(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162765
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】複写防止媒体
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20231101BHJP
B42D 25/337 20140101ALI20231101BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/337
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073379
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早坂 哲
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA04
2C005HB10
2C005JB22
2C005JB25
2H113AA06
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA09
2H113BA18
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB22
2H113BC01
2H113BC02
2H113CA37
2H113CA40
2H113CA44
2H113DA03
2H113DA04
2H113DA07
2H113DA15
2H113DA35
2H113DA47
2H113DA53
2H113DA57
2H113DA58
2H113DA60
2H113DA64
(57)【要約】
【課題】原本と複写物とを肉眼又は低倍率で拡大した観察により区別可能とする。
【解決手段】光透過性基材の表面上に形成した白黒画像のパターンからなり、黒色部分に相当する表面着色部及び白色部分に相当する表面非着色部を含み、裏面上には、表面非着色部に対応して形成した表面着色部とは異なる色の少なくとも1種類以上からなる裏面着色部及び裏面非着色部の交互の万線状の配列からなる着色画像を含み、表面上に形成した白黒画像を反射観察した場合には裏面上に形成した裏面着色光は透過させず、表面上に形成した白黒画像を透過観察した場合には裏面上に形成した裏面着色光を透過させ、裏面上の配列方向において隣り合った裏面着色部の距離及び裏面非着色部間の距離が5μm以上20μm以下の範囲内で、かつ、裏面着色部のパターンに占める割合が25%以上50%以下の範囲内である万線状の着色画像パターンとを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面とその裏面である第2主面とを有している光透過性基材と、前記第1主面上に形成した白黒画像のパターンからなり、黒色部分に相当する第1着色部及び白色部分に相当する第1非着色部を含み、前記第2主面上には、前記第1非着色部に対応して形成した前記第1着色部とは異なる色の少なくとも1種類以上からなる第2着色部及び第2非着色部の交互の万線状の配列からなる着色画像を含み、前記第2主面上の配列方向において隣り合った前記第2着色部の距離及び前記第2非着色部間の距離が5μm以上、20μm以下の範囲内で、かつ、前記第2着色部のパターンに占める割合が25%以上、50%以下の範囲内である万線状の画像パターンとを備えた複写防止媒体。
【請求項2】
前記第2着色部及び前記第2非着色部は前記第1非着色部の裏面で万線状にパターン形成させた請求項1に記載の複写防止媒体。
【請求項3】
前記第2着色部及び前記第2非着色部は、直線形状または曲線形状を各々が有し、前記幅方向へ交互に配列した請求項1または請求項2に記載の複写防止媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写防止媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のカラー複写機の性能向上に伴って、株券及び債券等の有価証券類や各種証明書の偽造が容易になってきている。このため、これら物品には、複写物との判別を可能とした複写防止媒体が使用されることがある。
【0003】
複写防止媒体は、カラー複写機などによる偽造を防止又は牽制するための偽造防止技術が適用された記録媒体である。複写防止媒体としては、例えば、カラー複写機を用いて得られる複写物に、原本には見られない特定の文字や絵柄などのパターンを表示させるものがある。
【0004】
偽造防止技術の1つとして、用紙に繊維密度や厚さの分布を生じさせ、透過光を観察した場合に先の分布に対応したパターンを視認させる、所謂「透かし技術」が存在する。この透かし技術は、一定量以上の光量さえあれば、あらゆる環境下において真偽判別することが可能な技術である。加えて、知名度も抜群に高いことから、古くから存在している技術であるにも関わらず、今なお世界中の銀行券等に用いられている。
【0005】
