(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162814
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 11/00 20060101AFI20231101BHJP
B65H 29/58 20060101ALI20231101BHJP
B65H 29/60 20060101ALI20231101BHJP
B41J 11/70 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B41J11/00 B
B65H29/58 B
B65H29/60 C
B65H29/60 B
B41J11/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073471
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507351883
【氏名又は名称】シチズン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 彰
【テーマコード(参考)】
2C058
3F053
【Fターム(参考)】
2C058AB03
2C058AC06
2C058AE02
2C058AE04
2C058AE08
2C058AF04
2C058AF06
2C058AF15
2C058AF51
2C058AF55
2C058LA03
2C058LA07
2C058LC28
3F053BA03
3F053BA18
3F053EA05
3F053EB04
3F053EC02
3F053EC06
3F053EC08
3F053ED17
3F053LA07
3F053LB01
(57)【要約】
【課題】フラップの数よりも少ない数の駆動機構によって各フラップを動かして、フラップの駆動に関わる部品点数を減らすことが可能なプリンタを提供する。
【解決手段】本発明のプリンタは、搬送方向に搬送された用紙の経路を、第1経路と第2経路とのうち一方に切り替える第1フラップ(プリント排出切替フラップ)72と、第1フラップ72よりも搬送方向の下流側に設けられた、第2経路を搬送された用紙の経路を、第3経路と第4経路とのうち一方に切り替える第2フラップ(デカール切替フラップ)74と、搬送方向と直交する用紙の幅方向Wに移動する可動部材51と、可動部材51が幅方向Wの第1の位置P1に配置された状態とそれ以外の状態で第1フラップを切り替え、第2の位置P2に配置された状態とそれ以外の状態で第2フラップを切り替える切替機構52と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に搬送された用紙の経路を、第1経路と第2経路とのうち一方に切り替える第1フラップと、
前記第1フラップよりも前記搬送方向の下流側に設けられた、前記第2経路を搬送された用紙の経路を、第3経路と第4経路とのうち一方に切り替える第2フラップと、
前記搬送方向と直交する前記用紙の幅方向に移動する可動部材と、
前記可動部材が前記幅方向の第1の位置に配置された状態と前記第1の位置以外の位置に配置された状態で前記第1フラップを切り替え、第2の位置に配置された状態と前記第2の位置以外に配置された状態で前記第2フラップを切り替える切替機構と、を備える
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記第2経路に切り替えられたことにより前記用紙が前記第2経路を通過している状態においては、前記可動部材が前記第1経路に切り替えられる位置に移動しても、前記切替機構は、前記用紙の前記第2経路の通過を妨げる方向に回動する前記第1フラップに、前記用紙の前記第2経路の通過を許容して前記用紙に接する回動力を付与する
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記切替機構は、前記可動部材が前記幅方向の前記第1の位置に配置された場合に前記第1フラップを切り替える第1リンクを有しており、
前記第1フラップは、弾性部材を介して前記第1リンクと接続されており、
前記弾性部材が、前記用紙の前記第2経路の通過を許容する回動力を前記第1フラップに伝達する弾性力を有する
ことを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記第1経路は、前記用紙に印刷する場合に選択される印刷経路であり、
前記第2経路は、前記用紙を出口に向かって進める場合に選択される進行経路である
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記第3経路は、前記用紙に生じた巻き癖を直すデカール処理を行ってから前記用紙を排出するデカール処理排出経路であり、
前記第4経路は、前記第2経路を通過した前記用紙をそのまま前記出口に向かって進める排出経路である
ことを特徴とする請求項4に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記第3経路と前記第4経路とは前記搬送方向の下流側で合流して合流経路を形成する
ことを特徴とする請求項5に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記可動部材は、前記第2フラップよりも前記搬送方向の下流側に設けられ、可動刃を有し、前記幅方向に移動して前記用紙を切断するカッターの可動刃であり、
前記第1の位置と前記第2の位置を、前記用紙の前記幅方向の一方と他方とに分けて設けるか、または、前記用紙の前記幅方向の一方のみに並べて設けた
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタにおいては、用紙の印刷や、用紙の排出時に、プリンタ内部での用紙の搬送経路を切り替える必要がある。用紙の搬送経路を切り替える箇所には、搬送経路を切り替えるフラップと、制御部からの指令により駆動してフラップを動かす駆動機構が必要である(例えば、特許文献1、特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-160899号公報
【特許文献2】特開2015-189204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
用紙の搬送経路を切り替える箇所毎に、フラップ及び対応する駆動機構を追加すると、部品点数が多くなり、その分製造コストも上がることになる。
【0005】
