(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162827
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】積層体及び包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20231101BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073491
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】是澤 峻人
(72)【発明者】
【氏名】當銘 勇人
(72)【発明者】
【氏名】石黒 隆洋
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD05
3E086AD24
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA35
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3E086CA40
4F100AK01B
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4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】揮発性成分を含有する飲食物や揮発性成分を含有する液体を含む製品を収容した場合に、内容物の蒸散を抑制できる包装体、及び当該包装体を製造できる積層体を提供する。
【解決手段】2以上の樹脂層を含む積層体であって、前記2以上の樹脂層のうち少なくとも1つの樹脂層Xがポリオレフィン及びシクロオレフィンコポリマーを含む、積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の樹脂層を含む積層体であって、
前記2以上の樹脂層のうち少なくとも1つの樹脂層Xがポリオレフィン及びシクロオレフィンコポリマーを含む、
積層体。
【請求項2】
前記樹脂層Xのポリオレフィンが、ポリエチレン及びポリプロピレンから選択される1以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記樹脂層Xのシクロオレフィンコポリマーを構成する環状オレフィンが、ノルボルネン、ノルボルネン骨格を有する化合物、テトラシクロドデセン、及びテトラシクロドデセン骨格を有する化合物から選択される1以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記樹脂層Xのシクロオレフィンコポリマーを構成する非環状オレフィンが、エチレン及びプロピレンから選択される1以上である、請求項1~3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記樹脂層Xのシクロオレフィンコポリマーにおける、環状オレフィンと非環状オレフィンとの質量比が30~90:70~10である、請求項1~4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記樹脂層Xにおけるポリオレフィンの含有量が30~99質量%であり、シクロオレフィンコポリマーの含有量が1~70質量%である、請求項1~5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記樹脂層Xにおけるポリオレフィンの含有量が40~95質量%であり、シクロオレフィンコポリマーの含有量が5~60質量%である、請求項1~5のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記樹脂層Xが、実質的にポリオレフィンとシクロオレフィンコポリマーのみからなる、請求項1~7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
前記積層体を構成する樹脂層のうち、表面が外部に露出しない内層のうち少なくとも1層が樹脂層Xである、請求項1~8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
基材層、樹脂層X、及び基材層をこの順で含む、請求項1~9のいずれかに記載の積層体。
【請求項11】
酸素バリア層を含む、請求項1~10のいずれかに記載の積層体。
【請求項12】
1又は2以上の接着層を含む、請求項1~11のいずれかに記載の積層体。
【請求項13】
基材層、樹脂層X、接着層、酸素バリア層、接着層、樹脂層X及び基材層をこの順で含む、請求項1~12のいずれかに記載の積層体。
【請求項14】
表面に剥離層を含む、請求項1~13のいずれかに記載の積層体。
【請求項15】
前記剥離層が、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合層である、請求項14に記載の積層体。
【請求項16】
前記剥離層が、ポリエチレンの単独層である、請求項14に記載の積層体。
【請求項17】
