(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162793
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】海水圧リフト機構
(51)【国際特許分類】
B63C 7/06 20060101AFI20231101BHJP
F15B 15/14 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B63C7/06
F15B15/14 380C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073434
(22)【出願日】2022-04-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】518102436
【氏名又は名称】合同会社小林知財研鑽処
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 健一
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081BB05
3H081BB16
3H081CC23
3H081CC28
3H081DD18
3H081DD31
3H081DD36
3H081DD37
3H081HH03
(57)【要約】
【課題】筒状管内への海水の流入出に伴う水圧で該筒状管内のピストンを作動させ、荷役台座に載置された重量物を昇降させることが可能なリフト装置を提供する。
【解決手段】海水圧を利用して貨物を昇降させることが可能な海水圧リフトであって、海中へ延伸可能なメインシリンダと、メインシリンダ内を上下に摺動するピストンと、ピストンの上面に備えられ上方に延伸するロッドと、ロッドの上端に備えられ貨物を拘持する荷役台座と、から成り、メインシリンダは、中空部を有し海面に対して略垂直状に延伸し天面が開口され底面が閉塞された筒状管と、筒状管外部の海水を筒状管底面とピストンとの間の中空部へ流入可能な流入孔と、筒状管内に流入した海水を外部へ排出可能な排水ポンプを備えた排出孔と、で構成され
、荷役台座は、ロッドに対し回転可能に備えられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水圧を利用して貨物を昇降させることが可能な海水圧リフトであって、
海中へ延伸可能なメインシリンダと、メインシリンダ内を上下に摺動するピストンと、ピストンの上面に備えられ上方に延伸するロッドと、ロッドの上端に備えられ貨物を載置する荷役台座と、から成り、
メインシリンダは、中空部を有し海面に対して略垂直状に延伸し天面が開口され底面が閉塞された筒状管と、筒状管外部の海水を筒状管底面とピストンとの間の中空部へ流入可能な流入孔と、筒状管内に流入した海水を外部へ排出可能な排水ポンプを備えた排出孔と、で構成され、
メインシリンダを上部が海面上に出るよう海中に沈下させ、流入孔を開放することにより筒状管底面とピストン間に海水が流入することで、その水圧によりピストンを上昇させると共に、流入孔を閉塞し排水ポンプを作動させることにより筒状管底面とピストン間の海水を排出孔から排出することでピストンを降下させ、ピストンの上下動に連動してロッドを介して荷役台座が上下動することにより、該荷役台座に載置された貨物の昇降が可能となることを特徴とする海水圧リフト機構。
【請求項2】
前記荷役台座が前記ロッドに対し回転可能に備えられることで、該荷役台座の向きが変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の海水圧リフト機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
海水圧を利用して貨物を昇降させることが可能な海水圧リフト機構に関する。
【背景技術】
【0002】
