(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162755
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】架台用杭
(51)【国際特許分類】
E02D 5/28 20060101AFI20231101BHJP
【FI】
E02D5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073356
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】522170582
【氏名又は名称】中村 茂三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂三郎
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041BA02
2D041BA33
2D041BA42
(57)【要約】
【課題】架台に過大な力が付与されても確実に固定し得るとともに、設置対象物及び架台の撤去作業を容易に行わせることができる架台用杭を提供する。
【解決手段】製造物や構造物などの設置対象物を設置するための架台Kを地面に固定するための架台用杭1において、パイプ状部材Pの先端に取り付けられ、先端が尖った形状とされて地中に打ち込み可能とされた本体部材2と、本体部材2のテーパ面2aに対して没入状態から突出状態に変位可能とされ、本体部材2が地中に打ち込まれる際に没入状態が維持されるとともに、当該本体部材2が地中に打ち込まれた状態で突出状態とされて当該本体部材2のテーパ面2aから突出可能とされた抜け止め部材4とを具備したものである。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造物や構造物などの設置対象物を設置するための架台を地面に固定するための架台用杭において、
パイプ状部材の先端に取り付けられ、先端が尖った形状とされて地中に打ち込み可能とされた本体部材と、
前記本体部材のテーパ面に対して没入状態から突出状態に変位可能とされ、前記本体部材が地中に打ち込まれる際に前記没入状態が維持されるとともに、当該本体部材が地中に打ち込まれた状態で前記突出状態とされて当該本体部材のテーパ面から突出可能とされた抜け止め部材と、
を具備したことを特徴とする架台用杭。
【請求項2】
前記本体部材は、前記抜け止め部材を前記没入状態にて保持する保持溝を有するとともに、前記抜け止め部材は、中央で折り曲げられた金属製部材から成り、前記折り曲げ部が殴打されることにより両端縁部が前記本体部材のテーパ面からそれぞれ突出して前記突出状態とされることを特徴とする請求項1記載の架台用杭。
【請求項3】
前記保持溝は、前記本体部材の上面中央位置において開口して前記没入状態で前記抜け止め部材の前記折り曲げ部を上方に延設させるとともに、当該本体部材のテーパ面において開口して前記突出状態で前記端縁部を突出させることを特徴とする請求項2記載の架台用杭。
【請求項4】
前記本体部材は、鋳鉄から成るとともに、前記抜け止め部材は、所定の塗剤が塗布された鋼材から成ることを特徴とする請求項1記載の架台用杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造物や構造物などの設置対象物を設置するための架台を地面に固定するための架台用杭に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光パネル(ソーラーパネル)等の製造物や構造物などの設置対象物を設置するための架台は、杭を地中に打ち込んで地面に強固に固定する必要がある。かかる杭は、通常、地中に円滑に打ち込まれるように先端が尖った形状とされているが、風等の過大な力が付与された際に抜けてしまう虞がある。そのため、従来、杭の先端を地中に打ち込んだ状態において、当該先端をコンクリートで固めて抜け止めを図ることが行われていた。なお、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術においては、杭の先端がコンクリートで固められているため、架台に風等の過大な力が付与されても固定を確実に維持できるものの、太陽光パネル等の設置対象物及び架台を撤去する際、コンクリートを斫って除去する必要があり、撤去作業が困難になってしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、架台に過大な力が付与されても確実に固定し得るとともに、設置対象物及び架台の撤去作業を容易に行わせることができる架台用杭を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、製造物や構造物などの設置対象物を設置するための架台を地面に固定するための架台用杭において、パイプ状部材の先端に取り付けられ、先端が尖った形状とされて地中に打ち込み可能とされた本体部材と、前記本体部材のテーパ面に対して没入状態から突出状態に変位可能とされ、前記本体部材が地中に打ち込まれる際に前記没入状態が維持されるとともに、当該本体部材が地中に打ち込まれた状態で前記突出状態とされて当該本体部材のテーパ面から突出可能とされた抜け止め部材とを具備したことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の架台用杭において、前記本体部材は、前記抜け止め部材を前記没入状態にて保持する保持溝を有するとともに、前記抜け止め部材は、中央で折り曲げられた金属製部材から成り、前記折り曲げ部が殴打されることにより両端縁部が前記本体部材のテーパ面からそれぞれ突出して前記突出状態とされることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の架台用杭において、前記保持溝は、前記本体部材の上面中央位置において開口して前記没入状態で前記抜け止め部材の前記折り曲げ部を上方に延設させるとともに、当該本体部材のテーパ面において開口して前記突出状態で前記端縁部を突出させることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の架台用杭において、前記本体部材は、鋳鉄から成るとともに、前記抜け止め部材は、所定の塗剤が塗布された鋼材から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、パイプ状部材の先端に取り付けられ、先端が尖った形状とされて地中に打ち込み可能とされた本体部材と、本体部材のテーパ面に対して没入状態から突出状態に変位可能とされ、本体部材が地中に打ち込まれる際に没入状態が維持されるとともに、当該本体部材が地中に打ち込まれた状態で突出状態とされて当該本体部材のテーパ面から突出可能とされた抜け止め部材とを具備したので、架台に過大な力が付与されても確実に固定し得るとともに、設置対象物及び架台の撤去作業を容易に行わせることができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、本体部材は、抜け止め部材を没入状態にて保持する保持溝を有するとともに、抜け止め部材は、中央で折り曲げられた金属製部材から成り、折り曲げ部が殴打されることにより両端縁部が本体部材のテーパ面からそれぞれ突出して突出状態とされるので、抜け止め部材を容易に没入状態から突出状態とすることができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、保持溝は、本体部材の上面中央位置において開口して没入状態で抜け止め部材の折り曲げ部を上方に延設させるとともに、当該本体部材のテーパ面において開口して突出状態で端縁部を突出させるので、折り曲げ部に対する殴打を円滑に行わせて端縁部を良好に突出させることができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、本体部材は、鋳鉄から成るとともに、抜け止め部材は、所定の塗剤が塗布された鋼材から成るので、本体部材を精度よく成形することができるとともに、抜け止め部材に防錆などの特定の機能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る架台用杭が適用された架台の側方を示す全体模式図
【
図4】同架台用杭(没入状態)を先端側から見た外観を示す斜視図
【
図5】同架台用杭(没入状態)の内部構造を示す縦断面図
【
図6】同架台用杭における本体部材の内部構造を示す縦断面図
【
図7】同架台用杭における抜け止め部材を示す斜視図
【
図8】同架台用杭(没入状態)を基端側から見た外観を示す斜視図
【
図10】同架台用杭(突出状態)を先端側から見た外観を示す斜視図
【
図11】同架台用杭(突出状態)の内部構造を示す縦断面図
【
図12】同架台用杭(突出状態)を基端側から見た外観を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る架台用杭は、製造物や構造物などの設置対象物を設置するための架台Kを地面に固定するためのもので、
図1、2に示すように、適用される架台Kには、設置対象物としての複数の太陽光パネルDが設置されている。かかる架台Kは、太陽光パネルDを太陽の軌跡方向(南方向)に向かせて設置すべく当該方向に傾斜して固定されている。なお、同図中符号Fは、架台Kを補強するための補強部材を示している。
【0015】
かかる架台Kを地面に強固に固定するための架台用杭1は、
図3~12に示すように、本体部材2及び抜け止め部材4を具備して構成されている。本体部材2は、鋳鉄(鋳物)から成るもので、パイプ状部材P(金属パイプ)の先端に取り付けられ、先端が尖った形状とされて地中に打ち込み可能とされている。すなわち、先端が尖った形状とされてテーパ面2aを有しており、パイプ状部材Pの上端側を打ち付けることにより、本体部材2が地中に打ち込まれて架台Kを地面に固定可能とされているのである。
【0016】
また、本体部材2は、
図5に示すように、抜け止め部材4を没入状態にて保持する保持溝3を有している。かかる保持溝3は、
図6に示すように、上面2bの中央位置において開口して開口部H1を有するとともに、テーパ面2aの2箇所において開口して開口部H2、H3を有して構成されている。すなわち、保持溝3は、
図6に示すように、開口部H1から本体部材2の軸方向に延設され、所定位置で分岐して開口部H2、H3まで延びて形成されているのである。
【0017】
さらに、本体部材2は、フランジ部2cが一体的に形成されており、当該フランジ部2cにパイプ状部材Pの先端を当接させて位置決め可能とされている。なお、本体部材2は、所定位置にリベット孔2dが形成されており、パイプ状部材Pの先端が取り付けられた状態においてリベット(不図示)にてパイプ状部材Pに締結されるようになっている。本実施形態においては、本体部材2が鋳物から成るため、鋳造過程で保持溝3を精度よく形成することができる。
【0018】
抜け止め部材4は、
図7に示すように、中央で折り曲げられた金属製部材から成り、中央の折り曲げ部4aと、一方の端縁部4b及び他方の端縁部4cを有して構成されている。かかる抜け止め部材4は、
図5に示すように、本体部材2の保持溝3に沿って保持されるとともに、本体部材2のテーパ面2aに対して没入状態(
図3~5及び
図8参照)から突出状態(
図9~