しかしながら、この透かし技術について上述した構造は、用紙の製造段階において形成する必要がある。それ故、上記の透かし技術は、用紙製造メーカでなければ容易には利用できない。また、上記の透かし技術を採用した用紙は、製造コストが高い。
【0006】
これら問題に鑑み、上記の透かし技術によって得られる視覚効果を擬似的に再現可能とする技術を利用することがある。
【0007】
例えば、浸透型の透明化インキを用紙へ印刷して、透明化インキを印刷した領域の透過率を、透明化インキを印刷していない領域の透過率と比較してより高くし、これにより、透過光を肉眼で観察した場合に、透明化インキを印刷した領域に対応したパターンを視認可能とする偽造防止技術が存在する(特許文献1参照)。
【0008】
また、上記の透かし技術によって得られる視覚効果を擬似的に再現可能とする他の技術として、用紙上に、この用紙と同色の遮光インキを印刷して、遮光インキを印刷した領域の透過率を、遮光インキを印刷していない領域の透過率と比較してより低くし、これにより、透過光を肉眼で観察した場合に、遮光インキを印刷した領域に対応したパターンを視認可能とする偽造防止技術が存在する(特許文献2参照)。
【0009】
以上の偽造防止技術は、透明化インキ又は遮光インキを印刷した領域に対応したパターンを、反射光を肉眼で観察した場合には視認不可能又は困難とし、透過光を肉眼で観察した場合には視認可能又は容易とするものである。これとは異なり、用紙とは色が異なる印刷パターンを、第1及び第2領域を含み、第1領域が、第2領域と同じ色相を有し、第2領域と比較して高い明度及び低い透過率を有するように形成して、反射光を肉眼で観察した場合には第1及び第2領域を互いから区別可能又は容易とし、透過光を肉眼で観察した場合には第1及び第2領域を互いから区別不可能又は困難とする偽造防止技術も存在する(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6-228900号公報
【特許文献2】特開2001-26177号公報
【特許文献3】特開2015-96308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、原本と複写物とを肉眼で又は低倍率で拡大した観察により区別可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決する手段として、本発明の複写防止媒体の第1の態様は、第1主面とその裏面である第2主面とを有している光透過性基材と、前記第1主面上に形成した白黒画像のパターンからなり、黒色部分に相当する第1着色部及び白色部分に相当する第1非着色部を含み、前記第2主面上には、前記第1非着色部に対応して形成した前記第1着色部とは異なる色の少なくとも1種類以上からなる第2着色部及び第2非着色部の交互の万線状の配列からなる着色画像を含み、前記第1主面上に形成した白黒画像を反射観察した場合には前記第2主面上に形成した前記第2着色光は透過させず、前記第1主面上に形成した白黒画像を透過観察した場合には前記第2主面上に形成した前記第2着色光を透過させ、前記第2主面上の配列方向において隣り合った前記第2着色部の距離及び前記第2非着色部間の距離が5μm以上、20μm以下の範囲内で、かつ、前記第2着色部のパターンに占める割合が25%以上、50%以下の範囲内である万線状の着色画像パターンとを備えた複写防止媒体である。
【0013】
第2の態様は、前記第2着色部及び前記第2非着色部は前記第1非着色部に向き合いの裏面で万線状にパターン形成させた複写防止媒体である。
【0014】
第3の態様は、前記第2着色部及び前記第2非着色部は、直線形状または曲線形状を各々が有し、前記幅方向へ交互に配列した複写防止媒体である。
【0015】
本発明によれば、原本と複写物とを肉眼で又は低倍率で拡大した観察により区別可能とする複写防止媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複写防止媒体を概略的に示す平面図。
【
図2】
図1に示す複写防止媒体の一部を拡大して示す断面図。
【
図3】
図1に示す複写防止媒体の前面の一部を拡大して示す平面図。
【
図4】
図1に示す複写防止媒体の裏面の一部を拡大して示す平面図。
【
図5】
図4に示す裏面の一部を拡大して示す平面図。
【
図6】
図1に示す複写防止媒体が表示する画像を撮像する様子を概略的に示す図。
【
図7】
図1に示す複写防止媒体が
図6の条件下で表示する画像を示す図。
【
図9】
図1に示す複写防止媒体が表示する反射画像を観察している様子の一例を概略的に示す図。
【
図10】
図1に示す複写防止媒体が表示する透過画像を観察している様子の一例を概略的に示す図。
【
図11】
図1に示す複写防止媒体が
図10の条件下で透過観察したときに視認できる画像パターンの一例を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る複写防止媒体を概略的に示す平面図である。
図2は、
図1に示す複写防止媒体の一部を拡大して示す断面図である。
図3は、
図1に示す複写防止媒体の前面の一部を拡大して示す平面図である。
図4は、
