(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162740
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】掘削機械の操作装置及び掘削機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20231101BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
E02F9/24 N
E02F9/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073337
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 幸洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 恵里香
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015GA02
2D015GB01
2D015GB02
2D015HA03
2D015HB02
(57)【要約】
【課題】回転駆動装置の回転駆動を制御して、操作レバーの操作負担軽減を図ることが可能な掘削機械の操作装置及び掘削機械を提供する。
【解決手段】操作レバー33の傾動に基づいてレバー操作信号を回転駆動装置の回転駆動制御弁37に付与する操作装置において、コントローラ35と、操作レバーの傾動を検出する操作検出部36と、操作レバーとは独立して運転室に配置された回転保持スイッチ34とを備え、コントローラは、操作検出部及び回転保持スイッチからの検出信号が同時に入力されたときに、レバー操作信号を遮断するとともに、回転駆動制御弁に対してレバー操作信号に相応する代替操作信号を付与し、代替操作信号の付与状態で、操作レバーの中立位置を経由した傾動に基づき、代替操作信号を遮断し、レバー操作信号及び代替操作信号の遮断状態で、操作レバーの中立位置を経由した傾動に基づき、レバー操作信号のみを遮断状態から復帰させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体に搭載され、内部に運転室を画成するキャブと、前記上部旋回体の前部に立設されるリーダと、該リーダに沿って昇降可能な回転駆動装置とを備えた掘削機械に装備され、
前記運転室に配置された操作レバーの傾動に基づいてレバー操作信号を前記回転駆動装置の回転駆動制御弁に付与する操作装置において、
コントローラと、
前記操作レバーの傾動を検出する操作検出部と、
前記操作レバーとは独立して前記運転室に配置された回転保持スイッチとを備え、
前記操作レバーには、レバー軸を傾動位置から中立位置まで復帰させる弾性部材が設けられ、
前記コントローラは、前記操作検出部及び前記回転保持スイッチからの検出信号が同時に入力されたときに、前記レバー操作信号を遮断するとともに、前記回転駆動制御弁に対して前記レバー操作信号に相応する代替操作信号を付与し、
前記代替操作信号の付与状態で、前記操作レバーの中立位置を経由した傾動に基づき、前記代替操作信号を遮断し、
前記レバー操作信号及び前記代替操作信号の遮断状態で、前記操作レバーの中立位置を経由した傾動に基づき、前記レバー操作信号のみを遮断状態から復帰させることを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記レバー操作信号は、パイロット油路を流れる作動油のレバー操作圧力信号であり、
前記パイロット油路は、前記レバー操作圧力信号を前記操作レバーの傾動に応じて変化させるリモコン弁と、該リモコン弁の下流側に設けられた電磁制御弁とを備え、
前記操作検出部は、前記リモコン弁と前記電磁制御弁との間の前記パイロット油路にて前記レバー操作圧力信号を検出する圧力トランスミッタであり、
前記電磁制御弁は、前記リモコン弁からの作動油の流れを遮断する油路遮断弁と、該油路遮断弁の下流側パイロット油路を付設の補給パイロット油路に連通させて油路を切り替える油路切替弁とからなり、
前記コントローラは、前記圧力トランスミッタ及び前記回転保持スイッチからの検出信号が同時に入力されたときに、前記油路遮断弁を制御して作動油の流れを遮断するとともに、前記油路切替弁を制御して前記補給パイロット油路を流れる作動油を前記下流側パイロット油路に導入することで、前記回転駆動制御弁に対して前記レバー操作圧力信号に相応する代替操作圧力信号を付与し、
