成物に含まれる単量体成分のモル分率の加重平均により算出されるオクタノール/水分配係数logPowは、例えば1.0以上4.0以下であり、好ましくは1.5以上であり、2.0以上であってもよく、2.5以上であってもよい。このような接着剤組成物を用いることにより、第二樹脂層に対する優れた接着性が得られ得る。加えて、第二樹脂層が有する機能(例えば、バリア機能)を保持させ得る。このような接着剤組成物を用いることにより、接着剤層を形成する際に、第二樹脂層の一部が接着剤層を形成する接着剤組成物に溶けて(相溶して)形成され得る中間層(相溶層)の形成を抑制することができる。ここで、オクタノール/水分配係数(logPow)は、物質の親油性を表す指標であり、オクタノール/水の分配係数の対数値を意味する。logPowが高いということは親油性であることを意味し得る。logPowは、測定することも可能であるが(例えば、JIS-Z-7260記載のフラスコ浸とう法により)、計算によって算出することもできる。本明細書では、オクタノール/水分配係数(logPow)は、ケンブリッジソフト社製のChem Draw Ultraで計算された値を指す。樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物であり得る樹脂層に対し、疎水性の高い接着剤組成物を用いて、上記中間層の形成が抑制され得、優れた接着性が得られ得ることは、予期せぬ優れた効果である。なお、中間層の形成の有無は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により確認することができる。
【0135】
ラジカル重合性化合物のlogPowを以下に示す。例えば、ヒドロキシエチルアクリルアミド(商品名「HEAA」、興人社製、LogPow;-0.56)、ジエチルアクリルアミド(商品名「DEAA」、KJケミカルズ社製、LogPow;1.69)、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン(商品名「プラクセルFA1DDM」、ダイセル社製、LogPow;1.06)、N-ビニルホルムアミド(商品名「ビームセット770」、荒川化学社製、LogPow;-0.25)、アクリロイルモルホリン(商品名「ACMO」、興人社製、LogPow;-0.20)、γブチロラクトンアクリレート(商品名「GBLA」、大阪有機化学工業社製、LogPow;0.19)、アクリル酸2量体(商品名「β-CEA」、ダイセル社製、LogPow;0.2)、N-ビニルピロリドン(商品名「NVP」、日本触媒社製、LogPow;0.24)、アセトアセトキシエチルメタクリレート(商品名「AAEM」、日本合成化学社製、LogPow;0.27)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(商品名「HEA」、大阪有機化学工業社製、LogPow;0.28)、グリシジルメタクリレート(商品名「ライトエステルG」、共栄社化学製、LogPow;0.57)、ジメチルアクリルアミド(商品名「DMAA」、興人社製、LogPow;0.58)、テトラヒドロフルフリルアルコールアクリル酸多量体エステル(商品名「ビスコート#150D」、大阪有機化学工業社製、LogPow;0.60)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(商品名「4-HBA」、大阪有機化学工業社製、LogPow;0.68)、アクリル酸(商品名「アクリル酸」、三菱化学社製、LogPow;0.69)、トリエチレングリコールジアクリレート(商品名「ライトアクリレート3EG-A」、共栄社化学社製、LogPow;0.72)、PEG400#ジアクリレート(商品名「ライトアクリレート9EG-A」、共栄社化学社製、LogPow;-0.1)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(商品名「アロニックスM-220」、東亞合成社製、LogPow;1.68)、ジシクロペンテニルアクリレ-ト(商品名「ファンクリルFA-511AS」、日立化成社製、LogPow;2.26)、アクリル酸ブチル(商品名「アクリル酸ブチル」、三菱化学社製、LogPow;2.35)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(商品名「ライトアクリレート1.6HX-A」、共栄社化学社製、LogPow;2.43)、ジシクロペンタニルアクリレ-ト(商品名「ファンクリルFA-513AS」、日立化成社製、LogPow;2.58)、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(商品名「ライトアクリレートDCP-A」、共栄社化学社製、LogPow;3.05)、イソボルニルアクリレート(商品名「ライトアクリレートIB-XA」、共栄社化学社製、LogPow;3.27)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリル酸付加物(商品名「ライトアクリレートHPP-A」、共栄社化学社製、LogPow;3.35)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(商品名「ライトアクリレート1,9ND-A」、共栄社化学社製、LogPow;3.68)、o-フェニルフェノールEO変性アクリレート(商品名「ファンクリルFA-301A」、日立化成社製、LogPow;3.98)、2-エチルヘキシルオキセタン(商品名「アロンオキセタンOXT-212」、東亞合成社製、LogPow;4.24)、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル(商品名「JER828」、三菱化学社製、LogPow;4.76)、ビスフェノールA