本発明の目的は、フラップの数よりも少ない数の駆動機構によって各フラップを動かして、フラップの駆動に関わる部品点数を減らすことが可能なプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のプリンタは、搬送方向に搬送された用紙の経路を、第1経路と第2経路とのうち一方に切り替える第1フラップと、前記第1フラップよりも前記搬送方向の下流側に設けられた、前記第1経路を搬送された用紙の経路を、第3経路と第4経路とのうち一方に切り替える第2フラップと、前記搬送方向と直交する前記用紙の幅方向に移動する可動部材と、前記可動部材が前記幅方向の第1の位置に配置された状態と前記第1の位置以外の位置に配置された状態で前記第1フラップを切り替え、第2の位置に配置された状態と前記第2の位置以外に配置された状態で前記第2フラップを切り替える切替機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
このように構成することで、1つの可動部材で、第1フラップ及び第2フラップを切り替えて、用紙が進む計4つの経路を切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】昇華型サーマルプリンタ(以下、プリンタという。)の外観を示す斜視図である。
【
図2】プリンタの幅方向Wの中心を通り、前後方向Lに沿った鉛直面による断面図である。
【
図3】
図2に示した搬送路を明瞭にするために、
図2を簡略化して模式的に表現した模式図である。
【
図4】プリンタの前面上カバーを開き、ロール紙収容部を前後方向Lの前方に引き出した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図4の状態における前方から見た正面図である。
【
図7】ロール紙収容部を省略して
図2の一部を拡大して図示した拡大断面図である。
【
図8】搬送路切替機構を構成する部材以外を省略して示した斜視図である。
【
図9】ロール紙収容部を省略して
図2の一部を拡大して図示した拡大断面図である。
【
図10】搬送路切替機構を構成する部材以外を省略して示した斜視図である。
【
図11】ロール紙収容部を省略して
図2の一部を拡大して図示した拡大断面図である。
【
図12】排出路切替機構部分を明瞭にするため
図2の一部を拡大して図示した拡大断面図であり、排出路切替部材が第1の位置にある状態を示す図である。
【
図13】排出路切替機構部分を明瞭にするため
図2の一部を拡大して図示した拡大断面図であり、排出路切替部材が第2の位置にある状態を示す図である。
【
図14】プリンタが枚葉紙の表裏両面にプリントを行う際の枚葉紙の動きを模式的に示した、
図3相当の簡略断面図(その1)である。
【
図15】プリンタが枚葉紙の表裏両面にプリントを行う際の枚葉紙の動きを模式的に示した、
図3相当の簡略断面図(その2)である。
【
図16】プリンタが枚葉紙の表裏両面にプリントを行う際の枚葉紙の動きを模式的に示した、
図3相当の簡略断面図(その3)である。
【
図17】プリンタがロール紙にプリントを行う際の用紙の動きを模式的に示した、
図3相当の簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るプリンタの実施形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
<構成>
図1は昇華型サーマルプリンタ100(以下、プリンタ100という。)の外観を示す斜視図、
図2はプリンタ100の幅方向Wの中心を通り、前後方向Lに沿った鉛直面による断面図、
図3は
図2に示した搬送路80を明瞭にするために、
図2を簡略化して模式的に表現した模式図、
図4はプリンタ100の前面上カバー13を開き、ロール紙収容部22を前後方向Lの前方に引き出した状態を示す斜視図、
図5は
図4の状態における前方から見た正面図、
図6は
図4の状態における
図2相当の断面図である。
【0011】
図示のプリンタ100は、本発明に係るプリンタの一実施形態である。プリンタ100は、ケース10と、枚葉紙収容部21と、ロール紙収容部22と、プリント部30と、カッター部40と、搬送手段70と、搬送路80と、を備えている。
【0012】
上面カバー12は、ケース本体11の高さ方向Hの上面の開口を塞ぐように配置され、枚葉紙201(以下、単に用紙201ともいう。)、ロール紙202から巻き解かれた用紙203(以下、単に用紙203ともいう。)が溜められるスタッカーとして機能するように、外周縁のうち両側縁と後端縁とを除いた前端側の部分と内側の部分12aが凹んで形成されている。
【0013】
なお、上面カバー12の、凹んだ部分12aの底面12bは、
図2に示すように、後方から前方に向けて低くなるように傾斜して形成されている。したがって、後述する前面上カバー13の上排出口13bから、後方に向けて排出された用紙201,203は、凹んだ部分12aの底面12bにおいて、底面12bの傾斜により、前方側に溜められる。
【0014】
前面上カバー13はプリンタ100の前面の上部に配置され、前面下カバー15はプリンタ100の前面の下部に配置され、前面中カバー14はプリンタ100の前面の、前面上カバー13と前面下カバー15との間に配置されている。
【0015】
(内部引き出しユニット)
前面上カバー13と前面中カバー14は、
図4,6に示すように、内部引き出しユニット60(引き出しユニットの一例)に設けられている。内部引き出しユニット60は、ケース本体11と上面カバー12とで囲まれた内部に配置されていて、前面中カバー14の下部に形成された指掛け部14aに指を掛けて前後方向Lの前方に引くことで、ケース本体11及び上面カバー12に対し前方に引き出し可能となっている。
【0016】
内部引き出しユニット60は、前面上カバー13及び前面中カバー14の他、ロール紙収容部22、プリント部30のインクリボン32及びプラテンローラ33、カッター部40、搬送手段70、並びに搬送路80が一体に備えられている。
【0017】
前面上カバー13は
図1に示した閉じた状態から、内部引き出しユニット60が
図4,6に示すようにケース本体11及び上面カバー12で囲まれた内部から前方に引き出された状態で、
図4,6の矢印で示す上後方に向けて回動可能に支持されている。前面上カバー13が上後方に回動して開いた状態となることにより、ロール紙収容部22の前方の一部及び上方の一部を開放する。これにより、ケース10の内部に形成されたロール紙収容部22を露出させ、ロール紙収容部22にロール紙202を出し入れすることができる。
【0018】
前面上カバー13の前面には、プリント済みの用紙201,203を前方に排出する前排出口13aが形成され、また、前面上カバー13の後面には、プリント済みの用紙201,203を後方の、上面カバー12に形成されたスタッカーに排出する上排出口13bが形成されている。
【0019】
なお、
図4,5,6は、前面中カバー14に取り付けられているごみ箱16(