前記剥離層に隣り合う樹脂層として、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合層である基材層を有する、請求項14~16のいずれかに記載の積層体。
【請求項18】
剥離層、基材層、樹脂層X、接着層、酸素バリア層、接着層、樹脂層X及び基材層をこの順で含む、請求項14~17のいずれかに記載の積層体。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の積層体を用いて作成された包装体。
【請求項20】
フランジ部を有する、請求項19に記載の包装体。
【請求項21】
揮発性成分を含む飲食物の収容用である、請求項19又は20に記載の包装体。
【請求項22】
アルコール飲料の収容用である、請求項19~21のいずれかに記載の包装体。
【請求項23】
日用品又は化粧品の収容用である、請求項19又は20に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食物や液体成分を含む製品等を収容するための樹脂製の容器において、外部から水蒸気が侵入すること、又は内容物から水分が蒸散することを防ぐべく、水蒸気(水分)に対するバリア性が要求される場合がある。ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンはそれ自体が水蒸気を透過しにくいため、これら樹脂を用いた樹脂層は当該要求を満たし得るが、特定の組成により水蒸気バリア性を付与した包装体等も知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、水よりも揮発性の高いアルコール等を含む製品や飲食物についても、内容物の蒸散を防ぐバリア性の高い包装体の要求があるが、従来の包装体は当該性能が未だ十分とはいえなかった。
本発明の目的は、揮発性成分を含有する飲食物や揮発性成分を含有する液体を含む製品を収容した場合に、内容物の蒸散を抑制できる包装体、及び当該包装体を製造できる積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の積層体等が提供される。
1.2以上の樹脂層を含む積層体であって、
前記2以上の樹脂層のうち少なくとも1つの樹脂層Xがポリオレフィン及びシクロオレフィンコポリマーを含む、
積層体。
2.前記樹脂層Xのポリオレフィンが、ポリエチレン及びポリプロピレンから選択される1以上である、1に記載の積層体。
3.前記樹脂層Xのシクロオレフィンコポリマーを構成する環状オレフィンが、ノルボルネン、ノルボルネン骨格を有する化合物、テトラシクロドデセン、及びテトラシクロドデセン骨格を有する化合物から選択される1以上である、1又は2に記載の積層体。
4.前記樹脂層Xのシクロオレフィンコポリマーを構成する非環状オレフィンが、エチレン及びプロピレンから選択される1以上である、1~3のいずれかに記載の積層体。
5.前記樹脂層Xのシクロオレフィンコポリマーにおける、環状オレフィンと非環状オレフィンとの質量比が30~90:70~10である、1~4のいずれかに記載の積層体。
6.前記樹脂層Xにおけるポリオレフィンの含有量が30~99質量%であり、シクロオレフィンコポリマーの含有量が1~70質量%である、1~5のいずれかに記載の積層体。
7.前記樹脂層Xにおけるポリオレフィンの含有量が40~95質量%であり、シクロオレフィンコポリマーの含有量が5~60質量%である、1~5のいずれかに記載の積層体。
8.前記樹脂層Xが、実質的にポリオレフィンとシクロオレフィンコポリマーのみからなる、1~7のいずれかに記載の積層体。
9.前記積層体を構成する樹脂層のうち、表面が外部に露出しない内層のうち少なくとも1層が樹脂層Xである、1~8のいずれかに記載の積層体。
10.基材層、樹脂層X、及び基材層をこの順で含む、1~9のいずれかに記載の積層体。
11.酸素バリア層を含む、1~10のいずれかに記載の積層体。
12.1又は2以上の接着層を含む、1~11のいずれかに記載の積層体。
13.基材層、樹脂層X、接着層、酸素バリア層、接着層、樹脂層X及び基材層をこの順で含む、1~12のいずれかに記載の積層体。
14.表面に剥離層を含む、1~13のいずれかに記載の積層体。
15.前記剥離層が、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合層である、14に記載の積層体。
16.前記剥離層が、ポリエチレンの単独層である、14に記載の積層体。
17.前記剥離層に隣り合う樹脂層として、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合層である基材層を有する、14~16のいずれかに記載の積層体。
18.剥離層、基材層、樹脂層X、接着層、酸素バリア層、接着層、樹脂層X及び基材層をこの順で含む、14~17のいずれかに記載の積層体。
19.1~18のいずれかに記載の積層体を用いて作成された包装体。
20.フランジ部を有する、19に記載の包装体。
21.揮発性成分を含む飲食物の収容用である、19又は20に記載の包装体。
22.アルコール飲料の収容用である、19~21のいずれかに記載の包装体。
23.日用品又は化粧品の収容用である、19又は20に記載の包装体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、揮発性成分を含有する飲食物や揮発性成分を含有する液体を含む製品を収容した場合に、内容物の蒸散を抑制できる包装体、及び当該包装体を製造できる積層体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一態様に係る包装体の一例の上面図(a)及び断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る積層体及び包装体について説明する。本明細書において、「x~y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。一の技術的事項に関して、「x以上」等の下限値が複数存在する場合、又は「y以下」等の上限値が複数存在する場合、当該上限値及び下限値から任意に選択して組み合わせることができるものとする。
【0009】
1.積層体
本発明の一態様に係る積層体は、2以上の樹脂層を含み、2以上の樹脂層のうち少なくとも1つの樹脂層(以下、「樹脂層X」とも言う)がポリオレフィン及びシクロオレフィンコポリマーを含む。
【0010】
上記の積層体は、ポリオレフィン及びシクロオレフィンコポリマーを含む樹脂層Xを備えることにより、アルコール等の揮発性成分に対して優れた遮断能力を発揮する。これにより、当該積層体からなる包装体(包装容器)によって、揮発性成分を含む飲食物や揮発性成分を含有する液体を含む製品を一定期間保管した場合に、内容物の蒸散を最小限に抑えることができ、内容物の品質を長期間維持することが可能となる。
また、樹脂層Xがシクロオレフィンコポリマーを含むことにより、当該積層体は全体として高い剛性を備える。このような積層体から得られた成形体(例えば包装体)もまた剛性に優れるため、外力によって変形しにくい。
さらに、樹脂層Xがシクロオレフィンコポリマーのみによって構成されるものではなく、シクロオレフィンコポリマーとポリオレフィンとの混合層であることによって、当該積層体は優れた外観と高い成形性とを兼ね備えたものとなっている。樹脂層Xをシクロオレフィンコポリマーのみからなる層とした場合、積層体の外観不良や、当該積層体を用いた成形が困難になる等の不具合が懸念されるが、ポリオレフィンを併用することで当該懸念を解消し得る。
以下、上記積層体の各構成について説明する。
【0011】
(樹脂層X)
積層体における樹脂層Xの配置には特に制限はなく、どの層として用いてもよい。一実施形態において、積層体を包装体として用いる場合に内容物に接する側の表面の樹脂層は、樹脂層Xではない。一実施形態において、積層体の表裏面の樹脂層は樹脂層Xではなく、表面が外部に露出しない内層のうち少なくとも1層が樹脂層Xである。
【0012】
樹脂層Xは、ポリオレフィン及びシクロオレフィンコポリマーを含む樹脂層であれば特に制限はない。
ポリオレフィンとしては特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が使用できる。一実施形態において、ポリオレフィンとしてポリエチレン及びポリプロピレンから選択される1以上を用いる。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状エチレン-α-オレフィン共重合体等が使用できる。ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン(hPP)、ランダムポリプロピレン(rPP)、ブロックポリプロピレン等が使用できる。
【0013】
また、環境対応を考慮する場合には、ポリオレフィンとしてバイオマス由来の樹脂(バイオマスプラスチック)を用いてもよい。バイオマスプラスチックとしては、例えば、バイオポリプロピレン、バイオポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィンとして、化石燃料由来の樹脂とバイオマスプラスチックを併用してもよい。
なお、樹脂層Xにおける他の樹脂成分(シクロオレフィンコポリマー、及び後述する「他の成分」の樹脂成分)の一部又は全部、及び本発明の一態様に係る積層体の樹脂層X以外の各層を構成する樹脂成分の一部又は全部として、バイオマスプラスチックを用いてもよい。
【0014】
シクロオレフィンコポリマーは、環状オレフィン(シクロアルケン又はシクロオレフィンとも言う)モノマーと非環状オレフィンモノマーとの共重合体である。
【0015】
環状オレフィンとしては、例えば、下記に示す化合物が挙げられ、モノマーとしてこれらのうち1種又は2種以上を用いてもよい。なお、下記構造式は環状オレフィンの骨格のみを示すものであり、置換可能な位置に置換基(例えば、炭素数1~30のアルキル基等)を有してもよい。
【化1】
【0016】
一実施形態において、環状オレフィンは、ノルボルネン、ノルボルネン骨格を有する化合物、テトラシクロドデセン(ジメタノオクタヒドロナフタレン)、及びテトラシクロドデセン骨格を有する化合物から選択される1以上である。