図1に示す複写防止媒体の背面の一部を拡大して示す平面図である。
図5は、
図4に示す背面の一部を拡大して示す平面図である。なお、各図において、X方向及びY方向は、複写防止媒体1の表示面に平行であり且つ互いに直交する方向であり、Z方向は、X方向及びY方向に対して垂直な方向、即ち、複写防止媒体1の厚さ方向である。
【0019】
図1に示す複写防止媒体1は、商品券である。複写防止媒体1は、商品券以外の有価証券であってもよい。或いは、複写防止媒体1は、身分証明書などの証明書又は識別カードであってもよい。
【0020】
複写防止媒体1は、
図2に示す光透過性基材11、第1着色層12及び第2着色層13と、
図1に示す印刷層14とを含んでいる。
【0021】
光透過性基材11は、可視光透過性を有している半透明な薄層である。ここでは、一例として、光透過性基材11は、透かし紙とする。
【0022】
光透過性基材11は、長辺がX方向に平行な長方形状を有している。光透過性基材11は、他の形状を有していてもよい。
【0023】
光透過性基材11は、第1主面とその裏面である第2主面とを有している。第1主面及び第2主面は、それぞれ、
図2における光透過性基材11の上面及び下面である。以下、複写防止媒体1の第1主面側の面及び第2主面側の面を、それぞれ、前面及び背面という。
【0024】
印刷層14は、光透過性基材11の前面上に設けられている。印刷層14は、例えば、文字、模様、図形、写真、又はそれらの組み合わせを表示する。
【0025】
印刷層14は、光透過性基材11の背面上に更に設けることができる。或いは、印刷層14は、光透過性基材11の前面上に設ける代わりに、背面上に設けることもできる。或いは、印刷層14は、省略することもできる。
【0026】
印刷層14は、
図1に示すように、開口部である窓Wを有している。複写防止媒体1の窓Wに対応した部分は、複写防止媒体1の原本と複写物との真偽判定に利用する真偽判定部である。
図1のIIとII間の断面図を
図2に示す。
【0027】
前面は、窓Wの位置に、
図2及び
図3に示す第1印刷領域R1A及びパターン外の領域である第1非印刷領域R1Bを有している。他方、背面は、窓Wの位置に、
図2及び
図4に示す第2印刷領域R2A及び第2非印刷領域R2Bを有している。
【0028】
ここでは、第1印刷領域R1Aは、文字列「COPY」に対応した白黒画像のパターンであり、黒色部に相当する第1着色部12は文字列「COPY」の外枠(輪郭)にあたり、白色部に相当する第1非着色部122は文字列「COPY」の外枠(輪郭)内の部分で、基材11そのものである。また、ここでは、第2印刷領域R2Aは、文字列「COPY」の鏡像に対応した万線状の着色画像のパターンである。
【0029】
第1着色層12は、光透過性基材11の前面上であって、窓Wの位置に設けられている。第1着色層12は、
図2及び
図3に示す第1非印刷領域R1B上には設けられておらず、第1印刷領域R1A上に設けられている。
【0030】
第1着色部12は、第2着色部13は表裏で重なった位置関係で配置されていてもよい。白色光で照明した前面からの反射観察の場合に第1着色光のみを視認させ、前面からの透過観察の場合には、背面の第2着色光は透過させず反射観察同様に第1着色光のみを視認させる。第1着色部12は、黒色の着色顔料とポリマーとを含んだインクからなり、第1着色部12の幅は、白黒画像のパターンにより適宜決定させる。
【0031】
第1非着色部122は、基材11そのものであり、白色光で照明した前面からの反射観察の場合に背面の第2着色光は視認させず第1着色光のみで文字列「COPY」に対応した白黒画像のパターンとして視認させ、前面からの透過観察の場合、背面の第2着色光は視認させ文字列「COPY」に対応した着色画像のパターンとして視認させる。
【0032】
第2着色層13は、光透過性基材11の背面上であって、窓Wの位置に設けられている。第2着色層13は、
図2及び
図4に示す第2非印刷領域R2B上には設けられておらず、第2印刷領域R2A上に設けられている。
【0033】
第2着色層13は、
図2及び
図5に示すように、背面上で交互に配列した第2着色部131及び第2非着色部132を含んでいる。第2着色部131及び第2非着色部132は、第1非着色部に対応して背面上に交互に配列している。第2着色部131及び第2非着色部132は、線形状を各々が有し、幅方向へ交互に配列している。ここでは、第2着色部131及び第2非着色部132は、X方向へ伸びた形状を各々が有しており、Y方向へ交互に配列している。
【0034】
第2着色部131は、背面から白色光で照明し、前面から透過観察した場合に、第1着色光とは色の異なる第2着色光を透過させる。
【0035】
背面の第2着色部131は着色顔料とポリマーとを含んだインクからなり、第1着色部とは色の異なる少なくとも1種類以上の組合せからなる着色部として配列してもよい。文字列「COPY」に対応した着色画像のパターンとして、一文字ごとに色を変えた第3の着色部、第4の着色部のように複数種類からなる着色部として配列させてもよく、また一文字パターン内に複数の着色部として配列させてもよい。その場合、前面からの透過観察で、背面の第2着色光は複数の色が混色した着色画像のパターンとして視認されることになる。