EO6モル変性ジアクリレート(商品名「FA-326A」、日立化成社製、LogPow;4.84)、ビスフェノールA EO4モル変性ジアクリレート(商品名「FA-324A」、日立化成社製、LogPow;5.15)、ビスフェノールA PO2モル変性ジアクリレート(商品名「FA-P320A」、日立化成社製、LogPow;6.10)、ビスフェノールA PO3モル変性ジアクリレート(商品名「FA-P323A」、日立化成社製、LogPow;6.26)、ビスフェノールA PO4モル変性ジアクリレート(商品名「FA-P324A」、日立化成社製、LogPow;6.43)、ラウリルアクリレート(商品名「ライトアクリレートL-A」、共栄社化学社製、LogPow;6)、イソステアリルアクリレート(商品名「ISTA」)、大阪有機化学工業社製;LogPow;7.46)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(商品名「P2HA」、共栄社化学社製、LogPow;2.15)、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(商品名「アロニックスM-5700」、東亜合成社製、LogPow;1.17)が挙げられる。
【0136】
接着剤組成物に含まれる単量体成分の全量を100重量部としたとき、オクタノール/水分配係数logPowが0.0以下の単量体成分の含有量は30重量部以下であってもよい。接着剤組成物に含まれる単量体成分の全量を100重量部としたとき、オクタノール/水分配係数logPowが2.0以上の単量体成分の含有量は40重量部以上であってもよい。
【0137】
硬化させる際に用いられ得る重合開始剤の配合量は、接着剤組成物の全量を100重量%としたとき、例えば0.05重量%~10重量%である。
【0138】
接着剤組成物の硬化は、例えば、接着剤組成物の塗布膜に、活性エネルギー線(例えば、可視光線、紫外線、電子線)を照射することにより行われる。
【0139】
I.画像表示装置
上記位相差層付偏光板は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、そのような位相差層付偏光板を用いた画像表示装置も包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機EL表示装置が挙げられる。
【0140】
図2は、本発明の1つの実施形態に係る画像表示装置に含まれる画像表示パネルの概略の構成を、有機EL表示装置を例に、模式的に示す断面図である。画像表示パネル(有機ELパネル)200は、有機パネル本体70とその視認側に配置される位相差層付偏光板100と、を有する。位相差層付偏光板100は、第一位相差層21が偏光子11よりも有機ELパネル本体70側となるように配置される。代表的には、有機ELパネル本体70に位相差層付偏光板100は粘着剤層40によって貼り付けられる。
【0141】
有機ELパネル本体70は、基板71と、薄膜トランジスタ(TFT)等を含む回路層、有機発光ダイオード(OLED)、OLEDを封止する封止膜等を含む上部構造層72とを有する。上部構造層72は、金属部材(例えば、電極、センサ、配線、金属層)を含み得る。例えば、基板71として可撓性基板(例えば、樹脂基板)を用いる場合、得られる有機EL表示装置は、湾曲、屈曲、折り曲げ、巻き取りなどが実現され得る。本発明の実施形態による位相差層付偏光板は、優れた可撓性および折り曲げ耐久性を有し得ることから、このような画像表示装置にも好適に用いられ得る。
【実施例0142】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、厚み、TgおよびMwは下記の測定方法により測定した値である。また、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
(1)厚み
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
試料(重合体)を約5mg採取し、以下の条件でDSC測定を行い、得られた測定結果から、中間点ガラス転移温度を算出することにより求めた。
・測定装置:TA Instruments社製、製品名:Q-2000
・温度プログラム:0℃→150℃→0℃→150℃と変化させる
・雰囲気ガス:N(50mL/分)
・測定速度:10℃/分
(3)重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算の値として求めた。
・分析装置:東ソー社製、HLC-8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm、計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8ml/min
・注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0143】
[実施例1]
(偏光板の作製)
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子を形成した。
【0144】