海底資源の掘削等の水上施設建設において、施設自体に必要な建材は大型且つ重量物が多く、運搬船や起重機船といった船舶も建材に併せて大掛かりなものを使用することとなる。そのため、陸上から海上へ建材を移動させる際には、重量物にも対応可能な門型クレーンや大型フォークリフトといった資材運搬装置が必須であり、その他様々なニーズに応える形で港湾機能を高度化させる必要があった。しかし、大型の運搬装置は、出力に比例し燃費が悪くなるため、脱炭素化が叫ばれる近年においては、港湾機能高度化と脱酸素化の両立が求められていた。
【0003】
上記問題を解決すべく、特許第5767058号公報(特許文献1)のような、把持部に設けられたバラスト水室内のバラスト水を排水し浮力を生じさせることにより、重量物であるケーソン(防波堤等に使用される水中構造物)を水底から浮上移動させる技術提案がなされている。
【0004】
しかしながら、特許文献1にかかる技術提案では、水底に沈んだケーソンの移動方法について述べられるのみであり、港等の海洋施設に積み下ろしされるような資材への使用は考慮されていない。
【0005】
本出願人は、海洋施設における資材等の重量物の移動手段に着目し、海上において簡便な構造で重量物を移動できないものかとの着想のもと、筒状管内への流入出に伴う海水圧で該筒状管内のピストンを作動させ、荷役台座に載置された重量物を昇降させることが可能なリフト装置を開発し、本発明にかかる「海水圧リフト機構」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
筒状管内への海水の流入出に伴う水圧で該筒状管内のピストンを作動させ、荷役台座に載置された重量物を昇降させることが可能なリフト装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本発明は、海水圧を利用して貨物を昇降させることが可能な海水圧リフトであって、海中へ延伸可能なメインシリンダと、メインシリンダ内を上下に摺動するピストンと、ピストンの上面に備えられ上方に延伸するロッドと、ロッドの上端に備えられ貨物を載置する荷役台座と、から成り、メインシリンダは、中空部を有し海面に対して略垂直状に延伸し天面が開口され底面が閉塞された筒状管と、筒状管外部の海水を筒状管底面とピストンとの間の中空部へ流入可能な流入孔と、筒状管内に流入した海水を外部へ排出可能な排水ポンプを備えた排出孔と、で構成され、メインシリンダを上部が海面上に出るよう海中に沈下させ、流入孔を開放することにより筒状管底面とピストン間に海水が流入することで、その水圧によりピストンを上昇させると共に、流入孔を閉塞し排水ポンプを作動させることにより筒状管底面とピストン間の海水を排出孔から排出することでピストンを降下させ、ピストンの上下動に連動してロッドを介して荷役台座が上下動することにより、該荷役台座に載置された貨物の昇降が可能となる手段を採用する。
【0009】
また、本発明は、前記荷役台座が前記ロッドに対し回転可能に備えられることで、該荷役台座の向きが変更可能である手段を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる海水圧リフト機構によれば、筒状管中空部への海水の流入及び排水によって増減する水位・水圧によりピストンを上下摺動させることで、荷役台座を上下動させることが可能であって、該荷役台座に載置された貨物の昇降時に必要とされるエネルギーを海水圧によって補うことが可能であり、作業全体の省エネルギー化に資する、といった従来にない優れた効果を奏する。
【0011】
また、本発明にかかる海水圧リフト機構によれば、ロッドに対し荷役台座が回転可能に備えられることで、該荷役台座の向きを任意の方向へ適宜変更することが可能であるため、例えば船上からの貨物を陸上へ下ろす場合の様に、荷役台座への積み入れ方向(海側)と荷役台座からの積み出し方向(陸側)が異なっても、荷役台座を適宜回転させて向きを変更することで対応可能である、といった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明にかかる海水圧リフト機構の実施形態を示す全体斜視図である。
【