図1,2参照)が取り外された状態を示している。ごみ箱16は、後述するカッター部40の下方に配置されて、カッター部40により切断されて用紙201,203から切り離された紙片を収容する部分であり、前面中カバー14に対して上方にスライドすることで、前面中カバー14から取り外すことができるように取り付けられている。
【0020】
このため、ごみ箱16は、前面上カバー13が閉じた状態では前面中カバー14から取り外すことはできず、前面上カバー13が開いた状態では前面中カバー14から取り外すことができる。ごみ箱16に溜められた切り屑等は、ごみ箱16を前面中カバー14から取り外した状態で、除去することができる。
【0021】
前面下カバー15は、
図2,6に示すように、トレイ状の枚葉紙収容部21の前面に形成されている(前面下カバー15は、枚葉紙収容部21の一部である。)。
【0022】
(枚葉紙収容部)
枚葉紙収容部21は、
図2に示すように、プリンタ100の最下部に設けられ、ロール紙収容部22の下方に配置されている。枚葉紙収容部21は、予め所定の大きさに切断された枚葉紙201を厚さ方向に重ねて収容している。
【0023】
枚葉紙収容部21は、前面下カバー15の上部に形成された指掛け部15aに指を掛けて前後方向Lの前方に引くことで、内部引き出しユニット60とは独立して、ケース本体11及び上面カバー12に対して前方に引き出し可能に設けられている。そして、枚葉紙収容部21は、ケース本体11及び上面カバー12に対して前方に引き出された状態で上方が開放され、この開放された上方から、内部に収容する枚葉紙201を出し入れすることができる。
【0024】
(ロール紙収容部)
ロール紙収容部22は、前述したように内部引き出しユニット60に形成されている。ロール紙収容部22は、長尺の用紙203がロール状に巻かれたロール紙202を収容する部分である。ロール紙収容部22は、
図2,4~6に示すように、ロール紙202の軸がプリンタ100の幅方向Wに平行となる姿勢で、ロール紙202を収容する。
【0025】
ロール紙収容部22は、内部引き出しユニット60が
図2に示すようにケース10の内部に収容された状態で、枚葉紙収容部21の上方に配置された状態となる。ロール紙202は、
図2において、ロール紙202の下端から図示の右方向に用紙203が引き出されて巻き解かれることにより、反時計回りに回転する向きに配置される。
【0026】
(プリント部)
プリント部30は、ロール紙収容部22の後方に配置されている。プリント部30は、プリンタ100の図示しない制御部の制御によって、搬送路80のうちロール紙収容部22の後方において略鉛直方向に立ち上がった部分(後述するプリント路82)を通過する用紙201,203にプリントを行う。
【0027】
プリント部30は、サーマルヘッド31と、インクリボン32と、プラテンローラ33と、を備えている。インクリボン32のリボンには、昇華染料が塗布されている。インクリボン32は、用紙201,203の搬送に同期して、繰り出し側ロール32aから巻き取り側ロール32bにリボンを送り、インクリボン32に接したサーマルヘッド31の発熱によって、インクリボン32の昇華染料を用紙201,203に拡散転写することで、プリントを行う。
【0028】
インクリボン32は内部引き出しユニット60に設けられていて、内部引き出しユニット60を、
図4,6に示すように、ケース本体11から前方に引き出して、前面上カバー13を上後方に回転させない状態で、インクリボン32を、ロール紙収容部22の上方を円弧状に通して、前方に引き出すことができる。
【0029】
これにより、内部引き出しユニット60の、上面カバー12と前面上カバー13との間で開放された上方に、インクリボン32を取り出すことができ、インクリボン32の交換を容易にしている。
【0030】
プラテンローラ33は、用紙201,203を挟んでインクリボン32及びサーマルヘッド31の反対側に配置されている。プラテンローラ33は、用紙201,203をインクリボン32に押し付ける。
【0031】
(カッター部)
カッター部40は、ロール紙収容部22の前方で、前面上カバー13の内部に配置されている。カッター部40は、プリンタ100の図示しない制御部の制御によって、搬送路80のうちロール紙収容部22の上方から前方に延びた部分(後述する合流経路83d)を通過する用紙201,203を、幅方向Wに沿って切断する。切断された用紙201の切断片は、カッター部40の下方に配置されたごみ箱16の内部に落下して溜められる。
【0032】
(搬送路切替機構)
図7乃至
図11は、前面上カバー13に覆われた、用紙へのプリントと用紙の排出を切り替える搬送路切替機構部分を明瞭にするための図である。
図7、
図9及び
図11は、ロール紙収容部を省略して
図2の一部を拡大して図示した拡大断面図である。
図8及び
図10は、搬送路切替機構の動作を説明するため、搬送路切替機構を構成する部材以外を省略して示した斜視図である。
【0033】
搬送路切替機構50は、第1フラップ(プリント排出切替フラップ)72と、第2フラップ(デカール切替フラップ)74と、可動部材51と、切替機構52とを備えている。
【0034】
第1フラップ(プリント排出切替フラップ)72は、用紙201,203の経路を、第1経路と第2経路とのうち一方に切り替えるものである。具体的には、本実施の形態では、第1経路は、用紙201,203にプリント(印刷)を行う場合に選択される印刷経路(後述のプリント上流路86)であり、第2経路は、用紙201,203を出口に向かって進める場合に選択される進行経路(後述の排出路83a)である。第1フラップ72は、回動軸72Aを中心に、所定の角度範囲を回動するようになっている。一方の端部に、後述の第1リンク53との接続部72Bが形成されている。
【0035】
第2フラップ(デカール切替フラップ)74は、第1フラップ(プリント排出切替フラップ)72よりも搬送方向の下流側に設けられた、第2経路(排出路83a)を搬送された用紙201,203の経路を、第3経路と第4経路とのうち一方に切り替えるものである。具体的には、本実施の形態では、第3経路は、用紙(特に用紙203)に生じた巻き癖を直すデカール処理を行ってから用紙を排出するデカール処理排出経路83bであり、第4経路は、第2経路(排出路83a)を通過した用紙201,203をそのまま出口に向かって進める排出経路83cである。デカール処理排出経路83bと排出経路83cは、下流側で合流して合流経路83dを形成している。第2フラップ74は、回動軸74Aを中心に、所定の角度範囲を回動するようになっている。一方の端部に、後述の第2リンク54との接続部74Bが形成されている。
【0036】
可動部材51は、搬送方向と直交する用紙201,203の幅方向Wに移動するものである。本実施の形態では、カッター部40が可動部材51を兼ねている。