【0036】
第2着色部131及び第2非着色部132の配列方向における第2着色部131の寸法、即ち、第2着色部131の幅W2aは、第2着色部131の長さ方向に沿って一定である。
【0037】
幅W2aは、第2着色部131及び第2非着色部132の配列方向において隣り合った第2非着色部132間の距離に相当する。幅W2aは、5μm以上20μm以下の範囲内にある。
【0038】
第2着色部131及び第2非着色部132の配列方向における第2非着色部132の寸法、即ち、第2非着色部132の幅W2bは、第2非着色部132の長さ方向に沿って一定である。
【0039】
幅W2bは、第2着色部131及び第2非着色部132の配列方向において隣り合った第2着色部131間の距離に相当する。幅W2bは、5μm以上20μm以下の範囲内にある。
【0040】
この複写防止媒体1は、低倍率で拡大した観察により、その複写物から区別可能である。これについて、以下に説明する。
【0041】
図6は、
図1に示す複写防止媒体が表示する画像を撮像する様子を概略的に示す図である。
図7は、
図1に示す複写防止媒体が
図6の条件下で表示する画像を示す図である。
図8は、複写物の一部を拡大して示す平面図である。
【0042】
図6では、複写防止媒体1を、その背面が拡散反射板REFと向き合うように設置し、その前面を照明光ILで斜め方向から照明するように光源LSを設置し、複写防止媒体1が垂直方向へ射出する反射光RLを撮像するように撮像装置CMを設置している。なお、照明光ILは白色光である。
【0043】
この条件下では、前面の第1着色層12及び背面の第2着色層13の双方が表示に寄与するが、第2着色部131の幅W2a、及び第2非着色部132の幅W2bは狭い。それ故、撮像装置CMの解像度が低い場合、撮像装置CMは、
図7に示すように文字列「COPY」に対応し、第1着色光の文字列「COPY」の文字枠線と、文字列「COPY」枠線内の第2着色光を有しているパターンを含んだ画像I1を読み取ることとなる。
【0044】
他方、撮像装置CMの解像度が高い場合、撮像装置CMは、
図7に示すように文字列「COPY」に対応し、第1着色光の文字列「COPY」の文字枠線と、文字列「COPY」枠線内の第2着色光を有しているパターンを含んだ画像I1を読み取ることは可能で、かつ、第2着色部131の幅W2a、及び第2非着色部132の幅W2bが幅方向に繰り返し配列された画像として読み取る。
【0045】
このようにして読み取った画像のデータからプリントデータを生成し、このプリントデータに基づいて印刷を行うと、
図8に示す複写物2が得られる。この複写物2は、光透過性基材21と、その上に形成された着色層22及び23を含んでいる。着色層22及び23の各々は、文字列「COPY」に対応したパターンを形成している。
【0046】
撮像装置CMの解像度が低い場合、プリントデータの解像度も低い。それ故、プリンタは、光透過性基材21の一方の主面上の文字列「COPY」に対応した領域内に、ドット状に均一に配置し着色層22及び23を形成する。
【0047】
撮像装置CMの解像度が高い場合であっても、複写防止媒体1における真贋判別部を形成している万線状パターンの幅は一般的なプリンタの解像度以下であるので、プリンタは、撮像装置CMが出力する撮像データよりも解像度が低いプリントデータに基づいて、光透過性基材21の一方の主面上の文字列「COPY」に対応した領域内に、ドット状に均一に配置し着色層22及び23を形成する。
【0048】
それ故、この複写物2を、ルーペなどの拡大鏡を用いて低倍率で拡大して観察すると、上記の領域では、
図8に示すように、第2着色部131の幅W2a及び第2非着色部132の幅W2bは1つのドットサイズよりも十分に狭いため、複写物では小さいサイズのドット231の集合部として複写され、ベタ塗りに近い状態となっていることが確認できる。
【0049】
複写防止媒体1を、ルーペなどの拡大鏡を用いて低倍率で拡大して観察すると、第2着
色層13が設けられた領域では、配列に対応した万線状状のパターンを視認できる。これに対し、複写物では、ドット状部231の配列は万線状のパターンを形成していない。それ故、これらの相違により、複写物2は、原本としての複写防止媒体1とは異なるものであることが確認できる。
【0050】
この複写防止媒体1は、肉眼による観察でも、その複写物から区別可能である。これについて、以下に説明する。
【0051】
図9は、
図1に示す複写防止媒体が表示する反射画像を観察している様子の一例を概略的に示す図である。
【0052】
図9では、複写防止媒体1の前面を光源LSからの照明光ILが斜め方向から照明し、複写防止媒体1が射出する反射光RLを観察者OBが観察するように、光源LS及び表示複写防止媒体1を配置している。なお、照明光ILは白色光である。また、複写防止媒体1の背面側には、反射層を設置していない。
【0053】