前記代替操作圧力信号の付与状態で、前記操作レバーの中立位置を経由した傾動に基づき、前記油路切替弁を制御して前記代替操作圧力信号を遮断し、
前記レバー操作圧力信号及び前記代替操作圧力信号の遮断状態で、前記操作レバーの中立位置を経由した傾動に基づき、前記レバー操作圧力信号のみを遮断状態から復帰させることを特徴とする請求項1記載の操作装置。
【請求項3】
運転座席の中心を通る垂直平面で前記運転室内を左右幅方向に2分割し、該2分割した室内空間のうち、一方側空間に前記操作レバーを、他方側空間に前記回転保持スイッチをそれぞれ配置し、
前記操作レバーと前記回転保持スイッチとの最短距離は、前記運転座席の左右幅寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2記載の操作装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の操作装置を備えたことを特徴とする掘削機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機械の操作装置及び掘削機械に関し、詳しくは、掘削具を回転駆動する回転駆動装置を備えた掘削機械の操作装置及び掘削機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、荷役装置や掘削装置などの各種作業装置を備えた建設機械は、運転席の操作レバーを傾動操作することによって所望の動作を行っている。こうした操作レバーでは、フェイルセーフ機能が備えられ、所定の操作位置から手を離すと、内蔵するバネの弾性力で中立位置に復帰し、機械の動作を停止させる。一方、利便性の観点で、操作レバーの操作位置を一定に保持しておきたいという求めにも応えるべく、油圧で操作レバーの傾動位置を保持することが可能な保持・解除装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各種建設機械のなかでも地中で作業が進行する掘削機械は、例えば障害物撤去の際にケリードライブの回転駆動を長時間連続して実施することから、回転駆動の保持状態が得られると操作レバーの操作負担軽減が図れる。但し、保持状態はフェイルセーフの考えから外れている状態であるため、安全上の面から、安易に保持状態にならないことが必要であり、また、保持状態からの復帰が容易なこと、復帰操作を行うと回転駆動が速やかに停止状態になることも求められる。
【0005】
そこで本発明は、回転駆動装置の回転駆動を制御して、操作レバーの操作負担軽減を図ることが可能な掘削機械の操作装置及び掘削機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の掘削機械の操作装置は、下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体に搭載され、内部に運転室を画成するキャブと、前記上部旋回体の前部に立設されるリーダと、該リーダに沿って昇降可能な回転駆動装置とを備えた掘削機械に装備され、前記運転室に配置された操作レバーの傾動に基づいてレバー操作信号を前記回転駆動装置の回転駆動制御弁に付与する操作装置において、コントローラと、前記操作レバーの傾動を検出する操作検出部と、前記操作レバーとは独立して前記運転室に配置された回転保持スイッチとを備え、前記操作レバーには、レバー軸を傾動位置から中立位置まで復帰させる弾性部材が設けられ、前記コントローラは、前記操作検出部及び前記回転保持スイッチからの検出信号が同時に入力されたときに、前記レバー操作信号を遮断するとともに、前記回転駆動制御弁に対して前記レバー操作信号に相応する代替操作信号を付与し、前記代替操作信号の付与状態で、前記操作レバーの中立位置を経由した傾動に基づき、前記代替操作信号を遮断し、前記レバー操作信号及び前記代替操作信号の遮断状態で、前記操作レバーの中立位置を経由した傾動に基づき、前記レバー操作信号のみを遮断状態から復帰させることを特徴としている。
【0007】