図2】本発明にかかる海水圧リフト機構の使用態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる海水圧リフト機構は、筒状管2内に流入した海水による海水圧の増減に伴ってピストン6が上昇・下降し、荷役台座10に載置された貨物Tを昇降可能にしたことを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる海水圧リフト機構の実施形態を、図面に基づき説明する。
【0014】
尚、本発明にかかる海水圧リフト機構は、以下に述べる実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる構造や形状、寸法、材質などの範囲内で適宜変更することができる。
【0015】
図1は、本発明にかかる海水圧リフト機構の実施形態を示す全体斜視図である。また、
図2は、本発明にかかる海水圧リフト機構の使用態様を示す説明図である。
本発明にかかる海水圧リフト機構は、海水圧によって荷役台座10を昇降させるリフト機構であって、主な構成として、メインシリンダ1と、ピストン6と、ロッド8と、荷役台座10から構成されている。
【0016】
メインシリンダ1は、ピストン6を設置可能な中空部を有した筒状管2と、海水を筒状管2中空部へ流入可能な流入孔3と、筒状管2中空部へ流入した海水を外部へ排出可能な排水ポンプ5を備えた排出孔4と、で構成されている。
【0017】
筒状管2は、ピストン6を設置可能な中空部を有し、海水圧リフトとしての使用時は海面に対して略垂直状に延伸するよう設けられる。筒状管2の形状及び長さについては、ピストン6が摺動可能な内径(ピストン6の外径より僅かに大径)を有する中空部を備えて略円筒形状に形成され、且つ、ピストン6の上下摺動距離が、貨物Tの必要昇降距離よりも長い全長を有して形成されている。該筒状管2の天面は、ピストン6上方を延伸状のロッド8が上下動すべく一部又は全部が開口されており、また、筒状管2の底面は、流入した海水を貯留すべく閉塞されている。
【0018】
流入孔3は、海水を筒状管2内の中空部へ流入させるための孔であり、詳しくは、筒状管2の閉塞された底面と中空部内に備えられるピストン6との間に海水を流入させるための孔である。流入孔3から該中空部へ海水を流入させることで、その海水圧によってピストン6を上方へ押し上げる。尚、中空部に流入した海水の水位は、筒状管2内の水頭圧(ピストン6に掛かる荷重)によって前後するものであるが、最大でメインシリンダ1外部の海水面近傍まで上昇し得ることとなる。流入孔3は、図示していないが、開放と閉塞を切替可能な構造(例えば弁構造)を採用し、海水の流入と停止を切替可能となっている。流入孔3の位置については、特に限定はしないが、筒状管2の閉塞された底面とピストン6との間に流入させて該ピストン6を下方から押し上げるべく作用させることから、少なくとも筒状管2の下方域に備えられることを要し、具体的には、筒状管2の底面若しくは側壁における下端近傍に備えられる。また、流入孔3の大きさや数についても限定はないが、自動又は手動にて流入量の調整が行えるよう、大きさを絞ったり開放する孔の数を限定したりすることが可能な態様を採用し得る。かかる態様を採用することにより、ピストン6上動時の速さを調整することが可能となる。
【0019】
排出孔4は、筒状管2内の中空部に貯留している海水を外部へ排出させるための孔である。排出孔4から海水を外部へ排出させることで、中空部内の水位を下げてピストン6を下降させる。尚、水頭圧の関係から、中空部に貯留された海水が外部へ自然排出されることはないため、排水ポンプ5を利用して中空部内の海水の排出が行われる。排出孔4は、開放と閉塞を切替可能な構造(例えば弁構造)であって、海水の排出と停止を切替可能となっている。排出孔4の位置については、特に限定はしないが、筒状管2の閉塞された底面とピストン6との間の海水を排出させて該ピストン6が下降するよう作用させることから、少なくとも筒状管2の下方域に備えられることを要し、具体的には、筒状管2の底面若しくは側壁における下端近傍に備えられる。また、排出孔4の大きさや数についても限定はなく、排水ポンプ5による経時的排出量を調整することで、ピストン6下動時の速さを調整することが可能となる。