この条件下では、第2着色層13の表示への寄与は、第1着色層12の表示への寄与と比較して小さい。即ち、第2着色光の表示への寄与はほぼなく、従って、この条件下で観察者OBが視認する画像I2における文字列「COPY」に対応した領域の色は、
図3に示すように第1着色光の色のみで白黒画像として視認する。これは複写物2においても同様であり、従って、反射観察では複写防止媒体1と複写物2とを互いから区別はできない。
【0054】
これに対し、
図10は、
図1に示す複写防止媒体が表示する透過画像を観察している様子の一例を概略的に示す図である。
【0055】
図10では、複写防止媒体1の背面を光源LSからの照明光ILが照明し、複写防止媒体1が射出する透過光TLを観察者OBが観察するように、光源LS及び複写防止媒体1を配置している。なお、照明光ILは白色光である。
【0056】
この観察条件下で複写防止媒体1が表示する画像において、文字列「COPY」に対応した文字枠内の色は光透過性基材21を透過した第2着色部131の色として視認される。
【0057】
この観察条件下で複写物2が表示する画像においても、複写防止媒体同様に文字列「COPY」に対応した文字枠内の色は光透過性基材21を透過した第2着色部131の色として視認される。
【0058】
但し、
図8を参照しながら行った説明から明らかなように、複写物2の色として視認される光透過性基材21を透過した第2着色部はベタ塗りに近い状態で複写されている。一方で複写防止媒体1の色として視認される光透過性基材21を透過した第2着色部は、
図5に示すように第2着色層13に占める第2着色部131と第2非着色部132の割合、第2着色部の幅W2a及び第2非着色部132の幅W2bをP2=W2a+W2bとしたとき、W2a/P2が25%以上50%以下の範囲内になるよう配列させている。そのため複写防止媒体1の原本と複写物2の前面からの透過観察で視認できる画像パターンは、同じ色として視認するが、色の濃さが複写防止媒体1と複写物2とで異なり、ベタ塗りに近い状態となっている複写物2の方が濃い色として視認できる。
【0059】
従って、透過画像における文字列「COPY」に対応した領域の色を確認することでも、複写防止媒体1と複写物2とを互いから区別可能である。一方で、
図5に示した第2着色部131の第2非着色部132に占める割合が50%を超えるようなパターンの配列をさせると、色の濃さの差がなくなり複写防止媒体1と複写物2の肉眼による観察での区別が困難となる。
【0060】
複写防止媒体1と複写物2を区別させるために色の濃さで判別する場合、
図5に示した第2着色部131の第2非着色部132に占める割合を低下させるようなパターン配置にするほど、複写防止媒体1の透過観察において視認する色は薄くなっていく。
図11に別な印刷パターンの一例を示す。
図11は前面の白黒画像12に対し、白色部に相当する領域の背面側に着色部131及び異なる色の着色部133を万線状に配列させ、前面から透過観察したときに視認できる画像パターンの概略図である。複写防止媒体1の前面の白色画像に対し、背面側に万線状の着色パターンとして配列させたとき視認する画像パターンは、背面側の非着色部にも着色部と同色の色が着色されているように補色する錯視が知られている。この錯視効果によって、第2着色部131の第2非着色部132に占める割合が50%以下の画像パターンにおいても透過観察では着色した画像パターンとして視認することができる。この錯視効果は
図11の縮小した図に示すように前面の白黒画像に対し、背面側の着色部のサイズが細かいパターンになるほど、つまり第2着色部131の第2非着色部132に占める割合が増加するほど、より濃い色の着色画像として視認することになる。
【0061】
カラー複写機による複写では、先ず、そのスキャナ部が、原本が表示する画像を読み取る。スキャナ部による画像の読み取りは、具体的には、原本の背面に拡散反射板を設置し、原本の前面を白色光で照明して反射光を受光することにより行う。スキャナ部は、読み取った画像のデータに相当するスキャンデータを処理部へ出力する。処理部は、このスキャンデータからプリントデータを生成し、これをプリンタ部へ出力する。プリンタ部は、プリントデータに基づいて、基材への印刷を行う。
【0062】
上記の複写防止媒体では、第1非着色部に対応し形成した第2着色部及び第2非着色部は、交互に万線状に配列している。即ち、第2着色部及び第2非着色部の配列方向は、第1非着色部に対し水平方向でも垂直方向でも、あるいは任意の傾きの角度を有し配列していてもよい。
【0063】
万線状の着色画像である第2着色部の幅及び第2非着色部の幅の距離はそれぞれ5μm以上20μm以下の範囲内にあり、線の幅及び線間の幅の距離は短い。それ故、上記の第1主面上からの透過画像において、任意の位置の第2着色部とその隣あって配列している第2着色部との距離がスキャナの解像度よりも小さいため、スキャナ部は、第2非着色部を再現できず、第2着色光のみのいわゆるベタ塗りの状態の着色部として読み取る。この場合、スキャナ部が出力するスキャンデータから再現される画像は、原本が表示する透過画像とは完全には一致せず、画像に占める第2着色光のインキの割合が高く複写物の方が濃い色として視認される。それ故、このスキャンデータから生成されるプリントデータに基づいて印刷を行うことにより得られる複写物が表示する透過画像も、原本が表示する透過画像とは完全には一致しない。