【0017】
非環状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いてもよい。
一実施形態において、非環状オレフィンは、エチレン及びプロピレンから選択される1以上である。
【0018】
一実施形態において、シクロオレフィンコポリマーは、環状オレフィンとしてノルボルネン又はノルボルネン骨格を有する化合物と、非環状オレフィンとしてエチレン又はプロピレンと、からなる共重合体である。
【0019】
シクロオレフィンコポリマーにおける各モノマーのモノマー比率は、例えば、環状モノマー:非環状オレフィンモノマー(質量比)=30~90:70~10であり、40~85:60~15であり、55~80:45~20である。
【0020】
シクロオレフィンコポリマーは水素添加物であってもよい。
シクロオレフィンコポリマーとしては市販品を用いることができ、例えば、ポリプラスチックス株式会社製のTOPAS(登録商標)や、三井化学株式会社製のアペル(登録商標)等を用いることができる。
【0021】
樹脂層Xにおけるポリオレフィンの含有量は、例えば、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であり、例えば、99質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下である。
樹脂層Xにおけるシクロオレフィンコポリマーの含有量は、例えば、1質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上であり、例えば、70質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下である。
樹脂層Xにおける各成分の含有量が上記のような範囲であると、積層体の外観向上の効果と、成形性向上の効果がより大きく得られる。
【0022】
一実施形態において、樹脂層Xにおけるポリオレフィンとシクロオレフィンコポリマーとの質量比は、30~99:1~70、40~95:5~60、又は50~90:10~50である。
【0023】
樹脂層Xには、上述したポリオレフィンとシクロオレフィンコポリマーに加えて他の成分を含めてもよいし、含めなくてもよい。他の成分としては、熱可塑性樹脂等の樹脂、酸化防止剤、易滑剤、帯電防止剤等の添加剤、及び着色剤等が挙げられる。
【0024】
一実施形態において、樹脂層Xは、ポリオレフィンとシクロオレフィンコポリマーのみからなるか、実質的にこれらのみからなる。後者の場合、不可避不純物を含んでもよい。
一実施形態において、樹脂層Xの80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上、99.9質量%以上、又は100質量%がポリオレフィンとシクロオレフィンコポリマーである。
【0025】
一実施形態において、樹脂層Xはタルク等の無機充填剤を含まない。
一実施形態において、樹脂層Xは石油樹脂を含まない。
一実施形態において、樹脂層Xは熱可塑性エラストマーを含まない。
【0026】
樹脂層Xの厚さには特に制限はないが、例えば、100~800μm、150~650μm又は200~700μmである。
積層体全体の厚さに対する樹脂層Xの厚さの割合は、例えば、30%以上、又は40%以上であり、例えば、70%以下、又は60%以下である。
【0027】
(積層構造)
本発明の一態様に係る積層体は、上記の樹脂層Xを少なくとも1層含む、2層以上の積層構造である。積層体は樹脂層Xを含んでいれば特に限定されず、2層又は3層以上の積層構造であってもよく、また、樹脂層Xを複数含んでもよい。樹脂層Xを複数含む場合、複数の樹脂層Xの組成は同一でもよいし、異なってもよい。また、複数の樹脂層Xの厚さは同一でもよいし、異なってもよい。
【0028】
一実施形態において、積層体は1又は2以上の基材層を含み、当該基材層のうち少なくとも1層が樹脂層Xである。以下、樹脂層Xである基材層を「第1基材層」、その他の基材層を「第2基材層」とも言う。
【0029】
第2基材層の材料には特に制限はないが、通常、ポリオレフィンが用いられ、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンが使用できる。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状エチレン-α-オレフィン共重合体等が使用できる。ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン(hPP)、ランダムポリプロピレン(rPP)、ブロックポリプロピレン等が使用できる。第2基材層は、上記樹脂の1種単独からなる層であってもよいし、2種以上の混合層であってもよい。
【0030】
第2基材層の厚さには特に制限はないが、積層体全層の厚さに対して、例えば、50%以下、40%以下、又は35%以下の厚さであり、例えば、積層体全層の厚さが1000μmである場合、500μm以下、400μm以下、350μm以下である。また、厚さの下限についても特に制限はなく、積層体全層の厚さに対して、0%超、1%以上、5%以上、10%以上、又は20%以上であってもよい。