得られた偏光子の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、紫外線硬化型接着剤を介して、HC-TACフィルムを視認側保護層として貼り合わせた。なお、HC-TACフィルムは、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み25μm)にハードコート層(厚み7μm)が形成されたフィルムであり、TACフィルムが偏光子側となるようにして貼り合わせた。次いで、樹脂基材を剥離してHC-TACフィルム/偏光子の構成を有する偏光板を得た。HC-TACフィルムは、85℃の環境下に240時間置いた後の収縮率が0.03%であった。
【0145】
(第二樹脂層の形成)
メタクリル酸メチル(MMA、富士フイルム和光純薬製、商品名:メタクリル酸メチルモノマー)99.0重量部、一般式(1e)の単量体1.0重量部、重合開始剤(富士フイルム和光純薬社製、商品名:2,2´-アゾビス(イソブチロニトリル))0.2重量部をトルエン100重量部に溶解した。次いで、窒素雰囲気下で70℃に加熱しながら5.5時間重合反応を行い、共重合体1(固形分濃度:50重量%)を得た。共重合体1のTgは105℃、Mwは85000であった。
【0146】
得られた共重合体1(ホウ素含有アクリル系樹脂)70部(固形分換算)に対して、イソシアネート化合物として、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(東ソー社製、商品名「コロネートL」)を固形分換算で22.5部およびヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(三井化学社製、商品名「タケネートD160N」)を固形分換算で7.5部を加えて混合物を得た。この混合物を酢酸エチル/シクロペンタノン(70/30)の混合溶媒80部に溶解させ、樹脂溶液(20%)を得た。この樹脂溶液を、上記で得られた偏光板の偏光子側の表面にワイヤーバーを用いて塗布し、塗布膜を60℃で5分間乾燥して、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物として構成される第二樹脂層(厚み0.4μm)を形成した。
【0147】
(第一位相差層を構成する位相差フィルムの作製)
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60質量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21質量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28質量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
【0148】
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み135μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度133℃、延伸倍率2.8倍で延伸し、厚み48μmの位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムのRe(550)は141nmであり、Re(450)/Re(550)は0.82であり、Nz係数は1.12であった。
【0149】
(第二位相差層を構成する液晶配向固化層の作製)
下記化学式(A)(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)80重量部および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)5重量部をシクロペンタノン200重量部に溶解して液晶塗工液を調製した。そして、垂直配向処理を施したPET基材に当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、80℃で4分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、液晶層を硬化させることにより、nz>nx=nyの屈折率特性を示す液晶配向固化層(厚み3μm)を基材上に形成した。
【化11】
【0150】
(紫外線硬化型接着剤1の調製)
イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ISTA」、LogPow;7.46)20部、ラウリルアクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレートL-A」、LogPow;6)10部、1,9-ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレート1,9ND-A」、LogPow;3.68)10部、ジエチルアクリルアミド(KJケミカルズ社製、商品名「DEAA」、LogPow;1.69)20部、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン(ダイセル社製、商品名「プラクセルFA1DDM」、LogPow;1.06)20部、アクリロイルモルホリン(興人社製、商品名「ACMO」、LogPow;-0.20)20部および光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)3部を配合して、紫外線硬化型接着剤1を調製した。
【0151】
(位相差層付偏光板の作製)
上記位相差フィルムの片側に、上記紫外線硬化型接着剤1を用いて上記液晶配向固化層を貼り合わせた。具体的には、紫外線硬化型接着剤を、硬化後の厚みが1.5μmとなるように位相差フィルムに塗布し、窒素雰囲気下で積算光量が900mJ/cmとなるように紫外線を照射して硬化させ、位相差フィルムの片側に接着剤層を介して液晶配向固化層を貼り合わせた。