また、前記レバー操作信号は、パイロット油路を流れる作動油のレバー操作圧力信号であり、前記パイロット油路は、前記レバー操作圧力信号を前記操作レバーの傾動に応じて変化させるリモコン弁と、該リモコン弁の下流側に設けられた電磁制御弁とを備え、前記操作検出部は、前記リモコン弁と前記電磁制御弁との間の前記パイロット油路にて前記レバー操作圧力信号を検出する圧力トランスミッタであり、前記電磁制御弁は、前記リモコン弁からの作動油の流れを遮断する油路遮断弁と、該油路遮断弁の下流側パイロット油路を付設の補給パイロット油路に連通させて油路を切り替える油路切替弁とからなり、前記コントローラは、前記圧力トランスミッタ及び前記回転保持スイッチからの検出信号が同時に入力されたときに、前記油路遮断弁を制御して作動油の流れを遮断するとともに、前記油路切替弁を制御して前記補給パイロット油路を流れる作動油を前記下流側パイロット油路に導入することで、前記回転駆動制御弁に対して前記レバー操作圧力信号に相応する代替操作圧力信号を付与し、前記代替操作圧力信号の付与状態で、前記操作レバーの中立位置を経由した傾動に基づき、前記油路切替弁を制御して前記代替操作圧力信号を遮断し、前記レバー操作圧力信号及び前記代替操作圧力信号の遮断状態で、前記操作レバーの中立位置を経由した傾動に基づき、前記レバー操作圧力信号のみを遮断状態から復帰させることを特徴としている。
【0008】
さらに、運転座席の中心を通る垂直平面で前記運転室内を左右幅方向に2分割し、該2分割した室内空間のうち、一方側空間に前記操作レバーを、他方側空間に前記回転保持スイッチをそれぞれ配置し、前記操作レバーと前記回転保持スイッチとの最短距離は、前記運転座席の左右幅寸法よりも大きいことを特徴としている。加えて、本発明の掘削機械は、前記操作装置を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、掘削機械に備えられた操作装置が、操作レバーとは独立配置した回転保持スイッチを備え、コントローラに操作検出部及び回転保持スイッチからの検出信号が同時に入力されたときに、レバー操作信号を遮断するとともに、回転駆動制御弁に対してレバー操作信号に相応する代替操作信号を付与するので、操作レバーを中立位置に復帰した状態であっても、代替操作信号に基づいて回転駆動装置の回転状態を保持することが可能となり、操作レバーの操作負担軽減を図ることができる。
【0010】
また、回転保持スイッチの独立性を重視したことで、誤操作など意図せずに回転保持状態へ移行してしまうことを、2箇所の同時操作入力によって防止できる。その一方で、オペレータの操作意思を反映した回転保持状態移行後においては、操作レバーの弾性的な中立復帰に委ねるのみで回転駆動のためのレバー操作の関わりをなくすことや、運転態勢における操作レバーの適切な位置取りをすることが可能となり、オペレータの熟練度に左右されない安定した運転操作が行える。
【0011】
さらに、代替操作信号の付与状態で、操作レバーの中立位置を経由した傾動に基づき、代替操作信号を遮断するので、回転保持状態からの停止操作を、1箇所の主操作入力によって容易かつ迅速に行えることから、安全上も優れている。加えて、レバー操作信号及び代替操作信号の遮断状態で、操作レバーの中立位置を経由した傾動に基づき、レバー操作信号のみを遮断状態から復帰させるので、停止操作の時点で操作レバーを傾動した状態であっても、安全を確保しながら円滑に初期状態へと復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一形態例における操作装置が装備される運転室の側面図である。
【
図3】同じく回転保持スイッチの配置を表す図である。
【
図5】同じく回転操作レバーを傾動操作した状態を表す制御回路図である。
【
図6】同じくコントローラに操作検出部及び回転保持スイッチからの検出信号が同時に入力された状態を表す制御回路図である。
【
図7】同じく回転駆動制御弁に対して代替操作信号を付与した回転保持状態で回転操作レバーを中立位置に復帰させた状態を表す制御回路図である。
【
図8】同じく回転操作レバーを中立位置から傾動操作して代替操作信号を遮断した状態を表す制御回路図である。
【
図9】同じく代替操作信号を遮断した状態で回転操作レバーを中立位置に復帰させた状態を表す制御回路図である。
【
図10】本発明の一形態例における操作装置が適用される掘削機械の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至
図10は、本発明の一形態例における操作装置を掘削機械に適用した図である。掘削機械11は、
図10に示すように、ケーシング掘削や地盤改良などの各種施工が可能な多目的掘削仕様機であって、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持する起伏シリンダ16とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート17が設けられ、上部旋回体13の前部上方には、配管を支持する配管支持部材18が設けられている。さらに、上部旋回体13の右側部には運転用のキャブ19が、左側部にはエンジンや油圧源となる油圧ポンプを搭載した動力部20がそれぞれ設けられている。