【0064】
また、多くのカラー複写機では、プリンタ部は、互いからの距離が十分に短い第2着色部及び第2非着色部を別々のものとして再現できるほどの印刷解像度を有していない。それ故、スキャナ部が、高い光学解像度又は読み取り解像度を有し、第2着色部と第2非着色部とを別々のものとして読み取ることができたとしても、処理部は、スキャンデータよりも解像度が低いプリントデータを生成し、このプリントデータに基づいて印刷を行うことにより得られる複写物が表示する透過画像は、原本が表示する透過画像とは完全には一致しない。
【0065】
そして、上記の複写防止媒体が表示する画像をデジタルカメラや顕微鏡で撮像し、これによって得られた撮像データを利用して印刷を行っても、上記と同様の理由により、複写物が表示する透過画像は、原本が表示する透過画像とは完全には一致しない。
【0066】
以上の通り、上記の複写防止媒体が表示する透過画像は、その複写物が表示する透過画像とは完全には一致しない。これら画像の相違は、それらの肉眼での観察か又は低倍率で拡大した観察により確認可能である。即ち、上記の複写防止媒体を原本とすると、この原本とその複写物とは肉眼で又は低倍率で拡大した観察により区別可能である。
【0067】
なお、ここで、「低倍率で拡大した観察」は、5~30倍の倍率で拡大した観察を意味している。即ち、原本と複写物とを低倍率で拡大した観察により区別可能であることは、ルーペなどの簡易な拡大鏡による観察によって、それらを区別可能であることを意味する。
【0068】
前記第2着色部間の距離及び前記第2非着色部間の距離は5μm以上20μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0069】
前記第2着色部間の距離及び前記第2非着色部間の距離とは、等しくてもよく、異なっていてもよいが、万線状の着色画像に占める前記第2着色部の割合は25%以上50%以下の範囲内であることが望ましい。
【0070】
この構成を採用した複写防止媒体が表示する透過画像は、その複写物が表示する透過画像と相違していることを、肉眼での観察によって容易に確認可能である。
【0071】
本発明の更に他の側面によると、前記第2着色部及び前記第2非着色部は、前記第1主面上の白黒画像の白色部に相当する前記第1非着色部と向き合った上記側面の何れかに係る複写防止媒体が提供される。
【0072】
本発明の更に他の側面によると、前記第1主面上の白黒画像の白色部に相当する前記第1非着色部と向き合った前記第2主面上の万線状の着色画像は、前記第1着色部とは色の異なる少なくとも1種類以上からなる前記第2着色部からなり、上記側面の何れかに係る複写防止媒体が提供される。
【0073】
この構成を採用した場合、複写防止媒体の第1主面側の面、即ち前面を垂直な方向から撮像した場合に得られる反射画像では、第2主面側の第2着色部は透過されず、第1主面の白黒画像として見える。一方、透過画像では、第2主面側の第2着色部は透過され、第1主面の画像は着色画像として見える。
【0074】
この複写防止媒体において、前記第2着色部及び前記第2非着色部の各々は万線状のパターンであれば、直線形状を有していてもよく、あるいは、曲線形状を有している部分を含んでいてもよい。
【0075】
これらの場合、第2着色部の各々の線幅は線の長さ方向に沿って一定であってもよく、変化していてもよい。
【0076】
光透過性基材は、可視光透過性を有した半透明な薄層で、例えば、紙である。紙は、透かし用紙であることが好ましい。但し、日本国内においては、民間企業が製造する透かし用紙は、白透かし法と呼ばれる、2階調の透過画像を表示するもののみに制限されている。日本国内においては、3階調以上の透過画像を表示する黒透かし法を用いた透かし用紙は、紙幣だけに用いられている。民間企業が製造する透かし用紙を光透過性基材として用いる場合、この紙は薄いものであることが望ましい。光透過性基材に薄い紙を使用する場合、この紙は、強度が不十分となるか又は凹凸に起因して印刷適正が不十分とならないように選定することが好ましい。或いは、光透過性基材として、紙とポリマーフィルム又はポリマーシートとの複合材を使用してもよい。
【0077】
ポリマーフィルム又はポリマーシートとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレン(PE)、及びトリアセチルセルロース(TAC)などの光透過性が高い樹脂からなるフィルム又はシートが好適である。光透過性基材には、複写防止媒体の用途に応じて適当なものを選択する。
【0078】
光透過性基材が紙を含んでいる場合、光透過性基材の不透明度は60%以下が好ましい。ここで、「不透明度」は、JIS P8149:2000「紙及び板紙-不透明度試験方法(紙の裏当て)-拡散照明法」に規定される方法によって得られる値である。
【0079】