【0020】
排水ポンプ5は、筒状管2の中空部内の海水を外部へ強制的に排出させるためのもので、排出孔4に直接若しくは間接的に接続され、該排出孔4を介して筒状管2の中空部内の海水を吸引して海中へ排出する。排水ポンプ5の具体的構造・仕様については、従来公知の構造・仕様のものを採用すれば足り、特に限定するものではない。
【0021】
ピストン6は、筒状管2の中空部に備えられるもので、該ピストン6の底面と筒状管2の底面との間の中空部に貯留される海水の増減により、中空部内を垂直方向へ上下に摺動する。ピストン6の形状は、略円柱状であって、上下の長さ(全高)について特に限定はないが、筒状管2の中空部内を摺動可能な程度に該筒状管2の内径よりやや縮径された外径を有して成る。このとき、ピストン6の下方に存する海水がピストン6と筒状管2との僅かな間隙を通過してピストン6上方へ漏出することのないよう、ピストン6の外周壁に一乃至複数のピストンリングを周設するなど漏水防止手段を施すことで水密性を担保する態様が好適である。また、略円柱状を成すピストン6の内部を中空状として空気を充満させることで、ピストン6自体の重量を軽減させると共に、浮力を増幅させる態様も採用し得る。ピストン6の上面には、上方へ延伸するロッド8の下端が固定されている。
【0022】
ロッド8は、長尺の棒状体であって、ピストン6の上下動をそのまま荷役台座10に伝達するものである。よって、ロッド8の上端は荷役台座10の下面所定箇所に連結されると共に、ロッド8の下端はピストン6の天面所定箇所に固定的に連結されている。これにより、荷役台座10及びそこに載置された貨物Tをピストン6の上下動に連動して昇降させることが可能となる。ロッド8の形状については、特に限定するものではないが、長さは少なくとも筒状管2の中空部における最下位置にピストン6が降下した際に筒状管2の天面からロッド8先端が突出するだけの長さを有し、太さについては荷役台座10に載置された貨物Tを支え得るだけの荷重強度を有していることを要する。
【0023】
ロッド8の構造について、必要な荷重強度を有してさえいれば、中空部を有するパイプ状に形成することも可能である。かかる態様を採用することで、ピストン6にかかる荷重を軽減させることが可能となる。
また、ロッド8の全長を調整可能な伸縮機構を備える態様も採用でき、ロッド8を伸長することで、ピストン6の上昇幅だけでは足りない高所へも貨物Tの昇降が可能となる。
さらに、ロッド8が一本だけでなく複数本備える態様も考えられ、荷役台座10の支持安定性並びに荷重強度の向上に資する。
そしてまた、ロッド8先端と荷役台座10との連結部分に空気圧等で上下動する一乃至複数のサブロッド8を装備し、荷役台座10の微妙な傾斜等を調整可能な態様も考え得る。
【0024】
荷役台座10は、貨物Tを載置可能な台座であって、ロッド8の上端に連結され、ピストン6の上下動に連動してロッド8を介して上下に昇降動作するものである。荷役台座10の大きさや形状について、特に限定するものではないが、例えば略直方形の板状体や、角柱を格子状に配列して成る態様、貨物Tの落下を防止するための側壁を立設する態様などが考え得る。また、荷役台座10をフォーク状に形成する態様を採用すれば、パレット上に載置された貨物Tをパレットごと昇降することも可能となる。尚、図示していないが、荷役台座10上における貨物Tの移動が容易となるよう、転がり軸受を荷役台座10の上面所定箇所に設ける態様も好適である。
【0025】