【0037】
切替機構52は、可動部材51が第1の位置P1に配置された状態と第1の位置以外の位置に配置された状態で第1フラップ72を切り替え、第2の位置P2に配置された状態と第2の位置以外に配置された状態で第2フラップ74を切り替える。本実施の形態では、具体的には、可動部材51が幅方向Wの一方の端部(第1の位置)P1に配置された状態とそれ以外の位置に配置された状態で第1フラップ72を切り替える第1リンク53と、可動部材51が幅方向Wの他方の端部(第2の位置)P2に配置された状態とそれ以外の位置に配置された状態第2フラップ74を切り替える第2リンク54を有している。
【0038】
第1リンク53は、一部省略して図示している回動軸を中心にして回動する回動軸部53Aと、可動部材51が一方の端部P1に位置したときに可動部材51と接触する可動部材接触部53Bと、板バネ取付部53Cを有している。板バネ取付部53Cには、第1フラップ72の接続部72Bと接続された板バネ(弾性部材)53Dが取り付けられている。これにより、第1フラップ72と第1リンク53が板バネ53Dを介して接続されている。
【0039】
図7及び
図8に示すように、可動部材51が第1の位置P1以外の位置(この例では、可動部材51は第2の位置P2)にある場合には、第1リンク53は、板バネ53Dを介して第1フラップ72を押し上げている。この状態で、第1フラップ72により第1経路に切り替えられている。
図9及び
図10に示すように、可動部材51が移動して一方の端部にある第1の位置P1に配置されると、可動部材51が可動部材接触部53Bと接触して可動部材接触部53Bを押し上げ、第1リンク53は、回動軸部53Aを中心にして回動する。すると、第1リンク53が板バネ53Dを介して第1フラップ72を押し下げる。これにより、第1フラップ72により第2経路に切り替えられている。
【0040】
第2リンク54は、一部省略して図示している回動軸を中心にして回動する回動軸部54Aと、可動部材51が他方の端部P2に位置したときに可動部材51と接触する可動部材接触部54Bと、板バネ取付部54Cを有している。板バネ取付部54Cには、第2フラップ74の接続部74Bと接続された板バネ(弾性部材)54Dが取り付けられている。これにより、第2フラップ74と第2リンク54が板バネ54Dを介して接続されている。
【0041】
図9及び
図10に示すように、可動部材51が第2の位置P2以外の位置にある場合には、第2リンク54は、板バネ54Dを介して第2フラップ74を押し上げている。この状態で、第2フラップ74により第3経路に切り替えられている。
図7及び
図8に示すように、可動部材51が移動して他方の端部にある第2の位置P2に配置されると、可動部材51が可動部材接触部54Bと接触して可動部材接触部54Bを押し上げ、第2リンク54は、回動軸部54Aを中心にして回動する。すると、第2リンク54が板バネ54Dを介して第2フラップ74を押し下げる。これにより、第2フラップ74により第4経路に切り替えられている。
【0042】
本実施の形態では、第1フラップ72は、第2経路に切り替えられたことにより用紙201,203が第2経路を通過している状態(可動部材51が第1の位置P1にある状態)においては、第1経路に切り替えられても、用紙201,203が第2経路を通過できるようになっている。すなわち、
図9及び
図10に示す状態で用紙が第2経路を通過している際に、第2フラップ74により第3経路から第4経路に切り替えるために可動部材51が第2の位置P2に移動した場合、
図11に示すように、第1フラップ72は第1経路に切り替えられるが、引き続き用紙201,203が第2経路を通過できる程度のばね力で第1フラップ72が板バネ53Dを介して通過中の用紙201,203を押し付ける(用紙の第2経路の通過を妨げる方向に回動する第1フラップ72に、用紙の第2経路の通過を許容して用紙に接する回動力を付与する)。仮に、用紙が第2経路を通過する前から第1フラップ72は第1経路に切り替えられていれば、第1フラップ72によって、第2経路が閉ざされているため、用紙は第1経路を通過する。このようにして、1つの可動部材51によって、第1経路~第4経路の計4つの経路を切り替えることができる。
【0043】
(排出路切替機構)
図12及び
図13は、排出路切替機構部分を明瞭にするため
図2の一部を拡大して図示した拡大断面図である。本実施の形態では、上述の通り、用紙201,203を排出する第1排出口である前排出口13aと、用紙201,203を排出する、第1排出口とは異なる第2排出口である上排出口13bを有しており、搬送通路(合流経路83d)を前排出口13aに通じる第1排出通路(後述の前排出路84)と、上排出口13bに通じる第2排出通路(後述の上排出路85)とのいずれかに切り替えて接続する排出路切替部材71を備えている。
【0044】
図12に示すように、排出路切替部材71が、第1排出通路(前排出路84)を遮断しない第1の位置P11に存在する場合に、搬送通路(合流経路83d)と第1排出通路(前排出路84)が接続される。この際、排出路切替部材の下壁部71Bは、第1の位置P11に存在する場合に、第1排出通路(前排出路84)の一部を構成している。
【0045】
また、
図13に示すように、排出路切替部材71が、第1排出通路(前排出路84)を遮断する第2の位置P12に存在する場合に、排出路切替部材71の内壁部71Aが搬送通路(合流経路83d)と第2排出通路(上排出路85)を接続する接続通路の一部を構成する。排出路切替部材71の内壁部71Aは、用紙201,203の端部が接触すると、前後方向Lに搬送通路(合流経路83d)を搬送されてきた用紙201,203を上方向Lに導く湾曲形状を有しており、用紙201,203がスムーズに上排出口13bから排出される。なお、本実施の形態では、第1の位置P11と第2の位置P12は、プリンタ100の上下方向Hに並んで配置されている。
【0046】
排出路切替部材71は、プリンタ100の前面側に突出し、下壁部71Bと面一に連続して延びる延長壁部71Cを有している。用紙201,203の排出口を切り替える際には、延長壁部71Cをつまんで排出路切替部材71を第1の位置P11と第2の位置P12の間で移動させればよい。なお、排出路切替部材71は、プリンタ100の前面以外の面、例えば、側面の側に突出させて設けることも可能である。
【0047】
排出路切替機構を備えたプリンタの特徴及び効果を列挙する。
【0048】
プリンタは、
(1) 用紙を排出する第1排出口と、
前記用紙を排出する、前記第1排出口とは異なる第2排出口と、
前記用紙が搬送される搬送通路を、前記第1排出口に通じる第1排出通路と、前記第2排出口に通じる第2排出通路とのいずれかに切り替えて接続する排出路切替部材と、を備え、