次いで、位相差フィルムのもう片側に、上記紫外線硬化型接着剤1を用いて上記偏光板を貼り合わせた。具体的には、紫外線硬化型接着剤を、硬化後の厚みが2μmとなるように位相差フィルムに塗布し、窒素雰囲気下で積算光量が900mJ/cmとなるように紫外線を照射して硬化させ、偏光板に形成された上記第二樹脂層が位相差フィルム側に位置するように貼り合わせた。
次いで、液晶配向固化層の表面に、厚み15μmのアクリル系粘着剤層を形成し、位相差層付偏光板を得た。
【0152】
[実施例2]
位相差フィルムに液晶配向固化層を貼り合わせる際に、紫外線硬化型接着剤1のかわりに下記の紫外線硬化型接着剤2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
(紫外線硬化型接着剤2の調製)
ポリプロピレングリコールジアクリレート(東亞合成社製、商品名「アロニックスM-220」、LogPow;1.68)25部、アクリロイルモルホリン(興人社製、商品名「ACMO」、LogPow;-0.20)40部、ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製、商品名「HEAA」、LogPow;-0.56)35部および光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)3部を配合して、紫外線硬化型接着剤2を調製した。
【0153】
[実施例3]
位相差フィルムに液晶配向固化層を貼り合わせる際に、紫外線硬化型接着剤1のかわりに下記の紫外線硬化型接着剤3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
(紫外線硬化型接着剤3の調製)
1,9-ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレート1,9ND-A」、LogPow;3.68)30部、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリル酸付加物(共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレートHPP-A」、LogPow;3.35)50部、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(東亜合成社製、商品名「アロニックスM-5700」、LogPow;1.17)15部、ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製、商品名「HEAA」、LogPow;-0.56)5部および光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)3部を配合して、紫外線硬化型接着剤3を調製した。
【0154】
[実施例4]
位相差フィルムに液晶配向固化層を貼り合わせる際に、紫外線硬化型接着剤1のかわりに下記の紫外線硬化型接着剤4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
(紫外線硬化型接着剤4の調製)
1,9-ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレート1,9ND-A」、LogPow;3.68)40部、アクリロイルモルホリン(興人社製、商品名「ACMO」、LogPow;-0.20)40部、ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製、商品名「HEAA」、LogPow;-0.56)20部および光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)3部を配合して、紫外線硬化型接着剤4を調製した。
【0155】
[実施例5]
さらに、液晶配向固化層とアクリル系粘着剤層との間に(液晶配向固化層表面に)、上記第二樹脂層の形成と同様の方法により、第三樹脂層(厚み0.4μm)を設けたこと以外は実施例4と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
【0156】
[実施例6]
位相差フィルムに偏光板を貼り合わせる際に、紫外線硬化型接着剤1のかわりに下記に示す紫外線硬化型接着剤5を用いたこと以外は実施例4と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
(紫外線硬化型接着剤5の調製)
1,9-ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレート1,9ND-A」、LogPow;3.68)20部、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製、商品名「P2HA」、LogPow;2.15)40部、ジエチルアクリルアミド(KJケミカルズ社製、商品名「DEAA」、LogPow;1.69)10部、ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製、商品名「HEAA」、LogPow;-0.56)30部および光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)3部を配合して、紫外線硬化型接着剤5を調製した。
【0157】
[実施例7]
位相差フィルムに偏光板を貼り合わせる際に、紫外線硬化型接着剤1のかわりにアクリル系粘着剤(厚み5μm)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