【0014】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を互いに連結したもので、リーダサポート17に設けられた車幅方向の支軸に回動可能に取り付けられている。リーダ15の上端部には、ケリーバ21のケリーロープ22などが巻掛けられるトップシーブ23が、リーダ15の前面にはケリーバ21を回転駆動する回転駆動装置の一例であるケリードライブ24及びケリーバ21のガイド装置25がそれぞれ装着されている。リーダ15の前面中央には、ラックピニオン式昇降装置の構成部品としてラックギヤ26が、両側面前端部には左右一対のガイドパイプ27,27が、リーダ15の全長にわたってそれぞれ連続的に設けられ、ケリードライブ24やガイド装置25の装着部となる。
【0015】
ケリードライブ24は、ケリーバ21を回転可能に備えた装置本体24aを中心に構成され、リーダ15のガイドパイプ27,27に摺接する左右一対のガイドギブ24b,24bが後方に突出して設けられるとともに、ラックギヤ26に歯合する左右一対のピニオンを昇降用油圧モータ(図示せず)によって回転駆動することにより、リーダ15の前面に沿って昇降する。
【0016】
また、ケリードライブ24は、装置本体24a内の減速機構に接続される回転駆動用油圧モータ24cと、これに付設される電磁比例減圧弁(図示せず)とを備えている。回転駆動用油圧モータ24cは、斜板の傾転角を変更することで容量の変更が可能な斜板式の可変容量型油圧モータである。斜板の傾転角、すなわち、押しのけ容積(モータ1回転当たりの吐出量)は、レギュレータによって調節される。これにより、回転駆動用油圧モータ24cは、流量一定ならば、押しのけ容積が小さいほどモータは高速回転し、押しのけ容積が大きいほど回転数は低くなるものの、多くの作動油を使用して回転することから、大きなトルクを発生させる。
【0017】
ケリーバ21は、硬質地盤では強い押付け力の伝達が可能なロック手段を備えた周知のロッキングケリーバが採用され、多段のケリーバ部材を組み合わせた構造(例えば4段構造)を有し、掘削深さに応じて伸縮するように形成されている。ロック手段は、隣り合うケリーバ部材同士に対で設けられたプレート構造からなり、これらが互いに嵌合してロックされることによって、押付け力をケリーバ21の先端(下端)に取り付けられた掘削具へ効率よく伝達する。
【0018】
ここで、掘削機械11をケーシング掘削を目的として使用する場合には、掘削具にケーシング(図示せず)が使用される。ケーシングは、ケリーバ21の先端にカップリングを介して連結される。これにより、ケーシングは、円筒状の本体がケリードライブ24の回転軸と同心に設けられて一体回転され、ケリーバ21を回転駆動させながらケリードライブ24を下降させることによってケーシング先端の掘削ビットで地盤を掘削、あるいは、旧基礎などの障害物を切削する。
【0019】
こうしたケーシング掘削を行うために、キャブ19内にはオペレータが搭乗する運転室が画成され、走行や旋回、ケリードライブ24の昇降・回転駆動などを行う操作レバーや操作ペダル、押しボタンスイッチ、タッチパネル式のディスプレイなどの機器が操作性を考慮して運転座席の近傍に集約的に配置されており、さらに、これらの操作系の機器と電気的に接続されたコントローラを含む操作装置が設置されている。
【0020】
図1乃至
図3は、運転室に配置された各種操作部を示すものである。ここで、説明の理解を容易にするために、各図は、
図10の外観図の向きに対して前後逆向きに示しており、
図1において右側が前部、左側が後部、紙面方向の奥側が左側方部、手前側が右側方部を示している。各種操作部は、運転座席28の中心を通る垂直平面Sで運転室内を左右幅方向(
図2の上下方向)に2分割した場合、その2分割した室内空間のうち、左側空間には左手で操作を行う左手側操作入力部29が、右側空間には右手で操作を行う右手側操作入力部30が、運転座席28を挟んで互いに横並びの関係で配置されている。
【0021】
左側空間の運転座席28に対応した窓枠には、通常、左手で操作を行う天井位置操作入力部31及び支柱位置操作入力部32が配置されている。これらの操作入力部31,32は、壁面に沿って横一列あるいは縦一列に整列配置したスイッチ群からなり、機械に動作を与えるレバー操作のような主操作と比較して操作頻度は低いものの、着座状態であっても操作入力が容易に行えるものである。
【0022】