前記排出路切替部材が、前記第1排出通路を遮断しない第1の位置に存在する場合に、前記搬送通路と前記第1排出通路が接続され、
前記排出路切替部材が、前記第1排出通路を遮断する第2の位置に存在する場合に、前記排出路切替部材の内壁部が前記搬送通路と前記第2排出通路を接続する接続通路の一部を構成する
ことを特徴とする。
【0049】
したがって、排出路切替部材で第1排出通路と第2排出通路を切り替えることができる。また、排出路切替部材が接続通路の一部を構成するので、通路を構成する部品を別途用意する必要がなく、部品点数を減らすことができる。
【0050】
(2) (1)に記載のプリンタにおいて、
前記第1排出口は、前記用紙を前面側に排出する前排出口であり、
前記第2排出口は、前記第1排出口の上方に設けられ、上側に排出する上排出口であり、
前記排出路切替部材は、前記第1の位置と前記第2の位置の間を移動可能である
ことを特徴とする。
【0051】
したがって、排出路切替部材を上下に移動させる簡単な操作により用紙を排出する排出口を前排出口と上排出口とに切り替えることができる。
【0052】
(3) (2)に記載のプリンタにおいて、
前記排出路切替部材の前記内壁部は、前記用紙の端部が接触すると、前記上下方向と直交する前後方向に前記搬送通路を搬送されてきた前記用紙を上方向に導く湾曲形状を有している
ことを特徴とする。
【0053】
したがって、用紙が湾曲形状に沿って曲がり、スムーズに上排出口から排出される。
【0054】
(4) (1)に記載のプリンタにおいて、
前記排出路切替部材の下壁部は、前記第1排出通路を遮断しない前記第1の位置に存在する場合に、前記第1排出通路の一部を構成する
ことを特徴とする。
【0055】
したがって、排出路切替部材が接続通路の一部を構成するので、通路を構成する部品を別途用意する必要がなく、部品点数を減らすことができる。
【0056】
(5) (4)に記載のプリンタにおいて、
前記排出路切替部材は、プリンタの前記前面側に突出し、前記下壁部と面一に連続して延びる延長壁部を有する
ことを特徴とする。
【0057】
したがって、用紙の排出口を切り替える際には、延長壁部をつまんで排出路切替部材を第1の位置と第2の位置の間で移動させればよい。また、第1排出通路から排出する場合は、第1排出路を開け、第2排出通路から排出する場合は、第1排出路を閉じる操作は、用紙がどこから排出されるのかが直感的に理解でき、このようなわかりやすい操作によって、用紙の排出口を切り替えることができる。
【0058】
(搬送路)
搬送路80は、用紙201,203が搬送される通路である。搬送路80のうち、まず、枚葉紙201が搬送される部分を説明する。
【0059】
搬送路80の、枚葉紙201が搬送される部分は、
図2,3において一点鎖線で示すように、給紙路81と、プリント路82と、排出路83aと、デカール処理排出経路83bと、排出経路83cと、合流経路83dと、前排出路84と、上排出路85と、プリント上流路86と、プリント下流路87と、を備えている。
【0060】
給紙路81は、枚葉紙収容部21の前端から上方に向かって延び、ロール紙収容部22の前方で、かつ前面中カバー14の後方に形成された空間において、後方及び下方に向かうように折り返して延び、ロール紙収容部22の下方で、かつ枚葉紙収容部21の上方を、ロール紙収容部22の後方に向かって延び、さらに、ロール紙収容部22の後方において、上方に立ち上がった位置まで形成されている。
【0061】
プリント路82は、給紙路81に続いて、ロール紙収容部22の後方において、ロール紙収容部22の後方に沿うように上方に立ち上がるように延び、さらに、ロール紙収容部22の上方において、ロール紙収容部22の上方の前部まで、前方に向かって延びている。前述したプリント部30は、プリント路82に配置されている。
【0062】
排出路83aは、プリント路82に続いて、ロール紙収容部22の上方の前部から前後方向Lに沿って前方に延び、デカール切替フラップ(第2フラップ)74によってデカール処理排出経路83bと、排出経路83cとに分岐している。デカール処理排出経路83bと排出経路83cは、下流側で合流して合流経路83dを形成している。前述したカッター部40は、合流経路83dに配置されている。合流経路83dは、カッター部40よりも前方の位置まで延びている。
【0063】
前排出路84は、合流経路83dに続いて、前排出口13aまで前方に延びている。上排出路85は、合流経路83dに続いて、上排出口13bまで上方及び後方に曲がって延びている。
【0064】
プリント上流路86は、プリント路82に続いて、ロール紙収容部22の上方の前部から、ロール紙収容部22の外周と同心円状に、ロール紙収容部22の下方に向かって、給紙路81に突き当たる手前の位置まで延びている。
【0065】
プリント上流路86と排出路83との分岐部には、プリント排出切替フラップ(第1フラップ)72が設けられている。プリント排出切替フラップ72は、先端が上下に変位するように回動可能に設けられていて、プリンタ100の図示しない制御部の制御によって回動する。プリント排出切替フラップ72は、
図2に示した状態では、変位可能の範囲において、先端が下側に配置された状態となっている。
【0066】
プリント排出切替フラップ72が変位可能の範囲において先端が下側に配置された状態では、プリント路82を前方に進んだ用紙201が排出路83に進むように切り替えられ、プリント排出切替フラップ72が変位可能の範囲において先端が上側に配置された状態では、プリント路82を前方に進んだ用紙201がプリント上流路86に進むように切り替えられる。
【0067】
プリント下流路87は、プリント路82の給紙路81側の端部に続いて、ロール紙収容部22の下方で、しかも給紙路81よりも下方で、かつ枚葉紙収容部21の上方において、ロール紙収容部22の後方から前方に向かって延び、プリント下流路87の前側の先端は上方に立ち上がって、同じく上方に立ち上がった給紙路81に滑らかに合流するように形成されている。
【0068】
ここで、用紙201の表裏面を反転させる反転部90について説明する。用紙201は、プリント路82においてインクリボン32が接する面、すなわち、
図2,3において、前後方向Lの後方を向いた面にプリントが行われる。プリント路82においてプリントされた面は、用紙201がプリント下流路87に搬送されたとき、高さ方向Hの下方を向いている。
【0069】
そして、この用紙201が、プリント下流路87を前方に搬送されて、上方に立ち上がる給紙路81に合流して給紙路81を搬送されるとき、プリントされた面は、ロール紙収容部22の下方においては、高さ方向Hの上方を向いている。
【0070】