第2基材層の厚さは、例えば、50~500μm、又は100~400μmである。
【0031】
積層体は第2基材層を複数含んでもよい。第2基材層を複数含む場合、複数の第2基材層の組成は同一でもよいし、異なってもよい。また、複数の第2基材層の厚さは同一でもよいし、異なってもよい。
【0032】
本発明の一態様に係る積層体に用いる他の層としては、例えば、酸素バリア層、接着層、剥離層等が挙げられる。一実施形態において、積層体は、接着層及び酸素バリア層からなる群から選択される1以上の層を含む。
【0033】
酸素バリア層は、酸素バリア性を有する層であり、容器として用いた場合に内容物の酸化劣化を抑制することができる。
酸素バリア層に用いられる材料としては、例えば、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、MXナイロン(MXNy)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリアクリロニトリル樹脂(PAN)等が挙げられ、これらのうち1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、酸素バリア層はコーティング法により形成することも可能であり、この場合に使用できる材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミ、及び窒化ケイ素等の無機系材料、ポリビニルアルコール(PVA)等の有機系材料、並びにシリカ/PVA等の有機無機ハイブリッド材料等からなる群から選択されるコート材料等が挙げられる。
【0034】
酸素バリア層の厚さは、通常、1μm以上であり、好ましくは5μm以上である。また、通常、150μm以下であり、好ましくは130μm以下である。
本発明の一態様に係る積層体において、酸素バリア層を複数設けてもよい。酸素バリア層を複数含む場合、複数の酸素バリア層の組成は同一でもよいし、異なってもよい。また、複数の酸素バリア層の厚さは同一でもよいし、異なってもよい。
【0035】
接着層は、多層シートの各層の密着性を高めるために必要に応じて用いる層であり、例えば、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、又はエチレン酢酸ビニル(EVA)などが使用可能であり、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
【0036】
接着層の厚さは、通常、1μm以上であり、好ましくは3μm以上である。また、通常、20μm以下であり、好ましくは10μm以下である。
本発明の一態様に係る積層体において、接着層を複数設けてもよい。接着層を複数含む場合、複数の接着層の組成は同一でもよいし、異なってもよい。また、複数の接着層の厚さは同一でもよいし、異なってもよい。
【0037】
剥離層(「剥離機能層」とも言う)は、通常、積層体を包装体として用いた場合に内容物と接する側の最外層に設けられる。
剥離層は、例えば、当該剥離層上に例えばヒートシール等により貼着された蓋材(「蓋材」については後に詳述する。)の易剥離性に優れる層である。剥離層に係る易剥離性は、剥離層が凝集剥離を生じることによって実現されてもよく、又は剥離層が下層から剥離(層間剥離)することによって実現されてもよい。
【0038】
剥離層の材料に特に制限はないが、通常、ポリオレフィンが用いられ、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンが使用できる。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状エチレン-α-オレフィン共重合体等が使用できる。ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン(hPP)、ランダムポリプロピレン(rPP)、ブロックポリプロピレン等が使用できる。剥離層は、上記樹脂の1種単独からなる層であってもよいし、2種以上の混合層であってもよい。
【0039】
一実施形態において、剥離層はポリプロピレンとポリエチレンとの混合層であってもよく、ポリプロピレンの含有量は、例えば、60~80質量%であり、ポリエチレンの含有量は、例えば、20~40質量%である。この場合、剥離層は、例えば、ホモポリプロピレン(hPP)、ランダムポリプロピレン(rPP)、及び低密度ポリエチレン(LDPE)の混合層であってもよい。
剥離層として上記の構成を採用する場合、その下に位置する樹脂層として、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合層である第2基材層を用いてもよく、ポリプロピレンの含有量は、例えば、70~90質量%であり、ポリエチレンの含有量は、例えば、10~30質量%である。この場合、当該第2基材層は、例えば、ホモポロプロピレン(hPP)及び低密度ポリエチレン(LDPE)の混合層であってもよい。