また、詳細は後述するが、右手側操作入力部30に属するケリードライブ昇降・回転操作レバー(2軸操作レバー)33と、支柱位置操作入力部32に属する回転保持スイッチ34との最短距離は、運転座席28の左右幅寸法よりも大きくなっている。換言すれば、操作レバー33と、これと独立して配置された回転保持スイッチ34とは、
図2からも見てとれるように、運転室内において左右幅寸法Wを有する運転座席28の領域の外側領域に互いに離間し、これらの同時操作を行う場合には両手が必要となるが、無理のない姿勢で扱えるものである。
【0023】
ところで、掘削機械11は、例えばケーシング掘削を行う際にケリードライブ24の回転駆動を長時間連続して実施することから、回転駆動の保持状態が得られると操作レバー33の操作負担軽減が図れる。そこで操作装置では、オペレータの選択によって、ケリードライブ24の回転駆動を保持状態にすることが可能である。
【0024】
以下では、回転保持運転を行う場合について、
図4乃至
図9を参照しながら説明する。
図4は、回転操作系の制御回路を示すもので、主に、制御プログラムを実行するコントローラ35と、操作レバー33の傾動を検出する操作検出部36と、回転保持スイッチ34とを備えており、システムを回転保持モードに移行する前の状態(レバーモード)では、操作レバー33の傾動に基づいて、レバー操作信号をケリードライブ24の回転駆動制御弁(回転方向切替弁)37に付与するように構成されている。
【0025】
レバー操作信号は、回転駆動における正転側及び逆転側の各パイロット油路38,39を選択的に流れる作動油の圧力信号である。パイロット油路38,39は、レバー操作圧力信号(パイロット2次圧)を操作レバー33の傾動に応じて変化させるリモコン弁40と、該リモコン弁40の下流側に設けられた電磁制御弁41とを備えている。
【0026】
操作レバー33は、2軸操作用のリモコン弁40を用いて構成され、左右方向の傾動はケリードライブ24の回転に、前後方向の傾動(図示せず)は、ケリードライブ24の昇降にそれぞれ割り当てられている。また、操作レバー33の傾動方向を調節すれば、回転と昇降の複合操作、すなわち、ワン・レバーの片手操作でケーシング掘削における押込み及び引抜きが可能である。さらに、操作レバー33には、レバー軸33aを傾動位置から中立位置まで復帰させる弾性部材としてコイルバネ33bが組み込まれている。
【0027】
回転保持スイッチ34は、オン操作(押し下げ)を行う自動復帰型の押しボタン式スイッチであり、オン操作によってボタン操作信号がコントローラ35に入力される。
【0028】
操作検出部36は、リモコン弁40と電磁制御弁41との間における検出パイロット油路38a,39aにてレバー操作圧力信号を検出する正転圧力トランスミッタ36a及び逆転圧力トランスミッタ36bである。これらにより、操作レバー33の傾動に基づいて生成されたレバー操作圧力信号は、圧力トランスミッタ36a,36bで電気信号に変換されてコントローラ35に入力される。
【0029】
電磁制御弁41は、コントローラ35からの制御指令によって作動するもので、リモコン弁40からの作動油の流れを遮断する正転側及び逆転側の油路遮断弁(レバー操作無効ソレノイドバルブ)42,43と、該油路遮断弁42,43の下流側の共通パイロット油路38b,39bを付設の補給パイロット油路44の分岐油路44a,44bと選択的に連通させて、油路遮断弁42,43との間の中間パイロット油路38c,39cを補給パイロット油路44に切り替えることが可能な正転側及び逆転側の油路切替弁(回転保持ソレノイドバルブ)45,46とからなる。
【0030】
補給パイロット油路44を流れる作動油は、リモコン弁40を流れる作動油と同一の油圧源を有するものである。すなわち、補給パイロット油路44は、図示は省略するが、パイロットポンプのPラインを分岐して得られる分岐油路である。
【0031】
このように構成した制御回路を機能させて回転保持運転を行う場合、まず、施工地点に掘削機械11を移動した状態で、必要な段取りを経て、ケリードライブ24の回転及び下降動作を実行する。ここで、回転操作に注目すれば、
図5に示すように、操作レバー33を正転側に傾動することで回転駆動制御弁37にレバー操作圧力信号が付与され、メインポンプ(図示せず)からの圧油を得てケリードライブ24を正転方向に回転駆動しながら掘削が進められる。
【0032】