さらに、この用紙201が、給紙路81を後方に搬送されて、上方に立ち上がるプリント路82を搬送されるとき、プリントされた面は、前後方向の前方を向いている。つまり、用紙201は、プリント下流路87から給紙路81を搬送されている間に裏返されて、表裏面が反転した状態となる。したがって、プリント下流路87と給紙路81とは、用紙201の表裏面を反転させる反転部90を構成している。なお、反転部90は搬送路80の一部であるため、搬送路80の他の部分と同様に、内部引き出しユニット60に設けられている。
【0071】
そして、
図3に示すように、反転部90の少なくとも一部に相当する、給紙路81の、上方に凸の湾曲部分M1は、給紙路81を搬送される枚葉紙201の搬送方向を上方(上向き)から下方(下向き)に反転させる部分であり、ロール紙収容部22の前方に形成されて、プリンタ100の正面(前後方向Lの前面)から前後方向Lに後方を見たときロール紙収容部22に重なる。湾曲部分M1は、例えば曲率半径が30[mm]に形成されている。
【0072】
なお、湾曲部分M1の曲率半径は30[mm]よりも小さいと、枚葉紙201の搬送の円滑性が損なわれるおそれがあるため、30[mm]以上であるのが好ましい。ただし、湾曲部分M1の曲率半径は30[mm]以上に限定されるものではなく、使用する用紙201,203の厚さや材質等に応じて、30[mm]未満に設定することもできる。
【0073】
枚葉紙201には、厚みや材質に応じて、湾曲部分M1により搬送の円滑性が損なわれ難いものもあり、このような枚葉紙201の場合は、湾曲部分M1の曲率半径が20[mm]以上であれば、搬送の円滑性を損なわれ難い枚葉紙201を選択して使用することが可能である。
【0074】
また、反転部90の少なくとも他の一部に相当する、給紙路81及びプリント下流路87の、ロール紙収容部22の下方を通過する部分M2は、ロール紙収容部22の下方に形成されて、プリンタ100の上面から高さ方向Hに下方を見たときロール紙収容部22に重なる。
【0075】
一方、反転部90は、プリンタ100の側面から幅方向Wに他方の側面方向を見たときロール紙収容部22と全く重ならない。
【0076】
次に、搬送路80のうち、ロール紙202から巻き解かれた用紙203が搬送される部分を説明する。搬送路80の、ロール紙202から巻き解かれた用紙203が搬送される部分は、上述した枚葉紙201が搬送される部分に加えて、
図2,3において一点鎖線で示すように、ロール紙給紙路89を備えている。
【0077】
ロール紙給紙路89は、ロール紙収容部22に収容されたロール紙202の略最下部から後方に向かって延び、ロール紙収容部22の後方において、上方に立ち上がった位置まで形成されている。
【0078】
給紙路81とロール紙給紙路89とが合流する部分には、給紙切替フラップ73が設けられている。給紙切替フラップ73は、先端が前後に変位するように回動可能に設けられていて、給紙切替フラップ73は、
図2に示した状態では、図示を略したばねによって、先端が、変位可能の範囲の前側に付勢された状態となっている。
【0079】
給紙切替フラップ73が変位可能の範囲において、先端が前側に付勢された状態では、給紙路81を搬送された用紙201がプリント路82に進むように切り替えられ、また、プリント路82から搬送された用紙201は、プリント下流路87に進むように切り替えられる。
【0080】
一方、給紙切替フラップ73が変位可能の範囲において、先端が前側に付勢された状態で、ロール紙202から巻き解かれてロール紙給紙路89を搬送された用紙203がプリント路82に向かって進むと、用紙203が、ばねの付勢力に抗して給紙切替フラップ73を、先端が変位可能の範囲の後側に押圧して、プリント路82に進む。
【0081】
ロール紙202から巻き解かれた用紙203がプリント路82のプリント部30でプリントされる際は、用紙203はロール紙202から切り離されないままであるため、給紙切替フラップ73は、ロール紙給紙路89を通過している用紙203の部分によって先端が変位可能の範囲の後側に押圧されたままとなる。
【0082】
なお、給紙切替フラップ73も、プリンタ100の図示しない制御部の制御によって回動するようにしてもよい。
【0083】
(搬送手段)
搬送手段70は、枚葉紙繰り出しローラ77aと、給紙ローラ77bと、反転ローラ77cと、グリップローラ77dと、第1送りローラ77eと、第1排出ローラ77fと、第2排出ローラ77gと、ロール紙繰り出しローラ77iと、を備えている。
【0084】
これらの各搬送ローラ77a~77iは、枚葉紙201及び用紙203のうち少なくとも一方の用紙に対して、表裏のいずれかの面に接し、プリンタ100の図示しない制御部の制御によって回転することで、用紙201,203を搬送路80に沿って搬送する。
【0085】
枚葉紙繰り出しローラ77aは、枚葉紙収容部21の前端の部付近の上方に配置されている。枚葉紙繰り出しローラ77aは、枚葉紙収容部21に収容された枚葉紙201のうち、最も上に重ねられた枚葉紙201に接し、回転により、その枚葉紙201を、給紙路81に繰り出す。なお、枚葉紙繰り出しローラ77aは、繰り出し方向とは反対向きに回転して、給紙路81に繰り出した枚葉紙201を、枚葉紙収容部21に引き戻すことができる。
【0086】
給紙ローラ77bは、給紙路81の、枚葉紙繰り出しローラ77aに近接して配置されている。給紙ローラ77bは、枚葉紙繰り出しローラ77aによって給紙路81に繰り出された枚葉紙201に接して、枚葉紙201を給紙路81に沿って上方に搬送する。なお、給紙ローラ77bも、上述した搬送方向とは反対向きに回転して、枚葉紙201を引き戻すことができる。
【0087】
以下に説明する反転ローラ77c、グリップローラ77d、第1送りローラ77e、第1排出ローラ77f、第2排出ローラ77g及び第2送りローラ77hも、給紙ローラ77bと同様に、各搬送方向とは反対向きに回転して、枚葉紙201を引き戻すことができる。
【0088】
反転ローラ77cは、給紙路81の、給紙ローラ77bよりも上方の部分に配置されている。反転ローラ77cは、給紙ローラ77bによって給紙路81を進んだ枚葉紙201に接して、枚葉紙201を給紙路81に沿ってプリント路82に向けて搬送する。
【0089】
グリップローラ77dは、プリント路82の、給紙路81に近い側の部分であって、給紙切替フラップ73の先端よりも先の位置に配置されている。グリップローラ77dは、プリント路82に搬送された枚葉紙201に接して、枚葉紙201を、プリント部30を通って、排出路83a又はプリント上流路86に向けて搬送する。このとき、給紙切替フラップ73は、前側に切り替えられていて、給紙路81を搬送された枚葉紙201がプリント路82に搬送されるのを許容している。
【0090】