上記のような構成とすれば、剥離層が凝集剥離を生じやすくなり、優れた剥離性を獲得できる。
【0040】
一実施形態において、剥離層はポリエチレンのみの単独層であってもよく、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)のみからなる樹脂層であってもよい。
剥離層として上記の構成を採用する場合、その下に位置する樹脂層として、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合層である第2基材層を用いてもよく、ポリプロピレンの含有量は、例えば、70~90質量%であり、ポリエチレンの含有量は、例えば、10~30質量%である。この場合、当該第2基材層は、例えば、ホモポリプロピレン(hPP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)の混合層であってもよい。
上記のような構成とすれば、剥離層が層間剥離を生じやすくなり、優れた剥離性を獲得できる。
【0041】
一実施形態において、積層体は、金属成分を含有する層を含まない。
【0042】
本発明の一態様に係る多層シートの積層構造としては、例えば下記に示す構造が挙げられる。
(1)第2基材層/第1基材層(樹脂層X)
(2)第2基材層/第1基材層(樹脂層X)/第2基材層
(3)第2基材層/第1基材層(樹脂層X)/酸素バリア層/第1基材層(樹脂層X)/第2基材層
(4)第2基材層/第1基材層(樹脂層X)/接着層/酸素バリア層/接着層/第1基材層(樹脂層X)/第2基材層
(11)剥離層/第1基材層(樹脂層X)
(12)剥離層/第2基材層/第1基材層(樹脂層X)
(13)剥離層/第2基材層/第1基材層(樹脂層X)/第2基材層
(14)剥離層/第2基材層/第1基材層(樹脂層X)/酸素バリア層/第1基材層(樹脂層X)/第2基材層
(15)剥離層/第2基材層/第1基材層(樹脂層X)/接着層/酸素バリア層/接着層/第1基材層(樹脂層X)/第2基材層
(「/」は積層界面を示す。)
【0043】
一実施形態において、積層体の厚さは、例えば、100μm以上、150μm以上、200μm、又は350μm以上であり、例えば、2500μm以下、2000μm以下、1500μm以下、又は1200μm以下である。
【0044】
本発明の一態様に係る積層体の製造方法は特に限定されず、上述した各樹脂層を同時押出により形成してもよいし、例えば、コーティング法により酸素バリア層等を形成してもよい。
【0045】
2.包装体
本発明の一態様に係る包装体(例えば包装容器)は、上述した本発明の一態様に係る積層体により構成される。
本発明の一態様に係る包装体を
図1に例示する。容器1は、容器1における収容部2を取り囲むようにフランジ部3を有する。フランジ部3の上面には、蓋材(図示しない)を貼着することができ、これにより収容部2に封入された任意の内容物を密閉することができる。
なお、包装体の形状は
図1の例に限定されず、容器の収容部の形状としては、円形、角形、楕円形の他、各種形状とすることができる。また、袋状の形状でもよい。
【0046】
包装体のフランジ部に貼着される蓋材の材質は格別限定されず、例えばフィルム(樹脂フィルム)等であり得る。例えば蓋材としてラミネートフィルムを用いることで、ヒートシール等によって、包装体のフランジ部に貼着することができる。包装体のフランジ部から蓋材を剥離することで、包装体を開封し、内容物を包装体の外部に取り出すことができる。
【0047】
本発明の一態様に係る包装体を製造する方法は格別限定されない。例えば、本発明の一態様に係る積層体を、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、射出成形等の成形に供する方法が挙げられる。好ましくは、真空成形及び真空圧空成形である。
【0048】
3.包装体の用途
本発明の一態様に係る包装体は、飲食物(食品及び飲料)、日用品、医薬品、医療品、化粧品、工業部材、電子部品等の包装用部材として使用できる。
一実施形態において、当該包装体は、内容物としてアルコール等の揮発性成分を含む飲食物を収容するための包装体であり、例えば、アルコール飲料を収容するための包装体である。
また、一実施形態において、当該包装体は、内容物としてアルコールやアセトン等の揮発性成分を含有する液体を含む製品の包装体であり、例えば、アルコールシート(例えば、アルコール除菌シート等)や除光液等を収容するための包装体である。
【実施例0049】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例により限定されない。
【0050】
実施例及び比較例で用いた材料は以下の通りである。
<ポリプロピレン>
hPP1:ホモポリプロピレン(市販品、メルトフローレート(MFR)=0.5g/10min)
rPP1:ランダムポリプロピレン(市販品、メルトフローレート(MFR)=2g/10min)
<ポリエチレン>
LDPE1:低密度ポリエチレン(市販品、メルトフローレート(MFR)=4.5g/10min)