荷役台座10とロッド8との連結に関し、ピストン6上面におけるロッド8下端の固定態様と同様に、固定的に連結する態様を採用することも可能であるが、例えば船上からの貨物Tを陸上へ下ろす場合の様に、荷役台座10への積み入れ方向(海側)と荷役台座10からの積み下ろし方向(陸側)が異なっても、荷役台座10の一方側から貨物Tの出し入れを可能にすべく、略垂直方向に延伸するロッド8に対し荷役台座10が水平方向へ回転可能に連結される態様が好適である。回転可能に連結するための具体的構造については、特に限定するものではないが、例えばロッド8と荷役台座10との連結部分にギアモータ並びに回転ギア機構を装備し、ギアモータの回転を利用して荷役台座10を回転させる態様が考え得る。あるいは、ロッド8先端と荷役台座10とがベアリング機構を介して連結されることで、ロッド8に対し荷役台座10を回転可能に連結し、実際の回転は手動的手段若しくは何らかの機械的手段で行う態様も可能である。このように、ロッド8に対し荷役台座10が回転可能に連結されることで、該荷役台座10の向きを任意の方向へ適宜変更することが可能となって、貨物Tの積載及び積み下ろしにおける作業効率を向上させることが可能となる。
【0026】
以上の各構成要素により、本発明にかかる海水圧リフト機構は構成されている。すなわち、本発明にかかる海水圧リフト機構は、中空部を有した筒状管2から成るメインシリンダ1と、筒状管2内に備えられたピストン6と、ピストン6の天面に下端が連結されるロッド8と、ロッド8の上端と連結され貨物Tを載置可能な荷役台座10と、で構成されており、メインシリンダ1の上部が海面上に出るよう海中に沈下させた状態で配設される。配設手段については、海底から所要高さの土台を設置して該土台の上にメインシリンダ1を固定的に載置する態様や、岸壁や海洋構造物等とメインシリンダ1の側壁とを固定的に連結する態様などが考え得る。配設場所は、貨物Tの積載・積み下ろし作業が必要な海上であれば、あらゆる場所に設置することが可能であって、例えば工業港や商港、エネルギー港、漁港といった港であったり、石油プラットフォームなどの海底資源採掘場や海洋構造物用に隣接して配設され、主に船舶に対する貨物Tの積載・積み下ろし作業用として使用される。
【0027】
次に、本発明にかかる海水圧リフト機構の作用並びに貨物昇降作業の流れについて説明する。
まず、荷役台座10並びに貨物Tの上昇を行う場合について説明する。メインシリンダ1における筒状管2の下方域に備えられた流入孔3を開放することで、メインシリンダ1外部の海水が、流入孔3を介して筒状管2の閉塞された底面とピストン6との間の中空部内に流入する。流入する海水の水位は、水頭圧の関係により、最大でメインシリンダ1外部の海水面近傍まで上昇可能であって、かかる水位上昇によりピストン6が水圧で押し上げられ、中空部内にて上方へ摺動する。尚、海水の流入中に流入孔3を閉塞することで、ピストン6の摺動による上昇を途中で停止させることができる。かかるピストン6の上方への摺動に連動して、該ピストン6に連結されているロッド8が上方へ押し出されると共に、該ロッド8の上端に連結されている荷役台座10並びに該荷役台座10に載置された貨物Tが上昇することとなる。荷役台座10が貨物Tの積載・積み下ろしに必要な高さに達した時点で、流入孔3を閉塞してこれ以上の上昇をストップする。
【0028】
次いで、荷役台座10並びに貨物Tの下降を行う場合について説明する。メインシリンダ1における筒状管2の下方域に備えられた排出孔4を開放すると共に、該排出孔4に接続されている排水ポンプ5を稼働する。これにより、筒状管2の閉塞された底面とピストン6との間の中空部内に貯留されている海水が、排水ポンプ5によって排出孔4から強制的に吸引されると共にメインシリンダ1外部の海水へ放出され、中空部内の水位が下降する。かかる水位下降により、ピストン6は中空部内にて下方へ摺動する。尚、海水の排出中に排水ポンプ5の稼働を停止することで、ピストン6の摺動による下降を途中で停止させることができる。かかるピストン6の下方への摺動に連動して、該ピストン6に連結されているロッド8が下方へ引き戻されると共に、該ロッド8の上端に連結されている荷役台座10並びに該荷役台座10に載置された貨物Tが下降することとなる。荷役台座10が貨物Tの積載・積み下ろしに必要な高さに達した時点で、排水ポンプ5の稼働を停止すると共に排出孔4を閉塞してこれ以上の下降をストップする。
【0029】