こうしたレバーモードの実行時には、コントローラ35は、正転圧力トランスミッタ36aからの信号で操作レバー33の傾動状態を検出するが、電磁制御弁41に対して制御指令を与えることはない。その結果、油路遮断弁42及び油路切替弁45は、いずれも正転側パイロット油路38を連通させた状態(非励磁状態)にて保持され、これにより、補給パイロット油路44からの作動油の流れは、閉鎖状態の油路切替弁45,46によって阻止されている。
【0033】
ここで、オペレータの回転保持運転に移行する意思に基づいて、操作レバー33及び回転保持スイッチ34の同時操作が行われると、
図6に示すように、コントローラ35には、正転圧力トランスミッタ36a及び回転保持スイッチ34からの検出信号「オン」が同時に入力される。そして、コントローラ35は、正転側油路遮断弁42を切替制御して検出パイロット油路38aの作動油の流れを遮断するとともに、正転側油路切替弁45を切替制御して補給パイロット油路44(分岐油路44a)を流れる作動油を共通パイロット油路38bに導入することで、回転駆動制御弁37に対してレバー操作圧力信号に相応する代替操作圧力信号を付与する。このとき、中間パイロット油路38cは、正転側油路遮断弁42及び正転側油路切替弁45の切替制御に従って、作動油をタンクに戻すTラインと接続される。
【0034】
こうした回転保持モードの実行時には、回転駆動制御弁37への制御指令として代替操作圧力信号が付与され、ケリードライブ24の回転駆動が継続される。ここで、
図7に示すように、レバー操作(左右方向)の緊張を緩めて操作レバー33を中立位置に復帰させると、検出パイロット油路38aへの作動油の流れは、閉鎖状態のリモコン弁40によって阻止される。もっとも、回転駆動制御弁37には代替操作圧力信号が付与されているため、操作レバー33が中立位置に復帰しても、ケリードライブ24の回転状態は保持される。また、この状態において、コントローラ35には、正転圧力トランスミッタ36a及び回転保持スイッチ34の両方からの検出信号「オフ」の入力がなされている。
【0035】
ところで、回転保持モードの実行中は、ケリードライブ24を下降させる運転操作に集中できるものであるが、機械の挙動などから回転保持モードを脱したい場合がある。その場合、操作レバー33を中立位置から正転側及び逆転側のいずれかに傾動させる。例えば、
図8に示すように、操作レバー33を正転側に再び傾動(例えば3度以上傾動)させると、これに基づいて生成されたレバー操作圧力信号が正転圧力トランスミッタ36aを介してコントローラ35に入力される。
【0036】
このとき、レバー操作検出信号「オン」の入力がなされたコントローラ35は、代替操作圧力信号の付与状態(
図6)で、操作レバー33の中立位置(
図7)を経由した傾動に基づき、正転側油路切替弁45を切替制御して代替操作圧力信号を遮断する(
図8)。これにより、回転駆動制御弁37への制御指令が行われず、ケリードライブ24の回転(油圧駆動)が速やかに停止される。
【0037】
操作レバー33の傾動状態(
図8)において、正転側パイロット油路38におけるリモコン弁40からの作動油の流れは、閉鎖状態の正転側油路遮断弁42によって阻止されているため、操作レバー33が傾動位置におかれても、ケリードライブ24の回転は停止したまま保持される。そして、ケリードライブ24の回転停止とほぼ同時、あるいは、回転停止後、速やかに操作レバー33を中立位置に復帰させると、
図9に示すように、検出パイロット油路38aへの作動油の流れは、閉鎖状態のリモコン弁40によって阻止される。
【0038】
ここで、正転圧力トランスミッタ36aからレバー操作検出信号「オフ」の入力がなされたコントローラ35は、正転側油路遮断弁42を切替制御して正転側パイロット油路38を連通させた状態に保持する。こうして、システムは、回転保持モードを脱して、初期状態であるレバーモードに移行(復帰)される。このとき、コントローラ35は、レバー操作圧力信号及び代替操作圧力信号の遮断状態(
図8)で、操作レバー33の中立位置(
図9)を経由した傾動に基づき、
図5に示すように、レバー操作圧力信号のみを遮断状態(
図8)から復帰させる。これにより、オペレータの任意のレバー操作でケーシング掘削が進められる。
【0039】
このように、本発明によれば、掘削機械11に備えられた操作装置が、操作レバー33とは独立配置した回転保持スイッチ34を備え、コントローラ35に操作検出部36及び回転保持スイッチ34からの検出信号が同時に入力されたときに、レバー操作信号を遮断するとともに、回転駆動制御弁37に対してレバー操作信号に相応する代替操作信号を付与するので、操作レバー33を中立位置に復帰した状態であっても、代替操作信号に基づいて回転駆動装置24の回転状態を保持することが可能となり、操作レバー33の操作負担軽減を図ることができる。