第光透過性基材の第1主面上に設けられている白黒画像の黒色部に相当する第1着色部は、白色光で照明した反射観察及び透過観察の場合においても、黒色部に相当する第1着色光として観察される。一方で白黒画像の白色部に相当する第1非着色部は、基材そのもので、白色光で照明した反射観察の場合、基材そのものの色として観察され、透過観察の場合、第2主面上に設けられている第2着色部の着色光として観察される。従って第1主面上の画像は反射観察の場合、白黒画像のパターンとして観察され、透過観察の場合、同パターンが着色画像として観察される。
【0080】
第1及び第2着色部の厚さは、0.3μm以上であることが好ましい。第1及び第2着色部を薄くすると、それらの光透過性基材に対する密着力が不十分となる可能性がある。
【0081】
第1及び第2着色部は、印刷によって形成することができる。例えば、先ず、光透過性基材の一方の主面上に第1及び第2着色部の一方を印刷によって形成する。次に、位置合わせを適宜行い、光透過性基材の他方の主面上に第1及び第2着色部の他方を印刷によって形成する。印刷法は、スクリーン印刷、スクリーンオフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、及び反転印刷などの公知の印刷法から、形成すべき第1及び第2着色部の寸法や間隙に応じて適宜選定する。
【0082】
第1及び第2着色部の各々は、着色顔料とポリマーとを含むことができる。着色顔料としては、当該分野で知られている有機顔料、無機顔料又はそれらの組み合わせを使用することが可能である。
【0083】
無機顔料としては、金属粒子の他、二酸化チタン、亜鉛華、鉄黒に代表される酸化物の他、水酸化物、硫化物、セレン化物、フェロシアン化物、クロム酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、燐酸塩、炭素等がある。有機顔料としては、炭素化合物、ニトロソ系化合物、ニトロ系化合物、アゾ系化合物、レーキ系顔料、フタロシアニン系化合物、及び縮合多環材料等が挙げられる。
【0084】
ポリマーは、無色透明の樹脂又は着色した樹脂からなる。樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用することが可能である。
【0085】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、フッ素系アクリル樹脂、シリコン系アクリル樹脂などのアクリル樹脂、メタクリル酸・スチレン共重合体(MS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリイミド(PI)等を用いることが可能である。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、及びアルキド等の当該分野でよく知られている熱硬化性樹脂を使用することが可能である。
【0086】
これら以外にも、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオキシメチル(POM)、ポリアミド(PA)、及びポリフェニルサルフィド(PPS)等のエンジニアプラスチックやスーパーエンジニアプラスチックを用いることも可能である。この他にも、電離放射線によって硬化するアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポシキ、チオール等を使用することが可能である。
【0087】
第1及び第2着色部の各々は、光散乱粒子を更に含むことができる。光散乱粒子としては、真球形状粒子又は不定型形状粒子を用いる。光散乱粒子の材料は、有機物及び無機物の何れであってもよい。
【0088】
光散乱粒子に使用可能な有機物は、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン(PS)、メタクリル酸・スチレン共重合体(MS)、若しくはその架橋体、メラミン-ホルマリン縮合物、ウレタン樹脂、エステル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、及びこれらの共重合体である。光散乱粒子に使用可能な無機物は、例えば、スメクタイト、カオリナイト、及びタルク等の粘土化合物、シリカ、チタニア、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化バリウム、及び酸化ストロンチウム等の無機酸化物、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸ストロンチウム等の無機炭酸塩、塩化バリウム及び塩化ストロンチウム等の無機塩化物、硫酸バリウム及び硫酸ストロンチウム等の無機硫酸塩、硝酸バリウム及び硝酸ストロンチウム等の無機硝酸塩、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、及び水酸化ストロンチウム等の無機水酸化物、並びにガラス等を使用することが可能である。
【0089】