第1送りローラ77eは、合流経路83dの、カッター部40よりもプリント路82に近い側の部分に配置されている。第1送りローラ77eは、合流経路83dに搬送された枚葉紙201に接して、枚葉紙201を、カッター部40を通って第1排出ローラ77fに搬送する。
【0091】
第1排出ローラ77fは、合流経路83dの、プリント路82から遠い側の端部付近であって、排出路切替部材71よりも手前の位置に配置されている。第1排出ローラ77fは、合流経路83dに搬送された枚葉紙201に接して、排出路切替部材71の位置に応じて、枚葉紙201を、前排出路84又は上排出路85に搬送する。
【0092】
第2排出ローラ77gは、上排出路85のうち、上排出口13bの近くに配置されている。第2排出ローラ77gは、上排出路85に搬送された枚葉紙201に接して、枚葉紙201を、上排出口13bから上面カバー12のスタッカーとなる凹んだ部分12aに枚葉紙201を排出する。
【0093】
ロール紙繰り出しローラ77iは、ロール紙給紙路89の、プリント路82に近い側の部分であって、給紙切替フラップ73の先端よりも手前の位置に配置されている。ロール紙繰り出しローラ77iは、ロール紙収容部22に収容されたロール紙202の最外周に巻かれた用紙203に接し、回転により、その用紙203をグリップローラ77dに向けて繰り出す。
【0094】
なお、ロール紙繰り出しローラ77iも、繰り出し方向とは反対向きに回転して、グリップローラ77dに向けて繰り出した用紙203を、ロール紙収容部22のロール紙202に巻き戻すことができる。
【0095】
<作用>
以上のように構成されたプリンタ100の動作について説明する。まず、枚葉紙201にプリントする動作について説明する。
【0096】
図14,15,16は、プリンタ100が枚葉紙201の表裏両面にプリントを行う際の枚葉紙201の動きを模式的に示した、
図3相当の簡略断面図である。また、
図17は、プリンタ100がロール紙202にプリントを行う際の用紙203の動きを模式的に示した、
図3相当の簡略断面図である。
【0097】
(枚葉紙に対する動作)
プリンタ100が、枚葉紙201にプリントして排出する動作について、
図14~16を参照して説明する。
【0098】
まず、枚葉紙繰り出しローラ77a(
図2参照。以下、同じ。)が回転することで、枚葉紙収容部21に収容された枚葉紙201のうち最も上層に積まれている1枚の枚葉紙201が給紙路81に繰り出され、さらに、給紙ローラ77bの回転及びその先の反転ローラ77cの回転により、
図14の上段左に示すように、給紙路81を矢印方向に搬送される。
【0099】
ここで、給紙切替フラップ73の切替により、枚葉紙201は、同図の上段中央に示すようにプリント路82に搬送され、グリップローラ77dの回転によりプリント路82を進んで、同図の上段右に示すように、プリント排出切替フラップ(第1フラップ)72の切り替えによりプリント上流路(第1経路)86に導かれる。
【0100】
枚葉紙201が、プリント上流路86の突き当たりまで進むと、グリップローラ77dが反転し(回転の向きが反対になり)、枚葉紙201は、同図の下段左に示すように、プリント部30を通って、枚葉紙201の表(おもて)面にプリントされつつ、プリント下流路87に進む。
【0101】
ここで、枚葉紙201の表面にカラープリントを行う場合、インクリボン32による色を代えて、さらにインクリボン32によりオーバーコートを行う場合は、グリップローラ77dの回転向きの切替により、同図の上段右の状態と下段左の状態との間で搬送とプリントを繰り返し、表面のカラープリントとオーバーコートの処理が終了する。
【0102】
枚葉紙201の表面へのプリントが終了すると、反転ローラ77cの回転により、同図の下段左の状態から同図の下段中央に示すように、枚葉紙201は、給紙路81に搬送され、プリント下流路87及び給紙路81によって形成された反転部90を通過することで、表裏面が反転する。つまり、枚葉紙201は、反転部90を通過することで裏返しになり、プリント路82においてプリント部30によりプリントされる面が反転する。
【0103】
反転部90により裏返しにされた枚葉紙201は、同図の下段中央から、再び反転したグリップローラ77dの回転により、同図の下段右に示したように、プリント上流路86の突き当たりまで搬送される。
【0104】
枚葉紙201が、プリント上流路86の突き当たりまで進むと、グリップローラ77dが再び反転して、枚葉紙201は、
図15の上段左に示すように、プリント部30を通過して、枚葉紙201の裏面にプリントされつつプリント下流路87に進む。
【0105】
ここで、枚葉紙201の裏面にカラープリントを行う場合、インクリボン32による色を代えて、さらにインクリボン32によりオーバーコートを行う場合は、
図14の下段右の状態と
図15の上段左の状態との間で搬送を繰り返し、裏面のカラープリントとオーバーコートの処理が終了する。
【0106】
枚葉紙201の裏面のプリントが終了すると、グリップローラ77dが再び反転し、
図15の上段左に示す状態から同図の上段中央に示すように、枚葉紙201は、プリント路82を通り、カッター部40(可動部材51)が第1の位置P1に移動し、プリント排出切替フラップ(第1フラップ)72が切り替えられて、排出路(第2経路)83aに搬送される。
【0107】
続けて、カッター部40(可動部材51)が第2の位置P2に移動し、デカール切替フラップ(第2フラップ)74が切り替えられて、枚葉紙201は、
図11の状態で、排出経路(第4経路)83cを経由して、合流経路83dに搬送される。
【0108】
合流経路83dでは第1送りローラ77eの回転により、枚葉紙201はカッター部40に進み、
図15の上段右に示した状態で、枚葉紙201の後端の不要部分が、カッター部40により切断される。切断された不要部分は、カッター部40の下方に配置されたごみ箱16(
図2参照)に落下し、ごみ箱16の内部に溜められる。
【0109】
後端の不要部分が切断された枚葉紙201は、第1送りローラ77eが反転することで合流経路83d、排出経路83c及び排出路83aを経由してプリント路82に向かって搬送され、さらに、グリップローラ77dが再び反転することで、プリント路82を通り、同図の下段左に示すようにプリント下流路87に引き戻される。
【0110】
続いて、同図の下段右に示すように、プリント下流路87及び給紙路81からなる反転部90を通って、プリント路82に搬送される。プリント路82では、グリップローラ77dが再び反転して、
図9の上段左に示すように、枚葉紙201を排出路83に搬送し、枚葉紙201は、排出路83において第1送りローラ77eの回転により、カッター部40に搬送される。
【0111】
そして、
図16の上段左に示す状態で、枚葉紙201の前端の不要部分が、カッター部40により切断される。切断された不要部分は、カッター部40の下方に配置されたごみ箱16(