【0040】
また、回転保持スイッチ34の独立性を重視したことで、誤操作など意図せずに回転保持状態へ移行してしまうことを、2箇所の同時操作入力によって防止できる。その一方で、オペレータの操作意思を反映した回転保持状態移行後においては、操作レバー33の弾性的な中立復帰に委ねるのみで回転駆動のためのレバー操作の関わりをなくすことや、運転態勢における操作レバー33の適切な位置取りをすることが可能となり、オペレータの熟練度に左右されない安定した運転操作が行える。
【0041】
さらに、代替操作信号の付与状態で、操作レバー33の中立位置を経由した傾動に基づき、代替操作信号を遮断するので、回転保持状態からの停止操作を、1箇所の主操作入力によって容易かつ迅速に行えることから、安全上も優れている。加えて、レバー操作信号及び代替操作信号の遮断状態で、操作レバー33の中立位置を経由した傾動に基づき、レバー操作信号のみを遮断状態から復帰させるので、停止操作の時点で操作レバーを傾動した状態であっても、安全を確保しながら円滑に初期状態へと復帰させることができる。
【0042】
加えて、レバー操作信号がパイロット油路を流れる作動油のレバー操作圧力信号(パイロット2次圧)としているので、従来からある油圧パイロット操作方式の操作装置に対して、新規あるいは後改造で組み込むことが容易に行え、安価かつ簡単な制御で堅牢性に優れた操作装置が達成される。
【0043】
また、運転座席28の中心を通る垂直平面Sで左右幅方向に2分割した室内空間のうち、一方側空間に操作レバー33を、他方側空間に回転保持スイッチ34をそれぞれ配置し、操作レバー33と回転保持スイッチ34との最短距離が、運転座席28の左右幅寸法Wよりも大きいので、安易に回転保持状態になることはない。すなわち、オペレータの意に反する回転保持運転を規制することができる。
【0044】
さらに、操作レバー33が2軸操作用として構成され、左右方向の傾動をケリードライブ24の回転に、前後方向の傾動をケリードライブ24の昇降にそれぞれ割り当てたので、掘削機械11の施工に効率的な操作入力が行え、操作レバー33の傾動方向を調節した複合操作を行う場合でも、ワン・レバーの片手操作でケーシング掘削における押込み及び引抜きが可能となり、回転保持運転との連携も容易に図ることができる。
【0045】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、操作装置の構成・配置は運転室内の仕様によって適宜変更することができる。また、実施例では、油圧パイロット操作方式の操作レバーを用いたが、電気操作方式の操作レバーを用いてもよく、この場合、回転駆動制御弁をコントローラで電気的に制御し、操作検出部としてポテンショメータからのレバー操作信号を直接コントローラへ入力することができる。さらに、操作レバーの軸数も任意である。加えて、ケーシング掘削(障害物撤去作業)を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、地盤改良など他の工法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
11…掘削機械、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…起伏シリンダ、17…リーダサポート、18…配管支持部材、19…運転室、20…動力部、21…ケリーバ、22…ケリーロープ、23…トップシーブ、24…ケリードライブ、24a…装置本体、24b…ガイドギブ、24c…回転駆動用油圧モータ、25…ガイド装置、26…ラックギヤ、27…ガイドパイプ、28…運転座席、29…左手側操作入力部、30…右手側操作入力部、31…天井位置操作入力部、32…支柱位置操作入力部、33…操作レバー、33a…レバー軸、33b…コイルバネ、34…回転保持スイッチ、35…コントローラ、36…操作検出部、36a…正転圧力トランスミッタ、36b…逆転圧力トランスミッタ、37…回転駆動制御弁、38…正転側パイロット油路、38a…検出パイロット油路、38b…共通パイロット油路、38c…中間パイロット油路、39…逆転側パイロット油路、39a…検出パイロット油路、39b…共通パイロット油路、39c…中間パイロット油路、40…リモコン弁、41…電磁制御弁、42…正転側油路遮断弁、43…逆転側油路遮断弁、44…補給パイロット油路、44a,44b…分岐油路、45…正転側油路切替弁、46…逆転側油路切替弁