図12参照)に変位可能とされ、本体部材2が地中に打ち込まれる際に没入状態が維持されるとともに、当該本体部材2が地中に打ち込まれた状態で突出状態とされて当該本体部材2のテーパ面2aから両端縁部4b、4cを突出可能とされている。
【0019】
具体的には、パイプ状部材Pを地面に向けて打ち付ける際、抜け止め部材4は没入状態とされ、
図3~5、8に示すように、折り曲げ部4aが開口部H1から上方に延設した状態とされつつ両端縁部4b、4cが開口部H2、H3の内側(本体部材2の内部)に没入した状態とされる。これにより、テーパ面2aの滑らかな傾斜面が保持され、架台用杭1の先端を円滑かつ容易に地中に打ち込むことができる。
【0020】
そして、本体部材2が地中に打ち込まれた状態において、例えば棒状部材(不図示)をパイプ状部材P内に挿入し、その先端を折り曲げ部4aに当接させて下方に打ち付けることにより、折り曲げ部4aを下方に向かって殴打することができる。この殴打により、抜け止め部材4全体が保持溝3に沿って下方に変位し、その過程で変形して、
図9~12に示すように、端縁部4b、4cが開口部H2、H3の外側(本体部材2のテーパ面2aに対して側方)に突出して突出状態とされる。これにより、抜け止め部材4が抵抗になって架台用杭1の先端の抜け止めを図ることができる。
【0021】
しかるに、本実施形態に係る抜け止め部材4は、所定の塗剤が表面全域に亘って塗布されている。この抜け止め部材4の表面に塗布する塗剤は、防錆剤や防腐剤或いは強度や耐候性等を向上させる強化剤等を用いることができる。また、抜け止め部材4に所定の機械加工を施すことにより強度や耐候性等の向上を図るようにしてもよく、或いは所定色の着色塗料を塗布するようにしてもよい。
【0022】
なお、架台用杭1を地中から抜き取り、架台K及び太陽光パネルD(設置対象物)を撤去する際、架台用杭1の先端がコンクリートで固定されていないので、コンクリートを斫る必要がなく容易に撤去作業を進めることができる。また、撤去作業時、例えば折り曲げ部4aを工具で挟んで上方に引き上げる、或いは端縁部4b、4cを工具で殴打して開口部H2、H3内に没入させることにより没入状態とすることができ、架台用杭1を地中から容易に抜き取ることができる。
【0023】
上記実施形態によれば、パイプ状部材Pの先端に取り付けられ、先端が尖った形状とされて地中に打ち込み可能とされた本体部材2と、本体部材2のテーパ面2aに対して没入状態から突出状態に変位可能とされ、本体部材2が地中に打ち込まれる際に没入状態が維持されるとともに、当該本体部材2が地中に打ち込まれた状態で突出状態とされて当該本体部材2のテーパ面2aから突出可能とされた抜け止め部材4とを具備したので、架台Kに過大な力が付与されても確実に固定し得るとともに、設置対象物(本実施形態においては太陽光パネルD)及び架台Kの撤去作業を容易に行わせることができる。
【0024】
また、本実施形態に係る本体部材2は、抜け止め部材4を没入状態にて保持する保持溝3を有するとともに、抜け止め部材4は、中央で折り曲げられた金属製部材から成り、折り曲げ部4aが殴打されることにより両端縁部4b、4cが本体部材2のテーパ面2aからそれぞれ突出して突出状態とされるので、抜け止め部材4を容易に没入状態から突出状態とすることができる。
【0025】
さらに、保持溝3は、本体部材2の上面2bの中央位置において開口して(開口部H1を有して)没入状態で抜け止め部材4の折り曲げ部4aを上方に延設させるとともに、当該本体部材2のテーパ面2aにおいて開口して(開口部H2、H3を有して)突出状態で端縁部4b、4cを突出させるので、折り曲げ部4aに対する殴打を円滑に行わせて端縁部4b、4cを良好に突出させることができる。
【0026】
またさらに、本実施形態に係る本体部材2は、鋳鉄から成るとともに、抜け止め部材4は、所定の塗剤が塗布された鋼材から成るので、本体部材2を精度よく成形することができるとともに、抜け止め部材4に防錆などの特定の機能を付与することができる。特に、本実施形態に係る本体部材2は、抜け止め部材4を没入状態で保持しつつ突出状態に変位及び変形させるための保持溝3が形成されるので、鋳造により精度よく保持溝3を形成することができる。
【0027】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば抜け止め部材4を3方又はそれ以上の方向に突出した端縁部を具備させ、折り曲げ部4aを殴打することにより、3つ以上の端縁部が一括して突出して突出状態とするようにしてもよい。また、本体部材2は、鋳鉄による鋳造品に限らず、他の材料から成るものとしてもよく、抜け止め部材4は、所定の塗剤が塗布された鋼材に限らず、抜け止め強度が保持できる他の材料としてもよい。なお、設置対象物は、太陽光パネルDに限らず、製造物や構造物などの他の設置対象物としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
パイプ状部材の先端に取り付けられ、先端が尖った形状とされて地中に打ち込み可能とされた本体部材と、本体部材のテーパ面に対して没入状態から突出状態に変位可能とされ、本体部材が地中に打ち込まれる際に没入状態が維持されるとともに、当該本体部材が地中に打ち込まれた状態で突出状態とされて当該本体部材のテーパ面から突出可能とされた抜け止め部材とを具備した架台用杭であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 架台用杭
2 本体部材
2a テーパ面
2b 上面
2c フランジ部
2d リベット孔
3 保持溝
4 抜け止め部材
4a 折り曲げ部
4b、4c 端縁部
K 架台
D 太陽光パネル(設置対象物)
F 補強部材
H1~H3 開口部
P パイプ状部材