【0158】
[比較例1]
第二樹脂層を設けずに、偏光板と位相差フィルムとをアクリル系粘着剤(厚み5μm)を用いて貼り合わせたこと以外は実施例3と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
【0159】
[比較例2]
位相差フィルムに偏光板を貼り合わせる際に、紫外線硬化型接着剤1のかわりにアクリル系粘着剤(厚み5μm)を用いたこと、および、位相差フィルムに液晶配向固化層を貼り合わせる際に、紫外線硬化型接着剤1のかわりに下記に示す紫外線硬化型接着剤6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
(紫外線硬化型接着剤6の調製)
不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン(ダイセル社製、商品名「プラクセルFA1DDM」、LogPow;1.06)40部、アクリロイルモルホリン(興人社製、商品名「ACMO」、LogPow;-0.20)30部、ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製、商品名「HEAA」、LogPow;-0.56)30部および光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)3部を配合して、紫外線硬化型接着剤6を調製した。
【0160】
各実施例および比較例について、下記の評価を行った。評価結果を表1にまとめる。
<評価>
1.貯蔵弾性率
各実施例および比較例の第一樹脂層を形成する紫外線硬化型接着剤を2枚のガラスの間に挟み込み、厚みが100μmになるように調整し、以下に記載の条件の活性エネルギー線を照射した後、ガラスより単離し第一樹脂層の膜を作製した。
(活性エネルギー線の照射条件)
・可視光線照射装置(ガリウム封入メタルハライドランプ):Fusion UV Systems,Inc社製
・Light HAMMER10 バルブ:Vバルブ
・ピーク照度:1600mW/cm
・積算照射量:1000/mJ/cm(波長380~440nm)
得られた第一樹脂層の膜の25℃および100℃における貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置(TA Instruments社製、製品名「RSA」)により測定した。測定条件は以下のとおりである。
(測定条件)
・サンプルサイズ:幅10mm、長さ30mm
・クランプ距離20mm
・測定モード:引っ張り
・周波数:1Hz
・温度:-40℃~180℃
・昇温速度:10℃/分
2.HAST試験
得られた位相差層付偏光板を、高温高湿環境下の耐久性に関する加速試験であるHAST試験に供した。具体的には、下記のとおり作製した試験板の金属フィルムのオーバーコート層表面に、得られた位相差層付偏光板(50mm×50mmにカットしたもの)を貼り合わせた試験サンプルを、110℃および85%RHに制御されたオーブン内に36時間置いて加熱加湿し、加熱加湿後の試験サンプルの状態を目視により観察し、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
(試験板の作製)
50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、銀ナノワイヤー液(MERCK社製、ナノワイヤーサイズ:直径115nm、長さ20μm~50μm、固形分0.5%のイソプロピルアルコール(IPA)溶液)をワイヤーバーでウェット膜厚が15μmになるように塗工し、100℃のオーブンで5分間乾燥し、銀ナノワイヤー塗膜を形成した。次いで、メチルイソブチルケトン(MIBK)99部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)1部、および光重合開始剤(BASF社製、製品名「イルガキュア907」)0.03部を含むオーバーコート液(固形分濃度:約1%)を、銀ナノワイヤー塗膜の表面にワイヤーバーを用いてウェット膜厚が10μmになるように塗工し、100℃のオーブンで5分間乾燥した。次いで、活性エネルギー線を照射してオーバーコート塗膜を硬化させ、PETフィルム/銀ナノワイヤー層/オーバーコート層(厚み100nm)の構成を有する金属フィルムを作製した。この金属フィルムを、粘着剤(15μm)を用いて厚さ0.5mmのガラス板に貼り合わせ、金属フィルム/粘着剤/ガラス板の試験板を得た。
(評価基準)
非常に良好(5):全く腐食が確認されない
良好(4):位相差層付偏光板の端部にのみわずかに変色が確認される
許容可能(3):位相差層付偏光板の端辺から1mm以内の範囲に腐食および剥がれ等が確認される
不良(2):位相差層付偏光板の端辺から3mm以内の範囲に腐食および剥がれ等が確認される
非常に不良(1):位相差層付偏光板の端辺から3mmを超える範囲にまで腐食および剥がれ等が確認される
【0161】
【表1】
【0162】
各実施例において、端辺より1mm以内の範囲を除く面内の腐食および積層体の剥がれ等の発生は抑制されている。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の位相差層付偏光板は画像表示装置(代表的には、液晶表示装置、有機EL表示装置)に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0164】
10 偏光板
11 偏光子
12 保護層
21 第一位相差層
22 第二位相差層
30 第一樹脂層
50 第二樹脂層
60 接着層
100 位相差層付偏光板
図1
図2