以上、本発明にかかる海水圧リフト機構の基本的構成態様並びに作用について説明したが、本発明は上記実施形態や図面に示す構成態様に限定するものではない。例えば、一の荷役台座10に対して複数のメインシリンダ1及びピストン6並びにロッド8を接続して巨大な貨物Tを昇降させる態様や、ロッド8と荷役台座10の間に油圧式等のサブシリンダを設けて貨物昇降箇所への微調整を可能とする態様等も考え得る。また、ピストン6下方に存する海水が万が一ピストン6上方へ漏出した場合に、その漏水を排除するための一乃至複数の水抜き孔を筒状管2の上部所定箇所に備え、ピストン6が上昇した際に該水抜き孔を介して漏水を外部へ排水可能とする態様も採用し得る。
【0030】
以上の通り、本発明にかかる海水圧リフト機構によれば、メインシリンダ1における筒状管2中空部への海水の流入及び排水によって増減する水位・水圧によりピストン6を上下摺動させることで、荷役台座10を上下動させることが可能であって、該荷役台座10に載置された貨物Tの上昇時に必要とされるエネルギーを海水圧によって補うことが可能であり、作業の効率化並びに省エネルギー化に資するものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明にかかる海水圧リフト機構は、海水を利用可能な港湾・海中への設置のみならず、所要の水深を有し水圧を利用し得る湖沼やダム等への設置も可能である。したがって、本発明にかかる「海水圧リフト機構」の産業上の利用可能性は大であると思料する。
【符号の説明】
【0032】
1 メインシリンダ
2 筒状管
3 流入孔
4 排出孔
5 排水ポンプ
6 ピストン
8 ロッド
10 荷役台座
T 貨物
W 海水
【手続補正書】
【提出日】2023-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水圧を利用して貨物を昇降させることが可能な海水圧リフトであって、
海中へ延伸可能なメインシリンダと、メインシリンダ内を上下に摺動するピストンと、ピストンの上面に備えられ上方に延伸するロッドと、ロッドの上端に備えられ貨物を載置する荷役台座と、から成り、
メインシリンダは、中空部を有し海面に対して略垂直状に延伸し天面が開口され底面が閉塞された筒状管と、筒状管外部の海水を筒状管底面とピストンとの間の中空部へ流入可能な流入孔と、筒状管内に流入した海水を外部へ排出可能な排水ポンプを備えた排出孔と、で構成され、
荷役台座は、ロッドに対し回転可能に備えられ、これにより該荷役台座の向きが変更可能であり、
メインシリンダを上部が海面上に出るよう海中に沈下させ、流入孔を開放することにより筒状管底面とピストン間に海水が流入することで、その水圧によりピストンを上昇させると共に、流入孔を閉塞し排水ポンプを作動させることにより筒状管底面とピストン間の海水を排出孔から排出することでピストンを降下させ、ピストンの上下動に連動してロッドを介して荷役台座が上下動することにより、該荷役台座に載置された貨物の昇降が可能となることを特徴とする海水圧リフト機構。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
荷役台座10とロッド8との連結に関し、ピストン6上面におけるロッド8下端の固定態様と同様な固定的に連結する態様は採用せず、例えば船上からの貨物Tを陸上へ下ろす場合の様に、荷役台座10への積み入れ方向(海側)と荷役台座10からの積み下ろし方向(陸側)が異なっても、荷役台座10の一方側から貨物Tの出し入れを可能にすべく、略垂直方向に延伸するロッド8に対し荷役台座10が水平方向へ回転可能に連結される態様を採用する。回転可能に連結するための具体的構造については、特に限定するものではないが、例えばロッド8と荷役台座10との連結部分にギアモータ並びに回転ギア機構を装備し、ギアモータの回転を利用して荷役台座10を回転させる態様が考え得る。あるいは、ロッド8先端と荷役台座10とがベアリング機構を介して連結されることで、ロッド8に対し荷役台座10を回転可能に連結し、実際の回転は手動的手段若しくは何らかの機械的手段で行う態様も可能である。このように、ロッド8に対し荷役台座10が回転可能に連結されることで、該荷役台座10の向きを任意の方向へ適宜変更することが可能となって、貨物Tの積載及び積み下ろしにおける作業効率を向上させることが可能となる。