LDPE2:低密度ポリエチレン(市販品、メルトフローレート(MFR)=0.35g/10min)
HDPE1:高密度ポリエチレン(市販品、メルトフローレート(MFR)=13g/10min)
HDPE2:高密度ポリエチレン(市販品、メルトフローレート(MFR)=0.35g/10min)
<シクロオレフィンコポリマー>
COC1:ノルボルネンとエチレンの共重合体(市販品、メルトフローレート(MFR)=2g/10min、ノルボルネンモノマーとエチレンモノマーのモノマー比率(質量比)=60:40)
【0051】
実施例1
(1)積層体の製造
第1の層(厚さ50μm)/第2の層(厚さ200μm)/第3の層(厚さ300μm)の3層からなる積層体を、ディストリビュータ方式共押出多層シート製造装置を用いて製造した。
各層の構成は以下の通りである。
第1の層(剥離層):hPP1(50質量%)、rPP1(20質量%)、及びLDPE1(30質量%)の混合層
第2の層(第2基材層):hPP1(80質量%)及びLDPE2(20質量%)の混合層
第3の層(第1基材層):hPP1(80質量%)及びCOC1(20質量%)の混合層
【0052】
(2)積層体の評価
得られた積層体について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(i)揮発性成分を含有する飲料の蒸散抑制効果
積層体を真空成形し、略筒状の凹部を備えた容器(包装体)を得た。当該凹部は、平面視した場合に、横方向の最大長34mm、縦方向の最大長42mmの洋梨形の形状を有し、最大高さ(深さ)が18mmである。また、当該容器は、凹部を取り囲むようにフランジ部が設けられている。当該容器に市販のウィスキー(ホワイトホース:40度)を5mL充填し、当該フランジ部に蓋材を接着して、凹部を蓋材で密封し、高温低湿度環境下(40℃、28%RH)にて2週間保管した。保管前後の質量を測定し、下記式によりウイスキーの蒸散量(%)を求めた。
ウイスキー蒸散量(%)=[{(保管前のウイスキー入り容器の質量)-(保管後のウイスキー入り容器の質量)}/(保管前のウイスキー入り容器の質量)]×100
【0053】
(ii)剛性(引張弾性率)
JIS K 7161に準拠して引張弾性率を測定した。測定は、押出方向(MD方向)に対して行った。
【0054】
実施例2
第3の層において、COC1の割合を40質量%とし、hPP1の割合を60質量%とした以外は実施例1と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0055】
比較例1
第3の層において、COC1の代わりにLDPE2を用いた以外は実施例1と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0056】
【0057】
実施例3
第1の層(厚さ10μm)/第2の層(厚さ240μm)/第3の層(厚さ300μm)の3層からなる積層体を、ディストリビュータ方式共押出多層シート製造装置を用いて製造した。
各層の構成は以下の通りである。
第1の層(剥離層):HDPE1(100質量%)
第2の層(第2基材層):hPP1(80質量%)、LDPE2(11質量%)及びHDPE2(9質量%)の混合層
第3の層(第1基材層):hPP1(80質量%)及びCOC1(20質量%)の混合層
得られた積層体について、実施例1と同じ方法で評価を行った。結果を表2に示す。
【0058】
実施例4
第3の層において、COC1の割合を40質量%とし、hPP1の割合を60質量%とした以外は実施例3と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0059】
比較例2
第3の層において、COC1の代わりにLDPE2を用いた以外は実施例3と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0060】
【0061】
(1)表1及び2より、シクロオレフィンコポリマー含有層を有する本発明の積層体から得られた包装体は、内容物の蒸散量が少なく、アルコール飲料の蒸散抑制効果が高いことが分かる。特に、実施例2では比較例1の半分程度まで蒸散量を低減できており、約2倍のバリア性能を実現できたことが分かる。実施例3と比較例2の対比においても同様である。
(2)表1及び2より、シクロオレフィンコポリマー含有層を有する本発明の積層体は、比較例1及び2の積層体と比べて引張弾性率が大きく、高い剛性を有することが分かる。
(3)実施例1~4において、得られた積層体の外観は、シクロオレフィンコポリマーを含まない比較例1及び2の積層体と同程度であり、良好であった。また、実施例1~4の積層体を用いて(i)評価の容器を成形する際にも成形性に問題はなく、得られた容器の外観も良好であった。
(4)実施例1、2においては、(i)評価で作成した容器から蓋材を除去する際に、剥離層が凝集剥離を生じることで、優れた剥離性が発揮された。実施例3,4においては、(i)評価で作成した容器から蓋材を除去する際に、剥離層が層間剥離を生じることで、優れた剥離性が発揮された。