図2参照)に落下し、ごみ箱16の内部に溜められる。
【0112】
前端の不要部分が切断された枚葉紙201は、第1送りローラ77eの回転により、カッター部40を通過して前方に進む。カッター部40の前方に進んだ枚葉紙201は、第1排出ローラ77fの回転により搬送されるが、排出路切替部材71が分岐部において下側に切り替えられている状態においては、同図の上段中央に示すように、枚葉紙201は上排出路85に導かれ、上排出口13bの近くに配置された第2排出ローラ77gの回転により、同図の上段右に示すように、枚葉紙201は上排出口13bから排出される。
【0113】
一方、排出路切替部材71が分岐部において上側に切り替えられている状態においては、同図の下段左に示すように、枚葉紙201は前排出路84に導かれ、同図の下段右に示すように、枚葉紙201は前排出口13aから排出される。
【0114】
(ロール紙に対する動作)
次に、プリンタ100が、ロール紙202にプリントして排出する動作について、
図17を参照して説明する。
【0115】
まず、ロール紙繰り出しローラ77i(
図2参照。以下、同じ。)が回転することで、ロール紙収容部22に収容されたロール紙202の最外周の部分から用紙203が巻き解かれる。
【0116】
ここで、給紙切替フラップ73の後側への切替及びプリント排出切替フラップ72の上側への切替、並びに、ロール紙繰り出しローラ77iの回転及びグリップローラ77dの回転によって、巻き解かれた用紙203は、
図17の上段左に示すように、プリント路82及びプリント上流路(第1経路)86を搬送されて、同図の上段中央に示すように、プリントに必要な長さ分だけ繰り出される。
【0117】
次に、繰り出された用紙203は、グリップローラ77d及びロール紙繰り出しローラ77iの反転により、プリント路82及びロール紙給紙路89を引き戻され、同図の上段中央に示すように、用紙203がプリント路82を通過している期間中に、プリント部30によって用紙203にプリントが行われる。
【0118】
ここで、用紙203にカラープリントを行う場合、インクリボン32による色を代えて、さらにインクリボン32によりオーバーコートを行う場合は、枚葉紙201の場合と同様に、排出口方向への搬送と反転した搬送でのプリントを繰り返し、カラープリントとオーバーコートの処理が終了する。
【0119】
同図の上段右に示すように、用紙203へのプリントが終了すると、ロール紙給紙ローラ77i及びグリップローラ77dの反転により、用紙203はロール紙給紙路89及びプリント路82を通り、カッター部40(可動部材51)が第1の位置P1に移動し、プリント排出切替フラップ(第1フラップ)72の下側への切替により排出路(第2経路)83aに送られる。
【0120】
続けて、カッター部40(可動部材51)は第1の位置P1に維持され、ロール紙203は、デカール処理排出経路(第3経路)83bを経由して、合流経路83dに搬送される。
【0121】
合流経路83dでは、同図の下段左に示すように、用紙203は第2送りローラ77eの回転によってカッター部40を通過し、カッター部40は、必要に応じて、用紙203の搬送方向の前端の不要部分を切断する。用紙203の、切断された不要部分は、ごみ箱16に溜められる。
【0122】
そして、不要部分が切断された後のプリント済みの用紙203は、排出路切替部材71の分岐部において上側への切替及び第1排出ローラ77fの回転により、前排出路84を通って前排出口13aに搬送される。
【0123】
そして、同図の下段中央に示すように、用紙203のプリントされた領域がカッター部40を通過したとき、カッター部40が用紙203を切断し、プリントされた領域を含む用紙203を、ロール紙202に繋がっている用紙203から切り離す。
【0124】
ロール紙202に繋がっている側の用紙203は、第2送りローラ77e、グリップローラ77d及びロール紙給紙ローラ77iの反転により、ロール紙202に巻き戻され、プリントされた領域を含む、ロール紙202から切り離された用紙203は、同図の下段右に示すように、前排出口13aから排出される。
【0125】
なお、排出路切替部材71を分岐部において下側に切り替えることで、プリント済みの用紙203を、上排出路85を通って上排出口13bから排出してもよい。
【0126】
<効果>
以上のように、本実施形態のプリンタ100は、1つの可動部材51で、第1フラップ72及び第2フラップ74を切り替えて、用紙が進む計4つの経路を切り替えることができる。また、用紙を切断するためにプリンタが備えているカッター部40が可動部材51を兼ねるようにすることで、さらに部品点数を減らすことができる。
【0127】
また、第1フラップ72は、第2経路に切り替えられたことにより用紙が第2経路を通過している状態においては、第1経路に切り替えられても、用紙の第2経路の通過を許容する。このようにして、第1フラップ72と第2フラップ74の両方にまたがった状態で通過する用紙でも1つの可動部材51で、経路を切り替えることができる。
【0128】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更が可能であるのは勿論である。
【0129】
例えば、本実施形態のプリンタ100は、昇華型のサーマルプリンタであるが、本発明に係るプリンタは昇華型のサーマルプリンタに限定されるものではなく、昇華型のサーマルプリンタ以外の他の印刷形式のプリンタであってもよい。
また、本実施形態のプリンタ100は、可動部材によって、第1フラップと第2フラップの2つのフラップを切り替える切替機構の例を示したが、本発明に係るプリンタは、さらに、フラップを追加し、1つの可動部材によって、3つ以上のフラップを切り替えるように構成することも可能である。すなわち、本発明に係るプリンタは、可動部材によって、複数のフラップを切り替えるように構成することが可能である。
また、本実施の形態では、第2フラップは、デカール切替フラップとして機能するようにしたが、他の経路(例えば、印刷経路と排出経路、前出し排出経路と上出し排出経路)を切り替えたりするようにしてもよい。
また、幅方向の第1の位置と第2の位置は、用紙の幅方向の左右の端部ではなく、一方の端部に並べて配置してもよいし、用紙の切断動作に影響がなければ、用紙の幅方向の端部でなくてもよい。
【符号の説明】
【0130】
21 枚葉紙収容部
22 ロール紙収容部
30 プリント部
51 可動部材
52 切替機構
53 第1リンク
54 第2リンク
72 第1フラップ(プリント排出切替フラップ)
74 第2フラップ(デカール切替フラップ)
90 反転部
100 昇華型サーマルプリンタ
201 枚葉紙(用紙)
202 ロール紙
203 用紙
H 高さ方向
L 前後方向
W 幅方向