第1及び第2着色部を形成するのに使用するインクは、上記の成分に加えて、溶剤を更に含むことができる。溶剤は、例えば、ドデカン又はテトラデカンである。溶剤として、他の化合物又は組成物を使用してもよい。例えば、速乾性インキでは、メチルエチルケトン(MEK)、エタノール及びアセトンのように、沸点が低く、常温で揮発するものを溶剤として使用することができる。水性インキでは、水(精製水)を溶剤として使用することができる。オイル系インキでは、脂肪族炭化水素、グリコールエーテル、及び高級アルコールのように常温で揮発し難いオイルを溶剤として使用することが可能である。
【実施例0090】
以下に、本発明の具体例を記載する。
【0091】
<複写防止媒体の製造>
[実施例1]
実施例1として複写防止媒体1を、以下の方法により製造した。なお、印刷層14は省略した。
【0092】
先ず、光透過性基材11として、市販の透かし紙を準備した。次に、光透過性基材11の一方の主面に、墨色のインキを用いインクジェット方式の印刷により、白黒の画像パターンとなる第1着色層12を形成した。
【0093】
その後、光透過性基材11の他方の主面に、第1着色部を除いた第1非着色部の位置に万線状の着色パターンとして配列させるよう位置合わせを実施した後に、シアン色のプロセスインキを用いたグラビアオフセット印刷により、第2着色層13をパターン形成させ
た。このグラビアオフセット印刷において、シアン色のプロセスインキとして市販されているものを使用し、ドクターブレードとしては金属製のものを使用し、ブランケットとしてはシリコンゴムを主体とするものを使用した。凹版としては、銅層の表面にクロムめっきを施したものを使用した。第2着色部131の幅W2a及び第2非着色部132の幅W2bの各々は10μmとした。
【0094】
[比較例1]
以下の事項を除き、実施例1と同様の方法により複写防止媒体1を製造した。即ち、本例では、第2着色部131の幅W2a及び第2非着色部132の幅W2bを、それぞれ、20μm及び5μmとした。
【0095】
[比較例2]
以下の事項を除き、実施例1と同様の方法により複写防止媒体1を製造した。即ち、本例では、第2着色部131の幅W2a及び第2非着色部132の幅W2bの各々を100μmとした。
【0096】
実施例1及び比較例1、比較例2に係る複写防止媒体1において採用した各寸法を、以下の表に示す。
【0097】
【0098】
<複写物の製造>
実施例1及び比較例1、比較例2に係る複写防止媒体1の各々を白色光で照明し、それが表示する画像を、顕微鏡を用いて撮像した。このようにして読み取った画像のデータを利用して、複写防止媒体1と同基材であるすかし紙上への印刷を行うことにより、複写物を製造した。
【0099】
<評価1>
実施例1及び比較例1、比較例2に係る複写防止媒体1とそれらの複写物との各々について、白色光で照明した場合に表示する透過画像を、拡大鏡を用いて観察した。拡大鏡の拡大倍率は10倍とした。結果を表1に示す。
【0100】
なお、ここでは、複写防止媒体1の原本が表示する透過画像と複写物が表示する透過画像とを拡大鏡で観察した場合に、それらを互いから区別することができたときの評価を「A」とし、それらを互いから区別することができなかったときの評価を「B」とした。
【0101】
実施例1及び比較例1、比較例2に係る複写防止媒体1ついては、それらの透過画像において、第2着色部131の配列に由来する色に着色された万線状の配列を確認することができた。
【0102】
これに対し、実施例1及び比較例1に係る複写防止媒体1の複写物は、
図9を参照しながら説明したドット状部231が均一に配置された構造を有していたため、その透過画像において、万線状の配列は確認できなかった。これらの相違から、実施例1及び比較例1に係る複写防止媒体1とその複写物とは、互いから区別することができた。
【0103】
比較例2に係る複写防止媒体1の複写物では、
図9を参照しながら説明したドット状部231が万線状の配列を形成しており、複写物の透過画像において、比較例1に係る複写防止媒体1とその複写物とを、互いから容易に区別することはできなかった。
【0104】
<評価2>
実施例1及び比較例1、比較例2に係る複写防止媒体1とそれらの複写物との各々について、白色光で照明した場合に表示する透過画像を肉眼で観察した。結果を、表1に示す。
【0105】
なお、原本が表示する透過画像と複写物が表示する透過画像とを肉眼で観察した場合に、それらを互いから区別することができたときの評価を「A」とし、それらを互いから区別することができなかったときの評価を「B」とした。
【0106】
実施例1に係る複写防止媒体1が表示する透過画像と、その複写物が表示する透過画像とは、視認される色の濃さが相違していた。複写防止媒体1の原本に比べ複写物の方が濃い色として視認でき、この色の濃さの相違から、実施例1に係る複写防止媒体1とその複写物とは、互いから区別することができた。
【0107】
これに対し、比較例1及び比較例2に係る複写防止媒体1が表示する透過画像と、その複写物が表示する透過画像とからも、色の濃さの差異を判別できなかった。それ故、色の相違を利用して、比較例1及び比較例2に係る複写防止媒体1とその複写物とを、互いから区別することはできなかった。